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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162667
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】除去装置及び除去方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/18 20060101AFI20221018BHJP
   A61L 2/08 20060101ALI20221018BHJP
   A61L 2/02 20060101ALI20221018BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20221018BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20221018BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20221018BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20221018BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20221018BHJP
   A61L 9/16 20060101ALI20221018BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20221018BHJP
   A61L 9/18 20060101ALI20221018BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20221018BHJP
   C25D 11/04 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
B01D61/18
A61L2/08 110
A61L2/02 100
B01D69/00
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/02
B01D71/02 500
A61L9/00 C
A61L9/16 F
C02F1/44 A
C02F1/44 D
A61L9/18
B01J35/02 J
C25D11/04 305
C25D11/04 312A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067584
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】521157362
【氏名又は名称】株式会社光触媒研究院
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(74)【代理人】
【識別番号】100198661
【弁理士】
【氏名又は名称】久保寺 利光
(72)【発明者】
【氏名】藤嶋 昭
(72)【発明者】
【氏名】益田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】細田 和夫
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
4D006
4G169
【Fターム(参考)】
4C058AA20
4C058AA30
4C058BB02
4C058BB06
4C058BB09
4C058EE26
4C180AA07
4C180CC03
4C180DD09
4C180EA27X
4C180HH15
4D006GA06
4D006GA07
4D006HA41
4D006KA02
4D006KA12
4D006KA33
4D006KB14
4D006KB30
4D006KD30
4D006KE07Q
4D006KE08Q
4D006MA03
4D006MA09
4D006MA22
4D006MA24
4D006MA27
4D006MA31
4D006MC02
4D006MC03
4D006MC09
4D006PA01
4D006PB02
4D006PB17
4D006PB24
4D006PB55
4G169AA08
4G169BA01
4G169BA04
4G169BC16A
4G169BC50
4G169BD02
4G169DA05
4G169EA07
4G169EB10
4G169EE06
4G169FA06
4G169FB15
4G169FB42
4G169HA01
4G169HB01
4G169HD07
4G169HD10
4G169HE07
(57)【要約】
【課題】気体中や液体中の菌やウイルスなどの除去対象微少物を従来よりも高い除去率で除去する除去装置を提供する。
【解決手段】気体又は液体が流れる流路20と、前記流路中に配置され、細孔を複数有するメンブレン12と、を備え、前記メンブレンは、金属酸化物からなり、前記細孔の平均孔径が5nm以上1000nm以下であり、前記細孔の孔径分布における相対標準偏差が10%以下であることを特徴とする。金属酸化物としては酸化アルミニウムであることが好ましい。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体又は液体が流れる流路と、
前記流路中に配置され、細孔を複数有するメンブレンと、を備え、
前記メンブレンは、金属酸化物からなり、
前記細孔の平均孔径が5nm以上1000nm以下であり、前記細孔の孔径分布における相対標準偏差が10%以下であることを特徴とする除去装置。
