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特開2022-162856センサユニット、空調制御システム、空調設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162856
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】センサユニット、空調制御システム、空調設備
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/89 20180101AFI20221018BHJP
【FI】
F24F11/89
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067893
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】森田 裕也
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260BA38
3L260CA12
3L260CA17
3L260GA02
3L260HA01
(57)【要約】
【課題】温度センサ及び空気質センサを用いた空調設備の多機能化又は高機能化を好適に実現すること。
【解決手段】空調設備用のサーモスタット43はセンサユニット50を備えている。センサユニット50は、温度センサ75及び空気質センサ76が実装された制御基板60と、当該制御基板60を収容する筐体80とを有している。筐体80の内部空間ICにて空気質センサ76が配設されている第1空間部S1では、当該内部空間ISにて前記温度センサが配設されている第2空間部S2と比べて自然対流が生じやすくなっている。筐体80において制御基板60の外周に沿うように形成された周壁部83には複数の通気口85が形成されており、それら通気口85を通じて居室内の空気を内部空間ICへ取り込み可能となっている。通気口85は何れも、周壁部83を構成する4つの壁部のうち、空気質センサ76に近い2つの壁部に形成されている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調設備に適用されるセンサユニットであって、
温度センサ及び空気質センサと、
それら温度センサ及び空気質センサを収容する筐体と
を備え、
前記筐体の内部空間にて前記空気質センサが配設されている第1の領域では、当該内部空間にて前記温度センサが配設されている第2の領域と比べて自然対流が生じやすくなっており、
前記筐体にて前記第1の領域を形成している部分に通気口が形成されているセンサユニット。
【請求項2】
前記第1の領域にて前記空気質センサの周辺となる部分は、当該第1の領域における他の部分よりも高温となるように構成されている請求項1に記載のセンサユニット。
【請求項3】
前記筐体には、前記温度センサ及び前記空気質センサを含む各種部品が実装された制御基板が収容されており、
前記制御基板において前記空気質センサの周辺となる部分は、前記制御基板において前記温度センサの周辺となる部分よりも温度が高くなるように前記各種部品が配設されている請求項1又は請求項2に記載のセンサユニット。
【請求項4】
前記制御基板には、前記各種部品として通電により発熱する発熱部品が複数実装されており、
前記第1の領域に配設された前記発熱部品の数を前記第2の領域に配設された前記発熱部品の数よりも多くすることにより、前記第1の領域にて前記自然対流を生じやすくさせている請求項3に記載のセンサユニット。
【請求項5】
前記制御基板には、前記各種部品として通電による発熱量が異なる複数の発熱部品が実装されており、
それら複数の発熱部品は、前記空気質センサに近づくにつれて発熱量の多い発熱部品の割合いが増え、前記温度センサに近づくにつれて発熱量の少ない発熱部品の割合いが増えるように配設されている請求項3又は請求項4に記載のセンサユニット。
【請求項6】
前記第1の領域に配設された前記各種部品はレギュレータ及びマイコンを含み、前記第2の領域に配設された前記各種部品はコネクタ及びスイッチを含んでいる請求項3に記載のセンサユニット。
【請求項7】
前記制御基板は、矩形状をなしており、
前記空気質センサ及び前記温度センサは、前記制御基板にて対角となる隅部に配置されている請求項3乃至請求項6のいずれか1つに記載のセンサユニット。
【請求項8】
前記筐体には、前記温度センサ及び前記空気質センサを含む各種部品が実装された制御基板が収容されており、
前記温度センサ及び前記空気質センサは、前記制御基板の一方の板面に配設されており、
前記筐体には、前記制御基板の前記一方の板面と対向する対向部が設けられており、
前記第1の領域における前記制御基板と前記対向部との温度差は、前記第2の領域における前記制御基板と前記対向部との温度差よりも大きくなるように構成されている請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載のセンサユニット。
【請求項9】
前記第1の領域における前記温度差及び当該第1の領域における前記制御基板と前記対向部との距離は、前記第1の領域において前記対向部と前記制御基板との間に生じる前記自然対流が層流となるように規定されている請求項8に記載のセンサユニット。
【請求項10】
空調設備に適用されるセンサユニットであって、
温度センサ及び空気質センサを含む複数の部品が実装された制御基板と、
前記制御基板を収容する筐体と
を備え、
前記制御基板において前記空気質センサの周辺となる部分は、前記制御基板において前記温度センサの周辺となる部分よりも温度が高くなるように前記各種部品が配設されており、
前記筐体において前記空気質センサの近傍となる壁部に通気口が形成されているセンサユニット。
【請求項11】
前記温度センサ及び前記空気質センサは、前記制御基板の一方の板面に配設されており、
前記筐体には、前記制御基板の前記一方の板面と対向する対向部が設けられており、
前記制御基板において前記空気質センサの周辺となる部分と前記対向部との温度差は、前記制御基板において前記温度センサの周辺となる部分と前記対向部との温度差よりも大きくなるように構成されている請求項10に記載のセンサユニット。
【請求項12】
請求項1乃至請求項第11のいずれか1つに記載されたセンサユニットを備え、当該センサユニットからの情報に基づいて空調装置を制御する空調制御システム。
【請求項13】
