(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162874
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】自動分注装置及び自動分注システム及び容器
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
A61J3/00 310E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067925
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000151472
【氏名又は名称】株式会社トーショー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100204456
【弁理士】
【氏名又は名称】調 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】大村 義人
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047AA21
4C047BB13
4C047CC04
4C047DD22
4C047FF01
4C047HH07
4C047JJ31
(57)【要約】
【課題】液体の飛散による装置の故障発生を防止することが可能な自動分注装置を提供する。
【解決手段】容器31に薬液30を分注する自動分注装置2であって、容器31を移送する移送部10と、移送部10に容器31を供給する容器供給部11と、薬液30が貯容された薬液タンク12aから容器31に薬液30を充填する充填工程を行う薬液充填部12と、充填工程後に薬液30が充填された容器31を封止する封止工程を行う容器封止部13と、封止工程後に薬液30が充填された容器31を排出する容器排出部14と、各部の動作を制御する制御部16とを装置本体5に有し、移送部10は、容器供給部11で受け取った容器31を、薬液充填部12、容器封止部13、容器排出部14に順次移送し、制御部16は、薬液充填部12及び容器封止部13から離隔した位置に配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に薬液を分注する自動分注装置であって、
前記容器を移送する移送部と、
前記移送部に前記容器を供給する容器供給部と、
薬液が貯容された薬液タンクから前記容器に薬液を充填する充填工程を行う薬液充填部と、
前記充填工程後に薬液が充填された前記容器を封止する封止工程を行う容器封止部と、
前記封止工程後に薬液が充填された前記容器を排出する容器排出部と、
前記各部の動作を制御する制御部とを装置本体に有し、
前記移送部は、前記容器供給部で受け取った前記容器を、前記薬液充填部、前記容器封止部、前記容器排出部に順次移送し、
前記制御部は、前記薬液充填部及び前記容器封止部から離隔した位置に配置されている自動分注装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分注装置において、
前記移送部は、前記容器を保持して回転する回転部材を有することを特徴とする自動分注装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の自動分注装置において、
前記制御部を覆うカバー部材を有することを特徴とする自動分注装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一つに記載の自動分注装置において、
前記容器排出部は排出された容器を収容する収容部材を有し、前記収容部材は前記装置本体に対して着脱自在であることを特徴とする自動分注装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一つに記載の自動分注装置において、
前記薬液容器を洗浄する洗浄部を有し、前記洗浄部は全ての前記容器への前記充填工程が完了した後に、前記薬液タンクを含む前記薬液充填部を洗浄することを特徴とする自動分注装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一つに記載の自動分注装置と、前記自動分注装置に接続され各種情報を出力する出力装置とを有することを特徴とする自動分注システム。
【請求項7】
請求項1ないし5の何れか一つに記載の自動分注装置及び請求項6記載の自動分注システムに用いられる容器であって、
薬液が充填される容器本体と、
充填口を有する被充填部と、
前記容器本体内から薬液を注出する注出口を有する摘み部とを有し、
