(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016277
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理装置、及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20120101AFI20220114BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20220114BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20220114BHJP
【FI】
G06Q10/06
G06Q50/10
G06N20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024656
(22)【出願日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2020117900
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508354533
【氏名又は名称】Unipos株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】小西 達也
(72)【発明者】
【氏名】黒川 茂莉
(72)【発明者】
【氏名】塚常 健太
(72)【発明者】
【氏名】水谷 優斗
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA06
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】定量的な情報に基づいて構成員が属する組織の数値目標を達成するためのアドバイスを提供する。
【解決手段】モデル取得部30は、組織の特徴を示す特徴量を入力とし、組織の活動の大小を示すデータである活動データを出力するようにニューラルネットワークによって機械学習された学習モデルを取得する。目標受付部31は、活動データの目標値の入力を受け付ける。モデル逆算部32は、学習モデルが目標値を出力するために学習モデルに入力する特徴量である第1特徴量を算出する。差分取得部33は、第1特徴量と、組織の現在の特徴を示す第2特徴量との差分である差分特徴量を取得する。出力部34は、差分特徴量に対応する文字列を表示部に出力する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
組織の特徴を示す特徴量を入力とし、前記組織の活動の大小を示すデータである活動データを出力するようにニューラルネットワークによって機械学習された学習モデルを取得する機能と、
前記活動データの目標値の入力を受け付ける機能と、
前記学習モデルが前記目標値を出力するために前記学習モデルに入力する特徴量である第1特徴量を算出する機能と、
前記第1特徴量と、前記組織の現在の特徴を示す第2特徴量との差分である差分特徴量を取得する機能と、
前記差分特徴量に対応する文字列を表示部に出力する機能と、
を実現させるプログラム。
【請求項2】
前記コンピュータに、
前記差分特徴量の値を調整するための調整量を受け付ける機能と、
前記調整量に基づいて前記差分特徴量を調整して調整済み特徴量を算出する機能と、をさらに実現させ、
前記出力する機能は、前記調整済み特徴量に対応する文字列を出力する、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記コンピュータに、
前記第1特徴量と前記第2特徴量との差分が前記調整済み特徴量となるように修正した前記第1特徴量を前記学習モデルに入力して調整済み活動データを算出する機能をさらに実現させ、
前記出力する機能は、前記調整済み活動データを出力する、
請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記第1特徴量を算出する機能は、
前記学習モデルに入力する特徴量の初期値を設定する機能と、
前記特徴量を前記学習モデルに入力した場合の出力である活動データの値と、前記目標値との差が所定の閾値未満となるまで、前記特徴量を更新する機能と、
前記目標値との差が所定の閾値未満となるまで更新された前記特徴量を前記第1特徴量として出力する機能と、
を備える請求項1から3のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項5】
前記コンピュータに、
前記特徴量に関する拘束条件の設定を受け付ける機能をさらに実現させ、
前記更新する機能は、前記拘束条件を満たす範囲において、前記特徴量を更新する、
請求項4に記載のプログラム。
【請求項6】
前記特徴量は、SNS(Social Networking Service)におけるユーザに関する情報であり、
前記出力する機能は、前記文字列を前記SNSに送信する、
請求項1から5のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項7】
コンピュータに、
請求項1に記載のプログラムを実行したコンピュータによって算出された第2特徴量及び差分特徴量と、前記文字列の提示後の組織の特徴を示す第3特徴量との複数の組み合わせに基づいて学習された学習モデルであって、第2特徴量と差分特徴量とを入力とし、第3特徴量と第1特徴量との乖離を反映する値を出力するように学習された第2学習モデルを取得する機能と、
