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特開2022-162847摩擦攪拌接合用温度・荷重計測方法、及びこれに用いる摩擦攪拌接合用計測装置
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  • 特開-摩擦攪拌接合用温度・荷重計測方法、及びこれに用いる摩擦攪拌接合用計測装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162847
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】摩擦攪拌接合用温度・荷重計測方法、及びこれに用いる摩擦攪拌接合用計測装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
B23K20/12 320
B23K20/12 340
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067878
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】509311643
【氏名又は名称】株式会社山本金属製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100115200
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修之
(72)【発明者】
【氏名】山本 憲吾
(72)【発明者】
【氏名】榎本 正敏
(72)【発明者】
【氏名】村上 浩二
(72)【発明者】
【氏名】松田 亮
(72)【発明者】
【氏名】鹽津 陵雅
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167BG11
4E167BG16
(57)【要約】
【課題】本発明は、摩擦攪拌接合の実加工中の温度・荷重の経時変化を同時かつリアルタイムに計測し得る摩擦攪拌接合用温度・荷重計測方法、及びこれに用いる摩擦攪拌接合用計測装置の提供を目的としている。
【解決手段】本発明は、摩擦攪拌接合における被接合部材の接合中の温度及び荷重をリアルタイムに計測する摩擦攪拌接合用温度・荷重計測方法であって、摩擦攪拌接合装置の主軸に連結するツールホルダが把持する回転ツールから離隔する位置に装着した電気抵抗ひずみゲージの電気抵抗変化を荷重信号として出力し、前記ツールホルダが把持する回転ツール内の熱電対の起電力を温度信号として出力し、前記電気抵抗変化の荷重信号と前記起電力の温度信号とを同一時間軸でリアルタイムに出力する。前記荷重信号は、電気抵抗ひずみゲージからの出力電圧を線形的に動力変換して荷重信号として出力し、前記熱電対からの出力信号とを同時に送信する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦攪拌接合における被接合部材の接合中の温度及び荷重をリアルタイムに計測する摩擦攪拌接合用温度・荷重計測方法。
【請求項2】
摩擦攪拌接合装置の主軸に連結するツールホルダが把持する回転ツールから離れた位置に装着した電気抵抗ひずみゲージの電気抵抗変化を荷重信号として出力し、前記ツールホルダが把持する回転ツール内の熱電対の起電力を温度信号として出力し、前記電気抵抗変化の荷重信号と前記起電力の温度信号とを同一時間軸でリアルタイムに出力する、請求項1に記載の摩擦攪拌接合用温度・荷重計測方法。
【請求項3】
前記荷重信号は、電気抵抗ひずみゲージからの出力電圧を線形的に動力変換して荷重信号として出力し、前記熱電対からの出力信号とを同時に送信する、請求項2に記載の摩擦攪拌接合用温度・荷重計測方法。
【請求項4】
摩擦攪拌接合における被接合部材の接合中の温度及び荷重をリアルタイムに計測する摩擦攪拌用計測装置であって、該摩擦攪拌用計測装置は、摩擦攪拌接合装置本体の主軸と連結して軸回転し、先端で回転ツールを把持するツールホルダを備え、
該ツールホルダは、接合時に被接合部材に当接する回転ツール内に設けた軸方向のチャンネルに配設されて起電力を出力する熱電対と、前記主軸との連結部を除く回転ツールから離隔したツールホルダの外周壁の位置に装着されて該ツールホルダの変形を電気抵抗値の変化として出力する電気抵抗ひずみゲージと、前記熱電対から出力された起電力及び電気抵抗ひずみゲージから出力された電気抵抗変化を受信して、それぞれ温度情報及び荷重情報のデジタル信号として出力する電子基板と、を備える摩擦攪拌用計測装置。
【請求項5】
前記電子基板から出力された前記温度情報及び荷重情報のデジタル信号を同時に送信する送信手段と、該送信手段から送信された温度情報及び荷重情報を受信して同一時間軸で表示する表示手段と、を備える請求項4に記載の摩擦攪拌用計測装置。
