(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162586
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】マットレス梱包体
(51)【国際特許分類】
A47C 27/04 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
A47C27/04 A
A47C27/04 B
A47C27/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067463
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】512316725
【氏名又は名称】株式会社インテリアオフィスワン
(74)【代理人】
【識別番号】100166589
【弁理士】
【氏名又は名称】植村 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】阿比留 亮
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AC05
3B096AC11
3B096AD02
(57)【要約】
【課題】マットレスの梱包の際にコイルスプリングの破損を防ぎ、圧縮されたマットレスを元の大きさに戻すときにコイルスプリングが復元しやすいとともに、梱包対象のマットレスにおいて、人間の身体の部位がマットレスに当たり接する部分に対応させてマットレスのコイルスプリングの硬さを自在に調節できるマットレス梱包体を提供する。
【解決手段】マットレス梱包体1は、梱包対象のポケットコイルマットレス3が、複数のポケットコイルを並列させたポケットコイル集合体を備え、ポケットコイル集合体が、ポケットコイルマットレス3の幅方向に沿って、袋体の内部にコイルスプリングを収容したポケットコイルが複数連結して並列した複数のポケットコイル列からなり、ポケットコイル集合体において、複数のポケットコイル列の位置に応じて、ポケットコイル列またはポケットコイル列群ごとに、袋体の内部に収容されるコイルスプリングの硬さを調節する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻かれたロール状マットレスと、
前記ロール状マットレスの外周に巻き付けられるフィルムと、
を有したマットレス梱包体であって、
前記ロール状マットレスは、
複数のポケットコイルを内蔵したポケットコイルマットレスと、
前記ポケットコイルマットレスを圧縮して収容するポケットコイルマットレス収容袋と、
を有し、
前記ポケットコイルマットレスは、複数のポケットコイルを並列させたポケットコイル集合体を備え、
前記ポケットコイル集合体は、前記ポケットコイルマットレスの幅方向(W)に沿って、袋体の内部にコイルスプリングを収容したポケットコイルが複数連結して並列した複数のポケットコイル列からなり、
前記ポケットコイル集合体において、前記複数のポケットコイル列の位置に応じて、ポケットコイル列またはポケットコイル列群ごとに、前記袋体の内部に収容されるコイルスプリングの硬さを調節し、さらに、
前記ロール状マットレスは、
前記ポケットコイルマットレス収容袋に圧縮されて収容されたポケットコイルマットレスがロール状に巻かれることによって、形成される、
マットレス梱包体。
【請求項2】
前記コイルスプリングの、ばね定数、線径、巻き数、高さおよび形状のうちの少なくとも1つを変えることにより、前記コイルスプリングの硬さを調節する、請求項1に記載のマットレス梱包体。
【請求項3】
前記「複数のポケットコイル列の位置」は、前記ポケットコイルマットレス上に仰臥する人間の身体の部位とその周辺が前記ポケットコイルマットレスに当たり接する部分に対応している、請求項1または請求項2に記載のマットレス梱包体。
【請求項4】
少なくとも1つのポケットコイル列または少なくとも1つのポケットコイル列群のそれぞれの袋体の内部に収容されるコイルスプリングはすべて、同じものである、請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載のマットレス梱包体。
