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特開2022-162941純金装飾品及び純金装飾品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162941
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】純金装飾品及び純金装飾品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 21/00 20060101AFI20221018BHJP
   B22C 9/08 20060101ALI20221018BHJP
   B22D 25/02 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
B22D21/00 Z
B22C9/08 102A
B22D25/02
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021090627
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】520030626
【氏名又は名称】株式会社RAIN
(72)【発明者】
【氏名】石川 正道
(57)【要約】
【課題】高い資産性と高いファッション性を備え持つ純金装飾品と、純金装飾品の製造方法を得る。
【解決手段】高精度に純金の純度及び質量を管理し、かつ四角錐台形状のインゴットを極小サイズで再現した純金装飾品を、ロストワックス製法を用いて製造する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
純度99.9%の純金で、長方形の上底と長方形の下底とを持ち、上底の長辺及び短辺が、下底の長辺及び短辺がそれぞれ長く、長辺側からも短辺側からもその側面は台形形状となる四角錐台形状を形成したことを特徴とする純金装飾品。
【請求項2】
前記四角錐台形状は、質量と長辺の長さの関係を表した両対数グラフにおいて、四角錐台形状の一般の純金インゴットと同等の関係を示すことを特徴とする、請求項1に記載の純金装飾品。
【請求項3】
前記四角錐台形状は、質量を0.3gとしたときの高さを0.7mm以上とし、質量と高さの関係を表した両対数グラフにおいて、四角錐台形状の一般の純金インゴットと同等の傾きを示すことを特徴とする、請求項1、2のいずれか一項に記載の純金装飾品。
【請求項4】
ワックスで生成した四角錐台の原型をもとに液体ゴムでゴム型を作成し、前記ゴム型に溶融したワックスを充填して硬化させたワックス原型と、前記ワックス原型の短辺に当たる面に湯道を接続し、前記ワックス原型と湯道を接続したものをツリー上に構成したワックスツリーで石膏型を作成し、前記石膏鋳型に純金を鋳込んで凝固させて鋳造ツリーを生成し、前記鋳造ツリーから湯道を取り除いたものを研磨して表面仕上げを行なう、純金装飾品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い資産性と高いファッション性を備え持つ純金装飾品と、純金装飾品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
純金は実物資産として長い歴史があり、特にカラット表示(24分率)でK24と表される高純度の純金は、為替変動のリスクはあるものの、純金自体の美しさ・希少性・保存性・加工性などから世界共通で高い価値を持つ。
【0003】
純金というと台形の断面を持つ四角錐台もしくはオベリスクと呼ばれる形状のインゴットのイメージが根強く、その形状自体に憧れの要素を持つ。
【0004】
一方で、対象物を実際より小型に再現したミニチュアの概念において、小さくすることに気軽さ・親近感を持たせるほか、その対象物の世界観をも引き込んでより魅力を高めることができる。
【0005】
純金をはじめとする貴金属を用いた装飾品の製造方法として、鋳型、プレス。モールド、キャストといった鋳造方法がある。
【0006】
純金のインゴットとしては1g~12.5kgの質量ラインナップがあり、大きい物は鋳型、小さい物はプレスにて製造されるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9-206881
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