【請求項2】
気体又は液体中の菌又はウイルスを除去することを特徴とする請求項1に記載の除去装置。
【請求項3】
前記細孔の孔径分布における相対標準偏差が5%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の除去装置。
【請求項4】
前記細孔の孔径分布における相対標準偏差が2%以下であることを特徴とする請求項3に記載の除去装置。
【請求項5】
前記メンブレンの空孔率が20%以上40%以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の除去装置。
【請求項6】
前記細孔は、前記メンブレンの面方向と垂直な方向に形成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の除去装置。
【請求項7】
前記細孔の開口部の形状が円形であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の除去装置。
【請求項8】
前記金属酸化物は、酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の除去装置。
【請求項9】
前記メンブレンの厚みが、10μm以上200μm以下であることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の除去装置。
【請求項10】
前記メンブレンは、光触媒層を有していることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の除去装置。
【請求項11】
前記光触媒層は、前記メンブレンの一方の面に形成され、該光触媒層が形成される面は前記流路における上流側であることを特徴とする請求項10に記載の除去装置。
【請求項12】
前記光触媒層に光を照射する照射手段を備え、
前記照射手段は、前記流路中であって前記メンブレンよりも上流側に配置されるか、又は、前記流路外であって前記メンブレンの側面側に配置されることを特徴とする請求項10又は11に記載の除去装置。
【請求項13】
前記流路中であって前記メンブレンよりも上流側に、前記メンブレンの平均孔径よりも大きい平均孔径を有するプレフィルタを備えることを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の除去装置。
【請求項14】
前記メンブレンの平均孔径よりも大きい平均孔径を有するサポータを備え、
前記サポータは、前記メンブレンよりも下流側であり、前記メンブレンに接触して配置されていることを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載の除去装置。
【請求項15】
前記流路中の気体又は液体の圧力を調整する圧力調整手段を備え、
前記圧力調整手段は、前記メンブレンよりも上流側で圧力を印加する、又は、前記メンブレンよりも下流側で圧力を低圧にすることを特徴とする請求項1~14のいずれかに記載の除去装置。
【請求項16】
気体又は液体が流れる流路中に配置され、細孔を複数有するメンブレンに、気体又は液体を流す除去方法であって、
前記メンブレンは、金属酸化物からなり、
前記細孔の平均孔径が5nm以上1000nm以下であり、前記細孔の孔径分布における相対標準偏差が10%以下であることを特徴とする除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除去装置及び除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、水や空気の浄化について種々の技術が提案されている。また最近では、インフルエンザウイルスやコロナウイルス等について特に関心が高まっており、気体や液体中の有害物の除去に関する技術が注目を集めている。
【0003】
例えば、特許文献1には、約6を超えるレトロウイルス対数減少値(LRV)の濾過媒体を用いたウイルス除去方法が記載されている。これにより、ウイルス等の微少物を液体サンプルから除去できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-124179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、濾過媒体の細孔の大きさが不均一であり、ねらいとする菌やウイルスの除去率について高い除去率が得られておらず、更なる向上が求められている。従来技術では、濾過媒体の細孔の一部が除去の対象となる微少物(除去対象微少物)以外の微少物をトラップしてしまうことや、濾過媒体の細孔の一部が除去対象微少物をトラップできずに透過してしまうことがあった。
【0006】
そこで本発明は、気体中や液体中の菌やウイルスなどの除去対象微少物を従来よりも高い除去率で除去する除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の除去装置は、気体又は液体が流れる流路と、前記流路中に配置され、細孔を複数有するメンブレンと、を備え、前記メンブレンは、金属酸化物からなり、前記細孔の平均孔径が5nm以上1000nm以下であり、前記細孔の孔径分布における相対標準偏差が10%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、気体中や液体中の菌やウイルスなどの除去対象微少物を従来よりも高い除去率で除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】実施例1のメンブレンのSEM画像である。
図1B】比較例1のメンブレンのSEM画像である。