【請求項5】
前記ロール状マットレスは、
前記ポケットコイルマットレス収容袋に圧縮されて収容されたポケットコイルマットレスが、ポケットコイルマットレスの中心を長手方向(L)に通る中心線(P)に沿って二つ折りにされ、二つ折りにされたポケットコイルマットレスが、ロール状に巻かれることによって、形成される、
請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載のマットレス梱包体。
【請求項6】
前記ポケットコイル集合体において、前記「ポケットコイルマットレスの中心を長手方向(L)に通る中心線(P)」に隣接するポケットコイル同士は、連結していない、請求項5に記載のマットレス梱包体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マットレス梱包(こんぽう)体に関し、特に、コイルスプリングを内蔵したマットレスを圧縮してコンパクトな形態により搬送、搬入および搬出、保管することなどが可能なマットレス梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
ベッドの枠体(フレーム)上に載せるなどして用いられる、弾力のある厚い敷物であるマットレスの一般的に広く普及している型の一つに、ポケットコイルマットレスがある。ポケットコイルマットレスは、弾性のあるコイルスプリングを袋体(ポケット)の内部に収容したポケットコイルを複数並列させることにより形成される。
【0003】
ポケットコイルマットレスを含むマットレスは、そのままの状態で取り扱うにはかさが張るため、流通および輸送コストなどの面において不都合があった。こうしたことから、マットレスのかさを減らしてコンパクトな形態により取り扱えるようにすることが求められていた。これに対して、マットレスを袋に圧縮して収容した後、二つ折りにしてこれをロール状に巻き、ロール状のマットレスを段ボール箱に入れて梱包することが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ポケットコイルマットレスでは、
図7に示すように、内蔵された複数のポケットコイル70がポケットコイルマットレス7の長手方向に沿って連結して並列している(ポケットコイル列77をなしている)場合に、梱包において、さまざまな課題が生じていた。
その一つは、ポケットコイルマットレス7を袋(例えば、ビニール袋)に圧縮して収容した後、これをポケットコイルマットレス7の長手方向に沿ってロール状に巻く際に、コイルスプリングを収容した複数の円筒状袋体または樽(たる)状袋体(ポケット)がマットレス7の長手方向に沿って連結しているため、マットレス7をロール状に巻くことにより袋体が引っ張られ、ポケットコイル70が転倒したり傾斜したりして、袋体内のコイルスプリングが破損することであった。
【0006】
さらに、(前述したように)コイルスプリングを収容した袋体が引っ張られることなどにより、梱包されたポケットコイルマットレス7を使用可能な状態にするために、マットレス梱包体の梱包を解き、ポケットコイルマットレス7が収容された袋を開封して、圧縮されたマットレス7を元の(本来の)大きさに戻すとき、コイルスプリングが復元するまでに時間がかかる、といった課題もあった。
【0007】
他方、ポケットコイルマットレスの硬さを、マットレス上に仰臥(ぎょうが)する人間の身体の部位がマットレスに当たり接する部分に対応させて調節する場合、例えば、肩とその周辺に当たり接する部分を軟らかく、腰とその周辺に当たり接する部分を硬くする場合、マットレスに内蔵された複数のポケットコイルの、対応するコイルスプリングの硬さを調節する必要がある。しかしながら、ポケットコイルマットレスに内蔵された複数のポケットコイルがマットレスの長手方向に沿って連結して並列していると、ポケットコイルが複数連結して並列したポケットコイル列(
図7では、ポケットコイル列77)ごとに、人間の身体の部位がマットレスに当たり接する部分に対応させてコイルスプリングの硬さを調節することは困難であった。
