(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162738
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】レンズシステムおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 15/20 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
G02B15/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067714
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000227364
【氏名又は名称】株式会社nittoh
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】望月 恵一
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087KA06
2H087MA12
2H087MA18
2H087MA19
2H087PA14
2H087PA15
2H087PA16
2H087PB20
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA17
2H087QA22
2H087QA26
2H087QA32
2H087QA42
2H087QA45
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA36
2H087RA44
2H087RA45
2H087SA57
2H087SA63
2H087SA64
2H087SA65
2H087SA66
2H087SA72
2H087SB01
2H087SB15
2H087SB24
2H087SB35
2H087SB43
(57)【要約】
【課題】コンパクトで明るく鮮明な像を撮影できるズームレンズを提供する。
【解決手段】レンズシステム10は、拡大側から順に配置された、ズーミングの際に固定された負の屈折力の第1のレンズ群と、ズーミングの際に移動する正の屈折力の第2のレンズ群と、拡大側に絞りを備え、ズーミングの際に移動する第3のレンズ群と、ズーミングの際に移動する第4のレンズ群と、ズーミングの際に移動する第5のレンズ群と、ズーミングの際に固定された正の屈折力の第6のレンズ群とから構成される。広角端においては、第1のレンズ群により負の屈折力の広角端の前群が構成され、第2~第6のレンズ群により正の屈折力の広角端の後群が構成され、望遠端においては、第1および第2のレンズ群により正の屈折力の望遠端の前群が構成され、第3~第5のレンズ群により負の屈折力の中間群が構成され、第6のレンズ群により正の屈折力の望遠端の後群が構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡大側から順に配置された、ズーミングの際に固定された負の屈折力の第1のレンズ群と、ズーミングの際に移動する正の屈折力の第2のレンズ群と、拡大側に絞りを備え、ズーミングの際に移動する第3のレンズ群と、ズーミングの際に移動する第4のレンズ群と、ズーミングの際に移動する第5のレンズ群と、ズーミングの際に固定された正の屈折力の第6のレンズ群とから構成され、
広角端においては、前記第1のレンズ群により負の屈折力の広角端の前群が構成され、前記第2のレンズ群、前記第3のレンズ群、前記第4のレンズ群、前記第5のレンズ群および前記第6のレンズ群により正の屈折力の広角端の後群が構成され、
望遠端においては、前記第1のレンズ群および前記第2のレンズ群により正の屈折力の望遠端の前群が構成され、前記第3のレンズ群、前記第4のレンズ群および前記第5のレンズ群により負の屈折力の中間群が構成され、前記第6のレンズ群により正の屈折力の望遠端の後群が構成される、レンズシステム。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1のレンズ群の最も縮小側のレンズの縮小側の面と前記第2のレンズ群の最も拡大側のレンズの拡大側の面との広角端における距離Dg12wおよび望遠端における距離Dg12tと、
前記第2のレンズ群の最も縮小側のレンズの縮小側の面と前記第3のレンズ群の最も拡大側のレンズの拡大側の面との広角端における距離Dg23wおよび望遠端における距離Dg23tと、
前記第3のレンズ群の最も縮小側のレンズの縮小側の面と前記第4のレンズ群の最も拡大側のレンズの拡大側の面との広角端における距離Dg34wと、
前記第4のレンズ群の最も縮小側のレンズの縮小側の面と前記第5のレンズ群の最も拡大側のレンズの拡大側の面との広角端における距離Dg45wと、
前記第5のレンズ群の最も縮小側のレンズの縮小側の面と前記第6のレンズ群の最も拡大側のレンズの拡大側の面との広角端における距離Dg56wおよび望遠端における距離Dg56tと、
前記第1のレンズ群の最も縮小側のレンズの厚みLtg1rと、
前記第2のレンズ群の最も拡大側のレンズの厚みLtg2fと、
前記第2のレンズ群の最も縮小側のレンズの厚みLtg2rと、
前記第3のレンズ群の最も拡大側のレンズの厚みLtg3fと、
前記第3のレンズ群の最も縮小側のレンズの厚みLtg3rと、
前記第4のレンズ群の最も拡大側のレンズの厚みLtg4fと、
前記第4のレンズ群の最も縮小側のレンズの厚みLtg4rと、
前記第5のレンズ群の最も拡大側のレンズの厚みLtg5fと、
前記第5のレンズ群の最も縮小側のレンズの厚みLtg5rと、
前記第6のレンズ群の最も拡大側のレンズの厚みLtg6fとが以下の条件を満たす、レンズシステム。
2.5<Dg12w/((Ltg1r+Ltg2f)/2)<15
0<Dg12t/((Ltg1r+Ltg2f)/2)<1.5
0<Dg23w/((Ltg2r+Ltg3f)/2)<1.5
2.5<Dg23t/((Ltg2r+Ltg3f)/2)<15
0<Dg34w/((Ltg3r+Ltg4f)/2)<1.5
0<Dg45w/((Ltg4r+Ltg5f)/2)<1.5
0<Dg56w/((Ltg5r+Ltg6f)/2)<1.5
2.5<Dg56t/((Ltg5r+Ltg6f)/2)<15
ただし、レンズ厚みは接合レンズの厚みを含む。
【請求項3】
請求項1または2において、
望遠端においては、前記第3のレンズ群および前記第4のレンズ群により第1の中間群が構成され、前記第5のレンズ群により第2の中間群が構成される、レンズシステム。
【請求項4】
請求項2において、
前記第3のレンズ群の最も縮小側のレンズの縮小側の面と前記第4のレンズ群の最も拡大側のレンズの拡大側の面との望遠端における距離Dg34tと、
前記第4のレンズ群の最も縮小側のレンズの縮小側の面と前記第5のレンズ群の最も拡大側のレンズの拡大側の面との望遠端における距離Dg45tとが以下の条件を満たす、レンズシステム。
0<Dg34t/((Ltg3r+Ltg4f)/2)<1.5
1.0<Dg45t/((Ltg4r+Ltg5f)/2)<2.5
