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特開2022-162993製造プロセスのための異常検出の方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162993
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】製造プロセスのための異常検出の方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20221018BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20221018BHJP
【FI】
H01L21/66 Z
G06N20/00 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022065239
(22)【出願日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】17/229,293
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516172237
【氏名又は名称】アクセンチュア グローバル ソリューションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102406
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100100240
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 孝
(72)【発明者】
【氏名】村井 誠
(72)【発明者】
【氏名】森賀 新
(72)【発明者】
【氏名】須山 敦志
(72)【発明者】
【氏名】林 素明
(72)【発明者】
【氏名】工藤 卓哉
【テーマコード(参考)】
4M106
【Fターム(参考)】
4M106AA01
4M106CA27
4M106CA31
4M106CA48
4M106CA70
4M106DJ17
4M106DJ19
4M106DJ20
4M106DJ27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】不良を削減して製造効率を向上させる。
【解決手段】異常検出システム300において、品質予測ユニットは、第1の生産ロットについて、プロセス品質検査データを得て、最終工程後に、ロット内の製品特性データからガウス過程回帰モデルを訓練し、バスタブカーネル関数を使用するガウス過程回帰モデルを使用して製品特性データの予測分布を生成する。異常検出ユニットは、第2生産ロットについて、品質管理工程からのプロセス品質検査データを得て、製品特性データの予測分布と、第2の生産ロットからのプロセス品質検査データを使用して第2生産ロットにおける異常を特定し、該ロットにおいて異常が検出されなければ、第2生産ロットからのプロセス品質検査データを使用してガウス過程回帰モデルを更新し、製品特性の予測分布に基づきプロセス品質検査データ内の1つ以上の値に関する目標値を設定し、目標値に基づき1以上の製造工程の設定を調整する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロット生産中に異常を検出する、コンピュータに実装された方法であって、生産ロット内の製品は、製造工程と、前記製造工程の合間に挿入された1つ以上の品質管理工程とを含む工程のシーケンスに従って加工され、前記方法は、
第1の生産ロットについて、前記1つ以上の品質管理工程それぞれからのプロセス品質検査データを得るステップと、
前記シーケンス内の最終工程後に、前記第1の生産ロット内の前記製品について製品特性データを得るステップと、
前記第1の生産ロットからの前記プロセス品質検査データおよび前記製品特性データを使用してガウス過程回帰モデルを訓練するステップと、
バスタブカーネル関数を使用する前記ガウス過程回帰モデルを使用して前記製品特性データの予測分布を生成するステップと、
第2の生産ロットについて、それぞれの前記品質管理工程からのプロセス品質検査データを得るステップと、
前記製品特性データの前記予測分布と、前記第2の生産ロットからの前記プロセス品質検査データとを使用して、前記第2の生産ロットにおける異常を特定するステップと、
前記第2の生産ロットにおいて異常が検出されなければ、前記第2の生産ロットからの前記プロセス品質検査データを使用して前記ガウス過程回帰モデルを更新するステップと、
前記製品特性の前記予測分布に基づき前記プロセス品質検査データ内の1つ以上の値に関する目標値を設定するステップと、
前記目標値に基づき1つ以上の製造工程の設定を調整するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記バスタブカーネル関数は、
k(x,x)=∫φ(x,θ)φ(x,θ)dθ
と定義され、式中、φ(x,θ)は、バスタブ関数であり、θは、パラメータθ=[α,β,γ,α,β,γ,δ]を表し、前記バスタブ関数は、
【数1】
と表現可能であり、式中、αは、前記バスタブ関数の深さを定め、βは、前記バスタブ関数の両側の傾きを定め、γは、前記バスタブ関数の幅を定め、δは、前記バスタブ関数の全体の高さを定め、α、β、γ、およびδは、実数であり、つまりα,β,γ,α,β,γ,δ∈Rである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記製品特性データの前記予測分布の信用区間を所定の閾値と比較するステップと、
前記信用区間が前記閾値を超えていれば、前記第2の生産ロットにおける異常を特定せずに、前記ガウス過程回帰モデルを訓練するために前記第2の生産ロットについての前記プロセス品質検査データを使用するステップと
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の生産ロットについての前記プロセス品質検査データを含むスキップ済み通知を生成するステップ
をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記シーケンス内の最終工程後に、前記第2の生産ロット内の前記製品について製品特性データを得るステップと、
前記製品特性データの前記予測分布と、前記得られた製品特性データとの間の差を判断するステップと、
前記差を所定の閾値と比較するステップと、
前記差が前記所定の閾値より大きければ、アラームをトリガするステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記差が前記所定の閾値より小さければ、前記第2の生産ロットからの前記プロセス品質検査データおよび前記製品特性データを使用して、前記ガウス過程回帰モデルを更新するステップ
