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  • 特開-カルボニル化タンパク質分解剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162670
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】カルボニル化タンパク質分解剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20221018BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221018BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20221018BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 36/539 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 36/30 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 36/44 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 31/222 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 125/00 20060101ALN20221018BHJP
   A61K 127/00 20060101ALN20221018BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/00
A61Q19/08
A61Q19/02
A61K36/539
A61K36/30
A61K36/44
A61P43/00 105
A61P17/00
A61K8/60
A61K8/35
A61K8/37
A61K8/49
A61K31/7048
A61K31/122
A61K31/222
A61K31/353
A61K125:00
A61K127:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067589
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】391045554
【氏名又は名称】株式会社クラブコスメチックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】重山 佳太
(72)【発明者】
【氏名】近藤 亜弥
(72)【発明者】
【氏名】坂口 育代
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC491
4C083AC492
4C083AC841
4C083AC842
4C083AD391
4C083AD392
4C083CC02
4C083EE12
4C083EE16
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086EA11
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB21
4C088AB12
4C088AB24
4C088AB38
4C088AC05
4C088AC11
4C088BA10
4C088BA11
4C088BA14
4C088CA08
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZB21
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB28
4C206DB03
4C206DB04
4C206DB52
4C206KA04
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA89
4C206ZB21
(57)【要約】
【課題】カルボニル化タンパク質を分解する新規なカルボニル化タンパク質分解剤を提供する。
【解決手段】シソ科のコガネバナの根、ムラサキ科のムラサキの根またはカキノキ科の柿の葉から抽出された抽出物を有効成分として含む、カルボニル化タンパク質分解剤、ならびに、バイカレイン、シコニン、アセチルシコニン、β-ヒドロキシイソバレリルシコニン、カテキン、エピガロカテキンガレートおよびエピガロカテキンの少なくともいずれかを有効成分として含む、カルボニル化タンパク質分解剤。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シソ科のコガネバナの根、ムラサキ科のムラサキの根またはカキノキ科の柿の葉から抽出された抽出物を有効成分として含む、カルボニル化タンパク質分解剤。
【請求項2】
シソ科のコガネバナの根から抽出された抽出物を1.0E+00~5.0E+02mg/mLの濃度で含む、請求項1に記載のカルボニル化タンパク質分解剤。
