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特開2022-162677励起発光体及び励起発光体の製造方法
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  • 特開-励起発光体及び励起発光体の製造方法 図1
  • 特開-励起発光体及び励起発光体の製造方法 図2
  • 特開-励起発光体及び励起発光体の製造方法 図3
  • 特開-励起発光体及び励起発光体の製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162677
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】励起発光体及び励起発光体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/64 20060101AFI20221018BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
C09K11/64
C09K11/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067602
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】502440894
【氏名又は名称】内山 世紀
(74)【代理人】
【識別番号】100174816
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 貴久
(72)【発明者】
【氏名】内山 世紀
【テーマコード(参考)】
4H001
【Fターム(参考)】
4H001XA08
4H001XA13
4H001XA38
(57)【要約】
【課題】 励起発光体は、蓄光顔料及び/又は蛍光顔料を含むものであり、光エネルギーを吸収することで発光するものである。なお、励起発光体の内部までは光が届きにくいため、長時間光を当てないと、励起発光体の内部に位置する蓄光顔料及び/又は蛍光顔料が発光しなかった。また、励起発光体の内部に位置する蓄光顔料及び/又は蛍光顔料が発光しても外部に放射されにくいという問題が生じていた。そのため、光エネルギーをより効率良く吸収して効率良く放射できる励起発光体を提供する。
【解決手段】 蓄光顔料及び/又は蛍光顔料を含む励起発光体であって、蓄光顔料及び/又は蛍光顔料と、導光材と、樹脂とを含むことを特徴とする励起発光体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄光顔料及び/又は蛍光顔料を含む励起発光体であって、
蓄光顔料及び/又は蛍光顔料と、導光材と、樹脂とを含むことを特徴とする励起発光体。
【請求項2】
前記蓄光顔料は、アルミン酸ストロンチウムを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の励起発光体。
【請求項3】
前記導光材は、光透過性を有する樹脂や、ガラス・石英など光透過性を有する無機物の少なくとも一種を含んでいることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の励起発光体。
【請求項4】
前記樹脂は、フッ素系樹脂であることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の励起発光体。
【請求項5】
前記樹脂は、アクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の励起発光体。
【請求項6】
前記導光材は、繊維状のものであることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の励起発光体。
【請求項7】
前記蓄光顔料及び/又は蛍光顔料と、前記導光材と、前記樹脂との重量混合比は、2:1:1であることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載の励起発光体。
【請求項8】
光が当たることにより発光する励起発光体の製造方法であって、
樹脂に蓄光顔料及び/又は蛍光顔料を混合する工程と、
前記蓄光顔料及び/又は蛍光顔料を混合した樹脂に導光材を混合する工程と、
前記蓄光顔料及び/又は蛍光顔料と導光材とを混合した樹脂を成型又は塗布する工程と、を有することを特徴とする励起発光体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は励起発光体に関し、より詳細には、光エネルギーをより効率良く吸収して効率良く放射できる励起発光体に関する。
【背景技術】
【0002】
励起発光体とは、蓄光顔料及び/又は蛍光顔料を含むものである。なお、蓄光顔料は、光が照射されることで電子が励起状態となり、元の状態である基底状態に徐々に戻るときに発光するものである。蛍光顔料は、光が照射されてそのエネルギーを吸収することで電子が励起状態となり、元の状態である基底状態に戻る際に発光するものである。
