(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162891
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】内燃機関の燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
F02M 55/00 20060101AFI20221018BHJP
F02M 69/00 20060101ALI20221018BHJP
F02M 55/02 20060101ALI20221018BHJP
F02M 37/20 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
F02M55/00 A
F02M69/00 320J
F02M55/02 350Z
F02M55/02 360A
F02M37/20 R
F02M37/20 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067948
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 勇佑
(72)【発明者】
【氏名】白川 幸一
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AA02
3G066AB02
3G066AD05
3G066BA37
3G066CB01
3G066CB12
3G066CD12
(57)【要約】
【課題】後傾したクランク軸を有する内燃機関の上部に設けられた燃料噴射弁に燃料を供給するデリバリパイプを用いた場合に、デリバリパイプの車両への搭載性を向上させ、かつデリバリパイプ内に発生した気泡を速やかに外部に排出できる内燃機関の燃料供給装置を提供すること。
【解決手段】燃料供給装置において、デリバリパイプ7は、インジェクタ6A、6B、6Cの燃料取入口6a、6b、6cに燃料を吐出する燃料吐出口7b、7c、7dが形成された底壁7Aと、底壁7Aと上下方向で対向する天井壁7Eとを有し、前端部7fが後端部7rよりも上方に位置するように後傾している。天井壁7Eは、最前部に位置するインジェクタ6Aの後側上方の部分が鉛直方向で最上部7tとなり、最上部7tより前側の部分が最上部7tに接する仮想水平面11より下側で、かつ、仮想水平面11の近傍に設置されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前後方向に配列された複数の気筒と、車両の前後方向に延び、かつ前端部が後端部よりも上方に位置するように後傾したクランク軸とを有する内燃機関の燃料供給装置であって、
前記内燃機関の上部に設けられ、前記複数の気筒のそれぞれに燃料を噴射する複数の燃料噴射弁と、
車両の前後方向に延びる燃料通路を有し、前記複数の燃料噴射弁に燃料を供給するデリバリパイプとを備え、
前記デリバリパイプは、前記複数の燃料噴射弁の燃料取入口に燃料を吐出する燃料吐出口が形成された底壁と、前記底壁と上下方向で対向する天井壁とを有し、前記デリバリパイプの前端部が前記デリバリパイプの後端部よりも上方に位置するように後傾しており、
前記複数の燃料噴射弁のうち、車両の前後方向で最前部に位置する燃料噴射弁を前側燃料噴射弁とした場合に、前記天井壁は、前記前側燃料噴射弁の後側上方の部分が鉛直方向で最上部となり、前記最上部より前側の部分は、前記最上部に接する仮想水平面より下側で、かつ、前記仮想水平面の近傍に設置されていることを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。
【請求項2】
前記天井壁は、前記天井壁の後端部から前記最上部に到る後側天井壁部と、前記最上部から前側斜め下方に延びる傾斜壁部とを有し、前記前側燃料噴射弁が、前記傾斜壁部よりも前方に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃料供給装置。
【請求項3】
前記天井壁は、前記傾斜壁部の下端部から前記天井壁の前端部まで延びる前側天井壁部を有し、