前記学習モデルと前記第2学習モデルとから、組織の特徴を示す特徴量に関する評価関数を生成する機能と、
前記評価関数の極値となる特徴量である第4特徴量を算出する機能と、
前記第4特徴量と、前記第2特徴量との差分である差分特徴量を取得する機能と、
前記差分特徴量に対応する文字列を表示部に出力する機能と、
を実現させるプログラム。
【請求項8】
前記評価関数は、前記学習モデルの出力値が大きいほど大きい値を出力し、かつ前記第2学習モデルの出力値が小さいほど大きい値を出力する、
請求項7に記載のプログラム。
【請求項9】
組織の特徴を示す特徴量を入力とし、前記組織の活動の大小を示すデータである活動データを出力するようにニューラルネットワークによって機械学習された学習モデルを取得するモデル取得部と、
前記活動データの目標値の入力を受け付ける目標受付部と、
前記学習モデルが前記目標値を出力するために前記学習モデルに入力する特徴量である第1特徴量を算出するモデル逆算部と、
前記第1特徴量と、前記組織の現在の特徴を示す第2特徴量との差分である差分特徴量を取得する差分取得部と、
前記差分特徴量に対応する文字列を表示部に出力する出力部と、
を備える情報処理装置。
【請求項10】
プロセッサが、
組織の特徴を示す特徴量を入力とし、前記組織の活動の大小を示すデータである活動データを出力するようにニューラルネットワークによって機械学習された学習モデルを取得するステップと、
前記活動データの目標値の入力を受け付けるステップと、
前記学習モデルが前記目標値を出力するために前記学習モデルに入力する特徴量である第1特徴量を算出するステップと、
前記第1特徴量と、前記組織の現在の特徴を示す第2特徴量との差分である差分特徴量を取得するステップと、
前記差分特徴量に対応する文字列を表示部に出力するステップと、
を実行する情報処理方法。
【請求項11】
コンピュータに、
組織の特徴を示す特徴量を入力とし、前記組織の活動の大小を示すデータである活動データを出力するようにニューラルネットワークによって機械学習された学習モデルを取得する機能と、
前記組織が目標とする特徴を示す所定の第1特徴量と、前記組織の実際の特徴を示す第2特徴量との差分である差分特徴量を取得する機能と、
第2特徴量及び差分特徴量と、組織の特徴が第1特徴量となるように組織の構成員が行動した後の前記組織の特徴を示す第3特徴量との複数の組み合わせに基づいて学習された学習モデルであって、第2特徴量と差分特徴量とを入力とし、第3特徴量と第1特徴量との乖離を反映する値を出力するように学習された第2学習モデルを取得する機能と、
前記学習モデルと前記第2学習モデルとから、組織の特徴を示す特徴量に関する評価関数を生成する機能と、
前記評価関数の極値となる特徴量である第4特徴量を算出する機能と、
前記第4特徴量と、前記第2特徴量との差分である差分特徴量を取得する機能と、
前記差分特徴量に対応する文字列を表示部に出力する機能と、
を実現させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、情報処理装置、及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集団と構成員の状態を解析し、当該状態をよい状態にするための行動のアドバイスをする技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術は、アドバイス選択の基準となる構成員の特徴を主観的かつ離散的に表現する指標であるアンケートを用いて取得しており、構成員それぞれの置かれた状況等を客観的に表現できていないという問題がある。
【0005】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、定量的な情報に基づいて構成員が属する組織の数値目標を達成するためのアドバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、プログラムである。このプログラムは、コンピュータに、組織の特徴を示す特徴量を入力とし、前記組織の活動の大小を示すデータである活動データを出力するようにニューラルネットワークによって機械学習された学習モデルを取得する機能と、前記活動データの目標値の入力を受け付ける機能と、前記学習モデルが前記目標値を出力するために前記学習モデルに入力する特徴量である第1特徴量を算出する機能と、前記第1特徴量と、前記組織の現在の特徴を示す第2特徴量との差分である差分特徴量を取得する機能と、前記差分特徴量に対応する文字列を表示部に出力する機能と、を実現させる。
【0007】
前記プログラムは、前記コンピュータに、前記差分特徴量の値を調整するための調整量を受け付ける機能と、前記調整量に基づいて前記差分特徴量を調整して調整済み特徴量を算出する機能と、をさらに実現させてもよく、前記出力する機能は、前記調整済み特徴量に対応する文字列を出力してもよい。
【0008】
前記プログラムは、前記コンピュータに、前記第1特徴量と前記第2特徴量との差分が前記調整済み特徴量となるように修正した前記第1特徴量を前記学習モデルに入力して調整済み活動データを算出する機能をさらに実現させてもよく、前記出力する機能は、前記調整済み活動データを出力してもよい。
【0009】
