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特開2022-162830超音波診断装置、画像処理装置、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162830
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】超音波診断装置、画像処理装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067854
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】久我 衣津紀
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601BB03
4C601DD09
4C601EE09
4C601JC26
4C601KK02
(57)【要約】
【課題】計算量を維持しつつ自然なレンダリング画像を生成すること。
【解決手段】実施形態に係る超音波診断装置は、三次元データ生成部と、取得部と、レンダリング部とを備える。三次元データ生成部は、プローブによって取得されたエコー反射強度に基づいて三次元データを生成する。取得部は、複数のパラメータと三次元データとを取得する。レンダリング部は、エコー反射強度に基づく光の伝搬を考慮した色減衰値と、複数のパラメータに含まれるベースカラーパラメータとを用いて、三次元データのレンダリング画像を生成する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブによって取得されたエコー反射強度に基づいて三次元データを生成する三次元データ生成部と、
複数のパラメータと前記三次元データとを取得する取得部と、
前記エコー反射強度に基づく光の伝搬を考慮した色減衰値と、前記複数のパラメータに含まれるベースカラーパラメータとを用いて、前記三次元データのレンダリング画像を生成するレンダリング部と
を具備する、超音波診断装置。
【請求項2】
前記ベースカラーパラメータと、前記エコー反射強度およびオパシティ値を対応付けたオパシティカーブとに基づいて、前記オパシティ値および前記色減衰値を対応付けた色減衰カーブを生成する色減衰カーブ生成部
を更に具備し、
前記色減衰値は、前記エコー反射強度、前記オパシティカーブ、および前記色減衰カーブに基づいて算出される、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記複数のパラメータは、対象へ向けられる光源の位置の情報を含むレンダリングパラメータを更に含み、
前記オパシティカーブ、前記色減衰カーブ、前記レンダリングパラメータ、および前記三次元データに基づいて、前記色減衰値を格納した光特性マップを生成する光特性マップ生成部
を更に具備し、
前記レンダリングパラメータは、視点の位置の情報を更に含み、
前記レンダリング部は、前記オパシティカーブ、前記ベースカラーパラメータ、前記レンダリングパラメータ、前記光特性マップ、および前記三次元データに基づいて前記レンダリング画像を生成する、
請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記光特性マップ生成部は、フォトンマッピング法を用いて前記光特性マップを生成する、
請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記色減衰カーブは、色の表現形式の要素ごとに設けられる、
請求項2から請求項4までのいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記色の表現形式は、RGB、HSV、HLS、YUV、YCrCb、およびYPbPrのいずれかである、
請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記色減衰カーブ生成部は、前記色の表現形式の要素ごとに、異なる二つの伝達関数を少なくとも用いて前記色減衰カーブを生成する、
請求項5または請求項6に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記レンダリング部は、グローバルイルミネーションレンダリング処理を実行することによって前記レンダリング画像を生成する、
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記ベースカラーパラメータは、予め設定されたカラーマップ、またはユーザが指定したカラーマップに基づいて設定される、
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
複数のパラメータと、プローブによって取得されたエコー反射強度に基づいて生成された三次元データとを取得する取得部と、
前記エコー反射強度に基づく光の伝搬を考慮した色減衰値と、前記複数のパラメータに含まれるベースカラーパラメータとを用いて、前記三次元データのレンダリング画像を生成するレンダリング部と
を具備する、画像処理装置。
【請求項11】
コンピュータを、
複数のパラメータと、プローブによって取得されたエコー反射強度に基づいて生成された三次元データとを取得する手段と、
前記エコー反射強度に基づく光の伝搬を考慮した色減衰値と、前記複数のパラメータに含まれるベースカラーパラメータとを用いて、前記三次元データのレンダリング画像を生成する手段
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、超音波診断装置、画像処理装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置によって超音波のエコー反射強度を三次元データとして取得し、レンダリング画像を生成する技術が知られている。また、昨今では、光源や影を計算に考慮したレンダリング手法であるグローバルイルミネーションに基づくレンダリング画像の生成も行われている。この手法でレンダリングする際、CT(Computed Tomography)やMRI(Magnetic Resonance Imaging)においては、それぞれの装置で取得されたデータと臨床的な組織部位とが対応付けられているため、データに対して環境光色、反射色、および減衰色などの色指定を行い、レンダリングを実行する。一方、超音波診断装置においては、エコー反射強度と臨床的な組織部位とが対応付いていないため、CTやMRIのデータのようにエコー反射強度に対して各種色指定をすることができない。このため、CTやMRとは異なる色付け手法が必要となっている。
【0003】
また、超音波診断装置では、スキャンを実施しながらリアルタイムにレンダリング画像を表示するため、計算量を抑えることが望ましく、色指定において、代表的には光特性における反射と減衰とが用いられる。計算する光特性の種類を増やす場合、自然なレンダリング画像の生成が望めるが、色の設定が複雑になる、計算が重くなる、および高性能なハードウェアが必要となるといった問題がある。
【0004】
