(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162838
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】冷却床部材
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20221018BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20221018BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20221018BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20221018BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20221018BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20221018BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H01M10/613
H01M10/6568
H01M10/6556
H01M10/625
H01M10/653
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067864
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】崎山 達也
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 翔平
【テーマコード(参考)】
5F136
5H031
【Fターム(参考)】
5F136CB07
5F136CB08
5F136DA50
5F136FA01
5F136FA02
5F136FA51
5F136FA52
5H031AA09
5H031EE01
5H031EE03
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】冷媒の漏れを抑制することができ、軽量で、且つ冷却効率に優れた冷却床部材を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る冷却床部材(100A)は、上方に載置された電池セルを冷却する冷却床部材(100A)であって、金属床下材(101)と、金属床下材(101)に対向配置され、外表面が電池セルと接する平板状金属床板(102)と、を有し、金属床下材(101)と平板状金属床板(102)との間の閉断面空間に冷却液が流れる冷却液流路(104)を設け、閉断面空間には冷却液流路(104)を分割する仕切部材(105)を有する。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に載置された電池セルを冷却する冷却床部材であって、
金属床下材と、
前記金属床下材に対向配置され、外表面が前記電池セルと接する平板状金属床板と、
を有し、
前記金属床下材と前記平板状金属床板との間の閉断面空間に冷却液が流れる冷却液流路を設け、
前記閉断面空間には前記冷却液流路を分割する仕切部材を有する
冷却床部材。
【請求項2】
前記仕切部材は液状樹脂が固形化した固形樹脂であり、
前記冷却液流路は前記固形樹脂により形成される
請求項1に記載の冷却床部材。
【請求項3】
前記仕切部材は粘弾性樹脂である請求項2に記載の冷却床部材。
【請求項4】
前記仕切部材はシート状固形物であり、
前記冷却液流路は前記シート状固形物により形成される
請求項1に記載の冷却床部材。
【請求項5】
前記シート状固形物は固形樹脂である請求項4に記載の冷却床部材。
【請求項6】
前記シート状固形物は粘弾性樹脂である請求項4に記載の冷却床部材。
【請求項7】
前記シート状固形物は前記金属床下材と前記平板状金属床板と同種の金属である請求項4に記載の冷却床部材。
【請求項8】
前記金属床下材と前記平板状金属床板のいずれか一方の前記閉断面空間側は、樹脂が被覆された樹脂被覆金属であり、
被覆された前記樹脂の一部が剥離されて残った前記樹脂被覆金属により形成された前記冷却液流路を設ける
請求項1に記載の冷却床部材。
【請求項9】
被覆された前記樹脂は固形樹脂である請求項8に記載の冷却床部材。
【請求項10】
被覆された前記樹脂は粘弾性樹脂である請求項8に記載の冷却床部材。
【請求項11】
前記金属床下材の外周縁と前記平板状金属床板の外周縁とは水密接合されている請求項1から10のいずれか1項に記載の冷却床部材。
