(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162959
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】ボールねじの状態監視装置および状態監視方法
(51)【国際特許分類】
G01M 13/028 20190101AFI20221018BHJP
【FI】
G01M13/028
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184010
(22)【出願日】2021-11-11
(62)【分割の表示】P 2021546300の分割
【原出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】松村 恵介
(72)【発明者】
【氏名】橋本 聡志
(72)【発明者】
【氏名】山田 雄基
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AB11
2G024BA27
2G024CA12
2G024CA13
2G024CA18
2G024DA06
2G024FA01
(57)【要約】
【課題】ボールねじの状態をより精度良く診断するためのデータを適切に収集することができるボールねじの状態監視装置および状態監視方法を提供すること。
【解決手段】状態監視装置(20)は、ねじ軸(1)と、ナット(2)と、複数のボール(3)と、を有するボールねじ(10)の状態を監視する。状態監視装置(20)は、無負荷状態で1往復以上、ねじ軸(1)とナット(2)とを定速で相対移動させるように駆動部(サーボモータ(11))を制御する駆動制御部(22)と、駆動制御部(22)により駆動部を制御している間のボールねじ(10)に関する物理量を、データとして収集するデータ収集部(23)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ軸と、ナットと、複数のボールと、を有するボールねじの状態を監視するボールねじの状態監視装置であって、
無負荷状態で1往復以上、前記ねじ軸と前記ナットとを定速で相対移動させるように駆動部を制御する駆動制御部と、
前記駆動制御部により前記駆動部を制御している間の前記ボールねじに関する物理量を、データとして収集するデータ収集部と、
を備えることを特徴とするボールねじの状態監視装置。
【請求項2】
前記駆動制御部は、
前記ナットを移動させる移動区間に、前記ボールねじを備える設備の稼働中に負荷状態で前記ナットが移動する区間を含めることを特徴とする請求項1に記載のボールねじの状態監視装置。
【請求項3】
前記駆動制御部は、
定期的に同じ条件で前記駆動部を制御するための駆動条件を記憶する駆動条件記憶部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のボールねじの状態監視装置。
【請求項4】
前記データ収集部によって収集されたデータを解析し、前記ボールねじの状態を監視する解析部をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のボールねじの状態監視装置。
【請求項5】
前記解析部は、
前記データ収集部によって収集されたデータのうち、往路のデータと復路のデータとの解析結果を比較して前記ボールねじの状態を診断する比較診断部を有することを特徴とする請求項4に記載のボールねじの状態監視装置。
【請求項6】
前記解析部は、
前記データ収集部によって収集されたデータを複数のデータに分割し、分割したデータの解析結果に基づいて前記ボールねじの異常発生箇所を特定する異常箇所特定部を有することを特徴とする請求項4または5に記載のボールねじの状態監視装置。
【請求項7】
ねじ軸と、ナットと、複数のボールと、を有するボールねじの状態を監視するボールねじの状態監視装置であって、
前記ボールねじの運転サイクル内で、無負荷状態で一方向に、前記ねじ軸と前記ナットとが定速で相対移動している期間をデータ収集期間として取得する期間取得部と、
前記期間取得部により取得されたデータ収集期間の前記ボールねじに関する物理量を、データとして収集するデータ収集部と、を備えることを特徴とするボールねじの状態監視装置。
【請求項8】
前記期間取得部は、前記ボールねじが原点復帰する期間を前記データ収集期間として取得することを特徴とする請求項7に記載のボールねじの状態監視装置。
【請求項9】
前記期間取得部は、前記ボールねじの給脂サイクルを前記データ収集期間として取得することを特徴とする請求項7または8に記載のボールねじの状態監視装置。
【請求項10】
前記期間取得部は、
前記データ収集期間に前記ナットが移動する移動区間に、前記ボールねじを備える設備の稼働中に負荷状態で前記ナットが移動する区間を含めることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載のボールねじの状態監視装置。
【請求項11】
前記期間取得部は、
定期的に同じ条件の前記データ収集期間を取得することを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載のボールねじの状態監視装置。
【請求項12】
前記データ収集部によって収集されたデータを解析し、前記ボールねじの状態を監視する解析部をさらに備えることを特徴とする請求項7から11のいずれか1項に記載のボールねじの状態監視装置。
【請求項13】
前記解析部は、
前記データ収集部によって収集されたデータを複数のデータに分割し、分割したデータの解析結果に基づいて前記ボールねじの異常発生箇所を特定する異常箇所特定部を有することを特徴とする請求項12に記載のボールねじの状態監視装置。
【請求項14】
前記物理量は、前記ナットの軸方向の振動であることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載のボールねじの状態監視装置。
【請求項15】
前記振動のデータを検出する振動センサをさらに備え、
前記振動センサは、前記ナットまたは前記ナットに連結され当該ナットとともに前記ねじ軸に対して相対移動可能な移動部材に固定されていることを特徴とする請求項14に記載のボールねじの状態監視装置。
【請求項16】
前記駆動部は、前記ボールねじを駆動するサーボモータであり、
前記物理量は、前記サーボモータのトルクおよび電流の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載のボールねじの状態監視装置。
【請求項17】
ねじ軸と、ナットと、複数のボールと、を有するボールねじの状態を監視するボールねじの状態監視方法であって、
無負荷状態で1往復以上、前記ねじ軸と前記ナットとを定速で相対移動させるように駆動部を制御するステップと、
前記駆動部を制御している間の前記ボールねじに関する物理量を、データとして収集するステップと、を含むことを特徴とするボールねじの状態監視方法。
【請求項18】
ねじ軸と、ナットと、複数のボールと、を有するボールねじの状態を監視するボールねじの状態監視方法であって、
前記ボールねじの運転サイクル内で、無負荷状態で一方向に、前記ねじ軸と前記ナットとが定速で相対移動している期間をデータ収集期間として取得するステップと、
前記データ収集期間の前記ボールねじに関する物理量を、データとして収集するステップと、を含むことを特徴とするボールねじの状態監視方法。
【請求項19】
