(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162948
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】マスク用光触媒装置
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20221018BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20221018BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
A41D13/11 M
A41D13/11 Z
A62B18/02 C
B01J35/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130671
(22)【出願日】2021-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2021067664
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592180085
【氏名又は名称】クレオ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(72)【発明者】
【氏名】土屋 康博
(72)【発明者】
【氏名】森田 修
【テーマコード(参考)】
2E185
4G169
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185CB13
2E185CC32
4G169AA02
4G169BA48A
4G169CA01
4G169CA10
4G169CA11
4G169DA06
4G169EB11
4G169HA20
4G169HE07
4G169HF02
4G169HF05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マスクの内部に配置されてマスク内に入る空気及びマスクから出る空気を殺菌するために実用可能なマスク用光触媒装置を提供する。
【解決手段】マスク用光触媒装置は、マスク本体31の内側に配置されるインナースペーサ11と、インナースペーサ11に保持された光触媒フィルタ13と、光触媒フィルタ13に光を当てるLED光源15と、LED光源15をマスク本体31とは反対側の位置から光触媒フィルタ13に対して光を照射するために、光触媒フィルタ13とLED光源15との間に間隔をあけてLED光源15を保持するようにインナースペーサ11に設けられた光源保持部14とを備えている。光源保持部14は、LED光源15から放射された光が使用者に直接当たるのを防ぎ且つ光触媒フィルタ13との対向面は光触媒フィルタ13に向かって光を反射するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク本体の内側に配置されてマスク本体と使用者の口及び鼻との間に空間を形成するインナースペーサと、
前記インナースペーサに保持された1以上の光触媒フィルタと、
前記1以上の光触媒フィルタに光を当てる1以上のLED光源と、
前記1以上の光触媒フィルタに対して光を照射するために、前記光触媒フィルタと前記LED光源との間に間隔をあけて前記1以上のLED光源を保持する1以上の光源保持部と、
前記LED光源から放射された光が前記使用者に直接当たるのを防ぐ光遮蔽構造とを備え、
前記インナースペーサ、前記光触媒フィルタ、前記光源保持部及び前記光遮蔽構造は、前記使用者が吸い込む空気及び吐き出す空気が前記光触媒フィルタを通るように定められていることを特徴とするマスク用光触媒装置。
【請求項2】
前記光触媒フィルタは3次元網目状構造体または多孔質構造体に活性酸素を発生しない光触媒層が付着し且つ通気性を有する構造を備えている請求項1に記載のマスク用光触媒装置。
【請求項3】
前記光源保持部は、中央に前記LED光源が設置される中央部と、該中央部の外周部から前記光触媒フィルタに向かって広がるスカート部と、該スカート部と連続して形成されて該スカート部を前記インナースペーサに連結する連結部とから構成され、
前記連結部には空気を流通させるが光の漏れを抑制する複数のスリットが形成されており、
