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特開2022-162639領域安全レベル評価装置、及び、領域安全レベル評価プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162639
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】領域安全レベル評価装置、及び、領域安全レベル評価プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20221018BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20221018BHJP
   G06T 11/60 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
G06T7/00 130
G09B29/00 Z
G06T11/60 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067534
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【氏名又は名称】片寄 武彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼瀬 大樹
(72)【発明者】
【氏名】秋本 大輔
【テーマコード(参考)】
2C032
5B050
5L096
【Fターム(参考)】
2C032HC27
5B050AA03
5B050BA06
5B050BA11
5B050BA17
5B050BA18
5B050BA20
5B050CA01
5B050DA04
5B050EA09
5B050FA02
5B050FA05
5B050FA12
5B050FA13
5L096CA05
5L096DA01
5L096FA32
5L096FA66
5L096FA69
5L096GA19
5L096HA02
(57)【要約】
【課題】監視領域が分割された小領域毎の安全レベルを総合的に評価することを可能とする領域安全レベル評価装置を提供する。
【解決手段】領域安全レベル評価装置1は、複数の監視カメラ202が設置された監視領域の安全レベルを評価する。領域安全レベル評価装置1は、監視領域の環境要素に基づいて、人が感じる不安感の程度を示す不安感レベルを小領域毎に算出する不安感レベル算出部120と、複数の監視カメラ202が有する監視範囲及び監視性能に基づいて、監視カメラ202による監視レベルを小領域毎に算出する監視レベル算出部121と、小領域毎の不安感レベルと小領域毎の監視レベルとを小領域単位で安全レベルに変換することにより、安全レベルを小領域毎に算出する安全レベル算出部122とを備える。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の撮像装置が設置された監視領域の安全レベルを評価する領域安全レベル評価装置であって、
前記監視領域の環境要素に基づいて、人が感じる不安感の程度を示す不安感レベルを、前記監視領域が分割された小領域毎に算出する不安感レベル算出部と、
複数の前記撮像装置が有する監視範囲及び監視性能に基づいて、前記撮像装置による監視レベルを前記小領域毎に算出する監視レベル算出部と、
前記小領域毎の前記不安感レベルと前記小領域毎の前記監視レベルとを前記小領域単位で前記安全レベルに変換することにより、前記安全レベルを前記小領域毎に算出する安全レベル算出部とを備える、
領域安全レベル評価装置。
【請求項2】
前記安全レベル算出部は、
前記不安感レベル及び前記監視レベルを変数として前記安全レベルを出力する変換式又は変換マップに代入することにより、前記安全レベルを前記小領域毎に算出する、
請求項1に記載の領域安全レベル評価装置。
【請求項3】
前記監視レベル算出部は、
前記監視性能として、単位長さ当たりの画素数で表される解像度を前記小領域毎に特定し、前記監視範囲内において前記解像度が高くなるほど前記監視レベルを高く算出する、
請求項1又は請求項2に記載の領域安全レベル評価装置。
【請求項4】
前記監視領域を表す地図上に、前記不安感レベル、前記監視レベル、及び、前記安全レベルを切替可能に重畳表示する表示情報を生成する表示情報生成部をさらに備える、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の領域安全レベル評価装置。