請求項12に記載の空調制御システムと当該空調制御システムによって制御される前記空調装置とを備えている空調設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサユニット、空調制御システム、空調設備に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物や自動車等の車両においては、空調設備を用いて室内の温度調整等を行うことで快適さの向上が図られている。近年では、例えばPM2.5等の微粒子(微粒子状物質)やトルエン等の揮発性有機化合物(VOC)が健康に及ぼす影響について懸念が大きくなっていることもあり、室内における空気の清浄化に関するニーズが高まっている。上述した空調設備には、室内における空気の清浄化に寄与すべく、例えば微粒子センサ(空気質センサ)を用いて空気の清浄度を監視し、空気の清浄度に応じて空調制御等を実行するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-51697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、本願の発明者は、空気質センサを用いて空調設備の多機能化や高機能化を実現する上で、空調設備が具備する温度センサや空気質センサ等のセンシングに係る構成を集約したセンサユニットを考案した。このようにしてセンシングに係る構成を集約することは、工場における製品管理や施工現場における設置作業等の容易化を実現する上で好ましい。但し、温度センサ及び空気質センサについては、好ましい使用環境が相違し得るため、上述したセンサユニットにおいて各センサを共存させつつ各々の検出結果の確からしさを向上させる上で更なる改善の余地がある。つまり、温度センサ及び空気質センサを搭載して空調設備の多機能化又は高機能化を実現する上でその構成に改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、温度センサ及び空気質センサを用いた空調設備の多機能化又は高機能化を好適に実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段について記載する。
【0007】
第1の手段.空調設備(空調設備30)に適用されるセンサユニット(センサユニット50)であって、
温度センサ(温度センサ75)及び空気質センサ(空気質センサ76)と、
それら温度センサ及び空気質センサを収容する筐体(筐体80)と
を備え、
前記筐体の内部空間にて前記空気質センサが配設されている第1の領域(第1空間部S1)では、当該内部空間にて前記温度センサが配設されている第2の領域(第2空間部S2)と比べて自然対流が生じやすくなっており、
前記筐体にて前記第1の領域を形成している部分に通気口(通気口85)が形成されているセンサユニット。
【0008】
温度センサについては通気口を通じて流入した筐体外の空気が直接当たることで温度が低下し得る。これは、温度オフセット等を狂わせて検出精度の向上を図る上で妨げになる。これに対して、空気質センサについては筐体外から取り入れた空気が当たらない場所に配置されると検出結果の確からしさを向上させることが困難になる。つまり、温度センサ及び空気質センサについては筐体外から空気を取り入れて適度に空気を入れ替える必要がある点で前提となる使用条件が同様であるものの、空気の流れを考慮した場合の望ましい配置が逆の関係となる。
【0009】
ここで、第1の手段に示す構成によれば、空気質センサが配設された第1の領域では温度センサが配設された第2の領域と比較して自然対流が発生しやすくなっている。自然対流が発生しやすい第1の領域に通気口を設けることで、当該通気口を通じて筐体内外の空気の入れ替わりが促される。空気質センサは第1の領域に配設されているため、通気口から流入した空気は当該空気質センサに当たりやすくなる。これにより、空気質を検出する機能を好適に発揮させることができる。これに対して、温度センサは通気口から離れており且つ自然対流が生じにくい第2の領域に配設されている。このため、通気口から流入した空気が温度センサに当たったり、温度センサ付近で強い空気の流れが生じたりすることを抑制できる。故に、上述した検出精度に係る懸念を払しょくできる。このようして温度センサ及び空気質センサの集約により生じる課題を解消することにより、センシングに係る構成のユニット化を促進し、温度センサ及び空気質センサを用いた空調設備の多機能化又は高機能化を好適に実現することができる。なお、温度センサ及び空気質センサを1の筐体に収容してユニット化することは、工場における製品管理や施工現場における設置作業等の容易化を実現する上で好ましい。
【0010】
因みに、第1の手段に示す「前記筐体の内部空間にて前記空気質センサが配設されている第1の領域(第1空間部S1)では、当該内部空間にて前記温度センサが配設されている第2の領域(第2空間部S2)と比べて自然対流が生じやすくなっており」との記載を「前記筐体の内部空間にて前記空気質センサが配設されている第1の領域(第1エリアE1)では、当該第1の領域内の特定部分(制御基板60の一部)と同第1の領域における他の部分との温度差により、前記温度センサが配設されている第2の領域(第3エリアE3)と比べて自然対流が生じやすくなっており」とすることも可能である。
【0011】
また、第1の手段に示す構成を「空調設備(空調設備30)に適用されるセンサユニット(センサユニット50)であって、温度センサ(温度センサ75)及び空気質センサ(空気質センサ76)と、それら温度センサ及び空気質センサを収容する筐体(筐体80)とを備え、前記筐体の内部空間は、領域A及び当該領域Aよりも自然対流が生じやすい領域Bを含み、前記筐体にて前記領域Bを形成している部分には通気口(通気口85)が形成されており、前記領域Aには前記温度センサが配設され、前記領域Bには前記空気質センサが配設されているセンサユニット。」とすることも可能である。
【0012】
第2の手段.前記第1の領域にて前記空気質センサの周辺となる部分(例えば制御基板60の第1エリアE1及び第2エリアE2)は、当該第1の領域における他の部分(例えば筐体80の天井部81付近の部分)よりも高温となるように構成されている。
【0013】
第1の領域における空気質センサの周辺部分が当該第1の領域における他の部分よりも高温となれば、空気質センサ付近で自然対流が生じやすくなる。つまり、空気質センサ付近で空気の流れに淀みが生じることを抑制できる。これは、通気口から取り込んだ空気を空気質センサに届ける構成を実現する上で好ましい。
【0014】
第3の手段.前記筐体には、前記温度センサ及び前記空気質センサを含む各種部品が実装された制御基板(制御基板60)が収容されており、
前記制御基板において前記空気質センサの周辺となる部分は、前記制御基板において前記温度センサの周辺となる部分よりも温度が高くなるように前記各種部品が配設されている。
【0015】