図2】実施例1及び比較例1のメンブレンの孔径分布の一例である。
図3】正規分布における標準偏差と累積積算値の関係を説明するための参考図である。
図4】本発明に用いられるメンブレンの一例における除去の様子を説明するための図(A)及びSEM画像(B)である。
図5】陽極酸化の条件によりメンブレンの細孔周期が変化することを説明するための図である。
図6】本発明に用いられるメンブレンの一例における断面模式図である。
図7】本発明に用いられるメンブレンの他の例における断面模式図である。
図8】本発明の除去装置の一例における要部模式図である。
図9】本発明の除去装置の他の例における要部模式図である。
図10】本発明の除去装置の他の例における要部模式図である。
図11】本発明の除去装置の他の例における要部模式図である。
図12】本発明の除去装置の他の例における要部模式図である。
図13】本発明の除去装置の他の例における要部模式図である。
図14】本発明の除去装置の他の例における要部模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る除去装置及び除去方法について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0011】
本発明の除去装置は、気体又は液体が流れる流路と、前記流路中に配置され、細孔を複数有するメンブレンと、を備え、前記メンブレンは、金属酸化物からなり、前記細孔の平均孔径が5nm以上1000nm以下であり、前記細孔の孔径分布における相対標準偏差が10%以下であることを特徴とする。
【0012】
本発明の除去方法は、気体又は液体が流れる流路中に配置され、細孔を複数有するメンブレンに、気体又は液体を流す除去方法であって、前記メンブレンは、金属酸化物からなり、前記細孔の平均孔径が5nm以上1000nm以下であり、前記細孔の孔径分布における標準偏差が5nm以下であることを特徴とする。
【0013】
(メンブレン)
本発明で用いられるメンブレンは、装置の流路中に配置され、細孔を複数有し、金属酸化物からなる。また、細孔の平均孔径が5nm以上1000nm以下であり、細孔の孔径分布における相対標準偏差が10%以下である。相対標準偏差は、細孔の孔径分布における標準偏差/平均孔径で求める。なお、メンブレンが有する細孔を貫通孔などと称してもよい。
【0014】
図1Aに、本発明で用いられるメンブレンの一例におけるSEM(走査型電子顕微鏡)画像を示す。図1Aに示す例(実施例1)は、アノード酸化(陽極酸化)によって得られたアルミナメンブレンの一例である。本実施形態では、アルミナ(酸化アルミニウム)からなるメンブレンをアルミナメンブレンと称することがある。
【0015】
実施例1のメンブレンは、平均細孔径が50nmであり、標準偏差が2.1nmである。また、相対標準偏差(標準偏差/平均値)は4.2%である。本実施形態で用いられるメンブレンは、高い規則性で細孔が形成されているため、高規則性メンブレンなどと称することがある。
【0016】
本実施形態で用いられるメンブレンにおいて、平均細孔径は、例えばSEM画像を取得し、画像解析ソフトを用いて測定する。また、画像解析ソフトを用いて孔径の分布を取得し、孔径の分布から標準偏差を測定する。
【0017】
図1Bに、比較例1のアルミナメンブレンのSEM画像を示す。比較例1のアルミナメンブレンは、平均細孔径が50nmであるが、標準偏差が5.2nmであり、相対標準偏差は10.4%であるため、本発明に含まれない例である。このように、低い規則性で細孔が形成されているメンブレンを低規則性メンブレンなどと称することがある。
【0018】
図2に、実施例1と比較例1の細孔径の分布を示す。図2は、実施例1及び比較例1のアルミナメンブレンに形成される細孔径の分布が正規分布であるとした場合の分布である。図示されるように、実施例1ではシャープな分布となるが、比較例1ではブロードな分布となる。図2に示す例において、実施例1のメンブレンでは孔径が50nm付近の割合が多くなっているのに対し、比較例1のメンブレンでは孔径が50nm付近の割合が小さくなっている。
【0019】
一般的な知識として、標準偏差をσで表したとき、平均値から±1σの範囲では約68.2%の累積積算値となる。同様に、±2σ、±3σ・・・の範囲では累積積算値は以下のようになる。
±1σ:約68.2%
±2σ:約95.4%
±3σ:約99.7%
±4σ:約99.99%
±5σ:約99.9999%
±6σ:約99.999999%
【0020】
図3に、正規分布における標準偏差と累積試算値との関係を参考として示す。なお、横軸を標準偏差としているが、孔径などと読み替えてもよい。
【0021】
菌やウイルスの除去に関して、どの程度除去したか、どの程度除去できるかについての指標の一つとしてLRV(Log Reduction Value:対数減少値)が用いられる。LRVはプロセスの前後における菌やウイルスの数や感染価等の比率により求めることができる。一般的にLRVは指標菌や指標ウイルスを用いてデータを取得し、場合によってはPCR検査等のデータを取得して求める。
以下、本発明の除去装置が高い除去率を有することを説明する。以下のLRVの検討に関しては、変形しない真球の粒子を想定して説明を行う。
【0022】
図2に示す例において、累積積算値をLRVに換算すると、理論上、±5σの範囲ではLRVは約6となり、±6σの範囲ではLRVは約8となる。実施例1のメンブレン(σ=2.1nm)では、LRVが約6となるところは10.5nmが相当し、LRVを約8となるところは12.6nmが相当する。一方、比較例1のメンブレン(σ=5.1nm)では、LRVを約6となるところは25.5nmが相当し、LRVを約8となることころは30.6nmが相当する。そのため、実施例1は比較例1に比べて、LRVの値が高くなるところに多くの孔径が分布している。
