(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162823
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 13/00 20060101AFI20221018BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20221018BHJP
B60C 9/08 20060101ALI20221018BHJP
B60C 9/20 20060101ALI20221018BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20221018BHJP
B60C 15/06 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
B60C13/00 E
B60C9/00 A
B60C9/00 B
B60C9/08 C
B60C9/20 D
B60C9/22 C
B60C13/00 G
B60C15/06 E
B60C15/06 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067845
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】井上 学
(72)【発明者】
【氏名】岡部 昇
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA06
3D131AA32
3D131AA33
3D131BA02
3D131BA05
3D131BA11
3D131BA20
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB06
3D131BC13
3D131DA01
3D131DA32
3D131DA52
3D131GA14
3D131HA42
(57)【要約】
【課題】高速走行時において優れた操縦安定性を持続して発揮し得る空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】複数のコード11を含むプライ10と、サイドウォールゴム3Gとを含む。コード11のそれぞれは、外径dの複数のフィラメント14が撚り合わされている。コード11のそれぞれは、コード平均径Dとフィラメント14の外径dとの比D/dが28以上である。比D/dと、サイドウォールゴム3Gの損失正接tanδとが、下記式(1)を満足する。
(tanδ)/(D/d)×1000≦5.5 …(1)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤであって、
複数のコードを含むプライと、サイドウォールゴムとを含み、
前記コードのそれぞれは、外径dの複数のフィラメントが撚り合わされており、
前記コードのそれぞれは、コード平均径Dと前記フィラメントの外径dとの比D/dが28以上であり、
前記比D/dと、前記サイドウォールゴムの損失正接tanδとが、下記式(1)を満足する、
空気入りタイヤ。
(tanδ)/(D/d)×1000≦5.5 …(1)
【請求項2】
前記比D/dは32以上である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記比D/dは35以上である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
下記式(2)を満足する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
(tanδ)/(D/d)×1000≦2.0 …(2)
【請求項5】
前記コードの前記フィラメントは、ポリエステル繊維を含む、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記コードの熱収縮率は3.0%以下である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記コードの中間伸度は6.5%以下である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記プライは、カーカスプライを含む、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記プライは、トレッド部、サイドウォール部及びビード部を補強するための補強プライを含む、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記コードは、前記複数のフィラメントが撚り合わされた下撚り糸の複数本が撚り合わされたものである、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記下撚り糸が2本からなる、請求項10に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤの構成部材として、複数のコードを含むプライが用いられている。また、前記コードは、空気入りタイヤの各種性能に影響を及ぼすことが知られている。例えば、下記特許文献1は、カーカスコードの中間伸度を規定することにより、転がり抵抗を低減し得る空気入りタイヤを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のコードを含むプライは、タイヤが転動する際に繰り返し圧縮変形を受けることにより、コードを構成する複数のフィラメントが少しずつ破断し、ひいてはプライの剛性が低下する場合がある。特に高速走行時は、タイヤの変形頻度が高いため、プライの剛性低下によって操縦安定性が低下し易いという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、高速走行時において優れた操縦安定性を持続して発揮し得る空気入りタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、空気入りタイヤであって、複数のコードを含むプライと、サイドウォールゴムとを含み、前記コードのそれぞれは、外径dの複数のフィラメントが撚り合わされており、前記コードのそれぞれは、コード平均径Dと前記フィラメントの外径dとの比D/dが28以上であり、前記比D/dと、前記サイドウォールゴムの損失正接tanδとが、下記式(1)を満足する。