制御基板に実装された各種部品の配置によって空気質センサの周辺部分の温度を高くする構成とすることにより、第1の領域にて自然対流を発生させるための構成を簡易に実現できる。また、制御基板(各種部品)の熱を利用して自然対流を発生させることができるため、自然対流を発生させる上で無駄にエネルギを消費することもない。
【0016】
第4の手段.前記制御基板には、前記各種部品として通電により発熱する発熱部品(例えばPS65、LDO66、MCU68等の第1種構成部品)が複数実装されており、
前記第1の領域に配設された前記発熱部品の数を前記第2の領域に配設された前記発熱部品の数よりも多くすることにより、前記第1の領域にて前記自然対流を生じやすくさせている。
【0017】
発熱部品を第1の領域に多く配設すれば、第1の領域にて自然対流を生じやすくさせることができる。一方、第2の領域については第1の領域と比べて配設された発熱部品が少ないため自然対流の発生を抑制できる。これは、温度センサ付近で強い空気の流れが生じることを回避する上で好ましい。なお、例えば第2の領域については発熱しない又は発熱量がほぼ0となる部品である非発熱部品(例えばコネクタ61、スイッチ63、LED73等の第2種構成部品)を配設し発熱部品については配設しない構成とするとよい。
【0018】
因みに本手段に示す「前記制御基板には、前記各種部品として通電により発熱する発熱部品(例えばPS65、LDO66、MCU68等の第1種構成部品)が複数実装されており」との記載を「前記制御基板には、前記各種部品として通電により発熱し且つ単位時間あたりの発熱量が基準量よりも多い発熱部品(例えばPS65、LDO66、MCU68等の第1種構成部品)が複数実装されており」とすることも可能である。
【0019】
第5の手段.前記制御基板には、前記各種部品として通電による発熱量が異なる複数の発熱部品が実装されており、
それら複数の発熱部品は、前記空気質センサに近づくにつれて発熱量の多い発熱部品の割合いが増え、前記温度センサに近づくにつれて発熱量の少ない発熱部品の割合いが増えるように配設されている。
【0020】
空気質センサに近づくにつれて発熱量の多い発熱部品の割合いが増え(発熱量の少ない発熱部品の割合いが減り)、温度センサに近づくにつれて発熱量の少ない発熱部品の割合いが増える(発熱量の多い発熱部品の割合いが減る)構成とすれば、第1の領域では自然対流を生じやすくする一方、第2の領域では自然対流を生じにくくすることができる。
【0021】
第6の手段.前記第1の領域に配設された前記各種部品はレギュレータ及びマイコンを含み、前記第2の領域に配設された前記各種部品はコネクタ及びスイッチを含んでいる。
【0022】
レギュレータやマイコンについてはコネクタやスイッチと比べて発熱量が多い。そこで、第1の領域にレギュレータやマイコンを配設し第2の領域にコネクタやスイッチを配設すれば第3の手段に示した技術的思想を好適に具現化できる。
【0023】
第7の手段.前記制御基板は、矩形状をなしており、
前記空気質センサ及び前記温度センサは、前記制御基板にて対角となる隅部に配置されている。
【0024】
第7の手段に示す構成によれば、空気質センサと温度センサとの距離を稼ぐことができる。故に、第1の領域にて自然対流を発生させた場合に当該自然対流の影響が第2の領域の温度センサに及びにくくすることができる。
【0025】
第8の手段.前記筐体には、前記温度センサ及び前記空気質センサを含む各種部品が実装された制御基板(制御基板60)が収容されており、
前記温度センサ及び前記空気質センサは、前記制御基板の一方の板面に配設されており、
前記筐体には、前記制御基板の前記一方の板面と対向する対向部(天井部81)が設けられており、
前記第1の領域における前記制御基板と前記対向部との温度差は、前記第2の領域における前記制御基板と前記対向部との温度差よりも大きくなるように構成されている。
【0026】
第1の領域では制御基板と対向部との温度差が相対的に大きくなり、第2の領域では制御基板と対向部との温度差が相対的に小さくなる構成とすれば、第1の領域では自然対流を生じやすくする一方、第2の領域では自然対流を生じにくくすることができる。
【0027】
第9の手段.前記第1の領域における前記温度差及び当該第1の領域における前記制御基板と前記対向部との距離は、前記第1の領域において前記対向部と前記制御基板との間に生じる前記自然対流が層流となるように規定されている。
【0028】
第1の領域に生じる自然対流を層流とすれば、当該第1の領域に生じる自然対流が乱流となる場合と比較して、第2の領域に及ぶ当該自然対流の影響を小さくすることができる。
【0029】
第10の手段.空調設備(空調設備30)に適用されるセンサユニット(センサユニット50)であって、
温度センサ(温度センサ75)及び空気質センサ(空気質センサ76)を含む複数の部品が実装された制御基板(制御基板60)と、
前記制御基板を収容する筐体(筐体80)と
を備え、
前記制御基板において前記空気質センサの周辺となる部分は、前記制御基板において前記温度センサの周辺となる部分よりも温度が高くなるように前記各種部品が配設されており、
前記筐体において前記空気質センサの近傍となる壁部に通気口(通気口85)が形成されている。
【0030】
第10の手段に示す構成によれば、筐体の内部空間において空気質センサが配設された領域では温度センサが配設された領域と比較して自然対流が発生しやすくなっている。空気質センサの近傍、すなわち自然対流が発生しやすい領域に通気口を設けることで、当該通気口を通じて筐体外の空気が流入/流出する。そして、通気口から流入した空気は当該空気質センサに当たりやすくなる。これにより、空気質を検出する機能を好適に発揮させることができる。これに対して、温度センサは通気口から離れており且つ自然対流が生じにくい領域に配設されている。このため、通気口から流入した空気が温度センサに当たったり、温度センサ付近で強い空気の流れが生じたりすることを抑制できる。故に、上述した検出精度に係る懸念を払しょくできる。このようして温度センサ及び空気質センサの集約により生じる課題を解消することにより、ユニット化を促進し、空気質センサを用いた空調設備の多機能化又は高機能化を好適に実現することができる。なお、温度センサ及び空気質センサを1の筐体に収容してユニット化することは、工場における製品管理や施工現場における設置作業等の容易化を実現する上で好ましい。
【0031】
第11の手段.前記温度センサ及び前記空気質センサは、前記制御基板の一方の板面に配設されており、
前記筐体には、前記制御基板の前記一方の板面と対向する対向部(天井部81)が設けられており、
前記制御基板において前記空気質センサの周辺となる部分と前記対向部との温度差は、前記制御基板において前記温度センサの周辺となる部分と前記対向部との温度差よりも大きくなるように構成されている。
【0032】