【請求項3】
抽出溶媒が水と1,3-ブチレングリコールとの混合物である、請求項2に記載のカルボニル化タンパク質分解剤。
【請求項4】
ムラサキ科のムラサキの根から抽出された抽出物を1.0E-01~5.0E+01mg/mLの濃度で含む、請求項1に記載のカルボニル化タンパク質分解剤。
【請求項5】
抽出溶媒がエタノールと1,3-ブチレングリコールとの混合物である、請求項4に記載のカルボニル化タンパク質分解剤。
【請求項6】
柿の葉から抽出された抽出物を1.0E+00~1.0E+02mg/mLの濃度で含む、請求項1に記載のカルボニル化タンパク質分解剤。
【請求項7】
抽出溶媒が水と1,3-ブチレングリコールとの混合物である、請求項6に記載のカルボニル化タンパク質分解剤。
【請求項8】
バイカレイン、シコニン、アセチルシコニン、β-ヒドロキシイソバレリルシコニン、カテキン、エピガロカテキンガレートおよびエピガロカテキンの少なくともいずれかを有効成分として含む、カルボニル化タンパク質分解剤。
【請求項9】
バイカレインを1.0E-02~1.0E+01mg/mLの濃度で含む、請求項8に記載のカルボニル化タンパク質分解剤。
【請求項10】
シコニン、アセチルシコニンまたはβ-ヒドロキシイソバレリルシコニンを5.0E-05~5.0E-02mg/mLの濃度で含む、請求項8に記載のカルボニル化タンパク質分解剤。
【請求項11】
カテキン、エピガロカテキンガレートまたはエピガロカテキンを1.0E-02~1.0E+01mg/mLの濃度で含む、請求項8に記載のカルボニル化タンパク質分解剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シソ科のコガネバナの根、ムラサキ科のムラサキの根またはカキノキ科の柿の葉から抽出された抽出物、または、バイカレイン、シコニン、アセチルシコニン、β-ヒドロキシイソバレリルシコニン、カテキン、エピガロカテキンガレートおよびエピガロカテキンの少なくともいずれかを有効成分として含む、カルボニル化タンパク質分解剤に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質のカルボニル化とは、生体内で発生した活性酸素種によって生じるタンパク質の酸化修飾である。カルボニル化タンパク質は生体内で発生した活性酸素種によってタンパク質中のLys、Arg、Proといったアミノ酸残基のNH基が直接酸化されてカルボニル基となることで生成されるものと、脂質が酸化して過酸化脂質が生成され、過酸化脂質の分解によって反応性の高いアクロレインなどのアルデヒドが生成され、アルデヒドがタンパク質と結合することで生成されるものとがある(たとえば、特開2004-340935号公報(特許文献1)を参照)。
【0003】
皮膚の最表層である角層は角質細胞からなり、その約85%がタンパク質であるケラチンから構成されている。近年、このケラチンが、日常的に皮膚が受ける紫外線などによる酸化的ストレスによってカルボニル化されることが知られている(たとえば、Jens J. Thiele et al.,「Protein Oxidation in Human Stratum Corneum: Susceptibility of Keratins to Oxidation In Vitro and Presence of a Keratin Oxidation Gradient In Vivo」,THE JOURNAL OF INVESTIGATIVE DERMATOLOGY,113(3),335-339,1999(非特許文献1)を参照)。このような外界の影響による角層タンパク質のカルボニル化が、潤い、はり、明るさなどの皮膚機能を低下させ、肌の透明感を低下させる一因と考えられている(たとえば、岩井一郎ら、「角層タンパク質のカルボニル化による肌透明感の低下」、日本化粧品技術者会誌,42(1),16-21,2008(非特許文献2)を参照)。
【0004】
肌の透明感の低下は、シミ、くすみなどの変化によって生じる。肌のくすみは、ある特定の現象であり、顔全体又は眼のまわりや頬等の部位に生じ、肌の赤みが減少して黄みが増し、肌の「つや」や透明感が減少し、皮膚表面の凹凸などによる影によって明度が低下して暗く見える状態などとされている。また、くすみの発生要因は、血行不良による肌色の赤みの低下、メラニンの沈着、皮膚の弾力が低下することにより生じる皮膚表面の凹凸による影、皮膚の肥厚などによる光透過性の低下、皮膚表面での乱反射によるつやの低下、加齢に伴う皮膚の黄色化などとされている(たとえば、長沼雅子、「香粧品の有効性の歴史的変遷」、日本香粧品学会誌、39(4)、275-285、2015(非特許文献3)を参照)。
【0005】
特に皮膚の黄みの増加によるくすみは、黄ぐすみとして知られ、透明感低下に伴う特徴的な皮膚の色調変化である。黄ぐすみの主な原因は、表皮や真皮中に存在するタンパク質の糖化物(たとえば、特開2013-133303号公報(特許文献2)を参照)やタンパク質のカルボニル化物(たとえば、特開2012-32287号公報(特許文献3)を参照)であると考えられている。
