(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162768
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】輻射暖房機能付きボイラー装置
(51)【国際特許分類】
F24D 3/00 20220101AFI20221018BHJP
F24H 6/00 20220101ALN20221018BHJP
F24C 13/00 20060101ALN20221018BHJP
【FI】
F24D3/00 A
F24H6/00
F24C13/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067755
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】石塚 卓也
(72)【発明者】
【氏名】中島 耕司
(72)【発明者】
【氏名】近藤 茂雄
【テーマコード(参考)】
3L070
【Fターム(参考)】
3L070AA01
3L070AA09
3L070BB01
3L070DE09
3L070DF06
(57)【要約】
【課題】輻射暖房の出力を可変できる輻射暖房機能付きボイラー装置を提供する。
【解決手段】筐体2内に温水を貯湯する缶体10と、缶体10を加熱するバーナ13と、バーナ13の燃焼により発生した燃焼ガスから熱回収し温水を加熱する熱交換器20と、熱交換器20をバイパスして燃焼室15と排気室17を接続するバイパス排気路50を備えた輻射暖房機能付きボイラー装置1において、バイパス排気路50は筐体2より外側へ放熱可能とし、バイパス排気路50を開閉可能に形成されたダンパー53を設け、切換スイッチ94のオンオフに応じてダンパー53を開閉するようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に温水を貯湯する缶体と、
前記缶体を加熱するバーナと、
前記缶体の下部内側に形成され前記バーナの燃焼が行われる燃焼室と、
前記バーナの燃焼により発生した燃焼ガスから熱回収し前記温水を加熱する熱交換器と、
前記熱交換器の上方に設置され前記熱交換器を通過した後の燃焼ガスを集合させる排気室と、
前記排気室を通過した後の燃焼ガスを機外に排出する排気筒と、
外部の暖房端末と前記缶体とを温水往き管と温水戻り管とで接続した暖房回路と、
前記暖房回路に前記温水を循環させるポンプと、
を備えた輻射暖房機能付きボイラー装置において、
前記熱交換器をバイパスして前記燃焼室と前記排気室を接続するバイパス排気路と、を備え、
前記バイパス排気路は前記筐体より外側へ放熱可能とし、
前記バイパス排気路を開閉可能に形成されたダンパーを設け、
前記ダンパーの開閉制御を行う制御部と、
前記制御部と通信可能に接続された操作部と、
前記操作部に設けられた切換スイッチと、を備え、
前記制御部は、
前記切換スイッチのオンオフに応じて前記ダンパーを開閉するようにした
ことを特徴とする輻射暖房機能付きボイラー装置。
【請求項2】
前記操作部に表示部を備え、
前記表示部は、前記切換スイッチのオンオフに応じて前記ダンパーの開閉状態を表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の輻射暖房機能付きボイラー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は家庭用の暖房用のボイラー装置に関し、特に輻射暖房機能を備え、輻射暖房用バーナと温水暖房用バーナとを1つのバーナで兼ね備える輻射暖房機能付きボイラー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、暖房用のボイラー装置としては、
図4に示すように、缶体110に備えた温水戻り口124に、温水戻り管133が接続され、缶体110に備えた温水出口123に接続した温水往き管132にポンプ136と気水分離器145を備え、温水戻り管133と温水往き管132とは図示しない暖房端末に接続される。さらに、缶体110の下部に備えたバーナ113の燃焼により、高温の燃焼ガスは熱交換器120にて熱交換され、缶体110の温水を所定の温度に加熱して、排気室117を経由したのち排気筒118より筐体102の外部へ排出されるものであった。これによって、前記暖房端末に所定の温水を循環させ暖房することができた。
このようなボイラー装置としては、例えば特許文献1があった。
【0003】
一方、温水暖房機能と輻射暖房機能とを備えたものとしては以下のようなものがあった。すなわち、バーナと連通した耐熱透明体から成る燃焼筒を備え、上方には筒状の赤熱体が垂下して備えられ燃焼ガスで加熱されて赤熱し、燃焼筒の後方を反射板で囲んだ輻射室を形成して、赤熱状態を室内に反射させて輻射暖房を行う暖房機において、器具外に設置された放熱器によって温度が低下した温水を、前記燃焼ガスによって内部に有する熱交換器と循環ポンプで所定の温度に加熱し循環させ、温水暖房を行う温水熱交換器内蔵型ストーブがあった。
このような温水熱交換器内蔵型ストーブとして、例えば特許文献2があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3845240号公報
