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特開2022-162744曲率半径計測システムおよびそれを用いたベンディングロール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162744
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】曲率半径計測システムおよびそれを用いたベンディングロール
(51)【国際特許分類】
   B21D 5/14 20060101AFI20221018BHJP
   G01B 5/213 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
B21D5/14 Z
B21D5/14 B
G01B5/213
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067725
(22)【出願日】2021-04-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】坪田 勝利
(72)【発明者】
【氏名】中島 大樹
(72)【発明者】
【氏名】志井 里衣
(72)【発明者】
【氏名】樋口 慎伍
(72)【発明者】
【氏名】南 椋介
【テーマコード(参考)】
2F062
4E063
【Fターム(参考)】
2F062AA52
2F062AA61
2F062BB14
2F062BC12
2F062CC22
2F062CC23
2F062EE01
2F062EE63
2F062FF03
2F062GG21
2F062GG38
2F062HH15
2F062HH21
4E063AA01
4E063BB03
4E063EA08
4E063EA11
4E063FA05
4E063JA07
4E063LA09
(57)【要約】
【課題】曲率半径計測システムを用いて効率よく高精度で成形作業を行うことができるベンディングロールを提供する。
【解決手段】円弧状の金属板Wの板厚tと、曲げ成形中の(実際に曲げ成形を受けている部位の)内円弧長Lと、その内円弧長Lに対応する成形中の外円弧長Lと、その外円弧長Lに対応する成形後(スプリングバック後)の外円弧長Lとを測定し、その測定結果から成形後の内円弧長Lを(L+L-L)として算出したうえ、成形後の曲率半径r=(L・t)/(L-L)を算出する曲率半径計測システムを用い、ベンディングロールで金属板Wを曲げ成形しながら、その曲率半径rを計測し、その計測結果に基づいて上ロール1の上下方向位置を調整する制御を行うことにより、効率よく高精度で成形作業を行えるようにした。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向の断面が一定の板厚で、曲げ成形により円弧状に形成された板状部を有する物品について、その所定方向断面での板状部の曲率半径を計測する曲率半径計測システムにおいて、
前記板状部の所定方向の断面における板厚tと、曲げ成形中の凹円弧面上の任意の2つの第3基準点の間の円周方向に沿った長さLと、前記各第3基準点のそれぞれと板厚方向で対向する凸円弧面上の2つの第4基準点の間の円周方向に沿った長さLと、前記各第4基準点に対応する曲げ成形後の凸円弧面上の2つの第2基準点の間の円周方向に沿った長さLとを測定し、その測定結果から、前記各第3基準点に対応する曲げ成形後の凹円弧面上の2つの第1基準点の間の円周方向に沿った長さLを(L+L-L)として算出したうえ、(L・t)/(L-L)を算出して前記板状部の曲げ成形後の凹円弧面の曲率半径とすることを特徴とする曲率半径計測システム。
【請求項2】
上ロールと、前記上ロールの下方の前後両側に配された一対の下ロールとを備え、前記上ロールと各下ロールの間で金属板を挾持した状態で、前記各下ロールを回転駆動することにより、金属板を往復移動させながら曲げ成形するベンディングロールにおいて、
前記金属板の曲げ成形を行いながら、請求項1に記載の曲率半径計測システムを用いて成形途中の金属板の曲率半径を計測し、その計測結果に基づいて、後続の成形作業における前記上ロールと各下ロールの相対位置を制御するようにしたことを特徴とするベンディングロール。
【請求項3】