前記前側天井壁部と前記後側天井壁部と前記底壁とは、平行に設置されていることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料デリバリパイプの内部に溜まった空気や燃料蒸気等の気泡を、燃料噴射弁を介して速やかに排出できるようにした燃料デリバリパイプが知られている。従来のこの種の燃料デリバリパイプとしては、特許文献1に記載されるものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載される燃料デリバリパイプは、燃料デリバリパイプの燃料保持室内に、他の部分よりも鉛直方向で最も上方に位置する最上部が設けられているとともに、燃料保持室内の上部に装着したスペーサによって最上部に向かって斜め上方に延びる気泡案内面が形成されている。
【0004】
このように構成される燃料デリバリパイプは、気泡案内面によって気泡を燃料保持室内の最上部に集め、燃料保持室内の上部に設けられた連通路を通して気泡を燃料噴射弁に供給することにより、気泡を速やかに燃料保持室の外部に排出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両の前後方向に延びるクランク軸を有し、このクランク軸を後傾させて車両に搭載した縦置きエンジンの場合、燃料噴射弁に燃料を供給するデリバリパイプも後傾するため、デリバリパイプの前端部が鉛直方向で最上部となる。
【0007】
この際、デリバリパイプの前端部とその上方に配置されるフロアパネルやボンネットなどの車体部材との間の隙間が減少するので、デリバリパイプと車体部材が相互に干渉するおそれがある。
【0008】
また、デリバリパイプの天井壁のうち、最上部に位置する部分が燃料噴射弁の燃料取入口から上方に離れた位置に設置される場合には、最上部に集めた気泡を燃料の流れによって燃料取入口に供給し難くなるおそれがある。
【0009】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、後傾したクランク軸を有する内燃機関の上部に設けられた燃料噴射弁に燃料を供給するデリバリパイプを用いた場合に、デリバリパイプの車両への搭載性を向上させ、かつデリバリパイプ内に発生した気泡を速やかに外部に排出できる内燃機関の燃料供給装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、車両の前後方向に配列された複数の気筒と、車両の前後方向に延び、かつ前端部が後端部よりも上方に位置するように後傾したクランク軸とを有する内燃機関の燃料供給装置であって、前記内燃機関の上部に設けられ、前記複数の気筒のそれぞれに燃料を噴射する複数の燃料噴射弁と、車両の前後方向に延びる燃料通路を有し、前記複数の燃料噴射弁に燃料を供給するデリバリパイプとを備え、前記デリバリパイプは、前記複数の燃料噴射弁の燃料取入口に燃料を吐出する燃料吐出口が形成された底壁と、前記底壁と上下方向で対向する天井壁とを有し、前記デリバリパイプの前端部が前記デリバリパイプの後端部よりも上方に位置するように後傾しており、前記複数の燃料噴射弁のうち、車両の前後方向で最前部に位置する燃料噴射弁を前側燃料噴射弁とした場合に、前記天井壁は、前記前側燃料噴射弁の後側上方の部分が鉛直方向で最上部となり、前記最上部より前側の部分は、前記最上部に接する仮想水平面より下側で、かつ、前記仮想水平面の近傍に設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このように上記の本発明によれば、後傾したクランク軸を有する内燃機関の上部に設けられた燃料噴射弁に燃料を供給するデリバリパイプを用いた場合に、デリバリパイプの車両への搭載性を向上させ、かつデリバリパイプ内に発生した気泡を速やかに外部に排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る燃料供給装置を備えた内燃機関の上部の右側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る内燃機関の燃料供給装置の拡大平面図である。
【
図5】
