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  • 特開-燃料用中空構造体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162764
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】燃料用中空構造体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20221018BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20221018BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20221018BHJP
   B32B 27/22 20060101ALI20221018BHJP
   F16L 9/12 20060101ALI20221018BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
B32B27/34
B32B1/08 B
B32B27/18 J
B32B27/22
F16L9/12
F02M37/00 321Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067747
(22)【出願日】2021-04-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】山下 桃子
(72)【発明者】
【氏名】中村 仁
(72)【発明者】
【氏名】小田 尚史
【テーマコード(参考)】
3H111
4F100
【Fターム(参考)】
3H111AA04
3H111BA15
3H111CB05
3H111CB14
3H111DA05
3H111DA09
3H111DB08
4F100AD11D
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK17D
4F100AK46A
4F100AK46B
4F100AK46C
4F100AK47B
4F100AL07A
4F100AL07B
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100CA21D
4F100DA11A
4F100EH202
4F100GB31
4F100JD05
4F100JG01D
4F100JJ04
4F100JK10
4F100JL11
(57)【要約】
【課題】 フッ素樹脂を含む導電層を用いた中空構造体であって、かつ、燃料バリア性および低温耐衝撃性に優れ、さらに層間接着性に優れた燃料用中空構造体の提供。
【解決手段】 外側から、ポリアミド樹脂層(A)、ポリアミド樹脂層(B)、ポリアミド樹脂層(C)および導電層(D)を、順に有する、燃料用中空構造体であって、
前記ポリアミド樹脂層(A)が、ポリアミド樹脂(a)を含み、ポリアミド樹脂層(B)が、ポリオレフィンと、メタキシリレンジアミン由来の構成単位と炭素数4~8の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を含むポリアミド樹脂(b1)と、キシリレンジアミン由来の構成単位と、炭素数9~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を含むポリアミド樹脂(b2)とを含み、ポリアミド樹脂層(C)が、ポリアミド樹脂(c)を含み、前記導電層(D)がフッ素樹脂と導電性物質を含む、燃料用中空構造体。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側から、ポリアミド樹脂層(A)、ポリアミド樹脂層(B)、ポリアミド樹脂層(C)および導電層(D)を、前記順に有する、燃料用中空構造体であって、
前記ポリアミド樹脂層(A)が、ポリアミド樹脂(a)を含み、
前記ポリアミド樹脂(a)は、全構成単位の90モル%以上が、炭素数10~12のラクタム由来の構成単位、炭素数10~12のアミノカルボン酸由来の構成単位、炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位、および、炭素数6~12の脂肪族ジアミン由来の構成単位の1種以上であり、
前記ポリアミド樹脂層(B)が、ポリオレフィンと、ポリアミド樹脂(b1)と、ポリアミド樹脂(b2)とを含み、
前記ポリオレフィンの含有量は、前記ポリアミド樹脂層(B)の5~40質量%であり、
前記ポリアミド樹脂(b1)とポリアミド樹脂(b2)の含有量の質量比率(b1/b2)が55/45~95/5であり、
前記ポリアミド樹脂(b1)は、ジアミン由来の構成単位がメタキシリレンジアミン由来の構成単位を70モル%以上含み、ジカルボン酸由来の構成単位が炭素数4~8の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を70モル%以上含み、
前記ポリアミド樹脂(b2)は、ジアミン由来の構成単位がキシリレンジアミン由来の構成単位を70モル%以上含み、ジカルボン酸由来の構成単位が炭素数9~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を70モル%以上含み、
前記ポリアミド樹脂層(C)が、ポリアミド樹脂(c)を含み、
前記ポリアミド樹脂(c)は、全構成単位の90モル%以上が、炭素数10~12のラクタム由来の構成単位、炭素数10~12のアミノカルボン酸由来の構成単位、炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位、および、炭素数6~12の脂肪族ジアミン由来の構成単位の1種以上であり、
前記導電層(D)がフッ素樹脂と導電性物質を含む、燃料用中空構造体。
【請求項2】
前記ポリアミド樹脂層(A)が、ポリオレフィンを含む、請求項1に記載の燃料用中空構造体。
【請求項3】
前記ポリアミド樹脂層(A)に含まれるポリオレフィン、および、ポリアミド樹脂層(B)に含まれるポリオレフィンが、それぞれ、酸変性ポリオレフィンである、請求項2に記載の燃料用中空構造体。
【請求項4】
前記ポリアミド樹脂層(C)に含まれるポリオレフィンの含有量が0~7質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の燃料用中空構造体。
【請求項5】
前記ポリアミド樹脂層(A)の厚さとポリアミド樹脂層(C)の厚さの比である、層(A)の厚さ/層(C)の厚さが3.0~9.0倍であり、
前記ポリアミド樹脂層(B)の厚さとポリアミド樹脂層(C)の厚さの比である、層(B)の厚さ/層(C)の厚さが1.0~3.0倍である、請求項1~4のいずれか1項に記載の燃料用中空構造体。
【請求項6】
前記ポリアミド樹脂層(A)が、ポリオレフィンを含み、
前記ポリアミド樹脂層(A)およびポリアミド樹脂層(B)に含まれるポリオレフィンが、それぞれ、酸変性ポリオレフィンであり、
前記ポリアミド樹脂層(C)に含まれるポリオレフィンの含有量が0~7質量%である、請求項5に記載の燃料用中空構造体。
【請求項7】
前記ポリアミド樹脂層(B)は、前記ポリオレフィンと、前記ポリアミド樹脂(b1)と、前記ポリアミド樹脂(b2)の合計が、前記ポリアミド樹脂層(B)の95質量%超を占める、請求項1~6のいずれか1項に記載の燃料用中空構造体。
【請求項8】
前記フッ素樹脂が、フルオロエチレン(共)重合体を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の燃料用中空構造体。
【請求項9】
前記フッ素樹脂が、エチレン/フルオロエチレンプロピレン共重合体を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の燃料用中空構造体。
【請求項10】
前記導電性物質が、導電性炭素化合物を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の燃料用中空構造体。
【請求項11】
前記ポリアミド樹脂層(A)が、可塑剤を、前記ポリアミド樹脂層(A)中、1~20質量%の割合で含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の燃料用中空構造体。
【請求項12】
前記ポリアミド樹脂層(C)が、可塑剤を、前記ポリアミド樹脂層(C)中、1~20質量%の割合で含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の燃料用中空構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料用中空構造体に関する。特に、液体燃料用中空構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境汚染防止の観点から、厳しい排ガス規制が課せられており、燃料輸送などの用途に用いられるチューブ、ホース、パイプ等の中空構造体には、揮発性炭化水素等の揮発性成分が透過して大気中に拡散することを抑えるために、高いガスバリア性が必要とされる。また、近年、メタノールおよびエタノール等のアルコールをブレンドしてなるアルコールガソリンが実用化されつつある。アルコールガソリンは透過性が高く、大気中に揮発しやすいため、中空構造体のガスバリア性をより高める必要がある。
【0003】
従来、ポリアミド11やポリアミド12等の脂肪族ポリアミドが、耐薬品性に優れていることから、燃料輸送用の中空構造体の材料として使用されてきた。しかし、これらの脂肪族ポリアミドから形成された中空構造体は、靭性、耐薬品性および柔軟性の点では優れているものの、燃料バリア性が十分でなく、その改良が望まれていた。
一方、燃料バリア性に優れる樹脂としては、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)などのキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂が知られている。
そこで、これらを組み合わせた燃料用中空構造体が検討されている。
例えば、特許文献1には、ポリアミド層(A)およびポリアミド層(B)を有する多層構造体であって、ポリアミド層(A)が、炭素数10~12のラクタム由来の構成単位および炭素数10~12のアミノカルボン酸由来の構成単位の少なくとも一方を含むポリアミド(a1)および炭素数6~12の脂肪族ジアミン由来の構成単位および炭素数10~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を含むポリアミド(a2)からなる群から選ばれる少なくとも一種のポリアミド(A1)を含むポリアミド組成物(A)から構成され、ポリアミド層(B)が、キシリレンジアミン由来の構成単位を70モル%以上含むジアミン単位と、炭素数4~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位とを含むポリアミド樹脂(b1)、変性ポリオレフィン(B2)、および、炭素数6~12のラクタム由来の構成単位および炭素数6~12のアミノカルボン酸由来の構成単位の少なくとも一方を含むポリアミド樹脂(b1)および炭素数6~12の脂肪族ジアミン由来の構成単位および炭素数10~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を含むポリアミド(b2)からなる群から選ばれる少なくとも一種のポリアミド(B3)を含み、ポリアミド樹脂(b1)100質量部に対し、変性ポリオレフィン(B2)の含有量が5~15質量部であり、ポリアミド(B3)の含有量が5~20質量部であるポリアミド組成物(B)から構成される、多層構造体(パイプ、ホース、チューブ)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/094564号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような燃料用中空構造体には、燃料バリア性および低温耐衝撃性が求められる。さらに、近年、液体燃料を通す用途においては導電性も求められるようになっている。導電性を達成するために、導電材料として導電性物質を含むフッ素樹脂を用いた導電層を設けることが考えられる。しかしながら、フッ素樹脂はポリアミド樹脂と接着せず、ポリアミド樹脂とフッ素樹脂を共押出したチューブは、ポリアミド樹脂層とフッ素樹脂層(導電層)の界面で剥離してしまう。この課題を解決するべく、一般にフッ素樹脂にポリアミド樹脂と化学結合する酸性官能基を付与し、共押出の際にポリアミド樹脂層とフッ素樹脂層(導電層)の間の接着性を改善している。
一方、燃料用中空構造体に使用されるポリアミド樹脂には、耐衝撃性の改善を目的に、ポリオレフィンを配合することがある。特に、ポリアミド樹脂との接着性を持たすために酸変性したポリオレフィンを配合することがある。そのため、ポリアミド樹脂とポリオレフィンを含むポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂のアミノ基とポリオレフィンの酸基が反応してしまい、フッ素樹脂と共押出する前段階には、前記ポリアミド樹脂組成物が低アミノ基濃度となっている場合がある。このような、低アミノ基濃度のポリアミド樹脂組成物と、フッ素樹脂層(導電層)との接着性が落ちてしまう傾向にある。特に、燃料を封入した後の中空構造体において、その傾向が拡大する傾向にある。さらに、一般的に多層の中空構造体の層間が剥離することで、低温耐衝撃性が劣るだけでなく、燃料バリア性が低下することも分かっている。