前記摘み部は、外形部に面取り部を有することを特徴とする容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一回に服用する容量の薬液を容器にそれぞれ分けて注入する自動分注装置、この自動分注装置を備えた自動分注システム、自動分注装置に用いられ薬剤が充填される容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定量の薬液を患者が一回に服用する容量分だけ容器にそれぞれ分けて注入する自動分注装置が知られている(例えば「特許文献1」参照)。
この自動分注装置は、一回の服用に供される薬液の容量情報及び薬液を充填する容器の本数情報に基づいて、薬液が貯容された薬液タンクから充填口を介して容器の内部に薬液を充填する薬液充填部を備えている。さらに、薬液充填部により薬液が充填された容器の被充填部を封止する容器封止部と、薬液タンクを洗浄する洗浄部と、薬液が充填された容器を排出する容器排出部と、これ等の動作を制御する制御部(メインボード)とを備えている。
【0003】
この自動分注装置を備えた自動分注システムは、自動分注装置に対して通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ(以下、パソコンという)と、パソコンに接続されたプリンタとを有している。自動分注装置は、パソコンから受信した一回の服用に供される薬液の容量情報及び薬液を充填する容器の本数情報に基づいて、自動的に一つの容器に一回服用分の薬液を分注してこれを各容器毎に封止し、受信した本数分の分注が完了すると洗浄部が薬液充填部を自動的に洗浄する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動分注装置は、薬液充填部、容器封止部、洗浄部等、液体を取り扱う部位が多く、さらに装置本体内部に制御部を有している。このため、取り扱う液体が制御部に飛散して制御部が汚損し、誤作動や停止等の故障の原因となるという問題点がある。
本発明は上述の問題点を解決し、液体の飛散による装置の故障発生を防止することが可能な自動分注装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、容器に薬液を分注する自動分注装置であって、前記容器を移送する移送部と、前記移送部に前記容器を供給する容器供給部と、薬液が貯容された薬液タンクから前記容器に薬液を充填する充填工程を行う薬液充填部と、前記充填工程後に薬液が充填された前記容器を封止する封止工程を行う容器封止部と、前記封止工程後に薬液が充填された前記容器を排出する容器排出部と、前記各部の動作を制御する制御部とを装置本体に有し、前記移送部は、前記容器供給部で受け取った前記容器を、前記薬液充填部、前記容器封止部、前記容器排出部に順次移送し、前記制御部は、前記薬液充填部及び前記容器封止部から離隔した位置に配置されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の自動分注装置において、さらに前記移送部は、前記容器を保持して回転する回転部材を有することを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の自動分注装置において、さらに前記制御部を覆うカバー部材を有することを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか一つに記載の自動分注装置において、さらに前記容器排出部は排出された容器を収容する収容部材を有し、前記収容部材は前記装置本体に対して着脱自在であることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4の何れか一つに記載の自動分注装置において、さらに前記薬液容器を洗浄する洗浄部を有し、前記洗浄部は全ての前記容器への前記充填工程が完了した後に、前記薬液タンクを含む前記薬液充填部を洗浄することを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5の何れか一つに記載の自動分注装置と、前記自動分注装置に接続され各種情報を出力する出力装置とを有する自動分注システムであることを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし5の何れか一つに記載の自動分注装置及び請求項6記載の自動分注システムに用いられる容器であって、薬液が充填される容器本体と、充填口を有する被充填部と、前記容器本体内から薬液を注出する注出口を有する摘み部とを有し、前記摘み部は、外形部に面取り部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、薬液を容器に対して充填する薬液充填部及び薬液が充填された容器の充填口を封止する容器封止部から離隔した位置に制御部が配置されているため、薬