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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162884
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/48 20060101AFI20221018BHJP
   H01Q 9/30 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H01Q1/48
H01Q9/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067939
(22)【出願日】2021-04-13
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.3GPP
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】田保 泰夫
【テーマコード(参考)】
5J046
【Fターム(参考)】
5J046AA03
5J046AA12
5J046AB06
5J046AB13
5J046TA05
(57)【要約】
【課題】放射効率を改善でき、かつ、配置の自由度を向上できるアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ装置1は、所定周波数で共振するモノポールアンテナ2と、第1端31及び第2端32を有し第1端31でモノポールアンテナ2に接続される同軸ケーブル3とを備える。同軸ケーブル3においてモノポールアンテナ2の先端2aから所定距離D1だけ離れた第1部位33は、同軸ケーブル3における第1部位33と第2端32との間の第2部位34と、第1部位33での同軸ケーブル3の径方向において対向する。所定距離D1は、所定周波数に対応する所定波長の3/8以上5/8以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周波数で共振するモノポールアンテナと、
第1端及び第2端を有し、前記第1端で前記モノポールアンテナに接続される同軸ケーブルと、
を備え、
前記同軸ケーブルにおいて前記モノポールアンテナの先端から所定距離だけ離れた第1部位は、前記同軸ケーブルにおける前記第1部位と前記第2端との間の第2部位と、前記第1部位での前記同軸ケーブルの径方向において対向し、
前記所定距離は、前記所定周波数に対応する所定波長の3/8以上5/8以下である、
アンテナ装置。
【請求項2】
前記所定距離は、前記モノポールアンテナの先端から前記同軸ケーブルの前記第1端までの物理的な距離と、前記同軸ケーブル上での前記第1端から前記第1部位までの物理的な距離との合計である、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記モノポールアンテナは、放射電極と、グランド電極とを有し、
前記同軸ケーブルは、内側導体と、前記内側導体を囲う外側導体とを有し、
前記同軸ケーブルの前記第1端に対応する前記内側導体の端部は、前記放射電極に接続され、
前記同軸ケーブルの前記第1端に対応する前記外側導体の端部は、前記グランド電極に接続され、
前記モノポールアンテナの先端は、前記放射電極において前記内側導体から最も遠い端である、
請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1部位に対応する前記外側導体の部位と前記第2部位に対応する前記外側導体の部位との間の距離は、前記所定波長の1/10以下である、
請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1部位と前記第2部位とは接触する、
請求項1~4のいずれか一つに記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記同軸ケーブルは、前記第1部位から前記第2部位までの中間ケーブル部分を有し、
前記中間ケーブル部分は、前記第1部位が前記第1部位での前記同軸ケーブルの径方向において前記第2部位と対向するように、曲がった形状である、
請求項1~5のいずれか一つに記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記中間ケーブル部分は、巻数が1のコイル状である、
請求項6に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記中間ケーブル部分は、巻数が2以上のコイル状である、
請求項6に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記同軸ケーブルは、前記第1端から前記第1部位までの第1ケーブル部分と、前記第2部位から前記第2端までの第2ケーブル部分とを有し、
前記第1ケーブル部分と前記第2ケーブル部分とは、同じ方向又は異なる方向に延びる、
請求項1~8のいずれか一つに記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記第2部位は、前記同軸ケーブルにおける前記第1部位から前記第2端までの部分において前記第1部位に最も近接する部位である、
請求項1~9のいずれか一つに記載のアンテナ装置。
【請求項11】
所定周波数で共振するモノポールアンテナと、
第1端及び第2端を有し、前記第1端で前記モノポールアンテナに接続される同軸ケーブルと、
を備え、
前記同軸ケーブルにおいて前記モノポールアンテナの先端から所定距離だけ離れた第1部位は、前記同軸ケーブルにおける前記第1部位と前記第2端との間の第2部位と容量結合し、
前記所定距離は、前記所定周波数に対応する所定波長の3/8以上5/8以下である、
アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、アンテナ装置を開示する。特許文献1に開示されたアンテナ装置は、放射素子及び内部グランドを有するアンテナと、内側導体が放射素子に接続され、外側導体が内部グランドに接続された同軸ケーブルと、同軸ケーブルの外側導体と容量結合した外部グランドと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/047033号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたアンテナ装置では、同軸ケーブルの外側導体を外部グランドに容量結合させる必要がある。外部グランドは、例えば、アンテナ装置を実装する無線装置が元々備えている基板であり、外部グランドとの容量結合のために同軸ケーブルの外皮の表面に導体を設けている。特許文献1のアンテナ装置では、同軸ケーブルの外皮の表面に設けた導体を、外部グランドに容量結合させるために、アンテナ装置の配置に制約が生じる。
【0005】
本開示は、放射効率を改善でき、かつ、配置の自由度を向上できるアンテナ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様にかかるアンテナ装置は、所定周波数で共振するモノポールアンテナと、第1端及び第2端を有し第1端でモノポールアンテナに接続される同軸ケーブルとを備える。同軸ケーブルにおいてモノポールアンテナの先端から所定距離だけ離れた第1部位は、同軸ケーブルにおける第1部位と第2端との間の第2部位と、第1部位での同軸ケーブルの径方向において対向する。所定距離は、所定周波数に対応する所定波長の3/8以上5/8以下である。
【0007】
本開示の一態様にかかるアンテナ装置は、所定周波数で共振するモノポールアンテナと、第1端及び第2端を有し第1端でモノポールアンテナに接続される同軸ケーブルとを備える。同軸ケーブルにおいてモノポールアンテナの先端から所定距離だけ離れた第1部位は、同軸ケーブルにおける第1部位と第2端との間の第2部位と容量結合する。所定距離は、所定周波数に対応する所定波長の3/8以上5/8以下である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の態様によれば、放射効率を改善でき、かつ、配置の自由度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1にかかるアンテナ装置の構成例を示す概略図
図2図1のアンテナ装置の同軸ケーブルの断面図である。
図3図1のアンテナ装置の同軸ケーブルに流れる電流の一例の説明図
図4図1のアンテナ装置の同軸ケーブルに流れる電流の他例の説明図
図5図1のアンテナ装置の電流分布のシミュレーションの結果を示す図
図6図1のアンテナ装置において所定距離が所定波長の1/2である場合のリターンロスの測定結果を示すグラフ
図7図1のアンテナ装置において所定距離が所定波長の5/8である場合のリターンロスの測定結果を示すグラフ
図8図1のアンテナ装置において所定距離が所定波長の3/8である場合のリターンロスの測定結果を示すグラフ
図9】比較例のアンテナ装置のリターンロスの測定結果を示すグラフ
図10】実施の形態2にかかるアンテナ装置の構成例を示す概略図
図11図10のアンテナ装置のリターンロスの測定結果を示すグラフ
図12】実施の形態3にかかるアンテナ装置の構成例を示す概略図
図13図12のアンテナ装置のリターンロスの測定結果を示すグラフ
図14】実施の形態4にかかるアンテナ装置の構成例を示す断面図
図15図14のアンテナ装置のリターンロスの測定結果を示すグラフ
図16】一変形例にかかるアンテナ装置の構成例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1.実施の形態]
以下、場合によって図面を参照しながら、本開示の実施の形態について説明する。ただし、以下の実施の形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。以下の実施の形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。また、各要素の寸法比率は図面に図示された比率に限られるものではない。
【0011】
[1.1 実施の形態1]
[1.1.1 概要]
図1は、実施の形態1にかかるアンテナ装置1の構成例を示す概略図である。アンテナ装置1は、例えば、センサとともに、人が身に着ける物体(例えば、ヘルメット、時計等)に取り付けられる。センサは、人の状態に関する情報(例えば、心拍、体温等)を検知して、検知した情報を示す電気信号を出力する。アンテナ装置1は、センサからの電気信号を無線信号として送信する。これによって、人に関する情報を、遠隔地から取得可能となる。
【0012】
図1のアンテナ装置1は、モノポールアンテナ2と、同軸ケーブル3とを備える。モノポールアンテナ2は、所定周波数で共振する。同軸ケーブル3は、第1端31及び第2端32を有する。同軸ケーブル3は、第1端31でモノポールアンテナ2に接続される。同軸ケーブル3においてモノポールアンテナ2の先端2aから所定距離D1だけ離れた第1部位33は、同軸ケーブル3における第1部位33と第2端32との間の第2部位34と、第1部位33での同軸ケーブル3の径方向において対向する。所定距離D1は、所定周波数に対応する所定波長の3/8以上5/8以下である。
【0013】
アンテナ装置1では、同軸ケーブル3の第1部位33と第2部位34とが第1部位33での同軸ケーブル3の径方向において対向していることによって、第1部位33と第2部位34とで同軸ケーブル3の外側導体5が部分的に近接する。これによって、同軸ケーブル3の第1部位33から第2端32までの部分が理想的なグランドとしてふるまう。さらに、モノポールアンテナ2の先端2aから同軸ケーブル3の第1部位33までの所定距離D1が、所定周波数に対応する所定波長の3/8以上5/8以下である。これによって、同軸ケーブル3の第1端31から第1部位33までの部分が理想的なアンテナとしてふるまう。これによって、モノポールアンテナ2の先端2aから同軸ケーブル3の第1部位33までが、所定周波数で共振する理想的なλ/2モノポールアンテナのような挙動を示す。換言すれば、第1部位33を第2部位34に第1部位33での同軸ケーブル3の径方向において対向させることによって、所望の周波数帯域に整合するように、同軸ケーブル3の電気的性質を調整できる。