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記製品特性の前記予測分布を改善するために学習されるべきプロセス品質検査データを特定するステップと、
前記特定されたプロセス品質検査データに基づき1つ以上の製造工程の設定を調整するステップと、
前記特定されたプロセス品質検査データを獲得するステップと、
前記獲得されたプロセス品質検査データを使用して前記ガウス過程回帰モデルを訓練するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ロット生産は、ウェーハ製作であり、前記製品特性データは、ウェーハテストにより得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
1つ以上のプロセッサと、
前記1つ以上のプロセッサに結合され命令が記憶されたコンピュータ可読ストレージデバイスと
を含むシステムであって、前記命令は、前記1つ以上のプロセッサにより実行されると前記1つ以上のプロセッサに動作を実行させ、前記動作は、
第1の生産ロットについて、1つ以上の品質管理工程それぞれからのプロセス品質検査データを得ることと、
シーケンス内の最終工程後に、前記第1の生産ロット内の製品について製品特性データを得ることと、
前記第1の生産ロットからの前記プロセス品質検査データおよび前記製品特性データを使用してガウス過程回帰モデルを訓練することと、
バスタブカーネル関数を使用する前記ガウス過程回帰モデルを使用して前記製品特性データの予測分布を生成することと、
第2の生産ロットについて、それぞれの前記品質管理工程からのプロセス品質検査データを得ることと、
前記製品特性データの前記予測分布と、前記第2の生産ロットからの前記プロセス品質検査データとを使用して、前記第2の生産ロットにおける異常を特定することと、
前記第2の生産ロットにおいて異常が検出されなければ、前記第2の生産ロットからの前記プロセス品質検査データを使用して前記ガウス過程回帰モデルを更新することと、
前記製品特性の前記予測分布に基づき前記プロセス品質検査データ内の1つ以上の値に関する目標値を設定することと、
前記目標値に基づき1つ以上の製造工程の設定を調整することと
を含む、システム。
【請求項10】
前記動作は、
前記バスタブカーネルを、
k(x,x)=∫φ(x,θ)φ(x,θ)dθ
と定義すること
をさらに含み、式中、φ(x,θ)は、バスタブ関数であり、θは、パラメータθ=[α,β,γ,α,β,γ,δ]を表し、前記バスタブ関数は、
【数2】
と表現可能であり、式中、αは、前記バスタブ関数の深さを定め、βは、前記バスタブ関数の両側の傾きを定め、γは、前記バスタブ関数の幅を定め、δは、前記バスタブ関数の全体の高さを定め、α、β、γ、およびδは、実数であり、つまりα,β,γ,α,β,γ,δ∈Rである、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記動作は、
前記製品特性データの前記予測分布の信用区間を所定の閾値と比較することと、
前記信用区間が前記閾値を超えていれば、前記第2の生産ロットにおける異常を特定せずに、前記ガウス過程回帰モデルを訓練するために前記第2の生産ロットについての前記プロセス品質検査データを使用することと
をさらに含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記動作は、
前記第2の生産ロットについての前記プロセス品質検査データを含むスキップ済み通知を生成すること
をさらに含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記動作は、
前記シーケンス内の最終工程後に、前記第2の生産ロット内の製品について製品特性データを得ることと、
前記製品特性データの前記予測分布と、前記得られた製品特性データとの間の差を判断することと、
前記差を所定の閾値と比較することと、
前記差が前記所定の閾値より大きければ、アラームをトリガすることと
をさらに含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記動作は、
前記差が前記所定の閾値より小さければ、前記第2の生産ロットからの前記プロセス品質検査データおよび前記製品特性データを使用して、前記ガウス過程回帰モデルを更新すること
をさらに含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記動作は、
前記製品特性の前記予測分布を改善するために学習されるべきプロセス品質検査データを特定することと、
前記特定されたプロセス品質検査データに基づき1つ以上の製造工程の設定を調整することと、
前記特定されたプロセス品質検査データを獲得することと、
前記獲得されたプロセス品質検査データを使用して前記ガウス過程回帰モデルを訓練することと
をさらに含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項16】
前記動作は、
ウェーハ製作プロセスにおけるウェーハテストにより前記製品特性データを得ること
をさらに含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項17】
1つ以上のプロセッサに結合され命令が記憶されたコンピュータ可読ストレージ媒体であって、前記命令は、前記1つ以上のプロセッサにより実行されると前記1つ以上のプロセッサに動作を実行させ、前記動作は、
第1の生産ロットについて、1つ以上の品質管理工程それぞれからのプロセス品質検査データを得ることと、
シーケンス内の最終工程後に、前記第1の生産ロット内の製品について製品特性データを得ることと、
前記第1の生産ロットからの前記プロセス品質検査データおよび前記製品特性データを使用してガウス過程回帰モデルを訓練することと、
バスタブカーネル関数を使用する前記ガウス過程回帰モデルを使用して前記製品特性データの予測分布を生成することと、
第2の生産ロットについて、それぞれの前記品質管理工程からのプロセス品質検査データを得ることと、
前記製品特性データの前記予測分布と、前記第2の生産ロットからの前記プロセス品質検査データとを使用して、前記第2の生産ロットにおける異常を特定することと、
前記第2の生産ロットにおいて異常が検出されなければ、前記第2の生産ロットからの前記プロセス品質検査データを使用して前記ガウス過程回帰モデルを更新することと、
前記製品特性の前記予測分布に基づき前記プロセス品質検査データ内の1つ以上の値に関する目標値を設定することと、
前記目標値に基づき1つ以上の製造工程の設定を調整することと
を含む、ストレージ媒体。
【請求項18】
前記動作は、
前記バスタブカーネルを、
k(x,x)=∫φ(x,θ)φ(x,θ)dθ
と定義すること
をさらに含み、式中、φ(x,θ)は、バスタブ関数であり、θは、パラメータθ=[α,β,γ,α,β,γ,δ]を表し、前記バスタブ関数は、