コンピュータを、請求項1から16のいずれか1項に記載のボールねじの状態監視装置の各部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじの状態監視装置および状態監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、転がり直動要素として、ねじ軸と、ナットと、複数のボールと、を有し、ボールを介してナットとねじ軸とが相対移動するボールねじが知られている。ボールねじの状態を監視する方法として、例えば特許文献1、2には、センサを用いてボールねじの振動を検出し、検出された振動データをもとに異常を検知する方法が開示されている。
【0003】
特許文献1には、センサの出力信号を取り込むデータ収集時間Tを、無限循環経路内で前後するボールが無負荷通路から負荷通路に進入する周期t以上とし、ボールが負荷通路を出入りする際に生じる振動を考慮して状態監視を行う技術が開示されている。
また、特許文献2には、振動加速度センサから取得される加速度信号から、測定のタイミングを得るためのトリガー信号を構築し、定常速度運転時のみの振動測定データを切り出して状態監視を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6403743号公報
【特許文献2】特開2012-98213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記各特許文献に記載の技術では、往復移動自在なボールねじのナットが、いずれか一方向に移動(往路移動または復路移動)している際の振動データの一部を切り出して状態監視を行っている。そのため、位置の依存性によるボールねじの構成部品の異常を精度良く検知できないおそれがある。
また、ボールねじは、工作機械、搬送装置、射出成型機等の各種生産設備に使用されており、ボールねじの状態監視は、上記生産設備における生産上のタクトタイムに影響を及ぼさないようにインラインで行うことが望ましい。しかしながら、上記各特許文献に記載の技術にあっては、この点について考慮されていない。
【0006】
そこで、本発明は、ボールねじの状態をより精度良く診断するためのデータを適切に収集することができるボールねじの状態監視装置および状態監視方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、生産上のタクトタイムに影響を及ぼさず、インラインでボールねじの状態を診断するためのデータを収集することができるボールねじの状態監視装置および状態監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一つの態様のボールねじの状態監視装置は、ねじ軸と、ナットと、複数のボールと、を有するボールねじの状態を監視するボールねじの状態監視装置であって、無負荷状態で1往復以上、前記ねじ軸と前記ナットとを定速で相対移動させるように駆動部を制御する駆動制御部と、前記駆動制御部により前記駆動部を制御している間の前記ボールねじに関する物理量を、データとして収集するデータ収集部と、を備える。
ここで、無負荷状態とは、ボールねじを備える設備がワークに対する加工処理を行っておらず、ボールねじが当該処理による負荷を受けていない状態のことをいう。例えば工作機械等の加工装置がボールねじを備える場合、加工装置においてワークの加工を行っておらず、ボールねじがワークの加工による負荷を受けていない状態のことをいう。つまり、ここでいう無負荷状態とは、予圧荷重やテーブルの重量による負荷などといった装置構成や製品仕様にてボールねじに作用する負荷が無い状態をいうのではない。
このように、ボールねじを1往復以上、定速で空運転させ、その間のデータを収集するので、位置の依存性によるボールねじの構成部品の異常(例えば、ねじ軸の損傷やナットの損傷)などをより精度良く検知可能な診断用データを収集することができる。
【0008】
また、上記のボールねじの状態監視装置において、前記駆動制御部は、前記ナットを移動させる移動区間に、前記ボールねじを備える設備の稼働中に負荷状態で前記ナットが移動する区間を含めてもよい。
例えば工作機械等の加工装置がボールねじを備える場合、加工時にナットが走行する区間において部品損傷などの異常が発生しやすい。データ収集を行う区間に、加工時にナットが走行する区間を含めることで、適切に異常検知を行うことが可能となる。
【0009】
また、上記のボールねじの状態監視装置において、前記駆動制御部は、定期的に同じ条件で前記駆動部を制御するための駆動条件を記憶する駆動条件記憶部を有していてもよい。
この場合、収集したデータを時系列に並べ、その傾向を監視することができる。したがって、異常等の発生により状態が変化した場合には、これを適切に検知することができる。また、毎回同じ条件でデータを収集することで、診断精度を向上させることができる。
【0010】
さらに、上記のボールねじの状態監視装置は、前記データ収集部によって収集されたデータを解析し、前記ボールねじの状態を監視する解析部をさらに備えてもよい。
この場合、収集されたデータを用いて、位置の依存性によるボールねじの構成部品の異常(例えば、ねじ軸の損傷やナットの損傷)などを高精度に検知することができ、計画的な予防保全を行うことができる。
【0011】
また、上記のボールねじの状態監視装置において、前記解析部は、前記データ収集部によって収集されたデータのうち、往路のデータと復路のデータとの解析結果を比較して前記ボールねじの状態を診断する比較診断部を有してもよい。
この場合、ボールねじでは往路と復路とでデータが変化することを利用して、適切に診断を行うことができるため、測定誤差等による誤診断が抑制された高精度な状態監視を行うことができる。
【0012】
さらに、上記のボールねじの状態監視装置において、前記解析部は、前記データ収集部によって収集されたデータを複数のデータに分割し、分割したデータの解析結果に基づいて前記ボールねじの異常発生箇所を特定する異常箇所特定部を有してもよい。
この場合、ボールねじのどこに異常が発生しているかを特定することができるので、迅速にボールねじのメンテナンス等を行うことができる。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の一つの態様のボールねじの状態監視装置は、ねじ軸と、ナットと、複数のボールと、を有するボールねじの状態を監視するボールねじの状態監視装置であって、前記ボールねじの所定の運転サイクルや運転パターン内で、無負荷状態で一方向に、前記ねじ軸と前記ナットとが定速で相対移動している期間をデータ収集期間として取得する期間取得部と、前記期間取得部により取得されたデータ収集期間の前記ボールねじに関する物理量を、データとして収集するデータ収集部と、を備える。
ここで、無負荷状態とは、ボールねじを備える設備がワークに対する加工処理を行っておらず、ボールねじが当該処理による負荷を受けていない状態のことをいう。例えば工作機械等の加工装置がボールねじを備える場合、加工装置においてワークの加工を行っておらず、ボールねじがワークの加工による負荷を受けていない状態のことをいう。つまり、ここでいう無負荷状態とは、予圧荷重やテーブルの重量による負荷などといった装置構成や製品仕様にてボールねじに作用する負荷が無い状態をいうのではない。
このように、ボールねじの運転サイクルや運転パターン内で、ナットが無負荷状態で一方向に定速で移動している期間をデータ収集期間とし、その間のデータを収集するので、生産上のタクトタイムに影響を及ぼさず、インラインでボールねじの状態を診断するためのデータを収集することができる。
【0014】
