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特開2022-162777歯列模型装着用指標装置および歯列模型装着方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162777
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】歯列模型装着用指標装置および歯列模型装着方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/04 20060101AFI20221018BHJP
   A61C 19/055 20060101ALI20221018BHJP
   A61C 11/08 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
A61C19/04 Z
A61C19/055
A61C11/08
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067767
(22)【出願日】2021-04-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】507292461
【氏名又は名称】株式会社札幌デンタル・ラボラトリー
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】山賀 英司
(72)【発明者】
【氏名】米塚 貴博
【テーマコード(参考)】
4C052
4C159
【Fターム(参考)】
4C052NN03
4C052NN04
4C052NN13
4C159CC11
(57)【要約】
【課題】 患者に固有の顔貌情報を簡単、迅速かつ正確に採得できるとともに、当該顔貌情報に基づいて患者の歯列模型を正確に咬合器に装着することができる顔貌情報採得装置、歯列模型装着用指標装置、顔貌情報採得方法および歯列模型装着方法を提供する。
【解決手段】 患者の咬頭嵌合位における上下顎の位置関係を記録する硬化性のバイト材5に固定される固定片2と、前記水平方向に沿って位置合わせされる水平棒6を保持する可動片3と、固定片2に対して可動片3を回動自在に連結し、水平棒6の角度を調節可能な連結機構4と、を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の顔貌に対する水平方向を顔貌情報として採得する顔貌情報採得装置であって、
患者の咬頭嵌合位における上下顎の位置関係を記録する硬化性のバイト材に固定される固定片と、
前記水平方向に沿って位置合わせされる水平棒を保持する可動片と、
前記固定片に対して前記可動片を回動自在に連結し、前記水平棒の角度を調節可能な連結機構と、
を有する、顔貌情報採得装置。
【請求項2】
前記可動片には、前記顔貌を垂直方向に二等分する正中線に位置合わせされる正中棒が保持される、請求項1に記載の顔貌情報採得装置。
【請求項3】
前記可動片は、前記水平棒を保持する第1可動片と、前記正中棒を保持する第2可動片とから構成されており、前記第1可動片と前記第2可動片とが互いに回動自在に連結されている、請求項2に記載の顔貌情報採得装置。
【請求項4】
前記正中棒の上端部または下端部に取り付けられ、患者の前後方向に対する前記正中棒の傾斜角度を測定する前後傾斜測定器を有する、請求項2または請求項3に記載の顔貌情報採得装置。
【請求項5】
前記水平棒および前記正中棒は、前記可動片に対して着脱自在に保持される、請求項2から請求項4のいずれかに記載の顔貌情報採得装置。
【請求項6】
前記固定片の長手方向における中心位置には、前記固定片の左右方向における固定位置を前記正中線に位置合わせするためのセンターガイドが設けられている、請求項2から請求項5のいずれかに記載の顔貌情報採得装置。
【請求項7】
前記固定片には、前記バイト材に固定されるための固定用孔および/または固定用切欠が形成されている、請求項1から請求項6のいずれかに記載の顔貌情報採得装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の顔貌情報採得装置を取り付けた歯列模型を咬合器に装着する際の指標として用いられる歯列模型装着用指標装置であって、
前記咬合器の切歯指導釘を嵌入させる垂直嵌入孔と、
前記垂直嵌入孔の軸線方向に垂直な軸線方向を有し、前記水平棒を位置合わせする際の指標となる指標用水平棒を嵌入させる水平嵌入孔、または前記指標用水平棒と、
を有する、歯列模型装着用指標装置。
【請求項9】
前記水平嵌入孔または前記指標用水平棒は、前記垂直嵌入孔の軸線に関する線対称位置に一対で設けられている、請求項8に記載の歯列模型装着用指標装置。
【請求項10】
前記歯列模型装着用指標装置は、一対の前記水平嵌入孔または一対の前記指標用水平棒が設けられた本体上部と、前記本体上部の下方に設けられ前記切歯指導釘に固定される本体下部とから構成されており、前記本体上部は前記本体下部に対して前記垂直嵌入孔周りに回動可能に連結されている、請求項9に記載の歯列模型装着用指標装置。
【請求項11】
前記歯列模型装着用指標装置は、一対の前記水平嵌入孔または一対の前記指標用水平棒が設けられた回動部と、前記垂直嵌入孔が設けられ前記切歯指導釘に固定される固定部とから構成されており、前記回動部は前記固定部に対して前記水平嵌入孔の軸線方向と平行な軸線周りに回動可能に連結されている、請求項9に記載の歯列模型装着用指標装置。
【請求項12】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の顔貌情報採得装置を用いて、患者の顔貌に対する水平方向を顔貌情報として採得する顔貌情報採得方法であって、
咬頭嵌合位にある患者の上下顎間に挟持されたバイト材に前記固定片を固定する固定片固定ステップと、
前記固定片に対して前記可動片を回動させ、前記水平棒を前記水平方向に沿って位置合わせする水平棒位置合わせステップと、
前記固定片に対して前記可動片を固定する可動片固定ステップと、
を有する、顔貌情報採得方法。
【請求項13】
請求項8から請求項11のいずれかに記載の歯列模型装着用指標装置を用いて、請求項1から請求項7のいずれかに記載の顔貌情報採得装置を取り付けた歯列模型を咬合器に装着する歯列模型装着方法であって、
前記切歯指導釘に前記垂直嵌入孔を嵌入させ、前記歯列模型装着用指標装置の上下位置を調整する上下位置調整ステップと、
前記水平棒の長手方向が前記指標用水平棒と一致するように位置合わせした状態で、前記歯列模型を前記咬合器に装着する歯列模型装着ステップと、
を有する、歯列模型装着方法。
【請求項14】
