(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162932
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】レベルシフト回路、レベル判定装置及びレベル判定方法
(51)【国際特許分類】
H03K 19/0175 20060101AFI20221018BHJP
H03K 5/08 20060101ALI20221018BHJP
H03K 19/018 20060101ALN20221018BHJP
【FI】
H03K19/0175 210
H03K5/08 N
H03K19/018
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068042
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米 杲洋
【テーマコード(参考)】
5J039
5J056
【Fターム(参考)】
5J039DA18
5J039DC01
5J056AA33
5J056BB51
5J056CC21
5J056DD02
5J056FF08
5J056KK03
(57)【要約】
【課題】低コスト且つ省スペース化を実現したレベルシフト回路、レベル判定装置及びレベル判定方法を提供する。
【解決手段】入力電圧を変換して出力するレベルシフト回路11が提供される。この回路は、入力端子111と、入力端子111に一端が接続する第1抵抗R1と、第1抵抗R1の他端に一端が接続される第2抵抗R2と、第2抵抗R2の他端に一端が接続され、他端が接地される第3抵抗R3とを有している。また、第1端子が接地され、第2抵抗R2と第3抵抗R3との接続点に制御端子が接続される半導体スイッチング素子113と、第1抵抗R1と第2抵抗R2との接続点と、半導体スイッチング素子113の第2端子との間に接続される第4抵抗R4と、第1抵抗R1と第2抵抗R2との接続点に接続される出力端子112と、を有している。この回路では、入力電圧V
inに対する出力電圧V
outを示す電圧特性線が、線形領域と非線形領域を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を変換して出力するレベルシフト回路であって、
入力端子と、
前記入力端子に一端が接続する第1抵抗と、
前記第1抵抗の他端に一端が接続される第2抵抗と、
前記第2抵抗の他端に一端が接続され、他端が接地される第3抵抗と、
第1端子が接地され、前記第2抵抗と前記第3抵抗との接続点に制御端子が接続される半導体スイッチング素子と、
前記第1抵抗と前記第2抵抗との接続点と、前記半導体スイッチング素子の第2端子との間に接続される第4抵抗と、
前記第1抵抗と前記第2抵抗との接続点に接続される出力端子と、を有し、
入力電圧に対する出力電圧を示す電圧特性線が、線形領域と非線形領域を有する、
レベルシフト回路。
【請求項2】
請求項1に記載のレベルシフト回路を用いたレベル判定装置であって、
スイッチのオンまたはオフを判定するマイクロコンピュータを備え、
前記レベルシフト回路は、前記入力端子が前記スイッチに接続されるとともに、前記スイッチからの入力電圧を変換して前記マイクロコンピュータに出力し、
前記マイクロコンピュータは、前記レベルシフト回路からの出力電圧が前記マイクロコンピュータの検出電圧の範囲にある場合にオン判定をする、
レベル判定装置。
【請求項3】
請求項2に記載のレベル判定装置であって、
前記半導体スイッチング素子はトランジスタであり、
前記トランジスタは、前記レベルシフト回路の出力電圧が所定の第1閾値未満の場合にオフ状態、前記第1閾値以上且つ所定の第2閾値未満の場合に半オン状態、前記第2閾値以上の場合オン状態であり、
前記出力電圧が前記マイクロコンピュータの検出電圧の下限値となる場合において、前記トランジスタはオフ状態または半オン状態であり、
前記出力電圧が前記マイクロコンピュータの検出電圧の上限値となる場合において、前記トランジスタはオン状態である、
レベル判定装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のレベル判定装置であって、
前記スイッチは、車載用弱電バッテリを電力供給源とし、前記車載用弱電バッテリとともに電子ユニットを構成する、
レベル判定装置
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一つに記載のレベル判定装置であって、