【0023】
また、実施例1では細孔の孔径がそろっているため、平均孔径よりも少し大きい大きさの微少物を除去(トラップ)しやすくなる。図2に示す例において、実施例1のメンブレンでは、例えば大きさが約55nm~65nmの微少物をトラップできるのに対し、比較例1のメンブレンでは、大きさが約55nm~65nmの微少物をトラップしにくくなり、透過してしまう。
【0024】
図2を参照しつつ更に説明すると、比較例1において、大きさが約55nm~65nmの微少物は、孔径分布における1σ(5.1nm)~3σ(15.5nm)の領域に該当し、約15.7%の累積積算値に相当する(図3参照)。そのため、比較例1のメンブレンにおける約15.7%の細孔が上記の微少物を透過してしまうことになる。このため、比較例1では高い除去率が得られない。また、図2に示す例において、例えば大きさが約35nm~45nmの微少物については、実施例1ではトラップできるのに対し、比較例1では約15.7%の細孔が上記の微少物を透過してしまう。
【0025】
これらのことから、図2に示す例において、例えば大きさが約45nm~55nmの微少物のみを除去する目的とした場合、実施例1は高い除去率で除去できるのに対し、比較例1では高い除去率が得られない。例えば、比較例1では、大きさが約55nm~65nmの微少物を通過させてしまうし、大きさが約35nm~45nmの微少物をトラップしてしまう。
【0026】
図4に、微少物の除去の様子を説明するための図を示す。図4(A)は、空気中又は液体中の除去対象微少物6と微少物8がメンブレン12に対して流れていく様子を示す模式図である。除去対象微少物6は細孔14の孔径よりも大きく、メンブレン12の表面にトラップされる。これに対して、微少物8は細孔14の孔径よりも小さく、メンブレン12を通過する。
【0027】
図4(B)は、メンブレン12に除去対象微少物6がトラップされたことを観察したSEM画像である。図示されるように、除去対象微少物6がトラップされている。なお、図中の除去対象微少物6及び微少物8は、例としてビーズを用いている。
【0028】
本発明では、除去対象微少物の大きさを考慮し、除去対象微少物の大きさに対応した平均孔径のメンブレンを用いることで、気体又は液体中の除去対象微少物を従来よりも高い除去率で除去することができる。気体又は液体中の菌やウイルス等は種類によっては少ない量であっても悪影響を及ぼすことがあるため、このように除去率を高められることは、従来の技術に対して非常に有利な効果である。
【0029】
なお、上記の「除去対象微少物の大きさに対応した平均孔径のメンブレンを用いる」については、除去対象微少物の大きさと細孔の平均孔径を同じにするということに限定されるものではない。もちろんこのように除去対象微少物の大きさと平均孔径を同じもしくは略同じにするようにしてもよいが、除去対象微少物の大きさと細孔の平均孔径との関係は適宜変更することができる。
【0030】
本発明に用いられるメンブレンの平均孔径は、5nm以上1000nm以下である。この範囲であることで、孔径が均一なメンブレンを製造でき、ウイルス、菌、有機物、ごみ等の除去対象微少物に適した孔径のメンブレンを適宜選択することができる。メンブレンの平均孔径としては、300nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましい。これらの場合、除去対象微少物としてウイルスを選択したときに、ウイルスの除去率を向上させることができる。ウイルスの種類によっては、メンブレンの平均孔径を100nm以下とすることも好ましい。
【0031】
本発明に用いられるメンブレンは、細孔の孔径分布における相対標準偏差が5%以下であることが好ましく、相対標準偏差が2%以下であることがより好ましい。この場合、気体又は液体中の除去対象微少物の除去率がより向上する。
【0032】
本発明に用いられるメンブレンは、細孔の孔径分布における標準偏差が5nm以下であることが好ましく、標準偏差が4nm以下であることがより好ましい。この場合、気体又は液体中の除去対象微少物の除去率がより向上する。
【0033】
次に、本発明に用いられるメンブレンの製造方法について説明する。
金属酸化物からなり、細孔を有するメンブレンを作製する方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、アルミニウム等の金属を電解液中で陽極酸化させて表面に多孔性酸化被膜を形成し、その後、化成電圧を変化させて化成を行う方法が挙げられる。
【0034】
陽極酸化により高規則性メンブレンを作製する場合、二段階陽極酸化プロセスが好適に用いられる。二段階陽極酸化プロセスでは、まず電解液中でアルミニウム等の金属の基材に電流を流して1回目の陽極酸化を行い、酸化被膜を形成し、形成した酸化被膜を除去する。次いで、再び陽極酸化を行い(2回目の陽極酸化)、酸化被膜を形成する。1回目の陽極酸化を行うと、基材には規則的に配列した窪みが形成されるため、2回目の陽極酸化を行うと、穴が規則的に配列した酸化被膜が形成される。この酸化被膜の一部を基材から取り除くことでメンブレンが得られる。
【0035】
上記の他にも、規則的に凸部が配列したモールドを用い、地金の表面にテクスチャリング処理により窪み配列の形成を行い、陽極酸化を行う方法が挙げられる。モールドを用いて地金に窪みを形成して陽極酸化を行うことで、窪みが細孔発生の開始点となり、高規則性のメンブレンを作製することができる。
【0036】