(tanδ)/(D/d)×1000≦5.5 …(1)
【0007】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記比D/dは32以上であるのが望ましい。
【0008】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記比D/dは35以上であるのが望ましい。
【0009】
本発明の空気入りタイヤは、下記式(2)を満足するのが望ましい。
(tanδ)/(D/d)×1000≦2.0 …(2)
【0010】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記コードの前記フィラメントは、ポリエステル繊維を含むのが望ましい。
【0011】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記コードの熱収縮率は3.0%以下であるのが望ましい。
【0012】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記コードの中間伸度は6.5%以下であるのが望ましい。
【0013】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記プライは、カーカスプライを含むのが望ましい。
【0014】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記プライは、トレッド部、サイドウォール部及びビード部を補強するための補強プライを含むのが望ましい。
【0015】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記コードは、前記複数のフィラメントが撚り合わされた下撚り糸の複数本が撚り合わされたものであるのが望ましい。
【0016】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記下撚り糸が2本からなるのが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の空気入りタイヤは、上記の構成を採用したことによって、高速走行時において優れた操縦安定性を持続して発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」という場合がある。)1の子午線断面図が示されている。
図1は、タイヤ1の正規状態における回転軸を含む横断面図である。
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、乗用車用の空気入りタイヤである。但し、このような態様に限定されるものではなく、本発明は、重荷重用タイヤや、自動二輪車用タイヤに適用されても良い。
【0020】
「正規状態」とは、各種の規格が定められたタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって車両に未装着かつ無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0021】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0022】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0023】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、カーカス6を有している。カーカス6は、例えば、1枚のカーカスプライ6Aで構成されている。カーカスプライ6Aは、複数のカーカスコードと、これらを被覆するトッピングゴムとを含む。カーカスコードは、例えば、タイヤ周方向に対して75~90°の角度で傾けて配列されている。カーカスコードには、例えば、ナイロン、ポリエステル又はレーヨン等の有機繊維コード等が好適に採用される。
【0024】
カーカスプライ6Aは、本体部6a及び折返し部6bを有する。本体部6aは、一方のビード部4から、一方のサイドウォール部3、トレッド部2、他方のサイドウォール部3を経て、他方のビード部4に至る。折返し部6bは、本体部6aに連なり、かつ、ビードコア5の回りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返されてタイヤ半径方向外側に延びる。
【0025】
本実施形態のトレッド部2には、トレッド補強層7が設けられている。トレッド補強層7は、例えば、ベルト層8を含む。ベルト層8は、例えば、2枚のベルトプライ8A、8Bを含んでいる。各ベルトプライ8A、8Bは、例えば、タイヤ周方向に対して傾斜して配された複数のベルトコードと、これらを被覆するトッピングゴムとを含む。各ベルトコードは、タイヤ周方向に対して10~45°の角度で傾斜しているのが望ましい。
【0026】
トレッド補強層7は、例えば、バンド層9を含む。バンド層9は、例えば、1枚のバンドプライ9Aで構成されている。バンドプライ9Aは、タイヤ周方向に対して5°以下の角度で配列されたバンドコードを含んで構成されている。望ましい態様では、バンドプライ9Aは、1本のバンドコードがタイヤ周方向に巻回された所謂ジョイントレスバンドとして構成される。
【0027】
図2には、本発明のタイヤ1に含まれるプライ10の拡大斜視図が示されている。
図2に示されるように、本発明のタイヤは、複数のコード11がトッピングゴム12で被覆されたプライ10を含む。プライ10は、上述のカーカスプライ6A、ベルトプライ8A、8B及びバンドプライ9Aの少なくとも1つに適用される。
【0028】
図3には、1本のコード11の拡大断面図が示されている。