【請求項5】
前記不安感レベル算出部は、
前記環境要素として複数の環境要因が前記不安感に与える影響の程度をそれぞれ示す複数の環境指標値の分布を合成することにより、前記不安感レベルを前記小領域毎に算出する、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の領域安全レベル評価装置。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の領域安全レベル評価装置が備える各部として機能させる、
領域安全レベル評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、領域安全レベル評価装置、及び、領域安全レベル評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、犯罪を受ける可能性や確率を表す安全レベルを領域毎に評価するための様々な手法が開発されている。例えば、特許文献1には、街路に面して配置された建物の窓の数や寸法に応じて、街路の領域毎に防犯性評価値が算出された防犯マップが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-36745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された防犯マップにおける防犯性評価値は、建物の窓の数や寸法に応じて算出されたものである。ここで、領域毎の安全レベルを定める際に参考となる情報は、建物の窓の数や寸法だけでなく、例えば、人がその場の環境から感じる不安感の大小や、その場に設置された監視カメラ等の撮像装置が有する監視範囲や監視性能(例えば、監視カメラの監視範囲内か、監視カメラの解像度は高いのか等)等が挙げられる。しかしながら、特許文献1に開示された防犯性評価値には、建物の窓の数や寸法以外の情報が反映されていないため、安全レベルとして総合的な評価値を算出することができない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、監視領域が分割された小領域毎の安全レベルを総合的に評価することを可能とする領域安全レベル評価装置、及び、領域安全レベル評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであって、本発明の一実施形態に係る領域安全レベル評価装置は、
複数の撮像装置が設置された監視領域の安全レベルを評価する領域安全レベル評価装置であって、
前記監視領域の環境要素に基づいて、人が感じる不安感の程度を示す不安感レベルを、前記監視領域が分割された小領域毎に算出する不安感レベル算出部と、
複数の前記撮像装置が有する監視範囲及び監視性能に基づいて、前記撮像装置による監視レベルを前記小領域毎に算出する監視レベル算出部と、
前記小領域毎の前記不安感レベルと前記小領域毎の前記監視レベルとを前記小領域単位で前記安全レベルに変換することにより、前記安全レベルを前記小領域毎に算出する安全レベル算出部とを備える。
【0007】
また、本発明の一実施形態に係る領域安全レベル評価プログラムは、
コンピュータを、上記領域安全レベル評価装置が備える各部として機能させるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態に係る領域安全レベル評価装置、及び、領域安全レベル評価プログラムによれば、不安感レベル算出部が、監視領域の環境要素に基づいて、不安感レベルを小領域毎に算出し、監視レベル算出部が、複数の撮像装置が有する監視範囲及び監視性能に基づいて監視レベルを小領域毎に算出し、安全レベル算出部が、不安感レベルと監視レベルとを小領域単位で安全レベルに変換することにより、安全レベルを小領域毎に算出する。これにより、安全レベルには、不安感レベルと監視レベルとが小領域単位で反映されるので、小領域毎の安全レベルを総合的に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る領域安全レベル評価システム100の一例を示す全体構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る環境情報管理装置3のデータベース30の一例を示すデータ構成図である。