【請求項6】
前記電気抵抗ひずみゲージは、ツールホルダの外周壁で軸方向に沿った2枚一対の圧縮又は引張ひずみを検出する電気抵抗ひずみゲージRg1,Rg3と、これに対して略180°位相をずらした位置でツールホルダの外周壁で軸方向に沿った2枚一対の引張又は圧縮ひずみ検出する電気抵抗ひずみゲージRg2,Rg4と、によるブリッジ回路を形成することで曲げひずみを計測する請求項4又は5に記載の摩擦攪拌用計測装置。
【請求項7】
前記電気抵抗ひずみゲージは、ツールホルダの外周壁で軸方向に沿った電気抵抗ひずみゲージRg1及び該電気抵抗ひずみゲージに対して直交する方向に沿った電気抵抗ひずみゲージRg2と、同じ位置関係の電気抵抗ひずみゲージRg3、Rg4との2対装着してブリッジ回路を形成することでツールホルダに対する引張ひずみ及び圧縮ひずみを計測する、請求項4又は5に記載の摩擦攪拌用計測装置。
【請求項8】
前記電気抵抗ひずみゲージは、ツールホルダの外周壁で一方の軸回転方向に沿って又は所定角度傾斜する方向に沿って互いに逆向きの一対をなす電気抵抗ひずみゲージRg1、Rg2と、ツールホルダの外周壁で反対の軸回転方向に沿って又は所定角度傾斜する方向に沿って互いに逆向きの一対をなす電気抵抗ひずみゲージRg3、Rg4との2対装着してブリッジ回路を形成することでツールホルダに対するねじりひずみを計測する、請求項4又は5に記載の摩擦攪拌用計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦攪拌接合の実加工中の温度・荷重の経時変化を同時かつリアルタイムに計測し得る摩擦攪拌接合用温度・荷重計測方法、及びこれに用いる摩擦攪拌接合用計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、接合技術の1つとして摩擦熱によって被接合部材の変形抵抗を低下させたうえで攪拌(塑性流動)し、接合を達成する摩擦攪拌接合(以下、「FSW」とも称する)が発達している。この摩擦攪拌接合は、接合部を溶融させる通常の溶接とは異なり、固相での接合のため接合部の組織が微細化し優れた機械的性質を有するため特に高精度な接合や異材接合等において実用化されている。
【0003】
摩擦攪拌接合の接合条件は概ね、回転ツールの荷重と、回転ツールの回転速度と、回転ツールの移動速度と、回転ツールの前進角と、で構成され、当該各パラメータを調整することで目的の接合を達成する。摩擦攪拌接合では攪拌による接合部の適正な塑性流動の制御が重要であり、接合条件を検討する際、被接合部材が接合に適した変形抵抗下に置かれた状態になっているかを検出することである。
【0004】
被接合部材の塑性流動を制御するための重要な条件として温度と荷重とがあり、出願人はこのうち温度について接合中の回転ツール(プローブ)の温度変化をリアルタイムに検知するツールホルダ型の温度計測装置を既に開発・提供している(特許文献1)。これにより、適正な接合に直接的に影響する接合部近傍の入熱を検知し、接合部の変形抵抗の適正な低下を推定し、高精度な塑性流動の制御をリアルタイムに行うことが可能になった。
【0005】
一方、上述するように被接合部材の塑性流動制御には荷重条件も重要であることがわかっているが、従来は接合後に事後的に摩擦攪拌接合装置等が備える動力計やロードセル(荷重センサ)で計測・検証していた(特許文献2)。しかしながら、接合部の塑性流動を高精度に制御するためには荷重においても接合中にリアルタイム検出・分析する必要があり、出願人は上記特許文献1に例示するツールホルダ型の温度計測装置で接合中の回転ツール先端の温度を計測する一方で、摩擦攪拌接合装置が備える動力計やロードセルで荷重を計測し、温度・荷重それぞれの計測データから曲げ荷重、一軸荷重、捩じり力を外部PCにおいて個別のソフトウェアで評価していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2016/111336号公報
【特許文献2】特開2009-269077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の出願人のように一歩進んで温度及び荷重の両者を計測する場合であっても上述するように温度・荷重それぞれの計測を個別のソフトウェアで実施する場合、温度と荷重との相関を接合中にリアルタイムで詳細に評価することは実質的に困難であった。このことは温度及び荷重の相関を踏まえた適正な接合条件の判定や接合部の異常検知を自動で行う技術の開発を難しくしていた。また、摩擦攪拌接合装置が備えているロードセル等荷重センサの多くは有線式が採用されており、取り回しが面倒なためラボレベルでの荷重計測ツールとして適用することは可能であっても、量産現場での適用は困難であった。
