(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162727
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】駆動伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16H 49/00 20060101AFI20221018BHJP
F25B 41/35 20210101ALI20221018BHJP
【FI】
F16H49/00 A
F25B41/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067697
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中島 登志久
(72)【発明者】
【氏名】河田 真治
(72)【発明者】
【氏名】城 幸宏
(57)【要約】
【課題】構成部材に複数機能を持たせて装置構成の効率化を図り得る駆動伝達装置を提供する。
【解決手段】駆動伝達装置10は、環状磁極部材40を不動とする構成であり、駆動側回転部材20と磁気連結する磁性転動体32が駆動側回転部材20の回転に伴って周回することで従動側回転部材30に駆動力の伝達が行われる。磁性転動体32は、従動側回転部材30に転動可能に設けられ、例えば駆動側回転部材20の外周側に設けられる隔壁部材50の周壁部50bに当接し転動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁極部(22a,25a,26a)が周方向に並設される第1磁極部材(20,25,26)と、
複数の磁極部(40a,42a,44a,45a,45b)が周方向に並設される第2磁極部材(40,42,44,45)と、
前記第1磁極部材の前記磁極部と前記第2磁極部材の前記磁極部との間の磁路上に位置し、周方向に複数並設される磁性部材(32,34)と
を備え、
前記第2磁極部材を不動とし、前記第1磁極部材と磁気連結する前記磁性部材が前記第1磁極部材の回転に伴って周回することで駆動力の伝達がなされ、若しくは、
前記磁性部材の周回を不動とし、前記第1磁極部材と磁気連結する前記第2磁極部材が前記第1磁極部材の回転に伴って回転することで駆動力の伝達がなされるものであり、
前記磁性部材は、転動可能に設けられる磁性転動体(32,34)にて構成されている、駆動伝達装置。
【請求項2】
前記第1磁極部材の前記磁極部、前記第2磁極部材の前記磁極部、及び前記磁性転動体のそれぞれの数を異なる数に設定し、前記第1磁極部材から駆動伝達する回転を減速又は増速する機能を備えている、請求項1に記載の駆動伝達装置。
【請求項3】
前記第1磁極部材と前記磁性転動体との間、又は前記磁性転動体と前記第2磁極部材との間で仕切る隔壁部材(50,51)を備え、
前記磁性転動体は、前記隔壁部材に当接しその当接面を転動可能に構成されている、請求項1又は請求項2に記載の駆動伝達装置。
【請求項4】
前記磁性転動体は、前記第1磁極部材又は前記第2磁極部材に当接しその当接面を転動可能に構成されている、請求項1又は請求項2に記載の駆動伝達装置。
【請求項5】
前記第1磁極部材の前記磁極部は、永久磁石又は電磁石を用いる磁石磁極部にて構成されている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の駆動伝達装置。
【請求項6】
前記第2磁極部材の前記磁極部は、永久磁石又は電磁石を用いる磁石磁極部、若しくは磁性金属材で凸をなす突極磁極部にて構成されている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の駆動伝達装置。
【請求項7】
前記第1磁極部材又は前記第2磁極部材は、周方向に隣接する前記磁極部の間に凹部が生じる構成の場合、前記凹部に充填材(27,46)が設けられて前記磁性転動体の当接する前記第1磁極部材又は前記第2磁極部材の当接面が凹凸無い平滑な円周面にて構成されている、請求項4に記載の駆動伝達装置。
【請求項8】
前記第1磁極部材又は前記第2磁極部材は、前記磁性転動体の当接する前記第1磁極部材又は前記第2磁極部材の当接面に被膜(24,41,43)が設けられて構成されている、請求項4に記載の駆動伝達装置。
【請求項9】
前記磁性転動体は、周方向に並設する複数の前記磁性転動体が周方向の間隔を保持部材(35,37)にて保持されて構成されている、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の駆動伝達装置。
【請求項10】
前記保持部材又は前記磁性転動体は、相手側部材の接触部位に被膜(36a,36b,38a,38b)が設けられて構成されている、請求項9に記載の駆動伝達装置。
【請求項11】
前記磁性転動体は、前記保持部材に対して軸受(39)を介して支持されて構成されている、請求項9に記載の駆動伝達装置。
【請求項12】
前記磁性転動体は、円柱状に構成されている、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の駆動伝達装置。
【請求項13】
前記第1磁極部材の前記磁極部、前記第2磁極部材の前記磁極部、及び前記磁性転動体は、径方向又は軸方向に並ぶ構成をなし、
前記磁性転動体は、自身の中心軸が軸方向又は径方向に沿うようにして設けられている、請求項12に記載の駆動伝達装置。
【請求項14】