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
ズーミングの際の前記第2のレンズ群の移動量MDg2と前記第2のレンズ群の屈折力fg2とが以下の条件を満たす、レンズシステム。
1.2<|MDg2|/fg2<1.6
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、
ズーミングの際の前記第2のレンズ群の移動量MDg2、前記第3のレンズ群の移動量MDg3および前記第5のレンズ群の移動量MDg5が以下の条件を満たす、レンズシステム。
1.3<MDg5/(MDg2―MDg3)<2.8
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記第2のレンズ群の焦点距離fg2と、前記第3のレンズ群の焦点距離fg3と、前記第4のレンズ群の焦点距離fg4と、前記第5のレンズ群の焦点距離fg5と、広角端における前記第3のレンズ群、前記第4のレンズ群および前記第5のレンズ群の合成焦点距離fg345w、望遠端における前記第3のレンズ群、前記第4のレンズ群および前記第5のレンズ群の合成焦点距離fg345tとが以下の条件を満たす、レンズシステム。
0.02<|fg2/fg3|<0.5
0.02<|fg2/fg4|<0.5
0.02<|fg2/fg5|<0.5
0.5<|fg2/fg345w|<0.8
0.5<|fg2/fg345t|<0.8
【請求項8】
請求項8において、
前記第2のレンズ群の焦点距離fg2と、前記第3のレンズ群の焦点距離fg3と、前記第4のレンズ群の焦点距離fg4と、前記第5のレンズ群の焦点距離fg5とが以下の条件を満たす、レンズシステム。
|fg2|<|fg3|<|fg4|<|fg5|
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかにおいて、
前記第1のレンズ群は、拡大側から順に配置された、フォーカシングの際に固定された負の屈折力の第1のサブレンズ群と、フォーカシングの際に移動する負の屈折力の第2のサブレンズ群と、フォーカシングの際に移動する正の屈折力の第3のサブレンズ群とを含む、レンズシステム。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかにおいて、
広角端における前記絞りの直径dswと望遠端における前記絞りの直径dstとが以下の条件を満たす、レンズシステム。
0.5<dsw/dst<0.8
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかにおいて、
当該レンズシステムの全長Laと、最も拡大側のレンズの有効径dL11とが以下の条件を満たす、レンズシステム。
2.0<La/dL11<3.5
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載のレンズシステムと、
前記縮小側の共役面に配置された画像形成デバイスとを有するプロジェクタ。
【請求項13】
請求項1ないし11のいずれかに記載のレンズシステムと、
前記縮小側の共役面に配置された撮像素子とを有する撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズシステムおよびそれを有する撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レンズ系全体の小型化を図りつつ、ズーミングに伴う諸収差を良好に補正し、画面全体にわたり良好なる光学性能を有した広画角でバックフォーカスの長い液晶プロジェクター用に好適なズームレンズを得ることが記載されている。このズームレンズは、スクリーン側より液晶パネル側へ順に、変倍のためには不動で負の屈折力の第1レンズ群、正の屈折力の第2レンズ群、負の屈折力の第3レンズ群、負もしくは正の屈折力の第4レンズ群、負の屈折力の第5レンズ群、変倍のためには不動で正の屈折力の第6レンズ群を有し、第1レンズ群の焦点距離と、空気換算バックフォーカスと、広角端における全系の焦点距離とが所定の条件を満足することが記載されている。
【0003】
特許文献2には、小型軽量で、F値が小さい(明るい)広角ズームレンズ、及びそれを有する撮像装置を提供することが記載されている。このズームレンズは、物体側から像側へ順に、負の屈折力を有する第1レンズ群、正の屈折力を有する第2レンズ群、負の屈折力を有する第3レンズ群、正の屈折力を有する第4レンズ群、負の屈折力を有する第5レンズ群、正の屈折力を有する第6レンズ群を有し、ズーミングに際して、第1、2、3、4、5、6レンズ群のうち隣接するレンズ群の間隔が変化するように構成されており、ズーミングに際して第1レンズ群はズーミングのためには移動せず、第1レンズ群は最も物体側に負レンズを有し、第2レンズ群の広角端と望遠端の光軸方向の位置差と、第4レンズ群の広角端と望遠端の光軸方向の位置差とが所定の条件を満足することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-62226号公報
【特許文献2】特開2017-78771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
軽量化するために小型で、かつ、全変倍域において高精度な画像を撮像または投影できるレンズシステムが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、拡大側から順に配置された、ズーミングの際に固定された負の屈折力の第1のレンズ群と、ズーミングの際に移動する正の屈折力の第2のレンズ群と、拡大側に絞りを備え、ズーミングの際に移動する第3のレンズ群と、ズーミングの際に移動する第4のレンズ群と、ズーミングの際に移動する第5のレンズ群と、ズーミングの際に固定された正の屈折力の第6のレンズ群とから構成されるレンズシステムである。このレンズシステムでは、広角端においては、第1のレンズ群により負の屈折力の広角端の前群が構成され、第2のレンズ群、第3のレンズ群、第4のレンズ群、第5のレンズ群および第6のレンズ群により正の屈折力の広角端の後群が構成される。望遠端においては、第1のレンズ群および第2のレンズ群により正の屈折力の望遠端の前群が構成され、第3のレンズ群、第4のレンズ群および第5のレンズ群により負の屈折力の中間群が構成され、第6のレンズ群により正の屈折力の望遠端の後群が構成される。
【0007】
このレンズシステムは6群のレンズ群を備え、広角端においては、第2、第3、第4、第5および第6のレンズ群により正の屈折力の後群を構成し、第1のレンズ群により負の屈折力の前群を構成する。したがって、全体として、拡大側から負-正の2群のレトロフォーカスタイプとなり、画角の大きなレンズシステムを提供できる。さらに、光束の径の変動が小さい後群を、第2から第6の5つのレンズ群を1つのレンズ群としてみなせる程度に接近させて配置することにより、それらのレンズ群の間の空気間隔を空気レンズとして作用させることができる。したがって、後群の収差補正能力を大幅に向上でき、広角な前群により発生する収差を良好に補正でき、コンパクトな構成で、広角で、高精度な画像を撮像または投影できるレンズシステムを提供できる。