【請求項12】
前記金属床下材と前記平板状金属床板とは鋼材である請求項1から11のいずれか1項に記載の冷却床部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却床部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界中で燃費規制が厳格化され、自動車業界では電動化を推し進められている。電気自動車(Electric Vehicle:EV)及びハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle:HEV)では、航続距離の延長を狙い、大容量且つ急速充電対応のバッテリを搭載するニーズが高まっている。急速充電バッテリ(電池)は利用条件によって自己発熱を生ずるとともに、使用温度範囲が定められている。電池を構成するセルは高温になると内部の化学物質の変化などにより容量の低下が著しくなるため、使用上限温度が規定されている。そのため、電池の温度が上限温度を超えないように電池の冷却システムを有することが多く、現行の多くのEV車及びHEV車では空冷による冷却方法が採用されている。一方で効率よくバッテリ温度上昇を抑える必要があり、大容量化に伴い冷却システムには水冷構造の採用が検討されている。また、自動車の航続距離を伸ばすためには、電池セルの数を多くすると共に冷却システムの重量を低減することが求められる。
【0003】
冷却システムの水冷構造として、例えば特許文献1では、内部に流路を有する2つのプレートを向かい合わせに接合して構成されるパネルが開示されている。2つのプレートは、流路の中心を通る平面で分割された同じ形状をしている。パネル内部に形成された流路に冷媒を流通させて、冷却対象を冷却する。流路はパネル内部を蛇行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成の場合、パネル内部の流路の作成が複雑であり製造コストが掛かる。すなわち、パネル内部の蛇行する流路は、例えばプレートの内面を溝加工することで形成される。また、2つのプレートは同じ形状のため、2つのプレートに対してそれぞれ溝加工が必要となる。プレートは溝加工を行うための厚さが必要となり、パネルの重量が増す。また、流路が形成されていない範囲をろう付で全て接合するが、ろう付が不十分な場合、冷媒(水)が漏れる虞がある。冷媒が漏れた場合、電池セル及び冷却システムを収納するバッテリパック内に水が溜まり、電池セルがバッテリパック内で水没状態となる虞がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、冷媒の漏れを抑制することができ、軽量で、且つ冷却効率に優れた冷却床部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述の課題を解決すべく、冷媒の漏れを抑制し、軽量で、且つ冷却効率に優れた冷却床部材を鋭意検討した。その結果、本発明者らは、金属薄板間に仕切部材(インサート)を挿入し、金属薄板間と仕切部材で形成される空間に冷媒を流すことで、溝加工及びプレス加工等の加工を行わずに、冷媒の漏れを抑制することができ、軽量で、且つ冷却効率に優れた冷却床部材を得ることができることを見出した。
【0008】
本発明は上記の知見に鑑みてなされた。本発明の要旨は以下の手段を採用する。
(1)本発明の一実施形態に係る冷却床部材は、
上方に載置された電池セルを冷却する冷却床部材であって、
金属床下材と、
前記金属床下材に対向配置され、外表面が前記電池セルと接する平板状金属床板と、
を有し、
前記金属床下材と前記平板状金属床板との間の閉断面空間に冷却液が流れる冷却液流路を設け、
前記閉断面空間には前記冷却液流路を分割する仕切部材を有する。
【0009】
上記の構成からなる冷却床部材によれば、金属床下材と平板状金属床板との間の閉断面空間に仕切部材を設ける構造であるので、溝加工及びプレス加工等の加工が不要となる。このような構成より、冷媒の漏れを抑制することができ、また軽量化することができる。さらに、外表面が電池セルと接する金属床板が平板状であるので、電池セルと冷却床部材とを密着させることができ、また電池セルを隙間なく密集して冷却床部材の上面に設置することができるので、効率良く電池セルを冷却することができる。
【0010】
(2)上記(1)において、以下の構成を採用してもよい:
前記仕切部材は液状樹脂が固形化した固形樹脂であり、
前記冷却液流路は前記固形樹脂により形成される。
(3)上記(2)において、以下の構成を採用してもよい:
前記仕切部材は粘弾性樹脂である。
