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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162975
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20221018BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02M7/12 W
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045259
(22)【出願日】2022-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2021067836
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】小川 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】宮島 孝幸
【テーマコード(参考)】
5H006
5H770
【Fターム(参考)】
5H006AA01
5H006BB05
5H006CA07
5H006CB01
5H006CC01
5H006DA02
5H006DB01
5H006DC02
5H006DC05
5H770AA05
5H770BA04
5H770BA05
5H770CA02
5H770DA03
5H770DA21
5H770DA30
5H770DA41
5H770EA01
(57)【要約】
【課題】空気調和機が発生する高調波を抑制する。
【解決手段】第2の電源線(L2)を流れる室内機側の入力電流(iin_室内機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計と、第3の電源線(L3)を流れる室外機側の入力電流(iin_室外機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計との和よりも、室内機側の入力電流(iin_室内機)と室外機側の入力電流(iin_室外機)とを合計した第1の電源線(L1)を流れる合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計を小さくする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内機(10)及び室外機(20)と、室内機側の電源線(L2)と室外機側の電源線(L3)とを有し、前記室内機側及び室外機側の電源線(L2,L3)は、交流電源(2)に接続される共通の電源線(L1)から分岐し、前記室内機側の電源線(L2)から前記室内機(10)へ電力が供給され、前記室外機側の電源線(L3)から前記室外機(20)に電力が供給される空気調和機であって、
前記室内機(10)及び前記室外機(20)の各機器は、
前記交流電源(2)から当該機器側の電源線(L2,L3)に送られた交流を整流して出力するコンバータ回路(111,211)と、
前記コンバータ回路(111,211)により出力された直流を交流に変換するインバータ回路(112,212)と、
前記インバータ回路(112,212)の入力ノード(IN1,IN2,ON1,ON2)間に接続されたコンデンサ(113,213)とを有し、
前記室内機側の電源線(L2)を流れる室内機側の入力電流(iin_室内機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計と、前記室外機側の電源線(L3)を流れる室外機側の入力電流(iin_室外機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計との和よりも、前記室内機側の入力電流(iin_室内機)と前記室外機側の入力電流(iin_室外機)とを合計した前記共通の電源線(L1)を流れる合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計が小さい空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和機において、
前記室内機側の入力電流(iin_室内機)の第15~40次の整数次成分の実効値の合計と、前記室外機側の入力電流(iin_室外機)の第15~40次の整数次成分の実効値の合計との和よりも、前記合計電流(i_合計)の第15~40次の整数次成分の実効値の合計が小さい空気調和機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の空気調和機において、
前記室内機側の入力電流(iin_室内機)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計と、前記室外機側の入力電流(iin_室外機)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計との和から前記合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計を引くことで得られる差分は、前記室内機側の入力電流(iin_室内機)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計の3/4よりも大きい空気調和機。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の空気調和機において、
第2~40次のうちの少なくとも1つの整数の次数において、前記合計電流(i_合計)の当該次数の成分の実効値が、前記室外機側の入力電流(iin_室外機)の当該次数の成分の実効値よりも小さい空気調和機。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の空気調和機において、_
前記室内機(10)及び室外機(20)のいずれか一方の機器側の入力電流(iin_室内機,iin_室外機)に相関する値に基づいて、他方の機器のコンバータ回路(111,211)及びインバータ回路(112,212)の少なくとも一方を制御する制御手段(217,117c,117d)を備える空気調和機。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の空気調和機において、
前記室内機(10)及び室外機(20)の一方は、リアクトル(L)を有し、
前記室内機側の電源線(L2)には、前記交流電源(2)から前記リアクトル(L)を介して前記交流が送られ、
前記室外機側の電源線(L3)には、前記交流電源(2)から前記リアクトル(L)を介して前記交流が送られる空気調和機。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の空気調和機において、
前記室外機(20)側のインバータ回路(212)は、スイッチング素子(212a~212f)を備え、前記室外機(20)側のコンバータ回路(211)により出力された直流を前記スイッチング素子(212a~212f)のスイッチング動作により交流に変換し、
前記室外機(20)側のコンバータ回路(211)の出力電圧は、その最大値がその最小値の2倍以上となるような大きな脈動を有している空気調和機。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の空気調和機において、
前記室内機(10)が、前記リアクトル(L)を有し、
前記リアクトル(L)、前記室内機(10)側のコンバータ回路(111)、前記室内機(10)側のインバータ回路(112)、及び前記室内機(10)側のコンデンサ(113)は、共通の基板(100)に実装されている空気調和機。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の空気調和機において、
前記室内機(10)を複数有し、
前記室内機側の電源線(L2)は、室内機(10)毎に設けられて前記共通の電源線(L1)から分岐し、
前記複数の室内機(10)毎に設けられた複数の前記室内機側の電源線(L2)を流れる室内機側の入力電流(iin_室内機1,iin_室内機2)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計と、前記室外機側の電源線(L3)を流れる室外機側の入力電流(iin_室外機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計との和よりも、前記複数の室内機(10)毎に設けられた複数の前記室内機側の電源線(L2)を流れる室内機側の入力電流(iin_室内機1,iin_室内機2)と前記室外機側の入力電流(iin_室外機)とを合計した前記共通の電源線(L1)を流れる合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計が小さい空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、室内機及び室外機を備えた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、交流電源から供給された交流を整流して出力するコンバータ回路と、前記コンバータ回路により出力された直流を交流に変換するインバータ回路と、前記インバータ回路の入力ノード間に接続されたコンデンサとを有する電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5741000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、特許文献1のような電力変換装置を備えた電気機器は、IEC(International Electrotechnical Commission)61000-3-2等の高調波規格に適合することが要請される。したがって、空気調和機の室内機及び室外機のそれぞれに電力変換装置を設ける場合にも、空気調和機が発生する高調波を抑制することが求められる。
【0005】
本開示の目的は、空気調和機が発生する高調波を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、室内機(10)及び室外機(20)と、室内機側の電源線(L2)と室外機側の電源線(L3)とを有し、前記室内機側及び室外機側の電源線(L2,L3)は、交流電源(2)に接続される共通の電源線(L1)から分岐し、前記室内機側の電源線(L2)から前記室内機(10)へ電力が供給され、前記室外機側の電源線(L3)から前記室外機(20)に電力が供給される空気調和機であって、前記室内機(10)及び前記室外機(20)の各機器は、前記交流電源(2)から当該機器側の電源線(L2,L3)に送られた交流を整流して出力するコンバータ回路(111,211)と、前記コンバータ回路(111,211)により出力された直流を交流に変換するインバータ回路(112,212)と、前記インバータ回路(112,212)の入力ノード(IN1,IN2,ON1,ON2)間に接続されたコンデンサ(113,213)とを有し、前記室内機側の電源線(L2)を流れる室内機側の入力電流(iin_室内機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計と、前記室外機側の電源線(L3)を流れる室外機側の入力電流(iin_室外機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計との和よりも、前記室内機側の入力電流(iin_室内機)と前記室外機側の入力電流(iin_室外機)とを合計した前記共通の電源線(L1)を流れる合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計が小さい。
【0007】
第1の態様では、室内機側の入力電流(iin_室内機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計と、室外機側の入力電流(iin_室外機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計との和と、合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計とを等しくした場合に比べ、前記合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の合計、すなわち空気調和機(1)が発生する高調波を抑制できる。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、前記室内機側の入力電流(iin_室内機)の第15~40次の整数次成分の実効値の合計と、前記室外機側の入力電流(iin_室外機)の第15~40次の整数次成分の実効値の合計との和よりも、前記合計電流(i_合計)の第15~40次の整数次成分の実効値の合計が小さい。
【0009】
第2の態様では、前記合計電流(i_合計)の第15~40次の整数次成分の合計、すなわち空気調和機(1)が発生する第15~40次の高調波を抑制できる。
【0010】
本開示の第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記室内機側の入力電流(iin_室内機)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計と、前記室外機側の入力電流(iin_室外機)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計との和から前記合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計を引くことで得られる差分は、前記室内機側の入力電流(iin_室内機)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計の3/4よりも大きい。
【0011】
第3の態様では、前記差分が前記室内機側の入力電流(iin_室内機)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計の3/4以下である場合に比べ、前記合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の合計、すなわち空気調和機(1)が発生する高調波をより効果的に抑制できる。
【0012】
本開示の第4の態様は、第1の態様から第3の態様のいずれか1つの態様において、第2~40次のうちの少なくとも1つの整数の次数において、前記合計電流(i_合計)の当該次数の成分の実効値が、前記室外機側の入力電流(iin_室外機)の当該次数の成分の実効値よりも小さい。
【0013】
第4の態様では、少なくとも1つの整数の次数において、室外機側の入力電流(iin_室外機)に含まれる当該次数の成分の少なくとも一部が、室内機側の入力電流(iin_室内機)に含まれる当該次数の成分により打ち消されるので、前記合計電流(i_合計)の当該次数の成分、すなわち空気調和機(1)が発生する当該次数の高調波を抑制できる。
【0014】
本開示の第5の態様は、第1の態様から第4の態様のいずれか1つの態様において、前記室内機(10)及び室外機(20)のいずれか一方の機器側の入力電流(iin_室内機,iin_室外機)に相関する値に基づいて、他方の機器のコンバータ回路(111,211)及びインバータ回路(112,212)の少なくとも一方を制御する制御手段(217,117c,117d)を備える。
【0015】
第5の態様では、前記室内機(10)及び室外機(20)のいずれか一方の機器側の入力電流(iin_室内機,iin_室外機)に相関する値に基づいて、他方の機器のコンバータ回路(111,211)及びインバータ回路(112,212)の少なくとも一方が制御される。
【0016】
本開示の第6の態様は、第1の態様から第5の態様のいずれか1つの態様において、前記室内機(10)及び室外機(20)の一方は、リアクトル(L)を有し、前記室内機側の電源線(L2)には、前記交流電源(2)から前記リアクトル(L)を介して前記交流が送られ、前記室外機側の電源線(L3)には、前記交流電源(2)から前記リアクトル(L)を介して前記交流が送られる。
【0017】
第6の態様では、室内機(10)側のコンバータ回路(111)と室外機(20)側のコンバータ回路(211)の両方に、単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介して交流が供給されるので、室内機(10)側のコンバータ回路(111)に、単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介さずに交流が供給される場合に比べ、室内機(10)側のコンバータ回路(111)の入力電流に重畳する高調波成分を抑制できる。その結果、室内機(10)側のコンバータ回路(111)と室外機(20)側のコンバータ回路(211)の入力電流の合計、すなわち空気調和機(1)全体の入力電流に重畳する高調波成分を抑制できる。
【0018】
本開示の第7の態様は、第1の態様から第6の態様のいずれか1つの態様において、前記室外機(20)側のインバータ回路(212)は、スイッチング素子(212a~212f)を備え、前記室外機(20)側のコンバータ回路(211)により出力された直流を前記スイッチング素子(212a~212f)のスイッチング動作により交流に変換し、前記室外機(20)側のコンバータ回路(211)の出力電圧は、その最大値がその最小値の2倍以上となるような大きな脈動を有している。
