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特開2022-162620スターリングエンジン及びスターリングエンジン発電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162620
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】スターリングエンジン及びスターリングエンジン発電装置
(51)【国際特許分類】
   F02G 1/055 20060101AFI20221018BHJP
   F02G 1/043 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
F02G1/055 E
F02G1/043 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067512
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀和
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 寛志
(72)【発明者】
【氏名】市川 靖
(72)【発明者】
【氏名】内村 允宣
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅紀
(57)【要約】
【課題】従来のスターリングエンジンは、構造全体が大型で、発熱体の過剰熱を有効活用することが難しいので、車両への適用が困難であった。
【解決手段】作動ガスの加熱器2、再生器3及び冷却器4を介して、作動ガスの膨張空間5Aと圧縮空間5Bとを連通させたスターリングエンジン1において、加熱器2が、作動ガスのガス流通管11と、ガス流通管11の中間部を通過させる筐体12とを備えると共に、筐体12内に、ガス流通管11の外面に配置した発熱材料層13と、その外面に配置した加熱体14と、水素ガスの供給空間15とを備えた構成にし、構造のコンパクト化を実現すると共に、過剰熱を有効活用して出力密度の向上を実現する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動ガスの加熱器、再生器及び冷却器を介して、前記作動ガスの膨張空間と圧縮空間とを連通させた構造を有するスターリングエンジンにおいて、
前記加熱器が、前記作動ガスを流通させるガス流通管と、前記ガス流通管の中間部を通過させる筐体とを備えると共に、
前記筐体内に、前記ガス流通管の外面に配置され且つ水素を吸蔵する材料を含む発熱材料層と、前記発熱材料層の外面に配置され且つガス透過性を有する加熱体と、前記加熱体の外側に形成した水素ガスの供給空間とを備えていることを特徴とするスターリングエンジン。
【請求項2】
前記筐体内における前記ガス流通管が、その外面に、規則的な凹凸構造を形成したことを特徴とする請求項1に記載のスターリングエンジン。
【請求項3】
前記発熱材料層及び前記加熱体が、前記ガス流通管の凹凸構造に沿って形成した凹凸構造を成していることを特徴とする請求項2に記載のスターリングエンジン。
【請求項4】
前記加熱体が、メッシュ構造であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のスターリングエンジン。
【請求項5】
前記発熱材料層が、水素吸蔵機能を有する合金材料で形成してあり、
前記合金材料の前記水素吸蔵機能は、前記水素ガスの存在下で加熱することで水素を吸蔵して水素固溶体又は水素化物になり、前記水素固溶体又は前記水素化物の相転移の繰り返しにより前記水素の吸蔵及び放出を繰り返すことで過剰発熱する機能であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のスターリングエンジン。
【請求項6】
前記筐体の外面に、熱反射材料から成る熱反射層を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のスターリングエンジン。
【請求項7】
