IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 北陸電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-光触媒装置 図1
  • 特開-光触媒装置 図2
  • 特開-光触媒装置 図3
  • 特開-光触媒装置 図4
  • 特開-光触媒装置 図5
  • 特開-光触媒装置 図6
  • 特開-光触媒装置 図7
  • 特開-光触媒装置 図8
  • 特開-光触媒装置 図9
  • 特開-光触媒装置 図10
  • 特開-光触媒装置 図11
  • 特開-光触媒装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162907
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】光触媒装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/00 20060101AFI20221018BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20221018BHJP
   A61L 9/18 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
A61L9/00 C
B01J35/02 J
A61L9/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067972
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000242633
【氏名又は名称】北陸電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】中野 純
(72)【発明者】
【氏名】村井 慎介
(72)【発明者】
【氏名】野末 達也
(72)【発明者】
【氏名】廣田 誠
【テーマコード(参考)】
4C180
4G169
【Fターム(参考)】
4C180AA01
4C180AA07
4C180CC03
4C180HH06
4C180HH15
4C180HH19
4G169AA03
4G169AA15
4G169BA48A
4G169CA10
4G169CA17
4G169DA05
4G169EA11
4G169HA01
4G169HE02
4G169HE07
4G169HF02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡単な構成で従来よりも除菌効率を上げることができる光触媒装置を提供する。
【解決手段】光触媒装置1は、ケーシング31の内部に配置された光触媒ユニット32を備えている。光触媒ユニット32は、互いに向かい合う板状の第1及び第2の光触媒部33及び34と、第1及び第2の光触媒部のそれぞれの他端間に、これらの他端を連結する連結用光触媒部35と、第1及び第2の光触媒部の間の空間Sを二つの部分空間S1及びS2に分けるように配置された分割用光触媒部36を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに向かい合う第1及び第2の光触媒部と、
前記第1及び第2の光触媒部に光を照射するための1以上の光源と、
前記第1及び第2の光触媒部の間に該第1及び第2の光触媒部の一端側から空気を流す送風装置を備える光触媒装置であって、
前記第1及び第2の光触媒部のそれぞれの他端間に、これらの他端を連結する連結用光触媒部が設けられており、
前記連結用光触媒部は、前記送風装置から供給された前記空気の一部を前記連結用光触媒部の近傍で一時的に滞留させる通気性を有していることを特徴とする光触媒装置。
【請求項2】
前記空気が流れる方向をX方向及び前記第1及び第2の光触媒部が対向する方向をZ方向、前記空気が流れる方向及び前記第1及び第2の光触媒部が対向する方向と直交する方向をY方向と定義したときに、前記連結用光触媒部は、前記Y方向から見た形状がU字形を呈する形状を有している請求項1に記載の光触媒装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の光触媒部の間には、前記第1及び第2の光触媒部の間の空間を二つ以上の部分空間に分けるように配置された分割用光触媒部が配置されている請求項1または2に記載の光触媒装置。