空気質センサ側では制御基板と対向部との温度差が相対的に大きくなり、温度センサ側では制御基板と対向部との温度差が相対的に小さくなる。このような構成とすれば、空気質センサ側では自然対流を生じやすくする一方、温度センサ側では自然対流を生じにくくすることができる。これにより、第10の手段に示した効果を好適に発揮させることができる。
【0033】
第12の手段.前記センサユニットを備え、当該センサユニットからの情報に基づいて空調装置(空調装置40)を制御する空調制御システム。
【0034】
空気質センサを利用した空調設備の多機能化又は高機能化を好適に実現することができる。
【0035】
第13の手段.前記空調制御システムと当該空調制御システムによって制御される前記空調装置(空調装置40)とを備えている空調設備。
【0036】
空気質センサを利用した空調設備の多機能化又は高機能化を好適に実現することができる。
【0037】
なお、第13の手段及び第14の手段については、上述した通気口として空気質センサに近い位置に設けられた第1通気口と空気質センサから遠い位置に設けられた第2通気口とを有し、空調制御システムが設置された状態にて、第1通気口が下側且つ第2通気口が上側となるように構成するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】第1の実施形態における建物及び空調設備を示す概略図。
図2】サーモスタットが具備するセンサユニットを示す概略図。
図3】センサユニットの電気的構成を示すブロック図。
図4】各種部品の発熱量を対比した概略図。
図5】制御基板に設定されたエリアを示す概略図。
図6】制御基板の温度を示す概略図。
図7】温度差が発生した場合の空気の流れを示す概略図。
図8】自然対流の発生原理を示す概略図。
図9】層流の発生条件と乱流の発生条件との関係を示す概略図。
図10】(a)第2の実施形態における制御基板を示す概略図、(b)各部品の配置を示す概略図。
図11】センサユニットの変形例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
<第1の実施形態>
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、建物に設けられた空調設備に具体化されている。なお、本実施形態における「空調」とは、冷房/暖房、除湿/加湿、換気によって、温度、湿度、清浄度等の空気の状態を調整することを意味する。
【0040】
図1に示すように、建物10に設けられた空調設備30は、屋内(機械室34)に設置された空調装置40、屋外に設置された室外機41、空調装置40及び室外機41を制御する空調コントローラ42、温度調節用のサーモスタット43、空調装置40及び室外機41を繋ぐ熱交換用の配管44、空調装置40に空調用の空気を取り込む取込ダクト45~47、空調空気を建物10の居室21,22等へ供給する供給ダクト48,49、屋外へ空気を排出する排気ダクト(図示略)を備えている。
【0041】
建物10の内部空間(屋内空間IS)には複数の居室が設けられており、それら居室毎に上述した取込ダクトの吸込口と供給ダクトの供給口とが配設されている。例えば居室21には取込ダクト45に設けられた吸込口45aと供給ダクト48に設けられた供給口48aとが配されており、居室22についても取込ダクト46に設けられた吸込口46aと供給ダクト49に設けられた供給口49aとが配されている。本実施形態に示す建物10は高気密・高断熱住宅であり、空調設備30(空調装置40)によって館内全体の空調が行われる(所謂全館空調)。また、各居室22,23には上記サーモスタット43が配設されており、居室毎に温度調節が可能となっている。なお、本実施形態ではサーモスタット43及び空調コントローラ42により空調制御システムが構築されている。
【0042】
また、取込ダクト47は屋外へと延びており、取込ダクト47の吸込口47aは屋外空間OSに配設されている。空調装置40は、屋内の空気だけでなく屋外の空気についても空調用の空気として取込可能となっている。この吸込口47aには集塵用のフィルタが配設されており、ゴミやほこり等が取込ダクト47を通じて屋内に取り込まれることを抑制している。屋内を循環する空調空気の一部を外気と入れ替えることにより、循環中の空調空気の清浄度の低下を抑制している。なお、空調設備30による換気については暖房/冷房や除湿/加湿と組み合わせて実行されるだけでなく、送風と組み合わせて実行される場合もある。
【0043】
ここで、空調設備30による外気の取り込みのモード(換気モード)として、通常換気モードと、当該通常換気モードよりも単位時間あたりの外気の取り込み量が少ない弱換気モードと、ユーザの停止指示に従って換気を停止させる停止モードとが設けられている。空調設備30の運転中は基本的に換気モードとして通常換気モード及び弱換気モードの何れかが設定される。また、これらの換気モードの切り替えについては空調コントローラ42が空気の状態(清浄度)を監視しその監視結果に基づいて自動で切り替える自動切替と、ユーザの指示に基づいて切り替える手動切替とがある。
【0044】
ここで、各居室22,23にて空気の状態を監視するための構成について補足説明する。各居室22,23に配設されたサーモスタット43は、センサユニットと、当該センサユニットを覆うカバー43a(図1参照)とを備えている。カバー43aには複数の開口が形成されており、それらの開口を通じて居室の空気がカバー43a内に流入する構成となっている。
【0045】
図2に示すように、センサユニット50は、温度センサ75及び空気質センサ76が実装されてなる矩形状の制御基板60と、当該制御基板60を収容する直方体状の筐体80とを有している。居室の空気はカバー43aの開口を通じて当該カバー43a内に流入し、その一部は筐体80にあたり、筐体80の温度は居室の温度と同一又はほぼ同一となるように構成されている。
【0046】
サーモスタット43が所定の向きで壁等に設置(固定)された状態では、制御基板60において温度センサ75や空気質センサ76等の各種部品が実装された実装面60aが上方を向く。制御基板60は、筐体80の底部82に固定されており、筐体80の天井部81と制御基板60(実装面60a)との間にある程度の空隙が確保されている。
【0047】
温度センサ75及び空気質センサ76は、一方が制御基板60の4つ隅部のうち1の隅部に配置され且つ他方が当該隅部と対角に位置する他の隅部に配置されている。これは、温度センサ75と空気質センサ76との距離を稼ぐ工夫である。筐体80において制御基板60の外周に沿うように形成された周壁部83には複数の通気口85が形成されており、カバー43aの開口を通じてサーモスタット43内に流入した居室の空気をそれら通気口85を通じて取り込み可能となっている。通気口85は何れも、筐体80の周壁部83を構成する4つの壁部のうち空気質センサ76に近い2つの壁部に形成されており、温度センサ75に近い他の2つの壁部には通気口が形成されていない。
