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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162643
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】警告装置および警告方法
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20221018BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20221018BHJP
   E05F 15/74 20150101ALI20221018BHJP
   E05F 15/73 20150101ALI20221018BHJP
【FI】
B60J5/00 A
G08B21/00 U
E05F15/74
E05F15/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067541
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】大森 俊幸
【テーマコード(参考)】
2E052
5C086
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052BA06
2E052BA07
2E052EB03
2E052EC02
2E052EC05
2E052GA06
2E052GB06
2E052GC01
2E052GD02
2E052KA02
2E052KA27
2E052LA01
5C086AA22
5C086AA53
5C086BA22
5C086CA28
5C086CB36
5C086DA33
5C086FA06
5C086FA12
5C086FA13
(57)【要約】
【課題】ある人物がドアを介して車両に乗り込む際に、その人物がドアを開けたときに、その人物にとって好ましくない事態が生じ得る場合に、そのような事態が発生することを回避できるようにした「警告装置および警告方法」を提供する。
【解決手段】警告装置12は、車両に設けられた各ドアについて、ドアの内側のドア付近に車両の設備以外の物体が存在していることを検出する物体検出部30と、人物が車両に乗り込もうとしていることを検出すると共に、乗り込みに利用されるドアを注目ドアとして特定する乗り込み検出部31と、人物が車両に乗り込もうとしている場合において、注目ドアの内側の注目ドア付近に物体が存在している場合、その人物に警告する警告部32とを備え、乗り込みに利用するドアの内側に物体があるときに警告を行って、そのことを人物に認識させるようにしている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた各ドアについて、前記ドアの内側の前記ドア付近に前記車両の設備以外の物体が存在していることを検出する物体検出部と、
何れかの前記ドアから人物が前記車両に乗り込もうとしている場合に、人物が前記車両に乗り込もうとしていることを検出すると共に、乗り込みに利用される前記ドアを注目ドアとして特定する乗り込み検出部と、
人物が前記車両に乗り込もうとしていることが前記乗り込み検出部により検出された場合において、前記乗り込み検出部により特定された前記注目ドアの内側の前記注目ドア付近に前記物体が存在していることが前記物体検出部により検出されている場合、その人物に警告する警告部とを備える
ことを特徴とする警告装置。
【請求項2】
前記物体検出部は、前記ドアの内側の前記ドア付近に前記車両の設備以外の前記物体が存在していることを検出した場合、前記物体の種別を特定し、
前記警告部は、警告をする際に、前記物体の種別を明示した警告を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の警告装置。
【請求項3】
前記物体検出部は、前記ドアの内側の前記ドア付近に前記車両の設備以外の前記物体が存在していることを検出した場合、前記物体の状態を特定し、
前記警告部は、警告をする際に、前記物体の状態を明示した内容の警告を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の警告装置。
【請求項4】
前記物体検出部は、前記ドアの内側の前記ドア付近に前記車両の設備以外の前記物体が存在していることを検出した場合、前記物体の種別および状態を特定し、
前記警告部は、警告をする際に、前記物体の種別および状態を明示した内容の警告を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の警告装置。
【請求項5】
前記ドアに対応する位置に設けられたセンサへの足の近接或いは接触を検出し、前記センサへの足の近接或いは接触に応じて前記ドアを自動開扉する自動開扉システムが設けられ、
前記乗り込み検出部は、前記自動開扉システムが設けられた前記ドアについて、前記センサへの足の近接或いは接触が検出されたときに人物が前記車両に乗り込もうとしていることを検出すると共に、前記センサに対応する前記ドアを前記注目ドアとして特定し、
前記警告部は、人物が前記車両に乗り込もうとしていることが前記乗り込み検出部により検出された場合において、前記乗り込み検出部により特定された前記注目ドアの内側の前記注目ドア付近に前記物体が存在していることが前記物体検出部により検出されている場合、前記自動開扉システムによる前記ドアの自動開扉を禁止した上で、その人物に警告する
ことを特徴とする請求項1に記載の警告装置。
【請求項6】
前記乗り込み検出部は、それぞれの前記ドアの外側の領域を撮影する1つ以上の車外カメラから撮影画像を入力し、撮影画像に基づいて前記ドアの外側の人物の動作推定或いは姿勢推定を行って人物が前記車両に乗り込もうとしていることを検出する
ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の警告装置。
【請求項7】
前記物体検出部は、車内を撮影する1つ以上の車内カメラから撮影画像を入力し、撮影画像に基づいて前記ドアの内側の前記ドア付近に前記物体が存在していることを検出する
ことを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の警告装置。
【請求項8】
警告装置の物体検出部が、車両に設けられた各ドアについて、前記ドアの内側の前記ドア付近に前記車両の設備以外の物体が存在していることを検出し、また、前記警告装置の乗り込み検出部が、何れかの前記ドアから人物が前記車両に乗り込もうとしている場合に、人物が前記車両に乗り込もうとしていることを検出すると共に、乗り込みに利用される前記ドアを注目ドアとして特定するステップと、