【請求項4】
前記空気が流れる方向をX方向、前記第1及び第2の光触媒部が対向する方向をZ方向、前記X方向及び前記Z方向と直交する方向をY方向と定義したときに、前記分割用光触媒部は、前記第1の光触媒部の前記Y方向の一方側の端縁部から前記第2の光触媒部の前記Y方向の他方側の端縁部に向かって延びるように配置されている請求項3に記載の光触媒装置。
【請求項5】
前記空気が流れる方向をX方向、前記第1及び第2の光触媒部が対向する方向をZ方向、前記X方向及び前記Z方向と直交する方向をY方向と定義したときに、前記分割用光触媒部は、前記第1の光触媒部の前記空気が流れる方向である前記X方向の一方側の端縁部から前記第2の光触媒部の前記X方向の他方側の端縁部に向かって延びるように配置されている請求項3に記載の光触媒装置。
【請求項6】
前記空気が流れる方向をX方向、前記第1及び第2の光触媒部が対向する方向をZ方向、前記X方向及び前記Z方向と直交する方向をY方向と定義したときに、
前記分割用光触媒部は、前記Y方向から見た形状が前記Z方向に開口するV字状になる形状を有しており、
前記分割用光触媒部は、前記Z方向に開口する開口部を前記第1及び第2の光触媒部の一方に向けて、前記第1及び第2の光触媒部の間の前記空間を三つの部分空間に分けるように配置されている請求項3に記載の光触媒装置。
【請求項7】
前記空気が流れる方向をX方向、前記第1及び第2の光触媒部が対向する方向をZ方向、前記X方向及び前記Z方向と直交する方向をY方向と定義したときに、
前記分割用光触媒部は、前記Y方向から見た形状が前記X方向に開口するV字状になる形状を有しており、
前記分割用光触媒部は、前記X方向に開口する開口部を前記第1及び第2の光触媒部の間の前記空間に空気を流し込む入り口に向けて、前記空間を三つの部分空間に分けるように配置されている請求項3に記載の光触媒装置。
【請求項8】
前記空気が流れる方向をX方向、前記第1及び第2の光触媒部が対向する方向をZ方向、前記X方向及び前記Z方向と直交する方向をY方向と定義したときに、
前記第1及び第2の光触媒部並びに前記連結用光触媒部は、前記第1の光触媒部と対向する第1の側壁部と、前記第2の光触媒部と対向する第2の側壁部と、前記Y方向に対向し且つ前記空間と対向する第3及び第4の側壁部とを有するケーシング内に収納されており、
前記分割用光触媒部は、前記Z方向から見た形状がX字状になる形状を有しており、
前記分割用光触媒部は、前記X方向の一方に開口する第1の部分空間の第1の開口部を前記連結用光触媒部に向け、該第1の開口部と前記X方向の反対側に開口する第2の部分空間の第2の開口部を前記第1及び第2の光触媒部の間の前記空間に空気を流し込む入り口に向け、前記Y方向の一方に開口する第3の部分空間の第3の開口部を前記ケーシングの第3の側壁部に向け、該第3の開口部とは前記Y方向の反対側に開口する第4の部分空間の第4の開口部を前記ケーシングの第4の側壁部に向けるように配置されている請求項3に記載の光触媒装置。
【請求項9】
前記第1及び第2の光触媒部の空間内には、該空間内を満たすように、連続気泡構造の多孔質体が充填されており、前記連続気泡構造は光が乱反射により内部まで進入する構造を有しており、前記多孔質体の内面には光触媒が付着している請求項1または2に記載の光触媒装置。
【請求項10】
前記第1及び第2の光触媒部並びに前記連結用光触媒部は、前記第1の光触媒部と対向する第1の側壁部と、前記第2の光触媒部と対向する第2の側壁部と、前記Y方向に対向し且つ前記空間と対向する第3及び第4の側壁部とを有するケーシング内に収納されており、
前記1以上の光源は、前記第3の側壁部及び前記第4の側壁部にそれぞれ固定されて前記二つ以上の部分空間内に光を照射する複数の光源からなる請求項3乃至7のいずれか1項に記載の光触媒装置。
【請求項11】
前記1以上の光源は、前記第3の側壁部及び前記第4の側壁部にそれぞれ固定されて前記三つ以上の部分空間内に光を照射する複数の光源からなる請求項10に記載の光触媒装置。
【請求項12】
前記複数の光源は、前記二つ以上の部分空間に光を照射できる位置に配置されている請求項10または11に記載の光触媒装置。
【請求項13】
前記第1乃至第4の側壁部は光を反射し且つ通気性は有さない請求項8または10に記載の光触媒装置。