【特許文献2】特許第4021631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、北海道札幌市など寒冷地エリアの大都市圏における近年の住宅事情は、核家族化や高齢化の進展により以前ほど広いリビングの必要性が薄れたり、あるいは在宅ワーカーの増加など広いリビングが確保できないなどの傾向が進みつつある。
また、二重窓や断熱性能の向上など、寒冷地ならではの住宅構造により、以前のような大能力の暖房の必要性が薄れてきている。
このような中において、寒冷地エリアにおける暖房ニーズとしては、リビング用には広さに合わせた適度な暖房能力の輻射暖房と、全館用には温水式のセントラル暖房が、新たなライフスタイルの暖房ニーズとして浮かび上がっている。
【0006】
しかしながら、従来の温水熱交換器内蔵型ストーブでは、温水暖房用の熱交換器を通過する燃焼ガスが、前記熱交換器に至るまでに前記赤熱体を加熱して、その後、前記熱交換器で熱交換して温水温度を上昇させて温水暖房を行うものであるため、前記赤熱体であるところの輻射暖房の出力を上下させると、温水暖房の出力も連動してしまい、温水暖房の出力を維持したまま輻射暖房の出力を可変することができず、使用者にとって使いづらいものであった。
【0007】
本発明はかかる背景を鑑みてなされたものであり、輻射暖房と温水暖房を1台で兼ね備えることができる輻射暖房機能付きボイラー装置において、輻射暖房の出力と温水暖房の出力の相互の影響を最小限にとどめ、輻射暖房の出力を可変できる輻射暖房機能付きボイラー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、請求項1では、筐体内に温水を貯湯する缶体と、前記缶体を加熱するバーナと、前記缶体の下部内側に形成され前記バーナの燃焼が行われる燃焼室と、前記バーナの燃焼により発生した燃焼ガスから熱回収し前記温水を加熱する熱交換器と、前記熱交換器の上方に設置され前記熱交換器を通過した後の燃焼ガスを集合させる排気室と、前記排気室を通過した後の燃焼ガスを機外に排出する排気筒と、外部の暖房端末と前記缶体とを温水往き管と温水戻り管とで接続した暖房回路と、前記暖房回路に前記温水を循環させるポンプと、を備えた輻射暖房機能付きボイラー装置において、前記熱交換器をバイパスして前記燃焼室と前記排気室を接続するバイパス排気路と、を備え、前記バイパス排気路は前記筐体より外側へ放熱可能とし、前記バイパス排気路を開閉可能に形成されたダンパーを設け、前記ダンパーの開閉制御を行う制御部と、前記制御部と通信可能に接続された操作部と、前記操作部に設けられた切換スイッチと、を備え、前記制御部は、前記切換スイッチのオンオフに応じて前記ダンパーを開閉するようにしたことを特徴とした。
【0009】
請求項2では、前記操作部に表示部を備え、前記表示部は、前記切換スイッチのオンオフに応じて前記ダンパーの開閉状態を表示することを特徴とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1によれば、前記バイパス排気路を開閉可能に形成されたダンパーを設け、前記切換スイッチのオンオフに応じて前記ダンパーを開閉するようにしたので、前記暖房回路に接続された温水暖房の暖房感を損ねることなく輻射暖房の出力を可変できる。また、前記ダンパーを閉塞することで輻射暖房を最小にして前記暖房回路に接続された温水暖房を優先することが可能となる。
【0011】
請求項2によれば、前記表示部は、前記切換スイッチのオンオフに応じて前記ダンパーの開閉状態を表示するとしたので、使用者が操作して指示した暖房の内容が常に確認でき、操作感が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態を説明する輻射暖房機能付きボイラー装置の概略構成図
【
図2】本発明の第1の実施形態を説明する要部ブロック図
【
図3】本発明の第1の実施形態を説明するフローチャート
【
図4】従来のボイラー装置の実施形態を説明する概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明にかかる輻射暖房機能付きボイラー装置の第1の実施形態を説明する。
【0014】
図1に示すように、1は輻射暖房機能付きボイラー装置で、内部に一定量の温水が貯湯され、送風ファン14からの燃焼用空気の供給を受けて燃料(灯油またはガス)を燃焼させる燃焼機器としてのバーナ13と、バーナ13の燃焼により発生した燃焼ガスから熱回収し前記温水を加熱する熱交換器20と、熱交換器20の上方に設置され熱交換器20を通過した後の燃焼ガスを集合させる排気室17と、排気室17を通過した後の燃焼ガスを機外に排出する排気筒18を有しているものである。
【0015】
熱交換器20は、内部に一定量の温水を貯留する円筒状の缶体10と、缶体10の下部内側に形成されバーナ13の燃焼が行われる燃焼室15と、燃焼室15と排気室17を連通し、バーナ13の燃焼により発生した燃焼ガスを通過させる複数本の煙管16とで構成されている。
【0016】
21は缶体10の上下略中央に取り付けられた缶体10内の温水の温度(缶体温度)を検出する缶体温度センサである。
【0017】
さらに、缶体10の側周面には、缶体10上部に缶体10内に貯湯されている温水を循環するための温水出口23が設けられ、缶体10下部に循環した温水を缶体10に戻し入れるための温水戻り口24が設けられており、温水出口23に接続した温水往き管32と、温水戻り口24に接続した温水戻り管33の間に図示しない暖房端末が接続され、温水往き管32には、暖房端末に温水を循環させるポンプ36と、温水中に生じた気泡の分離を行う気水分離器45とが接続され、暖房回路34が形成されている。