前記スイッチは、イグニッションスイッチである、
レベル判定装置。
【請求項6】
請求項5に記載のレベル判定装置であって、
前記イグニッションスイッチがオンされると、前記レベルシフト回路に信号電圧が入力される、
レベル判定装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載のレベル判定装置であって、
前記イグニッションスイッチの信号電圧が所定の下限値を下回った場合、前記マイクロコンピュータは動作を終了し、
前記イグニッションスイッチの信号電圧が所定の上限値を上回った場合、前記マイクロコンピュータは、高電圧異常と判断する、
レベル判定装置。
【請求項8】
請求項1に記載のレベルシフト回路を用いたレベル判定方法であって、
前記入力端子はスイッチに接続され、
前記出力端子からの出力電圧が所定の範囲にある場合に前記スイッチがオンであると判定する、
レベル判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レベルシフト回路、レベル判定装置及びレベル判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の弱電システムにおいては、電圧が変動する鉛バッテリ等を信号源としたインターフェース回路が用いられている。一方、インターフェース回路からの信号を読み取るマイクロコンピュータ(マイコン)の検出電圧には閾値(上限値及び下限値)がある。通常、信号源の電圧変動範囲と、マイコンの検出電圧の範囲は一致しないため、マイコンにより信号源からの信号を読み取るには、信号源の電圧をマイコンの検出電圧の範囲に変換(レベルシフト)するインターフェースが必要となる。
【0003】
特許文献1には、集積回路(IC)を用いて入力信号をレベルシフトするインターフェース回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のインターフェース回路では、部品数が多く、サイズが大きくなり、コストが高くなるという問題がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みたものであり、低コスト且つ省スペース化を実現したレベルシフト回路、レベル判定装置及びレベル判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、入力電圧を変換して出力するレベルシフト回路が提供される。この回路は、入力端子と、入力端子に一端が接続する第1抵抗と、第1抵抗の他端に一端が接続される第2抵抗と、第2抵抗の他端に一端が接続され、他端が接地される第3抵抗とを有している。また、第1端子が接地され、第2抵抗と第3抵抗との接続点に制御端子が接続される半導体スイッチング素子と、第1抵抗と第2抵抗との接続点と、半導体スイッチング素子の第2端子との間に接続される第4抵抗と、第1抵抗と第2抵抗との接続点に接続される出力端子と、を有している。この回路では、入力電圧に対する出力電圧を示す電圧特性線が、線形領域と非線形領域を有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レベルシフト回路は、半導体スイッチング素子と、複数の抵抗のみから構成される。従って、部品数が少なく、低コスト化、省スペース化が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態によるレベル判定装置を含む弱電システムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、レベルシフト回路の電圧特性線を示す図である。
【
図3】
図3は、比較例によるレベルシフト回路の電圧特性線を示す図である。
【
図4】
図4は、変形例によるレベルシフト回路の電圧特性線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態によるレベル判定装置10を含む弱電システム100の概略構成図である。
【0012】
弱電システム100は、バッテリ1、スイッチ2、レベル判定装置10等を含む。弱電システム100は車両等に搭載され、レベル判定装置10はスイッチ2のオンまたはオフの判定等を行う。
【0013】
バッテリ1は、車載用の弱電バッテリであり、例えば電圧が12Vの鉛バッテリである。バッテリ1は、スイッチ2を介してレベル判定装置10に接続されている。