平均孔径及び孔径分布の標準偏差が本実施形態の範囲となるような高規則性メンブレンを作製する方法としては、例えば、陽極酸化の条件を適宜調整する方法が挙げられる。アルミナメンブレンの細孔配列の規則性は、陽極酸化条件に影響され、適切な条件下で陽極酸化を行った場合には、細孔が長距離にわたって理想配列した長距離規則化構造が得られる。自己組織化条件下、細孔配列の規則性は陽極酸化とともに進行する。陽極酸化監視初期の細孔の発生はランダムであり、細孔配列の規則性は低いが、自己組織化条件下、陽極酸化を行った場合には、時間とともに被膜底部(バリア層などとも称する)における細孔の再配列が起こり、高い規則配列を有する構造が得られる。
【0037】
本発明に用いられるメンブレン、例えばアルミナメンブレンの細孔径、細孔周期は、陽極酸化時の化成電圧に比例する。そのため、化成電圧を変化させると同時に、化成条件(化成浴の種類等)を最適化することで、様々な細孔径、周期を有するメンブレンを作製することができる。従って、平均孔径及び相対標準偏差が本発明の範囲を満たすメンブレンを得るには、化成電圧や化成条件を適宜選択して陽極酸化を行う方法が挙げられる。
【0038】
図5は、アルミナメンブレンについて、陽極酸化時の化成電圧を変化させた場合に、細孔周期が変化することを説明するための図である(Electrochemistry,83(11),1006-1011(2015))。図示するように、化成電圧によって細孔周期が変化する。細孔径についても化成電圧と化成条件によって変化させることができる。なお、図5中、化成電圧25V(細孔周期63nm)は0.5M硫酸電解液を使用し、化成電圧195V(細孔周期500nm)は0.3Mリン酸電解液を使用している。
【0039】
陽極酸化の作製条件としては、一例を挙げると、例えば化成浴としてシュウ酸0.3M、化成電圧として40V、化成時間として160時間が挙げられ、この場合、細孔周期100nm、細孔径30nm~70nmの高規則性メンブレンが得られる。上記の実施例1(図1A)のメンブレンは、この条件に近い条件で作製している。上記の比較例1のメンブレンはこの条件に外れる条件で作製しているため、高規則性メンブレンが得られない。
【0040】
本発明において、気体又は液体中の微少物を除去することを、メンブレンに微少物がトラップされるなどと称してもよい。また、メンブレンに微少物が付着、吸着すること、阻止されること等についても除去することに含まれる。また、後述のように、メンブレンが光触媒層を有している場合に、光触媒層が微少物を分解等することも除去することに含まれる。
【0041】
気体としては、例えば空気等の混合気体が挙げられるが、これに限られない。
液体としては、例えば水が挙げられるが、これに限られず、その他の溶液が挙げられる。気体と液体が混ざっていてもよい。
【0042】
気体又は液体中の除去対象微少物としては、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。例えばウイルス、菌、有機物、ごみ等が挙げられる。本発明におけるメンブレンは、孔径分布における標準偏差が非常に小さいため、本発明は菌やウイルス等の大きさの小さい微少物を除去する場合に好適に用いられる。なお、菌やウイルスを除去するために用いられる本発明の除去装置を菌ウイルス除去装置と称してもよい。
【0043】
菌やウイルスとしては、特に制限されるものではないが、例えばバクテリオファージ(約20nm)、ネコカリシウイルス(約30nm)、インフルエンザウイルス(約100nm)、コロナウイルス(約100nm)、グラム陽性菌(約1μm)等が挙げられる。また、HIV等のレトロウイルス(約80~130nm)を除去対象としてもよい。なお、かっこ内の数値は目安であり、ウイルスが有するスパイクを含めるかどうか、また形状の変化等については適宜検討を行うようにすればよい。
【0044】
本発明の除去装置及び除去方法を使用する目的としては、特に制限されるものではない。例えば、空気や水を浄化する目的で使用してもよい。例えば空気や水から有害物を除去し、人体に対する危険性を低減するために用いられてもよい。また、透析等の医療用として用いられてもよい。
【0045】
また、測定用機器や測定方法として用いられてもよい。例えば、気体や液体を所定の時間、メンブレンを有する装置に流した後、メンブレンを装置から取り外し、メンブレンを別の測定装置により測定するようにしてもよい。これにより、メンブレンにトラップされた微少物を特定し、気体や液体に含まれている微少物の種類や量を測定することができる。
【0046】
気体や液体がメンブレンを通過することで、経時によりメンブレンの細孔に菌やウイルス等が付着する。これに対して、後述のように光触媒層を設けることでメンブレンに付着した菌やウイルスを分解することができる。またこの他にも、例えばメンブレンに対して吹き飛ばし(フラッシングなどと称してもよい)等を行って付着した菌やウイルスを除去するようにしてもよい。この場合、吹き飛ばされた菌やウイルス等が拡散しないように留意する。
【0047】
メンブレンの空孔率としては、適宜選択することができ、例えば20%以上40%以下であることが好ましい。20%以上であることにより、気体や液体の流れが阻害されることを低減できる。40%以下であることにより、細孔同士がつながって独立した細孔にならない箇所が生じることを抑制できる。
【0048】
メンブレンの空孔率の測定方法としては、例えばSEM画像を取得し、画像解析ソフトを用いて測定することができる。
【0049】
細孔周期としては、特に制限されるものではないが、例えば10nm以上600nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。この場合、空孔率を上記の範囲に調整しやすくなる。上記の細孔周期は、直線上に細孔を形成したときの隣り合う細孔同士の距離といえる。