前記警告装置の警告部が、人物が前記車両に乗り込もうとしていることが前記乗り込み検出部により検出された場合において、前記乗り込み検出部により特定された前記注目ドアの内側の前記注目ドア付近に前記物体が存在していることが前記物体検出部により検出されている場合、その人物に警告するステップとを含む
ことを特徴とする警告方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警告装置および警告方法に関し、特に、車両に関連する警告を行う警告装置、および、この警告装置による警告方法に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
一般に車両(自動車)にはドアが設けられており、車両に搭乗しようとする者は、ドアを介して車内に乗り込む。このような車両の主要部材の1つであるドアに関して、或いは、ドアを介した車両への乗り込みに関しては、様々な技術が提案されている。例えば特許文献1には、車外カメラユニット12によって車両に乗り込もうとしている人物が手荷物を有しているかどうかを判定し、手荷物を有している場合には、車内の空きスペースの状況を踏まえた最適なドアを選択し、自動で開扉する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-315024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで車両の車内において、ドアの内側のドア付近に、座席に着座する人間、ペット、荷物、その他の物体が存在することがある。そして従来、ある人物が車両に乗り込むためにドアを開けたときに、そのドアの内側に車両への乗り込みを阻害するような物体が存在していることに初めて気づき、結局、別のドアを介して車両に乗り込むことになるといった事態が発生することがあった。このような作業は、その人物にとって煩雑であった。またドアの内側でドアに対して物体が寄りかかっており、車両に乗り込もうとしている人物がそのことに気づかずにドアを開けてしまい、ドアが開いた瞬間にドアから物体が車外に排出されてしまうという事態が発生することがあった。このような事態が発生した場合、その人物は、車外に排出された物体を片付けなければならず、やはりその人物にとって煩雑であった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、ある人物がドアを介して車両に乗り込む際に、その人物がドアを開けたときに、その人物にとって好ましくない事態が生じ得る場合に、そのような事態が発生することを回避できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために本発明は、車両に設けられた各ドアについて、ドアの内側のドア付近に車両の設備以外の物体が存在していることを検出する機能を有しており、車両の何れかのドアから人物が車両に乗り込もうとしている場合に、人物が車両に乗り込もうとしていることを検出すると共に、乗り込みに利用されるドアを注目ドアとして特定し、特定した注目ドアの内側の注目ドア付近に物体が存在している場合には、その人物に警告するようにしている。
【発明の効果】
【0007】
上記のように構成した本発明によれば、ある人物があるドアから車両に乗り込もうとしている場合において、そのドアの内側のドア付近に車両の設備以外の物体が存在している場合には、その人物に対して警告がなされる。このため、その人物は、ドアを開ける前に、ドアの近傍に物体が存在していることを認識できると共に、その認識に基づいて、ドアを開けることによって生じ得る好ましくない事態を回避するための対策をとることができる。例えば、ドアから車両に乗り込もうとした人物は、問題なくドアを開けて車内に乗り込むことが可能かどうかを目視で改めて確認したり、ドアを開けることなく別のドアから車両の乗り込むといった対策をとることができる。すなわち本発明によれば、ある人物がドアを介して車両に乗り込む際に、その人物がドアを開けたときに、その人物にとって好ましくない事態が生じ得る場合に、そのような事態が発生することを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係る警告システムの構成例を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る警告装置の機能構成例を示すブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る警告装置の動作例を示すフローチャートである。
図4】本発明の第1実施形態に係る警告装置の動作例を示すフローチャートである。
図5】本発明の第1実施形態に係る警告装置の動作例を示すフローチャートである。
図6】本発明の第1実施形態に係る警告装置の動作例を示すフローチャートである。
図7】本発明の第2実施形態に係る警告システムの構成例を示す図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る警告装置の機能構成例を示すブロック図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る警告装置の動作例を示すフローチャートである。
図10】本発明の第2実施形態に係る警告装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る警告システム1の構成例を、警告システム1が搭載された車両2の構造と共に示す図である。ただし図1は、説明の便宜を考慮して車両2の構造を非常に純化している。図1を用いた説明において、前後左右は、図中で示す前後左右に従うものとする。図1で例示する車両2は、四人乗りの自動車であり、車両2の車内に運転席3、助手席4、右後部座席5および左後部座席6が設けられている。運転席3の右側には右前部ドア7が、助手席4の左側には左前部ドア8が、右後部座席5の右側には右後部ドア9が、左後部座席6の左側には左後部ドア10がそれぞれ設けられている。以下、右前部ドア7、左前部ドア8、右後部ドア9および左後部ドア10を総称して「サイドドア」という場合がある。右前部ドア7、左前部ドア8、右後部ドア9および左後部ドア10はそれぞれ、特許請求の範囲の「ドア」に相当する。
【0010】