【0008】
本発明の課題は、マットレスの梱包の際にコイルスプリングの破損を防ぎ、圧縮されたマットレスを元の(本来の)大きさに戻すときにコイルスプリングが復元しやすいとともに、梱包対象のマットレスにおいて、人間の身体の部位がマットレスに当たり接する部分に対応させてマットレスのコイルスプリングの硬さを自在に調節できるマットレス梱包体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するために、本発明のマットレス梱包体は、
ロール状に巻かれたロール状マットレスと、
ロール状マットレスの外周に巻き付けられるフィルムと、
を有し、
ロール状マットレスは、
複数のポケットコイルを内蔵したポケットコイルマットレスと、
ポケットコイルマットレスを圧縮して収容するポケットコイルマットレス収容袋と、
を有し、
ポケットコイルマットレスは、複数のポケットコイルを並列させたポケットコイル集合体を備え、
ポケットコイル集合体は、ポケットコイルマットレスの幅方向(W)に沿って、袋体の内部にコイルスプリングを収容したポケットコイルが複数連結して並列した複数のポケットコイル列からなり、
ポケットコイル集合体において、複数のポケットコイル列の位置に応じて、ポケットコイル列またはポケットコイル列群ごとに、袋体の内部に収容されるコイルスプリングの硬さを調節し、さらに、
ロール状マットレスは、
ポケットコイルマットレス収容袋に圧縮されて収容されたポケットコイルマットレスがロール状に巻かれることによって、形成される。
【0010】
好適には、コイルスプリングの、ばね定数、線径、巻き数、高さおよび形状のうちの少なくとも1つを変えることにより、コイルスプリングの硬さを調節する。
【0011】
好適には、複数のポケットコイル列の位置は、ポケットコイルマットレス上に仰臥する人間の身体の部位とその周辺がポケットコイルマットレスに当たり接する部分に対応している。
【0012】
好適には、少なくとも1つのポケットコイル列または少なくとも1つのポケットコイル列群のそれぞれの袋体の内部に収容されるコイルスプリングはすべて、同じものである。
【0013】
好適には、ロール状マットレスは、
ポケットコイルマットレス収容袋に圧縮されて収容されたポケットコイルマットレスが、ポケットコイルマットレスの中心を長手方向(L)に通る中心線(P)に沿って二つ折りにされ、二つ折りにされたポケットコイルマットレスが、ロール状に巻かれることによって、形成される。
【0014】
そして好適には、ポケットコイル集合体において、ポケットコイルマットレスの中心を長手方向(L)に通る中心線(P)に隣接するポケットコイル同士は、連結していない。
【発明の効果】
【0015】
本発明のマットレス梱包体によれば、マットレスの梱包の際にコイルスプリングの破損を防ぎ、圧縮されたマットレスを元の(本来の)大きさに戻すときにコイルスプリングが復元しやすいとともに、梱包対象のマットレスにおいて、人間の身体の部位がマットレスに当たり接する部分に対応させてマットレスのコイルスプリングの硬さを自在に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るマットレス梱包体を示す斜視図である。
【
図2】梱包対象のポケットコイルマットレスを示す斜視図である。
【
図3】
図2に示したポケットコイルマットレスの内部構造を示す断面図である。
【
図4】
図2に示したポケットコイルマットレスのポケットコイル集合体を示す平面図である。
【
図5】
図2に示したポケットコイルマットレスの使用状態を示す平面図である。
【
図6】
図2に示したポケットコイルマットレスの梱包手順を示す説明図である。
【
図7】従来の梱包対象のポケットコイルマットレスのポケットコイル集合体を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明のマットレス梱包体の実施形態を、図面に従って説明する。なお、図面の縮尺は必ずしも正確ではなく、一部の特徴は誇張または省略されることもある。
【0018】
[マットレス梱包体の概略]
