(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162697
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20221018BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20221018BHJP
B41J 29/13 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J29/00 T
B41J29/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067644
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高岸 毎明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 学
(72)【発明者】
【氏名】前田 彬
(72)【発明者】
【氏名】山口 翔貴
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056FA05
2C056KD10
2C061AP01
2C061AQ05
2C061BB17
2C061BB28
2C061CD01
2C061CD26
2C061CQ04
2C061CQ23
(57)【要約】
【課題】
簡単な構成で静電気を除去できるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
インクジェット記録装置は、印字を行う印字ヘッドと、前記印字ヘッドにインクを供給する本体と、前記印字ヘッドおよび前記本体を制御する制御部と、前記制御部に情報を入力するための入力操作部とを有する。入力操作部としてタッチパネルを使用し、このタッチパネルは導電性の材料を用いている。これにより、ユーザーの静電気が導電性のタッチパネル106に放電することにより発火のリスクを低減することができる。また、本体の扉を開閉する開閉具にも導電性の材料を使用する。そのため、ユーザーが、本体の開閉具を操作した場合に、ユーザーの静電気による火花放電を防止することができ、ユーザーが内部の循環部にアクセスした場合に発火のリスクを解消することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字を行う印字ヘッドと、前記印字ヘッドにインクを供給する本体と、前記印字ヘッドおよび前記本体を制御する制御部と、前記制御部に情報を入力するための入力操作部とを有するインクジェット記録装置であって、
前記入力操作部に導電性の材料を使用したインクジェット記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたインクジェット記録装置において、前記入力操作部としてタッチパネルを使用し、前記タッチパネルに導電性の材料を使用したことを特徴としたインクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項1に記載されたインクジェット記録装置において、前記入力操作部としてキーボードを使用し、前記キーボードの材料に導電性の材料を使用したことを特徴としたインクジェット記録装置。
【請求項4】
印字を行う印字ヘッドと、前記印字ヘッドにインクを供給する本体と、前記印字ヘッドおよび前記本体を制御する制御部と、前記制御部に情報を入力するためのタッチパネルとを有するインクジェット記録装置であって、
前記タッチパネルの上面に導電性パネルシートを配備したインクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項4に記載されたインクジェット記録装置において、
前記本体の扉の開閉を行うための開閉具に導電性の材料を使用したこと、あるいは前記開閉具に導電性シートを貼り付けたことを特徴としたインクジェット記録装置。
【請求項6】
印字を行う印字ヘッドと、前記印字ヘッドにインクを供給する本体と、前記印字ヘッドおよび前記本体を制御する制御部を有するインクジェット記録装置であって、
