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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162691
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 15/00 20060101AFI20221018BHJP
   F04C 2/10 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
F04C15/00 E
F04C2/10 341Z
F04C2/10 341E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067626
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100106312
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敬敏
(72)【発明者】
【氏名】竹花 憲夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 匠
【テーマコード(参考)】
3H041
3H044
【Fターム(参考)】
3H041BB04
3H041CC15
3H041CC20
3H041DD01
3H041DD02
3H041DD05
3H041DD12
3H041DD13
3H044CC14
3H044DD01
3H044DD02
3H044DD06
(57)【要約】
【課題】機械的強度を確保しつつ、薄型化、小型化を図れるポンプ装置を提供する。
【解決手段】流体にポンプ作用を及ぼすロータユニットRuと、吸入口15,吐出口16,ロータユニットを収容する収容室13を画定するハウジングHと、ロータユニットに結合されてハウジングの外側に突出すると共に所定の軸線S回りに回転する回転軸30を備え、ハウジングHは、適用対象物に接合させる接合壁11,接合壁と協働して収容室を画定する外周壁12,及び接合壁から軸線方向に突出して適用対象物に嵌合されるインロー部14を一体的に有する有底筒状のハウジングボディ10と、収容室を閉塞するべくハウジングボディに結合される平板状のハウジングカバー20を含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体にポンプ作用を及ぼすロータユニットと、
吸入口,吐出口,及び前記ロータユニットを収容する収容室を画定するハウジングと、
前記ロータユニットに結合されて前記ハウジングの外側に突出すると共に所定の軸線回りに回転する回転軸と、を備え、
前記ハウジングは、適用対象物に接合される接合壁,前記接合壁と協働して前記収容室を画定する外周壁,及び前記接合壁から前記軸線方向の外側に突出して前記適用対象物に嵌合されるインロー部を一体的に有する有底筒状のハウジングボディと、前記収容室を閉塞するべく前記ハウジングボディに結合される平板状のハウジングカバーと、を含む、
ことを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
前記接合壁の肉厚寸法は、前記外周壁の肉厚寸法よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記吸入口及び前記吐出口は、前記インロー部の周りにおいて、前記接合壁に設けられている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記ハウジングボディ及び前記ハウジングカバーは、前記適用対象物に固定するボルトを挿通させる複数の挿通孔を含み、
前記外周壁は、前記挿通孔の周辺領域の肉厚寸法が他の領域の肉厚寸法よりも大きく形成されている、
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一つに記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記ハウジングカバーの肉厚寸法は、前記接合壁の肉厚寸法よりも大きく、前記外周壁の肉厚寸法よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一つに記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記ハウジングボディは、前記インロー部の内側において、前記回転軸の一端側領域を回動自在に支持する第1軸受孔を含み、