図1に示すように、マットレス梱包体1は、ロール状に巻かれたロール状マットレス2と、このロール状マットレス2の外周に巻き付けられるフィルム5(
図6に詳細に示す。)とを有している。
【0019】
ロール状マットレス2は、梱包対象のポケットコイルマットレス3(
図2~
図4に詳細に示す。)と、ポケットコイルマットレス3を圧縮して収容するポケットコイルマットレス収容袋4(
図6に詳細に示す。)と、片面粘着テープ6とを有している。
【0020】
[ポケットコイルマットレスの構成]
図2~
図4に示すように、ポケットコイルマットレス3は複数のポケットコイル30を内蔵しており、複数のポケットコイル30は並列してポケットコイル集合体39を形成している。
【0021】
ポケットコイル集合体39は、
図3~
図4に示すように、ポケットコイルマットレス3の幅方向(W)に沿って、袋体(ポケット)32の内部にコイルスプリング31を収容したポケットコイル30が複数連結して同一平面上に並列に配置されている。こうして形成されたものが、ポケットコイル列37である(
図4を参照)。
【0022】
ポケットコイル30は、繊維素材(例えば、通気性を有する不織布)を円筒状または樽状に加工した袋体32の内部に、金属線(例えば、鋼線)をらせん状に巻いて形成したコイルスプリング31をポケットコイルマットレス3の厚さ方向(T)に圧縮した状態にして収容するように構成されている。
【0023】
隣り合うポケットコイル30,30同士は、
図3に示すように、隣り合う袋体32,32の側面において、接着剤35(例えば、ホットメルト接着剤)によって接着されている。
ただし、後述するように、ポケットコイルマットレス3を、(
図4に示す)ポケットコイルマットレス3の中心をポケットコイルマットレス3の長手方向(L)に通る中心線(P)に沿って二つ折りにして梱包する場合は、中心線(P)に隣接するポケットコイル30a,30b(
図4を参照)同士は、連結していなくてもよい。すなわち、中心線(P)に隣接するポケットコイル30a,30b同士が、隣り合う袋体の側面において接着されていなくてもよい。
【0024】
図2~
図3に示すように、ポケットコイル集合体39の、ポケットコイルマットレス3の厚さ方向(T)を基準として上面および下面には、クッション部33,33が積層され、ポケットコイル集合体39とクッション部33,33との積層体は、伸縮性を有する生地(例えば、伸縮性を有するニット生地)からなる外装部34,34によって被覆されている。
ポケットコイル集合体39の上面に積層されるクッション部33は、袋体32の上面に対して接着剤36(例えば、ホットメルト接着剤)によって接着されている。一方、ポケットコイル集合体39の下面に積層されるクッション部33は、袋体32の下面に対して接着剤36によって接着されている。
【0025】
[コイルスプリングの硬さの調節]
ポケットコイル集合体39では、
図4に示すように、ポケットコイル30がポケットコイルマットレス3の幅方向(W)に沿って複数連結して並列した複数のポケットコイル列37の位置に応じて、ポケットコイル列37、または、複数のポケットコイル列37のうちの一部の列から構成されるポケットコイル列群(例えば、後述するポケットコイル列群x,y,z)ごとに、袋体の内部に収容されるコイルスプリングの硬さを調節することができる。これにより、ポケットコイルマットレス3の硬さは、人間が仰臥する際に身体の部位が当たり接するマットレス3の部分に対応させて調節される。
【0026】
例えば、
図4~
図5に示すように、ポケットコイルマットレス3において、ユーザー(ポケットコイルマットレス3の使用者)Uの肩とその周辺に当たり接する部分(ゾーンZ)を、脚部に当たり接する部分(ゾーンX)を基準(標準)として軟らかくする場合、複数のポケットコイル列37のうちの一部の列から構成されるポケットコイル列群zのそれぞれのポケットコイル(袋体の内部)に収容されるコイルスプリングの硬さを、ポケットコイル列群xのそれぞれのポケットコイルに収容されるコイルスプリングの硬さよりも軟らかくなるように調節する。ポケットコイル集合体39に占めるポケットコイル列群zの位置は、前述したゾーンZの位置に対応し、ポケットコイル集合体39に占めるポケットコイル列群xの位置は、前述したゾーンXの位置に対応している。