【0050】
細孔は、メンブレンの面方向と垂直な方向に形成されていることが好ましい。この場合、除去対象ではない微少物、例えば平均細孔径よりも小さい微少物がメンブレンを透過しにくくなることを低減できる。細孔が垂直に形成されていることを調べるには、メンブレンの破断面をSEM観察することで確認することができる。また、垂直に形成された細孔の個数は画像解析ソフトを用いて計測してもよい。
【0051】
垂直に形成されている細孔の割合は、90個数%以上であることが好ましく、95個数%以上であることがより好ましく、99個数%以上であることが更に好ましい。これらの場合、微少物の除去効率が向上する。実施例1のメンブレン(図1A)では、99個数%以上となっている。
【0052】
メンブレンに形成される細孔の開口部の形状は、適宜選択することができ、例えば、円形の他、三角形、四角形などの多角形であってもよい。また、正多角形でなくてもよい。中でも、円形であることが好ましい。高規則性を有するメンブレンを作製する場合、細孔の開口部の形状が円形であるものの方が作製しやすい。
【0053】
特に制限されるものではないが、メンブレン中の細孔のうち、開口部の円形度が0.9以上の細孔が90個数%以上であることが好ましく、95個数%以上であることがより好ましく、99個数%以上であることが更に好ましい。細孔の形状は、例えばSEM画像を取得し、画像ソフトで解析することにより測定することができる。
【0054】
メンブレンの厚みとしては、特に制限されるものではないが、10μm以上200μm以下であることが好ましい。この範囲である場合、製造のしやすさを得つつ、強度を確保することができる。
【0055】
メンブレンの大きさ(面方向の長さ)としては、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。装置の構成、例えば流路の大きさ等を考慮して適宜選択することができる。また、除去対象微少物の種類を考慮して適宜選択してもよい。特に制限されるものではないが、例えば直径10mm以上の円形としてもよいし、30cm程度の円形としてもよい。形状は円形に限られず、流路の形状等を考慮して適宜選択できる。
【0056】
本発明に用いられるメンブレンは、金属酸化物からなる。従来技術のウイルス除去装置やウイルス除去方法では、有機物のファイバーからなる濾過媒体が用いられることが多い。一方、本発明では、メンブレンの材質を金属酸化物にすることで、規則的に配列した細孔を形成しやすくなる。金属酸化物としては、高規則性にしやすい等の製造方法の観点から酸化アルミニウム(アルミナ)であることが特に好ましい。
【0057】
金属酸化物としては、アルミナの他にも、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化コバルト、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化鉄、酸化バナジウム等が挙げられる。なお、金属酸化物として、例えば酸化チタン、酸化タングステン、酸化鉄、酸化バナジウムを用いた場合、メンブレン自身が光触媒作用を有する。
【0058】
上記金属酸化物を用いたメンブレンについては、例えば、Electrochemistry,83(11),1006-1011(2015)、Science 9 June 1995, Volume 268, pp.1466-1468、Corrosion Science 47(2005) 3324-3335、J.Am.Chem.Soc.2015,137,5646-5649、Angew.Chem.Int.Ed.2013,52,2077-2081、Electrochimica Acta 330(2020) 135241等が参考になる。
【0059】
本発明に用いられるメンブレンは、光触媒層を有していることが好ましい。光触媒層を有することにより、メンブレンの表面に付着した菌やウイルス等を分解することができ、メンブレンの目詰まりを低減できる。また、メンブレンに付着した菌やウイルス等を除去しやすくなり、メンブレンを清浄な状態で使用しやすくなる。
【0060】
光触媒層が形成される箇所は、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。一例を図6及び図7に示す。
図6は、メンブレン12の断面を示す模式図であり、メンブレン12が有する細孔14が複数図示されている。また、図中の矢印は気体や液体が流れる方向を模式的に示している。この例では、メンブレン12の表面であって、気体や液体が流れる方向における上流側の表面に光触媒層16が形成されている。このように、光触媒層16が形成される箇所がメンブレン12の表面の一部であっても上記の効果が得られる。
【0061】
図7は、図6と同様にメンブレン12の断面を示す模式図である。ここに示す例は、上記の例とは異なり、光触媒層16がメンブレン12の表面全面を被覆するように形成されている。この場合、メンブレン12に形成された細孔14の内部に付着した菌やウイルス等に対しても、光触媒層16によって分解することができる。
【0062】
上述のように、光触媒層が形成される箇所は、適宜選択することができる。図6に示す例のように、光触媒層は、メンブレンの一方の面に形成され、該光触媒層が形成される面は流路における上流側であることが好ましい。細孔の内部に光触媒層を形成してもよいが、照射手段からの光が細孔の内部に届きにくいことが懸念される。そのため、メンブレンの一方の面に光触媒層が形成されている場合、分解等に寄与する光触媒の割合を増やすことができる。また、細孔の孔径が光触媒層の形成によって小さくなる等を防ぐことができる。