また、上記のボールねじの状態監視装置において、前記期間取得部は、前記ボールねじが原点復帰する期間を前記データ収集期間として取得してもよい。この場合、例えば設備が起動した直後や、工具を交換する場合、ワークを交換する場合など、決められた位置にナットが戻る動きをする際のデータを収集することができる。
さらに、上記のボールねじの状態監視装置において、前記期間取得部は、前記ボールねじの給脂サイクルを前記データ収集期間として取得してもよい。この場合、例えば潤滑剤(グリース、オイル)を補給した後、潤滑剤を撹拌させるために所定距離、定速で走行させる際のデータを収集することができる。
【0015】
また、上記のボールねじの状態監視装置において、前記期間取得部は、前記データ収集期間に前記ナットが移動する移動区間に、前記ボールねじを備える設備の稼働中に負荷状態で前記ナットが移動する区間を含めてもよい。
例えば工作機械等の加工装置がボールねじを備える場合、加工時にナットが走行する区間において部品損傷などの異常が発生しやすい。データ収集を行う区間に、加工時にナットが走行する区間を含めることで、適切に異常検知を行うことが可能となる。
【0016】
さらに、上記のボールねじの状態監視装置において、前記期間取得部は、定期的に同じ条件の前記データ収集期間を取得してもよい。
この場合、収集したデータを時系列に並べ、その傾向を監視することができる。したがって、異常等の発生により状態が変化した場合には、これを適切に検知することができる。また、ボールねじに関する物理量(例えば振動)が往路と復路とで異なることを考慮して、毎回ナットが同一方向に移動しているときのデータを収集することができ、診断精度を向上させることができる。
【0017】
また、上記のボールねじの状態監視装置は、前記データ収集部によって収集されたデータを解析し、前記ボールねじの状態を監視する解析部をさらに備えていてもよい。
この場合、インラインで収集されたデータを用いて、ボールねじの状態を適切に監視することができる。
【0018】
さらに、上記のボールねじの状態監視装置において、前記解析部は、前記データ収集部によって収集されたデータを複数のデータに分割し、分割したデータの解析結果に基づいて前記ボールねじの異常発生箇所を特定する異常箇所特定部を有してもよい。
この場合、ボールねじのどこに異常が発生しているかを特定することができるので、迅速にボールねじのメンテナンス等を行うことができる。
【0019】
さらに、上記のボールねじの状態監視装置において、前記物理量は、前記ナットの軸方向の振動であってもよい。この場合、ナットに発生する振動を適切に検出することができる。
また、上記のボールねじの状態監視装置は、前記振動のデータを検出する振動センサをさらに備え、前記振動センサは、前記ナットまたは前記ナットに連結され当該ナットとともに前記ねじ軸に対して相対移動可能な移動部材に固定されていてもよい。この場合、振動センサによって、監視対象の物理情報を直接収集することができるので、高精度な状態監視が可能となる。
【0020】
さらにまた、上記のボールねじの状態監視装置において、前記駆動部は、前記ボールねじを駆動するサーボモータであり、前記物理量は、前記サーボモータのトルクおよび電流の少なくとも一方であってもよい。
この場合、サーボモータのトルクや電流を検出すればよいため、ボールねじに関する物理量を検出するセンサを設置するための複雑な配線を必要としない。
【0021】
また、本発明の一つの態様のボールねじの状態監視方法は、ねじ軸と、ナットと、複数のボールと、を有するボールねじの状態を監視するボールねじの状態監視方法であって、無負荷状態で1往復以上、前記ねじ軸と前記ナットとを定速で相対移動させるように駆動部を制御するステップと、前記駆動部を制御している間の前記ボールねじに関する物理量を、データとして収集するステップと、を含む。
このように、ボールねじを1往復以上、定速で空運転させ、その間のデータを収集するので、位置の依存性によるボールねじの構成部品の異常(例えば、ねじ軸の損傷やナットの損傷)などをより精度良く検知可能な診断用データを収集することができる。
【0022】
また、本発明の一つの態様のボールねじの状態監視方法は、ねじ軸と、ナットと、複数のボールと、を有するボールねじの状態を監視するボールねじの状態監視方法であって、前記ボールねじの所定の運転サイクルや運転パターン内で、無負荷状態で一方向に、前記ねじ軸と前記ナットとが定速で相対移動している期間をデータ収集期間として取得するステップと、前記データ収集期間の前記ボールねじに関する物理量を、データとして収集するステップと、を含む。
このように、ボールねじの運転サイクルや運転パターン内で、ナットが無負荷状態で一方向に定速で移動している期間をデータ収集期間とし、その間のデータを収集するので、生産上のタクトタイムに影響を及ぼさず、インラインでボールねじの状態を診断するためのデータを収集することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一つの態様によれば、定速で1往復以上、ボールねじを空運転させるので、ボールねじの状態をより精度良く診断するためのデータを適切に収集することができる。
また、本発明の一つの態様によれば、生産上のタクトタイムに影響を及ぼさず、インラインでボールねじの状態を診断するためのデータを収集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、第一の実施形態における状態監視装置を備えるシステムの概略構成を示す図である。
【
図3】
図3は、第一の実施形態の状態監視装置の機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、第一の実施形態の異常発生箇所の特定方法を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第二の実施形態における状態監視装置を備えるシステムの概略構成を示す図である。
【
図6】
図6は、第二の実施形態の状態監視装置の機能ブロック図である。
【
図7】
図7は、第二の実施形態の異常発生箇所の特定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0026】
図1は、ボールねじ10の状態を監視する状態監視装置20を備えるシステムの概略構成を示す図である。
図1に示すように、ボールねじ10は、ねじ軸1と、ナット2と、を備える。ねじ軸1には、サーボモータ11の回転軸がカップリングを介して連結されている。サーボモータ11は、ボールねじ10を駆動する駆動部である。サーボモータ11の回転がねじ軸1に伝達し、ねじ軸1が回転運動すると、ナット2はねじ軸1の軸方向に移動される。
【0027】
図2は、ボールねじ10の一例を示す図である。
ボールねじ10のねじ軸1は、細長い円柱形状の金属製部材からなり、
図2に示すように、ねじ軸1の外周面には螺旋状の転動溝(螺旋溝)1aが形成されている。
ナット2は、ねじ軸1の外径よりも大きな円形の貫通口が形成された略円筒形状の金属製部材からなる。ナット2の内周面には、ねじ軸1の螺旋溝1aに対応するように螺旋状の転動溝(螺旋溝)2aが形成されている。ねじ軸1の螺旋溝1aとナット2の螺旋溝2aとにより、ボール3が転動する転動路が形成される。
【0028】
また、ナット2には、軸方向へ貫通した直線状のボール戻し路2bが形成されている。ボール戻し路2bは、ボール3を転動路の終点から始点に戻すためのものである。