【0008】
一方、望遠端においては、第1および第2のレンズ群で正の前群を構成し、第3から第5のレンズ群により負の中間群を構成し、さらに、第6のレンズ群により正の後群を構成することにより、全体として、拡大側から正-負-正の3群の構成とする。このタイプは、拡大側が正-負の望遠に適してテレフォト型となり、縮小側が負-正のレトロフォーカス型となり、焦点距離に対してバックフォーカスが長くなるテレフォト型にパワー配置が変わることによる性能の変動を、レトロフォーカス性を強くすることで、絞りより拡大側で変動したバックフォーカス等の光学性能を適切に補正できる。さらに、第1および第2のレンズ群で1つのレンズ群としてみなせる程度に接近させて配置することにより、それらのレンズ群の間の空気間隔を空気レンズとして作用させることができ、前群の収差補正能力を向上できる。それと共に、第2のレンズ群を第1のレンズ群に密接する程度まで移動することにより、第3から第5のレンズ群からなる中間群を展開できる距離を確保できる。このため、望遠端においても、コンパクトな構成で、高精度な画像を撮像または投影できるレンズシステムを提供できる。
【0009】
本発明の他の態様の1つは、このレンズシステムと、縮小側の共役面に配置された画像形成デバイスとを有するプロジェクタである。また、本発明のさらに異なる他の態様の1つは、このレンズシステムと、縮小側の共役面に配置された撮像素子とを有する撮像装置である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】レンズシステムおよび撮像装置の概略構成を示す図。
【
図4】広角端および望遠端における諸数値を示す図。
【
図5】広角端および望遠端における諸収差を示す図。
【
図8】異なるレンズシステムおよびカメラの概略構成を示す図。
【
図11】広角端および望遠端における諸数値を示す図。
【
図12】広角端および望遠端における諸収差を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して、さらに本発明について説明する。
図1に、本発明の一実施例のレンズシステムを含む装置を示している。装置の一例は撮像装置(撮影装置、カメラ)1であり、レンズシステム10と、縮小側2に配置された撮像装置5とを有する。撮像装置1は、レンズシステム10と、その縮小側(像面側)2の共役面に配置された撮像素子(CCD、CMOS)5とを有し、拡大側(物体側)3から入射された光線を撮像素子5に結像する。レンズシステム10を有する他の装置の一例はプロジェクタであり、縮小側2の共役面に配置された画像形成デバイス(光変調器、ライトバルブ)8、例えば、液晶パネル、デジタルミラーデバイスを有する。プロジェクタは、画像形成デバイス8の表示面に形成された画像を、拡大側(投射側)3のスクリーン、壁(不図示)などに投影する。撮像装置用のレンズシステムであってもプロジェクタ用のレンズシステムであっても、レンズシステム10の構成および機能としては共通するので、以降においては、撮像装置1および撮像用(撮影用)のレンズシステム10を例にさらに説明する。
【0012】
図1(a)は、広角端におけるレンズシステム10のレンズ配置を示し、
図1(b)は、望遠端におけるレンズシステム10のレンズ配置を示している。この撮像装置(カメラ)1は、光学系(撮像光学系、結像光学系、撮影系、レンズシステム)10と、光学系10の縮小側(像面側)2に配置された撮像素子5とを有する。光学系10は、ズームレンズシステム10であって、6群21枚構成のレンズシステムである。具体的にはレンズシステム10は、拡大側(物体側)3から順番に配置された、ズーミングの際に固定された(動かない)負の屈折力の第1のレンズ群G1と、ズーミングの際に移動する正の屈折力の第2のレンズ群G2と、拡大側3に絞りstを備え、ズーミングの際に移動する第3のレンズ群G3と、ズーミングの際に移動する第4のレンズ群G4と、ズーミングの際に移動する第5のレンズ群G5と、ズーミングの際に固定された(動かない)正の屈折力の第6のレンズ群G6とを含む。
【0013】
ズーミングの際に移動するレンズ群G2~G5は、
図1(a)に示す広角端においては、第1のレンズ群G1により広角端の前群Gwfが構成され、第2のレンズ群G2、第3のレンズ群G3、第4のレンズ群G4、第5のレンズ群G5および第6のレンズ群G6により正の屈折力の広角端の後群Gweが構成されるように移動する。またレンズ群G2~G5は、
図1(b)に示す望遠端においては、第1のレンズ群G1および第2のレンズ群G2により正の屈折力の望遠端の前群Gtfが構成され、第3のレンズ群G3、第4のレンズ群G4および第5のレンズ群G5により負の屈折力の中間群Gtmが構成され、第6のレンズ群G6により正の屈折力の望遠端の後群Gteが構成されるように移動する。
【0014】
第1のレンズ群G1は、拡大側3から順に配置された、フォーカシングの際に固定された(移動しない)負の屈折力の第1のサブレンズ群G11と、フォーカシングの際に移動する負の屈折力の第2のサブレンズ群G12と、フォーカシングの際に移動する正の屈折力の第3のサブレンズ群G13とを含む。したがって、このレンズシステム10の最も拡大側3のレンズL11と最も縮小側2のレンズL61とは、ズーミングおよびフォーカシングの際に動かない。このため、最も拡大側3のレンズL11の拡大側3の面S1から最も縮小側2のレンズL61の縮小側2の面S37のレンズシステム10の全長Laは固定され、長さが一定のレンズシステム10となっている。
【0015】
図2に、レンズシステム10を構成する各レンズのデータを示している。曲率半径rは拡大側3から順に並んだ各レンズの各面Sの曲率半径(mm)、面間隔Dは各レンズ面の間の距離(mm)、有効径dは各レンズ面の有効径(直径、mm)、屈折率(n)は各レンズの屈折率(d線)、アッベ数(ν)は各レンズのアッベ数(d線)を示している。以下においても同様である。
【0016】
図3には、レンズシステム10に含まれる非球面の係数を示す。この例では、第1のレンズ群G1の最も拡大側3の面S1、第6のレンズ群G6の最も縮小側の面S37が非球面となっている。非球面は、Xを光軸方向の座標、Yを光軸と垂直方向の座標、光の進行方向を正、rを近軸曲率半径とすると、
図3に示した係数K、A、B、CおよびDを用いて次式(X)で表わされる。以降の実施形態においても同様である。なお、「en」は、「10のn乗」を意味する。
X=(1/r)Y
2/[1+{1-(1+K)(1/r)
2Y
2}
1/2]
+AY
4+BY
6+CY
8+DY
10・・・(X)
【0017】
図4に、レンズシステム10の広角端(Wide)および望遠端(Tele)のそれぞれにおける物体までの距離が無限遠(INF)と最小距離(413mm)のときの可変間隔D4、D9、D13、D20、D26、D32およびD35、および絞りstの径dsの変化を示している。
【0018】
レンズシステム10においては、
図1(a)に示す広角端において、第1のレンズ群G1により広角端の前群Gwfが構成され、第2のレンズ群G2、第3のレンズ群G3、第4のレンズ群G4、第5のレンズ群G5および第6のレンズ群G6により正の屈折力の広角端の後群Gweが構成される。