【0048】
通気口85は、空気質センサ76の近傍(同じ高さ位置)に位置する下側通気口86と、下側通気口86の上方に位置する上側通気口87とに大別される。詳細については後述するが、居室の空気は下側通気口86を通じて筐体80の内部空間ICへ供給され、内部空間ICの空気は上側通気口87を通じて排出される構成となっている。
【0049】
次に、図3を参照して制御基板60に係る電気的構成について補足説明する。制御基板60には、当該制御基板60と外部電源とを接続するコネクタ61と、ポリスイッチ63、ポリスイッチ63を通じて外部電源から供給された電力を交流電力から直流電力に変換する変換部であるRSC64(RECTIFY・SMOOTHING CIRCUIT)、RSC64によって変換された直流電力の安定供給を実現するための安定供給部であるP/S65(POWER SUPPLY)、P/S65からの電力の電圧を所定電圧となるように低下させるレギュレータであるLDO64(LOW DROP OUT)を有する電力供給部62とが設けられている。また、制御基板60には、制御部としてのMCU68と、MCU68が正常に動作しているかを監視する監視部としてのWD71(WATCHDOG)と、ユーザにより操作される操作部としてのスイッチ72と、操作に応じて表示が変化する情報表示部としてのLED73と、上記温度センサ75及び空気質センサ76とが設けられており、LDO64にて電圧が引き下げられた電力が電力供給部62からMCU68等に供給される構成となっている。
【0050】
温度センサ75及び空気質センサ76はMCU68に接続されており、MCU68ではこれらセンサ75,76の検出情報を取得し、取得した検出情報に基づいて温度調節等に関する処理を実行する。また、検出情報については空調コントローラ42に送信され、空調コントローラ42はこれらの検出情報に基づいて換気モードの切り替え等を行う。
【0051】
より詳しくは、空気質センサ76として、空気中の微粒子(例えばPM2.5)を検出可能な微粒子センサであるPMセンサ76aと、空気中の揮発性有機化合物(例えばトルエンやキシレン)を検出可能なVOCセンサ76bと、空気の二酸化炭素濃度を検出可能なCO2センサ76cとが設けられており、これらの情報に基づいて各居室の空気の状態を把握可能となっている。例えば、換気モードが弱換気モードや停止モードとなっている状況下にて、居室の二酸化炭素濃度が基準濃度よりも高くなった場合や揮発性有機化合物の濃度が基準濃度よりも高くなった場合には、換気モードが通常換気モードに切り替わる。また、換気モードが通常モードとなっている状況下にて居室内の空気の微粒子量が基準量よりも多くなった場合には、換気モードが弱換気モードや停止モードに切り替わる。
【0052】
ここで、温度センサ75については筐体80外から流入した空気が直接当たったり、空気の流れに晒され続けたりすることで温度が低下し得る。これは、温度オフセット等を狂わせて検出精度の向上を図る上で妨げになる。これに対して、空気質センサ76については筐体80外から流入した空気が当たらない場所に配置されると検出結果の確からしさを向上させることが困難になる。つまり、温度センサ75及び空気質センサ76については筐体80外から空気を取り入れて適度に空気を入れ替える必要がある点で前提となる使用条件が同様であるものの、空気の流れを考慮した場合の望ましい配置が逆の関係となる。本実施形態では、温度センサ75の周辺と空気質センサ76の周辺とで空気の流れを相違させることにより、筐体80の内部空間ICにて温度センサ75及び空気質センサ76の共存を図っていることを特徴の1つとしている。具体的には、制御基板60に実装されている各種部品の配置を工夫することにより、制御基板60(詳しくは部品)に生じる熱を利用して空気の流れを制御していることが特徴の1つとなっている。以下、図4及び図5を参照して、各部品の発熱量と配置との関係について説明する。
【0053】
上述したように、制御基板60には、温度センサ75及び空気質センサ76(PMセンサ76a、VOCセンサ76b、CO2センサ76c)に加えて、コネクタ61、ポリスイッチ63、RSC64、P/S65、LDO66、MCU68、WD71、スイッチ72、LED73等の各種部品が配設されている。これらの部品については、発熱量が基準発熱量(後述する自然対流を発生させることが可能な最小発熱量)以上となる第1種構成部品と、発熱量が基準発熱量を下回る第2種構成部品とに大別される。第1種構成部品は「発熱部品」に相当し、第2種構成部品は発熱しない又は発熱量がほぼ0となる「非発熱部品」に相当する。
【0054】
図4に示すように、P/S65、LDO66については、発熱温度は高く発熱量は基準発熱量を大きく上回る。VOCセンサ76b及びCO2センサ76cについては、発熱温度はLDO66等と比べて低いものの発熱量は基準発熱量を上回っている。MCU68については、LDO66等のように常時稼動する構成ではく、非稼動時には電力の消費が抑えられたスリープ状態となるように構成されている。但し、稼動時の発熱温度は高く発熱量は基準発熱量を上回っている。これらP/S65、LDO66、MCU68、VOCセンサ76b、CO2センサ76cについては何れも第1種構成部品に該当する。
【0055】
これに対して、コネクタ61、RSC64、WD71、スイッチ63,72、LED73、温度センサ75、PMセンサ76aについては、何れも通電時間や稼動時間は長くなり得るものの発熱温度は低く、発熱量は基準発熱量を下回る。これらコネクタ61、RSC64、WD71、スイッチ63,72、LED73、温度センサ75、PMセンサ76aについては何れも第2種構成部品に該当する。
【0056】
図5に示すように、制御基板60(詳しくは実装面60a)については、温度センサ75及び空気質センサ76が配設されている両隅部を結ぶ対角線方向にて複数のエリアに分かれている。具体的には、空気質センサ76が配置された隅部が第1エリアE1となっており、当該第1エリアE1に対して近い順に、第2エリアE2、第3エリアE3、第4エリアE4となっている。第4エリアE4は、第1エリアE1から最も離れたエリアであり温度センサ75が配置された隅部である。
【0057】
第2エリアE2には、空気質センサ76を囲むようにして第1種構成部品が配置されている。第2エリアE2にはRSC64等の一部の第2種構成部品が配置されてはいるものの(図4参照)、その大半は第1種構成部品となっており、第2種構成部品のほとんどは第3エリアE3に配置されている。一方、第3エリアE3には第1種構成部品が配置されておらず、当該第3エリアE3に配置された部品はいずれも第2種構成部品となっている。つまり、温度センサ75の周辺は第1種構成部品の非配置エリアとなっており、第1種構成部品については空気質センサ76の周辺に集約されているとも言える。また、第1エリアE1及び第2エリアE2においては配置されている第1種構成部品の数が第2種構成部品の数よりも多く、第3エリアE3及び第4エリアE4においては配置されている第2種構成部品の数が第1種構成部品の数よりも多くなっているとも言える。