前記ハウジングカバーは、前記回転軸の他端側領域を回動自在に支持する第2軸受孔を含む、
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれか一つに記載のポンプ装置。
【請求項7】
前記ハウジングカバーは、前記第2軸受孔の周りにおいて、前記軸線方向の外側に突出する環状凸部を含む、
ことを特徴とする請求項6に記載のポンプ装置。
【請求項8】
前記ハウジングカバーは、前記ハウジングボディの嵌合凹部に対して嵌合される嵌合凸部を含む、
ことを特徴とする請求項1ないし7いずれか一つに記載のポンプ装置。
【請求項9】
前記嵌合凹部は、前記収容室を画定する内縁部の一部として形成されている、
ことを特徴とする請求項8に記載のポンプ装置。
【請求項10】
前記ハウジングボディは、ネジを捩じ込むネジ穴を含み、
前記ハウジングカバーは、前記ネジを通す円孔を含み、
前記ハウジングカバーは、前記ネジにより前記ハウジングボディに結合されている、
ことを特徴とする請求項1ないし9いずれか一つに記載のポンプ装置。
【請求項11】
前記ロータユニットは、前記回転軸と一体的に回転するインナーロータと、前記インナーロータに連動して回転するアウターロータを含む、
ことを特徴とする請求項1ないし10いずれか一つに記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を吸入し加圧して吐出するポンプ装置に関し、特に、内燃エンジンのシリンダブロックや流体機器等の適用対象物の接合面に接合されて固定されるポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のポンプ装置としては、インナーロータ及びアウターロータを含むポンプ体と、ポンプ体を収容する収容室を画定するポンプボディと、ポンプ体を収容したポンプボディを覆うポンプカバーと、ポンプ体に結合されてポンプカバーから突出するポンプシャフトを備え、トランスアクスルのケースの接合面に対してポンプカバーの外壁面が接合され、ボルトを用いてケースに固定される、オイルポンプが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このオイルポンプにおいては、ポンプボディ及びポンプカバーがボルトを用いてケースに固定されるだけであるため、ポンプシャフトに垂直な方向すなわち接合面に沿う方向において高精度に位置決めを行うことができない。
また、ポンプボディ及びポンプカバーの幅寸法は、それぞれポンプ体の幅寸法よりも十分に大きく、ポンプシャフトの軸線方向においてオイルポンプの大型化を招く構造である。さらに、ポンプシャフトは、ポンプカバーに設けられた一つのベアリングで支持されており、ケースへの組み付け後においてケース内のベアリングによりポンプシャフトの先端側が支持される構造であるため、オイルポンプとしては、ポンプシャフトが確実に支持される構造ではない。
【0004】
また、他のポンプ装置としては、インナーロータ及びアウターロータを含むトロコイドと、トロコイドを収容するトロコイド収容凹部を画定するケーシングと、トロコイド収容凹部を閉塞するカバーと、インナーロータに結合されてカバーから突出する駆動シャフトを備え、機器本体の固定プレートの接合面に対してカバーの外壁面が接合され、ネジを用いて固定プレートに固定される、内接歯車ポンプが知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0005】
この内接歯車ポンプにおいては、カバーが固定プレートの嵌合孔に嵌合されるインロー部を備えているため、ケーシング及びカバーを固定プレートに対して接合面に沿う方向に位置決めできる。しかしながら、駆動シャフトの軸線方向において薄型化を図るべくカバーの板厚を薄くすると、インロー部の周りのカバーの面剛性が低下し、所望する位置決めや機械的強度を確保できない虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-115592号公報