【0008】
そこで本発明は、上記課題を解決すべく創作されたものであり、摩擦攪拌接合の実加工中の温度・荷重を同時に計測して温度と荷重の経時変化から被接合部材側の異常・欠陥とツール側の異常をリアルタイムに高精度・高感度検出できる摩擦攪拌接合用温度・荷重計測方法、及びこれに用いる摩擦攪拌接合用計測装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決すべく提供される本発明は、摩擦攪拌接合における被接合部材の接合中の温度及び荷重をリアルタイムに計測する摩擦攪拌接合用温度・荷重計測方法を提供する。
【0010】
具体的に本摩擦攪拌接合用温度・荷重計測方法では、摩擦攪拌接合装置の主軸に連結するツールホルダが把持する回転ツールから離隔する位置に装着した電気抵抗ひずみゲージの電気抵抗変化を荷重信号として出力し、前記ツールホルダが把持する回転ツール内の熱電対の起電力を温度信号として出力し、前記電気抵抗変化の荷重信号と前記起電力の温度信号とを同一時間軸でリアルタイムに出力する。
【0011】
また、前記荷重信号は、電気抵抗ひずみゲージからの出力電圧を線形的に動力変換して荷重信号として出力し、前記熱電対からの出力信号とを同時に送信する、ことができる。
【0012】
本発明では、従来、摩擦攪拌接合の実加工中に計測していた回転ツール内の温度に加えてツールホルダの主軸側に貼り付けたひずみゲージから算出される荷重をも同時出力できるようにしている。したがって、温度と荷重の経時変化から被接合部材側の異常・欠陥をリアルタイムに検出することができる。
【0013】
まず、摩擦攪拌接合中の水平荷重に注目すると図10右欄の数式 F=TA/σ からもわかるように所定温度の時の限界荷重Fは、その温度の時のプローブのせん断変形抵抗に依存するため回転ツールの温度により決定される。すなわち、回転ツールが破断する時の水平荷重(=限界荷重)は回転ツールの温度によって決定される。したがって、本発明の摩擦攪拌接合用温度・荷重計測方法を用いて、接合中の温度をリアルタイムに計測すれば、各時刻で高精度かつ安全な接合速度の限界値をリアルタイムに算出することができる。
【0014】
さらに、詳細には後述するが回転ツールの負荷時・除荷時ともに電気抵抗ひずみゲージの電圧出力を線形的に力に変換できることがわかり、被接合部材の接合異常 (空洞の形成・空孔の巻込み等) に対する感度については、温度よりも力が敏感であることがわかったため、接合中の電気抵抗ひずみゲージから算出される水平荷重を計測すれば敏感かつ高精度な異常検知をリアルタイムに実行することができる。したがって、本発明の摩擦攪拌接合用温度・荷重計測方法を用いて温度と荷重とを計測することで最も高速かつ安全に摩擦攪拌接合するための条件を得ることができる。
【0015】
また本発明は上記摩擦攪拌接合用温度・荷重計測方法に用いる具体的な摩擦攪拌用計測装置も提供している。詳細には摩擦攪拌接合における被接合部材の接合中の温度及び荷重をリアルタイムに計測する摩擦攪拌用計測装置であって、該摩擦攪拌用計測装置は、摩擦攪拌接合装置本体の主軸と連結して軸回転し、先端で回転ツールを把持するツールホルダを備え、該ツールホルダは、接合時に被接合部材に当接する回転ツール内に設けた軸方向のチャンネルに配設されて起電力を出力する熱電対と、前記主軸との連結部を除く回転ツールから離隔したツールホルダの外周壁(後述する被覆部6内の収容部5の表面等)の位置に装着されて該ツールホルダの変形を電気抵抗値の変化として出力する電気抵抗ひずみゲージと、前記熱電対から出力された起電力及び電気抵抗ひずみゲージから出力された電気抵抗変化を受信して、それぞれ温度情報及び荷重情報のデジタル信号として出力する電子基板と、を備える。
【0016】
本摩擦攪拌用計測装置では、回転ツール内に設けた1つ又は複数のチャンネル内の熱電対で温度計測していたことに加えて、回転ツールから離れたツールホルダの外周側部に電気抵抗ひずみゲージを貼り付けてツールホルダの変形を電気抵抗値の変化として検出し、荷重を算出する構成を採用している。
【0017】
また、電気抵抗ひずみゲージを貼付ける位置(起歪部)は、水平荷重(曲げ力)を計測する場合はモーメントが大きくなるように加工点(回転ツール)から離隔する部分、好ましくは最も離隔する部分 (主軸と連結する把持部分7を除く) を起歪部とするのが有利である。ここでは主軸との連結部分以外で回転ツールから離隔したツールホルダの外周壁の位置に電気抵抗ひずみゲージを装着することとしている。また、摩擦熱による温度上昇は、電気抵抗ひずみゲージの出力値のドリフトを招くため、これを防止する視点からも加工点から離れているのが有利である。なお、上下方向(z方向)の引張・圧縮荷重(一軸荷重)や、ねじり力の検出については、主軸との連結部や回転ツールの把持部分以外であれば、電気抵抗ひずみゲージの感度はその装着位置はあまり影響されないこともわかっている。
