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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162962
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20221018BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20221018BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20221018BHJP
   B60C 11/01 20060101ALI20221018BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
B60C11/12 B
B60C11/03 100B
B60C11/03 B
B60C5/00 H
B60C11/12 C
B60C11/01 A
B60C11/12 A
B60C11/13 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202824
(22)【出願日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2021067846
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】大澤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】池田 亮太
(72)【発明者】
【氏名】藤本 拓也
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC12
3D131BC13
3D131BC19
3D131CB06
3D131EB05U
3D131EB11V
3D131EB11W
3D131EB11X
3D131EB31W
3D131EB31X
3D131EB31Y
3D131EB33W
3D131EB38X
3D131EB43W
3D131EB47W
3D131EB48W
3D131EB58W
3D131EB60W
3D131EB81X
3D131EB82W
3D131EB87V
3D131EB87X
3D131EB89W
3D131EB95X
3D131EB99X
3D131EC02V
3D131EC12W
3D131EC12X
(57)【要約】
【課題】トレッド部が5つの陸部で構成されたタイヤを前提として、ウェット性能を維持しつつ、操縦安定性及び制動性能を向上させる。
【解決手段】トレッド部2の陸部4は、外側ショルダー陸部12と、外側ミドル陸部13とを含む。外側ショルダー陸部12に設けられた複数の外側ショルダー横溝30のそれぞれは、外側ショルダー周方向溝7から外側トレッド端Toを超えた位置まで延びている。
複数の外側ショルダーサイプ31のそれぞれは、外側ショルダー周方向溝7に連通している。複数の外側ショルダーサイプ31のそれぞれは、両側のサイプエッジの全体が面取り部で形成されている。外側ミドル陸部13には、複数の外側ミドル溝状部20が設けられている。外側ショルダーサイプ31の内端と、外側ミドル溝状部29の外端とのタイヤ周方向の位置ずれ量は、複数の外側ショルダーサイプ31の1ピッチ長さの5%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、車両装着時に車両外側となる外側トレッド端と、車両装着時に車両内側となる内側トレッド端と、前記外側トレッド端と前記内側トレッド端との間でタイヤ周方向に連続して延びる4本の周方向溝と、前記4本の周方向溝に区分された5つの陸部とを含み、
前記4本の周方向溝は、前記周方向溝のうちで最も前記外側トレッド端側に配された外側ショルダー周方向溝を含み、
前記5つの陸部は、前記外側トレッド端を含む外側ショルダー陸部と、前記外側ショルダー周方向溝を介して前記外側ショルダー陸部に隣接する外側ミドル陸部とを含み、
前記外側ショルダー陸部には、複数の外側ショルダー横溝と複数の外側ショルダーサイプとが設けられ、
前記複数の外側ショルダー横溝のそれぞれは、前記外側ショルダー周方向溝から前記外側トレッド端を超えた位置まで延びており、
前記複数の外側ショルダーサイプのそれぞれは、前記外側ショルダー周方向溝に連通しており、
前記複数の外側ショルダーサイプのそれぞれは、少なくとも前記外側ショルダー周方向溝から前記外側トレッド端までの範囲において、両側のサイプエッジの全体が面取り部で形成されており、
前記外側ミドル陸部には、前記外側ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数の外側ミドル溝状部が設けられており、
前記外側ショルダーサイプの前記外側ショルダー周方向溝側の内端と、前記外側ミドル溝状部の前記外側ショルダー周方向溝側の外端とのタイヤ周方向の位置ずれ量は、前記複数の外側ショルダーサイプのタイヤ周方向の1ピッチ長さの5%以下である、
タイヤ。
【請求項2】
前記外側ミドル溝状部は、タイヤ半径方向に沿って延びる2つの壁面を含み、
前記外側ミドル溝状部は、その横断面において前記2つの壁面間の最大の距離が1.5mm以下となる外側ミドルサイプを含む、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記外側ミドル溝状部は、タイヤ半径方向に沿って延びる2つの壁面を含み、
前記外側ミドル溝状部は、その横断面において前記2つの壁面間の最大の距離が1.5mmを超える外側ミドル横溝を含む、請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記外側ミドル横溝は、タイヤ周方向の一方側に凸で湾曲する部分と、タイヤ周方向の他方側に凸で湾曲する部分とを含むS字状である、請求項4に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記外側ミドル溝状部は、浅底部と、前記浅底部よりも深さが大きい深底部とを含む、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記深底部は、前記外側ミドル陸部のタイヤ軸方向の中心位置よりも前記外側トレッド端側に配された第1深底部と、前記中心位置よりも前記内側トレッド端側に配された第2深底部とを含み、