図5は、デリバリパイプの前側部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態に係る内燃機関の燃料供給装置は、車両の前後方向に配列された複数の気筒と、車両の前後方向に延び、かつ前端部が後端部よりも上方に位置するように後傾したクランク軸とを有する内燃機関の燃料供給装置であって、内燃機関の上部に設けられ、複数の気筒のそれぞれに燃料を噴射する複数の燃料噴射弁と、車両の前後方向に延びる燃料通路を有し、複数の燃料噴射弁に燃料を供給するデリバリパイプとを備え、デリバリパイプは、複数の燃料噴射弁の燃料取入口に燃料を吐出する燃料吐出口が形成された底壁と、底壁と上下方向で対向する天井壁とを有し、デリバリパイプの前端部がデリバリパイプの後端部よりも上方に位置するように後傾しており、複数の燃料噴射弁のうち、車両の前後方向で最前部に位置する燃料噴射弁を前側燃料噴射弁とした場合に、天井壁は、前側燃料噴射弁の後側上方の部分が鉛直方向で最上部となり、最上部より前側の部分は、最上部に接する仮想水平面より下側で、かつ、仮想水平面の近傍に設置されている。
【0014】
これにより、本発明の一実施の形態に係る内燃機関の燃料供給装置は、後傾したクランク軸を有する内燃機関の上部に設けられた燃料噴射弁に燃料を供給するデリバリパイプを用いた場合に、デリバリパイプの車両への搭載性を向上させ、かつデリバリパイプ内に発生した気泡を速やかに外部に排出できる。
【実施例0015】
以下、本発明の一実施例に係る内燃機関の燃料供給装置について、図面を用いて説明する。
図1から
図5は、本発明の一実施例に係る内燃機関の燃料供給装置を示す図である。
【0016】
図1から
図5において、上下前後左右方向は、車両に搭載された内燃機関を基準とし、車両の前後方向(直進方向)を前後方向、車両の左右方向(車両の幅方向)を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向とする。
【0017】
まず、構成を説明する。
図1において、車両に搭載された内燃機関としてのエンジン1は、シリンダブロック2、シリンダヘッド3、シリンダヘッドカバー4およびオイルパン5を備えている。
【0018】
シリンダブロック2には3つの気筒2A、2B、2Cが設けられており、気筒2A、2B、2Cは、吸気ポート2D、2E、2Fが上側に向くよう夫々の中心軸を傾斜させつつ前後方向に直列に配列されている。なお、吸気ポート2D、2E、2Fは、図示しない吸気マニホールドの分岐管に形成された分岐通路(上流側吸気ポート)8A、8B、8Cに連通している。
【0019】
エンジン1にはクランク軸2Sが設けられており、クランク軸2Sは前後方向に延びている。本実施例のエンジン1は、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)式の縦置きエンジンである。
【0020】
なお、エンジン1は、直列3気筒に限らず、例えばV型エンジン等であってもよいし、気筒数も3つに限定されるものではない。
【0021】
エンジン1は、例えば、フロアパネルによって構成される車体部材10の下方に設置されている。車体部材10はエンジンフードによって構成されてもよく、エンジン1は、エンジンフードの下方に設置されてもよい。
【0022】
シリンダヘッド3は、シリンダブロック2の上部に設けられている。シリンダヘッド3は、吸気ポート2D、2E、2F、いずれも図示しない排気ポート、吸気ポート2D、2E、2Fを開閉する吸気バルブ、排気ポートを開閉する排気バルブ等を有する。
【0023】
シリンダヘッドカバー4は、シリンダヘッド3の上部に設けられている。シリンダヘッド3とシリンダヘッドカバー4の間の空間には、吸気バルブを開閉する図示しない吸気カムを有する図示しない吸気カムシャフトや、排気バルブを開閉する図示しない排気カムを有する図示しない排気カムシャフトなどが設置されている。
【0024】
オイルパン5は、シリンダブロック2の下部に設けられており、オイルパン5にはエンジン1の潤滑用のオイルが貯留されている。
【0025】
クランク軸2Sは、前端部2fが後端部2rよりも上方に位置するように後傾しており、エンジン1は、クランク軸2Sの傾きに応じて全体的に後傾している。気筒2A、2B、2Cには図示しないピストンが収容されており、ピストンは、図示しないコネクティングロッドを介してクランク軸2Sに連結されている。
【0026】