また、導電層に用いられるフッ素樹脂は、一般的に高価であるため薄く積層させることが工業的に好ましいが、層の厚みを薄くすると、燃料バリア性が不十分となるため、バリア層を別に設けることが一般的である。すなわち、フッ素樹脂を含む導電層を用い、かつ、燃料バリア性および低温耐衝撃性に優れ、さらに層間接着性に優れた燃料用中空構造体は得られていなかった。
本発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、フッ素樹脂を含む導電層を用いた中空構造体であって、かつ、燃料バリア性および低温耐衝撃性に優れ、さらに層間接着性に優れた燃料用中空構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題のもと、中空構造体を少なくとも4層からなる構造体とし、導電層とバリア層の間に所定のポリアミド樹脂層を設けることにより、上記課題は解決された。具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>外側から、ポリアミド樹脂層(A)、ポリアミド樹脂層(B)、ポリアミド樹脂層(C)および導電層(D)を、前記順に有する、燃料用中空構造体であって、前記ポリアミド樹脂層(A)が、ポリアミド樹脂(a)を含み、前記ポリアミド樹脂(a)は、全構成単位の90モル%以上が、炭素数10~12のラクタム由来の構成単位、炭素数10~12のアミノカルボン酸由来の構成単位、炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位、および、炭素数6~12の脂肪族ジアミン由来の構成単位の1種以上であり、前記ポリアミド樹脂層(B)が、ポリオレフィンと、ポリアミド樹脂(b1)と、ポリアミド樹脂(b2)とを含み、前記ポリオレフィンの含有量は、前記ポリアミド樹脂層(B)の5~40質量%であり、前記ポリアミド樹脂(b1)とポリアミド樹脂(b2)の含有量の質量比率(b1/b2)が55/45~95/5であり、前記ポリアミド樹脂(b1)は、ジアミン由来の構成単位がメタキシリレンジアミン由来の構成単位を70モル%以上含み、ジカルボン酸由来の構成単位が炭素数4~8の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を70モル%以上含み、前記ポリアミド樹脂(b2)は、ジアミン由来の構成単位がキシリレンジアミン由来の構成単位を70モル%以上含み、ジカルボン酸由来の構成単位が炭素数9~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を70モル%以上含み、前記ポリアミド樹脂層(C)が、ポリアミド樹脂(c)を含み、前記ポリアミド樹脂(c)は、全構成単位の90モル%以上が、炭素数10~12のラクタム由来の構成単位、炭素数10~12のアミノカルボン酸由来の構成単位、炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位、および、炭素数6~12の脂肪族ジアミン由来の構成単位の1種以上であり、前記導電層(D)がフッ素樹脂と導電性物質を含む、燃料用中空構造体。
<2>前記ポリアミド樹脂層(A)が、ポリオレフィンを含む、<1>に記載の燃料用中空構造体。
<3>前記ポリアミド樹脂層(A)に含まれるポリオレフィン、および、ポリアミド樹脂層(B)に含まれるポリオレフィンが、それぞれ、酸変性ポリオレフィンである、<2>に記載の燃料用中空構造体。
<4>前記ポリアミド樹脂層(C)に含まれるポリオレフィンの含有量が0~7質量%である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の燃料用中空構造体。
<5>前記ポリアミド樹脂層(A)の厚さとポリアミド樹脂層(C)の厚さの比である、層(A)の厚さ/層(C)の厚さが3.0~9.0倍であり、前記ポリアミド樹脂層(B)の厚さとポリアミド樹脂層(C)の厚さの比である、層(B)の厚さ/層(C)の厚さが1.0倍超3.0倍以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の燃料用中空構造体。
<6>前記ポリアミド樹脂層(A)が、ポリオレフィンを含み、前記ポリアミド樹脂層(A)およびポリアミド樹脂層(B)に含まれるポリオレフィンが、それぞれ、酸変性ポリオレフィンであり、前記ポリアミド樹脂層(C)に含まれるポリオレフィンの含有量が0~7質量%である、<5>に記載の燃料用中空構造体。
<7>前記ポリアミド樹脂層(B)は、前記ポリオレフィンと、前記ポリアミド樹脂(b1)と、前記ポリアミド樹脂(b2)の合計が、前記ポリアミド樹脂層(B)の95質量%超を占める、<1>~<6>のいずれか1つに記載の燃料用中空構造体。
<8>前記フッ素樹脂が、フルオロエチレン(共)重合体を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の燃料用中空構造体。
<9>前記フッ素樹脂が、エチレン/フルオロエチレンプロピレン共重合体を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の燃料用中空構造体。
<10>前記導電性物質が、導電性炭素化合物を含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載の燃料用中空構造体。
<11>前記ポリアミド樹脂層(A)が、可塑剤を、前記ポリアミド樹脂層(A)中、1~20質量%の割合で含む、<1>~<10>のいずれか1つに記載の燃料用中空構造体。
<12>前記ポリアミド樹脂層(C)が、可塑剤を、前記ポリアミド樹脂層(C)中、1~20質量%の割合で含む、<1>~<11>のいずれか1つに記載の燃料用中空構造体。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、フッ素樹脂を含む導電層を用いた中空構造体であって、かつ、燃料バリア性および低温耐衝撃性に優れ、さらに層間接着性に優れた燃料用中空構造体を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の燃料用中空構造体の断面の一例を示す模式図である。
図2】実施例における層間接着の評価方法を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書における中空構造体とは、中空構造を有する構造体であって、断面に対して長手方向が十分に長いものが好ましく、チューブ、パイプ、ホース等を含み、チューブであることが好ましい。
本明細書で示す規格が年度によって、測定方法等が異なる場合、特に述べない限り、2021年1月1日時点における規格に基づくものとする。
【0010】
本実施形態の燃料用中空構造体(以下、単に、「中空構造体」ということがある)は、外側から、ポリアミド樹脂層(A)、ポリアミド樹脂層(B)、ポリアミド樹脂層(C)および導電層(D)を、前記順に有する、燃料用中空構造体であって、前記ポリアミド樹脂層(A)が、ポリアミド樹脂(a)を含み、前記ポリアミド樹脂(a)は、全構成単位の90モル%以上が、炭素数10~12のラクタム由来の構成単位、炭素数10~12のアミノカルボン酸由来の構成単位、炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位、および、炭素数6~12の脂肪族ジアミン由来の構成単位の1種以上であり、前記ポリアミド樹脂層(B)が、ポリオレフィンと、ポリアミド樹脂(b1)と、ポリアミド樹脂(b2)とを含み、前記ポリオレフィンの含有量は、前記ポリアミド樹脂層(B)の5~40質量%であり、前記ポリアミド樹脂(b1)とポリアミド樹脂(b2)の含有量の質量比率(b1/b2)が55/45~95/5であり、前記ポリアミド樹脂(b1)は、ジアミン由来の構成単位がメタキシリレンジアミン由来の構成単位を70モル%以上含み、ジカルボン酸由来の構成単位が炭素数4~8の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を70モル%以上含み、前記ポリアミド樹脂(b2)は、ジアミン由来の構成単位がキシリレンジアミン由来の構成単位を70モル%以上含み、ジカルボン酸由来の構成単位が炭素数9~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を70モル%以上含み、前記ポリアミド樹脂層(C)が、ポリアミド樹脂(c)を含み、前記ポリアミド樹脂(c)は、全構成単位の90モル%以上が、炭素数10~12のラクタム由来の構成単位、炭素数10~12のアミノカルボン酸由来の構成単位、炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位、および、炭素数6~12の脂肪族ジアミン由来の構成単位の1種以上であり、前記導電層(D)がフッ素樹脂と導電性物質を含むことを特徴とする。
このような構成とすることにより、フッ素樹脂を導電層として用いた中空構造体であって、かつ、燃料バリア性および低温耐衝撃性に優れ、さらに層間接着性に優れた燃料用中空構造体が得られる。
【0011】
<燃料用中空構造体>
本実施形態における燃料用中空構造体(以下、単に、「中空構造体」ということがある)は、外側から、ポリアミド樹脂層(A)(以下、単に、「層(A)」ということがある)、ポリアミド樹脂層(B)(以下、単に、「層(B)」ということがある)、ポリアミド樹脂層(C)(以下、単に、「層(C)」ということがある)、および、導電層(D)(以下、単に、「層(D)」ということがある)を前記順に有する。具体的には、図1は、本発明の燃料用中空構造体の断面の一例を示す模式図であり、Aはポリアミド樹脂層(A)を、Bはポリアミド樹脂層(B)を、Cはポリアミド樹脂層(C)を、Dは導電層(D)をそれぞれ示している。
本実施形態の中空構造体においては、ポリアミド樹脂層(A)とポリアミド樹脂層(B)が接していても接していなくてもよいが、通常、ポリアミド樹脂層(A)とポリアミド樹脂層(B)が接している。ポリアミド樹脂層(A)とポリアミド樹脂層(B)が接していない場合、その間には両層と接着する酸基を有する接着性樹脂またはポリアミド樹脂を積層することが望ましく、酸基を有する接着性樹脂を積層させることがより望ましい。本実施形態の中空構造体においては、ポリアミド樹脂層(B)とポリアミド樹脂層(C)が接していても接していなくてもよいが、通常、ポリアミド樹脂層(B)とポリアミド樹脂層(C)が接している。ポリアミド樹脂層(B)とポリアミド樹脂層(C)が接していない場合、その間には両層と接着する酸基を有する接着性樹脂またはポリアミド樹脂を積層することが望ましく、酸基を有する接着性樹脂を積層させることがより望ましい。本実施形態の中空構造体においては、ポリアミド樹脂層(C)と導電層(D)が接していても接していなくてもよいが、通常、ポリアミド樹脂層(C)と導電層(D)が接している。また、ポリアミド樹脂層(A)、ポリアミド樹脂層(B)、ポリアミド樹脂層(C)および導電層(D)は、それぞれ1層ずつであってもよいが、2層以上ずつであってもよい。加えて、層(D)の内側および/または層(A)の外側にさらに層を有していてもよい。しかしながら、層(D)の内側には層を有さないことが好ましい。
本実施形態の中空構造体の好ましい層構成は、外側から、ポリアミド樹脂層(A)、ポリアミド樹脂層(B)、ポリアミド樹脂層(C)および導電層(D)を、前記順に有し、ポリアミド樹脂層(A)とポリアミド樹脂層(B)が接しており、ポリアミド樹脂層(B)とポリアミド樹脂層(C)が接しており、ポリアミド樹脂層(C)と導電層(D)が接していることが好ましい。さらに、導電層(D)の外側には何ら層を有さない、すなわち、導電層(D)が最内層であることが好ましい。また、層(D)と層(A)の間に、層(C)と層(B)が交互に繰り返し設けられている構造であってもよい。
【0012】
本実施形態の中空構造体の好ましい層構成は、以下の通りである。
層(D)/層(C)/層(B)/層(A)
層(D)/層(C)/層(B)/層(A)/層(A)
層(D)/層(C)/層(B)/層(B)/層(A)
層(D)/層(C)/層(C)/層(B)/層(A)
層(D)/層(D)/層(C)/層(B)/層(A)
層(D)/層(C)/層(C)/層(B)/層(B)/層(A)
層(D)/層(C)/層(B)/層(B)/層(A)/層(A)
層(D)/層(C)/層(C)/層(B)/層(A)/層(A)
層(D)/層(D)/層(C)/層(B)/層(B)/層(A)
層(D)/層(D)/層(C)/層(B)/層(A)/層(A)
層(D)/層(D)/層(C)/層(C)/層(B)/層(A)
層(D)/層(C)/層(B)/層(C)/層(B)/層(A)
層(D)/層(D)/層(C)/層(C)/層(B)/層(B)/層(A)
層(D)/層(D)/層(C)/層(C)/層(B)/層(A)/層(A)
層(D)/層(D)/層(C)/層(B)/層(B)/層(A)/層(A)
層(D)/層(C)/層(C)/層(B)/層(B)/層(A)/層(A)
層(D)/層(D)/層(C)/層(C)/層(B)/層(B)/層(A)/層(A)