前記浅底部は、前記第1深底部と前記第2深底部との間に設けられている、請求項5に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第2深底部のタイヤ軸方向の長さは、前記第1深底部のタイヤ軸方向の長さよりも大きい、請求項6に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第2深底部のタイヤ軸方向の最大の深さは、前記第1深底部のタイヤ軸方向の最大の深さよりも大きい、請求項6又は7に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記陸部は、前記周方向溝を介して前記外側ミドル陸部の前記内側トレッド端側に隣接するクラウン陸部を含み、
前記クラウン陸部には、タイヤ軸方向に対して傾斜した複数のクラウンサイプが設けられている、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記外側ショルダー横溝は、溝のエッジが面取り部で構成されている、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記外側ショルダーサイプは、前記外側トレッド端に達することなく前記外側ショルダー陸部内で途切れており、
前記外側ショルダーサイプは、前記外側ショルダー周方向溝側の端部を含む深底部と、前記深底部よりも小さい深さを有する浅底部とを含む、請求項1ないし10のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トレッド部がタイヤ軸方向に5つの陸部で構成されたタイヤ(以下、「5リブタイヤ」という場合がある。)が種々提案されている。また、下記特許文献1の空気入りタイヤは、5リブタイヤであって、クラウンリブ、ミドルリブ及びショルダーリブの各溝容積比を互いに関連付けて規制し、コーナリングパワーを高め、操縦安定性能の向上を期待している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-017001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、タイヤには、優れた操縦安定性及び制動性能が要求されており、とりわけ欧州においてこの傾向が顕著である。操縦安定性及び制動性能の向上には、トレッド部の溝の容積を低減することが有効であると考えられている。しかしながら、このような手法は、ウェット性能の悪化を伴う。
【0005】
本開示は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、トレッド部が5つの陸部で構成されたタイヤを前提として、ウェット性能を維持しつつ、操縦安定性及び制動性能を向上させることを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、車両装着時に車両外側となる外側トレッド端と、車両装着時に車両内側となる内側トレッド端と、前記外側トレッド端と前記内側トレッド端との間でタイヤ周方向に連続して延びる4本の周方向溝と、前記4本の周方向溝に区分された5つの陸部とを含み、前記4本の周方向溝は、前記周方向溝のうちで最も前記外側トレッド端側に配された外側ショルダー周方向溝を含み、前記5つの陸部は、前記外側トレッド端を含む外側ショルダー陸部と、前記外側ショルダー周方向溝を介して前記外側ショルダー陸部に隣接する外側ミドル陸部とを含み、前記外側ショルダー陸部には、複数の外側ショルダー横溝と複数の外側ショルダーサイプとが設けられ、前記複数の外側ショルダー横溝のそれぞれは、前記外側ショルダー周方向溝から前記外側トレッド端を超えた位置まで延びており、前記複数の外側ショルダーサイプのそれぞれは、前記外側ショルダー周方向溝に連通しており、前記複数の外側ショルダーサイプのそれぞれは、少なくとも前記外側ショルダー周方向溝から前記外側トレッド端までの範囲において、両側のサイプエッジの全体が面取り部で形成されており、前記外側ミドル陸部には、前記外側ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数の外側ミドル溝状部が設けられており、前記外側ショルダーサイプの前記外側ショルダー周方向溝側の内端と、前記外側ミドル溝状部の前記外側ショルダー周方向溝側の外端とのタイヤ周方向の位置ずれ量は、前記複数の外側ショルダーサイプのタイヤ周方向の1ピッチ長さの5%以下である、タイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本開示のタイヤは、上記の構成を採用したことによって、ウェット性能を維持しつつ、操縦安定性及び制動性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態を示すトレッド部の展開図である。
図2図1の外側ショルダー陸部、外側ミドル陸部及びクラウン陸部の拡大図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4】外側ショルダーサイプ及び外側ミドル横溝の拡大図である。
図5図2のB-B線断面図である。
図6図1の内側ミドル陸部及び内側ショルダー陸部の拡大図である。
図7】トレッド部の接地時の接地面形状を示す拡大図である。
図8】他の実施形態の外側ミドル横溝の拡大図である。
図9図8の外側ミドル横溝の内部を示す拡大斜視図である。
図10図8のC-C線断面図である。
図11図8のD-D線断面図である。
図12図8のE-E線断面図である。
図13】本開示の他の実施形態のトレッド部の展開図である。
図14図13の外側ショルダー陸部及び外側ミドル陸部の拡大図である。
図15図14のF-F線断面図である。
図16図14のG-G線断面図である。
図17】比較例の外側ショルダー陸部及び外側ミドル陸部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の一形態が図面に基づき説明される。図1は、本開示の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に使用される。但し、本開示は、このような態様に限定されるものではなく、重荷重用の空気入りタイヤや、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤに適用されても良い。
【0010】
図1に示されるように、本開示のタイヤ1は、車両への装着の向きが指定されたトレッド部2を有する。トレッド部2は、タイヤ1の車両装着時に車両外側となる外側トレッド端Toと、車両装着時に車両内側となる内側トレッド端Tiとを有する。車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部(図示省略)に、文字又は記号で表示される。
【0011】
外側トレッド端To及び内側トレッド端Tiは、それぞれ、正規状態のタイヤ1に正規荷重の50%が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置に相当する。