前記歯列模型装着ステップでは、一対の前記指標用水平棒に前記水平棒を接触させることによって位置合わせする、請求項9から請求項11のいずれかに従属する請求項13に記載の歯列模型装着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科技工物の製作に必要な患者の顔貌情報を採得するとともに、当該顔貌情報を用いて歯列模型を咬合器に装着するのに好適な顔貌情報採得装置、歯列模型装着用指標装置、顔貌情報採得方法および歯列模型装着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、補綴物や歯科技工物を製作する際には、患者の歯列模型を咬合器に装着した状態で作業されることが多い。この咬合器は、患者の顎の形態の特徴に応じて咬合位置が不整にならないように、顎の動きを再現しながら調整して歯科技工物等を製作する装置である。このため、理想的には、患者に固有の顎関節位置と顔貌情報に基づいた平面が再現された状態で歯列模型を咬合器に装着し、顎の動きに同調するように歯科技工物を製作することが望ましい。
【0003】
なお、歯科技工物を製作するための情報を歯列模型上に印記するための手段として、例えば、特開2007―300984号公報に開示されるようなフェイスボウ等が知られてている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007―300984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のフェイスボウ等を用いて歯列模型を咬合器に装着するには、多くの作業時間を要する。このため、実際にはフェイスボウ等が用いられることは少なく、歯科技工士は感覚的な予想と主観に基づき、正しいと思われる適当な角度で歯列模型を咬合器に装着しているのが現状である。ただし、その際に指標とされているのは、歯列模型から観察される歯牙の方向と軸、または顎堤・粘膜形状から考えられるものに過ぎず、患者に固有の顔貌情報が欠如している。
【0006】
このため、例えば、歯列模型のみから推察される、患者の顔貌に対する水平方向や、顔貌を垂直方向に二等分する正中線が、図22(a)に示すものであるのに対し、患者の顔貌に対する実際の水平方向および正中線が、図22(b)に示す角度である場合、患者の顔貌情報と歯牙の方向にズレが発生する。そうすると、患者の顔貌情報がなければ、歯牙の方向が優先されるため、患者の顔貌に整合しない歯科技工物が製作されてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、患者に固有の顔貌情報を簡単、迅速かつ正確に採得できるとともに、当該顔貌情報に基づいて患者の歯列模型を正確に咬合器に装着することができる顔貌情報採得装置、歯列模型装着用指標装置、顔貌情報採得方法および歯列模型装着方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る顔貌情報採得装置は、患者に固有の顔貌情報を簡単、迅速かつ正確に採得するという課題を解決するために、患者の顔貌に対する水平方向を顔貌情報として採得する顔貌情報採得装置であって、患者の咬頭嵌合位における上下顎の位置関係を記録する硬化性のバイト材に固定される固定片と、前記水平方向に沿って位置合わせされる水平棒を保持する可動片と、前記固定片に対して前記可動片を回動自在に連結し、前記水平棒の角度を調節可能な連結機構と、を有する。
【0009】
また、本発明の一態様として、患者の顔貌情報として正中線も採得するという課題を解決するために、前記可動片には、前記顔貌を垂直方向に二等分する正中線に位置合わせされる正中棒が保持されていてもよい。
【0010】
さらに、本発明の一態様として、患者の顔貌に対する水平方向および正中線を正確に採得するという課題を解決するために、前記可動片は、前記水平棒を保持する第1可動片と、前記正中棒を保持する第2可動片とから構成されており、前記第1可動片と前記第2可動片とが互いに回動自在に連結されていてもよい。
【0011】
また、本発明の一態様として、患者の前後方向に対する顔貌の傾斜角度を採得するという課題を解決するために、前記正中棒の上端部または下端部に取り付けられ、患者の前後方向に対する前記正中棒の傾斜角度を測定する前後傾斜測定器を有していてもよい。
【0012】
また、本発明の一態様として、物流的にコンパクト化し、採得後の顔貌情報が変更されてしまうのを防止するという課題を解決するために、前記水平棒および前記正中棒は、前記可動片に対して着脱自在に保持されていてもよい。
【0013】
さらに、本発明の一態様として、バイト材に対して固定片を適切な位置に固定するという課題を解決するために、前記固定片の長手方向における中心位置には、前記固定片の左右方向における固定位置を前記正中線に位置合わせするためのセンターガイドが設けられていてもよい。
【0014】
また、本発明の一態様として、バイト材に固定した固定片を脱落しにくくするという課題を解決するために、前記固定片には、前記バイト材に固定されるための固定用孔および/または固定用切欠が形成されていてもよい。
【0015】
本発明に係る歯列模型装着用指標装置は、患者に固有の顔貌情報を正確に反映した状態で患者の歯列模型を簡単、迅速かつ正確に咬合器に装着するという課題を解決するために、請求項1から請求項6のいずれかに記載の顔貌情報採得装置を取り付けた歯列模型を咬合器に装着する際の指標として用いられる歯列模型装着用指標装置であって、前記咬合器の切歯指導釘を嵌入させる垂直嵌入孔と、前記垂直嵌入孔の軸線方向に垂直な軸線方向を有し、前記水平棒を位置合わせする際の指標となる指標用水平棒を嵌入させる水平嵌入孔、または前記指標用水平棒と、を有する。
【0016】
また、本発明の一態様として、水平棒を一対の指標用水平棒に均等に接触させるだけで位置合わせするという課題を解決するために、前記水平嵌入孔または前記指標用水平棒は、前記垂直嵌入孔の軸線に関する線対称位置に一対で設けられていてもよい。
【0017】
さらに、本発明の一態様として、咬合器に装着後の歯列模型における歯牙の長径を観察するという課題を解決するために、前記歯列模型装着用指標装置は、一対の前記水平嵌入孔または一対の前記指標用水平棒が設けられた本体上部と、前記本体上部の下方に設けられ前記切歯指導釘に固定される本体下部とから構成されており、前記本体上部は前記本体下部に対して前記垂直嵌入孔周りに回動可能に連結されていてもよい。
【0018】