さらに、ナット2の軸方向の両端部にはコマ部材4が埋設されている。コマ部材4は、例えば樹脂製部材からなる。コマ部材4には、方向転換路4aが形成されている。方向転換路4aは、上記転動路とボール戻し路2bとを連通するためのものであり、略円弧状をなしている。なお、コマ部材4は、樹脂製に限らず金属製でもよい。
【0029】
ねじ軸1の螺旋溝1aとナット2の螺旋溝2aとにより形成される転動路と、ナット2のボール戻し路2bと、コマ部材4の方向転換路4aとで、ボール3が循環する循環経路が構成されている。循環経路には、多数のボール4が装填されており、循環経路のうち転動路内で転動するボール3を介して、ねじ軸1とナット2とが相対移動するようになっている。つまり、循環経路のうち、ねじ軸1の螺旋溝1aとナット2の螺旋溝2aとにより形成される転動路は、ボール3が外部負荷を受け得る負荷エリアをなし、ナット2のボール戻し路2bおよびコマ部材4の方向転換路4aは、無負荷エリアをなす。
【0030】
ここで、ボール3は、転動路においてボールねじ10にかかる外部荷重や予圧により負荷を受けるものであり、球形の金属製部材からなる。なお、ボール3の材料は、金属に限られずセラミックス等でもよい。また、ボールねじ10が備える転動体は、球形のボール3に限定されるものではなく、ころであってもよい。
また、ここでは、
図2に示すようにコマ部材4を備えるボールねじ10について説明したが、ボール3を循環させるための循環部材は上記に限定されるものではない。例えば、チューブ方式等のボールねじ10であってもよく、循環形式は問わない。
【0031】
本実施形態では、ボールねじ10が、工作機械などの加工装置に適用される場合について説明する。
図1に示すように、ボールねじ10のナット2には、被加工物であるワークWを載置するテーブル12が、ブラケット13を介して連結されている。このテーブル12は、ナット2とともにねじ軸1の軸方向に沿って往復移動可能である。テーブル12を移動させることで、切削バイト等の工具30によってワークWの所望の位置を加工することができる。例えば、ナット2を、
図1に示す加工区間Aにおいて移動させることで、ワークWの全面を加工することができる。
【0032】
また、ナット2の軸方向における端面(ナットフランジ端面)には、振動センサ14が固定されている。振動センサ14は、ボールねじ10に関する物理量として、ナット2の進行方向(軸方向)の振動を検出する。なお、振動センサ14によって検出するボールねじ10に関する物理量は、ナット2の円周方向の振動であってもよい。ただし、ナット2の軸方向の振動の方が、ボールねじ10に関する物理量として望ましい。
振動センサ14によって検出された振動のデータ(振動データ)は、状態監視装置20に出力される。
【0033】
状態監視装置20は、例えばマイクロコンピュータ(マイコン)により構成することができる。状態監視装置20は、CPU20aと、ROM20bと、RAM20cと、表示部20dと、を備える。CPU20aは、例えばROM20bから必要なプログラム等をRAM20cにロードし、当該プログラム等を実行することで各種の機能動作を実現する。具体的には、CPU20aは、振動センサ14から得られる振動データをもとに、ボールねじ10の状態を監視する監視機能動作を実現する。表示部20dは、例えば液晶ディスプレイなどの表示用モニタを備える。
【0034】
図3は、状態監視装置20の構成を示す機能ブロック図である。
図3に示すように、状態監視装置20は、信号取得部21と、駆動制御部22と、データ収集部23と、記憶部24と、解析部25と、出力部26と、を備える。この
図3に示す各部の機能は、
図1に示すCPU20aが所定のプログラムを実行することで実現される。
信号取得部21は、設備側からトリガー信号を取得する。ここで、トリガー信号は、例えばワークWの加工が行われる前や加工が行われた後など、ワークWの加工が行われていないタイミングで設備側から出力される。
【0035】
駆動制御部22は、信号取得部21によりトリガー信号が取得されたタイミングで、
図1に示すサーボモータ11を制御し、ボールねじ10を診断モードで駆動する。診断モードでは、ボールねじ10を1往復以上、定速で空運転させる。ここで、空運転とは、ワークWの加工を行っていない無負荷状態で、ねじ軸1とナット2とを相対移動させることをいう。つまり、駆動制御部22は、診断モードでは、無負荷状態で1往復以上、ねじ軸1とナット2とを定速で相対移動させる。
ここで、無負荷状態とは、加工装置においてワークの加工を行っておらず、ボールねじ10がワークの加工による負荷を受けていない状態のことをいう。つまり、ここでいう無負荷状態とは、予圧荷重やテーブル12の重量による負荷などといった装置構成や製品仕様にてボールねじ10に作用する負荷が無い状態をいうのではない。
空運転の往復回数が多いほど収集されるデータ量が増し、平均化によりノイズ成分を低減させることができるため、往復回数は多い方が望ましい。往復回数が多いほど、状態監視の精度を向上させることができる。また、SN比の観点より、ねじ軸1の回転数は100rpm以上であることが望ましい。
【0036】
また、空運転の条件として、ナット2の移動区間に、ボールねじ10を備える設備の稼働中に負荷状態でナット2が移動する区間、すなわち、加工装置におけるワークWの加工時にナット2が移動する区間(
図1の加工区間A)を含めることができる。なお、ナット2の移動区間は、その距離が長いほど収集されるデータ量が増し、平均化によりノイズ成分を低減させることができるため、移動距離は長い方が望ましい。移動距離が長いほど、状態監視の精度を向上させることができる。
駆動制御部22は、上記のように予め定められた条件でボールねじ10を空運転させた後、診断モードを終了する。
【0037】
データ収集部23は、信号取得部21によりトリガー信号が取得されたタイミングで、振動センサ14により検出された振動データの収集を開始する。つまり、データ収集部23は、ボールねじ10の空運転と同期して振動データを収集する。
なお、データ収集部23は、駆動制御部22によって診断モードが終了されたら、振動データのデータ収集を終了する。
記憶部24は、データ収集部23により収集された振動データを所定の記憶領域に保存する。
【0038】
本実施形態では、状態監視装置20は、ボールねじ10を定期的に診断モードで駆動し、振動データを収集する。このとき、振動データを収集する条件(運転パターン、サンプリング時間、データ収集時間など)は、毎回同じとする。駆動制御部22は、
図3に示すように、かかる運転パターン等の条件を記憶する駆動条件記憶部22aを有し、駆動制御部22は、駆動条件記憶部22aに記憶された条件に基づきサーボモータ11を制御する。
なお、データの安定性を考慮した場合、暖機状態でのデータ収集が望ましい。また、異常の発生を適切に把握するためにも、データ収集間隔は稼働日で1日1回以上となる間隔が望ましい。
【0039】
解析部25は、ボールねじ10を診断モードで駆動している間に収集された振動データを解析し、ボールねじ10の状態を監視する。
出力部26は、解析部25により診断されたボールねじ10の状態を、
図1に示す表示部20dに出力し、ユーザに診断結果を提示する。
【0040】
解析部25は、例えば、収集された振動データをもとに特徴値を計算し、計算された特徴値を基準値と比較することでボールねじ10の状態(異常発生の有無など)を診断する。ここで、特徴値は、RMS値、オーバーオール値(OA値)、パーシャルオーバーオール値(POA値)、クレストファクタ(CF)、クルトシスの少なくとも1つを含むことができる。なお、特徴値は上記に限定されるものではなく、適宜選定することができる。また、基準値としては、予め特徴値の閾値を基準値として設けておけば、特徴値と閾値との比較により、容易かつ適切に異常を検知することができる。
