(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016301
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】対象物の処理方法および処理装置
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20220114BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20220114BHJP
B01J 21/06 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
B29B17/02
B01J35/02 A ZAB
B01J21/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089037
(22)【出願日】2021-05-27
(62)【分割の表示】P 2020571903の分割
【原出願日】2020-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2020118884
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】309037826
【氏名又は名称】RAPAS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 緑
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(72)【発明者】
【氏名】北村 啓子
(72)【発明者】
【氏名】樫本 逸志
(72)【発明者】
【氏名】西村 雅宏
【テーマコード(参考)】
4F401
4G169
【Fターム(参考)】
4F401AA27
4F401AC06
4F401AD03
4F401BA10
4F401CA25
4F401CA52
4F401CA87
4F401EA77
4F401FA01Y
4F401FA01Z
4F401FA09Y
4F401FA09Z
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169CA04
4G169CA10
4G169CA11
4G169DA08
4G169EA02X
4G169EA02Y
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EC02Y
4G169EC06Y
4G169EC07Y
4G169EC21Y
4G169ED10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】有機物を有する対象物中の有機物だけを分解する処理において、長期にわたって対象物を処理することができる処理方法および処理装置を提供する。
【解決手段】対象物2の処理方法は、空間を有し、対象物を処理するための部分である第1部分内に、対象物を配置する工程と、対象物をチタンを含む金属酸化物製の顆粒体からなる触媒30によって覆うと共に有機物に触媒を接触させつつ、第1部分内における触媒を480℃以上550℃以下の温度に維持し、対象物における有機物を分解する工程と、を含む。対象物における有機物を分解する工程では、有機物の分解反応が生じると共に、対象物の表面の少なくとも一部で触媒が微動するように、酸素を含むガスを第1部分内に流入する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を有する対象物の処理方法であって、
空間を有し、前記対象物を処理するための部分である第1部分内に、前記対象物を配置する工程と、
前記対象物をチタンを含む金属酸化物製の顆粒体からなる触媒によって覆うと共に前記有機物に前記触媒を接触させつつ、前記第1部分内における前記触媒を480℃以上550℃以下の温度に維持し、前記対象物における前記有機物を分解する工程と、を含み、
前記対象物における前記有機物を分解する工程では、前記有機物の分解反応が生じると共に、前記対象物の表面の少なくとも一部で前記触媒が微動するように、酸素を含むガスを前記第1部分内に流入する、対象物の処理方法。
【請求項2】
前記対象物における前記有機物を分解する工程では、前記第1部分内における前記触媒全体に亘って前記触媒を攪拌する工程が実施されない、請求項1に記載の対象物の処理方法。
【請求項3】
前記対象物における前記有機物を分解する工程は、前記対象物が前記触媒によって覆われた状態を維持しつつ、前記対象物を運動させる工程をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の対象物の処理方法。
【請求項4】
