(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162900
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】補修材及び補修材の使用方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20221018BHJP
E21D 11/10 20060101ALI20221018BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20221018BHJP
E01D 1/00 20060101ALI20221018BHJP
C04B 41/64 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
E04G23/02 A
E21D11/10
E01D22/00 A
E01D1/00 C
C04B41/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067962
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】597068179
【氏名又は名称】株式会社シクソン
(71)【出願人】
【識別番号】505389695
【氏名又は名称】首都高速道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 紘治
(72)【発明者】
【氏名】永田 佳文
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 啓一▲郎▼
【テーマコード(参考)】
2D059
2D155
2E176
4G028
【Fターム(参考)】
2D059GG02
2D059GG39
2D155LA16
2E176AA01
2E176BB04
4G028CA01
4G028CB08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】補修作業開始前において被補修部分の剥落を防ぐ。
【解決手段】シリコーン樹脂を主成分とする1成分形室温硬化性組成物を有機溶剤で希釈してなる補修材1であり、1成分形室温硬化性組成物及び有機溶剤が透過性を有する補修材であり、補修材をスプレー容器2に入れ、該スプレー容器からコンクリート構造物3の被補修部分30に補修材を噴射して被膜を作る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン樹脂を主成分とする1成分形室温硬化性組成物を有機溶剤で希釈してなることを特徴とする補修材。
【請求項2】
1成分形室温硬化性組成物及び有機溶剤が透過性を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の補修材。
【請求項3】
1成分形室温硬化性組成物1に対し有機溶剤1~1.7の混合比で希釈されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の補修材。
【請求項4】
1成分形室温硬化性組成物1に対し有機溶剤1.5の混合比で希釈されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の補修材。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4いずれか1項に記載の補修材をスプレー容器に入れ、該スプレー容器からコンクリート構造物の被補修部分に補修材を噴射して被膜を作ることを特徴とする補修材の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルや橋桁等の既設のコンクリート構造物の補修材及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルや橋桁等の既設のコンクリート構造物は、新設後にコンクリート乾燥収縮などの経年劣化等により、クラックが発生する。
このクラックを放置していると、コンクリート構造物内に外部からの雨水などの侵入があり、それらの侵入物により、コンクリート内部の鉄筋が錆びて誇張し、コンクリート内部からの破壊につながる。
このため、コンクリートや仕上げ材の剥落事故を防止するため、現在、5年に一度の目視検査が義務化されている。
この目視検査によって発見されたひび割れ部分や膨張部分、さらには剥落部分等の被補修部分の補修計画を行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
目視検査時に発見された被補修部分には印を付けておき、補修作業時に補修場所がわかるようにしているが、目視検査に基づいて補修計画を行っている間に被補修部分が剥落することがあった。
このため、補修作業開始前において被補修部分の剥落を防ぐことが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前述の課題を解決するため請求項1記載による補修材は、シリコーン樹脂を主成分とする1成分形室温硬化性組成物を有機溶剤で希釈してなることを特徴とする。
【0005】
1成分形室温硬化性組成物及び有機溶剤が透過性を有するものであることが好ましい。
【0006】
1成分形室温硬化性組成物1に対し有機溶剤1~1.7の混合比で希釈されていることが好ましい。
【0007】
1成分形室温硬化性組成物1に対し有機溶剤1.5の混合比で希釈されていることが最適である。
【0008】
補修材をスプレー容器に入れ、該スプレー容器からコンクリート構造物の被補修部分に補修材を噴射して被膜を作ることを特徴とする補修材の使用方法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態の補修材を説明する。
補修材は、後述するように、スプレー容器2(
図1及び
図2参照)に入れた状態でコンクリート構造物3の被補修部分30(
図1及び