さらに、上記層構成において、層(D)の内側に、さらに、層を有する層構成であってもよい。また、上記層構成において、層(A)の外側に、さらに、層を有する層構成も好ましい。
本実施形態の中空構造体が、層(A)~層(D)以外の層を有する場合、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレンおよび塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂から構成される樹脂層、接着層などが例示される。
【0013】
<ポリアミド樹脂層(A)>
ポリアミド樹脂層(A)は、ポリアミド樹脂(a)を含み、前記ポリアミド樹脂(a)は、全構成単位の90モル%以上が、炭素数10~12のラクタム由来の構成単位、炭素数10~12のアミノカルボン酸由来の構成単位、炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位、および、炭素数6~12の脂肪族ジアミン由来の構成単位の1種以上である層である。このように比較的柔軟性の高いポリアミド樹脂(a)を含むポリアミド樹脂層(A)を用いることにより、低温耐衝撃性を向上させることができる。
【0014】
ポリアミド樹脂(a)は、全構成単位の90モル%以上が、炭素数10~12のラクタム由来の構成単位、炭素数10~12のアミノカルボン酸由来の構成単位、炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位、および、炭素数6~12の脂肪族ジアミン由来の構成単位の1種以上であるが、全構成単位の95モル%以上が上記構成単位から構成されることが好ましく、全構成単位の99モル%以上が上記構成単位から構成されることがより好ましい。
また、炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と炭素数6~12の脂肪族ジアミン由来の構成単位の両方を含む場合、少なくとも一方は、炭素数10~12であることが好ましい。このような構成とすることにより、より柔軟性に優れた中空構造体が得られる。
また、ポリアミド樹脂(a)は、下記(a1)および/または(a2)のポリアミド樹脂を含むことがより好ましく、(a1)のポリアミド樹脂を含むことがさらに好ましい。
(a1)全構成単位の90モル%以上が炭素数10~12のラクタム由来の構成単位および/または炭素数10~12のアミノカルボン酸由来の構成単位(好ましくは炭素数10~12のラクタム由来の構成単位)であるポリアミド樹脂
(a2)全構成単位の90モル%以上が、炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と炭素数6~12の脂肪族ジアミン由来の構成単位であるポリアミド樹脂
【0015】
ポリアミド樹脂(a1)において、炭素数10~12のラクタム由来の構成単位および炭素数10~12のアミノカルボン酸由来の構成単位の炭素数は、柔軟性、入手容易性等の観点から炭素数11~12が好ましく、炭素数12がより好ましい。
炭素数10~12のラクタム由来の構成単位および炭素数10~12のアミノカルボン酸由来の構成単位は、通常、下記式(I)で示されるω-アミノカルボン酸単位からなる。
【化1】
式(I)において、pは9~11の整数を表し、好ましくは10~11であり、さらに好ましくは11である。
ポリアミド樹脂(a1)は、式(I)で表される構成単位を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
炭素数10~12のラクタム由来の構成単位を構成する化合物としては、具体的には、デカンラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタムが挙げられる。また、炭素数10~12のアミノカルボン酸由来の構成単位を構成する化合物としては、10-アミノデカン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸が挙げられる。
【0016】
ポリアミド樹脂(a1)は、ラクタム由来の構成単位およびアミノカルボン酸由来の構成単位以外の他の構成単位を含んでいてもよい。他の構成単位としては、炭素数10~12のラクタム以外のラクタム由来の構成単位、炭素数10~12のアミノカルボン酸以外のアミノカルボン酸由来の構成単位、ジアミン由来の構成単位、ジカルボン酸由来の構成単位が挙げられる。
【0017】
炭素数10~12のラクタム以外のラクタムとしては、炭素数3~9のラクタムが挙げられ、具体的には、ε-カプロラクタム、ω-エナントラクタム、α-ピロリドン、α-ピペリドンなどが例示される。また、炭素数10~12のアミノカルボン酸以外のアミノカルボン酸としては、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸などが例示される。これらは1種でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、1,13-トリデカンジアミン、1,14-テトラデカンジアミン、1,15-ペンタデカンジアミン、1,16-ヘキサデカンジアミン、1,17-ヘプタデカンジアミン、1,18-オクタデカンジアミン、1,19-ノナデカンジアミン、1,20-エイコサンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2,2,4-または2,4,4-トリメチルヘキサンジアミンなどの脂肪族ジアミン;1,3-または1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-または1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、5-アミノ-2,2,4-トリメチルシクロペンタンメタナミン、5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメタナミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミンなどの脂環式ジアミン;パラキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミンなどの芳香環を有するジアミン等を挙げることができる。これらは1種でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
ジカルボン酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3-または1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン-4,4’-ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-、2,6-または2,7-ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸等を挙げることができる。これらは1種でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
ポリアミド樹脂(a1)としては、ウンデカンラクタム由来の構成単位および11-アミノウンデカン酸由来の構成単位の少なくとも一方を主成分とするポリアミド11、または、ドデカンラクタム由来の構成単位および12-アミノドデカン酸由来の構成単位の少なくとも一方を主成分とするポリアミド12、あるいは、これらポリアミド11とポリアミド12の混合物が好ましく、ポリアミド12がより好ましい。
【0021】
ポリアミド樹脂(a1)は、また、国際公開第2017/094564号の段落0011~0019の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0022】
ポリアミド樹脂(a2)においては、全構成単位の90モル%以上が、炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と炭素数6~12の脂肪族ジアミン由来の構成単位である。ポリアミド樹脂(a2)は、好ましくは、炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位および炭素数6~12の脂肪族ジアミン由来の構成単位の少なくとも一方の炭素数が10~12であり、より好ましくは、炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位および炭素数6~12の脂肪族ジアミン由来の構成単位の両方の炭素数が10~12である。
炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸は、炭素数10~12の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましく、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸等がより好ましい。ポリアミド樹脂(a2)は炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0023】
炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、炭素数5以下または炭素数13以上の脂肪族ジカルボン酸、および、芳香族ジカルボン酸が例示される。炭素数5以下または炭素数13以上の脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸が例示される。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸が例示される。これらは1種でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
一方、炭素数6~12の脂肪族ジアミンを構成する脂肪族基は、直鎖状または分岐状の2価の脂肪族炭化水素基であり、飽和脂肪族基であっても、不飽和脂肪族基であってもよいが、通常は、直鎖状の飽和脂肪族基である。脂肪族基の炭素数は、好ましくは8~12であり、より好ましくは9~12であり、さらに好ましくは10~12である。ポリアミド樹脂(a2)のジアミン由来の構成単位を構成しうる化合物は、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミンが例示される。これらは1種でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
ポリアミド樹脂(a2)は、炭素数6~12の脂肪族ジアミン由来の構成単位以外の脂肪族ジアミン由来の構成単位を含んでいてもよい。炭素数6~12の脂肪族ジアミン以外のジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、1,3-または1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-または1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環族ジアミン;ビス(4-アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン類等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。これらは1種でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
ポリアミド樹脂(a2)は、また、国際公開第2017/094564号の段落0020~0027の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0027】
ポリアミド樹脂層(A)中のポリアミド樹脂(a)の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましく、65質量%以上であることが一層好ましく、70質量%以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、ポリアミド樹脂層(A)の燃料バリア性をある程度以上担保しつつ、かつ、ポリアミド樹脂層(B)との接着性により優れる傾向にある。また、ポリアミド樹脂層(A)中のポリアミド樹脂(a)の含有量は、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、86質量%以下であることがさらに好ましく、84質量%以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、耐衝撃改質剤(例えば、ポリオレフィン)の十分な添加が可能になり、得られる中空構造体が低温耐衝撃性により優れる傾向にある。
ポリアミド樹脂層(A)は、ポリアミド樹脂(a)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0028】
ポリアミド樹脂層(A)は、また、ポリオレフィンを含んでいてもよい。ポリオレフィンを含むことにより、低温耐衝撃性をより向上させることができる。
ポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン等のα-オレフィンの単独重合体および/または共重合体が好ましい。
ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等を用いることができる。
また、共重合体としては、エチレン、プロピレンおよびブテンの少なくとも2種の共重合体や、エチレン、プロピレンおよびブテンの少なくとも1種とこれらと共重合することができる単量体との共重合体を用いることができる。エチレン、プロピレンおよびブテンの少なくとも1種と共重合することができる単量体としては、例えば、α-オレフィン、スチレン類、ジエン類、環状化合物、酸素原子含有化合物等が挙げられる。特に好ましい共重合体としては、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/プロピレン共重合体などが挙げられ、エチレン/ブテン共重合体が好ましい。
α-オレフィン、スチレン類、ジエン類、環状化合物、酸素原子含有化合物の詳細は、国際公開第2017/094564号の段落0044の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
共重合体は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合のいずれであってもよい。
【0029】
本実施形態では、ポリオレフィンは、酸変性ポリオレフィンであることが好ましい。酸変性ポリオレフィンは、カルボン酸および/またはその誘導体で酸変性されたポリオレフィン、ならびに、カルボン酸および/またはその誘導体で酸変性され、さらに酸変性によって分子内に導入された官能基を介してポリアミドがグラフト結合してなるポリオレフィン(「ポリアミドでグラフト変性されたポリオレフィン」ともいう。)が好ましい。酸変性ポリオレフィンを用いることにより、ポリアミド樹脂層(B)に含まれるポリアミド樹脂(b)に対して親和性を有する官能基を分子内に導入することができる。また、ポリアミド成分に対して親和性を有する官能基を介して、ポリアミドがさらにグラフト変性されていることにより、ポリアミド樹脂(b)に対する親和性をより高めることができる。
ポリアミド成分に対して親和性を有する官能基としては、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸金属塩基、カルボン酸イミド基、カルボン酸アミド基およびエポキシ基などが好ましく挙げられる。
【0030】
ポリオレフィンを酸変性させ得る化合物としては、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、エンドビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸およびこれらカルボン酸の金属塩、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ-[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸無水物、マレイミド、N-エチルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジルなどが好ましく挙げられる。これらは1種でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、他の樹脂との溶融混合性の観点から無水マレイン酸が好ましい。
【0031】
本実施形態において、特に好適に用いられる酸変性ポリオレフィンとしては、弾性率、柔軟性および耐衝撃性の観点から、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性エチレン/ブテン共重合体等の無水マレイン酸変性α-オレフィンコポリマーおよび脂肪族ポリアミドでグラフト変性されたポリオレフィンが挙げられる。中でも、無水マレイン酸変性エチレン/ブテン共重合体が特に好ましく用いられる。
【0032】
本実施形態では特に、ポリアミド樹脂層(A)およびポリアミド樹脂層(B)に含まれるポリオレフィンが、それぞれ、酸変性ポリオレフィンであることが好ましい。
【0033】
その他、ポリオレフィンの詳細は、国際公開第2017/094564号の段落0042~0056の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0034】
ポリアミド樹脂層(A)におけるポリオレフィンの含有量は、ポリオレフィンを含有する場合、4質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましく、12質量%以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、低温耐衝撃性がより向上する傾向にある。また、ポリアミド樹脂層(A)におけるポリオレフィンの含有量は30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、22質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以下であることが一層好ましく、17質量%以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、ポリアミド樹脂(a)の割合を相対的に多くでき、ポリアミド樹脂(a)が本来的に有する燃料バリア性を効果的に発揮させることができる。
ポリアミド樹脂層(A)は、ポリオレフィンを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0035】
また、ポリアミド樹脂層(A)は可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤を含むことにより、低温耐衝撃性をより向上させることができる。特に、本実施形態では、燃料バリア性に優れたポリアミド樹脂層(B)を設け、さらに、層の数を増やすことにより、ポリアミド樹脂層(A)に可塑剤を配合しても、溶出物量を低くできる。すなわち、燃料は、層(D)、層(C)、層(B)、層(A)と移動し、可塑剤を取り込んで、層(B)、層(C)、層(D)の順に戻り、チューブ内に溶出する溶出物となり得る。本実施形態では、ポリアミド樹脂層(B)に高いバリア機能を持たせたことにより、燃料の層間の移動を効果的に抑制でき、可塑剤を配合しても溶出物の量を低く抑えることが可能になる。
【0036】
可塑剤としては、ベンゼンスルホン酸アルキルアミド、トルエンスルホン酸アルキルアミド、ヒドロキシ安息香酸アルキルエステルが例示され、ベンゼンスルホン酸アルキルアミドが好ましい。
【0037】
ベンゼンスルホン酸アルキルアミドとしては、ベンゼンスルホン酸プロピルアミド、ベンゼンスルホン酸ブチルアミド(N-ブチルベンゼンスルホンアミド)、ベンゼンスルホン酸2-エチルヘキシルアミド等が挙げられる。トルエンスルホン酸アルキルアミドとしては、N-エチル-o-トルエンスルホン酸ブチルアミド、N-エチル-p-トルエンスルホン酸ブチルアミド、N-エチル-o-トルエンスルホン酸2-エチルヘキシルアミド、N-エチル-p-トルエンスルホン酸2-エチルヘキシルアミド等が挙げられる。ヒドロキシ安息香酸アルキルエステルとしては、o-ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシル、p-ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシル、o-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルデシル、p-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルデシル、o-ヒドロキシ安息香酸エチルデシル、p-ヒドロキシ安息香酸エチルデシル、o-ヒドロキシ安息香酸オクチルオクチル、p-ヒドロキシ安息香酸オクチルオクチル、o-ヒドロキシ安息香酸デシルドデシル、p-ヒドロキシ安息香酸デシルドデシル、o-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、o-ヒドロキシ安息香酸ブチル、p-ヒドロキシ安息香酸ブチル、o-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル、p-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル、o-ヒドロキシ安息香酸n-オクチル、p-ヒドロキシ安息香酸n-オクチル、o-ヒドロキシ安息香酸デシル、p-ヒドロキシ安息香酸デシル、o-ヒドロキシ安息香酸ドデシル、p-ヒドロキシ安息香酸ドデシル等が挙げられる。
【0038】
ポリアミド樹脂層(A)における可塑剤の含有量は、可塑剤を含む場合、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましく、4質量%以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、低温耐衝撃性がより向上する傾向にある。また、ポリアミド樹脂層(A)における可塑剤の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましく、17質量%以下であることがさらに好ましく、16質量%以下であることが一層好ましく、15質量%以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、可塑剤由来の溶出物量をより少なくすることが可能になる。
ポリアミド樹脂層(A)は可塑剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0039】
本実施形態においては、ポリアミド樹脂層(A)中の、ポリオレフィンと可塑剤の質量比率が、1:0.2~3.5であることが好ましく、1:0.2~2.0であることがより好ましく、1:0.3~0.95であることがさらに好ましく、1:0.4~0.8であることが一層好ましい。このような範囲とすることにより、低温耐衝撃性を効果的に維持しつつ、溶出物量を効果的に少なくすることができる。
【0040】
ポリアミド樹脂層(A)は、上記の他、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、ポリアミド樹脂(a)以外の熱可塑性樹脂、導電性物質、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、滑剤、無機充填剤、帯電防止剤、難燃剤、相溶化剤、結晶化促進剤、ポリオレフィン以外の耐衝撃改質剤などが挙げられる。これらの他の成分の合計含有量は、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは12質量%以下である。
本実施形態において、ポリアミド樹脂層(A)は、ポリアミド樹脂(a)ならびに、必要に応じ配合される、ポリオレフィンおよび可塑剤の合計含有量が層(A)の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、98質量%以上を占めることがさらに好ましく、99質量%以上を占めることが一層好ましい。
ポリアミド樹脂層(A)は、また、導電性物質を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、導電層(D)に含まれる導電性物質の含有量の10質量%以下であることをいい、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0041】
ポリアミド樹脂層(A)の厚さは、中空構造体の厚み全体を100%としたとき、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましく、50%以上であることが一層好ましく、60%以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、中空構造体の低温耐衝撃性がより向上する傾向にある。ポリアミド樹脂層(A)の厚さは、中空構造体の厚み全体を100%としたとき、90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、75%以下であることがさらに好ましく、70%以下であることが一層好ましく、65%以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、バリア層、導電層を機能的な厚みで積層することができ、燃料バリア性および導電性がより向上する傾向にある。
また、ポリアミド樹脂層(A)の厚さは、また、100μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましく、300μm以上であることがさらに好ましく、400μm以上であることが一層好ましく、500μm以上であることがより一層好ましい。ポリアミド樹脂層(A)の厚さは、また、3000μm以下であることが好ましく、2000μm以下であることがより好ましく、1000μm以下であることがさらに好ましく、800μm以下であることが一層好ましく、700μm以下であることがより一層好ましい。
【0042】
<ポリアミド樹脂層(B)>
