(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163007
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】光学素子を取り付けるためのキャリア及び関連する製造工程
(51)【国際特許分類】
G02B 6/42 20060101AFI20221018BHJP
H01S 5/02326 20210101ALI20221018BHJP
H01L 31/0232 20140101ALI20221018BHJP
【FI】
G02B6/42
H01S5/02326
H01L31/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022107352
(22)【出願日】2022-07-01
(62)【分割の表示】P 2016198837の分割
【原出願日】2016-10-07
(31)【優先権主張番号】14/879,382
(32)【優先日】2015-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503168201
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ネーデルランド ビーヴイ
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Nederland BV
【住所又は居所原語表記】Rietveldenweg 32,NL-5222 AR’s-Hertogenbosch,The NETHERLANDS,
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブス・ニコラース・タイン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンデル・ヨハネス・アドリアヌス・コルネリア・ドレステイン
(72)【発明者】
【氏名】イェルーン・アントニウス・マリア・ダイス
(72)【発明者】
【氏名】ルトヘル・ウィルヘルムス・スミンク
(72)【発明者】
【氏名】ミヒール・ファン・レインバッフ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低価格で大量生産が可能な、光ファイバ及び光学的ダイなどの光学部品を正確に取り付けるためのキャリアパーツ、及び関連する製造工程。
【解決手段】少なくとも2つの光学素子410、404を正確に取り付けるためのキャリア302であって、複数の交互の層を含み、各層は、ある群から採取される第1の原料及び第2の原料のうちのいずれか一方からなり、第1の原料はアブレーション工程による浸食の影響を受けやすく、第2の原料は、アブレーション工程による浸食の影響を受けにくく、第2の原料からなる各層には幾何学模様があって、複数の交互の層に対するアブレーション工程の適用時に複数の特徴が生成され、生成された特徴の各々は、少なくとも2つの光学素子の各々のための取り付け部を提供する。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの光学素子を正確に取り付けるためのキャリアであって、
複数の交互の層を含み、
各層は、ある群から採取される第1の原料及び第2の原料のうちのいずれか一方からなり、
前記第1の原料はアブレーション工程による浸食の影響を受けやすく、前記第2の原料は、アブレーション工程による浸食の影響を受けにくく、
前記第2の原料からなる各層には幾何学模様があって、前記複数の交互の層に対するアブレーション工程の適用時に複数の特徴が生成され、
生成された前記特徴の各々は、前記少なくとも2つの光学素子の各々のための取り付け部を提供する、キャリア。
【請求項2】
前記第1の原料はポリイミドである、請求項1に記載のキャリア。
【請求項3】
前記第2の原料は銅である、請求項1に記載のキャリア。
【請求項4】
前記少なくとも2つの光学素子のうちの一つは、光ファイバケーブルである、請求項1に記載のキャリア。
【請求項5】
前記少なくとも2つの光学素子のうちの一つは、光学的ダイである、請求項1に記載のキャリア。
【請求項6】
前記光学的ダイはレーザを含む、請求項5に記載のキャリア。
【請求項7】
前記光学的ダイはフォトダイオードを含む、請求項5に記載のキャリア。
【請求項8】
キャリアパーツは、
ファイバ配置溝、
光学的ダイ取り付け部、
ドライバと増幅器のうちの一方を取り付けるためのパッド、及び
PCBデバイスに接続するためのパッド、