また、本発明の一態様として、患者の顔貌情報としての水平方向に修正がある場合、当該修正に応じて一対の指標用水平棒の設置角度を変更し、指標となる水平方向を補正するという課題を解決するために、前記歯列模型装着用指標装置は、一対の前記水平嵌入孔または一対の前記指標用水平棒が設けられた回動部と、前記垂直嵌入孔が設けられ前記切歯指導釘に固定される固定部とから構成されており、前記回動部は前記固定部に対して前記水平嵌入孔の軸線方向と平行な軸線周りに回動可能に連結されていてもよい。
【0019】
本発明に係る顔貌情報採得方法は、患者に固有の顔貌情報を簡単、迅速かつ正確に採得するという課題を解決するために、請求項1から請求項7のいずれかに記載の顔貌情報採得装置を用いて、患者の顔貌に対する水平方向を顔貌情報として採得する顔貌情報採得方法であって、咬頭嵌合位にある患者の上下顎間に挟持されたバイト材に前記固定片を固定する固定片固定ステップと、前記固定片に対して前記可動片を回動させ、前記水平棒を前記水平方向に沿って位置合わせする水平棒位置合わせステップと、前記固定片に対して前記可動片を固定する可動片固定ステップと、を有する。
【0020】
本発明に係る歯列模型装着用指標方法は、患者に固有の顔貌情報を正確に反映した状態で患者の歯列模型を簡単、迅速かつ正確に咬合器に装着するという課題を解決するために、請求項8から請求項11のいずれかに記載の歯列模型装着用指標装置を用いて、請求項1から請求項7のいずれかに記載の顔貌情報採得装置を取り付けた歯列模型を咬合器に装着する歯列模型装着方法であって、前記切歯指導釘に前記垂直嵌入孔を嵌入させ、前記歯列模型装着用指標装置の上下位置を調整する上下位置調整ステップと、前記水平棒の長手方向が前記指標用水平棒と一致するように位置合わせした状態で、前記歯列模型を前記咬合器に装着する歯列模型装着ステップと、を有する。
【0021】
また、本発明の一態様として、簡単、迅速かつ正確に水平棒を水平方向に沿って位置合わせするという課題を解決するために、前記歯列模型装着ステップでは、一対の前記指標用水平棒に前記水平棒を接触させることによって位置合わせしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、患者に固有の顔貌情報を簡単、迅速かつ正確に採得できるとともに、当該顔貌情報に基づいて患者の歯列模型を正確に咬合器に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る顔貌情報採得装置の第1実施形態を示す(a)分解図および(b)組立図である。
図2】第1実施形態の顔貌情報採得装置に水平棒および正中棒を取り付けた状態を示す図である。
図3】本発明に係る顔貌情報採得方法を示すフローチャートである。
図4】第1実施形態の固定片固定ステップの様子を示す図である。
図5】第1実施形態の水平棒位置合わせステップの様子を示す図である。
図6】本発明に係る顔貌情報採得装置の第2実施形態を示す(a)分解図および(b)組立図である。
図7】本発明に係る顔貌情報採得装置の第3実施形態を示す図である。
図8】第3実施形態の前後傾斜測定器を示す斜視図である。
図9】本発明に係る歯列模型装着用指標装置の第1実施形態を示す図である。
図10】本発明に係る歯列模型装着方法を示すフローチャートである。
図11】第1実施形態の顔貌情報採得装置を歯列模型の上下顎間に仮固定した様子を示す図である。
図12】歯列模型に仮固定した水平棒の長手方向が、第1実施形態の顔貌情報採得装置の指標用水平棒と一致するように位置合わせした状態を示す図である。
図13】本発明に係る歯列模型装着用指標装置の第2実施形態を示す図である。
図14】第2実施形態の歯列模型装着用指標装置によって水平棒を位置合わせする様子を示す図である。
図15】第2実施形態の歯列模型装着用指標装置において、第3実施形態の顔貌情報採得装置を用いて歯列模型を装着する様子を示す図である。
図16】第2実施形態の歯列模型装着用指標装置において、本体上部を回転させて指標用水平棒を歯列模型の歯牙に接触させている様子を示す図である。
図17】本発明に係る歯列模型装着用指標装置の第3実施形態を示す(a)分解図および(b)組立図である。
図18】本第3実施形態における(a)ロック状態および(b)解放状態を示す図である。
図19】本第3実施形態において、回動部を回動させて指標用水平棒の設置角度を変更した様子を示す図である。
図20】本発明に係る歯列模型装着用指標装置の第4実施形態を示す(a)分解図および(b)組立図である。
図21】本発明に係る歯列模型装着用指標装置の第5実施形態を示す(a)分解図および(b)組立図である。
図22】(a)歯列模型のみから推察される患者の顔貌情報、および(b)患者の実際の顔貌情報を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る顔貌情報採得装置および顔貌情報採得方法の第1実施形態について図面を用いて説明する。
【0025】
本第1実施形態の顔貌情報採得装置1Aは、患者の顔貌に対する水平方向を顔貌情報として採得するためのものであり、図1に示すように、主として、シリコンバイト等のバイト材5に固定される固定片2と、患者の顔貌に対する水平方向に沿って位置合わせされる水平棒6を保持する可動片3と、固定片2に対して可動片3を回動自在に連結する連結機構4と、を有している。以下、各構成について説明する。
【0026】
固定片2は、顔貌情報採得装置1Aをバイト材5に固定するためのものである。本第1実施形態において、固定片2は、樹脂材料等によって構成されており、図1に示すように、患者の歯列に沿う湾曲形状に形成されている。また、固定片2の略中央位置には、連結機構4としてのボールジョイントを構成するボール部41が設けられている。なお、バイト材5は、患者の咬頭嵌合位(上下顎の歯列が最も多くの部位で接触し、安定した状態)における上下顎の位置関係を記録する硬化性の印象材であれば、シリコンバイト等に限定されるものではない。
【0027】
また、本第1実施形態では、図1に示すように、固定片2の長手方向における中心位置には、患者の顔貌を垂直方向に二等分する正中線に、固定片2の左右方向における固定位置を位置合わせするためのセンターガイド21が設けられている。また、固定片2には、図1に示すように、バイト材5に固定されるための固定用孔22および固定用切欠23が形成されている。なお、センターガイド21は必須のものではなく、固定用孔22および固定用切欠23についてもいずれか一方のみでもよく、両方なくてもよい。
【0028】
つぎに、可動片3は、図2に示すように、水平棒6や正中棒7を位置調整可能に保持するためのものである。本第1実施形態において、可動片3は、樹脂材料等によって構成されており、その前端部には、水平棒6を着脱自在に保持するための横孔31と、正中棒7を着脱自在に保持するための縦孔32とが直交するように形成されている。また、可動片3の後端部には、連結機構4としてのボールジョイントを構成するボール受け部42が設けられている。