【0019】
室外機(20)側のコンバータ回路(211)の出力電圧の脈動を許容するためには、当該脈動を完全に吸収する場合に比べ、室外機(20)側のコンデンサ(213)の容量を小さく設定する必要がある。第7の態様では、室外機(20)側のコンデンサ(213)に室外機(20)側のコンバータ回路(211)の出力電圧の脈動を完全に吸収させる場合に比べ、室外機(20)側のコンバータ回路(211)の入力電圧半周期中の通電期間を長くできる。当該通電期間を長くすると、入力電流に含まれる高調波成分が小さくなるため、高調波成分の所定の抑制効果を得るために必要なリアクトル(L)のインダクタンスを小さくできる。したがって、リアクトル(L)のサイズを小さくできる。
【0020】
本開示の第8の態様は、第1の態様から第7の態様のいずれか1つの態様において、前記室内機(10)が、前記リアクトル(L)を有し、前記リアクトル(L)、前記室内機(10)側のコンバータ回路(111)、前記室内機(10)側のインバータ回路(112)、及び前記室内機(10)側のコンデンサ(113)は、共通の基板(100)に実装されている。
【0021】
第8の態様では、リアクトル(L)を実装するための基板を、室内機(10)側のコンバータ回路(111)、室内機(10)側のインバータ回路(112)、及び室内機(10)側のコンデンサ(113)を実装するための基板とは別に室内機(10)内に設ける場合に比べ、室内機(10)内に必要なスペースを小さくできるので、室内機(10)を小型化できる。
【0022】
本開示の第9の態様は、第1の態様から第8の態様のいずれか1つの態様において、前記室内機(10)を複数有し、前記室内機側の電源線(L2)は、室内機(10)毎に設けられて前記共通の電源線(L1)から分岐し、前記複数の室内機(10)毎に設けられた複数の前記室内機側の電源線(L2)を流れる室内機側の入力電流(iin_室内機1,iin_室内機2)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計と、前記室外機側の電源線(L3)を流れる室外機側の入力電流(iin_室外機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計との和よりも、前記複数の室内機(10)毎に設けられた複数の前記室内機側の電源線(L2)を流れる室内機側の入力電流(iin_室内機1,iin_室内機2)と前記室外機側の入力電流(iin_室外機)とを合計した前記共通の電源線(L1)を流れる合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計が小さい。
【0023】
第9の態様では、空気調和機(1)が室内機(10)を複数有する場合に、空気調和機(1)が発生する高調波を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施形態1に係る空気調和機の構成を示す回路図である。
図2図2は、室内機側制御部及び室外機側制御部の構成を示す機能ブロック図である。
図3図3は、室内機側コンバータ回路の入力電流及び入力電圧を示すタイミングチャートである。
図4図4は、合計電流の指令値を例示するタイミングチャートである。
図5図5は、室内機側の入力電流に重畳する高調波成分を示すグラフである。
図6図6は、IEC61000-3-2で定められた高調波成分の限度値に対する室内機側の入力電流に重畳する高調波成分の割合を示すグラフである。
図7図7は、実施形態2の図2相当図である。
図8図8は、実施形態3の図7相当図である。
図9図9は、実施形態4の図2相当図である。
図10図10は、実施形態5の図1相当図である。
図11図11は、実施形態5の図2相当図である。
図12】室外機側の入力電流の指令値と測定値を例示するタイミングチャートである。
図13図13は、実施形態6の図1相当図である。
図14図14は、比較例1における室内機側コンバータ回路の入力電流及び入力電圧を示すタイミングチャートである。
図15図15は、実施例及び比較例1における室内機側コンバータ回路の入力電流に重畳する各次数の周波数成分を示すグラフである。
図16図16は、IEC61000-3-2で定められた高調波成分の限度値と、比較例2における室外機側コンバータ回路の入力電流に重畳する各次数の周波数成分を示すグラフである。
図17図17は、IEC61000-3-2で定められた高調波成分の限度値と、比較例3における室外機側コンバータ回路の入力電流に重畳する各次数の周波数成分を示すグラフである。
図18図18は、IEC61000-3-2で定められた高調波成分の限度値と、比較例2における空気調和機の入力電流に重畳する各次数の周波数成分を示すグラフである。
図19図19は、実施形態7の図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0026】
(実施形態1)
図1は、本開示の実施形態1に係る空気調和機(1)を示す。この空気調和機(1)は、室内機(10)及び室外機(20)と、第1~第3の電源線(L1~L3)とを備える。
【0027】
室内機(10)は、室内機側電力変換装置(11)と、ファンモータ(12)と、図示しない室内機側筐体を備えている。室内機側電力変換装置(11)と、ファンモータ(12)とは、前記室内機側筐体に収容されている。室外機(20)は、室外機側電力変換装置(21)と、圧縮機用モータ(22)と、図示しない室外機側筐体を備えている。室外機側電力変換装置(21)と、圧縮機用モータ(22)とは、前記室外機側筐体に収容されている。
【0028】
第1の電源線(L1)は、単相交流電源(2)と接続されている。この第1の電源線(L1)は、室内機(10)の室内機側筐体内に引き込まれている。この第1の電源線(L1)は、室内機(10)内で第2及び第3の電源線(L2,L3)に分岐する。第2の電源線(L2)から室内機(10)の室内機側電力変換装置(11)へ電力が供給される。第3の電源線(L3)は、室外機(20)の室外機側筐体内に引き込まれている。この第3の電源線(L3)から室外機(20)の室外機側電力変換装置(21)へ電力が供給される。第1の電源線(L1)が共通の電源線を構成し、第2の電源線(L2)が室内機側の電源線を構成し、第3の電源線(L3)が室外機側の電源線を構成する。
【0029】
室内機側電力変換装置(11)は、単相交流電源(2)から第2の電源線(L2)に送られた交流を、所望周波数及び所望電圧を有する交流に変換して、ファンモータ(12)に供給する。具体的には、室内機側電力変換装置(11)は、室内機側コンバータ回路(111)と、室内機側インバータ回路(112)と、室内機側コンデンサ(113)と、室内機側入力電流測定部(114)と、室内機側直流電流測定部(115)と、室内機側直流電圧測定部(116)と、室内機側制御部(117)とを備えている。
【0030】
室内機側コンバータ回路(111)は、単相交流電源(2)から第2の電源線(L2)に送られた交流を整流して第1及び第2の室内機側直流電力線(118,119)に出力する。室内機側コンバータ回路(111)は、第1及び第2の室内機側入力端子(ITE1,ITE2)を備え、これら第1及び第2の室内機側入力端子(ITE1,ITE2)に第2の電源線(L2)から交流が入力される。室内機側コンバータ回路(111)は、ブリッジ状に結線された第1~第4の室内機側整流ダイオード(111a~111d)を有している。これら第1~第4の室内機側整流ダイオード(111a~111d)は、そのカソードを第1の室内機側直流電力線(118)側に向けるとともに、そのアノードを第2の室内機側直流電力線(119)側に向けている。第1及び第2の室内機側整流ダイオード(111a,111b)は、第1及び第2の室内機側直流電力線(118,119)の間に第1の室内機側直流電力線(118)側から順に互いに直列に接続され、それらの接点は、第1の室内機側入力端子(ITE1)に接続されている。第3及び第4の室内機側整流ダイオード(111c,111d)は、第1及び第2の室内機側直流電力線(118,119)の間に第1の室内機側直流電力線(118)側から順に互いに直列に接続され、それらの接点は、第2の室内機側入力端子(ITE2)に接続されている。
【0031】
室内機側インバータ回路(112)は、室内機側コンバータ回路(111)により出力された直流を交流にスイッチング動作により変換してファンモータ(12)に供給する。詳しくは、室内機側インバータ回路(112)は、6つの室内機側スイッチング素子(112a~112f)と、6つの室内機側還流ダイオード(112g)とを有している。6つの室内機側スイッチング素子(112a~112f)は、ブリッジ結線されている。詳しく説明すると、室内機側インバータ回路(112)は、第1及び第2の室内機側直流電力線(118,119)間に接続された3つのスイッチングレグを備えている。スイッチングレグは、2つの室内機側スイッチング素子(112a~112f)が互いに直列に接続されたものである。3つのスイッチングレグの各々において、上アームの室内機側スイッチング素子(112a,112c,112e)と下アームの室内機側スイッチング素子(112b,112d,112f)との中点が、ファンモータ(12)の各相のコイル(u相、v相、w相のコイル)にそれぞれ接続されている。各室内機側スイッチング素子(112a~112f)には、室内機側還流ダイオード(112g)が1つずつ逆並列に接続されている。
【0032】
室内機側コンデンサ(113)は、室内機側インバータ回路(112)の入力ノード(IN1,IN2)間、すなわち第1及び第2の室内機側直流電力線(118,119)の間に接続されている。室内機側コンデンサ(113)は、室内機側コンバータ回路(111)及び室内機側インバータ回路(112)のそれぞれに対し並列に接続されている。室内機側コンデンサ(113)は、室内機側コンバータ回路(111)の出力電圧を平滑化する平滑コンデンサである。
【0033】
室内機側入力電流測定部(114)は、第2の電源線(L2)を流れる室内機側の入力電流(iin_室内機)を測定する。室内機側入力電流測定部(114)は、第2の室内機側直流電力線(119)に設けられている。
【0034】
室内機側直流電流測定部(115)は、室内機側インバータ回路(112)に入力される室内機側の直流電流(idc_室内機)を測定する。
【0035】
室内機側直流電圧測定部(116)は、室内機側コンデンサ(113)の直流電圧(直流リンク電圧)(vdc_室内機)を測定する。
【0036】
室内機側制御部(117)は、マイクロコンピュータと、それを制御するソフトウエアが格納されたメモリディバイスを用いて構成されている。図2に示すように、室内機側制御部(117)は、室内機側モータ制御部(117a)と、測定値送信部(117b)とを備えている。
【0037】
室内機側モータ制御部(117a)は、室内機側直流電流測定部(115)及び室内機側直流電圧測定部(116)の測定値に基づいて、ファンモータ(12)の回転数が、与えられた指令値となるように、制御信号(G_室内機)により室内機側インバータ回路(112)の各スイッチング素子(112a~112f)を制御する。
【0038】
測定値送信部(117b)は、室内機側入力電流測定部(114)により測定された室内機側の入力電流(iin_室内機)を室外機(20)に送信する。
【0039】
ファンモータ(12)は、室内機側電力変換装置(11)により供給される交流によって駆動される。
【0040】
室外機側電力変換装置(21)は、図1に示すように、リアクトル(L)と、室外機側コンバータ回路(211)と、室外機側インバータ回路(212)と、室外機側コンデンサ(213)と、室外機側入力電流測定部(214)と、室外機側直流電流測定部(215)と、室外機側直流電圧測定部(216)と、制御手段としての室外機側制御部(217)とを備えている。
【0041】
リアクトル(L)は、第3の電源線(L3)に設けられている。つまり、リアクトル(L)の一端は、第1の電源線(L1)を介して単相交流電源(2)に接続されている。一方、リアクトル(L)の他端は、室外機側コンバータ回路(211)の後述する第2の室外機側入力端子(OTE2)に接続されている。
【0042】
室外機側コンバータ回路(211)は、単相交流電源(2)から第3の電源線(L3)に送られた交流を整流して第1及び第2の室外機側直流電力線(218,219)に出力する。室外機側コンバータ回路(211)は、第1及び第2の室外機側入力端子(OTE1,OTE2)を備え、これら第1及び第2の室外機側入力端子(OTE1,OTE2)に第3の電源線(L3)から交流が入力される。室外機側コンバータ回路(211)は、ブリッジ状に結線された第1~第4の室外機側整流ダイオード(211a~211d)を有するブリッジ回路である。これら第1~第4の室外機側整流ダイオード(211a~211d)は、そのカソードを第1の室外機側直流電力線(218)側に向けるとともに、そのアノードを第2の室外機側直流電力線(219)側に向けている。第1及び第2の室外機側整流ダイオード(211a,211b)は、第1及び第2の室外機側直流電力線(218,219)の間に第1の室外機側直流電力線(218)側から順に互いに直列に接続され、それらの接点は、第1の室外機側入力端子(OTE1)に接続されている。第3及び第4の室外機側整流ダイオード(211c,211d)は、第1及び第2の室外機側直流電力線(218,219)の間に第1の室外機側直流電力線(218)側から順に互いに直列に接続され、それらの接点は、第2の室外機側入力端子(OTE2)に接続されている。
【0043】
室外機側インバータ回路(212)は、室外機側コンバータ回路(211)により出力された直流を交流にスイッチング動作により変換し、圧縮機用モータ(22)に供給する。詳しくは、室外機側インバータ回路(212)は、6つの室外機側スイッチング素子(212a~212f)と、6つの室外機側還流ダイオード(212g)とを有している。6つの室外機側スイッチング素子(212a~212f)は、ブリッジ結線されている。詳しく説明すると、室外機側インバータ回路(212)は、第1及び第2の室外機側直流電力線(218,219)間に接続された3つのスイッチングレグを備えている。スイッチングレグは、2つの室外機側スイッチング素子(212a~212f)が互いに直列に接続されたものである。3つのスイッチングレグの各々において、上アームの室外機側スイッチング素子(212a,212c,212e)と下アームの室外機側スイッチング素子(212b,212d,212f)との中点が、圧縮機用モータ(22)の各相のコイル(u相、v相、w相のコイル)にそれぞれ接続されている。各室外機側スイッチング素子(212a~212f)には、室外機側還流ダイオード(212g)が1つずつ逆並列に接続されている。
【0044】
室外機側コンデンサ(213)は、室外機側インバータ回路(212)の入力ノード(ON1,ON2)間、すなわち第1及び第2の室外機側直流電力線(218,219)の間に接続されている。室外機側コンデンサ(213)は、室外機側コンバータ回路(211)及び室外機側インバータ回路(212)のそれぞれに対し並列に接続されている。
【0045】
室外機側コンデンサ(213)の電圧は、単相交流電源(2)から供給される入力交流の周波数に応じて脈動する。室外機側コンデンサ(213)の容量は、室外機側コンデンサ(213)が室外機側コンバータ回路(211)の出力電圧をほとんど平滑化できないが、室外機側インバータ回路(212)のスイッチング動作に起因する室外機側コンバータ回路(211)の入力電流の変動を抑制できるように設定されている。
【0046】
そのため、室外機側コンデンサ(213)の容量値は、数十μF程度で、室外機側コンバータ回路(211)の出力電圧は、その最大値がその最小値の2倍以上となるような大きな脈動を有している。
【0047】
室外機側入力電流測定部(214)は、第3の電源線(L3)を流れる室外機側の入力電流(iin_室外機)を測定する。室外機側入力電流測定部(214)は、第2の室外機側直流電力線(219)に設けられる。
【0048】
室外機側直流電流測定部(215)は、室外機側インバータ回路(212)に入力される室外機側の直流電流(idc_室外機)を測定する。
【0049】
室外機側直流電圧測定部(216)は、室外機側コンデンサ(213)の直流電圧(直流リンク電圧)(vdc_室外機)を測定する。
【0050】
室外機側制御部(217)は、マイクロコンピュータと、それを制御するソフトウエアが格納されたメモリディバイスを用いて構成されている。図2に示すように、室外機側制御部(217)は、入力電流指令部(217a)と、補償量算出部(217b)と、減算部(217c)と、速度制御部(217d)と、電流指令演算部(217e)と、加算部(217f)と、座標変換部(217g)と、dq軸電流制御部(217h)と、PWM演算部(217i)とを備えている。
【0051】
入力電流指令部(217a)は、室内機(10)の測定値送信部(117b)によって送信された室内機側の入力電流(iin_室内機)を受信する。入力電流指令部(217a)には、予め、合計電流の指令値(i*_合計)(図4参照)が設定されている。入力電流指令部(217a)は、当該合計電流の指令値(i*_合計)から室内機側の入力電流(iin_室内機)を減算して得られる値を、室外機側の入力電流の指令値(iin*_室外機)として算出する。また、合計電流の指令値(i*_合計)は、例えば、時間や電源電圧の基本波の位相を引数として、時間や電源電圧の基本波の位相と電流値(指令値)との複数種類の組み合わせを示すテーブルに基づいて設定される。