【0027】
また、
図4~
図5に示すように、ポケットコイルマットレス3において、ユーザーUの腰とその周辺に当たり接する部分(ゾーンY)を、脚部に当たり接する部分(ゾーンX)を基準として硬くする場合、複数のポケットコイル列37のうちの一部の列から構成されるポケットコイル列群yのそれぞれのポケットコイルに収容されるコイルスプリングの硬さを、ポケットコイル列群xのそれぞれのポケットコイルに収容されるコイルスプリングの硬さよりも硬くなるように調節する。ポケットコイル集合体39に占めるポケットコイル列群yの位置は、前述したゾーンYの位置に対応している。
【0028】
なお、前述したポケットコイル集合体39およびポケットコイルマットレス3では、ポケットコイル列群およびゾーンはそれぞれ3つであったが、これに限定されない。ポケットコイルマットレス3に設定するゾーンに応じて、ポケットコイル集合体39のポケットコイル列群を適宜設定することができる。
加えて、少なくとも1つのポケットコイル列または少なくとも1つのポケットコイル列群のそれぞれのポケットコイル30に収容されるコイルスプリングはすべて、同じものであってもよい。
【0029】
ポケットコイルの袋体の内部に収容されるコイルスプリングの硬さは、コイルスプリングの、ばね定数、線径、巻き数、高さおよび形状のうちの少なくとも1つを変えることにより、調節する。
【0030】
コイルスプリングの「ばね定数」は、ばねに負荷を加えた時の荷重を、ばねの変形量で除した(割った)比例定数である。コイルスプリングのばね定数の値が大きくなるほど、コイルスプリングは硬くなり、コイルスプリングのばね定数の値が小さくなるほど、コイルスプリングは軟らかくなる。
コイルスプリングの「線径」とは、コイルスプリングの太さを意味する。コイルスプリングの線径が大きくなるほど(コイルスプリングが太くなるほど)、コイルスプリングは硬くなり、コイルスプリングの線径が小さくなるほど(コイルスプリングが細くなるほど)、コイルスプリングは軟らかくなる。また、コイルスプリングの線径が大きくなるほど、コイルスプリングのばね定数の値は大きくなり、コイルスプリングの線径が小さくなるほど、コイルスプリングのばね定数の値は小さくなる。
【0031】
コイルスプリングの「巻き数」とは、コイルスプリングの巻き始め端部からの巻き終わり端部までの回転数を意味する。コイルスプリングのばね定数または線径が同じ場合、コイルスプリングの巻き数が少なくなるほど、コイルスプリングは硬くなり、コイルスプリングの巻き数が多くなるほど、コイルスプリングは軟らかくなる。
コイルスプリングの「高さ」とは、袋体(ポケット)の内部に圧縮した状態にして収容された状態のコイルスプリングの高さを意味する。具体的には、コイルスプリングの「高さ」とは、
図3に示すとおりに、袋体32の内部にコイルスプリング31がポケットコイルマットレス3の厚さ方向(T)に圧縮した状態にして収容された状態の、厚さ方向(T)のコイルスプリング31の高さをいう。なお、前述した「袋体(ポケット)の内部に圧縮した状態にして収容された状態のコイルスプリングの高さ」を、コイルインチと呼ぶこともある。
【0032】
そして、コイルスプリングの「形状」は、コイルスプリングの巻き方によって、種々のものがある。例えば、コイルスプリングの高さ方向から見て上側および下側のコイル内径よりも、コイルスプリングの高さ方向から見て中央部分のコイル内径を大きくする(樽状にする)か、小さくした(くびれるようにした)形状、コイルスプリングの高さ方向から見て上側の巻き数を他の部分の巻き数よりも多くした形状(ドングリ型と呼ぶこともある。)がある。
【0033】
コイルスプリングの硬さは、例えば、コイルスプリングのばね定数のみ、コイルスプリングの線径とコイルスプリングの巻き数、または、コイルスプリングの線径とコイルスプリングの高さを変えることにより、調節することができる。
【0034】
[ポケットコイルマットレス収容袋およびフィルムの構成]
