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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162927
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】乾式分離装置及び乾式分離方法
(51)【国際特許分類】
   B07B 4/08 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
B07B4/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068037
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】599035627
【氏名又は名称】学校法人加計学園
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】押谷 潤
【テーマコード(参考)】
4D021
【Fターム(参考)】
4D021FA09
4D021GA13
4D021GA18
4D021GA23
4D021HA10
(57)【要約】
【課題】
本発明は、メンテナンスの頻度を低減可能であり、環境に優しい乾式分離方法を提供することにある。
【解決手段】
本発明の乾式分離装置は、分離槽を備える本体部と、分離対象物を前記分離槽へ投入する投入部と、分離された前記分離対象物を前記分離槽から排出する排出部と、前記分離槽の底部及び/又は中間部に設けられた気体分散部材とを有する乾式分離装置であって、前記気体分散部材は、織物又は不織布からなることを特徴とする。また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記気体分散部材は、前記織物又は不織布の片側表面に設置された多孔質板を有することを特徴とする。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離槽を備える本体部と、分離対象物を前記分離槽へ投入する投入部と、分離された前記分離対象物を前記分離槽から排出する排出部と、前記分離槽の底部及び/又は中間部に設けられた気体分散部材とを有する乾式分離装置であって、前記気体分散部材は、織物又は不織布からなることを特徴とする乾式分離装置。
【請求項2】
前記気体分散部材は、前記織物又は不織布の片側表面に設置された多孔質板を有することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記多孔質板は、パンチングメタル又はブリッジスクリーンであることを特徴とする請求項2記載の装置。
【請求項4】
さらに、前記分離槽に投入された分離対象物を振動する振動手段を有する請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記振動手段は、水平方向±45度の範囲内において前記分離対象物を振動させることを特徴とする請求項4記載の装置。
【請求項6】
固気流動層を形成するための送風の風速は、超0~55cm/sである請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
空塔速度をuとして粉体の最小流動化空塔速度をumfとした場合、u/umfが超0~2.3の範囲において前記送風を行なうことを特徴とする請求項6記載の装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の装置を用いて、分離対象物を分離することを特徴とする、乾式分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を用いることなく分離対象物の比重分離を行なう乾式分離方法、及び乾式分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設廃棄物、産業廃棄物又は災害廃棄物等は、種々の異なる成分を含んでいる。このような成分毎の分離は、残渣の適正処理のみならず、レアメタルの回収、鉱物資源の精製、資源のリサイクル等を行なう上で、必要である。
【0003】
より具体的には、ものづくり現場で生じる粒状廃棄物などの分離対象物の中から有価物を取り出すため、又は不法投棄が問題となっている建設廃棄物残渣や災害により大量発生する災害廃棄物残渣の適正利用に、粒状混合物などの分離対象物を密度差に基づいて分離する技術が求められる。さらには、資源利用においては、レアメタル、鉄鉱石、銅鉱石、石炭等の粒状鉱物の高品位化に、当該分離技術の利用が期待されている。
【0004】
現在までのところ、分離方法としては主として、水中での物体浮沈現象に基づく湿式分離法及び乾式分離法が知られている。例えば、衝突粉砕処理工程を組み込むことによって、各比重に対応した二種の単層細小片集合物を高回収率、かつ高純度で得る回収処理方法が知られている(特許文献1)。
【0005】
湿式比重分離技術は、国内外で広く普及している。当該技術は廃液処理や乾燥工程が必要、液体の比重調整が高価、装置からの液漏れによる作業環境の劣悪化、水資源の乏しい国や地域での利用が困難などの問題がある。乾式比重分離技術では、このような問題はない。
【0006】