【0012】
「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって車両に未装着かつ無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0013】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0014】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0015】
「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。また、各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、「正規荷重」は、タイヤの標準装着状態において、1つのタイヤに作用する荷重を指す。前記「標準装着状態」とは、タイヤの使用目的に応じた標準的な車両にタイヤが装着され、かつ、前記車両が走行可能な状態で平坦な路面上に静止している状態を指す。
【0016】
トレッド部2は、外側トレッド端Toと内側トレッド端Tiとの間でタイヤ周方向に連続して延びる4本の周方向溝3と、4本の周方向溝3に区分された5つの陸部4とを含む。
【0017】
周方向溝3は、4本の周方向溝3のうちで最も外側トレッド端To側に配された外側ショルダー周方向溝7を含む。また、周方向溝3は、外側クラウン周方向溝8、内側クラウン周方向溝6及び内側ショルダー周方向溝5を含む。内側ショルダー周方向溝5は、4本の周方向溝3のうちで最も内側トレッド端Ti側に配されている。外側クラウン周方向溝8は、外側ショルダー周方向溝7とタイヤ赤道Cとの間に配されている。内側クラウン周方向溝6は、タイヤ赤道Cと内側ショルダー周方向溝5との間に設けられている。
【0018】
タイヤ赤道Cから外側ショルダー周方向溝7又は内側ショルダー周方向溝5の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L1は、例えば、トレッド幅TWの25%~35%であるのが望ましい。タイヤ赤道Cから外側クラウン周方向溝8又は内側クラウン周方向溝6の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L2は、例えば、トレッド幅TWの5%~15%であるのが望ましい。なお、トレッド幅TWは、前記正規状態における外側トレッド端Toから内側トレッド端Tiまでのタイヤ軸方向の距離である。
【0019】
本実施形態の各周方向溝3は、例えば、タイヤ周方向に平行に直線状に延びている。各周方向溝3は、例えば、波状に延びるものでも良い。
【0020】
本実施形態の周方向溝3は、3.0mm以上の溝幅を有している。各周方向溝3の溝幅W1は、例えば、トレッド幅TWの2.0%~8.0%であるのが望ましい。本実施形態では、外側ショルダー周方向溝7が、4本の周方向溝3のうち最も小さい溝幅を有している。但し、本開示は、このような態様に限定されるものではない。各周方向溝3の深さは、乗用車用の空気入りタイヤの場合、例えば、5~10mmである。
【0021】
5つの陸部4は、外側ショルダー陸部12及び外側ミドル陸部13を含む。外側ショルダー陸部12は、外側ショルダー周方向溝7のタイヤ軸方向外側に配されており、外側トレッド端Toを含んでいる。外側ミドル陸部13は、外側ショルダー周方向溝7と外側クラウン周方向溝8との間に区分されている。すなわち、外側ミドル陸部13は、外側ショルダー周方向溝7を介して外側ショルダー陸部12に隣接している。
【0022】
本実施形態の5つの陸部4は、クラウン陸部14、内側ミドル陸部15及び内側ショルダー陸部11を含む。クラウン陸部14は、外側クラウン周方向溝8と内側クラウン周方向溝6との間に区分されている。すなわち、クラウン陸部14は、外側クラウン周方向溝8を介して外側ミドル陸部13の内側トレッド端Ti側に隣接している。内側ミドル陸部15は、内側クラウン周方向溝6と内側ショルダー周方向溝5との間に区分されている。内側ショルダー周方向溝5は、内側トレッド端Tiを含んでおり、内側ショルダー周方向溝5のタイヤ軸方向外側に区分されている。
【0023】
図2には、外側ショルダー陸部12、外側ミドル陸部13及びクラウン陸部14の拡大図が示されている。図2に示されるように、外側ショルダー陸部12には、複数の外側ショルダー横溝30と複数の外側ショルダーサイプ31とが設けられている。複数の外側ショルダー横溝30のそれぞれは、外側ショルダー周方向溝7から外側トレッド端Toを超えた位置まで延びている。また、複数の外側ショルダーサイプ31のそれぞれは、外側ショルダー周方向溝7に連通しており、本実施形態では、外側ショルダー周方向溝7から外側トレッド端Toを超えた位置まで延びている。
【0024】
図3には、図2のA-A線断面図が示されている。図3に示されるように、本明細書において、「サイプ」とは、小さな幅を有する切れ込み要素であって、略平行に向き合う2つの壁面41を含む本体部40において、前記2つの壁面41の間の幅が1.5mm以下のものを指す。サイプの前記幅は、望ましくは0.5~1.5mmである。サイプは、トレッド部2の外面における開口部から底部まで一定の幅で延びるものでも良く、トレッド部2の外面に現れる両側のサイプエッジの一方又は両方が面取り部42で形成されても良い。面取り部42は、トレッド部2の外面と前記壁面41とに連なる傾斜面43を含んで構成される。なお、面取り部が形成された場合のサイプの開口幅は、1.5mmを超えても良い。また、サイプの底部には、幅が1.5mmを超えるフラスコ底が連なっても良い。
【0025】
図2及び図3に示されるように、複数の外側ショルダーサイプ31のそれぞれは、少なくとも外側ショルダー周方向溝7から外側トレッド端Toまでの範囲において、両側のサイプエッジの全体が面取り部42で形成されている。
【0026】
図2に示されるように、外側ミドル陸部13には、外側ミドル陸部13をタイヤ軸方向に完全に横断する複数の外側ミドル溝状部29が設けられている。本明細書において、「溝状部」とは、上述のサイプを含み、かつ、サイプよりも大きい幅の溝も含む切れ込み要素を意味する。本実施形態の外側ミドル溝状部29は、タイヤ半径方向に沿って延びる2つの壁面を含み、2つの壁面間の最大の距離が1.5mmを超える外側ミドル横溝24として構成されている。但し、本開示はこのような態様に限定されるものではなく、後述されるように、外側ミドル溝状部29は、2つの壁面間の最大の距離が1.5mm以下の外側ミドルサイプとして構成されても良い。前記2つの壁面は、例えば、タイヤ半径方向に対して10°以下とされ、面取り部の傾斜面とは区別される。また、前記2つの壁面の間の角度は、例えば、15°以下とされる。
