(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162969
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】医用画像処理装置及び医用画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20221018BHJP
G06T 7/11 20170101ALI20221018BHJP
【FI】
A61B6/00 350D
A61B6/00 330Z
G06T7/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033772
(22)【出願日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2021067717
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021159504
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 千遥
【テーマコード(参考)】
4C093
5L096
【Fターム(参考)】
4C093AA26
4C093CA18
4C093CA22
4C093DA06
4C093ED21
4C093EE19
4C093FD09
4C093FD11
4C093FF16
4C093FF23
5L096AA06
5L096BA06
5L096CA02
5L096DA01
5L096FA14
5L096FA59
5L096FA69
5L096GA51
(57)【要約】
【課題】乳腺領域の抽出精度を向上させることが可能な医用画像処理装置及び医用画像処理プログラムを提供する。
【解決手段】医用画像処理装置は、被検体の乳房をX線撮影することにより得られる乳房画像から乳房領域を抽出する乳房領域抽出部と、乳房領域の内側に位置し、輝度値が基準値以上である乳腺領域を抽出するために用いられる内側領域を抽出する内側領域抽出部と、を備える。医用画像処理プログラムは、コンピューターに、被検体の乳房をX線撮影することにより得られる乳房画像から乳房領域を抽出する乳房領域抽出処理と、乳房領域の内側に位置し、輝度値が基準値以上である乳腺領域を抽出するために用いられる内側領域を抽出する内側領域抽出処理と、を実行させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の乳房をX線撮影することにより得られる乳房画像から乳房領域を抽出する乳房領域抽出部と、
前記乳房領域の内側に位置し、輝度値が基準値以上である乳腺領域を抽出するために用いられる内側領域を抽出する内側領域抽出部と、
を備える医用画像処理装置。
【請求項2】
前記乳房領域から前記内側領域を除いた領域は、圧迫された前記乳房の圧迫乳房厚が所定値未満である圧迫厚未達領域を含む、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記乳房領域から前記内側領域を除いた領域は、前記被検体の胸壁に対応する領域を含む、
請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記内側領域抽出部は、圧迫された前記乳房の圧迫乳房厚に基づいて、前記内側領域を抽出する、
請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記内側領域抽出部は、圧迫された前記乳房の乳房面積に基づいて、前記内側領域を抽出する、
請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記内側領域抽出部は、前記乳房領域の前記乳房のスキンラインから内側へ向かう方向において、前記乳房領域の輝度値の変化態様を学習した結果に基づいて、前記内側領域を抽出する、
請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記内側領域内の輝度値に基づいて、前記基準値を算出する基準値算出部を備える、
請求項1から6のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
算出された前記基準値に基づいて、前記乳房領域から前記乳腺領域を抽出する乳腺領域抽出部を備える、
請求項7に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記乳房領域から乳腺実質領域を抽出する乳腺実質領域抽出部と、
前記内側領域内の輝度値に基づいて、前記乳腺実質領域から乳腺領域を抽出する乳腺領域抽出部と、
前記乳腺実質領域の面積と前記乳腺領域の面積とを算出して、前記乳腺実質領域と前記乳腺領域との間における面積比を算出する面積比算出部と、
を備える、
請求項1から8のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記面積比算出部の算出結果を出力する出力部を備える、
請求項9に記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
前記出力部は、前記面積比の範囲を示すバーに、左右の前記乳房について算出された前記面積比を示すマークをそれぞれ表示する、
請求項10に記載の医用画像処理装置。
【請求項12】
コンピューターに、
被検体の乳房をX線撮影することにより得られる乳房画像から乳房領域を抽出する乳房領域抽出処理と、
前記乳房領域の内側に位置し、輝度値が基準値以上である乳腺領域を抽出するために用いられる内側領域を抽出する内側領域抽出処理と、
を実行させる医用画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像処理装置及び医用画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、乳癌検査を行うためのマンモグラフィ装置が知られている。マンモグラフィ装置では、被検体の乳房に向かってX線を照射し、乳房を透過したX線を検出して、乳房X線画像(以降、乳房画像と呼ぶ)を撮影している。
【0003】
マンモグラフィ装置で撮影された乳房画像では、微細な病変(例えば、腫瘤など)を検出可能であるが、乳腺領域が病変と同程度の輝度値として表現されるため、高濃度な乳腺を有する患者の場合、病変を見逃してしまう可能性がある。そのため、近年、高濃度な乳腺を有する患者に対して、超音波検査などの追加検査をすることが推奨されている。