【0029】
水平棒6は、金属線等によって構成されており、患者の顔貌に対する水平方向に沿って位置合わせされる。患者の顔貌に対する水平方向としては、遠方を直視したときの左右の瞳孔を結んだ線である瞳孔線等を用いることができる。また、正中棒7は、金属線等によって構成されており、患者の顔貌を垂直方向に二等分する正中線に位置合わせされる。
【0030】
なお、本第1実施形態では、水平棒6と正中棒7とによって、患者の顔貌に対する水平方向と、正中線とを顔貌情報として採得している。しかしながら、少なくとも患者の顔貌に対する水平方向を採得できればよいため、必ずしも縦孔32を設ける必要はない。また、本第1実施形態では、水平棒6および正中棒7が可動片3に対して着脱自在に保持されているが、この構成に限定されるものではなく、可動片3に固定されていてもよい。
【0031】
連結機構4は、固定片2に対して可動片3を回動自在に連結するものである。本第1実施形態において、連結機構4は、固定片2に設けられたボール部41と、可動片3に設けられたボール受け部42とからなるボールジョイントによって構成されている。このため、水平棒6や正中棒7は、三次元的に角度調整しうるようになっている。しかしながら、連結機構4は、ボールジョイントに限定されるものではなく、円柱部と当該円柱部を嵌入させる円筒部のように、少なくとも固定片2の略中央位置に対する垂線周りに回動自在に連結しうるものであればよい。
【0032】
つぎに、本第1実施形態の顔貌情報採得装置1Aを用いて、患者の顔貌に対する水平方向を顔貌情報として採得する顔貌情報採得方法について、図3を参照しつつ説明する。
【0033】
まず、歯科医師は、図4に示すように、咬頭嵌合位にある患者の上下顎間にバイト材5を挟持させ、当該バイト材5に固定片2を固定する(ステップS1:固定片固定ステップ)。このとき、本第1実施形態では、センターガイド21を正中線近傍に位置合わせするだけで、固定片2がバイト材5に対して適切な位置に固定される。また、本第1実施形態では、固定用孔22や固定用切欠23にバイト材5を注入してから固定することで、固定片2がバイト材5に包まれるため脱落しにくくなる。
【0034】
なお、本第1実施形態では、予め水平棒6および正中棒7を可動片3に挿入し、当該可動片3を固定片2に連結した状態でバイト材5に固定しているが、この方法に限定されるものではない。すなわち、バイト材5に固定片2を固定した後、当該固定片2に可動片3を連結してもよい。また、バイト材5に固定片2を固定した後、当該固定片2に連結されている可動片3に水平棒6や正中棒7を挿入してもよい。
【0035】
つぎに、図5に示すように、歯科医師は、固定片2に対して可動片3を回動させ、患者の顔貌に対する水平方向に沿って水平棒6を位置合わせする(ステップS2:水平棒位置合わせステップ)。このとき、可動片3は連結機構4を介して固定片2に連結されているため、簡単に水平棒6を所望の角度に調節・修正するとともに、外力が付与されない限り当該角度を保持する。このため、歯科医師は可動片3を手指で保持する必要がなく、作業負担が小さい。また、患者から離れて顔貌を正面から観察できるため、顔貌の水平方向を把握しやすく、水平棒6が高精度に水平方向に一致される。
【0036】
つづいて、患者の顔貌における正中線に正中棒7を位置合わせする(ステップS3:正中棒位置合わせステップ)。これにより、患者の顔貌に対する水平方向に加え、正中線も顔貌情報として採得されるため、歯列模型10を咬合器11に装着する際の指標が増える。なお、正中線の情報が不要な場合、本ステップS3は行われない。
【0037】
つぎに、歯科医師は、固定片2に対して可動片3を固定する(ステップS4:可動片固定ステップ)。具体的には、連結機構4の連結部分にアクリル系レジン等の硬化性接着剤を付着することによって固定する。これにより、顔貌情報採得装置1Aには、患者の顔貌に対する水平方向や正中線が顔貌情報として正確に記録される。また、歯科技工士の手に渡るまでの道中で、可動片3の角度が衝撃を受けて変動してしまうことが防止される。
【0038】
その後、歯科医師は、顔貌情報採得装置1Aが固定されたバイト材5を患者の上下顎間から取り出し(ステップS5)、水平棒6および正中棒7を可動片3から抜き取る(ステップS6)。これにより、顔貌情報採得装置1Aは物流的にコンパクト化され、衝撃を受けにくくなるため、採得した顔貌情報のズレが防止される。なお、ステップS5とステップS6の順序は逆でもよく、水平棒6や正中棒7が着脱自在でない場合、ステップS6は行われない。
【0039】
以上のような本第1実施形態の顔貌情報採得装置1Aおよび顔貌情報採得方法によれば、以下のような効果を奏する。
1.患者に固有の顔貌情報を簡単、迅速かつ正確に採得することができる。
2.患者の顔貌情報として正中線も採得することができる。
3.物流的にコンパクト化することで、採得後の顔貌情報がズレるのを防止でき、量産しやすく、広く一般に普及させるのに適している。
4.バイト材5に対して固定片2を適切な位置に固定することができる。
5.バイト材5に固定した固定片2を脱落しにくくすることができる。
【0040】
つぎに、本発明に係る顔貌情報採得装置の第2実施形態について説明する。なお、本第2実施形態の構成のうち、上述した第1実施形態と同一もしくは相当する構成については同一の符号を付し、再度の説明を省略する。
【0041】
上述した本第1実施形態では、可動片3における横孔31と縦孔32とが直交方向に形成されている。このため、水平棒6と正中棒7との相対角度は常に90度で固定されている。これに対して、本第2実施形態の顔貌情報採得装置1Bにおいては、図6に示すように、可動片3が、水平棒6を保持する第1可動片33と、正中棒7を保持する第2可動片34とから構成されており、第1可動片33と第2可動片34とがボールジョイント等の連結機構4によって互いに回動自在に連結されている。
【0042】
この構成によれば、水平棒6の角度と正中棒7の角度をそれぞれを独立に調整できるため、顔貌に対する水平方向と正中線のなす角度が、直交から大きくズレる患者であっても顔貌情報を正確に採得することができる。
【0043】
また、本第2実施形態では、図6(a)に示すように、第1可動片33側で固定片2のボール部41に連結される部分が、横方向に延びる円弧状のボール受け長溝43に形成されている。この構成によれば、固定片2のボール部41に対して、第1可動片33のボール受け長溝43が回転自在かつスライド自在に連結される。このため、固定片2をバイト材5に固定する際、正中線から多少ズレた位置になってしまった場合でも、可動片3の左右位置を調整しリカバリーすることができる。