前記光源保持部が前記光遮蔽構造を構成していることを特徴とする請求項1に記載のマスク用光触媒装置。
【請求項4】
前記複数のスリットは光の漏れを抑制するが通気性を有する材料によって塞がれていることを特徴とする請求項3に記載のマスク用光触媒装置。
【請求項5】
前記インナースペーサは、前記マスク本体と対向する外面と前記使用者の顔面と対向する内面を有し、且つ前記内面と前記使用者の口、鼻及び両頬との間に前記空間を形成するように膨出する形状を有しており、
前記インナースペーサの前記両頬と対向する部分には、一対の前記光触媒フィルタが、表面を前記外面から露出させ且つ裏面を前記内面側に露出させるようにして通気可能に保持されており、
前記インナースペーサの内部には、前記一対の光触媒フィルタに対応して一対の前記光源保持部が設けられており、
前記インナースペーサの内部の前記一対の光源保持部の設置領域の中央部の下には、前記一対の光源保持部に保持された前記1以上のLED光源に対して共用される充電式直流電源が設けられている請求項1,2または3に記載のマスク用光触媒装置。
【請求項6】
前記インナースペーサは、前記マスク本体と対向する外面と前記使用者の顔面と対向する内面を有し、且つ前記内面と前記使用者の口、鼻及び両頬との間に前記空間を形成するように膨出する形状を有しており、
前記インナースペーサの前記使用者の前記鼻及び前記口と対向する部分には、前記光触媒フィルタを前記外面との間にスペースをあけて保持し且つ前記LED光源から放射された光が前記使用者に直接当たるのを防ぐ光遮蔽構造を含んだ光触媒保持部が設けられており、
前記光源保持部は、前記スペース内に前記LED光源を配置するように構成され、
前記インナースペーサには、前記光触媒保持部に隣接して前記LED光源に対して電力を供給する充電式直流電源が設けられている請求項1に記載のマスク用光触媒装置。
【請求項7】
前記インナースペーサには、前記光触媒保持部、前記光源保持部及び前記充電式直流電源をカバーするカバー部材が、取り外し可能に含まれている請求項6に記載のマスク用光触媒装置。
【請求項8】
前記カバー部材には、複数の通気用貫通孔が形成されている請求項7に記載のマスク用光触媒装置。
【請求項9】
前記インナースペーサは、前記内面の外周縁部が使用者の顔面に密着し得る柔軟性を有している請求項5または6に記載のマスク用光触媒装置。
【請求項10】
前記LED光源は、150°の広角範囲に光を照射できるものである請求項1乃至7のいずれか1項に記載のマスク用光触媒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクの内部に配置されてマスク内に入る空気及びマスクから出る空気を殺菌するマスク用光触媒装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2010-17496号公報(特許文献1)は、フィルタ機能を有する布例えば通常のマスクの表面および又は裏面に酸化チタンを塗布したフィルタ部材を設け、さらにこのフィルタ部材に光を照射するLED照明部材を支持部材によって支持する構造のマスク用光触媒装置の概要を開示している。該公報には、支持部材は使用者の呼気を妨げない位置に部材間隔を確保するものであり微細な穿孔がされるとともに酸化チタンの光触媒作用を妨げない光透過性を有した材質)で構成されていると記載されているが、支持部材の具体的な構成は開示されていいない。また該公報には、LED照明部材の裏面に酸化チタンの光触媒作用により発生する活性酸素を除去する酸素除去部材を設けること、及びLED照明装置が発生する紫外線、紫外線を含む光線を使用者の顔面から遮断する紫外線遮断フィルタ部材を設けてもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら該公報には、支持部材の具体的な構成や、LED照明部材からの光をフィルタ部材に照射するための具体的な構成や、紫外線遮断フィルタ部材の具体的な配置構成などは開示されていない。そのため当業者が、該公報に記載の発明を直ちに実施することは難しい。
【0005】