(4)上記(1)において、以下の構成を採用してもよい:
前記仕切部材はシート状固形物であり、
前記冷却液流路は前記シート状固形物により形成される。
(5)上記(4)において、以下の構成を採用してもよい:
前記シート状固形物は固形樹脂である。
(6)上記(4)において、以下の構成を採用してもよい:
前記シート状固形物は粘弾性樹脂である。
(7)上記(4)において、以下の構成を採用してもよい:
前記シート状固形物は前記金属床下材と前記平板状金属床板と同種の金属である。
(8)上記(1)において、以下の構成を採用してもよい:
前記金属床下材と前記平板状金属床板のいずれか一方の前記閉断面空間側は、樹脂が被覆された樹脂被覆金属であり、
被覆された前記樹脂の一部が剥離されて残った前記樹脂被覆金属により形成された前記冷却液水路を設ける。
(9)上記(8)において、以下の構成を採用してもよい:
被覆された前記樹脂は固形樹脂である。
(10)上記(8)において、以下の構成を採用してもよい:
被覆された前記樹脂は粘弾性樹脂である。
(11)上記(1)から(10)のいずれか1項において、以下の構成を採用してもよい:
前記金属床下材の外周縁と前記平板状金属床板の外周縁とは水密接合されている。
(12)上記(1)から(11)のいずれか1項において、以下の構成を採用してもよい:
前記金属床下材と前記平板状金属床板とは鋼材である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、冷媒の漏れを抑制することができ、軽量で、且つ冷却効率に優れた冷却床部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る冷却床部材が適用されるバッテリパックの概略構成の一例を示す分解斜視図である。
【
図2A】同実施形態に係る冷却床部材の概略構成を説明する分解斜視図である。
【
図3A】本発明の第2実施形態に係る冷却床部材の概略構成を説明する分解斜視図である。
【
図4A】本発明の第3実施形態に係る冷却床部材の概略構成を説明する分解斜視図である。
【
図5A】本発明の一実施形態に係る冷却床部材における金属床下材及び平板状金属床板の接合方法の一例を説明する図であり、冷却床部材の断面図である。
【
図5B】本発明の一実施形態に係る冷却床部材における金属床下材及び平板状金属床板の接合方法の一例を説明する図であり、冷却床部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の各実施形態に係る冷却床部材について図面を参照しながら説明する。以下の説明では、各実施形態において共通する構成要素には同一符号を付してそれらの重複説明を省略する場合がある。
【0014】
以下の説明では、平面視における冷却床部材の長手方向をX方向、冷却床部材の幅方向をY方向、冷却床部材の厚さ方向をZ方向とする。
【0015】
図1は、本実施形態に係る冷却床部材100が適用されるバッテリパック1の概略構成の一例を示す分解斜視図である。
図1に示すように、バッテリパック1は主に、上側カバー2と、電池セル3と、冷却床部材100と、下側カバー4と、を備える。上側カバー2は電池セル3を上側から覆う。冷却床部材100の上面に電池セル3が密着して配置される。下側カバー4は冷却床部材100Aと電池セル3を下側から格納する。
図1においては、冷却床部材100の長手方向(X方向)、幅方向(Y方向)、厚さ方向(Z方向)は、それぞれバッテリパック1の長手方向、幅方向、厚さ方向と同じ方向である。
図1において、Z方向プラス側が上側、Z方向マイナス側が下側である。
【0016】
図1においては、X方向に2つの電池セル3を配置することが図示されているが、電池セル3の数はX方向に2つに限られるものではない。例えば、電池セル3は、X方向に3つ以上配置してもよく、Y方向に2つ以上配置してもよい。電池セル3は、1つであってもよい。
【0017】
[第1実施形態]
図2A及び
図2Bを参照して、第1実施形態に係る冷却床部材100Aについて説明する。
図2Aは、同実施形態に係る冷却床部材の概略構成を説明する分解斜視図である。
図2Bは、
図2Aの矢視A-A’で見た場合の断面図である。
冷却床部材100Aの上方に電池セル3が載置される。冷却床部材100Aは、金属床下材101と、平板状金属床板102と、を有する。平板状金属床板102は金属床下材101に対向配置され、平板状金属床板102の外表面が電池セル3と接する。冷却床部材100Aは、金属床下材101と平板状金属床板102との間の閉断面空間103に冷却液が流れる冷却液流路104を設ける。冷却床部材100Aは、閉断面空間103に冷却液流路104を分割する仕切部材(インサート)105を有する。