図3に示されるように、コード11のそれぞれは、外径dの複数のフィラメント14が撚り合わされたものである。望ましい態様として、本実施形態のコード11は、複数のフィラメント14が撚り合わされた下撚り糸13の複数本(本実施形態では2本である。)が撚り合わされたものである。また、本発明のコード11は、2本の下撚り糸13が撚り合わされているため、下撚り糸13の外面の一部13a(2本の下撚り糸13の接触面に相当する。)が偏平化している。これにより、コード11の断面形状は、その中央部において断面幅が小さくなっている略長円状である。但し、本発明のコードは、このような態様に限定されるものではない。
【0029】
コード11のそれぞれは、コード平均径Dとフィラメント14の外径dとの比D/dが28以上である。このようなコード11は、細いフィラメント14が密となって撚り合わされているため、コード11に大きな引っ張り応力が繰り返し作用する高速走行時においても、フィラメント14の1本当たりに発生する変形が小さく、かつ、コード11が発揮できる応力も高めることができる。このため、コード11の内部のフィラメント14の破断が抑制され、高速走行時において優れた操縦安定性を持続して発揮することができる。なお、前記比D/dが28以上であるコード11は、公知の製造方法を適宜組み合わせることにより、製造することができる。
【0030】
コード平均径Dは、コード11の横断面における長径D1と短径D2との単純平均で求められる。長径D1は、コード11の最大径を意味する。短径D2は、長径D1と直交する方向のコード11の径のうちの最大となる径を意味する。本実施形態のコード11は、一定の断面形状でコード11の長さ方向に延びているが、コード11の断面形状や断面積がコード11の長さ方向に変化するものでも良い。この場合、前記コード平均径Dは、コード11の断面積が最小となる位置で測定されるのが望ましい。コード11の実質的な引っ張り強さは、コード11の断面積が最小となる位置におけるコード11の構成に依存するためである。
【0031】
一般に、上述のコード11を有するプライ10は、タイヤが転動する際に繰り返し圧縮変形を受けることにより、コード11を構成する複数のフィラメント14が少しずつ破断し、ひいてはプライ10の剛性が低下する場合がある。特に高速走行時は、タイヤの変形頻度が高いため、プライ10の剛性低下によって操縦安定性が低下し易い。
【0032】
プライ10のコード11自体については、従来から種々の研究が実施されているが、コード11とタイヤ1を構成するゴム部材との関係については、あまり着目されていなかった。発明者らは、従来ではあまり着目されていなかった、空気入りタイヤを構成するプライ10のコード11と、タイヤのゴム部材との関係に着目してこれらを詳細に解析することにより、本発明を完成させるに至った。
【0033】
図1に示されるように、タイヤ1は、サイドウォールゴム3Gを含んでいる。サイドウォールゴム3Gは、例えば、サイドウォール部3においてカーカス6のタイヤ軸方向外側に配置されており、サイドウォール部3の外面を構成している。本発明では、前記比D/dと、サイドウォールゴム3Gの損失正接tanδとが、下記式(1)を満足する。
(tanδ)/(D/d)×1000≦5.5 …(1)
【0034】
なお、サイドウォールゴム3Gの損失正接tanδは、JIS-K6394の規定に準拠して、下記の条件で、GABO社製動的粘弾性測定装置(イプレクサーシリーズ)を用いて測定された値である。測定時のテストサンプルは、例えば、サイドウォールゴム3Gから採取された、タイヤ周方向の長さが20mm、タイヤ半径方向の幅が4mm、厚さ1mmのゴム片とされる。
初期歪:5%
動歪の振幅:±1%
周波数:10Hz
変形モード:伸張
測定温度:30℃
【0035】
本発明では、上記の式(1)が充足されることにより、サイドウォールゴム3Gの発熱量が小さくなり、サイドウォール部3の剛性低下が抑制される一方、サイドウォールゴム3Gの発熱性に対して前記比D/dが十分に大きく規定されるため、プライ10(
図2に示され、以下、同様である。)内におけるフィラメント14(
図3に示され、以下、同様である。)の破断が抑制され、プライ10の剛性低下が効果的に抑制される。また、サイドウォール部3やプライ10の剛性低下が抑制されるため、タイヤ1に舵角が付与されたときにレスポンス良くコーナリングフォースが発生する。このような作用により、本発明のタイヤ1は、高速走行時において優れた操縦安定性を持続して発揮できると考えられる。
【0036】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0037】
本発明のプライ10は、カーカスプライ6A、ベルトプライ8A、8B及びバンドプライ9Aのいずれにも適用され得る。本実施形態では、上述のプライ10がカーカスプライ6Aとバンドプライ9Aとに適用される。プライ10をカーカスプライ6Aとし、上述の関係性を満たすことで、タイヤのサイド部において、剛性低下を抑制しつつ、プライ10の反力を大きくすることができると考えられる。また、プライ10をバンドプライ9Aとし、上述の関係性を満たすことで、トレッド部においてプライ10で大きな反力を発生させ、その反力を剛性が高い状態にあるサイド部でレスポンス良く伝えることが可能となる為、高速走行時において優れた操縦安定性を持続して発揮できると考えられる。
【0038】
本発明は、上述の態様に限定されるものではなく、上述のプライ10は、ベルトプライ8A、8Bに適用されても良い。また、本発明の別の実施形態では、上述のプライ10は、トレッド部2、サイドウォール部3及びビード部4を補強するための補強プライ(図示省略)に適用されても良い。このような補強プライは、高速走行時の操縦安定性をより一層向上させるのに役立つ。
【0039】
さらに望ましい態様では、下記式(2)を満足するのが望ましい。これにより、上述の効果をさらに高めることができる。
(tanδ)/(D/d)×1000≦2.0 …(2)
【0040】
サイドウォールゴム3Gの損失正接は、望ましくは0.05以上、より望ましくは0.07以上であり、望ましくは0.18以下、より望ましくは0.16以下である。サイドウォールゴム3Gは、公知の材料を適宜調整して組み合わせることによって、製造することができる。