図3】本発明の実施形態に係る領域安全レベル評価装置1の一例を示すブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係る不安感レベル算出部120による不安感レベルの算出処理を示す機能フロー図である。
図5】本発明の実施形態に係る監視レベル算出部121による監視レベルの算出処理を示す機能フロー図である。
図6】本発明の実施形態に係る安全レベル算出部122による安全レベルの算出処理を示す機能フロー図である。
図7】本発明の実施形態に係る表示情報生成部123による表示情報生成処理により生成された表示情報に基づく表示画面6の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る領域安全レベル評価システム100の一例を示す全体構成図である。
【0012】
領域安全レベル評価システム100は、複数の監視カメラ202が設置された監視領域2の安全レベルを評価する領域安全レベル評価装置1と、監視領域2の環境要素に関する環境情報21を取得・管理する環境情報管理装置3と、監視領域2の管理者が使用する管理者端末4と、領域安全レベル評価装置1、環境情報管理装置3及び管理者端末4の間を相互に通信可能に接続するネットワーク5とを備える。
【0013】
監視領域2は、屋外又は屋内の任意の領域である。監視領域2は、例えば、市町村等の行政区画単位の領域でもよいし、駅、空港等のランドマークを中心とする所定圏内の領域でもよいし、学校、工場、商業施設、公共施設等の敷地でもよい。また、監視領域2は、例えば、地続きの土地のように、連続的に存在するものでもよいし、離散的に存在する領域(例えば、A学校とB学校が隣接していない場合のA学校の敷地とB学校の敷地、複数階の建物の各フロア)でもよい。
【0014】
本実施形態では、監視領域2は、大学の敷地であり、監視領域2には、図1に示すように、建物200、外灯201、監視カメラ202、入退出管理装置203等の複数の施設20が設置されているものとして説明する。
【0015】
安全レベルは、人が犯罪の被害を受けるかもしれないと感じる不安感を解消するために施された安全対策の水準や程度を表す指標である。そのため、撮像装置としての監視カメラ202が監視領域2に設置された場合、監視カメラ202の監視範囲内では、監視カメラ202による監視レベルが向上するため、安全レベルの向上が見込まれる。一方、不安感の程度を示す不安感レベルは、監視領域2における環境要素の影響を受けるため、監視領域2の各位置において不安感レベルは一律ではない。そこで、領域安全レベル評価装置1では、監視領域2が、例えば、メッシュ状に複数の小領域Mに分割された小領域M毎に不安感レベル及び監視レベルの両者を勘案して、安全レベルを小領域毎に評価する方法を採用する。本実施形態では、小領域Mは、例えば、3メートル四方の矩形状に分割されるものとして説明するが、監視領域2を複数の小領域Mに分割するときの分割方法、形状及びサイズ等は適宜変更してもよい。
【0016】
なお、環境要素として不安感に影響を与える環境要因は、例えば、見通し、明暗、人通りに代表されるような空間の属性(建物、塀、フェンス、植栽、看板、道路構造物等により視界を遮るような物陰の有無や、その量や範囲等でもよい)、建物の属性(窓の大きさや位置、住宅か店舗か、築年数等)、道路の属性(道路幅、道路種別、車両交通量、路上駐車の有無等)、土地の属性(繁華街、宅地、農地、空地等)等が挙げられる。
【0017】
領域安全レベル評価装置1は、サーバやクラウドとして機能する汎用のコンピュータ等で構成されている。領域安全レベル評価装置1の機能及び安全レベルの評価方法の詳細は後述する。
【0018】
環境情報管理装置3は、領域安全レベル評価装置1と同様に汎用のコンピュータ等で構成されており、監視領域2の環境情報21を記憶するデータベース30を備える。
【0019】
管理者端末4は、例えば、管理者が作業する管理室に設置された汎用のコンピュータや、管理者が携帯可能なタブレット、スマートフォン等の携帯端末機器で構成されている。管理者端末4は、入力画面を介して管理者から各種の入力を受け付けるとともに、表示画面や音声を介して管理者に各種の情報を提示する。
【0020】
なお、図1では、領域安全レベル評価装置1、環境情報管理装置3及び管理者端末4の数は、それぞれ1つであるが、複数であってもよい。また、ネットワーク5は、有線でも無線でもよい。
【0021】