図1で示すように警告システム1は、車両2に搭載されたシステムであり、警告装置12と、前部カメラ13と、後部カメラ14と、右サイドカメラ15と、左サイドカメラ16と、2つのスピーカ17とを含んで構成されている。図1では各部材を単純な形状のブロックによって表している。図1で示すように本実施形態に係る警告装置12は、車両2のダッシュボードの内部に設置されている。ただし警告装置12が設けられる場所はどこでもよい。
【0011】
前部カメラ13は、運転席3および助手席4を含む、車内の前部の領域を撮影する撮影装置である。特に前部カメラ13は、右前部ドア7の内側の領域であって右前部ドア7付近の領域19(以下、「右前部ドア内側領域19」という)を撮影範囲に含んでいる。本実施形態では右前部ドア内側領域19は、右前部ドア7の内側の面から運転席3に向かって広がる領域であって、運転席をほぼ含む領域とされている。更に前部カメラ13は、左前部ドア8の内側の領域であって左前部ドア8付近の領域20(以下、「左前部ドア内側領域20」という)を撮影範囲に含んでいる。本実施形態では左前部ドア内側領域20は、左前部ドア8の内側の面から助手席4に向かって広がる領域であって、助手席4をほぼ含む領域とされている。前部カメラ13は、所定の周期で撮影を実行し、撮影画像(撮影結果に基づいて生成される画像データ)を警告装置12に出力する。
【0012】
後部カメラ14は、右後部座席5および左後部座席6を含む、車内の後部の領域を撮影する撮影装置である。特に後部カメラ14は、右後部ドア9の内側の領域であって右後部ドア9付近の領域21(以下、「右後部ドア内側領域21」という)を撮影範囲に含んでいる。本実施形態では右後部ドア内側領域21は、右後部ドア9の内側の面から右後部座席5に向かって広がる領域であって、右後部座席5をほぼ含む領域とされている。更に後部カメラ14は、左後部ドア10の内側の領域であって左後部ドア10付近の領域22(以下、「左後部ドア内側領域22」という)を撮影範囲に含んでいる。本実施形態では左後部ドア内側領域22は、左後部ドア10の内側の面から左後部座席6に向かって広がる領域であって、左後部座席6をほぼ含む領域とされている。後部カメラ14は、所定の周期で撮影を実行し、撮影画像を警告装置12に出力する。
【0013】
以下、右前部ドア内側領域19、左前部ドア内側領域20、右後部ドア内側領域21および左前部ドア内側領域20を総称して「ドア内側領域」という場合がある。前部カメラ13および後部カメラ14はそれぞれ、特許請求の範囲の「車内カメラ」に相当する。
【0014】
右サイドカメラ15は、車両2の右サイドミラーに設けられた撮影装置である。右サイドカメラ15は、車両2の後方に向かう向きを光軸の向きとして撮影を実行する。右サイドカメラ15の撮影範囲には、右前部ドア7の外側において右前部ドア7に対向する一定の領域24(以下、「右前部ドア外側領域24」という)が含まれる。右前部ドア外側領域24は、人物が右前部ドア7から車両2に乗り込もうとする場合に滞在する領域である。更に、右サイドカメラ15の撮影範囲には、右後部ドア9の外側において右後部ドア9に対向する一定の領域25(以下、「右後部ドア外側領域25」という)が含まれる。右後部ドア外側領域25は、人物が右後部ドア9から車両2に乗り込もうとする場合に滞在する領域である。
【0015】
ある人物が右前部ドア7を介して車両2に乗り込もうとして右前部ドア7に近づくと、その人物の上半身を少なくとも含む身体が右サイドカメラ15により撮影され、また、ある人物が右後部ドア9を介して車両2に乗り込もうとして右後部ドア9に近づくと、その人物の上半身を少なくとも含む身体が右サイドカメラ15により撮影される。右サイドカメラ15は、所定の周期で撮影を実行し、撮影画像を警告装置12に出力する。
【0016】
左サイドカメラ16は、車両2の左サイドミラーに設けられた撮影装置である。左サイドカメラ16は、車両2の後方に向かう向きを光軸の向きとして撮影を実行する。左サイドカメラ16の撮影範囲には、左前部ドア8の外側において左前部ドア8に対向する一定の領域26(以下、「左前部ドア外側領域26」という)が含まれる。左前部ドア外側領域26は、人物が左前部ドア8から車両2に乗り込もうとする場合に滞在する領域である。更に左サイドカメラ16の撮影範囲には、左後部ドア10の外側において左後部ドア10に対向する一定の領域27(以下、「左後部ドア外側領域27」という)が含まれる。左後部ドア外側領域27は、人物が左後部ドア10から車両2に乗り込もうとする場合に滞在する領域である。
【0017】
従って、ある人物が左前部ドア8を介して車両2に乗り込もうとして左前部ドア8に近づくと、その人物の上半身を少なくとも含む身体が左サイドカメラ16により撮影され、また、ある人物が左後部ドア10を介して車両2に乗り込もうとして左後部ドア10に近づくと、その人物の上半身を少なくとも含む身体が左サイドカメラ16により撮影される。左サイドカメラ16は、所定の周期で撮影を実行し、撮影画像を警告装置12に出力する。
【0018】
以下、右前部ドア外側領域24、右後部ドア外側領域25、左前部ドア外側領域26、左後部ドア外側領域27を総称して「ドア外側領域」という場合がある。右サイドカメラ15および左サイドカメラ16はそれぞれ、特許請求の範囲の「車外カメラ」に相当する。
【0019】
2つのスピーカ17は、車外(車内ではなく)に音声を放音する。
【0020】
図2は、警告装置12の機能構成例を示すブロック図である。図2で示すように警告装置12は機能構成として、物体検出部30、乗り込み検出部31および警告部32を備えている。上記各機能ブロック30~32は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック30~32は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROM等を備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。また警告装置12は記憶手段として記憶部33を備えている。
【0021】
ここで車両2の車内において、サイドドアの内側のサイドドア付近に、座席に着座する人間、ペット、荷物、その他の物体が存在することがある。そして従来、ある人物が車両2に乗り込むためにサイドドアを開けたときに、そのサイドドアの内側に車両2への乗り込みを阻害するような物体(人間を含む)が存在していることに初めて気づき、結局、別のサイドドアを介して車両2に乗り込むことになるといった事態が発生することがあった。このような作業は、その人物にとって煩雑であった。またサイドドアの内側でサイドドアに対して物体が寄りかかっており、車両2に乗り込もうとしている人物がそのことに気づかずにサイドドアを開けてしまい、サイドドアが開いた瞬間にサイドドアから物体が車外に排出されてしまうという事態が発生することがあった。このような事態が発生した場合、その人物は、車外に排出された物体を片付けなければならず、やはりその人物にとって煩雑であった。この他、サイドドアを開けたときに、そのサイドドアの内側に赤ちゃんがいて、赤ちゃんを驚かせてしまったり、サイドドアを開けたときに、そのサイドドアの内側にペットがいて、ペットが飛び出てしまうという事態が生じることがあった。