【数3】
と表現可能であり、式中、αは、前記バスタブ関数の深さを定め、βは、前記バスタブ関数の両側の傾きを定め、γは、前記バスタブ関数の幅を定め、δは、前記バスタブ関数の全体の高さを定め、α、β、γ、およびδは、実数であり、つまりα,β,γ,α,β,γ,δ∈Rである、請求項17に記載のストレージ媒体。
【請求項19】
前記動作は、
前記製品特性データの前記予測分布の信用区間を所定の閾値と比較することと、
前記信用区間が前記閾値を超えていれば、前記第2の生産ロットにおける異常を特定せずに、前記ガウス過程回帰モデルを訓練するために前記第2の生産ロットについての前記プロセス品質検査データを使用することと
をさらに含む、請求項18に記載のストレージ媒体。
【請求項20】
前記動作は、
前記シーケンス内の最終工程後に、前記第2の生産ロット内の製品について製品特性データを得ることと、
前記製品特性データの前記予測分布と、前記得られた製品特性データとの間の差を判断することと、
前記差を所定の閾値と比較することと、
前記差が前記所定の閾値より大きければ、アラームをトリガすることと
をさらに含む、請求項17に記載のストレージ媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、製造システムに関する。特に、本開示は、製造プロセスのための異常検出の方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
製造システムは、加工工程のシーケンスに従ってワークピースを加工し、完成部品を製造する。加工工程のシーケンス全体およびその後に、品質管理手順を使用して、設計または品質仕様を満たさない製品が特定される。一部の製造システムは、不良を削減して製造効率を向上させるために、品質管理手順の間に測定されたデータを、予測法を用いて補う。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の実装は、全般的に、ロット生産において異常を検出する方法およびシステムを対象とする。特に、本開示の実装は、上流のインライン品質管理プロセスからのデータに基づき特定の製品特性における異常を検出するために使用される、ガウス過程回帰モデルに基づく方法およびシステムを対象とする。
【0004】
一部の実装において、アクションは、第1の生産ロットについて、1つ以上の品質管理工程それぞれからのプロセス品質検査データを得ることと、シーケンス内の最終工程後に、第1の生産ロット内の製品について製品特性データを得ることと、第1の生産ロットからのプロセス品質検査データおよび製品特性データを使用してガウス過程回帰モデルを訓練することと、バスタブカーネル関数を使用するガウス過程回帰モデルを使用して製品特性データの予測分布を生成することと、第2の生産ロットについて、それぞれの品質管理工程からのプロセス品質検査データを得ることと、製品特性データの予測分布と、第2の生産ロットからのプロセス品質検査データとを使用して、第2の生産ロットにおける異常を特定することと、第2の生産ロットにおいて異常が検出されなければ、第2の生産ロットからのプロセス品質検査データを使用してガウス過程回帰モデルを更新することと、製品特性の予測分布に基づきプロセス品質検査データ内の1つ以上の値に関する目標値を設定することと、目標値に基づき1つ以上の製造工程の設定を調整することとを含む。この側面の他の実装は、対応するシステムと、装置と、本方法のアクションを実行するように構成されコンピュータストレージデバイス上にエンコーディングされたコンピュータプログラムとを含む。
【0005】
これらの実装および他の実装はそれぞれ、次の特徴のうちの1つ以上を任意選択で含むことができる。一部の実装において、動作は、バスタブカーネルを
k(x,x)=∫φ(x,θ)φ(x,θ)dθ
と定義することをさらに含み、式中、φ(x,θ)は、バスタブ関数であり、θは、パラメータθ=[α,β,γ,α,β,γ,δ]を表し、バスタブ関数は、次のように表現可能である。
【0006】
【数1】
【0007】
式中、αは、バスタブ関数の深さを定め、βは、バスタブ関数の両側の傾きを定め、γは、バスタブ関数の幅を定め、δは、バスタブ関数の全体の高さを定め、パラメータは、実数である。言い換えれば、Rがすべての実数のセットを示す場合、x∈R、およびα,β,γ,α,β,γ,δ∈Rである。
【0008】
一部の実装は、製品特性データの予測分布の信用区間を所定の閾値と比較することと、信用区間が閾値を超えていれば、第2の生産ロットにおける異常を特定せずに、第2の生産ロットについてのプロセス品質検査データを使用してガウス過程回帰モデルを訓練することとを含む。一部の実装は、第2の生産ロットについてのプロセス品質検査データを含むスキップ済み通知を生成することを含む。一部の実装は、シーケンス内の最終工程後に、第2の生産ロット内の製品について製品特性データを得ることと、製品特性データの予測分布と、得られた製品特性データとの間の差を判断することと、差を所定の閾値と比較することと、差が所定の閾値より大きければ、アラームをトリガすることとを含む。一部の実装は、差が所定の閾値より小さければ、第2の生産ロットからのプロセス品質検査データおよび製品特性データを使用して、ガウス過程回帰モデルを更新することを含む。一部の実装は、製品特性の予測分布を改善するために学習されるべきプロセス品質検査データを特定することと、特定されたプロセス品質検査データに基づき1つ以上の製造工程の設定を調整することと、特定されたプロセス品質検査データを獲得することと、獲得されたプロセス品質検査データを使用してガウス過程回帰モデルを訓練することとを含む。一部の実装は、ウェーハ製作プロセスにおけるウェーハテストにより製品特性データを得ることを含む。
【0009】
当然のことながら、本開示による方法は、本願明細書に記載される側面と特徴との任意の組み合わせを含むことができる。つまり、例として、本開示による装置および方法は、本願明細書に具体的に記載される側面と特徴との組み合わせに限定されず、示される側面と特徴との任意の組み合わせも含むことができる。
【0010】
本開示の1つ以上の実装の詳細が、添付の図面および下記の説明の中に記載されている。本開示の他の特徴および利点が、その説明、図面、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実装を実行することができる例示のシステムを示す。
図2】半導体デバイス製作プロセスなどの製造プロセスにおいて品質を監視する例示のシステムを示す
図3】本開示の実装による異常検出システムの例を示す。
図4】本開示の実装による予測モデルの例を示す。
図5】本開示の実装によるバスタブ関数の様々なパラメータを示す。
図6】本開示の実装による異常検出システムのさらなる例を示す。
図7】本開示の実装による異常検出ユニットの例を示す。