図2は、本発明の実施形態に係る環境情報管理装置3のデータベース30の一例を示すデータ構成図である。データベース30は、監視領域2の環境情報21を記憶しており、環境情報21の追加、更新、削除等が、管理者端末4により随時行われる。
【0022】
環境情報21は、施設20の位置、形状、仕様等を示す施設設置情報22と、施設20の機能により取得される施設取得情報23とに分類される。
【0023】
施設設置情報22には、例えば、建物設置情報220、外灯設置情報221、監視カメラ設置情報222、入退出管理装置設置情報223等が含まれる。
【0024】
建物設置情報220は、建物200の位置、高さ、形状等を含む情報であり、例えば、建物200の設計図データでもよい。外灯設置情報221は、外灯201の位置、高さ、仕様(光束、光色、配向角等)、外灯201が点灯される時間帯等を含む情報である。監視カメラ設置情報222は、監視カメラ202の位置、高さ、監視範囲(画角、方向)及び監視性能(解像度、パン機能の有無、チルト機能の有無、光学ズームの有無、デジタルズームの有無、赤外線照明の有無)等を含む情報である。入退出管理装置設置情報223は、入退出管理装置203が設置された門、ゲート、ドアの位置等を含む情報である。
【0025】
施設取得情報23には、例えば、監視カメラ取得情報230、入退出管理装置取得情報231等が含まれる。
【0026】
監視カメラ取得情報230は、監視カメラ202により静止画又は動画として撮影された画像を、その画像が撮影された時刻や位置と関連付けて記録した情報である。入退出管理装置取得情報231は、入退出管理装置203により検出された入退出を、その入退出が検出された時刻や位置と関連付けて記録した情報である。
【0027】
(領域安全レベル評価装置1の構成及び動作)
図3は、本発明の実施形態に係る領域安全レベル評価装置1の一例を示すブロック図である。
【0028】
領域安全レベル評価装置1は、キーボード、タッチパネル等により構成される入力部10と、HDD、メモリ等により構成される記憶部11と、CPU等のプロセッサにより構成される制御部12と、ネットワーク5との通信インターフェースである通信部13と、ディスプレイ、スピーカ等により構成される出力部14とを備える。なお、入力部10や出力部14は省略してもよく、その場合には、管理者端末4を、入力部10や出力部14として機能させればよい。
【0029】
記憶部11には、領域安全レベル評価装置1の動作を制御する領域安全レベル評価プログラム110が記憶されている。
【0030】
制御部12は、領域安全レベル評価プログラム110を実行することにより、不安感レベル算出部120、監視レベル算出部121、安全レベル算出部122、及び、表示情報生成部123として機能する。
【0031】
不安感レベル算出部120は、監視領域2の環境要素に基づいて、不安感レベルを小領域M毎に算出する。監視レベル算出部121は、複数の監視カメラ202が有する監視範囲及び監視性能に基づいて、監視カメラ202による監視レベルを小領域M毎に算出する。安全レベル算出部122は、小領域M毎の不安感レベルと小領域M毎の監視レベルとを小領域M単位で安全レベルに変換することにより、安全レベルを小領域M毎に算出する。表示情報生成部123は、監視領域2を表す地図上に、不安感レベル、監視レベル、及び、安全レベルを切替可能に重畳表示する表示情報を生成する。
【0032】
以下、小領域毎の不安感レベル(不安感レベルの分布)、小領域毎の監視レベル(監視レベルの分布)、及び、小領域毎の安全レベル(安全レベルの分布)を算出する処理についてそれぞれ説明する。
【0033】
(不安感レベル算出処理)
図4は、本発明の実施形態に係る不安感レベル算出部120による不安感レベルの算出処理を示す機能フロー図である。
【0034】
不安感レベル算出部120は、環境情報管理装置3からネットワーク5を介して環境情報21を取得し、その取得した環境情報21に基づいて、複数の環境要因が不安感に与える影響の程度をそれぞれ示す複数の環境指標値pnの分布Pnを算出する。環境指標値pnは、監視領域2を、例えば、小領域Mとしてメッシュ状に分割したとき、小領域Mを特定する座標x及び座標yを変数として、小領域M(xi,yj)(i=i1,i2,…,I,j=j1,j2,…,J)毎に算出されるパラメータである。
【0035】
本実施形態では、複数の環境要因は、明暗、見通し、及び、人通りの3つ(n=3)であり、複数の環境指標値pn(xi,yj)は、図4に示すように、水平面照度p1(xi,yj)、空間開放度p2(xi,yj)、及び、人流密度p3(xi,yj)の3つ(n=1,2,3)である場合について説明する。