【0003】
励起発光体として、蓄光顔料とガラス粉末粒子体を含むものが知られている(特許文献1)。特許文献1の蓄光体(励起発光体)は、汚れが付着しても表面を研磨すれば再度蓄光力が回復するので、半永久的に蓄光力を維持することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-293238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の蓄光体からでは、十分な発光を得ることができなかった。これは、蓄光体の内部で励起発光した光エネルギーが蓄光体表面から十分に放射されなかったためである。
【0006】
本発明は、かかる従来発明における課題に鑑みてされたものであり、本発明の目的は、励起発光体の内部の蓄光顔料及び/又は蛍光顔料に光エネルギーを届けるとともに、励起発光体の内部で励起発光した光エネルギーをより効率良く放射できる励起発光体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも以下のような構成を備え、もしくは手順を実行する。
【0008】
本発明に係る励起発光体は、蓄光顔料及び/又は蛍光顔料を含む励起発光体であって、
蓄光顔料及び/又は蛍光顔料と、導光材と、樹脂とを含むことを特徴とする。
かかる構成により、励起発光体の内部で効率よく励起反応を起こし、発光した光エネルギーをより効率良く放射できる。
【0009】
また、好ましくは、前記蓄光顔料は、アルミン酸ストロンチウムを含んでいることを特徴とする。
かかる構成により、より明るく発光することができる。
【0010】
また、好ましくは、前記導光材は、光透過性を有する樹脂や、ガラス・石英など光透過性を有する無機物の少なくとも一種を含んでいることを特徴とする。
かかる構成により、より確実に光を励起発光体の内部にまで届けることができる。
【0011】
また、好ましくは、前記樹脂は、フッ素系樹脂であることを特徴とする。
かかる構成により、紫外線劣化を防止することができる。
【0012】
また、好ましくは、前記樹脂は、アクリル系樹脂であることを特徴とする。
かかる構成により、励起発光体の励起発光強度が向上する。
【0013】
また、好ましくは、前記導光材は、繊維状のものであることを特徴とする。
かかる構成により、より確実に光を励起発光体の内部にまで届けることができる。これは、導光材が繊維状のものであると導光材同士が接触して励起発光体内部への励起光の侵入及び内部からの蓄光の放射の導光路の役割を果たすためである。
【0014】
また、好ましくは、前記蓄光顔料及び/又は蛍光顔料と、前記導光材と、前記樹脂との重量混合比は、2:1:1であることを特徴とする。
かかる構成により、より確実に励起発光体の内部で励起を起こし、発光した光エネルギーをより効率良く外部に放射できる。
【0015】
本発明に係る励起発光体の製造方法は、光が当たることにより発光する励起発光体の製造方法であって、樹脂に蓄光顔料及び/又は蛍光顔料を混合する工程と、前記蓄光顔料及び/又は蛍光顔料を混合した樹脂に導光材を混合する工程と、前記蓄光顔料及び/又は蛍光顔料と導光材とを混合した樹脂を成型又は塗布する工程と、を有することを特徴とする。
かかる構成により、光エネルギーをより効率良く放射できる励起発光体を製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、励起発光体の内部に光エネルギーを届けるとともに、励起発光体の内部で励起発光した光エネルギーをより効率良く放射する励起発光体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る励起発光体10の断面を示す概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る励起発光体10への蓄光時における光の流れ及び発光時における光の流れの様子を示す概略図である。
図3】導光材30の形状がビーズ状である場合における励起発光体10の断面を示す概略図である。
図4】導光材30の形状がビーズ状である場合における励起発光体10への蓄光時における光の流れ及び発光時における光の流れの様子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、あくまで、本発明を実施するための具体的な一例を挙げるものであって、本発明を限定的に解釈させるものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る励起発光体10の断面を示す概略図である。励起発光体10は、蓄光顔料20と、導光材30と、樹脂40とを含んでいる。なお、蓄光顔料20の代わりに蛍光顔料を使用しても構わないし、蓄光顔料20と蛍光顔料の両方を使用しても構わない。なお、蓄光顔料20と、導光材30と、樹脂40との重量混合比は、2:1:1が好ましい。
【0020】