従来、反射と減衰のみでグローバルイルミネーションレンダリングをする場合、使用される手法は次の通りであるが、それぞれ課題があった。一つは、観察対象物を構成する、ある閾値以上のエコー反射強度に対して単一の反射色および減衰色を割り当てる手法である。しかし、この手法は、特に光源位置が真正面付近にある場合に、画像上にはっきりとした影が落ちないため全体が単一の色で表現され輪郭の視認性が極端に悪くなることがある。もう一つは、反射色をエコー反射強度の高低に連動することで輪郭を描出する手法である。しかし、この手法は、光源を動かしたときに色変化せず輪郭が描出され続け立体感やリアリティを損ねることがある。よって、計算量を維持しつつ自然なレンダリング画像を生成することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-181168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、計算量を維持しつつ自然なレンダリング画像を生成することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る超音波診断装置は、三次元データ生成部と、取得部と、レンダリング部とを備える。三次元データ生成部は、プローブによって取得されたエコー反射強度に基づいて三次元データを生成する。取得部は、複数のパラメータと三次元データとを取得する。レンダリング部は、エコー反射強度に基づく光の伝搬を考慮した色減衰値と、複数のパラメータに含まれるベースカラーパラメータとを用いて、三次元データのレンダリング画像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態におけるグローバルイルミネーション画像生成処理の概要を説明するブロック図である。
図3図3は、第1の実施形態におけるグローバルイルミネーション画像生成処理を実行する処理回路の動作の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、図2のオパシティカーブ生成処理を説明するブロック図である。
図5図5は、図2の色減衰カーブ生成処理を説明するブロック図である。
図6図6は、図2の光特性マップ生成処理を説明するブロック図である。
図7図7は、図2のグローバルイルミネーションレンダリング処理を説明するブロック図である。
図8図8は、第1の実施形態における光源が正面にあるグローバルイルミネーション画像を示す図である。
図9図9は、第1の実施形態における光源が左側にあるグローバルイルミネーション画像を示す図である。
図10図10は、第2の実施形態に係る画像処理装置の構成例を示すブロック図である。
図11図11は、光源が正面にあるグローバルイルミネーション画像の従来図である。
図12図12は、光源が左側にあるグローバルイルミネーション画像の従来図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、超音波診断装置の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。図1の超音波診断装置1は、装置本体100と、超音波プローブ101とを有している。装置本体100は、入力装置102および出力装置103と接続されている。また、装置本体100は、ネットワークNWを介して外部装置104と接続されている。外部装置104は、例えば、PACS(Picture Archiving and Communication Systems)を搭載したサーバである。
【0011】
超音波プローブ101は、例えば、装置本体100による制御に従い、被検体である生体P内のスキャン領域について超音波スキャンを実行する。超音波プローブ101は、例えば、複数の圧電振動子、複数の圧電振動子とケースとの間に設けられる整合層、および複数の圧電振動子から放射方向に対して後方への超音波の伝搬を防止するバッキング材を有する。超音波プローブ101は、例えば、第1の素子配列方向(エレベーション方向)と第2の素子配列方向(アジマス方向)とに沿って複数の超音波振動子が配列された2次元アレイプローブである。超音波プローブ101は、装置本体100と着脱自在に接続される。超音波プローブ101には、オフセット処理、および超音波画像をフリーズさせる操作(フリーズ操作)等の際に押下されるボタンが配置されてもよい。
【0012】
複数の圧電振動子は、装置本体100が有する後述の超音波送信回路110から供給される駆動信号に基づいて超音波を発生する。これにより、超音波プローブ101から生体Pへ超音波が送信される。超音波プローブ101から生体Pへ超音波が送信されると、送信された超音波は、生体Pの体組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流または心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向の速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。超音波プローブ101は、生体Pからの反射波信号を受信して電気信号に変換する。
【0013】
図1には、一つの超音波プローブ101と装置本体100との接続関係を例示している。しかしながら、装置本体100には、複数の超音波プローブを接続することが可能である。接続された複数の超音波プローブのうちいずれを超音波スキャンに使用するかは、例えば、後述するタッチパネル上のソフトウェアボタンによって任意に選択することができる。
【0014】
装置本体100は、超音波プローブ101により受信された反射波信号に基づいて超音波画像を生成する装置である。装置本体100は、超音波送信回路110と、超音波受信回路120と、内部記憶回路130と、画像メモリ140と、入力インタフェース150と、出力インタフェース160と、通信インタフェース170と、処理回路180とを有している。
【0015】
超音波送信回路110は、超音波プローブ101に駆動信号を供給するプロセッサである。超音波送信回路110は、例えば、トリガ発生回路、遅延回路、およびパルサ回路により実現される。トリガ発生回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返して発生する。遅延回路は、超音波プローブから発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な複数の圧電振動子毎の遅延時間を、トリガ発生回路が発生する各レートパルスに対し与える。パルサ回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ101に設けられる複数の超音波振動子へ駆動信号(駆動パルス)を印加する。遅延回路により各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、複数の圧電振動子の表面からの送信方向が任意に調整可能となる。
【0016】