乾式比重分離技術において、固気流動層内での物体浮沈現象を利用するものがある。固気流動層とは、粉体を例えば下部からの送風により流動化させた層であり、密度や粘度等の物性が液体に類似する。この層内に物体を投入すると、相対的に軽い物体は浮上し、相対的に重い物体は沈降する、物体浮沈現象が生じるためにそれらの物体を上下に分離可能となる。
【0007】
そのような乾式比重分離方法の例として、流動化媒体となる粉体に気体を吹き付けて流動層を形成し、固気流動層内に石炭粒子を投入して流動層の見かけ密度より小さい密度の石炭粒子を浮揚させ、大きい密度の石炭粒子を沈降させて分離するようにした乾式石炭分離方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7-156148号公報
【特許文献2】特開2000-61398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の乾式分離技術はいずれも、装置コストが高く、効率も低いなどの問題があった。加えて、湿式分離法においては、廃液処理による環境汚染の問題や、水資源の少ないところでは利用できず、また、廃液処理や分離後の乾燥工程を必要とするなどの問題を抱えている。
【0010】
また、流動層を用いて分離対象物を分離する乾式分離方法においては、分離対象物によっては、空気を供給するブロワーの圧力センサーが異常な高圧を検知し、ブロワーが緊急停止する事態が発生する問題があった。ブロワーの異常停止する場合には、内部を検査するために一度装置を解体し、その後再び組み立て直す必要があるため、実用上大きな問題が生じる。したがって、ブロワー等の停止を低減でき、長期間メンテナンスフリーの分離装置及び分離方法の開発が望まれる。
【0011】
そこで、本発明は、メンテナンスの頻度を低減可能であり、環境に優しい乾式分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者は、ブロワー等が緊急停止する要因について調査し、鋭意検討した結果、本発明の乾式分離方法及び乾式分離装置を見出すに至った。
【0013】
すなわち、本発明の乾式分離装置は、分離槽を備える本体部と、分離対象物を前記分離槽へ投入する投入部と、分離された前記分離対象物を前記分離槽から排出する排出部と、前記分離槽の底部及び/又は中間部に設けられた気体分散部材とを有する乾式分離装置であって、前記気体分散部材は、織物又は不織布からなることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記気体分散部材は、前記織物又は不織布の片側表面に設置された多孔質板を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記気体分散部材は、前記多孔質板は、パンチングメタル又はブリッジスクリーンであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記気体分散部材は、さらに、前記分離槽に投入された分離対象物を振動する振動手段を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記気体分散部材は、前記振動手段は、水平方向±45度の範囲内において前記分離対象物を振動させることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記気体分散部材は、固気流動層を形成するための送風の風速は、超0~55cm/sであることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記気体分散部材は、空塔速度をuとして粉体の最小流動化空塔速度をumfとした場合、u/umfが超0~2.3の範囲において前記送風を行なうことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の乾式分離方法は、本発明の装置を用いて、分離対象物を分離することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
また、本発明によれば、いわゆる乾式分離であるため、水資源の少ないところでも利用することができる。そして、本発明は、各種の混合廃棄物の適正処理及びレアメタルを含む有価物の分離回収にも利用可能である。また、本発明によれば、従来の乾式分離装置と比べて、メンテナンスの頻度を低減することができるという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の第一の実施態様における乾式分離装置の概略図を示す。
図2図2は、本発明の第二の実施態様における乾式分離装置の概略図を示す。
図3図3は、横振動と縦振動でのΔP/ΔPを示す。
図4図4は、横振動及び縦振動における、各層のかさ密度を示す。
図5図5は、横振動と縦振動での風速と分離効率の関係を示す。
図6図6は、横振動と縦振動でのu0/umf値と分離効率の関係を示す。
図7図7は、異なる粒径(メジアン径)の粉体での圧力損失比(目詰まりの違い)の実験結果を示す。
図8図8は、本発明の一実施態様における乾式分離装置に用いることが可能な気体分散部材を示す。