その結果、放射効率を改善できる。アンテナ装置1では、同軸ケーブル3の第1部位33と第2部位34とを第1部位33での同軸ケーブル3の径方向において対向させるだけでよく、特許文献1のように同軸ケーブル3に別途設けた導体を外部グランドに容量結合させる必要がないから、配置の自由度を向上できる。一般に、同軸ケーブル3が長すぎると放射効率が低下することが知られている。アンテナ装置1によれば、同軸ケーブル3の第1部位33と第2部位34とを第1部位33での同軸ケーブル3の径方向において対向させることによって、このような放射効率の低下を抑制しながら、同軸ケーブル3を長くできる。したがって、モノポールアンテナ2がセンサから遠く、同軸ケーブル3を長くする必要がある場合にも、対応可能であるから、配置の自由度を向上できる。このように、アンテナ装置1によれば、放射効率を改善でき、かつ、配置の自由度を向上できる。
【0014】
[1.1.2 詳細]
以下、図1のアンテナ装置1について更に詳細に説明する。アンテナ装置1は、モノポールアンテナ2と、同軸ケーブル3とを備える。
【0015】
図1のモノポールアンテナ2は、所定周波数で共振するように構成される。所定周波数は、特に限定されないが、例えば、Wi-Fiによる無線通信の2.4GHz付近の周波数帯域(例えば、2400MHz~2500MHz)の周波数である。所定周波数は、Wi-Fiによる無線通信の5GHz付近の周波数帯域(例えば、5150MHz~5800MHz)の周波数であってよい。所定周波数は、例えば、2G(第2世代移動通信)規格のミッドバンド、4G(第4世代移動通信)規格のローバンド、5G(第5世代移動通信)規格のローバンド等の周知の周波数帯域から選択されてよい。2G規格は、例えば、GSM(登録商標)規格(GSM:Global System for Mobile Communications)である。4G規格は、例えば、3GPP LTE規格(LTE:Long Term Evolution)である。5G規格は、例えば、5G NR(New Radio)である。また、所定周波数は、UWB、Bluetooth(登録商標)、BLE(Bluetooth Low Energy)、無線LAN、特定小電力無線、近距離無線通信の種々の通信規格に用いられる周波数帯域から選択されてよい。
【0016】
図1のモノポールアンテナ2は、平面アンテナ(パッチアンテナ)である。モノポールアンテナ2は、基板20と、放射電極21と、グランド電極22とを備える。
【0017】
基板20は、例えば、誘電体基板である。基板20は、矩形の板状である。誘電体基板の例としては、低温同時焼成セラミックス(LTCC)多層基板、エポキシ、ポリイミド等の樹脂から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、より低い誘電率を有する液晶ポリマ(LCP)から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、フッ素系樹脂から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、及び、LTCC以外のセラミックス多層基板が挙げられる。
【0018】
放射電極21及びグランド電極22は、基板20の一面に形成される。放射電極21及びグランド電極22の各々は、基板20の一面に形成される導体パターンを備えて構成される。放射電極21は、いわゆる接地型λ/4モノポールアンテナに対応する形状を有する。図1では、放射電極21は、基板20の長さ方向に沿って延びる矩形帯状である。放射電極21の電気長は、所定周波数で共振するように設定される。電気長は、媒体の物理的な長さに対して、媒体の電気的な長さを意味する。電気長は、媒体の長さを信号の遅延時間を基準に表わしたものであるともいえる。グランド電極22は、放射電極21に対するグランドとして作用する電極である。グランド電極22は、基板20の一面に形成される導体パターンを備えて構成される。なお、モノポールアンテナ2は、誘導性リアクタンス(インダクタ)又は容量性リアクタンス(キャパシタ)である調整素子を備えてよい。調整素子は、放射電極21の電気長の調整に用いられる。調整素子は、別個の回路素子、又は、IPD(Integrated Passive Device)であってよい。
【0019】
図1の同軸ケーブル3は、第1端31及び第2端32を有する。同軸ケーブル3の第1端31は、モノポールアンテナ2に接続される。同軸ケーブル3の第2端32は、上述のセンサ等の外部回路に接続される。図1に示すように、同軸ケーブル3は、内側導体4と、内側導体4を囲う外側導体5とを有する。同軸ケーブル3は、更に、内側導体4と外側導体5との間に配置される絶縁体6と、外側導体5を囲うシース7とを備える。同軸ケーブル3の構成には、従来周知の構成を採用できるから、詳細な説明は省略する。
【0020】
上述したように、同軸ケーブル3は、第1端31で、モノポールアンテナ2に接続される。より詳細には、同軸ケーブル3の第1端31に対応する内側導体4の端部4aが、放射電極21に接続される。図1では、内側導体4の端部4aは、放射電極21の長さ方向の第1端に接続される。同軸ケーブル3の第1端31に対応する外側導体5の端部5aが、グランド電極22に接続される。
【0021】
図1の同軸ケーブル3は、直線状ではなく、同軸ケーブル3の一部が曲がった形状である。具体的には、図1に示すように、同軸ケーブル3の第1部位33は、同軸ケーブル3における第1部位33と第2端32との間の第2部位34と、第1部位33での同軸ケーブル3の径方向において対向する。さらに、第2部位34は、同軸ケーブル3の第1部位33から第2端32までの部分(後述する第2ケーブル部分37)において第1部位33に最も近接する部位である。そのため、同軸ケーブル3の第1部位33から第2端32までの部分(後述する第2ケーブル部分37)においては、同軸ケーブル3上での第1部位33からの距離に対する空間上での第1部位33からの距離の変化が、第2部位34において極小値を持つことになる。一方で、本実施の形態において、同軸ケーブル3の第1部位33は、同軸ケーブル3における第1部位33と第1端31との間の部位とは、第1部位33での同軸ケーブル3の径方向において対向していない。換言すれば、第1部位33は、同軸ケーブル3における第1部位33と第1端31との間の部位とは、容量結合しないように設定されている。これによって、モノポールアンテナ2の先端2aから同軸ケーブル3の第1部位33までの部分(第1ケーブル部分36)が理想的なアンテナとしてふるまいやすくなる。なお、同軸ケーブル3の第1部位33は、同軸ケーブル3における第1部位33と第1端31との間の部位と容量結合しないのであれば、対向してもよい。
