(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162747
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】鋳造制御装置、鋳型幅決定方法、及び鋳型幅決定プログラム
(51)【国際特許分類】
B22D 11/16 20060101AFI20221018BHJP
B22D 11/128 20060101ALI20221018BHJP
B22D 11/20 20060101ALI20221018BHJP
B22D 11/124 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
B22D11/16 106A
B22D11/128 350A
B22D11/20 C
B22D11/124 N
B22D11/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067729
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】村尾 武政
(72)【発明者】
【氏名】湊 出
(72)【発明者】
【氏名】尾川 雄紀
【テーマコード(参考)】
4E004
【Fターム(参考)】
4E004KA14
4E004MA03
4E004MC05
4E004MC07
4E004NB01
(57)【要約】
【課題】鋳造される鋳片の板幅を高精度に決定可能な鋳型幅決定機能を有する鋳造制御装置、鋳型幅決定方法、及び鋳型幅決定プログラムを提供する。
【解決手段】鋳造制御装置1は、幅が変更可能な鋳型104を介して連続鋳造される鋳片201の鋳造速度を示す鋳造速度情報と、連続鋳造された鋳片201を軽圧下するときの圧力を示す圧力情報、及び連続鋳造される鋳片201の所望の板幅と所望の板厚との比率を示すアスペクト比情報の少なくとも一方とを取得する情報取得部23と、情報取得部23によって取得された情報、及び連続鋳造される鋳片201の所望の板幅に基づいて鋳型104の幅を決定する鋳型幅決定部24と、鋳型幅決定部24によって決定された鋳型104の幅を示す鋳型幅情報を出力する鋳型幅情報出力部25とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅が変更可能な鋳型を介して連続鋳造される鋳片の鋳造速度を示す鋳造速度情報と、連続鋳造された鋳片を軽圧下するときの圧力を示す圧力情報、及び連続鋳造される鋳片の所望の板幅と所望の板厚との比率を示すアスペクト比情報の少なくとも一方とを取得する情報取得部と、
前記情報取得部によって取得された情報、及び連続鋳造される鋳片の所望の板幅に基づいて前記鋳型の幅を決定する鋳型幅決定部と、
前記鋳型幅決定部によって決定された前記鋳型の幅を示す鋳型幅情報を出力する鋳型幅情報出力部と、
を有する、ことを特徴とする鋳造制御装置。
【請求項2】
前記情報取得部は、前記鋳造速度情報及び前記圧力情報を取得する、請求項1に記載の鋳造制御装置。
【請求項3】
前記情報取得部は、前記鋳造速度情報及び前記アスペクト比情報を取得する、請求項1に記載の鋳造制御装置。
【請求項4】
前記情報取得部は、前記鋳造速度情報、前記圧力情報及び前記アスペクト比情報を取得する、請求項1に記載の鋳造制御装置。
【請求項5】
前記情報取得部は、連続鋳造において鋳片に注水される冷却水の水量を示す注水量情報を更に取得する、請求項2~4の何れか一項に記載の鋳造制御装置。
【請求項6】
前記鋳型幅決定部は、連続鋳造された鋳片の幅W、前記鋳造速度情報に対応する鋳造速度Vc、前記注水量情報に対応する注水量Vw、前記圧力情報に対応する圧力P、及び前記アスペクト比情報に対応する比率W/T、及び係数A0、A1、A2、A3及びA4で示される以下の式(1)を使用して、前記鋳型の幅を決定する、
Wmold = W * (A0 + A1 * Vc + A2 * VW + A3 * P + A4 * W/T) (1)
請求項5に記載の鋳造制御装置。
【請求項7】
幅が変更可能な鋳型を介して連続鋳造される鋳片の鋳造速度を示す鋳造速度情報と、連続鋳造された鋳片を軽圧下するときの圧力を示す圧力情報、及び連続鋳造される鋳片の所望の板幅と所望の板厚との比率を示すアスペクト比情報の少なくとも一方とを取得し、
前記鋳造速度情報と、前記圧力情報及び前記アスペクト比情報の少なくとも一方と、連続鋳造される鋳片の所望の板幅とに基づいて前記鋳型の幅を決定し、
決定された前記鋳型の幅を示す鋳型幅情報を出力する、
ことを含む、ことを特徴とする鋳型幅決定方法。
【請求項8】
前記情報取得部は、連続鋳造において鋳片に注水される冷却水の水量を示す注水量情報を更に取得する、請求項7に記載の鋳型幅決定方法。
【請求項9】
幅が変更可能な鋳型を介して連続鋳造される鋳片の鋳造速度を示す鋳造速度情報と、連続鋳造された鋳片を軽圧下するときの圧力を示す圧力情報、及び連続鋳造される鋳片の所望の板幅と所望の板厚との比率を示すアスペクト比情報の少なくとも一方とを取得し、