ポリアミド樹脂層(B)は、ポリオレフィンと、ポリアミド樹脂(b1)と、ポリアミド樹脂(b2)とを含み、ポリオレフィンの含有量は、ポリアミド樹脂層(B)の5~40質量%であり、ポリアミド樹脂(b1)とポリアミド樹脂(b2)の含有量の質量比率(b1/b2)が55/45~95/5であり、ポリアミド樹脂(b1)は、ジアミン由来の構成単位がメタキシリレンジアミン由来の構成単位を70モル%以上含み、ジカルボン酸由来の構成単位が炭素数4~8の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を70モル%以上含み、ポリアミド樹脂(b2)は、ジアミン由来の構成単位がキシリレンジアミン由来の構成単位を70モル%以上含み、ジカルボン酸由来の構成単位が炭素数9~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を70モル%以上含む。
【0043】
上述の通り、ポリアミド樹脂層(B)は、ポリオレフィンを含む。ポリオレフィンを含むことにより、中空構造体の低温耐衝撃性を向上させることができる。
ポリオレフィンは、酸変性ポリオレフィンが好ましい。ポリオレフィンの詳細は、上記ポリアミド樹脂層(A)で述べたポリオレフィンと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0044】
ポリアミド樹脂層(B)におけるポリオレフィンの含有量は、5質量%以上であり、6質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがさらに好ましく、8質量%以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、低温耐衝撃性がより向上する傾向にある。また、ポリアミド樹脂層(B)におけるポリオレフィンの含有量は40質量%以下であり、35質量%以下であることが好ましく、28質量%以下であることがさらに好ましく、25質量%以下であることが一層好ましく、18質量%以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、燃料バリア性がより向上し、溶出物量の抑制がより効果的に発揮される傾向にある。さらに、成形性も向上する傾向にある。
ポリアミド樹脂層(B)は、ポリオレフィンを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0045】
上述の通り、層(B)は、ポリアミド樹脂(b1)と、ポリアミド樹脂(b2)とを含み、ポリアミド樹脂(b1)とポリアミド樹脂(b2)の含有量の質量比率(b1/b2)が55/45~95/5である。ポリアミド樹脂(b1)を配合することにより、燃料バリア性に優れ、かつ、溶出物量の少ない中空構造体が得られる。また、ポリアミド樹脂(b2)を配合することにより、層(A)および層(C)との接着性が向上する。さらに、ポリアミド樹脂(b1)とポリアミド樹脂(b2)の含有量の質量比率(b1/b2)上記所定の比率とすることにより、燃料バリア性と、接着性をバランスよく達成できる。
【0046】
ポリアミド樹脂(b1)は、ジアミン由来の構成単位がメタキシリレンジアミン由来の構成単位を70モル%以上含み、ジカルボン酸由来の構成単位が炭素数4~8の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を70モル%以上含む。ポリアミド樹脂(b1)を含むことにより、中空構造体の燃料バリア性が高くなる。さらに、溶出物量も減らすことができる。
ポリアミド樹脂(b1)においては、ジアミン由来の構成単位中のメタキシリレンジアミン由来の構成単位の割合は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、一層好ましく98モル%以上である。
ポリアミド樹脂(b1)は、メタキシリレンジアミン由来の構成単位以外のジアミン単位を含んでいてもよい。例えば、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3-または1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-または1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環族ジアミン;パラキシリレンジアミン、ビス(4-アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、パラキシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン類等の化合物に由来するジアミン単位が挙げられる。これらは1種でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
ポリアミド樹脂(b1)においては、ジカルボン酸由来の構成単位中の炭素数4~8の脂肪族ジカルボン酸(好ましくはアジピン酸)由来の構成単位の割合は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、一層好ましく98モル%以上である。
炭素数4~8の脂肪族ジカルボン酸としては、炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸が好ましい。炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸等が挙げられ、アジピン酸が好ましい。これらは1種でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
ポリアミド樹脂(b1)は、炭素数4~8の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位以外のジカルボン酸単位を含んでいてもよい。
炭素数4~8の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位以外のジカルボン酸単位としては、シュウ酸、マロン酸等の炭素数3以下の脂肪族ジカルボン酸;アゼライン酸、セバシン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸等の炭素数9以上の脂肪族カルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。これらは1種でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
ポリアミド樹脂(b2)においては、ジアミン由来の構成単位がキシリレンジアミン由来の構成単位を70モル%以上含み、ジカルボン酸由来の構成単位が炭素数9~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を70モル%以上含む。ポリアミド樹脂(b2)を含むことにより、ポリアミド樹脂層(B)と、ポリアミド樹脂層(A)およびポリアミド樹脂層(C)との接着性が向上する。
ポリアミド樹脂(b2)においては、ジアミン由来の構成単位中のメタキシリレンジアミン由来の構成単位の割合は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、一層好ましく98モル%以上である。
ポリアミド樹脂(b2)は、メタキシリレンジアミン由来の構成単位以外のジアミン単位を含んでいてもよい。例えば、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3-または1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-または1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環族ジアミン;ビス(4-アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、パラキシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン類等の化合物に由来するジアミン単位が挙げられる。これらは1種でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
ポリアミド樹脂(b2)においては、ジカルボン酸由来の構成単位中の炭素数9~12の脂肪族ジカルボン酸(好ましくはセバシン酸)由来の構成単位の割合は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、一層好ましく98モル%以上である。
炭素数9~12の脂肪族ジカルボン酸としては、炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸が好ましい。炭素数9~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アゼライン酸、セバシン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸が挙げられ、セバシン酸が好ましい。これらは1種でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
ポリアミド樹脂(b2)は、炭素数9~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位以外のジカルボン酸単位を含んでいてもよい。
炭素数9~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位以外のジカルボン酸単位としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸等の炭素数8以下の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。これらは1種でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
ポリアミド樹脂層(B)においては、ポリアミド樹脂(b1)とポリアミド樹脂(b2)の含有量の質量比率(b1/b2)が55/45~95/5であり、55/45~89/11であることが好ましく、55/45~85/15であることがより好ましく、65/35~85/15であることがさらに好ましい。
ポリアミド樹脂層(B)におけるポリアミド樹脂(b1)と(b2)の合計含有量は、60質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることが一層好ましく、85質量%以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、燃料バリア性や低溶出物量およびポリアミド樹脂層(A)、ポリアミド樹脂層(C)との接着性がより向上する傾向にある。また、ポリアミド樹脂層(B)におけるポリアミド樹脂(b1)と(b2)の合計含有量は95質量%以下であることが好ましく、94質量%以下であることがより好ましく、93質量%以下であることがさらに好ましく、92質量%以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、耐衝撃改質剤を十分に添加でき、低温耐衝撃性により優れる向上する傾向にある。
ポリアミド樹脂層(B)は、ポリアミド樹脂(b1)および(b2)をそれぞれ1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0053】
ポリアミド樹脂層(B)は、上記の他、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、ポリアミド樹脂(b1)および(b2)以外の熱可塑性樹脂、導電性物質、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、滑剤、無機充填剤、帯電防止剤、難燃剤、結晶化促進剤、ポリオレフィン以外の耐衝撃改質剤などが挙げられる。これらの他の成分の合計含有量は、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは12質量%以下である。
本実施形態において、ポリアミド樹脂層(B)は、ポリアミド樹脂(b1)、ポリアミド樹脂(b2)、および、ポリオレフィンの合計含有量が層(B)の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%超を占めることがより好ましく、98質量%以上を占めることがさらに好ましい。
ポリアミド樹脂層(B)は、また、可塑剤を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、ポリアミド樹脂層(B)の0.1質量%以下であることをいい、0.05質量%以下であることが好ましく、0.03質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以下であることがさらに好ましく、99質量%以上を占めることが一層好ましい。
ポリアミド樹脂層(B)は、また、導電性物質を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、導電層(D)に含まれる導電性物質の含有量の10質量%以下であることをいい、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0054】