前記筐体の外面に、断熱材料から成る断熱層を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のスターリングエンジン。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のスターリングエンジンと、前記スターリングエンジンが出力する機械的エネルギを電気エネルギに変換する発電機とを備えたことを特徴とするスターリングエンジン発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とくに、スターリングエンジンの改良に関し、また、スターリングエンジンを備えたスターリングエンジン発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スターリングエンジンは、膨張シリンダと圧縮シリンダとの間に、作動ガスの加熱器、再生器及び冷却器を介装した構造を有する。スターリングエンジンは、作動ガスの膨張及び圧縮により、各シリンダに収容したパワーピストンを往復動させると共に、各パワーピストンに連結したコネクティングロッドを介してクランクシャフトを回転させる。このスターリングエンジンは、α型と呼ばれるもので、他に、同一シリンダ内にパワーピストンとディスプレーサピストンを収容したβ型や、連通した2つのシリンダにパワーピストンとディスプレーサピストンを夫々収容したγ型などが周知である。
【0003】
スターリングエンジンは、例えば、特許文献1に記載された熱利用システムに用いられている。特許文献1の熱利用システムは、多孔質体、水素透過膜、及びプロトン導電体のうち少なくともいずれかにより形成される支持体と、この支持体に支持された水素吸蔵金属又は水素吸蔵合金により形成された多層膜から成り且つ水素の吸蔵及び放出により過剰熱を発生する発熱体を格納した格納部とを備えている。また、熱利用システムは、発熱体の温度を調整する温度調整部と、格納部から発生した過剰熱の熱媒体流通部とを備え、スターリングエンジンの高温部に熱媒体を供給する。スターリングエンジンは、上記のβ型であって、出力側に発電機が接続してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6749035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のスターリングエンジンを備えた熱利用システムは、過剰熱を発生する発熱体が、スターリングエンジンから独立した系にあり、配管を介して熱媒体を輸送して、熱対流のみによりスターリングエンジンの高温部と熱交換させている。このため、上記の熱利用システムでは、構造全体が大型になると共に、配管における熱漏れ等により、過剰熱を充分に有効活用することが難しく、過剰熱を有効活用するには大型の発熱体が必要である。
【0006】
以上のことから、従来の熱利用システムは、スターリングエンジンやスターリングエンジン発電装置に適用しようとしても、構造が大型であると共に、出力密度が低下する虞があるので、車両への適用(車載化)が困難であり、このような問題点を解決することが課題であった。
【0007】
本発明は、上記従来の状況に鑑みて成されたもので、構造のコンパクト化を実現すると共に、過剰熱を有効活用して出力密度の向上を実現することができ、車載化に好適なスターリングエンジン及びスターリングエンジン発電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係わるスターリングエンジンは、作動ガスの加熱器、再生器及び冷却器を介して、作動ガスの膨張空間と圧縮空間とを連通させた構造を有する。このスターリングエンジンは、加熱器が、作動ガスを流通させるガス流通管と、ガス流通管の中間部を通過させる筐体とを備えると共に、筐体内に、ガス流通管の外面に配置され且つ水素を吸蔵する材料を含む発熱材料層と、発熱材料層の外面に配置され且つガス透過性を有する加熱体と、加熱体の外側に形成した水素ガスの供給空間とを備えていることを特徴としている。上記構成において、膨張空間及び圧縮空間は、パワーピストンを往復動自在に収容したシリンダの内部に形成される。
【0009】