【0052】
例えば、図3に示す室内機側の入力電流(iin_室内機)の測定値を、図4に示す合計電流の指令値(i*_合計)から減算することにより、室外機側の入力電流の指令値(iin*_室外機)を算出する。
【0053】
補償量算出部(217b)は、室外機側の入力電流の指令値(iin*_室外機)と、室外機側入力電流測定部(214)により測定された室外機側の入力電流(iin_室外機)の測定値との偏差が小さくなるようにq軸電流指令補償量(icomp*)を算出して出力する。補償量算出部(217b)は、室外機側の入力電流の指令値(iin*_室外機)と、室外機側の入力電流(iin_室外機)の測定値との偏差に基づいて、例えばPI演算(比例積分)を行うことにより、q軸電流指令補償量(icomp*)を求める。
【0054】
減算部(217c)は、圧縮機用モータ(22)の回転数(ω)と回転数指令値(ω*)との偏差を算出する。なお、圧縮機用モータ(22)の回転数(ω)は、室外機側直流電流測定部(215)により測定される室外機側の直流電流(idc_室外機)と室外機側の直流電圧(vdc_室外機)とPWM演算部(217i)の出力(G_室外機)(後述)とに基づいて算出できる。具体的には、室外機側の直流電流(idc_室外機)と室外機側の直流電圧(vdc_室外機)とPWM演算部(217i)の出力(G_室外機)とから圧縮機用モータ(22)のu相電流(iu)、v相電流(iv)及びw相電流(iw)と圧縮機用モータ(22)のu相電圧、v相電圧、及びw相電圧とを計算し、これらの値とモータ定数から圧縮機用モータ(22)の磁極位置を推定できる。また、圧縮機用モータ(22)の磁極位置の微分値が圧縮機用モータ(22)の電気角周波数であり、圧縮機用モータ(22)の回転数(ω)は、この電気角周波数を圧縮機用モータ(22)の極対数で除算した値となる。
【0055】
速度制御部(217d)は、圧縮機用モータ(22)の回転数(ω)と回転数指令値(ω*)との偏差に基づいて、例えばPID演算(比例、積分、微分)を行って、平均モータトルクの指令値(以下、平均トルク指令値(Tm*))を生成する。
【0056】
電流指令演算部(217e)は、入力電流指令部(217a)により算出された室外機側の入力電流の指令値(iin*_室外機)に基づいてインバータ電力を導出し、当該インバータ電力を平均値が1となるように正規化し、平均トルク指令値(Tm*)に掛けることにより、q軸電流(iq)の指令値(以下、q軸電流指令値(iq*)という)の基になる脈動指令値(ip*)を生成する。インバータ電力は、例えば、特開2019-68731号公報に開示された方法に基づいて導出できる。
【0057】
加算部(217f)は、電流指令演算部(217e)によって生成された脈動指令値(ip*)と、補償量算出部(217b)により求められたq軸電流指令補償量(icomp*)とを加算し、加算結果をq軸電流指令値(iq*)として出力する。
【0058】
座標変換部(217g)は、圧縮機用モータ(22)のu相電流(iu)、w相電流(iw)、及び回転子(図示を省略)の電気角(モータ位相)に基づいて、いわゆるdq変換を行って圧縮機用モータ(22)のd軸電流(id)及びq軸電流(iq)を導出する。なお、u相電流(iu)及びw相電流(iw)は、例えば、電流センサを設けて直接その値を検出することができるし、室外機側の直流電流(idc_室外機)とPWM演算部(217i)の出力(G_室外機)とに基づいて算出することもできる。
【0059】
dq軸電流制御部(217h)は、d軸電流指令値(id*)、q軸電流指令値(iq*)、d軸電流(id)、及びq軸電流(iq)に基づいて、d軸電圧指令値(vd*)及びq軸電圧指令値(vq*)を導出する。具体的には、dq軸電流制御部(217h)は、d軸電流指令値(id*)とd軸電流(id)との偏差、及びq軸電流指令値とq軸電流(iq)との偏差がそれぞれ小さくなるように、d軸電圧指令値(vd*)及びq軸電圧指令値(vq*)を導出する。
【0060】
PWM演算部(217i)は、室外機側インバータ回路(212)の室外機側スイッチング素子(212a~212f)のオン/オフを制御するための制御信号(G_室外機)を生成する。具体的には、PWM演算部(217i)は、モータ位相、室外機側の直流電圧(vdc_室外機)、d軸電圧指令値(vd*)、q軸電圧指令値(vq*)、及び圧縮機用モータ(22)の磁極位置に基づいて、スイッチング素子(212a~212f)の各々に供給される制御信号(G_室外機)のデューティー比を設定する。制御信号(G_室外機)が出力されると、各スイッチング素子(212a~212f)は、PWM演算部(217i)によって設定されたデューティー比でスイッチング動作(オンオフ動作)を行う。この制御信号(G_室外機)は周期的に更新され、室外機側インバータ回路(212)におけるスイッチング動作が制御される。
【0061】
圧縮機用モータ(22)は、室外機側電力変換装置(21)により供給される交流によって駆動される。
【0062】
上述のように構成された空気調和機(1)の室内機側電力変換装置(11)及び室外機側電力変換装置(21)が動作を開始すると、室内機側制御部(117)の測定値送信部(117b)が、室内機側入力電流測定部(114)により測定された室内機側の入力電流(iin_室内機)を室外機(20)に送信する。室外機側制御部(217)の入力電流指令部(217a)は、予め設定された合計電流の指令値(i*_合計)から室内機側の入力電流(iin_室内機)を減算して得られる値を、室外機側の入力電流の指令値(iin*_室外機)として算出する。そして、補償量算出部(217b)は、室外機側の入力電流の指令値(iin*_室外機)と、室外機側の入力電流(iin_室外機)の測定値との偏差が小さくなるようにq軸電流指令補償量(icomp*)を算出して出力する。加算部(217f)は、このq軸電流指令補償量(icomp*)と電流指令演算部(217e)によって生成された脈動指令値(ip*)とを加算し、加算結果をq軸電流指令値(iq*)として出力する。そして、このq軸電流指令値(iq*)に基づいて、dq軸電流制御部(217h)及びPWM演算部(217i)により、室外機側インバータ回路(212)の室外機側スイッチング素子(212a~212f)のオン/オフが制御される。
【0063】
このように、室外機側制御部(217)は、室内側の入力電流(iin_室内機)の測定値に基づいて、室内側の入力電流(iin_室内機)と室外機側の入力電流(iin_室外機)との和と、予め設定された合計電流の指令値(i*_合計)との偏差が小さくなるように、室外機側インバータ回路(212)を制御する。
【0064】
その結果、第2の電源線(L2)を流れる室内機側の入力電流(iin_室内機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計と、第3の電源線(L3)を流れる室外機側の入力電流(iin_室外機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計との和よりも、室内機側の入力電流(iin_室内機)と室外機側の入力電流(iin_室外機)とを合計した第1の電源線(L1)を流れる合計電流(i*_合計)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計が小さくなる。つまり、室内機側の入力電流(iin_室内機)に含まれる第k次の成分を、ik_室内機、室外機側の入力電流(iin_室外機)に含まれる第k次の成分を、ik_室外機、合計電流(i_合計)に含まれる第k次の成分を、ik_合計とすると、以下の式(1)が成り立つ。
【0065】
【数1】
【0066】
ここで、図5は、室内機側の入力電流(iin_室内機)に重畳する高調波成分を示す。室内機側コンバータ回路(111)の入力電流に重畳する高調波成分は、室内機側の入力電流(iin_室内機)に対し、高速フーリエ変換(FFT:fast Fourier transform)を行うことにより得られる。
【0067】
図6は、IEC61000-3-2で定められた高調波成分の限度値に対する室内機側の入力電流(iin_室内機)に重畳する高調波成分の割合を示すグラフである。
【0068】
図6に示すように、IEC61000-3-2で定められた高調波成分の限度値に対する室内機側の入力電流(iin_室内機)に重畳する高調波成分の割合は、第3~13次の奇数次成分に比べ、第15~39次の奇数次成分で高くなっている。
【0069】
ここで、室内機側の入力電流(iin_室内機)の第15~40次の整数次成分の実効値の合計と、室外機側の入力電流(iin_室外機)の第15~40次の整数次成分の実効値の合計との和よりも、合計電流(i_合計)の第15~40次の整数次成分の実効値の合計が小さくなるように制御することで、IEC61000-3-2に空気調和機(1)を適合させ易い。したがって、以下の式(2)が成り立つように制御する。
【0070】
【数2】
【0071】
さらに、室内機側の入力電流(iin_室内機)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計と、室外機側の入力電流(iin_室外機)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計との和から合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計を引くことで得られる差分は、室内機側の入力電流(iin_室内機)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計の3/4よりも大きくなる。つまり、以下の式(3)が成り立つ。
【0072】
【数3】
【0073】
したがって、前記差分が室内機側の入力電流(iin_室内機)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計の3/4以下である場合に比べ、合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の合計、すなわち空気調和機(1)が発生する高調波をより効果的に抑制できる。
【0074】
また、第2~40次のうちの少なくとも1つの整数の次数において、前記合計電流(i_合計)の当該次数の成分の実効値が、前記室外機側の入力電流(iin_室外機)の当該次数の成分の実効値よりも小さい。つまり、第2~40次のうちの少なくとも1つの整数において、当該整数をkとすると、以下の式(4)が成り立つ。
【0075】
【数4】
【0076】
このように、少なくとも1つの整数の次数において、室外機側の入力電流(iin_室外機)に含まれる当該次数の成分の少なくとも一部が、室内機側の入力電流(iin_室内機)に含まれる当該次数の成分により打ち消されるので、合計電流(i_合計)の当該次数の成分、すなわち空気調和機(1)が発生する当該次数の高調波を抑制できる。例えば、圧縮機用モータ(22)の構造に起因して生じる高調波により室外機側の入力電流(iin_室外機)に含まれる高調波成分のうち、高調波成分の限度値に対する割合が21次成分において突出して大きくなる場合、少なくともこの21次成分について合計電流(i_合計)の当該次数の成分が低減されるように制御する。
【0077】
したがって、本実施形態1によれば、室内機側の入力電流(iin_室内機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計と、室外機側の入力電流(iin_室外機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計との和と、合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計とを等しくした場合に比べ、前記合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の合計、すなわち空気調和機(1)が発生する高調波を抑制できる。
【0078】
(実施形態2)
図7は、実施形態2の図2相当図である。本実施形態2では、室内機側制御部(117)が、測定値送信部(117b)に代えて、高速フーリエ変換部(117c)を備えている。
【0079】
高速フーリエ変換部(117c)は、室内機側の入力電流(iin_室内機)の測定値に対して高速フーリエ変換を行うことにより、室内機側の入力電流(iin_室内機)の振幅(im)及び位相情報(θs)を算出して室外機(20)に送信する。このときの位相情報(θs)は電源電圧の基本波の位相が0度の時を基準とした位相である。
【0080】
また、室外機側制御部(217)が、復元部(217j)をさらに備えている。
【0081】
この復元部(217j)は、室内機側制御部(117)の高速フーリエ変換部(117c)によって送信された振幅(im)及び位相情報(θs)に基づいて、室内機側の入力電流(iin_室内機)を復元し、入力電流指令部(217a)に出力する。このとき、室内機側の入力電流(iin_室内機)の復元は、振幅(im)及び位相情報(θs)に基づいて、電源電圧の基本波の位相を基準として行われる。
【0082】
本実施形態2では、高速フーリエ変換部(117c)及び室外機側制御部(217)が、制御手段を構成する。
【0083】
その他の構成は、実施形態1と同じであるので、同一の構成には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0084】
(実施形態3)
図8は、実施形態3の図7相当図である。本実施形態3では、室内機側制御部(117)が、電流推定部(117d)をさらに備えている。
【0085】
電流推定部(117d)は、室内機側直流電流測定部(115)及び室内機側直流電圧測定部(116)の測定値、すなわち室内機側の直流電流(idc_室内機)と室内機側の直流電圧(vdc_室内機)とに基づいて、室内機側の入力電流(iin_室内機)を推定し、高速フーリエ変換部(117c)に出力する。室内機側の直流電流(idc_室内機)をidc_室内機、室内機側の直流電圧(vdc_室内機)をvdc_室内機、室内機側の入力電流(iin_室内機)をiin_室内機とすると、室内機側の入力電流(iin_室内機)は、以下の式(5)によって推定できる。
【0086】
【数5】
【0087】
本実施形態3では、高速フーリエ変換部(117c)、電流推定部(117d)及び室外機側制御部(217)が、制御手段を構成する。
【0088】
その他の構成は、実施形態2と同じであるので、同一の構成には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0089】
(実施形態4)
図9は、実施形態4の図7相当図である。本実施形態4では、室内機側制御部(117)が、測定値送信部(117b)に代えて、風量送信部(117e)を備えている。
【0090】
風量送信部(117e)は、室内機(10)のファンモータ(12)によって駆動されるファン(図示せず)の風量(av)の測定値を室外機(20)に送信する。風量(av)の測定値は、室内機(10)に設けられた風量測定部(図示せず)により測定される。
【0091】
また、室外機側制御部(217)が、入力電流出力部(217k)をさらに備えている。
【0092】
この入力電流出力部(217k)は、複数種類の基本波の位相と、各位相に対応する室内機側の入力電流とを関連付ける複数のテーブルを、複数種類の風量に対応付けて記憶している。入力電流出力部(217k)は、風量送信部(117e)によって送信された風量(av)に基づいて適切なテーブルを選択し、電源電圧の基本波の位相に基づいてテーブル内で関連付けられた入力電流を、室内機側の入力電流(iin_室内機)として入力電流指令部(217a)に出力する。
【0093】
その他の構成は、実施形態1と同じであるので、同一の構成には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0094】
(実施形態5)
図10は、実施形態5の図1相当図である。本実施形態5では、室外機側コンバータ回路(211)が、ブーストコンバータ(220)をさらに備えている。
【0095】
ブーストコンバータ(220)は、第1~第4の室外機側整流ダイオード(211a~211d)を有するブリッジ回路の出力に対し、DC/DC変換を行う。ブーストコンバータ(220)は、コンバータ用リアクトル(221)と、コンバータ用ダイオード(222)と、コンバータ用スイッチング素子(223)と、コンバータ用還流ダイオード(224)とを備えている。
【0096】
コンバータ用リアクトル(221)とコンバータ用ダイオード(222)とは、第1及び第3の室外機側整流ダイオード(211a,211c)のカソードと、室外機側コンデンサ(213)の正極との間に第1及び第3の室外機側整流ダイオード(211a,211c)側から順に互いに直列に接続されている。コンバータ用ダイオード(222)は、カソードを室外機側コンデンサ(213)側に向けている。
【0097】
コンバータ用スイッチング素子(223)は、バイポーラトランジスタである。コンバータ用スイッチング素子(223)のコレクタは、コンバータ用リアクトル(221)とコンバータ用ダイオード(222)との接点に接続されている。コンバータ用スイッチング素子(223)のエミッタは、第2及び第4の室外機側整流ダイオード(211b,211d)のアノード、及び室外機側コンデンサ(213)の負極に接続されている。
【0098】
室外機側制御部(217)は、図11に示すように、入力電流指令部(217a)と、コンバータ制御部(217m)とを備えている。