ポケットコイルマットレス3を圧縮して収容するポケットコイルマットレス収容袋4は、ポケットコイルマットレス3の外形よりも一回り程度大きいサイズであり、一辺側に開口部4aが設けられている(
図6を参照)。ポケットコイルマットレス収容袋4は、合成樹脂製の袋(例えば、ビニール袋)であり、耐破裂性、強靭(きょうじん)性および柔軟性とともに、気密性などを有している。
【0035】
ロール状マットレス2の外周に巻き付けられるフィルム5は、帯状の合成樹脂フィルム(例えば、ポリ塩化ビニルフィルム)である。フィルム5の長さおよび幅は、ポケットコイルマットレス3のサイズなどに応じて適宜調節することができる。
【0036】
[ポケットコイルマットレスの梱包方法]
ポケットコイルマットレス3は、次の手順により梱包される。
図6を参照しながら、ポケットコイルマットレス3の梱包方法を説明する。
【0037】
図6(a)に示すように、まず、ポケットコイルマットレス3を、ポケットコイルマットレス収容袋4の中に入れる。
【0038】
次いで、
図6(b)に示すように、ポケットコイルマットレス収容袋4の中に入れたポケットコイルマットレス3を、プレス機(図示しない。)を用いてポケットコイルマットレス収容袋4ごと上方から押圧して、ポケットコイルマットレス収容袋4の中に入れたポケットコイルマットレス3を、その厚さ方向にポケットコイルマットレス収容袋4ごと圧縮することにより、ポケットコイルマットレス収容袋4の内部から開口部4aを介して空気を強制的に排出させる。このように、ポケットコイルマットレス収容袋4の開口部4aから、ポケットコイルマットレス収容袋4の内部およびポケットコイルマットレス3の内部に含まれる空気を排出させた圧縮状態において、ポケットコイルマットレス収容袋4の開口部4aを溶着(例えば、ヒートシール)することによって封止する。これにより、ポケットコイルマットレス収容袋4は密封され、ポケットコイルマットレス収容袋4内のポケットコイルマットレス3はその厚さ方向に圧縮された状態を維持して復元(膨張)することはない。
【0039】
次に、
図6(c)に示すように、ポケットコイルマットレス収容袋4に圧縮されて収容されたポケットコイルマットレス3を、ポケットコイルマットレス3の中心をポケットコイルマットレス3の長手方向(L)に通る中心線(P)[
図6(b)および
図4を参照]に沿って、二つ折りにする。ここで、中心線(P)は、ポケットコイルマットレス3の中心をポケットコイルマットレス3の長手方向(L)に通る仮想上の線であり、本実施形態の理解を容易にするために
図4中に一点鎖線により描かれている。ポケットコイルマットレス3の中心は、ポケットコイル集合体39の中心に対応しているため、中心線(P)は、ポケットコイル集合体39の中心をポケットコイルマットレス3の長手方向(L)に通る仮想上の線でもある。
なお、シングルサイズ(幅約97cm×長さ約195cm)のマットレス、および、これよりも小さいサイズ[例えば、セミシングルサイズ(幅約80cm×長さ約195cm)]のマットレスでは、二つ折りにしなくてもよい。
【0040】
次に、
図6(d)に示すように、二つ折りにされたポケットコイルマットレス3をロール状に巻く。こうして形成されたものが、ロール状マットレス2である。
【0041】
次に、
図6(e)に示すように、ロール状マットレス2の外周にフィルム5を巻き付ける。この際、フィルム5をロール状マットレス2の外周に複数回巻き付けてから、フィルム5をその幅方向に切断してもよい。このようにすることにより、ロール状マットレス2の巻き終わりからフィルム5がロール状マットレス2の外周に複数回巻き付けられているため、ポケットコイルマットレス収容袋4に穴が開いたとしても、ロール状マットレス2の形態が維持される。
【0042】
そして、
図6(f)に示すように、ロール状マットレス2の外周に(フィルム5の上から)片面粘着テープ6をらせん状に巻き付け、フィルム5の巻き終わり端部をその下層のフィルム5に片面粘着テープ6により留めてほぐれないようにして、ロール状マットレス2の形態を維持する。
なお、ロール状マットレス2の外周に(フィルム5の上から)らせん状に巻き付けて、ロール状マットレス2の形態を維持するための手段は、片面粘着テープに限定されない。