【0004】
追加検査を行うか否か、即ち、病変見逃しリスクが高いか否かの判定は、一般的には、以下の(1)、(2)の基準により評価が行われている。
(1)乳房画像における乳房領域に対する乳腺領域の割合(乳腺含有率)
(2)乳房画像における乳腺領域に対する乳腺領域内の脂肪領域の割合
【0005】
従来、上記の判定は、医師の視覚による主観評価により行われていたが、例えば、特許文献1には、上記の(1)、(2)の基準に基づいて、病変に関する指標を取得し、客観的な病変見逃しリスクを示す指標として提供する技術が開示されている。
【0006】
上記の指標を取得する際、特許文献1の技術では、乳房画像における乳房領域において、画素の輝度値のヒストグラムを作成し、作成したヒストグラムに基づいて閾値を決定し、決定した閾値を用いて乳腺領域を抽出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、乳房画像の画素の輝度値は、外部因子、例えば、被検体の個体差(被検体の年齢、体格、乳房の大きさなど)、乳房の撮影態様(撮影者やマンモグラフィ装置に依存する乳房の撮影状態など)などの影響を受けている可能性がある。
【0009】
マンモグラフィ装置では、乳房を圧迫板で挟み込んで撮影を行うが、特に、乳房画像における乳房領域のスキンライン付近は、圧迫乳房厚の未達領域であるため、上記の外部因子の影響を受け易いと考えられる。
【0010】
このように、乳房画像の画素の輝度値が外部因子の影響を受けている場合、特許文献1に記載の技術では、乳腺領域を抽出するための閾値も影響を受け、誤った閾値を用いて、乳腺領域を抽出する可能性がある。この場合、上記の(1)、(2)の基準に示す割合や上記の指標も誤って取得することになる。
【0011】
本発明の目的は、乳腺領域の抽出精度を向上させることが可能な医用画像処理装置及び医用画像処理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る医用画像処理装置は、
被検体の乳房をX線撮影することにより得られる乳房画像から乳房領域を抽出する乳房領域抽出部と、
前記乳房領域の内側に位置し、輝度値が基準値以上である乳腺領域を抽出するために用いられる内側領域を抽出する内側領域抽出部と、
を備える。
【0013】
本発明に係る医用画像処理プログラムは、
コンピューターに、
被検体の乳房をX線撮影することにより得られる乳房画像から乳房領域を抽出する乳房領域抽出処理と、
前記乳房領域の内側に位置し、輝度値が基準値以上である乳腺領域を抽出するために用いられる内側領域を抽出する内側領域抽出処理と、
を実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、乳腺領域の抽出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態に係る医用画像処理装置を含む医用画像システムを概略的に説明するブロック図である。
【
図2】
図1に示す医用画像処理装置における医用画像の解析処理方法を説明するフローチャートである。
【
図3】乳房画像において、
図2に示す画像処理方法を説明する図である。
【
図4】マンモグラフィ装置による乳房の撮影において、外部因子の影響を受けやすい箇所を説明する図である。
【
図5】圧迫乳房厚と圧迫乳房厚に達しない領域との関係を示すグラフである。
【
図6】乳房画像において、複数の抽出方法を組み合わせて、乳房領域から内側領域を抽出する方法を説明する図である。
【
図7】病変見逃しリスクを示すスコアを取得する方法を説明するための図である。
【
図8】乳房密度評価画面を示す図であり、左乳房の内外斜位方向の解析結果を示す図である。
【
図9】乳房密度評価画面を示す図であり、左右の乳房の内外斜位方向の解析結果を示す図である。
【
図10】乳房密度評価画面を示す図であり、左右の乳房の解析結果に相違がある場合を示す図である。
【
図11】乳房密度評価画面を示す図であり、左右の乳房の解析結果の時系列フォルダを示す図である。
【
図12】乳房密度評価画面を示す図であり、左右の乳房の解析結果の時系列グラフを示す図である。
【
図13】乳房密度評価画面を示す図であり、表示対象として、左右の乳房の乳房画像が選択された場合を示す図である。
【
図14】乳房密度評価画面を示す図であり、表示対象として、右の乳房の乳房画像と解析結果とが選択された場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態に係る医用画像処理装置20を含む医用画像システム100を概略的に説明するブロック図である。
【0018】
医用画像システム100は、
図1に示すように、医用画像生成装置10と、医用画像処理装置20と、を備える。医用画像生成装置10と医用画像処理装置20とは、例えば、LAN(Local Area Network)などのネットワーク30を介して、医用画像などの情報を互いに送受信可能に接続されている。ネットワーク30においては、例えば、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)規格などの医用画像の規格を用いて、医用画像などの情報が送受信される。
【0019】
医用画像生成装置10は、被検体の撮影対象部位を撮影して、医用画像を生成する装置である。本実施の形態では、被検体である患者の乳房に向かってX線を照射し、乳房を透過したX線を検出することで、乳房のX線撮影を行って、乳房X線画像(乳房画像)を生成するマンモグラフィ装置である。
【0020】
医用画像生成装置10には、例えば、CR(Computed Radiography)方式やFPD(Flat Panel Detector)方式などを適用可能である。例えば、CR方式では、イメージングプレートを用いて、乳房を透過したX線を検出して、乳房画像を生成する。また、FPD方式では、フラットパネル型の放射線ディテクタを用いて、乳房を透過したX線を検出して、乳房画像を生成する。
【0021】
医用画像生成装置10で生成される乳房画像は、後述の医用画像処理装置20で解析処理可能なデジタルデータである。乳房画像の画素は、X線の吸収が大きいほど大きい輝度値として表示され、乳房画像上では画素値が大きいほど白く描画される(後述の
図3を参照)。
【0022】