【0036】
不安感レベル算出部120は、環境情報21のうち、例えば、外灯設置情報221を参照することにより、外灯201の位置、高さ、仕様等に基づいて、水平面照度p1(xi,yj)の分布P1を算出する。例えば、外灯201が点灯される夜間の時間では、特定の小領域M(xi,yj)に対する水平面照度p1(xi,yj)は、外灯201の位置、高さと、外灯201の光束とから算出される。外灯201が点灯されない昼間の時間では、水平面照度p1(xi,yj)は、一定の値としてもよいし、例えば、日射量(例えば、天候、太陽の方角や高さを考慮)や建物による日陰の位置等に基づいて算出されるようにしてもよい。
【0037】
不安感レベル算出部120は、環境情報21のうち、例えば、建物設置情報220を参照することにより、建物200の位置、高さ、形状等に基づいて、空間開放度p2(xi,yj)の分布P2を算出する。例えば、特定の小領域M(xi,yj)に対する空間開放度p2(xi,yj)は、当該小領域Mを中心として所定の角度(例えば、5度)毎に、当該小領域Mから建物200の壁面までの距離Lを、建物200の高さHで除算した値L/H(ただし、上限値は6とする)を求め、当該小領域Mの周囲全体、すなわち、360度分の値L/Hの平均値として算出される。
【0038】
不安感レベル算出部120は、環境情報21のうち、例えば、監視カメラ取得情報230、入退出管理装置取得情報231を参照することにより、監視カメラ202により撮影された画像や入退出管理装置203により検出された入退出の記録等に基づいて、人流密度p3(xi,yj)の分布P3を算出する。例えば、特定の小領域M(xi,yj)に対する人流密度p3(xi,yj)は、当該小領域Mにおいて監視カメラ202により撮影された画像を解析して、通行人の人数、進行方向、進行経路等を取得することにより、当該小領域Mにおける単位時間当たりの通行量として算出される。なお、人流密度p3(xi,yj)は、さらに入退出管理装置取得情報231を加味して算出されるようにしてもよいし、過去の同じ時間帯や曜日の履歴等を参考にして算出されるようにしてもよい。
【0039】
不安感レベル算出部120は、上記のようにそれぞれ算出された複数の環境指標値pn(p1~p3)を環境要因毎に段階的な評価(例えば、1~9までの9段階)で表すことにより、複数の環境指標値pn(p1~p3)の分布Pn(P1~P3)を、複数の環境指標レベルqn(q1~q3)の分布Qn(Q1~Q3)にそれぞれ変換する。
【0040】
水平面照度p1では、水平面照度p1が取り得る範囲を9段階(1(明るい)~9(暗い))に分類することで、水平面照度レベルq1の分布Q1に変換する。空間開放度p2では、空間開放度p2が取り得る範囲を9段階(1(見通しが良い)~9(見通しが悪い))に分類することで、空間開放度レベルq2の分布Q2に変換する。人流密度p3では、人流密度p3が取り得る範囲を9段階(1(人通りが多い)~9(人通りが少ない))に分類することで、人流密度レベルq3の分布Q3に変換する。
【0041】
そして、不安感レベル算出部120は、複数の環境指標レベルqn(q1~q3)の分布Qn(Q1~Q3)を合成することにより、不安感を示す不安感レベルr(xi,yj)の分布Rを算出する。不安感レベルr(xi,yj)は、不安感を数値化又はレベル化(段階的な数値化)したものであり、本実施形態では、不安感レベルr(xi,yj)の数値が高いほど、不安感が大きいものとして取り扱う。
【0042】
具体的には、不安感レベル算出部120は、複数の環境指標レベルqn(q1~q3)に、環境要因別に設定された複数の補正係数an(a1~a3)をそれぞれ積算して小領域M(xi,yj)毎に合算するとともに、補正値bをさらに加算することにより、不安感レベルr(xi,yj)の分布Rを算出する。すなわち、特定の小領域M(xi,yj)に対する不安感レベルr(xi,yj)は、補正係数an(a1~a3)及び補正値bを用いて、以下の(1)式により算出される。
【0043】
【数1】
【0044】
なお、上記の例では、環境要因は、明暗、見通し及び人通り(水平面照度p1、空間開放度p2及び人流密度p3)の3つであるものとして説明したが、環境要因は、3つに限られず、1つでもよいし、2つ又は4つ以上でもよいし、明暗、見通し及び人通り(水平面照度p1、空間開放度p2及び人流密度p3)以外の他の環境要因(他の環境指標値)を含むものでもよい。