図8】本開示の実装による異常検出システムのさらなる例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
別々の図面内の類似の参照番号および名称は、類似の構成要素を示す。
【0013】
本開示の実装は、全般的に、ロット生産において異常を検出する方法およびシステムを対象とする。特に、本開示の実装は、上流のインライン品質管理プロセスからのデータに基づき特定の製品特性における異常を検出するために使用される、ガウス過程回帰モデルに基づく方法およびシステムを対象とする。
【0014】
一部の実装において、アクションは、第1の生産ロットについて、1つ以上の品質管理工程それぞれからのプロセス品質検査データを得ることと、シーケンス内の最終工程後に、第1の生産ロット内の製品について製品特性データを得ることと、第1の生産ロットからのプロセス品質検査データおよび製品特性データを使用してガウス過程回帰モデルを訓練することと、バスタブカーネル関数を使用するガウス過程回帰モデルを使用して製品特性データの予測分布を生成することと、第2の生産ロットについて、それぞれの品質管理工程からのプロセス品質検査データを得ることと、製品特性データの予測分布と、第2の生産ロットからのプロセス品質検査データとを使用して、第2の生産ロットにおける異常を特定することと、第2の生産ロットにおいて異常が検出されなければ、第2の生産ロットからのプロセス品質検査データを使用してガウス過程回帰モデルを更新することと、製品特性の予測分布に基づきプロセス品質検査データ内の1つ以上の値に関する目標値を設定することと、目標値に基づき1つ以上の製造工程の設定を調整することとを含む。
【0015】
例示の製造システムを参照して、本開示の各実装について本願明細書にさらに詳細に記載する。例示の製造システムは、半導体デバイスを製作するために使用されるウェーハを加工するために使用される。半導体デバイス製作プロセスは、例として、単体の半導体デバイスおよび集積回路チップを製造するために使用される。製作プロセスは、半導体ウェーハ上に電子回路を徐々に形成していく自動化された工程のシーケンスを含む。工程の数が原因で、製作プロセスは、開始から終了までに数週間かかる場合もある。しかしながら、本開示の実装は、品質管理データをもたらす複数の製造プロセスを含む、任意の適切な自動化システムにより実現可能であると考えられる。
【0016】
図1は、本開示の実装を実行することができる例示のシステム100を示す。例示のシステム100は、コンピューティングデバイス102、バックエンドシステム108、およびネットワーク106を含む。一部の例では、ネットワーク106は、ローカルエリアネットワーク(LAN:local area network)、ワイドエリアネットワーク(WAN:wide area network)、インターネット、またはそれらの組み合わせを含み、ウェブサイト、デバイス(例えばコンピューティングデバイス102)、およびバックエンドシステム(例えばバックエンドシステム108)を接続する。一部の例において、ネットワーク106には、有線および/またはワイヤレスの通信リンク上でアクセスできる。
【0017】
一部の例において、コンピューティングデバイス102は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ハンドヘルドコンピュータ、タブレットコンピュータ、携帯情報端末(PDA:personal digital assistant)、携帯電話、ネットワークアプライアンス、カメラ、スマートフォン、拡張汎用パケット無線サービス(EGPRS:enhanced general packet radio service)モバイル電話、メディアプレーヤ、ナビゲーションデバイス、電子メールデバイス、ゲーム機、またはこれらのデバイスもしくは他のデータ処理デバイスのいずれか2つ以上の適切な組み合わせなど、任意の適切なタイプのコンピューティングデバイスを含むことができる。
【0018】
示されている例においてバックエンドシステム108は、少なくとも1つのサーバシステム112およびデータストア114(例えばデータベースおよび知識グラフ構造)を含む。一部の例において少なくとも1つのサーバシステム112は、コンピュータに実装された1つ以上のサービスをホストし、ユーザはコンピューティングデバイスを使用してそのサービスと相互作用できる。例としてサーバシステム112は、本開示の実装による異常検出システムの一部として提供される1つ以上のアプリケーションをホストすることができる。
【0019】
一部の例においてバックエンドシステム108は、本開示の実装による、製造システムにおける異常を検出する異常検出システムをホストする。例としてユーザ120(例えば半導体製作工場のオペレータ)は、コンピューティングデバイス102を使用して異常検出システムと相互作用することができる。
【0020】
図2は、半導体デバイス製作プロセスなどの製造プロセスにおいて品質を監視する例示のシステム200を示す。例として製造プロセスは、逐次プロセスが半導体ウェーハ上に電子回路を形成するウェーハ製作に関するものであってもよい。システム200は、品質管理データ204を受信する異常検出システム202を含む。異常検出システム202については、図3図9を参照してさらに詳細に記載される。
【0021】
品質管理データ204は、ウェーハ製作プロセスの一環として収集されるデータを含む。ウェーハ製作は、成膜、除去、パターン形成、および電気的性質の調節という4つのカテゴリに大別される加工工程を含む。これらの加工工程は、ウェーハ上の特定の領域に対して実行され、数百回繰り返されて、完成した回路が形成される。ウェーハ製作は、加工工程に加えて、加工工程の合間に挿入されるインライン品質管理工程を含む。
【0022】
各インライン品質管理工程において、1つ以上のパラメータが測定され、個々の閾値(例えば上限、下限)と比較される。これらの限界から値が外れていれば、そのウェーハは不良とみなされる。値が所定の範囲に入るウェーハは、次の加工工程に移る。例として、品質管理データ1の第1のセット210aは、第1のインライン品質管理工程(図示せず)を「通過」したウェーハの値を含む。これらのウェーハは、次のインライン品質管理工程まで進み、そこで第2のインライン品質管理工程を「通過」するウェーハについて品質管理データ2の第2のセット210bが収集される。インライン品質管理は、品質管理データnの最終的な第nのセット210nが収集されるまで継続する。簡潔さのために、図2は、4つのセット210a、210b、210c、210nの品質管理データを含む。実際には、データのセット数は、特定のウェーハ製作プロセスに応じて調整される。
【0023】