純金は純度が増すと硬度が低くなり、取り扱いが難しくなる。
【0009】
プレスは金型が高価で、大きな設備投資がかかる。
【0010】
モールドは、例えばグラファイト材などで成型した金型を使うが、純金が少量である場合、型に流し込む際に融解させても高温を保てないことから、少量の純金装飾品を製造するのに適さない。
【0011】
キャストはワックスで原型を作成し、原型を用いて石膏型を作成して鋳造するが、純金の質量を高精度に担保するには原型の作成が困難である。
【0012】
また原型に純金を流し込むための湯道を設ける必要があり、湯道分は仕上げのロスとなるため、回収が必須となる。
【0013】
しかしながら、地金である純金を100%回収することは困難であり、0.3~0.5%の目減りしてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る純金装飾品は、高精度に純金の純度及び質量を管理し、かつ四角錐台形状のインゴットを極小サイズで再現した純金装飾品である。
【0015】
本発明に係る純金装飾品の製造方法は、高精度に純金の純度及び質量を管理し、かつ四角錐台形状のインゴットを極小サイズで再現した純金装飾品を、ロストワックス製法を用いて製造する方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明における純金装飾品は、高精度の質量管理により高い資産性を有し、かつ、四角錐台形状のインゴットを極小サイズにて再現することで、一般的な純金のインゴットの憧れの要素を引き込んで、そのファッション性を高めることができる。
【0017】
本発明に係る純金装飾品の製造方法は、高精度に質量管理した純金装飾品を製造可能とし、かつ、湯道分のロス(目減り)を最小限に抑え、さらに、純金装飾品としての仕上げ工程を削減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態における、純金装飾品の形状寸法の三面図である。
図2】本発明の実施の形態における、純金装飾品及び一般的な純金インゴットの質量に対する長辺、短辺、高さをグラフ化したものである。
図3】本発明の実施の形態における、純金装飾品の製造方法の工程フロー図である。
図4】本発明の実施の形態における、ワックス原型と湯道との接続関係を示す概形図である。
図5】本発明の実施の形態における、原型ゴム型の上型と下型それぞれの概形図である。
図6】本発明の実施の形態における、原型ゴム型の上型と下型を合わせた状態を示す図である。
図7】本発明の実施の形態における、ワックスツリーの形状を示す概形図である。
図8】本発明の実施の形態における、埋没材へワックスツリーを埋め込んだ状態を示す石膏型の断面図である。
図9】本発明の実施の形態における、鋳造後に取り出した鋳造ツリーの形状を示す概形図である。
【発明を実施するための形態】
【実施の形態1】
【0019】
図1は、純金装飾品の形状寸法の三面図である。
【0020】
形状寸法に関して説明する。本発明の実施の形態における純金装飾品は、図1に示すように、長方形の上底と長方形の下底とを持つ立体形状である。上底に対し、下底はひとまわり大きく、長辺側からも短辺側からもその側面は台形形状となる。四角錐台もしくはオベリスク形状と呼ばれる形状である。
【0021】
一般に流通する純金インゴットは四角錐台形状のものと、プレート形状のものとに大別され、質量ラインナップのうち、1gというような小さいランクではプレート形状が一般的であるが、純金というと四角錐台形状のイメージが根強く、その形状自体に憧れの要素を持つ。
【0022】
本発明の実施の形態においては、K24と呼称される純度99.9%(百分率)の純金で最小0.3gまでの極小の四角錐台形状の純金装飾品を実現する。
【0023】
図2は、一般に流通する四角錐台形状の純金インゴットと、本発明の実施の形態における純金装飾品の質量に対する長辺、短辺、高さをグラフ化したものである。長辺、短辺、高さがいずれも両対数の軸に対して直線上にプロットされており、べき関数の関係にあることがわかる。
【0024】
しかしながら、このべき関数の関係を保ちながら、最小0.3gまでの極小の四角錐台形状を実現するには、高さがおよそ0.4mmと非常に薄い形状となり、製造上のハードルが高い。そこで本発明の実施の形態においては、最小0.3gでの高さを0.7mm以上となるようにシフトし、かつ質量-高さの関係性を一般的なインゴットの寸法と同等の傾きとなるようにした。
