(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162587
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】チーズ用結着防止剤、チーズ及びチーズの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23C 19/16 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
A23C19/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067464
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】武村 翔太
(72)【発明者】
【氏名】松本 理加
【テーマコード(参考)】
4B001
【Fターム(参考)】
4B001AC03
4B001BC99
4B001EC99
(57)【要約】
【課題】チーズ製造時の粉舞いが抑制されたチーズ用結着防止剤、並びに、前記チーズ用結着防止剤を用いたチーズ、チーズの製造方法、及びチーズ製造時の粉舞い及び保存中のチーズ同士の結着を抑制する方法を提供する。
【解決手段】チーズ用結着防止剤は、ゆるめ見掛け比重が0.25g/cc以上である粉体を含む。チーズは、前記チーズ用結着防止剤が表面に付着している。チーズの製造方法は、前記チーズ用結着防止剤をチーズ表面に付着させることを含む。チーズ製造時の粉舞い及び保存中のチーズ同士の結着を抑制する方法は、前記チーズ用結着防止剤をチーズ表面に付着させることを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゆるめ嵩密度が0.25g/cc以上である粉体を含む、チーズ用結着防止剤。
【請求項2】
平均粒径が90μm以下である、請求項1に記載のチーズ用結着防止剤。
【請求項3】
前記粉体が多糖類である、請求項1又は2に記載のチーズ用結着防止剤。
【請求項4】
前記粉体が粉末状セルロースである、請求項1~3のいずれか一項に記載のチーズ用結着防止剤。
【請求項5】
前記粉体が結晶セルロースである、請求項1~4のいずれか一項に記載のチーズ用結着防止剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のチーズ用結着防止剤が表面に付着している、チーズ。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載のチーズ用結着防止剤をチーズ表面に付着させることを含む、チーズの製造方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載のチーズ用結着防止剤をチーズ表面に付着させることを含む、チーズ製造時の粉舞い及び保存中のチーズ同士の結着を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チーズ用結着防止剤、チーズ及びチーズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チーズは、べたつきの強いものが多く、特にシュレッドチーズのような表面積の大きい形状のチーズにおいては、保存中にチーズ同士が結着してしまうことがある。この結着を防止するために、結着防止剤として様々な粉体をチーズ表面に付着させることが行われている。
【0003】
このような結着防止剤として、例えば、特許文献1には、粉末セルロースやジェランガム、カードランを用いることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、非木材パルプを原料とすることで、食感に優れ、粉体流動性が良好で、粉舞いの少ない、粉末セルロースが開示されている。
【0005】
特許文献3には、加工澱粉からなり、結着防止剤の使用量がチーズ質量の1.0~2.5質量%である結着防止剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平7-095921号公報
【特許文献2】特開2013-188187号公報
【特許文献3】特開2011-019453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されるような粉末セルロースは、比重が小さく、チーズに付着させる際の粉舞いが激しいことから、飛散による歩留の低下や空気清浄フィルターの詰まりが発生してしまうという問題がある。