また、超音波送信回路110は、駆動信号によって、超音波の出力強度を任意に変更することができる。超音波診断装置では、出力強度を大きくすることにより、生体P内での超音波の減衰の影響を小さくすることができる。超音波診断装置は、超音波の減衰の影響を小さくすることによって、受信時において、S/N比の大きい反射波信号を取得することができる。
【0017】
一般的に、超音波が生体P内を伝播すると、出力強度に相当する超音波の振動の強さ(これは、音響パワーとも称する)が減衰する。音響パワーの減衰は、吸収、散乱および反射などによって起こる。また、音響パワーの減少の度合いは、超音波の周波数および超音波の放射方向の距離に依存する。例えば、超音波の周波数を大きくすることにより、減衰の度合いは大きくなる。また、超音波の放射方向の距離が長くなるほど、減衰の度合いは大きくなる。
【0018】
超音波受信回路120は、超音波プローブ101が受信した反射波信号に対して各種処理を施し、受信信号を生成するプロセッサである。超音波受信回路120は、超音波プローブ101によって取得された超音波の反射波信号に基づく受信信号を生成する。具体的には、超音波受信回路120は、例えば、プリアンプ、A/D変換器、復調器、およびビームフォーマにより実現される。プリアンプは、超音波プローブ101が受信した反射波信号をチャネル毎に増幅してゲイン補正処理を行う。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をディジタル信号に変換する。復調器は、ディジタル信号を復調する。ビームフォーマは、例えば、復調されたディジタル信号に受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与えて、遅延時間が与えられた複数のディジタル信号を加算する。ビームフォーマの加算処理により、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調された受信信号が発生する。尚、以降では、「超音波の反射波信号」および「受信信号」を総称して「エコー信号」と呼ぶ。よって、「受信信号の強度」は、「エコー信号の反射強度(エコー反射強度)」と言い換えられてもよい。
【0019】
内部記憶回路130は、例えば、磁気的記憶媒体、光学的記憶媒体、または半導体メモリ等、プロセッサにより読み取り可能な記憶媒体等を有する。内部記憶回路130は、超音波送受信を実現するためのプログラム、後述するグローバルイルミネーション(GI:Global Illumination)画像生成処理に関するプログラム、および各種データなどを記憶している。プログラムおよび各種データは、例えば、内部記憶回路130に予め記憶されていてもよい。また、プログラムおよび各種データは、例えば、非一過性の記憶媒体に記憶されて配布され、非一過性の記憶媒体から読み出されて内部記憶回路130にインストールされてもよい。また、内部記憶回路130は、入力インタフェース150を介して入力される操作に従い、処理回路180で生成されるBモード画像データ、造影画像データ、血流映像に関する画像データ、および三次元データなどを記憶する。内部記憶回路130は、記憶している画像データおよび三次元データを、通信インタフェース170を介して外部装置104等に転送することも可能である。
【0020】
なお、内部記憶回路130は、CDドライブ、DVDドライブ、およびフラッシュメモリなどの可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置などであってもよい。内部記憶回路130は、記憶しているデータを可搬性記憶媒体へ書き込み、可搬性記憶媒体を介してデータを外部装置104に記憶させることも可能である。
【0021】
画像メモリ140は、例えば、磁気的記憶媒体、光学的記憶媒体、または半導体メモリなどのプロセッサにより読み取り可能な記憶媒体を有する。画像メモリ140は、入力インタフェース150を介して入力されるフリーズ操作直前の複数フレームに対応する画像データを保存する。画像メモリ140に記憶されている画像データは、例えば、連続表示(シネ表示)される。尚、画像メモリ140は、画像データの保存に限らず、三次元データを保存してもよい。
【0022】
上記の内部記憶回路130および画像メモリ140は、必ずしもそれぞれが独立した記憶装置により実現されなくてもよい。内部記憶回路130および画像メモリ140は、単一の記憶装置により実現されてもよい。また、内部記憶回路130および画像メモリ140は、それぞれが複数の記憶装置により実現されてもよい。
【0023】
入力インタフェース150は、入力装置102を介し、操作者からの各種指示を受け付ける。入力装置102は、例えば、マウス、キーボード、パネルスイッチ、スライダースイッチ、トラックボール、ロータリーエンコーダ、操作パネル、およびタッチパネルである。入力インタフェース150は、例えばバスを介して処理回路180に接続され、操作者から入力される操作指示を電気信号へ変換し、電気信号を処理回路180へ出力する。なお、入力インタフェース150は、マウスおよびキーボード等の物理的な操作部品と接続するものだけに限られない。例えば、超音波診断装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される操作指示に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路180へ出力する回路も入力インタフェースの例に含まれる。
【0024】
出力インタフェース160は、例えば処理回路180からの電気信号を出力装置103へ出力するためのインタフェースである。出力装置103は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTディスプレイ等の任意のディスプレイである。出力装置103は、入力装置102を兼ねたタッチパネル式のディスプレイでもよい。出力装置103は、ディスプレイの他に、音声を出力するスピーカーを更に含んでもよい。出力インタフェース160は、例えばバスを介して処理回路180に接続され、処理回路180からの電気信号を出力装置103に出力する。
【0025】
通信インタフェース170は、例えばネットワークNWを介して外部装置104と接続され、外部装置104との間でデータ通信を行う。
【0026】
処理回路180は、例えば、超音波診断装置1の中枢として機能するプロセッサである。処理回路180は、内部記憶回路130に記憶されているプログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。処理回路180は、例えば、Bモード処理機能181と、ドプラ処理機能182と、画像生成機能183と、三次元データ生成機能184(三次元データ生成部)と、取得機能185A(取得部)と、オパシティカーブ生成機能185Bと、色減衰カーブ生成機能185C(色減衰カーブ生成部)と、光特性マップ生成機能185D(光特性マップ生成部)と、レンダリング機能185E(レンダリング部)と、表示制御機能186(表示制御部)と、システム制御機能187とを有している。尚、ドプラ処理機能182は、本実施形態との関係性が薄いため、処理回路180の機能から省略されてもよい。
【0027】