【特許文献2】特開2020-159283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、上記従来技術の課題等を解消して、機械的強度を確保しつつ、薄型化、小型化を図れる、ポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のポンプ装置は、流体にポンプ作用を及ぼすロータユニットと、吸入口,吐出口,及びロータユニットを収容する収容室を画定するハウジングと、ロータユニットに結合されてハウジングの外側に突出すると共に所定の軸線回りに回転する回転軸を備え、ハウジングは、適用対象物に接合される接合壁,接合壁と協働して収容室を画定する外周壁,及び接合壁から軸線方向の外側に突出して適用対象物に嵌合されるインロー部を一体的に有する有底筒状のハウジングボディと、収容室を閉塞するべくハウジングボディに結合される平板状のハウジングカバーを含む、構成となっている。
【0009】
上記ポンプ装置において、接合壁の肉厚寸法は、外周壁の肉厚寸法よりも小さい、構成を採用してもよい。
【0010】
上記ポンプ装置において、吸入口及び吐出口は、インロー部の周りにおいて、接合壁に設けられている、構成を採用してもよい。
【0011】
上記ポンプ装置において、ハウジングボディ及びハウジングカバーは、適用対象物に固定するボルトを挿通させる複数の挿通孔を含み、外周壁は、挿通孔の周辺領域の肉厚寸法が他の領域の肉厚寸法よりも大きく形成されている、構成を採用してもよい。
【0012】
上記ポンプ装置において、ハウジングカバーの肉厚寸法は、ハウジングボディの接合壁の肉厚寸法よりも大きく、ハウジングボディの外周壁の肉厚寸法よりも小さい、構成を採用してもよい。
【0013】
上記ポンプ装置において、ハウジングボディは、インロー部の内側において、回転軸の一端側領域を回動自在に支持する第1軸受孔を含み、ハウジングカバーは、回転軸の他端側領域を回動自在に支持する第2軸受孔を含む、構成を採用してもよい。
【0014】
上記ポンプ装置において、ハウジングカバーは、第2軸受孔の周りにおいて、軸線方向の外側に突出する環状凸部を含む、構成を採用してもよい。
【0015】
上記ポンプ装置において、ハウジングカバーは、ハウジングボディの嵌合凹部に対して嵌合される嵌合凸部を含む、構成を採用してもよい。
【0016】
上記ポンプ装置において、ハウジングボディの嵌合凹部は、収容室を画定する内縁部の一部として形成されている、構成を採用してもよい。
【0017】
上記ポンプ装置において、ハウジングボディは、ネジを捩じ込むネジ穴を含み、ハウジングカバーは、ネジを通す円孔を含み、ハウジングカバーは、ネジによりハウジングボディに結合されている、構成を採用してもよい。
【0018】
上記ポンプ装置において、ロータユニットは、回転軸と一体的に回転するインナーロータと、インナーロータに連動して回転するアウターロータを含む、構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0019】
上記構成をなすポンプ装置によれば、機械的強度を確保しつつ、薄型化、小型化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係るポンプ装置を適用対象物に取り付ける前の状態を示す分解斜視図である。
図2】一実施形態に係るポンプ装置を適用対象物に接合する接合壁と反対側から視た外観斜視図である。
図3】一実施形態に係るポンプ装置を適用対象物に接合する接合壁側から視た外観斜視図である。
図4図2に示すポンプ装置の分解斜視図である。
図5図3に示すポンプ装置の分解斜視図である。
図6】一実施形態に係るポンプ装置を回転軸の軸線を通る面で切断した断面図である。
図7】一実施形態に係るポンプ装置の一部をなすハウジングボディを回転軸の軸線を通る面で切断した斜視断面図である。
図8】一実施形態に係るポンプ装置の一部をなすハウジングボディを回転軸の軸線を通る面で切断した断面図である。
図9】一実施形態に係るポンプ装置に含まれるロータユニット(インナーロータ及びアウターロータ)と吸入口及び吐出口の関係を示すものであり、ハウジングカバーを取り除いた状態での正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
一実施形態に係るポンプ装置Mは、適用対象物として内燃エンジンのシリンダブロックCBに接合されて固定されるものである。
ここで、適用対象物としてのシリンダブロックCBは、図1に示すように、ポンプ装置Mを接合する接合面1、円筒状の嵌合凹部2、作動油の流出口3、作動油の流入口4、ボルトBを捩じ込む三つのネジ穴5を備えている。