前記鋳造速度情報と、前記圧力情報及び前記アスペクト比情報の少なくとも一方と、連続鋳造される鋳片の所望の板幅と基づいて前記鋳型の幅を決定し、
決定された鋳型の幅を示す鋳型幅情報を出力する、
処理をコンピュータに実行させる、ことを特徴とする鋳型幅決定プログラム。
【請求項10】
前記情報取得部は、連続鋳造において鋳片に注水される冷却水の水量を示す注水量情報を更に取得する、請求項9に記載の鋳型幅決定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造用鋳型の幅を決定する鋳型幅決定機能を有する鋳造制御装置、鋳型幅決定方法、及び鋳型幅決定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
幅が変更可能な鋳型を有する連続鋳造機において、連続鋳造により形成される鋳片の板幅に対応した最適な鋳型の幅を設定可能な鋳片幅制御方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載される鋳片幅制御方法では、目的とする鋳片の板幅と鋳造する鋼種により決まる係数と鋳造速度から、鋳型の端片幅と端片の傾きを決定し、決定した鋳型の端片幅と端片の傾きを鋳型に設定する。特許文献1に記載される鋳片幅制御方法は、鋳造速度を使用して決定された端片の幅及び傾きを鋳型に設定することで、鋳片幅を高精度に制御可能になり、幅切断等の追加的な処置を行なわれる鋳片の量が減少し、作業能率及び歩留まりが向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、連続鋳造の作業能率及び歩留まりを更に向上させるために、鋳造される鋳片の板幅をより高精度に決定する技術が望まれている。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するものであり、鋳造される鋳片の板幅を高精度に決定可能な鋳型幅決定機能を有する鋳造制御装置、鋳型幅決定方法、及び鋳型幅決定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決する本発明は、以下に示す鋳造制御装置、鋳型幅決定方法、及び鋳型幅決定プログラムを要旨とするものである。
(1)幅が変更可能な鋳型を介して連続鋳造される鋳片の鋳造速度を示す鋳造速度情報と、連続鋳造された鋳片を軽圧下するときの圧力を示す圧力情報、及び連続鋳造される鋳片の所望の板幅と所望の板厚との比率を示すアスペクト比情報の少なくとも一方とを取得する情報取得部と、
情報取得部によって取得された情報、及び連続鋳造される鋳片の所望の板幅に基づいて鋳型の幅を決定する鋳型幅決定部と、
鋳型幅決定部によって決定された鋳型の幅を示す鋳型幅情報を出力する鋳型幅情報出力部と、
を有する、ことを特徴とする鋳造制御装置。
(2)情報取得部は、鋳造速度情報及び圧力情報を取得する、(1)に記載の鋳造制御装置。
(3)情報取得部は、鋳造速度情報及びアスペクト比情報を取得する、(1)に記載の鋳造制御装置。
(4)情報取得部は、鋳造速度情報、圧力情報及びアスペクト比情報を取得する、(1)に記載の鋳造制御装置。
(5)情報取得部は、連続鋳造において鋳片に注水される冷却水の水量を示す注水量情報を更に取得する、(2)~(4)の何れか一つに記載の鋳造制御装置。
(6)鋳型幅決定部は、連続鋳造された鋳片の幅W、鋳造速度情報に対応する鋳造速度Vc、注水量情報に対応する注水量Vw、圧力情報に対応する圧力P、及びアスペクト比情報に対応する比率W/T、及び係数A0、A1、A2、A3及びA4で示される以下の式(1)を使用して、鋳型の幅を決定する、
Wmold = W * (A0 + A1 * Vc + A2 * VW + A3 * P + A4 * W/T) (1)
(5)に記載の鋳造制御装置。
(7)幅が変更可能な鋳型を介して連続鋳造される鋳片の鋳造速度を示す鋳造速度情報と、連続鋳造された鋳片を軽圧下するときの圧力を示す圧力情報、及び連続鋳造される鋳片の所望の板幅と所望の板厚との比率を示すアスペクト比情報の少なくとも一方とを取得し、
鋳造速度情報と、圧力情報及びアスペクト比情報の少なくとも一方と、連続鋳造される鋳片の所望の板幅と基づいて前記鋳型の幅を決定し、
決定された前記鋳型の幅を示す鋳型幅情報を出力する、
ことを含む、ことを特徴とする鋳型幅決定方法。
(8)情報取得部は、連続鋳造において鋳片に注水される冷却水の水量を示す注水量情報を更に取得する、(7)に記載の鋳型幅決定方法。
(9)幅が変更可能な鋳型を介して連続鋳造される鋳片の鋳造速度を示す鋳造速度情報と、連続鋳造された鋳片を軽圧下するときの圧力を示す圧力情報、及び連続鋳造される鋳片の所望の板幅と所望の板厚との比率を示すアスペクト比情報の少なくとも一方とを取得し、
鋳造速度情報と、圧力情報及びアスペクト比情報の少なくとも一方と、連続鋳造される鋳片の所望の板幅と基づいて前記鋳型の幅を決定し、