【0022】
第1部位33は、同軸ケーブル3においてモノポールアンテナ2の先端2aから所定距離D1だけ離れた部位である。モノポールアンテナ2の先端2aは、同軸ケーブル3の内側導体4から物理的に遠い端である。本実施の形態では、モノポールアンテナ2の先端2aは、モノポールアンテナ2の基板20において内側導体4から最も遠い端ではない。モノポールアンテナ2の先端2aは、モノポールアンテナ2の放射電極21において内側導体4から最も遠い端(図1では、放射電極21の長さ方向の第2端)である。つまり、モノポールアンテナ2の先端2aは、モノポールアンテナ2において放射に寄与する部分の先端である。
【0023】
所定距離D1は、所定周波数に対応する所定波長の3/8以上5/8以下である。所定距離D1は、モノポールアンテナ2の先端2aから同軸ケーブル3の第1端31までの物理的な距離D11と、同軸ケーブル3上での第1端31から第1部位33までの物理的な距離D12との合計である。「物理的な距離」は、2点間の空間的な距離を意味する。したがって、「物理的な距離」は、2点間の媒体の物性によっては変化しない。距離D11は、モノポールアンテナ2の先端2aと同軸ケーブル3の第1端31との間の最短距離である。距離D12は、上述したように、同軸ケーブル3上での第1端31から第1部位33までの物理的な距離であって、第1端31と第1部位33との間の最短距離と必ずしも一致しない。同軸ケーブル3において第1端31と第1部位33との間の部分(後述する第1ケーブル部分36)の真っすぐであるか曲がっているかにかかわらず、距離D12は一定である。
【0024】
同軸ケーブル3は、第1部位33から第2部位34までの中間ケーブル部分35を有する。中間ケーブル部分35は、第1部位33が第1部位33での同軸ケーブル3の径方向において第2部位34と対向するように、曲がった形状である。より詳細には、同軸ケーブル3は、第1部位33が第1部位33での同軸ケーブル3の径方向において第2部位34と対向し、かつ、第2部位34において同軸ケーブル3の第1部位33から第2端32までの部分と最も近接するように、曲がった形状である。中間ケーブル部分35は、巻数が1のコイル状(ループ状)である。そのため、第1部位33と第2部位34とは交差している。同軸ケーブル3は、第1端31から第1部位33までの第1ケーブル部分36と、第2部位34から第2端32までの第2ケーブル部分37とを有する。第1ケーブル部分36と第2ケーブル部分37とは、同じ方向に延びる。
【0025】
図1では、第1部位33と第2部位34とが対向する対向部分を符号P1で示している。図2は、同軸ケーブル3の断面図、より詳細には、同軸ケーブル3において第1部位33と第2部位34との対向部分P1の断面図である。図2に示すように、第1部位33と第2部位34とは接触する。同軸ケーブル3では、外側導体5において第1部位33に対応する部位51と、外側導体5において第2部位34に対応する部位52とが互いに近接し、これによって、容量結合している。したがって、図1に示す同軸ケーブル3においては、対向部分P1において、高周波電流が第1部位33と第2部位34との間を通る経路が形成される。
【0026】
[1.1.3 電流分布のシミュレーション]
図3は、アンテナ装置1の同軸ケーブル3に流れる電流の一例の説明図であり、図4は、アンテナ装置1の同軸ケーブル3に流れる電流の他例の説明図である。なお、図3及び図4では、説明をわかりやすくするためだけに、アンテナ装置1を概略的なモデルで示している。
【0027】
図3は、同軸ケーブル3をモノポールアンテナ2に向かう電流I1が流れる場合を示す。電流I1は、同軸ケーブル3の第2ケーブル部分37を通って対向部分P1に到達すると、対向部分P1の第2部位34を通過して中間ケーブル部分35に向かう電流I11と、対向部分P1で第2部位34から第1部位33に移動して中間ケーブル部分35に向かう電流I12及び第1ケーブル部分36に向かう電流I13に分岐する。電流I11と電流I12は互いに打ち消し合う向きに流れることになる。そのため、中間ケーブル部分35では電流が弱くなると考えられる。
【0028】
図4は、同軸ケーブル3をモノポールアンテナ2からの電流I2が流れる場合を示す。電流I2は、同軸ケーブル3の第1ケーブル部分36を通って対向部分P1に到達すると、対向部分P1の第1部位33を通過して中間ケーブル部分35に向かう電流I21と、対向部分P1で第1部位33から第2部位34に移動して中間ケーブル部分35に向かう電流I22及び第2ケーブル部分37に向かう電流I23に分岐する。電流I21と電流I22は互いに打ち消し合う向きに流れることになる。そのため、中間ケーブル部分35では電流が弱くなると考えられる。
【0029】
アンテナ装置1では、同軸ケーブル3の第1部位33と第2部位34とが第1部位33での同軸ケーブル3の径方向において対向していることによって、第1部位33と第2部位34とで同軸ケーブル3の外側導体5が部分的に近接する。これによって、同軸ケーブル3の第1部位33から第2端32までの部位が理想的なグランドとしてふるまうと考えられる。
【0030】
