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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162708
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】不活化方法および精算システム
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20221018BHJP
   G07G 1/00 20060101ALI20221018BHJP
   A47F 9/04 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
A61L2/10
G07G1/00 301Z
G07G1/00 331Z
A47F9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067671
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】大橋 広行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信二
(72)【発明者】
【氏名】大和田 樹志
(72)【発明者】
【氏名】阿部 亮二
【テーマコード(参考)】
3E142
4C058
【Fターム(参考)】
3E142AA01
3E142AA02
3E142AA03
3E142BA18
3E142BA20
3E142EA30
4C058AA23
4C058BB06
4C058CC05
4C058DD01
4C058DD07
4C058EE26
4C058KK02
4C058KK22
4C058KK28
4C058KK32
(57)【要約】
【課題】チェックアウト処理が行われるチェックアウト領域においてチェックアウト処理に関する物品を適切に除染し、当該物品を介して有害な微生物やウイルスが人に感染することを抑制する。
【解決手段】不活化方法は、チェックアウトカウンタにおけるチェッカーによる物品のチェックアウト処理が行われるチェックアウト領域に移送された前記チェックアウト処理に関する物品を検知する検知ステップと、検知ステップにおいて物品が検知された場合に、微生物および/またはウイルスを不活化する波長の紫外線として190nm~240nmの波長範囲にある紫外線を放射する紫外線光源を制御して、チェックアウト領域に前記紫外線を照射する照射ステップと、紫外線が照射された後の物品を前記チェックアウト領域から移送する搬出ステップと、を含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が存在する空間内において紫外線を放射して、当該空間内に存在する微生物および/またはウイルスを不活化する不活化方法であって、
チェックアウトカウンタにおけるチェッカーによる物品のチェックアウト処理が行われるチェックアウト領域に移送された、前記チェックアウト処理に関する物品を検知する検知ステップと、
前記検知ステップにおいて前記物品が検知された場合に、前記微生物および/またはウイルスを不活化する波長の紫外線として190nm~240nmの波長範囲にある紫外線を放射する紫外線光源を制御して、前記チェックアウト領域に前記紫外線を照射する照射ステップと、
前記紫外線が照射された後の前記物品を前記チェックアウト領域から移送する搬出ステップと、を含むことを特徴とする不活化方法。
【請求項2】
前記照射ステップでは、前記チェックアウト領域に複数方向から前記紫外線を照射することを特徴とする請求項1に記載の不活化方法。
【請求項3】
前記検知ステップでは、前記チェックアウト領域に含まれる領域であって、前記チェックアウト処理中の前記物品が載置される前記チェックアウトカウンタ上の処理領域に物品が載置されたことを検知し、
前記照射ステップでは、前記検知ステップで前記処理領域に物品が載置されたことを検知したタイミングで、前記処理領域に対して前記紫外線を照射することを特徴とする請求項1に記載の不活化方法。
【請求項4】
前記検知ステップでは、前記チェックアウト領域に含まれる領域であって、前記チェックアウト処理を待つ前記物品が載置される前記チェックアウトカウンタ上の待機領域に物品が載置されたことを検知し、
前記照射ステップでは、前記検知ステップで前記待機領域に物品が載置されたことを検知したタイミングで、前記待機領域に対して前記紫外線を照射することを特徴とする請求項1に記載の不活化方法。
【請求項5】
前記物品は、購入商品であり、
前記チェックアウト処理は、前記購入商品の精算処理であることを特徴とする請求項1に記載の不活化方法。
【請求項6】
前記検知ステップでは、前記チェックアウト領域に含まれる領域であって、前記購入商品に付与された商品情報を読み取る読み取り機における前記商品情報の読取領域に物品が存在することを検知し、
前記照射ステップでは、前記検知ステップで前記読取領域に物品が存在することを検知したタイミングで、前記読取領域に対して前記紫外線を照射することを特徴とする請求項5に記載の不活化方法。
【請求項7】
前記検知ステップでは、前記チェックアウト領域に含まれる領域であって、前記購入商品の代金を支払う支払領域に物品が存在することを検知し、
前記照射ステップでは、前記検知ステップで前記支払領域に物品が存在することを検知したタイミングで、前記支払領域に対して前記紫外線を照射することを特徴とする請求項5に記載の不活化方法。
【請求項8】
前記照射ステップでは、前記検知ステップで前記物品が非検知となったことを契機に、前記紫外線の照射を停止することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の不活化方法。
【請求項9】
前記チェッカーへの前記紫外線の照射量を計測する計測ステップをさらに含み、
前記照射ステップでは、前記チェッカーへの前記紫外線の照射量が許容上限値に到達したタイミングで、前記紫外線の照射を停止することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の不活化方法。
【請求項10】
精算カウンタと、
前記精算カウンタに設置された精算装置と、
微生物および/またはウイルスを不活化する波長の紫外線として190nm~240nmの波長範囲にある紫外線を放射する紫外線光源と、前記紫外線光源による前記光の照射を制御する制御部と、を有する紫外線照射装置と、を備え、
前記紫外線照射装置は、
前記精算カウンタにおけるチェッカーによる購入商品の精算処理が行われる精算領域に移送された前記精算処理に関する物品を検知する検知部をさらに備え、
前記紫外線光源は、前記精算領域に前記紫外線を照射するように構成されており、
前記制御部は、前記検知部により前記物品が検知された場合に、前記紫外線光源を制御して前記精算領域に前記紫外線を照射することで、前記物品に前記紫外線を照射することを特徴とする精算システム。
【請求項11】
前記紫外線光源は、前記精算領域の上方および下方の少なくとも一方から前記紫外線を照射するように構成されていることを特徴とする請求項10に記載の精算システム。
【請求項12】
前記紫外線光源は、前記精算領域に含まれる領域であって、前記精算処理中の前記購入商品が載置される前記精算カウンタ上の処理領域に前記紫外線を照射するように構成され、
前記検知部は、前記精算カウンタ上の前記処理領域に物品が載置されたことを検知し、
前記制御部は、前記検知部により前記処理領域に物品が載置されたことを検知したタイミングで、前記紫外線光源を制御して前記処理領域に対して前記紫外線を照射することを特徴とする請求項10に記載の精算システム。
【請求項13】
前記紫外線光源は、前記精算領域に含まれる領域であって、前記精算処理を待つ前記購入商品が載置される前記精算カウンタ上の待機領域に前記紫外線を照射するように構成され、
前記検知部は、前記精算カウンタ上の前記待機領域に物品が載置されたことを検知し、
前記制御部は、前記検知部により前記待機領域に物品が載置されたことを検知したタイミングで、前記紫外線光源を制御して前記待機領域に対して前記紫外線を照射することを特徴とする請求項10に記載の精算システム。
【請求項14】
前記紫外線光源は、前記購入商品に付与された商品情報を読み取る読み取り機に設けられ、
前記検知部は、前記精算領域に含まれる領域であって、前記読み取り機における前記商品情報の読取領域に物品が存在することを検知し、
前記制御部は、前記検知部により前記読取領域に物品が存在することを検知したタイミングで、前記紫外線光源を制御して前記読取領域に前記紫外線を照射することを特徴とする請求項10に記載の精算システム。
【請求項15】
前記紫外線光源は、前記精算領域に含まれる領域であって、前記購入商品の代金を支払う支払領域に前記紫外線を照射するように構成され、
前記検知部は、前記支払領域に物品が存在することを検知し、
前記制御部は、前記検知部により前記支払領域に物品が存在することを検知したタイミングで、前記紫外線光源を制御して前記支払領域に前記紫外線を照射することを特徴とする請求項10に記載の精算システム。
【請求項16】