一般的に、品質管理データには2つのタイプがある。第1のタイプは、例として長さ、重さ、厚さ、温度、強度、構成比率、および時間などの連続変数である。連続変数は、2つの実数値、さらにその2つの値の間にあるすべての実数値をとることができる。このカテゴリは、寸法、表面粗さ、長さ、体積、質量、時間、およびエネルギーなどの単純測定値も含むことができる。このカテゴリはさらに、測定分類値および複数測定値を含むことができる。第2のタイプのデータは、例として不良品の数などを計数することによって得られるデータを含む。数例を挙げると、これは不良ユニット数、不良箇所、不良率、生産ユニット数、人員数を含むことができる。言い換えれば、第2のカテゴリは、離散変数を含む。このカテゴリはさらに、不適合件数または不良品数などの単純合計値を含む。このカテゴリは、計数分類値および複数合計値も含む。
【0024】
ウェーハ製作は、一般的に、テストパターンのシーケンスに従ってウェーハ上の回路に機能不良がないかどうかをテストするウェーハテスト工程で終了する。ウェーハテストの後、ウェーハは、ダイ準備などのさらなる製作工程に進むことができる。品質管理データ204は、例えば特定のウェーハがすべてのテストパターンを通過したかどうかなど、ウェーハテストからの最終検査データ212も含む。ウェーハテストに移るために、ウェーハはそれぞれのインライン品質管理工程を「通過」していることになる。しかしながら、これらのウェーハにはウェーハテストを通過しないものもある。本開示の実装によれば、そうしたウェーハを特定するために、異常検出システム202は品質管理データ204を分析する。
【0025】
図3は、図2のシステム200において使用可能な異常検出システム300の例を示す。異常検出システム300は、品質予測ユニット302および異常検出ユニット304を含む。品質予測ユニット302は、製品特性の予測分布を生成する。予測分布は、プロセス品質検査データに基づき異常を特定する異常検出ユニット304の入力となる。本開示全体での「製品特性」という用語の使用は、最終検査工程中に得られる値またはパラメータ(例えばウェーハテストからの最終検査データ212)を指す。本開示全体での「プロセス品質検査データ」という用語の使用は、インライン品質管理テスト中に得られる値またはパラメータ(例えば品質管理データのセット210a、210b、210c、210n)を指す。
【0026】
品質予測ユニット302は、製品特性の予測分布をもたらす工程のシーケンスを実行するように構成される。306aにて品質予測ユニット302は、第1の生産ロットについて、1つ以上の品質管理工程それぞれからプロセス品質検査データを得る。306bにて品質予測ユニット302は、製造および品質管理の工程のシーケンスにおける最終工程後に、第1の生産ロット内の製品について製品特性データを得る。図面における「x-1」という表記法の使用は、予測モデルの訓練に使用される(第1の生産ロットからの)過去のデータを指す。異常検出システム300が当初設置されるとき、過去のデータは、サーバ(例えば図1内のバックエンドシステム108)上に記憶されている生産履歴データとされてもよい。システム300が運用に入ると、過去のデータは、前のバッチまたはロットからのデータとされてもよい。一部のケースでは、ウェーハは、製作コストを削減するために、例えば25のウェーハなどの固定のロットサイズで製作される。過去のデータは、前に製造されたロットからのデータを含んでもよい。あるいは過去のデータは、生産ロットに厳密に対応しない形で、以前の品質管理データをグループ化したものであってもよい。
【0027】
308にて、過去のプロセス品質検査データおよび製品特性データが前処理されて、訓練用のセットが形成される。例としてデータの前処理は、任意の適切な方法を使用したデータのフォーマッティングおよびデータの品質保証を含むことができる。310にて、訓練データを使用して予測モデルが訓練される。図4および図5を参照してさらに詳細に記載されるように、予測モデルは、バスタブカーネル関数を使用するガウス過程回帰モデルである。ガウス過程モデルは、例として行列演算または数値演算を使用して、近似推論により訓練可能である。一般に、訓練用データを生成する確率が増大するようにパラメータの確率分布が調整される。
【0028】
312にて、異常検出ユニット304の入力となる製品特性の予測分布が予測モデルを使用して生成される。バスタブモデルを使用して出力される予測分布は、出力の値について見込まれる確率の範囲に対応する。例として、2次元の例において、(QC1,QC2)=(10,15)のときに、最終品質データの予測値が80%の確率で50から65の間である。このケースにおいて、実際に得られた最終品質データが98であれば、50~65から遠いため、異常スコアは高くなる。
【0029】
異常検出ユニット304は、製品特性の予測分布を使用してプロセス品質検査データに基づき異常を特定する工程のシーケンスを実行するように構成される。318にて異常検出ユニット304は、第2の生産ロットについてそれぞれの品質管理工程からのプロセス品質検査データを得る。言い換えれば、異常検出ユニット304は、例えばロットxなど検査されるべきウェーハの、プロセス品質検査データを受信する。320にて、例えばプロセス品質検査データを上述された出力範囲と比較することにより、プロセス品質検査データが品質予測ユニット302により生成された予測分布と比較されて、プロセス品質検査データx内の異常が検出される。1つ以上の異常が検出されれば、322にてアラームが出され、324にてプロセスが終了され、オペレータによる検討が可能になる。異常が検出されなければ、予測モデルを更新するために、326にてプロセス品質検査データxが品質予測ユニット302に送信される。
【0030】
図4は、2次元の予測モデルの例を示す。両モデル400a、400bは、入力として2セットのプロセス品質検査データを受信する。第1のセットのデータは、予め定義された上限および下限402、404を有する。第2のセットのデータも、予め定義された上限および下限408、406を有する。この限界402、404、406、408は、プロセス品質検査データの個々の値が入るべきプロセスウィンドウ410を定義する。モデル400aにおいて2つの曲線により示されているように、予測モデルは、バスタブカーネル関数を使用するガウス過程回帰モデルである。図4は、QCデータ1およびQCデータ2の2次元モデルを示すが、モデルは複数の次元(すなわちQCデータ1,QCデータ2,…QCデータn)に拡張可能である。
【0031】
ガウス過程回帰において、尤度、すなわち訓練データの観測分布が正規である場合、関数の事後分布は行列計算により計算される。観測分布が非正規であれば、関数の事後分布はマルコフ連鎖モンテカルロ法または期待値伝播法などの近似計算により計算される。モデルは、関数の事後分布と、関数により周辺化された尤度、すなわち観測分布との積である、予測分布を計算する。
【0032】
本開示において、事前バスタブカーネルは、
k(x,x)=∫φ(x,θ)φ(x,θ)dθ