ピストンの往復運動は、コネクティングロッドを介してクランク軸2Sの回転運動に変換される。クランク軸2Sは、前端部2fが後端部2rよりも上方に位置するように後傾しているので、最前部に位置する気筒2Aが最も高い位置に位置し、気筒2Aから気筒2B、2Cの順に低い位置に位置している。
【0027】
エンジン1の上部に位置するシリンダヘッド3にはインジェクタ6A、6B、6Cが設置されており、インジェクタ6A、6B、6Cは、気筒2A、2B、2Cの配列方向に沿って設置されている。
【0028】
インジェクタ6A、6B、6Cは、それぞれ気筒2A、2B、2C毎に設けられており、気筒2A、2B、2Cに連通する吸気ポート2D、2E、2Fに燃料を噴射する。本実施例のインジェクタ6A、6B、6Cは、燃料噴射弁を構成する。インジェクタ6A、6B、6Cのうち、最前部に位置するインジェクタ6Aは、前側燃料噴射弁を構成する。
【0029】
エンジン1にはデリバリパイプ7が設けられている。デリバリパイプ7は、前後方向に延びる燃料通路7aを有し(
図4参照)、燃料通路7aには図示しない燃料タンクから図示しない燃料配管を通して燃料が供給される。
【0030】
燃料通路7aに供給された燃料は、それぞれインジェクタ6A、6B、6Cに供給される。本実施例のインジェクタ6A、6B、6Cとデリバリパイプ7は、燃料供給装置を構成する。
【0031】
図2に示すように、インジェクタ6A、6B、6Cにはそれぞれコネクタ6D、6E、6Fが設けられており、コネクタ6D、6E、6Fには図示しないワイヤハーネスを介してインジェクタ6A、6B、6Cを作動するための電源が接続されている。
【0032】
図2、
図3、
図4に示すように、デリバリパイプ7は、底壁7A、前壁7B、左側壁7C、右側壁7D、天井壁7Eおよび後壁7Fを有する。
【0033】
底壁7Aは、インジェクタ6Aからインジェクタ6Cに向かって前後方向に延びており、インジェクタ6A、6B、6Cよりも上方に位置している。
【0034】
前壁7Bは、底壁7Aの前端部から上方に延びている。左側壁7Cは、底壁7Aの左端部と前壁7Bの左端部とを連絡している。右側壁7Dは、底壁7Aの右端部と前壁7Bの右端部とを連絡している。
【0035】
天井壁7Eは、底壁7Aと上下方向で対向しており、前壁7Bの上端部と左側壁7Cの上端部と右側壁7Dの上端部とを連絡している。後壁7Fは、キャップ部材から構成されており、燃料通路7aから燃料が漏出しないように、底壁7Aの後端部と天井壁7Eの後端部と左側壁7Cの後端部と右側壁7Dの後端部とに嵌合されている。
【0036】
図2に示すように、デリバリパイプ7の右側壁7Dには燃料入口管7Gが設けられており、燃料入口管7Gは、燃料配管に接続されている。これにより、燃料配管から燃料入口管7Gを通して燃料通路7aに燃料が供給される。
【0037】
図4に示すように、底壁7Aには燃料吐出口7b、7c、7dが形成されており、燃料吐出口7b、7c、7dは、インジェクタ6A、6B、6Cの上方に位置している。インジェクタ6A、6B、6Cの上部には燃料取入口6a、6b、6cが形成されており、燃料吐出口7b、7c、7dは、燃料取入口6a、6b、6cと上下方向で対向している。
【0038】
底壁7Aには筒状のコネクタ7H、7I、7Jが設けられており、コネクタ7H、7I、7Jは、底壁7Aから下方に突出している。コネクタ7H、7I、7Jにはインジェクタ6A、6B、6Cの上端部が嵌合されている。
【0039】
デリバリパイプ7の燃料通路7aに供給される燃料は、燃料吐出口7b、7c、7dからコネクタ7H、7I、7Jを通してインジェクタ6A、6B、6Cの燃料取入口6a、6b、6cに供給される。
【0040】
コネクタ7H、7I、7Jとインジェクタ6A、6B、6Cの間には図示しないOリングなどのシール部材が介装されており、このシール部材によってコネクタ7H、7I、7Jから燃料が漏出することが防止される。
【0041】
図3に示すように、コネクタ7Hの車幅方向の中央部C1は、デリバリパイプ7の車幅方向の中央部Cよりも一方側(右側)に偏っている。
【0042】
これにより、インジェクタ6Aは、中心軸C2がデリバリパイプ7の車幅方向の中央部Cよりも一方側(右側)に偏って設置されている。このため、燃料吐出口7bを左側壁7Cよりも右側壁7Dに近づけて底壁7Aに形成できる。コネクタ7Hの車幅方向の中央部C1とインジェクタ6Aの中心軸C2は、同一軸である。
【0043】