Bモード処理機能181は、超音波受信回路120から受け取った受信信号(エコー信号)に基づき、Bモードデータを生成する機能である。Bモード処理機能181において処理回路180は、例えば、超音波受信回路120から受け取った受信信号に対して包絡線検波処理、および対数圧縮処理などを施し、受信信号の信号強度(エコー反射強度)を輝度の値(輝度値)で表現したデータ(Bモードデータ)を生成する。生成されたBモードデータは、2次元的な超音波走査線(ラスタ)上のBモードRAWデータとして不図示のRAWデータメモリに記憶される。
【0028】
また、処理回路180は、Bモード処理機能181により、ハーモニックイメージング(Harmonic Imaging)を実行することができる。ハーモニックイメージングとは、超音波の反射波信号に含まれる基本波成分だけでなく、高調波成分(ハーモニック成分)も利用する撮像法である。ハーモニックイメージングには、例えば、造影剤を用いないティッシュハーモニックイメージング(THI:Tissue Harmonic Imaging)と、造影剤を利用するコントラストハーモニックイメージング(CHI:Contrast Harmonic Imaging)とがある。
【0029】
THIでは、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)法や位相変調(PM:Phase Modulation)法、AM法及びPM法を組み合わせたAMPM法と呼ばれる映像法を用いて、ハーモニック成分を抽出することができる。
【0030】
AM法、PM法およびAMPM法では、同一の走査線に対して振幅や位相が異なる超音波送信を複数回行う。これにより、超音波受信回路120は、各走査線で複数の反射波データを生成し、生成した反射波データを出力する。処理回路180は、Bモード処理機能181により、各走査線の複数の反射波データを、変調法に応じた加減算処理することで、ハーモニック成分を抽出する。そして、処理回路180は、ハーモニック成分の反射波データに対して包絡線検波処理などを行って、Bモードデータを生成する。
【0031】
また、CHIでは、例えば、周波数フィルタを用いてハーモニック成分を抽出する。処理回路180は、Bモード処理機能181により、造影剤を反射源とする反射波データ(高調波成分)と、生体P内の組織を反射源とする反射波データ(基本波成分)とを分離することができる。これにより、処理回路180は、フィルタを用いて造影剤からの高調波成分を選択して、造影画像データを生成するためのBモードデータを生成することができる。
【0032】
造影画像データを生成するためのBモードデータは、造影剤を反射源とするエコー反射強度を輝度値で表したデータとなる。また、処理回路180は、生体Pの反射波データから基本波成分を抽出して、組織画像データを生成するためのBモードデータを生成することもできる。
【0033】
ドプラ処理機能182は、超音波受信回路120から受け取った受信信号を周波数解析することで、スキャン領域に設定されるROI(Region Of Interest:関心領域)内にある移動体のドプラ効果に基づく運動情報を抽出したデータ(ドプラ情報)を生成する機能である。生成されたドプラ情報は、2次元的な超音波走査線上のドプラRAWデータ(ドプラデータとも称する)として不図示のRAWデータメモリに記憶される。
【0034】
具体的には、処理回路180は、ドプラ処理機能182により、例えば移動体の運動情報として、平均速度、平均分散値、平均パワー値などを複数のサンプル点それぞれで推定し、推定した運動情報を示すドプラデータを生成する。移動体は、例えば、血流や、心壁などの組織、造影剤である。本実施形態に係る処理回路180は、ドプラ処理機能182により、血流の運動情報(血流情報)として、血流の平均速度、血流速度の分散値、血流信号のパワー値などを、複数のサンプル点それぞれで推定し、推定した血流情報を示すドプラデータを生成する。
【0035】
画像生成機能183は、Bモード処理機能181により生成されたデータに基づいて、Bモード画像データを生成する機能である。例えば、画像生成機能183において処理回路180は、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の画像データ(表示用画像データ)を生成する。具体的には、処理回路180は、RAWデータメモリに記憶されたBモードRAWデータに対してRAW-ピクセル変換、例えば、超音波プローブ101による超音波の走査形態に応じた座標変換を実行することで、ピクセルから構成される2次元Bモード画像データ(超音波画像データとも称する)を生成する。換言すると、処理回路180は、画像生成機能183により、超音波の送受信によって、連続する複数のフレームにそれぞれ対応する複数の超音波画像(医用画像)を生成する。
【0036】
また、処理回路180は、例えば、RAWデータメモリに記憶されたドプラRAWデータに対してRAW-ピクセル変換を実行することで、血流情報が映像化されたドプラ画像データを生成する。ドプラ画像データは、平均速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又はこれらを組み合わせた画像データである。処理回路180は、ドプラ画像データとして、血流情報がカラーで表示されるカラードプラ画像データ、および一つの血流情報がグレースケールで波形状に表示されるドプラ画像データを生成する。
【0037】
三次元データ生成機能184は、超音波受信回路120から受け取った受信信号に基づき、三次元のBモードデータ(三次元データ)を生成する機能である。三次元データ生成機能184において処理回路180は、Bモード処理機能181によって生成したBモードデータを用いて、三次元空間中に配置したボクセルに輝度値を割り当てることによって三次元データを生成する。この三次元データは、ボリュームデータと呼ばれてもよい。尚、輝度値がエコー反射強度に対応していることから、ボリュームデータのボクセルには、エコー反射強度が割り当てられていると解釈してもよい。よって、以降では、「ボリュームデータの輝度値」は、「エコー反射強度」と略同様の意味で用いられてよい。
【0038】
取得機能185Aは、後述するGI画像生成処理に関するデータを取得する機能である。具体的には、取得機能185Aにより、処理回路180は、ユーザから入力されたパラメータ、超音波診断装置1にデフォルトで設定されているパラメータなどの複数のパラメータ、および三次元データを取得する。複数のパラメータには、例えば、オパシティパラメータ、ベースカラーパラメータ、およびレンダリングパラメータがある。これらのパラメータの詳しい説明は後述される。
【0039】
オパシティカーブ生成機能185Bは、オパシティカーブを生成する機能である。オパシティカーブは、エコー反射強度およびオパシティ値を対応付けたグラフである。オパシティ値は、不透明度の値であり、例えば、「ゼロ」から「1」までの値で表現される。例えば、オパシティ値「ゼロ」は透明を表し、オパシティ値「1」は不透明を表す。
【0040】