決定された前記鋳型の幅を示す鋳型幅情報を出力する、
処理をコンピュータに実行させる、ことを特徴とする鋳型幅決定プログラム。
(10)情報取得部は、連続鋳造において鋳片に注水される冷却水の水量を示す注水量情報を更に取得する、(9)に記載の鋳型幅決定プログラム。
【発明の効果】
【0007】
一実施形態に係る鋳造制御装置は、鋳造される鋳片の板幅を高精度に決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る連続鋳造機を概略的に示す断面図である。
【
図2】(a)は
図1に示す鋳型の斜視図であり、(b)は(a)に示すA-A線に沿う断面図である。
【
図3】
図1に示す鋳造制御装置を示すブロック図である。
【
図4】
図1に示す鋳造制御装置により実行される鋳型幅決定処理のフローチャートである。
【
図5】(a)は鋳造速度と連続鋳造機により鋳造される鋳片の板幅との関係を示す図であり、(b)は連続鋳造機の二次冷却帯における比水量と連続鋳造機により鋳造される鋳片の板幅との関係を示す図であり、(c)は鋳片圧下装置における鋳片圧下力と連続鋳造機により鋳造される鋳片の板幅との関係を示す図である。
【
図6】(a)は特許文献1に示す式(1)により決定される鋳片の板幅と鋳造された鋳片の板幅の実測値との相関関係を示す図であり、(b)は鋳型幅決定部が使用する式(1)により決定される鋳片の板幅と鋳造された鋳片の板幅の実測値との相関関係を示す図であり、(c)は鋳型幅決定部が使用する式(1)に含まれる変数の中で採用される変数を変更した式により決定される鋳片の板幅と、鋳造された鋳片の板幅の実測値との間の一致度を示す図である。
【
図7】実施形態に係る鋳片板幅推定装置を示すブロック図である。
【
図8】
図7に示す鋳片板幅決定装置2により実行される鋳片板幅推定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面を参照して、本発明に係る連続鋳造用鋳型の幅を決定する鋳型幅決定機能を有する鋳造制御装置、鋳型幅決定方法、及び鋳型幅決定プログラムについて説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されない。
【0010】
(実施形態に係る鋳造制御装置の構成及び機能)
図1は、実施形態に係る鋳造制御装置を有する連続鋳造機を概略的に示す断面図である。
【0011】
連続鋳造機100は、取鍋101と、タンディッシュ102と、浸漬ノズル103と、鋳型104と、二次冷却帯105と、鋳片圧下装置106と、鋳片切断装置107と、テーブルロール108と、鋳造速度センサ109と、鋳造制御装置1とを有する。
【0012】
取鍋101は、溶鋼200をタンディッシュ102に供給するための可動式の容器であり、タンディッシュ102の上方に移動し、取鍋101内に充填された溶鋼200をタンディッシュ102に供給する。タンディッシュ102は、鋳型104の上方に配置され、取鍋101から供給される溶鋼200を貯留して、溶鋼200に含有される介在物を除去する。浸漬ノズル103は、タンディッシュ102の下端から鋳型104に向けて下方に延伸する筒状の部材である。浸漬ノズル103の先端は、鋳型104の内部に収容される溶鋼200に浸漬される。浸漬ノズル103は、タンディッシュ102において介在物が除去された溶鋼200を鋳型104に連続的に供給する。
【0013】
図2(a)は鋳型104の斜視図であり、
図2(b)は
図2(a)に示すA-A線に沿う断面図である。
【0014】
鋳型104は、一対の長辺鋳型板141と、一対の短辺鋳型板142と、鋳型板駆動部143を有する。一対の長辺鋳型板141及び一対の短辺鋳型板142のそれぞれは、例えば冷却水が流動する水路が設けられた水冷銅板であり、四角筒状の形状を有する。一対の短辺鋳型板142は、内壁にテーパが形成され、鋳片201を最適に保持する。
【0015】
一対の短辺鋳型板142のそれぞれは、矢印B及びCで示される一対の長辺鋳型板141の幅方向に移動可能である。一対の短辺鋳型板142のそれぞれは、鋳型板駆動部143によって一対の長辺鋳型板141の幅方向に移動される。
【0016】
鋳型104において、溶鋼200は、冷却されて、鋳片201が形成される。鋳片201は、鋳型104の下方への移動に従って、鋳片201の内部の未凝固部202の凝固が進行し、外殻の凝固シェル203の厚さは、徐々に厚くなる。鋳片201は、未凝固部202及び凝固シェル203を含む状態で、鋳型104の下端から引き抜かれる。
【0017】
鋳型板駆動部143は、モータ等の駆動機器を有し、鋳造制御装置1から鋳型幅情報が入力されることに応じて、鋳型104の幅が鋳型幅情報に対応する幅になるように一対の短辺鋳型板142を移動して、鋳型104の幅を変更する。
【0018】
二次冷却帯105は、複数対の支持ロール151と、複数の冷却水ノズル152とを有し、鋳型104の下方に形成され、鋳型104の下端から引き抜かれた鋳片201を搬送しながら冷却する。