【0018】
金属床下材101は、例えばアルミニウム合金材、鋼材である。金属床下材101にアルミニウム合金材を使用した場合、鋼材に比べて軽量ではあるものの、板厚を厚くする必要があるため、バッテリパック全体をコンパクトに纏めることができない。またアルミニウム合金材は鋼材に比べて高価である。このような観点より、金属床下材101は、鋼材が好ましい。金属床下材101は、路面干渉性に優れ、且つ薄肉化でスペースを有効に確保できる高強度鋼材がより好ましい。高強度鋼材は、590MPa級以上の鋼材である。
金属床下材101の厚さは0.5mmから3.2mmである。軽量化及び強度の観点からは0.8から1.6mmが好ましい。
【0019】
平板状金属床板102は特に冷却性能が求められる。平板状金属床板102は、例えばアルミニウム合金材、鋼材である。平板状金属床板102にアルミニウム合金材を使用した場合、鋼材に比べて軽量ではあるものの、板厚を厚くする必要があるため、バッテリパック全体をコンパクトに纏めることができない。またアルミニウム合金材は鋼材に比べて高価である。このような観点より、平板状金属床板102は、鋼材が好ましい。平板状金属床板102は、冷却性能に優れ、且つ薄肉化でスペースを有効に確保できる高強度鋼材がより好ましい。
平板状金属床板102の厚さは薄肉が望ましいが、振動等からの部品接触により損傷を受けるので、0.2mmから2.6mmである。冷却性能、軽量化及び強度の観点から、平板状金属床板102の厚さは0.4mmから1.0mmが好ましい。
【0020】
平板状金属床板102の外表面は平板状、すなわち凹凸形状ではない。電池セル3と接する平板状金属床板102の外表面が平板状であるので、電池セル3と冷却床部材100Aとを全面接触するように密着させることができる。また平板状金属床板102の外表面が平板状であるので、電池セル3の配置に制約が生じない。すなわち、電池セル3を隙間なく密集して冷却床部材100Aの上面に設置することができる。平板状金属床板102の外表面が平板状であることにより、効率良く電池セル3を冷却することができる。
【0021】
金属床下材101と平板状金属床板102は、耐食性の観点から同じ金属であることが好ましい。金属床下材101と平板状金属床板102を同じ金属とすることで、金属床下材101と平板状金属床板102との接続部に生じる異種金属接触腐食による劣化、又は異種金属溶融接合による接合強度低下を回避することができる。
【0022】
電池セル3は冷却床部材100Aの上方に載置される。電池セル3は、例えばリチウムイオン電池である。電池セル3は直方体状である。複数の電池セル3がX方向に並んでもよい。複数の電池セル3がY方向に並んでもよい。複数の電池セル3がZ方向に積み重ねられてもよい。なお、電池セル3は冷却床部材100Aの上方に載置されるが、電池セル3が、冷却床部材100Aの上方に直接、載置される場合だけでない。例えば、電池セル3を束ねて収納するバッテリケース(図示なし)を冷却床部材100Aの上方に載置する場合も含まれる。この場合、バッテリケースが、電池セル3から冷却床部材100Aに熱伝導が可能な程度の熱伝導率や厚さなどを備えていることが好ましい。
【0023】
金属床下材101と平板状金属床板102とを向かい合わせにした状態で、金属床下材101の外周縁と平板状金属床板102の外周縁とが接合されることで、冷却床部材100Aの内部に閉断面空間103が形成される。
図2Aでは、金属床下材101と平板状金属床板102とが接合されていない状態を示す。
図2Bでは、金属床下材101と平板状金属床板102とが接合されている状態を示す。
【0024】
冷却液流路104は、金属床下材101と平板状金属床板102との間の閉断面空間103に設けられる。冷却液流路104には冷媒(冷却液)が流れる。
冷却液流路104の高さ(Z方向の長さ)が長い場合には多くの冷媒を流すことができるが、軽量化及び冷却効率の観点から1mmから10mmである。より好ましくは、冷却液流路104の高さは1mmから5mmである。
【0025】
閉断面空間103には、冷媒を供給する供給管(図示なし)と、冷媒を排水する排水管(図示なし)が設けられる。供給管から供給される冷媒が冷却液流路104を流れて排水管から排水され、冷媒が冷却装置(図示なし)により冷却された後に再び供給管から冷却液流路104に供給される。
【0026】
仕切部材105は、閉断面空間103の冷却液流路104を分割する。仕切部材105を配置することで、冷媒の流れる向きを揃えるように制御できる。仕切部材105を適切に配置することで、効率良く電池セル3を冷却することができる。
【0027】