【0022】
ポンプ装置Mは、図2ないし図5に示すように、ハウジングHとしてのハウジングボディ10及びハウジングカバー20、所定の軸線Sを中心とする回転軸30、ロータユニットRuとしてのインナーロータ40及びアウターロータ50、ハウジングカバー20をハウジングボディ10に締結するネジbを備えている。
【0023】
ハウジングボディ10は、鋼、鋳鉄、焼結鋼、アルミニウム合金等の金属材料を用いて有底筒状に形成されており、図4及び図5に示すように、接合壁11、外周壁12、収容室13、インロー部14、吸入口15、吐出口16、第1軸受孔としての軸受孔17、三つの挿通孔18、一つのネジ穴19を備えている。
【0024】
接合壁11は、図6に示すように、肉厚寸法T1で軸線Sに垂直な平板状に形成され、適用対象物であるシリンダブロックCBの接合面1に接合される外壁面11a、ロータユニットRuの端面41,51が密接して摺動する内壁面11bを画定する。
外周壁12は、図6及び図7に示すように、接合壁11の外縁領域から軸線S方向に筒状に突出して環状の端面12aを画定すると共に、挿通孔18から離れた領域において肉厚寸法T2をなし、挿通孔18の周辺領域において肉厚寸法T3をなすように形成されている。
ここで、肉厚寸法T2は、接合壁11の肉厚寸法T1よりも大きく形成されている。また、挿通孔18の周辺領域の肉厚寸法T3は、挿通孔18から離れた他の領域の肉厚寸法T2よりも大きく形成されている。
【0025】
このように、平板状をなす接合壁11と筒状をなす外周壁12とが一体的に形成されている。したがって、従来のように接合壁が外周壁とは別体の平板に形成されて接合される構造に比べて、接合壁11と外周壁12とが連続する領域の曲げ剛性を高めることができる。その結果、接合壁11を薄く形成しても、ハウジングボディ10全体としての機械的強度及び接合壁11の面剛性を確保することができる。
特に、接合壁11は、適用対象物としてのシリンダブロックCBの接合面1に接合されるため、その変形をさらに抑制ないし防止することができる。
【0026】
収容室13は、接合壁11と外周壁12により画定される空間であり、ロータユニットRuを回転可能に収容する。
また、収容室13は、図8及び図9に示すように、軸線Sから平行に偏倚した軸線S1を中心とする円筒面の一部をなす円弧面13aを備えている。
円弧面13aは、ロータユニットRuの一部をなすアウターロータ50の外周面53を摺動自在に支持する外周支持面として機能する。
また、円弧面13aの内縁部は、収容室13を画定する内縁部の一部であり、ハウジングカバー20の嵌合凸部22を嵌合する嵌合凹部としても機能する。
【0027】
インロー部14は、接合壁11から軸線S方向の外側に突出すると共に軸線Sを中心としかつ接合壁11の肉厚寸法T1よりも厚肉の円筒状に形成されている。そして、インロー部14は、ポンプ装置MがシリンダブロックCBの接合面1に接合して固定される際に、接合面1に形成された嵌合凹部2に密接して嵌合される。
これにより、ポンプ装置Mは、軸線Sに垂直な方向において接合面1に高精度に位置決めされる。したがって、回転軸30に結合される被動回転体(例えば、歯車6)が内燃エンジンの駆動回転体により回転駆動される場合は、駆動回転体に対して被動回転体を高精度に位置決めすることができる。
また、インロー部14は、薄板状の接合壁11から突出して形成されるものの、接合壁11が外周壁12と一体的に形成されているため、接合壁11の面剛性を確保することができ、インロー部14の剛性も確保することができる。その結果、インロー部14を嵌合凹部2に確実に嵌合させることができる。
【0028】
吸入口15は、インロー部14の周りの接合壁11において、回転方向に向けて末拡がる輪郭をなすように、外壁面11aから内壁面11bまで貫通して形成されている。そして、ポンプ装置MがシリンダブロックCBに接合された状態で、流出口3から導かれる作動油が、吸入口15を通して収容室13内に吸入される。
【0029】
吐出口16は、インロー部14の周りの接合壁11でかつインロー部14を挟んで吸入口15と反対側の領域において、回転方向に向けて先細る輪郭をなすように、外壁面11aから内壁面11bまで貫通して形成されている。そして、ポンプ装置MがシリンダブロックCBに接合された状態で、収容室13内で加圧された作動油が、吐出口16を通して流入口4に向けて吐出される。
【0030】