医用画像生成装置10は、生成された乳房画像に患者情報や検査情報などを付加して、ネットワーク30を介して、医用画像処理装置20へ送信する。患者情報には、患者を識別するための患者識別情報(例えば、患者ID)、患者の名前、性別、生年月日などの情報が含まれる。検査情報には、検査を識別するための検査識別情報(例えば、検査ID)、検査日時、検査条件(検査部位、側性(左、右)、方向(例えば、上下方向(CC)、内外斜位方向(MLO)、圧迫乳房厚)などの情報が含まれる。
【0023】
医用画像生成装置10は、ネットワーク30に複数接続されていてもよく、その場合、複数の医用画像生成装置10から医用画像処理装置20へ患者情報や検査情報などが付加された乳房画像が送信される。
【0024】
医用画像処理装置20は、医用画像生成装置10から送信された乳房画像の解析処理を行って、乳癌の発生リスクなどの病変に関する指標、つまり、病変見逃しリスク(マスキングリスク)を示す指標を取得し、後述の
図8などに示す解析結果として表示する。
【0025】
医用画像処理装置20は、制御部21と、操作部22と、入出力部23と、記憶部24と、表示部25とを備える。制御部21、操作部22、入出力部23、記憶部24及び表示部25は、互いにデータを送受信可能にバス26により接続されている。医用画像処理装置20は、例えば、コンピューターである。
【0026】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などにより構成される。制御部21のCPUは、記憶部24に記憶されているシステムプログラムや処理プログラムなどの各種プログラムを読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行する。
【0027】
操作部22は、文字入力キー、数字入力キー及び各種機能キーなどを備えたキーボードと、マウスなどのポインティングデバイスなどとにより構成される。操作部22は、キーボードで押下操作されたキーの押下信号とマウスによる操作信号とを入力信号として制御部21に出力する。
【0028】
入出力部23は、ネットワーク30に接続されており、外部機器との間でデータの送受信を行う、例えば、LANカードなどにより構成される。
【0029】
記憶部24は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)や半導体の不揮発性メモリなどで構成されている。記憶部24には、後述する解析処理のプログラムなどの各種プログラムが記憶されている。
【0030】
表示部25は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置(モニター)により構成されており、制御部21から入力される表示信号の指示に従って、各種画面、例えば、
図8などに示す解析結果などを表示する。
【0031】
このように、医用画像システム100は、医用画像生成装置10において、乳房をX線撮影することにより乳房画像を生成し、医用画像処理装置20において、乳房画像に基づいて、病変に関する指標を取得し、解析結果を表示するシステムである。
【0032】
なお、医用画像処理装置20の表示部25に表示される解析結果などは、例えば、ネットワーク30を介して、外部の医用画像表示装置40に送信して、医用画像表示装置40で表示するようにしてもよい。医用画像表示装置40は、処理プログラムなどを除いて、基本的な構成は、医用画像処理装置20と同様の構成でよいので、ここでは、その構成の説明は省略する。
【0033】
ところで、上述したように、乳房画像の画素の輝度値は、患者の個体差(患者の年齢、体格、乳房の大きさなど)、乳房の撮影態様(撮影者やマンモグラフィ装置に依存する乳房の撮影状態など)などの外部因子の影響を受ける可能性がある。
【0034】
そして、乳房画像の画素の輝度値が外部因子の影響を受けている場合、乳腺領域を抽出するための閾値(本発明における基準値に該当)も影響を受け、誤った閾値を用いて、乳腺領域を抽出する可能性がある。この場合、上記の(1)、(2)の基準に示す割合や上記の指標も誤って取得することになる。
【0035】
そこで、本実施の形態において、医用画像処理装置20は、制御部21が乳房領域抽出部と内側領域抽出部とを備える。乳房領域抽出部は、患者の乳房をX線撮影することにより得られる乳房画像から乳房領域を抽出する。また、内側領域抽出部は、乳房領域の内側に位置し、輝度値が基準値以上である乳腺領域を抽出するために用いられる内側領域を抽出する。
【0036】
乳房領域抽出部及び内側領域抽出部については、後述の
図2~
図3などを参照して、より詳細に説明するが、乳房領域抽出部及び内側領域抽出部は、制御部21の機能として、例えば、制御部21で実行される処理プログラムとして備えられている。
【0037】
図2~
図3を参照して、乳房領域抽出部及び内側領域抽出部で実行する処理を含む乳房画像の解析処理方法を説明する。
図2は、医用画像処理装置20における乳房画像の解析処理方法を説明するフローチャートである。
図3は、乳房画像において、
図2に示す解析処理方法を説明する図である。なお、
図3は、右乳房のMLOの乳房画像である。
【0038】
上述したように、医用画像生成装置10において患者の乳房をX線撮影することにより生成された乳房画像は、医用画像処理装置20へ送信される。医用画像処理装置20は、処理プログラム(医用画像処理プログラム)を実行することにより、送信された乳房画像に対して、以下の解析処理を行う。
【0039】
[ステップS11]
医用画像生成装置10から乳房画像Pが医用画像処理装置20へ送信されると、制御部21は、入出力部23を介して、乳房画像Pを取得する。
【0040】
[ステップS12]
制御部21(乳房領域抽出部)は、
図3中に実線で示すように、取得された乳房画像Pにおいて、乳房領域A1を抽出する(乳房領域抽出処理)。
【0041】
乳房画像Pにおける乳房領域A1の抽出は、基本的には、スキンラインSLと大胸筋ラインGLとを検出することにより行われる。スキンラインSL及び大胸筋ラインGLの検出は、例えば、特許文献1に記載の方法などの公知の方法を用いることができるので、ここでは、これらの詳細な説明は省略する。
【0042】
制御部21は、スキンラインSL及び大胸筋ラインGLの検出後、スキンラインSLと大胸筋ラインGLとに挟まれた領域を仮の乳房領域と設定する。大胸筋ラインGLを検出できた場合、仮の乳房領域は、患者の胸壁に対応する領域を除いたものとなる。なお、大胸筋ラインGLを検出できない場合、スキンラインSLと胸壁側の画像端とに挟まれた領域を仮の乳房領域と設定する。