前記第1特徴量を算出する機能は、前記学習モデルに入力する特徴量の初期値を設定する機能と、前記特徴量を前記学習モデルに入力した場合の出力である活動データの値と、前記目標値との差が所定の閾値未満となるまで、前記特徴量を更新する機能と、前記目標値との差が所定の閾値未満となるまで更新された前記特徴量を前記第1特徴量として出力する機能と、を備えてもよい。
【0010】
前記プログラムは、前記コンピュータに、前記特徴量に関する拘束条件の設定を受け付ける機能をさらに実現させてもよく、前記更新する機能は、前記拘束条件を満たす範囲において、前記特徴量を更新してもよい。
【0011】
前記特徴量は、SNS(Social Networking Service)におけるユーザに関する情報であってもよく、前記出力する機能は、前記文字列を前記SNSに送信してもよい。
【0012】
本発明の第2の態様もプログラムである。このプログラムは、コンピュータに、上述のプログラムを実行したコンピュータによって算出された第2特徴量及び差分特徴量と、前記文字列の提示後の組織の特徴を示す第3特徴量との複数の組み合わせに基づいて学習された学習モデルであって、第2特徴量と差分特徴量とを入力とし、第3特徴量と第1特徴量との乖離を反映する値を出力するように学習された第2学習モデルを取得する機能と、前記学習モデルと前記第2学習モデルとから、組織の特徴を示す特徴量に関する評価関数を生成する機能と、前記評価関数の極値となる特徴量である第4特徴量を算出する機能と、前記第4特徴量と、前記第2特徴量との差分に対応する文字列を表示部に出力する機能と、を実現させる。
【0013】
前記評価関数は、前記学習モデルの出力値が大きいほど大きい値を出力し、かつ前記第2学習モデルの出力値が小さいほど大きい値を出力してもよい。
【0014】
本発明の第3の態様は、情報処理装置である。この装置は、組織の特徴を示す特徴量を入力とし、前記組織の活動の大小を示すデータである活動データを出力するようにニューラルネットワークによって機械学習された学習モデルを取得するモデル取得部と、前記活動データの目標値の入力を受け付ける目標受付部と、前記学習モデルが前記目標値を出力するために前記学習モデルに入力する特徴量である第1特徴量を算出するモデル逆算部と、前記第1特徴量と、前記組織の現在の特徴を示す第2特徴量との差分である差分特徴量を取得する差分取得部と、前記差分特徴量に対応する文字列を表示部に出力する出力部と、を備える。
【0015】
本発明の第4の態様は、情報処理方法である。この方法において、プロセッサが、組織の特徴を示す特徴量を入力とし、前記組織の活動の大小を示すデータである活動データを出力するようにニューラルネットワークによって機械学習された学習モデルを取得するステップと、前記活動データの目標値の入力を受け付けるステップと、前記学習モデルが前記目標値を出力するために前記学習モデルに入力する特徴量である第1特徴量を算出するステップと、前記第1特徴量と、前記組織の現在の特徴を示す第2特徴量との差分である差分特徴量を取得するステップと、前記差分特徴量に対応する文字列を表示部に出力するステップと、を実行する。
【0016】
本発明の第5の態様もプログラムである。このプログラムは、コンピュータに、組織の特徴を示す特徴量を入力とし、前記組織の活動の大小を示すデータである活動データを出力するようにニューラルネットワークによって機械学習された学習モデルを取得する機能と、前記組織が目標とする特徴を示す所定の第1特徴量と、前記組織の実際の特徴を示す第2特徴量との差分である差分特徴量を取得する機能と、第2特徴量及び差分特徴量と、組織の特徴が第1特徴量となるように組織の構成員が行動した後の前記組織の特徴を示す第3特徴量との複数の組み合わせに基づいて学習された学習モデルであって、第2特徴量と差分特徴量とを入力とし、第3特徴量と第1特徴量との乖離を反映する値を出力するように学習された第2学習モデルを取得する機能と、前記学習モデルと前記第2学習モデルとから、組織の特徴を示す特徴量に関する評価関数を生成する機能と、前記評価関数の極値となる特徴量である第4特徴量を算出する機能と、前記第4特徴量と、前記第2特徴量との差分である差分特徴量を取得する機能と、前記差分特徴量に対応する文字列を表示部に出力する機能と、を実現させる。
【0017】
上記プログラムを提供するため、あるいはプログラムの一部をアップデートするために、上記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供されてもよく、また、上記プログラムが通信回線で伝送されてもよい。
【0018】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、データ構造、記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、定量的な情報に基づいて構成員が属する組織の数値目標を達成するためのアドバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施の形態に係る学習モデルを説明するための図である。
【
図2】学習モデルの入力の算出と特徴量の差分とを説明するための図である。
【
図3】実施の形態に係る情報処理装置の機能構成を模式的に示す図である。
【
図4】差分特徴量と文字列との対応関係を説明するための模式図である。
【
図5】実施の形態に係るモデル逆算部の機能構成を模式的に示す図である。
【
図6】実施の形態に係るモデル逆算部が実行する逆算処理を説明するための図である。
【