オパシティカーブ生成機能185Bにより、処理回路180は、オパシティパラメータに基づいてオパシティカーブを生成する。オパシティパラメータは、例えば、オパシティカーブの形状を規定する伝達関数と、透明または不透明の境界を規定する閾値とを含む。この伝達関数は、線形でも非線形でもよい。閾値は、複数設けられてもよく、例えば、透明および不透明の二つの境界を規定してもよい。尚、本実施形態では、オパシティカーブのグラフをルックアップテーブル(LUT:Look Up Table)で表し、後述する処理で用いることとする。また、オパシティカーブ生成機能185Bによる処理は、オパシティカーブ生成処理と呼ばれてもよい。
【0041】
色減衰カーブ生成機能185Cは、色減衰カーブを生成する機能である。色減衰カーブは、オパシティ値および色減衰値を対応付けたグラフである。色減衰値は、光の伝搬を考慮した、ベースとなる色をどれだけ減衰させるかを表す値であり、色の表現形式の要素ごとに設けられる。即ち、色減衰カーブは、色の表現形式の要素ごとに設けられる。本実施形態では、色の表現形式としてRGBを用いることとする。尚、色の表現形式は、RGBに限らず、色相、彩度、および明度(或いは、輝度)の三つの成分によって表現される色空間(例えば、HSVおよびHLS)でもよいし、輝度信号Yおよび二つの色差信号を使って表現される色空間(例えば、YUV、YCbCr、およびYPbPr)でもよい。
【0042】
色減衰カーブ生成機能185Cにより、処理回路180は、ベースカラーパラメータおよびオパシティカーブに基づいて色減衰カーブを生成する。ベースカラーパラメータは、例えば、表示させたい対象(素材)の色を表すRGBの組み合わせ(カラーマップ)を含む。ベースカラーは、物体から反射する色である反射色に読み替えられてもよい。色減衰カーブの形状は、複数の要素のうちの少なくとも一つは異なる形状である。よって、色減衰カーブの形状を規定する伝達関数は、二つ以上である。また、この伝達関数は、線形でも非線形でもよい。換言すると、処理回路180は、色の表現形式の要素ごとに、異なる二つの伝達関数を少なくとも用いて色減衰カーブを生成する。尚、本実施形態では、色減衰カーブのグラフをLUTで表し、後述する処理で用いることとする。また、色減衰カーブ生成機能185Cによる処理は、色減衰カーブ生成処理と呼ばれてもよい。
【0043】
光特性マップ生成機能185Dは、光特性マップを生成する機能である。光特性マップとは、素材に光が当たった際に想定される物理現象(例えば、色の減衰)を数値化して三次元空間中に配置したボクセルに格納したものである。本実施形態では、光特性マップとして、後述するフォトンマッピング法のフォトンマップを生成する。
【0044】
上記のフォトンとは、光をコンピュータで表現するために離散化して単位時間当たりの光エネルギーを運搬する、フォトンマッピング法における定義である。このフォトンマッピング法では、あらかじめシステムに設定される数のフォトン、或いは、ユーザによって設定された数のフォトンが三次元データ内において衝突計算され、シーン内に配置される。シーンとは、光特性マップが作られる三次元空間である。
【0045】
光特性マップ生成機能185Dにより、処理回路180は、オパシティカーブ、色減衰カーブ、レンダリングパラメータ、および三次元データに基づいて光特性マップを生成する。レンダリングパラメータは、例えば、素材へ向けられる光源の位置の情報を含む。尚、光特性マップ生成機能185Dによる処理は、光特性マップ生成処理と呼ばれてもよい。
【0046】
レンダリング機能185Eは、レンダリング画像を生成する機能である。レンダリング画像には、例えば、ボリュームレンダリング画像と、グローバルイルミネーション画像とがある。本実施形態では、光源を考慮しないレンダリング画像をボリュームレンダリング画像とし、光源を考慮したレンダリング画像をグローバルイルミネーション画像と定義する。
【0047】
ボリュームレンダリング画像は、ボリュームデータをボリュームレンダリングすることによって得られる。ボリュームレンダリングでは、ボリュームデータのボクセルに割り当てられた輝度値(ボリュームデータの輝度値)に応じて、各ボクセルの表示上の明るさおよび色が設定される。その上で、ボリュームレンダリングは、任意の視点からボクセルを投影した投影像を表示する。
【0048】
他方、グローバルイルミネーション画像は、上述のフォトンマップを用いてレンダリング処理を行う。レンダリング処理には、例えば、レイトレーシング法が用いられる。本実施形態では、レンダリング画像として、グローバルイルミネーション画像を生成する。
【0049】
レンダリング機能185Eにより、処理回路180は、オパシティカーブ、ベースカラーパラメータ、レンダリングパラメータ、光特性マップ、および三次元データに基づいてグローバルイルミネーション画像を生成する。レンダリングパラメータは、例えば、視点の位置の情報を含む。尚、レンダリング機能185Eによる処理は、グローバルイルミネーションレンダリング処理と呼ばれてもよい。
【0050】
表示制御機能186は、画像生成機能183により生成された各種超音波画像データに基づく画像を出力装置103としてのディスプレイに表示させる機能である。具体的には、例えば、処理回路180は、表示制御機能186により、画像生成機能183により生成されたBモード画像データ、ドプラ画像データ、又はこれらの両方を含む画像データに基づく画像のディスプレイにおける表示を制御する。
【0051】
より具体的には、処理回路180は、表示制御機能186により、例えば、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用画像データを生成する。また、処理回路180は、表示用画像データに対し、ダイナミックレンジ、輝度(ブライトネス)、コントラスト、及びγカーブ補正、並びにRGB変換等の各種処理を実行してもよい。また、処理回路180は、表示用画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディマーク等の付帯情報を付加してもよい。また、処理回路180は、操作者が入力装置により各種指示を入力するためのユーザインタフェース(GUI:Graphical User Interface)を生成し、GUIをディスプレイに表示させてもよい。
【0052】
また、表示制御機能186により処理回路180は、レンダリング機能185Eにより生成されたグローバルイルミネーション画像(GI画像)を表示させてもよい。尚、処理回路180は、GI画像と共に、GI画像の設定に関するGUIを表示してもよい。これにより、ユーザは、GUIに表示されているパラメータを変更することによって、GI画像を所望する表示となるようリアルタイムに変化させることができる。ユーザが変更可能なパラメータは、例えば、オパシティパラメータ、ベースカラーパラメータ、およびレンダリングパラメータである。
【0053】
システム制御機能187は、超音波診断装置1全体の動作を統括して制御する機能である。例えば、システム制御機能187において処理回路180は、超音波の送受信に関するパラメータに基づいて超音波送信回路110および超音波受信回路120を制御する。
【0054】