本発明の目的は、マスクの内部に配置されてマスク内に入る空気及びマスクから出る空気を殺菌するために実用可能なマスク用光触媒装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のマスク用光触媒装置は、マスク本体の内側に配置されてマスク本体と使用者の口及び鼻との間に空間を形成するインナースペーサと、インナースペーサに保持された1以上の光触媒フィルタと、1以上の光触媒フィルタに光を当てる1以上のLED光源と、1以上の光触媒フィルタに対して光を照射するために、光触媒フィルタとLED光源との間に間隔をあけて1以上のLED光源を保持する1以上の光源保持部とを備えている。さらに光源保持部は、LED光源から放射された光が使用者に直接当たるのを防ぐ光遮蔽構造とを備えている。そしてインナースペーサ、光触媒フィルタ、光源保持部及び光遮蔽構造は、使用者が吸い込む空気及び吐き出す空気が光触媒フィルタを通るように定められている。
【0007】
本発明によれば、マスク本体の内側に配置されるインナースペーサが、光触媒フィルタとLED光源を保持する光源保持部と光遮蔽構造とを備えているので、マスク用光触媒装置を1つのユニットとしてマスク本体の内側に配置することにより、簡単に繰り返し使用することができる。また使用者が吸い込む空気及び吐き出す空気の両方が光触媒フィルタを通るので、使用者をウイルスから守るだけでなく、使用者から周囲にウイルスが発散することも有効に防止できる。
【0008】
光触媒フィルタは、3次元網目状構造体または多孔質構造体に活性酸素を発生しない光触媒層が付着し且つ通気性を有する構造を備えているのが好ましい。そして光源保持部は、中央に前記LED光源が設置されるシート状を呈しており、光源保持部は、中央にLED光源が設置される中央部と、該中央部の外周部から光触媒フィルタに向かって広がるスカート部と、該スカート部と連続して形成されて該スカート部をインナースペーサに連結する連結部とから構成されているのが好ましい。そして連結部には空気を流通させる複数のスリットが形成されているのが好ましい。このような構造の光源保持部は、光遮蔽構造を構成する。このような構成を採用すると、光触媒フィルタから活性酸素が実質的に発生せず、しかもLED光源からの光の大部分は、光触媒フィルタに向かい且つ乱反射光も光触媒フィルタ側に反射されるので、光源保持部のスリットから大量の光が漏れて、使用者の皮膚に当たることを防止できる。その結果、安全性の高いマスク用光触媒装置を提供できる。
【0009】
なお複数のスリットは光の漏れを抑制するが通気性を有する材料によって塞がれていてもよい。このようにすると更に安全性の高いマスク用光触媒装置を提供できる。
【0010】
具体的なインナースペーサは、マスク本体と対向する外面と使用者の顔面と対向する内面を有し、且つ内面と使用者の口、鼻及び両頬との間に空間を形成するように膨出する形状を有しているのが好ましい。そしてインナースペーサの両頬と対向する部分には、一対の光触媒フィルタが、表面を外面から露出させ且つ裏面を内面側に露出させるようにして通気可能に保持されており、インナースペーサの内部には、一対の光触媒フィルタに対応して一対の光源保持部が設けられているのが好ましい。この場合、インナースペーサの内部の一対の光源保持部の設置領域の中央部の下には、一対の光源保持部に保持された1以上のLED光源に対して共用される充電式直流電源が設けられているのが好ましい。人間の顔は鼻の両側に頬があり、頬は後頭部に向かって傾斜している。そのためインナースペーサの両頬と対向するエリアは、一対の光触媒フィルタを配置するのに適したスペースとなる。その結果、一対の光触媒フィルタをインナースペーサに保持させても、一対の光触媒フィルタの存在がマスク本体の外観を、マスク用光触媒装置を使用していることがハッキリと判るほどに変形させることがない。またインナースペーサの一対の光源保持部の設置領域の中央部の下は、後方に下がった顎に対向するエリアとなり、充電式直流電源が配置されても、マスク本体の外側からその存在を認識されることは殆どない。したがって上記のような配置構成を採用すると、マスク本体の内部にコンパクトで且つ目立つことがないマスク用光触媒装置を配置することができる。
【0011】
インナースペーサは、内面の外周縁部が使用者の顔面に密着し得る柔軟性を有しているのが好ましい。このような構成であれば、インナースペーサ内に入った空気の大部分は、一対の光触媒フィルタを通して使用者に吸引され、使用者から吐き出された二酸化炭素を含む空気の大部分は一対の光触媒フィルタを通して排出されることになる。したがって使用者の安全と周囲の人の安全の両方を確保することができる。
【0012】