ポリアミド樹脂層(B)の厚さは、中空構造体の厚み全体を100%としたとき、3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましく、15%以上であることが一層好ましく、18%以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、燃料バリア性がより向上し、より低溶出物量とすることができる。ポリアミド樹脂層(B)の厚さは、中空構造体の厚み全体を100%としたとき、50%以下であることが好ましく、45%以下であることがより好ましく、40%以下であることがさらに好ましく、35%以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、ポリアミド樹脂層(B)を機能的な厚みで積層することができ、高い燃料バリア性と低温耐衝撃性がバランスよく向上する傾向にある。
【0055】
ポリアミド樹脂層(B)の厚さは、また、30μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、130μm以上であることがさらに好ましく、150μm以上であることが一層好ましく、180μm以上であることがより一層好ましい。ポリアミド樹脂層(B)の厚さは、また、1000μm以下であることが好ましく、800μm以下であることがより好ましく、700μm以下であることがさらに好ましく、400μm以下であることが一層好ましく、300μm以下であることがより一層好ましい。
【0056】
<ポリアミド樹脂層(C)>
ポリアミド樹脂層(C)は、ポリアミド樹脂(c)を含み、前記ポリアミド樹脂(c)は、全構成単位の90モル%以上が、炭素数10~12のラクタム由来の構成単位、炭素数10~12のアミノカルボン酸由来の構成単位、炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位、および、炭素数6~12の脂肪族ジアミン由来の構成単位の1種以上である層である。このように比較的柔軟性の高いポリアミド樹脂(c)を含むポリアミド樹脂層(C)を用いることにより、低温耐衝撃性を向上させることができる。また、ポリアミド樹脂層(C)と導電層(D)との接着性を高めることができる。特に、燃料を封入した後のポリアミド樹脂層(C)と導電層(D)との接着性を高めることができる。
【0057】
ポリアミド樹脂(c)は、全構成単位の90モル%以上が、炭素数10~12のラクタム由来の構成単位、炭素数10~12のアミノカルボン酸由来の構成単位、炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位、および、炭素数6~12の脂肪族ジアミン由来の構成単位の1種以上であるが、全構成単位の95モル%以上が上記構成単位から構成されることが好ましく、全構成単位の99モル%以上が上記構成単位から構成されることがより好ましい。
また、炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と炭素数6~12の脂肪族ジアミン由来の構成単位の両方を含む場合、いずれか一方は、炭素数10~12であることが好ましい。このような構成とすることにより、より柔軟性に優れた中空構造体が得られる。
また、ポリアミド樹脂(c)は、下記(c1)および/または(c2)のポリアミド樹脂を含むことがより好ましく、(c1)のポリアミド樹脂を含むことがさらに好ましい。ポリアミド樹脂(c1)およびポリアミド樹脂(c2)の詳細は、上述のポリアミド樹脂(a1)およびポリアミド樹脂(a2)と、それぞれ、同じであり、好ましい範囲も同様である。
【0058】
ポリアミド樹脂層(C)中のポリアミド樹脂(c)の含有量は、65質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることが一層好ましく、85質量%以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、ポリアミド樹脂層(B)および導電層(D)との接着性により優れる傾向にある。また、ポリアミド樹脂層(C)中のポリアミド樹脂(c)の含有量は、100質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。前記上限値以下とすることにより、柔軟性改質助剤(可塑剤及びポリオレフィン)を含有することができ、耐衝撃性に優れる傾向にある。
ポリアミド樹脂層(C)は、ポリアミド樹脂(c)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0059】
また、ポリアミド樹脂層(C)は可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤を含むことにより、低温耐衝撃性をより向上させることができる。一般的に、可塑剤を含む樹脂層から、燃料側に溶出物として溶出物が抜け出ることで溶出物量が増えることが知られている。しかし、本構成では、ポリアミド樹脂層(C)を薄く積層することにより、その含有する可塑剤量を少なくできるため、実質的にポリアミド樹脂層(C)の溶出物量を抑えることができる。
【0060】
可塑剤の詳細は、ポリアミド樹脂層(A)で述べた可塑剤と同じであり、好ましい範囲も同様である。
【0061】
ポリアミド樹脂層(C)における可塑剤の含有量は、可塑剤を含む場合、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましく、4質量%以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、低温耐衝撃性がより向上する傾向にある。また、ポリアミド樹脂層(C)における可塑剤の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましく、16質量%以下であることがさらに好ましく、14質量%以下であることが一層好ましく、12質量%以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、可塑剤由来の溶出物量をより少なくすることが可能になる。
ポリアミド樹脂層(C)は可塑剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0062】
ポリアミド樹脂層(C)は、上記の他、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、ポリアミド樹脂(c)以外の熱可塑性樹脂、ポリオレフィン、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、滑剤、無機充填剤、帯電防止剤、難燃剤、結晶化促進剤、ポリオレフィン以外の耐衝撃改質剤などが挙げられる。これらの他の成分の合計含有量は、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは12質量%以下である。
本実施形態においてポリアミド樹脂層(C)はポリオレフィンの含有量が、0~12質量%以下であることが好ましく、0~7質量%であることがより好ましく、0~6質量%であることがさらに好ましく、0~3質量%であってもよく、さらには、0~1質量%、0~0.1質量%、0~0.01質量%であってもよい。このように本実施形態の中空構造体においては、ポリアミド樹脂層(C)にポリオレフィンを配合しない、または、配合量を少なくしても、低温耐衝撃性に優れた中空構造体とすることができる。そのため、導電層(D)との接着性も高めることができる。
本実施形態において、ポリアミド樹脂層(C)は、ポリアミド樹脂(c)と、必要に応じ配合される可塑剤の合計含有量が層(C)の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、98質量%以上を占めることがさらに好ましく、99質量%以上を占めることが一層好ましい。
ポリアミド樹脂層(C)は、また、導電性物質を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、導電層(D)に含まれる導電性物質の0.1質量%以下であることをいい、0.05質量%以下であることが好ましく、0.03質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以下であることがさらに好ましい。
【0063】
ポリアミド樹脂層(C)の厚さは、中空構造体の厚み全体を100%としたとき、3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、7%以上であることがさらに好ましく、8%以上であることが一層好ましく、9%以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、層厚みが安定し、接着性の効果がより向上する傾向にある。ポリアミド樹脂層(C)の厚さは、中空構造体の厚み全体を100%としたとき、20%以下であることが好ましく、18%以下であることがより好ましく、17%以下であることがさらに好ましく、16%以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、中空構造体の硬さが低減され、低温耐衝撃性がより向上する傾向にある。
【0064】
ポリアミド樹脂層(C)の厚さは、また、10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましく、70μm以上であることが一層好ましく、80μm以上であることがより一層好ましい。ポリアミド樹脂層(C)の厚さは、また、500μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましく、200μm以下であることが一層好ましく、150μm以下であることがより一層好ましい。
【0065】
<導電層(D)>
導電層(D)はフッ素樹脂と導電性物質を含む。
フッ素樹脂を含むことにより、高い柔軟性と燃料バリア性の両方が達成でされる。また、導電性物質を含むことにより、中空構造体に導電性を付与することができる。
本実施形態における導電層(D)は、280℃で中空構造体に成形した際に、前記中空構造体を半分に割り、内層表面を抵抗率計で測定した抵抗値が、30MΩ/sq.以下であることが好ましく、20MΩ/sqがさらに好ましく、10MΩ以下であることがさらに好ましい。このような抵抗値とすることにより、導電性に優れた中空構造体とすることができる。前記抵抗値の下限値は、例えば、0.01MΩ以上である。前記抵抗率計は、ロレスタ-GX MCP-T700、日東精工アナリテック社製を用いることができる。
【0066】
フッ素樹脂は導電性樹脂である。フッ素樹脂は、また、酸変性されていることが好ましい。酸変性フッ素樹脂を用いることにより、ポリアミド樹脂層(C)に含まれるポリアミド樹脂(c)との接着性をより向上させることができる。酸変性に用いられる酸としては、カルボン酸、無水カルボン酸であることが好ましい。
【0067】
フッ素樹脂の融点は、300℃以下が好ましく、280℃以下がより好ましく、260℃以下がさらに好ましい。下限値としては、特に定めるものでは無いが、例えば、100℃以上とすることができる。フッ素樹脂の融点は、ISO 11357-3の記載に従って測定される。
【0068】
本実施形態で用いることができるフッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルエーテル共重合体(PFA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、ビニリデンフルオライド/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/ペンタフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(THV)、フッ化ビニリデン/ペンタフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/パーフルオロアルキルビニルエーテル/テトラフルオロエチレン共重合体、パーフルオロアルコキシ/テトラフルオロメチレン共重合体等が挙げられる。
本実施形態では、特に、フルオロエチレン(共)重合体を含むことが好ましく、テトラフルオロエチレン(共)重合体またはフルオロエチレンプロピレン共重合体を含むことがより好ましく、エチレン/フルオロエチレンプロピレン共重合体(EFEP)を含むことがさらに好ましい。また、これらの重合体が酸変性されていることが好ましい。フルオロエチレン(共)重合体のような柔軟性があり、かつ、酸変性されているフッ素樹脂を用いることにより、低温耐衝撃性および層間バリア性を確保することが可能になる。
尚、(共)重合体とは、単独重合体および/または共重合体であることを意味する。
【0069】
導電層(D)におけるフッ素樹脂の含有量は、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、97質量%以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、低温耐衝撃性がより向上する傾向にある。また、導電層(D)におけるフッ素樹脂の含有量は、100質量%未満であることが好ましく、導電性物質以外の成分が全てフッ素樹脂となる量であってもよい。前記上限値以下とすることにより、低温耐衝撃性、および、燃料バリア性がより向上する傾向にある。