軸受孔17は、回転軸30の一端側領域31を回動自在に支持するべく、インロー部14の内側において軸線Sを中心とする円筒状に形成されている。
このように、軸受孔17は、面剛性が高められた接合壁11に設けられたインロー部14の内側において同軸(軸線S)上に形成されているため、回転軸30を支持するために十分な機械的強度を確保することができる。
【0031】
三つの挿通孔18は、シリンダブロックCBのネジ穴5に捩じ込むボルトBを挿通させるものであり、外周壁12の収容室13から離れた領域において、端面12aから外壁面11aまで軸線S方向に貫通するように形成されている。
ここで、三つの挿通孔18の周辺領域の肉厚寸法T3は、他の領域の肉厚寸法T2よりも大きく形成されているため、ボルトBの締付け荷重(応力)に十分に耐え得る機械的強度を確保することができる。
【0032】
一つのネジ穴19は、ハウジングカバー20をハウジングボディ10に結合するネジbを捩じ込むものであり、一つの挿通孔18の近傍の厚肉領域において端面12aに形成されている。
【0033】
ハウジングカバー20は、ハウジングボディ10の収容室13を閉塞するべくハウジングボディ10に結合されるものであり、鋼、鋳鉄、焼結鋼、アルミニウム合金等の材料を用いて、肉厚寸法T4の平板状に形成されている。
そして、ハウジングカバー20は、図4及び図5に示すように、結合壁21、嵌合凸部22、第2軸受孔としての軸受孔23、環状凸部24、三つの挿通孔25、一つの円孔26を備えている。
ここで、ハウジングカバー20の結合壁21の領域の肉厚寸法T4は、図6に示すように、ハウジングボディ10の接合壁11の肉厚寸法T1よりも大きく、ハウジングボディ10の外周壁12の肉厚寸法T2よりも小さくなるように設定されている。
これにより、ポンプ装置Mの軸線S方向における幅寸法Wを小さくしつつ、ハウジングH全体としての機械的強度を確保することができる。
【0034】
結合壁21は、軸線Sに垂直な平坦面として形成され、ハウジングボディ10の端面12aに密接して結合される。
嵌合凸部22は、ハウジングカバー20の中央寄りにおいて、軸線S1を中心とし結合壁21から軸線S方向に突出する円盤状に形成されており、外周面22a及び内壁面22bを画定している。外周面22aは、ハウジングボディ10の嵌合凹部としての円弧面13aの内縁部に嵌合される。内壁面22bは、ロータユニットRuの端面42,52が密接して摺動するべく軸線Sに垂直な平坦面をなす。
【0035】
ここで、嵌合凸部22が嵌合凹部(円弧面13a)に対して僅かに圧入されるように嵌合されることにより、単なる嵌合作業だけで、ポンプ装置Mを取り扱う際に、ハウジングカバー20がハウジングボディ10から抜け落ちないように結合することができ、又、ハウジングH全体としての機械的強度及び剛性を高めることができる。
【0036】
軸受孔23は、回転軸30の他端側領域32を回動自在に支持するべく、軸線Sを中心とする円筒状に形成されている。
環状凸部24は、軸受孔23の周りにおいて、軸線S方向の外側に突出する円筒状に形成されている。そして、環状凸部24は、軸受孔23の周りの機械的強度を高める役割をなす。
【0037】
三つの挿通孔25は、シリンダブロックCBのネジ穴5に捩じ込むボルトBを挿通させるものであり、ハウジングボディ10の三つの挿通孔18に対応する位置において軸線S方向に貫通する円孔として形成されている。
一つの円孔26は、ハウジングカバー20をハウジングボディ10に結合するネジbを通すものであり、一つの挿通孔25の近傍に形成されている。
【0038】
上記のように、ハウジングHが、接合壁11及び外周壁12を一体的に備える有底筒状のハウジングボディ10と、平板状をなすハウジングカバー20により構成されるため、従来のように接合壁が単なる平板として外周壁とは別個に形成される場合に比べて、曲げ剛性、機械的強度を高めることができる。
したがって、接合壁11の肉厚寸法T1を薄く形成することができ、それ故に、図6に示すように、ポンプ装置Mの軸線S方向における幅寸法Wを小さくでき、薄型化、小型化を達成することができる。また、接合壁11の肉厚を薄くしても機械的強度及び面剛性を確保することができるため、接合壁11に一体形成されるインロー部14の剛性も確保することができる。
さらに、ハウジングHは、ハウジングボディ10の嵌合凹部(円弧面13aの内縁部)に対してハウジングカバー20の嵌合凸部22が嵌合されて結合されるため、ハウジングH全体としての機械的強度及び剛性が高まり、又、軸受孔17と軸受孔23とを同軸(軸線S)上に高精度に位置決めすることができる。