本発明の別の態様では、インナースペーサは、マスク本体と対向する外面と使用者の顔面と対向する内面を有し、且つ内面と前記使用者の口、鼻及び両頬との間に前記空間を形成するように膨出する形状を有しており、しかもインナースペーサの使用者の鼻及び口と対向する部分には、光触媒フィルタを外面との間にスペースをあけて保持し且つLED光源から放射された光が使用者に直接当たるのを防ぐ光遮蔽構造を備えた光触媒保持部を有する。この光源保持部は、スペース内にLED光源を配置するように構成さており、インナースペーサには、光触媒保持部に隣接してLED光源に対して電力を供給する充電式直流電源が設けられている。この態様では、インナースペーサの外面と光触媒フィルタとの間のスペーサにLED光源を配置しているので、光触媒フィルタ自身が、光遮蔽構造の一部を構成することになり、遮蔽構造を簡単なものとすることができる。
【0013】
この態様では、インナースペーサに、光触媒保持部、光源保持部及び充電式直流電源をカバーするカバー部材が、取り外し可能に含まれていてもよい。このような構成にすると、光触媒フィルタの交換や充電式直流電源へのアクセスが容易になる。なおこのカバー部材には、複数の通気用貫通孔が形成されているのが好ましい。複数の通気用貫通孔があれば、カバー部材が通気性能に影響を与えることがない。
【0014】
LED光源は、150°の広角範囲に光を照射できるものを用いてもよい。150°の広角範囲があれば、少ない数のLED光源で光触媒フィルタに対して必要十分な光を照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施の形態のマスク用光触媒装置の一部分解図に使い捨てマスクの輪郭を併記した図である。
【
図2】
図1のA-A線断面図に横から見た使い捨てマスクと使用者の輪郭を併記し、空気を吸気するときの空気の流れを付記した図である。
【
図3】
図1のA-A線断面図に横から見た使い捨てマスクと使用者の輪郭を併記し、空気を放出するときの空気の流れを付記した図である。
【
図4】第1の実施の形態のマスク用光触媒装置を使用者の顔面に装着した状態を示す図である。
【
図5】本発明の第2の実施の形態のマスク用光触媒装置を
図2と同様の態様で示した図である。
【
図6】第2の実施の形態のマスク用光触媒装置の分解斜視図に空気を吸引するときの空気の流れを付記した図である。
【
図7】第2の実施の形態で用いるインナースペーサの縦断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明のマスク用光触媒装置の実施の形態を詳細に説明する。
図1乃至
図3においては、本発明の第1の実施の形態のマスク用光触媒装置1の一部分解図に使い捨てマスク3の輪郭を併記してある。
図4においては、本実施の形態のマスク用光触媒装置1を使用者5の顔面に装着した状態を示している。これらの図において、マスク本体31の長手方向の両端には、伸縮性を有する耳かけ部32が装着されている。
【0017】
マスク用光触媒装置1は、マスク本体31の内側に配置されてマスク本体31と使用者5の口及び鼻との間に空間Sを形成するインナースペーサ11を有している。インナースペーサ11は、ポリプロピレン等の合成樹脂材料により一体に成形されている。インナースペーサ11は、マスク本体31と対向する外面11Aと使用者5の顔面と対向する内面11Bを有しており、内面11Bと使用者5の口、鼻及び両頬との間に空間Sを形成するように膨出する形状を有している。使用者の頬は後頭部に向かって傾斜していため、インナースペーサ11の両頬と対向するエリアは、後述する一対の光触媒フィルタ13,13を配置するのに適したスペースとなる。その結果、一対の光触媒フィルタ13,13をインナースペーサ11に保持させても、一対の光触媒フィルタ13,13の存在がマスク本体31の外観を、マスク用光触媒装置1を使用していることがハッキリと判るほどに変形させることがない。
【0018】
インナースペーサ11の両頬と対向する部分には、輪郭形状が円形を呈する段付きの一対の孔部12が形成されている。孔部12内の円形の段部12Aは、径方向内側に突出する円環状の形状を有している。
【0019】
この一対の孔部12,12内には、輪郭形状が円形を呈する一対の光触媒フィルタ13が、段部12Aを利用して、表面13Aをインナースペーサ11の外面11Aから露出させ且つ裏面13Bをインナースペーサ11の内面11B側に露出させるように保持されている。