図7】実施の形態に係る情報処理装置が実行する情報処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図8】第2の変形例に係る情報処理装置が扱う特徴量の一覧を表形式で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施の形態の概要>
実施の形態の概要を述べる。実施の形態に係る情報処理装置は、組織の特徴を示す特徴量を入力としたとき、その組織の活動の大小を示すデータである活動データを出力するようにニューラルネットワークによって機械学習された学習モデルを保持している。
【0022】
ここで、「組織の特徴を示す特徴量」は、その組織を構成する構成員の特徴又は構成員同士のつながり方の特徴を示す量であればどのようなものでもよく、一例としては、人的ネットワークを表現する隣接行列や、人的ネットワークを構成する各ノード及びエッジに付与される特徴量である。
【0023】
また、「組織の活動の大小を示す活動データ」は、その組織で行われる活動が活発か否かを端的に示す量であればどのようなものでもよく、一例としては、組織を構成する構成員間でやりとりされたメールの総数、組織を構成する構成員がSNSに参加している場合は、そのSNSにおける構成員のインタラクションの総数や単位期間あたりのログイン数の総和、組織が営利組織である場合には、単位期間あたりの組織全体としての売上額や利益率等が挙げられる。
【0024】
実施の形態に係る情報処理装置は、任意の活動データを受け付けると、その活動データを出力するために学習モデルに入力すべき特徴量を算出する。実施の形態に係る情報処理装置は、算出した特徴量と、組織の現在の状態を示す特徴量とを比較することにより、組織の活動データが受け付けた活動データとなるために組織の構成員や構成員同士のつながりがどのようになればよいかのアドバイスを出力する。
【0025】
図1(a)-(c)は、実施の形態に係る学習モデルを説明するための図である。また、
図2は、学習モデルの入力の算出と特徴量の差分とを説明するための図である。以下、
図1を参照して学習モデルを説明した後に、
図2を参照して実施の形態に係る情報処理が実行する処理の概要を説明する。
【0026】
図1(a)は、組織を構成する構成員を示す模式図である。説明の便宜のため、
図1(a)に示すように、組織の構成員は、構成員α、構成員β、及び構成員γの3名であることを前提とするが、組織の構成員は3名より多くてもよい。
【0027】
図1(b)は、
図1(a)に示す3名の構成員の人的ネットワークを示す重み付き有向グラフと、3名の構成員によって構成される組織の活動データとを示す模式図である。
図1(b)に示す例は、構成員α、構成員β、及び構成員γが所属する組織内で運用されているSNSにおけるインタラクションを示している。
【0028】
具体的には、
図1(b)において、円で囲ったα、β、及びγは、それぞれ構成員α、構成員β、及び構成員γを示している。また、構成員同士を結ぶ矢印は、矢印の始点にあたる構成員から、矢印の終点にあたる構成員に対して行われた単位期間(例えば1ヶ月間)あたりのインタラクションの数を示している。例えば、
図1(b)に示す例では、構成員αは構成員βに対して単位期間あたりp回のインタラクションを起こしたことを示している。一方で、構成員βから構成員αに対するインタラクションは単位期間の間になかったことを示している。
【0029】
また、
図1(b)において、各円の近傍に付された文字は各構成員の特徴を示す特徴量である。
図1(b)に示す例では、各構成員の特徴量は、各構成員の1日の平均労働時間を示している。例えば、構成員βの平均労働時間は、1日あたりu時間であることを示している。さらに、
図1(b)において、活動データは、構成員α、構成員β、及び構成員γによって構成される組織における単位期間あたりの売上額を示している。
図1(b)に示す例では、組織の売上額は1ヶ月でA円であったことを示している。
【0030】
図1(c)は、学習モデルの生成を説明するための模式図である。具体的には、
図1(c)に示す学習モデルは、3人の構成員から構成される組織の特徴量と、その組織における活動データとを1組とする複数の組から構成される教師データに基づいて、ニューラルネットワークによって機械学習により生成される。既知のように、人的ネットワークは隣接行列によって表現することができる。例えば、
図1(b)に示す人的ネットワークは、以下の式(1)に示す3行3列の行列によって表現される。
【0031】
【0032】
式(1)に示す隣接行列において、各行は人的ネットワークにおける矢印の始点、各列は人的ネットワークにおける矢印の終点、値は単位期間あたりのインタラクションの数を示している。例えば、1行2列は構成員αから構成員βへのインタラクションの数(p回)を示している。同一の構成員間のインタラクションは存在しないため、隣接行列における対角成分は0となっている。また、各構成員の特徴は、以下の式(2)に示す1行3列のベクトルの成分で表されている。各列の要素は各構成員の特徴量に対応する。例えば、式(2)における第1成分は構成員αの特徴を示しており、例えば、構成員αの平均労働時間が1日あたりt時間であることを示している。
【0033】
【0034】
実施の形態に係る情報処理装置は、大量の教師データに基づいて組織の特徴を示す特徴量を入力したときその組織の活動データを出力するようにあらかじめ学習された学習モデルを保持している。ここで、学習モデルに入力する特徴量をxとし、学習モデルが出力する活動データをyとする。