上記の構成からなる冷却床部材100Aによれば、金属床下材101と平板状金属床板102との間の閉断面空間103に仕切部材105を設ける構造であるので、溝加工及びプレス加工等の加工が不要となる。これにより、冷媒の漏れを抑制することができ、また軽量化することができる。さらに、外表面が電池セル3と接する金属床板が平板状であるので、電池セル3と冷却床部材100Aとを密着させることができ、また電池セル3を隙間なく密集して冷却床部材100Aの上面に設置することができるので、効率良く電池セルを冷却することができる。
【0028】
本実施形態では、
図2Aに示すように、冷却液流路104が蛇行するように仕切部材105を配置している。蛇行するように配置された仕切部材105に沿って冷媒が流れることで、より効率良く電池セル3を冷却することができる。
【0029】
図2A及び2Bに示すように、本実施形態では、冷却液流路104はY方向が長手方向となるように蛇行しているが、蛇行する方向はこれに限らない。例えば、冷却液流路104は、X方向が長手方向となるように蛇行してもよい。さらには、冷却液流路104が蛇行しなくてもよい。
【0030】
仕切部材105は液状樹脂が固形化した固形樹脂106であってもよい。この場合、冷却液流路104は固形樹脂106により形成される。液状樹脂とは、ジェル状の樹脂であり、例えばシーラント剤である。
【0031】
液状樹脂を、例えば金属床下材101と平板状金属床板102の少なくともどちらか一方に塗布することで、閉断面空間103に冷却液流路104が形成される。
液状樹脂は粘着性を有するので、金属床下材101と平板状金属床板102の接合、もしくは金属床下材101と平板状金属床板102のどちらか一方への固定に好適である。
液状樹脂は、例えばロボットに把持させたアプリケーションガンを用いて塗布することで、任意の流路を配置できる。
固形樹脂を用いる場合、閉断面空間103に溶接個所がないことから、溶接部近傍に形成されるピンホール等の溶接欠陥からの冷媒の漏れを回避することができる。
【0032】
仕切部材105は粘弾性樹脂107であってもよい。粘弾性樹脂107とは、例えばゴム状の樹脂である。
仕切部材105に粘弾性樹脂107を用いる場合、金属床下材101及び平板状金属床板102と粘弾性樹脂107との線膨張係数が異なるため、温度変化に対する膨張収縮時に接触界面で発生するひずみを緩和できる。このため、安定した冷却液流路104を維持できる。さらに、金属床下材101及び平板状金属床板102の面外変形が少なく、金属床下材101及び平板状金属床板102の形状を平坦に維持しやすい。
粘弾性樹脂107は、例えばロボットに把持させたアプリケーションガンを用いて塗布することで、任意の流路を配置できる。
固形樹脂を用いる場合と同様に、仕切部材105に粘弾性樹脂107を用いる場合、閉断面空間103に溶接個所がないことから、溶接部近傍に形成されるピンホール等の溶接欠陥からの冷媒の漏れを回避することができる。
【0033】
図5A及び
図5Bは、本実施形態に係る冷却床部材100Aにおける金属床下材101と平板状金属床板102との接合方法の一例を説明する図であり、冷却床部材100Aの断面図である。
金属床下材101の外周縁101aと平板状金属床板102の外周縁102aとは水密接合130される。水密接合とは、水が密閉され、水圧がかかっても漏れないようになっている接合である。金属床下材101の外周縁101aと平板状金属床板102の外周縁102aとが水密接合130されることにより、冷媒が冷却床部材100Aから漏れるのを防ぐ。
【0034】
水密接合130は、例えば連続溶融接合、連続シール接合である。金属床下材101の外周縁101aと平板状金属床板102の外周縁102aとを、連続的に接合する。連続溶融接合とは、抵抗シーム溶接、レーザ溶接などである。連続シール接合とは、巻き締め、ハゼ折りなどのシーミング加工による接合である。
【0035】
供給管及び排水管が冷却床部材100Aに接続される部分と金属床下材101の外周縁101a及び平板状金属床板102の外周縁102aとが水密接合される。
【0036】
図5Aは、金属床下材101の外周縁101aと平板状金属床板102の外周縁102aとが溶接されている状態を示す。
図5Bは、金属床下材101の外周縁101aと平板状金属床板102の外周縁102aとがハゼ折りされている状態を示す。金属床下材101の外周縁101aと平板状金属床板102の外周縁102aとは、カシメ加工されてもよい。
【0037】