【0044】
以上のような本第2実施形態の顔貌情報採得装置1Bによれば、上述した第1実施形態の作用効果に加えて、患者の顔貌に対する水平方向および正中線をより正確に採得することができ、固定片2の取り付け位置に関する自由度を向上することができる。
【0045】
つぎに、本発明に係る顔貌情報採得装置の第3実施形態について説明する。なお、本第3実施形態の構成のうち、上述した各実施形態と同一もしくは相当する構成については同一の符号を付し、再度の説明を省略する。
【0046】
本第3実施形態の顔貌情報採得装置1Cの特徴は、患者の前後方向に対する顔貌の傾斜角度を採得可能に構成されている点にある。具体的には、図7に示すように、正中棒7の上端部に着脱自在に取り付けられ、患者の前後方向に対する正中棒7の傾斜角度を測定する前後傾斜測定器8を有している。
【0047】
本第3実施形態において、前後傾斜測定器8は、図8に示すように、正中棒7の上端部に着脱可能な測定器本体81と、この測定器本体81に対して揺動自在に設けられる揺動指示針82とから構成されている。測定器本体81には、円形の収容凹部83の中心から突出された支持軸84と、傾斜角度を示す傾斜目盛り85とが設けられている。一方、揺動指示針82は、支持軸84に挿通される挿通孔86と、略半円形状の重り部87と、挿通孔86に関して重り部87の正反対側に設けられる針部88とを有している。
【0048】
以上の構成により、揺動指示針82は、測定器本体81がどのような向きであっても、重り部87が垂下するように揺動するため、針部88が常に鉛直上向きを指すようになっている。なお、前後傾斜測定器8の構成は、上記構成に限定されるものではなく、水と油で水平方向を示す水平器、液体と気泡で水平方向を示す水平器、あるいは傾斜センサを用いたデジタル水平器等を用いて傾斜角度を測定可能に構成してもよい。また、前後傾斜測定器8は、正中棒7の下端部に取り付け可能に構成してもよい。さらに、傾斜目盛り85は、色と長さの組み合わせによって表されてもよく、数値によって表わされてもよい。
【0049】
本第3実施形態の顔貌情報採得装置1Cを使用する場合、図7に示すように、正中棒7の上端部に前後傾斜測定器8を取り付けた状態で、水平棒6や正中棒7を位置合わせし、可動片3を固定片2に固定する。そして、患者の前後方向に対して支持軸84の軸線が直交するように前後傾斜測定器8の向きを調整した後、患者に自然頭位を保持させた状態で針部88が指示する傾斜目盛り85を読み取る。これにより、顔貌情報に加えて患者の前後方向に対する正中棒7の傾斜角度が採得される。
【0050】
以上のような本第3実施形態の顔貌情報採得装置1Cによれば、上述した第1実施形態の作用効果に加えて、患者の前後方向に対する顔貌の傾斜角度を採得することができる。このため、後述するとおり、歯列模型を咬合器11に装着する際の前後方向における傾斜度合いの指標とすることができる。
【0051】
つぎに、本発明に係る歯列模型装着用指標装置および歯列模型装着方法の第1実施形態について図面を用いて説明する。
【0052】
歯列模型装着用指標装置100Aは、本発明に係る顔貌情報採得装置1A~1Cを取り付けた歯列模型10を咬合器11に装着する際の指標として用いられるものである。本第1実施形態の歯列模型装着用指標装置100Aは、略逆三角形状に形成されており、図9に示すように、主として、咬合器11の切歯指導釘12を嵌入させる垂直嵌入孔101と、水平棒6を位置合わせする際の指標となる指標用水平棒103を嵌入させる水平嵌入孔102と、を有している。
【0053】
垂直嵌入孔101は、歯列模型装着用指標装置100Aを垂直方向に貫通するように形成されており、切歯指導釘12の直径と略同一の孔径を有している。また、水平嵌入孔102は、垂直嵌入孔101の軸線方向に垂直な軸線方向を有しており、指標用水平棒103の直径と略同一の孔径を有している。なお、本第1実施形態では、指標用水平棒103が水平嵌入孔102に対して抜き差し自在に構成されているが、この構成に限定されるものではなく、歯列模型装着用指標装置100Aに水平嵌入孔102を設けることなく指標用水平棒103を直接固定してもよい。
【0054】
以上のような本第1実施形態の歯列模型装着用指標装置100Aを用いて、上述した第1実施形態の顔貌情報採得装置1Aを取り付けた歯列模型10を咬合器11に装着する歯列模型装着方法について、図10を参照しつつ説明する。
【0055】
まず、歯科技工士は、バイト材5と一体化された顔貌情報採得装置1Aを咬頭嵌合位にある歯列模型10の上下顎間に仮固定する(ステップS11:顔貌情報採得装置仮固定ステップ)。これにより、顔貌情報採得装置1Aに水平棒6および正中棒7をセットすると、図11に示すように、患者の顔貌に対する水平方向および正中線が、歯列模型10において正確に再現される。なお、このとき、バイト材5の不要部分等を適宜トリミングすることが好ましい。
【0056】
つぎに、歯列模型装着用指標装置100Aの水平嵌入孔102に指標用水平棒103を挿入する(ステップS12:指標用水平棒挿入ステップ)。なお、本ステップS12は、指標用水平棒103が歯列模型装着用指標装置100Aに固定されている場合は行われない。つづいて、垂直嵌入孔101に咬合器11の切歯指導釘12を嵌入させ、その上下位置を調整する(ステップS13:上下位置調整ステップ)。このとき、切歯指導釘12と略同径の垂直嵌入孔101は摩擦抵抗を発生させるため、手指を離しても歯列模型装着用指標装置100Aの上下位置が任意の設定したい高さ位置に保持される。
【0057】
これにより、歯科技工士は、歯列模型装着用指標装置100Aから離れて歯列模型10を正面から観察できるため、水平棒6および指標用水平棒103を比較しやすく、両者の方向が高精度に一致される。また、歯列模型装着用指標装置100Aを上下動させることにより、歯列模型10を患者固有の切端位置(バルクウィル角)に追従させることができる。
【0058】
最後に、図12に示すように、歯列模型10に仮固定された水平棒6の長手方向が、指標用水平棒103と一致するように位置合わせした状態で歯列模型10を咬合器11に装着する(ステップS14:歯列模型装着ステップ)。これにより、患者の歯列模型10は、患者の顔貌に対する水平方向が正確に反映された状態で咬合器11に装着される。また、このとき、図12で図示を省略した正中棒7を咬合器11の切歯指導釘12に沿って位置合わせすることで、正中線も正確に反映される。さらに、本実施形態では、歯列模型装着用指標装置100Aが逆三角形状にコンパクト化されているため、指標用水平棒103と水平棒6とを比較しやすい。
【0059】