【0018】
また上記摩擦攪拌用計測装置は、前記電子基板から出力された前記温度情報及び荷重情報のデジタル信号を同時に送信する送信手段と、該送信手段から送信された温度情報及び荷重情報を受信して同一時間軸で表示する表示手段と、を備えることが好ましい。
【0019】
従来、温度と荷重との計測を個別のソフトウェアで実施していたが、本摩擦攪拌用計測装置では、温度と荷重とを同一のツールホルダ型の計測装置で計測して、同時にデジタル情報として無線通信等を介して送信し、信号を外部PC等のディスプレイに同一時間軸で表示することとしている。
【0020】
また、前記電気抵抗ひずみゲージは代表例として、前記電気抵抗ひずみゲージは、ツールホルダの外周壁で軸方向に沿った2枚一対の圧縮又は引張ひずみを検出する電気抵抗ひずみゲージRg1,Rg3と、これに対して略180°位相をずらした位置でツールホルダの外周壁で軸方向に沿った2枚一対の引張又は圧縮ひずみ検出する電気抵抗ひずみゲージRg2,Rg4と、によるブリッジ回路を形成することで曲げひずみを計測する。を計測する。
【0021】
すなわち、電気ひずみゲージは出力電位差が増幅し感度が向上すること及び温度補償の観点から2枚1対のゲージを2対配列した所謂4アクティブ法と称するブリッジ回路を形成することが好ましい。水平荷重(曲げ力)を計測する場合、曲げ力によって軸方向の引張又は圧縮のひずみが作用するツールホルダの外周壁を軸方向に沿ってそれぞれ2枚のひずみゲージRg1、Rg3を貼り付け、径方向反対側(略180°位相をずらせた位置)でひずみゲージRg1、Rg3とは逆の圧縮又は引張のひずみRg2、Rg4を貼り付け、温度変化によって発生した引張及び圧縮ひずみのいずれも計測し、その後、実効値 (RMS) 化された電圧を出力する。このひずみゲージ配列によれば、曲げ力が作用し、引張ひずみと反対側の圧縮ひずみとを計測するため出力が4倍になり、感度を上昇することができる。
【0022】
また、前記電気抵抗ひずみゲージは他の代表例として、ツールホルダの外周壁で軸方向に沿った電気抵抗ひずみゲージRg1及び該電気抵抗ひずみゲージに対して直交する方向に沿った電気抵抗ひずみゲージRg2と、同じ位置関係の電気抵抗ひずみゲージRg3、Rg4との2対装着してブリッジ回路を形成することでツールホルダに対する引張ひずみ及び圧縮ひずみを計測する。
【0023】
すなわち、一軸応力(一様な引張、圧縮力)を所謂4アクティブ法のブリッジ回路を形成して計測する場合、引張、圧縮力が作用する方向及びこれと直交する方向に沿って一対2枚のひずみゲージRg1、Rg2を合計2対枚(Rg1、Rg2、Rg3、Rg4)を貼り付けることが好ましい。
【0024】
前記電気抵抗ひずみゲージのさらなる他の代表例として、記電気抵抗ひずみゲージは、ツールホルダの外周壁で一方の軸回転方向に沿って又は所定角度傾斜する方向に沿って互いに逆向きの一対をなす電気抵抗ひずみゲージRg1、Rg2と、ツールホルダの外周壁で反対の軸回転方向に沿って又は所定角度傾斜する方向に沿って互いに逆向きの一対をなす電気抵抗ひずみゲージRg3、Rg4との2対装着してブリッジ回路を形成することでツールホルダに対するねじりひずみを計測する。
【0025】
ねじり力を所謂4アクティブ法のブリッジ回路を形成して計測する場合、一方の軸回転方向に対してそれぞれ好ましくは+略45°、-略45°に傾斜し互いに逆方向に向いた一対2枚のひずみゲージRg1、Rg2を貼り付け、他方の軸回転方向に対してもそれぞれ好ましくは+略45°、-略45°に傾斜し互いに逆方向に向いた一対2枚のひずみゲージRg3、Rg4を貼り付けている。
【発明の効果】
【0026】
本発明の摩擦攪拌接合用温度・荷重計測方法およびこれに用いる摩擦攪拌用計測装置によれば、被接合部材の塑性流動を適切に制御するために温度・荷重を計測することができ、汎用の摩擦攪拌接合装置にツールホルダ型の本摩擦攪拌用計測装置を代替装着するだけで温度と荷重の経時変化から被接合部材側の異常・欠陥とツール側の異常をリアルタイムに高精度・高感度検出でき、接合効率が向上し得る接合条件の探索も容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】一般的な摩擦攪拌接合装置本体の主要構成を概略を例示した斜視図である。
図2】(a)にツールホルダで回転ツールを把持する前の部品写真図、(b)にその組立写真図を例示している。
図3図2のツールホルダを主軸に連結した状態で被覆部を取り外した電子部品の収容部の外観を示す斜視写真図である。