【0099】
コンバータ制御部(217m)は、室外機側入力電流測定部(214)の測定値、すなわち室外機側の入力電流(iin_室外機)と、室外機側の入力電流の指令値(iin*_室外機)とに基づいて、コンバータ用スイッチング素子(223)をオンオフするオンオフ信号(S)を出力する。コンバータ制御部(217m)は、室外機側入力電流測定部(214)の測定値、すなわち室外機側の入力電流(iin_室外機)が、室外機側の入力電流の指令値(iin*_室外機)よりも所定値分大きい第1の閾値以上になった場合には、コンバータ用スイッチング素子(223)をオフすることにより、室外機側の入力電流(iin_室外機)を減少させる。一方、コンバータ制御部(217m)は、室外機側入力電流測定部(214)の測定値、すなわち室外機側の入力電流(iin_室外機)が、室外機側の入力電流の指令値(iin*_室外機)よりも所定値分小さい第2の閾値以下になった場合には、コンバータ用スイッチング素子(223)をオンすることにより、室外機側の入力電流(iin_室外機)を増加させる。図12は、室外機側の入力電流(iin_室外機)、室外機側の入力電流の指令値(iin*_室外機)、第1の閾値、及び第2の閾値を示す。
【0100】
このように、室外機側制御部(217)のコンバータ制御部(217m)は、室内側の入力電流(iin_室内機)の測定値に基づいて、予め設定された合計電流の指令値(i*_合計)と室内機側の入力電流(iin_室内機)の差によって定まる室外機側の入力電流の指令値(iin_室外機)と室外機側の入力電流(iin_室外機)の偏差が所定値未満に収まるように、室外機側コンバータ回路(211)を制御する。
【0101】
その他の構成は、実施形態1と同じであるので、同一の構成には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0102】
(実施形態6)
図13は、実施形態6の図1相当図である。本実施形態6では、リアクトル(L)が、室外機(20)ではなく室内機(10)に設けられている。リアクトル(L)は、前記室内機側筐体に収容されている。
【0103】
リアクトル(L)の一端は、単相交流電源(2)に接続されている一方、リアクトル(L)の他端は、室内機側電力変換装置(11)と後述する室外機側電力変換装置(21)とに接続されている。つまり、第2及び第3の電源線(L2,L3)には、交流電源(2)からリアクトル(L)を介して交流が送られる。
【0104】
室内機側電力変換装置(11)は、単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介して供給される入力交流を、所望周波数及び所望電圧を有する出力交流に変換して、ファンモータ(12)に供給する。リアクトル(L)、室内機側コンバータ回路(111)、室内機側インバータ回路(112)、及び室内機側コンデンサ(113)は、共通の基板(100)に実装されている。
【0105】
室内機側コンバータ回路(111)は、単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介して供給された入力交流を整流して第1及び第2の室内機側直流電力線(118,119)に出力する。単相交流電源(2)と第1の室内機側入力端子(ITE1)との間にリアクトル(L)が接続されている。
【0106】
室外機側コンバータ回路(211)は、単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介して供給された入力交流を整流して第1及び第2の室外機側直流電力線(218,219)に出力する。単相交流電源(2)と第1の室外機側入力端子(OTE1)との間にリアクトル(L)が接続されている。
【0107】
その他の構成は、実施形態1と同じであるので、同一の構成には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0108】
したがって、本実施形態6によれば、室内機側コンバータ回路(111)と室外機側コンバータ回路(211)の両方に、単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介して交流が供給されるので、室内機側コンバータ回路(111)に、単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介さずに交流が供給される場合に比べ、室内機側コンバータ回路(111)の入力電流に重畳する高調波成分を抑制できる。その結果、室内機側コンバータ回路(111)と室外機側コンバータ回路(211)の入力電流の合計、すなわち空気調和機(1)全体の入力電流に重畳する高調波成分を抑制できる。
【0109】
上述のこと等を実証するために、以下に実験例(実施例、比較例1~3)を挙げる。
【0110】
実施例では、上記実施形態6に係る空気調和機(1)において、室内機側コンバータ回路(111)の入力電流を測定する。
【0111】
比較例1では、室内機側コンバータ回路(111)に単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介さずに入力交流を供給にするようにした場合に、室内機側コンバータ回路(111)の入力電圧及び入力電流を測定する。
【0112】
図14は、比較例1における室内機側コンバータ回路(111)の入力電圧及び入力電流を示す。
【0113】
図15は、実施例及び比較例1における室内機側コンバータ回路(111)の入力電流に重畳する各次数の周波数成分を示す。室内機側コンバータ回路(111)の入力電流に重畳する周波数成分は、室内機側コンバータ回路(111)の入力電流に対し、高速フーリエ変換(FFT:fast Fourier transform)を行うことにより得られる。
【0114】
図15に示すように、実施例では、室内機側コンバータ回路(111)の入力電流に重畳する高次の高調波成分が、比較例1に比べて小さくなっている。
【0115】
したがって、上記実施例及び比較例1は、室内機側コンバータ回路(111)に、単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介して交流が供給される場合に、室内機側コンバータ回路(111)に、単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介さずに交流が供給される場合に比べ、室内機側コンバータ回路(111)の入力電流に重畳する高次の高調波成分を抑制できることを物語るものである。
【0116】
比較例2では、室内機側コンバータ回路(111)に単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介さずに入力交流を供給にするとともに、室外機側コンバータ回路(211)には単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介して入力交流を供給にするようにし、かつリアクトル(L)のインダクタンスを第1のインダクタンス値とした場合に、室外機側コンバータ回路(211)の入力電流を測定する。
【0117】
図16は、IEC(International Electrotechnical Commission)61000-3-2で定められた高調波成分の限度値と、比較例2における室外機側コンバータ回路(211)の入力電流に重畳する各次数の周波数成分を示す。図16図18中、IEC61000-3-2で定められた高調波成分の限度値を折れ線グラフ、各入力電流に重畳する各次数の周波数成分を棒グラフで示す。
【0118】
比較例3では、室内機側コンバータ回路(111)に単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介さずに入力交流を供給にするとともに、室外機側コンバータ回路(211)には単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介して入力交流を供給にするようにし、かつリアクトル(L)のインダクタンスを第1のインダクタンス値よりも大きい第2のインダクタンス値とした場合に、室外機側コンバータ回路(211)の入力電流を測定する。
【0119】
図17は、IEC61000-3-2で定められた高調波成分の限度値と、比較例3における室外機側コンバータ回路(211)の入力電流に重畳する各次数の周波数成分を示す。
【0120】
図16及び図17に示すように、比較例2では、室外機側コンバータ回路(211)の入力電流に重畳する高次の高調波成分が、比較例3に比べて大きくなっている。
【0121】
したがって、上記比較例2及び比較例3は、リアクトル(L)のインダクタンスを小さくすると、室外機側コンバータ回路(211)の入力電流に重畳する高次の高調波成分が増大することを物語るものである。
【0122】
したがって、比較例2のように、室内機側コンバータ回路(111)に単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介さずに入力交流を供給にするとともに、室外機側コンバータ回路(211)と単相交流電源(2)との間に介在させるリアクトル(L)のインダクタンスを小さくした場合には、図18に示すように、室内機側コンバータ回路(111)と室外機側コンバータ回路(211)の入力電流の合計、すなわち空気調和機(1)の入力電流を高調波規格であるIEC61000-3-2に適合させることができなくなる。
【0123】
しかし、本実施形態6では、室内機側コンバータ回路(111)に、単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介して交流を供給するので、リアクトル(L)を介さずに交流を供給する場合に比べ、空気調和機(1)の入力電流を高調波規格に適合させるために必要なリアクトル(L)のインダクタンスを小さくできる。したがって、リアクトル(L)を小型化できる。また、リアクトル(L)の小型化により、室内機側コンバータ回路(111)、室内機側インバータ回路(112)、及び室内機側コンデンサ(113)と共通の基板にリアクトル(L)を実装すること、及び室内機(10)の室内機側筐体内にリアクトル(L)の収容スペースを確保することが容易になる。
【0124】
本実施形態6では、リアクトル(L)、室内機側コンバータ回路(111)、室内機側インバータ回路(112)、及び室内機側コンデンサ(113)を、共通の基板(100)に実装したので、リアクトル(L)を実装するための基板を、室内機側コンバータ回路(111)、室内機側インバータ回路(112)、及び室内機側コンデンサ(113)を実装するための基板とは別に室内機(10)内に設ける場合に比べ、室内機(10)内に必要なスペースを小さくできる。したがって、室内機(10)を小型化できる。
【0125】
また、本実施形態6では、室外機側コンデンサ(213)の容量を小さく設定し、室外機側コンバータ回路(211)の出力電圧の脈動を許容させるので、室外機側コンデンサ(213)に室外機側コンバータ回路(211)の出力電圧の変動を完全に吸収させる場合に比べ、室外機側コンバータ回路(211)の入力電圧半周期中の通電期間を長くできる。当該通電期間を長くすると、入力電流に含まれる高調波成分が小さくなるため、高調波成分の所定の抑制効果を得るために必要なリアクトル(L)のインダクタンスを小さくでき、リアクトル(L)のサイズを小さくできる。
【0126】
また、本実施形態6では、共通のリアクトル(L)によって、室内機側コンバータ回路(111)及び室外機側コンバータ回路(211)の入力電流の高調波を抑制するので、高調波抑制用のリアクトルを、室内機側コンバータ回路(111)及び室外機側コンバータ回路(211)のそれぞれに対応して設けなくてもよい。したがって、部品点数及びコストを削減できる。
【0127】
(実施形態7)
図19は、実施形態7の図1相当図である。本実施形態7では、空気調和機(1)が、室内機(10)を2つ有し、第2の電源線(L2)、すなわち室内機側の電源線が、室内機(10)毎に設けられて共通の電源線(L1)から分岐している。そして、各第2の電源線(L2)から対応する室内機(10)の室内機側電力変換装置(11)へ電力が供給される。
【0128】
本実施形態7では、各室内機(10)の室内機側制御部(117)の測定値送信部(117b)が、室内機側入力電流測定部(114)により測定された室内機側の入力電流(iin_室内機1,iin_室内機2)を室外機(20)に送信する。室外機側制御部(217)の入力電流指令部(217a)は、予め設定された合計電流の指令値(i*_合計)から室内機側の入力電流(iin_室内機1,iin_室内機2)の合計を減算して得られる値を、室外機側の入力電流の指令値(iin*_室外機)として算出する。
【0129】
したがって、本実施形態7では、2つの室内機(10)毎に設けられた2本の第2の電源線(L2)を流れる室内機側の入力電流(iin_室内機1,iin_室内機2)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計と、室外機側の電源線(L3)を流れる室外機側の入力電流(iin_室外機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計との和よりも、2つの室内機(10)毎に設けられた2本の第2の電源線(L2)を流れる室内機側の入力電流(iin_室内機1,iin_室内機2)と室外機側の入力電流(iin_室外機)とを合計した共通の電源線(L1)を流れる合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計が小さくなる。
【0130】
つまり、一方の第2の電源線(L1)を流れる室内機側の入力電流(iin_室内機1)に含まれる第k次の成分を、ik_室内機1、他方の第2の電源線(L1)を流れる室内機側の入力電流(iin_室内機1)を、ik_室内機2とすると、以下の式(6)が成り立つ。
【0131】
【数6】
【0132】
(その他の実施形態)
上記実施形態1~7では、室外機側コンバータ回路(211)又は室外機側インバータ回路(212)の制御を、室内機側の入力電流(iin_室内機,iin_室内機1,iin_室内機2)、室内機側の直流電流(idc_室内機)、室内機側コンデンサ(113)の電圧(vdc_室内機)、及びファンモータ(12)によって駆動されるファンの風量のうちの少なくとも1つの測定値に基づいて行ったが、室内機側の入力電流(iin_室内機,iin_室内機1,iin_室内機2)に相関する他の値に基づいて行ってもよい。例えば、ファンの電力、ファンの回転数、室内機側の入力電流(iin_室内機,iin_室内機1,iin_室内機2)の通電期間、又は空気調和機(1)のリモコンにより設定される設定値に基づいて行ってもよい。例えば、実施形態4において、室外機側インバータ回路(212)の制御が、ファンの風量(av)の測定値に代えて、空気調和機(1)のリモコンにより設定される設定値を用いて行われるようにしてもよい。
【0133】
上記実施形態1~7では、室内機側の入力電流(iin_室内機,iin_室内機1,iin_室内機2)に相関する測定値に基づいて、室外機側コンバータ回路(211)及び室外機側インバータ回路(212)の一方を制御するようにしたが、室外機側コンバータ回路(211)及び室外機側インバータ回路(212)の両方を制御するようにしてもよい。
【0134】
上記実施形態1~7では、空気調和機(1)に、室内機側の入力電流(iin_室内機,iin_室内機1,iin_室内機2)に相関する測定値に基づいて、室外機側コンバータ回路(211)又は室外機側インバータ回路(212)を制御する制御手段を設けた。しかし、空気調和機(1)に、室外機側の入力電流(iin_室外機)に相関する測定値に基づいて、室内機側コンバータ回路(111)及び室内機側インバータ回路(112)のうちの少なくとも一方を制御する制御手段を設けてもよい。
【0135】
また、上記実施形態1~7では、本発明を、単相交流電源(2)を用いる空気調和機(1)に適用したが、本発明は、三相交流電源を用いる空気調和機(1)にも適用できる。かかる場合、第1の電源線(L1)には、系統電源から電気を引き込む配電盤によって分配された後の電気が流れるようにしてもよいし、例えば業務用空気調和機のように、室内機(10)及び室外機(20)がそれぞれ異なる配電盤に接続される場合には、第1の電源線(L1)が系統電源に配電盤を介さずに接続され、配電盤よりも系統電源側で、第2及び第3の電源線(L2,L3)に分岐するようにしてもよい。
【0136】
また、上記実施形態6では、リアクトル(L)を室内機(10)だけに設けたが、室外機(20)だけに設けてもよい。
【0137】
また、上記実施形態7において、第2及び第3の電源線(L2,L3)に、交流電源(2)からリアクトル(L)を介して前記交流が送られるようにしてもよい。また、リアクトル(L)を、室外機(20)ではなく一方の室内機(10)内の第1の電源線(L1)に設け、第2及び第3の電源線(L2,L3)に、交流電源(2)からリアクトル(L)を介して前記交流が送られるようにしてもよい。
【0138】
また、上記実施形態7では、室内機(10)を2つ設けたが、2つ以上の複数設けてもよい。
【0139】
また、本発明は、IEC(International Electrotechnical Commission)61000-3-2以外の規格に空気調和機(1)を適合させるために適用してもよく、IEC(International Electrotechnical Commission)61000-3-2に適合しない空気調和機(1)にも適用できる。