特許文献2には、粉舞いの少ない粉末セルロースが開示されているものの、非木材パルプを用いることで粉舞いが抑えられる明確な理由は不明とされており、粉末セルロースの物性について具体的な検討はなされていない。
特許文献3に記載されるような加工澱粉においても、比重が小さく、チーズに付着させる際の粉舞いが激しいことから、飛散による歩留の低下や空気清浄フィルターの詰まりが発生してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、チーズ製造時の粉舞いが抑制されたチーズ用結着防止剤、並びに、前記チーズ用結着防止剤を用いたチーズ、チーズの製造方法、及びチーズ製造時の粉舞い及び保存中のチーズ同士の結着を抑制する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) ゆるめ嵩密度が0.25g/cc以上である粉体を含む、チーズ用結着防止剤。
(2) 平均粒径が90μm以下である、(1)に記載のチーズ用結着防止剤。
(3) 前記粉体が多糖類である、(1)又は(2)に記載のチーズ用結着防止剤。
(4) 前記粉体が粉末状セルロースである、(1)~(3)のいずれか一つに記載のチーズ用結着防止剤。
(5) 前記粉体が結晶セルロースである、請求項1~4のいずれか一項に記載のチーズ用結着防止剤。
(6) 請求項1~5のいずれか一項に記載のチーズ用結着防止剤が表面に付着している、チーズ。
(7) 請求項1~5のいずれか一項に記載のチーズ用結着防止剤をチーズ表面に付着させることを含む、チーズの製造方法。
(8) 請求項1~5のいずれか一項に記載のチーズ用結着防止剤をチーズ表面に付着させることを含む、チーズ製造時の粉舞い及び保存中のチーズ同士の結着を抑制する方法。
【発明の効果】
【0010】
上記態様のチーズ用結着防止剤によれば、チーズ製造時の粉舞いが抑制されたチーズ用結着防止剤を提供することができる。上記態様のチーズ及びチーズの製造方法によれば、チーズ製造時の粉舞い及び保存中のチーズ同士の結着が抑制されたチーズが得られる。上記態様の方法によれば、チーズ製造時の粉舞い及び保存中のチーズ同士の結着を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施することができる。
【0012】
<チーズ用結着防止剤>
チーズ用結着防止剤とは、一般に、チーズ表面に付着させることで、チーズ同士の結着を防止するためのものである。チーズ用結着防止剤がチーズ表面を覆うことで、チーズ同士の接触面積を小さくする他、チーズ中の水分及び油分によるべたつきを抑え、チーズ表面をサラサラの状態に保つことで、チーズ同士の結着を防止することができる。
【0013】
本実施形態のチーズ用結着防止剤は、ゆるめ嵩密度が0.25g/cc以上である粉体を含む。
【0014】
本実施形態のチーズ用結着防止剤は、上記構成を有することで、保存中のチーズ同士の結着を抑制しながら、チーズ製造時の粉舞いを抑制することができる。
【0015】
[粉体]
粉体のゆるみ嵩密度は、0.25g/cc以上であり、0.30g/cc以上であることが好ましく、0.35g/cc以上であることがより好ましい。一方、ゆるみ嵩密度の上限は特に限定されないが、例えば、0.90g/ccとすることができ、0.70g/ccであることが好ましく、0.50g/ccであることがより好ましい。ゆるみ嵩密度が上記下限値以上であることで、チーズ製造時の粉舞いを抑制することができる。一方で、ゆるみ嵩密度が上記上限値以下であることで、チーズにより均一に粉体を付着させることができる。すなわち、結着防止性がより良好なものとなる。
ゆるみ嵩密度は、例えば、パウダーテスター(PT-R:ホソカワミクロン製)を用いて測定することができる。
【0016】
粉体の平均粒径は、90μm以下であることが好ましく、80μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがより好ましい。一方、平均粒径の下限は特に限定されないが、例えば、1μmとすることができ、3μmであることが好ましく、4μmであることがより好ましい。
すなわち、粉体の平均粒径は、1μm以上90μm以下であることが好ましく、3μm以上80μm以下であることが好ましく、4μm以上70μm以下であることがより好ましい。
平均粒径が上記上限値以下であることで、粉体によるざらざらとした食感がより感じづらくなり、チーズの食感への影響をより少ないものとすることができる。一方で、平均粒径が上記下限値以上であることで、保存中のチーズ同士の結着をより効果的に抑制することができる。
