IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 北海製罐株式会社の特許一覧

特開2022-162807缶体、缶体用の缶胴の外面表示の成形方法、及び、缶体用の缶胴の外面表示の成形装置
<>
  • 特開-缶体、缶体用の缶胴の外面表示の成形方法、及び、缶体用の缶胴の外面表示の成形装置 図1
  • 特開-缶体、缶体用の缶胴の外面表示の成形方法、及び、缶体用の缶胴の外面表示の成形装置 図2
  • 特開-缶体、缶体用の缶胴の外面表示の成形方法、及び、缶体用の缶胴の外面表示の成形装置 図3
  • 特開-缶体、缶体用の缶胴の外面表示の成形方法、及び、缶体用の缶胴の外面表示の成形装置 図4
  • 特開-缶体、缶体用の缶胴の外面表示の成形方法、及び、缶体用の缶胴の外面表示の成形装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162807
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】缶体、缶体用の缶胴の外面表示の成形方法、及び、缶体用の缶胴の外面表示の成形装置
(51)【国際特許分類】
   B65D 8/00 20060101AFI20221018BHJP
   B65D 25/20 20060101ALI20221018BHJP
   B21D 51/26 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
B65D8/00 A
B65D25/20 Q
B21D51/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067810
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】505440295
【氏名又は名称】北海製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉木 昭義
【テーマコード(参考)】
3E061
3E062
【Fターム(参考)】
3E061AA16
3E061AB04
3E061BA02
3E061DA01
3E062AA04
3E062AB02
3E062AC03
3E062DA01
3E062DA05
(57)【要約】
【課題】缶胴の缶外面にデザイン性の高い表示が形成された缶体を提供すると共に、当該缶体が容易に得られる、缶体用の缶胴の外面表示の成形方法、及び、缶体用の缶胴の外面表示の成形装置を提供することを目的とする。
【解決手段】円筒状の缶胴2を備える缶体1において、缶胴2の外面周方向に、構成単位としての線状凹部5を多数並べて形成される表示を設ける。缶胴2の外面に線状凹部5を形成するとき、多数の凹条部15を備える内型12を缶胴2の内面に当接させ、複数の線状凸部16を備える外型13を、缶胴2の外面に圧接させることにより、外型13の線状凸部16を内型12の凹条部15に凹入させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の缶胴を備える缶体において、
前記缶胴の外面周方向に、2点を直線状に繋ぐ、構成単位としての線状凹部を多数並べて形成される表示が設けられていることを特徴とする缶体。
【請求項2】
前記缶胴の外面に施される前記表示は、長さ、幅、深さ、凹部断面形状の異なる前記線状凹部を組み合わせて構成されることを特徴とする請求項1記載の缶体。
【請求項3】
前記缶胴の外面における前記表示は、多数の前記線状凹部による加工面と、多数の前記線状凹部により包囲された面による未加工面とで構成されることを特徴とする請求項1又は2記載の缶体。
【請求項4】
前記缶胴表面位置から前記線状凹部の最深部までの寸法を加工深さ寸法としたとき、前記線状凹部の加工深さ寸法は、0.01mm~1.0mmであることを特徴とする請求項1~3の何れか1項記載の缶体。
【請求項5】
缶体用の円筒状の缶胴の外面に、2点を直線状に繋ぐ線状凹部を多数並べてなる表示を形成する成形方法において、
外面全周にわたって周方向又は高さ方向に規則的に配列された多数の凹条部を備えるロール状の内型を缶胴の内面に当接させる工程と、
前記缶胴を介して前記内型の各凹条部に選択的に押入するように形成された複数の線状凸部を備える外型を、前記缶胴の外面に圧接させ、該線状凸部を前記内型の凹条部に凹入させる工程とを備えることを特徴とする缶胴の外面表示の成形方法。
【請求項6】
前記外型は、レール状に形成され、
前記内型が前記缶胴の内面に当接し、前記外型が該缶胴の外面に圧接した状態で、前記内型を回転させて、該缶胴を前記外型の長手方向に沿って転動させる工程を備えることを特徴とする請求項5記載の缶胴の外面表示の成形方法。