【0019】
複数対の支持ロール151のそれぞれは、鋳片201の厚さ方向の両側に配置され、鋳片201を支持しながら搬送する。複数対の支持ロール151は、サポートロールと、ピンチロールと、セグメントロールとを有する。サポートロールは、鋳型104の直下の垂直部に配置される無駆動式ロールである。ピンチロールは、モータ等の駆動手段により回転する駆動式ロールであり、二次冷却帯105の垂直部、湾曲部及び水平部の適切な位置に配置され、鋳片201を鋳型104から引き抜く。セグメントロールは、二次冷却帯105の湾曲部及び水平部に配置される無駆動式ロールであり、鋳片201を支持しながら案内する。
【0020】
複数の冷却水ノズル152は、二次冷却帯105の湾曲部及び水平部の鋳造方向に隣接して配置される複数対の支持ロール151の間隙に配置され、鋳片201に冷却水153を注水する。複数の冷却水ノズル152から鋳片201に注水される冷却水153の注水量は、鋳造制御装置1によって制御される。
【0021】
鋳造制御装置1は、複数の冷却水ノズル152のそれぞれの開度、及び複数の冷却水ノズル152のそれぞれに給水される冷却水153の水圧の少なくとも一方を制御して、鋳片201に注水される冷却水153の注水量を制御する。
【0022】
鋳片圧下装置106は、複数の軽圧下ロール161を有し、二次冷却帯105の水平部の下流側に配置され、二次冷却帯105によって冷却された鋳片201を軽圧下する。鋳片圧下装置106は、鋳片201の厚み方向の中心部の領域を、鋳片201の厚さ方向に所定の圧力で圧下するように鋳造制御装置1によって制御される。
【0023】
鋳片切断装置107は、鋳片圧下装置106の川下側に配置され、二次冷却帯105及び鋳片圧下装置106を介して搬送された鋳片201を所定の長さに切断して、厚板状の鋳片204を形成する。
【0024】
テーブルロール108は、モータ等の駆動手段により回転する駆動式ロールであり、鋳片切断装置107の下流側に配置され、厚板状の鋳片204を次工程の設備に搬送する。
【0025】
鋳造速度センサ109は、電磁式又は光電式の回転検出センサであり、二次冷却帯105の水平部に配置される支持ロール151の回転速度を検出し、検出した回転速度を示す回転速度情報を鋳造制御装置1に出力する。
【0026】
(実施形態に係る鋳造制御装置の構成及び機能)
図3は、鋳造制御装置1を示すブロック図である。
【0027】
鋳造制御装置1は、通信部11と、記憶部12と、入力部13と、出力部14と、処理部20とを有する。通信部11、記憶部12、入力部13、出力部14及び処理部20は、バス15を介して互いに接続される。鋳造制御装置1は、鋳造速度センサ109から入力された鋳造速度情報等を含む連続鋳造に関する情報を使用して、鋳型104の幅を決定する等の連続鋳造機100を制御する鋳造制御処理を実行する。鋳造制御装置1は、例えばパーソナルコンピュータであってもよく、連続鋳造機100を監視制御する監視制御装置であってもよい。
【0028】
通信部11は、イーサネット(登録商標)などの有線の通信インターフェース回路を有する。通信部11は、制御配線110を介して鋳型104、二次冷却帯105、鋳片圧下装置106及び鋳片切断装置107等と通信を行う。
【0029】
記憶部12は、例えば、半導体記憶装置、磁気テープ装置、磁気ディスク装置、又は光ディスク装置のうちの少なくとも一つを備える。記憶部12は、処理部20での処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。例えば、記憶部12は、鋳造速度センサ109から入力された鋳造速度情報等を含む連続鋳造に関する情報を使用して、鋳型104の幅を決定する鋳型幅決定処理を処理部20に実行させるための鋳型幅決定プログラム等を記憶する。鋳型幅決定プログラムは、例えばCD-ROM、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部12にインストールされてもよい。また、記憶部12は、鋳型幅決定処理で使用される種々のデータを記憶する。
【0030】
例えば、記憶部12は、鋳造速度センサ109によって検出された回転速度と鋳片201の鋳造速度との間の相関関係を示す鋳造速度テーブル121を記憶する。鋳造速度テーブル121は、複数の回転速度〔rpm〕のそれぞれを回転速度〔m/s〕に関連付けて記憶する。
【0031】
また、記憶部12は、注水量情報122、圧力情報123及びアスペクト比情報124を記憶する。注水量情報122は、鋳片201の鋳造方向の例えば1m等の単位長さ当たりの例えば1分間等の単位時間の冷却水153の注水量である指示水量を示す。圧力情報123は、連続鋳造された鋳片を軽圧下するときの圧力を示し、例えば軽圧下帯を開始する出側ロールの圧下力である圧力を示す。アスペクト比情報124は、連続鋳造される鋳片201の所望の板幅と所望の板厚との比率を示す。アスペクト比情報124は、入力部13を介してオペレータによって入力される。