【0020】
光触媒フィルタ13は、連続する孔部を有する多孔質のセラミックスや発泡樹脂を用いて形成された連続する複数の隙間を有する3次元網目状構造体または多孔質構造体に活性酸素を発生しない光触媒層が付着した構造を有しており、通気性を有している。本実施の形態では、光触媒フィルタ13としては、例えば、WO2011/114894号公報に記載されている湘南セラミックス株式会社製の光触媒フィルタを用いている。なお本発明は、この光触媒フィルタを用いることに限定されるものではない。
【0021】
またインナースペーサ11の内部には、一対の光触媒フィルタ13,13に対応して一対の光源保持部14が設けられている。光源保持部14は、LED光源15から放射された光が使用者5に直接当たるのを防ぎ且つ光触媒フィルタ13との対向面は光触媒フィルタに向かって光を反射するように構成されている。そしてインナースペーサ11、光触媒フィルタ13及び光源保持部14の構造は、使用者が吸い込む空気及び吐き出す空気が光触媒フィルタを通るように定められている。
【0022】
具体的な光源保持部14は、中央にLED光源15が設置される円形の中央部14Aと、中央部14Aの外周部から光触媒フィルタ13に向かって広がる截頭円錐面形状のスカート部14Bと、スカート部14Bと連続して形成されてスカート部14Bをインナースペーサ11に連結するほぼ環状の連結部14Cとから構成されている。連結部14Cには、空気を流通させる複数のスリット14Dが周方向に間隔をあけて形成されている。このような構成を採用すると、スカート部14Bの存在により、LED光源15からの光の大部分は、光触媒フィルタ13に向かい且つ乱反射光も光触媒フィルタ13側に反射されるので、光源保持部のスリット14Dから大量の光が漏れて、使用者の皮膚に当たることを防止できる。その結果、安全性の高いマスク用光触媒装置を提供できる。本実施の形態では、光源保持部14自身が、光遮蔽構造を構成している。
【0023】
なお複数のスリット14Dは光の漏れを抑制するが通気性を有する材料によって塞いでもよい。このような材料としては、マスク本体31で採用されているような不織布を用いることができる。このようにすると更に安全性の高いマスク用光触媒装置を提供できる。
【0024】
またLED光源15は、光の波長が365nm~380nmであり、且つ150°の広角範囲に光を照射できるものを用いている。光触媒に光の波長が365nm~380nmの光を照射すると、光触媒を用いて、ウイルスや細菌を殺菌することができ、また悪臭成分を酸化分解することができる。150°の広角範囲があれば、少ない数のLED光源で光触媒フィルタに対して必要十分な光を照射することができる。
【0025】
本実施の形態では、LED光源15からの光の大部分は、光触媒フィルタ13に向かい且つ乱反射光も光触媒フィルタ13側に反射されるので、光源保持部14のスリット14Dから大量の光が漏れて、使用者の皮膚に当たることを防止できる。
【0026】
またインナースペーサ11の内部の一対の光源保持部14,14の設置領域の中央部の下には、一対の光源保持部14,14に保持されたLED光源15に対して共用される充電式直流電源16が設けられている。充電式直流電源16は、図示しない充電回路を実装した回路基板17上に電池18と充電プラグコネクタ19を実装した構造を有している。充電プラグコネクタ19にUSB電源コネクタ20を接続して電池18を充電すれば、繰り返し使用することができる。
【0027】
インナースペーサ11の一対の光源保持部14,14の設置領域の中央部の下は、後方に下がった顎に対向するエリアとなり、充電式直流電源16が配置されても、マスク本体31の外側からその存在を認識されることは殆どない。したがって上記のような配置構成を採用すると、マスク本体31の内部にコンパクトで且つ目立つことがないマスク用光触媒装置1を配置することができる。
【0028】
インナースペーサ11を、シリコーンゴム等のように柔軟性を有する材料により形成すると、インナースペーサ11の内面11Bの外周縁部が使用者5の顔面に密着する。その結果、インナースペーサ11内に入った空気の大部分は、一対の光触媒フィルタ13,13を通して使用者5に吸引され、使用者5から吐き出された二酸化炭素を含む空気の大部分は一対の光触媒フィルタ13,13を通して排出される。