【請求項14】
前記第1及び第2の光触媒部は、板状または波板状を呈している請求項1乃至13のいずれか1項に記載の光触媒装置。
【請求項15】
前記第1及び第2の光触媒部及び前記連結用光触媒部は、一体に形成されており、
前記第1及び第2の光触媒部及び前記連結用光触媒部並びに前記分割用光触媒部は、それぞれ通気性があり且つ光が乱反射により内部を進行する構造を有する多孔質体に光触媒材料を担持させた構造を有している請求項9に記載の光触媒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒を利用して空気の脱臭や除菌などを行うための光触媒装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2020-44506号公報には、互いに向かい合う2枚の光触媒部と、2枚の光触媒部材に光を提供するためのライトと、2枚の光触媒部の間に空気を流すためのファンとを備えた光触媒装置が開示されている。この光触媒装置では、2枚の光触媒部に少ない数の光源から有効に光を照射できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-44506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の光触媒装置では、スムーズに空気が流れて出て行くため、一回の空気通過で除菌効率を上げることに限界があった。
【0005】
本発明の目的は、簡単な構成で従来よりも除菌効率を上げることができる光触媒装置を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、軽量且つコンパクトな光触媒装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光触媒装置は、互いに向かい合う第1及び第2の光触媒部と、第1及び第2の光触媒部に光を照射するための1以上の光源と、第1及び第2の光触媒部の間に該第1及び第2の光触媒部の一端側から空気を流す送風装置を備える。特に本発明では、第1及び第2の光触媒部のそれぞれの他端間に、これらの他端を連結する連結用光触媒部が設けられている。連結用光触媒部は、送風装置から供給された空気の一部を連結用光触媒部の近傍で一時的に滞留させる通気性を有している。本発明によれば、連結用光触媒部の存在によって、空気が滞留するため、第1及び第2の光触媒部の間に入った空気が、第1及び第2の光触媒部並びに連結用光触媒部と接触する時間が従来よりも長くなる。その結果、空気の除菌効率が上昇する。また連結用光触媒部は、通気性を有しているため、連続して空気を除菌することができる。
【0008】
連結用光触媒部は、空気が流れる方向をX方向及び第1及び第2の光触媒部が対向する方向をZ方向、空気が流れる方向及び第1及び第2の光触媒部が対向する方向と直交する方向をY方向と定義したときに、連結用光触媒部は、Y方向から見た形状がU字形を呈する形状を有しているのが好ましい。連結用光触媒部の形状がU字形であれば、連結用光触媒部に当たった空気は、連結用光触媒部の湾曲した内面に沿って、流れてきた方向と逆方向に流れ、連結用光触媒部の近傍に回転流を生じさせる。この回転流の存在が、さらに空気と光触媒との接触時間を長くする。
【0009】
また第1及び第2の光触媒部の間には、第1及び第2の光触媒部の間の空間を二つ以上の部分空間に分けるように配置された分割用光触媒部を配置してもよい。分割用光触媒部を設けると、二つ以上の部分空間内に面する光触媒と空気の接触面積を物理的に増大させることができて、除菌効率をさらに高めることができる。
【0010】
空気が流れる方向をX方向、第1及び第2の光触媒部が対向する方向をZ方向、X方向及びZ方向と直交する方向をY方向と定義したときに、分割用光触媒部は、第1の光触媒部のY方向の一方側の端縁部から第2の光触媒部のY方向の他方側の端縁部に向かって延びるように配置されていてもよい。分割用光触媒部は、第1の光触媒部の空気が流れるX方向の一方側の端縁部から第2の光触媒部の空気が流れるX方向の他方側の端縁部に向かって延びるように配置されていてもよい。このような分割用光触媒部は、送り込まれてくる空気に対して、空気抵抗を著しく大きくすることなく、広い接触面を提供することができる。
【0011】