の特徴を含む、請求項1に記載のキャリア。
【請求項9】
光電子取り付け部品を製造する方法であって、
複数の交互の層を規定し、
各層は、ある群から採取される第1の原料及び第2の原料のうちのいずれか一方からなり、
前記第1の原料はアブレーション工程による浸食の影響を受けやすく、前記第2の原料は、アブレーション工程による浸食の影響を受けにくく、
前記第2の原料からなる各層をエッチングして幾何学模様を生成し、
前記幾何学模様の組み合わせは、少なくとも1つの光学素子を取り付けるための複数の特徴に対応し、
レーザアブレーション工程を前記複数の交互の層に適用して、前記特徴を生成する、
方法。
【請求項10】
前記第1の原料はポリイミドである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の原料は銅である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも2つの光学素子のうちの一つは、光ファイバケーブルである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも2つの光学素子のうちの一つは、光学的ダイである、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記光学的ダイはレーザを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記光学的ダイはフォトダイオードを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記光学的ダイは回路基板に対して垂直に置かれる、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的に、光電子工学と、光学素子の正確な取り付け及び位置合わせを可能にするキャリアパーツを生成するための製造工程とに関する。
【背景技術】
【0002】
2つの光学部品間の正確な光リンクの製造は、一般的に複雑で高価である。例えば、光ファイバと光学的ダイ(レーザダイオード、フォトダイオード)の位置合わせは重要であり、十分な精度を必要とする。
【0003】
一般的な産業の慣行においては、活性層(ウェハの平面)を含む光学的ダイが、PCB又はガラス板などのキャリアと平行に取り付けられる。光軸は、キャリア又は回路基板の表面と垂直である。多くの場合、実際、ファイバの軸は、キャリア又は回路基板の表面と平行に向けられる。この場合、例えば、レンズと組み合わされたミラーによって、光の方向を変える必要が生じる。それ故、従来の結合の仕組みは、ファイバとダイの光軸の垂直配置とミラーの使用を含み、通常、一つ又は複数のレンズと組み合わせて、光の方向を変える。
【0004】
ミラーとレンズについての要件は、フォトダイオードなどの光学的ダイが、既存の規定されたトレースを既に持っている回路基板に取り付けられ、光ファイバが回路基板との正確な位置合わせを必要とするような状況から、生じる。この状況において光リンクを実現するためには、ファイバから放射される光線が、回路基板に対して垂直になるように、曲げられなければならない。さらに、光の伝搬のために、ある程度の距離が設けられなければならず、また、焦点調節のためにレンズの使用も必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
出願人は、光ファイバ及び光学的ダイなどの光学部品の正確な位置合わせを容易にする、低価格で大量生産が可能な装置及び関連する製造工程の必要性に気づいた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、本発明のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、本発明の簡単な要約を提示する。この要約は、本発明の広範囲にわたる概要ではない。この要約は、本発明の主要な/重要な要素を特定する又は本発明の範囲を明らかにすることを目的としていない。唯一の目的は、後述するより詳細な説明の前置きとして簡単な形式で、本発明のいくつかの概念を提示することである。
【0007】
特にプリント回路基板の場合において、光リンクを構築するための典型的なアプローチは高価で不便であり、且つ大量生産用に十分に縮尺されていない場合があることに、出願人は気づいた。これらの欠点を最小にするために、出願人は、各部品についての同一の基準特徴を使用して、光学的ダイと光ファイバの両方を同一のキャリアパーツ上に組み立てることを可能にする、キャリアパーツと製造工程を提案する。