図9図9は、種々の配置における各気体分散部材を用いた場合の圧力損失比を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の乾式分離装置は、分離槽を備える本体部と、分離対象物を前記分離槽へ投入する投入部と、分離された前記分離対象物を前記分離槽から排出する排出部と、前記分離槽の底部及び/又は中間部に設けられた気体分散部材とを有する乾式分離装置であって、前記気体分散部材は、織物又は不織布からなることを特徴とする。気体分散部材は、粉体又は分離対象物等に空気を均一に流入させる役割を有するが、ある程度の使用を継続すると、気体分散部材中に、試料(分離対象物や粉体)に含まれる微細な粉体がろ布の内部に入り込んで固着し目詰まりを起こすという課題が生じていた。この目詰まりは、結果として、以下の現象を引き起こす虞がある。すなわち、排出部を失った空気が底部下の空気室に溜まり、圧力が異常に高まり、送風を停止するという課題が生じていた。このような場合に、目詰まりした部材を交換すればよいのであるが、部材を交換するには一度装置を解体し、その後再び組み立て直す必要があるため、頻繁に交換が必要となる現在の方法では、実用上大きな問題が生じることは明らかであった。したがって、ろ布の目詰まりを抑制し、長期間ろ布を交換しなくてもよいような新たな分離装置及び分離方法の開発が必要であった。
【0024】
今回、本発明においては、後述する実施例により明らかにされたように、織物又は不織布のみを気体分散部材に用いるか、織物又は不織布の片側面のみに多孔質板を配置することにより、上記目詰まりを抑制しようとするものである。本発明において、織物又は不織布の固定方法については、常法により特に限定されない。目詰まりを発生させない限り、V字状、X字状、十字状等の支えに対して、ネジ等で、織物又は不織布を固定してもよい。
【0025】
また、気体分散部材の下部には、後述する送風手段において、空気室を設けることができる。当該送風手段の上部、例えば、空気室の上部を利用して織物又は不織布を固定してもよい。空気室は、複数設けると以下のような利点を有する。すなわち、装置断面積が大きくなると、各場所での風速が不均一になる可能性が高く、これを避けるために、壁で仕切った空気室を複数設けることで、各空気室での風速を制御可能とすることができる。このような複数の空気室の場合、各空気室の間には、壁を有し、当該壁へ気体分散部材をネジ止め等で固定することができる。
【0026】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記気体分散部材は、目詰まりを効率良く抑制し、部材の交換頻度を低減させるという観点から、前記織物又は不織布の片側表面に設置された多孔質板を有することを特徴とする。なお、織布及び不織布は、天然繊維、プラスチック等の合成繊維に由来するものでもよい。また、多孔質板は、多孔金属板、多孔陶板、若しくはこれらに金属板などの補強材を組み合わせたもの、又はこれらを二種以上組み合わせたものとすることができる。
【0027】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記気体分散部材は、装置断面の各場所での風速が均一になるという観点、あるいは装置断面の各場所での風速を均一にするという観点から、前記多孔質板は、パンチングメタル又はブリッジスクリーンであることを特徴とする。
【0028】
ここで、本発明の分離の原理について説明する。分離の原理は、分離対象物を固気流動層に投入し、液体系の比重選別と同様な粉体流動化媒体、すなわち固気流動層を利用してその密度によって、分離するか(物体浮沈を利用)、分離対象物自体を流動化させて前記分離対象物を分離するものである(密度偏析を利用)。前者の固気流動層とは、粉体を流動化させて液体に類似した性質を持つものを意図する。まず、前者の粉体流動化媒体を利用した場合について説明する。
【0029】
流動層の見掛け密度ρfbは下記の式で表される。
ρfb=W/V =(1-εf)ρ
ここでW は流動化媒体の粒子重量、V は流動化時の体積、εは流動化時の空隙率、ρは流動化媒体の粒子密度である。
【0030】
このような見掛け密度ρfbを有する流動層中に密度ρの物体が混在するとき、ρ <ρfbの物体成分は流動層上部に浮揚し、ρ>ρfbの当該物体成分は流動層下部に沈降する。そしてρ =ρfbの当該物体成分は流動層中間部を浮遊する。このことを利用して少なくとも二種類の物体の比重選別を行なうのである。
【0031】
一方、分離対象物自体を流動化させて前記分離対象物を分離するものである(密度偏析を利用)場合については、以下の通りである。これは、分離対象物自体をあたかも固気流動層を形成する媒体である粉体のように、流動化させて分離せんとするものである。
【0032】
すなわち、従来においては、もっぱら、送風のみによって分離対象物の分離を行っていたが、送風のみでは、どうしても分離対象物の分離が困難な場合があったが、本発明のおいては、このような場合であっても分離対象物を分離し、装置外へと排出できるものである。
【0033】
このような分離原理に基づいて、本発明において分離可能な分離対象物は特に限定されない。分離対象物としては、各種鉱物資源、工業製品の他、シュレッダーダスト等を挙げる事ができる。具体的には、例えば、廃棄物、鉱物、農作物、工業生産物、金属粉、鉱物粉、ゴム類、プラスチック類、ガラス類等を挙げる事ができる。各種鉱物資源としては、珪石、ろう石などの鉱石、炭鉱で採掘された原炭等が挙げられ、シュレッダーダストには、家庭用ごみ、自動車、家電製品等からのシュレッダーダスト等由来のものを挙げることができる。分離対象物の大きさについても特に限定されるものではないが、本発明においては、振動、又は振動の回収機構の適正化によって、固気流動層による流動化媒体の動きの影響を受けやすい粒状混合物などの分離対象物をも分離可能とすることから、本発明は、密度比2.0を下回るか(密度差が小さい)又は粒径10mm以下といった、従来の乾式分離技術では浮き沈みが不安定となる分離対象物についても特に有効である。