前記第1磁極部材の前記磁極部、前記第2磁極部材の前記磁極部、及び前記磁性転動体は、一部が径方向に一部が軸方向に混在して並ぶ構成をなし、
前記磁性転動体は、自身の中心軸が軸方向に沿うようにして設けられている、請求項12に記載の駆動伝達装置。
【請求項15】
冷凍サイクル装置(11)の冷媒循環流路において冷媒の流量を調整する弁装置(12)に駆動力を伝達するものであり、
前記隔壁部材は、前記冷媒の進入する第1領域(A1)と、前記冷媒の進入を禁止する第2領域(A2)とを仕切るものである、請求項3に記載の駆動伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触式の駆動伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触式の駆動伝達装置は、駆動側回転部材と従動側回転部材とを磁気連結させて構成され、駆動源からの回転駆動力を駆動側回転部材及び従動側回転部材を介して負荷に伝達する。
【0003】
例えば特許文献1に開示の駆動伝達装置は、不動に設けられる周囲の磁極部材の内側に、駆動側回転部材と従動側回転部材とを配置して構成されている。周囲の磁極部材及び駆動側回転部材には、それぞれ永久磁石よりなる複数の磁極部が周方向に並設されている。従動側回転部材には、複数の磁性部材が周方向に並設されている。従動側回転部材の磁性部材は、周囲の磁極部材及び駆動側回転部材の各磁極部の間に挿入され、各磁極部と磁性部材とが径方向に並んで設けられている。特許文献1の駆動伝達装置は、磁性部材を通じて駆動側回転部材から従動側回転部材に駆動力の伝達が行われる。ちなみに、複数の磁性部材を不動に設けるとともに周囲の磁極部材を従動側回転部材の一部として設け、周囲の磁極部材を通じて駆動側回転部材から従動側回転部材に駆動力の伝達が行われる駆動伝達装置もある。
【0004】
なお、特許文献1に開示の駆動伝達装置等のように、周囲の磁極部材及び駆動側回転部材の各磁極部と従動側回転部材の磁性部材とのそれぞれの数を所定数異ならせれば、駆動側回転部材から従動側回転部材に駆動伝達する回転の減速又は増速が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記非接触式の駆動伝達装置において、本発明者は、構成部材に複数機能を持たせて装置構成の効率化を検討していた。装置構成が効率化できれば、構成部材の省略、ひいては装置構成の簡素化に繋げられる。本発明の目的は、構成部材に複数機能を持たせて装置構成の効率化を図り得る駆動伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する駆動伝達装置は、複数の磁極部(22a,25a,26a)が周方向に並設される第1磁極部材(20,25,26)と、複数の磁極部(40a,42a,44a,45a,45b)が周方向に並設される第2磁極部材(40,42,44,45)と、前記第1磁極部材の前記磁極部と前記第2磁極部材の前記磁極部との間の磁路上に位置し、周方向に複数並設される磁性部材(32,34)とを備え、前記第2磁極部材を不動とし、前記第1磁極部材と磁気連結する前記磁性部材が前記第1磁極部材の回転に伴って周回することで駆動力の伝達がなされ、若しくは、前記磁性部材の周回を不動とし、前記第1磁極部材と磁気連結する前記第2磁極部材が前記第1磁極部材の回転に伴って回転することで駆動力の伝達がなされるものであり、前記磁性部材は、転動可能に設けられる磁性転動体(32,34)にて構成されている。
【0008】
上記態様によれば、第2磁極部材を不動とする場合、第1磁極部材と磁気連結する磁性部材が第1磁極部材の回転に伴って周回することで駆動力の伝達が行われる。若しくは、磁性部材の周回を不動とする場合、第1磁極部材と磁気連結する第2磁極部材が第1磁極部材の回転に伴って回転することで駆動力の伝達が行われる。磁性部材は磁性転動体として自身が転動可能に設けられるため、例えば第1磁極部材や第2磁極部材、他の周囲部材等に当接させて転動させれば、自身を軸受として機能させることも可能である。このようにすれば、軸受部材を省略することもできる。また、磁性転動体を第1磁極部材や第2磁極部材、他の周囲部材に当接できれば、第1磁極部材からの駆動力の伝達効率の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態における駆動伝達装置を示す平面図。
【
図2】一実施形態における駆動伝達装置を示す縦断面図。
【
図3】一実施形態と比較例との伝達効率の比較を示す表図。
【
図10】変更例における駆動伝達装置を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面模式図。
【
図11】変更例における駆動伝達装置を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面模式図。
【
図12】変更例における駆動伝達装置を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面模式図。
【
図13】変更例における駆動伝達装置を示す平面図。
【
図14】変更例における駆動伝達装置を示す平面図。
【
図15】変更例における駆動伝達装置を示す平面図。
【
図16】変更例における駆動伝達装置を示す平面図。
【
図17】変更例における駆動伝達装置を示す平面図。
【
図18】変更例における駆動伝達装置を示す平面図。
【
図19】変更例における駆動伝達装置を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面模式図。