【0043】
このようにして、
図1に示すマットレス梱包体1が得られる。
なお、必要に応じて、前述したように梱包されたロール状マットレス2を、段ボール箱に入れてもよい。このようにすることにより、ロール状マットレス2の搬送時の衝撃によるロール状マットレス2およびポケットコイルマットレス収容袋4の破損などが防止される。
【0044】
[梱包されたポケットコイルマットレスを使用可能な状態にする方法]
前述のように梱包されたポケットコイルマットレス3を使用するには、マットレス梱包体1の梱包を解き、ロール状マットレス2の外周に巻き付けられたフィルム5を剥がし、ロール状マットレス2の巻き取り状態を解除し、二つ折りにされたポケットコイルマットレスを展開し、ポケットコイルマットレス収容袋4の開口部4aを切り開いてポケットコイルマットレス収容袋4を開封し、ポケットコイルマットレス収容袋4からポケットコイルマットレス3を取り出す。次いで、ポケットコイルマットレス収容袋4から取り出したポケットコイルマットレス3に対して、角部を整えたり、穏やかに揺らしたりする。すると、ポケットコイルマットレス3に内蔵されたコイルスプリングが復元し、ポケットコイルマットレス3は、元の(本来の)大きさに戻り、使用可能な状態となる。
【0045】
[実施形態の効果]
本実施形態に係るマットレス梱包体1によれば、梱包対象のポケットコイルマットレス3が、複数のポケットコイル30を並列させたポケットコイル集合体39を備え、ポケットコイル集合体39が、ポケットコイルマットレス3の幅方向(W)に沿って、袋体32の内部にコイルスプリング31を収容したポケットコイル30が複数連結して並列した複数のポケットコイル列37からなっている。
このような構成を有することから、本実施形態に係るマットレス梱包体1では、ポケットコイルマットレス3をポケットコイルマットレス収容袋4に圧縮して収容した後、これをロール状に巻いて梱包する際に、複数のポケットコイル70がポケットコイルマットレス7の長手方向に沿って連結して並列しているポケットコイルマットレス7(
図7を参照)とは異なり、ポケットコイルマットレス3をロール状に巻くことにより袋体32が引っ張られることがなく、ポケットコイル30が転倒したり傾斜したりして袋体32内のコイルスプリング31が破損するのを防ぐことができる。
【0046】
さらに、前述の構成を有することにより、本実施形態に係るマットレス梱包体1では、梱包されたポケットコイルマットレス3を使用可能な状態にするために、マットレス梱包体1の梱包を解き、マットレス3が収容されたポケットコイルマットレス収容袋4を開封して、圧縮されたマットレス3を元の(本来の)大きさに戻すとき、複数のポケットコイル70がポケットコイルマットレス7の長手方向に沿って連結して並列しているポケットコイルマットレス7(
図7を参照)とは異なり、コイルスプリング31が復元しやすいため、ポケットコイルマットレス3が元の大きさに戻るまでに時間がかからず、ポケットコイルマットレス収容袋4を開封してからポケットコイルマットレス3を比較的早く使用することができる。
【0047】
加えて、本実施形態に係るマットレス梱包体1によれば、梱包対象のポケットコイルマットレス3が、複数のポケットコイル30を並列させたポケットコイル集合体39を備え、ポケットコイル集合体39が、ポケットコイルマットレス3の幅方向(W)に沿って、袋体32の内部にコイルスプリング31を収容したポケットコイル30が複数連結して並列した複数のポケットコイル列37からなり、ポケットコイル集合体39において、複数のポケットコイル列37の位置に応じて、ポケットコイル列37またはポケットコイル列群(例えば、ポケットコイル列群x,y,z)ごとに、袋体32の内部に収容されるコイルスプリング31の硬さを調節する。
このような構成を有することから、本実施形態に係るマットレス梱包体1では、ポケットコイルマットレス3上に仰臥する人間の身体の部位(例えば、肩とその周辺、腰とその周辺)がポケットコイルマットレス3に当たり接する部分に対応させて、ポケットコイルマットレス3に内蔵されたコイルスプリング31の硬さを自在に調節することができる。このため、ユーザーの体形または体格、体重、健康状態、好みなどに合わせて、ポケットコイルマットレス3のカスタマイズが可能である。