図5は、アンテナ装置1の電流分布のシミュレーションの結果を示す図である。図5のシミュレーションは、図3及び図4で示すアンテナ装置1の概略的なモデルを用いて実施した。図5において、P2で囲む領域では、電流強度が弱い。つまり、同軸ケーブル3において、第1部位33から第2端32までの部分である、中間ケーブル部分35及び第2ケーブル部分37では、電流強度が弱い。一方で、第1ケーブル部分36の両端部分R1,R2では、特に、電流強度が強い。このことから、同軸ケーブル3の第1部位33から第2端32までの部分(中間ケーブル部分35及び第2ケーブル部分37)が理想的なグランドとしてふるまい、モノポールアンテナ2の先端2aから同軸ケーブル3の第1部位33までの部分(第1ケーブル部分36)が理想的なアンテナとしてふるまうことが確認された。
【0031】
このように、同軸ケーブル3を曲げて、同軸ケーブル3においてモノポールアンテナ2の先端2aから所定距離D1だけ離れた第1部位33を、同軸ケーブル3における第1部位33と第2端32との間の第2部位34と、第1部位33での同軸ケーブル3の径方向において対向させることで、同軸ケーブル3の第1部位33から第2端32までの間の部分に高周波電流が流れにくい状態となり、アンテナ装置1を理想的なλ/2モノポールアンテナとして共振させることができる。
【0032】
[1.1.4 リターンロスの測定]
同軸ケーブル3の第1部位33までの部分(第1ケーブル部分36)が理想的なアンテナとしてふるまうためには、所定距離D1は、上述したように、所定周波数に対応する所定波長の3/8以上5/8以下であるとよい。このことを確認するために、所定距離D1を変えて、アンテナ装置1のリターンロスの測定を行った。リターンロスの測定では、所定周波数を2442MHzとして所定距離D1を設定した。
【0033】
図6は、アンテナ装置1において所定距離D1が所定波長の1/2である場合のリターンロスの測定結果を示すグラフである。図7は、アンテナ装置1において所定距離D1が所定波長の5/8である場合のリターンロスの測定結果を示すグラフである。図8は、アンテナ装置1において所定距離D1が所定波長の3/8である場合のリターンロスの測定結果を示すグラフである。図9は、比較例のアンテナ装置のリターンロスの測定結果を示すグラフである。比較例のアンテナ装置は、アンテナ装置1とは、同軸ケーブル3が直線状に配置されている点で異なっている。
【0034】
図6図9のグラフから、周波数2400MHz(Δ1)、2442MHz(Δ2)、及び2484MHz(Δ3)での放射効率をまとめると下表1のようになる。
【0035】
【表1】
【0036】
表1から明らかなように、所定距離D1が所定周波数に対応する所定波長の3/8以上5/8以下であると、放射効率の改善効果が高いことが確認された。また、表1から、所定距離D1が所定波長の1/2であることが好ましいことがわかった。
【0037】
[1.1.5 効果等]
以上述べたアンテナ装置1は、所定周波数で共振するモノポールアンテナ2と、第1端31及び第2端32を有し第1端31でモノポールアンテナ2に接続される同軸ケーブル3とを備える。同軸ケーブル3においてモノポールアンテナ2の先端2aから所定距離D1だけ離れた第1部位33は、同軸ケーブル3における第1部位33と第2端32との間の第2部位34と、第1部位33での同軸ケーブル3の径方向において対向する。所定距離D1は、所定周波数に対応する所定波長の3/8以上5/8以下である。この構成によれば、放射効率を改善でき、かつ、配置の自由度を向上できる。
【0038】
換言すれば、アンテナ装置1は、所定周波数で共振するモノポールアンテナ2と、第1端31及び第2端32を有し第1端31でモノポールアンテナ2に接続される同軸ケーブル3とを備える。同軸ケーブル3においてモノポールアンテナ2の先端2aから所定距離D1だけ離れた第1部位33は、同軸ケーブル3における第1部位33と第2端32との間の第2部位34と容量結合する。所定距離D1は、所定周波数に対応する所定波長の3/8以上5/8以下である。この構成によれば、放射効率を改善でき、かつ、配置の自由度を向上できる。
【0039】
また、所定距離D1は、モノポールアンテナ2の先端2aから同軸ケーブル3の第1端31までの物理的な距離D11と、同軸ケーブル3上での第1端31から第1部位33までの物理的な距離D12との合計である。この構成によれば、放射効率を改善でき、かつ、配置の自由度を向上できる。
【0040】
また、同軸ケーブル3は、内側導体4と、内側導体4を囲う外側導体5とを有する。モノポールアンテナ2は、同軸ケーブル3の第1端31に対応する内側導体4の端部4aが接続される放射電極21と、同軸ケーブル3の第1端31に対応する外側導体5の端部5aが接続されるグランド電極22とを有する。モノポールアンテナ2の先端2aは、放射電極21において内側導体4から最も遠い端である。この構成によれば、放射効率を改善でき、かつ、配置の自由度を向上できる。
【0041】
また、第1部位33と第2部位34とは接触する。この構成によれば、放射効率を改善でき、かつ、配置の自由度を向上できる。
【0042】
また、同軸ケーブル3は、第1部位33から第2部位34までの中間ケーブル部分35を有する。中間ケーブル部分35は、第1部位33が第1部位33での同軸ケーブル3の径方向において第2部位34と対向するように、曲がった形状である。この構成によれば、同軸ケーブル3を曲げるだけでよいから、アンテナ装置1の製造の容易化が図れる。
【0043】
また、中間ケーブル部分35は、巻数が1のコイル状である。この構成によれば、同軸ケーブル3を1回巻くだけでよいから、アンテナ装置1の製造の容易化が図れる。
【0044】
また、同軸ケーブル3は、第1端31から第1部位33までの第1ケーブル部分36と、第2部位34から第2端32までの第2ケーブル部分37とを有する。第1ケーブル部分36と第2ケーブル部分37とは、同じ方向に延びる。この構成によれば、モノポールアンテナ2とモノポールアンテナ2の接続先の外部回路との位置関係に応じた同軸ケーブル3の調整が容易になる。
【0045】
また、第2部位34は、同軸ケーブル3における第1部位33から第2端32までの部分(第2ケーブル部分37)において第1部位33に最も近接する部位である。この構成によれば、放射効率を改善でき、かつ、配置の自由度を向上できる。
【0046】
[1.2 実施の形態2]
図10は、実施の形態2にかかるアンテナ装置1Aの構成例を示す概略図である。図10のアンテナ装置1Aは、モノポールアンテナ2と、同軸ケーブル3Aとを備える。