【
図20】変更例における駆動伝達装置を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面模式図。
【
図21】変更例における駆動伝達装置の磁性転動体を示す図であり、(a)は全体平面図、(b)(c)は一部拡大図。
【
図22】変更例における駆動伝達装置の磁性転動体を示す図であり、(a)は全体平面図、(b)は側面模式図、(c)(d)は一部拡大図。
【
図23】変更例における駆動伝達装置の磁性転動体を示す図であり、(a)は全体平面図、(b)は一部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、駆動伝達装置の一実施形態について説明する。
図1及び
図2に示す本実施形態の駆動伝達装置10は、例えば車両用空調装置の冷凍サイクル装置11に用いられる。駆動伝達装置10は、冷凍サイクル装置11の冷媒循環流路において冷媒の流量を調整する弁装置12の開閉駆動を行わせるために、駆動源である電動モータMの回転駆動力を負荷側の弁装置12に伝達する。
【0011】
駆動伝達装置10は、駆動側回転部材20と、従動側回転部材30と、環状磁極部材40とを備えている。なお、駆動側回転部材20は第1磁極部材に相当し、環状磁極部材40は第2磁極部材に相当する。
【0012】
駆動側回転部材20は、電動モータMとは別体で構成され、電動モータMの出力軸の駆動に基づいて回転する。若しくは、駆動側回転部材20は、電動モータMのロータの一部として構成され、電動モータMのステータの駆動に基づいて回転する。いずれにしても、駆動側回転部材20は、電動モータMの駆動に基づいて回転するものである。
【0013】
駆動側回転部材20は、ベース部21と、環状磁石体22とを備えている。ベース部21は、軸部21aと、支持部21bとを有している。軸部21aは、軸受23にて周囲の不動部材23xに対して回転可能に支持されている。軸部21aは、自身の中心軸が駆動伝達装置10の基準となる基準軸L1と一致するように設けられている。軸部21aの軸方向一端には、軸部21aから径方向外側に延びる形状をなす支持部21bが一体的に設けられている。支持部21bの外周縁部には、環状磁石体22が固定されている。
【0014】
環状磁石体22は、軸方向に所定長さを有する円環状に永久磁石にて構成されている。環状磁石体22は、自身の中心軸が駆動伝達装置10の基準軸L1と一致するように設けられている。環状磁石体22は、周方向等間隔に本実施形態では4個の磁石磁極部22aを有している。磁石磁極部22aは、自身の外周面に現れるN極とS極とが90°範囲で周方向に交互に並設されている。
【0015】
ここで、本実施形態の駆動伝達装置10は、冷媒の流量を調整する弁装置12の駆動のために設けられている。弁装置12側に配置される従動側回転部材30及び環状磁極部材40は、冷媒が進入する第1領域としての被水領域A1に配置される。これに対し、電動モータM側に配置される駆動側回転部材20は、冷媒の進入が禁止された第2領域としての防水領域A2に配置される。そのため、本実施形態の駆動伝達装置10は、被水領域A1と防水領域A2とを仕切るための隔壁部材50を備えている。
【0016】
隔壁部材50は、非磁性金属板材にて作製されている。隔壁部材50は、周囲の不動部材50xに固定されている。隔壁部材50は、円形状の開口部50aから円筒状に延びる周壁部50bと、周壁部50bの底部を閉塞する底壁部50cとを含む凹状部分を有している。周壁部50bは、自身の中心軸が駆動伝達装置10の基準軸L1と一致するように設けられている。周壁部50bの内側には、開口部50aから挿入された駆動側回転部材20が収容されている。周壁部50bは、駆動側回転部材20の磁石磁極部22aと径方向に対向している。周壁部50bの内周面と駆動側回転部材20の磁石磁極部22aの外周面との間には、駆動伝達装置10での駆動伝達を好適に行うための微小な隙間S1が設定されている。
【0017】
環状磁極部材40は、軸方向に所定長さを有する円環状に永久磁石にて構成されている。環状磁極部材40は、周囲の不動部材40xに固定されている。環状磁極部材40は、自身の中心軸が駆動伝達装置10の基準軸L1と一致するように設けられている。環状磁極部材40は、周方向等間隔に本実施形態では36個の磁石磁極部40aを有している。磁石磁極部40aは、自身の内周面に現れるN極とS極とが10°範囲で周方向に交互に並設されている。環状磁極部材40の磁石磁極部40aは、隔壁部材50の周壁部50bと径方向に間隔を有して設けられている。環状磁極部材40の磁石磁極部40aと隔壁部材50の周壁部50bとの間には、従動側回転部材30の後述の磁性転動体32が挿入されて収容されている。
【0018】
従動側回転部材30は、ベース部31と、磁性転動体32とを備えている。ベース部31は、軸部31aと、支持部31bとを有している。軸部31aは、自身の中心軸が駆動伝達装置10の基準軸L1と一致するように設けられている。軸部31aの軸方向一端には、軸部31aから径方向外側に延びる形状をなす支持部31bが一体的に設けられている。支持部31bの外周縁部には、本実施形態では20個の磁性転動体32が回転可能に設けられている。磁性転動体32は、支持部31bの外周縁部に対して周方向等間隔、具体的には18°等間隔で周方向に点在して並設されている。
【0019】