図1(b)に示す望遠端においては、第1のレンズ群G1および第2のレンズ群G2により正の屈折力の望遠端の前群Gtfが構成され、第3のレンズ群G3、第4のレンズ群G4および第5のレンズ群G5により負の屈折力の中間群Gtmが構成され、第6のレンズ群G6により正の屈折力の望遠端の後群Gteが構成されるように移動する。
【0019】
したがって、第1のレンズ群G1の最も縮小側2のレンズL17の縮小側2の面S13と第2のレンズ群G2の最も拡大側3のレンズL21の拡大側3の面S14との広角端3における距離Dg12w(距離D13の広角端における値)および望遠端における距離Dg12t(距離D13の望遠端における値)と、
第2のレンズ群G2の最も縮小側2のレンズL24の縮小側2の面S20と第3のレンズ群G3の最も拡大側3のレンズL31の拡大側3の面S22との広角端における距離Dg23w(距離D20と絞りstの距離を含めた広角端における値)および望遠端における距離Dg23t(距離D20と絞りstの距離を含めた望遠端における値)と、
第3のレンズ群G3の最も縮小側2のレンズ(本例においては接合レンズ)B31の縮小側2の面S26と第4のレンズ群G4の最も拡大側3のレンズ(本例においては接合レンズ)B41の拡大側3の面S27との広角端における距離Dg34w(距離D26の広角端における値)と、
第4のレンズ群G4の最も縮小側2のレンズ(本例においては接合レンズ)B42の縮小側2の面S32と第5のレンズ群G5の最も拡大側3のレンズ(本例においては接合レンズ)B51の拡大側3の面S33との広角端における距離Dg45w(距離D32の広角端における値)と、
第5のレンズ群G5の最も縮小側2のレンズ(本例においては接合レンズ)B51の縮小側2の面S35と第6のレンズ群G6の最も拡大側3のレンズL61の拡大側3の面S36との広角端における距離Dg56w(距離D35の広角端における値)および望遠端における距離Dg56t(距離D35の望遠端における値)とに着目すると、それらの距離とそれらの距離の前後(拡大側および縮小側)のレンズの厚みとの間で以下の条件(1)~(8)を満たしてもよい。
2.5<Dg12w/((Ltg1r+Ltg2f)/2)<15 ・・・(1)
0<Dg12t/((Ltg1r+Ltg2f)/2)<1.5・・・(2)
0<Dg23w/((Ltg2r+Ltg3f)/2)<1.5・・・(3)
2.5<Dg23t/((Ltg2r+Ltg3f)/2)<15 ・・・(4)
0<Dg34w/((Ltg3r+Ltg4f)/2)<1.5・・・(5)
0<Dg45w/((Ltg4r+Ltg5f)/2)<1.5・・・(6)
0<Dg56w/((Ltg5r+Ltg6f)/2)<1.5・・・(7)
2.5<Dg56t/((Ltg5r+Ltg6f)/2)<15 ・・・(8)
【0020】
ただし、レンズの厚みは接合レンズの厚みを含む。第1のレンズ群G1の最も縮小側2のレンズ厚みLtg1rはレンズL17の厚みD12に対応し、第2のレンズ群G2の最も拡大側3のレンズの厚みLtg2fはレンズL21の厚みD14に対応し、第2のレンズ群G2の最も縮小側2のレンズの厚みLtg2rはレンズL24の厚みD19に対応し、第3のレンズ群G3の最も拡大側3のレンズの厚みLtg3fはレンズL31の厚みD22に対応し、第3のレンズ群G3の最も縮小側2のレンズの厚みLtg3rは接合レンズB31の厚み(D24+D25)に対応し、第4のレンズ群G4の最も拡大側3のレンズの厚みLtg4fは接合レンズB41の厚み(D27+D28)に対応し、第4のレンズ群G4の最も縮小側2のレンズの厚みLtg4rは接合レンズB42の厚み(D30+D31)に対応し、第5のレンズ群G5の最も拡大側3のレンズの厚みLtg5fは接合レンズB51の厚み(D33+D34)に対応し、第5のレンズ群G5の最も縮小側2のレンズの厚みLtg5rは接合レンズB51の厚み(D33+D34)に対応し、第6のレンズ群G6の最も拡大側3のレンズの厚みLtg6fはレンズL61の厚みD36に対応する。
【0021】
隣接するレンズ群と一体で1つのレンズ群として機能する場合は、隣接するレンズ群同士で隣接するレンズとの間の距離Dgが光束の径が大きく変化せずに空気レンズとして機能する程度、すなわち、距離Dgが前後のレンズの厚みの平均の1.5倍以下であってもよい。一方、隣接するレンズ群が異なるレンズ群として機能する場合は、隣接するレンズ群同士で隣接するレンズとの間の距離Dgが前後のレンズの厚みの平均の2.5倍以上に離れていてもよい。
【0022】
このレンズシステム10は光軸15に沿って配置された負-正-負-負-負-正のパワー配置の6群のレンズ群G1~G6を備え、広角端においては、第2、第3、第4、第5および第6のレンズ群G2~G6により正の屈折力の後群Gweを構成し、第1のレンズ群G1により負の屈折力の前群Gwfを構成する。したがって、全体として、拡大側3から負-正の2群のレトロフォーカスタイプとなり、広角端において画角の大きなレンズシステムを提供できる。さらに、光束の径の変動が小さい後群Gweを第2から第6のレンズ群G2~G6、すなわち、5つのレンズ群を1つのレンズ群としてみなせる程度に接近させて配置することにより、それらのレンズ群の間の空気間隔を空気レンズとして作用させることができる。したがって、後群Gweの収差補正能力を大幅に向上でき、広角な前群Gwfにより発生する収差を良好に補正でき、コンパクトな構成で、広角で、高精度な画像を撮像(撮影)または投影できるレンズシステム10を提供できる。
【0023】
一方、望遠端においては、第1のレンズ群G1および第2のレンズ群G2で正の前群Gtfを構成し、第3のレンズ群G3、第4のレンズ群G4および第5のレンズ群G5により負の中間群Gtmを構成し、さらに、第6のレンズ群G6により正の後群Gteを構成する。この構成に変化(変位)することにより、レンズシステム10は望遠端において、全体として、拡大側3から正-負-正の3群となり、拡大側が正-負の望遠に適してテレフォト型、縮小側2が負-正のレトロフォーカス型となる。したがって、拡大側3は望遠端に適した構成となり、その一方、焦点距離に対してバックフォーカスが長くなるテレフォト型にパワー配置が変わることによる性能の変動を、縮小側2のレトロフォーカス性を強くすることで、絞りより拡大側で変動したバックフォーカス等の光学性能を適切に補正できる。
【0024】
さらに、第1のレンズ群G1および第2のレンズ群G2で1つのレンズ群Gtfとしてみなせる程度に接近させて配置することにより、それらのレンズ群の間の空気間隔を空気レンズとして作用させることができ、前群の収差補正能力を向上できる。それと共に、第2のレンズ群G2を第1のレンズ群G1に密接する程度まで移動することにより、第3から第5のレンズ群からなる中間群Gtmを展開できる距離を確保できる。このため、望遠端においても、コンパクトな構成で、高精度な画像を撮像または投影できるレンズシステムを提供できる。
【0025】