前記精算カウンタは、商品購入者と、当該商品購入者とは異なる前記精算処理を行う精算担当者との間に設けられた、前記購入商品の代金支払用の開口を有する透明な素材からなる衝立を有し、
前記紫外線光源は、前記開口に設けられ、
前記検知部は、前記開口により形成される前記支払領域に物品が存在することを検知することを特徴とする請求項15に記載の精算システム。
【請求項17】
前記制御部は、前記検知部により前記物品が非検知となったことを契機に、前記紫外線光源を制御して、前記紫外線の照射を停止することを特徴とする請求項10から16のいずれか1項に記載の精算システム。
【請求項18】
前記紫外線照射装置は、前記チェッカーへの前記紫外線の照射量を計測する計測部をさらに備え、
前記制御部は、前記計測部により計測された照射量が許容上限値に到達したタイミングで、前記紫外線光源を制御して、前記紫外線の照射を停止することを特徴とする請求項10から16のいずれか1項に記載の精算システム。
【請求項19】
前記精算カウンタの表面のうち少なくとも前記購入商品が載置される領域の周辺は、前記紫外線を反射する反射面であることを特徴とする請求項10に記載の精算システム。
【請求項20】
前記精算カウンタは、前記精算カウンタの表面における少なくとも前記購入商品が載置される領域に設けられた、前記紫外線を透過する窓部を備え、
前記紫外線光源は、前記精算カウンタの内部であって前記窓部の下方に設けられ、上方に向けて前記紫外線を照射することを特徴とする請求項10に記載の精算システム。
【請求項21】
前記精算カウンタは、前記購入商品を載置して前記チェッカーによる前記精算処理が行われる精算位置まで搬送する商品搬送機構を備え、
前記紫外線光源は、前記商品搬送機構による前記購入商品の搬送経路における前記精算位置よりも前記購入商品の搬送方向上流側の領域に前記紫外線を照射するように構成されていることを特徴とする請求項10に記載の精算システム。
【請求項22】
前記商品搬送機構は、前記購入商品が載置される搬送路として、所定の隙間が形成されたベルトまたは所定の距離で離隔して回転するローラを備え、
前記紫外線光源は、前記搬送路の下方に設けられ、上方に向けて前記紫外線を照射することを特徴とする請求項21に記載の精算システム。
【請求項23】
前記搬送路は、所定の距離で離隔して回転するローラにより構成されており、
前記ローラの表面は前記紫外線を反射する反射面であり、
前記紫外線光源は、表面が前記反射面である前記ローラに前記紫外線が照射されるように構成されていることを特徴とする請求項21に記載の精算システム。
【請求項24】
前記精算カウンタは、前記搬送経路における前記精算位置よりも前記購入商品の搬送方向上流側に、前記商品搬送機構により搬送される前記購入商品が通過可能な出入口を有する商品通過部を備え、
前記紫外線光源は、前記商品通過部の内部に設けられていることを特徴とする請求項21に記載の精算システム。
【請求項25】
前記商品通過部の内面の少なくとも一部は、前記紫外線を反射する反射面であることを特徴とする請求項24に記載の精算システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害な微生物やウイルスを不活化する不活化方法および精算システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療施設、学校、役所、劇場、ホテル、飲食店等、頻繁に人が集まったり人が出入りしたりする施設は、バクテリアやカビ等の微生物が繁殖しやすく、またウイルスが蔓延しやすい環境にある。
例えば、有害で感染性の高い微生物やウイルスは、当該ウイルス等に感染した人が施設内の所定の空間を出入りすることにより、当該空間における床や壁等の表面上で増殖したり、当該空間内を浮遊したりする。そのため、その空間に入った次の人にウイルス等が感染し、場合によっては感染症が施設内で蔓延することもある。
【0003】
以上のような状況を改善するために、人(場合によっては動物)が集まったり出入りしたりする施設においては、上記したような有害な微生物(例えば、感染性微生物)を消毒したり、ウイルスを不活化したりする措置が求められる。
床や壁等の上記空間を取り囲む環境表面については、例えば、作業員によってアルコール等の消毒剤を散布する、消毒剤を染み込ませた布等で拭き取る、あるいは殺菌紫外線を照射する等の除染作業が行われる。また、空間内を浮遊する微生物やウイルス等については、例えば、紫外線照射による殺菌・不活化が行われる。
特許文献1には、密閉室を除染する除染装置として、使用者がいないときに除染対象空間に紫外線(UVC光)を照射し、当該空間を殺菌する装置が開示されている。
【0004】
また、食品や飲料等においては、衛生面等の観点から紫外線による殺菌処理が行われることがある。
特許文献2には、搬送コンベア上に積載された鶏卵に対して、搬送コンベアが稼働しているときに波長254nmの紫外線を照射する紫外線殺菌装置が開示されている。
特許文献3には、搬送コンベヤによって搬送されるペットボトル等の容器の下面から紫外線を照射して、当該容器の表面を殺菌する殺菌装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2017-528258号公報
【特許文献2】特開2007-110978号公報
【特許文献3】特開2002-80017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
人体に有害な微生物やウイルスは、当該ウイルス等に感染した人が接触または接近した物品の表面に付着しうる。
例えば、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、百貨店等に陳列されている商品は、不特定多数の客が手に取る機会が多い。すなわち、上記商品は、感染者を介して上記の有害な微生物やウイルスが付着している可能性が高く、商品を購入して持ち帰った客に当該商品を介して有害な微生物やウイルスの2次感染が発生してしまうおそれがある。また、レジカウンタ等における商品の精算時に、当該商品に接触した精算担当者(レジ係)に上記の有害な微生物やウイルスの2次感染が発生してしまうおそれもある。
【0007】
上記特許文献1~3に記載の技術では、殺菌紫外線として波長254nm付近の紫外線を利用しているが、波長254nm付近の紫外線は、人体に対して悪影響を及ぼす光である。そのため、上記特許文献1~3に記載の技術では、人が退出した後の空間や、人が立ち入らない空間において紫外線を照射し、除染作業を行う必要がある。つまり、上記技術は、人が存在する空間では使用することができない。
そのため、上記のような不特定多数の人と接触して有害な微生物やウイルスが付着している可能性のある商品を除染しようとしても、傍に人が居る環境では除染作業を行うことができない。
【0008】
そこで、本発明は、チェックアウト処理が行われるチェックアウト領域においてチェックアウト処理に関する物品を適切に除染し、当該物品を介して有害な微生物やウイルスが人に感染することを抑制することができる不活化方法および精算システムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る不活化方法の一態様は、人が存在する空間内において紫外線を放射して、当該空間内に存在する微生物および/またはウイルスを不活化する不活化方法であって、チェックアウトカウンタにおけるチェッカーによる物品のチェックアウト処理が行われるチェックアウト領域に移送された、前記チェックアウト処理に関する物品を検知する検知ステップと、前記検知ステップにおいて前記物品が検知された場合に、前記微生物および/またはウイルスを不活化する波長の紫外線として190nm~240nmの波長範囲にある紫外線を放射する紫外線光源を制御して、前記チェックアウト領域に前記紫外線を照射する照射ステップと、前記紫外線が照射された後の前記物品を前記チェックアウト領域から移送する搬出ステップと、を含む。
【0010】
これにより、チェッカーによる物品のチェックアウト処理中に、チェックアウト領域に微生物および/またはウイルスを不活化する波長の紫外線を照射することができ、チェックアウト処理に関する物品(例えばチェックアウト処理対象の物品など)の表面に付着した有害な微生物やウイルスを不活化することができる。そのため、当該物品を介して微生物やウイルスが人に感染することを抑制することができる。また、人や動物の細胞に悪影響の少ない190nm~240nmの波長範囲にある紫外線を照射するので、人が存在する空間においても紫外線照射による不活化処理を行うことができる。
【0011】
また、上記の不活化方法において、前記照射ステップでは、前記チェックアウト領域に複数方向から前記紫外線を照射してもよい。
この場合、物品に対して多面的に紫外線を照射することができ、適切に不活化処理を行うことができる。
【0012】
さらに、上記の不活化方法において、前記検知ステップでは、前記チェックアウト領域に含まれる領域であって、前記チェックアウト処理中の前記物品が載置される前記チェックアウトカウンタ上の処理領域に物品が載置されたことを検知し、前記照射ステップでは、前記検知ステップで前記処理領域に物品が載置されたことを検知したタイミングで、前記処理領域に対して前記紫外線を照射してもよい。