【0041】
上述のサイドウォールゴム3Gは、公知の材料を適宜組み合わせて得ることができる。サイドウォールゴム3Gのゴム成分としては、例えば、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等のゴムが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
また、上述のゴム成分には、カーボンブラックやシリカなどの充填剤、オイル、樹脂などの可塑剤、脂肪酸などの加工助剤、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤等が適宜添加され得る。また、本実施形態のサイドウォールゴム3Gの損失正接tanδは、例えば、ゴム成分のガラス転移点や、充填剤、可塑剤、加硫剤、加硫促進剤の種類や量を適宜変更することにより、調整することができる。とりわけ、従来のゴム材料と比較して、充填剤、可塑剤を相対的に少なくし、加硫剤、加硫促進剤を相対的に多くすることで、サイドウォールゴム3Gの損失正接tanδを上述の範囲とすることができる。
【0043】
図2に示されるように、プライ10に含まれるコード11は、有機繊維コードである。本実施形態のコード11のフィラメント14は、ポリエステル繊維を含む。このようなコード11は、タイヤの製造コストを低減するのに役立つ。但し、コード11に適用される材料は、このような態様に限定されるものはなく、ナイロン、レーヨン又はアラミド等、種々の材料が適用される。
【0044】
プライ10の幅5cm当たりに含まれるコード11の本数であるエンズは、例えば、40~60本であり、望ましくは45~55本である。また、1本のコード11の繊度は、望ましくは2000dtex以上、より望ましくは2500dtex以上、さらに望ましくは3000dtex以上であり、望ましくは7000dtex以下、より望ましくは6500dtex以下、さらに望ましくは6000dtex以下である。本実施形態では、1本のコード11が、2本の下撚り糸13で構成されている。1本の下撚り糸13の繊度は、望ましくは1000dtex以上、より望ましくは1500dtex以上であり、望ましくは3500dtex以下、より望ましくは3000dtex以下である。
【0045】
図3に示されるように、上述の効果をさらに高めるために、コード11の前記比D/dは、望ましくは33以上であり、より望ましくは36以上である。一方、前記比D/dが過度に大きい場合、コード11の製造コストが大きくなる傾向がある。このため、前記比D/dは、望ましくは40以下であり、より望ましくは38以下である。
【0046】
図3に示されるように、コード11のコード平均径Dは、例えば、0.50~0.90mmであり、望ましくは0.58~0.78mmである。フィラメント14の外径dは、例えば、15.0~30.0μmであり、望ましくは20.0~25.0μmである。但し、コード11及びフィラメント14は、このような寸法に限定されるものではない。
【0047】
コード11の熱収縮率は、小さい方が望ましい。このため、コード11の熱収縮率は、望ましくは5.0%以下、より望ましくは4.0%以下、さらに望ましくは3.0%以下である。このようなコード11は、高速走行時でも過度に収縮せず、操縦安定性をさらに高めることができる。
【0048】
前記「熱収縮率」は、JIS-L1017の8.10(b)項の「加熱後乾熱収縮率(B法)」に準じ、コードを無荷重の状態にて温度180℃で5分間加熱した後の加熱後乾熱収縮率を意味する。
【0049】
コード11の中間伸度は、望ましくは6.5%以下であり、より望ましくは5.0%以下であり、さらに望ましくは4.5%以下である。このようなコード11は、優れた操縦安定性を持続して発揮することができる。なお、 本明細書において、「中間伸度」とは、JIS L1017の化学繊維タイヤコード試験方法に準拠し、規格で定められた一定荷重が負荷されたときの伸度(%)を意味する。
【0050】
上述のコード11の組成は、いずれも、新品かつ未使用のタイヤ1から採取されたコードの組成に適用される。
【0051】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施されうる。
【実施例0052】
本発明の発明特定事項を充足するサイズ215/60R16の空気入りタイヤが表1~3の仕様に基づき試作された。比較例1~4として、本発明の発明特定事項を充足しない空気入りタイヤが試作された。比較例1~4のタイヤは、表1~3に示される仕様を除き、実施例のタイヤと実質的に同じ構成を有している。各テストタイヤについて、高速走行時の操縦安定性(タイヤ新品時及びタイヤ使用後期)がテストされた。テストタイヤの共通仕様や、テスト方法は、以下の通りである。
装着リム:16×6.5J
内圧:210kPa
テスト車両の排気量:2000cc
駆動方式:FF
テストタイヤ装着位置:全輪
【0053】
<高速走行時の操縦安定性(タイヤ新品時及びタイヤ使用後期)>
上記テスト車両で高速走行したときの操縦安定性が、運転者の官能により評価された。表中において、「タイヤ新品時の操縦安定性」は、慣らし走行を済ませた新品のテストタイヤの前記操縦安定性の評価である。「タイヤ使用後期の操縦安定性」は、一般道を3000kmを走行した後のテストタイヤの前記操縦安定性の評価である。結果は、比較例1の前記操縦安定性を100とする評点であり、数値が大きい程、高速走行時の操縦安定性が優れていることを示す。
テスト結果が表1~3に示される。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
なお、表1~3に記載されたサイドウォールゴムの配合A~Cは、下記の表4に示される通りである。
【0058】
【0059】
また、高速走行時の操縦安定性の総合評価の指標として、表1~3に示されるタイヤ新品時及びタイヤ使用後期の操縦安定性の評点の合計点が用いられても良い。
【0060】
表1~3に示されるように、実施例のタイヤは、高速走行時において優れた操縦安定性を持続して発揮していることが確認できた。