【0043】
制御部21は、仮の乳房領域の設定後、仮の乳房領域から乳房下部の除去を行う。例えば、乳房画像PにおいてスキンラインSLの内側(胸壁側)に接する所定のサイズの円を描いていき、描かれた円の外側(スキンラインSL側)を繋いだ線より外側の領域を除去する。そして、外側の領域を除去した後の領域を乳房領域A1として抽出する。
【0044】
[ステップS13]
制御部21(内側領域抽出部)は、
図3中に長破線で示すように、乳房領域A1の内側に位置し、輝度値が基準値以上である乳腺領域A4を抽出するために用いられる内側領域A2を抽出する(内側領域抽出処理)。
【0045】
ステップS12で抽出された乳房領域A1内の画素の輝度値は、外部因子の影響を受けている可能性がある。外部因子としては、例えば、患者の個体差(患者の年齢、体格、乳房の大きさなど)、乳房の撮影態様(撮影者や医用画像生成装置10に依存する乳房の撮影状態など)などが考えられる。
【0046】
ここで、
図4は、医用画像生成装置10であるマンモグラフィ装置による乳房の撮影において、外部因子の影響を受けやすい箇所を説明する図である。マンモグラフィ装置においては、
図4に示すように、マンモグラフィ装置の2つの圧迫板11に乳房Brを挟み込んで撮影を行っている。このとき、上述した乳房領域A1のスキンラインSL付近に該当する領域(
図4中の破線で囲む領域)は、2つの圧迫板11で挟み込まれた乳房Brの圧迫乳房厚Th未満の領域であるため、上記の外部因子の影響を受け易いと考えられる。
【0047】
乳房画像Pにおいて、乳房領域A1の画素の輝度値が上記の外部因子の影響を受けている場合、乳腺領域A4を抽出するための閾値も影響を受ける。そのため、本実施の形態では、以下に説明するいずれかの抽出方法を用いて、乳腺領域A4を抽出するために用いられる内側領域A2を乳房領域A1から抽出する。
【0048】
(圧迫乳房厚に基づく内側領域A2の抽出方法)
図5は、圧迫乳房厚と圧迫乳房厚に達しない領域との関係を示すグラフである。
図5は、多数の患者について、圧迫乳房厚と圧迫乳房厚に達しない領域との関係を調べてプロットしたものである。圧迫乳房厚に達しない領域とは、スキンラインSLから乳房内側に向かう方向における領域であり、ここでは、スキンラインSLからの距離で表す。また、
図5において、破線は、プロットされた圧迫乳房厚と圧迫乳房厚に達しない領域との関係を示す多数の点に対する近似線である。
図5中に示す近似線からわかるように、圧迫乳房厚と圧迫乳房厚に達しない領域との関係は、比例関係にあると言え、圧迫乳房厚が大きくなると、圧迫乳房厚に達しない領域も大きくなる。
【0049】
図5においては、一例として、圧迫乳房厚を0mm以上~C
1mm未満、C
1mm以上~C
2mm未満、C
2mm以上の3つの範囲に分けている。
図5において、C
1<C
2である。そして、各範囲において、圧迫乳房厚に達しない領域の最大値より大きい値を、スキンラインSLから削除する削除距離(収縮する収縮幅)として設定している。例えば、圧迫乳房厚が0mm以上~C
1mm未満の範囲では、削除距離(収縮幅)をX
1mmと設定している(
図5中の太線参照)。同様に、圧迫乳房厚がC
1mm以上~C
2mm未満の範囲では、削除距離(収縮幅)をX
2mmと設定し、圧迫乳房厚がC
2mm以上の範囲では、削除距離(収縮幅)をX
3mmと設定している(
図5中の太線参照)。
図5において、X
1<X
2<X
3である。
【0050】
乳房画像Pに付加された検査情報に含まれる圧迫乳房厚に基づき、当該圧迫乳房厚に対応する削除距離を
図5に示されたグラフから求める。このとき、削除距離は、
図5に示すように、圧迫乳房厚が大きく(厚く)なるに従って、階段状に大きくなるように設定している。そして、ステップS12で抽出された乳房領域A1のスキンラインSLから削除距離分内側の領域を内側領域A2として抽出する。このようにして、乳房領域A1から内側領域A2を抽出することにより、外部因子の影響を受け易い領域を除くことができる。また、以上説明した抽出方法は単純な方法であるので、抽出処理は比較的速い。
【0051】
なお、
図5においては、圧迫乳房厚が大きくなるに従って、削除距離が階段状に大きくなるよう設定しているが、圧迫乳房厚が大きくなるに従って、削除距離が線形状に大きくなるよう設定してもよい。例えば、圧迫乳房厚の1/2を削除距離として設定してもよい。
【0052】
(乳房面積に基づく内側領域A2の抽出方法)
図示は省略するが、乳房面積と圧迫乳房厚に達しない領域との関係においても、
図5に示すようなグラフを得ることができる。乳房面積は、例えば、乳房圧迫時における圧迫板11に接する乳房の面積であり、ステップS12で抽出された乳房領域A1の面積に基づいて算出可能である。乳房面積と圧迫乳房厚に達しない領域との関係も、圧迫乳房厚と同様に、比例関係にあると言え、乳房面積が大きくなると、圧迫乳房厚に達しない領域も大きくなる。
【0053】
ステップS12で抽出された乳房領域A1に基づいて算出された乳房面積に基づき、当該乳房面積に対応する削除距離を求める。このとき、削除距離は、
図5に示すグラフと同様に、圧迫乳房面積が大きくなるに従って、階段状に大きくなるように設定してもよいし、線形状に大きくなるように設定してもよい。そして、ステップS12で抽出された乳房領域A1のスキンラインSLから削除距離分内側の領域を内側領域A2として抽出する。このようにして、乳房領域A1から内側領域A2を抽出することにより、外部因子の影響を受け易い領域を除くことができる。また、以上説明した抽出方法も単純な方法であるので、抽出処理は比較的速い。
【0054】
(学習結果に基づく内側領域A2の抽出方法)
ステップS12で抽出された乳房領域A1内において、画素の輝度値の変化態様を学習した学習結果に基づいて、乳房領域A1から内側領域A2を抽出することもできる。例えば、ステップS12で抽出された乳房領域A1内において、スキンラインSLから内側へ向かう方向における画素の輝度値の変化態様として、画素間の輝度値の変化量を学習する。このように学習した学習結果に基づいて、例えば、変化量が所定値以上あるところを除くなどすることで、乳房領域A1から内側領域A2を抽出する。このようにして、乳房領域A1から内側領域A2を抽出することにより、外部因子の影響を受け易い領域を除くことができる。
【0055】