この場合、チェックアウト処理中の物品に対して紫外線を照射することができる。したがって、除染された状態の物品をチェックアウト領域から搬出することができる。
【0013】
また、上記の不活化方法において、前記検知ステップでは、前記チェックアウト領域に含まれる領域であって、前記チェックアウト処理を待つ前記物品が載置される前記チェックアウトカウンタ上の待機領域に物品が載置されたことを検知し、前記照射ステップでは、前記検知ステップで前記待機領域に物品が載置されたことを検知したタイミングで、前記待機領域に対して前記紫外線を照射してもよい。
この場合、チェックアウト処理前の待機中の物品に対して紫外線を照射することができる。したがって、チェッカーがチェックアウト処理のために物品に接触する前に当該物品を除染することができる。
【0014】
また、上記の不活化方法において、前記物品は、購入商品であり、前記チェックアウト処理は、前記購入商品の精算処理であってもよい。
この場合、購入商品の精算処理中に、当該精算処理が行われる精算領域に微生物および/またはウイルスを不活化する波長の紫外線を照射することができる。したがって、不特定多数の人が接触して有害な微生物やウイルスが付着している可能性がある商品を介して、上記の微生物やウイルスが精算担当者や商品購入者に感染することを抑制することができる。
【0015】
さらに、上記の不活化方法において、前記検知ステップでは、前記チェックアウト領域に含まれる領域であって、前記購入商品に付与された商品情報を読み取る読み取り機における前記商品情報の読取領域に物品が存在することを検知し、前記照射ステップでは、前記検知ステップで前記読取領域に物品が存在することを検知したタイミングで、前記読取領域に対して前記紫外線を照射してもよい。
この場合、個々の商品に対して確実に紫外線を照射することができる。
【0016】
また、上記の不活化方法において、前記検知ステップでは、前記チェックアウト領域に含まれる領域であって、前記購入商品の代金を支払う支払領域に物品が存在することを検知し、前記照射ステップでは、前記検知ステップで前記支払領域に物品が存在することを検知したタイミングで、前記支払領域に対して前記紫外線を照射してもよい。
この場合、精算処理に関する物品である現金やカード等に対して紫外線を照射することができる。したがって、精算担当者(レジ係)と商品購入者(客)との間で受け渡しが行われる物品を介して有害な微生物やウイルスの2次感染が発生してしまうことを抑制することができる。
【0017】
さらにまた、上記の不活化方法において、前記照射ステップでは、前記検知ステップで前記物品が非検知となったことを契機に、前記紫外線の照射を停止してもよい。
この場合、チェックアウト領域に不必要に紫外線を照射することを防止することができる。また、チェックアウト領域に居る人への紫外線照射を抑制することができ、当該人への紫外線照射による悪影響を極力抑制することができる。
【0018】
また、上記の不活化方法において、前記チェッカーへの前記紫外線の照射量を計測する計測ステップをさらに含み、前記照射ステップでは、前記チェッカーへの前記紫外線の照射量が許容上限値に到達したタイミングで、前記紫外線の照射を停止してもよい。
この場合、チェックアウト領域に居る人に対する安全を確保しつつ、適切な不活化処理を行うことができる。
【0019】
また、本発明に係る精算システムの一態様は、精算カウンタと、前記精算カウンタに設置された精算装置と、紫外線照射装置と、を備える。前記紫外線照射装置は、微生物および/またはウイルスを不活化する波長の紫外線として190nm~240nmの波長範囲にある紫外線を放射する紫外線光源と、前記紫外線光源による前記光の照射を制御する制御部と、を備える。前記紫外線照射装置は、前記精算カウンタにおけるチェッカーによる購入商品の精算処理が行われる精算領域に移送された前記精算処理に関する物品を検知する検知部をさらに備え、前記紫外線光源は、前記精算領域に前記紫外線を照射するように構成されており、前記制御部は、前記検知部により前記物品が検知された場合に、前記紫外線光源を制御して前記精算領域に前記紫外線を照射することで、前記物品に前記紫外線を照射する。
【0020】
これにより、チェッカーによる購入商品の精算処理中に、精算領域に微生物および/またはウイルスを不活化する波長の紫外線を照射することができ、精算処理に関する物品(例えば購入商品など)の表面に付着した有害な微生物やウイルスを不活化することができる。そのため、当該購入商品を介して微生物やウイルスが人に感染することを抑制することができる。また、人や動物の細胞に悪影響の少ない190nm~240nmの波長範囲にある紫外線を照射するので、人が存在する空間においても紫外線照射による不活化処理を行うことができる。
【0021】
また、上記の精算システムにおいて、前記紫外線光源は、前記精算領域の上方および下方の少なくとも一方から前記紫外線を照射してもよい。
この場合、購入商品に対して多面的に紫外線を照射することができ、適切に不活化処理を行うことができる。
【0022】
さらに、上記の精算システムにおいて、前記紫外線光源は、前記精算領域に含まれる領域であって、前記精算処理中の前記購入商品が載置される前記精算カウンタ上の処理領域に前記紫外線を照射するように構成され、前記検知部は、前記精算カウンタ上の前記処理領域に物品が載置されたことを検知し、前記制御部は、前記検知部により前記処理領域に物品が載置されたことを検知したタイミングで、前記紫外線光源を制御して前記処理領域に対して前記紫外線を照射してもよい。
この場合、精算処理中の購入商品に対して紫外線を照射することができる。したがって、商品購入者は、除染された状態の購入商品を持ち帰ることができる。
【0023】
また、上記の精算システムにおいて、前記紫外線光源は、前記精算領域に含まれる領域であって、前記精算処理を待つ前記購入商品が載置される前記精算カウンタ上の待機領域に前記紫外線を照射するように構成され、前記検知部は、前記精算カウンタ上の前記待機領域に物品が載置されたことを検知し、前記制御部は、前記検知部により前記待機領域に物品が載置されたことを検知したタイミングで、前記紫外線光源を制御して前記待機領域に対して前記紫外線を照射してもよい。
この場合、精算処理前の待機中の購入商品に対して紫外線を照射することができる。したがって、チェッカーが精算処理のために購入商品に接触する前に当該購入商品を除染することができる。
【0024】
さらに、上記の精算システムにおいて、前記紫外線光源は、前記購入商品に付与された商品情報を読み取る読み取り機に設けられ、前記検知部は、前記精算領域に含まれる領域であって、前記読み取り機における前記商品情報の読取領域に物品が存在することを検知し、前記制御部は、前記検知部により前記読取領域に物品が存在することを検知したタイミングで、前記紫外線光源を制御して前記読取領域に前記紫外線を照射してもよい。
この場合、個々の購入商品に対して確実に紫外線を照射することができる。
【0025】
また、上記の精算システムにおいて、前記紫外線光源は、前記チェックアウト領域に含まれる領域であって、前記購入商品の代金を支払う支払領域に前記紫外線を照射するように構成され、前記検知部は、前記支払領域に物品が存在することを検知し、前記制御部は、前記検知部により前記支払領域に物品が存在することを検知したタイミングで、前記紫外線光源を制御して前記支払領域に前記紫外線を照射してもよい。
この場合、購入商品の支払いを行うための現金やカード等に対して紫外線を照射することができる。したがって、精算担当者(レジ係)と商品購入者(客)との間で受け渡しが行われる上記物品を介して有害な微生物やウイルスの2次感染が発生してしまうことを抑制することができる。
【0026】
さらにまた、上記の精算システムにおいて、前記精算カウンタは、商品購入者と、当該商品購入者とは異なる前記精算処理を行う精算担当者との間に設けられた、前記購入商品の代金支払用の開口を有する透明な素材からなる衝立を有し、前記紫外線光源は、前記開口に設けられ、前記検知部は、前記開口により形成される前記支払領域に物品が存在することを検知してもよい。
この場合、精算担当者(レジ係)と商品購入者(客)との間の飛沫感染を抑制することができるとともに、精算担当者(レジ係)と商品購入者(客)との間で受け渡しが行われる物品を介した有害な微生物やウイルスの2次感染を抑制することができる。
【0027】
また、上記の精算システムにおいて、前記制御部は、前記検知部により前記物品が非検知となったことを契機に、前記紫外線光源を制御して、前記紫外線の照射を停止してもよい。
この場合、精算領域に不必要に紫外線を照射することを防止することができる。また、精算領域に居る人への紫外線照射を抑制することができ、当該人への紫外線照射による悪影響を極力抑制することができる。
【0028】
さらに、上記の精算システムにおいて、前記紫外線照射装置は、前記チェッカーへの前記紫外線の照射量を計測する計測部をさらに備え、前記制御部は、前記計測部により計測された照射量が許容上限値に到達したタイミングで、前記紫外線光源を制御して、前記紫外線の照射を停止してもよい。
この場合、精算領域に居る人に対する安全を確保しつつ、適切な不活化処理を行うことができる。