【0008】
このような装置は、光学的ダイの光ファイバへの正確な突き合わせ結合を含み、光学的ダイと光ファイバの光軸が一直線上であり、光学的ダイと光ファイバの間にレンズを設ける必要性を除去するという、多くの重要な利点を提供する。光学的ダイの光軸が光ファイバの光軸と一致するようにして取り付けられるように、取り付けパッドの配置が提供される。光ファイバからの光の方向が変わることを未然に防いで、光学的ダイと光ファイバは、その間にいずれの光学部品をも設けずに、突き合わせ結合されうる。これにより、光学部品からの吸収及び/又は反射の損失を除去できるという利点が得られる。
【0009】
機械的機能に加えて、キャリアパーツは、さらなる部品の導入を必要とせずに、電気的トラックと光学的ダイへの接続とを提供する。また、キャリアパーツは、ドライバ又は増幅器のチップのためのボンディング領域を提供可能であり、その方法において、チップと光学的ダイとの間の電線が短くなるのを可能にする。これは、信号の完全性にとって有益である。さらに、多層キャリアは、電気的な設計のより多くの柔軟性を提供する、例えば、クロストークを低減するのに使用されうる。キャリアの熱伝導率は良いため、キャリアはヒートスプレッダとして機能する。これにより、ケーシングの外側への高価なサーマルブリッジを使用する必要性を低減できる。
【0010】
完全な「光学エンジン」が生成されうる。完全な光学エンジンは、キャリアパーツ、取り付けられた光学的ダイ、及び取り付けられたドライバ又は増幅器のチップを含む。光学エンジンは、デバイスのPCBに光学エンジンを接続するためのパッドと位置合わせの特徴とを提供する。これらは、受動的にファイバの位置を調整して固定するのに適している。光学エンジンは、光ファイバを電気的PCBに接続するのに役立ち、両者の間の変換を行い、最小限の部品しか必要としない。
【0011】
キャリアパーツは、既存の製造工程により、大量生産されうる。これらの多数のパーツは、より大きなパネルの構造内で同時に処理されうる。さらに、キャリアパーツの製造は、レーザの厳格な位置付け精度を必要としない。
【0012】
本発明の一態様は、少なくとも2つの光学素子を正確に取り付けるためのキャリアに関し、キャリアは、複数の交互の層を含み、各層は、ある群から採取される第1の原料及び第2の原料のうちのいずれか一方からなり、第1の原料はアブレーション工程による浸食の影響を受けやすく、第2の原料はアブレーション工程による浸食の影響を受けにくく、第2の原料からなる各層にはそれぞれ幾何学模様があり、アブレーション工程を複数の交互の層に適用する時に複数の特徴が生成され、生成された特徴の各々は、少なくとも2つの光学素子の各々のための取り付け部を提供する。
【0013】
本発明の別の態様は、光電子取り付け部品を製造する方法であって、その方法は、複数の交互の層を規定し、各層はある群から採取される第1の原料及び第2の原料のうちのいずれか一方からなり、第1の原料はアブレーション工程による浸食の影響を受けやすく、第2の原料はアブレーション工程による浸食の影響を受けにくく、第2の原料を含む各層をエッチングしてそれぞれの幾何学模様を生成し、幾何学模様の組み合わせは、少なくとも1つの光学素子を取り付けるための複数の特徴に対応し、レーザアブレーション工程を複数の交互の層に適用して、その特徴を生成することを含む。
【0014】
本発明の別の態様は、キャリアパーツを含む光学エンジンである。キャリアパーツは、さらに、少なくとも1つの光学素子を取り付けるための少なくとも1つの幾何学的特徴を含み、少なくとも1つの幾何学的特徴は、アブレーション工程が複数の交互の層に適用されることによって生成され、各層はある群から採取される第1の原料及び第2の原料のうちのいずれか一方からなり、第1の原料はアブレーション工程による浸食の影響を受けやすく、第2の原料はアブレーション工程による浸食の影響を受けにくく、光学的ダイ、光増幅器、及びプリント回路基板(PCB)に接続するための少なくとも1つのパッドを備える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】一実施形態における光学的取り付け構造を生成するためのアブレーションの影響を受けやすい層とアブレーションの影響を受けにくい層を交互にしたスタックを示す。
【
図1B】一実施形態における光学的取り付け部品を生成するためのアブレーションの影響を受けやすい層とアブレーションの影響を受けにくい層を交互にしたスタックをより詳細に示す。
【
図1C】一実施形態におけるアブレーション工程の後に生成された複数の幾何学的特徴を含む取り付け構造の例を示す。