【0041】
解析部25は、振動データの解析に際し、振動データを、往路部分、復路部分、往路および復路の加工区間部分、往路および復路の加工区間外の部分に分割し、それぞれの振動データの解析結果(例えば、上記の特徴値)を比較するようにしてもよい。
例えば
図3に示すように、解析部25は、比較診断部25aと、異常箇所特定部25bと、判定部25cと、を有していてもよい。この場合、比較診断部25aは、分割した振動データの解析結果を比較し、判定部25cは、比較診断部25aによる比較結果をもとにボールねじ10の状態を判定してもよい。
【0042】
往路の振動データから計算された特徴値と、復路の振動データから計算された特徴値とを比較することで、振動データのバラつきを確認することができる。
ボールねじ10においては、ボール3が転動路を転がることによる振動や、ボール3が循環経路の負荷エリアや無負荷エリアを出入りすることによる振動などが発生する。そして、ボールねじ10では、ボールが負荷エリアから無負荷エリアに移行する位置、及びボールが無負荷エリアから負荷エリアに移行する位置が、ナット2が移動する方向によって反転する。つまり、往路と復路とで加振位置が異なる。そのため、往路と復路とでは同一の振動データは測定されない。
したがって、
図3に示す比較診断部25aが往路と復路の特徴値を比較することで、往路と復路とで振動データが変化することを利用した状態監視を行うことができ、測定誤差等による誤診断が抑制された高精度な状態監視を行うことができる。
【0043】
また、加工区間の振動データから計算された特徴値と、加工区間外の振動データから計算された特徴値とを比較することで、加工区間の劣化や損傷状態を把握することができる。
一般に、ボールねじ10においては、負荷がかかる加工区間にて異常が発生しやすい。そのため、加工区間においてのみ異常が発生し、加工区間外では異常は発生しない(すなわち正常値である)と予め定めておけば、加工区間の特徴値と加工区間外の特徴値(正常値)とを比較するだけで、特徴値の時系列データがなくとも簡易的に状態を確認することができる。つまり、
図3に示す比較診断部25aは、加工区間と加工区間外の特徴値を比較してもよい。
【0044】
さらに、解析部25は、全領域の振動データを複数の小区間のデータに分割し、分割した振動データの解析結果(例えば特徴値)を比較するようにしてもよい。これにより、状態が変化する位置を特定することができる。例えば、ねじ軸1の転走面の一ヶ所に傷がある場合、そこをナット2が通ったときの特徴値だけ変動する。
図4は、ねじ軸1の転走面の一ヶ所に傷がある場合の特徴値の一例である。この
図4においては、1往復分の特徴値を示している。
図4の各ポイント(点)は、分割した各小区間の振動データから計算した特徴値である。このように、ねじ軸1の転走面の一ヶ所に傷がある場合、往路と復路とで特徴値が大きく変動する箇所(ピーク)が確認できる。したがって、特徴値が変動する箇所を特定することで、ねじ軸1の傷が発生している位置(異常発生箇所)を特定することができる。
図3に示す異常箇所特定部25bは、上記のように全領域の振動データを複数のデータに分割し、分割したデータの解析結果に基づいてボールねじ10の異常発生箇所を特定するようにしてもよい。
【0045】
さらに、上記のようにねじ軸1の転走面の一ヶ所に傷がある場合、必ず往路と復路とで特徴値のピークが存在する。そのため、往路および復路のいずれか一方においてのみ特徴値のピークが存在する場合には、測定の誤差であると判断することもできる。このように、往路と復路の振動データを比較することで、診断精度を向上させることができる。
つまり、
図3に示す比較診断部25aが往路と復路の振動データを比較し、判定部25cは、比較診断部25aにおいて往路と復路の振動データを比較した結果と、異常箇所特定部25bにおいて特定された異常発生箇所とに基づいて、検出された特徴値のピークが測定の誤差によるものであるのか、ねじ軸1の異常発生に起因するものであるのかを判定するようにしてもよい。
往路と復路とで転動体の衝突により加振される位置が代わるため、その違いを考慮することが望ましい。
【0046】
なお、解析部25は、往路、復路、加工区間、加工区間外に分けた振動データから計算された特徴値を時系列に並べ、傾向の変化を監視することにより、ボールねじ10の状態を診断するようにしてもよい。この場合、ボールねじ10の状態をより高精度に診断することができる。
また、解析部25は、振動データを往路、復路、加工区間、加工区間外に分けずに計算した特徴値を時系列に並べ、傾向の変化を監視するようにしてもよい。この場合、状態監視の精度は劣るが、計算を簡略化することができ、解析に必要なメモリを低減することができる。
【0047】
本実施形態においては、状態監視装置20が
図3に示す各部を備える場合について説明したが、例えば記憶部24、解析部25および出力部26の少なくとも一部は、状態監視装置20とは異なる装置が備えていてもよい。この場合、状態監視装置20は、データ収集部23において収集したデータを状態監視装置20とは異なる装置へ送信し、状態監視装置20とは異なる装置がデータを解析してボールねじ10の状態を診断してもよい。
【0048】
以上説明したように、本実施形態における状態監視装置20は、無負荷状態で1往復以上、ねじ軸1とナット2とを定速で相対移動させるようにサーボモータ11を制御することで、ボールねじ10を診断モードで駆動し、その間の振動データを、ボールねじ10の状態を監視するためのデータとして収集する。
このように、状態監視装置20は、ボールねじ10を診断モードで駆動することができるので、一連の運転サイクル中(加工サイクル中)に、定速で1往復以上の空運転動作が存在しない設備であっても、適切にデータ収集を行うことができる。また、加工時ではなく、空運転時の振動データを収集するので、加工時に発生する外乱の影響を最小限にした振動データを収集することができる。また、空運転は1往復以上とするので、状態監視の精度を向上させることができる。また、定速で空運転するので、安定したデータ測定を行うことができる。
【0049】
さらに、空運転の移動区間には、加工を行う場合にボールねじ10のナット2が移動する区間を含めることができる。これにより、収集された振動データ中に、異常が発生しやすい箇所を移動した際の信号を含めることができる。したがって、例えば加工区間の振動データから計算された特徴値と、加工区間外の振動データから計算された特徴値とを比較することで、加工区間の劣化や損傷状態を把握することができる。このように、異常検知を適切に行うことができる。
【0050】
ここで、空運転の移動区間や移動距離は、ボールねじ10の運転サイクルやボールねじ10の種類など、予め定められたパラメータ(加工区間A等)をもとに設定可能である。
例えば特許文献1に記載の技術のように、データ収集時間をボールの通過周期以上に設定する場合には、ボールの通過周期を把握するためのシステムが必要となる。これに対して、本実施形態では、空運転の条件設定に必要なパラメータを把握するための複雑なシステムを別途構築する必要はない。
【0051】
また、本実施形態では、定期的に同じ条件でボールねじ10を駆動し、振動データ収集を行うことで、収集した振動データを時系列に並べ、その傾向を監視することができる。したがって、異常等の発生により状態が変化した場合には、これを適切に検知することができる。このとき、毎回同じ条件で振動データを収集するので、診断精度を向上させることができる。