【0027】
図4には、外側ショルダーサイプ31及び外側ミドル溝状部29の拡大図が示されている。図4に示されるように、外側ショルダーサイプ31の外側ショルダー周方向溝7側の内端31iと、外側ミドル溝状部29の外側ショルダー周方向溝7側の外端29oとのタイヤ周方向の位置ずれ量L3は、複数の外側ショルダーサイプ31のタイヤ周方向の1ピッチ長さP1(図2に示され、以下、同様である。)の5%以下である。本開示のタイヤは、上記の構成を採用したことによって、ウェット性能を維持しつつ、操縦安定性及び制動性能を向上させることができる。その理由として、以下のメカニズムが推察される。
【0028】
本開示のタイヤ1は、外側ショルダー横溝30及び外側ミドル溝状部29が十分な排水性能を発揮し、ウェット性能を維持することができる。一方、両側のサイプエッジの全体が面取り部42で形成された外側ショルダーサイプ31は、外側ショルダー陸部12に作用する接地圧が大きくなる旋回時や制動時において、外側ショルダー陸部12の接地面に歪が生じるのを抑制し、操縦安定性及び制動性能を向上させることができる。
【0029】
また、本開示では、前記位置ずれ量L3が、前記1ピッチ長さP1の5%以下と小さく規定されているため、外側ショルダーサイプ31及び外側ミドル溝状部29が接地するときにおいて、外側ショルダーサイプ31の面取り部42が接地し易くなる。また、上述の構成により、外側ショルダー横溝30と外側ミドル溝状部29とがタイヤ周方向に位置ずれするため、外側ショルダー陸部12及び外側ミドル陸部13に含まれる各ブロックがつながり良く摩擦力を発揮できる。本開示では、以上のようなメカニズムにより、ウェット性能を維持しつつ、操縦安定性及び制動性能を向上させることができると推察される。
【0030】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本開示は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本開示のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0031】
図2に示されるように、本実施形態では、外側ショルダー横溝30と外側ショルダーサイプ31とがタイヤ周方向に交互に設けられている。このため、複数の外側ショルダー横溝30のタイヤ周方向の1ピッチ長さP2は、外側ショルダーサイプ31のタイヤ周方向の1ピッチ長さP1と同じである。
【0032】
外側ショルダー横溝30及び外側ショルダーサイプ31は、例えば、タイヤ軸方向に対して10°以下の角度で配されており、望ましい態様ではこれらが平行に配されている。このような外側ショルダー横溝30及び外側ショルダーサイプ31は、制動性能を高めるのに役立つ。
【0033】
外側ショルダー横溝30は、例えば、外側トレッド端To側に向かって溝幅が連続して小さくなっている。これにより、外側ショルダー横溝30で区分されるブロックについて、外側トレッド端Toに近い部分のタイヤ周方向の長さが大きくなり、操縦安定性が向上する。
【0034】
図5には、図2のB-B線断面図が示されている。図5に示されるように、外側ショルダー横溝30は、例えば、溝のエッジが面取り部32で構成されているのが望ましい。面取り部32は、例えば、タイヤ半径方向に対して30~60°で傾斜した傾斜面33を含む。これにより、制動性能がより一層向上する。
【0035】
図2に示されるように、外側ショルダー横溝30の面取り部32は、トレッド平面視における幅が外側トレッド端To側に向かって連続して小さくなっているのが望ましい。これにより、外側ショルダー陸部12の接地圧が均一化し、制動性能がさらに向上する。
【0036】
本開示では、上述の構成により、外側ショルダー横溝30と外側ミドル溝状部29とが位置ずれしている。これにより、上述の効果に加え、各横溝のポンピング音が抑制され、ノイズ性能が向上し得る。このような効果をより一層高めるために、外側ショルダー横溝30の外側ショルダー周方向溝7側の内端と、外側ミドル溝状部29の外端とのタイヤ周方向の位置ずれ量L4は、複数の外側ショルダー横溝30のタイヤ周方向の1ピッチ長さP2の30%~50%であるのが望ましい。
【0037】
図3に示されるように、外側ショルダーサイプ31の深さd1は、例えば、3.0~5.0mmである。外側ショルダーサイプ31の面取り部42は、例えば、サイプ深さ方向に対して30~60°の角度θ1で傾斜した傾斜面18aを含む。面取り部42の深さd2は、例えば、0.5~2.0mmである。トレッド平面視における面取り部42の幅W2は、例えば、2.0~4.0mmである。このような面取り部18は、制動性能を確実に向上させるのに役立つ。
【0038】
外側ショルダーサイプ31の面取り部42は、一定の幅でタイヤ軸方向に延びている。これにより、上述の外側ショルダー横溝30の面取り部32と協働して、様々な状況で操縦安定性及び制動性能を向上させることができる。
【0039】
図4に示されるように、外側ショルダーサイプ31の内端31iと、外側ミドル溝状部29の外端290oとの位置ずれ量L3は、前記1ピッチ長さP1の3%以下が望ましく、より望ましくは1.0%以下である。さらに望ましい態様では、外側ショルダーサイプ31をその長さ方向に延長した仮想領域が、外側ミドル溝状部29の外側トレッド端To側の端部と重複する。これにより、上述の効果がさらに確実に発揮される。
【0040】
図2に示されるように、外側ミドル溝状部29は、外側ショルダーサイプ31と同じピッチで配されている。これにより、複数の外側ミドル溝状部29のそれぞれが、外側ショルダーサイプ31に対し上述の関係となるように配されている。
【0041】
外側ミドル溝状部29は、例えば、タイヤ軸方向に対して第1方向(本明細書の各図では右上がりである。)に傾斜している。外側ミドル溝状部29のタイヤ軸方向に対する角度は、外側ショルダー横溝30又は外側ショルダーサイプ31のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きい。また、外側ミドル溝状部29のタイヤ軸方向に対する最大の角度θ2は、例えば、35~55°である。このような外側ミドル溝状部29は、ウェット走行時、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向にバランス良く摩擦力を提供できる。
【0042】