【0006】
そのため、カルボニル化タンパク生成に伴う皮膚を改善するため、カルボニル化タンパクの生成を抑制する成分の提案がされている(たとえば、伊賀和宏ら、「コウジ酸の顔面黄ぐすみに対する改善効果」、西日本皮膚科、77(3)、224-249、2015(非特許文献4)を参照)。しかしながら、非特許文献4には、既に生成されてしまったカルボニル化タンパクに対しての提案はなく、カルボニル化タンパク生成に伴う皮膚の機能低下の根本的な解決に至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-340935号公報
【特許文献2】特開2013-133303号公報
【特許文献3】特開2012-32287号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Jens J. Thiele et al.,「Protein Oxidation in Human Stratum Corneum: Susceptibility of Keratins to Oxidation In Vitro and Presence of a Keratin Oxidation Gradient In Vivo」,THE JOURNAL OF INVESTIGATIVE DERMATOLOGY,113(3),335-339,1999
【非特許文献2】岩井一郎ら、「角層タンパク質のカルボニル化による肌透明感の低下」、日本化粧品技術者会誌,42(1),16-21,2008
【非特許文献3】長沼雅子、「香粧品の有効性の歴史的変遷」、日本香粧品学会誌、39(4)、275-285、2015
【非特許文献4】伊賀和宏ら、「コウジ酸の顔面黄ぐすみに対する改善効果」、西日本皮膚科、77(3)、224-249、2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、カルボニル化タンパク質を分解する新規なカルボニル化タンパク質分解剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のカルボニル化タンパク質分解剤は、シソ科のコガネバナの根、ムラサキ科のムラサキの根またはカキノキ科の柿の葉から抽出された抽出物を有効成分として含むことを特徴とする(以下、シソ科のコガネバナの根、ムラサキ科のムラサキの根またはカキノキ科の柿の葉から抽出された抽出物を含むカルボニル化タンパク質分解剤を「第1のカルボニル化タンパク質分解剤」と呼称する。)。
【0011】
本発明の第1のカルボニル化タンパク質分解剤は、シソ科のコガネバナの根から抽出された抽出物を1.0E+00~5.0E+02mg/mLの濃度で含むことが好ましい。この場合、抽出溶媒は水と1,3-ブチレングリコールとの混合物を抽出溶媒として用いることが好ましい。
【0012】
また本発明の第1のカルボニル化タンパク質分解剤は、ムラサキ科のムラサキの根から抽出された抽出物を1.0E-01~5.0E+01mg/mLの濃度で含むことが好ましい。この場合、抽出溶媒はエタノールと1,3-ブチレングリコールとの混合物を抽出溶媒として用いることが好ましい。
【0013】
また、本発明の第1のカルボニル化タンパク質分解剤は、柿の葉から抽出された抽出物を1.0E+00~1.0E+02mg/mLの濃度で含むことが好ましい。この場合、抽出溶媒は水と1,3-ブチレングリコールとの混合物を抽出溶媒として用いることが好ましい。
【0014】
本発明はまた、バイカレイン、シコニン、アセチルシコニン、β-ヒドロキシイソバレリルシコニン、カテキン、エピガロカテキンガレートおよびエピガロカテキンの少なくともいずれかを有効成分として含むカルボニル化タンパク質分解剤についても提供する(以下、バイカレイン、シコニン、アセチルシコニン、β-ヒドロキシイソバレリルシコニン、カテキン、エピガロカテキンガレートおよびエピガロカテキンの少なくともいずれかを含むカルボニル化タンパク質分解剤を「第2のカルボニル化タンパク質分解剤」と呼称する。)。
【0015】
本発明の第2のカルボニル化タンパク質分解剤は、バイカレインを1.0E-02~1.0E+01mg/mLの濃度で含むことが好ましい。
【0016】
また本発明の第2のカルボニル化タンパク質分解剤は、シコニン、アセチルシコニンまたはβ-ヒドロキシイソバレリルシコニンを5.0E-05~5.0E-02mg/mLの濃度で含むことが好ましい。
【0017】
また、本発明の第2のカルボニル化タンパク質分解剤は、カテキン、エピガロカテキンガレートまたはエピガロカテキンを1.0E-02~1.0E+01mg/mLの濃度で含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、カルボニル化タンパク質を分解する新規なカルボニル化タンパク質分解剤、化粧品および皮膚外用剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実験例1の結果を示すグラフである。