例えば特許文献2に記載の技術のように、加速度信号からトリガーを構築する場合、必ずしも毎回同じ条件のデータが収集できるわけではない。本実施形態では、ボールねじ10を予め定められた診断モードで駆動した際のデータを収集するので、毎回同じ条件のデータを収集することができる。
【0052】
以上のように、本実施形態では、1往復以上、定速で空運転させた際の測定値を用いて、位置の依存性によるねじ軸1の損傷の検知、ナット2の損傷の検知など、ボールねじ10のどの部品が損傷しているかまで精度良く検知し、計画的な予防保全を行うことができる。
【0053】
(第二の実施形態)
次に、本発明における第二の実施形態について説明する。
上述した第一の実施形態では、無負荷状態で1往復以上、ねじ軸1とナット2とを定速で相対移動させた際の測定値を用いて、ボールねじ10の状態を診断する場合について説明した。この第二の実施形態では、所定の運転サイクルや運転パターン内で、無負荷状態で一方向に、ねじ軸1とナット2とが定速で相対移動している期間の測定値を用いて、ボールねじ10の状態を診断する場合について説明する。
【0054】
図5は、第二の実施形態における状態監視装置20Aを備えるシステムの概略構成を示す図である。
この状態監視装置20Aのハードウェア構成は、
図1に示す状態監視装置20のハードウェア構成と同様である。
【0055】
図6は、第二の実施形態における状態監視装置20Aの構成を示す機能ブロック図である。
図6に示すように、状態監視装置20Aは、信号取得部21と、データ収集部23と、記憶部24と、解析部25と、出力部26と、を備える。この
図6に示す各部の機能は、
図5に示すCPU20aが所定のプログラムを実行することで実現される。ここで、
図6に示す各部の機能の一部は、
図3に示す状態監視装置20の各部の機能とは異なる。
【0056】
信号取得部21は、設備側からトリガー信号を取得する。ここで、トリガー信号は、ボールねじ10の運転サイクルや運転パターン内で、無負荷状態で一方向に、ねじ軸1とナット2とが定速で相対移動している期間を示す信号である。
ここで、無負荷状態とは、加工装置においてワークの加工を行っておらず、ボールねじ10がワークの加工による負荷を受けていない状態のことをいう。つまり、ここでいう無負荷状態とは、予圧荷重やテーブル12の重量による負荷などといった装置構成や製品仕様にてボールねじ10に作用する負荷が無い状態をいうのではない。
【0057】
ボールねじ10は、例えば設備が起動したタイミングや、工具30を交換するタイミング、ワークWを交換するタイミングなどにおいて、原点位置に戻る動作(原点復帰)を行う。したがって、信号取得部21は、例えばボールねじ10が原点復帰する期間を示すトリガー信号を取得してもよい。
また、ボールねじ10には給脂サイクルがあり、潤滑剤(グリース、オイル)を補給した後、潤滑剤を撹拌させるために所定距離、定速で走行させる場合がある。したがって、信号取得部21は、例えばこの給脂サイクル内にあることを示すトリガー信号を取得してもよい。
【0058】
信号取得部21は、例えば、上記のトリガー信号を受信したタイミングから一定期間を、ボールねじ10の運転サイクルや運転パターン内で、無負荷状態で一方向に、ねじ軸1とナット2とが定速で相対移動している期間とし、当該期間をデータ収集期間として取得することができる。なお、信号取得部21は、データ収集期間の開始タイミングを示すトリガー信号と終了タイミングを示すトリガー信号とを受信することで、データ収集期間を取得してもよい。本実施形態において、信号取得部21は、期間取得部に対応している。
このように、信号取得部21は、往復ではなく、ナット2が一方向に移動している期間をデータ収集期間として取得する。したがって、比較的短時間でデータ収集を行うことができる。ここで、SN比の観点より、データ収集期間は、ねじ軸1の回転数が100rpm以上の期間であることが望ましい。
【0059】
また、データ収集期間にナット2が移動する移動区間には、ボールねじ10を備える設備の稼働中に負荷状態でナット2が移動する区間、すなわち、加工装置におけるワークWの加工時にナット2が移動する区間(
図5の加工区間A)を含めることができる。なお、ナット2の移動区間は、その距離が長いほど収集されるデータ量が増し、平均化によりノイズ成分を低減させることができるため、移動距離は長い方が望ましい。移動距離が長いほど、状態監視の精度を向上させることができる。
【0060】
なお、本実施形態では、信号取得部21は、トリガー信号をもとにデータ収集期間を取得する場合について説明するが、データ収集期間の取得方法は上記に限定されない。例えば、信号取得部21は、ボールねじ10の運転サイクル情報を取得し、取得した情報をもとにデータ収集期間を判断してもよい。
【0061】
データ収集部23は、信号取得部21により取得されたデータ収集期間において、振動センサ14により検出された振動データを収集する。つまり、データ収集部23は、生産時におけるボールねじ10の運転サイクル(加工サイクル)と同期して振動データを収集する。
記憶部24は、データ収集部23により収集された振動データを所定の記憶領域に保存する。
【0062】
本実施形態では、状態監視装置20Aは、定期的に振動データを収集する。このとき、振動データを収集する条件(運転パターン、ナット2の移動方向、サンプリング時間、データ収集時間など)は、毎回同じとする。
ボールねじ10においては、ボール3が転動路を転がることによる振動や、ボール3が循環経路の負荷エリアや無負荷エリアを出入りすることによる振動などが発生する。そして、ボールねじ10では、ボールが負荷エリアから無負荷エリアに移行する位置、及びボールが無負荷エリアから負荷エリアに移行する位置が、ナット2が移動する方向によって反転する。つまり、往路と復路とで加振位置が異なる。そのため、往路と復路とでは同一の振動データは測定されない。したがって、定期的に振動データを収集する場合には、ナット2の移動方向が常に同じ方向となる条件で振動データを収集するようにする。
【0063】
なお、データの安定性を考慮した場合、暖機状態でのデータ収集が望ましい。また、異常の発生を適切に把握するためにも、データ収集間隔は稼働日で1日1回以上となる間隔が望ましい。
また、
図5では、ナット2の移動方向を示す矢印を右方向としているが、データ収集期間にナット2が移動する方向はどちらであってもよい。
【0064】
解析部25は、記憶部24に記憶された振動データを解析し、ボールねじ10の状態を監視する。
出力部26は、解析部25により診断されたボールねじ10の状態を、
図5に示す表示部20dに出力し、ユーザに診断結果を提示する。
【0065】
解析部25は、例えば、収集された振動データをもとに特徴値を計算し、計算された特徴値を基準値と比較することでボールねじ10の状態(異常発生の有無など)を診断する。ここで、特徴値は、RMS値、オーバーオール値(OA値)、パーシャルオーバーオール値(POA値)、クレストファクタ(CF)、クルトシスの少なくとも1つを含むことができる。なお、特徴値は上記に限定されるものではなく、適宜選定することができる。また、基準値としては、予め特徴値の閾値を基準値として設けておけば、特徴値と閾値との比較により、容易かつ適切に異常を検知することができる。
【0066】
解析部25は、振動データの解析に際し、振動データを、加工区間部分と加工区間外の部分とに分割し、それぞれの振動データの解析結果(例えば、上記の特徴値)を比較するようにしてもよい。
例えば