前記本体の扉を開閉するための開閉具に導電性の樹脂を使用したこと、あるいは前記開閉具に導電性シートを貼り付けたことを特徴としたインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用のインクジェット記録装置は、生産ライン上を移動する製品等(被印字物)に印字を行う用途などに広く採用されている。このような用途に用いられるインクジェット記録装置は、印字用のインクを収容するインク容器およびインク容器内のインクを圧送するポンプ、溶剤をインク容器に供給する溶剤容器および溶剤供給用のポンプなどを備えた本体と、本体から供給されたインクにより製品等の被印字物に印字を行う印字ヘッドと、本体および印字ヘッドを制御する制御部とを備えている。インクジェット記録装置は、インクや溶剤を使用するために、静電気の放電によりインクジェット記録装置が発火するリスクがある。そのため、インクジェット記録装置においても、適切な静電気除去(防止)対策が必要である。
【0003】
ところで、インクジェット記録装置の技術ではないが、特開2020-083377号公報(特許文献1)には、サービスステーションの給油管理システムにおいて、静電気除去装置を設けた設備が開示されている。この特許文献1に開示された技術は、給油機と、静電気除去装置を監視可能なカメラと、給油機による給油の許可と不許可とを制御する制御部とを備えている。そして、制御部は、カメラで取得した画像に基づき、静電気を除去したと判定した後に、給油機による給油を許可するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェット記録装置は、インクや溶剤を使用する装置であり、そのインクや溶剤は、本体内に格納されており、ユーザーによって本体の扉を開き、インクや溶剤の点検、補充あるいは交換が行われる。その際、ユーザーはインクや溶剤の蒸気が存在する箇所にアクセスすることになるため、帯電したユーザーが作業時に放電してしまい、発火して燃焼してしまうリスクがある。
【0006】
特許文献1の技術をインクジェット記録装置に採用すれば、静電気が除去されてからユーザーの作業を許可するため、上記した課題を解決可能である。しかし、カメラ、および給油の許可と不許可とを制御する制御部を設ける必要があり、コスト的に有用な解決方法とは言えない。
【0007】
そこで、本発明は、簡単な構成で静電気を除去できるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明は、その一例を挙げると、印字を行う印字ヘッドと、前記印字ヘッドにインクを供給する本体と、前記印字ヘッドおよび前記本体を制御する制御部と、前記制御部に情報を入力するための入力操作部とを有するインクジェット記録装置であって、前記入力操作部に導電性の材料を使用したインクジェット記録装置である。
【0009】
また、本発明の他の一例を挙げると、印字を行う印字ヘッドと、前記印字ヘッドにインクを供給する本体と、前記印字ヘッドおよび前記本体を制御する制御部と、前記制御部に情報を入力するためのタッチパネルとを有するインクジェット記録装置であって、前記タッチパネルの上面に導電性パネルシートを配備したインクジェット記録装置である。
【0010】
また、本発明のさらに他の一例を挙げると、印字を行う印字ヘッドと、前記印字ヘッドにインクを供給する本体と、前記印字ヘッドおよび前記本体を制御する制御部を有するインクジェット記録装置であって、前記本体の扉を開閉するための開閉具に導電性の樹脂を使用したこと、あるいは前記開閉具に導電性シートを貼り付けたことを特徴としたインクジェット記録装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡単な構成で静電気による発火のリスクを解消することができるインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施例を、図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。また、以下の各図において、同一機器には同一番号(符号)を付し、基本的にはすでに説明した機器の説明を省略する。
【0014】
<実施例1>
本発明の実施例1におけるインクジェット記録装置について説明する。
図1は、本発明の実施例1を示す図である。
【0015】
図1において、インクジェット記録装置100は、印字を行う印字ヘッド20と、印字ヘッド20にインクを供給する本体10と、印字ヘッドおよび本体を制御する制御部15と、制御部15に情報を与えるための入力操作部とを有する。なお、この実施例における入力操作部としては、タッチパネル106を用いている。入力操作部には、キーボード等、他の機器を使用することができる。
【0016】
本体10は、インクを収容するインク容器、インク容器に収容されたインクをノズルに供給するためのポンプおよび配管、印字ヘッド20で使用されなかったインクを回収するポンプおよび配管等、並びに溶剤容器、溶剤をインク容器に供給するポンプおよび配管等からなる循環部30を内蔵している。