【0048】
なお、本実施形態に係るマットレス梱包体1では、少なくとも1つのポケットコイル列または少なくとも1つのポケットコイル列群のそれぞれのポケットコイル30(袋体32の内部)に収容されるコイルスプリング31はすべて、同じものであってもよい。このため、ポケットコイルマットレス3の硬さを、マットレス3上に仰臥する人間の身体の部位がマットレス3に当たり接する部分に対応させて調節する場合に、複数のポケットコイル70がポケットコイルマットレス7の長手方向に沿って連結して並列しているポケットコイルマットレス7(
図7を参照)とは異なり、1つのポケットコイル列内または1つのポケットコイル列群内において、ポケットコイル30ごとに、収容されるコイルスプリング31の硬さを調節する必要はない。
【0049】
例えば、ポケットコイルマットレスの、肩とその周辺に当たり接する部分(
図5では、ゾーンZ)は、ポケットコイルマットレスの幅方向(
図5では、符号W)にわたって分布している。これに対応させて、
図7に示すポケットコイル集合体79において、ポケットコイルマットレス7の長手方向に沿って連結して並列している複数のポケットコイル70(袋体の内部)に収容されるコイルスプリングの硬さを調節する場合、1つのポケットコイル列内には、肩とその周辺に当たり接する部分(
図5では、ゾーンZ)の位置に対応するポケットコイルだけでなく、肩とその周辺に当たり接する部分以外の部分(
図5では、ゾーンXおよびY)の位置に対応するポケットコイルも含まれるため、1つのポケットコイル列内において、ポケットコイル70ごとに、収容されるコイルスプリングの硬さを調節する必要がある。
これに対して、本実施形態に係るマットレス梱包体1では、ポケットコイルマットレス3の幅方向(W)に沿って、ポケットコイル30が複数連結して並列しているため、(
図3~
図5に示すように)前述のゾーンZに対応して位置するポケットコイル列群zのそれぞれのポケットコイル30(袋体32の内部)に収容されるコイルスプリング31は、ポケットコイル30ごとに硬さを調節する必要はなく、すべて同じものであってもよい。
【0050】
また、本実施形態に係るマットレス梱包体1によれば、ポケットコイル集合体39において、ポケットコイルマットレス3の中心を長手方向(L)に通る中心線(P)に隣接するポケットコイル30a,30b(
図4を参照)同士は、連結していなくてもよい。すなわち、中心線(P)に隣接するポケットコイル30a,30b同士が、隣り合う袋体の側面において接着されていなくてもよい。
このような構成を有することから、ポケットコイルマットレス3を中心線(P)に沿って(ポケットコイル30aと30bとの間から)二つ折りにして梱包する場合、中心線(P)に隣接するポケットコイル30a,30bにおいて、隣り合う袋体の側面間を接着する手間が省ける。これにより、ポケットコイルマットレス3を中心線(P)に沿って二つ折りにする際に、ポケットコイルマットレス3を折りやすくすることができる。
【0051】
本発明のマットレス梱包体に関して、実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は前述の実施形態に記載されている構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲においてその構成を変更することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 マットレス梱包体
2 ロール状マットレス
3 ポケットコイルマットレス
4 ポケットコイルマットレス収容袋
5 フィルム
30 ポケットコイル
31 コイルスプリング
32 袋体(ポケット)
37 ポケットコイル列
39 ポケットコイル集合体
x,y,z ポケットコイル列群
L ポケットコイルマットレスの長手方向
W ポケットコイルマットレスの幅方向
P ポケットコイルマットレスの中心を長手方向に通る中心線