本発明に係わるスターリングエンジン発電装置は、上記のスターリングエンジンと、スターリングエンジンが出力する機械的エネルギを電気エネルギに変換する発電機とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係わるスターリングエンジンは、作動ガスの膨張空間と圧縮空間との連通させる加熱器、再生器及び冷却器のうちの加熱器をガス流通管及び筐体により構成し、筐体の内部に水素ガスを供給する。筐体の内部では、加熱体により発熱材料層を加熱しつつ、発熱材料層に水素ガスを供給することで、発熱材料層で過剰熱を発生させる。これにより、スターリングエンジンは、発生した過剰熱を熱伝導によってガス流通管に伝えることで作動ガスを加熱し、加熱した作動ガスを膨張空間に供給する。
【0011】
本発明に係わるスターリングエンジンは、膨張空間と圧縮空間とを連通させる加熱器で過剰熱を発生させ、過剰熱の熱伝導により作動ガスを直接的に加熱するので、構造がコンパクトになると共に、発生した過剰熱を有効に利用して出力密度を向上させることができ、車載化するのに好適なものとなる。
【0012】
また、本発明に係わるスターリングエンジン発電装置は、上記のスターリングエンジン、すなわち出力密度の向上を実現するスターリングエンジンが出力する回転エネルギを発電機に入力して電気エネルギに変換することとなり、車載化するのに好適な構造のコンパクト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係わるスターリングエンジン及びスターリングエンジン発電装置の第1実施形態を示す説明図(A)及び加熱器を説明する正面断面図(B)である。
図2】加熱器の側面断面図(A)及び加熱体の一例を示す正面図(B)である。
図3】スターリングエンジンの第2実施形態を説明する正面断面図である。
図4】スターリングエンジンの第3実施形態を説明する正面断面図である。
図5】スターリングエンジンの第4実施形態を説明する正面断面図である。
図6】スターリングエンジンの第5実施形態を説明する正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〈第1実施形態〉
図1(A)に示すスターリングエンジン1は、作動ガスの加熱器2、再生器3、及び冷却器4を介して、作動ガスの膨張空間5Aと圧縮空間5Bとを連通させた構造を有する。膨張空間5A、加熱器2、再生器3、冷却器4及び圧縮空間5A、並びにこれらを順に結ぶ配管には、ヘリウムガス、水素ガス又は窒素ガス等の作動ガスが封入してある。
【0015】
図示のスターリングエンジン1は、α型と呼ばれるもので、膨張空間5Aを形成する膨張シリンダ6Aと、圧縮空間5Bを形成する圧縮シリンダ6Bとを並列に配置して、両シリンダ6A,6Bの内部に、膨張及び圧縮のピストン7A,7Bを上下動自在に収容している。両ピストン7A,7Bは、夫々のコネクティングロッド8A,8Bを介して、クランクシャフト9に連結してある。クランクシャフト9は、クランクケース9Cにおいて、回転軸を水平方向にして回転自在に保持してある。
【0016】
スターリングエンジン1は、加熱器2によって加熱膨張させた作動ガスを膨張空間5Aに供給し、膨張ピストン7Aを下降させる。次に、膨張ピストン7Aの上昇過程では、作動ガスを再生器3に通して再生器3内の蓄熱材に熱を与え、作動ガスを冷却器4でさらに冷却して圧縮空間5Bに供給する。これにより、圧縮ピストン7Bが下降する。さらに、圧縮ピストン7Bの上昇過程では、作動ガスを再生器3に通して蓄熱材から熱を奪い、作動ガスを加熱器2でさらに加熱膨張させて膨張空間5Aに供給する。これにより、膨張ピストン7Aが下降する。
【0017】
このようにして、スターリングエンジン1は、上記のように作動ガスの加熱、再生及び冷却を連続的に行いながら膨張ピストン7A及び圧縮ピストン7Bを交互に上下動させ、クランクシャフト9を回転駆動する。本発明のスターリングエンジン1は、出力密度の向上を図るために、上記の加熱器2に後述する創意工夫を凝らしたものである。
【0018】
また、本発明に係わるスターリングエンジン発電装置は、上記のスターリングエンジン1と、スターリングエンジン1が出力する機械的エネルギを電気エネルギに変換する発電機10とを備えている。図示例のスターリングエンジン発電装置は、スターリングエンジン1のクランクシャフト9に発電機10が接続してある。