図1に示すように、レンズシステム10においては、望遠端において、第3のレンズ群G3および第4のレンズ群G4により第1の中間群Gtm1が構成され、第5のレンズ群G5により第2の中間群Gtm2が構成されてもよい。望遠端において第2のレンズ群G2が第1のレンズ群G1とともに前群Gtfを構成する。このため、小型のレンズシステム10においても前群Gtfと後群Gteとの間に比較的広い間隔が確保できる。したがって、中間レンズ群Gtmの中で第5のレンズ群G5を他のレンズ群に対して距離を開けて配置することが可能であり、中間レンズ群Gtmにおける収差補正能力をさらに高めることができる。
【0026】
したがって、第3のレンズ群G3の最も縮小側2のレンズB31の縮小側2の面S26と第4のレンズ群G4の最も拡大側3のレンズB41の拡大側3の面S7との望遠端における距離Dg34t(距離D26の望遠端における値)と、第4のレンズ群G4の最も縮小側2のレンズB42の縮小側2の面S32と第5のレンズ群G5の最も拡大側3のレンズB51の拡大側3の面S33との望遠端における距離Dg45t(距離D32の望遠端における値)とが以下の条件(9)および(10)を満たしてもよい。
0<Dg34t/((Ltg3r+Ltg4f)/2)<1.5 ・・・(9)
1.0<Dg45t/((Ltg4r+Ltg5f)/2)<2.5・・・(10)
【0027】
条件(1)、(4)、(8)の下限は2.0であってもよく、条件(10)の下限が2.0、上限が3.0または5.0であってもよく、このレンズシステム10は、望遠端において、正の前群Gtf、負の第1の中間群Gtm1、負の第2の中間群Gtm2および正の後群Gteにより構成されるものであってもよい。
【0028】
広角端から望遠端にズーミングする際に第2のレンズ群G2は拡大側3へ移動するが、その移動量MDg2と第2のレンズ群の屈折力fg2とは以下の条件(11)を満たしてもよい。
1.2<|MDg2|/fg2<1.6・・・(11)
第2のレンズ群G2のパワーに対して移動距離が短すぎると第3のレンズ群G3、第4のレンズ群G4および第5のレンズ群G5からなる中間群Gtmが十分な収差補正を行うために展開する距離が確保できなくなり、移動距離が大きすぎるとコンパクトなレンズシステム10を実現することが難しくなる。
【0029】
また、ズーミングの際の第2のレンズ群G2の移動量MDg2、第3のレンズ群G3の移動量MDg3および第5のレンズ群G5の移動量MDg5が以下の条件(12)を満たしてもよい。
1.3<MDg5/(MDg2-MDg3)<2.8・・・(12)
第2のレンズ群G2の縮小側(像面側)2の移動群である中間群Gtmは、複数の負群を含み、全て負群は隣接して配置され、変倍(ズーミング)の際、正の変倍群である第2のレンズ群G2で発生した像面湾曲を補正する。中間群Gtmを構成するすべてのレンズ群が拡大側(物体側)3へ移動することで、空気間隔を融通できるため光学全長を短くできる。また、望遠端においてテレフォト型を構成する前群Gtfと中間群Gtmとの距離に対してレトロフォーカス型を構成する中間群Gtmと後群Gteとの距離を大きく確保することができ、拡大側3のテレフォト型の構成によるバックフォーカスの変動を、縮小側2のレトロフォーカス型により、より効率よく補正できる。
【0030】
第2のレンズ群G2の焦点距離fg2と、第3のレンズ群G3の焦点距離fg3と、第4のレンズ群G4の焦点距離fg4と、第5のレンズ群G5の焦点距離fg5と、広角端における第3のレンズ群G3、第4のレンズ群G4および第5のレンズ群G5の合成焦点距離fg345w、望遠端における第3のレンズ群G3、第4のレンズ群G4および第5のレンズ群G5の合成焦点距離fg345t(中間群Gtmの合成焦点距離)とが以下の条件(13)~(17)を満たしてもよい。
0.02<|fg2/fg3|<0.5 ・・・(13)
0.02<|fg2/fg4|<0.5 ・・・(14)
0.02<|fg2/fg5|<0.5 ・・・(15)
0.5<|fg2/fg345w|<0.8・・・(16)
0.5<|fg2/fg345t|<0.8・・・(17)
中間群Gtmを構成するレンズ群G3、G4およびG5は、それぞれのレンズ群のパワーが第2のレンズ群G2のパワーに対して十分に小さく、一方、合成焦点距離は第2のレンズ群G2に十分に近くてもよい。第2のレンズ群G2のパワーに対して、広角端および望遠端の両方において、中間群Gtmのパワーをある程度確保することにより、テレフォトおよびレトロフォーカスのいずれの構成においても収差補正能力を確保できる。さらに、中間群Gtmを構成する各レンズ群G3、G4およびG5のパワーを十分に小さくすることにより中間群Gtmとして展開するときの位置の差による収差補正能力への効きを抑制でき、コンパクトで収差補正能力が安定したレンズシステム10を提供できる。
【0031】
第2のレンズ群G2の焦点距離fg2と、第3のレンズ群G3の焦点距離fg3と、第4のレンズ群G4の焦点距離fg4と、第5のレンズ群G5の焦点距離fg5とが以下の条件(18)を満たしてもよい。
|fg2|<|fg3|<|fg4|<|fg5|・・・(18)
特に、撮像用のレンズシステム10においては、結像側となる縮小側2に向けてパワーを小さくすることにより、より微細に収差を補正しやすくなり、鮮明な像を得ることができるレンズシステム10を提供できる。
【0032】
このレンズシステム10の最も拡大側3の第1のレンズ群G1は、全体として負のパワーでズーミングの際に動かず、フォーカシングの際は3群構成で機能し、拡大側3から順に配置された、フォーカシングの際も動かない最も拡大側3の固定された負の屈折力の第1のサブレンズ群G11と、フォーカシングの際に移動する負の屈折力の第2のサブレンズ群G12と、フォーカシングの際に移動する正の屈折力の第3のサブレンズ群G13とを含む。
図4に示すように、物体までの距離が最近接(413mm)から無限大にフォーカシングする際(合焦時)に、負のパワーのサブレンズ群G12が拡大側3へ移動し、正のパワーのサブレンズ群G13が縮小側2へ移動する。フォーカシングの際に、異なる符号のパワーのレンズ群G12およびG13を逆側に動かすことで、移動の効果を高め移動量を減らすことができる。また、異なる符号のレンズ群G12およびG13を動かすことにより、これら2つの群全体としてパワーを小さく抑えることができる。
【0033】
さらに、合焦時にパワーの符号の異なる2つのレンズ群G12およびG13を異なる方向に移動することにより、それらによる合成焦点距離の変動も小さく抑えることができ、フォーカスブリージングを小さくすることができる。合焦時にパワーの符号の異なる2つのレンズ群G12およびG13を異なる方向に移動するため、それぞれのレンズ群G12およびG13はフォーカシング用のレンズ群としてはパワーを大きく設定でき、それらの移動距離が少なくても収差を良く補正することができる。このため、レンズシステム10全体の小型化に寄与する。本例においては、拡大側3から負のレンズ群G12および正のレンズ群G13の配置を採用しており、特に、球面収差を良好に補正することができる。
【0034】