【請求項7】
缶胴の円筒状の外面に、2点を直線状に繋ぐ線状凹部を多数並べてなる表示を形成する成形装置において、
ロール状に形成されて缶胴の内面に当接する内型と、内型の当接位置に対応する缶胴の外面に当接する外型とを備え、
前記内型は、その外面全周にわたって周方向又は高さ方向に規則的に配列された多数の凹条部を備え、
前記外型は、前記缶胴を介して前記内型の各凹条部に選択的に押入する複数の線状凸部を備えることを特徴とする缶胴の外面表示の成形装置。
【請求項8】
前記外型の線状凸部の突出高さは、前記内型の凹条部の深さより小であることを特徴とする請求項7記載の缶胴の外面表示の成形装置。
【請求項9】
前記外型は、前記缶胴への当接面側に、前記線状凸部を備えるレール状に形成されていることを特徴とする請求項7又は8記載の缶胴の外面表示の成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶体、缶体用の缶胴の外面表示の成形方法、及び、缶体用の缶胴の外面表示の成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製の円筒状缶胴の外面全周に模様を形成した缶体として、同一形状からなる多数の凹部により模様を形成したものや、文字列等の装飾や表示を凹部(以下エンボスと表す場合がある)によって形成したものが知られている(例えば、下記特許文献1,2等参照)。
【0003】
これらの缶体において、缶胴の外面に形成されている凹部による表示は、缶胴の外面に立体的な装飾的効果が得られ、缶体の美観を向上させている。更に、缶胴の外面の一部に凹部を形成しない面を残して、装飾効果に変化を持たせることも行われている(例えば、下記特許文献3参照)。
【0004】
ところで、同一形状からなる多数の凹部により模様を缶胴に形成した缶体は、缶胴の外面に同一形状の多数の凹部を形成するだけでよいので、その製造も容易である。
【0005】
即ち、缶胴への凹部の成形には、凹部を成形するための内型と外型とを備えた成形装置が用いられ、例えば、下記特許文献1における内型と外型とは、共にロール状に形成されている。内型は、缶胴の内部に挿入され、外型は缶胴の外面に当接される。この状態で内型と外型とを回転させることにより、内型と外型とに挟まれた状態の缶胴が同期回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-26286号公報
【特許文献2】特開2003-340539号公報
【特許文献3】特開2016-50041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、缶胴の外面全周にわたり、比較的大きな同一形状を有する多数の凹部により構成される、繰り返し模様を設けた従来の缶体への装飾表現は変化に乏しく、デザイン性の向上や、文字等、一部情報を含むような表示表現への拡大は望めない。
【0008】
また、缶胴の外面の一部に、凹部を形成しない領域を残して表現しようとしても、その面との境界部の輪郭は、境界稜線で区切られ、凹部の形状や大きさに制限されるため、缶体に、例えば漢字やイラストを含むような表示・装飾表現や、文字列等の情報を含む表示表現を容易に施すことが困難であった。
【0009】
また、上記特許文献2に示されるような、互いに対応する凹凸を有する内型と外型とを用いる成形においては、凹部の形状や凹部の数による表示内容を変更するときに(例えば、凹部により表示する文字列等を変更するとき)、互いに対応する、相補的な関係にある内型と外型との両方を共に変更する(両方同時に取り替える)必要がある。
【0010】
このため、従来のものでは、凹部の形状や凹部による表示内容を変更する度に、新たに内型と外型との両方を作成・準備しなければならないだけでなく、成形装置に対して内型及び外型の交換作業が発生し、作業効率の低下や、缶体の製造コストが増大する不都合があった。
【0011】
上記の点に鑑み、本発明は、缶胴の缶外面にデザイン性の高い表示が形成された缶体を提供すると共に、当該缶体が容易に得られる、缶体用の缶胴の外面表示の成形方法、及び、缶体用の缶胴の外面表示の成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的を達成するために、本発明は、円筒状の缶胴を備える缶体において、前記缶胴の外面周方向に、2点を直線状に繋ぐ、構成単位としての線状凹部を、多数並べて形成される表示が設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、線状凹部を多数並べた表示が設けられていることで、漢字などを含む文字列や、イラストのような細かなニュアンス表現を含む表示が形成された缶体を容易に得ることができる。