【0047】
図10の同軸ケーブル3Aは、直線状ではなく、同軸ケーブル3Aの一部が曲がった形状である。具体的には、図10に示すように、同軸ケーブル3Aの第1部位33は、同軸ケーブル3Aにおける第1部位33と第2端32との間の第2部位34と、第1部位33での同軸ケーブル3Aの径方向において対向する。同軸ケーブル3Aの中間ケーブル部分35は、第1部位33が第1部位33での同軸ケーブル3Aの径方向において第2部位34と対向するように、曲がった形状である。同軸ケーブル3Aの中間ケーブル部分35は、巻数が2以上のコイル状(ループ状)である。そのため、第1部位33と第2部位34とは交差している。同軸ケーブル3Aは、第1端31から第1部位33までの第1ケーブル部分36と、第2部位34から第2端32までの第2ケーブル部分37とを有する。第1ケーブル部分36と第2ケーブル部分37とは、同じ方向に延びる。
【0048】
図1図10の比較から明らかなように、アンテナ装置1の中間ケーブル部分35の巻数が1であるのに対して、アンテナ装置1Aの中間ケーブル部分35の巻数は2である。中間ケーブル部分35の巻数の増加による影響を確認するために、アンテナ装置1Aのリターンロスの測定を行った。
【0049】
図11は、アンテナ装置1Aにおいて所定距離D1が所定波長の1/2である場合のリターンロスの測定結果を示すグラフである。所定距離D1以外の測定条件は、図6図9の場合と同じである。図11のグラフから、周波数2400MHz(Δ1)、2442MHz(Δ2)、及び2484MHz(Δ3)での放射効率は、それぞれ、-3.7dB、-3.1dB、及び-2.5dBとなった。測定結果から明らかなように、中間ケーブル部分35の巻数が増加しても、放射効率の改善効果が得られる。
【0050】
以上述べたアンテナ装置1Aにおいて、中間ケーブル部分35は、巻数が2以上のコイル状である。この構成によれば、中間ケーブル部分35の巻数を増やすことで中間ケーブル部分35の径を小さくできて、中間ケーブル部分35の配置に必要なスペースを削減できる。
【0051】
[1.3 実施の形態3]
図12は、実施の形態3にかかるアンテナ装置1Bの構成例を示す概略図である。図12のアンテナ装置1Bは、モノポールアンテナ2と、同軸ケーブル3Bとを備える。
【0052】
図12の同軸ケーブル3Bは、直線状ではなく、同軸ケーブル3Bの一部が曲がった形状である。具体的には、図12に示すように、同軸ケーブル3Bの第1部位33は、同軸ケーブル3Bにおける第1部位33と第2端32との間の第2部位34と、第1部位33での同軸ケーブル3Bの径方向において対向する。同軸ケーブル3Bの中間ケーブル部分35は、第1部位33が第1部位33での同軸ケーブル3Bの径方向において第2部位34と対向するように、曲がった形状である。同軸ケーブル3Bの中間ケーブル部分35は、巻数が1のコイル状(ループ状)である。そのため、第1部位33と第2部位34とは交差している。同軸ケーブル3Bは、第1端31から第1部位33までの第1ケーブル部分36と、第2部位34から第2端32までの第2ケーブル部分37とを有する。第1ケーブル部分36と第2ケーブル部分37とは、異なる方向に延びる。
【0053】
図1図12の比較から明らかなように、アンテナ装置1の第1ケーブル部分36と第2ケーブル部分37とが同じ方向に延びているのに対して、アンテナ装置1Bの第1ケーブル部分36と第2ケーブル部分37とは異なる方向に延びている。つまり、アンテナ装置1Bでは、同軸ケーブル3Bの対向部分P1前後で角度がついている。これによって、アンテナ装置1とアンテナ装置1Aとは、第1ケーブル部分36の延びる方向に対する第2ケーブル部分37の延びる方向の角度が異なる。第1ケーブル部分36の延びる方向に対する第2ケーブル部分37の延びる方向の角度の影響を確認するために、アンテナ装置1Bのリターンロスの測定を行った。
【0054】
図13は、アンテナ装置1Bにおいて所定距離D1が所定波長の1/2である場合のリターンロスの測定結果を示すグラフである。所定距離D1以外の測定条件は、図6図9の場合と同じである。図13のグラフから、周波数2400MHz(Δ1)、2442MHz(Δ2)、及び2484MHz(Δ3)での放射効率は、それぞれ、-3.3dB、-3.3dB、及び-3.4dBとなった。測定結果から明らかなように、第1ケーブル部分36の延びる方向に対する第2ケーブル部分37の延びる方向の角度が変化しても、中間ケーブル部分35の巻数が増加しても、放射効率の改善効果が得られる。
【0055】
以上述べたアンテナ装置1Aにおいて、同軸ケーブル3Bは、第1端31から第1部位33までの第1ケーブル部分36と、第2部位34から第2端32までの第2ケーブル部分37とを有する。第1ケーブル部分36と第2ケーブル部分37とは、異なる方向に延びる。この構成によれば、モノポールアンテナ2とモノポールアンテナ2の接続先の外部回路との位置関係に応じた同軸ケーブル3の調整が容易になる。
【0056】
[1.4 実施の形態4]
図14は、実施の形態4にかかるアンテナ装置1Cの構成例を示す断面図である。アンテナ装置1Cは、アンテナ装置1と同様のモノポールアンテナ2を備えるとともに、同軸ケーブル3Cを備える。図2図14との比較から明らかなように、第1部位33と第2部位34とが接触している同軸ケーブル3とは異なり、同軸ケーブル3Cは、第1部位33と第2部位34とが接触していない。図14において、外側導体5において第1部位33に対応する部位51と外側導体5において第2部位34に対応する部位52との間に、高周波電流の経路を形成するためには、部位51と部位52との距離D2は、所定波長の1/10以下であるとよい。このことを確認するために、距離D2を所定波長の1/10に設定してアンテナ装置1Cのリターンロスの測定を行った。リターンロスの測定では、所定周波数を2442MHzとして所定距離D1及び距離D2を設定した。
【0057】