【0029】
また、上記の精算システムにおいて、前記精算カウンタの表面のうち少なくとも前記購入商品が載置される領域の周辺は、前記紫外線を反射する反射面であってもよい。
この場合、精算カウンタの表面に照射された紫外線を反射(乱反射)させることができ、精算カウンタ上に載置された購入商品に対して多面的に紫外線を照射することができる。
【0030】
また、上記の精算システムにおいて、前記精算カウンタは、前記精算カウンタの表面における少なくとも前記購入商品が載置される領域に設けられた、前記紫外線を透過する窓部を備え、前記紫外線光源は、前記精算カウンタの内部であって前記窓部の下方に設けられ、上方に向けて前記紫外線を照射してもよい。
この場合、精算カウンタ上に載置された購入商品の当該精算カウンタとの接触面に対して、適切に紫外線を照射することができる。
【0031】
さらに、上記の精算システムにおいて、前記精算カウンタは、前記購入商品を載置して前記チェッカーによる前記精算処理が行われる精算位置まで搬送する商品搬送機構を備え、前記紫外線光源は、前記商品搬送機構による前記購入商品の搬送経路における前記精算位置よりも前記購入商品の搬送方向上流側の領域に前記紫外線を照射するように構成されていてもよい。
この場合、精算処理前の購入商品に対して紫外線を照射することができる。したがって、チェッカーが精算処理のために購入商品に接触する前に当該購入商品を除染することができる。
【0032】
また、上記の精算システムにおいて、前記商品搬送機構は、前記購入商品が載置される搬送路として、所定の隙間が形成されたベルトまたは所定の距離で離隔して回転するローラを備え、前記紫外線光源は、前記搬送路の下方に設けられ、上方に向けて前記紫外線を照射してもよい。
この場合、購入商品の下面に対して、適切に紫外線を照射することができる。
【0033】
さらにまた、上記の精算システムにおいて、前記搬送路は、所定の距離で離隔して回転するローラにより構成されており、前記ローラの表面は前記紫外線を反射する反射面であり、前記紫外線光源は、表面が前記反射面である前記ローラに前記紫外線が照射されるように構成されていてもよい。
この場合、ローラの表面に照射された紫外線を反射(乱反射)させることができ、搬送路上に載置された購入商品に対して多面的に紫外線を照射することができる。
【0034】
また、上記の精算システムにおいて、前記精算カウンタは、前記搬送経路における前記精算位置よりも前記購入商品の搬送方向上流側に、前記商品搬送機構により搬送される前記購入商品が通過可能な出入口を有する商品通過部を備え、前記紫外線光源は、前記商品通過部の内部に設けられていてもよい。
この場合、精算処理前の購入商品に対して集中的に紫外線を照射することができる。
【0035】
さらに、上記の精算システムにおいて、前記商品通過部の内面の少なくとも一部は、前記紫外線を反射する反射面であってもよい。
この場合、商品通過部の内面で紫外線を反射(乱反射)させることができ、商品通過部を通過する購入商品に対して多面的に紫外線を照射することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明では、チェックアウト処理が行われるチェックアウト領域においてチェックアウト処理に関する物品を適切に除染し、当該物品を介して有害な微生物やウイルスが人に感染することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本実施形態における精算システムの構成例である。
図2】精算システムの別の構成例である。
図3】精算システムの別の構成例である。
図4】精算システムの別の構成例である。
図5】紫外線照射ユニットの構成例を示す模式図である。
図6】エキシマランプの構成例を示す模式図である。
図7】エキシマランプの別の例を示す模式図である。
図8】エキシマランプの別の例を示す模式図である。
図9】たんぱく質の紫外線吸光スペクトルを示す図である。
図10】紫外線照射ユニットの別の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態では、物品のチェックアウト処理を行うチェックアウトカウンタとして、購入商品の精算処理を行う精算カウンタを備える精算システムについて説明する。ここで、精算カウンタは、例えばコンビニエンスストア、スーパーマーケット、百貨店等に陳列されている商品を精算するレジカウンタである。
【0039】
本実施形態における精算システムは、精算カウンタ(レジカウンタ)におけるチェッカーによる商品の精算処理が行われる精算領域(チェックアウト領域)において紫外線照射を行う紫外線照射装置を備える。つまり、紫外線照射装置は、人が存在する空間内において紫外線照射を行う。この紫外線照射装置は、人や動物の細胞への悪影響が少ない波長190nm~240nmの紫外線を空間内に照射して、当該空間内の物体表面や空間に存在する有害な微生物やウイルスを不活化する。
なお、本実施形態における「不活化」とは、微生物やウイルスを死滅させる(又は感染力や毒性を失わせる)ことを指すものである。
【0040】
図1は、本実施形態における精算システム1000Aの構成例を示す図である。
この精算システム1000Aは、紫外線照射装置を構成する複数の紫外線照射器(UV照射器)100A~100Eと、レジカウンタ(精算カウンタ)200と、レジスター(精算装置)220と、を備える。
レジカウンタ200は、商品400が入れられた買い物かごが載置される載置台である。レジカウンタ200は対面式カウンタであり、レジカウンタ200を挟んで一方の側にはチェッカーである精算担当者(レジ係)301、他方の側には商品購入者(客)302が立つ。
【0041】
なお、レジカウンタ200には、買い物かごに入れられていない商品400そのものが載置される場合もあるが、本実施形態では、客302が買い物かごに商品400を入れてレジカウンタ200上に載置し、レジ係301は、レジカウンタ200上に載置された買い物かごから商品400を取り出して精算処理を行う場合について説明する。
【0042】
具体的には、客302は、陳列棚などから購入する商品400を選んで買い物かごに入れ、レジカウンタ200が設けられた精算領域まで移送して、当該買い物かごをレジカウンタ200上に載置する。レジカウンタ200上には、レジ係301による精算処理中の商品400が入れられた買い物かご(処理中かご)401が載置される処理領域211が予め定められており、客302によりレジカウンタ200上に載置された買い物かごは、レジ係301もしくは客302自身により処理領域211に移送される。そして、レジ係301は、処理領域211に載置された処理中かご401の商品400に対して精算処理を行う。
また、レジカウンタ200上における処理領域211の上流側(図1の左側)には、精算処理を待つ商品400が入れられた買い物かご(精算待ちかご)402が載置される待機領域212が予め定められている。レジ係301による処理中かご401に対する精算処理が行われている間、次の客302は、待機領域212に買い物かごを載置する。
【0043】
レジ係301は、処理中かご401から未精算の商品400を1品ずつ手に取り、レジスター220と無線または有線で接続された読み取り機221によって商品400に付与された商品情報(バーコード、QRコード(登録商標)等)を読み取り、精算済かご403に商品400を入れていく。ここで、精算済かご403は、レジカウンタ200上の例えば処理領域211の下流側(図1の右側)に載置される。
レジスター220は、読み取り機221による読み取り情報に基づき、購入額の合計を計算し、計算した金額を客302に提示する。客302は、提示された金額に基づき、代金をレジ係301に支払い、精算が終了する。精算終了後、精算済かご403は客302に渡され、客302が商品400を精算領域から搬出し、持ち帰る。
【0044】
読み取り機221は、例えばハンドヘルド式のバーコードリーダーである。読み取り機221は、商品情報を光学的に読み取る読取部(不図示)を有し、読取部近傍の読取領域213内に存在する商品400の商品情報を読み取り、読み取った情報をレジスター220に送信する。
なお、図1では、読み取り機221がハンドヘルド式のバーコードリーダーである場合を示しているが、読み取り機221は、例えば固定式のバーコードリーダーであってもよい。
【0045】
また、レジカウンタ200は、当該レジカウンタ200を挟んで対面するレジ係301と客302との間に配置される透明な衝立201を備えていてもよい。衝立201は、対面するレジ係301と客302とのうち、一方から飛散するウイルス等が含有している可能性がある飛沫が、他方に到達しないようにするためのものである。
衝立201の下部には、開口202を設けることができる。この開口202は、代金支払用の開口とすることができる。この場合、開口202により形成される領域は支払領域214となり、客302は、この支払領域214において商品代金の支払いを行う。
なお、衝立201に替えて、透明な暖簾を設置することもできる。
【0046】
UV照射器100A~100Eは、190nm~240nmの波長範囲にある紫外線を放射する紫外線光源を備え、精算領域に含まれる所定の領域に上記紫外線を放射して、照射領域内に存在する物品の表面に付着した微生物および/またはウイルスや、照射領域内の空間に浮遊する微生物および/またはウイルスを不活化する。