【0034】
このようにいずれか由来の分離対象物であってもよいが、分離対象物が汚れている場合は、洗浄した後に分離するのが好ましい。これは本発明の分離方法によれば、主として分離対象物の成分をその比重差によって分離するため、分離対象物が汚れていると比重が変動するおそれがあるからである。
【0035】
また、洗浄後に分離対象物を乾燥させて分離することも必要である。リサイクル用に分離する場合、乾燥後は装置の大きさ等の関係から、分離対象物をシュレッダー等で粉砕したものを分離に使用するのが好ましい。
【0036】
本発明において、分離槽は、前記固気流動層について粉体媒体を利用して形成する場合の態様、及び分離対象物自体が流動層を形成する場合の態様のいずれにおいても、前記固気流動層又は前記流動層を形成することができれば、形状等は特に限定されない。また、本発明において、前記分離槽は、矩形型、円柱型、三角柱型の少なくとも1種とすることができる。
【0037】
分離槽を矩形型とする場合、分離対象物の投入部を分離槽の水平方向一端部の上方、排出部を分離槽の水平方向一端部の反対側面に配置してもよい。
【0038】
分離槽が円柱型又は三角柱型とする場合、分離対象物の投入部を分離槽の中心部、排出部を分離槽の外周側面に配置してもよい。
【0039】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記気体分散部材は、さらに、前記分離槽に投入された分離対象物を振動する振動手段を有することを特徴とする。また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記気体分散部材は、前記振動手段は、水平方向±45度の範囲内において前記分離対象物を振動させることを特徴とする。
【0040】
本発明において、好ましくは、前記分離槽内は、1又はそれ以上の仕切りを有する。前記1又はそれ以上の仕切りは、分散槽内部に、好ましくは、分離対象物を移動させたい方向に平行に設けられる。そして、仕切りは、分離槽内での分離対象物への「壁効果」を促進することが期待される。壁効果とは、分離対象物が壁に接する範囲が広いほど、分離対象物への振動の伝搬が高められる効果とすることができる。すなわち、振動が伝播しない部分での振動の効果を得ることができる仕切りが無い状態で流動層又は分離槽全体を振動させた場合、側面の壁から遠い部分や底面の空気分散部材(気体分散部材)から遠い(高い)部分では振動の効果を得ることが難しいという観点からも、分離槽等全体のみを振動させる場合と比較して、さらに分離槽全体及び当該仕切りをともに振動させることで、より分離の効果を高めることが可能である。なお、進行方向に平行に仕切り部材を設置し、しかもこの部材は流動層全体の振動と同期して振動する仕組みにすると、より好ましい。このように本発明においては当該部材の設置により流動層の内部にも振動の効果を及ぼす工夫を施すことが可能となる。
【0041】
また、本発明は、分離対象物を前記分離槽へ投入する投入部と、分離された前記分離対象物を前記分離槽から排出する排出部とを有することができる。投入部についても、分離対象物を投入できれば特に限定されない。本発明において、分離対象物を振動する振動手段は、前記分離対象部を振動させることができれば、特に限定されない。例えば、振動モーターにより、水平方向±45度の範囲内における振動によって、分離対象物を振動させることができる。本発明において、水平方向±45度の範囲内における振動としたのは、ブロワーの停止は、気体分散板の目詰まりにあると予測し、目詰まりの要因は縦振動により気体分散部材を構成するろ布が粉体に叩きつけられることにあると考え、振動を生み出す振動モーターを従来の向きから90°回転させて取り付け、付加する振動の方向を装置に対して鉛直縦方向から水平横方向±45度の範囲内に変更したところ、後述する実施例から明らかなように、この振動の工夫によっても、粉体の流動化後の目詰まりを大幅に抑制することに成功できたことによるものである。また、粒状混合物の分離効率について、この範囲での振動においても縦振動の場合と同等の分離効率を有することが確認できた。なお、水平方向±45度の範囲内における振動の水平方向に振動する振幅は、目詰まりを低減し、メンテナンスを低減するという観点から、好ましくは、0.25~4.00mm、より好ましくは0.50~2.00mmとすることができる。
【0042】
また、水平方向±45度の範囲内における振動の周波数としても、分離対象物の種類により適宜修正可能であるが、目詰まりを低減し、メンテナンスを低減するという観点から、好ましくは、10~30Hz、より好ましくは15~25Hzとすることができる。また、目詰まりを低減し、メンテナンスを低減するという観点から、振動としては、正弦波振動が好ましい。
【0043】
また、水平方向±45度の範囲内における振動強度Gを以下のように定義することができる。
振動強度G=振動加速度(振幅×角速度)/重力加速度
本発明においては、目詰まりを低減し、メンテナンスを低減するという観点から、水平方向±45度の範囲内における振動強度Gは好ましくは、0.25~3.00、より好ましくは、0.5~1.5とすることができる。