【0140】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態及び変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本開示は、室内機及び室外機を備えた空気調和機として有用である。
【符号の説明】
【0142】
1 空気調和機
2 単相交流電源
10 室内機
20 室外機
111 室内機側コンバータ回路
112 室内機側インバータ回路
113 室内機側コンデンサ
117c 高速フーリエ変換部(制御手段)
117d 電流推定部(制御手段)
211 室外機側コンバータ回路
212 室外機側インバータ回路
213 室外機側コンデンサ
217 室外機側制御部(制御手段)
L1 第1の電源線(共通の電源線)
L2 第2の電源線(室内機側の電源線)
L3 第3の電源線(室外機側の電源線)
IN1,IN2 入力ノード
ON1,ON2 入力ノード
in_室内機,iin_室内機1,iin_室内機2 室内機側の入力電流
in_室外機 室外機側の入力電流
_合計 合計電流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【手続補正書】
【提出日】2022-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、室内機及び室外機を備えた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、交流電源から供給された交流を整流して出力するコンバータ回路と、前記コンバータ回路により出力された直流を交流に変換するインバータ回路と、前記インバータ回路の入力ノード間に接続されたコンデンサとを有する電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5741000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、特許文献1のような電力変換装置を備えた電気機器は、IEC(International Electrotechnical Commission)61000-3-2等の高調波規格に適合することが要請される。したがって、空気調和機の室内機及び室外機のそれぞれに電力変換装置を設ける場合にも、空気調和機が発生する高調波を抑制することが求められる。
【0005】
本開示の目的は、空気調和機が発生する高調波を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、室内機(10)及び室外機(20)と、室内機側の電源線(L2)と室外機側の電源線(L3)とを有し、前記室内機側及び室外機側の電源線(L2,L3)は、交流電源(2)に接続される共通の電源線(L1)から分岐し、前記室内機側の電源線(L2)から前記室内機(10)へ電力が供給され、前記室外機側の電源線(L3)から前記室外機(20)に電力が供給される空気調和機であって、前記室内機(10)及び前記室外機(20)の各機器は、前記交流電源(2)から当該機器側の電源線(L2,L3)に送られた交流を整流して出力するコンバータ回路(111,211)と、前記コンバータ回路(111,211)により出力された直流を交流に変換するインバータ回路(112,212)と、前記インバータ回路(112,212)の入力ノード(IN1,IN2,ON1,ON2)間に接続されたコンデンサ(113,213)とを有し、前記室内機側の電源線(L2)を流れる室内機側の入力電流(iin_室内機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計と、前記室外機側の電源線(L3)を流れる室外機側の入力電流(iin_室外機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計との和よりも、前記室内機側の入力電流(iin_室内機)と前記室外機側の入力電流(iin_室外機)とを合計した前記共通の電源線(L1)を流れる合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計が小さい。
【0007】
第1の態様では、室内機側の入力電流(iin_室内機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計と、室外機側の入力電流(iin_室外機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計との和と、合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計とを等しくした場合に比べ、前記合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の合計、すなわち空気調和機(1)が発生する高調波を抑制できる。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、前記室内機側の入力電流(iin_室内機)の第15~40次の整数次成分の実効値の合計と、前記室外機側の入力電流(iin_室外機)の第15~40次の整数次成分の実効値の合計との和よりも、前記合計電流(i_合計)の第15~40次の整数次成分の実効値の合計が小さい。
【0009】
第2の態様では、前記合計電流(i_合計)の第15~40次の整数次成分の合計、すなわち空気調和機(1)が発生する第15~40次の高調波を抑制できる。
【0010】
本開示の第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記室内機側の入力電流(iin_室内機)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計と、前記室外機側の入力電流(iin_室外機)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計との和から前記合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計を引くことで得られる差分は、前記室内機側の入力電流(iin_室内機)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計の3/4よりも大きい。
【0011】
第3の態様では、前記差分が前記室内機側の入力電流(iin_室内機)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計の3/4以下である場合に比べ、前記合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の合計、すなわち空気調和機(1)が発生する高調波をより効果的に抑制できる。
【0012】
本開示の第4の態様は、第1の態様から第3の態様のいずれか1つの態様において、第2~40次のうちの少なくとも1つの整数の次数において、前記合計電流(i_合計)の当該次数の成分の実効値が、前記室外機側の入力電流(iin_室外機)の当該次数の成分の実効値よりも小さい。
【0013】
第4の態様では、少なくとも1つの整数の次数において、室外機側の入力電流(iin_室外機)に含まれる当該次数の成分の少なくとも一部が、室内機側の入力電流(iin_室内機)に含まれる当該次数の成分により打ち消されるので、前記合計電流(i_合計)の当該次数の成分、すなわち空気調和機(1)が発生する当該次数の高調波を抑制できる。
【0014】
本開示の第5の態様は、第1の態様から第4の態様のいずれか1つの態様において、前記室内機(10)及び室外機(20)のいずれか一方の機器側の入力電流(iin_室内機,iin_室外機)に相関する値に基づいて、他方の機器のコンバータ回路(111,211)及びインバータ回路(112,212)の少なくとも一方を制御する制御手段(217,117c,117d)を備える。
【0015】
第5の態様では、前記室内機(10)及び室外機(20)のいずれか一方の機器側の入力電流(iin_室内機,iin_室外機)に相関する値に基づいて、他方の機器のコンバータ回路(111,211)及びインバータ回路(112,212)の少なくとも一方が制御される。
【0016】
本開示の第6の態様は、第1の態様から第5の態様のいずれか1つの態様において、前記室内機(10)及び室外機(20)の一方は、リアクトル(L)を有し、前記室内機側の電源線(L2)には、前記交流電源(2)から前記リアクトル(L)を介して前記交流が送られ、前記室外機側の電源線(L3)には、前記交流電源(2)から前記リアクトル(L)を介して前記交流が送られる。
【0017】
第6の態様では、室内機(10)側のコンバータ回路(111)と室外機(20)側のコンバータ回路(211)の両方に、単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介して交流が供給されるので、室内機(10)側のコンバータ回路(111)に、単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介さずに交流が供給される場合に比べ、室内機(10)側のコンバータ回路(111)の入力電流に重畳する高調波成分を抑制できる。その結果、室内機(10)側のコンバータ回路(111)と室外機(20)側のコンバータ回路(211)の入力電流の合計、すなわち空気調和機(1)全体の入力電流に重畳する高調波成分を抑制できる。
【0018】
本開示の第7の態様は、第1の態様から第6の態様のいずれか1つの態様において、前記室外機(20)側のインバータ回路(212)は、スイッチング素子(212a~212f)を備え、前記室外機(20)側のコンバータ回路(211)により出力された直流を前記スイッチング素子(212a~212f)のスイッチング動作により交流に変換し、前記室外機(20)側のコンバータ回路(211)の出力電圧は、その最大値がその最小値の2倍以上となるような大きな脈動を有している。
【0019】
室外機(20)側のコンバータ回路(211)の出力電圧の脈動を許容するためには、当該脈動を完全に吸収する場合に比べ、室外機(20)側のコンデンサ(213)の容量を小さく設定する必要がある。第7の態様では、室外機(20)側のコンデンサ(213)に室外機(20)側のコンバータ回路(211)の出力電圧の脈動を完全に吸収させる場合に比べ、室外機(20)側のコンバータ回路(211)の入力電圧半周期中の通電期間を長くできる。当該通電期間を長くすると、入力電流に含まれる高調波成分が小さくなるため、高調波成分の所定の抑制効果を得るために必要なリアクトル(L)のインダクタンスを小さくできる。したがって、リアクトル(L)のサイズを小さくできる。
【0020】
本開示の第8の態様は、第1の態様から第7の態様のいずれか1つの態様において、前記室内機(10)が、前記リアクトル(L)を有し、前記リアクトル(L)、前記室内機(10)側のコンバータ回路(111)、前記室内機(10)側のインバータ回路(112)、及び前記室内機(10)側のコンデンサ(113)は、共通の基板(100)に実装されている。
【0021】
第8の態様では、リアクトル(L)を実装するための基板を、室内機(10)側のコンバータ回路(111)、室内機(10)側のインバータ回路(112)、及び室内機(10)側のコンデンサ(113)を実装するための基板とは別に室内機(10)内に設ける場合に比べ、室内機(10)内に必要なスペースを小さくできるので、室内機(10)を小型化できる。
【0022】
本開示の第9の態様は、第1の態様から第8の態様のいずれか1つの態様において、前記室内機(10)を複数有し、前記室内機側の電源線(L2)は、室内機(10)毎に設けられて前記共通の電源線(L1)から分岐し、前記複数の室内機(10)毎に設けられた複数の前記室内機側の電源線(L2)を流れる室内機側の入力電流(iin_室内機1,iin_室内機2)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計と、前記室外機側の電源線(L3)を流れる室外機側の入力電流(iin_室外機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計との和よりも、前記複数の室内機(10)毎に設けられた複数の前記室内機側の電源線(L2)を流れる室内機側の入力電流(iin_室内機1,iin_室内機2)と前記室外機側の入力電流(iin_室外機)とを合計した前記共通の電源線(L1)を流れる合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計が小さい。
【0023】
第9の態様では、空気調和機(1)が室内機(10)を複数有する場合に、空気調和機(1)が発生する高調波を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施形態1に係る空気調和機の構成を示す回路図である。
図2図2は、室内機側制御部及び室外機側制御部の構成を示す機能ブロック図である。
図3図3は、室内機側コンバータ回路の入力電流及び入力電圧を示すタイミングチャートである。
図4図4は、合計電流の指令値を例示するタイミングチャートである。
図5図5は、室内機側の入力電流に重畳する高調波成分を示すグラフである。
図6図6は、IEC61000-3-2で定められた高調波成分の限度値に対する室内機側の入力電流に重畳する高調波成分の割合を示すグラフである。
図7図7は、実施形態2の図2相当図である。
図8図8は、実施形態3の図7相当図である。
図9図9は、実施形態4の図2相当図である。
図10図10は、実施形態5の図1相当図である。
図11図11は、実施形態5の図2相当図である。
図12】室外機側の入力電流の指令値と測定値を例示するタイミングチャートである。
図13図13は、実施形態6の図1相当図である。
図14図14は、比較例1における室内機側コンバータ回路の入力電流及び入力電圧を示すタイミングチャートである。
図15図15は、実施例及び比較例1における室内機側コンバータ回路の入力電流に重畳する各次数の周波数成分を示すグラフである。
図16図16は、IEC61000-3-2で定められた高調波成分の限度値と、比較例2における室外機側コンバータ回路の入力電流に重畳する各次数の周波数成分を示すグラフである。
図17図17は、IEC61000-3-2で定められた高調波成分の限度値と、比較例3における室外機側コンバータ回路の入力電流に重畳する各次数の周波数成分を示すグラフである。
図18図18は、IEC61000-3-2で定められた高調波成分の限度値と、比較例2における空気調和機の入力電流に重畳する各次数の周波数成分を示すグラフである。
図19図19は、実施形態7の図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0026】
(実施形態1)
図1は、本開示の実施形態1に係る空気調和機(1)を示す。この空気調和機(1)は、室内機(10)及び室外機(20)と、第1~第3の電源線(L1~L3)とを備える。
【0027】
室内機(10)は、室内機側電力変換装置(11)と、ファンモータ(12)と、図示しない室内機側筐体を備えている。室内機側電力変換装置(11)と、ファンモータ(12)とは、前記室内機側筐体に収容されている。室外機(20)は、室外機側電力変換装置(21)と、圧縮機用モータ(22)と、図示しない室外機側筐体を備えている。室外機側電力変換装置(21)と、圧縮機用モータ(22)とは、前記室外機側筐体に収容されている。
【0028】
第1の電源線(L1)は、単相交流電源(2)と接続されている。この第1の電源線(L1)は、室内機(10)の室内機側筐体内に引き込まれている。この第1の電源線(L1)は、室内機(10)内で第2及び第3の電源線(L2,L3)に分岐する。第2の電源線(L2)から室内機(10)の室内機側電力変換装置(11)へ電力が供給される。第3の電源線(L3)は、室外機(20)の室外機側筐体内に引き込まれている。この第3の電源線(L3)から室外機(20)の室外機側電力変換装置(21)へ電力が供給される。第1の電源線(L1)が共通の電源線を構成し、第2の電源線(L2)が室内機側の電源線を構成し、第3の電源線(L3)が室外機側の電源線を構成する。
【0029】
室内機側電力変換装置(11)は、単相交流電源(2)から第2の電源線(L2)に送られた交流を、所望周波数及び所望電圧を有する交流に変換して、ファンモータ(12)に供給する。具体的には、室内機側電力変換装置(11)は、室内機側コンバータ回路(111)と、室内機側インバータ回路(112)と、室内機側コンデンサ(113)と、室内機側入力電流測定部(114)と、室内機側直流電流測定部(115)と、室内機側直流電圧測定部(116)と、室内機側制御部(117)とを備えている。
【0030】
室内機側コンバータ回路(111)は、単相交流電源(2)から第2の電源線(L2)に送られた交流を整流して第1及び第2の室内機側直流電力線(118,119)に出力する。室内機側コンバータ回路(111)は、第1及び第2の室内機側入力端子(ITE1,ITE2)を備え、これら第1及び第2の室内機側入力端子(ITE1,ITE2)に第2の電源線(L2)から交流が入力される。室内機側コンバータ回路(111)は、ブリッジ状に結線された第1~第4の室内機側整流ダイオード(111a~111d)を有している。これら第1~第4の室内機側整流ダイオード(111a~111d)は、そのカソードを第1の室内機側直流電力線(118)側に向けるとともに、そのアノードを第2の室内機側直流電力線(119)側に向けている。第1及び第2の室内機側整流ダイオード(111a,111b)は、第1及び第2の室内機側直流電力線(118,119)の間に第1の室内機側直流電力線(118)側から順に互いに直列に接続され、それらの接点は、第1の室内機側入力端子(ITE1)に接続されている。第3及び第4の室内機側整流ダイオード(111c,111d)は、第1及び第2の室内機側直流電力線(118,119)の間に第1の室内機側直流電力線(118)側から順に互いに直列に接続され、それらの接点は、第2の室内機側入力端子(ITE2)に接続されている。