金属床下材101の外周縁101aと平板状金属床板102の外周縁102aとが水密接合130されることによって、冷媒が漏れることを防ぎ、冷却床部材100Aの上に載置される電池セル3が水没することを回避できる。たとえ冷媒が漏れた場合でも、連続溶融接合若しくは連続シール接合しているので、金属床下材101の外周縁101aと平板状金属床板102の外周縁102aの補修だけで冷媒の漏れを改善できる。
【0038】
[第2実施形態]
図3A及び
図3Bを参照して、第2実施形態に係る冷却床部材100Bについて説明する。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
本実施形態では、仕切部材がシート状固形物である点において、第1実施形態と相違する。
【0039】
図3Aは、本実施形態に係る冷却床部材100Bの概略構成を説明する分解斜視図である。
図3Bは、
図3Aの矢視B-B’で見た場合の断面図である。
図3Aでは、金属床下材101と平板状金属床板102とが接合されていない状態を示す。
図3Bでは、金属床下材101と平板状金属床板102とが接合されている状態を示す。
図3Aに示すように、仕切部材105はシート状固形物110である。本実施形態は、金属床下材101と平板状金属床板102との間の閉断面空間103に、シート状固形物110である仕切部材105を設ける構造である。
シート状固形物110は、例えばプレス加工で作成することができる。
【0040】
本実施形態に係る仕切部材105は、シート状であるので、所望する冷却液流路104の形状に合わせて作成することが容易であり、レイアウト設計自由度が高い。さらに、流路の形状を目視で確認することが容易である。
【0041】
本実施形態では、
図3A及び
図3Bに示すように、シート状固形物110がY方向に沿うように配置されているが、シート状固形物110の配置する方向はこれに限らない。例えば、シート状固形物110がX方向に沿うように配置してもよい。また、第1実施形態のように、冷却液流路104が蛇行するようにシート状固形物110を配置してもよい。
このように配置されたシート状固形物110に沿って冷媒が流れることで、より効率良く電池セル3を冷却することができる。
【0042】
シート状固形物110は、固形樹脂111であってもよい。固形樹脂111は、例えば硬質樹脂であり、具体的には例えばエポキシ樹脂である。
固形樹脂111を用いる場合、圧縮強度が高いため、積載される電池セル3の重量による閉断面空間103の変形を回避することができる。
固形樹脂111を用いる場合、閉断面空間103に溶接個所がないことから、溶接部近傍に形成されるピンホール等の溶接欠陥からの冷媒の漏れを回避することができる。
【0043】
シート状固形物110は、粘弾性樹脂112であってもよい。粘弾性樹脂112は、例えば塩化ビニル樹脂である。
粘弾性樹脂112を用いる場合、金属床下材101及び平板状金属床板102と粘弾性樹脂112との線膨張係数が異なるため、温度変化に対する膨張収縮時に接触界面で発生するひずみを緩和できる。このため、安定した冷却液流路104を維持できる。さらに、金属床下材101及び平板状金属床板102の面外変形が少なく、金属床下材101及び平板状金属床板102の形状を平坦に維持しやすい。
固形樹脂111を用いる場合と同様に、粘弾性樹脂112を用いる場合、閉断面空間103に溶接個所がないことから、溶接部近傍に形成されるピンホール等の溶接欠陥からの冷媒の漏れを回避することができる。
【0044】
シート状固形物110は、金属床下材101と平板状金属床板102と同種の金属113であってもよい。これにより、シート状固形物110と金属床下材101及び平板状金属床板102との接続部に生じる異種金属接触腐食による劣化、又は異種金属溶融接合による接合強度低下を回避することができる。
【0045】
[第3実施形態]
図4A及び
図4Bを参照して、第3実施形態に係る冷却床部材100Cについて説明する。第3実施形態において、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
本実施形態では、仕切部材が、樹脂が被覆された樹脂被覆金属である点において、第1実施形態と相違する。
【0046】
図4Aは、本実施形態に係る冷却床部材の概略構成を説明する分解斜視図である。
図4Bは、
図4Aの矢視C-C’で見た場合の断面図である。
図4Aでは、金属床下材101と平板状金属床板102とが接合されていない状態を示す。
図4Bでは、金属床下材101と平板状金属床板102とが接合されている状態を示す。
本実施形態では、金属床下材101と平板状金属床板102のいずれか一方の閉断面空間103側は、樹脂が被覆された樹脂被覆金属120である。
【0047】
本実施形態では、被覆された樹脂(被覆樹脂)の一部を剥離することで、冷却液流路104を形成する。