以上、第1の実施形態における超音波診断装置の構成について説明した。次に、第1の実施形態におけるグローバルイルミネーション画像生成処理の概要および動作について説明する。
【0055】
図2は、第1の実施形態におけるグローバルイルミネーション画像生成処理の概要を説明するブロック図である。処理回路180は、取得されたパラメータおよび三次元データに基づいて、グローバルイルミネーション画像生成処理200を実行することによってグローバルイルミネーション画像を生成する。グローバルイルミネーション画像生成処理200は、例えば、オパシティカーブ生成処理210、色減衰カーブ生成処理220、光特性マップ生成処理230、およびグローバルイルミネーションレンダリング処理240を含む。尚、オパシティカーブ生成処理210および色減衰カーブ生成処理220は、ユーザからこれらの処理に関するパラメータの設定がない場合、デフォルトのパラメータによるオパシティカーブおよび色減衰カーブが生成されていてもよい。
【0056】
図3は、第1の実施形態におけるグローバルイルミネーション画像生成処理を実行する処理回路の動作の一例を示すフローチャートである。図3のグローバルイルミネーション画像生成処理は、例えば、ユーザがグローバルイルミネーション画像を表示するモード(イルミネーションモード)を実行することにより開始される。尚、図3のフローチャートは、1フレーム分の処理について説明するものである。
【0057】
(ステップST110)
グローバルイルミネーション画像生成処理を開始すると、処理回路180は、取得機能185Aを実行する。取得機能185Aを実行すると、処理回路180は、複数のパラメータおよび三次元データを取得する。複数のパラメータは、ユーザから入力されたパラメータ、および超音波診断装置1にデフォルトで設定されているパラメータの少なくとも一方を含む。三次元データは、超音波プローブ101でリアルタイムに取得されたエコー反射強度に基づいて三次元データ生成機能184により生成される。
【0058】
(ステップST120)
パラメータおよび三次元データを取得した後、処理回路180は、オパシティカーブ生成機能185Bを実行する。オパシティカーブ生成機能185Bを実行すると、処理回路180は、オパシティパラメータに基づいてオパシティカーブを生成する。以下では、オパシティカーブ生成機能185Bによるオパシティカーブ生成処理について図4を用いて説明する。
【0059】
図4は、図2のオパシティカーブ生成処理を説明するブロック図である。処理回路180は、オパシティパラメータに対してオパシティカーブ生成処理210を実行することによってオパシティカーブを生成する。具体的には、オパシティカーブ生成処理210は、オパシティパラメータに含まれる伝達関数および閾値を用いて、エコー反射強度をキーとしたオパシティカーブに関するLUTを生成する。処理回路180は、例えば、以下の式(1)を用いてオパシティカーブLUTの値を算出する。
【0060】
【数1】
式(1)において、Iは、エコー反射強度値を示す。Opacity[I]は、オパシティ値(不透明度の値)を示す。Ctransは、伝達関数を示す。Ithは、透明の境界を規定する閾値を示す。エコー反射強度値Iは、例えば、8ビットで表現されていた場合、「ゼロ」から「255」までの値である。
【0061】
(ステップST130)
オパシティカーブを生成した後、処理回路180は、色減衰カーブ生成機能185Cを実行する。色減衰カーブ生成機能185Cを実行すると、処理回路180は、ベースカラーパラメータおよびオパシティカーブに基づいて色減衰カーブを生成する。ベースカラーパラメータは、予め設定されたカラーマップ、またはユーザが指定したカラーマップに基づいて設定される。以下では、色減衰カーブ生成機能185Cによる色減衰カーブ生成処理について図5を用いて説明する。
【0062】
図5は、図2の色減衰カーブ生成処理を説明するブロック図である。処理回路180は、ベースカラーパラメータおよびオパシティカーブに対して色減衰カーブ生成処理220を実行することによって色減衰カーブを生成する。具体的には、色減衰カーブ生成処理220は、ベースカラーパラメータに含まれるRGBのそれぞれについて、オパシティ値をキーとした色減衰カーブに関するLUTを作成する。処理回路180は、例えば、以下の式(2)から式(4)までを用いてRGBそれぞれに対応する色減衰カーブLUTの値を算出する。
【0063】
【数2】
【0064】
【数3】
【0065】
【数4】
【0066】
式(2)から式(4)までにおいて、Extinction[I][R]は、赤色(R)の要素に関する色減衰値を示す。同様に、Extinction[I][G]は、緑色(G)の要素に関する色減衰値を示し、Extinction[I][B]は、青色(B)の要素に関する色減衰値を示す。Er,Eg,Ebは、RGBそれぞれの要素の数値を示す。要素の数値は、浮動小数点型で表現される。例えば、RGBの各要素を8ビットで表現する場合、「ゼロ」から「255」までの数値を「ゼロ」から「1.0」までの数値に対応させて扱う。また、色減衰値も浮動小数点型で表現される。
【0067】
Opacity[I]がゼロより大きい場合、Extinction[I][R]の演算は、Extinction[I][G]およびExtinction[I][B]と異なっている。具体的には、Extinction[I][R]は、Extinction[I][G]およびExtinction[I][G]に比べて、数値の減少率が小さくなっている。このことは、色減衰カーブの形状が異なることに対応する。
【0068】
(ステップST140)
色減衰カーブを生成した後、処理回路180は、光特性マップ生成機能185Dを実行する。光特性マップ生成機能185Dを実行すると、処理回路180は、オパシティカーブ、色減衰カーブ、レンダリングパラメータ、および三次元データに基づいて光特性マップを生成する。以下では、光特性マップ生成機能185Dによる光特性マップ生成処理について図6を用いて説明する。
【0069】
図6は、図2の光特性マップ生成処理を説明するブロック図である。処理回路180は、オパシティカーブ、色減衰カーブ、レンダリングパラメータ、および三次元データに対して光特性マップ生成処理230を実行することによって光特性マップを生成する。具体的には、光特性マップ生成処理230は、レンダリングパラメータに含まれる光源の位置の情報と三次元データとを用いてフォトンマッピング法を適用しフォトンマップを生成する。
【0070】
また、フォトンマップ中の各フォトンには様々なパラメータを設定することができる。本実施形態では、フォトンに対してRGBそれぞれの色減衰値を割り当てることとする。具体的には、処理回路180は、フォトンが配置されたシーンの位置に対応する三次元データのボクセルに含まれるエコー反射強度値とオパシティカーブLUTおよび色減衰カーブLUTとに基づきオパシティ値および色減衰値を読み出す。その後、処理回路180は、各フォトンに対して色減衰値を割り当てる。
【0071】
(ステップST150)