【0014】
スイッチ2は、例えば車両のイグニッションスイッチである。スイッチ2が手動または自動でオンされると、バッテリ1からレベル判定装置10に信号(弱電)電圧が入力される。即ち、スイッチ2は、車載用弱電バッテリであるバッテリ1を信号電力の供給源とし、バッテリ1とともに電子ユニットを構成する。
【0015】
なお、車両の(再)起動時等には、多くの電流が必要となるため、電圧降下により、バッテリ1の電圧が下がる場合がある一方、サージなどによりバッテリ1の電圧が上がる場合もある。即ち、バッテリ1の電圧は一定の範囲で変動する。例えば、本実施形態における12Vの鉛バッテリは、瞬間的にではあるが6Vから24Vまで変動し得る。
【0016】
レベル判定装置10は、インターフェース回路としてのレベルシフト回路11及びマイクロコンピュータ(マイコン)12を含むエレクトロニックコントロールユニット(ECU:Electronic Control Unit)である。
【0017】
レベルシフト回路11は、スイッチ2からの信号の入力電圧Vinをマイコン12の検出電圧の範囲内の電圧に変換してマイコン12に出力する。例えば、電圧5Vのマイコン12の検出電圧の範囲(閾値)が2.4Vから5Vである場合、レベルシフト回路11は、バッテリ1からスイッチ2を介して入力される入力電圧(例えば6Vから24Vまで変動)を2.4Vから5Vの範囲に変換して出力する。なお、レベルシフト回路11の動作の詳細は後述する。
【0018】
マイコン12は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RΑM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備え、レベルシフト回路11から入力される信号を読み取り、入力信号のレベルを判定する。マイコン12は、例えば、スイッチ2からレベルシフト回路11を介して入力される信号のレベルがHigh(オン)かLow(オフ)かを判定する。
【0019】
以上のとおり、弱電システム100は、電圧が変動するバッテリ1を信号源としたインターフェース回路(レベルシフト回路)11が用いられているが、インターフェース回路11からの信号を読み取るマイコン12の検出電圧には閾値(上限値及び下限値)がある。そして、信号源(バッテリ)1の電圧変動範囲と、マイコン12の検出電圧の範囲は一致しないため、レベルシフト回路11により信号源(バッテリ)1の電圧をマイコン12の検出電圧の範囲に変換(レベルシフト)している。
【0020】
ところで、信号源の電圧をマイコンの検出電圧の範囲に変換するためのインターフェース回路を部品数の多い高価な集積回路(IC)により構成すると、サイズが大きくなり、コストが高くなる。これに対し、本実施形態のレベルシフト回路11は、後述するように、半導体スイッチング素子(トランジスタ)113と、複数の抵抗R1~R4のみから構成されるため、低コスト化、省スペース化が実現される。
【0021】
以下、
図1及び
図2を参照して、レベルシフト回路11の構成及び動作を説明する。
【0022】
図1に示すように、レベルシフト回路11は、入力端子111及び出力端子112と、半導体スイッチング素子113及び第1~第4抵抗R1~R4とから構成される。
【0023】
入力端子111は、一端がスイッチ2に接続され、他端は第1抵抗R1に接続されている。第1抵抗R1は、一端が入力端子111に接続され、他端には第2抵抗R2の一端が接続され、第2抵抗R2の他端には、第3抵抗R3の一端が接続されている。第3抵抗Rの他端は接地されている。また、第1抵抗R1と第2抵抗R2との接続点は、第4抵抗R4の一端と出力端子112とに接続されている。
【0024】
半導体スイッチング素子113は、バイポーラトランジスタ(以下、トランジスタとする)であり、第1端子(エミッタ)が接地され、第2抵抗R2と第3抵抗R3との接続点に制御端子(ベース)が接続され、第2端子(コレクタ)は第4抵抗R4に接続されている。第4抵抗R4は、第1抵抗R1と第2抵抗R2との接続点とトランジスタ113の第2端子(コレクタ)との間に接続されている。
【0025】
図2は、レベルシフト回路11の入力電圧V
inに対する出力電圧V
outを示す電圧特性線(以下、電圧特性線とする)を表した図である。
図2の領域A1はトランジスタ113がオフ状態の領域、A2はトランジスタ113が半オン状態の領域、A3はトランジスタ113がオン状態の領域である。
【0026】