液充填部及び容器封止部からの薬液の飛散や漏出が発生しても飛散あるいは漏出した薬液が制御部に到達する可能性を低減でき、制御部の損傷に起因する自動分注装置の故障発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自動分注システムの概略斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る自動分注装置の構成を説明する概略平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に用いられる薬液が充填される容器の(a)空の状態を示す斜視図(b)薬液が充填された状態を示す斜視図(c)摘み部を破断した状態を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態の変形例に用いられる容器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は,本発明の一実施形態に係る自動分注システムの概略構成図である。同図において自動分注システム1は、自動分注装置2、パーソナルコンピュータ(以下パソコンという)3、出力装置としてのプリンタ4を有している。自動分注装置2はパソコン3と相互通信可能に接続されており、プリンタ4はパソコン3に接続されている。パソコン3としては例えばノート型のもの等を用いることができ、プリンタ4としてはジャーナルプリンタあるいはラベルプリンタ等を用いることができる。
【0016】
自動分注装置2は、装置本体としてのフレーム5によって骨格が構成され、図示しないカバーによって全体が覆われている。自動分注装置2は、パソコン3から受信した一回服用分の容量情報及び薬液30が充填される後述する容器31の本数情報に基づいて自動的に一回服用分の薬液30を一つの容器31毎に分注し、薬液30が充填された容器31を一本ずつ封止する。
フレーム5の前面には、自動分注装置2の作動を停止させる際に操作される停止スイッチ6が設けられており、その側方には自動分注装置2を起動させる際に操作される電源スイッチ7が設けられている。
フレーム5の前面であって停止スイッチ6を介して電源スイッチ7と対向する位置には、後述する容器排出部14を構成する収容部材としての収容ボックス8と、収容ボックス8を引き出す際に把持される取っ手9とが設けられている。
【0017】
薬剤師等のユーザは、服用者である患者の処方箋に記載された一回服用分の容量及び服用回数に基づいて、パソコン3に一回服用分の薬液30の容量情報及び容器31の本数情報等を入力する。パソコン3は、入力された薬液30の容量情報及び容器31の本数情報を自動分注装置2に送信すると共に、ユーザが入力した容器31のサイズ情報及び薬液30の増量あるいは減量等の情報も併せて自動分注装置2に送信する。
プリンタ4は、自動分注装置2が分注した容器31の本数、容器31内の薬液30の容量、薬液30の種類等の情報を、用紙やシール等の紙媒体に印刷出力する。
【0018】
図2は、自動分注装置2の概略構成を示す平面図である。同図において自動分注装置2は、鉛直軸10aを回転中心としてフレーム5に回転自在に設けられた移送部10を備えている。移送部10は、
図1に示すように、回転部材としての第1ターンテーブル10b及び第2ターンテーブル10c、図示しないテーブル回転モータ、支持板10d、図示しないテーブル昇降モータ等を備えている。
円板状の第1ターンテーブル10bは、周縁近傍に容器31が通過可能な大きさの貫通穴が90度間隔で四個形成されており、各貫通穴と対応する位置にはガイド部10eがそれぞれ設けられている。第2ターンテーブル10cは第1ターンテーブル10bと同形状で同様に構成されており、四個の貫通穴及びこれと対応するガイド部10fをそれぞれ有している。第2ターンテーブル10cは上下動自在に構成されており、第1ターンテーブル10bに対して近接離間自在に構成されている。
【0019】
図示しないテーブル回転モータは、第1ターンテーブル10bの上方においてフレーム5に固定されている。図示しないテーブル回転モータは回転軸を介して第1ターンテーブル10bを回転させ、第1ターンテーブル10bを一方向(本実施形態では左回り)に90度回転させた後に所定時間(本実施形態では1sec)停止する処理を繰り返す。第2ターンテーブル10cは、
図1に示す連結ガイド10gによって第1ターンテーブル10bに連結されており、第1ターンテーブル10bと同期して回転する。
【0020】
平板状の支持板10dは、第2ターンテーブル10cの下方に配置され第2ターンテーブル10cを下方から支持しており、各ターンテーブル10b,10cに形成された貫通穴に挿通された容器31の底部を支持する。