図2参照)に噴射して使用するものである。
コンクリート構造物3の被補修部分30に噴射された補修材は、硬化することでコンクリート構造物3に密着して被補修部分30を保護する被膜を形成する。
【0011】
[補修材の構成]
補修材は、不燃性及び透過性を有するシリコーン樹脂を主成分とする1成分形室温硬化性組成物を有機溶剤で希釈したものであり、スプレー容器2に入れてスムースに噴射できると共に、コンクリート構造物3に噴射した際の液だれを防止でき、且つ硬化速度を満足できる粘度に調整されている。
有機溶剤は、キシレン或いはキシレンと同じ作用を有する有機溶剤を用いることができる。
【0012】
[1成分形室温硬化性組成物の構成]
1成分形室温硬化性組成物は、シリコーン樹脂に補強材、架橋剤、縮合反応触媒を混合したものである。
【0013】
ここで、補強材は、例えば表面処理されていない煙霧室シリカ、沈降性シリカ、疎水化物、カーボンブラック等が挙げられる。
また、架橋剤は、例えばオルガノシラン、オルガノシロキサン等が挙げられる。
また、縮合反応触媒は、縮合反応硬化型の室温硬化性組成物に使用される硬化触媒であり、例えば有機酸の金属塩、チタン酸エステル、有機金属化合物が挙げられる。
本実施形態の1成分形室温硬化性組成物は、シリコーン樹脂に前述の補強材、架橋剤、縮合反応触媒を均一に混合することで調整される。
【0014】
前述した1成分形室温硬化性組成物としては、ダウ・東レ社製のCT140(商品名)が例示できる。
このCT140を有機溶剤で希釈して目的の粘度となるように調整することで、スプレー容器2に入れてスムースに噴射できると共に、コンクリート構造物3に噴射した際の液だれを防止でき、且つ満足できる硬化速度を有し、効率的な補修作業を行うことができる補修材となる。
また、硬化後の被膜10は、透過性を有し、且つゴムのような伸縮性を有する弾性体となるため、コンクリート構造物3の補修部分(例えばひび)30の拡大に伴って被膜10が弾性によって伸長することで、被補修部分30の拡大による被膜10の破損が防止され、これによって、被補修部分30の保護を持続することができる。
さらに、被膜10がコンクリート構造物3の被補修部分30を保護しているため、補修部分の剥落を防止することができ、これによって、剥落による事故を防止することができる。
また、被膜10が透明であるため、補修作業後においても被補修部分30を視認でき、これによって、被補修部分30の拡大や崩れ等を確認することができる。
【0015】
[1成分形室温硬化性組成物と有機溶剤との混合比]
1成分形室温硬化性組成物をCT140とし、有機溶剤をキシレンとした場合の両者の混合比を説明する。
混合比は、CT140を「1」としたとき、キシレンを「1~1.7」とする混合比が好ましい。
理由としては、混合比CT140「1」:キシレン「1未満」とした補修材であると、粘度が高くスプレー容器2からの噴射がスムースにできず、スプレー容器2のノズルに詰まることがあるためである。
また、混合比CT140「1」:キシレン「1.7<x」とした補修材であると、粘度が低く噴射した際に液だれが生じると共に、硬化速度も低下してしまうためである。
CT140とキシレンの最適な混合比は、CT140「1」:キシレン「1.5」であり、この混合比とした補修材であると、スプレー容器2からスムースに噴射でき、噴射した際に液だれを防止できると共に、満足できる硬化速度にすることができる。
【0016】
[補修材の使用方法]
次に、補修材1の使用方法を
図1及び
図2を参照して説明する。
本実施形態では、あらかじめ1成分形室温硬化性組成物(例えばCT140)と有機溶剤(例えばキシレン)を前述した混合比で調整して補修材1を製造し、この補修材1をスプレー容器2に充填し、スプレー容器2を密閉する。
補修材1は、
図1に示すように、スプレー容器2を操作してコンクリート構造物3に発生したひび割れ部分や膨張部分、さらには剥落部分等の被補修部分30に噴霧することで、コンクリート構造物3の被補修部分30に被膜10を作るものである。
補修材1は、透過性及び不燃性を有し、空気に触れることで硬化するシリコーン樹脂を主成分とする1成分形室温硬化性組成物が有機溶剤で希釈されたものであり、スプレー容器2からの噴霧ができる粘度を有している。
【0017】
このような補修材1は、被補修部分30に噴霧すると、補修材1がコンクリート構造物3の表面に密着すると共に、硬化して透過性を有する被膜10が作られ、この被膜10によって被補修部分30を保護することができる。
また、硬化後の被膜10は、ゴムのような伸縮性を有しており、これによって、仮に被膜10で保護された被補修部分30が拡大した場合でも、この拡大に伴って被膜10が伸長することで被補修部分30を保護できる。
すなわち、補修材1による被膜10がコンクリート構造物3の目視検査時に発見された被補修部分30を一時的に保護することで、目視検査に基づく補修計画を行っている間の被補修部分30を保護することができる。
したがって、本格的な補修作業開始時に補修計画の練り直しが生じないようにすることができ、これによって、本格的な補修作業の遅延を防ぐことができる。
また、補修材1が室温硬化性のものであって、噴霧後に加熱する必要がないため、作業性が良い。
また、被膜10が透過性を有しているので、被膜10の表面から被補修部分30を視認することができ、これによって、被補修部分30の状態を、被膜10を剥がさず確認できる。
ここでいう透過性とは、被膜10の表面側から被補修部分30が視認できる程度の透過率とする透明な性質を意味し、このような性質を備えるものであれば、無色透明、或いは有色透明のいずれでもよい。
【0018】
以上、本発明に係る実施形態のバケットコンベヤAを、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
また、前述の各実施形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0019】
1:補修材
2:スプレー容器
3:コンクリート構造物
10:被膜
30:被補修部分