また分割用光触媒部は、Y方向から見た形状がZ方向に開口するV字状になる形状を有していてもよい。この場合、分割用光触媒部は、Z方向に開口するV字形の開口部を第1及び第2の光触媒部の一方に向けて、第1及び第2の光触媒部の間の空間を三つの部分空間に分けるように配置されていてもよい。このような形状の分割用光触媒部を設けると、通過する空気すべてが光触媒を複数回接触するため除菌効率を高めることができる。
【0012】
分割用光触媒部は、Y方向から見た形状がZ方向に開口するV字状になる形状を有しており、また分割用光触媒部は、X方向に開口する開口部を第1及び第2の光触媒部の間の空間に空気を流し込む入り口に向けて、空間を三つの部分空間に分けるように配置されていてもよい。このような形状の分割用光触媒部を設けると、空気との接触回数を増やし接触時間を延ばすことで除菌効率を高めることができるという効果が得られる。
【0013】
分割用光触媒部を用いる場合、第1及び第2の光触媒部並びに連結用光触媒部は、第1の光触媒部と対向する第1の側壁部と、第2の光触媒部と対向する第2の側壁部と、Y方向に対向し且つ空間と対向する第3及び第4の側壁部とを有するケーシング内に収納されているのが好ましい。
【0014】
分割用光触媒部は、Z方向から見た形状がX字状になる形状を有していてもよい。この場合の分割用光触媒部は、X方向の一方に開口する第1の部分空間の第1の開口部を連結用光触媒部に向け、該第1の開口部とX方向の反対側に開口する第2の部分空間の第2の開口部を第1及び第2の光触媒部の間の空間に空気を流し込む入り口に向け、Y方向の一方に開口する第3の部分空間の第3の開口部をケーシングの第3の側壁部に向け、該第3の開口部とはY方向の反対側に開口する第4の部分空間の第4の開口部をケーシングの第4の側壁部に向けるように配置する。このような形状の分割用光触媒部を設けると、光の当たる面積の増加と接触回数の増加により除菌効率を高めることができるという効果が得られる。
【0015】
第1及び第2の光触媒部の空間内には、該空間内を満たすように、連続気泡構造の多孔質体が充填されていてもよい。連続気泡構造は光が乱反射または透過により内部まで進入する構造を有しており、この多孔質体の内面には光触媒が付着しているのが好ましい。反射を利用する場合には、第1及び第2の光触媒部を光が乱反射により内部を進行する構造を有する多孔質体に光触媒材料を担持させた構造にすればよい。また透過を利用する場合には、多孔質体を光透過性が有る材料により形成すればよい。このような多孔質体を挿入すると、接触時間が長くなり除菌効率を高めることができる。
【0016】
1以上の光源は、ケーシングの第3の側壁部及び第4の側壁部にそれぞれ固定されて二つ以上の部分空間内に光を照射する複数の光源からなる。複数の光源の数と配置位置は、除菌効率を高めるのに適した位置を探して設置するのが好ましい。例えば、1以上の光源は、第3の側壁部及び第4の側壁部にそれぞれ固定されて三つ以上の部分空間内に光を照射する複数の光源としてもよい。
【0017】
複数の光源は、二つ以上の部分空間に光を照射できる位置に配置するのが好ましい。これによって部分空間内で乱反射した光が、部分空間を囲む光触媒部材に十分に当たることができ、除菌効率を更に上げることができる。
【0018】
なお第1乃至第4の側壁部は光を反射し且つ通気性を有さないのが好ましい。このような構造であれば、第1乃至第4の側壁部に近い位置にある光触媒部材を有効に活用して、除菌効率を高めることができる。
【0019】
第1及び第2の光触媒部の形状は任意であるが、板状または波板状を呈していてもよい。第1及び第2の光触媒部の形状を波板状にすると、第1及び第2の光触媒部に当たった光の乱反射率を高めることができ、除菌効率を高めることができる。
【0020】
第1及び第2の光触媒部及び前記連結用光触媒部は、一体に形成されていてもよい。そして第1及び第2の光触媒部及び連結用光触媒部並びに分割用光触媒部は、それぞれ通気性があり且つ光が乱反射により内部を進行する構造を有する支持体に光触媒材料を担持させた構造を有しているのが好ましい。このような構造であれば、光触媒に光があたる面積を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】(A)は第1の実施の形態にかかる光触媒装置の平面図、(B)は図1(A)のB-B線断面図、(C)は図1(A)のC-C線断面図である。