【0039】
回転軸30は、鋼材料等を用いて軸線S方向に伸長する円柱状に形成され、一端側領域31がハウジングボディ10の軸受孔17に嵌合され、又、他端側領域32がハウジングカバー20の軸受孔23に嵌合されて、軸線S回りに回動自在に支持される。
このように、ハウジングHに対して、回転軸30の一端側領域31及び他端側領域32が支持されるため、従来のように一端側領域のみがハウジングにより支持され他端側領域が適用対象物に支持される構造に比べて、軸線Sの傾きを生じることなく、回転軸30を軸線S回りに回動自在に高精度に支持することができる。
【0040】
ここで、回転軸30は、図1ないし図3に示すように、ハウジングHから軸線S方向に僅かに突出する単純な形態で示され、端部の詳細は省略されている。
実際には、回転軸30が、ハウジングカバー20から突出する他端側領域32において、内燃エンジンの駆動回転体の駆動力が伝達される場合は、例えば、歯車、スプロケット、プーリー等の被動回転体が連結され、又、電動モータの駆動回転体(例えば、ロータ、駆動軸)の駆動力が伝達される場合は、駆動回転体に伝達部材を介して又は直接連結されるように形成される。
一方、回転軸30が、ハウジングボディ10の接合壁11から突出する一端側領域31において、内燃エンジンの駆動回転体の駆動力が伝達される場合は、例えば、駆動回転体に直接連結されるように形成される。
【0041】
ロータユニットRuは、作動油に対して、吸入、加圧、吐出のポンプ作用を及ぼすべく収容室13に配置されるものであり、インナーロータ40及びアウターロータ50により構成されている。
インナーロータ40は、鋼又は焼結鋼等の金属材料を用いて、トロコイド曲線による歯形をもつ外歯車として形成されている。そして、インナーロータ40は、図4及び図5に示すように、ハウジングボディ10の内壁面11bを摺動する端面41、ハウジングカバー20の内壁面22bを摺動する端面42、回転軸30を嵌合する嵌合孔43、四つの凸部44及び四つの凹部45を備えている。
そして、インナーロータ40は、軸線Sを中心として、矢印R方向に回転軸30と一体的に回転する。
【0042】
アウターロータ50は、鋼又は焼結鋼等の金属材料を用いて、インナーロータ40に噛合し得る歯形をもつ内歯車として形成されている。そして、アウターロータ50は、図4及び図5に示すように、ハウジングボディ10の内壁面11bを摺動する端面51、ハウジングカバー20の内壁面22bを摺動する端面52、軸線S1を中心とする円筒状の外周面53、五つの凸部54及び五つの凹部55を備えている。
外周面53は、ハウジングボディ10の円弧面13aに摺動自在に接触する。
五つの凸部54及び五つの凹部55は、インナーロータ40の四つの凸部44及び四つの凹部45と部分的に噛み合うように形成されている。
【0043】
そして、アウターロータ50は、軸線Sを中心として回転するインナーロータ40の回転に連動しつつ、インナーロータ40よりも遅い速度で、軸線S1を中心として、インナーロータ40と同一方向に回転する。
また、インナーロータ40とアウターロータ50とが部分的に噛合うことにより、両者の間において、吸入、加圧、及び吐出のポンプ作用が連続的に生じる。
【0044】
上記構成をなすポンプ装置Mの組み付け作業について説明する。
予め、ハウジングボディ10、ハウジングカバー20、回転軸30、ロータユニットRu(インナーロータ40及びアウターロータ50)、一つのネジbが準備される。
先ず、回転軸30が、インナーロータ40の嵌合孔43に圧入嵌合されて、インナーロータ40と一体的に回転するように固定される。尚、単なる圧入だけではなく、キー溝及びキー等を採用して、相対的な回転を確実に規制する手段を講じてもよい。
【0045】
続いて、インナーロータ40及びアウターロータ50がハウジングボディ10の収容室13に嵌め込まれると共に、回転軸30の一端側領域31がハウジングボディ10の軸受孔17に回動自在に挿入される。
続いて、ハウジングカバー20が、軸線S方向からハウジングボディ10に近づけられて収容室13を閉塞するように、ハウジングボディ10に結合される。
具体的には、ハウジングカバー20の軸受孔23に回転軸30の他端側領域32が回動自在に挿入され、ハウジングカバー20の嵌合凸部22がハウジングボディ10の嵌合凹部(円弧面13aの内縁部)に嵌合される。