前記対象物を配置する工程では、前記触媒を通すことが可能な網目状の形状を有する容器に収容された前記対象物を前記第1部分内に配置し、
前記第1部分内において前記対象物を運動させる工程では、前記容器に前記対象物が収容された状態で前記容器を運動させる、請求項3に記載の対象物の処理方法。
【請求項5】
前記酸素を含むガスを前記第1部分内に流入する際の前記酸素を含むガスの流速が、0.5m/min以上200m/min以下である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の対象物の処理方法。
【請求項6】
前記対象物における前記有機物を分解する工程は、前記第1部分の前記空間内に収容される複数の前記触媒の表面から5cm以上前記対象物を埋没させる、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の対象物の処理方法。
【請求項7】
前記酸素を含むガスが、空気である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の対象物の処理方法。
【請求項8】
前記顆粒体の粒子径は、0.2mm以上2mm未満であり、
前記顆粒体の滑り始める角度が0.5度以上15度以下であり、かつ全ての顆粒体が滑り終わる角度が2度以上30度以下である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の対象物の処理方法。
【請求項9】
前記対象物が、廃基板である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の対象物の処理方法。
【請求項10】
前記廃基板が、厚み方向から平面的に見て、4cm2以上の面積を有する、請求項9に記載の対象物の処理方法。
【請求項11】
対象物における有機物を分解するための処理装置であって、
第1凹部を有し、前記対象物を処理するための部分である第1部分と、
前記第1凹部内に収容された状態が維持され、チタンを含む金属酸化物製の顆粒体からなる触媒と、
前記第1部分に接続され、酸素を含むガスを前記第1凹部内に供給する供給部と、
前記触媒および前記ガスの少なくともいずれか一方を加熱する加熱部と、
前記対象物を収容し、前記触媒を通すことが可能な形状を有する容器と、
前記容器を支持する支持部と、を備え、
前記容器の少なくとも一部が前記第1凹部内における前記触媒に接触している状態、および前記容器が前記触媒に接触していない状態を選択的に取り得るように、前記容器は鉛直方向に沿って移動可能であり、
前記第1凹部内に収容される前記触媒全体に亘って前記触媒を攪拌するための攪拌部を備えない、処理装置。
【請求項12】
前記容器の少なくとも一部が前記触媒に接触している際に、前記容器は運動可能である、請求項11に記載の処理装置。
【請求項13】
前記支持部は、
鉛直方向に対して傾斜する傾斜部を含むレールと、
前記容器に取り付けられ、前記レール上を走行可能な第1部品と、を含む、請求項11または請求項12に記載の処理装置。
【請求項14】
前記容器に取り付けられ、前記レールの進行方向におけるいずれか一方に突出するつば部をさらに備える、請求項13に記載の処理装置。
【請求項15】
前記支持部は、前記容器に取り付けられ、鉛直方向に沿って移動可能な第2部品を含む、請求項11または請求項12に記載の処理装置。
【請求項16】
前記容器は、底壁部と、前記底壁部の外縁から鉛直方向に沿って延びる周壁部と、を含み、
前記底壁部の前記周壁部とは反対側に突出し、鉛直方向に垂直な仮想平面に沿って回動可能な羽根部を、さらに備える、請求項15に記載の処理装置。
【請求項17】
前記酸素を含むガスが、空気である、請求項11から請求項16のいずれか1項に記載の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の処理方法および処理装置に関するものである。
【0002】
本出願は、令和2年7月10日出願の日本出願第2020-118884号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0003】
対象物に含まれる有機物だけを分解する処理方法として、酸化チタン(二酸化チタン)からなる触媒を用いる方法が知られている。より具体的には、廃プラスチック片に酸化チタンからなる触媒に接触させると共に触媒を加熱し、反応容器内における触媒全体を攪拌羽によって攪拌する方法が提案されている(特許文献1、2参照)。さらに、触媒として酸化チタンの顆粒体を用いる方法が提案されている(特許文献3、4参照)。また、対象物と触媒とを循環させるための回転車が取り付けられた循環槽と、循環後の触媒を回収するための混合槽と、を備える処理装置が提案されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-363337号公報