【0022】
本実施形態に係る警告装置12は、以上の事情を踏まえ、以下の処理を実行する。
【0023】
物体検出部30は、車両2に設けられた各ドア(サイドドア)について、各ドアの内側のドア付近に車両2の設備以外の物体が存在していることを検出する。以下、物体検出部30の動作について詳述する。
【0024】
物体検出部30は、前部カメラ13および後部カメラ14から所定周期で入力する撮影画像に基づいて、右前部ドア内側領域19、左前部ドア内側領域20、右後部ドア内側領域21および左後部ドア内側領域22のそれぞれについて、対象物体(後述)が存在している状態か否かを判別する。以下、右前部ドア内側領域19に対象物体が存在しているか否かを判別するときの物体検出部30の処理について説明する。
【0025】
右前部ドア内側領域19に対象物体が存在しているか否かの判別に際し、物体検出部30は、前部カメラ13から所定周期で入力する撮影画像を継続して分析する。以下、前部カメラ13が出力する撮影画像を特に「前部撮影画像」という。あるタイミングで前部撮影画像を入力したときの物体検出部30の処理について詳述すると、物体検出部30は、入力した前部撮影画像において、右前部ドア内側領域19に対応する領域(=右前部ドア内側領域19が写っている領域)を特定する。以下、前部撮影画像において、右前部ドア内側領域19に対応する領域(=右前部ドア内側領域19が写っている領域)を「撮影画像右前部領域」という。前部カメラ13は車両2に対して固定されるものであり、前部撮影画像における撮影画像右前部領域は固定的な領域である。これを踏まえ、前部撮影画像における右前部ドア内側領域19に対応する領域は、予め定義されている。
【0026】
次いで物体検出部30は、画像処理技術により、撮影画像右前部領域に、車両2の設備以外の物体であって一定以上の大きさを有する対象物体が存在しているか否かを判別する。この処理の一例について説明すると、車両2の設備以外の物体が何もない状態で前部カメラ13により撮影が行われ、生成された前部撮影画像が背景画像として事前に用意される。そして物体検出部30は、撮影画像右前部領域について、事前に用意された背景画像と入力した前部撮影画像とに基づいて、背景差分法による物体検出を行う。処理の結果、撮影画像右前部領域に物体が検出されなければ物体検出部30は、撮影画像右前部領域に対象物体が存在していないと判定する。
【0027】
一方、撮影画像右前部領域に物体が検出された場合、物体検出部30は、検出された物体の画像を構成する画素の画素数を特定する。次いで物体検出部30は、特定した画素数が、撮影画像右前部領域の対象物体について予め定められた閾値以上の場合、撮影画像右前部領域に対象物体が存在していると判定する。一方、特定した画素数が当該閾値を下回る場合、物体検出部30は、撮影画像右前部領域に対象物体が存在していないと判定する。なお物体検出部30は、背景差分法による物体検出による物体検出の結果、複数の物体が検出された場合、画素数が閾値以上の物体が1つでも存在するときは、撮影画像右前部領域に対象物体が存在していると判定し、一方、画素数が閾値以上の物体が1つも存在しないときは、撮影画像右前部領域に対象物体が存在していないと判定する。
【0028】
ここで「物体の大きさが一定以上である」というときの「物体の大きさ」は理想的には、現実世界における3次元的な大きさ(前部カメラ13の撮影結果からは検知できない奥行きも含む大きさ)である。ただし、ある物体について、その物体の画像が前部撮影画像に占める領域の大きさと、その物体の現実世界における大きさは強く相関しており、本実施形態では、ある物体の画素数が閾値以上である場合には、その物体の大きさが一定以上であるとみなしている。
【0029】
以上、右前部ドア内側領域19に対象物体が存在しているか否かを判別するときの物体検出部30の処理について説明したが、説明した処理はあくまで単純化した一例であり、処理に際しては既存の各種技術を応用可能である。特に処理が、ディープラーニング、その他の機械学習の手法によって学習されたモデルを利用して行われてもよいことは勿論である。機械学習によって学習されたモデルを利用して、処理を実行してもよいことは、以下で説明する各処理(特に画像処理)についても同様である。
【0030】
物体検出部30は、右前部ドア内側領域19に対象物体が存在しているか否かを判別するときの方法と同様の方法で、左前部ドア内側領域20、右後部ドア内側領域21および左後部ドア内側領域22についても継続して、対象物体が存在しているか否かを判別する。そして物体検出部30は判別結果に基づいて、記憶部33に記憶されたステータスデータを随時、更新する。ステータスデータとは、ドア内側領域のそれぞれについてフラグを有するデータである。あるドア内側領域のフラグについて、フラグが立っている場合、そのドア内側領域に対象物体が存在していることを意味し、フラグが立っていない場合、そのドア内側領域に対象物体が存在していないことを意味する。
【0031】
物体検出部30は、あるドア内側領域(例えば右前部ドア内側領域19)について、対象物体が存在していると判定している間、そのドア内側領域のフラグ(例えば右前部ドア内側領域19)について、フラグが立った状態を維持する。逆に物体検出部30は、あるドア内側領域(例えば右前部ドア内側領域19)について、対象物体が存在していないと判定している間、そのドア内側領域のフラグ(例えば右前部ドア内側領域19)について、フラグが立っていない状態を維持する。この結果、ステータスデータを参照することにより、ステータスデータを参照したタイミングにおいて、対象物体が領域内に存在しているドア内側領域を特定することが可能である。
【0032】
乗り込み検出部31は、何れかのサイドドア(ドア)から人物が車両2に乗り込もうとしている場合に、人物が車両2に乗り込もうとしていることを検出すると共に、乗り込みに利用されるサイドドア(ドア)を注目ドアとして特定する。以下、乗り込み検出部31の処理について説明する。
【0033】
