(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016280
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】フラックス及びソルダペースト
(51)【国際特許分類】
B23K 35/363 20060101AFI20220114BHJP
B23K 35/26 20060101ALI20220114BHJP
C22C 13/00 20060101ALI20220114BHJP
C22C 13/02 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
B23K35/363 D
B23K35/363 E
B23K35/26 310A
C22C13/00
C22C13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038162
(22)【出願日】2021-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2020119160
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000143215
【氏名又は名称】株式会社弘輝
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】行方 一博
(72)【発明者】
【氏名】新井 健文
(72)【発明者】
【氏名】早川 真滋
(57)【要約】
【課題】作業性よく、ソルダペーストの断続印刷性を向上させることが可能なフラックス、及び、該フラックスを含むソルダペーストを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係るフラックスは、はんだ付けに用いられるフラックスであって、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及び、ポリエチレングリコールジメチルエーテルから選択される少なくとも一種を含む溶剤を含有し、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及び、ポリエチレングリコールジメチルエーテルから選択される少なくとも一種の合計含有量が、フラックス全体に対して、35.0質量%以上55.0質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ付けに用いられるフラックスであって、
テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及び、ポリエチレングリコールジメチルエーテルから選択される少なくとも一種を含む溶剤を含有し、
テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及び、ポリエチレングリコールジメチルエーテルから選択される少なくとも一種の合計含有量が、フラックス全体に対して、35.0質量%以上55.0質量%以下である、フラックス。
【請求項2】
前記テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及び、ポリエチレングリコールジメチルエーテルから選択される少なくとも一種の合計含有量が、フラックス全体に対して、40.0質量%以上47.0質量%以下である、請求項1に記載のフラックス。
【請求項3】
さらに、グリコールエーテル系溶剤を含有する、請求項1又は2に記載のフラックス。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一つに記載のフラックスと、はんだ合金粉末と、を含有する、ソルダペースト。
【請求項5】
前記はんだ合金粉末の粒子径が、5μm以上40μm以下である、請求項4に記載のソルダペースト。
【請求項6】
前記はんだ合金粉末の合金が、Sn/Ag/Cu合金である、請求項4又は5に記載のソルダペースト。
【請求項7】
前記Sn/Ag/Cu合金が、さらに、In、Bi、Sb及びNiから選択される少なくとも一種を含有する、請求項6に記載のソルダペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付けに用いられるフラックス、及び、該フラックスを含むソルダペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板等の電子回路基板上に、チップ部品、パッケージ基板等の電子部品を搭載する実装技術には、はんだ合金とフラックスとを混合したソルダペーストが用いられる。具体的には、電子回路基板表面のパッド上に、メタルマスクを用いてソルダペーストをスクリーン印刷した後、電子部品をマウントして加熱(リフロー)することにより、電子回路基板上に電子部品が接合される。
【0003】
近年、電子機器の小型化及び高性能化に伴い電子部品も微細化している。このような微細な電子部品に対する印刷性を向上させるフラックスとして、例えば、特許文献1には、炭素数が12以上22以下であって常温で液状の高級アルコールを含有する溶剤を含むフラックスが開示されている。また、特許文献2には、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルと、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテルとの混合物である溶剤を含むフラックスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-49539号公報