前記曲率半径計測システムは、前記2つの第3基準点の間の円周方向に沿った長さLを前記上ロールを用いて測定し、前記2つの第4基準点の間の円周方向に沿った長さLを、前記一対の下ロール間で金属板に接触する第1計測ローラを用いて測定し、前記2つの第2基準点の間の円周方向に沿った長さLを、前記下ロールの一つを挟んで前記第1計測ローラと対向する位置で金属板に接触する第2計測ローラを用いて測定するものであることを特徴とする請求項2に記載のベンディングロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円弧状に形成された板状部の曲率半径を計測する曲率半径計測システムと、それを用いて金属板の曲げ成形を行うベンディングロールに関する。
【背景技術】
【0002】
ベンディングロールは、上ロールとこれに平行な一対の下ロールとを備え、上ロールと各下ロールの間で金属板を挾持した状態で、各下ロールを回転駆動することにより、金属板を往復移動させながら曲げ成形する装置である。
【0003】
このようなベンディングロールでは、金属板の曲げ成形の途中で、一旦成形を中断して金属板の曲率半径を測定し、その測定結果が目標範囲に入っていない場合は、後続の成形作業における上ロール位置等の設定値を補正して、成形終了後に所望の曲率半径を有する円弧状またはパイプ状の製品が得られるようにしている。
【0004】
ここで、成形途中での金属板の曲率半径の測定は、従来、作業者が製品の目標曲率半径を有する円弧状のRゲージを金属板の内側面または外側面に当接させて行うことが多く、この測定作業が成形作業全体の効率を低下させる一因となっている。
【0005】
これに対し、例えば特許文献1では、計測対象物品の板厚および凹円弧面と凸円弧面の互いに対応する部位の円周方向に沿った長さ(円弧長)を測定し、その測定結果から幾何学的に板状部の曲率半径を算出する曲率半径計測システムが提案されている。
【0006】
そして、この曲率半径計測システムを用いたベンディングロールでは、金属板の曲げ成形を行いながら金属板の曲率半径の計測を行い、その計測結果に基づいて後続の曲げ成形の制御を行うことにより、曲率半径の測定作業を自動化して成形作業全体の効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-51832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の曲率半径計測システムは、計測対象物品の凹円弧面および凸円弧面の円弧長を計測ローラ等の距離センサで測定することになるため、ベンディングロールに用いる場合には次のような難点がある。
【0009】
すなわち、ベンディングロールにおいて、成形途中の金属板の凹円弧面および凸円弧面の円弧長を測定する距離センサを設置するには、金属板の凹円弧面の内側と凸円弧面の外側で距離センサを金属板の成形による形状の変化に対応する位置に移動させて支持する支持機構が必要となる。そして、特にその凹円弧面の内側の距離センサは、金属板の幅方向の外側から支持機構で支持することになるため、その距離センサと支持機構を含む測定装置の構造が複雑で高コストのものとなるし、耐久性やメンテナンス性も低くなりやすい。
【0010】
ここで、金属板の凹円弧面の円弧長を測定する距離センサとして上ロールを用いれば、上記のような測定装置の問題は生じない。しかし、その場合には、金属板の曲げ成形中の(実際に曲げ成形を受けている部位の)円弧長を測定して曲率半径を算出するので、曲げ成形後のスプリングバックによる曲率半径の変化を考慮せずに後続の曲げ成形の制御を行うことになり、製品の曲げ精度が低下してしまう。
【0011】
そこで、本発明は、ベンディングロールに用いるのに適した曲率半径計測システムを提供することを第1の課題とし、その曲率半径計測システムを用いて効率よく高精度で成形作業を行うことができるベンディングロールを提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記第1の課題を解決するために、本発明は、所定方向の断面が一定の板厚で、曲げ成形により円弧状に形成された板状部を有する物品について、その所定方向断面での板状部の曲率半径を計測する曲率半径計測システムにおいて、前記板状部の所定方向の断面における板厚tと、曲げ成形中の凹円弧面上の任意の2つの第3基準点の間の円周方向に沿った長さLと、前記各第3基準点のそれぞれと板厚方向で対向する凸円弧面上の2つの第4基準点の間の円周方向に沿った長さLと、前記各第4基準点に対応する曲げ成形後の凸円弧面上の2つの第2基準点の間の円周方向に沿った長さLとを測定し、その測定結果から、前記各第3基準点に対応する曲げ成形後の凹円弧面上の2つの第1基準点の間の円周方向に沿った長さLを(L+L-L)として算出したうえ、(L・t)/(L-L)を算出して前記板状部の曲げ成形後の凹円弧面の曲率半径とする構成を採用した。