図2図1の光触媒ユニットの分解斜視図である。
図3】(A)は第2の実施の形態にかかる光触媒装置の平面図、(B)は図3(A)のB-B線断面図、(C)は図3(A)のC-C線断面図である。
図4図3の光触媒ユニットの分解斜視図である。
図5】(A)は第3の実施の形態にかかる光触媒装置の平面図、(B)は図5(A)のB-B線断面図、(C)は図5(A)のC-C線断面図である。
図6図5の光触媒ユニットの分解斜視図である。
図7】(A)は第4の実施の形態にかかる光触媒装置の平面図、(B)は図7(A)のB-B線断面図、(C)は図7(A)のC-C線断面図である。
図8図7の光触媒ユニットの分解斜視図である。
図9】(A)は第5の実施の形態にかかる光触媒装置の平面図、(B)は図9(A)のB-B線断面図、(C)は図9(A)のC-C線断面図である。
図10図9の光触媒ユニットの分解斜視図である。
図11】(A)は第6の実施の形態にかかる光触媒装置の平面図、(B)は図11(A)のB-B線断面図、(C)は図11(A)のC-C線断面図である。
図12図11の光触媒ユニットの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
[第1の実施の形態]
まず、第1の実施の形態にかかる光触媒装置1の構成について説明する。図1(A)は本実施の形態にかかる光触媒装置1の平面図、図1(B)は図1(A)のB-B線断面図、図1(C)は図1(A)のC-C線断面図、図2図1の光触媒ユニット32の分解斜視図である。図1において、光触媒組立体3内で空気が流れる方向をX方向、後述する第1及び第2の光触媒部33及び34が対向する方向をZ方向、X方向及びZ方向と直交する方向をY方向と定義する。
【0024】
光触媒装置1は、光触媒組立体3と、送風装置5と、ハウジング7とを備えている。ハウジング7は、送風装置5を収納する本体71と本体71から分離した位置に配置されて光触媒組立体3の一部を保持する分離本体72とを備えている。ハウジング7の本体71と分離本体72は、それぞれ合成樹脂によって一体成形されている。本体71の内部には、送風装置5としての遠心送風機51を収納する収納空間71Aが形成されている。また本体71には、収納空間71Aと連通して遠心送風機51の吸込口52に空気を導入する開口空間71Bが形成されている。開口空間71Bは、遠心送風機51の筐体54の吸込口52を含む側壁55の大部分を露出させる形状と大きさを有している。さらに本体71には、収納空間71Aと連通して遠心送風機51の吹き出し口53と連通し、光触媒組立体3の一端3Aが嵌合される連通空間71Cが形成されている。また分離本体72は、光触媒組立体3の他端3Bが嵌合される凹部72Aと、この凹部72Aの底部と外部に向かって開口する貫通路72Bを備えている。貫通路72Bは、光触媒装置1の空気吹き出し口を構成するもので、分離本体72の幅方向(Y方向)に沿って延びる細長い形状を有している。
【0025】
光触媒組立体3は、ケーシング31の内部に配置された光触媒ユニット32を備えている。本実施の形態で用いる光触媒ユニット32は、互いに向かい合う板状の第1及び第2の光触媒部33及び34と、第1及び第2の光触媒部のそれぞれの他端間に、これらの他端を連結する連結用光触媒部35と、第1及び第2の光触媒部の間の空間Sを二つの部分空間S1及びS2に分けるように配置された分割用光触媒部36を備えている。
【0026】
光触媒ユニット32を構成する第1及び第2の光触媒部33及び34、連結用光触媒部35及び分割用光触媒部36は、通気性があり且つ光が乱反射により内部を進行する構造を有する支持体(例えば不織布や、可撓性を有する三次元網目状構造体等)に光触媒材料を担持させた構造を有している。このような構造であれば、光触媒に光があたる面積を増加させることができる。
【0027】
光触媒ユニット32の連結用光触媒部35は、空気が流れる方向(X方向)及び第1及び第2の光触媒部33及び34が対向する方向(Z方向)と直交する方向(Y方向)を幅方向と定義したときに、幅方向から見た形状がU字形を呈する形状を有している。連結用光触媒部35の形状がU字形であれば、連結用光触媒部35に当たった空気は、連結用光触媒部35の湾曲した内面に沿って、流れてきた方向と逆方向に流れ、連結用光触媒部35の近傍に回転流を生じさせる。この回転流の存在が、さらに空気と光触媒との接触時間を長くする。その結果、除菌効率を高めることができる。