【特許文献2】特開2014-87814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スクリーン印刷は、作業性の観点から、一定の時間を空けて断続的に行われる場合がある。ところが、スクリーン印刷後、メタルマスクの開口部には微量のソルダペーストが付着する。付着したソルダペーストは、時間の経過とともに乾燥してメタルマスクの開口部に固着し、さらには、目詰まりを起こす場合があるため、次のスクリーン印刷を行う際にソルダペーストの充填量が減少し、印刷不良が生じやすいという問題がある。メタルマスクの開口部に固着したソルダペーストを洗い落とすことも考えられるが、作業性に劣るため好ましくない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、作業性よく、ソルダペーストの断続印刷性を向上させることが可能なフラックス、及び、該フラックスを含むソルダペーストを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るフラックスは、はんだ付けに用いられるフラックスであって、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及び、ポリエチレングリコールジメチルエーテルから選択される少なくとも一種を含む溶剤を含有し、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及び、ポリエチレングリコールジメチルエーテルから選択される少なくとも一種の合計含有量が、フラックス全体に対して、35.0質量%以上55.0質量%以下である。
【0008】
前記フラックスは、斯かる構成により、一定の時間放置しても乾燥しにくく、また、粘着性の増加を抑制するため、スクリーン印刷後、メタルマスクの開口部にソルダペーストが固着しにくくなり、さらには、目詰まりを起こしにくくなる。その結果、前記フラックスは、ソルダペーストを洗い落とす等の作業を行うことなく、ソルダペーストの断続印刷性を向上させることができる。
【0009】
本発明に係るフラックスは、前記テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及び、ポリエチレングリコールジメチルエーテルから選択される少なくとも一種の合計含有量が、フラックス全体に対して、40.0質量%以上47.0質量%以下であってもよい。
【0010】
斯かる構成により、スクリーン印刷後、メタルマスクの開口部にソルダペーストがより固着しにくくなり、さらには、目詰まりをより起こしにくくなる。その結果、前記フラックスは、ソルダペーストの断続印刷性をより向上させることができる。
【0011】
本発明に係るフラックスは、さらに、グリコールエーテル系溶剤を含有してもよい。
【0012】
斯かる構成により、スクリーン印刷後、メタルマスクの開口部にソルダペーストがより固着しにくくなり、さらには、目詰まりをより起こしにくくなる。その結果、前記フラックスは、ソルダペーストの断続印刷性をより向上させることができる。
【0013】
本発明に係るソルダペーストは、上述のフラックスと、はんだ合金粉末と、を含有する。
【0014】
前記フラックスは、一定の時間放置しても乾燥しにくく、また、粘着性の増加を抑制するため、スクリーン印刷後、メタルマスクの開口部にソルダペーストが固着しにくくなり、さらには、目詰まりを起こしにくくなる。その結果、前記ソルダペーストは、洗い落とす等の作業を行うことなく、断続印刷性を向上させることができる。
【0015】
本発明に係るソルダペーストは、前記はんだ合金粉末の粒子径が、5μm以上40μm以下であってもよい。
【0016】
前記ソルダペーストは、前記はんだ合金粉末の粒子径が上述の範囲内であることにより、汎用的に使用されるソルダペーストから微細印刷用のソルダペーストまで幅広い用途において、作業性よく、断続印刷性を向上させることができる。
【0017】
本発明に係るソルダペーストは、前記はんだ合金粉末の合金が、Sn/Ag/Cu合金であってもよい。
【0018】
前記ソルダペーストは、広く一般的に使用されているSn/Ag/Cu合金に対しても、作業性よく、断続印刷性を向上させることができる。
【0019】
本発明に係るソルダペーストは、前記Sn/Ag/Cu合金が、さらに、In、Bi、Sb及びNiから選択される少なくとも一種を含有していてもよい。
【0020】
前記ソルダペーストは、はんだ合金の冷熱耐久性を向上させる目的でこれらの金属元素を添加したとしても、作業性よく、断続印刷性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、作業性よく、ソルダペーストの断続印刷性を向上させることが可能なフラックス、及び、該フラックスを含むソルダペーストを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係るフラックス及びソルダペーストについて説明する。
【0023】
<フラックス>
【0024】
(溶剤)
本実施形態に係るフラックスは、溶剤としてテトラエチレングリコールジメチルエーテル、及び、ポリエチレングリコールジメチルエーテルから選択される少なくとも一種を含有する。テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及び、ポリエチレングリコールジメチルエーテルから選択される少なくとも一種の合計含有量は、フラックス全体に対して、35.0質量%以上55.0質量%以下であり、40.0質量%以上であることが好ましく、47.0質量%以下であることが好ましい。
【0025】
本実施形態に係るフラックスは、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及び、ポリエチレングリコールジメチルエーテル以外のその他の溶剤を含んでいてもよい。本実施形態に係るフラックスは、その他の溶剤として、さらに、グリコールエーテル系溶剤を含有することが好ましい。グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルジグリコール)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(ジブチルジグリコール)、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(2エチルヘキシルジグリコール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルジグリコール)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルトリグリコール)、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル([2-(2-ブトキシメチルエトキシ)メチルエトキシ]プロパノール)、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(1-[2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]ブタン)等が挙げられる。