【特許文献2】特開2004-182837号公報
【特許文献3】国際公開第2010/021122号
【特許文献4】国際公開第2013/089222号
【特許文献5】国際公開第2009/051253号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記対象物の処理方法において、反応容器内における触媒全体を攪拌羽によって攪拌すると、触媒同士や廃プラスチック片と触媒とが擦れることで、触媒が摩耗してしまう場合がある。このような場合、触媒を長期にわたって使用することが困難となってしまう。
【0006】
そこで、長期にわたって対象物を処理することができる対象物の処理方法および処理装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の対象物の処理方法は、有機物を有する対象物の処理方法である。本願の対象物の処理方法は、空間を有し、対象物を処理するための部分である第1部分内に、対象物を配置する工程と、対象物をチタンを含む金属酸化物製の顆粒体からなる触媒によって覆うと共に有機物に触媒を接触させつつ、第1部分内における触媒を480℃以上550℃以下の温度に維持し、対象物における有機物を分解する工程と、を含む。対象物における有機物を分解する工程では、有機物の分解反応が生じると共に、対象物の表面の少なくとも一部で触媒が微動するように、酸素を含むガスを第1部分内に流入する。
【0008】
本願の対象物の処理方法では、チタンを含む金属酸化物製の顆粒体からなる触媒を用いる。ここで、金属酸化物とは、1種以上の金属元素を含む酸化物の総称である。酸素を含むガスが反応器内に流入されると共に触媒を所定の温度に維持することで、触媒に接触する有機物の酸化分解が生じる。上記対象物の処理方法では、有機物の分解反応が生じると共に、対象物の表面の少なくとも一部で触媒が微動するように、酸素を含むガスを第1部分内に流入させている。対象物の有機物が分解されると、対象物の体積が減少する。第1部分内に流入されるガスによって、触媒は対象物の表面上を僅かに移動し、対象物の異なる領域に接触する。このような触媒の動きが連続的に起こり、対象物の表面の少なくとも一部で触媒が微動する。このようにして、対象物における有機物の分解が促進される。上記対象物の処理方法によれば、対象物における有機物を分解する際に対象物と触媒とを攪拌する必要がないため、触媒の摩耗を低減することができると共に、対象物における有機物を容易に分解することができる。このように本願の対象物の処理方法によれば、長期にわたって対象物を処理することができる。さらに、対象物を容易に処理することができる。
【0009】
上記対象物の処理方法において、対象物における前記有機物を分解する工程では、第1部分内における触媒全体に亘って触媒を攪拌する工程が実施されない。第1部分内における触媒全体に亘って触媒を攪拌する工程としては、例えば、第1凹部内における触媒全体を攪拌する攪拌羽や第1凹部内における触媒を循環させると共に、触媒全体を攪拌する回転車等を用いた機械的な攪拌を実施する場合があげられる。このような触媒を攪拌する工程において、対象物と触媒との攪拌を実施すると、対象物と触媒とがかき混ぜられ、対象物における有機物が表面に露出してしまう場合がある。このような場合、有機物が完全に分解されずに形成される未分解のガス(例えばメタンガスや一酸化炭素ガス等)が発生する場合がある。このような触媒を攪拌する工程を実施しないことで、対象物の有機物が表面に露出することが抑制されるため、上記有機物の未分解のガスの発生を低減することができる。さらに、触媒同士や対象物と触媒とが擦れることを低減することができる。また、機械的な攪拌を実施しないことで、触媒を押し付けるような負荷の発生を抑制することができる。したがって、触媒の摩耗を低減することができる。また、対象物と触媒とを攪拌することが困難な程度の大きさや形状を有する対象物において、対象物を細かく破砕することなく、そのままの状態で対象物を処理することができる。さらに破砕し難い対象物や、破砕できない対象物に対しても、そのままの状態で対象物を処理することができる。対象物を細かく破砕せずにそのままの状態で処理することができるため、対象物を容易に処理することができる。なお、対象物における有機物を分解する工程は、対象物と触媒とを攪拌することなく実施されてもよい。
【0010】
上記対象物の処理方法において、対象物における有機物を分解する工程は、対象物が触媒によって覆われた状態を維持しつつ、対象物を運動させる(対象物の空間的位置を変える)工程をさらに含んでもよい。より具体的には、対象物を配置する工程では、触媒を通すことが可能な網目状の形状を有する容器に収容された対象物を第1部分内に配置してもよい。第1部分内において対象物を運動させる工程では、容器に対象物が収容された状態で容器を運動させてもよい。このようにすることで、対象物の表面に触媒が接触し易くすることができる。したがって、対象物における有機物をより効率良く分解することができる。