導電層(D)はフッ素樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0070】
導電層(D)は導電性物質を含む。導電性物質を含むことにより、中空構造体に導電性を付与することができる。
本実施形態に用いる導電性物質は、金属、金属酸化物、導電性炭素化合物および導電性ポリマーが例示され、導電性炭素化合物が好ましい。
金属としては、金属フィラーやステンレス繊維、磁性フィラーが好ましい。金属酸化物としては、アルミナ、酸化亜鉛が例示され、アルミナ繊維、酸化亜鉛ナノチューブが好ましい。導電性炭素化合物としては、カーボンブラック、ケッチェンカーボン、グラフェン、黒鉛、フラーレン、カーボンナノコイル、カーボンナノチューブ、カーボンファイバーが好ましく、カーボンブラックおよび/またはカーボンナノチューブがより好ましく、カーボンブラックがさらに好ましい。
【0071】
導電層(D)における導電性物質の含有量は、導電層(D)中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、中空構造体に効果的に導電性を付与できる傾向にある。導電層(D)における導電性物質の含有量は、導電層(D)中、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、18質量%以下であることがさらに好ましく、15質量%以下であることが一層好ましい。
導電層(D)は、導電性物質を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0072】
導電層(D)は、上記の他、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、フッ素樹脂以外の樹脂、ポリオレフィン、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、滑剤、無機充填剤、帯電防止剤、難燃剤、結晶化促進剤、ポリオレフィン以外の耐衝撃改質剤などが挙げられる。これらの他の成分の合計含有量は、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは12質量%以下である。
本実施形態において、導電層(D)は、フッ素樹脂、および、導電性物質の合計含有量が層(D)の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、98質量%以上を占めることがさらに好ましく、99質量%以上を占めることが一層好ましい。
本実施形態において導電層(D)はポリオレフィンの含有量が、0~7質量%であることが好ましく、0~6質量%であることがより好ましく、0~3質量%であってもよく、さらには、0~1質量%であってもよい。このように本実施形態では、導電層(D)にポリオレフィンを配合しない、または、配合量を少なくしても、フッ素樹脂を用いることにより、低温耐衝撃性に優れた中空構造体とすることができる。
【0073】
導電層(D)の厚さは、中空構造体の厚み全体を100%としたとき、3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、7%以上であることがさらに好ましく、8%以上であることが一層好ましく、9%以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、導電層厚みが安定し、導電性の効果がより向上する傾向にある。導電層(D)の厚さは、中空構造体の厚み全体を100%としたとき。20%以下であることが好ましく、18%以下であることがより好ましく、17%以下であることがさらに好ましく、16%以下であることが一層好ましく、15%以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、コスト面で優位性を示す傾向にある。
導電層(D)の厚さは、また、10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましく、70μm以上であることが一層好ましく、80μm以上であることがより一層好ましい。導電層(D)の厚さは、また、500μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましく、200μm以下であることが一層好ましく、150μm以下であることがより一層好ましい。
【0074】
<各層の関係>
本実施形態の中空構造体におけるポリアミド樹脂層(A)、ポリアミド樹脂層(B)、および、ポリアミド樹脂層(C)の厚さは、層(A)の厚さ>層(B)の厚さ>層(C)の厚さであることが好ましい。
さらに、層(A)の厚さと層(C)の厚さの比である、層(A)の厚さ/層(C)の厚さが3.0倍以上であることが好ましく、3.5倍以上であることがより好ましく、4.0倍以上であることがさらに好ましく、4.5倍以上であることが一層好ましく、5.0倍以上であることがより一層好ましく、5.5倍以上であることがさらに一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、例えば、ポリオレフィンを含まず、または、ポリオレフィンの含有量が少なく、ポリアミド樹脂層(C)が硬い場合でも、その硬さを低減し低温耐衝撃性がより向上する傾向にある。また、前記層(A)の厚さ/層(C)の厚さは、9.0倍以下であることが好ましく、8.5倍以下であることがより好ましく、8.0倍以下であることがさらに好ましく、7.5倍以下であることが一層好ましく、7.0倍以下であることがより一層好ましく、6.5倍以下であることがさらに一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、(C)層の厚みを十分に持つことができ、(B)層と(D)層との接着性がより向上する傾向にある。
さらに、層(B)の厚さと層(C)の厚さの比である、層(B)の厚さ/層(C)の厚さが1.0倍超であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましく、1.4倍以上であることがさらに好ましく、1.6倍以上であることが一層好ましく、1.8倍以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、燃料バリア性や溶出物量の低下効果がより向上する傾向にある。また、前記層(B)の厚さ/層(C)の厚さは、3.0倍以下であることが好ましく、2.8倍以下であることがより好ましく、2.6倍以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、(C)層の機能を発現できる厚みを十分に持つことができ、(B)層と(D)層との高い接着性がより向上する傾向にある。
本実施形態の中空構造体が層(A)について、2層以上有する場合、2層以上の層(A)の少なくとも1層が上記関係を満たしていればよいが、いずれの層も上記関係を満たしていることが好ましい。層(B)~層(D)についても同様である。
【0075】
本実施形態では、導電層(D)および層(C)の厚さを等しく薄くしても、必要な導電性と、燃料バリア性および低温耐衝撃性、ならびに、層間の接着性を保つことができる。
【0076】
本実施形態の中空構造体は、特に、ポリアミド樹脂層(A)の厚さとポリアミド樹脂層(C)の厚さの比である、層(A)の厚さ/層(C)の厚さが3.0~9.0倍であり、ポリアミド樹脂層(B)の厚さとポリアミド樹脂層(C)の厚さの比である、層(B)の厚さ/層(C)の厚さが1.0倍超3.0倍以下であり、ポリアミド樹脂層(A)が、ポリオレフィンを含み、ポリアミド樹脂層(A)およびポリアミド樹脂層(B)に含まれるポリオレフィンが、それぞれ、酸変性ポリオレフィンであり、ポリアミド樹脂層(C)に含まれるポリオレフィンの含有量が0~7質量%であることが好ましい。
ポリアミド樹脂層(C)は、ポリアミド樹脂(c)を含むことにより、ポリアミド樹脂層(B)との接着性を高くすることができる。また、ポリアミド樹脂層(C)は、その厚さを薄くし、かつ、比較的長い鎖のポリアミド樹脂、すなわち、耐衝撃性が高めのポリアミド樹脂を用いるため、ポリオレフィンを含めなくても、低温耐衝撃性を達成できる。そして、ポリアミド樹脂層(C)について、ポリオレフィンを含めない、あるいはその量を少なくできるので、導電層(D)との接着性も達成できる。
【0077】
本実施形態の中空構造体の総厚みは、用途に応じて適宜設定すればよく特に制限されないが、10μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、500μm以上であることがさらに好ましく、700μm以上であることが一層好ましい。また、前記総厚みの上限は、5mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましく、2mm以下であることがさらに好ましく、1.5mm以下であることが一層好ましい。
【0078】
本実施形態の中空構造体は、燃料輸送配管材などとして好適に用いることができる。例えば、ヘキサン、オクタンなどのアルカン;トルエン、ベンゼンなどの芳香族化合物;メタノール、エタノールなどのアルコール;イソオクタンとトルエンとアルコールとを混合したアルコールガソリンなどの燃料輸送配管材などとして特に適している。
【0079】
本実施形態の中空構造体は、押出機を用いて、溶融押出し、環状ダイを通じて円筒状に押し出し、寸法を制御するサイジングフォマーを通して賦型し、水槽等で冷却後、引取機により巻き取ることにより製造することができる。
具体的には、層(A)、層(B)、層(C)および層(D)を構成する材料を、それぞれ押出機を用いて、溶融押出し、ダイ内に供給し、各々環状の流れをなした後、ダイ内もしくはダイ外に同時押出することにより積層する方法(共押出法)、または、単層の中空成形体を製造しておき、外側に必要に応じて接着剤を使用し、樹脂を一体化しながら積層する方法(コーティング法)により製造することができる。なお、導電性物質は、熱可塑性樹脂でマスターバッチ化してから、フッ素樹脂に配合してもよい。また、マスターバッチ化する熱可塑性樹脂はフッ素樹脂が好ましい。
本実施形態の中空構造体は、少なくとも一部に波形領域を有していてもよい。ここで波形領域とは、波形形状、蛇腹形状、アコーディオン形状、またはコルゲート形状等に形成した領域をいう。波形領域を有する中空構造体は、直管状の中空構造体を成形した後、モールド成形し、所定の波形形状を形成することにより容易に形成することができる。また、中空構造体に、例えば、コネクタなどの必要な部品を付加したり、曲げ加工によりL字もしくはU字などの形状に成形することもできる。
【実施例0080】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0081】
原料
<ポリアミド樹脂層(A)>
ポリアミド樹脂(a)
PA12:ポリアミド12、宇部興産製、UBESTA3030U
PA1010:ポリアミド1010、アルケマ(株)製、「リルサン」TESN P213TL
PA11:ポリアミド11、アルケマ(株)製、「リルサン」P20TLD
PA612:ポリアミド612、宇部興産製、UBESTA7024B
可塑剤
BBSA:N-ブチルベンゼンスルホンアミド、大八化学工業株式会社製、BM-4
ポリオレフィン
PO:無水マレイン酸1質量%変性エチレン/ブテン共重合体(三井化学社製、タフマーMH5020)
【0082】
<ポリアミド樹脂層(B)>
ポリアミド樹脂(b1)
MXD6:以下の合成例により合成した。
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽およびポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精秤したアジピン酸9000g(61.6mol)次亜リン酸ナトリウム一水和物2.6gおよび酢酸ナトリウム1.0gを入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaに保ちながら撹拌下190℃まで昇温した。190℃に到達後、反応容器内の原料へ滴下槽に貯めたメタキシリレンジアミン8480g(62.2mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を250℃まで昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、徐々に260℃まで昇温しつつ、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化したのち、冷却してペレタイザーによりペレット化することにより、MXD6を得た。
【0083】
ポリアミド樹脂(b2)
MXD10:以下の合成例により合成した。
<MXD10の合成例>
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽およびポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精秤したセバシン酸12564g(62.2mol)次亜リン酸ナトリウム一水和物3.2gおよび酢酸ナトリウム1.3gを入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaに保ちながら撹拌下190℃まで昇温した。190℃に到達後、反応容器内の原料へ滴下槽に貯めたメタキシリレンジアミン8480g(62.2mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を250℃まで昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、徐々に260℃まで昇温しつつ、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化したのち、冷却してペレタイザーによりペレット化することにより、MXD10を得た。