これらの中でも、グリコールエーテル系溶剤は、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルジグリコール)、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(2エチルヘキシルジグリコール)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルトリグリコール)、及び、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル([2-(2-ブトキシメチルエトキシ)メチルエトキシ]プロパノール)から選択される少なくとも一種であることが好ましく、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルジグリコール)、又は、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルであることがより好ましい。本実施形態に係るフラックスは、一態様として、溶剤が、ポリエチレングリコールジメチルエーテルおよびグリコールエーテル系溶剤からなることが好ましい。
【0026】
本実施形態に係るフラックスは、その他の溶剤として、さらに、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族系化合物;酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル類;メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、ジエチルケトン等のケトン類;エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール類等の公知の溶剤を用いることができる。なお、溶剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0027】
その他の溶剤の含有量は、フラックス全体に対して、5.0質量%以上であることが好ましく、9.0質量%以上であることがより好ましい。また、その他の溶剤の含有量は、フラックス全体に対して、20.0質量%以下であることが好ましく、15.0質量%以下であることがより好ましい。なお、その他の溶剤が2種以上含まれる場合、前記含有量はその他の溶剤の合計含有量である。
【0028】
(樹脂)
本実施形態に係るフラックスは、樹脂を含んでいてもよい。樹脂としては、例えば、ロジン系樹脂、合成樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ロジン及びロジン誘導体(例えば、水素添加ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、アクリル酸変性ロジン等)から選択される1種以上のロジン系樹脂を用いることができる。また、合成樹脂としては、特に限定されるものではなく、公知の合成樹脂を用いることができる。なお、樹脂は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0029】
樹脂の含有量は、フラックス全体に対して、30.0質量%以上であることが好ましく、40.0質量%以上であることがより好ましい。また、樹脂の含有量は、フラックス全体に対して、70.0質量%以下であることが好ましく、50.0質量%以下であることがより好ましい。なお、樹脂が2種以上含まれる場合、前記含有量は樹脂の合計含有量である。
【0030】
(チキソ剤)
本実施形態に係るフラックスは、該フラックスのチキソ性をより高める観点から、さらに、チキソ剤を含んでいてもよい。チキソ剤としては、例えば、ヒマシ硬化油、脂肪酸アミド、脂肪酸ビスアマイド、ポリアミド化合物、カオリン、コロイダルシリカ、有機ベントナイト、ガラスフリット等が挙げられる。これらの中でも、チキソ剤は、耐熱性の観点から、脂肪酸ビスアマイド又はポリアミド化合物であることが好ましい。脂肪酸アミドとしては、例えば、ステアリン酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、ミリスチン酸アミド、N-ヒドロキシエチル-12-ステアリルアミド等が挙げられる。脂肪酸ビスアマイドとしては、例えば、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-キシリレンビス-12-ヒドロキシステアリルアミド等が挙げられる。ポリアミド化合物としては、例えば、脂肪族ポリアミド化合物であるVA-79、AMX-6096A、WH-215、WH-255(以上、共栄社化学社製)、SP-10、SP-500(以上、東レ社製)、グリルアミドL20G、グリルアミドTR55(以上、エムスケミ-・ジャパン社製)等、主鎖にベンゼン環、ナフタレン環等の環式化合物含む芳香族ポリアミド化合物(半芳香族ポリアミド化合物又は全芳香族ポリアミド化合物)であるJH-180(伊藤製油社製)等が挙げられる。なお、チキソ剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0031】
チキソ剤の含有量は、フラックス全体に対して、1.0質量%以上であることが好ましく、3.0質量%以上であることがより好ましい。また、チキソ剤の含有量は、フラックス全体に対して、7.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましい。なお、チキソ剤が2種以上含まれる場合、前記含有量はチキソ剤の合計含有量である。