なお、上述した歯列模型装着ステップにおいては、歯列模型10の下顎部を咬合器11に固定した後、顔貌情報採得装置1Aから水平棒6を取り外すとともに、切歯指導釘12から歯列模型装着用指標装置100Aを取り外し、その後、歯列模型10の上顎部を固定することにより、歯列模型10が咬合器11にスムーズに装着される。
【0060】
以上のような本第1実施形態の歯列模型装着用指標装置100Aおよび歯列模型装着方法によれば、以下のような効果を奏する。
1.歯列模型装着用指標装置100Aの指標用水平棒103を指標とし、歯列模型10の水平棒6を一致させるだけで、患者に固有の顔貌情報を正確に反映させることができる。
2.患者に固有の顔貌情報を正確に反映した状態で患者の歯列模型10を簡単、迅速かつ正確に咬合器11に装着することができる。
【0061】
つぎに、本発明に係る歯列模型装着用指標装置の第2実施形態について説明する。なお、本第2実施形態の構成のうち、上述した第1実施形態と同一もしくは相当する構成については同一の符号を付し、再度の説明を省略する。
【0062】
本第2実施形態の歯列模型装着用指標装置100Bの特徴は、図13に示すように、一対の水平嵌入孔102,102が設けられた本体上部111と、この本体上部111の下方に設けられ切歯指導釘12に固定される本体下部112とから構成されており、本体上部111は本体下部112に対して垂直嵌入孔101周りに回動可能に連結されている点にある。
【0063】
本第2実施形態において、垂直嵌入孔101は、本体上部111と本体下部112とを貫通するように構成されている。また、本体上部111には、図13に示すように、一対の水平嵌入孔102,102が、垂直嵌入孔101の軸線に関する線対称位置において設けられており、その軸線は垂直嵌入孔101と直交されている。このため、各水平嵌入孔102に指標用水平棒103を挿入すると、それら一対の指標用水平棒103,103が、切歯指導釘12に対して直交する方向に沿って同一の高さ位置に保持される。
【0064】
また、本体下部112には、ネジの螺進によって垂直嵌入孔101に進退可能なロックボルト113が設けられている。このロックボルト113をねじ込むと、その先端が垂直嵌入孔101に突出し、切歯指導釘12に当接することで本体下部112を固定するようになっている。また、本第2実施形態において、本体上部111と本体下部112とは、ボールブッシュ等のように、相対回転可能なシャフトと転がり軸受等からなる回転機構(図示せず)によって連結されている。
【0065】
上述した構成により、図14に示すように、歯列模型装着用指標装置100Bを所望の高さ位置に調整した後、ロックボルト113をねじ込むと切歯指導釘12に当接し上下位置が固定される。その後、一対の指標用水平棒103,103を歯列模型10側に突出させると、両者が同一の高さ位置で水平方向に保持される。このため、各指標用水平棒103に架け渡すように、歯列模型10に仮固定した水平棒6を接触させるだけで、患者の顔貌に対する水平方向が正確に反映される。
【0066】
また、上述した第3実施形態の顔貌情報採得装置1Cを用いて、顔貌情報に加えて患者の前後方向に対する正中棒7の傾斜角度を採得した場合、図15に示すように、歯列模型10に仮固定した正中棒7の上端部に前後傾斜測定器8を取り付ける。そして、針部88によって指示される傾斜目盛り85が、採得した傾斜角度と一致するように歯列模型10の前後方向の傾斜角度を調整する。
【0067】
これにより、咬合器11に歯列模型10を装着する際、患者に固有の前後方向に対する傾斜角度が正確に反映される。また、自然頭位における水平基準面を基準とする場合は、上記傾斜角度の他に、患者の内眼角下方23mmの点から中切歯の中点までの第1距離と、中切歯の中点から外耳道(または顆頭点に相当する点)までの第2距離をノギス等で計測することが好ましい。これにより、図15に示すように、咬合器11の基準面13から歯列模型10の中切歯までの距離を第1距離に一致させ、中切歯から咬合器11の顆頭球14までの距離を第2距離に一致させると、歯列模型10の三次元的位置関係が咬合器11内で確立される。
【0068】
また、咬合器11における顆頭球14間の距離が調整可能に構成されている場合には、患者に固有の顔の幅(顆頭点間距離に相当する距離)を計測し、両者を一致させることにより、歯列模型10の位置関係がより正確に再現される。なお、歯列模型10の装着時に使用する基準面は、自然頭位における水平基準面に限定されるものではなく、フランクフルト平面や、カンペル平面等を使用してもよい。
【0069】
また、図16に示すように、ロックボルト113で固定された本体下部112に対して、本体上部111を回転させると、指標用水平棒103の先端を歯列模型10の歯牙に接触させることができるため、歯牙の長径を簡単かつ正確に確認することができる。
【0070】
以上のような本第2実施形態の歯列模型装着用指標装置100Bによれば、上述した第1実施形態の作用効果に加えて、簡単、迅速かつ正確に水平棒6を水平方向に沿って位置合わせすることができるとともに、歯牙の長径を確認することができるという作用効果を奏する。
【0071】
つぎに、本発明に係る歯列模型装着用指標装置の第3実施形態について説明する。なお、本第3実施形態の構成のうち、上述した各実施形態と同一もしくは相当する構成については同一の符号を付し、再度の説明を省略する。
【0072】
本第3実施形態の歯列模型装着用指標装置100Cの特徴は、図17に示すように、一対の水平嵌入孔102,102が設けられた回動部121と、垂直嵌入孔101が設けられ切歯指導釘12に固定される固定部122とから構成されており、回動部121は固定部122に対して水平嵌入孔102の軸線方向と平行な軸線周りに回動可能に連結されている点にある。
【0073】
本第3実施形態において、回動部121は、図17(a)に示すように、固定部122を前後から挟持する一対の分割片123,123によって構成されている。各分割片123は、固定部122を内部に収容する収容凹部124を有しており、この収容凹部124の略中央には水平嵌入孔102の軸線方向に沿う支持突起125が突出されている。そして、収容凹部124に固定部122を収容した状態で各分割片123を接合すると、固定部122の前後面に設けられた支持孔126に各支持突起125が嵌入し、回動部121が固定部122に対して回動可能に連結される。
【0074】
また、本第3実施形態において、歯列模型装着用指標装置100Cには、図17(a)に示すように、水平嵌入孔102の軸線方向に沿ってスライド可能なロックピン127が設けられている。そして、図18(a)に示すように、回動部121の回動角度がゼロの状態でロックピン127を押し込むと、その先端部が固定部122の係止孔128に係止し、回動部121の回動がロックされる(ロック状態)。一方、図18(b)に示すように、ロックピン127を引き出すと、その先端部が固定部122の係止孔128から抜け出し、回動部121が固定部122に対して回動可能となる(解放状態)。