【
図2】光リンクを生成するために少なくとも1つの光学部品を取り付けるための光学的取り付け装置を生成するための処理を示すフローチャートである。
【
図3】一実施形態におけるアブレーション工程によって生成される、光ファイバケーブルと光学的ダイを正確に取り付けるためのキャリアパーツを示す。
【
図4A】一実施形態における光ファイバケーブルと光学的ダイが取り付けられた状態のキャリアパーツを示す。
【
図4B】一実施形態における光ファイバケーブルと光学的ダイが取り付けられた状態のキャリアパーツの別の描写を示す。
【
図5A】一実施形態における光ファイバケーブルのための、キャリアパーツの機械的基準を示す。
【
図5B】一実施形態におけるキャリアパーツ内の、光学的ダイと突き合わせ結合された光ファイバケーブルへの電気的接続を示す。
【
図6】一実施形態におけるドライバチップ又は増幅器チップと、さまざまなトラックと、PCBの取り付けのためのパッドとをさらに含むキャリアパーツの裏面を示す。
【
図7A】一実施形態におけるアブレーション工程を適用する前のパネル内に取り付けられたキャリアパーツの例を示す。
【
図7B】一実施形態におけるアブレーション工程を適用した後のパネル内に取り付けられたキャリアパーツの例を示す。
【
図8】キャリアパーツについての幾何学的特徴を明らかにするアブレーション工程後の銅とポリイミドの層を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[アブレーションの影響を受けにくい層とアブレーションの影響を受けやすい層及びアブレーション工程]
図1Aは、一実施形態における光学的取り付け構造を生成するためのアブレーションの影響を受けやすい層とアブレーションの影響を受けにくい層を交互にしたスタックを示している。スタック106は、アブレーションの影響を受けにくい層104(1)~104(M)とアブレーションの影響を受けやすい層102(1)~102(N)とを含む。アブレーションの影響を受けにくい層104(1)~104(M)の各々は、それぞれ幾何学模様を表してもよく(
図1Aでは図示せず)、アブレーション工程による浸食の影響を受けにくい。一実施形態によれば、アブレーションの影響を受けにくい層104(1)~104(M)は銅で構成されてもよい。しかし、アブレーションの影響を受けにくい層は、例えば、金、ニッケル、及び他の金属を含む別の原料で構成されてもよい。
【0017】
アブレーションの影響を受けやすい層102(1)~102(N)は、レーザ処理によるアブレーションの影響を受けやすい。一実施形態によれば、アブレーションの影響を受けやすい層102(1)~102(N)は、ポリイミドで構成されてもよい。しかし、アブレーションの影響を受けやすい層は、例えば、エポキシ及び他のポリマー原料を一般的に含む別の原料で構成されてもよい。
図1Aに示すように、アブレーションの影響を受けにくい層104(1)~104(M)の各々が、アブレーションの影響を受けやすい層102(1)~102(N)の各々に対して交互になるように配置されることによって、積み重ねられた構成が形成される。
【0018】
図1Bは、一実施形態における光学的取り付け部品を生成するための、アブレーションの影響を受けやすい層とアブレーションの影響を受けにくい層を交互にしたスタックをより詳細に示している。スタック106は、アブレーションの影響を受けにくい層104(1)~104(M)とアブレーションの影響を受けやすい層102(1)~102(N)とを含む。アブレーションの影響を受けにくい層104(1)~104(M)の各々は、1つ又は複数の幾何学模様を表している。例えば、アブレーションの影響を受けにくい層104(1)は、幾何学模様108(1)~108(3)をさらに含み、アブレーションの影響を受けにくい層104(2)は、幾何学模様108(4)~108(5)をさらに含み、アブレーションの影響を受けにくい層104(M)は、幾何学模様108(6)をさらに含んでいる。幾何学模様108(1)~108(6)は単なる例示であって、本発明の範囲を制限することを目的としていない。より詳細を後述するように、例示的な幾何学模様108(1)~108(6)などの幾何学模様は、アブレーション工程が実行された後に、光学部品を正確に取り付けることを可能にする、取り付け構造内の幾何学的特徴の生成をもたらす。
【0019】