図15は、アンテナ装置1Cにおいて所定距離D1が所定波長の1/2である場合のリターンロスの測定結果を示すグラフである。所定距離D1以外の測定条件は、図6図9の場合と同じである。図15のグラフから、周波数2400MHz(Δ1)、2442MHz(Δ2)、及び2484MHz(Δ3)での放射効率は、それぞれ、-5.7dB、-5.5dB、及び-4.6dBとなった。測定結果から明らかなように、第1部位33と第2部位34とが接触していなくても、放射効率の改善効果が得られる。
【0058】
以上述べたアンテナ装置1Cにおいて、外側導体5において第1部位33に対応する部位51と外側導体5において第2部位34に対応する部位52との間の距離D2は、所定波長の1/10以下である。この構成によれば、放射効率を改善でき、かつ、配置の自由度を向上できる。
【0059】
[2.変形例]
本開示の実施の形態は、上記実施の形態に限定されない。上記実施の形態は、本開示の課題を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、上記実施の形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0060】
一変形例において、モノポールアンテナ2の構成は、上記の実施の形態の構成に限定されない。図16は、一変形例にかかるアンテナ装置1Dの構成例を示す概略図である。図16のアンテナ装置1Dは、モノポールアンテナ2Dと、同軸ケーブル3とを備える。
【0061】
図16のモノポールアンテナ2Dは、基板20の放射電極21と形状が異なる放射電極21Dを有する。放射電極21Dは、J字形状であり、第1辺211、第2辺212、及び第3辺213を有する。第1辺211は基板20の長さ方向に沿って延び、第1端及び第2端を有する。第1辺211の第1端には、同軸ケーブル3の内側導体4の端部4aが接続される。第2辺212は、第1辺211の第2端から基板20の幅方向に沿って延び、第3辺213は、第2辺212の先端から基板20の長さ方向に沿って第1辺211の第1端側に延びる。放射電極21Dの電気長は、所定周波数で共振するように設定される。
【0062】
図16のモノポールアンテナ2Dの先端2aは、放射電極21Dにおいて内側導体4から最も物理的に遠い端である。図16の場合、図1の放射電極21とは異なり、放射電極21Dにおいて内側導体4から最も物理的に遠い端と放射電極21Dにおいて内側導体4から最も電気的に遠い端とは異なる。放射電極21Dにおいて内側導体4から最も物理的に遠い端は放射電極21Dの第1辺211の第2端であり、放射電極21Dにおいて内側導体4から最も電気的に遠い端は放射電極21Dの第3辺213の先端である。モノポールアンテナ2Aの先端2aは、同軸ケーブル3の内側導体4から物理的に遠い端であるから、放射電極21Dの第1辺211の第2端である。
【0063】
図16のアンテナ装置1Dにおいても、アンテナ装置1と同様に、同軸ケーブル3においてモノポールアンテナ2Dの先端2aから所定距離D1だけ離れた第1部位33は、同軸ケーブル3における第1部位33と第2端32との間の第2部位34と、第1部位33での同軸ケーブル3の径方向において対向する。所定距離D1は、所定周波数に対応する所定波長の3/8以上5/8以下である。そのため、放射効率を改善でき、かつ、配置の自由度を向上できる。
【0064】
図16に示す構成の他、モノポールアンテナ2Dの放射電極21Dの形状は、L字形状、ミアンダ形状等、周知の形状であってよい。
【0065】
一変形例において、モノポールアンテナ2は、平面アンテナに限定されず、ホイップアンテナであってもよい。モノポールアンテナ2の構成としては、従来周知の構成を採用することができる。
【0066】
一変形例において、同軸ケーブル3の構成は、必ずしも実施の形態の構成に限定されない。例えば、同軸ケーブル3において、中間ケーブル部分35は、円環状ではなく、矩形等の多角形の環状であってもよい。中間ケーブル部分35は、必ずしも、第1部位33と第2部位34とが交差するように一周する形状ではなく、第1部位33が第2部位34に、第1部位33での同軸ケーブル3の径方向で第2部位34と対向するように、曲がった形状であってよい。このような中間ケーブル部分35の形状としては、U字形状及びΩ形状が挙げられる。例えば、第1ケーブル部分36及び第2ケーブル部分37は直線状ではなく、曲がった形状であってよい。つまり、第1ケーブル部分36及び第2ケーブル部分37の形状は、モノポールアンテナ2とモノポールアンテナ2を同軸ケーブル3で接続する外部回路との位置関係に応じて、適宜設定されてよい。これらの点は、同軸ケーブル3A,3B,3Cにおいても同様である。
【0067】
一変形例において、同軸ケーブル3において第1部位33及び第2部位34にはそれぞれ目印を設けてよい。これによって、第1部位33が第2部位34に、第1部位33での同軸ケーブル3の径方向で第2部位34と対向するように同軸ケーブル3を曲げる際の作業性の向上が図れる。
【0068】
[3.態様]
上記実施の形態及び変形例から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。以下では、実施の形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
【0069】
第1の態様は、アンテナ装置(1;1A~1D)であって、所定周波数で共振するモノポールアンテナ(2;2D)と、第1端(31)及び第2端(32)を有し前記第1端(31)で前記モノポールアンテナ(2;2D)素子に接続される同軸ケーブル(3;3A~3C)とを備える。前記同軸ケーブル(3;3A~3C)において前記モノポールアンテナ(2;2D)の先端(2a)から所定距離(D1)だけ離れた第1部位(33)は、前記同軸ケーブル(3;3A~3C)における前記第1部位(33)と前記第2端(32)との間の第2部位(34)と、前記第1部位(33)での前記同軸ケーブル(3;3A~3C)の径方向において対向する。前記所定距離(D1)は、前記所定周波数に対応する所定波長の3/8以上5/8以下である。この態様によれば、放射効率を改善でき、かつ、配置の自由度を向上できる。
【0070】