また、例えば、上述した輝度値の変化態様と内側領域A2とを対応づけて、深層学習(Deep Learning)や機械学習などを用いて学習させた識別器を用いることができる。制御部21が輝度値の変化態様を識別器に入力すると、その出力として、乳房領域A1から内側領域A2を抽出することができる。
【0056】
(その他の内側領域A2の抽出方法)
以上の説明において、乳房領域A1から内側領域A2を抽出する抽出方法として、3つの抽出方法を例示したが、これらを組み合わせて、乳房領域A1から内側領域A2を抽出してもよい。
【0057】
図6は、乳房画像Pにおいて、複数の抽出方法を組み合わせて、乳房領域A1から内側領域A2を抽出する方法を説明する図である。
図6においては、内側領域A2を長破線、内側領域A21を一点鎖線、内側領域A22を二点鎖線で示している。なお、
図6においては、内側領域A2、内側領域A21及び内側領域A22を識別しやすくするため、便宜的に少しずらして図示している。
【0058】
図6では、一例として、上述した圧迫乳房厚に基づく内側領域A2の抽出方法と学習結果に基づく内側領域A2の抽出方法とを組み合わせたものとする。
【0059】
図6に示す乳房画像Pにおいて、内側領域A21は、上述した学習結果に基づく抽出方法により抽出されたものである。また、内側領域A22は、上述した圧迫乳房厚に基づく抽出方法により抽出されたものである。これらの抽出方法は、上述した通りであるので、重複する説明は省略する。
【0060】
内側領域A21と内側領域A22とが一致している場合、一致した領域を内側領域A2として設定する。この場合、2つの異なる抽出方法を用いて抽出された領域が一致するので、外部因子の影響を受け易い領域をより確実に除くことができる。
【0061】
内側領域A21と内側領域A22とが一致していない場合、
図6に示すように、内側領域A21と内側領域A22とが重なる領域を内側領域A2として設定する。このとき、例えば、内側領域A21の面積のX割以上が内側領域A22と重なる場合、重なる領域を内側領域A2として設定する。この場合、2つの異なる抽出方法を用いて抽出された内側領域A21と内側領域A22とが重なる領域を内側領域A2として設定するので、外部因子の影響を受け易い領域をより確実に除くことができる。
【0062】
一方、例えば、内側領域A21の面積のX割未満が内側領域A22と重なる場合、内側領域A21及び内側領域A22のいずれか一方を内側領域A2として設定する。例えば、内側領域A21及び内側領域A22において、スキンラインSLに対して、より内側に位置する方を内側領域A2として設定する。これにより、外部因子の影響を受け易い領域を除くことができる。また、内側領域A21及び内側領域A22のいずれか一方の抽出方法に問題が生じている場合、他方の抽出方法により抽出された内側領域A21又は内側領域A22を用いることにより、一方の抽出方法の問題による影響を回避することができる。
【0063】
なお、
図6で説明した組み合わせに代えて、上述した乳房面積に基づく内側領域A2の抽出方法と学習結果に基づく内側領域A2の抽出方法とを組み合わせたものでもよいし、上述した3つの抽出方法全部を組み合わせたものでもよい。このように複数の抽出方法を組み合わせることにより、内側領域A2の抽出精度を更に向上させることができる。
【0064】
以上説明した抽出方法を用いて、乳房領域A1から内側領域A2を抽出する。このようにして、乳房領域A1から内側領域A2を抽出することにより、乳房領域A1から乳房の圧迫乳房厚が所定値未満である圧迫厚未達領域を除くことができる。そして、乳房領域A1から内側領域A2を抽出した後、
図2に示すステップS14へ進む。
【0065】
[ステップS14]
制御部21(乳腺実質領域抽出部及び乳腺領域抽出部)は、乳房領域A1から乳腺実質領域A3(
図3中に示す一点鎖線)を抽出し、乳腺実質領域A3から乳腺領域A4(
図3中に示す短破線)を抽出する。
【0066】
乳腺実質領域A3は、もともと乳腺が存在していた領域であり、大胸筋部分と皮下脂肪を除いた領域と定義されている。乳房領域A1は、上述したように、大胸筋ラインGLを検出することにより、大胸筋部分を除いているので、乳房領域A1から皮下脂肪の領域を除けば、乳腺実質領域A3を抽出することができる。つまり、スキンラインSLから皮下脂肪の領域を削除距離として削除すれば、乳腺実質領域A3を抽出することができる。
【0067】
スキンラインSLから皮下脂肪の領域を削除距離として削除して、乳房領域A1から乳腺実質領域A3を抽出する抽出方法としては、ステップS13で説明した乳房領域A1から内側領域A2を抽出する抽出方法と同様の方法を用いることができる。つまり、圧迫乳房厚に基づく乳腺実質領域A3の抽出方法、乳房面積に基づく乳腺実質領域A3の抽出方法、学習結果に基づく乳腺実質領域A3の抽出方法、これらの抽出方法の中から少なくとも2つを組み合わせた抽出方法を用いることができる。
【0068】
例えば、圧迫乳房厚に基づく乳腺実質領域A3の抽出方法では、図示は省略するが、圧迫乳房厚と皮下脂肪の領域との関係は、多数の患者についてプロットすると、
図5に示すグラフと同様のグラフとなる。つまり、圧迫乳房厚と皮下脂肪の領域との関係は、比例関係にあると言うことができ、圧迫乳房厚が大きくなると、皮下脂肪の領域も大きくなる。そのため、ステップS13で説明した圧迫乳房厚に基づく内側領域A2の抽出方法と同様の方法を用いて、乳房領域A1から乳腺実質領域A3を抽出することができる。
【0069】
同様に、乳房面積に基づく乳腺実質領域A3の抽出方法でも、ステップS13で説明した乳房面積に基づく内側領域A2の抽出方法と同様の方法を用いて、乳房領域A1から乳腺実質領域A3を抽出することができる。
【0070】
同様に、学習結果に基づく乳腺実質領域A3の抽出方法でも、ステップS13で説明した学習結果に基づく内側領域A2の抽出方法と同様の方法を用いて、乳房領域A1から乳腺実質領域A3を抽出することができる。
【0071】
同様に、上記の3つの乳腺実質領域A3の抽出方法の中から少なくとも2つを組み合わせた抽出方法でも、ステップS13で説明したその他の内側領域A2の抽出方法と同様の方法を用いて、乳房領域A1から乳腺実質領域A3を抽出することができる。
【0072】
これらの乳腺実質領域A3の抽出方法は、ステップS13で説明した抽出方法において、「内側領域A2」を「乳腺実質領域A3」と言い換えれば、説明することができるので、これらの具体的な説明は省略する。
【0073】
このように、制御部21は、以上説明した乳腺実質領域A3の抽出方法を用いて、乳房領域A1から乳腺実質領域A3を抽出する。