【0046】
そして、ネジbが、ハウジングカバー20の円孔26を通して、ハウジングボディ10のネジ穴19に捩じ込まれる。
これにより、回転軸30が結合されたロータユニットRuを収容した状態で、ハウジングカバー20がハウジングボディ10に結合され、ポンプ装置Mの組み付けが完了する。
尚、上記組み付け手順は、一例であり、その他の手順で組み付けを行ってもよい。
【0047】
上記構成において、ハウジングカバー20は、嵌合凸部22を嵌合凹部(収容室13を画定する内縁部の一部である円弧面13aの内縁部)に嵌合することによりハウジングボディ10に結合されるため、ハウジングHの機械的強度を高めることができ、又、ハウジングカバー20の抜け落ちを防止することができる。特に、上記実施形態においては、ネジbを用いて、ハウジングカバー20がハウジングボディ10に締結されるため、ポンプ装置Mが搬送等で取り扱われる際に、ハウジングカバー20の抜け落ちを確実に防止することができる。
【0048】
次に、一実施形態に係るポンプ装置Mを、適用対象物としてのシリンダブロックCBに装着する作業について説明する。尚、ここでは、図1に示すように、回転軸30に連結される被動回転体としては、一例として歯車6が適用される。
先ず、製品としてのポンプ装置M、歯車6、三つのボルトB、液体又は成形体としてのパッキン(不図示)が準備される。
続いて、ポンプ装置Mの回転軸30の他端側領域32に歯車6が連結される。
【0049】
続いて、ポンプ装置Mが、軸線S方向においてシリンダブロックCBに近づけられ、接合壁11(外壁面11a)と接合面1の間にパッキン(不図示)を介在させた状態で、インロー部14が嵌合凹部2に嵌合される。
これにより、ポンプ装置Mは、軸線Sに垂直な方向において接合面1に高精度に位置決めされる。それ故に、内燃エンジンの駆動回転体(不図示)に対して、回転軸30に結合された歯車6が高精度に位置決めされる。
続いて、三つのボルトBが、それぞれ対応する挿通孔25,18に挿通されて、三つのネジ穴5に捩じ込まれ、ポンプ装置MがシリンダブロックCBに固定される。
これにより、シリンダブロックCBに対するポンプ装置Mの装着作業が完了する。
【0050】
上記の装着作業において、ポンプ装置MのハウジングHは、薄型化を達成しつつも、機械的強度及び剛性が確保されているため、インロー部14を嵌合凹部2に嵌合する際に、インロー部14の周りの接合壁11に変形等を生じることなく、嵌合作業を容易に行うことができる。
【0051】
次に、ポンプ装置Mの動作について、簡単に説明する。
尚、ポンプ装置MがシリンダブロックCBに装着された状態において、シリンダブロックCBの流出口3はポンプ装置Mの吸入口15に連通し、シリンダブロックCBの流入口4はポンプ装置Mの吐出口16に連通している。
【0052】
この状態において、歯車6を介して回転軸30が矢印R方向に回転すると、インナーロータ40が矢印R方向に回転し、インナーロータ40に連動してアウターロータ50が同一方向に回転する。
すると、インナーロータ40とアウターロータ50に挟まれる空間Cinが徐々に拡大して、流出口3から導かれた作動油が、吸入口15を経て空間Cin内に吸い込まれる。
【0053】
そして、空間Cinが最大に至った時点で吸入作用が終了し、続いて、空間Coutが徐々に縮小して吸入された作動油の加圧作用が生じ、加圧された作動油が、吐出口16を経て流入口4に向け吐出される。
上記一連の動作が連続的に繰り返されることにより、作動油が、連続的に、吸入され、加圧され、吐出される。
【0054】
以上述べたように、一実施形態に係るポンプ装置Mによれば、ハウジングHが、適用対象物に接合される接合壁11,接合壁11と協働して収容室13を画定する外周壁12,及び接合壁11から軸線S方向の外側に突出して適用対象物に嵌合されるインロー部14を一体的に有する有底筒状のハウジングボディ10と、収容室13を閉塞するべくハウジングボディ10に結合される平板状のハウジングカバー20とを含む構成であるため、接合壁11の機械的強度及び面剛性を確保しつつ、接合壁11を薄板状に形成して、ポンプ装置Mの軸線S方向における幅寸法Wを小さくでき、薄型化、小型化を達成することができる。
【0055】
ここでは、ハウジングボディ10において、接合壁11の肉厚寸法T1を外周壁12の肉厚寸法よりも小さくすることで、ハウジングH全体としての機械的強度を確保しつつ、幅寸法Wを小さくすることができる。