平均粒径は、例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-950:堀場製作所製)を用いて測定することができる。
【0017】
粉体としては、各種の穀粉又は多糖類粉体が挙げられる。
穀粉としては、例えば、小麦粉、薄力粉、中力粉、強力粉、セモリナ粉、コーンフラワー、コーングリッツ、米粉、餅粉、ジャガイモ粉、サツマイモ粉、キャッサバ粉、ソバ粉、ソルガム粉等が挙げられる。
多糖類粉体としては、例えば、キサンタンガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、カードラン、ペクチン、カラギーナン、グァーガム、アラビアガム、寒天、アルギン酸、アルギン酸塩、アルギン酸エステル、カラヤガム、大豆多糖類、スクシノグリカン、グルコマンナン、サイリウムシードガム、澱粉(例えば、ばれいしょ澱粉、かんしょ澱粉、コーンスターチ等)、加工澱粉、粉末デキストリン、イヌリン、キチン、キトサン、ヘミセルロース、リグニン、粉末状セルロース等が挙げられる。ここに挙げられたものは一例であり、これらに限定されるものではない。また、これらの粉体を1種用いてもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0018】
中でも、粉体としては、多糖類粉体が好ましく、チーズの未加熱又は加熱時の食感に優れることから、粉末状セルロースがより好ましい。
【0019】
粉末状セルロースとしては、例えば、粉末セルロース、結晶セルロース、発酵セルロース等が挙げられる。また、これらの粉末状セルロースは単体であってもよく、或いは、他の多糖類と複合体を形成したものであってもよい。
【0020】
中でも、粉末状セルロースとしては、結晶セルロースが好ましい。結晶セルロースを用いることで、より柔らかい食感となることから、チーズの食感への悪影響をより効果的に抑えることができる。
【0021】
本明細書において、結晶セルロースとは、結晶化度が10%超以上であるセルロースを意味する。なお、ここでいう「結晶化度」とは、X線回折図上の結晶散乱ピーク面積の割合として定義されるものである。
【0022】
セルロースの結晶形としてはI型、II型、III型、IV型等が知られているが、中でも、セルロースの結晶形としては、I型であることが好ましい。I型はラミー、コットンリンター、木材パルプ等の天然セルロースと同じ結晶構造であるため、天然資源を用いるだけで特別な処理が不要でありコスト及び環境への影響の点で優れている。
【0023】
(結晶セルロースの製造方法)
ゆるみ嵩密度が上記数値範囲内である結晶セルロースは、例えば、特許第6210981号公報(参考文献1)に記載の方法を用いて製造することができる。
具体的には、結晶セルロースは、天然セルロース質物質を、従来よりも高い温度で加水分解することにより得られる。すなわち、塩酸濃度0.05質量%以上0.15質量%以下、反応温度125℃以上150℃以下、所定の反応温度に到達後、110分間超150分間以下で加水分解するか、又は塩酸濃度0.15質量%超0.4質量%以下、反応温度125℃以上150℃以下、所定の反応温度に到達後、50分間以上150分間以下で加水分解することにより得られる。
【0024】
上記の加水分解条件下で、攪拌処理を施すことにより、加水分解後のセルロース分散液の体積平均粒子径を70μm以上150μm以下とすることが好ましい。該セルロース分散液を脱水後、純水で数回洗浄し、アルカリで中和した後、再び脱水することにより、固形分20質量%以上50質量%以下のセルロースケークとすることが好ましい。
【0025】
次いで、上記セルロースケークを純水で固形分10質量%以上25質量%以下のセルローススラリーとし、攪拌処理等により、乾燥前のセルロース分散液の体積平均粒子径を40μm以上50μm未満とした後、噴霧乾燥することが好ましい。乾燥前のセルロース分散液の体積平均粒子径が上記下限値以上であることで、乾燥後のセルロース粉末の流動性がより向上し、一方で、上記上限値未満であることで、繊維性がより発現しにくく、流動性がより向上する。
【0026】
噴霧乾燥温度は常用される入口温度150℃以上300℃以下が使用できる。入口温度が高いとセルロース粒子が焦げやすくなる方向であるが、本製造方法で得られる結晶セルロースはこの温度範囲においても、従来の結晶セルロースより焦げにくいという特性を有する。
【0027】