と定義され、式中、φ(x,θ)は、バスタブ関数であり、θは、パラメータθ=[α,β,γ,α,β,γ,δ]を表す。バスタブ関数は次のように表現可能である。
【0033】
【数2】
【0034】
言い換えれば、バスタブ関数は、結合された2つのシグモイド関数に対応する。この単一の式が、例えば図2内のセット210a、210b、210c、210nなど各インライン品質管理工程で収集されたプロセス品質検査データに関する、詳細なモデリングの必要性をなくすことができる。パラメータθ間の相互作用が、バスタブ型のマージン設計におけるマージン幅がどの程度狭いかを決定する。パラメータθは、ユーザの知識に基づき決定すること、データから最適値を計算することにより決定すること、データから事後分布としてパラメータを計算することにより決定すること、またはデータを分割する交差検証により決定することが可能である。
【0035】
モデル400bは、QCデータ1およびQCデータ2に対応する2次元に加えて深さも示しており、平坦な上部412、プロセスウィンドウ410に近似する開口414、および底部416を含む。深さは、モデルの出力、すなわち製品特性データの値を表現する。開口414はプロセスウィンドウ410の位置に対応するため、異常でない値はバスタブモデル400bの開口414内に位置する。これに対し、異常は上部412に位置する。図4は、モデル400a、400bを紙の上で表すために、プロセス品質検査データを2セット含む。しかしながら、モデル400a、400bを図2のシステム200に適応させる場合、モデル入力は、nセットのプロセス品質検査データに合わせてn次元のものとなる。
【0036】
プロセス品質検査データと製品特性データとの間の関係は、非常に複雑な非線形関係をとることがある。例として、プロセス品質検査データの値が増大するのに応じて、製品特性が急激に悪化する事象があり得る。ガウス過程回帰モデルは、モデルの訓練に使用される獲得されたデータ点の間を補間することにより、そのような複雑な関係を定量的に表すことができる。結果として得られる製品特性の予測分布を使用して、製品特性の最適化された値につながるプロセス品質検査データの目標値を設定することができる。
【0037】
製品特性は、確率モデルにより表されるため、信頼性のあるモデルを得るために少数のデータ点しか要求されない。具体的には、ガウス過程回帰の特徴の1つは、データの量に依存する不確実性のある予測の確率分布を計算できることである。言い換えれば、訓練データの量が相対的に少ない、相対的に早期の生産段階でも、予測を相対的に低い信頼度で行い生産管理に適用できる。よって、本開示のシステムは、製造ライフサイクル中の早期段階から使用可能である。
【0038】
図5は、バスタブ関数のパラメータθ=[α,β,γ,α,β,γ,δ]の様々な例を示す。具体的には、バスタブの深さはパラメータαにより表される。バスタブの壁の傾きはパラメータβにより表される。バスタブの幅はパラメータγにより表される。バスタブの全体の高さはパラメータδにより表される。これら4つのパラメータを組み合わせることにより、様々なバスタブ形状を設計可能である。ガウス過程の推論により、最適なパラメータ分布が自動的に得られる。パラメータとの関連を把握するのが容易であるため、分析結果の解釈および応用が容易である。
【0039】
図6は、図2のシステム200において使用可能な異常検出システム600のさらなる例を示す。異常検出システム600は、品質予測ユニット602および異常検出ユニット604を含む。品質予測ユニット602は、図3内の品質予測ユニット302と同じ形で動作する。ただし612では、異常検出ユニット604の2つの段階の入力となる製品特性の予測分布が予測モデルを使用して生成される。
【0040】
図3におけるのと同様に、異常検出ユニット604は、製品特性の予測分布を使用してプロセス品質検査データに基づき異常を特定する工程のシーケンスを実行するように構成される。618にて異常検出ユニット304は、検査されるべきウェーハのプロセス品質検査データを受信する。異常検出ユニット604は、品質検査データxに関連する製品特性を予測する前に、620にて、予測および異常検出をスキップするかどうかを決定する。より具体的には、異常検出ユニット604は、品質予測ユニット602から製品特性の信用区間を受信する。モデルが少数のデータ点に基づく場合、予測モデルは大きな信用インタビューを有することになり、これは(例えば626にて)多数のアラームをトリガし得る。アラームの頻発を抑制するために、製品特性の信用区間が所定の閾値と比較される。信用区間が閾値より大きければ、624での予測および異常検出はスキップされる。例として、モデルが50のオーダーの出力データに対して、90%の確率で1から999の間の値を生成する場合、そのモデルは信頼性が低すぎて使用できないと考えることができる。異常検出ユニット602が予測および異常検出をスキップしない場合、図3(320~326)におけるのと同じ形で予測および異常検出が進行する。
【0041】
予測および異常検出がスキップされる場合、622にてスキップ通知が行われる。例として、スキップ通知は、図1内のコンピューティングデバイス102などのコンピューティングデバイスのインターフェース上に示されることが可能である。スキップ通知は、異常検出にかけられなかった特定のプロセス品質検査データの記録を、後からの検討用に含むことができる。スキップ通知に続いて、予測モデルを更新するために、626にてプロセス品質検査データxが品質予測ユニット602に送信される。
【0042】
図7は、例えば図3の品質予測ユニット302または図6の品質予測ユニット602などと組み合わされて異常検出システムを形成することができる異常検出ユニット704の例を示す。異常検出ユニット304、604と同様に、異常検出ユニット704は、718にてプロセス品質検査データxを受信し、720にてこのデータに基づき製品特性を予測して異常を検出する。異常が検出されれば、722にてアラームがトリガされ、724にてプロセスが終了する。
【0043】
726にて異常検出ユニット704は、製品品質検査データxに対応する製品特性データxを受信する。728にて、720からの予測された製品特性データと、製品特性データxとが比較される。製品特性データxは、製作プロセス(図2)終了時に測定されるため、720と728との間には相当な時間差があるかもしれない。ユーザは、予測されたデータと実際のデータとの間の差に基づき、モデルが不正確であると判断してもよい。例としてユーザは、この差を、過去のデータのぶれに基づく閾値と比較してもよい。このケースでは、730にてアラームがトリガされ、732にてプロセスが終了される。その他の場合には、734にて製品品質検査データxおよび製品特性データxの両方が品質予測ユニット(図示せず)に入力される。
【0044】