【0063】
メンブレンに光触媒層が形成される場合、メンブレンの平均孔径及び標準偏差の値は、光触媒層が形成された状態で測定する。そのため、光触媒層が形成されたメンブレンにおける細孔が上記の範囲、すなわち細孔の平均孔径が5~1000nmを満たし、細孔の孔径分布における相対標準偏差が10%以下であることを要する。
【0064】
光触媒層としては、適宜選択することができ、例えば酸化チタン、酸化タングステン、硫化カドミウム、酸化鉄、酸化バナジウム等を用いることができる。中でも酸化チタンが好ましい。
【0065】
光触媒層の厚みとしては、適宜選択することができるが、例えば細孔の平均孔径に対して1%~50%の厚みであることが好ましい。例えば、細孔の平均孔径が50nmである場合、0.5nm~25nmであることが好ましい。この範囲である場合、濾過を妨げず、光照射により良好に分解を促進させることができる。
【0066】
メンブレンに光触媒層を形成する方法としては、適宜選択することができる。例えば、ALD(Atomic Layer Deposition)法により形成することができる。その他にも、ゾルゲル法等により形成することができる。また、アルコキシドを用いてメンブレンをコーティングし、熱処理する方法を採用する場合、均一に光触媒層を形成しやすくなる。
【0067】
(装置の構成例)
次に、本発明の除去装置の装置構成例について説明する。以下、除去装置を単に装置と称することがある。
【0068】
図8は、実施例2に係る装置の要部模式図である。本実施例の装置は、気体又は液体が流れる流路20と、メンブレン12とを備え、必要に応じてその他の部材を備える。図中の矢印は気体又は液体の流れる方向を模式的に示している。
【0069】
本実施例の除去装置によれば、流路20を流れる気体や液体がメンブレン12を通過することで、気体中や液体中の菌やウイルスを除去することができる。また、本実施例の除去装置は、気体を流す場合と、液体を流す場合とで装置構成を同じにすることができるため、装置の組み立てや切り替えを簡便に行えるという利点がある。
【0070】
メンブレン12の配置としては、例えば細孔の方向が流路20を流れる気体や液体の方向と同じ方向になるように配置することが好ましい。例えば図5に模式的に示されるように、細孔14の方向が流路20を流れる気体や液体の方向と同じ方向になるように配置することが好ましい。この場合、除去対象微少物以外の微少物がメンブレンを通過する際に流れが阻害されることを低減できる。
【0071】
次に、その他の実施例について説明する。図9は、実施例3に係る装置の要部模式図である。本実施例の装置は、流路20中であってメンブレン12よりも上流側に、メンブレン12の平均孔径よりも大きい平均孔径を有するプレフィルタ32を備えている。プレフィルタ32を備えることにより、大きさが大きいごみや有機物等を除去することができ、メンブレン12の目詰まりを抑制できる。
【0072】
プレフィルタ32が有する孔は、均一であってもよいし、不均一であってもよい。
プレフィルタ32の平均孔径としては、例えば、メンブレン12の平均孔径の2倍以上10倍以下であることが好ましい。この範囲である場合、気体中や液体中のごみや有機物を除去するとともに、流路20の気体や液体が流れにくくなることを防止しやすくなる。
【0073】
プレフィルタ32の材質としては、特に制限されるものではなく、適宜選択することができ、例えば金属、樹脂等が挙げられる。
【0074】
また、本実施例の装置は、メンブレン12の平均孔径よりも大きい平均孔径を有するサポータ34を備えており、サポータ34は、メンブレン12よりも下流側であり、メンブレン12に接触して配置されている。サポータ34を用いることにより、メンブレン12の破損や変形を防止しやすくなる。
【0075】
サポータ34の材質としては、特に制限されるものではなく、適宜選択することができ、例えば金属、樹脂等が挙げられる。
【0076】
サポータ34が有する孔は、均一であってもよいし、不均一であってもよい。
サポータ34の平均孔径としては、例えば、メンブレン12の平均孔径の2倍以上10倍以下であることが好ましい。この範囲である場合、流路20の気体や液体が流れにくくなることを防止しつつ、メンブレン12の破損を防止することができる。
【0077】
また、本実施形態の装置は、流路中の気体又は液体の圧力を調整する圧力調整手段を備えていることが好ましい。圧力調整手段は、メンブレンよりも上流側で圧力を印加する、又は、メンブレンよりも下流側で圧力を低圧にすることが好ましい。これにより、メンブレン12を通過する気体や液体の流速(単位時間当たりの気体や液体の通過する量)を大きくすることができる。
【0078】
圧力調整手段としては、適宜選択することができ、例えばコンプレッサー、ボンベ等が挙げられる。流路に溶液(液体)を流す場合、圧力を印加する方法としては、例えば、コンプレッサーやボンベから不活性気体(空気、窒素等)を適切な圧力に調圧した後、溶液に加えることで実施できる。また、メンブレンよりも下流側から減圧吸引し、陰圧を加えることで実施できる。流路に気体を流す場合、上流側の気体自体をコンプレッサー等で加圧することで実施できる。またはメンブレンよりも下流側に陰圧を加える加えることで実施できる。
【0079】
圧力調整手段を用いる場合、同時にサポータ34を用いることが好ましい。この場合、メンブレン12の破損や変形を防ぎやすくなる。
【0080】