【0014】
本発明の缶体において、前記缶胴の外面に施される前記表示は、長さ、幅、深さ、凹部断面形状の異なる前記線状凹部を組み合わせて構成されることを特徴とする。
【0015】
これによれば、従来のような同一形状による多数の凹部を用いた装飾表現に比べて、長さ、幅、深さ、凹部断面形状の異なる様々な形状を有する凹部、及び各凹部の粗密(密集度合い)を用いて、より変化に富んだ表現を缶体に付加することができ、デザイン性の高い表示を有する缶体を得ることができる。
【0016】
本発明の缶体において、前記缶胴の外面における前記表示は、多数の前記線状凹部による加工面と、多数の前記線状凹部により包囲された面による未加工面とで構成されることを特徴とする。
【0017】
これらによれば、多数の線状凹部の配列による加工面で文字形状や図形の輪郭部分を形成し、加工領域と未加工領域をよりソフトな境界とすることで、平滑な未加工面を文字やイラストとする表示も行える。
【0018】
本発明の缶体において、前記缶胴表面位置から前記線状凹部の最深部までの寸法を加工深さ寸法としたとき、前記線状凹部の加工深さ寸法は、0.01mm~1.0mmであることを特徴とする。
【0019】
線状凹部の加工深さ寸法が0.01mmより小さいと、視認性が低く表示としての明確性が得られないおそれがある。線状凹部の加工深さ寸法が1.0mmより大きいと、缶胴における線状凹部の肉厚が極度に薄くなるおそれがある。従って、線状凹部の加工深さ寸法を0.01mm~1.0mmとすることにより、実用上の缶体強度を低下させることなく、高い視認性を有する表示を形成することができる。
【0020】
なお、本発明の缶体として、線状凹部の加工深さ寸法は、0.01mm~1.0mmの範囲から選択できるが、最適には0.05mm~0.5mmとすることで実用上の缶体強度の維持と高い視認性とを両立させながら、更に成形容易とする効果も得ることができる。
【0021】
また、本発明は、缶体用の円筒状の缶胴の外面に、2点を直線状に繋ぐ線状凹部を多数並べてなる表示を形成する成形方法において、外面全周にわたって、周方向又は高さ方向に規則的に配列された多数の凹条部を備えるロール状の内型を、缶胴の内面に当接させる工程と、前記缶胴を介して前記内型の各凹条部に選択的に押入するように形成された複数の線状凸部を備える外型を、前記缶胴の外面に圧接させ、該線状凸部を前記内型の凹条部に凹入させる工程とを備えることを特徴とする。
【0022】
本発明の方法によれば、外型の線状凸部が、内型に形成されている凹条部に凹入することで缶胴に、各線状凸部に対応する形状の線状凹部を形成する。内型は、外面全周にわたって、周方向又は高さ方向に複数の凹条部が規則的に配設されているものが用いられる。外型の線状凸部と内型の凹条部の形状は、文字列等の装飾や表示に、最適な構成単位としての線状凹部の形状となるよう、形状、粗密、大小、深浅等を任意に組み合わせて最適な組み合わせで作成できる。また、当然のことながら、前期缶体の本表示は、線状以外のエンボス、ドット、ビード、拡・縮径などの従来から知られる加飾技術と組み合わせて実施しても良い。
【0023】
そして、加工用の金型は、内型の各凹条部に対して、外型の線状凸部が選択的に凹入するようになっている。これにより、外型の線状凸部が設けられている位置にのみ、缶胴に選択的に線状凹部が形成される。加工に際しては、缶体の自由位置に凹部加工を施しても
良いし、予め缶体に印刷されたデザインと呼応するように、別手段で位置合わせしたのち、缶体に凹部を形成しても良い。
【0024】
この場合、所望する缶胴の線状凹部による表示内容に対し、内型の全ての凹条部位置と、外型の全ての線状凸部位置とを必ずしも相補的に位置対応させる必要がないため、外型の線状凸部の位置を変更することにより、容易にその表示内容を変化させることができる。よって、缶胴の線状凹部による缶体の装飾、表示効果の変化は、外型の交換だけで得ることができる。
【0025】
そして、表示変更の度に内型の交換が不要であるから、内型の作成費用が不要となり、型替え時間の短縮、型の摩耗破損時等に金型の部分交換が可能などの効果が得られ、製造コストの増加を抑えて、缶体の装飾効果を変化させることができる。
【0026】
本発明の方法に採用可能となる前記外型の一態様としては、レール状に形成され、前記内型が前記缶胴の内面に当接し、前記外型が該缶胴の外面に圧接した状態で、前記内型を回転させて、該缶胴を前記外型の長手方向に沿って転動させる工程を備えることが挙げられる。
【0027】