【0058】
発熱量が多い第1種構成部品を空気質センサ76側にまとめて配置する一方、発熱量が少ない第2種構成部品を温度センサ75側に配置することにより、制御基板60に以下のような温度差が生じている。すなわち、図6に示すように、空気質センサ76の周辺(第1エリアE1及び第2エリアE2)の温度が温度センサ75の周辺(第3エリアE3の一部及び第4エリアE4)の温度よりも高くなるように温度差が生じている。なお、温度センサ75の周辺の温度については、サーモスタット43が設置されている居室の室温とほぼ同じ温度である。
【0059】
次に図7を参照して、筐体80の内部空間ICにおける空気の流れについて説明する。図7(a)は、空調設備30(サーモスタット43)の電源がONになった直後のタイミングでのセンサユニット50を示す概略図、図7(b)は空調設備30(サーモスタット43)の電源がONになってからある程度の時間が経過したタイミングでのセンサユニット50を示す概略図である。
【0060】
空調設備30の電源がONになることで制御基板60への電力供給が開始される。これにより、制御基板60に配設された各種部品が発熱することとなる。但し、電力供給が開始された直後では、図7(a)に示すように、各部品の温度がほとんど上昇していないため、制御基板60の温度は居室の温度とほぼ同一となる。筐体80の天井部81についても居室の温度とほぼ同一であるため、制御基板60と筐体80の天井部81との温度差については何れの箇所においても0又はほぼ0となる。
【0061】
電力供給が開始されてからある程度の時間が経過すると、図7(b)に示すように、制御基板60に温度差が生じる。具体的には、温度センサ75の周辺では、制御基板60の温度があまり上昇せず、天井部81との温度差については0又はほぼ0のままとなる。これに対して、空気質センサ76の周辺では制御基板60の温度が大きく上昇する。これにより、空気質センサ76の周辺部分と天井部81との温度差が大きくなっている。この温度差によって、筐体80の内部空間ICには自然対流が発生する。具体的には、制御基板60付近で暖められた空気が天井部81へ向けて上昇し、その後、制御基板60へ向けて降下するという流れが生じる(図8参照)。
【0062】
このような空気の流れが、周壁部83にて通気口85が形成されている壁部に近い位置にて発生することにより、当該流れに誘発されるようにして筐体80の内外の空気が入れ替わる(換気が行われる)。具体的には、筐体80外の空気が下側通気口86を通じて内部空間ICへ流入し、内部空間ICの空気が上側通気口87を通じて筐体80外へ流出する。
【0063】
制御基板60及び天井部81のように上下に離間して設けられた一対の平板に温度差がある場合(所謂垂直平板モデル)にそれら平板の間で発生する自然対流の態様については、自然対流における熱伝達を特徴づける無次元数であるレイリー数Raにより特定することができる。具体的には、レイリー数Raは、(1)重力加速度g、(2)体積膨張率α、(3)制御基板60と天井部81との温度差ΔT、(4)制御基板60と天井部81との距離L、(5)熱拡散係数k、(6)動粘性係数vの6つのパラメータを用いて次の式で定義される。すなわち、Ra=gαΔTL^3/kvである。
【0064】
垂直平板モデルにおいては、レイリー数Raが10^8を超える場合に自然対流(層流)が発生し、レイリー数Raが10^9を超える場合に層流から乱流に移行する。空気質センサ76の周辺で発生した自然対流の影響によって温度センサ75の周辺に大きな空気の流れが生じることは好ましくない。本実施形態では、このような事情から、空気質センサ76の周辺で発生する自然対流については層流となるように上記温度差ΔTと距離Lとを規定することで、温度センサ75の周辺への影響を抑えている。
【0065】
具体的には、サーモスタット43が配設されている居室の温度を20°と想定して、温度差ΔTと距離Lとを規定している。居室の温度を20°と想定した場合には、重力加速度gは9.8m/s^2、体積膨張率αは3.41×10^-3、熱拡散係数は2×10^-5、動粘性係数vは1.5×10^-5となる。そして、レイリー数Raを10^8~10^9(層流区間)とすれば、上記温度差ΔTと距離Lとの関係は、図9に示す概略図のようになる。例えば温度差ΔTが0°~60°の範囲においては、距離Lを0.15<距離L<0.3とすることで上記自然対流を層流とすることができる。本実施形態では、温度差ΔTが20°~30°の範囲となるため、制御基板60と天井部81との距離Lを0.15に設定している。
【0066】
このように、本実施形態では、筐体80の内部空間ICにおいて空気質センサ76の周辺となる空間部(第1空間部S1)は、制御基板60と天井部81との温度差により自然対流の発生が促される空間部となっており、温度センサ75の周辺となる空間部(第2空間部S2)は、自然対流の発生を抑制し第1空間部S1における自然対流の流れの影響が抑えられた空間部(第2空間部S2)となっている。言い換えれば、制御基板60における第1エリアE1及び第2エリアE2の上方である第1空間部S1においては自然対流を発生させることで換気を行い、第3エリアE3及び第4エリアE4の上方である第2空間部S2においては自然対流を抑えることで無風に近い状態としている。
【0067】
以上詳述した第1の実施形態によれば、以下の優れた効果が期待できる。
【0068】
筐体80の下側通気口86から筐体80の内部空間ICに流入した空気は、当該下側通気口86の近傍に位置する空気質センサ76にあたる。これより、空気質センサ76によって空気質を監視する機能を好適に発揮させることができる。これに対して、温度センサ75は下側通気口86や上側通気口87が形成された壁部から大きく離れており且つ当該温度センサ75の周辺では自然対流が生じにくい構成となっている。このため、通気口85から流入した空気が温度センサ75に当たったり、温度センサ75付近で強い空気の流れが生じたりすることを抑制できる。故に、上述した検出精度に係る懸念を払しょくできる。このようして温度センサ75及び空気質センサ76の集約により生じる課題を解消することにより、センシングに係る構成のユニット化を促進し、温度センサ75及び空気質センサ76を用いた空調設備30の多機能化又は高機能化を好適に実現することができる。なお、温度センサ75及び空気質センサ76を1の筐体80に収容してセンサユニット50を構築することは、工場における製品管理や施工現場における設置作業等の容易化を実現する上で好ましい。