【0031】
室内機側インバータ回路(112)は、室内機側コンバータ回路(111)により出力された直流を交流にスイッチング動作により変換してファンモータ(12)に供給する。詳しくは、室内機側インバータ回路(112)は、6つの室内機側スイッチング素子(112a~112f)と、6つの室内機側還流ダイオード(112g)とを有している。6つの室内機側スイッチング素子(112a~112f)は、ブリッジ結線されている。詳しく説明すると、室内機側インバータ回路(112)は、第1及び第2の室内機側直流電力線(118,119)間に接続された3つのスイッチングレグを備えている。スイッチングレグは、2つの室内機側スイッチング素子(112a~112f)が互いに直列に接続されたものである。3つのスイッチングレグの各々において、上アームの室内機側スイッチング素子(112a,112c,112e)と下アームの室内機側スイッチング素子(112b,112d,112f)との中点が、ファンモータ(12)の各相のコイル(u相、v相、w相のコイル)にそれぞれ接続されている。各室内機側スイッチング素子(112a~112f)には、室内機側還流ダイオード(112g)が1つずつ逆並列に接続されている。
【0032】
室内機側コンデンサ(113)は、室内機側インバータ回路(112)の入力ノード(IN1,IN2)間、すなわち第1及び第2の室内機側直流電力線(118,119)の間に接続されている。室内機側コンデンサ(113)は、室内機側コンバータ回路(111)及び室内機側インバータ回路(112)のそれぞれに対し並列に接続されている。室内機側コンデンサ(113)は、室内機側コンバータ回路(111)の出力電圧を平滑化する平滑コンデンサである。
【0033】
室内機側入力電流測定部(114)は、第2の電源線(L2)を流れる室内機側の入力電流(iin_室内機)を測定する。室内機側入力電流測定部(114)は、第2の室内機側直流電力線(119)に設けられている。
【0034】
室内機側直流電流測定部(115)は、室内機側インバータ回路(112)に入力される室内機側の直流電流(idc_室内機)を測定する。
【0035】
室内機側直流電圧測定部(116)は、室内機側コンデンサ(113)の直流電圧(直流リンク電圧)(vdc_室内機)を測定する。
【0036】
室内機側制御部(117)は、マイクロコンピュータと、それを制御するソフトウエアが格納されたメモリディバイスを用いて構成されている。図2に示すように、室内機側制御部(117)は、室内機側モータ制御部(117a)と、測定値送信部(117b)とを備えている。
【0037】
室内機側モータ制御部(117a)は、室内機側直流電流測定部(115)及び室内機側直流電圧測定部(116)の測定値に基づいて、ファンモータ(12)の回転数が、与えられた指令値となるように、制御信号(G_室内機)により室内機側インバータ回路(112)の各スイッチング素子(112a~112f)を制御する。
【0038】
測定値送信部(117b)は、室内機側入力電流測定部(114)により測定された室内機側の入力電流(iin_室内機)を室外機(20)に送信する。
【0039】
ファンモータ(12)は、室内機側電力変換装置(11)により供給される交流によって駆動される。
【0040】
室外機側電力変換装置(21)は、図1に示すように、リアクトル(L)と、室外機側コンバータ回路(211)と、室外機側インバータ回路(212)と、室外機側コンデンサ(213)と、室外機側入力電流測定部(214)と、室外機側直流電流測定部(215)と、室外機側直流電圧測定部(216)と、制御手段としての室外機側制御部(217)とを備えている。
【0041】
リアクトル(L)は、第3の電源線(L3)に設けられている。つまり、リアクトル(L)の一端は、第1の電源線(L1)を介して単相交流電源(2)に接続されている。一方、リアクトル(L)の他端は、室外機側コンバータ回路(211)の後述する第2の室外機側入力端子(OTE2)に接続されている。
【0042】
室外機側コンバータ回路(211)は、単相交流電源(2)から第3の電源線(L3)に送られた交流を整流して第1及び第2の室外機側直流電力線(218,219)に出力する。室外機側コンバータ回路(211)は、第1及び第2の室外機側入力端子(OTE1,OTE2)を備え、これら第1及び第2の室外機側入力端子(OTE1,OTE2)に第3の電源線(L3)から交流が入力される。室外機側コンバータ回路(211)は、ブリッジ状に結線された第1~第4の室外機側整流ダイオード(211a~211d)を有するブリッジ回路である。これら第1~第4の室外機側整流ダイオード(211a~211d)は、そのカソードを第1の室外機側直流電力線(218)側に向けるとともに、そのアノードを第2の室外機側直流電力線(219)側に向けている。第1及び第2の室外機側整流ダイオード(211a,211b)は、第1及び第2の室外機側直流電力線(218,219)の間に第1の室外機側直流電力線(218)側から順に互いに直列に接続され、それらの接点は、第1の室外機側入力端子(OTE1)に接続されている。第3及び第4の室外機側整流ダイオード(211c,211d)は、第1及び第2の室外機側直流電力線(218,219)の間に第1の室外機側直流電力線(218)側から順に互いに直列に接続され、それらの接点は、第2の室外機側入力端子(OTE2)に接続されている。
【0043】
室外機側インバータ回路(212)は、室外機側コンバータ回路(211)により出力された直流を交流にスイッチング動作により変換し、圧縮機用モータ(22)に供給する。詳しくは、室外機側インバータ回路(212)は、6つの室外機側スイッチング素子(212a~212f)と、6つの室外機側還流ダイオード(212g)とを有している。6つの室外機側スイッチング素子(212a~212f)は、ブリッジ結線されている。詳しく説明すると、室外機側インバータ回路(212)は、第1及び第2の室外機側直流電力線(218,219)間に接続された3つのスイッチングレグを備えている。スイッチングレグは、2つの室外機側スイッチング素子(212a~212f)が互いに直列に接続されたものである。3つのスイッチングレグの各々において、上アームの室外機側スイッチング素子(212a,212c,212e)と下アームの室外機側スイッチング素子(212b,212d,212f)との中点が、圧縮機用モータ(22)の各相のコイル(u相、v相、w相のコイル)にそれぞれ接続されている。各室外機側スイッチング素子(212a~212f)には、室外機側還流ダイオード(212g)が1つずつ逆並列に接続されている。
【0044】
室外機側コンデンサ(213)は、室外機側インバータ回路(212)の入力ノード(ON1,ON2)間、すなわち第1及び第2の室外機側直流電力線(218,219)の間に接続されている。室外機側コンデンサ(213)は、室外機側コンバータ回路(211)及び室外機側インバータ回路(212)のそれぞれに対し並列に接続されている。
【0045】
室外機側コンデンサ(213)の電圧は、単相交流電源(2)から供給される入力交流の周波数に応じて脈動する。室外機側コンデンサ(213)の容量は、室外機側コンデンサ(213)が室外機側コンバータ回路(211)の出力電圧をほとんど平滑化できないが、室外機側インバータ回路(212)のスイッチング動作に起因する室外機側コンバータ回路(211)の入力電流の変動を抑制できるように設定されている。
【0046】
そのため、室外機側コンデンサ(213)の容量値は、数十μF程度で、室外機側コンバータ回路(211)の出力電圧は、その最大値がその最小値の2倍以上となるような大きな脈動を有している。
【0047】
室外機側入力電流測定部(214)は、第3の電源線(L3)を流れる室外機側の入力電流(iin_室外機)を測定する。室外機側入力電流測定部(214)は、第2の室外機側直流電力線(219)に設けられる。
【0048】
室外機側直流電流測定部(215)は、室外機側インバータ回路(212)に入力される室外機側の直流電流(idc_室外機)を測定する。
【0049】
室外機側直流電圧測定部(216)は、室外機側コンデンサ(213)の直流電圧(直流リンク電圧)(vdc_室外機)を測定する。
【0050】
室外機側制御部(217)は、マイクロコンピュータと、それを制御するソフトウエアが格納されたメモリディバイスを用いて構成されている。図2に示すように、室外機側制御部(217)は、入力電流指令部(217a)と、補償量算出部(217b)と、減算部(217c)と、速度制御部(217d)と、電流指令演算部(217e)と、加算部(217f)と、座標変換部(217g)と、dq軸電流制御部(217h)と、PWM演算部(217i)とを備えている。
【0051】
入力電流指令部(217a)は、室内機(10)の測定値送信部(117b)によって送信された室内機側の入力電流(iin_室内機)を受信する。入力電流指令部(217a)には、予め、合計電流の指令値(i*_合計)(図4参照)が設定されている。入力電流指令部(217a)は、当該合計電流の指令値(i*_合計)から室内機側の入力電流(iin_室内機)を減算して得られる値を、室外機側の入力電流の指令値(iin*_室外機)として算出する。また、合計電流の指令値(i*_合計)は、例えば、時間や電源電圧の基本波の位相を引数として、時間や電源電圧の基本波の位相と電流値(指令値)との複数種類の組み合わせを示すテーブルに基づいて設定される。
【0052】
例えば、図3に示す室内機側の入力電流(iin_室内機)の測定値を、図4に示す合計電流の指令値(i*_合計)から減算することにより、室外機側の入力電流の指令値(iin*_室外機)を算出する。
【0053】
補償量算出部(217b)は、室外機側の入力電流の指令値(iin*_室外機)と、室外機側入力電流測定部(214)により測定された室外機側の入力電流(iin_室外機)の測定値との偏差が小さくなるようにq軸電流指令補償量(icomp*)を算出して出力する。補償量算出部(217b)は、室外機側の入力電流の指令値(iin*_室外機)と、室外機側の入力電流(iin_室外機)の測定値との偏差に基づいて、例えばPI演算(比例積分)を行うことにより、q軸電流指令補償量(icomp*)を求める。
【0054】
減算部(217c)は、圧縮機用モータ(22)の回転数(ω)と回転数指令値(ω*)との偏差を算出する。なお、圧縮機用モータ(22)の回転数(ω)は、室外機側直流電流測定部(215)により測定される室外機側の直流電流(idc_室外機)と室外機側の直流電圧(vdc_室外機)とPWM演算部(217i)の出力(G_室外機)(後述)とに基づいて算出できる。具体的には、室外機側の直流電流(idc_室外機)と室外機側の直流電圧(vdc_室外機)とPWM演算部(217i)の出力(G_室外機)とから圧縮機用モータ(22)のu相電流(iu)、v相電流(iv)及びw相電流(iw)と圧縮機用モータ(22)のu相電圧、v相電圧、及びw相電圧とを計算し、これらの値とモータ定数から圧縮機用モータ(22)の磁極位置を推定できる。また、圧縮機用モータ(22)の磁極位置の微分値が圧縮機用モータ(22)の電気角周波数であり、圧縮機用モータ(22)の回転数(ω)は、この電気角周波数を圧縮機用モータ(22)の極対数で除算した値となる。
【0055】
速度制御部(217d)は、圧縮機用モータ(22)の回転数(ω)と回転数指令値(ω*)との偏差に基づいて、例えばPID演算(比例、積分、微分)を行って、平均モータトルクの指令値(以下、平均トルク指令値(Tm*))を生成する。
【0056】
電流指令演算部(217e)は、入力電流指令部(217a)により算出された室外機側の入力電流の指令値(iin*_室外機)に基づいてインバータ電力を導出し、当該インバータ電力を平均値が1となるように正規化し、平均トルク指令値(Tm*)に掛けることにより、q軸電流(iq)の指令値(以下、q軸電流指令値(iq*)という)の基になる脈動指令値(ip*)を生成する。インバータ電力は、例えば、特開2019-68731号公報に開示された方法に基づいて導出できる。
【0057】
加算部(217f)は、電流指令演算部(217e)によって生成された脈動指令値(ip*)と、補償量算出部(217b)により求められたq軸電流指令補償量(icomp*)とを加算し、加算結果をq軸電流指令値(iq*)として出力する。
【0058】
座標変換部(217g)は、圧縮機用モータ(22)のu相電流(iu)、w相電流(iw)、及び回転子(図示を省略)の電気角(モータ位相)に基づいて、いわゆるdq変換を行って圧縮機用モータ(22)のd軸電流(id)及びq軸電流(iq)を導出する。なお、u相電流(iu)及びw相電流(iw)は、例えば、電流センサを設けて直接その値を検出することができるし、室外機側の直流電流(idc_室外機)とPWM演算部(217i)の出力(G_室外機)とに基づいて算出することもできる。
【0059】
dq軸電流制御部(217h)は、d軸電流指令値(id*)、q軸電流指令値(iq*)、d軸電流(id)、及びq軸電流(iq)に基づいて、d軸電圧指令値(vd*)及びq軸電圧指令値(vq*)を導出する。具体的には、dq軸電流制御部(217h)は、d軸電流指令値(id*)とd軸電流(id)との偏差、及びq軸電流指令値とq軸電流(iq)との偏差がそれぞれ小さくなるように、d軸電圧指令値(vd*)及びq軸電圧指令値(vq*)を導出する。
【0060】
PWM演算部(217i)は、室外機側インバータ回路(212)の室外機側スイッチング素子(212a~212f)のオン/オフを制御するための制御信号(G_室外機)を生成する。具体的には、PWM演算部(217i)は、モータ位相、室外機側の直流電圧(vdc_室外機)、d軸電圧指令値(vd*)、q軸電圧指令値(vq*)、及び圧縮機用モータ(22)の磁極位置に基づいて、スイッチング素子(212a~212f)の各々に供給される制御信号(G_室外機)のデューティー比を設定する。制御信号(G_室外機)が出力されると、各スイッチング素子(212a~212f)は、PWM演算部(217i)によって設定されたデューティー比でスイッチング動作(オンオフ動作)を行う。この制御信号(G_室外機)は周期的に更新され、室外機側インバータ回路(212)におけるスイッチング動作が制御される。
【0061】
圧縮機用モータ(22)は、室外機側電力変換装置(21)により供給される交流によって駆動される。
【0062】
上述のように構成された空気調和機(1)の室内機側電力変換装置(11)及び室外機側電力変換装置(21)が動作を開始すると、室内機側制御部(117)の測定値送信部(117b)が、室内機側入力電流測定部(114)により測定された室内機側の入力電流(iin_室内機)を室外機(20)に送信する。室外機側制御部(217)の入力電流指令部(217a)は、予め設定された合計電流の指令値(i*_合計)から室内機側の入力電流(iin_室内機)を減算して得られる値を、室外機側の入力電流の指令値(iin*_室外機)として算出する。そして、補償量算出部(217b)は、室外機側の入力電流の指令値(iin*_室外機)と、室外機側の入力電流(iin_室外機)の測定値との偏差が小さくなるようにq軸電流指令補償量(icomp*)を算出して出力する。加算部(217f)は、このq軸電流指令補償量(icomp*)と電流指令演算部(217e)によって生成された脈動指令値(ip*)とを加算し、加算結果をq軸電流指令値(iq*)として出力する。そして、このq軸電流指令値(iq*)に基づいて、dq軸電流制御部(217h)及びPWM演算部(217i)により、室外機側インバータ回路(212)の室外機側スイッチング素子(212a~212f)のオン/オフが制御される。
【0063】
このように、室外機側制御部(217)は、室内側の入力電流(iin_室内機)の測定値に基づいて、室内側の入力電流(iin_室内機)と室外機側の入力電流(iin_室外機)との和と、予め設定された合計電流の指令値(i*_合計)との偏差が小さくなるように、室外機側インバータ回路(212)を制御する。
【0064】
2の電源線(L2)を流れる室内機側の入力電流(iin_室内機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計と、第3の電源線(L3)を流れる室外機側の入力電流(iin_室外機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計との和よりも、室内機側の入力電流(iin_室内機)と室外機側の入力電流(iin_室外機)とを合計した第1の電源線(L1)を流れる合計電流(i*_合計)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計が小さくなる。つまり、室内機側の入力電流(iin_室内機)に含まれる第k次の成分の実効値を、ik_室内機、室外機側の入力電流(iin_室外機)に含まれる第k次の成分の実効値を、ik_室外機、合計電流(i_合計)に含まれる第k次の成分の実効値を、ik_合計とすると、以下の式(1)が成り立つ。