上述の通り、本実施形態では、外側ミドル溝状部29が外側ミドル横溝24として構成されている。外側ミドル横溝24は、例えば、タイヤ周方向の一方側に凸で湾曲する部分24aと、タイヤ周方向の他方側に凸で湾曲する部分24bとを含むS字状である。より具体的には、外側ミドル横溝24のタイヤ軸方向の両端部におけるタイヤ軸方向に対する角度が、外側ミドル横溝24のタイヤ軸方向の中央部におけるタイヤ軸方向に対する角度よりも小さくなるように、外側ミドル横溝24がS字状に湾曲している。外側ミドル横溝24の両端部におけるタイヤ軸方向に対する角度θ3は、例えば、7~22°である。このような外側ミドル横溝24は、前記両端部付近の偏摩耗を抑制しつつ、操縦安定性及びノイズ性能を向上させることができる。但し、本開示では、外側ミドル横溝24が上述のS字状に限定されるものではなく、外側ミドル横溝24が直線状に延びるものであっても、本開示の上述の作用効果は発揮される。
【0043】
本実施形態の外側ミドル横溝24は、例えば、外側ミドル横溝24のタイヤ軸方向に対する最大の角度を構成して直線状に延びる中央直線部35を含んでいる。中央直線部35のタイヤ軸方向の長さは、例えば、外側ミドル陸部13の接地面のタイヤ軸方向の幅Womの48%~64%である。
【0044】
本実施形態の外側ミドル溝状部29は、例えば、一定の深さで延びている。但し、外側ミドル溝状部29は、このような態様に限定されるものではない。本明細書では、他の実施形態として、深さが溝の長さ方向に変化する外側ミドル溝状部29が後述される。
【0045】
クラウン陸部14のタイヤ軸方向の中心位置は、タイヤ赤道Cよりも外側トレッド端To側に位置している。クラウン陸部14の外側接地面14aのタイヤ軸方向の幅Wcoは、クラウン陸部14の内側接地面14bのタイヤ軸方向の幅Wciよりも大きい。具体的には、前記幅Wcoは、クラウン陸部14の接地面のタイヤ軸方向の幅Wcの51%~55%である。これにより、クラウン陸部14の偏摩耗が抑制されつつ、操縦安定性が向上する。なお、前記外側接地面14aは、クラウン陸部14のタイヤ赤道Cよりも外側トレッド端To側の接地面を意味する。前記内側接地面14bは、クラウン陸部14のタイヤ赤道Cよりも内側トレッド端Ti側の接地面を意味する。
【0046】
クラウン陸部14には、タイヤ軸方向に対して傾斜した複数のクラウンサイプ20が設けられている。本実施形態のクラウンサイプ20は、例えば、タイヤ軸方向に対して前記第1方向とは逆向きの第2方向(本明細書の各図では、右下がりである。)に傾斜している。クラウンサイプ20のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、15~45°である。このようなクラウンサイプ20は、ウェット走行時、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向にバランス良く摩擦力を提供できる。
【0047】
クラウンサイプ20は、例えば、複数の外側クラウンサイプ21及び複数の内側クラウンサイプ22を含む。外側クラウンサイプ21は、外側クラウン周方向溝8から延び、かつ、クラウン陸部14内で途切れている。内側クラウンサイプ22は、内側クラウン周方向溝6から延び、かつ、クラウン陸部14内で途切れている。より望ましい態様では、外側クラウンサイプ21と内側クラウンサイプ22とが平行に配されている。このような外側クラウンサイプ21及び内側クラウンサイプ22は、クラウン陸部14及び内側ミドル陸部15の偏摩耗を抑制するのに役立つ。
【0048】
外側クラウンサイプ21及び内側クラウンサイプ22は、それぞれ、タイヤ赤道C及びクラウン陸部14のタイヤ軸方向の中心位置を横切っていないのが望ましい。クラウンサイプ20のタイヤ軸方向の長さL5は、例えば、クラウン陸部14の接地面の幅Wcの20%~40%である。
【0049】
トレッド平面視において、外側クラウンサイプ21をその長さ方向に平行に延長した領域は、内側クラウンサイプ22と重複するのが望ましい。このような外側クラウンサイプ21及び内側クラウンサイプ22の配置は、各サイプのピッチ音をホワイトノイズ化し、ノイズ性能を高めることができる。
【0050】
外側ミドル溝状部29の外側クラウン周方向溝8側の内端と、外側クラウンサイプ21の外側クラウン周方向溝8側の外端とのタイヤ周方向の距離L6は、外側クラウンサイプ21のタイヤ周方向の1ピッチ長さP3の15%以下であるのが望ましい。これにより、外側クラウンサイプ21の面取り部が接地し易くなり、制動性能が向上する。
【0051】
クラウンサイプ20は、両側のサイプエッジのそれぞれが面取り部23で形成されているのが望ましい。この面取り部23は、外側ショルダーサイプ31の面取り部42(図3に示す)と同様の傾斜面を含む。クラウンサイプ20の面取り部23の幅及び深さは、それぞれ、1.0~3.0mmであるのが望ましい。
【0052】
本実施形態の外側ショルダー陸部12、外側ミドル陸部13及びクラウン陸部14には、上述された溝及びサイプのみが設けられており、これら以外の溝及びサイプは設けられていない。これにより、上述の効果が確実に発揮される。
【0053】
図6には、内側ミドル陸部15及び内側ショルダー陸部11拡大図が示されている。図6に示されるように、内側ミドル陸部15には、複数の内側ミドル横溝19が設けられている。内側ミドル横溝19は、内側ミドル陸部15をタイヤ軸方向に完全に横断している。このような内側ミドル横溝19は、ウェット性能を向上させるのに役立つ。但し、本開示は、このような実施形態に限定されるものではない。
【0054】
内側ミドル横溝19は、例えば、一定の溝幅W3で直線状に延びている。内側ミドル横溝19の前記溝幅W3は、例えば、外側ショルダー横溝30(図2に示す)の最小の溝幅よりも小さいのが望ましい。これにより、内側ミドル陸部15の剛性が向上し、優れた操縦安定性が発揮される。
【0055】
内側ミドル横溝19は、例えば、タイヤ軸方向に対して前記第2方向に傾斜している。内側ミドル横溝19のタイヤ軸方向に対する角度θ4は、例えば、15~45°である。望ましい態様では、内側ミドル横溝19とクラウンサイプ20(図2に示され、以下、同様である。)とが互いに平行に配されている。このような内側ミドル横溝19は、陸部の偏摩耗を抑制するのに役立つ。
【0056】
内側ショルダー陸部11には、複数の内側ショルダー横溝16及び複数の内側ショルダーサイプ17が設けられている。本実施形態では、内側ショルダー横溝16と内側ショルダーサイプ17とがタイヤ周方向に交互に設けられている。
【0057】
内側ショルダー横溝16は、例えば、タイヤ軸方向に対して10°以下の角度で延びている。内側ショルダー横溝16は、内側ショルダー周方向溝5からタイヤ軸方向に距離を隔てた内端16aから前記内側トレッド端Tiを超えた位置まで延びている。内側ショルダー横溝16は、例えば、内側ショルダー陸部11の接地面のタイヤ軸方向の中心位置を横切っている。内側ショルダー横溝16の内端16aと内側ショルダー周方向溝5との間には、サイプや他の溝が何も配されていない。内側ショルダー横溝16のタイヤ軸方向の長さL10は、例えば、内側ショルダー陸部11の接地面の幅Wisの70%~85%である。このような内側ショルダー横溝16は、ウェット性能と操縦安定性とをバランス良く向上させるのに役立つ。