【0018】
一方、熱交換器20をバイパスして燃焼室15と排気室17をバイパス排気路50で接続し、さらにバイパス排気路50は輻射暖房機能付きボイラー装置1の正面に筐体2から露出した状態で設置され、バイパス排気路50の放熱部51は筐体2より外側へ放熱可能とした。
【0019】
これにより、バーナ13の燃焼ガスの一部は、燃焼室15から煙管16を経て熱交換器20にて熱交換し缶体10内の温水を加熱したのち排気室17へ流れ、排気筒18より器具外へ排出される。
また、バーナ13の燃焼ガスの一部は、燃焼室15からバイパス排気路50を流通し、放熱部51から燃焼ガスの熱を放出して排気室17へ流れて合流し、排気筒18より器具外へ排出される。
これにより、輻射暖房機能付きボイラー装置1の温水暖房と器具正面への輻射暖房が1台で可能になる。
【0020】
さらに、バイパス排気路50と排気室17に連通するダンパー室54を設け、ダンパー室54の内部にバイパス排気路50を開閉可能にするダンパー53を設けた。
【0021】
ダンパー53は、制御部80からの信号を受けた図示しないアクチュエータ及び連動板により開閉するものである。
ダンパー53が開状態の場合は、バイパス排気路50に燃焼ガスが流通するので放熱部51による輻射暖房ができ、同時に暖房回路34による温水暖房が併用できる排気状態となる。
一方、ダンパー53が閉状態の場合は、バイパス排気路50が閉塞し、暖房回路34による温水暖房を優先した排気状態となる。
【0022】
91は輻射暖房機能付きボイラー装置1に設けられた操作部で、この操作部91に切換スイッチ94と表示部92が設けてある。
【0023】
切換スイッチ94は、切換スイッチ94のオンオフに応じてダンパー53を開閉し、放熱部51による輻射暖房と暖房回路34による温水暖房を併用運転するか、または、輻射暖房を最小の出力にして温水暖房を優先するかを選択可能とするスイッチである。
すなわち、切換スイッチ94でオンを選択した場合は、ダンパー53が開状態となってバイパス排気路50を燃焼ガスが流通し、放熱部51による輻射暖房が行えると同時に、缶体10内部では熱交換器20で熱交換が行える燃焼ガスの流れが形成される。
一方、切換スイッチ94でオフを選択した場合は、ダンパー53が閉状態となってバイパス排気路50は閉塞され、缶体10内部では熱交換器20で熱交換が行える燃焼ガスの流れが形成される。
【0024】
表示部92は、切換スイッチ94のオンオフに応じてダンパー53の開閉状態を表示するもので、切換スイッチ94がオンの場合は、輻射暖房と温水暖房とを併用して運転していることを表示し、オフの場合は、温水暖房が優先して運転していることを表示する。
【0025】
図2に示すように、80はバーナ13の燃焼制御とダンパー53の開閉制御を行うマイコンからなる制御部で、入力側には缶体温度センサ21が接続され、出力側にはバーナ13、送風ファン14、ポンプ36、ダンパー53が接続されている。
また、制御部80と操作部91とが通信可能に接続されている。
【0026】
次に、本発明の第1の実施形態の作用について
図3に基づいて説明する。
制御部80は、ステップS1にて切換スイッチ94の状態を読み取り、切換スイッチ94がオンの場合はステップS2に遷移し、切換スイッチ94がオフの場合はステップS4に遷移する。
ステップS2では、図示しないアクチュエータを駆動してダンパー53を開状態とする。
ステップS3では、表示部92に輻射暖房と温水暖房とを併用して運転していることを表示し、ステップS1に遷移する。
【0027】
ステップS4では、図示しないアクチュエータを駆動してダンパー53を閉状態とする。
ステップS5では、表示部92に温水暖房を優先して運転していることを表示し、ステップS1に遷移する。
【0028】
これにより、切換スイッチ94をオンにした場合は放熱部51による輻射暖房と暖房回路34による温水暖房を同時に行うことができ、切換スイッチ94をオフにした場合は暖房回路34による温水暖房の出力は変えずに放熱部51による輻射暖房を最小にすることができる。
よって、輻射暖房の出力と温水暖房の出力の相互の影響を最小限にとどめ、輻射暖房の出力を可変できるものである。
【0029】
なお、この実施形態では上向きに取り付けられたバーナ13を構成する燃焼機器で説明したが、これに限定されることなく、例えば横向きに取り付けたガンタイプバーナを構成する燃焼機器でもよい。
【0030】
なお、操作部91を輻射暖房機能付きボイラー装置1に設けたが、輻射暖房機能付きボイラー装置1の外部に設けてもよいものである。
【0031】
なお、バイパス排気路50に向けて図示しない対流ファンの風を当てて、器具外へ温風を吹き出すことで温風暖房も行うことができ、当業者の設計の範囲で行っても良いものである。
【0032】
なお、本実施形態で用いたその他の構成は一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図しておらず、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1 輻射暖房機能付きボイラー装置
2 筐体
10 缶体
13 バーナ
15 燃焼室
17 排気室
18 排気筒
20 熱交換器
32 温水往き管
33 温水戻り管
34 暖房回路
36 ポンプ
50 バイパス排気路
53 ダンパー
80 制御部
91 操作部
92 表示部
94 切換スイッチ