図1Cは、一実施形態におけるアブレーション工程の後に生成された複数の幾何学的特徴を含む取り付け構造の例を示している。取り付け構造120は、複数の例示的な幾何学的特徴110(1)~110(4)を含む。幾何学的特徴110(1)~110(4)は、1つ又は複数の光学部品を取り付けるために設計されて使用されうる。幾何学的特徴110(1)~110(4)は、単なる例示であって、本発明の範囲を制限することを目的としていない。
【0020】
例示的な幾何学的特徴110(1)~110(4)は、
図1Bに示すようなアブレーションの影響を受けやすい層とアブレーションの影響を受けにくい層を交互にしたスタックに適用されるアブレーション工程によって生成される。アブレーションの影響を受けにくい層(例えば、104(1)~104(M))の各々は、アブレーション工程のためのマスクとして機能する、関連する幾何学模様を持つ。アブレーションの影響を受けにくい層104(1)~104(M)とアブレーションの影響を受けやすい層102(1)~102(N)の組み合わせに適用されるアブレーション工程によって、
図1Cに示されるような110(1)~110(4)などの幾何学的特徴が生じる。
【0021】
特に、アブレーションの影響を受けにくい層104(1)~104(M)は、幾何学的模様を画定し、周辺のアブレーションの影響を受けやすい層102(1)~102(N)のアブレーションのためのマスクとして機能する。その後、生成されたパーツの最終的な形状が、アブレーションの影響を受けにくい層によって、例えば、金属によって、画定される。このような工程は、レーザの厳格な位置付け精度を必要としない。一連のアブレーションの影響を受けにくい層とアブレーションの影響を受けやすい層を使用した例示的なキャリアパーツの生成と、アブレーション工程について、
図3~
図8を参照して、以下に説明する。
【0022】
一実施形態によれば、アブレーション工程は、プログラム方式でほんの少しの原料を除去するエキシマレーザを用いたマイクロマシニングによって、実行されてもよい。これに代えて、より広い領域で動作するレーザ加工を使用して、アブレーション工程を実行してもよい。しかし、このレーザ加工は制御がしにくく、パーツの金属層の使用により、アブレーション工程を隠してしまう。
【0023】
[製造工程]
図2は、光リンクを生成するための少なくとも1つの光学部品を取り付けるための光学的取り付け装置を生成するための工程を示すフローチャートである。工程は、202から開始される。204において、アブレーションの影響を受けにくい層104(1)~104(M)のセットと、アブレーションの影響を受けやすい層102(1)~102(N)のセットが規定される。206において、アブレーションの影響を受けにくい層がエッチングされて、各層内に幾何学模様が画定される。PCB製造業において、さまざまなエッチング工程が周知であることが知られている。208において、アブレーション工程が、アブレーションの影響を受けにくい層104(1)~104(M)のセットと、アブレーションの影響を受けやすい層102(1)~102(N)のセットに適用されて、キャリアパーツが生成される。工程は、210で終了する。
【0024】
[キャリアパーツ]
図3は、一実施形態におけるアブレーション工程によって生成される光ファイバケーブルと光学的ダイを正確に取り付けるためのキャリアパーツを示している。キャリアパーツ302は、アブレーションの影響を受けにくい層104(1)~104(M)とアブレーションの影響を受けやすい層102(1)~102(N)からなるスタック106を含む。キャリアパーツ302は、アブレーション工程によって生成された複数の幾何学的特徴、例えば、110(1)~110(2)を含む。幾何学的特徴110(1)は、光ファイバを取り付けるためのトレンチ又はファイバ配置溝である。幾何学的特徴110(2)は、光学的ダイの取り付けを提供するものである。
【0025】
図4Aは、一実施形態における光ファイバケーブルと光学的ダイが取り付けられたキャリアパーツを示している。
図4Aに示されるように、クラッドが取り除かれた光ファイバ410が
図3において先に示されたトレンチ特徴110(1)内に取り付けられ、光学的ダイ404が
図3において先に示された光学的ダイ取り付け特徴110(2)内に取り付けられる。光学的ダイ404は、フォトダイオード又はレーザダイオードのいずれかを収容可能である。
図4Aは、クラッド402を備えた光ファイバも示している。
【0026】
図4Bは、一実施形態における光ファイバケーブルと光学的ダイが取り付けられたキャリアパーツの別の描写を示している。特に、
図4Bは、光学的ダイ404を増幅器チップ又はドライバチップ(
図4Bでは図示せず)に電気的に接続するのに使用される電気的接着剤又ははんだ408を示している。