UV照射器100A~100Eが備える紫外線光源による紫外線の照射は制御部により制御される。ここで、上記制御部は、各UV照射器100A~100Eがそれぞれ備えていてもよいし、UV照射器100A~100Eとは別に設けられた共通の制御装置であってもよい。
【0047】
UV照射器100Aは、処理領域211の上方(例えば天井)に配置され、下方に紫外線を放射する。UV照射器100Aから放射された紫外線は、レジカウンタ200上の処理領域211に載置された処理中かご401や処理中かご401に入れられた商品400、処理領域211内に存在するその他の商品400(例えば、精算処理のためにレジ係301が把持する商品400など)に照射される。
【0048】
UV照射器100Bは、処理領域211の下方に配置され、上方に紫外線を放射する。
レジカウンタ200表面の処理中かご401が載置される位置には、紫外線を透過する窓材(UV透過窓部)203aが設けられており、UV照射器100Bは、レジカウンタ200の内部であって、UV透過窓部203aの下方に配置される。
UV照射器100Bから放射された紫外線は、UV透過窓部203aを透過して、レジカウンタ200上の処理領域211に載置された処理中かご401や処理中かご401に入れられた商品400、処理領域211内に存在するその他の商品400(例えば、精算処理のためにレジ係301が把持する商品400など)に照射される。
【0049】
UV照射器100Cは、待機領域212の下方に設けられ、上方に紫外線を放射する。
レジカウンタ200表面の精算待ちかご402が載置される位置には、紫外線を透過する窓材(UV透過窓部)203bが設けられており、UV照射器100Cは、レジカウンタ200の内部であって、UV透過窓部203bの下方に配置される。
UV照射器100Cから放射された紫外線は、UV透過窓部203bを透過して、レジカウンタ200上の待機領域212に載置された精算待ちかご402や精算待ちかご402に入れられた商品400に照射される。
【0050】
なお、待機領域212の上方には、UV照射器100Aと同様に下方に紫外線を放射するUV照射器が設けられていてもよい。このように、レジカウンタ200上の買い物かごが載置される領域の上方および下方にそれぞれUV照射器を設けるので、商品400に対して複数方向から紫外線を照射することができる。
また、UV照射器100B、100Cは、レジカウンタ200の内部に配置され、UV透過窓部203a、203bを介して紫外線を照射するので、レジカウンタ200に載置される買い物かごの下方から適切に紫外線を照射することができ、買い物かごのレジカウンタ200との接触面についても、適切に不活化処理を行うことができる。
【0051】
UV照射器100Dは、レジ係301と客302との間に設置された透明の衝立201の下部に設けられた代金支払い用の開口202の上部に設置され、下方に紫外線を照射する。UV照射器100Dから放射された紫外線は、開口202により形成される支払領域214に置かれた現金や、カード、スマートフォン、商品券などのキャッシュレス決済ツールといった代金支払用の物品に照射される。
UV照射器100Eは、読み取り機221における商品情報の読取部の近傍に設けられている。UV照射器100Eから放射された紫外線は、読み取り機221により商品情報を読み取る際に、上記読取部に対峙する商品400に照射される。これにより、精算処理が行われる個々の商品400の表面を確実に不活化することが可能となる。
【0052】
UV照射器100A~100Eは、それぞれ図示を省略したセンサ(検知部)を備え、上述した制御部は、上記センサにより物品が検知されたタイミングで紫外線光源を制御し、紫外線を照射する。
具体的には、UV照射器100A、100Bは、センサによりレジカウンタ200上の処理領域211に処理中かご401が載置されたことを検知したタイミングで処理領域211に紫外線を照射し、これにより処理領域211内に存在する物品に紫外線を照射する。そして、UV照射器100A、100Bは、センサによりレジカウンタ200上の処理領域211から処理中かご401が移送された(取り去られた)ことを検知したタイミングで、紫外線の照射を停止する。
【0053】
同様に、UV照射器100Cは、センサによりレジカウンタ200上の待機領域212に精算待ちかご402が載置されたことを検知したタイミングで、待機領域212内に存在する物品に紫外線を照射する。そして、UV照射器100Cは、センサによりレジカウンタ200上の待機領域212から精算待ちかご402が移送された(取り去られた)ことを検知したタイミングで、紫外線の照射を停止する。
【0054】
また、UV照射器100Dは、センサにより代金の支払領域214に物品(代金など)が置かれたことを検知したタイミングで、支払領域214内に存在する物品に紫外線を照射し、支払領域214から物品が移送された(取り去られた)ことを検知したタイミングで紫外線の照射を停止する。また、UV照射器100Eは、センサにより読み取り機221の読取領域213において読取部に対峙する物品(商品)を検知したタイミングで、読取領域213内に存在する物品に紫外線を照射し、読取領域213から物品が移送された(取り去られた)ことを検知したタイミングで紫外線の照射を停止する。
【0055】
これにより、適切なタイミングで、適切な領域に紫外線を照射することができ、効果的に不活化を行うことができる。
なお、ここではセンサにより物品が非検知となったタイミングで紫外線の照射を停止する場合について説明したが、紫外線照射を停止するタイミングは上記に限定されない。センサにより物品が非検知となったことを契機に紫外線の照射を停止すればよく、例えば、センサにより物品が非検知となってから所定時間後(例えば数秒~数十秒後)に紫外線の照射を停止するようにしてもよい。
【0056】
また、ここではUV照射器100A~100Eがそれぞれセンサを備える場合について説明したが、1つのセンサによる検知信号をもとに複数のUV照射器による紫外線照射を制御してもよい。
例えば、UV照射器100Aが備えるセンサによってレジカウンタ200上の処理領域211に処理中かご401が載置されたことを検知したタイミングで、UV照射器100A~100Eから紫外線を照射するようにしてもよい。
【0057】
また、ここではセンサにより物品が非検知となったことを契機に紫外線の照射を停止する場合について説明したが、紫外線照射装置がレジ係301への紫外線の照射量を計測する計測部を備え、当該照射量が許容上限値に到達するまで、連続的に、あるいは間欠的に紫外線照射を行ってもよい。ここで、上記許容上限値は、ACGIH(American Conference of Governmental Industrial Hygienists:米国産業衛生専門家会議)やJIS Z 8812(有害紫外放射の測定方法)によって波長ごとに定められている、人体への1日(8時間)あたりの紫外線照射量の許容限界値(TLV:Threshold Limit Value)であってもよいし、上記許容限界値(TLV)を基準として設定した当該許容限界値(TLV)よりも低い値であってもよい。
【0058】
この場合、例えばレジ係301がレジカウンタ200に立った時点からの紫外線照射量を累積していき、その累積値が予め設定された許容上限値に到達した場合に紫外線の照射を停止する。ここで、上記計測部は、レジ係301が携帯もしくはレジ係301の近傍に設置された紫外線センサによりレジ係301への紫外線照射量を計測し累積する構成であってもよいし、予めレジ係301への単位時間当たりの紫外線照射量を定めておき、タイマーカウントによりレジ係301への紫外線照射量の累積値を推定する構成であってもよい。
【0059】
また、図1に示すように、レジカウンタ200の表面は、波長190nm~240nm(好ましくは、222nm)の紫外線を反射する反射面204であってもよい。反射面204は、上記紫外線を反射する反射素材からなる。なお、反射面204は、レジカウンタ200の表面であって、少なくとも未精算の商品400が入れられた買い物かご(処理中かご401、精算待ちかご402)が載置される領域(処理領域211、待機領域212)の周辺に設けられていればよい。これにより、レジカウンタ200の上方からレジカウンタ200表面に照射される紫外線が反射面204により反射(乱反射)され、未精算の商品400に照射される。
【0060】
このように、本実施形態における精算システム1000Aは、レジカウンタ200におけるレジ係301による商品400の精算処理中に、当該精算処理が行われる精算領域に紫外線を照射することができるので、精算処理に関する物品に対して紫外線を照射し、当該物品の表面に付着した微生物やウイルスを適切に不活化することができる。ここで、精算処理に関する物品は、精算領域に存在する精算前の商品400、当該精算前の商品400を入れた買い物かご、当該商品400の代金(現金、カード等)を含む。