【0025】
一方で長辺の寸法は、一般的なインゴットの寸法のべき関数上にプロットされる寸法とする。高さを一般的なインゴットの寸法より大きくした分、短辺の寸法を小さくする。
【0026】
すなわち、本発明の実施の形態における純金装飾品は、一般に流通する純金インゴットにおける質量と寸法の関係性のうち、長辺はその関係性を保ち、短辺をその関係性で導かれる値より小さくすることで、高さをその関係性で導かれる値より大きくしたことを特徴とする。これにより、最小0.3gまでのサイズを実現する。長辺の長さを、一般に流通する純金インゴットにおける質量と寸法の関係性を保つ値とすることで、一般に流通する純金インゴットの持つ世界観を引き込むことが可能となる。
【0027】
本発明の実施の形態における純金装飾品の製造方法について述べる。図3は、純金装飾品の製造方法の工程フロー図である。
【0028】
工程フローにおける原型ゴム型の作成について説明する。前述した純金装飾品の形状寸法に沿って3Dモデルを作成する。3Dモデルをもとに3Dプリンタにて原型を作成する。このときに使用する材料は蝋を配合して組成されたワックス系の材料が好ましい。
【0029】
図4は3Dプリンタにて出力された原型部分1と湯道部分2との接続関係を示す概形図である。図5は原型ゴム型の上型3と下型4を示す概形図である。原型1と湯道部分2とは、原型1の面積最小の面に接続するのが好ましい。最小の面は印字面でなく、後工程において湯道を取り除く際のロスが最小となるためである。湯道部分2は、後工程において、地金を流し込む際の通り道となる箇所である。純金装飾品の製造においてはロスとなる箇所であるので、ロスを最小とするためのサイズ・形状とする必要がある。本発明の実施の形態においては、径1.5mm、長さ20mmの円柱形状を好ましいサイズ・形状とする。
【0030】
原型ゴム型の材料としては焼きゴムや液体ゴムがあるが、このとき使用するのは液体ゴムが好ましい。焼きゴムは、例えば5%というようなオーダーで収縮してしまうため、それを考慮した原型サイズとする必要があり、純金装飾品の質量を高精度に管理することが難しい。液体ゴムは収縮率を考慮する必要がないため、純金装飾品の質量を高精度に管理することが可能となる。
【0031】
工程フローにおけるゴム型でのワックス原型作成について説明する。原型ゴム型の上型3と下型4との合わせ面には、ダボなどを設けて合わせたときのずれを防止する。図6は原型ゴム型の上型3と下型4とを合わせた状態を示す概形図である。この原型ゴム型5に、射出装置より溶融したワックスを充填させる。このワックスをインジェクションワックスと呼ぶ。射出装置に使用するインジェクションワックスはフレーク状で射出温度が例えば65℃の特性のものが好ましい。ワックスが硬化したらゴム型を開けてワックスを取り出す。原型ゴム型5の上型3と下型4との間の隙間は完全になくすことはできないため、ワックスにバリや段差できる。これらのバリや段差はやすりやヘラで取り除く。また気泡がないかを確認する。
【0032】
工程フローにおけるワックスツリーの作成について説明する。図7はワックスツリーの概形図である。ワックスツリーは、前工程で作成した原型部分と湯道部分を接続したものを複数用意し、ツリー状に接続したものである。ゴム円錐台6の頂点部にワックスを柱状にしたポール7を設置し、このポール7に各パーツの湯道部分を接続してワックスツリー8を形成する。この際、原型部分同士の間隔や、後工程で使用する鋳型のサイズを決める容器のサイズを考慮して、数量や配置関係を決める必要がある。
【0033】
工程フローにおける石膏鋳型の作成について説明する。図8は石膏鋳型の断面を示した図である。前工程で作成したワックスツリー8を覆うように、筒状の容器9をかぶせてゴム円錐台に固定する。容器サイズに応じた量の石膏系埋没剤と水を別容器にて攪拌し、埋没材スラリーとして用意し、埋没材スラリー10を真空脱泡する。ワックスツリー8の入った容器に埋没材スラリー10を流し込み、さらに真空脱泡を行なう。このとき振動を与えることができればなおよい。真空脱泡や振動は、鋳型内部に気泡を作らせないために重要である。時間を置き硬化させたらゴム円錐台6を外したのち、焼成炉に入れる。焼成炉ではまず低温で加温してワックスツリー8を溶かし型の外部や流出させる。その後さらに250℃から500℃まで加温して鋳型を焼成させる。その後さらに加温して鋳型を焼結させる。焼結が始まるのは730℃程度からであるが、750℃を一定時間(例えば、1時間)維持する。鋳型の強度を確保するためには焼成だけでは不十分であり、焼結の工程が重要である。