【0069】
制御基板60に実装された各種部品の配置によって空気質センサ76の周辺部分の温度を高くする構成とすることにより、当該周辺部分にて自然対流を発生させるための構成を簡易に実現できる。また、制御基板60(各種部品)の熱を利用して自然対流を発生させることができるため、自然対流を発生させる上で無駄にエネルギを消費することもない。
【0070】
自然対流の態様については制御基板60と天井部81との距離Lや制御基板60と天井部81との温度差ΔTによって変化し得る。距離Lについては固定値であるものの温度差ΔTについては若干の変動が発生する可変値である。つまり、温度差ΔTが変化することで自然対流の態様が変化し、当該自然対流の影響が及ぶ範囲についても変化する可能性がある。そこで、本実施形態では、制御基板60にて対角となる隅部に温度センサ75及び空気質センサ76を配置して両センサ75,76の距離を稼いでいる。これにより第1空間部S1に発生した自然対流の変換の影響が第2空間部S2に配置された温度センサ75に及ぶことを好適に抑制している。
【0071】
第1空間部S1の境界の一部が周壁部83によって規定されている。周壁部83の近傍を上昇/降下する空気の流れについては当該周壁部83に沿うこととなる。これにより、周壁部83に形成された下側通気口86から空気を取り込んで上側通気口87から空気を排出する換気機能を好適に発揮させることができる。
【0072】
発熱時の温度は高くなる一方、発熱が抑えられたスリープ状態に維持される期間が長いMCU68を第2エリアE2に配置している。MCU68が稼動している場合には、当該MCU68付近で自然対流が発生しやすくなるため、仮に当該MCU68を第3エリアE3に配置する構成とした場合には当該自然対流の影響が温度センサ75に及ぶ可能性が生じる。このように、MCU68を第2エリアE2に配置することには技術的意義がある。
【0073】
<第2の実施形態>
上記第1の実施形態では、制御基板60に設けられた各部品を発熱量が0又はほぼ0となる非発熱部品である第2種構成部品と発熱部品である第1種構成部品とに分類し、当該第1種構成部品を空気質センサ76を囲むようにして配置した。本実施形態では部品の配置に係る構成が第1の実施形態と相違している。以下、図10を参照して、本実施形態における特徴的な構成を第1の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0074】
図10(a)に示すように、矩形状をなす制御基板60Aの1の隅部に温度センサ75が配置されており、当該隅部と対角に位置する他の隅部に空気質センサ76が配置されている。そして、制御基板60Aについては、空気質センサ76が配置されている側のエリア(空気質センサ側エリアEX)と、温度センサ75が配置されている側のエリア(温度センサ側エリアEY)とに二分されている。
【0075】
図10(b)に示すように、第1種構成部品であるP/S65、LDO66、MCU68については空気質センサ側エリアEXに配置されており、第2種構成部品であるRSC64、WD71、スイッチ72、LED73、コネクタ61については温度センサ側エリアEYに配置されている。本実施形態においては、空気質センサ側エリアEXと筐体80の天井部81とに挟まれた空間部が上記第1空間部S1に相当し、温度センサ側エリアEYと筐体80の天井部81とに挟まれた空間部が上記第2空間部S2に相当する。
【0076】
ここで、空気質センサ側エリアEXにおいては、制御基板60Aの隅部に上記隅部にPMセンサ76a、VOCセンサ76b、CO2センサ76c等が集まっている点では第1の実施形態と同様であるものの、本実施形態ではそれらの空気質センサ76を囲むようにしてP/S65、LDO66、MCU68等の発熱部品がまとめて配置されているのではなく、それらP/S65、LDO66、MCU68等の発熱部品が空気質センサ側エリアEX全体に分散するようにして配置されている。より詳しくは、空気質センサ側エリアEXに発熱部品を満遍なく配置することで、各部品の熱の影響が及ぶ範囲同士の重なりを小さくしている。これにより、空気質センサ側エリアEXにおける温度分布の偏り(一極集中)を緩和しつつ当該空気質センサ側エリアEXの面積を稼いでいる。このようなに空気質センサ76の周辺で自然対流を発生させつつも熱源の過度の集中を回避することは、熱による各種部品の劣化等を抑制する上で好ましい。つまり、本実施形態に示した配置とすれば、制御基板60Aの発熱を利用して空気質センサ76による空気質の監視を可能としつつ、センサユニット50の耐久性の向上に寄与できる。
【0077】
<その他の実施形態>
なお、上述した各実施形態の記載内容に限定されず例えば次のように実施してもよい。ちなみに、以下の各構成を個別に上記各実施形態に対して適用してもよく、一部又は全部を組み合わせて上記各実施形態に対して適用してもよい。また、上記各実施形態に示した各種構成の全て又は一部を任意に組み合わせることも可能である。この場合、組み合わせの対象となる各構成の技術的意義(発揮される効果)が担保されることが好ましい。
【0078】
・制御基板60における各種部品の配置については、空気質センサ76側の第1空間部S1にて自然対流の発生を促し且つ温度センサ75側の第2空間部S2では自然対流の発生を抑制するように制御基板60における空気質センサ76の周辺部と温度センサ75の周辺部との温度差を確保できるのであれば、任意に変更してもよい。
【0079】
例えば上記各実施形態では、空気質センサ76の周辺エリア(例えば第2エリアE2)に当該空気質センサ76以外の非発熱部品である第2種構成部品、具体的にはRSC64を配置したが、空気質センサ76の周辺エリアには非発熱部品である第2種構成部品を配置しない構成とすることも可能である。また、温度センサ75の周辺エリア(例えば第3エリアE3)に、非発熱部品である第2種構成部品だけでなく発熱部品である第1種構成部品を配置することも可能である。
【0080】
・上記各実施形態では、制御基板60に配設される各種部品を発熱しない又は発熱量がほぼ0となる非発熱部品である第2種構成部品と、発熱部品である第1種構成部品とに分類したが、第1種構成部品と第2種構成部品とを分ける基準となる発熱量については、必ずしもほぼ0とする必要はない。空気質センサ76付近の温度を温度センサ75付近の温度よりも高くなるように制御基板60に温度差を発生させることができる部品配置を実現できるのであれば分類を任意に変更してもよい。また、制御基板60に配置される各種部品を発熱量に基づいて3つに分類してもよいし、4つに分類してもよい。
【0081】