【0032】
入力部13は、データの入力が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、タッチパネル、キーボード等である。オペレータは、入力部13を用いて、文字、数字、記号等を入力することができる。入力部13は、オペレータにより操作されると、その操作に対応する信号を生成する。そして、生成された信号は、オペレータの指示として、処理部20に供給される。
【0033】
出力部14は、映像や画像等の表示が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等である。出力部14は、処理部20から供給された映像データに応じた映像や、画像データに応じた画像等を表示する。また、出力部14は、紙などの表示媒体に、映像、画像又は文字等を印刷する出力装置であってもよい。
【0034】
処理部20は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。処理部20は、鋳造制御装置1の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPUである。処理部20は、記憶部12に記憶されているプログラム(ドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、処理部20は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行できる。
【0035】
処理部20は、水量制御部21と、圧下制御部22と、情報取得部23と、鋳型幅決定部24と、鋳型幅情報出力部25とを有する。これらの各部は、処理部20が備えるプロセッサで実行されるプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、これらの各部は、ファームウェアとして鋳造制御装置1に実装されてもよい。
【0036】
水量制御部21は、入力部13を介してオペレータによって入力される水量指示に応じて、複数の冷却水ノズル152から鋳片201に注水される冷却水153の注水量を制御する。水量指示は、鋳片201の鋳造方向の単位長さ当たりの単位時間の冷却水153の注水量である指示水量を含む。水量制御部21は、水量指示が入力されることに応じて、指示水量が鋳片201に注水されるように、冷却水ノズル152の開度及び冷却水153の水圧を制御する。水量制御部21は、鋳片201の鋳造方向の単位長さ当たりの単位時間の冷却水153の注水量である指示水量を示す注水量情報122を記憶部12に記憶する。
【0037】
圧下制御部22は、入力部13を介してオペレータによって入力される圧下指示に応じて、鋳片圧下装置106が鋳片201を圧下するときの圧力を制御する。圧下指示は、連続鋳造された鋳片を軽圧下するときの圧力を含む。圧下制御部22は、圧下指示が入力されることに応じて、所定の圧力が鋳片201に印加されるように、鋳片圧下装置106を制御する。圧下制御部22は、連続鋳造された鋳片を軽圧下するときの圧力を示す圧力情報123を記憶部12に記憶する。
【0038】
(実施形態に係る鋳造制御装置による鋳型幅決定処理)
図4は、鋳造制御装置1により実行される鋳型幅決定処理のフローチャートである。
図4に示す鋳型幅決定処理は、連続鋳造機100において連続鋳造処理が実行される間に、製造される鋳片201の幅が変更されることに応じて実行される。
図4に示す鋳型幅決定処理は、予め記憶部12に記憶されているプログラムに基づいて、主に処理部20により鋳造制御装置1の各要素と協働して実行される。
【0039】
まず、情報取得部23は、鋳型104を介して連続鋳造される鋳片201の鋳造速度を示す鋳造速度情報を取得する(S101)。情報取得部23は、鋳造速度センサ109によって検出された回転速度を示す回転速度情報を取得する。情報取得部23は、鋳造速度テーブル121を参照して、鋳造速度センサ109から取得した回転速度情報に対応する回転速度に関連付けられる鋳造速度を示す鋳造速度情報を取得する。
【0040】
次いで、情報取得部23は、連続鋳造において鋳片201に注水される冷却水153の水量を示す注水量情報を取得する(S102)。情報取得部23は、記憶部12に記憶される注水量情報122を、連続鋳造において鋳片201に注水される冷却水153の注水量を示す注水量情報として取得する。
【0041】
次いで、情報取得部23は、連続鋳造された鋳片201を圧下する圧力を示す圧力情報を取得する(S103)。情報取得部23は、記憶部12に記憶される圧力情報123を、連続鋳造された鋳片201を圧下する圧力を示す圧力情報として取得する。
【0042】
次いで、情報取得部23は、連続鋳造される鋳片201の所望の板幅と所望の板厚との比率を示すアスペクト比情報を取得する(S104)。情報取得部23は、記憶部12に記憶されるアスペクト比情報124を、連続鋳造される鋳片201の所望の板幅と所望の板厚との比率を示すアスペクト比情報として取得する。