【0044】
また、本発明において、前記分離された分離対象物を前記排出部へ移動させる移動手段とを有する。本発明において、前記移動手段は、前記分離槽内で分離された分離対象物を、前記排出部へ向かって移動させるものとすることができる。前記移動手段としては、例えば、分離槽の構造によるもの、気流を利用するもの、分離槽内に設置した可動部材によるものなどを挙げることができる。但し、分離対象物に力を作用させて排出部に移動させるものであれば、特に限定されない。
【0045】
本発明において、例えば、移動手段としては、分離された分離対象物を迅速に排出部に移動させるという観点から、好ましくは、前記分離槽の底部に設けられた傾斜を挙げることができる。また、前記傾斜は、好ましくは、分離された分離対象物をより効率よく排出部に移動させるという観点から、前記投入部から前記排出部へ向けられた傾斜とすることができる。これによって、分離対象物は、その自重によって傾斜の高い位置から低い位置にスムーズに移動することができ、ひいては、分離対象物を、投入部から、排出部へ向けて、連続的に分離することが可能となる。
【0046】
また、本発明において、前記移動手段は、前記分離槽内で分離された分離対象物を、前記排出部へ向かって移動させることを特徴とする。例えば、分離槽内に設置した可動部材により、初めに、前記固気流動層又は前記分離対象物自体によって形成される流動層内で浮揚した浮揚物を排出し、その後、前記固気流動層又は前記分離対象物自体によって形成される流動層内で沈降した沈降物を排出することができる。
【0047】
なお、本発明において、分離槽底部の傾斜の態様は特に限定されない。例えば、気体分散部材を固定する部材の配置を調整して、実質的に、分離槽底部を凹ませたり、山形にしたりして、容器の中心部と外周部で容器の高さを異にしてもよい。分離槽底部を凹ませたり、山形にすることにより、容器の中心部と外周部で導入する気体の風速を変化させることができ、これにより分離対象物を循環させて、分離対象物の偏析をより顕著にすることが可能である。
【0048】
ここで、循環について補足説明すれば、以下のようである。すなわち、ここでいう循環、循環流というのは、特に言及しない限り、気体自身の循環流ではなく、分離対象物の循環流を意味する。つまり、分離対象物の下部から気体を導入した際に、容器底部の中央部の方が壁面近傍部よりも気体が通りやすい場合は、その中央部での気体からなる気泡の上昇が顕著であり、その気泡上昇に起因して中央部にて分離対象物が上昇し、壁面近傍部で分離対象物が下降するような循環流が形成される。その一方で、逆に壁面近傍部の方が、気体が通りやすい場合は、壁面近傍部での気泡の上昇が顕著になり、壁面近傍部にて分離対象物が上昇し中央部で下降するような循環流が形成される。さらには、ある特徴を持つ分離対象物を用いた場合は、高さ方向でS字に変化するような循環流も起こり得る。本発明においては、このような循環をも含む広い概念を意味する。
【0049】
また、気体の通りやすさが断面方向で(中央部と壁面近傍部で)違わない場合は、気体が気泡となって断面方向で均一に上昇し、分離対象物は流動化するが、上記のような循環流は形成されない。このように循環流が存在しない場合でも、比重差あるいはサイズ差に基づく分離は生じるのであるが、循環流の役割は、その分離をより顕著にする効果である。
【0050】
また、本発明の乾式分離装置は、前記底部、及び/又は前記中間部に設けられた送風手段を有することができる。本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、固気流動層を形成するための送風の風速は、目詰まりを低減し、メンテナンスを低減するという観点から、超0~55cm/s、より好ましくは、後述する実施例から明らかなように、分離効率が50%の範囲となる、10~30cm/sであることを特徴とする。
【0051】
また、本発明において、前記送風手段の送風に関して、空塔速度をu0として粉体の最小流動化空塔速度をumfとした場合、u/umfが、分離を制御する1つの要因となる。一般に、空塔速度を最小流動化空塔速度以上で当該最小流動化空塔速度近傍に設定すると、固気流動層又は前記分離対象物自体によって形成される流動層内に存在するダスト成分の密度分布は狭くなり、空塔速度をさらに上げていくと、固気流動層内に存在するダスト成分の密度分布は広がる。なお、空塔速度とは、分離槽内に生じさせた空気流の速度である。
【0052】
まず、固気流動層を用いた場合について、一例を挙げて説明すると以下の通りである。固気流動層を用いた(物体浮沈を利用)場合、本発明の好ましい実施態様において、当該u0/umfの値としては、目詰まりを低減し、メンテナンスを低減するという観点から、例えば、超0~2.3の範囲、より好ましくは、後述する実施例から明らかなように、分離効率が50%の範囲となる、0.4~1.3の範囲とすることができる。かかる範囲であれば、安定した固気流動層を形成することができることに加えて、目詰まりを低減し、メンテナンスを低減することができるためである。
【0053】
また、固気流動層を用いた(物体浮沈を利用)場合、複数の粉体を流動化させた場合においては、当該複数の粉体が実質的に均一に混合するようなu0/umf値下で行なうことが好ましい。これは、実質的に均一に混合していないと、固気流動層の上方ほど見掛け密度が小さくなり、下方ほど見かけ密度が大きくなるために、固気流動層内の中層に位置する成分の密度分布が大きくなる傾向があるからである。