【0019】
発電機10は、例えば、磁石を有するロータとコイルを有するステータとを備え、ロータを回転させて電磁誘導作用により電気エネルギを発生する。この発電機10は、クランクシャフト9によりロータを回転させて、回転エネルギ(機械的エネルギ)を電気エネルギに変換する。
【0020】
上記スターリングエンジン1における加熱器2は、図1(B)及び図2(A)に示すように、作動ガスを流通させるガス流通管11と、ガス流通管11の中間部を通過させる筐体12とを備える。また、スターリングエンジン1の加熱器2は、筐体12内に、ガス流通管11の外面に配置され且つ水素を吸蔵する材料を含む発熱材料層13と、発熱材料層13の外面に配置され且つガス透過性を有する加熱体14と、加熱体14の外側に形成した水素ガスの供給空間15とを備えている。
【0021】
ガス流通管11は、その材料が限定されるものではないが、例えばステンレス製であって、図2(A)に点線で示す筐体外部の一端側を再生器3に連結し、他端側を膨張空間5Aに連結する。図示例のガス流通管11は、扁平な矩形板状の本体内に、複数(図示例では9個)のガス流路11Aを等間隔で配置した構造を有している。このガス流通管11は、複数のガス流路11Aを配置することで作動ガスの加熱機能を高める。
【0022】
なお、ガス流通管11は、その両端部分で各ガス流路11を集合させて、上記の再生器3や膨張空間5Aに連結する構造にしても良い。また、図示のガス流通管11は、直線状のガス流路11Aの両端が、屈曲して筐体12の外部に至る形状であるが、全体的に直線状を成す形態でも構わない。
【0023】
筐体12は、その材料や形状が限定されるものではないが、例えばステンレス製の矩形の箱状であって、ガス流通管11や、発熱材料層13及び加熱体14を収容したうえで供給空間15を形成し得る容積を有する。
【0024】
発熱材料層13は、水素吸蔵機能を有する合金材料で形成してある。この合金材料は、水素ガスの存在下で加熱することで水素を吸蔵して水素固溶体又は水素化物になり、水素固溶体又は水素化物の相転移の繰り返しにより水素の吸蔵及び放出(脱蔵)を繰り返すことで過剰発熱する水素吸蔵機能を有する。図示の発熱材料層13は、ガス供給管11の本体外部のほぼ全面を被覆するように形成してある。
【0025】
発熱材料層13の合金材料は、水素吸蔵脱蔵特性が異なる2つ以上の材料を有する水素吸蔵合金から形成される。この合金材料は、水素ガスの存在下で過剰熱を発生するものであればとくに限定されないが、例えば、パラジウム(Pd)-ニッケル(Ni)-ジルコニウム(Zr)系、パラジウム(Pd)-二酸化ケイ素(SiO)系、銅(Cu)-ニッケル(Ni)-ジルコニウム(Zr)系、銅(Cu)-ニッケル(Ni)-二酸化ケイ素(SiO)系、ニッケル(Ni)-ジルコニウム(Zr)系、アルミニウム(Al)-ニッケル(Ni)系の材料等を例示できる。
【0026】
例えば、パラジウム(Pd)-ニッケル(Ni)-ジルコニウム(Zr)系の合金材料は、パラジウム(Pd)-ニッケル(Ni)-ジルコニウム(Zr)系合金をメルトスピニング法(溶融急冷法)によって非晶質(アモルファス)リボンとした後、大気中で酸化処理を行い、さらに粉砕処理を行って作製される。メルトスピニング法は、高温で溶融した合金を高速回転する銅製ロール表面上に吹き付けることによって、結晶化時間よりも非常に短い時間の間に急冷し、非晶質リボンを得る方法である。非晶質リボンを酸化処理することによって、構成元素のジルコニウム(Zr)が参加したZrOが生成すると共に、パラジウム(Pd)及びニッケル(Ni)がナノ金属粒子として析出した微細構造が形成される。
【0027】
パラジウム(Pd)-ニッケル(Ni)-ジルコニウム(Zr)系の水素吸蔵合金の一例として、メルトスピニング法を用いて、パラジウム(Pd):ニッケル(Ni):ジルコニウム(Zr)=4:31:65の原子比で作製した合金を450℃、60時間空気中で焼成することにより、合金材料(発熱材料)を調整した。合金材料は、例えば、厚さが35μm、長さが30~300μmの大きさの板形状を有する。
【0028】