図2に示すように支持板10dは、各ターンテーブル10b,10cに対して、後述する容器供給部11、薬液充填部12、及び容器封止部13に相当する位置では各ターンテーブル10b、10cに形成された貫通穴を閉塞すべく各貫通穴の下方に位置し、容器排出部14に相当する位置では前記貫通穴を閉塞しないように貫通穴の下方において切り欠かれた形状を呈している。支持板10dは、各ターンテーブル10b,10cのように回転はしないが、上下動自在に設けられている。
【0021】
図示しないテーブル昇降モータは、第1ターンテーブル10bの近傍においてフレーム5に固定されている。図示しないテーブル昇降モータは、その出力軸を支持板10dに接続されており駆動により支持板10dを昇降させるが、上述のように支持板10dが第2ターンテーブル10cを支持しているため、支持板10dの昇降動作に同期して第2ターンテーブル10cも昇降する。この昇降動作により、各ターンテーブル10b,10c間の間隔が変化する。
図示しないテーブル昇降モータは、図示しないテーブル回転モータが各ターンテーブル10b,10cを90度回転させた後に所定時間停止している間に、支持板10d及び第2ターンテーブル10cを上昇させ、その後に下降させる。支持板10d及び第2ターンテーブル10cを上昇させることにより、容器31に設けられた後述する充填口34を薬液充填部12及び容器封止部13にそれぞれ近接させることができる。
【0022】
図2に示すように自動分注装置2は、上述した移送部10、容器供給部11、薬液充填部12、容器封止部13、容器排出部14、洗浄部15を有している。
容器供給部11は、空でかつ未封止状態の容器31を箱状の容器収容部材11aに収容し、収容された容器31を任意の間隔で一つずつ移送部10に供給する。本実施形態では、容器収容部材11aには容器31が倒伏した状態で収容され、容器収容部材11aの底面に設けられた供給孔から落下した容器31は、落下経路に沿って充填口34を上方に向けた正立状態に変位しつつ移送部10に供給される。
移送部10は、正立状態の容器31を各ターンテーブル10b,10cに形成された貫通穴に挿通し、下方に位置する支持板10dで容器31を保持しつつ回転する。
【0023】
移送部10の回転により正立状態の容器31が薬液充填部12に到達すると、パソコン3によって入力された一回服用分の薬液30の容量情報及び容器31の本数情報に基づいて、容器31に対する薬液30の充填が行われる。薬液充填部12は薬液30が貯容された薬液タンク12aを備えており、薬液タンク12a内から搬送される薬液30を図示しないノズル等により充填口34から容器31の内部に充填する。このように薬液充填部12では、一つの容器31に対して一回服用分に相当する所定量の薬液30が充填される。
【0024】
容器封止部13は、薬液30が充填された容器31の充填口34を封止する機能を有している。容器封止部13は、超音波振動子、ホーン、加圧台等を有する周知の超音波振動装置であり、充填口34を超音波振動子及び加圧台によって挟み込み、ホーンによって超音波振動子を振動させて、超音波振動と加圧とによって生じる摩擦熱により充填口34を溶融固着させて容器31を封止する。なお、容器封止部13として、ヒータ等の熱を用いる方法や圧着機等の圧力を用いる方法により充填口34を固着させる構成等、充填口34が固着できるのであればどのような構成のものを採用してもよい。
【0025】
容器排出部14は、薬液が充填された容器31を移送部10から排出させて収容ボックス8内に収容する。移送部10からの容器31の排出は、各ターンテーブル10b,10cの回転により行われる。容器排出部14を構成する収容ボックス8は、取っ手9を把持して装置手前側に引き出すことによりフレーム5から装置手前側に向けて引き出され、フレーム5から外して持ち出し可能に構成されている。すなわち、収容ボックス8はフレーム5に対して着脱自在に構成されている。
収容ボックス8としては、薄い金属板からなるもの、樹脂板からなるもの等、持ち運びに適した重量であると共に適度な強度を有するものであればどのようなものを用いてもよく、例えば少なくとも前面に把持可能な網目状の穴部を有し、取っ手9を持たないカゴ状のものであってもよい。
【0026】
洗浄部15は、それぞれ図示しないポンプ、洗浄ノズル、排水部等を有しており、薬液30の充填動作が完了した後に薬液30が残留する薬液タンク12aを含む薬液充填部12を洗浄する。
ポンプは、洗浄水を薬液タンク12aに向けて送る。洗浄ノズルは薬液タンク12aの蓋12bの内面に取り付けられた拡散噴射ノズルであり、ポンプにより送られた洗浄水を薬液タンク12aの内部に向けて噴射する。排水部は、薬液充填部12の図示しないノズルに対して接離自在に設けられた、共に図示しない排水受け及び排水ポンプを有しており、薬液タンク12a内を洗浄して薬液充填部12の図示しないノズルから放出される洗浄水を排水ポンプによって吸引して装置外部に排出する。