次に、その他の実施例について説明する。図10は、実施例4に係る装置の要部模式図である。本実施例のように、流路20の構成は適宜変更することができる。流路20は流入口21と流出口22を有していてもよい。例えば流入口21から加圧された気体又は液体を流入し、流出口22から濾過された気体又は液体が流出する。
【0081】
本実施例では、流路20を例えば金属の部材で構成する。特に制限されるものではないが、流路20を東洋濾紙社製の部材で構成することができる。
【0082】
次に、その他の実施例について説明する。図11は、実施例5に係る装置の要部模式図である。本実施例のように、流路20の構成は適宜変更することができ、例えば注射器のような構成とすることも可能である。本実施例では、流路20内の気体又は液体を押し子25(プランジャ)によりメンブレン12の方向に流すことができる。これにより流出口22から濾過された気体又は液体が流出する。
なお、押し子25は圧力調整手段の一例として用いることができる。
【0083】
流路20は樹脂製の透明な部材等で構成することができる。この場合、メンブレン12が光触媒層を有する場合に、流路20の外部から光を照射させるようにしてもよい。
【0084】
次に、その他の実施例について説明する。図12は、実施例6に係る装置の要部模式図である。本実施例の装置は、光触媒層付きメンブレン18を備えており、光触媒層に光を照射する照射手段40を備える。
【0085】
照射手段40が光触媒層付きメンブレン18に紫外線等の光42を照射することで、光触媒層付きメンブレン18に付着した菌やウイルスを分解乃至除去することができる。これにより、メンブレンを清浄な状態に保つことができる。
【0086】
照射手段40の配置としては、適宜選択することができる。例えば、本実施例のように、流路20中であって光触媒層付きメンブレン18よりも上流側に配置する。この他にも例えば、流路20外に照射手段40を配置してもよいし、光触媒層付きメンブレン18よりも下流側に照射手段40を配置してもよい。
【0087】
流路を形成する部材等を透明な部材にしてもよく、この場合、照射手段を流路の外部に配置してもよい。照射手段を流路の外部に配置することで、流路中の気体や液体を加圧する場合に、装置を簡便に構成することができる。
【0088】
照射手段40が照射する光としては、適宜選択することができ、例えば紫外線が挙げられる。
照射手段40の光源としては、適宜選択することができ、例えばLED、UVライト等が挙げられる。光源は1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0089】
照射手段40の照射タイミングとしては、適宜選択することができ、常時照射するようにしてもよいし、所定の間隔で照射するようにしてもよい。
【0090】
光源を流路の外に配置し、ライトガイド(光導管などと称してもよい)等の部材を用いて、流路中の光触媒層付きメンブレン18に光を照射するようにしてもよい。
【0091】
本実施例において、プレフィルタ32を設ける場合、照射手段40の配置はプレフィルタ32よりも上流側であってもよいし、下流側であってもよい。照射手段40をプレフィルタ32よりも上流側に配置する場合、プレフィルタ32は透明な部材であることが好ましい。この場合、照射手段40から照射される光が低減されることを抑制できる。
【0092】
次に、その他の実施例について説明する。図13は、実施例7に係る装置の要部模式図である。本実施例の装置は、光触媒層付きメンブレン18を備えており、光触媒層に光を照射する照射手段40を備える。本実施例において、光照射手段40は、流路20外であって光触媒層付きメンブレン18の側面側に配置される。また、本実施例では、光照射手段40からの光42をレンズ44により集光させて光触媒層付きメンブレン18に照射させている。
【0093】
光触媒層付きメンブレン18の側面側から照射された光は、光触媒層付きメンブレン18の中心方向へ伝搬する。本実施例に用いられるメンブレンは屈折率が周囲の媒質と比べて高いため、光がメンブレンから漏れることなく効率的に伝搬し、効率的に光触媒反応を実現することができる。
【0094】
本実施例では、光触媒層付きメンブレン18の側面側に光が照射されるものであればよく、流路20を形成する部材は透明であってもよいし、透明でなくてもよい。例えば、光触媒層付きメンブレン18の側面や側面周辺を透明な部材にしてもよい。
【0095】
次に、その他の実施例について説明する。図14は、実施例8に係る装置の要部模式図である。本実施例は、実施例7において、レンズ44ではなく、プリズム46をカップラーとして用いた光カップリング系としている。本実施例も光照射手段40を、流路20外であって光触媒層付きメンブレン18の側面側に配置した場合の例である。本実施例においても効率的に光触媒反応を実現することができる。
【0096】
本実施例では、プリズム46に光が照射されるものであればよく、例えば流路20の一部を透明な部材で構成するようにしてプリズム46に光が照射されるようにしてもよい。また、本実施例では、例えばプリズム46に照射された光はプリズム46内を屈折や反射し、プリズム46底面からメンブレンに入射する。プリズム46の配置等は適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0097】
6 除去対象微少物
8 微少物
12 メンブレン
14 細孔
16 光触媒層
18 光触媒層付きメンブレン
20 流路
21 流入口
22 流出口
25 押し子
32 プレフィルタ
34 サポータ
40 照射手段
42 照射光
42a 伝搬光
44 レンズ
46 プリズム
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14