調整した合金材料について、水素ガス(H)0.1MPaフローの条件下における示差走査熱量(DSC)測定を行った。測定条件は、試料量が40mg、昇温範囲が室温~800℃、昇温速度が5℃/min、ガス流量が120mL/min、保持温度が250℃~800℃、保持時間が2時間である。また、測定前処理として。10-3Pa以下になるまで真空脱気を行い、水素ガス気流中で室温から所定温度まで昇温し、その温度で保持する測定を実施した。
【0029】
その結果、450℃まで昇温させた場合には、非常に大きい発熱現象(過剰熱の発生)を継続的に確認した。さらに、振動的な発熱が発生し、過剰熱がパルス的に発生することを確認した。これにより、パラジウム(Pd)-ニッケル(Ni)-ジルコニウム(Zr)系の合金材料は、水素ガスと接触することにより、非常に大きい発熱現象(過剰熱の発生)を継続的に示し、且つ周期的又は非周期的な発熱を振動的に繰り返す材料であることを確認した。
【0030】
加熱体14は、電源により発熱するヒーターであって、先述した発熱材料層13のほぼ全面を被覆するように配置してある。この加熱体14は、ガス透過性を有するものであればとくに限定されないが、例えば、図2(B)に示すようなメッシュ構造を有するものが挙げられる。また、加熱体14の材料としては、例えば、ニッケルクロム合金、鉄クロムアルミニウム合金、タングステン、モリブデン等を挙げることができる。
【0031】
上記の加熱器2は、とくに図2(A)に示すように、筐体12の一端部に、供給空間15に水素ガスを供給するための水素圧入用バルブV1を備えると共に、筐体12の他端部に、供給空間15内の水素ガスを排出するためのパージバルブV2を備えている。そして、加熱器2は、水素ガスの供給源21と、筐体12に供給する水素ガスの流量調整を行う流量制御部22と、加熱体14の温度調整を行う温度制御部23を備えている。
【0032】
上記構成を備えたスターリングエンジン1は、先述したように、作動ガスの加熱、再生及び冷却を連続的に行いながら、両ピストン7A,7Bを交互に上下動させてクランクシャフト9を回転駆動する。この際、加熱器2では、筐体12の供給空間15に水素ガスを供給し、加熱体14により発熱材料層13を加熱しつつ、発熱材料層13に水素ガスを供給し、発熱材料層13で過剰熱を発生させる。そして、スターリングエンジン1は、発生した過剰熱を熱伝導によりガス流通管11に伝えて作動ガスを加熱し、加熱した作動ガスを膨張空間5Aに供給する。
【0033】
このようにして、スターリングエンジン1は、膨張空間5Aと圧縮空間5Bとを連通させる加熱器2、すなわち膨張空間5Aと圧縮空間5Bとを直接連結する経路に配置した加熱器2で過剰熱を発生させ、過剰熱の熱伝導により作動ガスを直接的に加熱するので、構造がコンパクトになると共に、発生した過剰熱を有効に利用して出力密度を向上させることができ、車載化するのに好適なものとなる。
【0034】
また、スターリングエンジン発電装置は、スターリングエンジン1、すなわち出力密度の向上を実現するスターリングエンジン1が出力する回転エネルギを発電機10に入力して電気エネルギに変換するので、車載化するのに好適な構造のコンパクト化を実現することができる。
【0035】
さらに、スターリングエンジン1は、加熱器2における発熱材料層13が、水素ガスの存在下で加熱することで水素を吸蔵して水素固溶体又は水素化物になり、水素固溶体又は水素化物の相転移の繰り返しにより水素の吸蔵及び放出を繰り返して過剰発熱する水素吸蔵機能を有する合金材料を含むことから、作動ガスを高温に加熱して膨張空間5Aに供給することができ、出力密度のさらなる向上を実現することができる。
【0036】
さらに、スターリングエンジン1は、加熱器2においてメッシュ構造の加熱体14を採用したことから、水素ガスが加熱体14を自由に透過し得ることとなり、発熱材料層13における水素の吸蔵及び放出(脱蔵)を何ら阻害せずに、発熱材料層13に対して供給空間15の水素ガスを充分に供給することができる。
【0037】
図3図6は、本発明に係わるスターリングエンジンの第2~第5の実施形態を説明する図である。第2~第5の実施形態におけるスターリングエンジンは、いずれも図1(A)に示す全体構造を有しており、各図に示す加熱器を備えたものである。なお、以下の実施形態では、第1実施形態と同一の構成部位に同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0038】