この時、内型と缶胴とは、圧接され一体化した状態で転動しながら、缶体加工形状に即した位置で、外型表面の各加工凸部と同期圧接する。また、このような、所謂レール方式の外型であれば、外型一方のみ、かつ、その交換が容易となるため、製造時の金型の交換作業を一層短時間で行うことが可能となり、製造コストを低減することができる。
【0028】
また、本発明は、缶胴の円筒状の外面に、2点を直線状に繋ぐ線状凹部を、多数並べてなる表示を形成する成形装置において、ロール状に形成されて、缶胴の内面に当接する内型と、内型の当接位置に対応する缶胴の外面に当接する外型とを備え、前記内型は、その外面全周にわたって、周方向又は高さ方向に規則的に配列された多数の凹条部を備え、前記外型は、前記缶胴を介して、前記内型の各凹条部に選択的に押入する複数の線状凸部を備えることを特徴とする。このとき、前記外型の線状凸部の突出高さは、前記内型の凹条部の深さより小であることが好ましい。
【0029】
本発明の装置によれば、内型が、その外面全周に規則的に配列された、多数の凹条部を備えているのに対して、外型が備える各線状凸部は、内型の全ての凹条部に凹入するのではなく、何れかの凹条部、或いは凹条部の長さ方向の一部に選択的に凹入する。即ち、内型の多数の凹条部のうち、所望の表示に対応する位置にある凹条部にのみ、外型の凸条部を凹入し、しかも、内型に設けられた凹条部の全周長ではなく、一部の長さ部分に外型の線状凸部を凹入する。これによれば、線状凸部の位置や長さや、数の異なる外型に変更(外型を交換)するだけで、缶体の表示、装飾効果を変化させることができる。
【0030】
本発明の装置における前記外型の一態様としては、前記外型は、前記缶胴への当接面側に、前記線状凸部を備えるレール状に形成されていることが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】缶体を示す説明的側面図。
図2】線状凹部の形状を示す説明的断面図。
図3】成形装置の要部の構成を模式的に示す図。
図4図4Aは内型の説明的側面図、図4Bは内型の説明的断面図、図4Cは凹条部の形状を拡大して示す説明的断面図。
図5図5Aは外型の説明的平面図、図5Bは外型の説明的正面図、図5Cは線状凸部の形状を拡大して示す説明的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施形態について図面に基づき説明する。本実施形態の缶体1は、図1に示すように、円筒状の缶胴2と、缶胴2の上端に巻き締められた天蓋3と、缶胴2の下端に巻き締められた底蓋4とで構成される。
【0033】
缶体1は、スチール、ぶりき、アルミニウム等、金属缶に一般的に用いられる金属材料によって形成されている。これ以外にも、金属缶体については、いわゆる2ピース缶やエアゾール缶であってもかまわない。
【0034】
缶胴2の外面には、1本の線状凹部5を構成単位として、多数の線状凹部5によって形成された表示が設けられている。
【0035】
表示を構成している各線状凹部5は、夫々、表示内容に応じた長さに形成されている。これにより、図1に示すように、多数の線状凹部5の長短による加工面6と、多数の線状凹部5により包囲された未加工面7とで構成された、表示(イラスト)を形成することができる。
【0036】
また、線状凹部5の幅(長さに直交する方向の寸法)を微細(細線状化)とすることにより、極めて精細な表示の形成が可能となる。これにより、イラストだけでなく、例えば、図示しないが、漢字や英字等の文字表現による表示も可能となる。
【0037】
また、表示を構成する線状凹部5は、深さや断面形状の異なるものを組み合わせても構成することができる。具体的には、図2Aに示すような断面台形状の凹部5a、図2Bに示す断面三角形状の凹部5b、図2Cに示すような底部がU字状に湾曲する凹部5c、図2Dに示すような底部が多角形状の凹部5d等、適宜の形状を挙げることができる。
【0038】
また、缶胴2の表面位置から線状凹部5の最深部までの寸法を加工深さ寸法としたとき、線状凹部5の加工深さ寸法は、0.01mm~1.0mmとしている。これにより、実用上の缶体強度に影響を与えず、視認性の高い表示を得ることができる。
【0039】
次に、缶胴2に表示を形成するための成形装置10について説明する。本実施形態の成形装置10は、図3に示すように、缶胴2を装置内に供給する入口ターレット11と、缶胴2の内面に接するロール状の内型12と、缶胴2の軌道に接する位置に設けられて缶胴2の外面に圧接する円弧レール状の外型13と、缶胴2を成形装置内から排出する出口ターレット14とを備えている。
【0040】