図4に示すように、デリバリパイプ7は、前端部7fが後端部7rよりも上方に位置するように後傾している。すなわち、デリバリパイプ7は、クランク軸2Sと略平行となるように後傾している。
【0044】
図4、
図5に示すように、天井壁7Eは、インジェクタ6Aの後側上方の部分が鉛直方向で最上部7tとなり、最上部7tより前側の部分は、最上部7tに接する仮想水平面11より下側で、かつ、仮想水平面11の近傍に設置されている。
【0045】
具体的には、天井壁7Eは、天井壁7Eの後端部7rから最上部7tに到る後側天井壁部7Kと、最上部7tから前側斜め下方に延びる傾斜壁部7Mと、傾斜壁部7Mの下端部7mから天井壁7Eの前端部7fに延びる前側天井壁部7Nとを有する。
【0046】
インジェクタ6Aは、傾斜壁部7Mよりも前方で、かつ、前側天井壁部7Nの下方に設置されている。
【0047】
デリバリパイプ7において、前側天井壁部7Nと後側天井壁部7Kと底壁7Aとは平行に設置されている。すなわち、
図5に示すように、前側天井壁部7Nと後側天井壁部7Kとに沿って延びる仮想平面12、13は、平行に延びており、前側天井壁部7Nと後側天井壁部7Kは、傾斜壁部7Mを間に挟んで段差Hを有する。
【0048】
次に、本実施例の燃料供給装置の効果を説明する。
本実施例のエンジン1は、前端部2fが後端部2rよりも上方に位置するように後傾したクランク軸2Sを有する。
【0049】
本実施例の燃料供給装置は、エンジン1の上部に設けられ、気筒2A、2B、2Cのそれぞれに燃料を噴射するインジェクタ6A、6B、6Cと、前後方向に延びる燃料通路7aを有し、インジェクタ6A、6B、6Cに燃料を供給するデリバリパイプ7とを備えている。
【0050】
デリバリパイプ7は、インジェクタ6A、6B、6Cの燃料取入口6a、6b、6cに燃料を吐出する燃料吐出口7b、7c、7dが形成された底壁7Aと、底壁7Aと上下方向で対向する天井壁7Eとを有し、前端部7fが後端部7rよりも上方に位置するように後傾している。
【0051】
デリバリパイプ7の天井壁7Eは、最前部に位置するインジェクタ6Aの後側上方の部分が鉛直方向で最上部7tとなり、最上部7tより前側の部分が最上部7tに接する仮想水平面11より下側で、かつ、仮想水平面11の近傍に設置されている。
【0052】
これにより、クランク軸2Sが後傾することによってデリバリパイプ7の前端部7fが鉛直方向で最上部となるデリバリパイプと比べ、最上部7tを前端部7fよりも後側に位置させることができ、前端部7fを最上部7tよりも低くできる。
【0053】
このため、デリバリパイプ7を後傾して設置した場合でも、デリバリパイプ7の最上部7tと、最上部7tの上方の車体部材10との上下方向の隙間を大きくすることができ、最上部7tが車体部材10と干渉することを回避できる。
【0054】
一方、燃料配管中の空気がデリバリパイプ7に流入することや、デリバリパイプ7の内部の燃料通路7aの燃料の温度が上昇して蒸気化することに起因して、デリバリパイプ7の内部において天井壁7Eの付近に気泡Bが溜まることがある。この気泡Bは、デリバリパイプ7の天井壁7Eを伝ってデリバリパイプ7の中で高位の前端部7f側に溜まる。
【0055】
本実施例のデリバリパイプ7は、天井壁7Eの最上部7tより前側の前側天井壁部7Nを、最上部7tに接する仮想水平面11よりも下側で、かつ、仮想水平面11の近傍に設置しているので、前側天井壁部7Nを底壁7Aに近づけることができる。
【0056】
これにより、
図3に示すように、デリバリパイプ7の燃料通路7aの気泡Bをインジェクタ6Aによって吸い込まれる燃料と共に燃料吐出口7bを通してインジェクタ6Aの燃料取入口6aに導くことができる。この結果、気泡Bを燃料通路7aからデリバリパイプ7の外部に速やかに排出できる。
【0057】
このように本実施例のエンジン1の燃料供給装置は、デリバリパイプ7の車両への搭載性を向上させ、かつ、デリバリパイプ7の内部に発生した気泡Bを速やかに外部に排出できる。
【0058】
また、デリバリパイプ7のコネクタ7Hの車幅方向の中央部C1をデリバリパイプ7の車幅方向の中央部Cよりも一方側(右側)に偏らせているので、インジェクタ6Aの中心軸C2をデリバリパイプ7の車幅方向の中央部Cよりも一方側(右側)に偏って設置できる。これにより、燃料吐出口7bを左側壁7Cよりも右側壁7Dに近づけて底壁7Aに形成できる。