図6に示すように、解析部25は、比較診断部25aと、異常箇所特定部25bと、判定部25cと、を有していてもよい。この場合、比較診断部25aは、分割した振動データの解析結果を比較し、判定部25cは、比較診断部25aによる比較結果をもとにボールねじ10の状態を判定してもよい。
加工区間の振動データから計算された特徴値と、加工区間外の振動データから計算された特徴値とを比較することで、加工区間の劣化や損傷状態を把握することができる。
一般に、ボールねじ10においては、負荷がかかる加工区間にて異常が発生しやすい。そのため、加工区間においてのみ異常が発生し、加工区間外では異常は発生しない(すなわち正常値である)と予め定めておけば、加工区間の特徴値と加工区間外の特徴値(正常値)とを比較するだけで、特徴値の時系列データがなくとも簡易的に状態を確認することができる。例えば、タクトタイムを可能な限り短くするためにデータ収集期間に適した運転パターンが極端に少ないような設備でも、状態監視が可能である。つまり、
図6に示す比較診断部25aは、加工区間と加工区間外の特徴値を比較してもよい。
【0067】
さらに、解析部25は、全領域の振動データを複数の小区間のデータに分割し、分割した振動データの解析結果(例えば特徴値)を比較するようにしてもよい。これにより、状態が変化する位置を特定することができる。例えば、ねじ軸1の転走面の一ヶ所に傷がある場合、そこをナット2が通ったときの特徴値だけ変動する。
図7は、ねじ軸1の転走面の一ヶ所に傷がある場合の特徴値の一例である。
図7の各ポイント(点)は、分割した各小区間の振動データから計算した特徴値である。このように、ねじ軸1の転走面の一ヶ所に傷がある場合、特徴値が大きく変動する箇所(ピーク)が確認できる。したがって、特徴値が変動する箇所を特定することで、ねじ軸1の傷が発生している位置(異常発生箇所)を特定することができる。
図6に示す異常箇所特定部25bは、上記のように全領域の振動データを複数のデータに分割し、分割したデータの解析結果に基づいてボールねじ10の異常発生箇所を特定するようにしてもよい。
【0068】
往路と復路で転動体の衝突により加振される位置が代わるため、その違いを考慮することが望ましい。そのため、インラインでデータを収集する場合は往路なら往路だけの、復路なら復路だけの、一方のデータを収集することが望ましい。
【0069】
なお、解析部25は、加工区間と加工区間外とに分けた振動データからそれぞれ計算された特徴値を時系列に並べ、傾向の変化を監視することにより、ボールねじ10の状態を診断するようにしてもよい。この場合、ボールねじ10の状態をより高精度に診断することができる。
また、解析部25は、振動データを加工区間と加工区間外とに分けずに計算した特徴値を時系列に並べ、傾向の変化を監視するようにしてもよい。この場合、加工区間と加工区間外との比較による簡易診断はできないが、計算は簡略化することができ、解析に必要なメモリを低減することができる。
【0070】
本実施形態においては、状態監視装置20Aが
図6に示す各部を備える場合について説明したが、例えば記憶部24、解析部25および出力部26の少なくとも一部は、状態監視装置20Aとは異なる装置が備えていてもよい。この場合、状態監視装置20Aは、データ収集部23において収集したデータを状態監視装置20Aとは異なる装置へ送信し、状態監視装置20Aとは異なる装置がデータを解析してボールねじ10の状態を診断してもよい。
【0071】
以上説明したように、本実施形態における状態監視装置20Aは、ボールねじ10の運転サイクルや運転パターン内で、無負荷状態で一方向に、ねじ軸1とナット2とが定速で相対移動している期間をデータ収集期間として取得し、当該データ収集期間の振動データを、ボールねじ10の状態を監視するためのデータとして収集する。
このように、状態監視装置20Aは、加工時ではなく、無負荷時における振動データを収集する。したがって、加工時に発生する外乱の影響を最小限にした振動データを収集することができる。また、ボールねじ10の運転サイクルや運転パターン内でデータ収集を行うので、データ収集のための診断モードを介入させる必要がない。そのため、生産性の低下を防止することができる。また、データの収集範囲は、往復ではなく、ナット2が一方向に移動している範囲とするので、測定時間を短縮することができる。さらに、ナット2が定速で移動している期間のデータを収集するので、安定したデータ測定を行うことができる。
【0072】
さらに、データ収集期間にナット2が移動する移動区間には、加工を行う場合にボールねじ10のナット2が移動する区間を含めることができる。これにより、収集された振動データ中に、異常が発生しやすい箇所を移動した際の信号を含めることができる。したがって、例えば加工区間の振動データから計算された特徴値と、加工区間外の振動データから計算された特徴値とを比較することで、加工区間の劣化や損傷状態を把握することができる。このように、異常検知を適切に行うことができる。
【0073】
ここで、データ収集期間におけるナット2の移動区間や移動距離は、ボールねじ10の運転サイクルやボールねじ10の種類など、予め定められたパラメータ(加工区間A等)をもとに設定可能である。
例えば特許文献1に記載の技術のように、データ収集時間をボールの通過周期以上に設定する場合には、ボールの通過周期を把握するためのシステムが必要となる。これに対して、本実施形態では、データ収集期間の設定に必要なパラメータを把握するための複雑なシステムを別途構築する必要はない。
【0074】
また、本実施形態では、定期的に同じ条件で振動データ収集を行うことで、収集した振動データを時系列に並べ、その傾向を監視することができる。したがって、異常等の発生により状態が変化した場合には、これを適切に検知することができる。このとき、毎回ナット2が同じ方向に移動するときの振動データを収集するので、診断精度を向上させることができる。
例えば特許文献2に記載の技術のように、加速度信号からトリガーを構築する場合、必ずしも毎回同じ条件のデータが収集できるわけではない。本実施形態では、ナット2が予め定められた区間を一方向に定速で移動する期間を狙ってデータを収集するので、毎回同じ条件のデータを収集することができる。
【0075】
以上のように、本実施形態では、生産中における無負荷時の測定値を用いるので、タクトタイムが短く24時間稼働しているような設備でも、生産を停めることなく一連の運転サイクル中にデータを収集することができる。その結果、生産上のタクトタイムに影響を及ぼさず、インラインでボールねじ10の状態を監視することができ、計画的な予防保全を行うことができる。
【0076】
(変形例)
なお、上記各実施形態においては、振動センサ14をボールねじ10のナット2に固定する場合について説明したが、振動センサ14を固定する位置は上記に限定されない。設備の構造により、ボールねじ10のナット2に振動センサ14を固定することができない場合には、可能な限りナット2の近傍で、ナット2とともにねじ軸1に対して相対移動可能な移動部材に振動センサ14を固定するようにしてもよい。このような移動部材としては、例えば、
図1に示すテーブル12やブラケット13がある。振動センサ14が検出する振動は、軸方向の振動であっても円周方向の振動であってもよいが、軸方向の振動の方が望ましい。
【0077】
また、上記各実施形態においては、ボールねじ10に関する物理量として、ナット2の振動を検出する場合について説明したが、当該物理量は、サーボモータ11のトルクや電流であってもよい。この場合、振動データを検出する場合と比較して、ボールねじ10に関する物理量を検出するセンサを設置するための配線が容易となる。ただし、振動データが監視対象の物理情報を直接測定しているのに対し、トルク情報や電流データには、軸受や案内機構などの他の要素の情報が多分に含まれるため、振動データを検出する場合と比較して診断精度はやや落ちる傾向にある。