反応中或いはその後工程における攪拌は、セルロース繊維を短くする作用があり、攪拌力を強くすると粒子の体積平均粒子径を小さくでき、攪拌力を弱くすると体積平均粒子径を大きくできる。所望の体積平均粒子径となるよう、適宜、攪拌力を制御することが可能である。
【0028】
攪拌力の大きさは、攪拌槽の大きさ、形状、攪拌翼の大きさ、形状、回転数、邪魔板数等を変更することで制御可能である。
【0029】
セルロース分散液を調製する際には水の他、得られる結晶セルロースが有する特性を妨げない範囲であれば、有機溶媒を少量含む水であってもよい。
【0030】
また、結晶セルロースとしては、市販のものを用いてもよい。市販の結晶セルロースとしては、例えば、旭化成株式会社製の「FD-301」、「FD-101」、「PH-102」等が挙げられる。これらをミキサー等を用いて、平均粒径をより小さく調製したものも用いることができる。
【0031】
[その他成分]
本実施形態のチーズ用結着防止剤は、当該チーズ用結着防止剤が奏する効果を妨げない範囲で、酸化防止剤、保存料、調味料等のその他の成分を更に含むことができる。これら成分の含有量は、当該チーズ用結着防止剤が奏する効果を妨げない範囲で、当業者が適宜設定することができる。
【0032】
<チーズ>
本実施形態のチーズは、上記チーズ用結着防止剤が表面に付着しているものである。
【0033】
本実施形態のチーズは、上記構成を有することで、チーズ製造時の粉舞い及び保存中のチーズ同士の結着が抑制されたものである。
【0034】
本明細書におけるチーズとは、牛乳、水牛乳、羊乳、山羊乳といった動物の乳に、菌や酵素を作用させることにより凝固させたもののことである。また、本明細書におけるチーズには、豆乳や植物性油脂を原料としたアナログチーズも包含される。さらに、本明細書のチーズにおいて、加熱処理の有無や軟質及び硬質の違い、熟成の有無は問わない。
中でも、上記チーズ用結着防止剤が添加される対象のチーズ、すなわち、本実施形態のチーズとしては、シュレッドチーズが好ましい。なお、ここでいうシュレッドチーズとは、上述したチーズを棒状又は板状に、細断又は成形したものを意味する。
【0035】
本実施形態のチーズにおいて、上記チーズ用結着防止剤の付着量は、チーズの質量に対して、0.5質量%以上3質量%以下であることが好ましく、1質量%以上2質量%以下であることがより好ましい。チーズ用結着防止剤の付着量が上記下限値以上であることで、チーズ同士の結着をより十分に防止することができる。一方で、チーズ用結着防止剤の付着量が上記上限値以下であることで、粉体によるざらざらとした食感を生じることをより効果的に抑制することができる。
【0036】
<チーズの製造方法>
本実施形態のチーズの製造方法は、上記チーズ用結着防止剤をチーズ表面に付着させることを含む。
【0037】
本実施形態のチーズの製造方法は、上記構成を有することで、チーズ製造時の粉舞い及び保存中のチーズ同士の結着が抑制されたチーズが得られる。すなわち、本実施形態のチーズの製造方法は、チーズ製造時の粉舞い及び保存中のチーズ同士の結着を抑制する方法ということもできる。
【0038】
本実施形態のチーズの製造方法としては、例えば、公知の方法を用いてチーズを製造した後、得られたチーズに上記チーズ用結着防止剤を添加して、チーズ表面にチーズ用結着防止剤を付着させる方法等が挙げられる。
【0039】
チーズの種類がシュレッドチーズである場合において、ナチュラルチーズを原料とするシュレッドチーズの一般的な製造方法を以下のとおり例示する。
ナチュラルチーズを1種又は2種以上配合し、これにクエン酸ナトリウム及びリン酸ナトリウム等の融解塩を添加又は添加せず加熱溶融し、この時必要に応じて、カゼイン、植物性油脂、脱脂粉乳、大豆蛋白等を添加し、乳化物を得る。得られた乳化物をブロック状に充填及び冷却し、その後、一定の形状に切断し、成形して、シュレッドチーズを得る。こうして得られたシュレッドチーズに、上記チーズ用結着防止剤を添加して混合することで、チーズ用結着防止剤が付着したシュレッドチーズが得られる。上記チーズ用結着防止剤の添加量としては、上述したチーズ用結着防止剤の付着量となるような量である。
【実施例0040】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
<原料>
(粉体)
結晶セルロースA:旭化成社製、FD-301
結晶セルロースB:旭化成社製、FD-101
結晶セルロースC:結晶セルロースBをミキサーにより粉砕したもの
結晶セルロースD:旭化成社製、PH-102
結晶セルロースE:旭化成社製、ST-100
粉末セルロースA:日本製紙社製、W-250
粉末セルロースB:日本製紙社製、W-300G