図4】主軸に連結したツールホルダと外部PCとで構成される本発明の摩擦攪拌接合用計測装置を模式的に示した概要図である。
図5】(a)に水平荷重(曲げ力)計測時の配列例としての4アクティブゲージ法の概念図、(b)にその回路図を示している。
図6】(a)に一軸荷重計測時の配列例としての4アクティブゲージ法(直交配置法)の概念図、(b)にその回路図を示している。
図7】(a)にねじり力計測時の配列例委としての4アクティブゲージ法(ねじりひずみ測定法)の概念図、(b)にその回路図を示している。
図8】(a)はひずみと力との関係(校正曲線)を示すグラフ図、(b)は(a)の校正曲線を使用して変換した荷重値の実加工中の時系列データを示すグラフ図である。
図9】(a)は実加工中の回転ツールの温度の時系列変化、 (b)は同実加工中の回転ツールの力の時系列変化を示すグラフ図である。
図10】回転ツールの移動速度(接合速度)と水平荷重との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
《摩擦攪拌接合装置の概説》
図1は、本発明の摩擦攪拌接合装置を説明するにあたって一般的な摩擦攪拌接合装置本体A(以下、「装置本体A」とも称する)を説明するために主要構成概略を例示した斜視図を示している。装置本体Aは、概ねツールホルダ把持部40と、被接合部材設置面41と、ワークステージ42と、ヘッド支台43と、ヘッド44と、操作盤45(又は後述する外部PC46)と、を備えて構成される。まず、ツールホルダ把持部40(以下、「主軸40」とも称する)に接合対象となる2つの被接合部材(図示せず)に回転当接(当接方向=矢印Z方向、回転方向=矢印Zの軸周り方向)させる回転ツール4を把持させたツールホルダ2を装着する。これによりツールホルダ把持部40とツールホルダ2及び回転ツール4は一体に回転することとなる。また、被接合部材は、ワークステージ42の上面の被接合部材設置面41に被接合部材を載置され、固定用クランプ(図示せず)や固定用ボルト(図示せず)等を用いて被接合部材設置面41に固定される。この状態でユーザは、操作盤45を操作又は後述する外部PCの操作により装置本体AのCNCに割込処理し、ワークステージ42をX方向に移動させ、所望の接合位置直上に回転ツール4(後述の図2参照)が位置するところで被接合部材が停止・位置決めされる。
【0029】
次に、被接合部材上に停止・位置決めされた状態で操作盤45又は後述する外部PCを操作して、回転ツール4を下降、被接合部材に当接させ、接合部を押圧しながら回転させ、接合方向に移動させる。このとき、ユーザは予め少なくとも回転ツール4に付与するツール荷重と、接合速度となるツール移動速度と、回転ツール4のツール回転速度と、の各パラメータを入力し、摩擦攪拌接合に用いる接合条件を設定することとなる。なお、図示しないが回転ツール4は移動方向(接合方向)に傾斜させることが好ましい場合もあり得る。回転ツール4のツール前進角の設定は、ヘッド44と、ヘッド支台43と、の嵌合角度を変更することによって行う。
【0030】
操作盤45又は後述する外部PCでの設定が終了すると、被接合部材直上で回転ツール4を回転させて設定したツール回転速度に達した後、ヘッド44をZ方向下方へ移動させ、被接合部材の接合開始点で回転ツール4を押圧する。ヘッド44は被接合部材に対して事前に設定したツール荷重で回転ツールを押圧すると、回転ツール4と、被接合部材と、の当接部(接合部)が、摩擦熱によって被接合部材の変形抵抗を低下させ、当接部近傍が回転ツール4の回転によって撹拌を開始する。その後、ヘッド支台43を設定したツール移動速度でY方向に移動させ、回転ツール4を接合開始点から接合終了点まで運ぶことで、被接合部材を接合させる。所望の接合が達成された後、回転ツール4の回転を維持させながらヘッド44をZ方向上方へ移動させ、接合終了点から回転ツール4を引き抜いた後に回転ツール4の回転を停止させる。この工程により接合が終了する。
【0031】
次に、上述した装置本体Aのツールホルダ把持部40に把持・固定されるツールホルダ2及び回転ツール4について説明する。図2は、(a)にツールホルダ2で回転ツール4を把持する前の部品写真図、(b)にその組立写真図を例示している。また、電子部品の収容部5の外周側は被覆部6で封止されるが、図3は、図2のツールホルダ2を装置本体Aの主軸40に連結した状態で被覆部6を取り外して収容部5内を露出させた様子を示す斜視写真図である。さらに、図4には概ね、装置本体Aの主軸40に連結したツールホルダ2と外部PC46とで構成される本発明の摩擦攪拌接合用計測装置を模式的に示した概要図を示している。
【0032】