【0029】
図5は、本発明の第2の実施の形態のマスク用光触媒装置を
図2と同様の態様で示した図であり、
図6は第2の実施の形態のマスク用光触媒装置の分解斜視図に空気を吸引するときの空気の流れを付記した図であり、
図7はインナースペーサの縦断面斜視図である。なおこれらの図において、
図1乃至
図4に示した第1の実施の形態の構成要素と同様の構成要素には、
図1に付した符号にダッシュを付した符号を付してある。以下の説明では、第1の実施の形態と同様の部分については、説明を省略する。
【0030】
第2の実施の形態のマスク用光触媒装置1´のインナースペーサ11´は、ポリプロピレン等の合成樹脂材料により一体に成形されている本体11´Cと、光触媒13´を収納する孔部12´からなる光触媒保持部、LED光源15´を保持する光源保持部14´及び充電式直流電源16´をカバーするカバー部材11´Dと、本体11C´の開口部の縁に篏合されたゴム等の軟質材料からなる縁部11´Eを備えている。
【0031】
インナースペーサ11´の使用者の鼻及び口と対向する部分には、矩形状をなす一対の孔部12´A及び12´Bが上下に並んで形成されている。孔部12´Aの奥の部分には、輪郭形状が矩形状を呈する光触媒フィルタ13´が、保持されている。孔部12´Aの奥には、使用者の鼻と口の間の領域と対向する遮蔽壁12´Aaが設けられている。そしてこの遮蔽壁12´Aa及び光触媒フィルタ13´の周壁部に沿うように通気用スリット12´Abが光触媒フィルタ13´の周方向に間隔をあけて複数の通気用スリット12´Abが形成されている。したがって吸い込んだ空気は、光触媒フィルタ13´及び通気用スリット12´Abを通って空間S内に入り、空間S内からの排気空気は通気用スリット12´Ab及び光触媒フィルタ13´を通って排出される。本実施の形態では、光触媒フィルタ13´、複数の通気用スリット12´Ab及び遮蔽壁12´Aaによって光遮蔽構造が構成されている。
【0032】
光触媒フィルタ13´は、形状が異なるだけで第1の実施の形態で用いた光触媒フィルタ13と同じ材質で形成されたもので、連続する孔部を有する多孔質のセラミックスや発泡樹脂を用いて形成された連続する複数の隙間を有する3次元網目状構造体または多孔質構造体に活性酸素を発生しない光触媒層が付着した構造を有している。
【0033】
また孔部12A´の内部の入り口部分には、LED光源15´を保持する光源保持部14´が配置されている。光源保持部14´は、スペースS内にLED光源15´を配置するように構成されたスタンド14´aから構成されている。スタンド14´aは、孔部12´B内に収納された充電式直流電源16´と接続されており、LED光源15´には充電式直流電源16´から電力が供給される。
【0034】
インナースペーサ11´は、光触媒保持部13´、光源保持部14´及び充電式直流電源16´をカバーするカバー部材11´Dを、取り外し可能に備えている。カバー部材11´Dには、複数の通気用貫通孔11´Daが形成されている。このような構成にすると、光触媒フィルタ13´の交換や充電式直流電源16´へのアクセスが容易になる。
【0035】
本実施の形態では、LED光源15´からの光の大部分は、光触媒フィルタ13´に向かい且つ乱反射光も光触媒フィルタ13´の表面側に照射される。その結果、光触媒フィルタ13´の表面に付着したウイルスを確実に殺菌することができる。また光触媒フィルタ13´を直接通過する光は実質的にないため、大量の光が空間S内に漏れて、使用者の皮膚に当たることを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、マスク本体の内側に配置されるインナースペーサが、光触媒フィルタとLED光源を保持する光源保持部とを保持しているので、マスク用光触媒装置を1つのユニットとしてマスク本体の内側に配置することにより、簡単に繰り返し使用することができる。また使用者が吸い込む空気及び吐き出す空気の両方が光触媒フィルタを通るので、使用者をウイルスから守るだけでなく、使用者から周囲にウイルスが発散することも有効に防止できる。
【符号の説明】
【0037】
1 マスク用光触媒装置
3 使い捨てマスク
5 使用者
11,11´ インナースペーサ
12,12´A,12´B 孔部
13,13´ 光触媒フィルタ
14,14´ 光源保持部
15,15´ LED光源
16,16´ 直流電源部