磁性転動体32は、磁性金属材にて円柱状に作製されている。磁性転動体32は、自身の中心軸が駆動伝達装置10の基準軸L1に沿って並行となるように設けられている。磁性転動体32は、隔壁部材50の周壁部50bの当接面である外周面に当接し、周壁部50bの外周面を転動するようにして設けられている。磁性転動体32は、環状磁極部材40の磁石磁極部40aと径方向に対向している。駆動伝達装置10における磁性転動体32の最外周部と環状磁極部材40の磁石磁極部40aの内周面との間には、駆動伝達装置10での駆動伝達を好適に行うための微小な隙間S2が設定されている。こうして、駆動側回転部材20の磁石磁極部22aと、隔壁部材50の周壁部50bと、従動側回転部材30の磁性転動体32と、環状磁極部材40の磁石磁極部40aとは、径方向に並んで配置されている。
【0020】
本実施形態の駆動伝達装置10の動作(作用)について説明する。
本実施形態では、駆動側回転部材20の磁石磁極部22aの数が「4」、従動側回転部材30の磁性転動体32の数が「20」、環状磁極部材40の磁石磁極部40aの数が「36」に設定されている。そして、駆動側回転部材20の磁石磁極部22aと従動側回転部材30の磁性転動体32との磁気連結、及び環状磁極部材40の磁石磁極部40aの磁気作用を受けることで、駆動側回転部材20が回転すると従動側回転部材30が逆方向に回転する。この場合、上記した磁石磁極部22a,40aと磁性転動体32とのそれぞれの数の設定により、駆動側回転部材20から従動側回転部材30に駆動伝達する際の回転が減速されるものとなっている。
【0021】
また、駆動側回転部材20から従動側回転部材30に駆動伝達する際、磁性転動体32は、隔壁部材50の周壁部50bの外周面を転動しながら周回する。つまり、磁性転動体32は、従動側回転部材30の軸受としても機能する。従動側回転部材30は、軸受としても機能する磁性転動体32にて隔壁部材50の周壁部50bに対して回転可能に支持されている。したがって、従動側回転部材30については、本実施形態のように、例えば軸部31a等を支持する軸受部材を省略することも可能である。
【0022】
また、磁性転動体32は、隔壁部材50の周壁部50bの外周面を転動するため、周壁部50bの外周面に当接させて構成することが可能である。つまり、従動側回転部材30の磁性転動体32と隔壁部材50との間に隙間を設定する必要がない。そのため、駆動側回転部材20の磁石磁極部22aと、隔壁部材50の周壁部50bと、従動側回転部材30の磁性転動体32と、環状磁極部材40の磁石磁極部40aとの径方向の並びにおいて、必要な隙間としては2箇所の隙間S1,S2の設定で済む。こうして、隙間での磁束漏れに起因する駆動伝達効率の低下が極力抑えられる構成となっている。
【0023】
図3には、上記磁性転動体32を用いる本案の伝達トルクと、上記磁性転動体32とは異なる各種形状の磁性体32x1~32x5を用いる比較例1から比較例5の伝達トルクとの比較結果が示されている。
【0024】
比較例1の磁性体32x1は、対をなす周方向側面がそれぞれ径方向に沿った平面と、内側面及び外側面がそれぞれ周方向に沿った曲面とで囲まれた断面扇状の柱状をなす。磁性体32x1は、非転動の設定である。そのため、上記実施形態と同様に必要な隙間S1,S2に加え、磁性体32x1と隔壁部材50の周壁部50bとの間に新たに隙間Sxが必要である。駆動側回転部材20の磁石磁極部22aと、隔壁部材50の周壁部50bと、従動側回転部材30の磁性体32x1と、環状磁極部材40の磁石磁極部40aとの径方向の並びにおいて、3箇所の隙間S1,S2,Sxとなる。なお、この比較例1における駆動側回転部材20から従動側回転部材30への伝達トルクを基準とし、伝達トルク比としては基準値「1」とする。比較例1の伝達トルク比は、以下の他の比較例2から比較例5及び本案との比較に用いる。
【0025】
比較例2の磁性体32x2は、対をなす周方向側面が互いに平行な平面と、内側面及び外側面がそれぞれ周方向に沿った曲面とで囲まれた断面円弧状の柱状をなす。磁性体32x2は、同じく非転動の設定であり、磁性体32x2と隔壁部材50の周壁部50bとの間に隙間Sxが必要である。この比較例2における駆動側回転部材20から従動側回転部材30への伝達トルク比は、「1.01」と比較例1と略同じである。
【0026】
比較例3の磁性体32x3は、対をなす周方向側面がそれぞれ径方向に沿った平面と、内側面及び外側面が互いに平行な平面とで囲まれた断面台形状の柱状をなす。磁性体32x3は、同じく非転動の設定であり、磁性体32x3と隔壁部材50の周壁部50bとの間に隙間Sxが必要である。この比較例3における駆動側回転部材20から従動側回転部材30への伝達トルク比は、「0.96」と比較例1より若干小さくなる。
【0027】
比較例4の磁性体32x4は、対をなす周方向側面が互いに平行な平面と、内側面及び外側面が互いに平行な平面とで囲まれた断面長方形状の柱状をなす。磁性体32x4は、同じく非転動の設定であり、磁性体32x4と隔壁部材50の周壁部50bとの間に隙間Sxが必要である。この比較例4における駆動側回転部材20から従動側回転部材30への伝達トルク比は、「0.97」と比較例3と略同じで、比較例1より若干小さくなる。
【0028】
比較例5の磁性体32x5は、上記磁性転動体32と同様に断面円形状をなす円柱状をなしているが、非転動の設定である。そのため、磁性体32x5と隔壁部材50の周壁部50bとの間にも上記した隙間Sxの設定が必要である。また、比較例5の磁性体32x5は、その隙間Sx分、上記磁性転動体32よりも小径に形成されている。このことも相まって、比較例5における駆動側回転部材20から従動側回転部材30への伝達トルク比は、「0.69」と最も小さくなる。