【0013】
すなわち、本発明の曲率半径計測システムは、計測対象物品の曲げ成形中の(実際に曲げ成形を受けている部位の)凹円弧面および凸円弧面の円弧長と曲げ成形後(スプリングバックが生じた後)の凸円弧面の円弧長を測定して、曲げ成形後の凹円弧面の円弧長を算出することにより、曲げ成形後の曲率半径を計測できるようにしたものであり、曲げ成形後の凹円弧面の円弧長を測定するための測定装置を必要としないので、従来の曲率半径計測システムよりもベンディングロールに用いるのに適したものとなっている。
【0014】
そして、第2の課題を解決するために、本発明は、上ロールと、前記上ロールの下方の前後両側に配された一対の下ロールとを備え、前記上ロールと各下ロールの間で金属板を挾持した状態で、前記各下ロールを回転駆動することにより、金属板を往復移動させながら曲げ成形するベンディングロールにおいて、前記金属板の曲げ成形を行いながら、上記構成の曲率半径計測システムを用いて成形途中の金属板の曲率半径を計測し、その計測結果に基づいて、後続の成形作業における前記上ロールと各下ロールの相対位置を制御するようにした。
【0015】
上記の構成によれば、成形途中でのRゲージを用いた測定作業をなくして、効率よく高精度で成形作業を行うことができる。また、従来の曲率半径計測システムを用いる場合に比べて、全体の構造が簡単で低コストのものとなるし、円弧長を測定する測定装置の耐久性やメンテナンス性の問題も生じにくい。
【0016】
また、上記構成のベンディングロールにおいては、前記曲率半径計測システムとして、前記2つの第3基準点の間の円周方向に沿った長さLを前記上ロールを用いて測定し、前記2つの第4基準点の間の円周方向に沿った長さLを、前記一対の下ロール間で金属板に接触する第1計測ローラを用いて測定し、前記2つの第2基準点の間の円周方向に沿った長さLを、前記下ロールの一つを挟んで前記第1計測ローラと対向する位置で金属板に接触する第2計測ローラを用いて測定するものを採用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の曲率半径計測システムは、計測対象物品の曲げ成形中の凹円弧面および凸円弧面の円弧長と曲げ成形後の凸円弧面の円弧長を測定し、その測定結果から曲げ成形後の曲率半径を算出するものであり、曲げ成形後の凹円弧面の円弧長を測定するための測定装置を必要としないので、特にベンディングロールに対して効果的に適用できる。
【0018】
また、本発明のベンディングロールは、金属板の曲げ成形を行いながら上記の曲率半径計測システムによる計測を行い、その計測結果に基づいて後続の曲げ成形の制御を行うようにしたものであるから、曲げ成形の途中でRゲージを用いた測定を行う場合よりも効率よく高精度で成形作業を行うことができるし、従来の曲率半径計測システムを用いる場合に比べて、全体の構造が簡単で低コストであり、円弧長を測定する測定装置の耐久性やメンテナンス性の面でも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態のベンディングロールの正面図
図2図1の右側面図
図3図1の左側面図
図4図1のベンディングロールにおける実施形態の曲率半径計測システムによる測定作業の概略説明図
図5図4の測定作業を行う測定装置の説明図
図6】実施形態の曲率半径計測システムを用いたベンディングロールの制御方法のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。このベンディングロールは、図1乃至図3に示すように、上ロール1と、上ロール1の下方の前後両側に上ロール1と平行に配された一対の下ロール2と、各下ロール2を回転駆動するモータ(図示省略)を内蔵したモータケース3と、上ロール1の両端部を支持する左右の上部フレーム4、5と、各下ロール2の両端部を支持する下部フレーム6とを備えている。また、各下ロール2は、その軸方向中央部を下方の前後両側から図示省略したバックアップロールに支持されている。そして、上ロール1を成形条件に応じた前後方向位置に移動させ、上ロール1と各下ロール2の間で金属板を挾持した状態で、各下ロール2を回転駆動することにより、金属板を往復移動させながら曲げ成形するようになっている。なお、図1乃至図3では、後述する曲率半径計測システムの測定装置は図示を省略している。