【0058】
内側ショルダー横溝16の溝幅W4は、例えば、内側ミドル横溝19の溝幅W3よりも大きいのが望ましい。内側ショルダー横溝16の溝幅W4は、例えば、内側ミドル横溝19の溝幅の2.0~3.0倍である。このような内側ショルダー横溝16は、ウェット性能を高めるのに役立つ。
【0059】
内側ショルダー横溝16は、例えば、溝のエッジが面取り部で構成されても良い。
【0060】
内側ショルダーサイプ17は、内側ショルダー周方向溝5から内側トレッド端Tiを超えた位置まで延びている。本実施形態では、内側ショルダー横溝16と内側ショルダーサイプ17との角度差が5°以下であり、より望ましい態様ではこれらが平行に配されている。これにより、内側ショルダー陸部11の偏摩耗が抑制される。
【0061】
内側ショルダーサイプ17のそれぞれは、両側のサイプエッジのそれぞれが面取り部18で形成されている。内側ショルダーサイプ17の面取り部18には、上述の外側ショルダーサイプ31の面取り部42の構成を適用することができる。
【0062】
本実施形態の内側ミドル陸部15及び内側ショルダー陸部11には、上述された溝及びサイプのみが設けられており、これら以外の溝及びサイプは設けられていない。これにより、上述の効果が確実に発揮される。
【0063】
図7には、トレッド部2の接地時の接地面形状を示す拡大図が示されている。なお、この接地面形状は、前記正規状態のタイヤ1に、正規荷重の50%を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させた50%荷重負荷状態の接地面の形状である。
【0064】
図7に示されるように、トレッド部2の5つの陸部4は、接地面のタイヤ軸方向の幅について、外側トレッド端To側に位置する陸部4ほど大きく形成されているのが望ましい。このようなタイヤ1は、外側トレッド端Toに近い陸部がより大きな剛性を有する。このため、操舵によって接地面の中心が外側トレッド端To側に移動するときにおいても、操舵の手応えが安定し、舵角の増加に対してリニアにコーナリングフォースが発生する。これにより、優れた操縦安定性及び制動性能が得られる。
【0065】
具体的には、内側ショルダー陸部11の接地面のタイヤ軸方向の幅Wisは、クラウン陸部14の接地面のタイヤ軸方向の幅Wcの90%以上が望ましく、より望ましくは90%~99%である。同様に、内側ミドル陸部15の接地面のタイヤ軸方向の幅Wimは、クラウン陸部14の前記幅Wcの90%~99%であるのが望ましい。
【0066】
外側ミドル陸部13の接地面のタイヤ軸方向の幅Womは、クラウン陸部14の前記幅Wcの101%~107%であるのが望ましい。外側ショルダー陸部12の接地面のタイヤ軸方向の幅Wosは、クラウン陸部14の前記幅Wcの114%~124%であるのが望ましい。このような本実施形態のタイヤ1は、例えば、車両の全輪に装着された場合において、前輪及び後輪がバランス良くコーナリングフォースを発揮し、優れた初期応答性及び操縦安定性が発揮される。
【0067】
以下、本開示の他の実施形態の外側ミドル溝状部29について説明される。この外側ミドル溝状部29は、上述のパターン要素を有するトレッド部2に好適に適用できる。図8には、他の実施形態の外側ミドル溝状部29の拡大図が示されており、図9には、図8の外側ミドル溝状部29の内部を示す拡大斜視図が示されている。図8及び図9に示されるように、この実施形態の外側ミドル溝状部29は、浅底部25と、浅底部25よりも深さが大きい深底部26とを含む。このような外側ミドル溝状部29は、ウェット性能を維持しつつ操縦安定性を高めるのに役立つ。なお、この外側ミドル溝状部29のトレッド平面視の形状については、上述された構成を適用することができる。
【0068】
具体的には、深底部26は、外側ミドル陸部13のタイヤ軸方向の中心位置よりも外側トレッド端To側に配された第1深底部27と、前記中心位置よりも内側トレッド端Ti側に配された第2深底部28とを含む。浅底部25は、第1深底部27と第2深底部28との間に設けられている。このような外側ミドル溝状部29は、上述の効果に加え、ノイズ性能及び乗り心地性能を高めるのに役立つ。
【0069】
図10には、図8のC-C線断面図が示されている。図10に示されるように、浅底部25のタイヤ軸方向の長さL7は、例えば、外側ミドル陸部13の接地面のタイヤ軸方向の幅Wom(図8に示され、以下、同様である。)の20%~90%であり、望ましくは30%~50%である。また、浅底部25の深さd3は、外側ミドル溝状部29の最大の深さの15%~25%である。このような浅底部25は、ウェット性能と操縦安定性とをバランス良く高めることができる。
【0070】
第1深底部27のタイヤ軸方向の長さL8、及び、第2深底部28のタイヤ軸方向の長さL9は、それぞれ、例えば、外側ミドル陸部13の接地面のタイヤ軸方向の幅Womの5%~40%であり、望ましくは20%~35%である。また、第2深底部28のタイヤ軸方向の長さL9は、第1深底部27のタイヤ軸方向の長さL8よりも大きいのが望ましい。具体的には、第1深底部27の前記長さL8は、第2深底部28の前記長さL9の60%~80%であるのが望ましい。これにより、第2深底部28において優れた排水性が発揮される。なお、浅底部25の前記長さL7、第1深底部27の前記長さL8、及び、第2深底部28の前記長さL9が、外側ミドル溝状部29の深さ方向で変化する場合は、これらの長さは、前記深さ方向の中間位置で測定されるものとする。
【0071】
また、第2深底部28の最大の深さは、第1深底部27の最大の深さよりも大きい。これにより、第2深底部28の最大の深さd5が、外側ミドル溝状部29の最大の深さを構成している。第1深底部27の最大の深さd4は、例えば、第2深底部28の最大の深さd5の60%~75%である。
【0072】
図11には、図8のD-D線断面図が示されている。図12には、図8のE-E線断面図が示されている。図11及び図12に示されるように、深底部26の溝壁は、浅底部25の溝壁25aに連なる外側溝壁26aと、外側溝壁26aのタイヤ半径方向内側に連なる内側溝壁26bとを含む。内側溝壁26bは、タイヤ半径方向に対する角度が外側溝壁26aよりも小さい。具体的には、外側溝壁26aのタイヤ半径方向に対する角度は、例えば、40~50°である。内側溝壁26bのタイヤ半径方向に対する角度は、例えば、10°以下である。このような深底部26は、ウェット性能と操縦安定性とをバランス良く高めることができる。
【0073】
以下、本開示のさらに他の実施形態が説明される。以下において、上述の実施形態と共通する要素には、同一の符号が付され、上述の構成を適用することができる。