【0028】
分割用光触媒部36は、第1の光触媒部33の幅方向の一方側の端縁部から第2の光触媒部34の幅方向の他方側の端縁部に向かって延びるように配置されている。分割用光触媒部36は、空間S内を斜めに延びて空間Sを二分割している。分割用光触媒部36と第1及び第2の光触媒部33及び34との結合は、接着等の適宜の手段を用いて実施されている、分割用光触媒部36を設けると、二つの部分空間内に面する光触媒と空気と光の接触面積を物理的に増大させることができて、除菌効率をさらに高めることができる。
【0029】
ケーシング31は、第1の光触媒部33と対向する第1の側壁部31Aと、第2の光触媒部34と対向する第2の側壁部31Bと、幅方向に対向し且つ空間Sと対向する第3及び第4の側壁部31C及び31Dとを有する。複数の光源37は、第3の側壁部31C及び第4の側壁部31Dにそれぞれ固定されて二つの部分空間S1及びS2内に光を照射する複数の光源からなる。光源としては、市販のLEDを用いることができる。本実施の形態では、第3及び第4の側壁部31C及び31Dに、X方向に間隔をあけて3つの光源37がそれぞれ固定されている。
【0030】
本実施の形態によれば、連結用光触媒部35の存在によって、空気が滞留するため、第1及び第2の光触媒部33及び34の間に入った空気が、第1及び第2の光触媒部33及び34並びに連結用光触媒部35と接触する時間が従来よりも長くなる。その結果、空気の除菌効率が上昇する。また連結用光触媒部35は、通気性を有しているため、連続して空気を除菌することができる。また第1及び第2の光触媒部33及び34の間に配置された分割用光触媒部36は、第1及び第2の光触媒部33及び34の間の空間Sを二つの部分空間S1及びS2に分けているので、二つの部分空間S1及びS2内に面する光触媒と空気の接触面積を物理的に増大させることができて、除菌効率をさらに高めることができる。分割用光触媒部36は、平板状であるため、送り込まれてくる空気に対して、空気抵抗を著しく大きくすることなく、広い接触面を提供する。
【0031】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態にかかる光触媒装置1の構成について説明する。図3(A)は第2の実施の形態にかかる光触媒装置1の平面図、図3(B)は図3(A)のB-B線断面図、図3(C)は図3(A)のC-C線断面図、図4図3の光触媒ユニット32の分解斜視図である。図3及び図4においては、図1及び図2に示した第1の実施の形態の部分と実質的に同じ部分または同様の機能を果たす部分には、図1及び図2に付した符号と同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0032】
第2の実施の形態は、第1の実施の形態と比較すると、分割用光触媒部36の配置位置が異なっている。本実施の形態では、分割用光触媒部36を、第1の光触媒部33の空気が流れるX方向の一方側の端縁部から第2の光触媒部34の空気が流れるX方向の他方側の端縁部に向かって延びるように配置している。このようにしても、第1の実施の形態と同じ効果を得ることができる。
【0033】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態にかかる光触媒装置1の構成について説明する。図5(A)は第3の実施の形態にかかる光触媒装置1の平面図、図5(B)は図5(A)のB-B線断面図、図5(C)は図5(A)のC-C線断面図、図6図5の光触媒ユニット32の分解斜視図である。図5及び図6においては、図1及び図2に示した第1の実施の形態の部分と実質的に同じ部分または同様の機能を果たす部分には、図1及び図2に付した符号と同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0034】