【0054】
固気流動層を用いた(物体浮沈を利用)場合、固気流動層を形成する粉体の種類についても、分離する分離対象物の種類により特に限定されないが、例えば、粉体を、ユニビーズ、ガラスビーズ、ジルコンサンド、ポリスチレン粒子、及びスチールショットからなる群から選択される少なくとも1種とすることができる。
【0055】
一方、前記分離対象自体によって形成される流動層を用いた(密度偏析を利用)場合は、当該u0/umfの値としては、例えば、0. 5~1. 5の範囲の値、より好ましくは0. 7 5~1. 2 5の範囲の値とすることができる。かかる範囲であれば、安定した前記分離対象物自体によって形成される流動層を形成しつつ、目詰まりを低減し、メンテナンスを低減することができるからである。
【0056】
固気流動層で使用する粉体、及び分離対象自体によって形成される流動層を用いた場合の分離対象物(粉体の場合)の平均粒径についても特に限定されないが、粉体の流動化を比較的小さな空塔速度で行うことと、付着性に起因する粉体の凝集を抑制するという観点から、好ましくは0.05~10.00mm、より好ましくは0.1~1.0mmとすることができる。
【0057】
次に、本発明の乾式分離方法の一例について説明すれば、以下の通りである。本発明の乾式分離方法は、本発明の装置を用いて、分離対象物を分離することを特徴とする。例えば、具体的に、本発明の乾式分離方法は、粉体を流動化させた固気流動層を利用して分離対象物を分離するか、分離対象物自体を流動化させて前記分離対象物を分離し(密度偏析を利用)、前記分離した分離対象物を排出部へ排出する乾式分離方法であって、分離槽の底部及び/又は中間部に設けられた気体分散部材を介して送風することにより、分離対象物を分離することを特徴とする。粉体、固気流動層、分離対象物、投入部、排出部等については、上述の分離槽を備えた乾式分離装置の説明を参照することができる。
【実施例0058】
以下、本発明の一例を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定して解釈される意図ではない。
【0059】
実施例1
まず、移動手段として、分離槽の底部に設けられた傾斜を利用した乾式分離装置を製造した。図1は、本発明による乾式分離装置の一実施例を示す。図1において、乾式分離装置は、分離槽3、分離対象物の投入部5、分離対象物の排出部7、振動手段(図では振動20のみを示す。本発明の装置において、振動の方向は、水平方向±45度の範囲内に稼働可能である。)、及び送風部30を備える。実施例1では、分離槽3は矩形である。当該装置は、分離槽3内に固気流動層又は前記分離対象物自体によって形成される流動層4を生成し、固気流動層又は前記分離対象物自体によって形成される流動層4において分離対象物の密度小の物体と密度大の物体を分離して、排出部7から装置外へと排出させる。振動手段は、分離槽内の流動層4及び分離対象物を振動させる。移動手段は、投入部に近い室から排出部に近い室に向かって分離対象物の排出部への移動を促進させる。
【0060】
排出部7は、分離対象物が含有する複数種類の物体の密度の違いに基づいて設置位置を設定した排出口7a、7bを備える。排出口7a、7bは、例えばスリットである。排出口の数は、密度の違いで予め決めた種類数に替えて、投入された分離対象物を分離させた後に排出させたい種類数とすることができる。
【0061】
実施例1では、移動手段の一例として、投入部5に近い部位から排出部7に近い部位にかけて低くなる傾斜を設けた底部9を図示した。
【0062】
また、乾式分離装置の送風部30は、空気室31から予め設定した風速の気流33を分離槽3内に送って分離効率を向上させると共に粉体の右への移動を促進させる点では、移動手段の一部と考えることもできる。
【0063】
排出部7は、分離対象物の相対的に密度の小さな物体の排出口7aと、相対的に密度の大きな物体の排出口7bとを備える。ここで、排出口7a、7bは二つであるが、分離したい物体の密度の違いに基づく種類数などに応じて、排出口の数や位置を変更する。
【0064】
送風部30では、空気室31を複数に分割し、投入部に近い室から排出部に近い室にかけて気流33の風速が徐々に小さくなるように設定してもよい。
【0065】
以上の装置を使用して、u/umfの値を1に設定し、振動強度Gを1.2に設定して、分離対象物として、従来分離が困難であった粒状物質の粒径10mm以下の分離対象物であって、重鉱砂(2.5g/cm)と珪砂(1.5g/cm)の小さい密度差の分離を試みた結果、送風のみでは分離できなかったものでも、分離することができることが判明した。
【0066】
実施例2
次に、目詰まり抑制効果について、振動の方向がろ布の目詰まりに及ぼす影響について調べるため以下の実験を行った。実験装置として、図2に示す小型円筒形装置を用いた。この装置は内径100 mmの円筒形カラム、左右2つの振動モーター、モーターの回転数を制御するインバーターからなり、コンプレッサーから圧縮空気を供給する。まず、円筒形カラムが空の状態で送風を行い、初期状態の空気分散部材の圧力損失ΔP1を測定した。次に、試料として粒径0.05~0.5 mmの微粉石炭を層高100 mm充填し、送風と振動を付加して2時間流動化させた後、試料を装置から除去してからの状態で再び空気分散部材の圧力損失ΔP2を測定した。そして、流動化前後の圧力損失比ΔP2/ΔP1を求めた。この比の値が大きいほど目詰まりが進んでいることを示す。図3に、縦振動と横振動(水平方向±45度の範囲内における振動)を付加した場合のΔP2/ΔP1を示す。縦振動の場合、ΔP2/ΔP1=14.4と大きな値を示し、流動化に伴って目詰まりが進行したことが明らかになった。一方、横振動では、ΔP2/ΔP1=1.1とほとんど流動化後の空気分散部材の圧力損失の上昇がみられず、目詰まりを大幅に抑制することに成功した。