【0075】
なお、本第3実施形態において、回動部121にロックボルト113を貫通させる貫通孔129は、図17(a)に示すように、円弧状の長孔に形成されている。このため、固定部122側に螺合されるロックボルト113は貫通孔129内を移動するため、回動部121の回動を阻害しないようになっている。また、本第3実施形態において、各分割片123における収容凹部124の上端縁部には、回動部121の回動角度を示す目盛り130が設けられている。
【0076】
上述した構成により、歯科技工士が患者の画像等を分析した結果、顔貌情報採得装置1Aによって採得された顔貌情報(水平方向)に補正が必要と判断した場合、上述した歯列模型装着ステップの前に、固定部122に対して回動部121を回動させ、指標となる一対の指標用水平棒103,103の設置角度を調整する(指標用水平棒調整ステップ)。
【0077】
具体的には、図19に示すように、歯科技工士は、ロックピン127を引き出して固定部122に対して回動部121を適宜回動させ、補正後の水平方向と一致するように、一対の指標用水平棒103,103の設置角度を変更する。これにより、各指標用水平棒103に架け渡すように、歯列模型10に仮固定した水平棒6を接触させるだけで、補正後の水平方向が正確に反映される。
【0078】
以上のような本第3実施形態の歯列模型装着用指標装置100Cによれば、上述した各実施形態の作用効果に加えて、患者の画像等に応じて、歯科技工士側で指標となる水平方向を変更し、咬合器11に対する歯列模型10の装着角度を補正することができるという作用効果を奏する。
【0079】
つぎに、本発明に係る歯列模型装着用指標装置の第4実施形態について説明する。なお、本第4実施形態の構成のうち、上述した各実施形態と同一もしくは相当する構成については同一の符号を付し、再度の説明を省略する。
【0080】
上述した第3実施形態では、回動部121が一対の分割片123,123によって構成されており、固定部122を挟み込むように構成されている。これに対し、本第4実施形態の歯列模型装着用指標装置100Dの特徴は、図20(a)に示すように、固定部122および回動部121のそれぞれが同径の円柱形状に形成されており、軸心位置に設けられた中心軸141に関して相対回転可能に構成されている点にある。
【0081】
本第4実施形態において、固定部122側の水平嵌入孔102は、図20(a)に示すように、円弧状の長孔に形成されている。このため、回動部121の回動に伴って、指標用水平棒103が固定部122側の水平嵌入孔102内を移動しうるようになっている。なお、図20(b)の組立図では、ロックボルト113の図示を省略している。
【0082】
以上のような本第4実施形態の歯列模型装着用指標装置100Dによれば、上述した各実施形態の作用効果に加えて、構成パーツを簡素化することができる。
【0083】
つぎに、本発明に係る歯列模型装着用指標装置の第5実施形態について説明する。なお、本第5実施形態の構成のうち、上述した各実施形態と同一もしくは相当する構成については同一の符号を付し、再度の説明を省略する。
【0084】
上述した第3実施形態および第4実施形態では、回動部121の回動角度を目盛り130によって判断していた。これに対し、本第5実施形態の歯列模型装着用指標装置100Eの特徴は、回動部121の回動角度がデジタル表示される点にある。
【0085】
具体的には、図21(a)に示すように、固定部122にレゾルバ等の回動検知手段151が設けられており、そのシャフト152の先端が回動部121側に固定されている。これにより、回動検知手段151によって検出された回動部121の回動角度が、図21(b)に示すように、液晶画面等の表示部153にデジタル表示される。このため、回動検知手段151の分解能に応じて、極めて小さな回動角度でも簡単かつ正確に把握することが可能となる。
【0086】
以上のような本第5実施形態の歯列模型装着用指標装置100Eによれば、上述した各実施形態の作用効果に加えて、極めて小さい回動角度でも正確に調整することができる。
【0087】
なお、本発明に係る顔貌情報採得装置、歯列模型装着用指標装置、顔貌情報採得方法および歯列模型装着方法は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0088】
例えば、上述した各実施形態では、顔貌情報採得装置1A~1Cが樹脂材料によって構成されているが、この構成に限定されるものではなく、金属材料やセラミック材料等の硬質材料であればよい。安価な材料を適宜選択することにより、患者ごとに使い捨てを想定した運用が可能となり、歯科医師への返却や洗浄作業が不要となる。
【符号の説明】
【0089】
1A,1B,1C 顔貌情報採得装置
2 固定片
3 可動片
4 連結機構
5 バイト材
6 水平棒
7 正中棒
8 前後傾斜測定器
10 歯列模型
11 咬合器
12 切歯指導釘
13 基準面
14 顆頭球
21 センターガイド
22 固定用孔
23 固定用切欠
31 横孔
32 縦孔
33 第1可動片
34 第2可動片
41 ボール部
42 ボール受け部
43 ボール受け長溝
81 測定器本体
82 揺動指示針
83 収容凹部
84 支持軸
85 傾斜目盛り
86 挿通孔
87 重り部
88 針部
100A,100B,100C,100D,100E 歯列模型装着用指標装置
101 垂直嵌入孔
102 水平嵌入孔
103 指標用水平棒
111 本体上部
112 本体下部
113 ロックボルト
121 回動部
122 固定部
123 分割片
124 収容凹部
125 支持突起
126 支持孔
127 ロックピン
128 係止孔
129 貫通孔
130 目盛り
141 中心軸
151 回動検知手段
152 シャフト
153 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【手続補正書】
【提出日】2021-09-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の顔貌に対する水平方向を顔貌情報として採得する顔貌情報採得装置であって、
患者の咬頭嵌合位における上下顎の位置関係を記録する硬化性のバイト材に固定される固定片と、
前記水平方向に沿って位置合わせされる水平棒を保持する可動片と、
前記固定片に対して前記可動片を回動自在に連結し、前記水平棒の角度を調節可能な連結機構と、
を有し、