図2】実験例2の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1のカルボニル化タンパク質分解剤)
本発明の第1のカルボニル化タンパク質分解剤は、シソ科のコガネバナ(Scutellaria baicalensis)(オウゴン)の根の抽出物(オウゴン根抽出物)、ムラサキ科のムラサキ(Lithospermum erythrorhizon)の根(シコン)の抽出物(シコン抽出物)、またはカキノキ科の柿(Diospyros kaki)の葉の抽出物(カキ葉抽出物)を有効成分とする。
【0021】
<オウゴン根抽出物、シコン抽出物、カキ葉抽出物>
本発明の第1のカルボニル化タンパク質分解剤において、オウゴン根抽出物、シコン抽出物、カキ葉抽出物は、一般的な抽出方法により得ることができ、たとえばそれぞれを抽出溶媒と共に浸漬または加熱還流した後、濾過し、濃縮して得ることができる。
【0022】
抽出溶媒としては一般的に抽出に用いられる溶媒であれば任意に用いることができ、極性溶剤、非極性溶剤のいずれも使用することができる。たとえば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールなどのアルコール類(多価アルコール類を含む)、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどの鎖状および環状エーテル類、ポリエチレングリコールなどのポリエーテル類、スクワラン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテルなどの炭化水素類および超臨界二酸化炭素、ピリジン類、油脂、ワックスなどその他オイル類などの有機溶剤、ならびにこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、水、アルコール類、アルコール類と水との混合物、炭化水素類が挙げられ、アルコール類と水との混合物、炭化水素類がより好ましい。アルコール類として好ましくは1,3-ブチレングリコールまたはエタノールが挙げられる。
【0023】
オウゴン根から抽出する場合、残留した場合の問題を考慮し、上述した中でも、水単独、アルコール単独、多価アルコール単独、水と多価アルコールとの混合物、水とアルコールと多価アルコールとの混合物から選ばれるいずれかを抽出溶媒として用いることが好ましく、アルコール単独、水と多価アルコールとの混合物を抽出溶媒として用いることがより好ましく、有効成分の抽出効率を高めるという理由からは、抽出溶媒としてエタノールを用いて抽出し、溶媒を除去したものに、水と1,3-ブチレングリコールの混合物(水:1,3-ブチレングリコール=1:1)を用いて溶解させることが特に好ましい。
【0024】
シコンから抽出する場合、残留した場合の問題を考慮し、上述した中でも、アルコール類単独、多価アルコール類単独、ならびに、アルコール類と多価アルコール類との混合物から選ばれるいずれかを抽出溶媒として用いることが好ましく、アルコール類と多価アルコール類との混合物を抽出溶媒として用いることがより好ましく、エタノールと1,3-ブチレングリコールとの混合物(好適にはエタノール:1,3-ブチレングリコール=7:3~8:2の混合物)を抽出溶媒として用いることが特に好ましい。
【0025】
カキの葉から抽出する場合、残留した場合の問題を考慮し、上述した中でも、水単独、多価アルコール単独、ならびに、水と多価アルコールとの混合物から選ばれるいずれかを抽出溶媒として用いることが好ましく、水と多価アルコールとの混合物を抽出溶媒として用いることがより好ましく、水と1,3-ブチレングリコールとの混合物(好適には水:1,3-ブチレングリコール=1:1の混合物)を抽出溶媒として用いることが特に好ましい。
【0026】
本発明の第1のカルボニル化タンパク質分解剤において、オウゴン根抽出物を有効成分とする場合、オウゴン根抽出物の濃度は特に制限されないが、より顕著にカルボニル化タンパク質分解作用を奏することから、1.0E+00~5.0E+02mg/mLの範囲内であることが好ましい。
【0027】
本発明の第1のカルボニル化タンパク質分解剤において、シコン抽出物を有効成分とする場合、シコン抽出物の濃度は特に制限されないが、より顕著にカルボニル化タンパク質分解作用を奏することから、1.0E-01~5.0E+01mg/mLの範囲内であることが好ましい。
【0028】
本発明の第1のカルボニル化タンパク質分解剤において、カキ葉抽出物を有効成分とする場合、カキ葉抽出物の濃度は特に制限されないが、より顕著にカルボニル化タンパク質分解作用を奏することから、1.0E+00~1.0E+02mg/mLの範囲内であることが好ましい。
【0029】