【0029】
上記比較例1から比較例5に対し、上記磁性転動体32を用いる本案の伝達トルク比は、「1.8」と最も大きくなる。磁性転動体32を転動する態様として隔壁部材50の周壁部50bの外周面に当接させ、比較例1から比較例5で生じていた隙間Sxを省略する構成とする意義は大きい。
【0030】
ちなみに、比較例1から比較例3の磁性体32x1~32x3は、それぞれ断面扇状、円弧状、台形状の柱状と製造難易度の比較的高い形状をなしている。比較例4及び比較例5の磁性体32x4,32x5は、それぞれ断面長方形状、円形状の柱状と製造難易度の比較的低い形状をなしている。本実施形態の磁性転動体32についても円柱状と製造難易度の比較的低い形状をなし、部品製造の観点でも本実施形態の磁性転動体32は有利である。
【0031】
このような構成の本実施形態の駆動伝達装置10は、
図2に示すように、電動モータMの駆動に基づいて駆動側回転部材20が回転すると、磁気連結により非接触で従動側回転部材30に駆動力が効率良く伝達される。また、この駆動側回転部材20から従動側回転部材30への駆動伝達の過程で回転が減速される。そして、従動側回転部材30の回転駆動力は、軸部31aを通じて冷凍サイクル装置11の弁装置12を開閉駆動させ、冷媒循環流路における冷媒の流量を都度適切に調整する。このような冷凍サイクル装置11における電動モータMと弁装置12との間の駆動伝達経路上に、本実施形態の駆動伝達装置10が用いられている。
【0032】
本実施形態の効果について説明する。
(1)本実施形態の駆動伝達装置10は、環状磁極部材40を不動とする構成であり、駆動側回転部材20と磁気連結する磁性転動体32が駆動側回転部材20の回転に伴って周回することで従動側回転部材30に駆動力の伝達が行われる。磁性転動体32は、従動側回転部材30に転動可能に設けられ、本実施形態のように駆動側回転部材20の外周側に設けられる隔壁部材50の周壁部50bに当接させて転動させれば、従動側回転部材30の軸受としても機能する。このようにすれば、従動側回転部材30の軸受部材を省略することができる。
【0033】
(2)磁性転動体32を隔壁部材50の周壁部50bに当接させる本実施形態の構成では、磁性転動体32と隔壁部材50との間の隙間を省略でき、駆動側回転部材20から従動側回転部材30への駆動力の伝達効率の向上を図ることができる。
【0034】
(3)磁性転動体32は円柱状に構成されているため、磁性転動体32の軸方向における磁気伝達は良好である。このことは、駆動側回転部材20から従動側回転部材30への駆動力の伝達効率の向上に寄与できる。
【0035】
(4)駆動伝達装置10は、冷凍サイクル装置11の冷媒循環流路において冷媒の流量を調整する弁装置12に電動モータMの駆動力を伝達するものである。隔壁部材50は、冷媒の進入する被水領域A1と、冷媒の進入を禁止する防水領域A2とを仕切るために駆動伝達装置10に備えられている。そして、従動側回転部材30の磁性転動体32は、その隔壁部材50の周壁部50bの外周面に当接し転動するようにして、装置構成の効率化が図られている。
【0036】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・駆動伝達装置10の構成について適宜変更してもよい。例えば、
図4から
図23に示す各態様のように変更してもよい。
【0037】
図4に示す駆動伝達装置10は、隔壁部材50の周壁部50bが従動側回転部材30の磁性転動体32と環状磁極部材40の磁石磁極部40aとの間に位置するように構成されている。被水領域A1には環状磁極部材40が、防水領域A2には駆動側回転部材20及び従動側回転部材30がそれぞれ配置される。磁性転動体32は、隔壁部材50の周壁部50bの内周面に当接し、従動側回転部材30の軸受としても機能すべく周壁部50bの内周面を転動する。駆動伝達装置10の径方向の隙間としては、従動側回転部材30の磁性転動体32と隔壁部材50との間の隙間分を省略でき、駆動側回転部材20から従動側回転部材30への駆動力の伝達効率は良好である。なお、隔壁部材50と環状磁極部材40とはともに不動で相対動作しないため、隔壁部材50と環状磁極部材40との間の隙間を省略することも可能である。このように駆動伝達装置10を構成してもよい。
【0038】
図5に示す駆動伝達装置10は、被水領域A1と防水領域A2とに仕切る必要のない装置等に用いられ、隔壁部材50が省略されて構成されている。磁性転動体32は、環状磁極部材40の磁石磁極部40aの内周面に当接し、従動側回転部材30の軸受としても機能すべく環状磁極部材40の内周面を転動する。駆動伝達装置10の径方向の隙間としては、隔壁部材50を無くした分の隙間の省略に加え、従動側回転部材30の磁性転動体32と環状磁極部材40との間の隙間分を省略でき、駆動側回転部材20から従動側回転部材30への駆動力の伝達効率はより良好である。このように駆動伝達装置10を構成してもよい。
【0039】
図6に示す駆動伝達装置10についても、隔壁部材50が省略されて構成されている。磁性転動体32は、駆動側回転部材20の磁石磁極部22aの外周面に当接し、従動側回転部材30の軸受としても機能すべく駆動側回転部材20の外周面を転動する。駆動伝達装置10の径方向の隙間としては、隔壁部材50を無くした分の隙間の省略と、駆動側回転部材20と従動側回転部材30の磁性転動体32との間の隙間とを省略でき、駆動側回転部材20から従動側回転部材30への駆動力の伝達効率はより良好である。このように駆動伝達装置10を構成してもよい。