第3の実施の形態も、第1の実施の形態と比較すると、分割用光触媒部36の形状と配置位置が異なっている。本実施の形態では、分割用光触媒部36が、Y方向から見た形状がZ方向に開口するV字状になる形状を有している。本実施の形態では、分割用光触媒部36は、Z方向に開口するV字形の開口部を第1の光触媒部33の方に向けて、第1及び第2の光触媒部33及び34の間の空間を三つの部分空間S1、S2及びS3に分けるように配置されている。分割用光触媒部36の第1及び第2の部分36A及び36Bの先端部は、第1の光触媒部33と接触している。なお分割用光触媒部36は、Z方向に開口するV字形の開口部を第2の光触媒部34の方に向けるようにして、分割用光触媒部36の第1及び第2の部分36A及び36Bの先端部を、第2の光触媒部34と接触させるようにしてもよいのは勿論である。本実施の形態では、第3及び第4の側壁部31C及び31Dにそれぞれ設けた光源37が、各部分空間S1、S2及びS3にY方向両側から光を照射する位置に設けられているため、光源37からの光を最大限活用して、除菌効率を高めることができる。
【0035】
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態にかかる光触媒装置1の構成について説明する。図7(A)は第4の実施の形態にかかる光触媒装置1の平面図、図7(B)は図7(A)のB-B線断面図、図7(C)は図7(A)のC-C線断面図、図8図7の光触媒ユニット32の分解斜視図である。図7及び図8においては、図1及び図2に示した第1の実施の形態の部分と実質的に同じ部分または同様の機能を果たす部分には、図1及び図2に付した符号と同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0036】
第4の実施の形態も、図5及び図6に示した第3の実施の形態と比較すると、分割用光触媒部36の形状と配置位置が異なっている。本実施の形態では、分割用光触媒部36が、第3の実施の形態と同様に、Y方向から見た形状がX方向に開口するV字状になる形状を有している。しかしながら本実施の形態の分割用光触媒部36は、X方向に開口する開口部を第1及び第2の光触媒部33及び34の間の空間Sに空気を流し込む入り口に向けて、空間Sを三つの部分空間S1、S2及びS3に分けるように配置されている。この分割用光触媒部36の第1及び第2の部分36A及び36Bの開口部側の先端部は、第1の光触媒部33及び第2の光触媒部34にそれぞれ接触している。このような形状の分割用光触媒部36を設けると、空気との接触面積を増やして接触時間を延ばすことにより除菌効率を高めることができる。なお分割用光触媒部36を、本実施の形態とは逆に、X方向に開口するV字形の開口部をU字形の連結用光触媒部35に向けるように配置してもよいのは勿論である。
【0037】
[第5の実施の形態]
次に、第5の実施の形態にかかる光触媒装置1の構成について説明する。図9(A)は第5の実施の形態にかかる光触媒装置1の平面図、図9(B)は図9(A)のB-B線断面図、図9(C)は図9(A)のC-C線断面図、図10図9の光触媒ユニット32の分解斜視図である。図9及び図10においては、図1及び図2に示した第1の実施の形態の部分と実質的に同じ部分または同様の機能を果たす部分には、図1及び図2に付した符号と同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0038】
第5の実施の形態も、図5及び図6に示した第3の実施の形態と比較すると、分割用光触媒部36の形状と配置位置が異なっている。本実施の形態の分割用光触媒部36は、Z方向から見た形状がX字状になる形状を有している。この場合、分割用光触媒部36は、X方向の一方に開口する第1の部分空間S1の第1の開口部をU字形の連結用光触媒部35に向け、この第1の開口部とはX方向の反対側に開口する第2の部分空間S2の第2の開口部を第1及び第2の光触媒部33及び34の間の空間に空気を流し込む入り口に向けている。またこの分割用光触媒部36は、Y方向の一方に開口する第3の部分空間S3の第3の開口部をケーシング31の第3の側壁部31Cに向け、この第3の開口部とはY方向の反対側に開口する第4の部分空間S4の第4の開口部をケーシング31の第4の側壁部31Dに向けている。このような第1乃至第4の部分空間S1乃至S4を形成するために、分割用光触媒部36は、4つの部分即ち第1の部分乃至第4の部分(36Aa、36Ab、36Ba及び36Bb)を備えている。
【0039】