ツールホルダ2には、回転ツール2を被接合部材に回転当接させることで接合を実行するとともに、これ自体が接合中の温度・荷重を計測する計測装置として機能する。詳細な構成は略するが略円筒状のツールホルダ2は、内部に軸方向の中空孔が形成され、その下部で中空孔内にツバ部4cをストッパとして回転ツール4の上部を嵌め込み、その状態で下方から環状の固定用ナット9を嵌め込んで、径方向外側から固定用ビス3で固定することで回転ツール4を把持している。また、ツールホルダ2の上部は円筒状に延びる把持部分7が設けられ、把持部分7を主軸40に連結し、主軸40と協働して接合中に回転可能にしている。
【0033】
また、回転ツール4は上述した特許文献1で提供したように内部にショルダ部4bの上方から下方に所定深さまで延びる複数のチャンネル8が設けられている。図4の例では、プローブ部4a内の最も深い位置まで延びる下端チャンネル8a(好ましくは回転中心近傍に位置)と、プローブ部4a内の中間深さからショルダ部4bとの境界近傍の位置まで延びる中間チャンネル8b(好ましくは下端チャンネル8aより径方向外側の位置)と、ショルダ部4bに位置してチャンネル8の中で最も径方向外側に位置するショルダチャンネル8cと、が設けられており、それぞれのチャンネル8a、8b、8cそれぞれの内部下端に熱電対9が装着される。なお、適正な接合を得るためには接合部の深さ方向の塑性流動状態を検出することが重要であり、少なくとも下端チャンネル8aと中間チャンネル8bとを備えることが必要であることがわかってきた。
【0034】
熱電対9はチャンネル8から上述した中空孔を介して収容部5に配設した電子基板に接続される。なお、熱電対9は、サーミスタ、及び、白金測温抵抗体等の温度計測素子であっても良く、これに電気配線が接続されて形成される。図3図4に示すように収容部5には、熱電対9からの温度計測結果を受信する、電気配線を介して電子基板へ送信される。電子基板には概ね、ポテンショメータ12、増幅器13、RMS変換器、A/D変換器14が配設されており、熱電対9で検出されたアナログ信号は、A/D変換器14でデジタル変換されて、後述するひずみゲージ10からの電気抵抗値データとともに無線マイコン(送信手段)15を経由してアンテナ16から外部に無線送信される。この一連の電子部品を配設する電子基板は、高温・高速回転環境を考慮してツールホルダ2の外周側に位置する収容部5(図3参照)に配設される。また、アンテナ16(無線送受信機16)は収容部5内の外側又は被覆部6内に配設される。
【0035】
また、収容部5は把持部分7まで繋がっているシャンク部を縮径して被覆部6との間の空隙に設けられるものであり、上述するポテンショメータ12、増幅器13、RMS変換器、A/D変換器14を備える電子基板や無線マイコン15を配設している。この収容部5の内側面(シャンク部の表面)に荷重計測素子として用いる電気抵抗ひずみゲージ10(以下、「ひずみゲージ10」とも称する。)を貼り付けている。ひずみゲージ10の詳細な配列例は後述するが、ひずみゲージ10から検出された電気抵抗値をデジタルポテンショメータ11でアナログ電圧信号に変換し、アナログの電圧信号が増幅回路12(Amplifer)によりインピーダンスを整合し、電圧調整・ゲイン調整される。増幅回路12からの出力信号は、RMS変換器13でRMS(二乗平均平方根)による平均化処理をし、電圧の実効値を出力して電圧変化の大きさ定量的に検出している。その後、A/D変換器14によりアナログ信号の電圧実効値をデジタル信号に変換して、送信データを無線マイコン15で処理して上述した温度データとともにアンテナ(無線送受信機)16で外部に無線送信される。
【0036】
無線送信された温度データ及び電気抵抗値データは、アンテナ(無線送受信機)17からトランシーバ18経由で受信されて専用ソフトウェアをインストールした外部PC46で処理されてディスプレイ上に摩擦攪拌接合装置本体Aからのセンサ情報・CNC内部情報とともに同一時間軸に表示され、分析可能な状態となる。また分析の結果に応じて、接合部の適正な塑性流動を維持すべくCNC内部情報を補正等して外部PCから装置本体A内の制御部に割り込み処理することも可能となる。
【0037】
以下、ひずみゲージ10の代表的配列としてここではひずみゲージ10を4枚用いたブリッジ回路(4ゲージ法)について、水平荷重(曲げ力)の計測時、一軸荷重の計測時、ねじり力の計測時それぞれを具体的に説明する。
【0038】
《水平荷重(曲げ力)計測時の代表的な配列(4ゲージ法(アクティブ):温度補償あり、リード線の温度影響消去、圧縮(引張)ひずみ消去、出力4倍)》