【0027】
ここで、自動分注装置2に用いられる容器について説明する。
図3(a)は空の状態の容器31を示す斜視図、
図3(b)は薬液30が充填された状態の容器31を示す斜視図、
図3(c)は後述する摘み部35を破断した状態の容器31を示す斜視図である。
容器31は、ほぼ透明であって軟質な合成樹脂、例えば軟質ポリエチレンによって一体形成されており、容器本体32、容器本体32の一方側である
図3(a)における上方側に設けられた被充填部33及び充填口34、容器本体32の他方側である
図3(a)における下方側に設けられた摘み部35を有している。
【0028】
容器本体32はほぼ筒状に形成され、内部に薬液30を収容する収容空間が形成されている。容器本体32は、指で押圧することにより変形し、押圧を解除すると元の形状に戻る程度の柔軟性を有している。
容器本体32の他方側には、容器本体32の収容空間と連通する、円錐部36a及び咥え部36bを有する注出部36が形成されている。円錐部36aは、容器本体32よりも小径であって、下方に向かうに従い徐々に縮径する形状を呈している。咥え部36bは、円錐部36aの先端部に設けられたほぼ球形状の中空部であり、その形状及び大きさは患者が口に咥える際に適した形状及び大きさとなるように形成されている。
容器31は、容器本体32、円錐部36a、咥え部36bをそれぞれ水平方向に切断した際に、各部位の切断面に形成される円の直径が、容器本体32、咥え部36b、円錐部36aの順に小さくなるように形成されている。円錐部36aは上端部を切断部位としている。
【0029】
摘み部35は患者が把持し易い厚みの板状部材であり、注出部36を取り囲むように形成されている。摘み部35は先端部を把持して捻ることにより容器本体32から分離可能であり、容器本体32と破断されていない状態において咥え部36bと連通する球状部35aを有している。摘み部35を容器本体32から分離するまでは、容器本体32の下方は球状部35aによって密閉されている。
それぞれ球形状に形成された球状部35aと咥え部36bとは、それぞれの球形状が直径よりも縮径した位置に互いの境界部を有しており、摘み部35を容器本体32から分離する際に、球状部35aと咥え部36bとの境界部において互いに破断し易い構造を採用している。そして、摘み部35を容器本体32から分離した際に球状部35aと咥え部36bとが破断し、咥え部36bの下端に容器本体32内に収容された薬液60を外部に注出する注出口36cが形成される。
摘み部35は、注出部36の周囲に接続された接続部35bを一体的に有している。接続部35bは破断し易い薄肉状に形成されており、摘み部35を容器本体32から分離する際に、摘み部35を把持して捻る力によって容易に破断する。このような接続部35bを有することにより、患者が摘み部35を把持して容器本体32から摘み部35を分離する開封作業を容易化できる。
【0030】
被充填部33は、容器本体32の一方側に容器本体32と一体形成されており、容器本体32及び円錐部36aと同じ軸線に沿ったほぼ筒状に形成され、上述した薬液充填部12によって薬液30を容器本体32内に充填する際に薬液30の導入通路となる。
被充填部33は、その上端に薬液30を容器本体32内に充填する際に薬液30の入口となる充填口34を有している。充填口34から容器本体32内に薬液30が充填された後、充填口34は上述した容器封止部13によって封止される。
【0031】
容器31は、中空成形(ブロー成形)によって作成される。中空成形は、製品の外形が形成された一対の金型で、溶融された樹脂がパイプ状に形成されたいわゆるパリソンを挟持し、パリソン内に空気を吹き込んで製品を成形する成形方法である。成形された容器31の両側には、各金型の接合面に相当する部位に形成された、長手方向に沿ったパーティングラインが形成される。
容器31としては、複数のサイズのものが用いられる。本実施形態で使用可能な容器31は、例えば大、中、小の三つのサイズを有している。容器31は、サイズが大きくなるに連れて容器本体32の全長が長く形成され、他の部位は何れのサイズも同一形状である。本実施形態で示した容器31は、小サイズの容器を示している。
【0032】
自動分注装置2は、フレーム5の内部に、上述した移送部10、容器供給部11、薬液充填部12、容器封止部13、容器排出部14、洗浄部15の各部の動作を制御する制御部16が設けられている。制御部16は、コントローラ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有しており、自動分注装置2の全体制御を行う。制御部16は、入力インタフェースを介してパソコン3及び各種センサから入力される信号を受信し、この各種センサには、容器供給部11に設けられた容器30の有無、サイズ、向き等を検知する複数のセンサが含まれる。制御部16は、受信した信号に基づいて出力インタフェースを介して信号を送信し、上述した移送部10、容器供給部11、薬液充填部12、容器封止部13、容器排出部14、洗浄部15の各部に設けられたモータやポンプ等のアクチュエータの作動を制御する。