光特性マップを生成した後、処理回路180は、レンダリング機能185Eを実行する。レンダリング機能185Eを実行すると、処理回路180は、オパシティカーブ、ベースカラーパラメータ、レンダリングパラメータ、光特性マップ、および三次元データに基づいて、グローバルイルミネーション画像を生成する。以下では、レンダリング機能185Eによるグローバルイルミネーションレンダリング処理について図7を用いて説明する。
【0072】
図7は、図2のグローバルイルミネーションレンダリング処理を説明するブロック図である。処理回路180は、オパシティカーブ、ベースカラーパラメータ、レンダリングパラメータ、光特性マップ、および三次元データに対してグローバルイルミネーションレンダリング処理240を実行することによってグローバルイルミネーション画像を生成する。具体的には、グローバルイルミネーションレンダリング処理240は、レンダリングパラメータに含まれる視点の位置の情報から、フォトンマップを適用した三次元データのボクセルを投影した投影像(グローバルイルミネーション画像)を生成する。投影面上のボクセルには、エコー反射強度に基づくオパシティ値と、ベースカラーとが設定されている。
【0073】
また、グローバルイルミネーション画像の表示色は、ベースカラーパラメータに含まれるRGBそれぞれの要素の数値にフォトンマップに含まれる色減衰値を適用することによって算出される。上記の式(2)から式(4)までを用いて色減衰値を算出している場合、表示色は、Rに比べてGおよびBの減衰が大きくなることから、例えば、影の部分のような光の減衰が発生する場所において、R成分が多く残ることになる。換言すると、エコー反射強度に応じて色味の変化が発生する。
【0074】
(ステップST160)
グローバルイルミネーション画像を生成した後、処理回路180は、表示制御機能186により、グローバルイルミネーション画像を出力装置103としてのディスプレイに表示させる。ステップST160の処理の後、グローバルイルミネーション画像生成処理は終了する。
【0075】
なお、図3の処理は、ユーザがイルミネーションモードを終了、或いは別のモードに変更するまで繰り返し実行されてよい。
【0076】
図8は、第1の実施形態における光源が正面にあるグローバルイルミネーション画像を示す図である。図8では、視点方向も正面であるため、光源からの光は、視点方向と同じ方向へ進む。図8のグローバルイルミネーション画像800では、色味の変化がグレーで表され、影となる領域がハッチングで表されている。このことは、以降のグローバルイルミネーション画像でも同様である。
【0077】
図8のグローバルイルミネーション画像800には、胎児の右手が描画されている。右手の掌部810に着目すると、影の部分とは異なる部分において色味の変化が生じている。これにより、掌部810において、掌の形が鮮明にわかる。また、右手の断面部820に着目すると、掌部810と同様に、色味の変化があるため構造物(例えば、骨)の形をはっきりと捉えることができる。他方、従来の手法では、このような色味の変化が発生しない。以下、従来図について図11を用いて説明する。
【0078】
図11は、光源が正面にあるグローバルイルミネーション画像の従来図である。図11のグローバルイルミネーション画像1100には、グローバルイルミネーション画像800と同様に胎児の右手が描画されている。右手の掌部1110に着目すると、影の部分は表現されているものの、色味の変化が生じていないため、掌の形が不鮮明となっている。また、右手の断面部1120に着目すると、掌部1110と同様に、色味の変化が生じていないため構造物の形を捉えることができない。
【0079】
図9は、第1の実施形態における光源が左側にあるグローバルイルミネーション画像を示す図である。図9では、視点方向が正面であるため、光源からの光は、視点方向に対して左から右へ進む。
【0080】
図9のグローバルイルミネーション画像900には、胎児の全身が描画されている。胎児の頭部910に着目すると、顔の左側は影になっているため、顔の輪郭が曖昧となっている。また、胎児以外の構造物920に着目すると、色味の変化によって境界を捉えることができる。他方、従来の手法では、輪郭が強調されてしまい、不自然な見え方となることがある。以下、従来図について図12を用いて説明する。
【0081】
図12は、光源が左側にあるグローバルイルミネーション画像の従来図である。図12のグローバルイルミネーション画像1200には、グローバルイルミネーション画像900と同様に胎児の全身が描画されている。胎児の頭部1210に着目すると、左側頭部、左頬および左耳の輪郭がエッジとしてはっきりと描画されてしまい、不自然な見え方となっている。また、胎児以外の構造物1220に着目すると、頭部1210と同様に、滑らかな領域であるにもかかわらずエッジが描画されている。
【0082】
以上、概括すると、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、グローバルイルミネーション画像の生成において、色減衰の度合いをエコー反射強度に連動させ、反射色はエコー反射強度に連動させない単一色として設定される。また、この超音波診断装置は、色減衰の度合いを規定する色減衰カーブを、オパシティカーブに連動させることにより、高エコーほど色を透過させ、低エコーほど色を否透過とする。これらにより、生成されるグローバルイルミネーション画像では、エコー反射強度の変化が大きい境界において、単純な色の濃淡の変化だけでなく、RGB値も変化するため、境界部分が色の変化として描出され、自然な輪郭として捉えることができる。一方で、光の当たり方、即ち光源の位置による影の部分は従来と変わらず描出されるため、影の変化のリアリティは維持される。よって、本超音波診断装置は、従来と同様の色減衰および反射色を用いた計算量と同等の計算量で、従来よりもリアリティおよび視認性の向上を両立した結果を得ることができる。
【0083】
以上説明したように、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、プローブによって取得されたエコー反射強度に基づいて三次元データを生成し、複数のパラメータと三次元データとを取得し、エコー反射強度に基づく光の伝搬を考慮した色減衰値と、複数のパラメータに含まれるベースカラーパラメータとを用いて、三次元データのレンダリング画像を生成する。
【0084】
従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、色の減衰をエコー反射強度に対応させたことにより、計算量を維持しつつ自然なレンダリング画像を生成することができる。この計算量は、色の減衰をエコー反射強度に対応させない場合と変わらないため、リアルタイム性を損ねずに構造物の端で自然な輪郭を描出できる。また、構造物の端に限らず、超音波画像のスペックルの特性による色のばらつきも発生することから、複数色の色味が透けてくることにより、現実の色ムラに近似した効果が得られ、構造物の滑らかな部分がより自然に見える効果も付加される。
【0085】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、グローバルイルミネーション画像生成処理に係る複数の機能を有するについて説明した。第2の実施形態では、これら複数の機能を有する画像処理装置について説明する。