また、接合壁11において、インロー部14、吸入口15及び吐出口16を設ける構成とすることにより、ポンプ装置Mを適用対象物の接合面に接合するだけで、吸入口15と作動油の流出口3を連通させかつ吐出口16と作動油の流入口4を連通させることができる。したがって、別の領域に吸入口又は吐出口が配置される構成に比べて、装着作業を簡素化できる。
【0056】
上記実施形態においては、回転軸30を軸受孔17,23により直接支持する構成を示したが、これに限定されるものではなく、必要に応じて、軸受(内輪、転動体、外輪を含むもの)を介して回転軸30を支持する構成を採用してもよく、又、円筒状のブッシュを介して回転軸30を支持する構成を採用してもよい。
また、必要に応じて、作動油の漏れを確実に防止するべく、環状のシール部材を、軸受に隣接して配置する構成を採用してもよい。
【0057】
上記実施形態においては、ハウジングカバーをハウジングボディに嵌合する嵌合凸部と嵌合凹部として、円盤状をなす嵌合凸部22及び収容室13を画定する内縁部の一部(円弧面13a)を示したが、これに限定されるものではなく、収容室よりも径方向外側の領域において、ハウジングカバーに嵌合凸部としての円環状凸部を設け、ハウジングボディに嵌合凹部としての円環状溝部を設けて、円環状凸部を円環状溝部に嵌合させる構成を採用してもよい。
【0058】
上記実施形態においては、ハウジングカバー20をハウジングボディ10に締結するネジbを採用した構成を示したが、これに限定されるものではなく、嵌合凸部22と嵌合凹部(収容室13を画定する内縁部の一部としての円弧面13aの内縁部)との嵌め合いを圧入嵌合として抜け落ちを確実に防止できれば、ネジbを廃止してもよい。
【0059】
上記実施形態においては、ポンプ作用を及ぼすロータユニットとして、トロコイド歯形をなすインナーロータ40及びアウターロータ50を含むロータユニットRuを示したが、これに限定されるものではない。
例えば、インボリュート歯形のインナーロータ及びアウターロータ、あるいはその他の歯形をなすインナーロータ及びアウターロータ等を備えたロータユニットを採用してもよい。また、流体にポンプ作用を及ぼすロータユニットであれば、ベーン式のロータ、その他の容積型ロータを含むロータユニットを採用してもよい。
【0060】
上記実施形態においては、ロータユニットRuを構成するインナーロータ40及びアウターロータ50がトロコイド式の4葉5節からなる構成を示したが、これに限定されるものではなく、その他の個数からなる構成を採用してもよい。
【0061】
上記実施形態においては、本発明に係るポンプ装置Mを適用する適用対象物として、自動車等に搭載される内燃エンジンのシリンダブロックCBを示したが、これに限定されるものではなく、トランスミッション、その他の潤滑機器に適用してもよく、又、作動油以外の流体を用いる流体機器に適用してもよい。
【0062】
以上述べたように、本発明のポンプ装置は、機械的強度を確保しつつ、薄型化、小型化を達成することができるため、配置スペースに制約のある自動車又は二輪車の内燃エンジン等の適用対象物に対して適用することができるのは勿論のこと、その他の潤滑機器に適用することもでき、さらには、作動油以外の流体を取り扱う流体機器においても有用である。
【符号の説明】
【0063】
CB シリンダブロック(適用対象物)
1 接合面
2 嵌合凹部
3 流出口
4 流入口
5 ネジ穴
B ボルト
6 歯車(被動回転体)
M ポンプ装置
S 軸線
b ネジ
H ハウジング
10 ハウジングボディ(ハウジング)
11 接合壁
12 外周壁
13 収容室
13a 円弧面(収容室を画定する内縁部の一部、嵌合凹部)
14 インロー部
15 吸入口
16 吐出口
17 軸受孔(第1軸受孔)
18 挿通孔
19 ネジ穴
20 ハウジングカバー(ハウジング)
21 結合壁
22 嵌合凸部
23 軸受孔(第2軸受孔)
24 環状凸部
25 挿通孔
26 円孔
30 回転軸
31 一端側領域
32 他端側領域
Ru ロータユニット
40 インナーロータ
50 アウターロータ
T1 接合壁の肉厚寸法
T2 外周壁の肉厚寸法(他の領域の肉厚寸法)
T3 挿通孔の周辺領域の肉厚寸法
T4 ハウジングカバーの肉厚寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9