レベルシフト回路11の出力電圧V
outが所定の第1閾値V
outth1未満である領域A1において、トランジスタ113はオフ状態である。トランジスタ113がオフ状態の場合、レベルシフト回路11の出力電圧V
outは、第1抵抗R1と、第2抵抗R2及び第3抵抗R3との分圧値となる。第1~第3抵抗R1~R3の抵抗値は一定であるため、トランジスタ113がオフ状態の場合、
図2の領域A1に示すように、電圧特性線は線形となる。
【0027】
レベルシフト回路11の出力電圧Voutが第1閾値Voutth1以上且つ所定の第2閾値Voutth2未満である領域A2において、トランジスタ113は半オン状態である。トランジスタ113が半オン状態の場合、レベルシフト回路11の出力電圧Voutは、第1抵抗R1と、第2抵抗R2及び第3抵抗R3、第2抵抗R2及びトランジスタ113のベース-エミッタ間の電圧Vbe、第4抵抗R4及びトランジスタ113のコレクタ-エミッタ間の電圧Vceのうちのインピーダンスが小さいものとの分圧値となる。
【0028】
トランジスタ113が半オン状態の場合、トランジスタ113の物性に合わせて第1~第4抵抗R1~R4を調整することで、電圧特性線は
図2の領域A2に示すような非線形の曲線となる。例えば、トランジスタ113の物性に合わせて第1抵抗R1を約30kΩ、第2抵抗R2を約20kΩ、第3抵抗R3を約5kΩ、第4抵抗R4を約10kΩとすることで、
図2のような非線形領域を有する電圧特性線を得られる。
図2に示すように、領域A2において、電圧特性線の曲線の傾きは線形の領域よりも緩やかとなる。
【0029】
レベルシフト回路11の出力電圧V
outが第2閾値V
outth2以上である領域A3において、トランジスタ113はオン状態である。トランジスタ113がオン状態の場合、レベルシフト回路11の出力電圧V
outは、第1抵抗R1と第4抵抗R4との分圧値となる。第1及び第4抵抗R1,R4の抵抗値は一定であるため、トランジスタ113がオン状態の場合、
図2の領域A3に示すように、電圧特性線は線形となる。
【0030】
以上のように、レベルシフト回路11の入力電圧Vinに対する出力電圧Voutを示す電圧特性線は、トランジスタ113がオンまたはオフ状態で線形に、半オン状態で非線形の曲線になる。即ち、本実施形態では、電圧特性線が線形領域と非線形領域を有する。
【0031】
また、レベルシフト回路11では、スイッチ2からの入力電圧V
in(即ち、バッテリ1の電圧)が、マイコン12の検出電圧の範囲に変換されるように各抵抗R1~R4の抵抗値とトランジスタ113の動作が設定される。
図2に示すように、スイッチ2からの入力電圧V
inの最小値V
inminに対する出力電圧V
outは、マイコン12の検出電圧の下限値(以下、マイコン12の下限値とする)V
outminとなるように設定される。一方、スイッチ2からの入力電圧V
inの最大値V
inmaxに対する出力電圧V
outは、マイコン12の検出電圧の上限値(以下、マイコン12の上限値とする)V
outmaxまたは上限値V
outmax以下の値となるように設定される。スイッチ2からレベルシフト回路11にV
inminからV
inmaxまでの範囲の電圧が入力されると、入力電圧V
inは、V
outminからV
outmaxの範囲の電圧に変換されてマイコン12に出力される。V
outminからV
outmaxの範囲、即ちマイコン12の検出電圧の範囲内の電圧が入力されると、マイコン12は、入力信号のレベルをHigh(即ち、スイッチ2がオンである)と判定する。一方、V
outmin以上の電圧が入力されない場合、マイコン12は入力信号のレベルをLow(即ち、スイッチ2がオフである)と判定する。
【0032】
なお、イグニッションスイッチであるスイッチ2から入力される信号電圧がVinminを下回り、マイコン12にVoutmin以上の信号電圧が入力されなくなると、マイコン12は動作を終了し、弱電システム100は終了シーケンスに入る。一方、イグニッションスイッチであるスイッチ2から入力される信号電圧が、Vinmaxを超える所定の上限値を上回った場合、マイコン12に、Voutmaxを超える信号電圧が入力され、マイコン12は、高電圧異常と判断する。
【0033】