これにより、レジ係301は、不活化処理が施された後の商品400に対して精算処理を行うことができる。また、客302は、不活化処理が施された後の商品400を持ち帰ることができる。さらに、レジ係301と客302との間では、不活化処理が施された後の物品(現金等)の受け渡しを行うことができる。
したがって、不特定多数の人が接触するなどして有害な微生物やウイルスが付着している可能性がある物品を介して上記の微生物やウイルスの2次感染が発生することを適切に抑制することができる。
【0061】
なお、上記実施形態においては、レジカウンタ200が対面式カウンタである場合について説明したが、例えば図2に示すように、客302自身がチェッカーとなって精算処理を行うセルフチェックアウトシステム(セルフレジ)に適用することもできる。この図2において、図1に示す精算システム1000Aと同様の構成を有する部分には図1と同一符号を付している。
【0062】
また、上記実施形態においては、読み取り機221がバーコードリーダーである場合について説明したが、商品情報の読取方法は上記に限定されない。例えば、RFID等の近距離無線通信にて商品情報を読み取るようにしてもよい。この場合、未精算のRFIDタグ付き商品が入れられた買い物かごは、例えばレジカウンタにおけるRFIDタグリーダーが設けられた所定の領域に載置され、商品の各RFIDタグのデータが一括して読み取られる。したがって、この場合にも、上記の買い物かごが載置される領域に対して紫外線を照射するようにすれば、各商品に対して適切に不活化処理を施すことができる。
【0063】
さらに、レジカウンタ200は、商品400が入れられた買い物かご、または商品400そのものをレジ係301による精算処理が行われる精算位置(処理領域211における処理中かご401が載置される位置)まで搬送する商品搬送機構を備えていてもよい。
図3は、レジカウンタ200が商品搬送機構としてベルトコンベア型搬送機構240Aを備える精算システム1000Bの構成例、図4は、レジカウンタ200が商品搬送機構としてローラ型搬送機構240Bを備える精算システム1000Cの構成例である。この図3図4において、図1に示す精算システム1000Aと同様の構成を有する部分には図1と同一符号を付している。
【0064】
なお、特に図示しないが、精算システム1000Bおよび1000Cは、図1の精算システム1000Aと同様にUV照射器100A~100Cを備えていてもよい。ここで、商品搬送機構240A、240Bに載置される物品の下方より紫外線を照射するUV照射器(図1のUV照射器100B、100Cに対応するUV照射器)は、商品搬送機構240A、240Bの搬送路の下側に配置され、上方に紫外線を放射する。
また、各UV照射器による紫外線の照射タイミングについては、上述した精算システム1000Aと同様とすることができる。例えば、商品搬送機構240A、240Bの搬送路上に、図1に示す処理領域211や待機領域212に相当する領域を定めておき、センサにより搬送路上の商品400が上記の領域に到達したことを検知して紫外線を照射する。
【0065】
ベルトコンベア型搬送機構240Aは、商品400を載置して搬送する搬送路として搬送用ベルトを備える。搬送用ベルトは、網目状構造のベルトであり、所定の隙間を有する。搬送路の下側に配置されたUV照射器から上方に放射された紫外線は、上記網目を通過して搬送路上の商品400に照射される。
また、ローラ型搬送機構240Bは、商品400を載置して搬送する搬送路として、所定の距離で離隔して回転するローラを備える。搬送路の下側に配置されたUV照射器から上方に放射された紫外線は、ローラ間の隙間を通過して搬送路上の商品400に照射される。
【0066】
また、精算システム1000B、1000Cにおいて、商品搬送機構240A、240Bの搬送路の一部には、搬送路により搬送される商品400が内部を通過可能な商品通過部241が設けられていてもよい。商品通過部241は、商品400の搬送経路における精算位置よりも商品400の搬送方向上流側(図3図4の左側)に設けられる。
商品通過部241は、例えば箱状のケース構造を有し、商品搬送機構240A、240Bの搬送路の少なくとも一部を包囲する。この商品通過部241には、商品搬送機構による商品400の搬送方向に対面する面に、商品400が通過する入口242と出口243とを有する。すなわち、商品通過部241は、その内部を商品400が通過するトンネルとして機能する。
【0067】
商品通過部241の内部における上面には、下方に紫外線を照射するUV照射器100Fが設けられていてもよい。この場合、UV照射器100Fは、商品通過部241の内部を通過する商品400に190nm~240nmの波長範囲の紫外線を照射して、商品400の表面に付着しているウイルスや微生物を不活化する。
また、商品通過部241の内面は、UV照射器100Fから放出される紫外線を反射する反射面であってもよい。例えば、商品通過部241を構成する箱状のケース構造自体が紫外線を反射する反射部材により構成されていてもよいし、商品通過部241の内面に紫外線反射機能を付与してもよい。商品通過部241の内面を上記のような反射面とすることで、商品通過部241内面で紫外線の反射(乱反射)が発生し、商品通過部241内を通過する商品400に対して多面的に紫外線を照射することができる。
【0068】
なお、商品通過部241は、出入口242、243が開放されているため、UV照射器100Fから放射され、商品通過部241内面で反射された紫外線は、出入口242、243から商品通過部241外に漏れ出る可能性がある。しかしながら、UV照射器100Fから放射される紫外線は、人体への悪影響の少ない波長範囲の光であるため、商品透過部241の出入口242、243から漏れ出た紫外線がその近傍に位置する人(レジ係301など)に照射されたとしても、当該人には殆どダメージを与えない。
【0069】
また、図4に示すローラ型搬送機構240Bの場合、ローラ表面が紫外線を反射する反射面であってもよい。例えば、ローラ表面に紫外線を反射する反射部材を設けてもよいし、ローラ自体を、紫外線を反射する反射部材により構成してもよい。例えば、商品通過部241内部に配置されたローラの表面を上記のような反射面とすることで、商品通過部241の内部でUV照射器100Fによる紫外線照射を行った場合に、ローラ表面で紫外線の反射(乱反射)が発生し、商品通過部241内を通過する商品400に対して多面的にUVを照射することができる。
また、ローラ上に買い物かごを介さずに商品400が載置される場合、商品400はローラの回転に伴って動くので、搬送路(ローラ)の上下から照射される紫外線が商品400にほぼ満遍なく照射される。
【0070】
図5は、UV照射器100A~100Fがそれぞれ備える紫外線照射ユニット10の構成例を示す模式図である。なお、ここではUV照射器100A~100Fが同一構成を有し、各UV照射器がそれぞれ照射を制御する制御部を備える場合について説明するが、各UV照射器の構成は上記に限定されない。
紫外線照射ユニット10は、導電性の金属からなる筐体11と、筐体11内部に収容された紫外線光源12と、を備える。
紫外線光源12は、例えば、中心波長222nmの紫外線を放出するKrClエキシマランプとすることができる。なお、紫外線光源12は、KrClエキシマランプに限定されるものではなく、190nm~240nmの波長範囲にある紫外線を放射する光源であればよい。
【0071】
また、紫外線照射ユニット10は、エキシマランプ12に給電する給電部16と、エキシマランプ12の照射および非照射や、エキシマランプ12から放出される紫外線の光量等を制御する制御部17と、を備える。エキシマランプ12は、筐体11内において、支持部18によって支持されている。
筐体11には、光出射窓となる開口部11aが形成されている。この開口部11aには窓部材11bが設けられている。窓部材11bは、例えば石英ガラスからなる紫外線透過部材や、不要な光を遮断する光学フィルタ等を含むことができる。
なお、筐体11内には、複数本のエキシマランプ12を配置することもできる。エキシマランプ12の数は特に限定されない。
【0072】
上記光学フィルタとしては、例えば、波長域200nm~237nmの光を透過し、それ以外のUV-C波長域(200~280nm)の光をカットする波長選択フィルタを用いることができる。
ここで、波長選択フィルタとしては、例えば、HfO層およびSiO層による誘電体多層膜フィルタを用いることができる。
このように、光出射窓に光学フィルタを設けることで、エキシマランプ12から人に有害な光が僅かに放射されている場合であっても、当該光が筐体11の外に漏洩することをより確実に抑えることができる。
【0073】
なお、波長選択フィルタとしては、SiO層およびAl層による誘電体多層膜を有する光学フィルタを用いることもできる。
しかしながら、波長選択フィルタとしてHfO層およびSiO層による誘電体多層膜を有する光学フィルタを用いた場合には、SiO層およびAl層による誘電体多層膜を有する光学フィルタを用いた場合と比較して、層の総数を少なくすることができる。そのため、入射角が0°のときの紫外線の透過率を高めることができる。
【0074】
以下、紫外線照射ユニット10における紫外線光源として使用されるエキシマランプ12の構成例について具体的に説明する。
図6(a)は、エキシマランプ12の管軸方向における断面の模式図であり、図6(b)は、図6(a)のA-A断面図である。