【0084】
ポリオレフィン
PO:無水マレイン酸1質量%変性エチレン/ブテン共重合体(三井化学(株)製、タフマーMH5020)
【0085】
<ポリアミド樹脂層(C)>
ポリアミド樹脂(c)
PA12:ポリアミド12、宇部興産製、UBESTA3030U
PA1010:ポリアミド1010、アルケマ(株)製、「リルサン」TESN P213TL
PA612:ポリアミド612、宇部興産製、UBESTA7024B
PA11:ポリアミド11、アルケマ(株)製、「リルサン」P20TLD
可塑剤
BBSA:N-ブチルベンゼンスルホンアミド、大八化学工業株式会社製、BM-4
ポリオレフィン
PO:無水マレイン酸1質量%変性エチレン/ブテン共重合体(三井化学(株)製、タフマーMH5020)
【0086】
<導電層(D)>
導電性樹脂:
EFEP:導電性炭素化合物を含む酸変性エチレン/テトラフルオロエチレンプロピレン共重合体(EFEP):ダイキン製、RPS-5000AS
【0087】
実施例1~18、比較例1~7
<ポリアミド樹脂層(A)形成用組成物の製造>
表1~表5に示す質量割合となるように、ポリアミド樹脂(a)に、ポリオレフィン(PO)を予め混合し、ニーディングディスクを備えたφ34mmスクリュー径の二軸溶融混練機に供給し、シリンダー温度180℃~240℃で溶融混練した。前記二軸溶融混練機のシリンダーの途中から、可塑剤としてBBSAを定量ポンプにより注入し溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥して、ポリアミド樹脂層(A)形成用組成物(ペレット)を得た。
【0088】
<ポリアミド樹脂層(B)形成用組成物の製造>
表1~表5に示す質量割合となるように、ポリアミド樹脂(b1)と(b2)、および、ポリオレフィン(PO)を予め混合し、ニーディングディスクを備えたφ34mmスクリュー径の二軸溶融混練機に供給し、シリンダー温度180℃~260℃で溶融混練した。溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥して、ポリアミド樹脂層(B)形成用組成物(ペレット)を得た。
【0089】
<ポリアミド樹脂層(C)形成用組成物の製造>
表1~表5に示す質量割合となるように、ポリアミド樹脂(c)に、必要に応じ、ポリオレフィン(PO)を予め混合し、ニーディングディスクを備えたφ34mmスクリュー径の二軸溶融混練機に供給し、シリンダー温度180℃~240℃で溶融混練した。前記二軸溶融混練機のシリンダーの途中から、必要に応じ、可塑剤としてBBSAを定量ポンプにより注入し溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥して、ポリアミド樹脂層(A)形成用組成物(ペレット)を得た。
【0090】
<中空構造体の製造>
上記で得られたポリアミド樹脂層(A)形成用組成物、ポリアミド樹脂層(B)形成用組成物、ポリアミド樹脂層(C)形成用組成物、および、導電層(D)形成用組成物を用いて、5台の押出機を備えた多層中空構造体成形機にて、層(A)押出温度240℃、層(B)押出温度260℃、層(C)押出温度240℃、層(D)押出温度280℃、積層後流路温度280℃にて外側から順に、層(A)/層(B)/層(C)/層(D)からなる多層中空構造体(外径:8mm、内径:6mm)を形成した。ただし、比較例6は、層(A)/層(C)/層(D)からなる多層中空構造体(外径:8mm、内径:6mm)とした。また、比較例7は、層(A)/層(B)/層(D)からなる多層中空構造体(外径:8mm、内径:6mm)とした。なお、各層の厚みは、表1~表5に示す通りとした。
【0091】
<低温耐衝撃性>
得られた多層中空構造体について、以下の方法で低温耐衝撃性を評価した。
-40℃の条件下に上記で得られた中空構造体を4時間静置後、300mmの高さから0.9kgの重りを落として割れ(クラック)の発生の有無を確認し、以下の通り評価した。C以上が実用レベルである。
A:5本中割れなし
B:5本中1本または2本割れ
C:5本中3本または4本割れ
D:5本中5本割れ
【0092】
<燃料バリア性>
上記作製した多層中空構造体33cmにCE10(イソオクタン/トルエン/エタノール=45/45/10、体積比)約9mLを封入し、60℃の雰囲気下に静置した。封止後、100時間後、多層中空構造体の重量変化を測定し、1日当たりの1m2でのCE10の透過量を算出した。
以下の通り評価した。B以上が実用レベルである。
A:10g/m2・day以下
B:10g/m2・day超15g/m2・day以下
C:15g/m2・day超20g/m2・day以下
D:20g/m2・day超
【0093】
<層間接着性(T-ピール試験)>
上記作製した多層中空構造体33cmにCE10を約9mLを封入し、60℃の雰囲気下で100時間静置した。常温に静置し冷却した後、多層中空構造体からCE10を抜出し、(A)層と(B)層の接着性、(B)層と(C)層の接着性、および、(C)層と(D)層の接着性について、以下の通り評価した。尚、(B)層を設けていない比較例6、比較例7については、接着性は評価していない。
図2にイメージ図を示す通り、上記多層中空構造体の長手方向であって、直径を通る断面(図2のX)で半分に割り、ポリアミド樹脂層(A)/ポリアミド樹脂層(B)/ポリアミド樹脂層(C)/ポリアミド樹脂層(D)からなる平板状の多層体の形にした。前記平板状多層体のポリアミド樹脂層(A)側とポリアミド樹脂層(B)を、ポリアミド樹脂層(B)とポリアミド樹脂層(C)とポリアミド樹脂層(D)とをピンセットを用い引き剥がした。層間で剥離が生じた構成においてはそれぞれ剥がれた面(ポリアミド樹脂(A)層とポリアミド樹脂(B)層、または、ポリアミド樹脂(B)層とポリアミド樹脂(C)層、ポリアミド樹脂(C)層とポリアミド樹脂(D)層)の端をチャックで固定し引き合うように引張試験機を用い、下記の条件で剥離強度(Tピール)を測定した。各層間接着性の結果から最も低い値の結果を、その構成の層間接着性とした。
試験速度:50mm/min
試験環境:23℃/50%相対湿度(RH)
剥離角度:90℃
以下の通り評価した。C以上が実用レベルである。
A:剥離不可(または剥離応力20N以上)
B:剥離応力15N/cm以上20N/cm未満
C:剥離応力10N/cm以上15N/cm未満
D:剥離応力10N/cm未満
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
【表5】
【0099】
上記結果から明らかなとおり、本発明の燃料用中空構造体は、燃料バリア性および、CE10を封入し、100時間経過後の層間接着性に優れつつ、かつ、低温耐衝撃性に優れたものであった(実施例1~18)。
特に、本発明では、ポリアミド樹脂層(A)およびポリアミド樹脂層(B)に対し、ポリアミド樹脂層(C)の厚みを薄くし、かつ、ポリアミド樹脂層(C)に比較的長い鎖のポリアミド樹脂を用いることにより、ポリオレフィンを含めなくても、低温耐衝撃性を効果的に向上させることができた。さらに、ポリアミド樹脂層(C)がポリオレフィンを含まない、または、少量とすることができ、導電層(D)との接着性も達成できた(実施例2等と、実施例16~18との比較)。
これに対し、ポリアミド樹脂層(B)がポリアミド樹脂(b2)を含まない場合、低温耐衝撃性および層間接着性が劣っていた(比較例1)。
また、ポリアミド樹脂層(B)中のポリアミド樹脂(b1)の割合が少ない場合または含まない場合、さらには、ポリアミド樹脂層(B)を含まない場合、燃料バリア性が劣っていた(比較例2、比較例3、比較例6)。
ポリアミド樹脂層(B)がポリオレフィンを含まない場合、低温耐衝撃性が劣っていた(比較例4)。
ポリアミド樹脂層(B)におけるポリオレフィンの含有量が多すぎる場合、多層体に成形することができなかった(比較例5)。
また、ポリアミド樹脂層(C)を含まない場合、低温耐衝撃性および層間接着性が劣っていた(比較例7)。
【符号の説明】
【0100】
A:ポリアミド樹脂層(A)
B:ポリアミド樹脂層(B)
C:ポリアミド樹脂層(C)
D:導電層(D)
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-06-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側から、ポリアミド樹脂層(A)、ポリアミド樹脂層(B)、ポリアミド樹脂層(C)および導電層(D)を、前記順に有する、燃料用中空構造体であって、
前記ポリアミド樹脂層(A)が、ポリアミド樹脂(a)を含み、
前記ポリアミド樹脂(a)は、全構成単位の90モル%以上が、炭素数10~12のラクタム由来の構成単位、炭素数10~12のアミノカルボン酸由来の構成単位、炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位、および、炭素数6~12の脂肪族ジアミン由来の構成単位の1種以上であり、
前記ポリアミド樹脂層(B)が、ポリオレフィンと、ポリアミド樹脂(b1)と、ポリアミド樹脂(b2)とを含み、
前記ポリオレフィンの含有量は、前記ポリアミド樹脂層(B)の5~40質量%であり、
前記ポリアミド樹脂(b1)とポリアミド樹脂(b2)の含有量の質量比率(b1/b2)が55/45~95/5であり、
前記ポリアミド樹脂(b1)は、ジアミン由来の構成単位がメタキシリレンジアミン由来の構成単位を70モル%以上含み、ジカルボン酸由来の構成単位が炭素数4~8の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を70モル%以上含み、
前記ポリアミド樹脂(b2)は、ジアミン由来の構成単位がキシリレンジアミン由来の構成単位を70モル%以上含み、ジカルボン酸由来の構成単位が炭素数9~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を70モル%以上含み、
前記ポリアミド樹脂層(C)が、ポリアミド樹脂(c)を含み、
前記ポリアミド樹脂(c)は、全構成単位の90モル%以上が、炭素数10~12のラクタム由来の構成単位、炭素数10~12のアミノカルボン酸由来の構成単位、炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位、および、炭素数6~12の脂肪族ジアミン由来の構成単位の1種以上であり、
前記導電層(D)がフッ素樹脂と導電性物質を含み、
前記ポリアミド樹脂層(C)に含まれるポリオレフィンの含有量が0~7質量%である、燃料用中空構造体。
【請求項2】
前記ポリアミド樹脂層(A)が、ポリオレフィンを含む、請求項1に記載の燃料用中空構造体。
【請求項3】
前記ポリアミド樹脂層(A)に含まれるポリオレフィン、および、ポリアミド樹脂層(B)に含まれるポリオレフィンが、それぞれ、酸変性ポリオレフィンである、請求項2に記載の燃料用中空構造体。
【請求項4】
前記ポリアミド樹脂層(A)の厚さとポリアミド樹脂層(C)の厚さの比である、層(A)の厚さ/層(C)の厚さが3.0~9.0倍であり、
前記ポリアミド樹脂層(B)の厚さとポリアミド樹脂層(C)の厚さの比である、層(B)の厚さ/層(C)の厚さが1.0~3.0倍である、請求項1~のいずれか1項に記載の燃料用中空構造体。
【請求項5】
前記ポリアミド樹脂層(A)が、ポリオレフィンを含み、
前記ポリアミド樹脂層(A)およびポリアミド樹脂層(B)に含まれるポリオレフィンが、それぞれ、酸変性ポリオレフィンであ、請求項に記載の燃料用中空構造体。
【請求項6】
前記ポリアミド樹脂層(B)は、前記ポリオレフィンと、前記ポリアミド樹脂(b1)と、前記ポリアミド樹脂(b2)の合計が、前記ポリアミド樹脂層(B)の95質量%超を占める、請求項1~のいずれか1項に記載の燃料用中空構造体。
【請求項7】
前記フッ素樹脂が、フルオロエチレン(共)重合体を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の燃料用中空構造体。
【請求項8】
前記フッ素樹脂が、エチレン/フルオロエチレンプロピレン共重合体を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の燃料用中空構造体。
【請求項9】
前記導電性物質が、導電性炭素化合物を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の燃料用中空構造体。
【請求項10】
前記ポリアミド樹脂層(A)が、可塑剤を、前記ポリアミド樹脂層(A)中、1~20質量%の割合で含む、請求項1~のいずれか1項に記載の燃料用中空構造体。
【請求項11】
前記ポリアミド樹脂層(C)が、可塑剤を、前記ポリアミド樹脂層(C)中、1~20質量%の割合で含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の燃料用中空構造体。