ここで、入力電圧Vinが最小値Vinminの場合に、電圧特性線が非線形の曲線がなだらか(電圧特性線の傾きが緩やか)な領域にあると、入力電圧Vinが最小値Vinmin付近の値を取る場合、入力電圧Vinが最小値Vinminよりも小さいまたは大きい際にも、出力電圧Voutはほぼマイコン12の下限値Voutminに近い値となる。入力電圧Vinの最小値Vinminはマイコン12が信号レベルをHighまたはLowと判定する分岐点となるため、入力電圧Vinの最小値Vinminが電圧特性線の傾きが緩やかな非線形領域にあると、信号レベルのHighとLowとの切り分けが難しくなる。従って、スイッチ2のオンまたはオフの判定が難しくなり、誤判定する虞がある。これに対し、本実施形態のレベルシフト回路11では、入力電圧Vinが最小値Vinminの場合において電圧特性線が線形の領域にくるように、トランジスタ113の動作が設定される。具体的には、トランジスタ113のオフ状態と半オン状態を切り替える第1閾値Voutth1が、マイコン12の下限値Voutminよりも大きい値になるように設定される。これにより、入力電圧Vinが最小値Vinminの場合、出力電圧Voutminは第1閾値Voutth1未満となるため、トランジスタ113は必ずオフ状態となる。従って、入力電圧Vinが最小値Vinminの場合、電圧特性線は線形の領域にある。このため、スイッチ2からの信号のHighとLowとの切り分けが明確になり、スイッチ2のオンまたはオフの判定を容易にすることができる。従って、誤判定が防止される。
【0034】
また、信号源の電圧をマイコン12の検出電圧の範囲に変換するためのインターフェース回路(レベルシフト回路)として、オペアンプ等を用いた場合、レベルシフト回路の入力電圧V
inに対する出力電圧V
outを示す電圧特性線は、
図3に示すようなリニアな特性を有する。このため、入力信号の電圧レベルを変換することは容易であるが、入力電圧V
inの変動に対する出力電圧V
outの変動幅は大きくなる。従って、入力電圧V
inの変動幅が大きいと、入力電圧V
inに対する出力電圧V
outがマイコンの検出電圧の上限値V
outmaxを超えてしまう虞がある。即ち、入力電圧V
inをマイコンの検出電圧の範囲に変換できなくなる虞がある。例えば、
図3において、入力電圧V
inが最大値V
inmaxの場合、出力電圧V
outは、マイコンの検出電圧の上限値V
outmaxを大きく超えており、マイコンが判定不能に陥るか、高圧異常と判定してしまう虞がある。これに対し、本実施形態では、電圧特性線が傾きの緩やかな非線形領域を有しているため、電圧特性線が線形領域のみを有する場合に比べ、入力電圧V
inの変動に対する出力電圧V
outの変動幅が小さい。従って、入力電圧V
inの変動が大きい場合にも、入力電圧V
inを所望の範囲の出力電圧V
outに変換することができる。本実施形態では、入力電圧V
inが最大値V
inmaxの場合でも、出力電圧V
outがマイコン12の検出電圧の上限値V
outmaxを超えないように、トランジスタ113の半オン状態とオン状態を切り替える第2閾値V
outth2が設定される。これにより、スイッチ2からの入力電圧V
inが高い場合でも、入力電圧V
inはマイコン12の検出電圧の範囲に変換され、スイッチ2のオンまたはオフの判定を行うことができる。
【0035】
上記した第1実施形態のレベルシフト回路11、レベル判定装置10及びレベル判定方法によれば、以下の効果を得ることができる。
【0036】
レベルシフト回路11は、入力端子111と、入力端子111に一端が接続する第1抵抗R1と、第1抵抗R1の他端に一端が接続される第2抵抗R2と、第2抵抗R2の他端に一端が接続され、他端が接地される第3抵抗R3とを有している。また、第1端子が接地され、第2抵抗R2と第3抵抗R3との接続点に制御端子が接続されるトランジスタ(半導体スイッチング素子)113と、第1抵抗R1と第2抵抗R2との接続点と、トランジスタ(半導体スイッチング素子)113の第2端子との間に接続される第4抵抗R4と、第1抵抗R1と第2抵抗R2との接続点に接続される出力端子112と、を有している。そして、レベルシフト回路11は、入力電圧Vinを変換して出力するとともに、入力電圧Vinに対する出力電圧Voutを示す電圧特性線が、線形領域と非線形領域を有している。このように、入力電圧Vinを変換して出力するレベルシフト回路11は、トランジスタ(半導体スイッチング素子)113と、複数の抵抗R1~R4のみから構成される。従って、部品数が少なく、低コスト化、省スペース化が実現される。
【0037】