【0074】
乳腺実質領域A3の抽出した後、制御部21(基準値算出部)は、ステップS13で抽出された内側領域A2内の画素の輝度値に基づいて、乳腺領域A4を抽出する閾値である基準値を求める。
【0075】
例えば、制御部21は、内側領域A2内において、画素の輝度値のヒストグラムを作成し、作成したヒストグラムに基づいて、基準値を決定する。基準値は、例えば、判別分析法などによって決定する。
【0076】
そして、制御部21は、決定された基準値を用いて閾値処理を行って、乳腺実質領域A3から乳腺領域A4を抽出する。乳腺実質領域A3から乳腺領域A4を除いた領域が脂肪領域となる。
【0077】
[ステップS15]
制御部21(面積比算出部)は、以下に説明する乳腺実質領域A3に対する乳腺領域A4の面積比などを算出する。また、制御部21は、以下に説明するスコアなどを算出する。
【0078】
制御部21は、病変見逃しリスクを示す指標として、例えば、以下の(A)に示す面積比及びスコア、(B)に示す面積比及びスコアの少なくとも一方を求める。
【0079】
(A)R=(乳腺領域A4の面積/乳腺実質領域A3の面積)×100
Rの値を1軸で評価したスコア
【0080】
(B)RD/B=(乳腺領域A4の面積D/乳房領域A1の面積B)×100
RF/D=(乳腺領域A4内の脂肪領域の面積F/乳腺領域A4の面積D)×100
RD/B、RF/Dの値を2軸で評価したスコア
【0081】
乳房領域A1、乳腺実質領域A3、乳腺領域A4、乳腺領域A4内の脂肪領域のそれぞれの面積は、各領域内の画素数に基づいて算出することができる。上記(A)のスコアは、Rの値を1軸で評価して、Rの値が属する領域(カテゴリー)を示す数値として、以下のようにして算出される。
【0082】
スコア1の領域:Rが閾値TA1未満の領域。即ち、乳腺実質領域A3に対する乳腺領域A4の割合がわずかであり、病変見逃しのリスクが低い領域。「脂肪性」と呼ばれる乳腺濃度の領域。
スコア2の領域:Rが閾値TA1以上、閾値TA2未満の領域(TA1<TA2)。即ち、乳腺実質領域A3に対する乳腺領域A4の割合が中程であり、病変見逃しのリスクがそれほど高くない領域。「散在性」と呼ばれる乳腺濃度の領域。
スコア3の領域:Rが閾値TA2以上、閾値TA3未満の領域(TA2<TA3)。即ち、乳腺実質領域A3に対する乳腺領域A4の割合がある程度大きく、病変見逃しのリスクが高い領域。「不均一高濃度」と呼ばれる乳腺濃度の領域。
スコア4の領域:Rが閾値TA3以上の領域。即ち、乳腺実質領域A3に対する乳腺領域A4の割合が大きく、病変見逃しのリスクが非常に高い領域。「極めて高濃度」と呼ばれる乳腺濃度の領域。
【0083】
上記(A)では、Rを算出する分母として、乳房領域A1の面積ではなく、乳腺実質領域A3の面積を使用している。乳房領域A1は、上述したように、外部因子に影響を受けている可能性があり、その場合、乳房領域A1の面積も影響を受けている可能性がある。これに対して、乳腺実質領域A3は、上述したように、もともと乳腺が存在していた領域であり、皮下脂肪の領域を除いているので、スコアの算出の信頼性を向上させることができる。
【0084】
また、上記(B)のスコアは、RD/B、RF/Dの値を2軸で評価して、RD/B、RF/Dの値が属する領域(カテゴリー)を示す数値として、以下のようにして算出される。
【0085】
(1)まず、
図7に示すように、横軸をR
D/B、縦軸をR
F/Dとした座標空間(グラフ)を生成して以下の4つのスコアの領域に分割する。
スコア1の領域:R
D/Bが閾値TB1(ここでは、5)以下の領域。即ち、乳房領域A1に対する乳腺領域A4の割合がわずかであり、病変見逃しのリスクが低い領域。「脂肪性」と呼ばれる乳腺濃度の領域。
スコア2の領域:R
D/Bが閾値TB1を超えているが、R
F/Dが閾値TB2(ここでは、50)以上の領域。即ち、乳房領域A1に対する乳腺領域A4の割合がある程度大きいが、乳腺領域A4に対する乳腺領域A4内の脂肪領域も比較的大きいため、病変見逃しのリスクがそれほど高くない領域。「散在性」と呼ばれる乳腺濃度の領域。
スコア3の領域:R
D/Bが閾値TB1を超えており、R
F/Dが閾値TB2より小さく、閾値TB3以上(閾値TB2>閾値TB3)の領域。即ち、乳房領域A1に対する乳腺領域A4の割合がある程度大きく、乳腺領域A4に対する乳腺領域A4内の脂肪領域があまり大きくないため、病変見逃しのリスクが高い領域。「不均一高濃度」と呼ばれる乳腺濃度の領域。
スコア4の領域:R
D/Bが閾値TB1を超えており、R
F/Dが閾値TB3より小さい領域。即ち、乳房領域A1に対する乳腺領域A4の割合がある程度大きく、乳腺領域A4に対する乳腺領域A4内の脂肪領域が小さいため、病変見逃しのリスクが非常に高い領域。「極めて高濃度」と呼ばれる乳腺濃度の領域。
【0086】
(2)次いで、R
D/B、R
F/Dを算出し、算出されたR
D/B、R
F/Dの値を、
図7に示すグラフ上にプロットし、プロットした点の含まれる領域のスコアが、取得した乳房画像Pの見逃しリスクを示す指標となる。
【0087】
そして、制御部21(出力部)は、算出された面積比、スコアなど(算出結果)を、記憶部24や表示部25に出力する。また、制御部21(出力部)は、算出された面積比、スコアなどを、入出力部23及びネットワークを介して、医用画像表示装置40へ出力してもよい。
【0088】
例えば、医用画像生成装置10が患者の左乳房の内外斜位方向(LMLO)の乳房画像Pを生成して、医用画像処理装置20へ送信したとする。この場合、医用画像処理装置20において、制御部21は、送信された乳房画像Pに対して、上述したステップS11~S15を実行し、例えば、
図8に示す画像単位の乳房密度評価画面D1を表示部25に出力する。
【0089】
図8は、乳房密度評価画面D1を示す図であり、左乳房の内外斜位方向(LMLO)の解析結果を示す図である。
図8に示すように、乳房密度評価画面D1には、LMLOと表示され、患者名(Name)、患者ID(Patient ID)が表示される。また、例えば、乳腺実質領域A3に対する乳腺領域A4の面積比を示す棒グラフと、当該面積比に基づいて算出されるスコアが解析結果表示領域31に表示される。なお、
図8及び後述する
図9~
図12においては、一例として、上記(A)で説明した面積比、スコアを表示しているが、上記(B)で説明した面積比、スコアを表示してもよい。
【0090】