【0040】
図7に示す駆動伝達装置10のように、駆動側回転部材20の磁石磁極部22aの外周面と環状磁極部材40の磁石磁極部40aの内周面とのそれぞれで磁性転動体32を転動させることも可能である。つまり、磁性転動体32は、駆動側回転部材20の磁石磁極部22aの外周面と環状磁極部材40の磁石磁極部40aの内周面とのそれぞれに当接し、駆動伝達装置10の径方向の隙間を生じさせない設定とすることも可能である。この場合、磁性転動体32、駆動側回転部材20及び環状磁極部材40は、相互的な寸法設定がより重要である。このようにすれば、駆動側回転部材20から従動側回転部材30への駆動力の伝達効率はより一層良好である。このように駆動伝達装置10を構成してもよい。
【0041】
図8に示す駆動伝達装置10は、
図6と略同様であり、磁性転動体32が当接して転動する駆動側回転部材20の磁石磁極部22aの外周面に被膜24が設けられている。被膜24は、例えば金属メッキ膜、テフロン(登録商標)等の樹脂膜、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜等である。被膜24は、磁性転動体32が当接して転動する駆動側回転部材20の磁石磁極部22aの外周面を、磁性転動体32との摩耗から保護する保護膜として機能させてもよい。また、被膜24は、駆動側回転部材20の磁石磁極部22aの外周面に対する磁性転動体32の摺動性を高めるように機能させてもよい。このように駆動伝達装置10を構成してもよい。
【0042】
図9に示す駆動伝達装置10は、
図5と略同様であり、磁性転動体32が当接して転動する環状磁極部材40の磁石磁極部40aの内周面に被膜41が設けられている。被膜41は、上記被膜24と同様の材料で同様に機能する。被膜41は、磁性転動体32が当接して転動する環状磁極部材40の磁石磁極部40aの内周面を、磁性転動体32との摩耗から保護する保護膜として機能させてもよい。また、被膜41は、環状磁極部材40の磁石磁極部40aの内周面に対する磁性転動体32の摺動性を高めるように機能させてもよい。このように駆動伝達装置10を構成してもよい。
【0043】
図10(a)及び
図10(b)に示す駆動伝達装置10は、
図1に示した上記実施形態の径方向対向型(以下、ラジアル型という)を、軸方向対向型(以下、アキシャル型という)に変更したもので、それ以外は実質的に同じ構成である。なお、
図10(b)は半周分が示され、描かれた図の上下方向を一例として説明する。
【0044】
駆動側回転部材25は、永久磁石を含む円盤状をなし、周方向等間隔に4個の磁石磁極部25aを有している。磁石磁極部25aは、自身の上面にN極とS極とが周方向に交互に現れる。駆動側回転部材25の上面には、非磁性金属板材よりなる隔壁部材51が隙間S3を介して配置されている。隔壁部材51の上面には、従動側回転部材33の一部を構成する磁性転動体34が配置されている。磁性転動体34は、磁性金属材にて円柱状をなし、周方向等間隔に20個回転可能に設けられている。磁性転動体34は、自身の中心軸が駆動伝達装置10の径方向に沿うようにして設けられている。磁性転動体34の上部には、円盤磁極部材42が隙間S4を介して配置されている。円盤磁極部材42は、永久磁石を含む円盤状をなし、周方向等間隔に36個の磁石磁極部42aを有している。磁石磁極部42aは、自身の下面にN極とS極とが周方向に交互に現れる。円盤磁極部材42と隔壁部材51とは不動に設けられ、磁性転動体34は隔壁部材51の上面に当接して転動及び周回する。
【0045】
そして、駆動側回転部材25が回転すると、磁性転動体34が隔壁部材51の上面を転動する。その際、駆動側回転部材25の磁石磁極部25a、磁性転動体34、円盤磁極部材42の磁石磁極部42aのそれぞれの数の設定により、駆動側回転部材25と磁気連結する磁性転動体34、すなわち従動側回転部材33には減速した回転が伝達される。このようなアキシャル型の駆動伝達装置10における軸方向の隙間についても、従動側回転部材33の磁性転動体34と隔壁部材51との間の隙間分を省略でき、駆動側回転部材25から従動側回転部材33への駆動力の伝達効率は良好である。また、駆動側回転部材25から従動側回転部材33に駆動伝達する際、磁性転動体34が軸受としても機能するため、従動側回転部材33の軸受部材を省略することも可能である。このように駆動伝達装置10を構成してもよい。
【0046】
図11(a)及び
図11(b)に示す駆動伝達装置10は、
図10に示した態様から隔壁部材51が省略されて構成されている。磁性転動体34は、円盤磁極部材42の磁石磁極部42aの下面を転動すべくその下面に当接している。駆動伝達装置10の軸方向の隙間としては、隔壁部材51を無くした分の隙間の省略に加え、従動側回転部材33の磁性転動体34と円盤磁極部材42との間の隙間分を省略でき、駆動側回転部材25から従動側回転部材33への駆動力の伝達効率はより良好である。このように駆動伝達装置10を構成してもよい。
【0047】
図12(a)及び
図12(b)に示す駆動伝達装置10は、
図11と略同様であり、磁性転動体34が当接して転動する円盤磁極部材42の磁石磁極部42aの下面に被膜43が設けられている。被膜43は、上記被膜24と同様である。被膜43は、磁性転動体34が当接して転動する円盤磁極部材42の磁石磁極部42aの下面を、磁性転動体34との摩耗から保護する保護膜として機能させてもよい。また、被膜43は、円盤磁極部材42の磁石磁極部42aの下面に対する磁性転動体34の摺動性を高めるように機能させてもよい。このように駆動伝達装置10を構成してもよい。