【0032】
(活性剤)
本実施形態に係るフラックスは、活性剤を含んでいてもよい。活性剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、有機酸系活性剤、アミン化合物、アミノ酸化合物、アミンハロゲン塩やハロゲン化合物等のハロゲン系活性剤等が挙げられる。なお、活性剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0033】
有機酸系活性剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、グリコール酸等のモノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、ジグリコール酸等のジカルボン酸;ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、ピコリン酸、トリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌル酸、トリス(2-カルボキシプロピル)イソシアヌル酸等のその他の有機酸が挙げられる。
【0034】
アミン化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、テトラアセチルエチレンジアミン(N,N,N’,N’-テトラアセチルエチレンジアミン)、N-アセチルイミダゾール、N-アセチルフタルイミド、アセトアミド安息香酸(3-アセトアミド安息香酸、4-アセトアミド安息香酸)、N-アセチルアントラニル酸、アセトアミドニトロ安息香酸(2-アセトアミド-6-ニトロ安息香酸、3-アセトアミド-4-ニトロ安息香酸、3-アセトアミド-2-ニトロ安息香酸、5-アセトアミド-2-ニトロ安息香酸)等が挙げられる。
【0035】
アミノ酸化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、N-アセチルフェニルアラニン(N-アセチル-L-フェニルアラニン、N-アセチル-DL-フェニルアラニン、N-アセチル-D-フェニルアラニン)、N-アセチルグルタミン酸(N-アセチル-L-グルタミン酸)、N-アセチルグリシン、N-アセチルロイシン(N-アセチル-L-ロイシン、N-アセチル-DL-ロイシン、N-アセチル-D-ロイシン)、又は、N-アセチルフェニルグリシン(N-アセチル-N-フェニルグリシン、N-アセチル-L-フェニルグリシン、N-アセチル-DL-フェニルグリシン)等が挙げられる。
【0036】
アミンハロゲン塩のアミンとしては、例えば、ジエチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジフェニルグアニジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。アミンハロゲン塩のハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。ハロゲン化合物としては、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌル酸、2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオール、2-ブロモ-3-ヨード-2-ブテン-1,4-ジオール、TBA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)等が挙げられる。
【0037】
活性剤の含有量は、フラックス全体に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、3.0質量%以上であることがより好ましい。また、活性剤の含有量は、フラックス全体に対して、20.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以下であることがより好ましい。また、活性剤としてハロゲン系活性剤を含む場合、その含有量は、環境負荷の観点から、0.1質量%以下であることが好ましい。なお、活性剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は活性剤の合計含有量である。
【0038】
本実施形態に係るフラックスは、その他の添加剤として、例えば、安定剤、界面活性剤、消泡剤、及び、腐食防止剤から選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。その他の添加剤の合計含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、フラックス全体に対して、5.0質量%以下とすることができる。
【0039】
本実施形態に係るフラックスは、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及び、ポリエチレングリコールジメチルエーテルから選択される少なくとも一種を含む溶剤を含有し、かつ、その含有量が、フラックス全体に対して、35.0質量%以上55.0質量%以下であることにより、一定の時間放置しても乾燥しにくく、また、粘着性の増加を抑制するため、スクリーン印刷後、メタルマスクの開口部にソルダペーストが固着しにくくなり、さらには、目詰まりを起こしにくくなる。その結果、前記フラックスは、ソルダペーストを洗い落とす等の作業を行うことなく、ソルダペーストの断続印刷性を向上させることができる。
【0040】
本実施形態に係るフラックスは、前記テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及び、ポリエチレングリコールジメチルエーテルから選択される少なくとも一種の含有量が、フラックス全体に対して、40.0質量%以上47.0質量%以下であることにより、スクリーン印刷後、メタルマスクの開口部にソルダペーストがより固着しにくくなり、さらには、目詰まりをより起こしにくくなる。その結果、前記フラックスは、ソルダペーストの断続印刷性をより向上させることができる。
【0041】
<ソルダペースト>