【0065】
【数1】
【0066】
ここで、図5は、室内機側の入力電流(iin_室内機)に重畳する高調波成分を示す。室内機側コンバータ回路(111)の入力電流に重畳する高調波成分は、室内機側の入力電流(iin_室内機)に対し、高速フーリエ変換(FFT:fast Fourier transform)を行うことにより得られる。
【0067】
図6は、IEC61000-3-2で定められた高調波成分の限度値に対する室内機側の入力電流(iin_室内機)に重畳する高調波成分の割合を示すグラフである。
【0068】
図6に示すように、IEC61000-3-2で定められた高調波成分の限度値に対する室内機側の入力電流(iin_室内機)に重畳する高調波成分の割合は、第3~13次の奇数次成分に比べ、第15~39次の奇数次成分で高くなっている。
【0069】
ここで、室内機側の入力電流(iin_室内機)の第15~40次の整数次成分の実効値の合計と、室外機側の入力電流(iin_室外機)の第15~40次の整数次成分の実効値の合計との和よりも、合計電流(i_合計)の第15~40次の整数次成分の実効値の合計が小さくなるように制御することで、IEC61000-3-2に空気調和機(1)を適合させ易い。したがって、以下の式(2)が成り立つように制御する。
【0070】
【数2】
【0071】
さらに、室内機側の入力電流(iin_室内機)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計と、室外機側の入力電流(iin_室外機)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計との和から合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計を引くことで得られる差分は、室内機側の入力電流(iin_室内機)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計の3/4よりも大きくなる。つまり、以下の式(3)が成り立つ。
【0072】
【数3】
【0073】
したがって、前記差分が室内機側の入力電流(iin_室内機)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計の3/4以下である場合に比べ、合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の合計、すなわち空気調和機(1)が発生する高調波をより効果的に抑制できる。
【0074】
また、第2~40次のうちの少なくとも1つの整数の次数において、前記合計電流(i_合計)の当該次数の成分の実効値が、前記室外機側の入力電流(iin_室外機)の当該次数の成分の実効値よりも小さい。つまり、第2~40次のうちの少なくとも1つの整数において、当該整数をkとすると、以下の式(4)が成り立つ。
【0075】
【数4】
【0076】
このように、少なくとも1つの整数の次数において、室外機側の入力電流(iin_室外機)に含まれる当該次数の成分の少なくとも一部が、室内機側の入力電流(iin_室内機)に含まれる当該次数の成分により打ち消されるので、合計電流(i_合計)の当該次数の成分、すなわち空気調和機(1)が発生する当該次数の高調波を抑制できる。例えば、圧縮機用モータ(22)の構造に起因して生じる高調波により室外機側の入力電流(iin_室外機)に含まれる高調波成分のうち、高調波成分の限度値に対する割合が21次成分において突出して大きくなる場合、少なくともこの21次成分について合計電流(i_合計)の当該次数の成分が低減されるように制御する。
【0077】
したがって、本実施形態1によれば、室内機側の入力電流(iin_室内機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計と、室外機側の入力電流(iin_室外機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計との和と、合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計とを等しくした場合に比べ、前記合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の合計、すなわち空気調和機(1)が発生する高調波を抑制できる。
【0078】
(実施形態2)
図7は、実施形態2の図2相当図である。本実施形態2では、室内機側制御部(117)が、測定値送信部(117b)に代えて、高速フーリエ変換部(117c)を備えている。
【0079】
高速フーリエ変換部(117c)は、室内機側の入力電流(iin_室内機)の測定値に対して高速フーリエ変換を行うことにより、室内機側の入力電流(iin_室内機)の振幅(im)及び位相情報(θs)を算出して室外機(20)に送信する。このときの位相情報(θs)は電源電圧の基本波の位相が0度の時を基準とした位相である。
【0080】
また、室外機側制御部(217)が、復元部(217j)をさらに備えている。
【0081】
この復元部(217j)は、室内機側制御部(117)の高速フーリエ変換部(117c)によって送信された振幅(im)及び位相情報(θs)に基づいて、室内機側の入力電流(iin_室内機)を復元し、入力電流指令部(217a)に出力する。このとき、室内機側の入力電流(iin_室内機)の復元は、振幅(im)及び位相情報(θs)に基づいて、電源電圧の基本波の位相を基準として行われる。
【0082】
本実施形態2では、高速フーリエ変換部(117c)及び室外機側制御部(217)が、制御手段を構成する。
【0083】
その他の構成は、実施形態1と同じであるので、同一の構成には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0084】
(実施形態3)
図8は、実施形態3の図7相当図である。本実施形態3では、室内機側制御部(117)が、電流推定部(117d)をさらに備えている。
【0085】
電流推定部(117d)は、室内機側直流電流測定部(115)及び室内機側直流電圧測定部(116)の測定値、すなわち室内機側の直流電流(idc_室内機)と室内機側の直流電圧(vdc_室内機)とに基づいて、室内機側の入力電流(iin_室内機)を推定し、高速フーリエ変換部(117c)に出力する。室内機側の直流電流(idc_室内機)をidc_室内機、室内機側の直流電圧(vdc_室内機)をvdc_室内機、室内機側の入力電流(iin_室内機)をiin_室内機とすると、室内機側の入力電流(iin_室内機)は、以下の式(5)によって推定できる。
【0086】
【数5】
【0087】
本実施形態3では、高速フーリエ変換部(117c)、電流推定部(117d)及び室外機側制御部(217)が、制御手段を構成する。
【0088】
その他の構成は、実施形態2と同じであるので、同一の構成には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0089】
(実施形態4)
図9は、実施形態4の図7相当図である。本実施形態4では、室内機側制御部(117)が、測定値送信部(117b)に代えて、風量送信部(117e)を備えている。
【0090】
風量送信部(117e)は、室内機(10)のファンモータ(12)によって駆動されるファン(図示せず)の風量(av)の測定値を室外機(20)に送信する。風量(av)の測定値は、室内機(10)に設けられた風量測定部(図示せず)により測定される。
【0091】
また、室外機側制御部(217)が、入力電流出力部(217k)をさらに備えている。
【0092】
この入力電流出力部(217k)は、複数種類の基本波の位相と、各位相に対応する室内機側の入力電流とを関連付ける複数のテーブルを、複数種類の風量に対応付けて記憶している。入力電流出力部(217k)は、風量送信部(117e)によって送信された風量(av)に基づいて適切なテーブルを選択し、電源電圧の基本波の位相に基づいてテーブル内で関連付けられた入力電流を、室内機側の入力電流(iin_室内機)として入力電流指令部(217a)に出力する。
【0093】
その他の構成は、実施形態1と同じであるので、同一の構成には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0094】
(実施形態5)
図10は、実施形態5の図1相当図である。本実施形態5では、室外機側コンバータ回路(211)が、ブーストコンバータ(220)をさらに備えている。
【0095】
ブーストコンバータ(220)は、第1~第4の室外機側整流ダイオード(211a~211d)を有するブリッジ回路の出力に対し、DC/DC変換を行う。ブーストコンバータ(220)は、コンバータ用リアクトル(221)と、コンバータ用ダイオード(222)と、コンバータ用スイッチング素子(223)と、コンバータ用還流ダイオード(224)とを備えている。
【0096】
コンバータ用リアクトル(221)とコンバータ用ダイオード(222)とは、第1及び第3の室外機側整流ダイオード(211a,211c)のカソードと、室外機側コンデンサ(213)の正極との間に第1及び第3の室外機側整流ダイオード(211a,211c)側から順に互いに直列に接続されている。コンバータ用ダイオード(222)は、カソードを室外機側コンデンサ(213)側に向けている。
【0097】
コンバータ用スイッチング素子(223)は、バイポーラトランジスタである。コンバータ用スイッチング素子(223)のコレクタは、コンバータ用リアクトル(221)とコンバータ用ダイオード(222)との接点に接続されている。コンバータ用スイッチング素子(223)のエミッタは、第2及び第4の室外機側整流ダイオード(211b,211d)のアノード、及び室外機側コンデンサ(213)の負極に接続されている。
【0098】
室外機側制御部(217)は、図11に示すように、入力電流指令部(217a)と、コンバータ制御部(217m)とを備えている。
【0099】
コンバータ制御部(217m)は、室外機側入力電流測定部(214)の測定値、すなわち室外機側の入力電流(iin_室外機)と、室外機側の入力電流の指令値(iin*_室外機)とに基づいて、コンバータ用スイッチング素子(223)をオンオフするオンオフ信号(S)を出力する。コンバータ制御部(217m)は、室外機側入力電流測定部(214)の測定値、すなわち室外機側の入力電流(iin_室外機)が、室外機側の入力電流の指令値(iin*_室外機)よりも所定値分大きい第1の閾値以上になった場合には、コンバータ用スイッチング素子(223)をオフすることにより、室外機側の入力電流(iin_室外機)を減少させる。一方、コンバータ制御部(217m)は、室外機側入力電流測定部(214)の測定値、すなわち室外機側の入力電流(iin_室外機)が、室外機側の入力電流の指令値(iin*_室外機)よりも所定値分小さい第2の閾値以下になった場合には、コンバータ用スイッチング素子(223)をオンすることにより、室外機側の入力電流(iin_室外機)を増加させる。図12は、室外機側の入力電流(iin_室外機)、室外機側の入力電流の指令値(iin*_室外機)、第1の閾値、及び第2の閾値を示す。
【0100】
このように、室外機側制御部(217)のコンバータ制御部(217m)は、室内側の入力電流(iin_室内機)の測定値に基づいて、予め設定された合計電流の指令値(i*_合計)と室内機側の入力電流(iin_室内機)の差によって定まる室外機側の入力電流の指令値(iin_室外機)と室外機側の入力電流(iin_室外機)の偏差が所定値未満に収まるように、室外機側コンバータ回路(211)を制御する。
【0101】
その他の構成は、実施形態1と同じであるので、同一の構成には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0102】
(実施形態6)
図13は、実施形態6の図1相当図である。本実施形態6では、リアクトル(L)が、室外機(20)ではなく室内機(10)に設けられている。リアクトル(L)は、前記室内機側筐体に収容されている。
【0103】
リアクトル(L)の一端は、単相交流電源(2)に接続されている一方、リアクトル(L)の他端は、室内機側電力変換装置(11)と後述する室外機側電力変換装置(21)とに接続されている。つまり、第2及び第3の電源線(L2,L3)には、交流電源(2)からリアクトル(L)を介して交流が送られる。
【0104】
室内機側電力変換装置(11)は、単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介して供給される入力交流を、所望周波数及び所望電圧を有する出力交流に変換して、ファンモータ(12)に供給する。リアクトル(L)、室内機側コンバータ回路(111)、室内機側インバータ回路(112)、及び室内機側コンデンサ(113)は、共通の基板(100)に実装されている。
【0105】
室内機側コンバータ回路(111)は、単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介して供給された入力交流を整流して第1及び第2の室内機側直流電力線(118,119)に出力する。単相交流電源(2)と第1の室内機側入力端子(ITE1)との間にリアクトル(L)が接続されている。
【0106】
室外機側コンバータ回路(211)は、単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介して供給された入力交流を整流して第1及び第2の室外機側直流電力線(218,219)に出力する。単相交流電源(2)と第1の室外機側入力端子(OTE1)との間にリアクトル(L)が接続されている。
【0107】
その他の構成は、実施形態1と同じであるので、同一の構成には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0108】
したがって、本実施形態6によれば、室内機側コンバータ回路(111)と室外機側コンバータ回路(211)の両方に、単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介して交流が供給されるので、室内機側コンバータ回路(111)に、単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介さずに交流が供給される場合に比べ、室内機側コンバータ回路(111)の入力電流に重畳する高調波成分を抑制できる。その結果、室内機側コンバータ回路(111)と室外機側コンバータ回路(211)の入力電流の合計、すなわち空気調和機(1)全体の入力電流に重畳する高調波成分を抑制できる。
【0109】
上述のこと等を実証するために、以下に実験例(実施例、比較例1~3)を挙げる。
【0110】
実施例では、上記実施形態6に係る空気調和機(1)において、室内機側コンバータ回路(111)の入力電流を測定する。
【0111】
比較例1では、室内機側コンバータ回路(111)に単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介さずに入力交流を供給にするようにした場合に、室内機側コンバータ回路(111)の入力電圧及び入力電流を測定する。
【0112】
図14は、比較例1における室内機側コンバータ回路(111)の入力電圧及び入力電流を示す。
【0113】
図15は、実施例及び比較例1における室内機側コンバータ回路(111)の入力電流に重畳する各次数の周波数成分を示す。室内機側コンバータ回路(111)の入力電流に重畳する周波数成分は、室内機側コンバータ回路(111)の入力電流に対し、高速フーリエ変換(FFT:fast Fourier transform)を行うことにより得られる。
【0114】
図15に示すように、実施例では、室内機側コンバータ回路(111)の入力電流に重畳する高次の高調波成分が、比較例1に比べて小さくなっている。
【0115】
したがって、上記実施例及び比較例1は、室内機側コンバータ回路(111)に、単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介して交流が供給される場合に、室内機側コンバータ回路(111)に、単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介さずに交流が供給される場合に比べ、室内機側コンバータ回路(111)の入力電流に重畳する高次の高調波成分を抑制できることを物語るものである。
【0116】
比較例2では、室内機側コンバータ回路(111)に単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介さずに入力交流を供給にするとともに、室外機側コンバータ回路(211)には単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介して入力交流を供給にするようにし、かつリアクトル(L)のインダクタンスを第1のインダクタンス値とした場合に、室外機側コンバータ回路(211)の入力電流を測定する。
【0117】
図16は、IEC(International Electrotechnical Commission)61000-3-2で定められた高調波成分の限度値と、比較例2における室外機側コンバータ回路(211)の入力電流に重畳する各次数の周波数成分を示す。図16図18中、IEC61000-3-2で定められた高調波成分の限度値を折れ線グラフ、各入力電流に重畳する各次数の周波数成分を棒グラフで示す。