医用画像生成装置10においては、患者に対して、通常、左右の乳房の内外斜位方向(LMLO及びRMLO)のX線撮影を行う。そのため、医用画像処理装置20において、制御部21は、送信された左右の乳房の乳房画像Pに対して、上述したステップS11~S15を実行し、例えば、
図9に示す検査単位の乳房密度評価画面D2を表示部25に出力する。
【0091】
図9は、乳房密度評価画面D2を示す図であり、左右の乳房の内外斜位方向(LMLO及びRMLO)の解析結果を示す図である。
図9に示すように、乳房密度評価画面D2には、患者名(Name)、患者ID(Patient ID)が表示される。また、RMLO(図中“Right”と表記)及びLMLO(図中“Left”と表記)のスコアが解析結果表示領域32に表示される。このように、左右の乳房の解析結果をスコアで示すことにより、左右の比較を定量化して行うことができる。また、RMLO及びLMLOにおいてスコアが大きい方について、乳腺実質領域A3に対する乳腺領域A4の面積比を示す棒グラフと、当該面積比に基づいて算出されるスコアが解析結果表示領域33に表示される。
【0092】
このとき、制御部21は、解析結果表示領域32に表示されるRMLOのスコアとLMLOのスコアの一方又は両方が大きい場合、例えば、スコアが3以上である場合、病変見逃しリスクが高い可能性がある。その場合、医用画像処理装置20のユーザーである医師に対する報知のため、
図10の乳房密度評価画面D3に示すように、例えば、解析結果表示領域内にアラートマーク34を表示する。
【0093】
また、制御部21は、解析結果表示領域32に表示されるRMLOのスコアとLMLOのスコアが離れている場合、例えば、スコア間の差が2以上ある場合、何らかの問題が生じている可能性がある。例えば、医用画像生成装置10において、LMLOのX線撮影及びRMLOのX線撮影の一方に問題が生じていたり、医用画像処理装置20において、
図2で説明した乳房画像Pの解析処理に問題が生じていたりする可能性がある。その場合でも、医用画像処理装置20のユーザー(医師)に対する報知のため、
図10の乳房密度評価画面D3に示すように、例えば、解析結果表示領域33内にアラートマーク34を表示する。
【0094】
解析結果表示領域32に表示されるRMLOのスコアとLMLOのスコアが離れている場合、制御部21は、異なる抽出方法を用いて、
図2に示す解析処理を再度行ってもよい。
【0095】
例えば、最初、学習結果に基づく内側領域A2の抽出方法を用いて、
図2に示す解析処理を行って、
図10に示すように、解析結果表示領域32に表示されるRMLOのスコアが4、LMLOのスコアが1になったとする。この場合、例えば、圧迫乳房厚に基づく内側領域A2の抽出方法を用いて、
図2に示す解析処理を再度行う。
【0096】
異なる抽出方法により行った2回目の解析処理により、解析結果表示領域32に表示されるRMLOのスコアが4、LMLOのスコアが1になったとする。つまり、1回目と2回目の解析結果が同じになったとする。この場合、制御部21は、RMLOのスコアとLMLOのスコアが離れている状態が正しいと判断し、このままの解析結果を記憶部24や表示部25に出力する。
【0097】
一方で、異なる抽出方法により行った2回目の解析処理により、例えば、
図9に示すように、解析結果表示領域32に表示されるRMLOのスコアが2、LMLOのスコアが2になったとする。つまり、1回目と2回目の解析結果が異なるものになったとする。通常、RMLOとLMLOとは近いスコアを示すので、制御部21は、RMLOのスコアとLMLOのスコアが近い方が正しいと判断し、RMLOのスコアとLMLOのスコアが近い方の解析結果を記憶部24や表示部25に出力する。
【0098】
上述した解析結果、例えば、
図8に示す画像単位の乳房密度評価画面D1に表示した解析結果や
図9に示す検査単位の乳房密度評価画面D2に表示した解析結果などは、乳房画像Pと紐付けて、医用画像処理装置20の記憶部24に保存される(
図1を参照)。このとき、上述した解析結果及び乳房画像Pは、患者情報や検査情報などとも紐付けられて、記憶部24に保存される。保存された解析結果、乳房画像P、患者情報及び検査情報などは、例えば、
図11に示す乳房密度評価画面D4において、互いに紐付けられて表示される。
【0099】
図11は、乳房密度評価画面D4を示す図であり、左右の乳房の解析結果の時系列フォルダ35を示す図である。
図11に示すように、乳房密度評価画面D4には、時系列フォルダ35が表示される。時系列フォルダ35は、日時タブ35aとスコアグラフタブ35bを有している。日時タブ35aには、検査日時、撮影日時及び解析日時のうちのいずれかの日時が表示される。所望の日時が表示された日時タブ35aをユーザーが選択すると、制御部21は、選択した日時に対応する乳房画像P、解析結果、患者情報及び検査情報などを記憶部24から読み出す。
【0100】
そして、乳房画像のサムネイルPTを表示すると共に、スコアなどを解析結果表示領域32、33に表示する。また、このとき、時系列フォルダ35の領域においても、乳房画像のサムネイルPTを表示すると共に、スコアなどのサムネイルを解析結果表示領域33Tに表示する。
【0101】
図12は、乳房密度評価画面D5を示す図であり、左右の乳房の解析結果の時系列グラフ36を示す図である。スコアグラフタブ35bをユーザーが選択すると、制御部21は、
図12に示す乳房密度評価画面D5において、乳腺実質領域A3に対する乳腺領域A4の面積比の時系列グラフ36を表示する。このようにして、時系列グラフ36を表示して、過去の解析結果と比較することにより、医用画像処理装置20のユーザー(医師)は、病変見逃しリスクを視覚的に判断することができる。
【0102】
制御部21(出力部)は、上述した乳房密度評価画面D1~D5とは異なる表示形態の乳房密度評価画面を表示部25に出力してもよい。
【0103】
図13~
図14は、上述した乳房密度評価画面D1~D5とは異なる表示形態の乳房密度評価画面D6、D7を示す図である。
図13は、表示対象として、左右の乳房の乳房画像が選択された場合を示す図である。
図14は、表示対象として、右の乳房の乳房画像と解析結果とが選択された場合を示す図である。
【0104】
図13、
図14に示すように、乳房密度評価画面D6、D7は、患者情報表示領域51、リスト表示領域52、サムネイル表示領域53、検査情報表示領域54、55を有する。
【0105】