一方、広角化のために最もパワーが要求される最も拡大側3に配置された第1のサブレンズ群G11はフォーカシングの際にも移動させないことにより、パワーの大きな変動と、収差の大きな変動とを抑制し、フォーカシングの際の収差変動を補正できるようにしている。また、ズーミングの際に移動せず、最も拡大側3のレンズ群G1にフォーカシングの際に移動するサブレンズ群G12およびG13を配置することにより、
図1に示すように、フォーカシングの駆動機構51と、ズーミングの駆動機構52とを分離して配置できる。このため、レンズシステム10の全体の構成を簡易化でき、レンズシステム10全体の小型化に寄与する。
【0035】
第1のサブレンズ群G11の焦点距離f11と、第2のサブレンズ群G12の焦点距離f12と、第3のサブレンズ群G13の焦点距離f13とは、以下の条件(19)および(20)を満たしてもよい。
0.6<|f12|/|f13|<0.9・・・(19)
0.1<|f11|/(|f12|+|f13|)<0.25・・・(20)
フォーカシングの際に移動するレンズ群G12およびG13のパワーは近くてもよく、その一方、全体が負の屈折力の第1のレンズ群G1としての性能を発揮するために負のレンズ群G12のパワーが正の屈折力のレンズ群G13のパワーより大きくてもよい。さらに、フォーカシングの際に移動するレンズ群G12およびG13のパワーの平均に対して、広角端の機能を発揮する最も拡大側のレンズ群G11のパワーは十分に大きくてもよい。
【0036】
広角端における絞りstの直径dswと望遠端における絞りstの直径dstとが以下の条件(21)を満たしてもよい。
0.5<dsw/dst<0.8・・・(21)
このレンズシステム10において、広角端から望遠端への変倍時に、絞りstは第3のレンズ群G3とともに常に拡大側(物体側)3へ移動する。絞りstの位置を移動することで、中間群Gtmの移動群G3、G4およびG5の移動量を確保できる。また、第2のレンズ群G2の移動による光線の角度の変化に適切に対応可能となる。さらに、広角端から望遠端にズーミングする際に、絞りstが一時的にでも縮小側2へ移動せずに常に一方向(拡大側3)へ移動することで、レンズ群を動かすズーム機構52のメカ的構成を簡素化できる。
【0037】
さらに、条件(21)に示すように広角端から望遠端への変倍時に、絞りstは光軸15方向の位置(もしくは移動量)に応じて開口径dsが徐々に大きくなってもよい。望遠側での光線の取り込み量を増やすことで、変倍全範囲における明るさを一定にすることが可能となる。本例においては、絞りstの開口径dsをズーミングに応じて変える機構52sをズーム駆動機構52に含めており、ズーミングの際のレンズ群G2~G5の移動と同期して絞りstの開口径dsが制御される。
【0038】
この該レンズシステム10の全長Laと、最も拡大側3のレンズL11の有効径dL11とが以下の条件(22)を満たしてもよい。
2.0<La/dL11<3.5・・・(22)
最も拡大側3のレンズL11の拡大側3の面S1から最も縮小側2のレンズ(本例ではL61)の縮小側2の面S37までの距離(全長)Laが最も拡大側3で最も有効径が大きくなるレンズL11の有効径dL11の3倍以下というコンパクトな構成で、ズーム比が3倍程度あるいはそれ以上で鮮明な像が得られるズームレンズシステム10を提供できる。条件(22)の下限は2.5であってもよく、上限は3.0であってもよい。
【0039】
図1に示したレンズシステム10においては、さらに具体的には、最も拡大側3に配置された全体が負のパワーの第1のレンズ群G1は、拡大側3から順番に、負のパワーの第1のサブレンズ群G11、負のパワーの第2のサブレンズ群G12および正のパワーの第3のサブレンズ群G13により構成されている。第1のサブレンズ群G11は、拡大側3から順番に配置された負-負のレンズの2枚構成であり、拡大側3に凸の負のメニスカスレンズL11およびL12を含む。第2のサブレンズ群G12は、拡大側3から順番に配置された負-正-負のレンズの3枚構成であり、拡大側3に凸の負のメニスカスレンズL13と、両凸の正レンズL14と、縮小側2に凸の負のメニスカスレンズL15とを含む。拡大側3の2枚のレンズL13およびL14により両凸型の接合レンズB11が構成されている。第3のサブレンズ群G13は、拡大側3から順番に配置された正-負のレンズの2枚構成であり、両凸の正レンズL16と、拡大側3に凸の負のメニスカスレンズL17とを含む。第2のサブレンズ群G12は無限遠から最近接に向けてフォーカシングする際に拡大側3に移動し、第3のサブレンズ群G13は縮小側2に移動する。最も拡大側3のレンズL11の拡大側の面S1は非球面である。
【0040】
全体が正のパワーの第2のレンズ群G2は、拡大側3から順番に配置された正-負-正-正のレンズの4枚構成であり、両凸の正レンズL21と、両凹の負レンズL22と、両凸の正レンズL23と、拡大側3に凸の正のメニスカスレンズL24とを含む。2枚のレンズL22およびL23により負のメニスカス型の接合レンズB21が構成されている。
【0041】
全体が負のパワーの第3のレンズ群G3は、拡大側3に絞りstを含み、順番に配置された負-正-負のレンズの3枚構成であり、両凹の負レンズL31と、縮小側2に凸の正のメニスカスレンズL32と、両凹の負レンズL33とを含む。2枚のレンズL32およびL33により両凹型の接合レンズB31が構成されている。
【0042】
全体が負のパワーの第4のレンズ群G4は、拡大側3から順番に配置された負-正-正-負のレンズの4枚構成であり、両凹の負レンズL41と、両凸の正レンズL42およびL43と、縮小側2に凸の負のメニスカスレンズL44とを含む。レンズL41およびL42により負-正の縮小側2に凸の正のメニスカス型の接合レンズB41が構成され、レンズL43およびL44により正-負の両凸型の接合レンズB42が構成されている。これらの接合レンズB41およびB42は構成が対称であり、色収差と球面収差の補正に有効である。
【0043】
全体が負のパワーの第5のレンズ群G5は、拡大側3から順番に配置された正-負のレンズの2枚構成であり、両凸の正レンズL51と、両凹の負レンズL52とを含む。これらのレンズL51およびL52により拡大側3に凸の負のメニスカス型の接合レンズB51が構成されている。
【0044】
全体が正のパワーの第6のレンズ群G6は、正のレンズの一枚構成であり、縮小側2に凸の正のメニスカスレンズL61を含む。
【0045】
このレンズシステム10の諸数値および各条件の値は以下の通りである。なお、長さおよび径の単位はmmである。
F値: 広角端(無限遠)2.8、 望遠端(無限遠)2.8
画角: 広角端:84.14、 望遠端:31.40
レンズシステム10の広角端の焦点距離fw: 24.03
レンズシステム10の望遠端の焦点距離ft: 74.99
変倍比:3.12
レンズシステム10の全長(La):251.8
第1のレンズ群G1(前群Gwf)の焦点距離fg1:-44.72
第1のサブレンズ群G11の焦点距離f11:-57.97
第2のサブレンズ群G12の焦点距離f12:-151.30
第3のサブレンズ群G13の焦点距離f13:201.94
第2のレンズ群G2の焦点距離fg2:48.05
第3のレンズ群G3の焦点距離fg3:-147.91
第4のレンズ群G4の焦点距離fg4:-219.75