【0118】
比較例3では、室内機側コンバータ回路(111)に単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介さずに入力交流を供給にするとともに、室外機側コンバータ回路(211)には単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介して入力交流を供給にするようにし、かつリアクトル(L)のインダクタンスを第1のインダクタンス値よりも大きい第2のインダクタンス値とした場合に、室外機側コンバータ回路(211)の入力電流を測定する。
【0119】
図17は、IEC61000-3-2で定められた高調波成分の限度値と、比較例3における室外機側コンバータ回路(211)の入力電流に重畳する各次数の周波数成分を示す。
【0120】
図16及び図17に示すように、比較例2では、室外機側コンバータ回路(211)の入力電流に重畳する高次の高調波成分が、比較例3に比べて大きくなっている。
【0121】
したがって、上記比較例2及び比較例3は、リアクトル(L)のインダクタンスを小さくすると、室外機側コンバータ回路(211)の入力電流に重畳する高次の高調波成分が増大することを物語るものである。
【0122】
したがって、比較例2のように、室内機側コンバータ回路(111)に単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介さずに入力交流を供給にするとともに、室外機側コンバータ回路(211)と単相交流電源(2)との間に介在させるリアクトル(L)のインダクタンスを小さくした場合には、図18に示すように、室内機側コンバータ回路(111)と室外機側コンバータ回路(211)の入力電流の合計、すなわち空気調和機(1)の入力電流を高調波規格であるIEC61000-3-2に適合させることができなくなる。
【0123】
しかし、本実施形態6では、室内機側コンバータ回路(111)に、単相交流電源(2)からリアクトル(L)を介して交流を供給するので、リアクトル(L)を介さずに交流を供給する場合に比べ、空気調和機(1)の入力電流を高調波規格に適合させるために必要なリアクトル(L)のインダクタンスを小さくできる。したがって、リアクトル(L)を小型化できる。また、リアクトル(L)の小型化により、室内機側コンバータ回路(111)、室内機側インバータ回路(112)、及び室内機側コンデンサ(113)と共通の基板にリアクトル(L)を実装すること、及び室内機(10)の室内機側筐体内にリアクトル(L)の収容スペースを確保することが容易になる。
【0124】
本実施形態6では、リアクトル(L)、室内機側コンバータ回路(111)、室内機側インバータ回路(112)、及び室内機側コンデンサ(113)を、共通の基板(100)に実装したので、リアクトル(L)を実装するための基板を、室内機側コンバータ回路(111)、室内機側インバータ回路(112)、及び室内機側コンデンサ(113)を実装するための基板とは別に室内機(10)内に設ける場合に比べ、室内機(10)内に必要なスペースを小さくできる。したがって、室内機(10)を小型化できる。
【0125】
また、本実施形態6では、室外機側コンデンサ(213)の容量を小さく設定し、室外機側コンバータ回路(211)の出力電圧の脈動を許容させるので、室外機側コンデンサ(213)に室外機側コンバータ回路(211)の出力電圧の変動を完全に吸収させる場合に比べ、室外機側コンバータ回路(211)の入力電圧半周期中の通電期間を長くできる。当該通電期間を長くすると、入力電流に含まれる高調波成分が小さくなるため、高調波成分の所定の抑制効果を得るために必要なリアクトル(L)のインダクタンスを小さくでき、リアクトル(L)のサイズを小さくできる。
【0126】
また、本実施形態6では、共通のリアクトル(L)によって、室内機側コンバータ回路(111)及び室外機側コンバータ回路(211)の入力電流の高調波を抑制するので、高調波抑制用のリアクトルを、室内機側コンバータ回路(111)及び室外機側コンバータ回路(211)のそれぞれに対応して設けなくてもよい。したがって、部品点数及びコストを削減できる。
【0127】
(実施形態7)
図19は、実施形態7の図1相当図である。本実施形態7では、空気調和機(1)が、室内機(10)を2つ有し、第2の電源線(L2)、すなわち室内機側の電源線が、室内機(10)毎に設けられて共通の電源線(L1)から分岐している。そして、各第2の電源線(L2)から対応する室内機(10)の室内機側電力変換装置(11)へ電力が供給される。
【0128】
本実施形態7では、各室内機(10)の室内機側制御部(117)の測定値送信部(117b)が、室内機側入力電流測定部(114)により測定された室内機側の入力電流(iin_室内機1,iin_室内機2)を室外機(20)に送信する。室外機側制御部(217)の入力電流指令部(217a)は、予め設定された合計電流の指令値(i*_合計)から室内機側の入力電流(iin_室内機1,iin_室内機2)の合計を減算して得られる値を、室外機側の入力電流の指令値(iin*_室外機)として算出する。
【0129】
したがって、本実施形態7では、2つの室内機(10)毎に設けられた2本の第2の電源線(L2)を流れる室内機側の入力電流(iin_室内機1,iin_室内機2)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計と、室外機側の電源線(L3)を流れる室外機側の入力電流(iin_室外機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計との和よりも、2つの室内機(10)毎に設けられた2本の第2の電源線(L2)を流れる室内機側の入力電流(iin_室内機1,iin_室内機2)と室外機側の入力電流(iin_室外機)とを合計した共通の電源線(L1)を流れる合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計が小さくなる。
【0130】
つまり、一方の第2の電源線(L1)を流れる室内機側の入力電流(iin_室内機1)に含まれる第k次の成分を、ik_室内機1、他方の第2の電源線(L1)を流れる室内機側の入力電流(iin_室内機1)を、ik_室内機2とすると、以下の式(6)が成り立つ。
【0131】
【数6】
【0132】
(その他の実施形態)
上記実施形態1~7では、室外機側コンバータ回路(211)又は室外機側インバータ回路(212)の制御を、室内機側の入力電流(iin_室内機,iin_室内機1,iin_室内機2)、室内機側の直流電流(idc_室内機)、室内機側コンデンサ(113)の電圧(vdc_室内機)、及びファンモータ(12)によって駆動されるファンの風量のうちの少なくとも1つの測定値に基づいて行ったが、室内機側の入力電流(iin_室内機,iin_室内機1,iin_室内機2)に相関する他の値に基づいて行ってもよい。例えば、ファンの電力、ファンの回転数、室内機側の入力電流(iin_室内機,iin_室内機1,iin_室内機2)の通電期間、又は空気調和機(1)のリモコンにより設定される設定値に基づいて行ってもよい。例えば、実施形態4において、室外機側インバータ回路(212)の制御が、ファンの風量(av)の測定値に代えて、空気調和機(1)のリモコンにより設定される設定値を用いて行われるようにしてもよい。
【0133】
上記実施形態1~7では、室内機側の入力電流(iin_室内機,iin_室内機1,iin_室内機2)に相関する測定値に基づいて、室外機側コンバータ回路(211)及び室外機側インバータ回路(212)の一方を制御するようにしたが、室外機側コンバータ回路(211)及び室外機側インバータ回路(212)の両方を制御するようにしてもよい。
【0134】
上記実施形態1~7では、空気調和機(1)に、室内機側の入力電流(iin_室内機,iin_室内機1,iin_室内機2)に相関する測定値に基づいて、室外機側コンバータ回路(211)又は室外機側インバータ回路(212)を制御する制御手段を設けた。しかし、空気調和機(1)に、室外機側の入力電流(iin_室外機)に相関する測定値に基づいて、室内機側コンバータ回路(111)及び室内機側インバータ回路(112)のうちの少なくとも一方を制御する制御手段を設けてもよい。
【0135】
また、上記実施形態1~7では、本発明を、単相交流電源(2)を用いる空気調和機(1)に適用したが、本発明は、三相交流電源を用いる空気調和機(1)にも適用できる。かかる場合、第1の電源線(L1)には、系統電源から電気を引き込む配電盤によって分配された後の電気が流れるようにしてもよいし、例えば業務用空気調和機のように、室内機(10)及び室外機(20)がそれぞれ異なる配電盤に接続される場合には、第1の電源線(L1)が系統電源に配電盤を介さずに接続され、配電盤よりも系統電源側で、第2及び第3の電源線(L2,L3)に分岐するようにしてもよい。
【0136】
また、上記実施形態6では、リアクトル(L)を室内機(10)だけに設けたが、室外機(20)だけに設けてもよい。
【0137】
また、上記実施形態7において、第2及び第3の電源線(L2,L3)に、交流電源(2)からリアクトル(L)を介して前記交流が送られるようにしてもよい。また、リアクトル(L)を、室外機(20)ではなく一方の室内機(10)内の第1の電源線(L1)に設け、第2及び第3の電源線(L2,L3)に、交流電源(2)からリアクトル(L)を介して前記交流が送られるようにしてもよい。
【0138】
また、上記実施形態7では、室内機(10)を2つ設けたが、2つ以上の複数設けてもよい。
【0139】
また、本発明は、IEC(International Electrotechnical Commission)61000-3-2以外の規格に空気調和機(1)を適合させるために適用してもよく、IEC(International Electrotechnical Commission)61000-3-2に適合しない空気調和機(1)にも適用できる。
【0140】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態及び変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本開示は、室内機及び室外機を備えた空気調和機として有用である。
【符号の説明】
【0142】
1 空気調和機
2 単相交流電源
10 室内機
20 室外機
111 室内機側コンバータ回路
112 室内機側インバータ回路
113 室内機側コンデンサ
117c 高速フーリエ変換部(制御手段)
117d 電流推定部(制御手段)
211 室外機側コンバータ回路
212 室外機側インバータ回路
213 室外機側コンデンサ
217 室外機側制御部(制御手段)
L1 第1の電源線(共通の電源線)
L2 第2の電源線(室内機側の電源線)
L3 第3の電源線(室外機側の電源線)
IN1,IN2 入力ノード
ON1,ON2 入力ノード
in_室内機,iin_室内機1,iin_室内機2 室内機側の入力電流
in_室外機 室外機側の入力電流
_合計 合計電流
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内機(10)及び室外機(20)と、室内機側の電源線(L2)と室外機側の電源線(L3)とを有し、前記室内機側及び室外機側の電源線(L2,L3)は、交流電源(2)に接続される共通の電源線(L1)から分岐し、前記室内機側の電源線(L2)から前記室内機(10)へ電力が供給され、前記室外機側の電源線(L3)から前記室外機(20)に電力が供給される空気調和機であって、
前記室内機(10)及び前記室外機(20)の各機器は、
前記交流電源(2)から当該機器側の電源線(L2,L3)に送られた交流を整流して出力するコンバータ回路(111,211)と、
前記コンバータ回路(111,211)により出力された直流を交流に変換するインバータ回路(112,212)と、
前記インバータ回路(112,212)の入力ノード(IN1,IN2,ON1,ON2)間に接続されたコンデンサ(113,213)とを有し、
前記室内機側の電源線(L2)を流れる室内機側の入力電流(iin_室内機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計と、前記室外機側の電源線(L3)を流れる室外機側の入力電流(iin_室外機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計との和よりも、前記室内機側の入力電流(iin_室内機)と前記室外機側の入力電流(iin_室外機)とを合計した前記共通の電源線(L1)を流れる合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計が小さい空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和機において、
前記室内機側の入力電流(iin_室内機)の第15~40次の整数次成分の実効値の合計と、前記室外機側の入力電流(iin_室外機)の第15~40次の整数次成分の実効値の合計との和よりも、前記合計電流(i_合計)の第15~40次の整数次成分の実効値の合計が小さい空気調和機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の空気調和機において、
前記室内機側の入力電流(iin_室内機)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計と、前記室外機側の入力電流(iin_室外機)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計との和から前記合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計を引くことで得られる差分は、前記室内機側の入力電流(iin_室内機)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計の3/4よりも大きい空気調和機。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の空気調和機において、
第2~40次のうちの少なくとも1つの整数の次数において、前記合計電流(i_合計)の当該次数の成分の実効値が、前記室外機側の入力電流(iin_室外機)の当該次数の成分の実効値よりも小さい空気調和機。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の空気調和機において、_
前記室内機(10)及び室外機(20)のいずれか一方の機器側の入力電流(iin_室内機,iin_室外機)に相関する値に基づいて、他方の機器のコンバータ回路(111,211)及びインバータ回路(112,212)の少なくとも一方を制御する制御手段(217,117c,117d)を備える空気調和機。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の空気調和機において、
前記室内機(10)及び室外機(20)の一方は、リアクトル(L)を有し、
前記室内機側の電源線(L2)には、前記交流電源(2)から前記リアクトル(L)を介して前記交流が送られ、
前記室外機側の電源線(L3)には、前記交流電源(2)から前記リアクトル(L)を介して前記交流が送られる空気調和機。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の空気調和機において、
前記室外機(20)側のインバータ回路(212)は、スイッチング素子(212a~212f)を備え、前記室外機(20)側のコンバータ回路(211)により出力された直流を前記スイッチング素子(212a~212f)のスイッチング動作により交流に変換し、
前記室外機(20)側のコンバータ回路(211)の出力電圧は、その最大値がその最小値の2倍以上となるような大きな脈動を有している空気調和機。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の空気調和機において、
前記室内機(10)が、リアクトル(L)を有し、
前記リアクトル(L)、前記室内機(10)側のコンバータ回路(111)、前記室内機(10)側のインバータ回路(112)、及び前記室内機(10)側のコンデンサ(113)は、共通の基板(100)に実装されている空気調和機。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の空気調和機において、
前記室内機(10)を複数有し、
前記室内機側の電源線(L2)は、室内機(10)毎に設けられて前記共通の電源線(L1)から分岐し、
前記複数の室内機(10)毎に設けられた複数の前記室内機側の電源線(L2)を流れる室内機側の入力電流(iin_室内機1,iin_室内機2)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計と、前記室外機側の電源線(L3)を流れる室外機側の入力電流(iin_室外機)に含まれる第2~40次の整数次成分の実効値の合計との和よりも、前記複数の室内機(10)毎に設けられた複数の前記室内機側の電源線(L2)を流れる室内機側の入力電流(iin_室内機1,iin_室内機2)と前記室外機側の入力電流(iin_室外機)とを合計した前記共通の電源線(L1)を流れる合計電流(i_合計)の第2~40次の整数次成分の実効値の合計が小さい空気調和機。