この図6(a)および図6(b)に示すように、エキシマランプ12は、両端が気密に封止された長尺な直円管状の放電容器13を備える。放電容器13は、例えば、合成石英ガラスや溶融石英ガラスなどの紫外線を透過する光透過性を有する誘電体材料より構成されている。放電容器13の内部には放電空間が形成されており、この放電空間には、紫外線を発生するバリア放電用ガス(以下、「放電ガス」ともいう。)として希ガスとハロゲンガスとが封入されている。本実施形態では、希ガスとしてクリプトン(Kr)、ハロゲンガスとして塩素ガス(Cl)を用いる。
なお、放電ガスとしては、クリプトン(Kr)と臭素(Br)との混合ガスを用いることもできる。この場合、エキシマランプ(KrBrエキシマランプ)は、中心波長207nmの紫外線を放出する。
【0075】
また、放電容器13内部の放電空間には、第一電極(内部電極)14が配設されている。内部電極14は、例えばタングステンなどの電気導電性および耐熱性を有する金属よりなる金属素線が、放電容器13の内径よりも小さなコイル径によってコイル状に巻回されて形成されてなるコイル状の電極である。この内部電極14は、放電容器13の中心軸(管軸)に沿って伸び、放電容器13の内周面に接触することのないように配設されている。
また、内部電極14の両端の各々には、内部電極用リード部材14aの一端が電気的に接続されている。内部電極用リード部材14aの他端側部分は、各々、放電容器13の外端面から外方に突出している。
【0076】
放電容器13の外周面には、第二電極(外部電極)15が設けられている。外部電極15は、例えばタングステンなどの電気導電性および耐熱性を有する金属よりなる金属素線から構成される網状の電極である。この外部電極15は、放電容器13の外周面に沿って放電容器13の中心軸方向に伸びるように設けられている。図6(a)および図6(b)に示すエキシマランプ12においては、網状電極である外部電極15は、筒状の外形を有しており、放電容器13の外周面に密接した状態で設けられている。
このような構成により、放電空間内において、内部電極14と外部電極15とが放電容器13の管壁(誘電体材料壁)を介して対向する領域に、放電領域が形成される。
【0077】
さらに、外部電極15の一端および一方の内部電極用リード部材14aの他端には、各々、給電線16bを介して給電部16(図5参照)が備える高周波電源16aが接続されている。高周波電源16aは、内部電極14と外部電極15との間に高周波電圧を印加することのできる電源である。
また、外部電極15の他端には、リード線16cの一端が電気的に接続されており、このリード線16cの他端は、接地されている。すなわち、外部電極15は、リード線16cを介して接地されている。なお、この図6(a)および図6(b)に示すエキシマランプ12においては、一方の内部電極用リード部材14aは給電線16bと一体のものとされている。
【0078】
内部電極14と外部電極15との間に高周波電力を印加すると、放電空間において誘電体バリア放電が生じる。この誘電体バリア放電により、放電空間に封入されている放電ガス(バリア放電用ガス)の原子が励起され、励起二量体(エキシプレックス)が生成される。この励起二量体が元の状態(基底状態)に戻るときに、固有の発光(エキシマ発光)が生じる。すなわち、上記放電ガスはエキシマ発光用ガスである。
【0079】
なお、エキシマランプの構成は、図6(a)および図6(b)に示す構成に限定されるものではない。例えば、図7(a)および図7(b)に示すエキシマランプ12Aのように、二重管構造の放電容器13Aを備える構成であってもよい。
このエキシマランプ12Aが備える放電容器13Aは、円筒状の外側管と、外側管の内側において外側管と同軸上に配置され、当該外側管よりも内径が小さい円筒状の内側管と、を有する。外側管と内側管とは、図7(a)の左右方向の端部において封止されており、両者の間には円環状の内部空間が形成されている。そして、この内部空間内に放電ガスが封入されている。
【0080】
内側管の内壁面13aには膜状の第一電極(内側電極)14Aが設けられ、外側管の外壁面13bには網状またはメッシュ状の第二電極(外側電極)15Aが設けられている。そして、内側電極14Aおよび外側電極15Aは、それぞれ給電線16bを介して高周波電源16aと電気的に接続されている。
【0081】
高周波電源16aによって内側電極14Aと外側電極15Aとの間に高周波の交流電圧が印加されることにより、外側管と内側管の管体を介して放電ガスに対して電圧が印加され、放電ガスが封入されている放電空間内で誘電体バリア放電が生じる。これにより放電ガスの原子が励起されて励起二量体が生成され、この原子が基底状態に移行する際にエキシマ発光を生じる。
【0082】
また、エキシマランプの構成は、例えば、図8(a)および図8(b)に示すエキシマランプ12Bのように、放電容器13Bの一方の側面に一対の電極(第一電極14B、第二電極15B)を配置した構成であってもよい。ここでは、一例として、図8(a)のZ方向に2本の放電容器13Bが並べて配置されているものとする。
図8(a)に示すように、第一電極14Bおよび第二電極15Bは、放電容器13Bにおける光取出し面とは反対側の側面(-X方向の面)に、放電容器13Bの管軸方向(Y方向)に互いに離間して配置されている。
そして、放電容器13Bは、これら2つの電極14B、15Bに接触しながら跨るように配置されている。具体的には、2つの電極14B、15BにはそれぞれY方向に延伸する凹溝が形成されており、放電容器13Bは、電極14B、15Bの凹溝に嵌め込まれている。
【0083】
第一電極14Bおよび第二電極15Bは、それぞれ給電線16bを介して高周波電源16aと電気的に接続されている。第一電極14Bと第二電極15Bとの間に高周波の交流電圧が印加されることで、放電容器13Bの内部空間において励起二量体が生成され、エキシマ光がエキシマランプ12Bの光取出し面(+X方向の面)から放射される。
ここで、電極14B、15Bは、エキシマランプ12Bから放射される光に対して反射性を有する金属材料により構成されていてもよい。この場合、放電容器13Bから-X方向に放射された光を反射して+X方向に進行させることができる。電極14B、15Bは、例えばアルミニウム(Al)やステンレスなどから構成することができる。
【0084】
なお、エキシマランプは、上述したように高周波電力が印加されて高周波点灯を行うので、高周波ノイズが発生する。しかしながら、上記のようにエキシマランプを収容する筐体11を導電性の金属によって構成することで、エキシマランプからの高周波ノイズが筐体11外部へ発信されることを抑制することができる。これにより、紫外線照射ユニット10近傍に設置された他の制御システムへの制御指令が、この高周波ノイズによる外乱を受けることを抑制することができ、当該制御指令に不具合が生じないようにすることができる。
【0085】
上記のように、本実施形態におけるUV照射器100A~100Fにおいては、紫外線光源であるエキシマランプとして、波長222nmにピークを有する紫外線を放出するKrClエキシマランプ、または、波長207nmにピークを有する紫外線を放出するKrBrエキシマランプを用いることが好ましい。
【0086】
図9は、たんぱく質の紫外線吸光スペクトルを示す図である。
この図9に示すように、たんぱく質は、波長200nmに吸光ピークを有し、波長240nm以上では紫外線が吸収されにくいことがわかる。つまり、波長240nm以上の紫外線は、人の皮膚を透過しやすく、皮膚内部まで浸透する。そのため、人の皮膚内部の細胞がダメージを受けやすい。これに対して、波長200nm付近の紫外線は、人の皮膚表面(例えば角質層)で吸収され、皮膚内部まで浸透しない。そのため、皮膚に対して安全である。
一方で、波長190nm未満の紫外光が存在すると、大気中に存在する酸素分子が光分解されて酸素原子を多く生成し、酸素分子と酸素原子との結合反応によってオゾンを多く生成させてしまう。そのため、波長190nm未満の紫外光を大気中に照射させることは望ましくない。さらに、大気中のオゾン発生をより効果的に抑制するため、200nm以上にピーク波長を有する紫外線を利用することが望ましい。
【0087】
したがって、波長190nm~240nmの波長範囲は、人や動物に安全な波長範囲であるといえる。なお、人や動物に安全な波長範囲は、好ましくは波長190nm~237nm、より好ましくは波長190nm~235nm、さらに好ましくは190nm~230nmである。またオゾンの発生をより効果的に抑制する観点から、好ましくは波長200nm~237nm、より好ましくは波長200nm~235nm、さらに好ましくは200nm~230nmである。
つまり、KrClエキシマランプから放出される波長222nmの紫外線や、KrBrエキシマランプから放出される波長207nmの紫外線は、いずれも人や動物に安全であって、微生物の殺菌やウイルスの不活化を行うことができる光である。よって、空間内の殺菌・不活化領域に人や動物が存在していても、紫外線照射による殺菌・不活化作業を行うことができる。
【0088】