また、レベルシフト回路11は、電圧特性線が非線形領域を有しているため、入力電圧Vinの変動に対する出力電圧Voutの変動幅が、電圧特性線が線形領域のみを有する場合に比べて小さい。これにより、変動する入力電圧Vinを所望の範囲の電圧に変換して出力することができる。
【0038】
レベルシフト回路11を用いたレベル判定方法によると、入力端子111はスイッチ2に接続され、出力端子112からの出力電圧Voutが所定の範囲にある場合にスイッチ2がオンであると判定する。そして、レベルシフト回路11は電圧特性線が線形領域と非線形領域を有している。従って、電圧特性線におけるスイッチ2のHigh(オン)またはLow(オフ)判定の分岐点が線形領域に来るように調整することで、スイッチ2からの信号のHighとLowとの切り分けが明確になり、オンまたはオフの判定を容易にすることができる。即ち、誤判定を防止することができる。
【0039】
また、レベルシフト回路11は、電圧特性線が非線形領域を有しているため、入力電圧Vinの変動幅に対する出力電圧Voutの変動幅を、電圧特性線が線形領域のみを有する場合に比べて小さくすることができる。このため、入力電圧Vinの変動が大きい場合でも、出力電圧Voutを所定の範囲に収めることができる。即ち、入力電圧Vinの変動が大きい場合でも、スイッチ2のオンまたはオフの判定をすることができる。
【0040】
レベル判定装置10は、スイッチ2のオンまたはオフを判定するマイコン(マイクロコンピュータ)12を備え、レベルシフト回路11を用いてスイッチ2の信号のレベル判定を行う。レベルシフト回路11は、スイッチ2からの入力電圧Vinを変換してマイコン(マイクロコンピュータ)12に出力し、マイコン(マイクロコンピュータ)12は、レベルシフト回路11からの出力電圧Voutがマイコン(マイクロコンピュータ)12の検出電圧の範囲にある場合、オン判定をする。レベルシフト回路11は、電圧特性線が線形領域と非線形領域を有しているため、電圧特性線における入力信号のHighまたはLow判定の分岐点が電圧特性線の線形領域に来るように調整することで、入力信号のHighとLowとの切り分けを明確にすることができる。これにより、マイコン(マイクロコンピュータ)12によるスイッチ2のオン(High)またはオフ(Low)の判定が容易になり、誤判定を防止することができる。
【0041】
また、レベル判定装置10は、電圧特性線が非線形領域を有するレベルシフト回路11を用いているため、レベルシフト回路11の入力電圧Vinの変動に対する出力電圧Voutの変動幅を小さくすることができる。従って、スイッチ2からの入力電圧Vinの変動が大きい場合にも、出力電圧Voutがマイコン(マイクロコンピュータ)12の検出電圧の上限値Voutmaxを超えないようにレベルシフト回路11を調整することができる。従って、スイッチ2からの入力電圧Vinの変動が大きい場合にも、スイッチ2のオンまたはオフの判定を行うことができる。
【0042】
レベル判定装置10は、レベルシフト回路11がトランジスタ113を含む。トランジスタ113は、レベルシフト回路11の出力電圧Voutが所定の第1閾値Voutth1未満の場合にオフ状態、第1閾値Voutth1以上且つ所定の第2閾値Voutth2未満の場合に半オン状態、第2閾値Voutth2以上の場合オン状態である。そして、出力電圧Voutがマイコン(マイクロコンピュータ)12の検出電圧の下限値Voutminとなる場合において、トランジスタ113はオフ状態である。即ち、トランジスタ113のオフ状態と半オン状態を切り替える第1閾値Voutth1が、Voutminよりも大きい値になるように設定される。一方、出力電圧Voutがマイコン(マイクロコンピュータ)12の検出電圧の上限値Voutmaxとなる場合において、トランジスタ113はオン状態である。このように、出力電圧VoutがVoutminとなる場合において、トランジスタ113がオフ状態になるように調整されるため、電圧特性線における入力信号のHighまたはLow判定の分岐点は線形領域となる。従って、スイッチ2からの信号のHighとLowとの切り分けが明確になり、マイコン(マイクロコンピュータ)12によるスイッチ2のオンまたはオフの判定が容易になる。よって、誤判定を防止することができる。
【0043】