入口ターレット11によって缶胴2が装置内に投入されると、図示しない駆動手段により、内型12が缶胴2内に挿入される。図示しないターレットにより、ロール状の内型12が挿入された缶胴2を搬送しつつ自公転する。この状態で、公転軌道に合わせて固定された円弧レール状の外型13に、缶胴2の外面を圧接させ、缶胴2に線状凹部5を形成しながら外型13を通過した後、出口ターレット14の手前までに、缶胴2より内型12を引き抜く工程が行われる。
【0041】
内型12は、缶胴2を外型13との間に挟んだ状態で外型13に沿って転動する。このとき、缶胴2は内型12の回転に伴い外型13への圧接状態を維持して外型13に沿って転動する。
【0042】
図4A図4Cに示すように、内型12には凹条部15が多数形成されている。内型12の凹条部15は、内型12の周方向に全周にわたって無端に形成されており、更に、内型12の高さ方向(内型12の回転軸に沿った方向)に多数配列して形成されている。
【0043】
図5A図5Cに示すように、外型13には、内型12の多数の凹条部15に凹入可能な形状の線状凸部16が形成されている。外型13の各線状凸部16は、缶胴2の外面に設ける表示に対応する位置に配設されている。図5Bにおいては、表示となるイラストに対応する位置に線状凸部16を配設した例を示している。
【0044】
外型13の線状凸部16は、缶胴2の高さ方向(内型12の開店軸線に沿った方向)の位置において、内型12の凹条部15の何れかの位置に凹入するように設定されている。
【0045】
即ち、具体的な一例として、内型12の凹条部15は、図4Cに示すように、凹部幅aが1.36mmとされ、凹部深さbが0.775mmとされ、内型12の周方向全周にわたって同一寸法で形成されている。対して外型13の線状凸部16は、図5Cに示すように、線状凸部16の突出高cが0.5mmとされ、互いに隣り合う線状凸部16の頂部の距離dが1.36mmとされている。
【0046】
外型13の線状凸部16の頂部は、図5Cに示すように、湾曲する形状である。これにより、缶胴2への線状凹部5の形成に伴う缶胴2の損傷等を防止ながら深く凹入することができ、より視認性の高い線状凹部5を形成することができる。なお、缶胴2の損傷が防止できる範囲であれば、図示しないが、外型13の線状凸部16の頂部形状は、複数の角部を有する断面視多角形状であってもよい。
【0047】
成形装置10においては、内型12と外型13とで缶胴2を挟んだ状態で、缶胴2が外型13に沿って転動することにより、外型13を缶胴2の外面に圧接させて、線状凸部16を内型12の凹条部15に凹入させる加工が行われる。
【0048】
これにより、線状凸部16が加工缶胴面を凹条部15に凹入し、缶胴2に線状凹部5による加工部6が形成される。このとき、外型13の線状凸部16が形成されていない部分は、線状凹部が成形されることがなく、未加工部7となる。
【0049】
従って、図5Bに示すように、外型13における缶胴2への接触面17に、缶胴2に加工表示させるためのイラストや、文字等に対応するよう線状凸部16を配列しておくことで、イラストや文字等を示す表示が缶胴2に形成される。
【0050】
また、内型12は、その外面全周にわたって、周方向全周と高さ方向とに配列した多数の凹条部15を備えるので、例えば、線状凸部16の位置の異なる外型13に交換するだけで、缶胴2の線状凹部5による表示を変更することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、レール状の外型13を採用しているが、これに替えて、図示しないが、外型をロール状としてもよく、例えば、ロール状の内型と単数の外型をともに一対で転動させたり、或いは、これらが複数個配置された形態であっても良い。
【0052】
また、内型12の凹条部15と、外型13の線状凸部16とは、互いに対応する形状(相補的)とするのが好ましいが、それに限るものではなく、例えば、図示しないが、外型13の線状凸部16の断面形状を、内型12の凹条部15の断面形状よりも小とすることで、凹条部15と異なる断面形状の線状凸部16を用いることもできる。
【0053】
また、本実施形態の成形装置10を用いれば、内型12と外型13との圧接力(缶胴2に対する押圧力)を小さくすることにより、缶胴2に浅い線状凹部5を形成することができ、内型12と外型との圧接力を大きくすることにより、缶胴2に深い線状凹部5を形成することができる。内型12と外型13との圧接力は、外型13の線状凸部16の突出量でも制御でき、外型13における個々の線状凸部16を異ならせることにより、表示全体において濃淡を表現することも可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1…缶体、2…缶胴、5,5a,5b,5c,5d…線状凹部、6…加工面、7…未加工面、10…成形装置、12…内型、13…外型、15…凹条部、16…線状凸部。
図1
図2
図3
図4
図5