【0011】
上記対象物の処理方法において、酸素を含むガスを反応器内に流入する際のガスの流速が、0.5m/min以上200m/min以下であってもよい。ガスの流速が0.5m/min未満である場合、対象物の表面上において触媒が十分に流動せず、対象物における有機物を十分に分解することができない場合がある。ガスの流速が200m/minより大きくなると、触媒が流動し易くなり、触媒の摩耗を低減することが困難となってしまう場合がある。したがって、ガスの流速が、0.5m/min以上200m/min以下であることが好ましい。
【0012】
対象物における有機物を分解する工程は、反応器の空間内に収容される複数の触媒の表面から50mm以上対象物を埋没させてもよい。このようにすることで、対象物における有機物を分解する際に、有機物が分解されずに形成される未分解ガスの発生を抑制することができる。
【0013】
上記対象物の処理方法において、酸素を含むガスが、空気であってもよい。空気は、対象物の処理方法において用いるガスとして好適である。
【0014】
上記対象物の処理方法において、顆粒体の粒子径は、0.2mm以上2mm未満であってもよい。顆粒体の滑り始める角度が0.5度以上15度以下であり、かつ全ての顆粒体が滑り終わる角度が2度以上30度以下であってもよい。上記顆粒体の形状は、略球状となる。このような粒子径を有し、略球状の顆粒体からなる触媒を用いることで、対象物の表面上において触媒を微動させることが容易となる。したがって、上記顆粒体からなる触媒は、対象物の処理方法において用いる触媒として好適である。
【0015】
上記対象物の処理方法において、対象物は、廃基板であってもよい。廃基板の大きさによって、廃基板と触媒とを攪拌することが困難となる場合がある。本願の対象物の処理方法によれば、廃基板を細かく破砕する必要がなく、そのままの状態で廃基板を処理することができる。対象物は、廃基板の他、廃プラスチック、医療廃棄物や感染性医療廃棄物等であってもよい。上記対象物の処理方法によれば、破砕する必要がないため、汚染や感染を抑制することができる。
【0016】
上記対象物の処理方法において、廃基板が、厚み方向から平面的に見て、4cm2以上の面積を有してもよい。厚み方向から平面的に見て、廃基板の面積は、好ましくは100cm2以上であり、より好ましくは600cm2以上である。上記面積を有する廃基板を用いることで、対象物を効率良く処理することができる。廃基板は、例えば電子回路基板である。電子回路基板は、プリント基板と、プリント基板上に搭載される電子部品とを含む。上記対象物の処理方法によって、電子回路基板を処理することでプリント基板における樹脂を分解し、プリント基板に含まれていた金属を有する処理物と電子部品とを回収することが容易となる。プリント基板における樹脂をある程度分解することで、板状の状態が維持された処理物と電子部品とを回収することもできる。
【0017】
本願の処理装置は、対象物における有機物を分解するための処理装置である。第1凹部を有し、対象物を処理するための部分である第1部分と、第1凹部内に収容された状態が維持され、チタンを含む金属酸化物製の顆粒体からなる触媒と、第1部分に接続され、酸素を含むガスを第1凹部内に供給する供給部と、触媒およびガスの少なくともいずれか一方を加熱する加熱部と、対象物を収容し、触媒を通すことが可能な形状を有する容器と、容器を支持する支持部と、を備える。容器の少なくとも一部が第1凹部内における触媒に接触している状態、および容器が触媒に接触していない状態を選択的に取り得るように、容器は鉛直方向に沿って移動可能である。処理装置は、第1凹部内に収容される触媒全体に亘って触媒を攪拌するための攪拌部を備えない。
【0018】
上記特許文献1に開示される処理装置では、対象物と触媒とが回転車によって循環槽を循環することにより、対象物と触媒とが攪拌されるため、触媒同士や対象物と触媒とが接触し、触媒の摩耗が生じてしまう。また、上記特許文献1では、循環槽において循環される触媒を利用し、カゴ内に収容された対象物におけるプラスチックや有機物を混合槽内で分解できるとされている。しかしながら、混合槽からカゴを取り出す際に、混合槽から触媒が漏れ出てしまい、対象物を処理することが困難となる場合がある。
【0019】