図1(c)に示す例では、特徴量xは、3行3列の隣接行列と、1行3列のベクトルとを合わせた情報であり、12個の成分を持つ情報となる。一方、活動データyはスカラ値となる。なお、学習モデルが複数の異なる活動データ(例えば、月間売り上げ、月間ログイン数、インタラクション数の総和等)を出力するように学習されている場合、活動データyは複数の成分を持つ情報となる。
【0035】
学習モデルは、特徴量xを入力として活動データyを出力するため、fを多変数関数として、y=f(x)と表現できる。
図1(c)に示す例では、関数fは12個の成分を引数とする関数となる。あらかじめ機械学習によって学習モデルが生成されていることは、関数f(x)が固定されていることを意味する。そこで、実施の形態に係る情報処理装置は所望の活動データyを出力するために関数fに入力すべき特徴量xを、学習モデルを表す関数fを用いて逆算することによって算出する。
【0036】
図2(a)は、活動データyの値を目標値であるCとするための特徴量がx’であることを示している。これは、組織の特徴量がx’になれば、その組織の活動データがCとなることを示している。また、
図2(b)は、組織の現状の特徴量xを示している。したがって、組織の特徴量xを特徴量x’にすることができれば、その組織の活動データをCとすることができる。
【0037】
図2(c)は、特徴量x’と特徴量xとの差分x’-xを示す模式図である。
図2(c)に示す例は、例えば構成員βから構成員αへのインタラクションをl-c回増やすことが、その組織の活動データをCとするための条件の一つであることを示している。同様に、構成員αの1日の労働時間をp-q時間増やすことも、組織の活動データをCとするための条件の一つであることを示している。なお、l-cやp-qが負の値となる場合、それぞれ構成員βから構成員αへのインタラクションを|l-c|回減らし、構成員αの1日の労働時間を|p-q|時間減らすことを示している。これらは、組織の活動データを目標値Cとするための具体的なアドバイスとなる。
【0038】
組織の特徴量や活動データは、定量的かつ客観的な情報である。また、学習モデルは、組織全体の統計的な情報を集約したものと捉えることができる。したがって、実施の形態に係る情報処理装置は、定量的かつ客観的な情報と組織全体の統計的な情報とを用いて、構成員が属する組織の数値目標を達成するためのアドバイスを提供することができる。
【0039】
<実施の形態に係る情報処理装置1の機能構成>
図3は、実施の形態に係る情報処理装置1の機能構成を模式的に示す図である。情報処理装置1は、記憶部2、制御部3、及び表示部4を備える。
図3において、矢印は主なデータの流れを示しており、
図3に示していないデータの流れがあってもよい。
図3において、各機能ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、
図3に示す機能ブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。機能ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0040】
記憶部2は、情報処理装置1を実現するコンピュータのBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)や情報処理装置1の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、OS(Operating System)やアプリケーションプログラム、当該アプリケーションプログラムの実行時に参照される学習済みの学習モデル等の種々の情報を格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置である。
【0041】
制御部3は、情報処理装置1のCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部2に記憶されたプログラムを実行することによって、モデル取得部30、目標受付部31、モデル逆算部32、差分取得部33、出力部34、調整受付部35、調整実行部36、モデル適用部37、及び拘束条件受付部38として機能する。
【0042】
なお、
図3は、情報処理装置1が単一の装置で構成されている場合の例を示している。しかしながら、情報処理装置1は、例えばクラウドコンピューティングシステムのように複数のプロセッサやメモリ等の計算リソースによって実現されてもよい。この場合、制御部3を構成する各部は、複数の異なるプロセッサの中の少なくともいずれかのプロセッサがプログラムを実行することによって実現される。
【0043】
モデル取得部30は、組織の特徴を示す特徴量を入力とし、組織の活動の大小を示すデータである活動データを出力するようにニューラルネットワークによって機械学習された学習モデルを記憶部2から読み出して取得する。
【0044】
目標受付部31は、活動データの目標値の入力を受け付ける。具体的には、目標受付部31は、情報処理装置1を操作するためのキーボード及びマウス等の図示しない入力インタフェースを介して情報処理装置1のユーザから目標値の入力を受け付ける。モデル逆算部32は、学習モデルが目標値を出力するために学習モデルに入力する特徴量である第1特徴量を算出する。モデル逆算部32の詳細は後述する。
【0045】