本発明の第1のカルボニル化タンパク質分解剤は、オウゴン根抽出物、シコン抽出物、カキ葉抽出物をそのまま用いることもできるが、通例、各種の担体などとともに組成物として用いられ、化粧品、皮膚外用剤(医薬品、医薬部外品)として提供できる。本発明はこのように、本発明の第1のカルボニル化タンパク質分解剤を含む化粧品、皮膚外用剤についても提供する。本発明の化粧品、皮膚外用剤において、その剤形も制限されるものではなく、皮膚に適用可能な剤形であればよく、液剤、軟膏剤、硬膏剤、乳液、ローション剤、パック剤などが例示される。その配合量は、オウゴン根抽出物の場合には、通常、製剤中0.01%(w/w)以上、好ましくは0.1~20%(w/w)、シコン抽出物の場合には、通常、製剤中0.001%(w/w)以上、好ましくは0.01~1%(w/w)、カキ葉抽出物の場合には、通常、製剤中0.01%(w/w)以上、好ましくは0.1~10%(w/w)である。また、本発明の第1のカルボニル化タンパク質分解剤は、他の効果をもつ原料、たとえば保湿剤、美白剤、紫外線防御剤などと併用することが可能である。
【0030】
(第2のカルボニル化タンパク質分解剤)
上述の第1のカルボニル化タンパク質分解剤において有効成分として含まれるオウゴン根抽出物には、その成分としてフラボノイドの一種であるバイカレイン、バイカリン、オウゴニン、オウゴノシドなどが含まれ、またシコン抽出物にはその成分としてナフトキノン誘導体である、シコニン、アセチルシコニン、β-ヒドロキシイソバレリルシコニン、イソブチルシコニン、β-ジメチルアクリルシコニン、イソバレリルシコニン、α-メチル-n-ブチルシコニン、デオキシシコニン、テラクリルシコニンなどの成分やフェニルプロパノイドであるロスマリン酸などが含まれ、カキ葉抽出物にはその成分としてフラボノイドの一種であるカテキン、エピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、エピカテキン、プロシアニジンや没食子酸、クロロゲン酸などの成分が含まれると考えられる。後述する実験例で立証するように、本発明者らは、バイカレイン、シコニン、アセチルシコニン、β-ヒドロキシイソバレリルシコニン、カテキン、エピガロカテキンガレートまたは、エピガロカテキンがカルボニル化タンパク質分解作用を示すことを見出した。すなわち、本発明の第2のカルボニル化タンパク質分解剤は、バイカレイン、シコニン、アセチルシコニン、β-ヒドロキシイソバレリルシコニン、カテキン、エピガロカテキンガレートおよびエピガロカテキンの少なくともいずれかを有効成分として含むことを特徴とする。
【0031】
本発明の第2のカルボニル化タンパク質分解剤において、バイカレインの濃度は特に制限されないが、より顕著にカルボニル化タンパク質分解作用を奏することから、1.0E-02~1.0E+01mg/mLの範囲内であることが好ましい。
【0032】
本発明の第2のカルボニル化タンパク質分解剤において、シコニン、アセチルシコニンまたはβ-ヒドロキシイソバレリルシコニンの濃度は特に制限されないが、より顕著にカルボニル化タンパク質分解作用を奏することから、5.0E-05~5.0E-02mg/mLの範囲内であることが好ましい。
【0033】
本発明の第2のカルボニル化タンパク質分解剤において、カテキン、エピガロカテキンガレートまたはエピガロカテキンの濃度は特に制限されないが、より顕著にカルボニル化タンパク質分解作用を奏することから、1.0E-02~1.0E+01mg/mLの範囲内であることが好ましい。
【0034】
本発明の第2のカルボニル化タンパク質分解剤において、有効成分であるバイカレイン、シコニン、アセチルシコニン、β-ヒドロキシイソバレリルシコニン、カテキン、エピガロカテキンガレートおよびエピガロカテキンの少なくともいずれかは、上述した第1のカルボニル化タンパク質分解剤におけるオウゴン根抽出物、シコン抽出物、カキ葉抽出物と同様にそのまま用いることもできるが、通例、各種の担体などとともに組成物として用いられ、化粧品、皮膚外用剤(医薬品、医薬部外品)として提供できる。本発明はこのように、本発明の第2のカルボニル化タンパク質分解剤を含む化粧品、皮膚外用剤についても提供する。この場合も、上述した本発明の第1のカルボニル化タンパク質分解剤を用いた化粧品、皮膚外用剤と同様に、その剤形も制限されるものではなく、皮膚に適用可能な剤形であればよく、他の効果をもつ原料、たとえば保湿剤、美白剤、紫外線防御剤などと併用してもよい。
【0035】
以下に実験例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
<実験例1>
(試料の調製)
採取したシソ科のコガネバナ(オウゴン)の根から、抽出溶媒としてエタノールを用いて抽出し、溶媒を除去したものに、水と1,3-ブチレングリコールの混合物(水:1,3-ブチレングリコール=1:1)を用いて溶解したものを用いた。オウゴン抽出物は、リン酸緩衝液(phosphate-buffered saline:PBS)を用いて調整し、1.0E+01mg/mLのオウゴン根抽出物(実施例1)、1.0E+02mg/mLのオウゴン根抽出物(実施例2)を得た。
【0037】