乗り込み検出部31は、右サイドカメラ15および左サイドカメラ16から所定周期で撮影画像を入力し、継続して撮影画像を分析する。そして乗り込み検出部31は、何れかのドア外側領域に人物が進入したか否かを判別する。人物が何れかのドア外側領域に進入したか否かの判別は、既存の画像処理技術により行われる。
【0034】
ドア外側領域に人物が進入したことを検出した場合、乗り込み検出部31は、そのドア外側領域内にその人物が位置している間、継続して撮影画像中のその人物の画像について分析し、その人物がそのドア外側領域に対応するサイドドアから車両2に乗り込もうとする動作を行ったか否かを監視する。乗り込み検出部31は、その人物が車両2に乗り込もうとする動作を行うことなく、その人物がそのドア外側領域の外に出た場合、その人物の画像について分析することを停止する。一方、乗り込み検出部31は、その人物がそのドア外側領域の外に出る前に、サイドドアから車両2に乗り込もうとする動作を行った場合、人物がそのサイドドアから車両2に乗り込もうとしていることを検出すると共に、そのサイドドアを注目ドアとして特定する。
【0035】
なお、ある人物があるドア外側領域に対応するサイドドアから車両2に乗り込もうとする動作を行ったか否かの監視は、例えば、以下の方法で行われる。すなわち乗り込み検出部31は、撮影画像を対象として既存の骨格検出技術によって人物の骨格検出を行う。骨格検出は、ドア外側領域内に人物が位置している間、継続して行われる。乗り込み検出部31は、検出した人物の骨格に基づいて随時、その人物の動作推定を実行し、人物の動作が「車両2に乗り込もうとしている動作」と推定される場合、その人物が車両2に乗り込もうとする動作を行ったと判定する。なお、「車両2に乗り込もうとしている動作」が行われるときの骨格のパターン等の、人物の動作が「車両2に乗り込もうとしている動作」と推定されるかどうかを分析するにあたって必要な情報、データは、事前に登録されている。なお乗り込み検出部31が、動作推定に代えて、画像処理技術に係る姿勢推定により「車両2に乗り込もうとしている姿勢」が行われたか否かを判定する構成でもよい。なお上述したように乗り込み検出部31の処理について、機械学習されたモデルを利用することができる。
【0036】
以下、一例として右前部ドア外側領域24を対象として乗り込み検出部31が実行する処理を説明する。乗り込み検出部31は、右サイドカメラ15から入力する撮影画像に基づいて、右前部ドア外側領域に人物が進入したか否かを監視する。右前部ドア外側領域に人物が進入したことを検出した場合、乗り込み検出部31は、撮影画像に基づいて、その人物が右前部ドア7から車両2に乗り込もうとする動作を行ったか否かを監視する。乗り込み検出部31は、その人物が車両2に乗り込もうとする動作を行うことなく右前部ドア外側領域の外に出た場合、その人物の画像について分析することを停止する。一方、乗り込み検出部31は、その人物がその右前部ドア外側領域24の外に出る前に、右前部ドア7から車両2に乗り込もうとする動作を行った場合、その人物が右前部ドア7から車両2に乗り込もうとしていることを検出すると共に、右前部ドア7を注目ドアとして特定する。
【0037】
警告部32は、乗り込み検出部31により人物が車両に乗り込もうとしていることが検出された場合において、乗り込み検出部31により特定された注目ドアの内側の注目ドア付近に物体が存在していることが物体検出部30により検出されている場合、その人物に警告する。以下、警告部32の動作について詳述する。
【0038】
警告部32は、乗り込み検出部31により、人物が車両2に乗り込もうとしていることが検出されたか否かを監視する。乗り込み検出部31により、人物が車両に乗り込もうとしていることが検出された場合、警告部32は、乗り込み検出部31により特定された注目ドアを認識する(つまり、何れのサイドドアを利用して乗り込もうとしているのかを認識する)。次いで警告部32は、記憶部33に記憶されたステータスデータを参照し、注目ドアのフラグが立っているか否かを判別する。フラグが立っている場合、注目ドアに対応するドア内側領域に対象物体が存在しているということであり、フラグが立っていない場合、注目ドアに対応するドア内側領域に対象物体が存在していないということである。
【0039】
警告部32は、注目ドアのフラグが立っている場合、所定の音声をスピーカ17から出力させる。所定の音声は、例えば電子的な警告音であり、また例えば『ドア付近に物体があります。注意してください』といった文言である。音声の出力は、人物に対する警告に相当する。一方、警告部32は、注目ドアのフラグが立っていない場合、上述したような警告を行わない。
【0040】
以上の通り本実施形態によれば、警告装置12は、車両2に設けられた各ドア(サイドドア)について、ドアの内側のドアの付近に車両2の設備以外の物体が存在していることを検出する機能を有しており、車両2の何れかのドアから人物が車両2に乗り込もうとしている場合に、人物が車両2に乗り込もうとしていることを検出すると共に、乗り込みに利用されるドアを注目ドアとして特定し、特定した注目ドアの内側の注目ドア付近に物体が存在している場合には、その人物に警告する。
【0041】
この構成によれば、人物があるドアから車両2に乗り込もうとしている場合において、そのドアの内側のドア付記員に車両2の設備以外の物体が存在している場合には、その人物に対して警告がなされることになる。このため、その人物は、ドアを開ける前に、ドアの近傍に物体が存在していることを認識できると共に、その認識に基づいて、ドアを開けることによって生じ得る好ましくない事態を回避するための対策をとることができる。例えば人物は、問題なくドアを開けて車内に乗り込むことが可能かどうかを目視で改めて確認したり、ドアを開けることなく別のドアから車両の乗り込むといった対策をとることができる。すなわち本実施形態によれば、ある人物がドアを介して車両2に乗り込む際に、その人物がドアを開けたときに、その人物にとって好ましくない事態が生じ得る場合に、そのような事態が発生することを回避できる。
【0042】
次に本実施形態に係る警告装置12の警告方法についてフローチャートを用いて説明する。図3は、警告装置12の主要な動作を示すフローチャートである。図3で示すように、警告装置12の物体検出部30は、車両2に設けられた各サイドドアについて、サイドドアの内側のサイドドア付近に車両2の設備以外の物体が存在していることを検出する。また、警告装置12の乗り込み検出部31は、何れかのドアから人物が車両に乗り込もうとしている場合に、人物が車両2に乗り込もうとしていることを検出すると共に、乗り込みに利用されるドアを注目ドアとして特定する(ステップSA1)。警告装置12の警告部32は、人物が車両2に乗り込もうとしていることが乗り込み検出部31により検出された場合において、乗り込み検出部31により特定された注目ドアの内側の注目ドア付近に物体が存在していることが物体検出部30により検出されている場合、その人物に警告する(ステップSA2)。