差分取得部33は、組織の現在の特徴を示す第2特徴量を記憶部2から読み出して取得する。差分取得部33は、第1特徴量と第2特徴量との差分である差分特徴量を演算により取得する。出力部34は、差分特徴量に対応する文字列を表示部4に出力する。
【0046】
図4(a)-(b)は、差分特徴量と文字列との対応関係を説明するための模式図である。具体的には、
図4(a)は差分特徴量の例を示す図であり、
図4(b)は差分特徴量を文字列に変換するための文字列データベースのデータ構造を模式的に示す図である。文字列データベースは出力部34によって管理され、記憶部2に格納されている。
【0047】
図4(a)において、#N(N=1,・・・,9)は、モデル逆算部32によって算出された差分特徴量の要素である実数値を示している。例えば、#1は「1」ではなく何らかの実数値を示している。
【0048】
図4(b)に示すように、文字列データベースには、#Nに対応する文字列が格納されている。出力部34は、文字列データベースに含まれる#Nを、実際の#Nの値に置き換えて出力する。例えば、#1に対応する文字列は、「αさんからβさんに対する行動を#1回増加(減少)させましょう。」である。ここで、#1の実際の値が「3」であったとすると、出力部34は、「αさんからβさんに対する行動を3回増加させましょう。」という文字列を表示部4に出力する。別の例として、#9の値が「-1.2」であるとすると、出力部34は、「γさんは残業時間を1.2時間減少させましょう。」という文字列を表示部4に出力する。
【0049】
このように、情報処理装置1は、定量的かつ客観的な情報と組織全体の統計的な情報とを用いて、構成員が属する組織の数値目標を達成するためのアドバイスを提供することができる。
【0050】
図5は、実施の形態に係るモデル逆算部32の機能構成を模式的に示す図である。モデル逆算部32は、初期値設定部320、更新部321、及び第1特徴量出力部322を備える。また、
図6は、実施の形態に係るモデル逆算部32が実行する逆算処理を説明するための図である。以下、
図5及び
図6を参照して、モデル逆算部32が実行する逆算処理について説明する。
【0051】
上述したように、特徴量xを学習モデルに入力したとき活動データyが出力される場合、これらの関係はy=f(x)と記述できる。図示の都合上、
図6では特徴量xを示す軸を1次元としているが、通常xは多次元(
図1に示す例では12次元)である。すなわち、学習モデルを表す関数fは、多次元空間中の超曲面として表すことができる。
【0052】
いま、目標受付部31が受け付けた活動データの目標値がCであるとする。モデル逆算部32は、f(x1)=Cとなる第1特徴量x1を算出することが目的となる。
図6に示す例では、特徴量がx1であり、活動データがCである点は黒丸で示されている。初期値設定部320は、学習モデルに入力する特徴量の初期値xiを設定する。一例として、初期値設定部320は、乱数を生成して初期値xiを設定する。別の例として、初期値設定部320は、組織の現在の特徴を示す第2特徴量x2に乱数を加えて初期値xiを設定してもよい。
図6に示す例では、現在の組織は黒塗りの四角形で示されている。
【0053】
更新部321は、特徴量の初期値xiを学習モデルに入力した場合の出力である活動データの値の初期値Bを算出する。
図6に示す例では、特徴量がxiであり、活動データがBである点は黒塗りの三角形で示されている。更新部321は、活動データの値と目標値Cとの差が所定の閾値未満となるまで、特徴量xを更新する。
【0054】
ここで、「所定の閾値」とは、更新部321が更新処理を停止するために参照する更新停止用参照値である。所定の閾値の具体的な値は、更新部321による更新処理の精度と演算速度とのバランスを考慮して実験により定めればよい。更新部321は、例えば既知の勾配法を用いることにより逐次的に特徴量xを更新することができる。
【0055】
なお、更新部321は、初期値Bと目標値Cとの差が所定の閾値未満となる前であっても、あらかじめ定められた所定の更新上限回数に到達するまで更新処理を繰り返した場合、更新処理を停止してもよい。これにより、更新部321は、更新処理が収束せずに演算し続ける事態を回避することができる。
【0056】
第1特徴量出力部322は、目標値Cとの差が所定の閾値未満となるまで更新された特徴量を第1特徴量x1として出力する。これにより、モデル逆算部32は、目標値Cとの差が所定の閾値未満となるような特徴量xを算出することができる。また、出力部34は、更新後の活動データの値を表示部4に出力してもよい。
【0057】
図3の説明に戻る。情報処理装置1が演算により取得した差分特徴量は、組織の活動データが目標値となるために組織があるべき特徴量と言える。しかしながら、差分特徴量は既存の学習モデルに基づいて機械的に導出した量であり、実現可能性について保証されているとは限らない。
【0058】
そこで、調整受付部35は、差分特徴量の値を調整するための調整量を受け付ける。具体的には、調整受付部35は、情報処理装置1のユーザインターフェースを介して情報処理装置1のユーザから調整量を受け付ける。調整実行部36は、調整受付部35が受け付けた調整量に基づいて差分特徴量を調整して調整済み特徴量を算出する。出力部34は、調整済み特徴量に対応する文字列を表示部4に出力する。これにより、情報処理装置1は、情報処理装置1のユーザによって調整されたアドバイスを出力することができる。
【0059】