【0045】
(監視レベルの算出処理)
図5は、本発明の実施形態に係る監視レベル算出部121による監視レベルの算出処理を示す機能フロー図である。
【0046】
監視レベル算出部121は、環境情報管理装置3からネットワーク5を介して監視カメラ設置情報222を取得し、その取得した監視カメラ設置情報222に含まれる複数の監視カメラ202が有する監視範囲及び監視性能に基づいて、監視レベルd(xi,yj)の分布Dを算出する。監視範囲は、監視カメラ202の画角と方向により定められ、パン機能やチルト機能が有する場合には、それらの機能を考慮して定められてもよい。監視性能は、単位長さ当たりの画素数で表される解像度に応じて定められ、デジタルズーム、光学ズーム、赤外線照明を有する場合には、それらの機能を考慮して定められてもよい。
【0047】
監視レベル算出部121は、例えば、監視カメラ202の解像度px(xi,yj)を小領域M(xi,yj)毎に特定し、監視範囲内において、解像度px(xi,yj)が高くなるほど監視レベルd(xi,yj)を高く算出することにより、監視レベルd(xi,yj)の分布Dを算出する。具体的には、特定の小領域M(xi,yj)に対する監視レベルd(xi,yj)は、小領域M(xi,yj)における20cm(単位長さ)当たりの画素数で表される解像度px(xi,yj)を用いて、以下の(2)式により算出される。
【0048】
【数2】
【0049】
なお、上記の(2)式で表される解像度pxと監視レベルdとの関係は、図5に示すように、解像度-監視レベル関係情報として、記憶部11に記憶されていてもよく、管理者端末4を介して変更可能であってもよい。また、上記の(2)式では、20cm(単位長さ)当たりの画素数が、80以上の場合に、監視レベルd(xi,yj)は、「1」であるものとしたが、これは、監視カメラ202にて人物が撮像されたときの顔を識別するために必要な解像度pxとして定めたものであり、外灯201の位置や赤外線照明の有無等に応じて適宜変更してもよい。また、上記の(2)式で表される関数は、図5に示す曲線として表されるが、(2)式の関数は適宜変更してもよい。
【0050】
(安全レベルの算出処理)
図6は、本発明の実施形態に係る安全レベル算出部122による安全レベルの算出処理を示す機能フロー図である。
【0051】
安全レベル算出部122は、不安感レベル算出部120により算出された不安感レベルr(xi,yj)の分布Rと、監視レベル算出部121により算出された監視レベルd(xi,yj)の分布Dとを小領域M(xi,yj)単位で安全レベルs(xi,yj)に変換することにより、安全レベルs(xi,yj)の分布Sに算出する。
【0052】
安全レベル算出部122は、例えば、不安感レベルr(xi,yj)及び監視レベルd(xi,yj)を変数として安全レベルs(xi,yj)を出力する変換式又は変換マップに代入することにより、安全レベルs(xi,yj)を算出する。具体的には、特定の小領域M(xi,yj)に対する安全レベルs(xi,yj)は、0~1の範囲に正規化された不安感レベルr(xi,yj)及び監視レベルd(xi,yj)を変数として、以下の(3)式で表される変換式により算出される。
【0053】
【数3】
【0054】
そして、安全レベルs(xi,yj)は、以下の(4)式に示す安全レベル分類条件にて、図6に示すように、4つのゾーン1~4にそれぞれ対応する4段階の安全レベルs(xi,yj)に分類される。
【0055】
【数4】
【0056】
ゾーン4の安全レベルs(xi,yj)は、不安感レベルr(xi,yj)が所定の不安感閾値(=0.75)よりも小領域M(xi,yj)が該当し、何らかの安全対策が必要であることを表す。
【0057】
ゾーン3の安全レベルs(xi,yj)は、不安感レベルr(xi,yj)が不安感閾値を僅かに下回る程度であって、監視レベルd(xi,yj)が低いような小領域M(xi,yj)が該当し、十分に安全ではないことを表す。
【0058】
ゾーン2の安全レベルs(xi,yj)は、不安感レベルr(xi,yj)が低いが監視レベルd(xi,yj)が低かったり、不安感レベルr(xi,yj)が高いが監視レベルd(xi,yj)が高かかったり、不安感レベルr(xi,yj)が高く、かつ、監視レベルd(xi,yj)が低かったりするような小領域M(xi,yj)が該当し、ゾーン3よりも改善し、十分に安全であることを表す。