【0021】
前記各上部フレーム4、5は略門型に形成されており、それぞれの脚部が下部フレーム6の上面に設けられた軸受部6aと下部フレーム6の前後面に固定された支持板7との間に配され、その軸受部6aおよび前後の支持板7とともに前後方向に延びる支軸8を通されている。その支軸8は下部フレーム6の軸受部6aおよび支持板7に固定されており、各上部フレーム4、5の脚部は支軸8に対して摺動可能となっている。
【0022】
これにより、図1における左側の上部フレーム4は、前後移動可能で、かつ、成形後の金属板を取り出すときに、上ロール1の一端部から離れて左側へ回動する(転倒する)転倒フレームとなっている。一方、図1における右側の上部フレーム5は、上ロール1の他端部が軸方向外側へ延長されているので、上ロール1の他端部から離れて回動することはできず、前後移動のみが可能となっている。
【0023】
また、各上部フレーム4、5の上端部には油圧シリンダ9がロッド9aを下方に向けた姿勢で取り付けられ、そのロッド9aの下端が上ロール1の端部を回転自在に支持する軸受10に接続されており、両油圧シリンダ9の作動によって上ロール1が昇降するようになっている。なお、上ロール1の上昇は、上ロール1の他端部の延長部分1aを跨ぐ状態で下部フレーム6に固定された門型のストッパ11によって規制されている。
【0024】
前記下部フレーム6は、その一端面の下部に、2段式の油圧シリンダ12の閉塞側端部が回動可能に取り付けられている。そして、その油圧シリンダ12の2段目のロッド12aの先端が転倒フレームとしての上部フレーム4に回動可能に接続されており、曲げ成形完了後の製品を取り出す際に、油圧シリンダ12が回動しながら伸縮することにより、上部フレーム4の転倒・復元動作が行われるようになっている。
【0025】
このベンディングロールは上記の構成であり、成形作業を行いながら本発明の実施形態の曲率半径計測システムによる計測を行い、その計測結果に基づいて後続の成形作業における上ロール1の上下方向位置を制御して、成形終了後に所望の曲率半径を有する製品が得られるようにしている。
【0026】
実施形態の曲率半径計測システムは、図4に示すように、成形対象である金属板Wの円弧方向の断面における板厚tと、曲げ成形中の(実際に曲げ成形を受けている部位の)凹円弧面上の2つの第3基準点C、C’の間の円周方向に沿った長さ(内円弧長)Lと、各第3基準点C、C’のそれぞれと板厚方向で対向する凸円弧面上の2つの第4基準点D、D’の間の円周方向に沿った長さ(外円弧長)Lと、各第4基準点D、D’に対応する曲げ成形後の凸円弧面上の2つの第2基準点B、B’の間の円周方向に沿った長さ(外円弧長)Lとを測定し、その測定結果から各第3基準点C、C’に対応する曲げ成形後の凹円弧面上の2つの第1基準点A、A’の間の円周方向に沿った長さ(内円弧長)Lを算出したうえ、金属板Wの曲げ成形後の凹円弧面の曲率半径rを算出するものである。
【0027】
すなわち、このような曲げ成形においては、成形後のスプリングバックによって、内円弧長が延びる分だけ外円弧長が縮む(L-L=L-L)と考えられるので、曲げ成形後の内円弧長Lを(L+L-L)として算出することができる。そして、曲げ成形後の凹円弧面の曲率半径rについては、幾何学的にL/L=r/(r+t)が成り立つので、曲率半径rを(L・t)/(L-L)として算出することができる。
【0028】
ここで、金属板Wの板厚tは、成形作業を開始する前に測定工具や公知の板厚計を用いて測定すればよい。また、曲げ成形中の内円弧長Lは上ロール1を距離センサとして測定でき、曲げ成形中の外円弧長Lおよび曲げ成形後の外円弧長Lの測定には、所定の経路に沿った距離を測定する公知の距離センサを含む測定装置を用いることができる。
【0029】
図5は、実施形態のベンディングロールにおいて金属板Wの円弧長L、L、Lを測定する測定装置を示す。曲げ成形中の内円弧長Lの測定装置は、上ロール1の軸端部に取り付けられたプーリ13と、固定側の上部フレーム(図示省略)に取付台14を介して回転自在に取り付けられたプーリ15と、両プーリ13、15間に巻き掛けられたベルト16と、上部フレーム側のプーリ15の回転を検出するパルスエンコーダ17とを備え、そのパルスエンコーダ17の検出結果からLを求めるものである。
【0030】