【0043】
図4は、物体検出部30の処理の詳細を示すフローチャートである。特に図4は、あるタイミングで撮影画像を入力したときの物体検出部30の処理を示している。物体検出部30は、入力した撮影画像を分析し、ドア内側領域のそれぞれについて、対象物体が存在しているか否かを判別する(ステップSB1)。物体検出部30は、ステップSB1の判別結果に基づいて、対象物体が存在しているドア内側領域に対応するフラグについてはフラグが立った状態とし、対象物体が存在していないドア内側領域に対応するフラグについてはフラグが立っていない状態とする(ステップSB2)。
【0044】
図5は、乗り込み検出部31の処理の詳細を示すフローチャートである。乗り込み検出部31は、右サイドカメラ15および左サイドカメラ16から入力する撮影画像に基づいて何れかのドア外側領域に人物が進入したか否かを監視する(ステップSC1)。あるドア外側領域に人物が進入したことを検出した場合(ステップSC1:YES)、乗り込み検出部31は、その人物がそのドア外側領域の外に出たか否かを監視しつつ(ステップSC2)、その人物がそのドア外側領域に対応するサイドドアから車両2に乗り込もうとする動作を行ったか否かを監視する(ステップSC3)。
【0045】
乗り込み検出部31は、その人物が車両2に乗り込もうとする動作を行うことなく、その人物がそのドア外側領域の外に出た場合(ステップSC2:YES)、その人物の画像について分析することを停止する(ステップSC4)。その後、処理手順はステップSC1へ戻る。一方、乗り込み検出部31は、その人物がそのドア外側領域の外に出る前に、サイドドアから車両2に乗り込もうとする動作を行った場合(ステップSC3:YES)、人物がそのサイドドアから車両2に乗り込もうとしていることを検出すると共に、そのサイドドアを注目ドアとして特定する(ステップSC5)。
【0046】
図6は、警告部32の処理の詳細を示すフローチャートである。図6で示すように警告部32は、乗り込み検出部31により、人物が車両に乗り込もうとしていることが検出されたか否かを監視する(ステップSD1)。乗り込み検出部31により、人物が車両に乗り込もうとしていると判定された場合(ステップSD1:YES)、警告部32は、乗り込み検出部31により特定された注目ドアを認識する(ステップSD2)。次いで警告部32は、記憶部33に記憶されたステータスデータを参照し、注目ドアのフラグが立っているか否かを判別する(ステップSD3)。
【0047】
警告部32は、注目ドアのフラグが立っている場合(ステップSD3:YES)、所定の音声をスピーカ17から出力させ、警告する(ステップSD4)。一方、警告部32は、注目ドアのフラグが立っていない場合、警告を行わない(ステップSD5)。
【0048】
<第1実施形態の変形例>
次に第1実施形態の変形例について説明する。本変形例に係る物体検出部30は、第1実施形態の処理に代えて以下の処理を実行する。すなわち本変形例に係る物体検出部30は、右前部ドア内側領域19、左前部ドア内側領域20、右後部ドア内側領域21および左後部ドア内側領域22のそれぞれについて対象物体が存在している状態か否かを判別すると共に、対象物体が存在している場合には、対象物体の種別および物体の状態を特定する。
【0049】
詳述すると本変形例に係る物体検出部30は、第1実施形態と同様の方法で、ドア内側領域に対象物体が存在している場合には、そのことを検出する。そして本変形例に係る物体検出部30は、対象物体の種別を特定する。本変形例では対象物体の種別の種類として複数の種類が予め定義されている。一例として対象物体の種別の種類は、人間(大人、子供、赤ちゃん等に更に細かく分けてもよい)、ペットおよび荷物である(ただし、これらはあくまで一例である)。そして本変形例に係る物体検出部30は、対象物体について物体認識、その他の画像処理を行って、対象物体の種別の種類として予め定義された複数の種類から、対象物体の種別の種類を特定(識別)する。
【0050】
更に本変形例係る物体検出部30は、画像処理技術によって対象物体の状態を特定する。本変形例では、対象物体の状態が分類されることによって、対象物体の状態として複数の種類が予め定義されている。一例として対象物体の状態の種類は、「サイドドアに接触している状態」、「サイドドアに近接している状態(接触していないものの非常に近い場所に位置している状態)」および「サイドドアから離れている状態」である(ただし、これらはあくまで一例である)。そして本変形例に係る物体検出部30は、対象物体について物体認識、その他の画像処理を行って、対象物体の状態の種類として予め定義された複数の種類から、対象物体の状態の種類を特定(識別)する。
【0051】
ここで本変形例に係るステータスデータは、ドア内側領域のそれぞれについて、フラグに加えて、対象物体の種別の種類を示す情報(以下「種別種類情報」という)、および、対象物体の状態の種類を示す情報(以下「状態種類情報」という)を含んでいる。物体検出部30は、対象物体を検出した場合には、対応するフラグを立てると共に、特定した対象物体の種別の種類に基づいて種別種類情報の値を更新し、更に特定した対象物体の状態の種類に基づいて状態種類情報の値を更新する。
【0052】
また本変形例に係る警告部32は、第1実施形態の処理に代えて以下の処理を実行する。すなわち本変形例に係る警告部32は、注目ドアのフラグが立っている場合、人物に対して警告する。その際、本変形例に係る警告部32は、ステータスデータの対応する種別種類情報および状態種類情報を参照することによって、対象物体の種別(の種類)および対象物体の状態(の種類)を認識し、種別(の種類)と状態(の種類)との組み合わせに応じた態様で警告を行う。
【0053】
具体的には本変形例に係る警告部32は、スピーカ17から文言を音声として出力することにより、警告を行う。そして本変形例に係る警告部32は、文言の内容を、対象物体の種別(の種類)および対象物体の状態(の種類)が明示され、かつ、種別と状態との組み合わせに応じて車両2に乗り込もうとしている人物が注意すべき点が明示された内容とする。一例として、物体検出部30により特定された対象物体の種別の種類が「荷物」であり、対象物体の状態の種類が「サイドドアに接触している状態」であったとする。この場合、本変形例に係る警告部32は例えば、『荷物がドアに寄りかかっています。十分にご注意ください。』といった文言をスピーカ17から放音させる。なお文言は、対象物体の種別(の種類)と対象物体の状態(の種類)との組み合わせごとに用意される。