【0067】
実施例3
次に、分離効率に関して、横振動でも縦振動と同様に粒状混合物の分離が可能か調べるために以下の実験を行った。装置は実施例2と同じものを用い、試料には粒径0.1~4 mmの建廃残渣を用いた。この建廃残渣は送風のみでは有機物と砂利に分離できないことを確認している。カラムに試料を層高約100 mm充填し、送風と振動を付加して10分間処理した後、サイクロンで上層から10 mmずつ10層に分けて回収し、各層のかさ密度を測定した。図4に、風速に対する各層のかさ密度を示す。上段の縦振動の場合、低風速の10cm/sでは上層のかさ密度が小さく、下層のかさ密度が大きくなる密度偏析が起きており、風速30~60 cm/sではより顕著な偏析がみられた。これは、密度が小さい木片等の有機物が上層に、密度が大きい砂利が下層に移動し、両者が分離できていることを表している。一方、下段の横振動では、中風速の30cm/sでは密度偏析が緩慢なものの、高風速の40や60cm/sでは縦振動と同様に層全体で密度偏析が起こっており、振動を横方向に変えても建廃残渣の分離は可能であることが明らかになった。
【0068】
実施例4
次に、横振動と縦振動での風速と分離効率の関係について調べた。具体的に、ガラス粉とステンレス粉の混合粉体を用いて、横振動と縦振動での風速と分離効率の関係を調べた。実験装置は1)の図2と同じであり、円筒型カラムに上記の混合粉を層高約100 mm充填し、送風と振動を付加して10分間処理した後、サイクロンで上層から10 mmずつ10層に分けて回収し、各層のかさ密度を測定した後に、ガラス粉が上層、ステンレス粉が下層に完全に移動して分離する場合を100%と定義した分離効率を求めた。
【0069】
図5に、風速に対する分離効率を示す。縦振動の場合は風速がゼロもしくは極めて小さい場合に分離効率が約-70%となり、ステンレス粉が上層、ガラス粉が下層に移動して分離するという密度の違いからは相反する逆密度偏析が起こった。一方、横振動の場合はそのような逆密度偏析は起こらなかった。なお、その他の風速ではガラス粉が上層、ステンレス粉が下層に移動する密度の違い通りの密度偏析が起こることから、分離技術と言う観点で逆密度偏析は相応しくない現象であり、横振動はそれを抑制可能という点で縦振動よりもメリットがあると考えられる。
【0070】
実施例5
次に、横振動と縦振動での風速(u0/umf)と分離効率の関係について調べた。具体的に、ガラス粉とステンレス粉の混合粉体を用いて、横振動と縦振動でのu0/umfと分離効率の関係を調べた。実験装置は1)の図2と同じであり、円筒型カラムに上記の混合粉を層高約100 mm充填し、送風と振動を付加して10分間処理した後、サイクロンで上層から10 mmずつ10層に分けて回収し、各層のかさ密度を測定した後に、ガラス粉が上層、ステンレス粉が下層に完全に移動して分離する場合を100%と定義した分離効率を求めた。
【0071】
図6に、u0/umfに対する分離効率を示す。縦振動の場合はu0/umfがゼロもしくは極めて小さい場合に分離効率が約-70%となり、ステンレス粉が上層、ガラス粉が下層に移動して分離するという密度の違いからは相反する逆密度偏析が起こった。一方、横振動の場合はそのような逆密度偏析は起こらなかった。なお、その他の風速ではガラス粉が上層、ステンレス粉が下層に移動する密度の違い通りの密度偏析が起こることから、分離技術と言う観点で逆密度偏析は相応しくない現象であり、横振動はそれを抑制可能という点で縦振動よりもメリットがあると考えられる。+また、縦振動ではu0/umf=1~2で分離効率が高いのに対し、横振動ではu0/umf=0.6~1.2と縦振動よりも小さなu0/umfで分離効率が高いという違いも見られた。
【0072】
実施例6
次に、異なる粒径(メジアン径)の粉体での目詰まりの違いについて調べた。上述のように縦振動を付加した場合、粉体の流動化に伴って空気分散部材の目詰まりが進行したことが明らかになった。ここでは、粒径が異なる粉体(メジアン径が43μm, 75μm, 160μm, 264μmの珪砂)を用い、縦振動を付加した場合の目詰まりの違いについて調べた。実験装置は1)の図2と同じであり、実験方法も同様で、まず、円筒形カラムが空の状態で送風を行い、初期状態の空気分散部材の圧力損失ΔP1を測定した。次に、上記の珪砂のうち1種類を層高100 mm充填し、送風と振動を付加して2時間流動化させた後、珪砂を装置から除去してからの状態で再び空気分散部材の圧力損失ΔP2を測定した。そして、流動化前後の圧力損失比ΔP2/ΔP1を求めた。この比の値が大きいほど目詰まりが進んでいることを示す。図7に、粉体のメジアン径に対するΔP2/ΔP1を示す。メジアン径43μmではΔP2/ΔP1の値が約12、メジアン径75μmでは約6となり、粉体サイズが小さいために目詰まりが進行した。一方、メジアン径160μm と264μmではΔP2/ΔP1の値がほぼ1となり、粉体サイズが大きいために目詰まりは進行しなかった。以上の結果、少なくともメジアン径が160μm以上の粉体では、縦振動を付加して流動化させても目詰まりを抑制可能であることが明らかとなった。