第2の態様は、第1の態様に基づくアンテナ装置(1;1A~1D)である。第2の態様において、前記所定距離(D1)は、前記モノポールアンテナ(2;2D)の先端(2a)から前記同軸ケーブル(3;3A~3C)の前記第1端(31)までの物理的な距離(D11)と、前記同軸ケーブル(3;3A~3C)上での前記第1端(31)から前記第1部位(33)までの物理的な距離(D12)との合計である。この態様によれば、放射効率を改善でき、かつ、配置の自由度を向上できる。
【0071】
第3の態様は、第1又は第2の態様に基づくアンテナ装置(1;1A~1D)である。第3の態様において、前記モノポールアンテナ(2;2D)は、放射電極(21;21D)と、グランド電極(22)とを有する。前記同軸ケーブル(3;3A~3C)は、内側導体(4)と、前記内側導体(4)を囲う外側導体(5)とを有する。前記同軸ケーブル(3;3A~3C)の前記第1端(31)に対応する前記内側導体(4)の端部(4a)は、前記放射電極(21;21D)に接続される。前記同軸ケーブル(3;3A~3C)の前記第1端(31)に対応する前記外側導体(5)の端部(5a)は、前記グランド電極(22)に接続される。前記モノポールアンテナ(2;2D)の先端(2a)は、前記放射電極(21;21D)において前記内側導体(4)から最も遠い端である。この態様によれば、放射効率を改善でき、かつ、配置の自由度を向上できる。
【0072】
第4の態様は、第3の態様に基づくアンテナ装置(1;1A~1D)である。第4の態様において、前記外側導体(5)において前記第1部位(33)に対応する部位(51)と前記外側導体(5)において前記第2部位(34)に対応する部位(52)との間の距離(D2)は、前記所定波長の1/10以下である。この態様によれば、放射効率を改善でき、かつ、配置の自由度を向上できる。
【0073】
第5の態様は、第1~第4の態様のいずれか一つに基づくアンテナ装置(1;1A~1C)である。第5の態様において、前記第1部位(33)と前記第2部位(34)とは接触する。この態様によれば、放射効率を改善でき、かつ、配置の自由度を向上できる。
【0074】
第6の態様は、第1~第5の態様のいずれか一つに基づくアンテナ装置(1;1A~1D)である。第6の態様において、前記同軸ケーブル(3;3A~3C)は、前記第1部位(33)から前記第2部位(34)までの中間ケーブル部分(35)を有する。前記中間ケーブル部分(35)は、前記第1部位(33)が前記第1部位(33)での前記同軸ケーブル(3;3A~3C)の径方向において前記第2部位(34)と対向するように、曲がった形状である。この態様によれば、同軸ケーブル(3;3A~3C)を曲げるだけでよいから、アンテナ装置(1;1A~1D)の製造の容易化が図れる。
【0075】
第7の態様は、第6の態様に基づくアンテナ装置(1;1B~1D)である。第7の態様において、前記中間ケーブル部分(35)は、巻数が1のコイル状である。この態様によれば、同軸ケーブル(3;3B;3C)を1回巻くだけでよいから、アンテナ装置(1;1B;1C)の製造の容易化が図れる。
【0076】
第8の態様は、第6の態様に基づくアンテナ装置(1A)である。第8の態様において、前記中間ケーブル部分(35)は、巻数が2以上のコイル状である。この態様によれば、中間ケーブル部分(35)の配置に必要なスペースを削減できる。
【0077】
第9の態様は、第1~第8の態様のいずれか一つに基づくアンテナ装置(1;1A~1D)である。第9の態様において、前記同軸ケーブル(3;3A~3C)は、前記第1端(31)から前記第1部位(33)までの第1ケーブル部分(36)と、前記第2部位(34)から前記第2端(32)までの第2ケーブル部分(37)とを有する。前記第1ケーブル部分(36)と前記第2ケーブル部分(37)とは、同じ方向又は異なる方向に延びる。この態様によれば、モノポールアンテナ(2;2D)とモノポールアンテナ(2;2D)の接続先の外部回路との位置関係に応じた同軸ケーブル(3;3A~3C)の調整が容易になる。
【0078】
第10の態様は、第1~第9の態様のいずれか一つに基づくアンテナ装置(1;1A~1D)である。第10の態様において、前記第2部位(34)は、前記同軸ケーブル(3;3A~3C)における前記第1部位(33)から前記第2端(32)までの部分(37)において前記第1部位(33)に最も近接する部位である。この態様によれば、放射効率を改善でき、かつ、配置の自由度を向上できる。
【0079】
第11の態様は、アンテナ装置(1;1A~1D)であって、所定周波数で共振するモノポールアンテナ(2;2D)と、第1端(31)及び第2端(32)を有し前記第1端(31)で前記モノポールアンテナ(2;2D)に接続される同軸ケーブル(3;3A~3C)とを備える。前記同軸ケーブル(3;3A~3C)において前記モノポールアンテナ(2;2D)の先端(2a)から所定距離(D1)だけ離れた第1部位(33)は、前記同軸ケーブル(3;3A~3C)における前記第1部位(33)と前記第2端(32)との間の第2部位(34)と容量結合する。前記所定距離(D1)は、前記所定周波数に対応する所定波長の3/8以上5/8以下である。この態様によれば、放射効率を改善でき、かつ、配置の自由度を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本開示は、アンテナ装置に適用可能である。具体的には、モノポールアンテナと同軸ケーブルとを備えるアンテナ装置に、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1,1A~1D アンテナ装置
2,2D モノポールアンテナ
2a 先端
21 放射電極
22 グランド電極
3,3A~3C 同軸ケーブル
31 第1端
32 第2端
33 第1部位
34 第2部位
35 中間ケーブル部分
36 第1ケーブル部分
37 第2ケーブル部分
4 内側導体
5 外側導体
D1 所定距離
D11 距離(モノポールアンテナの先端から同軸ケーブルの第1端までの物理的な距離)
D12 距離(同軸ケーブル上での第1端から第1部位までの物理的な距離)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16