本願の処理装置は、第1部分と、触媒と、供給部と、加熱部と、容器と、を備える。上記触媒は、チタンを含む金属酸化物製の顆粒体からなる。ここで、金属酸化物とは、1種以上の金属元素を含む酸化物の総称である。まず、容器によって収容された対象物が触媒によって覆われるように、容器を鉛直方向に沿って移動させる。この際に、容器の少なくとも一部は触媒に接触している状態となる。そして、酸素を含むガスが第1凹部内に供給されると共に触媒が加熱されることで、対象物における有機物を分解することができる。対象物を処理した後に、容器を鉛直方向に沿って移動させ、容器が触媒から取り出される。この際に、容器が触媒に接触していない状態となる。容器を鉛直方向に移動させると、触媒は第1凹部内に落下するため、触媒が第1凹部内から漏れ出てしまうことを低減することができる。触媒は第1凹部内に収容された状態が維持されるため、第1部分において繰り返し対象物を処理することが容易となる。
【0020】
本願の処理装置では、対象物における有機物を分解する際に、第1凹部内に収容される触媒全体に亘って触媒を攪拌する攪拌部を備えない。攪拌部としては、例えば、第1凹部内に収容される触媒全体を攪拌する攪拌羽や、第1凹部内に収容される触媒を循環させると共に、触媒全体を攪拌する回転車等があげられる。このような攪拌部を備えないことで、触媒同士や対象物と触媒とが擦れることを低減することができる。また、機械的な攪拌を実施しないことで、触媒を押し付けるような負荷の発生を抑制することができる。このため、触媒の摩耗を低減することができる。このように、本願の処理装置によれば、長期に亘って対象物を処理することができる。さらに、繰り返し対象物を処理することが容易である。
【0021】
本願の処理装置が上記攪拌部を備えないことで、対象物と触媒とを攪拌することが困難な程度の大きさや形状を有する対象物において、対象物を細かく破砕することなく、そのままの状態で対象物を処理することができる。さらに破砕し難い対象物や、破砕できない対象物に対しても、そのままの状態で対象物を処理することができる。対象物を細かく破砕せずにそのままの状態で処理することができるため、対象物を容易に処理することができる。
【0022】
上記処理装置は、容器の少なくとも一部が触媒に接触している際に、容器は運動可能(容器の空間的位置を変えることが可能である)であってもよい。容器の少なくとも一部が触媒に接触している際に容器が運動可能であることで、対象物の表面に触媒が接触し易くなり、対象物における有機物をより効率良く分解することができる。
【0023】
上記処理装置において、支持部は、鉛直方向に対して傾斜する傾斜部を含むレールと、容器に取り付けられ、レール上を走行可能な第1部品と、を含んでもよい。このような構成を採用することで、レールに沿って容器を移動させることができ、対象物を連続的に処理することが容易となる。さらに、レールが傾斜部を含むことで、容器を鉛直方向に沿って移動させることが容易となる。
【0024】
上記処理装置は、容器に取り付けられ、レールの進行方向におけるいずれか一方に突出するつば部をさらに備えてもよい。このような構成を採用することで、レールに沿って容器を移動させつつ、つば部を触媒内に潜り込ませることが容易となる。したがって、容器の少なくとも一部の領域を触媒によって覆われるように潜らせることが容易となる。
【0025】
上記処理装置において、支持部は、容器に取り付けられ、鉛直方向に沿って移動可能な第2部品を含んでもよい。このような構成を採用することで、容器を鉛直方向に沿って移動させることが容易となる。
【0026】
上記処理装置において、容器は、底壁部と、底壁部の外縁から鉛直方向に沿って延びる周壁部と、を含み、触媒を通すことが可能な網目状の形状を有する容器と、底壁部の周壁部とは反対側に突出し、鉛直方向に垂直な仮想平面に沿って回動可能な羽根部と、を含んでもよい。鉛直方向に沿って容器を移動させる際に羽根部を回動させることで、触媒を避けつつ、容器の少なくとも一部の領域を触媒によって覆われるように潜らせることが容易となる。
【0027】
上記処理装置において、酸素を含むガスが、空気であってもよい。空気は、処理装置に用いるガスとして好適である。
【発明の効果】
【0028】
上記対象物の処理方法および処理装置によれば、長期にわたって対象物を処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は実施の形態1における処理装置の構造を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は対象物の処理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は摩耗率測定装置を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は実施の形態2における処理装置の構造を示す概略断面図である。
【
図5】
図5は実施の形態2における処理装置の構造を示す概略断面図である。
【
図6】
図6はレール上を走行する状態の容器を示す概略斜視図である。
【
図7】
図7はレール上を走行する状態の容器を示す概略側面図である。