蓄光顔料20としては、アルミン酸ストロンチウムを使用している。アルミン酸ストロンチウムを使用することで、より明るく発光する。蓄光顔料20の粒径としては、10μm~100μm程度である。
【0021】
また、市販されている蓄光顔料20を使用しても構わない。具体的には、高輝度長残光性蓄光顔料でルミノーバ(登録商標)等を使用しても構わない。
【0022】
導光材30としては、光透過性を有する樹脂や、ガラス・石英など光透過性を有する無機物などである。なお、これらは単独で使用しても、組み合わせて使用してしても構わない。なお、光とは可視光及び紫外光を含む広義のものである。
【0023】
本発明では導光材30を入れることで励起発光体10の内部の蓄光顔料20に光を届けている。これは、光が導光材30を伝わって励起発光体10の内部まで光が届くためである。また、励起発光体10の内部で励起発光した光が導光材30を伝わって放射されやすくもなる。これにより、発光効率を向上させている。発光効率を向上させているため、少量の蓄光顔料20でも十分に発光する。なお、一般的には蓄光顔料20は高価であるため、発光効率を向上させることによりコストを抑えることができる。
【0024】
導光材30の形状としては、繊維状のものを使用している。繊維状のものを使用すると、導光材30が連続的に繋がりやすくなり、励起発光体10の内部に光がより確実に届くようになるためである。繊維長としては、0.1mm~1mm程度である。なお、導光材30の他の形状としては、ビーズ形状、カプセル形状、スポンジ状でも構わない。
【0025】
なお、導光材30としては比較的大きいものを使用しても構わない。具体的には、直径10mm高さ5mm程度で剣山のような形状のものを使用しても構わない。
【0026】
樹脂40は、フッ素系樹脂が好ましい。紫外線の劣化を防ぐ効果の高いフッ素系樹脂を使用することで、励起発光体10の劣化を防止することができるためである。
【0027】
また、樹脂40は、光透過性の良いアクリル樹脂や耐候性に優れた塩化ビニル樹脂を使用しても構わない。状況に応じ、適切な樹脂を選択すれば良い。なお、これらの樹脂に紫外線吸収剤が添加されている場合、励起反応が阻害されるので、紫外線吸収剤が添加されていない樹脂を使用しなければならない。
【0028】
図2は、本発明の実施形態に係る励起発光体10への蓄光時における光の流れ及び発光時における光の流れの様子を示す概略図である。励起発光体10に照射された光は導光材30を通って励起発光体10の内部深くまで照射され、励起発光体10の内部に位置する蓄光顔料20に照射される。これにより、励起発光体10の内部の蓄光顔料20に効率良く光エネルギーを届けることができる。また、励起発光体10の内部の蓄光顔料20から放射された光エネルギーは導光材30を通り外部に放射される。これにより、励起発光体10から効率よく光エネルギーを放射することができる。
【0029】
図3は、導光材30の形状がビーズ状である場合における励起発光体10の断面を示す概略図である。導光材30の形状がビーズ状である場合、接着剤などを用いてあらかじめ鎖状に繋げておくのが好ましい。なお、導光材30の分散状態を制御して、連続的に鎖状につながるようにしても構わない。鎖状に繋げることによって励起発光体10の内部に光がより確実に届くようになる。
【0030】
図4は、導光材30の形状がビーズ状である場合における励起発光体10への蓄光時における光の流れ及び発光時における光の流れの様子を示す概略図である。励起発光体10に照射された光は導光材30を通って励起発光体10の内部深くまで照射され、励起発光体10の内部に位置する蓄光顔料20に照射される。これにより、励起発光体10の内部の蓄光顔料20に効率良く光エネルギーを届けることができる。また、励起発光体10の内部の蓄光顔料20から放射された光エネルギーは導光材30を通り外部に放射される。これにより、励起発光体10から効率よく光エネルギーを放射することができる。
【0031】
次に、本発明に係る励起発光体10の製造方法について説明する。製造方法としては、樹脂40に蓄光顔料20を分散させて混入し、その後、導光材30を入れて混合する。そして混合したものを成型することで励起発光体10を製造する。なお、樹脂40に蓄光顔料20を分散させて混入し、その後、導光材30を入れて混合したものを対象物に塗布しても構わない。この場合、塗布したものが固まることで励起発光体10が製造される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る励起発光体10は、光エネルギーをより効率良く放射できるため、停電時の非常案内板などに有用である。また、釣りの疑似餌に使用すると釣果が期待できるため有用である。また、道路や歩道に使用すると夜間における通行上の安全性が向上するため有用である。また、捕虫器用ランプ代用、玩具、店舗照明、夜間運動具補助灯代用として有用である。
【符号の説明】
【0033】
10 励起発光体
20 蓄光顔料
30 導光材
40 樹脂

図1
図2
図3
図4