図5(a)には水平荷重(曲げ力(図中両矢印方向の力))計測時のひずみゲージ10の配列、(b)にはその回路図が示されている。このひずみゲージ10の配列では引張又は圧縮ひずみが作用する方向に沿ってそれぞれ2枚のひずみゲージRg1、Rg3を貼り付け、径方向反対側(略180°位相をずらせた位置)でひずみゲージRg1、Rg3とは逆の圧縮又は引張が作用する方向に沿ってひずみゲージRg2、Rg4を貼り付け、温度変化によって発生した引張及び圧縮ひずみのいずれも計測する。この回路では引張及び圧縮ひずみの両者を計測するため下記数1で示すように4倍の電位差e0で出力され、増幅器12で電位差e0を増幅した後、RMS変換器13で実効値 (RMS) 化された電圧を、A/D変換14で変換されたデジタル信号を読取っている。
【数1】
ゲージの抵抗値:120又は350 [Ω]
E:ブリッジに与える電圧 (3.3 [V])
e0:変形に伴って変化する電位差
【0039】
ここで計測する水平荷重(曲げ力(図5(a)の矢印方向))は、実際のツールホルダ2では径方向(図1の左右方向)の荷重であり、図2には軸方向に沿って収容部5の内壁に2枚のひずみゲージRg1、Rg3に相当するひずみゲージ10が貼り付けられている様子が示されている(図2では参照用ひずみゲージRg2、Rg4は表示されていない)。
【0040】
《一軸荷重計測時の代表的な配列(4ゲージ法(直交配置法):温度補償あり、リード線の温度影響消去、曲げひずみ消去、出力2(1+ν)倍)》
図6(a)には一軸応力(一様な引張、圧縮力(図中両矢印方向の力))計測時のひずみゲージ10の配列、(b)にはその回路図が示されている。このひずみゲージ10の配列では引張、圧縮力が作用する方向及びこれと直交する方向に沿って一対2枚のひずみゲージRg1、Rg2を合計2対枚(Rg1、Rg2、Rg3、Rg4)を貼り付ける。ひずみゲージ10は、2素子入り(2軸クロス)を2対貼りつけても良い。この回路では下記数2で示すように2×(1+ポアソン比ν)倍の電位差e0で出力され、図5同様に増幅器12で電位差e0を増幅した後、RMS変換器13で実効値 (RMS) 化された電圧を、A/D変換14で変換されたデジタル信号を読取っている。
【数2】
ゲージの抵抗値:120又は350 [Ω]
E:ブリッジに与える電圧 (3.3 [V])
e0:変形に伴って変化する電位差
【0041】
ここで計測する一軸荷重(一軸応力 (図6(a)の矢印方向))は、実際のツールホルダ2では軸方向(図1の上下方向)の荷重であり、図2には軸方向に沿って収容部5の内壁に貼り付けされる(図2では具体的なひずみゲージRg1、Rg2、Rg3、Rg4は表示されていない)。
【0042】
《ねじり力計測時の代表的な配列(4ゲージ法(ねじりひずみ測定法):温度補償あり、リード線の温度影響消去、曲げひずみ消去、引張・圧縮消去、出力4倍)》
図7(a)には、上下それぞれにねじり力(図中両矢印方向の力)計測時のひずみゲージ10の配列の側方図及びその断面図、(b)には回路図が示されている。このひずみゲージ10の配列では、一方の軸回転方向(例えば図7(a)の左矢印方向)に対してそれぞれ+略45°、-略45°に傾斜し互いに逆方向に向いた一対2枚のひずみゲージRg1、Rg2を貼り付け、他方の軸回転方向(例えば図7(a)の右矢印方向)に対してもそれぞれ+略45°、-略45°に傾斜し互いに逆方向に向いた一対2枚のひずみゲージRg3、Rg4を貼り付けている。なお、図7のように軸回転に対して傾斜させずに、二対のひずみゲージRg1、Rg2及びRg3、Rg4を貼り付ける場合もあり得る。
【0043】
この回路では下記数3で示すように4倍の電位差e0で出力され、図5図6と同様に増幅器12で電位差e0を増幅した後、RMS変換器13で実効値 (RMS) 化された電圧を、A/D変換14で変換されたデジタル信号を読取っている。
【数3】
ゲージの抵抗値:120又は350 [Ω]
E:ブリッジに与える電圧 (3.3 [V])
e0:変形に伴って変化する電位差
【0044】
ここで計測するねじり力( (図7(a)の矢印方向))は、実際のツールホルダ2ではツールホルダ2の軸方向(図1の上下方向)に対して略45°傾斜させて図2の収容部5の内壁に貼り付けされる(図2では具体的なひずみゲージRg1、Rg2、Rg3、Rg4は表示されていない)。
【0045】
《ひずみゲージからの電圧値から荷重値への変換方法及び計測結果》
図8(a)は、ひずみゲージ10から検出された電圧値の出力結果と動力計の出力結果とからのひずみ([mV]:横軸)と力([kN]:縦軸)との関係(校正曲線)を示すグラフ図である。具体的には回転ツール4を動力計に押付け、上述したひずみゲージ配列のブリッジ回路及び増幅器12、RMS変換器13からの出力電圧と、動力計が示す力との対応を計測し、これを校正曲線として設定する。グラフ図が示すようにひずみゲージ10からの出力電圧と力の関係 (校正曲線) は、ほぼ線形であり、