【0054】
本変形例の構成によれば、あるサイドドアから車両2に進入しようとしている人物に対して、そのサイドドアの内側の状態をより詳細に伝えることができ、その人物がより的確な対策がとれるようにすることができる。
【0055】
なお本変形例では、対象物体の種別および対象物体の状態の双方が特定され、警告される構成であった。この点に関し、以下の構成としてもよい。すなわち、物体検出部30が、サイドドアの内側のサイドドア付近に車両2の設備以外の物体が存在していることを検出した場合、物体の種別を特定し、警告部32が、警告をする際に、物体の種別を明示した警告を行う構成でもよい。また物体検出部30が、サイドドアの内側のサイドドア付近に車両2の設備以外の物体が存在していることを検出した場合、物体の状態を特定し、警告部32が、警告をする際に、物体の状態を明示した内容の警告を行う構成でもよい。
【0056】
<第2実施形態>
次に第2実施形態について説明する。以下の説明において第1実施形態の要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。図7は、本実施形態に係る警告システム1Aの構成例を、警告システム1Aが搭載された車両2Aの構造と共に示す図である。図8は、本実施形態に係る警告装置12Aの機能構成例を示すブロック図である。図8で示すように、本実施形態に係る警告装置12Aは、第1実施形態に係る乗り込み検出部31に代えて乗り込み検出部31Aを備え、第1実施形態に係る警告部32に代えて警告部32Aを備えている。図7で示すように車両2Aには第1実施形態に係る右サイドカメラ15および左サイドカメラ16は設けられていない(当然、設けられていてもよい)。
【0057】
図7図8で示すように車両2Aには、自動開扉システム40が設けられている。自動開扉システム40は、ドアノブを利用することなく、サイドドアの下方であって車体の下に足を挿入することによってサイドドアを開状態とすることを可能とするシステムである。以下まず、自動開扉システム40の基本的な動作について説明する。
【0058】
図7で示すように車両2Aの右前部ドア7の下方であって、車体の裏側には、右前部近接センサ41(特許請求の範囲の「センサ」に相当)が設けられている。右前部近接センサ41は、当該センサに対して物体が近接したことを検出する近接センサである。同様に、左前部ドア8の下方には左前部近接センサ42が、右後部ドア9の下方には右後部近接センサ43が、左後部ドア10の下方には左後部近接センサ44がそれぞれ設けられている。以下、右前部近接センサ41、左前部近接センサ42、右後部近接センサ43および左後部近接センサ44を総称して「近接センサ」という。図8で示すように近接センサのそれぞれは、自動開扉システム40だけでなく、乗り込み検出部31Aおよび警告部32Aに接続されており、検出値を乗り込み検出部31Aに出力する。
【0059】
自動開扉システム40は、事前に定められた機能有効条件(例えばサイドドアのキーが開錠されてから所定の時間以内という条件)が成立している状態において、何れかの近接センサに物体が近接したことを検出すると、警告部32から許可信号(許可信号の意義については後に明らかとなる)を入力するまで、自動でサイドドアを開状態とする(以下、「自動開扉」という)ことなく待機する。自動開扉システム40は、許可信号を入力した場合、その近接センサに対応するサイドドア(その近接センサの上方のサイドドア)を自動開扉する。車両2Aに乗り込もうとする人物は、自身が利用しようとしているサイドドアの下方に自身の足を挿入し、対応する近接センサに物体の近接を検出させることによって、そのサイドドアを自動で開状態とすることができる。
【0060】
本実施形態に係る警告装置12Aは、このような自動開扉システム40が車両2Aに設けられていることを好適に活用した処理を実行する。以下、警告装置12Aの動作について詳述する。
【0061】
乗り込み検出部31Aは、近接センサ(センサ)への足の近接が検出されたときに人物が車両2Aに乗り込もうとしていることを検出すると共に、その近接センサに対応するスライドドアを注目ドアとして特定する。以下、乗り込み検出部31Aについて詳述する。
【0062】
上述したように、近接センサのそれぞれは乗り込み検出部31Aに接続されている。そして機能有効条件が成立している状態のとき、乗り込み検出部31Aは、何れかの近接センサが足(足ではない可能性もあるが、説明の便宜上、足とする)の近接を検出したか否かを監視する。
【0063】
何れかの近接センサが足の近接を検出した場合、乗り込み検出部31Aは、ある人物が車両2Aに乗り込もうとしていることを検出する。更に乗り込み検出部31Aは、足の近接を検出した近接センサに対応するサイドドア(近接センサの上方のサイドドア)を注目ドアとして特定する。
【0064】
警告部32Aは、人物が車両2Aに乗り込もうとしていることが乗り込み検出部31Aにより検出された場合において、乗り込み検出部31Aにより特定された注目ドアの内側の注目ドア付近に物体が存在していることが物体検出部30により検出されている場合、自動開扉システム40によるサイドドア(ドア)の自動開扉を禁止した上で、その人物に警告する。以下、警告部32Aの処理について詳述する。
【0065】
警告部32Aは、乗り込み検出部31Aにより、人物が車両2Aに乗り込もうとしていることが検出されたか否かを監視する。乗り込み検出部31Aにより、人物が車両2Aに乗り込もうとしていることが検出された場合、警告部32Aは、乗り込み検出部31Aにより特定された注目ドアを認識する(つまり、注目ドアが何れのサイドドアであるかを認識する)。次いで警告部32Aは、記憶部33に記憶されたステータスデータを参照し、注目ドアのフラグが立っているか否かを判別する。
【0066】
警告部32Aは、注目ドアのフラグが立っている場合(=注目ドアに対応するドア内側領域に対象物体が存在している場合)、自動開扉システム40に対して許可信号を出力しない。この処理は、自動開扉システム40による自動開扉を禁止する処理に相当する。次いで警告部32Aは、所定の音声をスピーカ17から出力させて、車両2Aに乗り込もうとしている人物に警告する。
【0067】