【0048】
図13に示す駆動伝達装置10は、
図1に示した永久磁石の磁石磁極部22aを有する駆動側回転部材20を、電磁石の磁石磁極部26aを有する駆動側回転部材26と置換して構成されている。磁石磁極部26aは、コイル26b及びコア26cを有する。磁石磁極部26aは、周方向等間隔に例えば6個設けられ、自身の外周面に磁極が現れる。その他、隔壁部材50、磁性転動体32を有する従動側回転部材30、及び磁石磁極部40aを有する環状磁極部材40は同様に用いられている。このように駆動伝達装置10を構成してもよい。
【0049】
図14に示す駆動伝達装置10は、
図13に示した永久磁石の磁石磁極部40aを有する環状磁極部材40を、電磁石の磁石磁極部44aを有する環状磁極部材44と置換して構成されている。磁石磁極部44aは、コイル44b及びコア44cを有する。磁石磁極部44aは、周方向等間隔に例えば12個設けられ、自身の内周面に磁極が現れる。なお、従動側回転部材30の磁性転動体32の数は、例えば10個とされる。このように駆動伝達装置10を構成してもよい。
【0050】
図15に示す駆動伝達装置10は、
図1に示した永久磁石の磁石磁極部22aを有する駆動側回転部材20を、内側に凸の突極磁極部45aを有する環状磁極部材45と置換して構成されている。環状磁極部材45は、磁性金属材にて円環状に作製されている。突極磁極部45aは、周方向等間隔に例えば18個設けられている。その他、磁石磁極部22aを有する駆動側回転部材20、隔壁部材50、及び磁性転動体32を有する従動側回転部材30は同様に用いられている。このように駆動伝達装置10を構成してもよい。
【0051】
図16に示す駆動伝達装置10は、
図15に示した突極磁極部45aを有する環状磁極部材45を用いている。環状磁極部材45は、周方向に隣接する突極磁極部45aの間の凹部全てに、例えばN極の永久磁石が設けられてなる磁石磁極部45bを備えている。つまり、突極磁極部45aは、隣接のN極の磁石磁極部45bによりS極として機能する。環状磁極部材45の磁極数は、突極磁極部45aと磁石磁極部45bとの合計で36個である。このように駆動伝達装置10を構成してもよい。
【0052】
図17に示す駆動伝達装置10は、
図13に示した電磁石の磁石磁極部26aを有する駆動側回転部材26を用い、また隔壁部材50を省略している。駆動側回転部材26は、隣接の磁石磁極部26aの間の凹部に充填材27を設け、駆動側回転部材26の外周面が凹凸無い平滑な円周面に構成されたものである。充填材27は、例えば樹脂材である。電磁石の磁石磁極部26aを外周部に有する駆動側回転部材26であっても、その外周面に磁性転動体32が当接して転動する構成とすることが可能である。このように駆動伝達装置10を構成してもよい。
【0053】
図18に示す駆動伝達装置10は、
図15に示した突極磁極部45aを有する環状磁極部材45を用い、また隔壁部材50を省略している。環状磁極部材45は、隣接の突極磁極部45aの間の凹部に充填材46を設け、環状磁極部材45の内周面が凹凸無い平滑な円周面に構成されたものである。充填材46は、例えば樹脂材又は非磁性金属材である。突極磁極部45aを内周部に有する環状磁極部材45であっても、その内周面に磁性転動体32が当接して転動する構成とすることが可能である。このように駆動伝達装置10を構成してもよい。
【0054】
図19(a)及び
図19(b)に示す駆動伝達装置10は、駆動側回転部材20と従動側回転部材30の磁性転動体32との対向関係が軸方向対向型、従動側回転部材30の磁性転動体32と環状磁極部材40との対向関係が径方向対向型で構成されている。すなわち、
図19に示す駆動伝達装置10は、アキシャル型とラジアル型とが混在するハイブリッド型である。また、この駆動伝達装置10は、隔壁部材50を用いている。磁性転動体32は、自身の中心軸が駆動伝達装置10の軸方向に沿う姿勢で設けられている。磁性転動体32は、隔壁部材50の底壁部50cを介して駆動側回転部材20の磁石磁極部22aと軸方向に対向する。なお、駆動側回転部材20の磁石磁極部22aは、軸方向端面にも磁極が現れる。また、磁性転動体32は、隔壁部材50の周壁部50bの内周面に当接し、従動側回転部材30の軸受としても機能すべく周壁部50bの内周面を転動する。また、隔壁部材50の周壁部50bの外周側には、環状磁極部材40が配置されている。磁性転動体32は、隔壁部材50の周壁部50bを介して環状磁極部材40の磁石磁極部40aと径方向に対向する。このようなハイブリッド型の駆動伝達装置10における径方向及び軸方向の磁路上の隙間についても、従動側回転部材30の磁性転動体32と隔壁部材50との間の隙間分を省略でき、駆動側回転部材20から従動側回転部材30への駆動力の伝達効率は良好である。このように駆動伝達装置10を構成してもよい。
【0055】
図20(a)及び
図20(b)に示す駆動伝達装置10は、駆動側回転部材20と従動側回転部材30の磁性転動体32との対向関係が径方向対向型、従動側回転部材30の磁性転動体32と環状磁極部材40との対向関係が軸方向対向型で構成される。
図20に示す駆動伝達装置10についても