以上説明したように、本実施形態における精算システムにおいては、レジカウンタ200におけるチェッカーによる商品400の精算処理が行われる精算領域に、精算処理に関する物品が移送された場合、センサによりこれを検知し、精算領域に微生物および/またはウイルスを不活化する波長の紫外線として190nm~240nmの波長範囲にある紫外線を照射することができる。
これにより、レジカウンタ200における精算領域において、精算処理に関する物品を適切に除染することができ、当該物品を介して有害な微生物やウイルスが人に感染することを抑制することができる。また、人や動物の細胞に悪影響の少ない190nm~240nmの波長範囲にある紫外線を照射するので、人が居る空間においても紫外線照射による不活化処理を行うことができる。
【0089】
具体的には、本実施形態における精算システムは、精算領域に含まれる処理領域211、待機領域212、読取領域213、支払領域214などにそれぞれ紫外線を照射可能に構成されたUV照射器を備え、センサにより上記の各領域に精算処理に関する物品が移送されたことを検知したタイミングで、上記の各領域に紫外線を照射する。ここで、精算処理に関する物品は、未精算の商品400や当該商品400が入れられた買い物かご、商品400の支払いを行うための現金やカード等を含む。
【0090】
これにより、処理中かご401や精算待ちかご402に入れられた商品400や、レジ係301(セルフレジの場合は客302)が把持する精算処理中の商品400に対して紫外線を照射し、商品400の表面に付着している微生物やウイルスに対して適切に不活化処理を行うことができる。したがって、レジ係301は、除染された商品400に対して精算処理を行うことができる。また、客302は、除染された状態の商品400を持ち帰ることができる。そのため、商品400を介してレジ係301や客302に有害な微生物やウイルスが感染してしまうことを抑制することができる。
さらに、レジ係301と客302との間で受け渡しが行われる現金やカード等に対しても適切に紫外線を照射することができるので、有害な微生物やウイルスの人から人への感染も抑制することができる。
【0091】
このように、本実施形態における精算システムは、不特定多数の人と接触してウイルスや微生物が付着している可能性がある精算時の商品400を適切に除染することができる。したがって、レジ係301が商品400に接触した際や、客302が商品400を持ち帰った際に、レジ係301や客302にウイルスや微生物の2次感染が発生してしまうことを適切に抑制することができる。
また、UV照射器100Aのように、紫外線光源を天井に取り付けるなど、人の顔よりも高い位置に設置すれば、精算領域における人の呼気が排出される空間に紫外線を照射することもできる。したがって、呼気中の飛沫が拡散する前に、当該飛沫に付着された微生物やウイルスを不活化することが可能となる。
【0092】
(変形例)
上記実施形態においては、紫外線光源としてエキシマランプを用いる場合について説明したが、紫外線光源としてLEDやLDといった固体光源を用いることもできる。
図10は、紫外線光源としてLED19を用いた紫外線照射ユニット10の一例である。この図10においては、紫外線照射ユニット10は、複数のLED19を備えている。
【0093】
上記したように、除染(殺菌)用途に使用される紫外線の波長域は、200~320nmであり、特に効果的な波長は、核酸(DNA、RNA)の吸収が大きい260nm付近である。
よって、紫外線照射ユニット10に搭載される紫外線光源としてのLED19も、波長200~320nmの紫外線を放出するものが採用される。具体的には、例えば窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系LED、窒化アルミニウム(AlN)系LED等を採用することができる。AlGaN系LEDは、アルミニウム(Al)の組成を変化させることにより200~350nmの波長範囲の深紫外域(deepUV:DUV)で発光する。また、AlN系LEDは、ピーク波長210nmの紫外線を放出する。
【0094】
ここで、AlGaN系LEDとしては、中心波長が200~237nmの範囲内となるようにAlの組成を調整することが好ましい。上記したように、この波長範囲の紫外線であれば、人や動物に安全であって、微生物の殺菌やウイルスの不活化を適切に行うことが可能である。例えば、Alの組成を調整することで、放出する紫外線の中心波長が222nmであるAlGaN系LEDとすることも可能である。
【0095】
また、LEDとして酸化マグネシウム亜鉛(MgZnO)系LEDを採用することもできる。MgZnO系LEDは、マグネシウム(Mg)の組成を変化させることにより190~380nmの波長範囲の深紫外域(deepUV:DUV)で発光する。
【0096】
ここで、MgZnO系LEDとしては、中心波長が200~237nmの範囲内となるようにMgの組成を調整することが好ましい。
上記したように、この波長範囲の紫外線であれば、人や動物に安全であって、微生物の殺菌やウイルスの不活化を適切に行うことが可能である。例えば、Mgの組成を調整することで、放出する紫外線の中心波長が222nmであるMgZnO系LEDとすることも可能である。
【0097】
ここで、上記のような紫外線(特に深紫外域の紫外線)を放出するLEDは、発光効率が数%以下と低く、発熱が大きい。また、LEDの発熱が大きくなると、当該LEDから放出される光の強度が小さくなり、また放出光の波長シフトも発生する。そのため、LEDの熱上昇を抑制するために、図10に示すように、LED19を冷却部材(例えば、熱を放熱する放熱フィン)20に設置することが好ましい。
このとき、図10に示すように、冷却部材20の一部を紫外線照射ユニット10の筐体11から突出させてもよい。
【0098】
なお、上記の中心波長222nmの紫外線を放出するAlGaN系LEDおよびMgZnO系LEDは、中心波長222nmからある程度広がりを有する波長範囲の紫外線を放出し、当該LEDから放出される光には、僅かながら人や動物に安全ではない波長の紫外線も含まれる。そのため、紫外線光源がエキシマランプである場合と同様、波長範囲200~237nm以外の波長を有するUV-C波長域の光をカットする誘電体多層膜フィルタ(光学フィルタ)を用いることが好ましい。
なお、上記光学フィルタとしては、より好ましくは波長200~235nm以外の波長を有するUV-C波長域の光をカットするもの、さらに好ましくは200~230nm以外の波長を有するUV-C波長域の光をカットするものであってもよい。これは光源がエキシマランプの場合でも同様である。
【0099】
ただし、上記の中心波長210nmの紫外線を放出するAlN-LEDは、上記光学フィルタは不要である。
また、紫外線光源がエキシマランプであっても、LEDであっても、当該紫外線光源の光放射面での照度や紫外線光源から紫外線の被照射面までの距離等によっては、被照射面での人や動物に安全ではない波長の紫外線の照度が許容値以下となる場合がある。したがって、このような場合には、上記光学フィルタを設ける必要はない。
【0100】
なお、上記実施形態においては、チェックアウトカウンタが、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、百貨店等の精算カウンタ(レジカウンタ)である場合について説明したが、上記に限定されるものではない。例えばチェックアウトカウンタは、図書館の貸出カウンタであってもよい。この場合にも、貸出カウンタにおける職員によるチェックアウト処理(貸出処理)中に、190nm~240nmの波長範囲にある紫外線を照射して、貸し出しが行われる図書表面に付着した有害な微生物やウイルスを不活化することができる。
【0101】
本発明に係る不活化方法によれば、紫外線照射による人体への悪影響を及ぼすことなく、紫外線本来の殺菌、ウイルスの不活化能力を提供することができる。特に、従来の紫外線光源とは異なり、人が存在する空間においても、紫外線による効果的な不活化処理を行うことができる。このことは、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標3「あらゆる年齢の全ての人々が健康的な生活を確保し、福祉を促進する」に対応し、また、ターゲット3.3「2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに、肝炎、水系感染症およびその他の感染症に対処する」に大きく貢献するものである。
【符号の説明】
【0102】
10…紫外線照射ユニット、11…筐体、12…エキシマランプ、16…給電部、17…制御部、19…LED、100A~100F…紫外線照射装置(UV照射器)、200…レジカウンタ、201…衝立、202…開口、203…UV透過窓部、204…反射面、211…処理領域、212…待機領域、213…読取領域、214…支払領域、220…レジスター、221…読み取り機、240A,240B…商品搬送機構、241…商品通過部、242…入口、243…出口、301…レジ係、302…客、400…商品、401…処理中かご、402…精算待ちかご、403…精算済かご、1000A~1000C…精算システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10