・上記第1の実施形態では、空気質センサ76に近い第2エリアE2においては、空気質センサ76を囲むようにして発熱部品である第1種構成部品を配列した。つまり、第2エリアE2に配設される第1種構成部品については熱量の大小に関係なく当該第2エリアE2に配置する構成とした。これを変更し、第2エリアE2においては発熱量が多い第1種構成部品ほど空気質センサ76との距離が近くなるようにそれら第1種構成部品を配置してもよい。また、同様の思想を制御基板60全体に適用し、制御基板60の各種部品については発熱量が多いものほど空気質センサ76との距離が近くなるように配置してもよい。
【0082】
・上記各実施形態では、筐体80の周壁部83に通気口85を形成したが、第1空間部S1にて筐体80内の空気の排出及び居室からの空気の取り込みが行われるのであれば、通気口85の配置については任意に変更してもよい。例えば、図11(a)に示すように、筐体80Bの周壁部83Bに下側通気口86Bを形成する一方、筐体80Bの天井部81B(詳しくは第1空間部S1を形成している部分)に上側通気口87Bを形成してもよい。
【0083】
・上記各実施形態では、筐体80が制御基板60に上方から対向する対向部として天井部81を設け、筐体80の内部空間ICへ異物(自然対流によって排出できない大きな埃等)が入り込むことを抑制したが、これに限定されるものではない。例えば、図11(b)に示すように、天井部81を削除して筐体80Cを上方に開放させてもよい(開口部84Cを形成してもよい)。
【0084】
・上記各実施形態では、筐体80の周壁部83を構成する4つの壁部のうち2つの壁部と空気質センサ76との間には部品を配設しない構成としたが、当該2つの壁部と空気質センサ76との間に部品を配設する構成としてもよい。但し、このような配置とする場合には当該部品によって下側通気口86から流入した空気の空気質センサ76へ向けた流れを妨げない構成とすることが好ましい。
【0085】
・上記各実施形態に示した制御基板60にBLUETOOTH(登録商標)等の通信部品を配設してもよい。このような通信部品については通信を行わない場合には非稼動状態となり得る。つまり、発熱時の温度はある程度高くなる一方、稼動時間は短くなる。故に、単位時間あたりの発熱量は中程度又はほぼ0になると想定される。短い時間であっても高温になる場合には、この部品の近辺にて自然対流の発生が促される可能性がある点に鑑みれば、MCU68と同様に当該部品を空気質センサ76側のエリア(例えば第2エリアE2)に配設することが好ましい。
【0086】
・上記各実施形態では、制御基板60を矩形状として当該制御基板60の1の隅部に温度センサ75を配置し、当該隅部と対角に位置する他の隅部に空気質センサ76を配置したが、これに限定されるものではない。例えば、制御基板60の一辺部寄りとなる位置に温度センサ75を配置し、当該一辺部と対となる他の辺部に空気質センサ76を配置してもよい。
【0087】
・第1空間部S1と第2空間部S2とで空気の行き来が可能であれば足り、それら第1空間部S1及び第2空間部S2の境界部分に通気用の細孔が形成された仕切り壁を設ける構成を否定するものではない。
【0088】
・制御基板60において温度センサ75側のエリアと空気質センサ76側のエリアとの境界付近に当該境界に沿うようにして延びる発熱部品の非配置エリアを設定して、空気質センサ76側のエリアから温度センサ75側のエリアへの熱の伝播を抑制する構成としてもよい。
【0089】
・筐体80の天井部81を空気質センサ76側に下り勾配となるように傾斜させる構成としてもよい。このような構成とすれば、第1空間部S1にて天井部81へ向けて上昇した空気が当該天井部81に沿うようにして温度センサ75側へ移動することを好適に抑制できる。
【0090】
・上記各実施形態では、筐体80の天井部81の温度を均一とする一方、制御基板60については温度センサ75側のエリアと空気質センサ76側のエリアとで温度差を生じさせることにより、内部空間ICを自然対流を促す空間部(第1空間部S1)と自然対流を抑制する空間部(第2空間部S2)とに分ける構成とした。これを以下のように変更してもよい。すなわち、制御基板60については温度センサ75側のエリアと空気質センサ76側のエリアとの温度差を抑える一方、筐体80の天井部81については温度センサ75側のエリアと空気質センサ76側のエリアとで温度差を生じさせることにより、内部空間ICを自然対流を促す空間部(第1空間部S1)と自然対流を抑制する空間部(第2空間部S2)とに分ける構成としてもよい。例えば冷却手段を用いて天井部81における空気質センサ76側のエリアを冷やす構成とするとよい。
【0091】
・上記各実施形態では、制御基板60の熱を利用して自然対流を発生させる構成としたが、空気質センサ76が配設された第1空間部S1にて自然対流を発生させるための構成を以下のように変更してもよい。例えば、図11(d)に示すように、筐体80Dの天井部81Dに当該天井部81Dの一部を加熱する過熱手段としてヒータ88Dを配設し、天井部81Dにおいて空気質センサ76の上方となる部分の温度が制御基板60よりも高温となるように加熱する構成としてもよい。
【0092】
・上記各実施形態では、サーモスタット43がセンサユニット50を具備する構成について例示したが、これに限定されるものではない。例えば、空調コントローラ42や空調装置40がセンサユニット50を具備する構成とすることも可能である。また、センサユニット50によって温度及び空気質を監視する対象についても任意であり、屋内の空気に代えて又は加えて屋外の空気を監視の対象とすることも可能である。屋外の空気の温度や空気質を監視する場合には、例えば屋外の空気質が基準をした回った際に、換気モードを通常換気モードから弱換気モードや停止モードに切り替える構成とするとよい。
【0093】
・上記各実施形態に示したセンサユニット50については、全館空調に代えて、ルームエアコン、空気清浄装置等の他の空調設備に適用してもよい。また、当該センサユニット50については、建物用の空調設備に限らず車、列車、飛行機等の乗り物に搭載される空調設備に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0094】
30…空調設備、40…空調装置、42…空調コントローラ、43…サーモスタット、50…センサユニット、60…制御基板、61…コネクタ、62…電力供給部、65…PS、66…LDO、68…MCU、71…WD、72…スイッチ、73…LED、75…温度センサ、76…空気質センサ、80…筐体、81…天井部、82…底部、83…周壁部、85…通気口、IC…内部空間、S1…第1空間部、S2…第2空間部、E1…第1エリア、E2…第2エリア、E3…第3エリア、E4…第4エリア。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11