【0043】
次いで、鋳型幅決定部24は、情報取得部23によって取得された情報、及び連続鋳造されて製造される鋳片201の所望の板幅から鋳型104の幅を決定する(S105)。鋳型幅決定部24によって決定される鋳型104の幅は、例えば鋳型104の出口側の幅である。鋳型幅決定部24は、以下の式(1)を使用して、鋳型104の幅を決定する。
Wmold = W * (A0 + A1 * Vc + A2 * VW + A3 * P + A4 * W/T) (1)
【0044】
式(1)において、板幅Wは連続鋳造されて製造される鋳片201の所望の板幅であり、鋳造速度VcはS101の処理で取得された鋳造速度情報に対応する鋳造速度であり、注水量VwはS102の処理で取得された注水量情報に対応する水量である。また、圧力PはS103の処理で取得された圧力情報に対応する圧力であり、比率W/TはS104の処理で取得されたアスペクト比情報に対応する比率であり、係数A0、A1、A2、A3及びA4は所与の定数である。
【0045】
そして、鋳型幅情報出力部25は、S105の処理において鋳型幅決定部24によって決定された鋳型104の幅を示す鋳型幅情報を鋳型104の鋳型板駆動部143に出力する(S106)。鋳型板駆動部143は、鋳型幅情報が入力されることに応じて、鋳型104の幅が鋳型幅情報に対応する幅になるように一対の短辺鋳型板142を移動する。
【0046】
(実施形態に係る鋳造制御装置の変形例)
鋳造制御装置1では、鋳型幅決定部24は、鋳造速度テーブル121から決定される鋳造速度情報、並びに記憶部12に記憶される注水量情報122、圧力情報123及びアスペクト比情報124から鋳型の幅を決定する。しかしながら、実施形態に係る鋳造制御装置では、鋳型幅決定部は、鋳造速度テーブル121から決定される鋳造速度情報と、注水量情報122、圧力情報123及びアスペクト比情報124の少なくとも1つから鋳型の幅を決定してもよい。
【0047】
例えば、実施形態に係る鋳造制御装置では、情報取得部は鋳造速度情報及び注水量情報を取得し、鋳型幅決定部は情報取得部によって取得された鋳造速度情報及び注水量情報から鋳型の幅を決定してもよい。
【0048】
また、実施形態に係る鋳造制御装置では、情報取得部は鋳造速度情報及び圧力情報を取得し、鋳型幅決定部は情報取得部によって取得された鋳造速度情報及び圧力情報から鋳型の幅を決定してもよい。
【0049】
また、実施形態に係る鋳造制御装置では、情報取得部は鋳造速度情報及びアスペクト比情報を取得し、鋳型幅決定部は情報取得部によって取得された鋳造速度情報及びアスペクト比情報から鋳型の幅を決定してもよい。
【0050】
また、実施形態に係る鋳造制御装置では、情報取得部は鋳造速度情報、注水量情報及び圧力情報を取得し、鋳型幅決定部は情報取得部によって取得された鋳造速度情報、注水量情報及びアスペクト比情報から鋳型の幅を決定してもよい。
【0051】
また、実施形態に係る鋳造制御装置では、情報取得部は鋳造速度情報、注水量情報及びアスペクト比情報を取得し、鋳型幅決定部は情報取得部によって取得された鋳造速度情報、注水量情報及び圧力情報から鋳型の幅を決定してもよい。
【0052】
また、実施形態に係る鋳造制御装置では、情報取得部は鋳造速度情報、圧力情報及びアスペクト比情報を取得し、鋳型幅決定部は情報取得部によって取得された鋳造速度情報、圧力情報及びアスペクト比情報から鋳型の幅を決定してもよい。
【0053】
また、実施形態に係る鋳造制御装置では、情報取得部は鋳造速度情報、注水量情報、圧力情報及びアスペクト比情報を取得し、鋳型幅決定部は情報取得部によって取得された4つの情報から鋳型の幅を決定してもよい。
【0054】
また、鋳造制御装置1は、鋳型の幅を決定するが、実施形態に係る鋳造制御装置は、特許文献1と同様に鋳型の幅に加えてテーパに関するパラメータを決定し、決定したパラメータによって鋳型104を制御してもよい。
【0055】
(実施形態に係る鋳造制御装置の作用効果)
実施形態に係る鋳造制御装置は、鋳造速度に加えて冷却水の注水量、軽圧下時の圧力、及び製造される鋳片の板幅と板厚との比率に基づいて鋳型の幅を決定するので、鋳造速度のみに基づいて鋳型の幅を決定する従来技術よりも高精度に鋳片の板幅を決定できる。
【0056】
図5(a)は鋳造速度と連続鋳造機100により鋳造される鋳片201の板幅との関係を示す図であり、
図5(b)は連続鋳造機100の二次冷却帯105における比水量と連続鋳造機100により鋳造される鋳片201の板幅との関係を示す図である。
図5(c)は、鋳片圧下装置106における鋳片圧下力と連続鋳造機100により鋳造される鋳片201の板幅との関係を示す図である。
図5(a)において横軸は鋳造速度を示し、
図5(b)において横軸は連続鋳造機100の二次冷却における比水量を示し、
図5(c)において横軸は鋳片圧下装置106における鋳片圧下力を示す。また、