前記連結機構は、前記固定片に設けられたボール部と、前記可動片に設けられたボール受け部とからなるボールジョイントによって構成されている、顔貌情報採得装置。
【請求項2】
前記可動片には、前記顔貌を垂直方向に二等分する正中線に位置合わせされる正中棒が保持される、請求項1に記載の顔貌情報採得装置。
【請求項3】
前記可動片は、前記水平棒を保持する第1可動片と、前記正中棒を保持する第2可動片とから構成されており、前記第1可動片と前記第2可動片とが互いに回動自在に連結されている、請求項2に記載の顔貌情報採得装置。
【請求項4】
前記正中棒の上端部または下端部に取り付けられ、患者の前後方向に対する前記正中棒の傾斜角度を測定する前後傾斜測定器を有する、請求項2または請求項3に記載の顔貌情報採得装置。
【請求項5】
前記水平棒および前記正中棒は、前記可動片に対して着脱自在に保持される、請求項2から請求項4のいずれかに記載の顔貌情報採得装置。
【請求項6】
前記固定片の長手方向における中心位置には、前記固定片の左右方向における固定位置を前記正中線に位置合わせするためのセンターガイドが設けられている、請求項2から請求項5のいずれかに記載の顔貌情報採得装置。
【請求項7】
前記固定片には、前記バイト材に固定されるための固定用孔および/または固定用切欠が形成されている、請求項1から請求項6のいずれかに記載の顔貌情報採得装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の顔貌情報採得装置を取り付けた歯列模型を咬合器に装着する際の指標として用いられる歯列模型装着用指標装置であって、
前記咬合器の切歯指導釘を嵌入させる垂直嵌入孔と、
前記垂直嵌入孔の軸線方向に垂直な軸線方向を有し、前記水平棒を位置合わせする際の指標となる指標用水平棒を嵌入させる水平嵌入孔、または前記指標用水平棒と、
を有する、歯列模型装着用指標装置。
【請求項9】
前記水平嵌入孔または前記指標用水平棒は、前記垂直嵌入孔の軸線に関する線対称位置に一対で設けられている、請求項8に記載の歯列模型装着用指標装置。
【請求項10】
前記歯列模型装着用指標装置は、一対の前記水平嵌入孔または一対の前記指標用水平棒が設けられた本体上部と、前記本体上部の下方に設けられ前記切歯指導釘に固定される本体下部とから構成されており、前記本体上部は前記本体下部に対して前記垂直嵌入孔周りに回動可能に連結されている、請求項9に記載の歯列模型装着用指標装置。
【請求項11】
前記歯列模型装着用指標装置は、一対の前記水平嵌入孔または一対の前記指標用水平棒が設けられた回動部と、前記垂直嵌入孔が設けられ前記切歯指導釘に固定される固定部とから構成されており、前記回動部は前記固定部に対して前記水平嵌入孔の軸線方向と平行な軸線周りに回動可能に連結されている、請求項9に記載の歯列模型装着用指標装置。
【請求項12】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の顔貌情報採得装置を用いて、患者の顔貌に対する水平方向を顔貌情報として採得する顔貌情報採得方法であって、
咬頭嵌合位にある患者の上下顎間に挟持されたバイト材に前記固定片を固定する固定片固定ステップと、
前記固定片に対して前記可動片を回動させ、前記水平棒を前記水平方向に沿って位置合わせする水平棒位置合わせステップと、
前記固定片に対して前記可動片を固定する可動片固定ステップと、
を有する、顔貌情報採得方法。
【請求項13】
請求項8から請求項11のいずれかに記載の歯列模型装着用指標装置を用いて、請求項1から請求項7のいずれかに記載の顔貌情報採得装置を取り付けた歯列模型を咬合器に装着する歯列模型装着方法であって、
前記切歯指導釘に前記垂直嵌入孔を嵌入させ、前記歯列模型装着用指標装置の上下位置を調整する上下位置調整ステップと、
前記水平棒の長手方向が前記指標用水平棒と一致するように位置合わせした状態で、前記歯列模型を前記咬合器に装着する歯列模型装着ステップと、
を有する、歯列模型装着方法。
【請求項14】
前記歯列模型装着ステップでは、一対の前記指標用水平棒に前記水平棒を接触させることによって位置合わせする、請求項9から請求項11のいずれかに従属する請求項13に記載の歯列模型装着方法。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の顔貌に対する水平方向を顔貌情報として採得する顔貌情報採得装置を取り付けた歯列模型を咬合器に装着する際の指標として用いられる歯列模型装着用指標装置であって、
前記顔貌情報採得装置は、
患者の咬頭嵌合位における上下顎の位置関係を記録する硬化性のバイト材に固定される固定片と、
前記水平方向に沿って位置合わせされる水平棒を保持する可動片と、
前記固定片に対して前記可動片を回動自在に連結し、前記水平棒の角度を調節可能な連結機構と、
を有し、
前記歯列模型装着用指標装置は、
前記咬合器の切歯指導釘を嵌入させる垂直嵌入孔と、
前記垂直嵌入孔の軸線方向に垂直な軸線方向を有し、前記水平棒を位置合わせする際の指標となる指標用水平棒を嵌入させる水平嵌入孔、または前記指標用水平棒と、
を有する、歯列模型装着用指標装置。
【請求項2】
前記水平嵌入孔または前記指標用水平棒は、前記垂直嵌入孔の軸線に関する線対称位置に一対で設けられている、請求項に記載の歯列模型装着用指標装置。
【請求項3】
前記歯列模型装着用指標装置は、一対の前記水平嵌入孔または一対の前記指標用水平棒が設けられた本体上部と、前記本体上部の下方に設けられ前記切歯指導釘に固定される本体下部とから構成されており、前記本体上部は前記本体下部に対して前記垂直嵌入孔周りに回動可能に連結されている、請求項に記載の歯列模型装着用指標装置。
【請求項4】
前記歯列模型装着用指標装置は、一対の前記水平嵌入孔または一対の前記指標用水平棒が設けられた回動部と、前記垂直嵌入孔が設けられ前記切歯指導釘に固定される固定部とから構成されており、前記回動部は前記固定部に対して前記水平嵌入孔の軸線方向と平行な軸線周りに回動可能に連結されている、請求項に記載の歯列模型装着用指標装置。
【請求項5】
請求項から請求項のいずれかに記載の歯列模型装着用指標装置を用いて、前記顔貌情報採得装置を取り付けた歯列模型を咬合器に装着する歯列模型装着方法であって、
前記切歯指導釘に前記垂直嵌入孔を嵌入させ、前記歯列模型装着用指標装置の上下位置を調整する上下位置調整ステップと、
前記水平棒の長手方向が前記指標用水平棒と一致するように位置合わせした状態で、前記歯列模型を前記咬合器に装着する歯列模型装着ステップと、
を有する、歯列模型装着方法。
【請求項6】
前記歯列模型装着ステップでは、一対の前記指標用水平棒に前記水平棒を接触させることによって位置合わせする、請求項から請求項のいずれかに従属する請求項に記載の歯列模型装着方法。