力[kN]=-0.08759+0.02219×電圧[mV] の関係を有することがわかった。また、回転ツール4の動力計への押し付けに対して負荷を加える場合であっても除荷する場合であっても校正曲線に影響はなく、ほぼ一致することもわかった。
【0046】
また図8(b)は、(a)の校正曲線を使用して変換した荷重値(力[kN]:縦軸)の実加工中における時系列(時間[s]:横軸)のデータを示すグラフ図である。具体的には(a)の校正曲線を使用し、摩擦攪拌接合中に計測されたひずみゲージ10からの電圧値を荷重値Frms(グラフ中(2))に変換したところ、変換された荷重値Frms(グラフ中(2))の最大値側が示すプロファイルは、動力計Fy(グラフ中(1))が示す荷重によく一致していることがわかる。一方、ひずみゲージ10が、進行方向と直交方向に向いた時、曲げ力は大きく低下するため、RMS変換器13からの出力値Frms(RMS力)は、動力計の示す力Fyに比べて大きく変動する。RMS時定数と回転速度によって、RMS力Frmsの最低値が決定される。図8(b)においてRMS力Frmsが最低になる場合、
Fy√(0.5(1-2/π))≒0.4Fy となる。
【0047】
《実加工中(挿入・接合・引抜き中)のツール温度および水平荷重》
図9上段の(a)は実加工中の回転ツール4の温度[℃(縦軸)]の時系列[s(秒:横軸)]の変化、図9下段の(b)は同実加工中の回転ツール4の力Frms[kN(縦軸)]の時系列[s(秒:横軸)]の変化を示すグラフ図である。なお、図9(a)及び図9(b)は同じ時間軸で表示されており、図9(b)の力Frmsは上述したひずみゲージ10からの出力値をRMS変換した出力値Frms(RMS力)を示している。また、図9(a)には回転ツール4の各チャンネル8内の温度が示されており、 (1)には下端チャンネル8aの温度、(2)には中間チャンネル8bの温度、(3)にはショルダチャンネル8cの温度を示している。
【0048】
図9の実加工では回転ツール4を被接合部材に挿入した約5 [s] 後に、各チャンネル8内の温度計測及び力の計測(RMS出力値の検出)を開始し、 図9(a)に示すように略20 [s]経過で所定の押込み深さと接合開始温度に到達していることがわかる。また、回転ツール4は水平方向に移動させて被接合部材を接合し、略37 [s]経過時に接合を停止し、被接合部材に押し込まれた回転ツール4を上昇させ、被接合部材から徐々に引抜いた。なお、上記実加工過程の温度[℃]と力Frms[kN]とは、ツールホルダ2から無線受信したデータを外部PC46にインストールされた一つのソフトウェアで同時に検出・保存したものである。
【0049】
したがって、まず本摩擦攪拌接合用温度・荷重計測方法、及びこれに用いる摩擦攪拌接合用計測装置から実加工中の接合温度がリアルタイムに計測することができれば上述した図10右欄の式から限界荷重を算出でき、限界荷重の時の接合速度(上限)を図10左欄のグラフ図から検出することができ、高効率かつ安全な送り速度をリアルタイムに算出可能となる。また、図9の接合開始時点(約20 [s]経過時)の温度[℃]と荷重[Frms]とを比較すると、荷重[Frms]の方が温度[℃]よりも迅速に反応していることがわかった。したがって、被接合部材の接合異常 (空洞の形成・空孔の巻込み等) に対する感度については、温度よりも力が敏感であり、ツールホルダ2に貼り付けたひずみゲージ10を用いた力の検出により敏感かつ高精度な異常検知をリアルタイムに実行することができる。また更に、この検出結果を用いて外部から摩擦攪拌接合装置内のCNC等内部情報に割り込んで適正な塑性流動を維持した接合制御を行うことができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、更に特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0051】
2 ツールホルダ
3 固定用ビス
4 回転ツール
4a プローブ部
4b ショルダ部
4c ツバ部
5 収容部
6 被覆部
7 把持部分
8 チャンネル
8a 下端チャンネル
8b 中間チャンネル
8c ショルダチャンネル
9 熱電対(温度計測素子)
10 電気抵抗ひずみゲージ
11 ポテンショメータ
12 増幅器
13 RMS変換器
14 A/D変換器
15 無線マイコン(送信手段)
16、17 アンテナ(無線送受信機)
18 トランシーバ
40 ツールホルダ把持部(主軸)
41 被接合部材設置面
42 ワークステージ
43 ヘッド支台
44 ヘッド
45 操作盤
46 外部PC
A 装置本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10