【0017】
本体10(循環部30)と印字ヘッド20との間は、ケーブル25で接続されている。ケーブル25内には、循環部30からインクを供給する為の配管および不使用インクを回収するための配管、印字ヘッド20を制御するための電線などを配置している。
【0018】
印字ヘッド20は、インクを粒子化して噴出するノズル、ノズルから噴出した粒子状のインクを印字する文字に対応して帯電する帯電電極、帯電された粒子状のインクを帯電量に応じて偏向する偏向電極、および帯電されなかった不使用インクを捕捉するガター等で構成される。
【0019】
制御部15は、一般的なコンピュータを使用して実現することができ、本体10の上部に設置されている。また、本体10の上部には、タッチパネル106の内側に表示装置(図示せず)が配置されている。制御部15は、この表示装置に、稼働状態の表示や、ユーザーの操作ガイダンスなどを表示する。また、制御部15は、タッチパネル106を介して入力されるユーザーからの指示情報を受取り、その指示情報に基づいて、本体10内の循環部30および印字ヘッド20を制御する。
【0020】
この実施例1においては、タッチパネル106の材料として導電性の材料を使用する。これにより、ユーザーが、タッチパネル106を操作するためにタッチパネル106にタッチすると、静電気が放電し消失するので火花の発生を防止することができる。つまり、ユーザーの静電気が導電性のタッチパネル106に放電することにより発火のリスクを低減することができる。なお、このタッチパネル106を導電性材料とする代わりに、タッチパネルの上面に導電性シートを配備すること(張り付ける、あるいは載置するなど)でも良い。
【0021】
また、本体10は、全面または側面に扉を有しており、扉を開閉するための開閉具40(つまみ、ドアノブ、ハンドルなど)を備えている。この例では、開閉具40として、つまみを使用している。この開閉具40(つまみ)を操作し扉を開くことにより、ユーザーは本体10内部の循環部30にアクセスすることができる。ユーザーは、循環部30にアクセスし、インクや溶剤が不足していればそれらを補充したり、あるいは交換することができる。この実施例では、本体10循環部30を開けるための開閉具40に、導電性の樹脂を使用する。これにより、ユーザーが帯電していたとしても、扉を開けるためにユーザーが開閉具40にタッチしたとき、タッチと同時に静電気が除去されるので、その後、ユーザーが循環部30の操作(インクや溶剤の交換や補充など)を行ったとしても静電気の放電による発火のリスクを解消することができる。なお、開閉具に同電精材料を使用することに代えて、開閉具に導電性シートを貼り付けることでも良い。
【0022】
<実施例2>
次に、本発明の実施例2について
図2を用いて説明する。
図2は、本発明の実施例2を示す図である。なお、
図2において、
図1に示す実施例1と同じ機器には同じ符号を付しており、既に説明した機器についての重複した説明は基本的に省略する。
図2では、本体10の図示は省略しているが、制御部15は本体の上部に配設しており、循環部30は本体10の下部に配置している。制御部15は、通常のコンピュータを用いた例を示している。
【0023】
図2において、101はインクジェット記録装置全体を制御するMPU(マイクロプロセッシングユニット)である。MPU101は、データ信号・アドレス信号・およびコントロール信号を、バスライン120を介して制御部15を構成する各機器(102~105、107~111)と送受信される。
【0024】
103は、MPU101が動作するのに必要なプログラム及びデータを予め記憶しておくROM(リードオンリーメモリー)である。102は、MPU101がROM103に記憶されたプログラム実行中に必要となるデータを一時的に記憶する書き換え可能なRAM(ランダムアクセスメモリー)である。104は、印字する内容等を表示する表示装置である。105は、パネルインターフェースである。106は、印字する文字情報を表示装置104のガイド表示に従って入力するタッチパネルである。121は、タッチパネル106の上面に貼り付けられた導電性パネルシートである。これにより、ユーザーがこの導電性パネルシート121にタッチしたと同時にユーザーが保有している静電気が導電性パネルシート121に放電されるために、静電気による発火のリスクがなくなる。
【0025】