【0074】
図13には、他の実施形態のトレッド部2の展開図が示されている。また、図14には、この実施形態の外側ショルダー陸部12及び外側ミドル陸部13の拡大図が示されている。図14に示されるように、この実施形態では、外側ショルダーサイプ31が、外側ショルダー周方向溝7から延び、かつ、外側トレッド端Toに達することなく外側ショルダー陸部12内で途切れている。また、この実施形態では、外側ミドル溝状部29が、外側ミドルサイプ45として構成されている。外側ミドルサイプ45は、その横断面において、2つの壁面間の最大の距離が1.5mm以下となる。
【0075】
この実施形態においても、上述の通り、外側ショルダーサイプ31の外側ショルダー周方向溝7側の内端31iと、外側ミドル溝状部29の外側ショルダー周方向溝7側の外端29oとのタイヤ周方向の位置ずれ量L3は、複数の外側ショルダーサイプ31のタイヤ周方向の1ピッチ長さP1の5%以下である。これにより、ウェット性能を維持しつつ、操縦安定性及び制動性能を向上させることができる。
【0076】
外側ショルダーサイプ31のタイヤ軸方向の長さL11は、外側ショルダー陸部12の接地面のタイヤ軸方向の幅Wosの45%~65%である。このような外側ショルダーサイプ31は、ウェット性能と操縦安定性とをバランス良く高めることができる。
【0077】
この実施形態の外側ショルダーサイプ31は、両側のサイプエッジのそれぞれが面取り部42で形成されている。また、前記面取り部42は、外側ショルダー周方向溝7の側に向かって面取り幅が大きくなっている。面取り部42の最大の面取り幅は、例えば、1.0~3.0mmであり、面取り部42の深さは、例えば、1.0~3.0mmである。これにより、外側ショルダー陸部12に作用する接地圧が均一化し、操縦安定性及び制動性能をより一層向上させることができる。
【0078】
図15には、図14のF-F線断面図が示されている。図15に示されるように、この実施形態の外側ショルダーサイプ31は、外側ショルダー周方向溝7側の端部を含む深底部31aと、深底部31aよりも小さい深さを有する浅底部31bとを含む。深底部31aの深さd7は、例えば、外側ショルダー周方向溝7の深さd6の70%~100%である。浅底部31bの深さd8は、例えば、2.0~4.0mmである。深底部31aのタイヤ軸方向の長さL12は、外側ショルダー陸部12の接地面のタイヤ軸方向の幅Wos(図14に示す)の5%~20%であるのが望ましい。このような外側ショルダーサイプ31は、ウェット性能と操縦安定性とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0079】
図14に示されるように、この実施形態において、外側ミドルサイプ45は、例えば、タイヤ軸方向に対して外側ショルダーサイプ31とは逆向きに傾斜している。外側ミドルサイプ45のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、20~30°である。これにより、外側ショルダーサイプ31及び外側ミドルサイプ45が多方向に摩擦力を提供でき、ウェット性能がより一層向上する。
【0080】
外側ミドルサイプ45は、両側のサイプエッジのそれぞれが面取り部46で形成されている。外側ミドルサイプ45の面取り部46は、例えば、定幅部47と、内側拡幅部48と、外側拡幅部49とを含む。定幅部47は、一定の面取り幅でサイプ長さ方向に延びている。内側拡幅部48は、例えば、定幅部47の外側クラウン周方向溝8側に連なっており、定幅部47から外側クラウン周方向溝8まで面取り幅が連続的に大きくなっている。外側拡幅部49は、例えば、定幅部47の外側ショルダー周方向溝7側に連なっており、定幅部47から外側ショルダー周方向溝7まで面取り幅が連続的に大きくなっている。このような面取り部46は、操縦安定性を維持しつつ、制動性能を高めることができる。
【0081】
より望ましい態様では、内側拡幅部48の最大の面取り幅は、外側拡幅部49の最大の面取り幅よりも大きい。これにより、接地圧が相対的に大きいタイヤ赤道側での十分な面取り幅を確保でき、上述の効果をさらに高めることができる。
【0082】
図16には、図14のG-G線断面図が示されている。図16に示されるように、外側ミドルサイプ45は、上述の外側ミドル溝状部29と同様、浅底部25と、浅底部25よりも深さが大きい深底部26とを含む。深底部26は、外側ミドル陸部13のタイヤ軸方向の中心位置よりも外側トレッド端To側に配された第1深底部27と、前記中心位置よりも内側トレッド端Ti側に配された第2深底部28とを含む。浅底部25は、第1深底部27と第2深底部28との間に設けられている。このような外側ミドルサイプ45は、ウェット性能を維持しつつ、操縦安定性を高めるのに役立つ。
【0083】
浅底部25のタイヤ軸方向の長さL7は、例えば、外側ミドル陸部13の接地面のタイヤ軸方向の幅Wom(図14に示され、以下、同様である。)の60%~90%である。また、浅底部25の深さd3は、例えば、1.0~3.0mmである。このような浅底部25は、ウェット性能と操縦安定性とをバランス良く高めることができる。
【0084】
第1深底部27のタイヤ軸方向の長さL8、及び、第2深底部28のタイヤ軸方向の長さL9は、それぞれ、例えば、外側ミドル陸部13の接地面のタイヤ軸方向の幅Womの5%~20%である。また、第2深底部28のタイヤ軸方向の長さL9は、第1深底部27のタイヤ軸方向の長さL8よりも大きいのが望ましい。具体的には、第1深底部27の前記長さL8は、第2深底部28の前記長さL9の60%~75%であるのが望ましい。これにより、第2深底部28において優れた排水性が発揮される。
【0085】
また、第1深底部27の最大の深さd4、及び、第2深底部28の最大の深さd5は、外側ショルダー周方向溝7の最大の深さd9の70%~100%である。また、第2深底部28の最大の深さd5は、第1深底部27の最大の深さd4よりも大きいのが望ましい。これにより、第2深底部28の最大の深さd5が、外側ミドルサイプ45の最大の深さを構成している。第1深底部27の最大の深さd4は、例えば、第2深底部28の最大の深さd5の80%~95%である。これにより、ウェット性能を維持しつつ、操縦安定性及び制動性能をより一層向上させることができる。
【0086】
以上、本開示の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本開示は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0087】