患者情報表示領域51は、表示対象の患者の情報、例えば、患者ID(Patient ID)、年齢(Age)、性別(Sex)等を表示する。リスト表示領域52は、患者情報表示領域51に表示された患者の検査情報をリスト表示する。サムネイル表示領域53は、リスト表示領域52で選択された検査情報の内容をサムネイルで表示する。
【0106】
図13及び
図14におけるリスト表示領域52においては、1つの検査情報が表示されて、選択された状態を示している。上述した医用画像処理装置20は、左右の乳房の乳房画像と解析結果(例えば、後述の
図15Aに示す解析結果)とを有する検査情報を記憶部24に保存しており、記憶部24に保存された表示対象の患者の検査情報はリスト表示領域52に表示される。
【0107】
検査情報において、左右の乳房の乳房画像はDICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)規格で保存されており、解析結果(例えば、後述の
図15Aに示す解析結果)は、SC(Secondary Capture)形式で保存されている。そのため、左右の乳房の乳房画像と共に
図15Aに示す解析結果を容易にサムネイルで表示することができる。
【0108】
検査情報に保存する解析結果は、後述の
図15Aに示す表示形態の解析結果に限らず、それ以外の表示形態の解析結果でもよい。本実施の形態では、どのような表示形態の解析結果であっても、解析結果をSC形式で保存するので、医用画像処理装置20に限らず、外部の医用画像表示装置40においても、解析結果を表示することができる。
【0109】
このように、検査情報において、左右の乳房の乳房画像はDICOM規格で保存されており、解析結果はSC形式で保存されているので、汎用性が高い。そのため、DICOM規格やSC形式を処理できる装置であれば、どのような装置でも、乳房画像や解析結果を表示することができる。
【0110】
検査情報表示領域54、55は、サムネイル表示領域53で選択されたサムネイルに対応する検査情報の内容を表示する。
図13に示す乳房密度評価画面D6では、サムネイル表示領域53において、検査情報の内容のサムネイルのうち左右の乳房の乳房画像のサムネイルが選択されている(
図13中の二重線)。そして、選択されたサムネイルに対応して、検査情報表示領域54は、右の乳房の乳房画像を表示し、検査情報表示領域55は、左の乳房の乳房画像を表示している。
【0111】
図14に示す乳房密度評価画面D7では、サムネイル表示領域53において、検査情報の内容のサムネイルのうち右の乳房の乳房画像と解析結果のサムネイルが選択されている(
図14中の二重線)。そして、選択されたサムネイルに対応して、検査情報表示領域54は、右の乳房の乳房画像を表示し、検査情報表示領域55は、解析結果60を表示している。
【0112】
【0113】
図15Aに示すように、解析結果60には、患者名(Name)、患者ID(Patient ID)、年齢(Age)、検査日(Date)が表示される。また、RMLO(図中“Right”と表記)及びLMLO(図中“Left”と表記)のスコアが解析結果表示領域61に表示される。また、RMLO及びLMLOにおいてスコアが大きい方が解析結果表示領域62に表示される。また、乳腺実質領域A3に対する乳腺領域A4の面積比は乳腺濃度(%)として評価できるので、乳腺濃度を示すバー表示が解析結果表示領域63に表示される。
【0114】
図15Bに示すように、解析結果表示領域63に表示されるバー表示においては、バー63aの左側に右の乳房の乳腺濃度63bが先端右向きの三角印で表示され、バー63aの右側に左の乳房の乳腺濃度63cが先端左向きの三角印で表示されている。なお、ここでは、乳腺濃度63b、63cを示すマークとして三角印を用いているが、三角印に限らず、矢印等のマークを用いてもよい。また、ここでは、バー63aの左側に右の乳房の乳腺濃度63bが、バー63aの右側に左の乳房の乳腺濃度63cが表示されているが、バー63aの左側に左の乳房の乳腺濃度63bが、バー63aの右側に右の乳房の乳腺濃度63cが表示されてもよい。
【0115】
バー63aは、目盛り63d1~63d5により4つの領域(カテゴリー)63e1~63e4に分けられている。目盛り63d1は0(%)、目盛り63d2は上述した閾値TA1(%)、目盛り63d3は上述した閾値TA2(%)、目盛り63d4は上述した閾値TA3(%)、目盛り63d5は100(%)である。従って、領域63e1はスコア1の領域、領域63e2はスコア2の領域、領域63e3はスコア3の領域、領域63e4はスコア4の領域をそれぞれ示している。
【0116】
このように、解析結果表示領域63のバー表示においては、乳腺濃度の範囲を示すバー63aに、左右の乳房について算出された乳腺濃度63b、63cを示すマーク(三角印)をそれぞれ表示している。そのため、ユーザー(医師)は、左右の乳房の乳腺濃度を視覚的に把握し、比較することができる。
【0117】
以上説明したように、本実施の形態において、医用画像処理装置20は、制御部21が乳房領域抽出部と内側領域抽出部とを備える。乳房領域抽出部は、患者の乳房をX線撮影することにより得られる乳房画像Pから乳房領域A1を抽出する。また、内側領域抽出部は、乳房領域A1の内側に位置し、輝度値が基準値以上である乳腺領域A4を抽出するために用いられる内側領域A2を抽出する。
【0118】
このように構成した本実施の形態によれば、乳房領域A1の内側に位置し、輝度値が基準値以上である乳腺領域A4を抽出するために用いられる内側領域A2を抽出するので、外部因子の影響を受け易い領域を除くことができる。これにより、乳腺領域A4を抽出する基準値の精度を高めることができ、乳腺領域A4の抽出精度を向上させることができる。この結果、病変に関する指標、つまり、病変見逃しリスクを示す指標となるスコアの精度を高めることができる。医用画像処理装置20のユーザー(医師)は、病変見逃しリスクを示す指標となるスコアに基づいて、超音波検査などの追加検査を患者に勧めることができる。
【0119】
上記実施の形態では、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0120】
10 医用画像生成装置
11 圧迫板
20 医用画像処理装置
21 制御部
22 操作部
23 入出力部
24 記憶部
25 表示部
26 バス
30 ネットワーク
31、32、33 解析結果表示領域
34 アラートマーク
35 時系列フォルダ
35a 日時タブ
35b スコアグラフタブ
36 時系列グラフ
40 医用画像表示装置
100 医用画像システム