〈第2実施形態〉
図3に示すスターリングエンジンの加熱器2は、筐体12内におけるガス流通管11が、その外面に、規則的な凹凸構造を形成した構造である。この凹凸構造は、図3中の左右方向である作動ガスの流通方向に対して、複数の突条11Bを所定間隔で配列することで形成してある。各突条11Bは、ガス流路11Aの配列方向(図2B中で左右方向)に沿って延びており、互いに平行に配置してある。
【0039】
上記構成を備えたスターリングエンジンは、凹凸構造を形成する複数の突条11Bにより、ガス流通管11と発熱材料層13との接触面積を増大させて、発熱材料層13で発生した過剰熱を熱伝導させる際の熱量を増大させることができると共に、ガス流通管11における温度分布を均一に維持することができ、出力密度のさらなる向上に貢献し得る。
【0040】
〈第3実施形態〉
図4に示すスターリングエンジンの加熱器2は、筐体12内におけるガス流通管11が、その外面に、規則的な凹凸構造を有すると共に、発熱材料層13及び加熱体14が、ガス流通管11の凹凸構造に沿って形成した凹凸構造を成している。ガス流通管11の凹凸構造は、第2実施形態と同様に、複数の突条11Bによって形成してある。発熱材料層13及び加熱体14は、突条11Bを含むガス流通管11の外面上に層を成すように配置されている。
【0041】
上記構成を備えたスターリングエンジンの加熱器2は、凹凸構造により、ガス流通管11と発熱材料層13との接触面積、及び発熱材料層13と加熱体14との接触面積のいずれもが増大する。これにより、加熱器2は、発熱材料層13に対する加熱体14の熱量が増大すると共に、ガス流通路11に対する熱材料層13の過剰熱も増大し、発熱材料層13の温度分布を均一にして、過剰熱を均一に発生させることができる。
【0042】
〈第4実施形態〉
図5に示すスターリングエンジンの加熱器2は、第1実施形態と同様の基本構造(図1及び2参照)を有すると共に、筐体12の外面に、熱反射材料から成る熱反射層16を有する構造である。熱反射層16は、筐体12のほぼ全面を被覆するように形成してある。
【0043】
熱反射層16は、例えば、赤外線領域で異なる屈折率を有する無機材料を2つ用い、これらの材料を交互に積層した多層膜構造である。より具体的には、熱反射層16は、Alと、YTiとを用いて、特定波長の赤外線を反射できるように膜厚を調整した多層膜構造である。
【0044】
上記構成を備えたスターリングエンジンの加熱器2は、筐体12から外部に放射される熱線の一部を反射して筐体12の内部に戻す働きをし、熱放射により失われる熱エネルギを低減することで、作動ガスに伝達される過剰熱を維持、若しくは増大させることができる。
【0045】
〈第5実施形態〉
図6に示すスターリングエンジンの加熱器2は、第1実施形態と同様の基本構造(図1及び2参照)を有すると共に、筐体12の外面に、断熱材料から成る断熱層17を有する構造である。断熱層17は、筐体12のほぼ全面を被覆するように形成してある。この断熱層17は、材料がとくに限定されるものではないが、例えば、セラミックスファイバーやアルミナファイバーなどを挙げることができる。
【0046】
上記構成を備えたスターリングエンジンの加熱器2は、筐体12から伝導、対流及び放射により外部に逃げる熱の一部を筐体12の内部に閉じ込める働きをし、伝導、対流及び放射により失われる熱エネルギを低減することで、作動ガスに伝達される過剰熱を維持、若しくは増大させることができる。
【0047】
本発明に係わるスターリングエンジン及びスターリングエンジン発電装置は、その詳細な構成が上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更したり、各実施形態の構成を組み合わせたりすることが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1スターリングエンジン
2加熱器
3再生器
4冷却器
5A膨張空間
5B圧縮空間
10発電機
11ガス流通管
12筐体
13発熱材料層
14加熱体
15供給空間
16熱反射層
17断熱層
図1
図2
図3
図4
図5
図6