また、出力電圧Voutが第1閾値Voutth1以上且つ所定の第2閾値Voutth2未満の場合にトランジスタ113は半オン状態であるため、この領域において電圧特性線は傾きの緩やかな非線形の曲線となる。即ち、この領域においては、入力電圧Vinの変動に対する出力電圧Voutの変動幅が小さい。従って、トランジスタ113の半オン状態とオン状態を切り替える所定の第2閾値Voutth2を適切に設定し、半オフ状態の領域を調整することで、入力電圧Vinが最大値Vinmaxの場合でも、出力電圧Voutがマイコン12の検出電圧の上限値Voutmaxを超えないようにすることができる。よって、スイッチ2からの入力電圧Vinの変動が大きい場合にも、出力電圧Voutをマイコン12の検出電圧の範囲に変換することができ、スイッチ2のオンまたはオフの判定を確実に行うことができる。
【0044】
なお、本実施形態においては、スイッチ2をイグニッションスイッチとしたが、スイッチ2はこれに限られない。但し、例えば、エアコンのスイッチのような、オンとオフを頻繁には切り替えることのないスイッチであることが好ましい。
【0045】
また、本実施形態においては、レベル判定装置10を含む弱電システム100を車載用としたが、必ずしもこれに限られず、レベル判定装置10は車両に搭載されていなくてもよい。
【0046】
また、本実施形態においては、バッテリ1は12Vの鉛バッテリとしたが、バッテリ1の種類はこれに限られない。
【0047】
また、本実施形態においては、第1抵抗R1は約30kΩ、第2抵抗R2は約20kΩ、第3抵抗R3は約5kΩ、第4抵抗R4は約10kΩとしたが、各抵抗R1~R4の抵抗値はこれに限られない。各抵抗R1~R4の抵抗値は、レベルシフト回路11の電圧特性線が線形領域と非線形領域を有し、出力電圧Voutがマイコン12の検出電圧の範囲に納まるように設定され、この条件を満たす範囲で如何なる値にしてもよい。
【0048】
(第1実施形態の変形例)
図4を参照して、第1実施形態の変形例によるレベル判定装置10を説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0049】
図4は、第1実施形態の変形例によるレベルシフト回路11の電圧特性線を示す図である。本変形例では、電圧特性線における入力信号のHighまたはLow判定の分岐点がトランジスタ113の半オン状態の領域A2にある点が第1実施形態と異なる。
【0050】
図1及び
図4に示すように、レベルシフト回路11の入力電圧V
inに対する出力電圧V
outを示す電圧特性線はトランジスタ113がオフまたはオン状態の領域A1,A3において線形的な特性を有し、トランジスタ113が半オン状態の領域A2において非線形的な特性を有している。但し、トランジスタ113が半オン状態の領域A2においても、トランジスタ113がオフ状態の領域A1に近い部分では、電圧特性線がほぼ線形的な特性を有している。即ち、出力電圧V
outがトランジスタ113のオフ状態と半オン状態を切り替える第1閾値V
outth1よりも大きくなっても、電圧特性線はある程度まではほぼ線形的な特性を有している。
【0051】
本変形例では、電圧特性線における入力信号のHighまたはLow判定の分岐点がトランジスタ113の半オン状態の領域A2内のほぼ線形的な領域に来るようにレベルシフト回路11を調整している。このように、入力信号のHighまたはLow判定の分岐点がトランジスタ113の半オン状態の領域A2内にあっても、電圧特性線がほぼ線形的である部分にあれば、スイッチ2からの信号のHighとLowとの切り分けは明確である。従って、マイコン12はオンまたはオフの判定を容易にすることができ、誤判定が防止される。
【0052】
なお、いずれの実施形態においても、レベルシフト回路11は半導体スイッチング素子113としてバイポーラトランジスタを用いているが、必ずしもこれに限られない。即ち、電圧特性線が線形領域と非線形領域を有するように設定できれば、これ以外の半導体スイッチング素子を用いてレベルシフト回路11を組んでもよい。例えば、半導体スイッチング素子113は、MOSFETやIGBTなどであってもよい。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0054】
上記した各実施形態は、それぞれ単独の実施形態として説明したが、適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1、バッテリ,2、スイッチ,10、レベル判定装置,11、レベルシフト回路,12、マイクロコンピュータ(マイコン),111、入力端子,112、出力端子,113、トランジスタ(半導体スイッチング素子),100、弱電システム