曲げ成形中の外円弧長Lの測定装置は、下部フレーム6に架台18を介して取り付けられ、上下方向に伸縮するアクチュエータ(エアシリンダ)19と、アクチュエータ19の上端に回転自在に取り付けられた第1計測ローラ20と、第1計測ローラ20の回転を検出するパルスエンコーダ21とを備え、そのアクチュエータ19で第1計測ローラ20を一対の下ロール2間で金属板Wの凸円弧面に押し付けた状態で、パルスエンコーダ21の検出結果からLを求めるものである。
【0031】
曲げ成形後の外円弧長Lの測定装置は、下部フレーム6に下端部を回動可能に取り付けられたアクチュエータ(エアシリンダ)22と、アクチュエータ22の上端に回転自在に取り付けられた第2計測ローラ23と、第2計測ローラ23の回転を検出するパルスエンコーダ24とを備えている。パルスエンコーダ24は、第2計測ローラ23と連結されるとともに、取付台25を介して一方の下ロール2の外周に沿って延びる円弧状のローラ支持部材26に固定されている。そのローラ支持部材26は、複数のガイドローラ27を下ロール2の外周面に当接させて回転自在に支持しており、アクチュエータ22の伸縮に伴って、下部フレーム6に固定されたガイド部材28に案内されてガイドローラ27とともに下ロール2の外周に沿って移動するようになっている。これにより、第2計測ローラ23が常時安定して支持され、アクチュエータ22が第2計測ローラ23を下ロール2を挟んで第1計測ローラ20と対向する位置で金属板Wの凸円弧面に押し付けた状態で、パルスエンコーダ24の検出結果からLを求めることができる。
【0032】
この曲率半径計測システムは、上述のように、曲げ成形後の内円弧長Lを測定するための測定装置を必要としないので、従来の曲率半径計測システムよりもベンディングロールに用いるのに適したものとなっている。
【0033】
次に、このベンディングロールでの金属板の成形作業における曲率半径の制御方法について説明する。この実施形態では、金属板の曲げ成形後の曲率半径が目標値となるまで、シーケンサで上ロールの位置を自動で制御するようにしている。
【0034】
この実施形態の制御方法の具体的な処理手順を図6に示す。この制御方法では、金属板の成形開始前に、予め、成形条件(上ロール位置、下ロール回転距離等)とともに、成形後の凹円弧面の曲率半径の目標値rおよび成形中の内円弧長の測定目標値L40を設定しておく(ステップS、S、S)。
【0035】
そして、成形を開始(ステップS)した後、所定のタイミングで成形中の内円弧長Lと外円弧長Lおよび成形後の外円弧長Lの測定を同時に開始し、Lが測定目標値L40に到達するまで測定を行う(ステップS、S)。L、LおよびLの測定が終われば、成形後の内円弧長Lおよび成形後の凹円弧面の曲率半径rを演算して(ステップS、S、S)、演算した曲率半径rが目標値rとなっているか否かの判断を行う(ステップS10)。ここで、曲率半径の目標値rは、ある程度の許容範囲を有するものとする。
【0036】
ステップS10での判断の結果、曲率半径rの値が目標値rとなっていない場合は、上ロールの上下方向位置の補正量を演算し(ステップS11)、下ロールの回転距離が設定値に達していなければ上ロールを上下方向に移動させて(ステップS12、S13)、上記のステップS~S10を繰り返す。一方、曲率半径rが目標値rとなっている場合にステップS12で下ロールの回転距離が設定値に達していなければ、上ロールの位置を動かさずにステップS~S10を繰り返す。そして、曲率半径rの値によらずステップS12で下ロールの回転距離が設定値に達していれば、成形を終了する(ステップS14)。
【0037】
このベンディングロールでは、上記の制御方法を成形対象の金属板に対して最初に行う曲げ成形だけなく、続いて行う補正曲げにも適用している。これにより、曲げ成形の途中で従来のRゲージを用いた測定を行う場合に比べて、効率よく高精度で成形作業を行って成形時間を大幅に短縮することができる。また、従来の曲率半径計測システムを用いる場合に比べて、全体の構造が簡単で低コストであり、円弧長を測定する測定装置の耐久性やメンテナンス性の面でも有利である。
【0038】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0039】
例えば、上述した実施形態のベンディングロールでは、曲げ成形中の内円弧長Lの測定装置として、プーリとベルトで上ロールから伝達された回転を検出するものを用いたが、これに代えて、上ロールの軸端部の外周面に計測ローラを押し付け、その計測ローラの回転を検出するものを用いることもできる。また、実施形態の曲げ成形中の外円弧長Lの測定装置は、エアシリンダからなるアクチュエータで金属板の凸円弧面に押し付けた第1計測ローラの回転を検出するものを用いたが、そのアクチュエータの代わりにスプリングで第1計測ローラを金属板に押し付けるようにしてもよい。