この警告後、再び、注目ドアに対応する近接センサが足の近接を検出した場合、警告部32Aは、自動開扉システム40に許可信号を出力する。上述した通り、自動開扉システム40は、許可信号の入力に応じて、注目ドアを自動開扉する。なお警告後に再び注目ドアに対応する近接センサが足の近接を検出した場合、車両2Aに乗り込もうとしている人物が警告を認識し、注目ドアが自動開扉されても問題ないことを確認した上で、再び自動開扉を指示したものと想定される。
【0068】
一方、注目ドアのフラグが立っていない場合(=注目ドアに対応するドア内側領域に対象物体が存在していない)、警告部32Aは、自動開扉を禁止することなく、即座に許可信号を自動開扉システム40に出力し、注目ドアを自動開扉させる。
【0069】
本実施形態の構成によれば、以下の効果を奏する。すなわち、あるサイドドアから車両2Aに乗り込もうとしている人物が、自動開扉システム40に自動開扉を行わせるべく、そのサイドドアに対応する近接センサに足を近づけた場合であっても、そのサイドドアに対応するドア内側領域に対象物体が存在している場合には、自動開扉が行われず、警告がなされる。従って、ドア内側領域に対象物体が存在している状態において、即座に自動開扉が行われ、車両2Aに乗り込もうとしている人物にとって好ましくない事態が生じてしまうことを防止できる。
【0070】
次に本実施形態に係る警告装置12Aの警告方法についてフローチャートを用いて説明する。図9は、乗り込み検出部31Aの処理の詳細を示すフローチャートである。図9で示すように機能有効条件が成立している状態において、乗り込み検出部31Aは、何れかの近接センサが足の近接を検出したか否かを監視する(ステップSE1)。
【0071】
何れかの近接センサが足の近接を検出した場合、乗り込み検出部31Aは、ある人物が車両2Aに乗り込もうとしていることを検出する(ステップSE2)。更に乗り込み検出部31Aは、足の近接を検出した近接センサに対応するサイドドアを注目ドアとして特定する(ステップSE3)。
【0072】
図10は、警告部32Aの処理の詳細を示すフローチャートである。図10で示すように警告部32Aは、乗り込み検出部31Aにより、人物が車両2Aに乗り込もうとしていることが検出されたか否かを監視する(ステップSF1)。乗り込み検出部31Aにより、人物が車両2Aに乗り込もうとしていることが検出された場合(ステップSF1:YES)、警告部32Aは、乗り込み検出部31Aにより特定された注目ドアを認識する(ステップSF2)。次いで警告部32Aは、記憶部33に記憶されたステータスデータを参照し、注目ドアのフラグが立っているか否かを判別する(ステップSF3)。
【0073】
警告部32Aは、注目ドアのフラグが立っている場合(ステップSF3:YES)、自動開扉システム40に対して許可信号を出力しない(ステップSF4)。次いで警告部32Aは、所定の音声をスピーカ17から出力させて、車両2Aに乗り込もうとしている人物に警告する(ステップSF5)。
【0074】
この警告後、警告部32Aは、再び注目ドアに対応する近接センサが足の近接を検出したか否かを監視する(ステップSF6)。検出した場合(ステップSF6:YES)、警告部32Aは、自動開扉システム40に許可信号を出力する(ステップSF7)。一方、ステップSF3において注目ドアのフラグが立っていない場合(ステップSF3:NO)、警告部32Aは、自動開扉を禁止することなく、即座に許可信号を自動開扉システム40に出力し、注目ドアを自動開扉させる(ステップSF8)。
【0075】
以上、本発明の実施形態(変形例を含む)を説明したが、各実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0076】
例えば第1実施形態において、物体検出部30は、サイドドア付近に位置し、一定以上の大きさを有する物体を対象物体とした。これは、サイドドア付近に物体が存在する場合であっても、ある程度の大きさがないと車両2への乗り込みを阻害しないことを鑑みたものである。しかしながら、大きさにかかわらず、サイドドア付近に物体が存在している場合には、車両2への乗り込みが阻害される可能性があることを踏まえ、物体検出部30が、大きさにかかわらず、サイドドア付近に存在する物体を対象物体とする構成でもよい。以上の事項は第2実施形態についても同様である。
【0077】
また第1実施形態では、警告部32による警告は、音声により行われる構成であった。しかしなら警告部32による警告の方法は、第1実施形態で例示した方法に限られない。一例として、各サイドドアにLEDを設け、LEDを所定の態様で点滅させる構成でもよい。この場合、第1実施形態の変形例では例えば、対象物体の種類と、対象物体の状態との組み合わせ毎に、LEDの点滅のパターンが用意され、警告部32は、当該組み合わせに応じたパターンでLEDを点滅させる。以上のことは第2実施形態についても同様である。
【0078】
また第1実施形態のドア内側領域、つまり、ドアの内側であってドア付近の領域の態様は、第1実施形態で例示した態様に限らない。すなわち、「ドアの内側であってドア付近の領域」は、車両2に乗り込もうとしている人物への警告の必要性、車両の構造、その他の事情を考慮して適宜、定められるべきものである。
【0079】
第1実施形態の変形例について、警告部32が、対象物体の種別が特定の種別である場合にのみ警告を行う構成でもよい。また警告部32が、対象物体の状態が特定の状態である場合にのみ警告を行う構成でもよい。警告部32が、対象物体の種別と状態との組み合わせが特定の種別と状態との組み合わせである場合にのみ警告を行う構成でもよい。
【0080】
第2実施形態に第1実施形態の変形例を適用してもよいことは勿論である。
【0081】
第2実施形態の近接センサについて、物体の近接を検出するセンサではなく、物体の接触を検出するセンサとしてもよい。
【0082】
第2実施形態では、全てのサイドドアについて自動開扉システム40による自動開扉が可能な構成であったが、これを一部のサイドドアについてのみ自動開扉システム40による自動開扉が可能な構成としてもよい。
【符号の説明】
【0083】
2、2A 車両
7 右前部ドア(ドア)
8 左前部ドア(ドア)
9 右後部ドア(ドア)
10 左後部ドア(ドア)
12、12A 警告装置
13 前部カメラ(車内カメラ)
14 後部カメラ(車内カメラ)
15 右サイドカメラ(車外カメラ)
16 左サイドカメラ(車外カメラ)
30 物体検出部
31、31A 乗り込み検出部
32、32A 警告部
40 自動開扉システム
41 右前部近接センサ(センサ)
42 左前部近接センサ(センサ)
43 右後部近接センサ(センサ)
44 左後部近接センサ(センサ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10