【0059】
このため、
図3に示すように、天井壁7Eの付近に溜まった気泡Bを、燃料と共に右側壁7Dに沿って底壁7Aに案内した後、燃料吐出口7bを通してインジェクタ6Aの燃料取入口6aに導くことができる。この結果、気泡Bを燃料通路7aから容易に排出できる。
図3の気泡Bの矢印は気泡Bの移動方向を示している。
【0060】
なお、デリバリパイプ7のコネクタ7Hの車幅方向の中央部C1をデリバリパイプ7の車幅方向の中央部Cよりも他方側(左側)に偏らせてもよい。このようにすれば、インジェクタ6Aの中心軸C2をデリバリパイプ7の車幅方向の中央部Cよりも他方側(左側)に偏って設置できる。
【0061】
このように構成しても、天井壁7Eの付近に溜まった気泡Bを、燃料と共に左側壁7Cに沿って底壁7Aに案内した後、燃料吐出口7bを通してインジェクタ6Aの燃料取入口6aに導くことができ、気泡Bを燃料通路7aから容易に排出できる。
【0062】
また、本実施例のデリバリパイプ7によれば、天井壁7Eは、後端部7rから最上部7tに到る後側天井壁部7Kと、最上部7tから前側斜め下方に延びる傾斜壁部7Mとを有し、インジェクタ6Aは、傾斜壁部7Mよりも前方に設置されている。
【0063】
これにより、
図5に示すように、気泡Bを、インジェクタ6Aによって吸い込まれる燃料と共に傾斜壁部7Mに沿って前側天井壁部7Nに導いた後、燃料吐出口7bを通してインジェクタ6Aの燃料取入口6aに容易に導くことができる。この結果、気泡Bを燃料通路7aからデリバリパイプ7の外部に速やかに排出できる。
図5の気泡Bの矢印は気泡Bの移動方向を示している。
【0064】
ここで、前側天井壁部7Nが傾斜壁部7Mの下端部7mから前側に行くに従って底壁7Aに近づくと、前側天井壁部7Nと底壁7Aの間の距離が徐々に小さくなり、前側天井壁部7Nと底壁7Aの間に、インジェクタ6Aに充分な燃料量を供給するための空間を確保できないおそれがある。
【0065】
一方、前側天井壁部7Nが傾斜壁部7Mの下端部7mから前側に行くに従って底壁7Aから離れると、前側天井壁部7Nと底壁7Aの間の距離が徐々に大きくなり、前側天井壁部7Nに溜まった気泡Bを燃料吐出口7bからインジェクタ6Cに吸い込み難く、デリバリパイプ7から容易に排出できなくなるおそれがある。
【0066】
これに対して、本実施例のデリバリパイプ7によれば、天井壁7Eは、傾斜壁部7Mの下端部7mから天井壁7Eの前端部7fまで延びる前側天井壁部7Nを有し、前側天井壁部7Nと後側天井壁部7Kと底壁7Aとは、平行に設置されている。
【0067】
これにより、前側天井壁部7Nと底壁7Aとの間の空間が過度に減少することが防止でき、前側天井壁部7Nと底壁7Aの間に、インジェクタ6Aに適切な燃料量を供給するための最適な空間、すなわち、最適な燃料通路7aを確保できる。
【0068】
これに加えて、前側天井壁部7Nと底壁7Aの上下方向の距離を、前側天井壁部7Nから底壁7Aの燃料吐出口7bに気泡Bを容易に排出できる距離に設定できる。
【0069】
このように、本実施例のデリバリパイプ7は、前側天井壁部7Nと後側天井壁部7Kと底壁7Aとを平行に設置することにより、インジェクタ6Aに燃料を供給する燃料通路7aとしての必要な空間を確保しつつ、燃料吐出口7bからインジェクタ6Aに気泡Bを容易に排出できる。
【0070】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
1...エンジン(内燃機関)、2A,2B,2C...気筒、2f...前端部(クランク軸の前端部)、2r...後端部(クランク軸の後端部)、2S...クランク軸、6A...インジェクタ(燃料供給装置、燃料噴射弁、前側燃料噴射弁)、6a,6b,6c...燃料取入口、6B,6C...インジェクタ(燃料噴射弁)、7...デリバリパイプ(燃料供給装置)、7A...底壁、7a...燃料通路、7b,7c,7d...燃料吐出口、7E...天井壁、7f...前端部(デリバリパイプの前端部)、7K...後側天井壁部、7M...傾斜壁部、7m...下端部(傾斜壁部の下端部)、7N...前側天井壁部、7r...後端部(デリバリパイプの後端部)、7t...最上部、11...仮想水平面