本実施形態では、金属床下材101の閉断面空間103側の面(金属床下材101の上面)に樹脂が被覆される。
図4Aの(a)は、金属床下材101の上面に樹脂が被覆された状態を示し、被覆樹脂を剥離する前の状態である。
図4Aの(b)は被覆樹脂を一部剥離した状態を示す。
図4Aの(b)には、一部剥離された被覆樹脂123が示されている。
図4Aの(a)で示すように、樹脂は金属床下材101の上面において全体的に被覆されるが、平板状金属床板102の外周縁と接合する部分に対応する金属床下材101の外周縁は被覆されない。
図4Aの(b)で示すように、被覆樹脂の一部を剥離すると、剥離されなかった被覆樹脂が金属床下材101の上面に残る。この剥離されずに残った被覆樹脂により、冷却液流路104が形成される。
【0048】
樹脂は、予め金属床下材101に被覆される。樹脂を金属床下材101に被覆する方法は、例えば熱圧着もしくは接着で被覆する。もしくは、スリットコートやディップコートで被覆する。
【0049】
被覆樹脂の厚さは、1mmから7mmである。水路形状や必要水量によるが成形性の観点から、被覆樹脂の厚さは1mmから5mmが好ましい。より好ましくは、被覆樹脂の厚さは3mmである。
被覆樹脂は、例えばカッター、抜き加工、又はレーザ加工で剥離する。
【0050】
樹脂被覆金属120は、所望する冷却液流路104の形状に合わせて被覆樹脂を剥離することが容易であり、レイアウト設計自由度が高い。さらに、流路の形状を目視で確認することが容易である。
被覆樹脂は、金属製コイル若しくは金属製シートに被覆されて提供できる。このため、冷却液流路104の製造工程で脱落する可能性が低い。
【0051】
本実施形態では、
図4A及び
図4Bに示すように、樹脂被覆金属120がY方向に沿うように配置されているが、樹脂被覆金属120の配置する方向はこれに限らない。例えば、樹脂被覆金属120がX方向に沿うように配置してもよい。また、第1実施形態のように、冷却液流路104が蛇行するように樹脂被覆金属120を配置してもよい。
このように配置された樹脂被覆金属120に沿って冷媒が流れることで、より効率良く電池セル3を冷却することができる。
【0052】
被覆樹脂は、固形樹脂121であってもよい。固形樹脂121は、例えば硬質樹脂であり、具体的には例えばエポキシ樹脂である。
固形樹脂121を用いる場合、圧縮強度が高いため、積載される電池セル3の重量による閉断面空間103の変形を回避することができる。
固形樹脂121を用いる場合、閉断面空間103に溶接個所がないことから、溶接部近傍に形成されるピンホール等の溶接欠陥からの冷媒の漏れを回避することができる。
【0053】
被覆樹脂は、粘弾性樹脂122であってもよい。粘弾性樹脂122は、例えば塩化ビニル樹脂である。
粘弾性樹脂122を用いる場合、金属床下材101及び平板状金属床板102と粘弾性樹脂112との線膨張係数が異なるため、温度変化に対する膨張収縮時に接触界面で発生するひずみを緩和できる。このため、安定した冷却液流路104を維持できる。さらに、金属床下材101及び平板状金属床板102の面外変形が少なく、金属床下材101及び平板状金属床板102の形状を平坦に維持しやすい。
固形樹脂121を用いる場合と同様に、粘弾性樹脂122を用いる場合、閉断面空間103に溶接個所がないことから、溶接部近傍に形成されるピンホール等の溶接欠陥からの冷媒の漏れを回避することができる。
【0054】
上述の各実施形態で説明した冷却床部材100A、100B、100Cは、例えば電気自動車、ハイブリッド自動車に適用される。
【0055】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲が上記実施形態のみに限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0056】
例えば、上述の各実施形態に係る冷却床部材は、
図1で示すように、下側カバー4と電池セル3との間に配置されるが、複数の電池セル3がZ方向に積み重ねられる場合には、各電池セル3の間に配置してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 バッテリパック
2 上側カバー
3 電池セル
4 下側カバー
100、100A、100B、100C 冷却床部材
101 金属床下材
101a、102a 外周縁
102 平板状金属床板
103 閉断面空間
104 冷却液流路
105 仕切部材(インサート)
106、111、121 固形樹脂
107、112、122 粘弾性樹脂
110 シート状固形物
120 樹脂被覆金属
130 水密接合