【0059】
ゾーン1の安全レベルs(xi,yj)は、不安感レベルr(xi,yj)が低く、かつ、監視レベルd(xi,yj)が高い小領域M(xi,yj)が該当し、最も安全であることを表す。
【0060】
なお、安全レベル算出部122が用いる変換式(例えば、(3)式)や変換マップ(例えば、(4)式及び図6)は、記憶部11に記憶されていてもよく、管理者端末4を介して変更可能であってもよい。また、変換式(例えば、(3)式)は、不安感レベルr及び監視レベルdを変数として、不安感レベルrが低くなるほど、又は、監視レベルdが高くなるほど、安全レベルsが高くなるように安全レベルsを算出するものであればよく、上記の(3)式の例に限られず、適宜変更してもよい。さらに、変換マップ(例えば、(4)式及び図6参照)は、不安感レベルr及び監視レベルdを変数として、4段階の安全レベルsに分類(変換)するものであるが、上記の(4)式及び図6の例に限られず、安全レベルsの分類方法や分類数は適宜変更してもよい。また、安全レベル算出部122は、変換マップを用いることなく、変換式により連続的な値を取り得る安全レベルsの分布Sを算出してもよいし、変換式を用いることなく、変換マップにより段階的な値を取り得る安全レベルsの分布Sを算出してもよい。
【0061】
表示情報生成部123は、管理者端末4から表示情報生成要求を受信すると、その要求に応じて各種の表示情報を生成し、管理者端末4に通信部13を介して送信する。管理者端末4は、その表示情報に基づいて、例えば、ブラウザやアプリ等を介して表示画面(後述の図7参照)を表示する。なお、管理者端末4は、その表示情報を印刷したり、データとして保存したりしてもよい。
【0062】
図7は、本発明の実施形態に係る表示情報生成部123による表示情報生成処理により生成された表示情報に基づく表示画面6の一例を示す図である。
【0063】
表示画面6は、画面左上側に配置されたレベル選択部60と、画面左下側に配置された監視カメラ編集部61と、画面右側に配置されて、監視領域2を示す平面図(地図)に重畳して各種のデータを表示するデータ表示部62とを備える。なお、各部60~62の配置やサイズは適宜変更してもよい。
【0064】
レベル選択部60は、表示対象とする要素を、例えば、ラジオボタン等による複数の選択肢から選択可能に構成されている。複数の選択肢としては、不安感レベルrの分布R、監視レベルdの分布D、及び、安全レベルsの分布Sが選択可能に構成されている。なお、レベル選択部60は、水平面照度p1の分布P1、空間開放度p2の分布P2、人流密度p3の分布P3、及び、環境指標レベルqn(q1~q3)の分布Qn(Q1~Q3)がさらに選択可能に構成されていてもよい。
【0065】
監視カメラ編集部61は、監視領域2に設置された既設の監視カメラ202の監視カメラ設置情報222(例えば、位置、監視範囲)を変更したり、新設の監視カメラ202をデータ表示部62に表示された監視領域2上に追加したりする操作を受付可能に構成されている。なお、監視カメラ編集部61にて変更や追加の操作が受け付けられた場合には、監視レベル算出部121及び安全レベル算出部122は、その操作に応じた監視カメラ202の監視カメラ設置情報222に基づいて監視レベルdの分布D及び安全レベルsの分布Sを再算出するようにすればよい。
【0066】
データ表示部62は、監視領域2を示す平面図に対して、レベル選択部60で選択された表示対象の要素に対応するデータ、すなわち、不安感レベルrの分布R、監視レベルdの分布D、及び、安全レベルsの分布Sを切替可能に重畳表示するように構成されている。また、データ表示部62は、監視カメラ編集部61にて受け付けた操作に応じて監視レベル算出部121及び安全レベル算出部122にて監視レベルdの分布D及び安全レベルsの分布Sが再算出された場合には、画面表示を更新するように構成されている。
【0067】
図6に示すデータ表示部62には、安全レベルsの分布Sが重畳表示されており、小領域Mの色が濃いほど、不安感レベルrが高い(不安感が大きい)ことを示す。なお、データ表示部62には、当該データの他に、例えば、平均値、最大値、最小値等の各種統計値が表示されてもよい。
【0068】
また、データ表示部62は、監視領域2の表示範囲や縮尺率を変更可能に構成されている。なお、データ表示部62に表示された安全レベルsの分布Sは、グレースケール及びカラースケールのいずれで表示されてもよいし、コンター図(等値線図)のように表示されてもよい。