また、モデル適用部37は、第1特徴量x1と第2特徴量x2との差分が調整済み特徴量となるように修正した第1特徴量を学習モデルに入力して調整済み活動データを算出する。具体的には、モデル適用部37は、調整実行部36が調整した調整済み特徴量に第2特徴量を加算した特徴量を、修正した第1特徴量として学習モデルに入力する。出力部34は、モデル適用部37が算出した調整済み活動データを表示部4に出力する。
【0060】
情報処理装置1のユーザが差分特徴量を修正することにより、結果として第1特徴量x1が修正されることになる。修正された第1特徴量x1を入力とした場合の学習モデルの出力は、目標値である活動データCとは異なる値となり得る。調整受付部35が修正後の第1特徴量x1に対応する活動データを表示することにより、情報処理装置1は、差分特徴量の修正が最終的な活動データにどの程度影響するかを示すことができる。
【0061】
調整受付部35は、モデル逆算部32が差分特徴量を算出した後に、算出後の差分特徴量の調整量を取得する。これに替えて、差分特徴量の調整を不要とするために、モデル逆算部32の演算にあらかじめ拘束条件を設けてもよい。具体的には、まず、拘束条件受付部38は、特徴量xに関する拘束条件の設定を情報処理装置1のユーザからユーザインターフェースを介して受け付ける。情報処理装置1は、例えば、活動データの改善策として実行が現実的な範囲となるように拘束条件を設定する。
【0062】
モデル逆算部32は、拘束条件受付部38が受け付けた拘束条件を満たす範囲において、特徴量xを更新する。具体的には、モデル逆算部32は、既知の拘束条件付き勾配法により、特徴量xを更新する。これにより、情報処理装置1のユーザは、実行が現実的な範囲において、組織の活動データを改善するためのアドバイスを得ることができる。
【0063】
上述したように、実施の形態に係る情報処理装置1は、構成員が属する組織の数値目標を達成するためのアドバイスを提供することを目的としており、最終的にはアドバイスを構成員に届ける必要がある。ここで、構成員がSNSに属しており、特徴量xがSNSにおけるユーザに関する情報(具体的には、ユーザ同士のつながりを示す情報とユーザ自身を示す情報との少なくとも一方の情報)である場合には、出力部34は、差分特徴量に対応する文字列を表示部4に替えて、あるいはそれに加えて、SNSに出力してもよい。具体的には、出力部34は、例えば既知のBOT機能を用いて実現できる。これにより、情報処理装置1は、情報処理装置1のユーザが組織の構成員にアドバイスを通知する手間を省略することができる。
【0064】
<情報処理装置1が実行する情報処理方法の処理フロー>
図7は、実施の形態に係る情報処理装置1が実行する情報処理の流れを説明するためのフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、例えば情報処理装置1が起動したときに開始する。
【0065】
モデル取得部30は、組織の特徴を示す特徴量を入力とし、組織の活動の大小を示すデータである活動データを出力するよう学習された学習モデルを取得する(S2)。目標受付部31は、情報処理装置1のユーザから活動データの目標値の入力を受け付ける(S4)。
【0066】
モデル逆算部32は、学習モデルが目標値を出力するために学習モデルに入力する特徴量である第1特徴量を算出する(S6)。差分取得部33は、第1特徴量と、組織の現在の特徴を示す第2特徴量との差分である差分特徴量を取得する(S8)。
【0067】
出力部34は、差分特徴量に対応する文字列を表示部4に出力する(S10)。出力部34がアドバイスを出力すると、本フローチャートにおける処理は終了する。
【0068】
<実施の形態に係る情報処理装置1が奏する効果>
以上説明したように、実施の形態に係る情報処理装置1によれば、定量的な情報に基づいて構成員が属する組織の数値目標を達成するためのアドバイスを提供することができる。
【0069】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果をあわせ持つ。
【0070】
<第1の変形例>
上記では、
図1(b)に示す構成員の人的ネットワークが重み付き有向グラフである場合について説明した。しかしながら、人的ネットワークは重み付き有向グラフである場合に限られず、重み無しの有向グラフでもよく、また無向グラフであってもよい。
【0071】
<第2の変形例>
上記では、情報処理装置1が演算により取得した差分特徴量の実現可能性を担保するために、調整実行部36がユーザから受け付けた調整量に基づいて差分特徴量を調整したり、活動データの改善策としてアドバイスが現実的な範囲となるようにあらかじめ拘束条件を設定したりする場合について説明した。これに替えて、あるいはこれに加えて、過去に実施したアドバイスに対して組織の構成員が従ったかどうか、つまりそのアドアイスの受容性をモデリングすることで、その逆算による介入効果成功率を考慮しつつ、介入効果の期待値の高いアドバイスを提供してもよい。
【0072】
以下、第2の変形例に係る情報処理投資1について説明するが、上述した実施の形態に係る情報処理装置1と共通する事項については、適宜省略又は簡略化して説明する。
【0073】
図8は、第2の変形例に係る情報処理装置1が扱う特徴量の一覧を表形式で示す図である。
図8に示すように、第2の変形例に係る情報処理装置1は、第1特徴量、第2特徴量、第3特徴量、第4特徴量、及び差分特徴量を扱う。
【0074】