【0040】
また、実施形態のベンディングロールでは、上ロールの上下方向位置を調整して金属板の曲率半径を制御するようにしたが、下ロールが昇降するタイプ(上ロールは回転のみ)のベンディングロールの場合は、下ロールの上下方向位置を調整すればよい。
【0041】
さらに、実際の制御においては、製品の曲げ精度を高めるために、曲げ成形後の内円弧長Lの計算式に補正係数を導入し、その補正係数を実験的な測定によって調整する方法を採用することもできる。
【0042】
なお、本発明の曲率半径計測システムは、実施形態のようなベンディングロールで曲げ成形される金属板に限らず、所定方向の断面が一定の板厚で曲げ成形によって円弧状に形成される板状部を有する物品に対して適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 上ロール
2 下ロール
4、5 上部フレーム
6 下部フレーム
13、15 プーリ
16 ベルト
17、21、24 パルスエンコーダ
19、22 アクチュエータ(エアシリンダ)
20 第1計測ローラ
23 第2計測ローラ
26 ローラ支持部材
27 ガイドローラ
28 ガイド部材
W 金属板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2021-09-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
所定方向の断面が一定の板厚で、曲げ成形により円弧状に形成された板状部を有する物品について、その所定方向断面での板状部の曲率半径を計測する曲率半径計測システムにおいて、
前記板状部の所定方向の断面における板厚tを測定するとともに、曲げ成形中の凹円弧面上の任意の2つの第3基準点の間の円周方向に沿った長さLと、前記各第3基準点のそれぞれと板厚方向で対向する凸円弧面上の2つの第4基準点の間の円周方向に沿った長さL、曲げ成形後の凸円弧面上の2つの第2基準点の間の円周方向に沿った長さLとを同一タイミングで測定し、その測定結果から、前記各第2基準点のそれぞれと板厚方向で対向する凹円弧面上の2つの第1基準点の間の円周方向に沿った長さLを(L+L-L)として算出したうえ、(L・t)/(L-L)を算出して前記板状部の曲げ成形後の凹円弧面の曲率半径とすることを特徴とする曲率半径計測システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
上記第1の課題を解決するために、本発明は、所定方向の断面が一定の板厚で、曲げ成形により円弧状に形成された板状部を有する物品について、その所定方向断面での板状部の曲率半径を計測する曲率半径計測システムにおいて、前記板状部の所定方向の断面における板厚tを測定するとともに、曲げ成形中の凹円弧面上の任意の2つの第3基準点の間の円周方向に沿った長さLと、前記各第3基準点のそれぞれと板厚方向で対向する凸円弧面上の2つの第4基準点の間の円周方向に沿った長さL、曲げ成形後の凸円弧面上の2つの第2基準点の間の円周方向に沿った長さLとを同一タイミングで測定し、その測定結果から、前記各第2基準点のそれぞれと板厚方向で対向する凹円弧面上の2つの第1基準点の間の円周方向に沿った長さLを(L+L-L)として算出したうえ、(L・t)/(L-L)を算出して前記板状部の曲げ成形後の凹円弧面の曲率半径とする構成を採用した。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
実施形態の曲率半径計測システムは、図4に示すように、成形対象である金属板Wの円弧方向の断面における板厚tを測定するとともに、曲げ成形中の(実際に曲げ成形を受けている部位の)凹円弧面上の2つの第3基準点C、C’の間の円周方向に沿った長さ(内円弧長)Lと、各第3基準点C、C’のそれぞれと板厚方向で対向する凸円弧面上の2つの第4基準点D、D’の間の円周方向に沿った長さ(外円弧長)L、曲げ成形後の凸円弧面上の2つの第2基準点B、B’の間の円周方向に沿った長さ(外円弧長)Lとを同一タイミングで測定し、その測定結果から各第2基準点B、B’のそれぞれと板厚方向で対向する凹円弧面上の2つの第1基準点A、A’の間の円周方向に沿った長さ(内円弧長)Lを算出したうえ、金属板Wの曲げ成形後の凹円弧面の曲率半径rを算出するものである。