107は、被印字物検出回路、108はインクジェット記録装置の印字動作を制御する印字制御回路である。109は、インク粒子に帯電させるビデオデータを記憶しておくビデオRAMである。110は、ビデオデータを帯電信号にする文字信号発生回路である。111は洗浄機能制御回路であり、洗浄機112を制御して印字ヘッド20を洗浄する。
【0026】
印字ヘッド20は、インクを噴出するノズル133と、ノズル133より噴出したインクが粒子になりそのインク粒子に電荷を加える帯電電極134と、帯電されたインクを偏向する偏向電極135と、印字に使用しないインク(不使用インク)を捕捉するガター136とを備えている。
【0027】
循環部30は、インクを収容するインク容器131と、インク容器131内のインクを印字ヘッド20のノズル133に供給するためのポンプ132(供給用ポンプ)と、供給のための配管を含む。また、循環部30は、ガター136が補足したインクを、インク容器131に回収するためのポンプ137(回収用ポンプ)および回収のための配管を含む。なお、このほかに、循環部30は、溶剤を収納する溶剤容器と、溶剤をインク容器131に供給するポンプや配管があるが、ここでは図示省略している。
【0028】
113は被印字物を検出するセンサー、114は被印字物を搬送するコンベア、115は印字の対象となる被印字物である。
【0029】
次に、印字動作について説明する。まず、ユーザーは、タッチパネル106を操作し、パネルインターフェース105を介して、印字する内容等を表示装置104の表示に従って情報(運転制御指令)を入力する。この入力操作により、MPU101はROM103に記憶されているプログラムにより、インク粒子へ帯電させるビデオデータを印字情報に応じて作成し、バスライン120を介してビデオRAM109へ格納する。
【0030】
被印字物センサー113が被印字物115を検知すると、被印字物検知回路107を通じて、MPU101へ印字開始の指令が届く。MPU101は、ビデオRAM109に記憶しているビデオデータを、バスライン120を介して文字信号発生回路110へ送る。文字信号発生回路110は送られてきたビデオデータを帯電信号に変更し、帯電電極134の耐電電圧を制御する。
【0031】
印字制御回路108は、バスライン120を介してこの帯電信号を帯電電極134へ送出するタイミングをコントロールする。ノズル133より噴出されたインクは帯電電極134内で粒子化し、印字に使用される粒子は帯電され、偏向電極135内を飛行通過することにより偏向され、被印字物115へとインク粒子が飛行し、インク付着により印字が行われる。
【0032】
被印字物115への印字作業が完了したとき、インクジェット記録装置を停止する前に、印字ヘッド20の内部を洗浄するための、洗浄機能制御回路111と洗浄機112を使用して、印字ヘッド20の内部を洗浄する。洗浄機能の動作は、ユーザーが、表示装置104の表示に従ってタッチパネル106を操作し、パネルインターフェース105を介してMPU101に洗浄手順を指示する。これにより、MPU101は、ROM103に記憶されているプログラムにより、洗浄機能制御回路111から洗浄機112に信号が送られ、印字ヘッド20の内部を洗浄機112によって洗浄する。その際、洗浄機112内や洗浄機112周辺の雰囲気は、溶剤蒸気の濃度が上がり、ユーザーが帯電していた場合、放電し発火するリスクがある。
【0033】
この実施例では、ユーザーがタッチパネルを操作し、パネルインターフェース105を介して、表示装置104に従って、タッチパネル106に洗浄機能を動作させるための手順を入力する際、インクジェット記録装置のタッチパネルパネル106の上面に導電性パネルシート121を配備して(貼り付けて)いる。そのため、ユーザーによる静電気を除去しつつ、パネル106に洗浄機能を動作させるための入力が可能となる。洗浄機能動作中や、洗浄機能が終了し、ユーザーがアクセスするときには、放電することはなく、発火のリスクは解消されている。
【符号の説明】
【0034】
10…本体、15…制御部、20…印字ヘッド、25…ケーブル、30…循環部、40…開閉具、100…インクジェット記録装置、101…MPU、102…RAM、103…ROM、104…表示装置、105…パネルインターフェース、106…タッチパネル、107…被印字物検知回路、108…印字制御回路、109…ビデオRAM、110…文字信号発生回路、111…洗浄機能制御回路、112…洗浄機、113…被印字物センサー、114…コンベアライン、115…被印字物、120…バスライン、121…導電性パネルシート、131…インク容器、132…ポンプ、133…ノズル、134…帯電電極、135…偏向電極、136…ガター、137…ポンプ