(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162943
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】合成石英ガラス製エッチャーパーツ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20221018BHJP
C23F 1/08 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
C23F1/08 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021090629
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】309011192
【氏名又は名称】合資会社 ナベショー
(72)【発明者】
【氏名】渡部 弘行
【テーマコード(参考)】
4K057
5F004
【Fターム(参考)】
4K057DM40
4K057DN01
5F004AA13
5F004BB23
5F004BB29
(57)【要約】
【課題】 従来のドライエッチング用石英ガラスは、パーティクルの発生が多く、寿命が短いという欠点があった。また四塩化ケイ素から製造した合成石英ガラスは、高価であった。
【解決手段】 珪酸アルカリより調製された合成シリカ粉を使用し、高周波プラズマによって合成石英ガラスとしたことで、ドライエッチング時のパーティクルの発生を少なくでき、耐プラズマ性を向上させ、安価に提供することが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪酸アルカリから調製された合成シリカ粉を使用し、高周波プラズマ炎によって合成石英ガラスとしたことを特徴とする半導体ドライエッチャー用部材。
【請求項2】
半導体用ドライエッチャー部材の合成石英ガラスのシラノール基含有量が20ppm以下であることを特徴とする請求項第一項記載の半導体ドライエッチャー用部材。
【請求項3】
高周波プラズマによって合成石英ガラスにした後に、摂氏1200度以上の温度で1時間以上保持してなる請求項第一項記載の半導体ドライエッチャー用部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成シリカ粉を高周波プラズマ溶融した半導体ドライエッチング用石英部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体回路作成時にはドライエッチング装置が使われている。この装置を簡単に説明すれば、真空チャンバー内にフッ素系のガスを入れ、アルゴンプラズマで混合プラズマを発生させて、基板にチャネルホールを形成させるものである。そしてこの装置には、フォーカスリングや天板と呼ばれる石英ガラスリングや板が使われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-343585
【特許文献2】特許第5304720
【特許文献3】特開2009-120436
【特許文献4】特開2019-182691
【特許文献5】特開2003-131358
【0004】
特開平11-343585[特許文献1]には、プラズマエッチング速度が40nm/分以下、均質性Δnが0.001以下の合成石英ガラスをドライエッチング部材として使用することが開示されている。特許第5304720[特許文献2]には、その合成石英ガラスの製造方法についての記述がある。特開2009-120436[特許文献3]には、難エッチング物質であるアルミニウムとジルコニウムが少ない天然石英ガラスがドライエッチング部材として良いとの記述がある。特開2019-182691[特許文献4]は、合成シリカ粉を高周波プラズマ炎で溶融して、光学特性に優れた合成石英ガラスを作る方法が記述されている。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ドライエッチング装置に使用されている石英ガラスリングはフッ素系ガスプラズマにより、常に侵食を受ける。これにより、チャンバー内のパーティクル数が増え、定期的に真空を開放して掃除を行う必要がある。これをチャンバークリーニングと呼ぶが、チャンバー内に付着した反応生成物を掃除して、真空引きを行い、ダミーウェハーを処理して安定するまで半日程度は必要であり、これが生産性を落としていた。最近は、連続で酸素アッシングを行うことができるドライエッチング装置が出て、開放して掃除をする必要が無くなったが、石英ガラスリングが消耗すると、シリコンウェハーの端の方でエッチングが均一に行われなくなる(チルティング)ため、長くても1000時間程度でのフォーカスリングの交換が必要である。これをフォーカスリングの寿命と呼ぶ。
【0006】
この交換による、生産のロスは非常に大きい。それは三次元NANDAなどでは途方もない数のドライエッチング装置が必要だからである。この石英ガラス部材の交換には半日以上のダウンタイムが必要であり、その後に大量のダミーウェハーを流して安定させる必要がある。本考案では、石英ガラスのフォーカスリングの長寿命化を図ることによって、交換回数を減らし、生産性を上げることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、珪酸アルカリより調製された合成シリカ粉を使用し、高周波プラズマ炎によって合成石英ガラスとしたことを特徴とする半導体ドライエッチャー用部材であり、このドライエッチング部材は、パーティクルの発生が少なく、寿命が長いものである。
【0008】