図1の基本パターンを有するサイズ235/55R19のタイヤが表1の仕様に基づき試作された。また、各種性能を比較するための基準となるタイヤ(基準タイヤ)として、トレッド部の各陸部の幅が図1に示されるものと同一であり、かつ、各陸部には溝及びサイプが設けられていないタイヤが試作された。比較例として、図17に示されるように、外側ショルダーサイプbと外側ミドル溝状部cとがタイヤ周方向に位置ずれしており、外側ショルダー横溝aの内端と外側ミドル溝状部cの外端とが向き合っているタイヤが試作された。比較例のタイヤは、上述の事項を除き、図1で示されるものと実質的に同じパターンを有している。各テストタイヤのウェット性能、操縦安定性及び制動性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:19×7.0J
タイヤ内圧:230kPa
テスト車両:排気量2000cc、四輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
【0088】
<ウェット性能>
上記テスト車両でウェット路面を走行したときのウェット性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例のタイヤのウェット性能を100とする評点で示されており、数値が大きい程、ウェット性能が優れていることを示す。
【0089】
<操縦安定性>
上記テスト車両でドライ路面を走行したときの操縦安定性が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例のタイヤの操縦安定性を100とする評点で示されており、数値が大きい程、操縦安定性が優れていることを示す。
【0090】
<制動性能>
上記テスト車両でドライ路面上において100km/hから急制動したときの制動距離が測定された。結果は、基準タイヤの前記制動距離との差である制動距離改善量が、比較例の前記制動距離改善量を100とする指数で示されている。この指数が大きい程、制動距離改善量が大きく、制動性能が優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0091】
【表1】
【0092】
テストの結果、実施例のタイヤは、ウェット性能が維持されつつ、操縦安定性及び制動性能が向上していることが確認できた。
【0093】
[付記]
本開示は以下の態様を含む。
【0094】
[本開示1]
車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、車両装着時に車両外側となる外側トレッド端と、車両装着時に車両内側となる内側トレッド端と、前記外側トレッド端と前記内側トレッド端との間でタイヤ周方向に連続して延びる4本の周方向溝と、前記4本の周方向溝に区分された5つの陸部とを含み、
前記4本の周方向溝は、前記周方向溝のうちで最も前記外側トレッド端側に配された外側ショルダー周方向溝を含み、
前記5つの陸部は、前記外側トレッド端を含む外側ショルダー陸部と、前記外側ショルダー周方向溝を介して前記外側ショルダー陸部に隣接する外側ミドル陸部とを含み、
前記外側ショルダー陸部には、複数の外側ショルダー横溝と複数の外側ショルダーサイプとが設けられ、
前記複数の外側ショルダー横溝のそれぞれは、前記外側ショルダー周方向溝から前記外側トレッド端を超えた位置まで延びており、
前記複数の外側ショルダーサイプのそれぞれは、前記外側ショルダー周方向溝に連通しており、
前記複数の外側ショルダーサイプのそれぞれは、少なくとも前記外側ショルダー周方向溝から前記外側トレッド端までの範囲において、両側のサイプエッジの全体が面取り部で形成されており、
前記外側ミドル陸部には、前記外側ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数の外側ミドル溝状部が設けられており、
前記外側ショルダーサイプの前記外側ショルダー周方向溝側の内端と、前記外側ミドル溝状部の前記外側ショルダー周方向溝側の外端とのタイヤ周方向の位置ずれ量は、前記複数の外側ショルダーサイプのタイヤ周方向の1ピッチ長さの5%以下である、
タイヤ。
[本開示2]
前記外側ミドル溝状部は、タイヤ半径方向に沿って延びる2つの壁面を含み、
前記外側ミドル溝状部は、その横断面において前記2つの壁面間の最大の距離が1.5mm以下となる外側ミドルサイプを含む、本開示1に記載のタイヤ。
[本開示3]
前記外側ミドル溝状部は、タイヤ半径方向に沿って延びる2つの壁面を含み、
前記外側ミドル溝状部は、その横断面において前記2つの壁面間の最大の距離が1.5mmを超える外側ミドル横溝を含む、本開示1又は2記載のタイヤ。
[本開示4]
前記外側ミドル横溝は、タイヤ周方向の一方側に凸で湾曲する部分と、タイヤ周方向の他方側に凸で湾曲する部分とを含むS字状である、本開示4に記載のタイヤ。
[本開示5]
前記外側ミドル溝状部は、浅底部と、前記浅底部よりも深さが大きい深底部とを含む、本開示1ないし4のいずれかに記載のタイヤ。
[本開示6]
前記深底部は、前記外側ミドル陸部のタイヤ軸方向の中心位置よりも前記外側トレッド端側に配された第1深底部と、前記中心位置よりも前記内側トレッド端側に配された第2深底部とを含み、
前記浅底部は、前記第1深底部と前記第2深底部との間に設けられている、本開示5に記載のタイヤ。
[本開示7]
前記第2深底部のタイヤ軸方向の長さは、前記第1深底部のタイヤ軸方向の長さよりも大きい、本開示6に記載のタイヤ。
[本開示8]
前記第2深底部のタイヤ軸方向の最大の深さは、前記第1深底部のタイヤ軸方向の最大の深さよりも大きい、本開示6又は7に記載のタイヤ。
[本開示9]
前記陸部は、前記周方向溝を介して前記外側ミドル陸部の前記内側トレッド端側に隣接するクラウン陸部を含み、
前記クラウン陸部には、タイヤ軸方向に対して傾斜した複数のクラウンサイプが設けられている、本開示1ないし8のいずれかに記載のタイヤ。
[本開示10]
前記外側ショルダー横溝は、溝のエッジが面取り部で構成されている、本開示1ないし9のいずれかに記載のタイヤ。
[本開示11]
前記外側ショルダーサイプは、前記外側トレッド端に達することなく前記外側ショルダー陸部内で途切れており、
前記外側ショルダーサイプは、前記外側ショルダー周方向溝側の端部を含む深底部と、前記深底部よりも小さい深さを有する浅底部とを含む、本開示1ないし10のいずれかに記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0095】
2 トレッド部
3 周方向溝
4 陸部
7 外側ショルダー周方向溝
12 外側ショルダー陸部
13 外側ミドル陸部
30 外側ショルダー横溝
31 外側ショルダーサイプ
29 外側ミドル溝状部
To 外側トレッド端
Ti 内側トレッド端
図1
図2
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