【
図8】
図8は実施の形態2の処理装置の変形例を示す概略断面図である。
【
図9】
図9は実施の形態3における処理装置の構造を示す概略断面図である。
【
図10】
図10は実施の形態3における処理装置の構造を示す概略断面図である。
【
図11】
図11は実施の形態4にける処理装置の構造を示す概略断面図である。
【
図12】
図12は容器および廃基板が触媒によって覆われている状態を示す概略図である。
【
図13】
図13は電子回路基板の処理前の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明の対象物の処理方法および処理装置の一実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0031】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における処理装置の構造を示す概略断面図である。
図1において、X軸方向は、反応器における側壁部の中心軸に沿った方向である。Y軸方向は、側壁部の径方向である。
図1を参照して、処理装置1は、対象物2を処理するための部分である第1部分としての反応器10と、触媒30と、容器40と、を備える。処理装置1は、有機物を有する対象物2において有機物を分解するための装置である。
【0032】
反応器10は、側壁部101と、上壁部102と、下壁部103と、を含む。本実施の形態では、側壁部101は、中空円筒状の形状を有する。側壁部101の内径Mは、例えば150mm程度である。側壁部101のX軸方向における長さは、例えば135mm程度である。側壁部101の一方の開口を覆うように上壁部102が配置される。側壁部101の他方の開口を覆うように下壁部103が配置される。反応器10は、側壁部101、上壁部102および下壁部103によって取り囲まれた空間Vを有する。下壁部103の中央には、供給口11が形成されている。本実施の形態において、供給口11は、複数の貫通孔によって構成されている。X軸方向から平面的に見て、供給口11の外形は、円形状の形状を有する。下壁部103には、配管51が設置されている。配管51によって取り囲まれた空間と供給口11とが連通するように、配管51が配置されている。配管51は、ガスの流入路である。したがって、配管51から反応器10の空間V内にガスが矢印L1の向きに流入する。上壁部102の中央には、配管52が設置されている。配管52の一部は、空間V内に露出するように配置されている。配管52は、ガスの排出路である。したがって、反応器10の空間Vから配管52にガスが矢印L2の向きに排出される。ガスは、X軸方向に沿って流れる。
【0033】
複数の触媒30は、反応器10の空間V内に収容された状態が維持されている。触媒30は、下壁部103に接触するように配置される。本実施の形態では、空間V内に収容される複数の触媒30の量は、例えば1000g以上である。空間V内に収容される複数の触媒30の量は、反応器10の容積に応じて適宜設定される。触媒30は、チタンを含む金属酸化物製の顆粒体からなる。本実施の形態では、触媒30は、酸化チタン(二酸化チタン)製の顆粒体からなる。本実施の形態において、顆粒体は、略球状の形状を有する。略球状とは、顆粒体表面の角が取れ、球形の度合いが高いことを意味する。本実施の形態において、顆粒体の粒子径は、0.2mm以上2mm未満である。上記顆粒体の粒子径は、例えば篩分け法によって測定することができる。
【0034】
本実施の形態において、顆粒体の転がり傾斜角度は、以下の数値範囲を有する。具体的には、顆粒体の滑り始める角度は、0.5度以上15度以下であり、全ての顆粒体が滑り終わる角度は、2度以上30度以下である。顆粒体の滑り始める角度は、好ましくは0.5度以上10度以下であり、より好ましくは0.5度以上8度以下であり、さらに好ましくは0.5度以上5度以下である。顆粒体の滑り終わる角度は、好ましくは2度以上25度以下であり、より好ましくは2度以上22度以下であり、さらに好ましくは2度以上18度以下である。顆粒体が上記範囲を有することで、顆粒体の形状の球形度合いを高くすることができる。上記顆粒体の転がり傾斜角度は、例えば以下の条件で測定される。顆粒体20gをガラス板上に載置した後、ガラス板を水平な状態(0度)から斜めにし、顆粒体の滑り始める角度および全ての顆粒体が滑り終わる角度を測定する。
【0035】