上述したように、特徴量をx、活動データをy、fを学習モデルを表す固定された多変数関数とすると、y=f(x)と定式化できる。活動データを目標値Cとすることを目指したとき、それを実現する第1特徴量x1は、x1=f-1(C)となる。第1特徴量x1は活動データが理想とする目標値Cとなる特徴量であるため、以下、第2の変形例に係る情報処理装置においては、説明の便宜のため、第1特徴量x1を第1特徴量xidealと記載する。このとき、組織に対するアドバイスを提供する前の組織の特徴量を第2特徴量xactとすると、第1特徴量xidealと第2特徴量xactとの差分特徴量xdiffは、xdiff=xideal-xactであり、その内容が組織の活動データを目標値Cとするためのアドバイスに対応する。
【0075】
第1特徴量xidealと第2特徴量xactとは、組織の構成員間のコミュニケーション等を表す隣接行列や構成員自身の特徴を表すノード特徴量である。情報処理装置1が演算により取得したアドバイスである文字列はこれらの変容を期待して行うものであるが、各構成員がアドバイスにしたがって意図どおり行動する保証はなく、アドバイスを手供することによって期待される効果が得られないことも起こりうる。そこで、活動データのを目標値Cとすることを実現するための第1特徴量xidealと、アドバイス後の組織の第3特徴量x’actとから、アドバイスに対する組織の構成員の受容性を示すモデルである受容性モデルRを以下のように定義する。
【0076】
第1特徴量xidealと第3特徴量x’actとの乖離を任意の距離関数(例えば、フロベニウスノルム等の一般的なノルム)を用いて、r=|x’act-xideal|と定義する。これは、rが小さいほど、アドバイスどおりに構成員が行動したことを表す。
【0077】
複数の異なる事例においてrを計測し、第1特徴量xidealと差分特徴量xdiffとを入力したときに対応するrの推定値を出力する関数Rを、例えばニューラルネットワークや線形回帰モデル等の既知の学習手法を用いて算出する。すなわち、受容性モデルRはモデル取得部30が取得する学習モデルとは異なる第2学習モデルであり、第2特徴量xactと差分特徴量xdiffとを入力とし、第3特徴量x’actと第1特徴量xidealとの乖離を反映する値rを出力するように学習されている。第2学習モデルは、以下の式(3)で表現される。
R(xact,xdiff)=r (3)
【0078】
受容性モデルRは、その出力が小さいほど、アドバイスに対して組織の受容性が高いこと示している。第2の変形例に係る情報処理装置1は、組織の活動データが大きくなり、かつ受容性の高いアドバイスを提供するように設計される。なお、アドバイスと組織の受容性との関係を確かめるためには、差分特徴量が必ずしも第1特徴量xidealと第2特徴量xactとの差分でなくてもよく、学習モデルfの出力を最大化する最大化特徴量が第1特徴量xidealの代わりに用いられて学習されてもよい。すなわち、第2の変形例に係る情報処理装置1においては、第2学習モデルはあらかじめ学習によって生成されており、記憶部2に記憶されている。学習モデルfの最大値として目標値Cが設定されている場合には、第1特徴量xidealはxideal=argmaxF(x)となる。
【0079】
第2の変形例に係るモデル逆算部32は、モデル取得部30が取得した学習モデルF(x)と、受容性モデルR(xact,xdiff)とから構成される評価関数Gを最適化する特徴量xを算出する。評価関数Gは、以下の式(4)で表現される。
【0080】
【0081】
式(4)において、評価関数Gの引数であるF、R、及びxactは既知であり、変数はxのみである。式(4)に示すように、評価関数Gは、学習モデルfの出力値が大きいほど大きい値を出力し、かつ第2学習モデルRの出力値が小さいほど大きい値を出力するように設計されている。式(4)に示す評価関数Gに替えて、下記の式(5)に示す評価関数G’を用いてもよい。
【0082】
【0083】
第2の変形例に係るモデル取得部30は、学習モデルfと受容性モデルRとを記憶部2から読み出して取得する。モデル逆算部32は、学習モデルfと受容性モデルRとから、式(4)に示す評価関数Gを生成する。モデル逆算部32は、例えば既知の勾配法を用いることにより逐次的に評価関数Gを最大化する特徴量である第4特徴量xrを更新して算出する。すなわち、第4特徴量xrは組織の受容性を考慮した組織の目標となる特徴量であり、以下の式(6)で表される。
【0084】
【0085】
差分取得部33は、第4特徴量xrと、組織の現在の特徴を示す第2特徴量との差分を取得し、出力部34は、その差分に対応する文字列を表示部に出力する。これにより、第2の変形例に係る情報処理装置1は、組織へのアドバイスに対する受容性を考慮しつつ、組織の活動データを高めるアドバイスを提供することができる。
【0086】
なお、第2の変形例に係る情報処理装置1は、組織へのアドバイスを行ってそれに対する構成員の受容性を新た取得することで、受容性モデルRの学習用データを収集することができる。これにより、第2の変形例に係る情報処理装置1は、受容性モデルRを継続的に更新し、その精度を高めることができる。
【符号の説明】
【0087】
1・・・情報処理装置
2・・・記憶部
3・・・制御部
30・・・モデル取得部
31・・・目標受付部
32・・・モデル逆算部
320・・・初期値設定部
321・・・更新部
322・・・第1特徴量出力部
33・・・差分取得部
34・・・出力部
35・・・調整受付部
36・・・調整実行部
37・・・モデル適用部
38・・・拘束条件受付部
4・・・表示部