図5(a)、5(b)及び5(c)において、縦軸は連続鋳造機100により鋳造される鋳片201の板幅を示す。
【0057】
図5(a)に示すように、鋳造速度と連続鋳造機100により鋳造される鋳片201の板幅との間には、鋳造速度が速くなるに従って鋳片201の板幅が厚くなるという相関関係が見出される。また、
図5(b)に示すように、二次冷却における比水量と連続鋳造機100により鋳造される鋳片201の板幅との間には、鋳造速度と鋳片201の板幅との間と同様に、比水量が大きくなるに従って鋳片201の板幅が厚くなるという相関関係が見出される。さらに、
図5(c)に示すように、鋳片圧下力と連続鋳造機100により鋳造される鋳片201の板幅との間には、鋳造速度と鋳片201の板幅との間と同様に、鋳片圧下力が高くなるに従って鋳片201の板幅が厚くなるという相関関係が見出される。
【0058】
実施形態に係る鋳造制御装置は、鋳造速度と同様に、比水量、鋳片圧下力及び鋳片201の板幅と板厚との比率に基づいて、鋳型の幅から鋳造される鋳片201の板幅が推定可能であるという知見に基づいて、鋳造される鋳片の板幅を高精度に制御できる。
【0059】
図6(a)は、特許文献1に示す式(1)により決定される鋳片の板幅と鋳造された鋳片の板幅の実測値との相関関係を示す図である。
図6(b)は、鋳型幅決定部24が使用する式(1)により決定される鋳片の板幅と鋳造された鋳片の板幅の実測値との相関関係を示す図である。
図6(c)は、鋳型幅決定部24が使用する式(1)に含まれる変数の中で採用される変数を変更した式により決定される鋳片の板幅と、鋳造された鋳片の板幅の実測値との間の一致度を示す図である。
図6(a)及び6(b)において、横軸は式により決定される予測板幅を示し、縦軸は対応する鋳型幅で鋳造された鋳片の板幅の実測値を示す。
【0060】
図6(c)において、棒601~608のそれぞれは、式(1)に含まれる変数の中で採用される変数を変更した式により決定される鋳片の板幅と、鋳造された鋳片の板幅の実測値の間の一致度を示す。棒601は、式(1)で規定される変数の中で、鋳造速度Vcのみを変数として採用した以下の式(2)により決定される鋳片の板幅と、鋳造された鋳片の板幅の実測値の間の一致度を示す。
W
mold = W * (A
0 + A
1 * Vc) (2)
【0061】
棒602は、式(1)で規定される変数の中で、鋳造速度Vc及び注水量Vwを変数として採用した以下の式(3)により決定される鋳片の板幅と、鋳造された鋳片の板幅の実測値の間の一致度を示す。
Wmold = W * (A0 + A1 * Vc + A2 * VW) (3)
【0062】
棒603は、式(1)で規定される変数の中で、鋳造速度Vc及び圧力Pを変数として採用した以下の式(4)により決定される鋳片の板幅と、鋳造された鋳片の板幅の実測値の間の一致度を示す。
Wmold = W * (A0 + A1 * Vc + A3 * P) (4)
【0063】
棒604は、式(1)で規定される変数の中で、鋳造速度Vc及び比率W/Tを変数として採用した以下の式(5)により決定される鋳片の板幅と、鋳造された鋳片の板幅の実測値の間の一致度を示す。
Wmold = W * (A0 + A1 * Vc + A4 * W/T) (5)
【0064】
棒605は、式(1)で規定される変数の中で、鋳造速度Vc、注水量Vw及び圧力Pを変数として採用した以下の式(6)により決定される鋳片の板幅と、鋳造された鋳片の板幅の実測値の間の一致度を示す。
Wmold = W * (A0 + A1 * Vc + A2 * VW + A3 * P) (6)
【0065】
棒606は、式(1)で規定される変数の中で、鋳造速度Vc、注水量Vw及び比率W/Tを変数として採用した以下の式(3)により決定される鋳片の板幅と、鋳造された鋳片の板幅の実測値の間の一致度を示す。
Wmold = W * (A0 + A1 * Vc + A2 * VW + A4 * W/T) (7)
【0066】
棒607は、式(1)で規定される変数の中で鋳造速度Vc、圧力P及び比率W/Tを変数として採用した以下の式(8)により決定される鋳片の板幅と、鋳造された鋳片の板幅の実測値の間の一致度を示す。
Wmold = W * (A0 + A1 * Vc + A3 * P + A4 * W/T) (8)
【0067】
棒608は、式(1)でを使用して決定される鋳片の板幅と、鋳造された鋳片の板幅の実測値の間の一致度を示す。
【0068】
棒601に示すように、式(2)を使用して鋳造速度Vcのみを変数として採用して予測した鋳片の板幅と鋳造された鋳片の板幅の実測値の間の一致度は、83.6%である。一方、棒608に示すように、鋳造制御装置1により式(1)を使用して鋳造速度Vcのみを変数として採用して予測した鋳片の板幅と鋳造された鋳片の板幅の実測値の間の一致度は、93.4%である。鋳造制御装置1が実行する鋳型幅決定処理は、従来の鋳型幅決定処理よりも、板幅の誤差が±10mmの範囲内に含まれる鋳片を約10%多く製造することができる。