図8は、図2のシステム200において使用可能な異常検出システム800のさらなる例を示す。異常検出システム800は、品質予測ユニット802および異常検出ユニット804を含む。異常検出ユニット804は、図3内の異常検出ユニット304と同じ形で動作する。図3におけるのと同様に、品質予測ユニット802は、806aおよび806bにてプロセス品質検査データおよび製品特性データを受信する。808にて、過去のプロセス品質検査データおよび製品特性データが前処理されて、訓練用のセットが形成される。810にて、訓練データを使用して予測モデルが訓練される。上述のように、予測モデルは、バスタブカーネル関数を使用するガウス過程回帰モデルである。812にて、異常検出ユニット804の入力となる製品特性の予測分布が予測モデルを使用して生成される。
【0045】
814にて品質予測ユニット802は、製品特性の予測分布を改善するために学習されるべきプロセス品質検査データの組み合わせを決定する。例として品質予測ユニット802は、予測分布の不確実性および分散が大きい目標データにベイズ最適化を使用することができる。814に示されているプロセス品質検査データの目標値が、816にて獲得される。例として、製造プロセスの諸条件が手動または自動で調整されて、プロセス品質検査データの目標値を得ることが可能である。そのような情報を得ることで、不確実性を低減し、モデルの精度を向上させることができる。具体的な調整は、プロセス品質検査データのタイプおよびデータを生成する機器に依存する。例として、プロセス品質検査データと既知の関係を有する機械の動作パラメータ1つ以上を、出力値が目標値に近づくように調整可能である。
【0046】
このように、ガウス過程回帰モデルは、モデルの精度を向上させるために必要な特定のデータを示すことができるため、比較的少量の訓練データを用いて予測モデルの精度を改善可能である。この効果は、製品特性の予測分布とプロセス品質検査データとの間の関係が複雑な場合に特に顕著である。
【0047】
一般に、半導体デバイスは、プロセス品質検査データが一定の範囲内に入れば製品特性を満たすように設計されることが多い。例として、異なる層を接続するビアを形成するプロセスでは、下方の層とのずれに一定の誤差を確保するように設計ルールが定義される。半導体製造プロセスは、典型的には数百の工程を含むため、設計ルールが複数の要因間の複雑な相互作用を考慮に入れられないことが多い。多くの場合、電気的特性のシミュレーションが、設計段階において、製造上のばらつきを考慮に入れ最悪のケースを想定した条件下で行われて、問題がないことが確認される。とはいえ、考えられる製造上のばらつきをすべて考慮に入れた最悪条件を決定するのは難しい。半導体製造プロセスは、非常に多くの工程および要因を伴い、さらにデバイスレイアウト依存性などの製品特有の問題も含むため、物理的なモデルから複数のプロセス品質検査データと製品特性データとの間の正確な関係を得ることも難しい。したがって、実際に製造が開始されると、製品特性が予想外の形で劣化することもある。
【0048】
例として、製造プロセス中、長いゲート長、ならびにドレインおよびソース配線の高い抵抗など、複数の要因が、トランジスタの特性をSlow側にシフトさせると、各プロセスのプロセス品質検査データがすべて管理値内に入ったとしても、アナログ回路は予測できない形で挙動すると予想できる。そのような場合、異常状態をインライン品質テスト中に検出することはできない。したがって、異常状態は、ウェーハの最終テストプロセスまで気づかれず、これには約3か月がかかる。異常状態の原因が不明であれば、そのプロセスを通過したすべてのウェーハが不良となるか、または疑われることとなり、大きな品質損失コストおよび納入問題が生じる。
【0049】
よって、本開示の方法およびシステムは、ゲート長およびビアの直径など、大きな影響を有すると予想されるプロセス品質検査データを、特性データとしてのアナログ回路特性値(例えばリングオシレータ周波数)を予測するための入力として扱う。こうすることで、プロセス品質検査データが獲得されたとき、ウェーハの対応する回路が仕様を満たしているか否かを判断することができる。
【0050】
本明細書に記載された実装およびすべての機能動作は、デジタル電子回路構成において、または本明細書で開示された構造およびその構造上の等価物を含むコンピュータソフトウェア、ファームウェア、もしくはハードウェアにおいて、またはそれらのうちの1つ以上の組み合わせにおいて実現され得る。実装は、1つ以上のコンピュータプログラム製品として、すなわちデータ処理装置により実行されまたはデータ処理装置の動作を制御するようコンピュータ可読媒体上にエンコーディングされたコンピュータプログラム命令の1つ以上のモジュールとして実現されてもよい。コンピュータ可読媒体は、機械可読ストレージデバイス、機械可読ストレージ基板、メモリデバイス、機械可読伝播信号をもたらす物質の構成、またはそれらのうちの1つ以上の組み合わせとされてもよい。「コンピューティングシステム」という用語は、データを処理するすべての装置、デバイス、および機械を含み、例として、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、または複数のプロセッサもしくはコンピュータを含む。装置は、ハードウェアに加えて、対象のコンピュータプログラムの実行環境を作り出すコード(例えばプロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、またはそれらのうち1つ以上の任意の適切な組み合わせなどを構成するコード)を含んでもよい。伝播信号とは、適切な受信機装置に送信される情報をエンコーディングするために生成される人工的に生成された信号(例えば機械生成された電気信号、光信号、または電磁信号)である。
【0051】
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト、またはコードとしても知られる)は、コンパイル型またはインタープリタ型言語を含む任意の適切な形態のプログラミング言語で書かれてもよく、スタンドアロンプログラムとして、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、もしくはコンピューティング環境での使用に適した他のユニットとしてを含め、任意の適切な形態で展開されてもよい。コンピュータプログラムは、必ずしもファイルシステム内のファイルに対応するとは限らない。プログラムは、他のプログラムまたはデータを保持するファイルの一部(例えばマークアップ言語ドキュメントに格納される1つ以上のスクリプト)、対象のプログラム専用の単一ファイル、または複数の連携ファイル(例えば1つ以上のモジュール、サブプログラム、またはコードの一部を格納する複数ファイル)に格納されてもよい。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で実行されるように、または1つの場所に位置するかもしくは複数の場所に分散し通信ネットワークにより相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように、展開されてもよい。