【0086】
図10は、第2の実施形態に係る画像処理装置の構成例を示すブロック図である。図10の画像処理装置300は、入力装置301および出力装置302と接続されている。また、画像処理装置300は、ネットワークNWを介して医用撮像装置303と接続されている。医用撮像装置303は、例えば超音波診断装置に相当する。尚、入力装置301および出力装置302は、図1の入力装置102および出力装置103と略同様である。
【0087】
画像処理装置300は、グローバルイルミネーション画像生成処理を実行し、グローバルイルミネーション画像を生成する装置である。画像処理装置300は、記憶回路310と、入力インタフェース320と、出力インタフェース330と、通信インタフェース340と、処理回路350とを有している。

記憶回路310は、例えば、磁気的記憶媒体、光学的記憶媒体、または半導体メモリ等、プロセッサにより読み取り可能な記憶媒体等を有する。記憶回路310は、グローバルイルミネーション画像生成処理に関するプログラム、および各種データなどを記憶している。プログラムおよび各種データは、例えば、記憶回路310に予め記憶されていてもよい。また、例えば、非一過性の記憶媒体に記憶されて配布され、非一過性の記憶媒体から読み出されて記憶回路310にインストールされてもよい。また、記憶回路310は、入力インタフェース320を介して入力される操作に従い、医用撮像装置303で生成されるBモード画像データ、造影画像データ、血流映像に関する画像データ、および三次元データなどを記憶する。
【0088】
なお、記憶回路310は、CDドライブ、DVDドライブ、およびフラッシュメモリなどの可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置などであってもよい。記憶回路310は、記憶しているデータを可搬性記憶媒体へ書き込み、可搬性記憶媒体を介してデータを外部装置に記憶させることも可能である。
【0089】
入力インタフェース320は、入力装置301を介し、操作者からの各種指示を受け付ける。入力装置301は、例えば、マウス、キーボード、パネルスイッチ、スライダースイッチ、トラックボール、ロータリーエンコーダ、操作パネル、およびタッチパネルである。入力インタフェース320は、例えばバスを介して処理回路350に接続され、操作者から入力される操作指示を電気信号へ変換し、電気信号を処理回路350へ出力する。なお、入力インタフェース320は、マウスおよびキーボード等の物理的な操作部品と接続するものだけに限られない。例えば、画像処理装置300とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される操作指示に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路350へ出力する回路も入力インタフェースの例に含まれる。
【0090】
出力インタフェース330は、例えば処理回路350からの電気信号を出力装置302へ出力するためのインタフェースである。出力装置302は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTディスプレイ等の任意のディスプレイである。出力装置302は、入力装置301を兼ねたタッチパネル式のディスプレイでもよい。出力装置302は、ディスプレイの他に、音声を出力するスピーカーを更に含んでもよい。出力インタフェース330は、例えばバスを介して処理回路350に接続され、処理回路350からの電気信号を出力装置302に出力する。
【0091】
通信インタフェース340は、例えばネットワークNWを介して医用撮像装置303と接続され、医用撮像装置303との間でデータ通信を行う。
【0092】
処理回路350は、例えば、画像処理装置300の中枢として機能するプロセッサである。処理回路350は、記憶回路310に記憶されているプログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。処理回路350は、例えば、取得機能351A(取得部)と、オパシティカーブ生成機能351Bと、色減衰カーブ生成機能351C(色減衰カーブ生成部)と、光特性マップ生成機能351D(光特性マップ生成部)と、レンダリング機能351E(レンダリング部)と、表示制御機能352(表示制御部)とを有している。
【0093】
取得機能351Aは、GI画像生成処理に関するデータを取得する機能である。具体的には、取得機能351Aにより、処理回路350は、ユーザから入力されたパラメータ、画像処理装置300にデフォルトで設定されているパラメータ、および医用撮像装置303から三次元データを取得する。
【0094】
なお、オパシティカーブ生成機能351Bと、色減衰カーブ生成機能351Cと、光特性マップ生成機能351Dと、レンダリング機能351Eと、表示制御機能352とのそれぞれは、例えば、第1の実施形態におけるオパシティカーブ生成機能185Bと、色減衰カーブ生成機能185Cと、光特性マップ生成機能185Dと、レンダリング機能185Eと、表示制御機能186とのそれぞれと略同様の機能を有する。
【0095】
従って、第2の実施形態に係る画像処理装置は、第1の実施形態の効果と同様の効果が期待できる。
【0096】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、計算量を維持しつつ自然なレンダリング画像を生成することができる。
【0097】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0098】
1 超音波診断装置
100 装置本体
101 超音波プローブ
102,301 入力装置
103,302 出力装置
104 外部装置
110 超音波送信回路
120 超音波受信回路
130 内部記憶回路
140 画像メモリ
150,320 入力インタフェース
160,330 出力インタフェース
170,340 通信インタフェース
180,350 処理回路
181 Bモード処理機能
182 ドプラ処理機能
183 画像生成機能
184 三次元データ生成機能
185A,351A 取得機能
185B,351B オパシティカーブ生成機能
185C,351C 色減衰カーブ生成機能
185D,351D 光特性マップ生成機能
185E,351E レンダリング機能
186,352 表示制御機能
187 システム制御機能
200 グローバルイルミネーション画像生成処理
210 オパシティカーブ生成処理
220 色減衰カーブ生成処理
230 光特性マップ生成処理
240 グローバルイルミネーションレンダリング処理
300 画像処理装置
303 医用撮像装置
310 記憶回路
800,900,1100,1200 グローバルイルミネーション画像
810,1110 掌部
820,1120 断面部
910,1210 頭部
920,1220 構造物
NW ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12