現在、合成シリカ粉として実用化されているのは、三菱化学のメトキシシランの加水分解法と独ヘラウス社のフュームドシリカ法、および寧波プーシン半導体材料有限公司の珪酸アルカリ法である。この三種類の市販品を高周波プラズマ炎で溶融したところ、前者二社より寧波プーシン半導体材料有限公司のほうが、気泡が少なかった。気泡があるとエッチングされたときに気泡が露出し、パーティクルの発生が多くなり、かつ寿命も短くなる。
【0009】
この差は、合成シリカ粉の製造工程にあると推定される。三菱化学の合成シリカ粉は、特許3689926にあるとおり、テトラメトキシシランを原料にしており、合成シリカ粒子中に炭素が残りやすい。また独ヘラウス社製の合成シリカ粉は、特表2013-540688によると、ヒュームドシリカから造粒―焼結法により製造されている。この製法では粒子の密度が上がらないため、溶融時に気泡が発生してしまう。寧波プーシン半導体材料有限公司は、特願2020-180012により、珪酸アルカリのイオン交換法で製造され、かつフッ酸処理を行っているため、密度が高く、溶融しやすくなっており、プラズマ炎では完全無気泡の合成石英ガラスができる。
【0010】
また三社の市販価格を比較しても前二社より寧波プーシン半導体材料有限公司のものは半分程度の価格であり、消耗品であるドライエッチャー部材としてはメリットが大きい。
【0011】
特開2003-131358[特許文献5]や特開2019-182691[特許文献4]のように合成シリカ粉の高周波プラズマ溶融は既知の技術である。しかしながら酸水素溶融、真空溶融や電気溶融で制作したドライエッチャー部材と比較すると、パーティクルの発生も寿命も長かった。これは高周波プラズマ溶融の温度が、酸水素溶融、真空溶融や電気溶融に比較して高温であるためであるため、ドライエッチングのフッ素プラズマによる表面粗さが小さくなる。またプラズマ溶融合成石英ガラスは特開平11-343585[特許文献1]記載の酸水素溶融合成石英よりシラノール基含有量が少なく、ドライエッチングのフッ素プラズマによるエッチング速度が低かったものと推定される。
【0012】
本発明者は、合成石英ガラスをスート法で作り、焼結温度を変えてガラス化して、エッチャー部材として評価したところ、高温で焼結した方がパーティクルの発生が少なく、寿命も長かった。おそらくガラス構造の影響であろうが、高温で溶融することで、ドライエッチング部材の表面粗さが小さくなったものと思える。
【発明の効果】
【0013】
本発明者は、合成シリカの検討および溶融法の検討により、最良のパーティクル低減及び寿命の長時間化を達成する条件を発見した。
【0014】
当発明は、珪酸アルカリより調製された合成シリカ粉を使用し、高周波プラズマ炎によって合成石英ガラスとし、半導体用ドライエッチャー部材として使用すると、パーティクルの発生が少なく、寿命も長くなるというものである。これにより部材交換期間が長くなり、半導体素子の生産性が格段に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、珪酸アルカリより調製された合成シリカ粉を使用し、高周波プラズマによって合成石英ガラスとし、導体ドライエッチャー用部材として使用することにより、長寿命化が図れるというものである。また本発明の半導体用ドライエッチャー部材の合成石英ガラスのシラノール基含有量が20ppm以下であり、高周波プラズマ炎によって合成石英ガラスにした後に、摂氏1200度以上の温度で1時間以上保持する製造方法である。
【0016】
合成シリカ粉は珪酸アルカリのイオン交換法によって製造されたものを用いる。この時、珪酸アルカリの原料シリカとして、例えばフュームドシリカやホワイトカーボン、天然石英粉や天然石英ガラス粉、合成石英粉砕粉などを用いる。アルカリは炭酸アルカリや水酸化アルカリを用いることができる。また珪酸アルカリの製法は乾式、湿式のいずれも使用できる。
【0017】
この合成シリカ粉の粒度は50-100メッシュや100―180メッシュ、180メッシュ下など、どんな粒度分布のものを使用してもよい。しかしながら合成シリカ粉のカサ比重が1.25以上のものを使用した方が、気泡が少なくなる。
【0018】
合成シリカ粉はアルゴンプラズマ炎中に落下させ、回転するターゲットに積層され、積層された量に応じて下に引き下げられる。このプラズマ炉は酸水素溶融炉に似て、炉の内部は耐熱断熱材で構成される。合成シリカ粉の落下量は、プラズマに印加する電力によるが、2から6kg/時で調整すればよい。
【0019】
溶融後の合成石英インゴットは、砲弾状であるがシリカ―酸素の結合が歪んでいる。これはプラズマ炎が非常に高温であり、その高温で安定である結合を取れるからである。この砲弾状インゴットを角や円柱状に摂氏1600-1900度成形すれば、摂氏1600-1900度に応じた結合の構造となる。しかし、完全に安定な構造となるためには、摂氏1200度以上での1時間以上のアニールが必要である。この温度は好ましくは摂氏1200から1300度で1時間以上必要である。
【0020】
本発明品のドライエッチングでの評価は、本発明者が評価できないため、SKハイニックス社で実装評価を行った。石英ガラス中の不純物量はレーザーアブレーションICP―mass、OH含有量は赤外吸収スペクトル計、気泡等級はDIN58927に準じた。
【実施例0021】
実施例について説明する。なお本発明はこの実施例に限ったものではない。
寧波プーシン半導体有限公司製合成シリカ粉60-100メッシュを使用して、プラズマ溶融した。プラズマの条件は、4.5MHzでアルゴンガス701/分、投入電力100kwである。合成シリカ粉の供給量は4kg/時とした。
120時間で、約500mm直径の長さ1mのインゴットを得た。重量は417kgであった。このインゴットを径470mm、長さ800mmに加工して、摂氏1780度の温度で5時間保持して、600角の370mm高さのインゴットを得た。これを外径370mm、内径290mm、厚さ18mmのリングに加工した。