第5のレンズ群G5(中間群Gtm2)の焦点距離fg5:-1518.94
第6のレンズ群G6の焦点距離fg6:89.77
広角端の後群Gwe(G2-G6)の焦点距離:68.64
望遠端の前群Gtf(G1-G2)の焦点距離:43.65
望遠端の中間群Gtm(G3-G5)の焦点距離fg345t:-78.92
広角端のG3-G5の焦点距離fg345w:-78.65
望遠端の中間群Gtm1(G3-G4)の焦点距離:‐86.05
条件(1)(Dg12w/((Ltg1r+Ltg2f)/2))
広角端における(D13/(D12+D14)/2):12.47
条件(2)(Dg12t/((Ltg1r+Ltg2f)/2)
望遠端における(D13/(D12+D14)/2):0.72
条件(3)(Dg23w/((Ltg2r+Ltg3f)/2))
広角端における((D20+D21)/(D19+D22)/2):1.25
条件(4)(Dg23t/((Ltg2r+Ltg3f)/2))
望遠端における((D20+D21)/(D19+D22)/2):4.63
条件(5)(Dg34w/((Ltg3r+Ltg4f)/2))
広角端における(D26/(D24+D25+D27+D28)/2):0.68
条件(6)(Dg45w/((Ltg4r+Ltg5f)/2))
広角端における(D32/(D30+D31+D33+D34)/2):0.26
条件(7)(Dg56w/((Ltg5r+Ltg6f)/2))
広角端における(D35/(D33+D34+D36)/2):0.55
条件(8)(Dg56t/((Ltg5r+Ltg6f)/2))
望遠端における(D35/(D33+D34+D36)/2):7.35
条件(9)(Dg34t/((Ltg3r+Ltg4f)/2))
望遠端における(D26/(D24+D25+D27+D28)/2):0.32
条件(10)(Dg45t/((Ltg4r+Ltg5f)/2))
望遠端における(D32/(D30+D31+D33+D34)/2):1.30
条件(11)(|MDg2|/fg2)(ΔD13/fg2):1.42
条件(12)(MDg5/(MDg2-MDg3))(ΔD35/ΔD20):2.29
条件(13)(|fg2/fg3|):0.32
条件(14)(|fg2/fg4|):0.22
条件(15)(|fg2/fg5|):0.03
条件(16)(|fg2/fg345w|):0.61
条件(17)(|fg2/fg345t|):0.61
条件(18)(|fg2|<|fg3|<|fg4|<|fg5|):満足する
条件(19)(|f12|/|f13|):0.75
条件(20)(|f11|/(|f12|+|f13|)):0.16
条件(21)(dsw/dst):0.63
条件(22)(La/dL11):2.66
【0046】
さらに、
図5(a)に広角端における縦収差を示し、
図5(b)に望遠端における縦収差を示し、
図6に広角端における横収差を示し、
図7に望遠端における横収差を示している。球面収差は、波長656.2720nm(長破線)と、波長587.5620nm(短破線)と、波長546.0740nm(実線)と、波長486.1330nm(一点鎖線)と、波長435.8340nm(二点鎖線)とを示している。非点収差はタンジェンシャル光線Tとサジタル光線Sとを示している。また、横収差は、タンジェンシャル光線およびサジタル光線のそれぞれについて、上記と同じ波長について示している。
【0047】
これらに示すように、
図1に示したレンズシステム10は、条件(1)~(22)のすべてを満足しており、6群21枚がコンパクトに配置されたズームレンズシステムであり、ズーム比が3倍程度で、F値が望遠端および広角端でほぼ一定で明るく、鮮明な画像を撮像できるズームレンズシステムである。
【0048】
図8に、撮像装置1の異なる例を示している。この撮像装置1も、レンズシステム10と、縮小側2の共役面に配置された撮像素子5とを含む。撮像装置1は、さらに、レンズシステム10と、第1のレンズ群G1の第2のサブレンズ群G12および第3のサブレンズ群G13を動かしてフォーカシング(合焦)を行う機構51と、ズーミング(変倍)を行う機構52とを含む。ズーミングを行う機構52は絞りstの径dsを制御する機構52sを含む。
図1に示した例と同様に、レンズシステム10は共役面に配置された画像生成デバイス8の画像を投影するプロジェクタ用のレンズシステムであってもよい。
【0049】
図9に、レンズシステム10を構成する各レンズのデータを示している。
図10に、レンズシステム10に含まれる非球面の係数を示している。この例では、第1のレンズ群G1の最も拡大側3のレンズL11の拡大側3の面S1と、第6のレンズ群G6の縮小側2のレンズL61の縮小側2の面36が非球面となっている。
【0050】
図11に、レンズシステム10の広角端および望遠端における諸数値を示し、
図12に、レンズシステム10の球面収差、非点収差、歪曲収差を示し、
図13および
図14に、レンズシステム10の横収差を示している。
図12(a)および
図13は、広角端における諸収差を示し、
図12(b)および
図14は望遠端における諸収差を示している。
【0051】
このレンズシステム10も光軸15に沿って配置された負-正-負-負-負-正のパワー配置の6群21枚のレンズL11~L17、L21~L24、L31~L33、L41~L44、L51、L52およびL61を含む。レンズシステム10は
図1に示したレンズシステムと基本的な構成は共通している。すなわち、
図8(a)に示す広角端においては、第1のレンズ群G1により負の屈折力の広角端の前群Gwfが構成され、第2のレンズ群G2、第3のレンズ群G3、第4のレンズ群G4、第5のレンズ群G5および第6のレンズ群G6により正の屈折力の広角端の後群Gweが構成される。
図8(b)に示す望遠端においては、第1のレンズ群G1および第2のレンズ群G2により正の屈折力の望遠端の前群Gtfが構成され、第3のレンズ群G3、第4のレンズ群G4および第5のレンズ群G5により負の屈折力の中間群Gtmが構成され、第6のレンズ群G6により正の屈折力の望遠端の後群Gteが構成されるように移動する。
【0052】
したがって、レンズシステム10は、全体として、広角端においては、拡大側3から負-正の2群のレトロフォーカスタイプとなり、画角の大きなレンズシステムを提供できる。一方、望遠端においては、拡大側3から正-負-正の3群の配置となり、拡大側が正-負の望遠に適したテレフォト型、縮小側2が負-正のレトロフォーカス型となる。したがって、拡大側3は望遠端に適した構成となり、その一方、焦点距離に対してバックフォーカスが長くなるテレフォト型にパワー配置が変わることによる性能の変動を、縮小側2のレトロフォーカス性を強くすることで、絞りより拡大側で変動したバックフォーカス等の光学性能を適切に補正できる。
【0053】
このレンズシステム10においても、望遠端において、第3のレンズ群G3および第4のレンズ群G4により第1の中間群Gtm1が構成され、第5のレンズ群G5により第2の中間群Gtm2が構成されてもよい。また、広角端から望遠端への変倍時に、絞りstは光軸15方向の位置(もしくは移動量)に応じて開口径dsが徐々に大きくなってもよい。