【0034】
工程フローにおける鋳造について説明する。前工程で作成した鋳型を焼成炉から取り出し、鋳造機に設置する。次に必要量を計量した地金(ここでは純金)を坩堝に入れ、鋳造機の加熱を開始する。坩堝内で地金が溶けたら、鋳型へ鋳込む。このとき地金は坩堝内で固体と液体との双方を含む状態(溶落)を経て、液体のみの状態(溶湯)となる。液体のみの状態となったことは、固体と液体との双方を含む状態になってからの経過時間や温度を測定することで判断する。鋳込んだ地金が鋳型内の空洞部分(原型部分と湯道部分)を満たしたら加圧を行なう。その後、加熱を停止して地金を凝固させ、鋳造機から鋳型を取り出し放冷する。
【0035】
工程フローにおける鋳造ツリーの取り出しについて説明する。図9は鋳造ツリーの形状を示す概形図である。鋳造ツリー11は鋳型内でツリー状に凝固した地金の全体を呼ぶ。前工程で取り出した鋳型が冷めてきたら、鋳型を横にして三分の一ほどを水につけることで鋳型内に水を入れて急冷することで鋳型の石膏部分を破壊する。石膏部分が除かれた容器内から鋳造ツリーを取り出す。鋳造ツリーから石膏部分を手作業で除去する。このとき鋳造ツリーに欠損がないことを確認する必要がある。その後、鋳造ツリーを超音波洗浄し、表面の酸化膜を希硫酸で除去し、水洗浄して乾燥させる。
【0036】
工程フローにおける仕上げについて説明する。鋳造ツリーから純金装飾品部分を切り離す。切り離す作業はニッパーや糸鋸で行なうことが可能であるが、ニッパーで行なうことが好ましい。糸鋸で切り離すと粉状の地金が発生するが、粉状の地金は再利用が難しいためである。高価な地金(純金)のロスを最小とするため、糸鋸の使用を避ける。装飾品側には湯道との接続部分がわずかに残るため、ニッパーもしくはやすりで除去する。装飾品はバレル研磨にて表面仕上げを行なう。バレル研磨とは、ドラム状の容器に対象の装飾品と、研磨石、コンパウンド、水を入れて回転もしくは振動させる研磨方法で、装飾品と研磨石とが擦れ合うことで装飾品全体を研磨することができる。本実施の形態における純金装飾品は、バレル研磨の工程時間を四分の三程度(通常60分を45分)に削減できる。また一般のアクセサリーなどでバレル研磨後に行なわれるバフ研磨の工程も不要となる。本発明の実施の形態における純金装飾品の製造方法では、できあがる鋳造ツリーの男系における表面粗さに優れ、前記工程を削減が可能となり、光沢を与えすぎず、純金の本来持つ山吹色の自然な輝きを表現でき、肌なじみがよい状態を実現できる。またバレル研磨の時間短縮やバフ研磨工程の削減により、地金は0.1%といったオーダーで減ることになるため、地金の減りも防ぎ、高精度な質量管理を実現できる。
【0037】
仕上げを経た純金装飾品は造幣局にて貴金属の純度を調べる品位試験を受ける。品位試験に合格したのち、証明記号(ホールマーク)を上底に打刻する。造幣局の品位試験では1000分率で純度が証明され、K24は999という品位区分となる。
【符号の説明】
【0038】
1 原型部分、2 湯道部分、3 上型、4 下型、5 ワックス原型、6 ゴム円錐台、7 ポール、8 ワックスツリー、9 筒状容器、10 埋没材スラリー、11 鋳造ツリー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-04-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
純度99.9%の純金で、長方形の上底と長方形の下底とを持ち、上底の長辺及び短辺よりも、下底の長辺及び短辺がそれぞれ長く、長辺側からも短辺側からもその側面は台形形状となる、高さが0.7mm以上の四角錐台形状であって、質量が1g未満に形成されていることを特徴とする純金装飾品。
【請求項2】
ワックスで生成した四角錐台の原型をもとに液体ゴムでゴム型を作成し、前記ゴム型に溶融したワックスを充填して硬化させたワックス原型と、前記ワックス原型の短辺に当たる面に湯道を接続し、前記ワックス原型と湯道を接続したものをツリー上に構成したワックスツリーで石膏型を作成し、前記石膏型に純金を鋳込んで凝固させて鋳造ツリーを生成し、前記鋳造ツリーから湯道を取り除いたものを研磨して表面仕上げを行なう、純金装飾品の製造方法。
【請求項3】
四角錐台の原型の高さ方向の寸法を0.7mm以上としたことを特徴とする請求項2に記載の純金装飾品の製造方法。