また、収集された振動データをもとに特徴値を計算し、特徴値と基準値とを比較して判定したが、特徴値を計算するのではなく、振動データの波形を直接基準値波形と比較し、判定してもよい。
【0078】
さらに、上記各実施形態においては、工作機械等の加工装置がボールねじ10を備える場合について説明したが、ボールねじ10を備える設備は、搬送装置や射出成型機、その他の生産設備であってもよい。この場合にも、上記実施形態と同様に、ボールねじ10の状態をより精度良く診断するためのデータを適切に収集することができる。
【0079】
なお、本発明は、上述した実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワークまたは記憶媒体を介して、システムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出し実行することによっても実現可能である。この場合、記録媒体から読み出されたプログラム自体が実施形態の機能を実現することになる。また、当該プログラムを記録した記録媒体は本発明を構成することができる。
また、コンピュータが読み出したプログラムを実行することにより、実施形態の機能が実現されるだけでなく、プログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上記した実施形態の機能が実現されてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1…ねじ軸、1a…螺旋溝、2…ナット、2a…螺旋溝、2b…ボール戻し路、3…ボール、4…コマ部材、4a…方向転換路、10…ボールねじ、11…サーボモータ、12…テーブル、13…ブラケット、14…振動センサ、20…状態監視装置、21…信号取得部、22…駆動制御部、23…データ収集部、24…記憶部、25…解析部、26…出力部、30…工具、A…加工区間、W…ワーク
【手続補正書】
【提出日】2022-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ軸と、ナットと、複数のボールと、を有するボールねじの状態を監視するボールねじの状態監視装置であって、
無負荷状態で1往復以上、前記ねじ軸と前記ナットとを定速で相対移動させるように駆動部を制御する駆動制御部と、
前記駆動制御部により前記駆動部を制御している間の前記ボールねじに関する物理量を、データとして収集するデータ収集部と、
前記データ収集部によって収集されたデータのうち、往路のデータを前記ボールねじの状態を診断用データとして使用し、復路のデータを測定誤差確認用データとして使用して、前記ボールねじの状態を診断する診断部と、
を備えることを特徴とするボールねじの状態監視装置。
【請求項2】
前記駆動制御部は、
前記ナットを移動させる移動区間に、前記ボールねじを備える設備の稼働中に負荷状態で前記ナットが移動する区間を含めることを特徴とする請求項1に記載のボールねじの状態監視装置。
【請求項3】
前記駆動制御部は、
定期的に同じ条件で前記駆動部を制御するための駆動条件を記憶する駆動条件記憶部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のボールねじの状態監視装置。
【請求項4】
前記診断部は、
前記データ収集部によって収集されたデータを複数のデータに分割し、分割したデータの解析結果に基づいて前記ボールねじの異常発生箇所を特定する異常箇所特定部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のボールねじの状態監視装置。
【請求項5】
前記複数のデータは、前記ボールねじのワーク加工区間に対応するデータと、前記ワーク加工区間外のデータとを含み、
前記異常箇所特定部は、前記ボールねじのワーク加工区間に対応するデータと、前記ワーク加工区間外のデータとを比較することにより、前記ボールねじの異常発生箇所を特定することを特徴とする請求項4に記載のボールねじの状態監視装置。
【請求項6】
前記物理量は、前記ナットの軸方向の振動であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のボールねじの状態監視装置。
【請求項7】
前記振動のデータを検出する振動センサをさらに備え、
前記振動センサは、前記ナットまたは前記ナットに連結され当該ナットとともに前記ねじ軸に対して相対移動可能な移動部材に固定されていることを特徴とする請求項6に記載のボールねじの状態監視装置。
【請求項8】
前記駆動部は、前記ボールねじを駆動するサーボモータであり、
前記物理量は、前記サーボモータのトルクおよび電流の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のボールねじの状態監視装置。
【請求項9】
ねじ軸と、ナットと、複数のボールと、を有するボールねじの状態を監視するボールねじの状態監視方法であって、
無負荷状態で1往復以上、前記ねじ軸と前記ナットとを定速で相対移動させるように駆動部を制御するステップと、
前記駆動部を制御している間の前記ボールねじに関する物理量を、データとして収集するステップと、
収集された前記データのうち、往路のデータを前記ボールねじの状態を診断用データとして使用し、復路のデータを測定誤差確認用データとして使用して、前記ボールねじの状態を診断するステップと、
を有することを特徴とするボールねじの状態監視方法。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1から8のいずれか1項に記載のボールねじの状態監視装置の各部として機能させるためのプログラム。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
ねじ軸と、ナットと、複数のボールと、を有するボールねじの状態を監視するボールねじの状態監視装置であって、
無負荷状態で1往復以上、前記ねじ軸と前記ナットとを定速で相対移動させるように駆動部を制御する駆動制御部と、
前記駆動制御部により前記駆動部を制御している間の前記ボールねじに関する物理量を、データとして収集するデータ収集部と、
前記データ収集部によって収集されたデータのうち、往路のデータと復路のデータを比較して、いずれか一方においてのみ特徴値のピークが存在するか否かに応じて、前記ボールねじの状態を診断する診断部と、
を備えることを特徴とするボールねじの状態監視装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項9
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項9】
ねじ軸と、ナットと、複数のボールと、を有するボールねじの状態を監視するボールねじの状態監視方法であって、
無負荷状態で1往復以上、前記ねじ軸と前記ナットとを定速で相対移動させるように駆動部を制御するステップと、
前記駆動部を制御している間の前記ボールねじに関する物理量を、データとして収集するステップと、
収集された前記データのうち、往路のデータと復路のデータを比較して、いずれか一方においてのみ特徴値のピークが存在するか否かに応じて、前記ボールねじの状態を診断するステップと、
を有することを特徴とするボールねじの状態監視方法。