【0073】
実施例7
次に、振動の工夫以外に、目詰まりの要因を調査した。すなわち、目詰まりの問題が発生した装置では、試料に含まれる微細な粉体がろ布の内部に入り込んで固着し目詰まりを起こした結果、排出部を失った空気が底部下の空気室に溜まり、圧力が異常に高まったと考えられることに着目した。そこで、2枚のパンチングメタルでろ布を挟み込む方法の他、上下2枚のパンチングメタルの片方を取り除く、もしくは両方を取り除いてろ布のみとした場合において、目詰まりの様子を試験した。実験装置として、小型矩形装置を用いた。この装置は130 mm四方の矩形カラムからなり、コンプレッサーから圧縮空気を供給する。
【0074】
試験の結果、2枚のパンチングメタルでろ布を挟み込む方法と比較して、上下2枚のパンチングメタルの片方を取り除く、もしくは両方を取り除いてろ布のみの場合に目詰まりが低減されることが判明した。そこで、目詰まりがより顕著に生じる、振動を付与した条件下での分離対象物の分離においても効果を有するか、さらに詳細に、調べてみた。
【0075】
具体的に、空気分散部材のパンチングメタルの枚数がろ布の目詰まりに及ぼす影響について調べるため以下の実験を行った。実験装置として、小型矩形装置を用いた。この装置は130 mm四方の矩形カラム、左右2つの振動モーター、モーターの回転数を制御するインバーターからなり、コンプレッサーから圧縮空気を供給する。まず、矩形カラムが空の状態で送風を行い、初期状態の空気分散部材の圧力損失ΔP1を測定した。次に、試料としてメジアン径0.065 mmの硅砂を層高150 mm充填し、送風と振動を付加して2時間流動化させた後、試料を装置から除去してからの状態で再び空気分散部材の圧力損失ΔP2を測定した。そして、振動流動化前後の圧力損失比ΔP2/ΔP1を求めた。この比の値が大きいほど目詰まりが進んでいることを示す。
【0076】
空気分散部材として図8の左に示すパンチングメタルを、1)上下2枚、2)下のみ、3)上のみの3条件で実験を行った。また、垂直方向の上からろ布に粉体が接触するのを妨げるため、図8の右に示すブリッジスクリーンでも同じく上記1)~3)で実験を行った。さらに、上下板無しのろ布のみでも実験を行った。
【0077】
図9に各条件でのΔP2/ΔP1を示す。パンチングメタルとブリッジスクリーンのいずれの場合も上下2枚の場合は7を超える大きな値となったが、下のみと上のみでは3.5~4.2ほどと大幅に減少した。さらに上下板無しのろ布のみでは約3とこちらも大幅な減少となった。以上の結果、上下のどちらか片方を取り除く、もしくは両方を取り除いてろ布のみにすることで、空気分散部材の目詰まりを大幅に抑制することに成功した。
【0078】
以上の結果、ろ布と上下に挟んだパンチングメタルのサンドイッチ構造によれば、振動の有無に関わらず、ろ布と上板との隙間にサイズの小さい粒子が入り込む現象が見られ、さらに、縦振動が加わると2枚の金属板によって粒子とろ布が押し付けられる現象が生じる結果、高い圧力を受けた粒子がろ布の中に侵入し目詰まりを引き起こすことが判明した。
【0079】
これに対して、ろ布と下板のみの場合、上板がないため、2枚の板に挟まれることによる圧力を受けない。また、珪砂等の粉体は下部からの送風を受けているため下方向への荷重が軽減される。その結果、サンドイッチ構造より、目詰まりが軽減されることが分かった。
【0080】
また、ろ布と上板のみの場合、ろ布の柔軟性によって上板からの圧力を受けにくい。その結果、サンドイッチ構造より、目詰まりが軽減されることが分かった。
【0081】
さらに、上板も下板もない、ろ布のみの場合には、上記下板のみの場合と上記上板のみの場合の2つの効果を併せ持ち、その結果、サンドイッチ構造より、目詰まりが軽減されることが分かった。
【0082】
したがって、本発明により、ろ布を交換するために装置を解体する必要がなく、その後再び組み立て直す必要もなく、ろ布の目詰まりを抑制し、長期間ろ布を交換しなくてもよいことが判明した。
【0083】
以上のように、本発明の乾式分離装置及び方法によって、メンテナンスを低減し得ることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、各種の混合廃棄物の適正処理及びレアメタルを含む有価物の分離回収に適用可能である。粒状混合物を密度差に基づいて分離する技術を必要とする分野、例えば、ものづくり現場で生じる粒状廃棄物の中から有価物を取り出すために本技術が利用でき、最近、不法投棄が問題となっている建設廃棄物残渣や大地震により大量発生する災害廃棄物残渣の適正処理にも本技術の利用が期待できる。海外へ目を向けると、レアメタルや鉄鉱石、銅鉱石、石炭などの粒状鉱物の高品位化にも本技術の利用が期待できる。
【符号の説明】
【0085】
3 分離槽
4 固気流動層又は分離対象物自体によって形成される流動層
5 投入部
7 排出部
7a 密度が相対的に小さな分離対象物の排出口
7b 密度が相対的に大きな分離対象物の排出口
9 底部
20 振動手段
30 送風部(送風手段)
31 空気室
33 気流(送風)
Z 分離対象物の移動方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9