これら第1の部分乃至第4の部分(36Aa、36Ab、36Ba及び36Bb)のZ方向の両端部は、第1及び第2の光触媒部33及び34に接触している。そしてX方向に隣り合う第1の部分36Aa及び第2の部分36Abの間の第3の部分空間S3及び第3の部分36Ba及び第4の部分36Bbの間の第4の部分空間S4に対しては、Y方向両側からそれぞれ1つの光源37が光を照射する。またY方向に隣り合う第1の部分36Aa及び第3の部分36Baの間の第1の部分空間S1及び第2の部分36Ab及び第4の部分36Bbの間の第2の部分空間S2に対しても、Y方向両側からそれぞれ1つの光源37が光を照射する。本実施の形態によれば、複数の光源37の前方に光を遮らずに、分割用光触媒部36を配置することができるので、光の当たる面積を大きくして除菌効率を高めることができる。
【0040】
[第6の実施の形態]
次に、第6の実施の形態にかかる光触媒装置1の構成について説明する。図11(A)は第6の実施の形態にかかる光触媒装置1の平面図、図11(B)は図11(A)のB-B線断面図、図11(C)は図11(A)のC-C線断面図、図12図11の光触媒ユニット32の分解斜視図である。図11及び図12においては、図1及び図2に示した第1の実施の形態の部分と実質的に同じ部分または同様の機能を果たす部分には、図1及び図2に付した符号と同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0041】
第6の実施の形態は、第1乃至第5の実施の形態のように、分割用光触媒部36を用いることなく、第1及び第2の光触媒部33及び34の間の空間S内に、該空間S内を満たすように、連続気泡構造の多孔質体136を充填している。この連続気泡構造の多孔質体136は光が乱反射または透過により内部まで進入する構造を有している。この多孔質体136の光が当たる内面には、連続気泡構造を維持する状態で、前述の光触媒材料が付着している。なお反射を利用して内部に光を通す場合には、多孔質体136は、光が乱反射により内部を進行する構造を有している。また透過を利用する場合には、多孔質体136を光透過性が有る材料により形成すればよい。そして多孔質体136の周囲から出た光が、第1及び第2の光触媒部33及び34並びに連結用光触媒部35に当たるように、多孔質体136の内部に形成された通路の大きさが定められている。
【0042】
本実施の形態のような多孔質体を挿入すると、光触媒に光が当たっている時間が長く、除菌効率を高めることができる。
【0043】
[その他]
上記実施の形態では、6個の光源は、ケーシング31の第3の側壁部31C及び第4の側壁部31Dにそれぞれ固定されて二つ以上の部分空間内に光を照射している。しかしながら複数の光源の数と配置位置は、除菌効率を高めるのに適した位置を探して設置するのが好ましく、上記各実施の形態に限定されるものではない。各部分空間に対応して光源を配置してもよいし、二つ以上の部分空間に光を照射できる位置に光源を配置してもよい。
【0044】
ケーシング31の第1乃至第4の側壁部31A乃至31Dは、光を反射し且つ通気性を有さないのが好ましい。このような構造であれば、第1乃至第4の側壁部31A乃至31Dに近い位置にある光触媒部材を有効に活用して、除菌効率を高めることができる。
【0045】
更に第1及び第2の光触媒部33及び34の形状は任意であるが、波板状を呈していてもよい。第1及び第2の光触媒部33及び34の形状を波板状にすると、第1及び第2の光触媒部33及び34に当たった光の乱反射率を高めることができ、除菌効率を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、連結用光触媒部の存在によって、空気が滞留するため、第1及び第2の光触媒部の間に入った空気が、第1及び第2の光触媒部並びに連結用光触媒部と接触する時間が従来よりも長くなる。その結果、空気の除菌効率が上昇する。また連結用光触媒部は、通気性を有しているため、連続して空気を除菌することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 光触媒装置
3 光触媒組立体
31 ケーシング
32 光触媒ユニット
33 第1の光触媒部
34 第2の光触媒部
35 連結用光触媒部
36 分割用光触媒部
37 光源
5 送風装置
7 ハウジング
71 本体
72 分離本体
136 連続気泡構造の多孔質体
S 空間
S1乃至S4 第1乃至第4の部分空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12