粉末セルロースC:日本製紙社製、W-400G
コーンスターチ:トップバリュ コーンスターチ
小麦粉:トップバリュ 薄力小麦粉
ジェランガム:CPKelco社製、LT-100
【0042】
<物性の測定方法及び評価方法>
実施例及び比較例で用いた粉体のゆるめ嵩密度及び平均粒径の測定方法、並びに、チーズの結着防止性及び食感、粉体の粉舞いの評価方法を以下に示す。
【0043】
[物性1]
(ゆるめ嵩密度)
ゆるめ嵩密度は、パウダーテスター(PT-R:ホソカワミクロン製)を用いて、規定の受け器へ力を加えずに充填し、すりきりした際の質量を測定した後、得られた質量の測定値を受け器の容量で除することで算出した。
【0044】
[物性2]
(平均粒径)
平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-950:堀場製作所製)の乾式ユニットを用いて、乾式条件にて測定した。
【0045】
[評価1]
(結着防止性)
実施例及び比較例で得られたチーズを冷蔵庫に1週間保存し、目視により、以下に示す評価基準に従って、結着防止性を評価した。
【0046】
(評価基準)
×:半数以上のチーズが結着して団子状となっている。
△:一部のチーズが結着して団子状となっている。
○:チーズ同士の結着がほぼ生じていない。
【0047】
[評価2]
(食感)
結着防止性の評価に使用した試料について、未加熱の状態について、以下に示す評価基準に従って、食感の評価を行った。
【0048】
(評価基準)
×:ざらつきやべたつきを明確に感じる。
△:ざらつきやべたつきをわずかに感じる。
○:チーズそのものと同等である。
【0049】
[評価3]
(粉舞い)
粉舞いの評価は、粉体の分散度の測定により実施した。粉体の分散度は、パウダーテスター(PT-R:ホソカワミクロン製)を用いて、67cmの高さより1gの粉体を落下させ、落下地点に設置したウォッチグラスの外側に落下した粉体の、全粉体質量に対する割合により算出した。算出された分散度の値について、以下に示す評価基準に従って、粉舞いの評価を行った。
【0050】
(評価基準)
×:分散度が40質量%超
△:分散度が20質量%超40質量%以下
○:分散度が20質量%以下
【0051】
[実施例1]
市販のプロセスチーズを長さ20mm×8mm×2mmのサイズに裁断し、シュレッドチーズとした。結着防止剤として、市販の結晶セルロースAを使用し、シュレッドチーズに対して、0.5質量%添加して均一に混合し、その200gをポリエチレン袋に密封し、冷蔵庫に1週間保存した。
【0052】
[実施例2~10及び比較例1~7]
使用した結着防止剤の種類及び添加量を表1~表3に示すとおりとした以外は、実施例1と同様の方法を用いて、結着防止剤が表面に付着したチーズを製造した。
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
表1~表3に示すように、嵩密度が0.25g/cc以上である粉体をチーズ用結着防止剤として用いたチーズ(実施例1~11)では、チーズ同士の結着が防止され、チーズ製造時の粉舞いが抑制されていた。
また、嵩密度が異なる粉体をチーズ用結着防止剤として用いたチーズ(実施例1及び4、実施例2及び5、並びに、実施例3及び6)の比較において、嵩密度が大きいほど、チーズ製造時の粉舞いをより抑制できる傾向がみられた。
また、結着防止剤の添加量が異なるチーズ(実施例1~3及び実施例4~6)の比較において、添加量が増加するほど、結着防止性がより良好になる傾向がみられた。
また、平均粒径が異なる結晶セルロースをチーズ用結着防止剤として用いたチーズ(実施例5及び11)の比較において、平均粒径が小さいほど、結着防止性、及び食感がより良好になる傾向がみられた。
【0057】
一方で、嵩密度が0.25g/cc未満である粉体をチーズ用結着防止剤として用いたチーズ(比較例1~7)では、チーズ同士の結着は防止できたが、分散度が40質量%超と非常に高く、チーズ製造時の粉舞いを抑制できなかった。
また、粉末セルロースをチーズ用結着防止剤として用いたチーズ(比較例1~3及び5~7)の比較において、配合量が多くなるほど食感が劣る傾向がみられた。
本実施形態のチーズ用結着防止剤によれば、チーズ製造時の粉舞いが抑制されたチーズ用結着防止剤を提供することができる。本実施形態のチーズ及びチーズの製造方法によれば、チーズ製造時の粉舞い及び保存中のチーズ同士の結着が抑制されたチーズが得られる。本実施形態の方法によれば、チーズ製造時の粉舞い及び保存中のチーズ同士の結着を抑制することができる。