【0027】
図5Aは、一実施形態における光ファイバケーブルのためのキャリアパーツの機械的基準を示している。
図5Aは、クラッド402を備えた光ファイバを示している。クラッドが取り除かれた光ファイバ410は、銅などのアブレーションの影響を受けにくい層104(2)の上面に取り付けられる。第2のアブレーションの影響を受けにくい層104(1)は、さらに、クラッド402を備えない光ファイバを取り付けるための横方向のサポートを提供する。アブレーションの影響を受けにくい層104(1)~104(2)は、
図8において同一のラベルが付けられている要素に直接対応する。
図8については、詳細を後述する。
【0028】
図5Bは、一実施形態におけるキャリアパーツ内の光学的ダイと突き合わせ結合された光ファイバケーブルへの電気的接続を示している。特に、
図5Bは、電気的接着剤又ははんだ408を示している。電気的接着剤又ははんだ408は、光学的ダイ408を電気的トラック604(12)及び604(13)に接続するのに使用される。電気的トラック604(12)及び604(13)は、増幅器チップ又はドライバチップに電気的に接続される(
図8を参照して以下で説明する)。
【0029】
図6は、一実施形態におけるドライバチップ又は増幅器チップと、さまざまなトラックと、PCB取り付け用のパッドとをさらに含むキャリアパーツの裏面を示している。トラック606(1)及び606(2)は、(
図5Bに記載されるように)電気的パッド604(12)~604(13)を介して、光学的ダイ404に電気的に接続される。パッド604(1)~604(11)は、PCBへの接続を提供する。
【0030】
図7Aは、一実施形態におけるアブレーション工程を適用する前のパネル内に取り付けられたキャリアパーツの例を示している。スタック106は、アブレーションの影響を受けやすい層とアブレーションの影響を受けにくい層を含む。
図7Aは、最上部のアブレーションの影響を受けにくい層104(1)内の複数の幾何学的特徴を示している。具体的には、アブレーションの影響を受けにくい層104(1)は、幾何学的特徴108(1)と幾何学的特徴108(2)を示している。幾何学的特徴108(1)は、光ファイバを取り付けるためのトレンチ特徴を生成するために使用される。幾何学的特徴108(2)は、光学的ダイ取り付け部を生成するために使用される。
図7Aに示される、ラベルが付けられていないさらなる幾何学的特徴は、周囲の最も大きな部分にわたって、キャリアパーツをパネルから分離するスロットを生成するのに使用される。スロットは、後で行われるパネルからの簡単な分離を可能にする。
【0031】
図7Bは、一実施形態におけるアブレーション工程を適用した後のパネル内に取り付けられたキャリアパーツの例を示している。アブレーション工程を適用した後では、トレンチ110(1)及び光学的ダイ取り付け部110(2)を含む複数の幾何学的特徴が生成されている。
【0032】
図8は、キャリアパーツのための幾何学的特徴を明らかにするアブレーション工程の後の銅とポリイミドの層を示す。スタック106は、アブレーションの影響を受けにくい層104(1)~104(4)とアブレーションの影響を受けやすい層102(1)~102(4)を含む。アブレーションの影響を受けにくい層104(1)~104(4)は銅で構成されてもよい。
図8に示されるように、アブレーションの影響を受けやすい層102(1)~102(4)はポリイミドで構成されてもよい。アブレーションの影響を受けにくい層104(1)がエッチングされて、複数の幾何学的特徴、例えば、108(1)が生成される。アブレーション工程が適用された後、アブレーションの影響を受けにくい層104(1)とアブレーションの影響を受けやすい層102(1)によって形成されるマスクは、トレンチ特徴802(1)を生成する。
【0033】
トラック606(1)とトラック606(2)は、ビアをそれぞれ使用するパッド604(12)及び604(13)を介して、アブレーションの影響を受けにくい層104(3)に接続される。全ての別の接続が全ての層を横断して、グラウンド層を互いに接続する。
【0034】
アブレーションの影響を受けにくいマスキング層(例えば、銅などの金属)を使用して、一般的なPCB構造と、ポリイミドと金属の交互の層を用いて、処理が開始されうる。金属層は、エッチングによって構造化されている。最上部の金属層は、ほとんど完全に閉じられていてもよいけれども、ポリイミドをさらす狭いスロットを残しておいてもよい。それから、ポリイミドをレーザアブレートすることによって、ファイバを横向きに位置付けるトレンチを生成することができる。トレンチの深さと基準ファイバの高さを画定するために、第2の金属層104(2)が挿入されてもよく、これにより、トレンチのアブレーションが停止される。