【0054】
このレンズシステム10の最も拡大側3の第1のレンズ群G1は、全体として負のパワーでズーミングの際に動かず、フォーカシングの際は3群構成で機能し、拡大側3から順に配置された、フォーカシングの際も動かない最も拡大側3の固定された負の屈折力の第1のサブレンズ群G11と、フォーカシングの際に移動する負の屈折力の第2のサブレンズ群G12と、フォーカシングの際に移動する正の屈折力の第3のサブレンズ群G13とを含む。物体までの距離が最近接(413mm)から無限大にフォーカシングする際(合焦時)に、負のパワーのサブレンズ群G12が拡大側3へ移動し、正のパワーのサブレンズ群G13が縮小側2へ移動する。フォーカシングの際に、異なる符号のパワーのレンズ群G12およびG13を逆側に動かすことで、移動の効果を高め移動量を減らすことができる。
【0055】
レンズシステム10の一例において、最も拡大側3に配置された全体が負のパワーの第1のレンズ群G1は、負のパワーの第1のサブレンズ群G11が、拡大側3から順番に配置された負-負のレンズの2枚構成であり、拡大側3に凸の負のメニスカスレンズL11およびL12を含む。負のパワーの第2のサブレンズ群G12は、拡大側3から順番に配置された負-正-負のレンズの3枚構成であり、両凹の負レンズL13と、両凸の正レンズL14と、縮小側2に凸の負のメニスカスレンズL15とを含み、レンズL13およびL14により接合レンズB11が構成されている。第3のサブレンズ群G13は、拡大側3から順番に配置された正-負のレンズの2枚構成であり、両凸の正レンズL16と、拡大側3に凸の負のメニスカスレンズL17とを含む。
【0056】
全体が正のパワーの第2のレンズ群G2は、拡大側3から順番に配置された正-負-正-正のレンズの4枚構成であり、具体的な構成は共通する。全体が負のパワーの第3のレンズ群G3は、拡大側3に絞りstを含み、順番に配置された負-正-負のレンズの3枚構成であり、両凹の負レンズL31と、縮小側2に凸の正のメニスカスレンズL32と、両凹の負レンズL33とを含み、これら3枚のレンズにより両凹型の接合レンズB31が構成されている。偏心公差に強いレンズ構成である。
【0057】
全体が負のパワーの第4のレンズ群G4は、拡大側3から順番に配置された負-正-正-負のレンズの4枚構成であり、上記のレンズシステムと構成は共通し、レンズL41およびL42により負-正の縮小側2に凸の正のメニスカス型の接合レンズB41が構成され、レンズL43およびL44により正-負の両凸型の接合レンズB42が構成されている。これらの接合レンズB41およびB42は構成が対称であり、色収差と球面収差の補正に有効である。
【0058】
全体が負のパワーの第5のレンズ群G5は、拡大側3から順番に配置された正-負のレンズの2枚構成であり、縮小側2に凸の正のメニスカスレンズL51と、縮小側2に凸の負のメニスカスレンズL52とを含む。これらのレンズL51およびL52により縮小側2に凸の負のメニスカス型の接合レンズB51が構成されている。
【0059】
全体が正のパワーの第6のレンズ群G6は、正のレンズの一枚構成であり、縮小側2に凸の正のメニスカスレンズL61を含む。
【0060】
このレンズシステム10の諸数値および各条件の値は以下の通りである。
F値: 広角端(無限遠)2.8、 望遠端(無限遠)2.8
画角: 広角端:83.78、 望遠端:31.33
レンズシステム10の広角端の焦点距離fw: 24.0
レンズシステム10の望遠端の焦点距離ft: 75.2
変倍比:3.13
レンズシステム10の全長(La):255.1
第1のレンズ群G1(前群Gwf)の焦点距離fg1:-43.56
第1のサブレンズ群G11の焦点距離f11:-58.05
第2のサブレンズ群G12の焦点距離f12:-150.85
第3のサブレンズ群G13の焦点距離f13:211.13
第2のレンズ群G2の焦点距離fg2:47.58
第3のレンズ群G3の焦点距離fg3:-120.65
第4のレンズ群G4の焦点距離fg4:-935.73
第5のレンズ群G5(中間群Gtm2)の焦点距離fg5:-361.00
第6のレンズ群G6の焦点距離fg6:83.05
広角端の後群Gwe(G2-G6)の焦点距離:78.86
望遠端の前群Gtf(G1-G2)の焦点距離:44.31
望遠端の中間群Gtm(G3-G5)の焦点距離fg345t:-80.75
広角端のG3-G5の焦点距離fg345w:-83.42
望遠端の中間群Gtm1(G3-G4)の焦点距離:-114.29
条件(1)(Dg12w/((Ltg1r+Ltg2f)/2))
広角端における(D13/(D12+D14)/2):11.04
条件(2)(Dg12t/((Ltg1r+Ltg2f)/2)
望遠端における(D13/(D12+D14)/2):0.79
条件(3)(Dg23w/((Ltg2r+Ltg3f)/2))
広角端における((D20+D21)/(D19+D22+D23+D24)/2):0.88
条件(4)(Dg23t/((Ltg2r+Ltg3f)/2))
望遠端における((D20+D21)/(D19+D22+D23+D24)/2):2.63
条件(5)(Dg34w/((Ltg3r+Ltg4f)/2))
広角端における(D25/(D22+D23+D24+D26+D27)/2):0.38
条件(6)(Dg45w/((Ltg4r+Ltg5f)/2))
広角端における(D31/(D29+D30+D32+D33)/2):0.41
条件(7)(Dg56w/((Ltg5r+Ltg6f)/2))
広角端における(D34/(D32+D33+D35)/2):0.38
条件(8)(Dg56t/((Ltg5r+Ltg6f)/2))
望遠端における(D34/(D32+D33+D35)/2):4.64
条件(9)(Dg34t/((Ltg3r+Ltg4f)/2))
望遠端における(D25/(D22+D23+D24+D26+D27)/2):0.45
条件(10)(Dg45t/((Ltg4r+Ltg5f)/2))
望遠端における(D31/(D29+D30+D32+D33)/2):2.12
条件(11)(|MDg2|/fg2)(ΔD13/fg2):1.40
条件(12)(MDg5/(MDg2-MDg3))(ΔD34/ΔD20):1.89
条件(13)(|fg2/fg3|):0.39
条件(14)(|fg2/fg4|):0.05
条件(15)(|fg2/fg5|):0.13
条件(16)(|fg2/fg345w|):0.57
条件(17)(|fg2/fg345t|):0.59
条件(19)(|f12|/|f13|):0.71
条件(20)(|f11|/(|f12|+|f13|)):0.16
条件(21)(dsw/dst):0.59
条件(22)(La/dL11):2.77
【0061】
これらに示すように、
図8に示したレンズシステム10は条件(1)~(17)、(19)~(22)を満足する。レンズシステム10は、6群21枚のレンズをコンパクトなスペースに配置したズームレンズシステムであり、ズーム比が3.0以上で、F値が望遠端および広角端でほぼ一定で明るく、鮮明な画像を撮影できる。
【符号の説明】
【0062】
1 撮像装置、 10 レンズシステム