【0033】
制御部16を構成するコントローラは、CPU、ROM、RAM等を含む、いわゆるマイクロコンピュータであり、CPUはROMに格納されたプログラムを実行して自動分注装置2を作動させる。ROMは不揮発性メモリであって、CPUが実行するプログラムや自動分注装置2の全体制御を行うための情報等が格納されている。RAMは揮発性メモリであって、CPUが自動分注装置2の全体制御を行うときの情報等を一時的に記憶する。
図1に示すように、制御部16はコントローラ、入力インタフェース、出力インタフェース等が配置された基板16aを複数枚有しており、各基板16aはフレーム5に設けられた図示しない取付部に固定されている。
【0034】
制御部16は、上述したように自動分注装置2の全体動作制御を行う非常に重要な部位であり、精密電気部品が複数搭載された複数枚の基板16aを有している。この制御部16が搭載される自動分注装置2は薬液30を扱う装置であるため、フレーム5の内部に薬液30が飛散したり漏出したりする場合がある。このような飛散したり漏出したりした薬液30が基板16aに付着すると、基板16aが損傷して自動分注装置2の正常な動作制御を行うことができなくなる虞がある。
【0035】
上述の問題点を解消すべく、本発明の自動分注装置2では
図2に示すように、複数枚の基板16aを有する制御部16を、フレーム5の左側に配置された薬液充填部12及びフレーム5の左側から中央にかけて配置された容器封止部13から離隔した位置、すなわちフレーム5の右側に配置している。
この構成により、薬液30を容器31に対して充填する薬液充填部12及び薬液30が充填された容器31の充填口34を封止する容器封止部13から離隔した位置に複数枚の基板16aを有する制御部16が配置されているため、薬液充填部12及び容器封止部13からの薬液30の飛散や漏出が発生しても飛散あるいは漏出した薬液30が制御部16に到達する可能性を低減でき、制御部16の損傷に起因する自動分注装置2の故障発生を抑制できる。
【0036】
また本実施形態の自動分注装置2では、制御部16が有する各基板16aを覆うカバー部材17を有している。カバー部材17としては、金属の薄板や樹脂板等からなるものが用いられ、金属板としては塗装等の防錆処理が施されたものが好ましく用いられる。カバー部材17を用いることにより、フレーム5内で飛散あるいは漏出した薬液30が基板16aに到達する可能性を大幅に低減でき、制御部16の損傷に起因する自動分注装置2の故障発生をより一層抑制できる。
【0037】
さらに、本実施形態の自動分注装置2では薬液タンク12aを含む薬液充填部12を洗浄する洗浄部15を備えており、制御部16は
図2に示すように、フレーム5の左側に配置された洗浄部15から離隔した位置に配置されている。この構成により、洗浄部15からの洗浄水及び薬液30の飛散や漏出が発生しても飛散あるいは漏出した洗浄水及び薬液30が制御部16に到達する可能性を低減でき、制御部16の損傷に起因する自動分注装置2の故障発生を抑制できる。
【0038】
さらに本実施形態の自動分注装置2では、容器供給部11から供給された容器31を薬液充填部12、容器封止部13、容器排出部14に順次移送する移送部10として、容器31を保持して回転する各ターンテーブル10b,10cを有する構成を採用している。この構成により、容器31の供給、充填工程、封止工程、容器31の排出を円軌道上で行うことができ各部の設置スペースをコンパクト化できるため、フレーム5を大型化させることなくフレーム5内における制御部16の設置スペースを創出できる。
【0039】
さらに本実施形態の自動分注装置2では、薬液充填部12において薬液30が充填された後に容器封止部13において充填口34が封止され、その後に移送部10から排出された容器31が収容される、フレーム5に対して着脱自在な収容ボックス8を容器排出部14が有している。この構成により、薬液30が充填された複数個の容器31を収容ボックス8に収容した状態で持ち運ぶことができ、持ち運びの際に容器排出部14から他の運搬用の収容部材に容器31を移し替える作業が省略され、作業効率を向上できる。また、収容ホックス8を複数個用いることにより、収容ボックス8をそのまま容器31の保管用ボックスとして使用することもできる。
【0040】