【0035】
PCB構造の第3の金属層104(3)は、光学的ダイ(
図8には図示していない)に接続するために、パッド604(12)~604(13)を含んでもよい。レーザアブレーション中、ポリイミドはこれらのパッド部分から取り除かれてもよい。光学的ダイは、はんだ付け、導電性接着剤、又は別の適当な接続方法により、接続されうる。第4の金属層104(4)が挿入されてもよい。第4の金属層104(4)は、アブレーションマスクとしての機能性を提供しない代わりに、トラックと、ドライバ又は増幅器のためのボンディングパッドと、第4の金属層104(4)をデバイスのPCBに接続するためのパッドとを含む。
【0036】
要求される精度はいくらか困難であるけれども、キャリアパーツは一般的なPCBとして製造可能である。多くのキャリアパーツは、小さなパーツ(例えば、縦横が2mm×3mm)であるため、標準のPCBパネルに収まる。キャリアパーツがパネル内にある間に、レーザアブレーション工程が実行されてもよく、これより、処理を低減できる。レーザアブレーション工程を適用することによって、キャリアパーツをパネルから部分的に切り取ることができ、これにより、次の組み立てステップのために、簡単にキャリアパーツを取り外すことができる。これに代えて、フライス加工などの一般的なPCB製造技術を使用して、パネルからの部分的な切断が実行されてもよい。次の組み立てステップのために、キャリアパーツは完全なパネル内に残されてもよいし、又はパネルはキャリアパーツを保持するより小さなサブパネルに切り分けられてもよいし、又はキャリアパーツを切り離すこともできる。
【0037】
本明細書に記載の製造工程の精度は、エッチング工程そのものから生じる。レーザ工程は、高精度であることを必要とされない。精密なレーザ工程は可能であるけれども、このようなアプローチは時間がかかり、それ故、より高価になる。これは、高精度のレーザは狭いレーザビームを必要とするために、1度にほんの少しの原料しかアブレートできないからである。精度は本明細書に記載のエッチング工程によって得られ、スピードはアブレーション工程によって得られる。
【0038】
一実施形態によれば、キャリアパーツが製造される。キャリアパーツは、ファイバ配置溝(トレンチと同一)、光学的ダイを取り付けるためのパッド、ドライバ又は増幅器を取り付けるためのパッド、及び精度が低くそれにより低コストであるPCBに接続するためのパッドの特徴を含む。次の組み立てステップの順序は、目の前にある応用にとって最も実用的な方法で選択されうる。例えば、第1のステップにおいて、ファイバを組み立てることができる。これにより、光学的ダイをファイバに対して直線上に並べることが可能になる。しかし、実際には、キャリアパーツ全体を完成させて、それをデバイスのPCB上に取り付け、最後のステップで一定の長さのファイバを接続してもよい。実際には、キャリアパーツがパネル内にある間にドライバ又は増幅器を取り付けて、パネルをより小さなサブパネルに切り取り、光学的ダイを取り付けて、それからファイバを取り付ける又はPCB上に組み立てる又はその逆を行うことが多い。
【0039】
本発明のいくつかの具体的な実施形態について説明したけれども、当業者であれば、さまざまな変更、修正、及び改良を容易に思い付くであろう。本開示によって明らかになる、このような変更、修正、及び改良は、本明細書に明示されていなくても、本明細書の一部を構成し、本発明の精神と範囲内に含まれることが意図されている。よって、上述した説明は、単なる例であって、限定を目的としたものではない。本発明は、後述する特許請求の範囲において定義されるもの及びそれと等価のものによってのみ制限される。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの光学素子を正確に取り付けるためのキャリアであって、
複数の交互の層を含み、
各層は、ある群から採取される第1の原料及び第2の原料のうちのいずれか一方からなり、
前記第1の原料はアブレーション工程による浸食の影響を受けやすく、前記第2の原料は、アブレーション工程による浸食の影響を受けにくく、
前記第2の原料からなる各層には幾何学模様があって、前記複数の交互の層に対するアブレーション工程の適用時に複数の特徴が生成され、
生成された前記特徴の各々は、前記少なくとも2つの光学素子の各々のための取り付け部を提供する、キャリア。
【外国語明細書】