【0069】
管理者は、管理者端末4に表示された表示画面6において、レベル選択部60を操作し、データ表示部62を視認することにより、監視領域2の状況を確認することができる。また、管理者は、既設の監視カメラ202の変更や新設の監視カメラ202の追加を検討する際、表示画面6において、監視カメラ編集部61を操作して、その操作前後での監視領域2の状況として、安全レベルsの分布Sを比較することにより、監視カメラ202の変更や追加を行ったときの効果(安全レベルsの変化)を事前に確認することができる。
【0070】
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0071】
なお、上記実施形態において、不安感レベル算出部120、監視レベル算出部121、及び、安全レベル算出部122が、小領域M毎の不安感レベルr、小領域M毎の監視レベルd、及び、小領域M毎の安全レベルsを算出する際に、時間の概念を導入することにより、小領域M毎の不安感レベルr、小領域M毎の監視レベルd、及び、小領域M毎の安全レベルsを時系列のデータとしてそれぞれ算出してもよい。これにより、昼間と夜間のように、各レベルを時間帯別に算出することができる。
【0072】
また、上記実施形態において、不安感レベル算出部120、監視レベル算出部121、及び、安全レベル算出部122が、小領域M毎の不安感レベルr、小領域M毎の監視レベルd、及び、小領域M毎の安全レベルsを算出する際に、高さ(Z軸)の概念を導入することにより、小領域M毎の不安感レベルr、小領域M毎の監視レベルd、及び、小領域M毎の安全レベルsを高さ別のデータとしてそれぞれ算出してもよい。これにより、フロア別や、地下通路と地上通路のように、各レベルを階層別に算出することができる。
【0073】
また、上記実施形態では、領域安全レベル評価装置1及び環境情報管理装置3は、別々の装置として説明したが、1つの装置で構成されていてもよい。また、領域安全レベル評価装置1は、複数の装置で構成されていてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、領域安全レベル評価プログラム110は、記憶部11に記憶されたものとして説明したが、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されてもよい。また、領域安全レベル評価プログラム110は、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供されてもよい。
【0075】
以上のように、上記実施形態に係る領域安全レベル評価装置1によれば、不安感レベル算出部120が、監視領域2の環境要素に基づいて、不安感レベルrを小領域M毎に算出し、監視レベル算出部121が、複数の監視カメラ202が有する監視範囲及び監視性能に基づいて監視レベルdを小領域M毎に算出し、安全レベル算出部122が、不安感レベルrと監視レベルdとを小領域M単位で安全レベルsに変換することにより、安全レベルsを小領域M毎に算出する。これにより、小領域M毎の安全レベルsは、不安感レベルrと監視レベルdとが小領域M単位で反映されて総合的に評価さるので、例えば、安全レベルsが低い小領域Mに監視カメラ202が設置されることで、監視領域2の管理者は、監視領域2全体において安全レベルsの分布を確認することができる。
【符号の説明】
【0076】
1…領域安全レベル評価装置、2…監視領域、3…環境情報管理装置、
4…管理者端末、5…ネットワーク、6…表示画面、
10…入力部、11…記憶部、12…制御部、13…通信部、14…出力部、
20…施設、21…環境情報、22…施設設置情報、23…施設取得情報、
30…データベース、
60…レベル選択部、61…監視カメラ編集部、62…データ表示部、
100…領域安全レベル評価システム、110…領域安全レベル評価プログラム、
120…不安感レベル算出部、121…監視レベル算出部、
122…安全レベル算出部、123…表示情報生成部、
200…建物、201…外灯、202…監視カメラ(撮像装置)、
203…入退出管理装置、220…建物設置情報、221…外灯設置情報、
222…監視カメラ設置情報、223…入退出管理装置設置情報、
230…監視カメラ取得情報、231…入退出管理装置取得情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7