【0069】
棒602に示すように、鋳造制御装置1により式(3)を使用して鋳造速度Vc及び注水量Vwを変数として採用して予測した鋳片の板幅と鋳造された鋳片の板幅の実測値の間の一致度は、86.2%である。式(3)を使用して実行する鋳型幅決定処理は、従来の鋳型幅決定処理よりも、板幅の誤差が±10mmの範囲内に含まれる鋳片を約3%多く製造することができる。
【0070】
棒603に示すように、鋳造制御装置1により式(4)を使用して鋳造速度Vc及び圧力Pを変数として採用して予測した鋳片の板幅と鋳造された鋳片の板幅の実測値の間の一致度は、85.1%である。式(4)を使用して実行する鋳型幅決定処理は、従来の鋳型幅決定処理よりも、板幅の誤差が±10mmの範囲内に含まれる鋳片を約1.5%多く製造することができる。
【0071】
棒604に示すように、鋳造制御装置1により式(5)を使用して鋳造速度Vc及び比率W/Tを変数として採用して予測した鋳片の板幅と鋳造された鋳片の板幅の実測値の間の一致度は、90.1%である。式(5)を使用して実行する鋳型幅決定処理は、従来の鋳型幅決定処理よりも、板幅の誤差が±10mmの範囲内に含まれる鋳片を約6.5%多く製造することができる。
【0072】
棒605に示すように、鋳造制御装置1により式(6)を使用して鋳造速度Vc、注水量Vw及び圧力Pを変数として採用して予測した鋳片の板幅と鋳造された鋳片の板幅の実測値の間の一致度は、88.2%である。式(6)を使用して実行する鋳型幅決定処理は、従来の鋳型幅決定処理よりも、板幅の誤差が±10mmの範囲内に含まれる鋳片を約4.5%多く製造することができる。
【0073】
棒606に示すように、鋳造制御装置1により式(7)を使用して鋳造速度Vc、注水量Vw及び比率W/Tを変数として採用して予測した鋳片の板幅と鋳造された鋳片の板幅の実測値の間の一致度は、89.9%である。式(7)を使用して実行する鋳型幅決定処理は、従来の鋳型幅決定処理よりも、板幅の誤差が±10mmの範囲内に含まれる鋳片を約6.5%多く製造することができる。
【0074】
棒607に示すように、鋳造制御装置1により式(8)を使用して鋳造速度Vc、圧力P及び比率W/Tを変数として採用して予測した鋳片の板幅と鋳造された鋳片の板幅の実測値の間の一致度は、89.9%である。式(8)を使用して実行する鋳型幅決定処理は、従来の鋳型幅決定処理よりも、板幅の誤差が±10mmの範囲内に含まれる鋳片を約6.5%多く製造することができる。
【0075】
以上、鋳造速度Vc等及び製造される鋳片の所望の板幅に基づいて鋳型の幅を決定する鋳造制御装置が説明されたが、本発明は、鋳造速度Vc等及び鋳型の幅に基づいて鋳片の板幅を推定する鋳片幅推定装置であってもよい。
【0076】
(実施形態に係る鋳片板幅推定装置の構成及び機能)
図7は、実施形態に係る鋳片板幅推定装置を示すブロック図である。
【0077】
鋳片板幅推定装置2は、処理部30を処理部20の代わりに有することが鋳造制御装置1と相違する。処理部30は、鋳片板幅推定部34及び鋳片板幅情報出力部35を鋳型幅決定部24及び鋳型幅情報出力部25の代わりに有することが処理部20と相違する。鋳片板幅推定部34及び鋳片板幅情報出力部35以外の鋳片板幅推定装置2の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付された鋳造制御装置1の構成要素の構成及び機能と同一なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0078】
(実施形態に係る鋳片板幅推定装置による鋳片板幅決定処理)
図8は、鋳片板幅推定装置2により実行される鋳片板幅推定処理のフローチャートである。
図8に示す鋳片板幅推定処理は、予め記憶部12に記憶されているプログラムに基づいて、主に処理部30により鋳片板幅推定装置2の各要素と協働して実行される。
【0079】
S201~S204の処理は、S101~S104の処理と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。S204の処理が終了すると、鋳片板幅推定部34は、情報取得部23によって取得された情報及び鋳型104の幅から、連続鋳造されて製造される鋳片201の板幅を推定する(S205)。鋳片板幅推定部34は、上述の式(1)を使用して、鋳片201の板幅を推定する。そして、鋳片板幅情報出力部35は、S205の処理において鋳片板幅推定部34によって決定された鋳片201の板幅を示す鋳片板幅情報を出力する(S206)。
【符号の説明】
【0080】
1 鋳造制御装置
2 鋳片板幅推定装置
20、30 処理部
21 水量制御部
22 圧下制御部
23 情報取得部
24 鋳型幅決定部
25 鋳型幅情報出力部
34 鋳片板幅推定部
35 鋳片板幅情報出力部
100 連続鋳造機
104 鋳型
105 二次冷却帯
106 鋳片圧下装置
109 鋳造速度センサ