本実施形態に係るソルダペーストは、上述のフラックスと、はんだ合金粉末と、を含有する。前記ソルダペーストは、前記フラックスと前記はんだ合金粉末とを混合することにより得られる。前記フラックスの含有量は、前記ソルダペースト全体に対して、5~20質量%であることが好ましい。また、前記はんだ合金粉末の含有量は、前記ソルダペースト全体に対して、80~95質量%であることが好ましい。
【0042】
前記はんだ合金粉末の粒子径は、5μm以上40μm以下であることが好ましく、15μm以上28μm以下であることがより好ましい。
【0043】
前記はんだ合金粉末の合金としては、鉛フリーはんだ合金、鉛を含む共晶はんだ合金が挙げられるが、環境負荷低減の観点から、鉛フリーはんだ合金であることが好ましい。鉛フリーはんだ合金としては、例えば、スズ、銀、銅、インジウム、亜鉛、ビスマス、アンチモン等を含む合金が挙げられる。より具体的には、Sn/Ag、Sn/Ag/Cu、Sn/Cu、Sn/Ag/Bi、Sn/Bi、Sn/Ag/Cu/Bi、Sn/Sb、Sn/Zn/Bi、Sn/Zn、Sn/Zn/Al、Sn/Ag/Bi/In、Sn/Ag/Cu/Bi/In/Sb、In/Ag等の合金が挙げられる。これらの中でも、前記はんだ合金粉末の合金は、Sn/Ag/Cu合金であることが好ましい。また、Sn/Ag/Cu合金は、さらに、In、Bi、Sb及びNiから選択される少なくとも一種を含有することがより好ましい。また、前記合金には、不可避的不純物が含まれる。不可避的不純物とは、製造過程において不可避的に混入する成分であって、本発明の効果に影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
【0044】
本実施形態に係るソルダペーストは、上述のフラックスと、はんだ合金粉末と、を含有する。前記フラックスは、一定の時間放置しても乾燥しにくく、また、粘着性の増加を抑制するため、スクリーン印刷後、メタルマスクの開口部にソルダペーストが固着しにくくなり、さらには、目詰まりを起こしにくくなる。その結果、前記ソルダペーストは、洗い落とす等の作業を行うことなく、断続印刷性を向上させることができる。
【0045】
本実施形態に係るソルダペーストは、前記はんだ合金粉末の粒子径が、5μm以上40μm以下であることにより、汎用的に使用されるソルダペーストから微細印刷用のソルダペーストまで幅広い用途において、作業性よく、断続印刷性を向上させることができる。
【0046】
本実施形態に係るソルダペーストは、前記はんだ合金粉末の合金が、Sn/Ag/Cu合金であってもよい。前記ソルダペーストは、広く一般的に使用されているSn/Ag/Cu合金に対しても、作業性よく、断続印刷性を向上させることができる。
【0047】
本実施形態に係るソルダペーストは、前記Sn/Ag/Cu合金が、さらに、In、Bi、Sb及びNiから選択される少なくとも一種を含有していてもよい。前記ソルダペーストは、はんだ合金の冷熱耐久性を向上させる目的でこれらの金属元素を添加したとしても、作業性よく、断続印刷性を向上させることができる。
【実施例0048】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
<ソルダペーストの作製>
表1に示す配合量の樹脂、溶剤、チキソ剤、活性剤及び酸化防止剤を加熱容器に投入し、180℃まで加熱することにより、ワニス成分を得た。その後、ワニス成分とその他の成分とを室温で混合させることにより、均一に分散されたフラックスを得た。なお、表1に示す各配合量は、フラックスに含まれる各成分の含有量と等しい。次に、各フラックスを11.8質量%、表1に示すはんだ合金粉末を88.2質量%となるように混合して、各実施例及び各比較例のソルダペーストを得た。
【0050】
【0051】
表1に示すフラックスに含まれる各原料の詳細を表2に示す。また、表1に示すはんだ合金の詳細を表3に示す。
【0052】
【0053】
【0054】
<断続印刷性の評価>
各実施例及び各比較例のソルダペーストを、印刷機(YVP-Xg、YAMAHA Motor社製)にセッティングしたメタルマスクの上に300g載せ、メタルマスクにソルダペーストをなじませるため、ローリングを4回行った。そして、メタルマスクの版裏を乾式クリーニングした後、下記印刷条件で1回目の印刷を行った。その後、温度:24~26℃、湿度:50~60%RHの環境下で60分静置し、メタルマスクの版裏を乾式クリーニングした後、下記印刷条件で2回目の印刷を行った。なお、1回目の印刷は2枚行い、1枚目について転写率の評価を行った。
【0055】
(印刷条件)
印刷スキージ:メタルスキージ
スキージ角度:60°
メタルマスク厚:120μm
印刷速度:40mm/sec
パッドの形状:○形状(0.25mmφ)又は□形状(0.25mm×0.25mm)
パッド数:50
パッドの材質:OSP処理銅
【0056】
(転写率の評価)
はんだの転写率は、印刷した各基板の銅パッド上にあるはんだをKOHYOUNG aSPIerで検出し、その体積%を求めることにより算出した。50個のパッドにおける平均体積%を表1に示す。
【0057】
また、体積%が10%未満と判定されるパッドが1個でもある場合、抜け不良ありと認定した。結果を表1に示す。
【0058】
平均体積%及び抜け不良の結果から、表4の基準に従ってA~Eの判定を行った。結果を表1に示す。なお、判定がA~Cのソルダペーストを合格、判定がD,Eのソルダペーストを不合格とする。
【0059】
【0060】
表1の結果から分かるように、本発明の要件をすべて満たす各実施例のソルダペーストは、60分後の印刷における平均体積%が65%以上で、かつ、抜け不良もないことから、優れた断続印刷性を示す。
【0061】
一方、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及び、ポリエチレングリコールジメチルエーテルを含まない比較例1、3、及び、4、並びに、ポリエチレングリコールジメチルエーテルの含有量が35.0質量%未満である比較例2のソルダペーストは、○,□のパッド形状において60分後の印刷における平均体積%が65%未満であり、かつ、抜け不良もあることから、断続印刷性に劣ることが分かる。