【0052】
本明細書に記載されたプロセスおよび論理フローは、入力データに作用し出力を生成することにより機能を実行する1つ以上のコンピュータプログラムを実行する、1つ以上のプログラマブルプロセッサにより実行されてもよい。プロセスおよび論理フローは、専用論理回路構成(例えばFPGA(field programmable gate array:フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(application specific integrated circuit:特定用途向け集積回路))によっても実行でき、装置は該専用論理回路構成としても実装できる。
【0053】
コンピュータプログラムの実行に適したプロセッサには、例として、汎用および専用両方のマイクロプロセッサ、ならびに任意の適切な種類のデジタルコンピュータの任意の1つ以上のプロセッサが含まれる。一般に、プロセッサは、読み取り専用メモリもしくはランダムアクセスメモリまたは両方から命令およびデータを受信する。コンピュータの構成要素は、命令を実行するプロセッサならびに命令およびデータを記憶する1つ以上のメモリデバイスを含むことができる。一般に、コンピュータはさらに、データを記憶する1つ以上の大容量ストレージデバイス(例えば磁気、光磁気ディスク、もしくは光ディスク)を含むか、またはそれからデータを受信するよう、もしくはそれにデータを転送するよう動作可能に結合されるか、またはその両方である。なお、コンピュータがそのようなデバイスを有することは要求されない。さらにコンピュータは、別のデバイス(例えばモバイル電話、携帯情報端末(PDA)、モバイルオーディオプレーヤ、グローバルポジショニングシステム(GPS:Global Positioning System)受信機)に内蔵されてもよい。コンピュータプログラム命令およびデータを記憶するのに適したコンピュータ可読媒体には、あらゆる形態の不揮発性メモリ、媒体、およびメモリデバイスが含まれ、例として、半導体メモリデバイス(例えばEPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイス)、磁気ディスク(例えば内蔵ハードディスクまたはリムーバブルディスク)、光磁気ディスク、ならびにCD ROMおよびDVD-ROMディスクが含まれる。プロセッサおよびメモリは、専用論理回路構成により補完されてもよく、またはそれに組み込まれてもよい。
【0054】
ユーザとの相互作用を提供するために、情報をユーザに表示するディスプレイデバイス(例えばCRT(cathode ray tube:陰極線管)、LCD(liquid crystal display:液晶ディスプレイ)モニタ)、ならびにユーザがコンピュータに入力を提供できるキーボードおよびポインティングデバイス(例えばマウス、トラックボール、タッチパッド)を有するコンピュータ上で各実装が実現されてもよい。他の種類のデバイスが、同じくユーザとの相互作用を提供するために使用されてもよい。例として、ユーザに提供されるフィードバックは、任意の適切な形態の感覚フィードバック(例えば視覚フィードバック、聴覚フィードバック、触覚フィードバック)であってもよく、ユーザからの入力は、音響、音声、または触覚入力を含め、任意の適切な形態で受信されてもよい。
【0055】
実装は、バックエンドコンポーネントを含むコンピューティングシステム(例えばデータサーバとして)、ミドルウェアコンポーネントを含むコンピューティングシステム(例えばアプリケーションサーバ)、および/またはフロントエンドコンポーネントを含むコンピューティングシステム(例えばユーザが実装と相互作用するのに用いることができるグラフィカルユーザインターフェースもしくはウェブブラウザを有するクライアントコンピュータ)、またはそのようなバックエンドコンポーネント、ミドルウェアコンポーネント、もしくはフロントエンドコンポーネント1つ以上の任意の適切な組み合わせにおいて実現されてもよい。システムのコンポーネントは、任意の適切な形態または媒体のデジタルデータ通信(例えば通信ネットワーク)により相互接続されてもよい。通信ネットワークの例には、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)、および例えばインターネットなどのワイドエリアネットワーク(「WAN」)が含まれる。
【0056】
コンピューティングシステムは、クライアントおよびサーバを含んでもよい。クライアントおよびサーバは、一般に、互いに遠隔にあり、典型的には通信ネットワークを介して相互作用する。クライアントとサーバとの関係は、個々のコンピュータ上で実行され相互にクライアント-サーバ関係を有するコンピュータプログラムにより生じる。
【0057】
本明細書は多数の詳述を含むが、これらは、本開示の範囲または特許請求の範囲に対する限定として解釈されるべきではなく、むしろ特定の実装に特有の特徴の記載として解釈されるべきである。別々の実装の文脈で本明細書に記載されている特定の特徴は、単一の実装に組み合わせても実装可能である。逆に、単一の実装の文脈で記載されている様々な特徴が、複数の実装において別々に実装されることも、または任意の適切な組み合わせの構成要素において実装されることも可能である。さらに、各特徴は、特定の組み合わせで動作するよう上述されていることもあり、当初そのように請求されていることさえもあるが、一部のケースでは、請求されている組み合わせの特徴1つ以上をその組み合わせから削除可能であり、請求されている組み合わせは、組み合わせの構成要素または組み合わせの構成要素の変形を対象とし得る。
【0058】
同じく、各動作は図面内に特定の順序で示されているが、これは、望ましい結果を達成するために、当該の動作が示されている特定の順序もしくは順番で実行されること、または示されているすべての動作が実行されることを要求するものと理解されてはならない。特定の状況では、マルチタスクおよび並列処理が有利なこともある。さらに、上述の実装における様々なシステムコンポーネントの分離は、すべての実装においてそのような分離を要求するものと理解されてはならず、当然のことながら、記載されているプログラムコンポーネントおよびシステムは、一般に、単一のソフトウェア製品に統合されても、または複数のソフトウェア製品にパッケージ化されてもよい。
【0059】
いくつかの実装が記載された。しかし、当然のことながら、本開示の意図および範囲から逸脱することなく様々な変更が加えられ得る。例として、工程が並べ替え、追加、または削除された、上記で示されたフローの様々な形態が使用されてもよい。したがって、他の実装は、添付の特許請求の範囲に記載の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】