さらに本実施形態の自動分注システム1では、上述した自動分注装置2に加えて出力装置としてのプリンタ3を有している。この構成により、自動分注装置2によって分注した容器31の、薬液30の種類や本数等を用紙やシール等の紙媒体に印刷出力し、出力物を容器排出部14内に入れたり容器31に貼付したりして排出された容器31に紐付けておくことにより、薬液30が充填された容器31の内容や本数等の個別情報を容易に確認でき、薬液30の処方や容器31の保管を正確に行うことができる。特に、収容ボックス8等のようにフレーム5に対して着脱自在な収容部材の中に容器31を収容する場合には有効である。
【0041】
通常、自動分注装置2は一患者に対して一回の使用であるため、当該患者への分注量が14本(例えば1日朝夕各1回服用1週間分)であれば、薬液30が充填された14本の容器31が収容ボックス8に収容された時点で自動分注装置2の動作が停止する。自動分注装置2の動作が停止した後、プリンタ4によって患者氏名、薬液30の種類、容器31の大きさ(薬液の容量)、容器31の数量等の分注情報を紙やシール等の紙媒体に印刷出力し、印刷された紙媒体を収容ボックス8に入れたり貼付したりして紙媒体と収容ボックス8と排出された容器31とをそれぞれ紐付けておくことにより、所定の患者単位における薬剤管理を正確に行うことができる。
そして、例えば入院患者数に応じた複数の収容ボックス8を用意し、各収容ボックス8と上述した分注情報が印刷された紙媒体とを紐付けて各収容ボックス8を所定の場所に集積させることにより、病室毎、階数毎、病棟毎等の薬剤管理を行うことができる。
【0042】
また、薬剤の調剤が行われた後には、調剤された薬品の種類、容量、数量等が処方箋に合致しているか否かを確認する調剤薬鑑査工程(最終監査工程)が、調剤を行った薬剤師とは異なる薬剤師によって行われる。本発明の構成では、この調剤薬鑑査工程を行う際に、上述したように収容ボックス8と上述した分注情報が印刷された紙媒体とを紐付けておくことにより、薬剤師は処方箋、収容ボックス8内の容器31、印刷された紙媒体を照合して調剤薬鑑査工程を行う。
従来の構成では、容器排出部から排出された薬剤(容器)を患者毎に用意された別の収容容器に移し替え、その後に調剤薬鑑査工程を行っていた。このため薬剤を自動分注装置から他の収容容器に移し替える際に移し替え漏れが発生する虞があった。本発明では自動分注装置2から排出された薬剤(容器31)を収容した収容ボックス8がフレーム5から取り外せるために薬剤を移し替える必要がなく、上述の問題点を解消することができる。この作用効果は、上述した薬剤管理を行う際も同様である。また、分注情報が印刷された紙媒体が容器31を収容した収容ボックス8に紐付けられているので、調剤薬鑑査工程を行う際に処方箋と紙媒体とを照合でき、調剤薬鑑査工程の信頼性を向上できると共に作業性を向上できる。
【0043】
図4は、本実施形態の変形例に用いられる容器31Aを示している。上述した容器31に代えて用いられる容器31Aは容器31と比較すると、摘み部35の外形部である先端両角部に面取り部35cがそれぞれ形成されている点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
各面取り部35cは、正面視において切り取られる部位がほぼ直角二等辺三角形状となるように形成されており、摘み部35の先端に、摘み部35を把持して捻ることが可能となる大きさの部位が残存する程度の大きさとなるように形成されている。
【0044】
容器31は、上述したように収容された容器収容部材11aの底面に設けられた供給孔から移送部10に向けて落下して供給されるが、容器31が落下する落下経路内において、容器31の鋭角的に尖って形成された摘み部35の角部が経路内に引っ掛かり、容器31が落下経路内で停止してしまう不具合が希に発生していた。
この変形例で示した容器31Aを容器31に代えて用いることにより、摘み部35には面取り部35cが形成されているため容器31Aが上記落下経路内に引っ掛かることが防止され、容器供給時に容器供給部11において容器が引っ掛かり供給されないという不具合の発生を防止できる。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を例示したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0046】
1 自動分注システム
2 自動分注装置
4 出力装置(プリンタ)
5 装置本体(フレーム)
8 収容部材(収容ボックス)
10 移送部
10b 回転部材(第1ターンテーブル)
10b 回転部材(第2ターンテーブル)
11 容器供給部
12 薬液充填部
12a 薬液タンク
13 容器封止部
14 容器排出部
15 洗浄部
16 制御部
17 カバー部材
30 薬液
31,31A 容器
32 容器本体
33 被充填部
34 充填口
35 摘み部
35c 面取り部