図19と同様、ラジアル型とアキシャル型とが混在するハイブリッド型である。磁性転動体32は、自身の中心軸が駆動伝達装置10の軸方向に沿う姿勢をなし、隔壁部材50の周壁部50b内に収容された駆動側回転部材20の磁石磁極部22aと周壁部50bを介して径方向に対向する。また、磁性転動体32は、隔壁部材50の周壁部50bの外周面に当接し、従動側回転部材30の軸受としても機能すべく周壁部50bの外周面を転動する。また、磁性転動体32の軸方向一方には、環状磁極部材40が配置されている。磁性転動体32は、環状磁極部材40の磁石磁極部40aと軸方向に対向する。なお、環状磁極部材40の磁石磁極部40aは、軸方向端面にも磁極が現れる。この駆動伝達装置10における径方向及び軸方向の磁路上の隙間についても、従動側回転部材30の磁性転動体32と隔壁部材50との間の隙間分を省略でき、駆動側回転部材20から従動側回転部材30への駆動力の伝達効率は良好である。このように駆動伝達装置10を構成してもよい。
【0056】
・
図1等のラジアル型の駆動伝達装置10では、
図21(a)に示すように、軸方向に沿う姿勢で周方向等間隔に配置される磁性転動体32の間隔を保持する保持部材35を用いてもよい。保持部材35は、樹脂材又は非磁性金属材にて円環状に作製されている。保持部材35は、周方向等間隔に磁性転動体32を回転可能に保持するための保持溝35aを有している。また、
図21(b)に示すように、相手側部材との接触部位である保持溝35aの内周面に被膜36aを設けてもよい。また、
図21(c)に示すように、相手側部材との接触部位である磁性転動体32自身の外周面に被膜36bを設けてもよい。被膜36a,36bは、上記被膜24と同様の材料で同様に機能する。
【0057】
また、
図10等のアキシャル型の駆動伝達装置10では、
図22(a)及び
図22(b)に示すように、径方向に沿う姿勢で周方向等間隔に配置される磁性転動体34の間隔を保持する保持部材37を用いてもよい。保持部材37は、上記と同様、樹脂材又は非磁性金属材にて円環状に作製され、周方向等間隔に磁性転動体34を回転可能に保持するための保持溝37aを有している。また、この保持部材37についても、
図22(c)に示すように、相手側部材との接触部位である保持溝37aの内周面に被膜38aを設けてもよい。また、
図22(d)に示すように、相手側部材との接触部位である磁性転動体34自身の外周面に被膜38bを設けてもよい。被膜38a,38bについても上記同様、被膜24と同様の材料で同様に機能する。
【0058】
また、
図23(a)及び
図23(b)に示すように、軸方向に沿う姿勢をなす磁性転動体32の間隔を保持する保持部材35を、磁性転動体32の軸方向両端にそれぞれ設けてもよい。またこの場合、磁性転動体32の両端部に軸受39を設け、磁性転動体32が軸受39を介して保持部材35に支持される構成としてもよい。このようにすれば、磁性転動体32の回転が円滑となり、駆動側回転部材20から従動側回転部材30への駆動力の伝達効率の向上が期待できる。
【0059】
・磁性転動体32,34を転動可能な外形形状である円柱状とし、従動側回転部材30に回転可能に支持して転動可能に構成したが、円柱状以外の形状としてもよく、例えば球体状、円錐状、円錐台状等の転動可能な外形形状としてもよい。
【0060】
・駆動側回転部材20,25,26の磁石磁極部22a,25a,26a、従動側回転部材30,33の磁性転動体32,34、各磁極部材40,42,44,45の磁石磁極部40a,42a,44a,45b及び突極磁極部45aの上記した数は一例である。これらの数を適宜変更してもよい。この場合、駆動伝達装置10に磁気減速を行わせる構成であったが、減速を行わせる範囲内での数の変更のみならず、増速又は等速伝達を行わせる数の変更を行ってもよい。
【0061】
・上記では、従動側回転部材30,33において磁性転動体32,34を回転可能に設け、駆動側回転部材20,25,26、環状磁極部材40,44,45、円盤磁極部材42、及び隔壁部材50,51に当接させて転動するように構成した。磁性転動体32,34を相手部材に対して常時当接させていなくてもよい。
【0062】
・磁性転動体32,34自身を転動可能に維持しつつ周回不能とし、上記各磁極部材40,42,44,45を従動側回転部材30,33の一部として回転可能に構成してもよい。このようにすれば、駆動側回転部材20,25,26の回転に基づいて上記各磁極部材40,42,44,45側を回転させることもできる。この場合においても、磁性転動体32,34を周囲の回転する部材に当接させることでこの当接部間の隙間を省略でき、また軸受として機能させることもできる。
【0063】
・駆動伝達装置10は、冷凍サイクル装置11の冷媒循環流路の冷媒の流量を調整する弁装置12に電動モータMの駆動力を伝達するものであった。駆動伝達装置10をこれ以外の装置に適用してもよい。適用する装置によっては、隔壁部材50,51を適宜省略してもよい。また、駆動源が電動モータM以外であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
11 冷凍サイクル装置、12 弁装置、20,25,26 駆動側回転部材(第1磁極部材)、22a,25a,26a 磁石磁極部(磁極部)、24,41,43 被膜、27,46 充填材、32,34 磁性転動体(磁性部材)、35,37 保持部材、36a,36b,38a,38b 被膜、39 軸受、40,44,45 環状磁極部材(第2磁極部材)、42 円盤磁極部材(第2磁極部材)、40a,42a,44a,45b 磁石磁極部(磁極部)、45a 突極磁極部(磁極部)、50,51 隔壁部材、A1 被水領域(第1領域)、A2 防水領域(第2領域)