また、採取したムラサキ科のムラサキの根(シコン)から、抽出溶媒としてエタノールと1,3-ブチレングリコールとの混合物(エタノール:1,3-ブチレングリコール=7:3)を用いて抽出したものを用いた。抽出したシコン抽出物は、PBSを用いて調整し、5.0E-01mg/mLのシコン抽出物(実施例3)、1.0E+00mg/mLのシコン抽出物(実施例4)、3.0E+00mg/mLのシコン抽出物(実施例5)を得た。
【0038】
また、採取したカキノキ科の柿の葉から、抽出溶媒として水と1,3-ブチレングリコールとの混合物(水:1,3-ブチレングリコール=1:1)を用いて抽出したものを用いた。抽出したカキ葉抽出物は、PBSを用いて調整し、1.0E+00mg/mLのカキ葉抽出物(実施例6)を得た。
【0039】
(カルボニル化タンパク質分解効果の評価法)
試験は、セロハンテープ(ニチバン社製)を用いて、肌表面(前腕内側部または顔の頬部)から採取した角層を使用して実施した。採取した角層はプレートに転写し、転写した角層に0.1mMアクロレイン(東京化成社製)を添加して角層タンパク質のカルボニル化処理をした。その後、カルボニル化処理をした角層にサンプルを塗布し、37℃でインキュベートした。インキュベート後、0.1mMの2-Morpholinoethane sulfonic acid(pH5.5)緩衝溶液で50μMの濃度になるように調整したFluorescein-5-thiosemicarbazide(サーモフィッシャー社製)に上記角層を浸漬させて、カルボニル化された角層タンパク質をラベル化した。なお、カルボニル化処理を行っていない角層も同様にラベル化した。
【0040】
ラベル化した角層は蛍光顕微鏡を用いて撮像し、得られた観察画像を解析して、角層面積あたりの蛍光輝度をカルボニル化タンパク質量とした。
【0041】
(結果)
結果を図1に示す。t検定における有意確率P値に対し、有意確率5%未満(P<0.05)を*で表す。図1に示すようにオウゴン根抽出物、シコン抽出物、およびカキ葉抽出物は、カルボニル化タンパク質量が減少しており、優れたカルボニル化タンパク質分解作用を示した。
【0042】
<実験例2>
(試料の調製)
本発明の第2のカルボニル化タンパク質分解剤であるバイカレインは、市販されているものを用いた(バイカレイン、和光純薬工業社製)。バイカレインは、PBSで終濃度0.1%に調整したジメチルスルホキシドを用いて調整し、1.0E-01mg/mLのバイカレイン(実施例7)、1.0E+00mg/mLのバイカレイン(実施例8)を得た。
【0043】
また、本発明の第2のカルボニル化タンパク質分解剤であるシコニン(シコニン、和光純薬工業社製)、アセチルシコニン(アセチルシコニン、長良サイエンス社製)またはβ-ヒドロキシイソバレリルシコニン(β-ヒドロキシイソバレリルシコニン、長良サイエンス社製)は、市販されているものを用いた。シコニンは、PBSで終濃度0.1%に調整したジメチルスルホキシドを用いて調整し、5.0E-04mg/mLのシコニン(実施例9)、5.0E-03mg/mLのシコニン(実施例10)を得た。また、アセチルシコニンは、PBSで終濃度0.1%に調整したジメチルスルホキシドを用いて調整し、5.0E-04mg/mLのアセチルシコニン(実施例11)、5.0E-03mg/mLのアセチルシコニン(実施例12)を得た。さらに、β-ヒドロキシイソバレリルシコニンは、PBSで終濃度0.1%に調整したジメチルスルホキシドを用いて調整し、5.0E-04mg/mLのβ-ヒドロキシイソバレリルシコニン(実施例13)、5.0E-03mg/mLのβ-ヒドロキシイソバレリルシコニン(実施例14)を得た。
【0044】
また、本発明の第2のカルボニル化タンパク質分解剤であるカテキン((+)-カテキン、東京化成工業社製)、エピガロカテキンガレート((-)-エピガロカテキンガレート、和光純薬工業社製)およびエピガロカテキン((-)-エピガロカテキン,緑茶由来、和光純薬工業社製)は、市販されているものを用いた。カテキンは、PBSで終濃度0.1%に調整したジメチルスルホキシドを用いて調整し、1.0E+00mg/mLのカテキン(実施例15)を得た。また、エピガロカテキンがレートは、PBSで終濃度0.1%に調整したジメチルスルホキシドを用いて調整し、1.0E+00mg/mLのエピガロカテキンガレート(実施例16)を得た。さらに、エピガロカテキンは、PBSで終濃度0.1%に調整したジメチルスルホキシドを用いて調整し、1.0E+00mg/mLのエピガロカテキン(実施例17)を得た。
【0045】
(カルボニル化タンパク質分解効果の評価法)
試験は、実験例1と同様の方法を用いて評価した。
【0046】
(結果)
結果を図2に示す。t検定における有意確率P値に対し、有意確率5%未満(P<0.05)を*で表す。図2に示すようにバイカレイン、シコニン、アセチルシコニン、β-ヒドロキシイソバレリルシコニン、カテキン、エピガロカテキンガレートおよびエピガロカテキンは、カルボニル化タンパク質量が減少しており、優れたカルボニル化タンパク質分解作用を示した。
図1
図2