容器40は、内部空間を有する直方体状の形状を有する。容器40は、上記触媒を通すことが可能な網目状の形状を有する。容器40は、約550℃の温度で形態を維持可能な金属製(鉄製)である。容器40は、網目状の筒状部と、一方の開口を覆うように配置される網目状の上蓋と、他方の開口を覆うように配置される網目状の底蓋と、を含む。上蓋は、筒状部から取り外し可能なように取り付けられている。接続部31は、Y軸方向に移動可能なように上壁部102に取り付けられている。例えば、上壁部102にレール(図示せず)が設置され、接続部31の一方の端部にはレール上を走行可能な駆動部(図示せず)が取り付けられている。上蓋が取り外された状態で対象物2を容器40内に配置し、上蓋を取り付けることで、対象物2が容器40内に収容される。そして、接続部31の他方の端部が容器40の上蓋に接続される。筒状部のX軸方向における長さは、例えば30mm程度である。上蓋および下蓋は、例えば45mm×55mm程度の面積を有する。筒状部、上蓋および下蓋の目開きは、例えば1mm以上である。筒状部、上蓋および下蓋の目開きは、好ましくは2mm以上100mm以下であり、より好ましくは2mm以上50mm以下であり、さらに好ましくは2mm以上30mm以下であり、特に好ましくは2mm以上6mm以下である。上記目開きは、対象物2や触媒30の大きさによって適宜決定される。
【0036】
次に、本実施の形態における対象物2の処理方法の手順を説明する。
図2は、本実施の形態における対象物2の処理方法の一例を示すフローチャートである。
図1および
図2を参照して、本実施の形態における対象物2の処理方法では、まず工程(S10)として、対象物2を配置する工程が実施される。より具体的には、反応器10内に対象物2が配置される。本実施の形態において、対象物2は、廃基板20である。廃基板20は、一方の面21と、他方の面22と、を有する。廃基板20は、例えば、厚み方向から平面的に見て、4cm
2以上の面積を有する。本実施の形態では、廃基板20は、容器40に収容された状態で、反応器10内に配置される。この際に、廃基板20の表面21,22を複数の触媒30が覆うように、容器40を触媒30内に埋没させる。そして、廃基板20は、触媒30の表面から例えば50mm以上埋没させる。本実施の形態では、廃基板20は、X軸方向に交差(直交)するように配置される。すなわち、廃基板20の表面21,22がガスが流れる方向(X軸方向)に交差(直交)するように配置される。このようにして、対象物2を触媒30によって覆うと共に対象物2における有機物に触媒30を接触させる。廃基板20は、例えば、プリント基板と、プリント基板上に搭載される電子部品と、を含む電子回路基板である。電子回路基板における厚み方向は、プリント基板の厚み方向である。本実施の形態では、電子回路基板のうち、電子部品がより多く搭載されている面22が、下壁部103に対向するように配置される。
【0037】
次に、工程(S20)として、有機物を分解する工程が実施される。より具体的には、廃基板20を触媒30によって覆うと共に廃基板20における有機物に触媒30を接触させ、酸素を含むガスを反応器内に流入すると共に反応器10内における触媒30を480℃以上550℃以下の温度に維持する。反応器10における外壁側から加熱装置等によって加熱されることで、反応器10内における触媒30は所定の温度に維持される。より具体的には、上記加熱装置の設定温度に対して、触媒30の温度の振れ範囲は、設定温度からプラスマイナス30℃程度となる。したがって、触媒30を上記温度範囲となるように、加熱装置の設定温度が適切に設定される。本実施の形態では、廃基板20が反応器10内に配置される前に、反応器10内における触媒30が所定の温度(例えば480℃以上550℃以下)となるように加熱される。
【0038】
工程(S20)では、廃基板20における有機物の分解反応が生じるようにガスが反応器10内に流入される。この際に、反応器10内全体に行き渡るようにガスが流入される。ガスは、酸素を含むガスである。酸素を含むガスは、例えば酸素を含む混合ガスである。より具体的には、空気である。さらに、廃基板20における有機物の分解反応が生じると共に廃基板20の表面21,22の少なくとも一部で触媒30が微動するようにガスが反応器10内に流入されている。廃基板20の有機物が分解されると、廃基板20の体積が減少する。反応器10内に流入されるガスによって、触媒30は廃基板20の表面21,22上を僅かに移動し、廃基板20の異なる領域に接触する。このような触媒30の動きが連続的に起こり、廃基板20の表面21,22の少なくとも一部で触媒30が微動する。このように、廃基板20の表面21,22上において触媒30を僅かに流動させている。ガスは、触媒30が流動層を形成しない程度に反応器10内に流入される。本実施の形態では、ガスの流速は、0.5m/min以上200m/min以下である。ガスの流速の下限は、好ましくは3m/minであり、より好ましくは4m/minである。ガスの流速の上限は、好ましくは100m/minであり、より好ましくは50m/minであり、さらに好ましくは20m/minであり、特に好ましくは10m/minである。上記ガスの流速は、例えば、側壁部101の内径やガスの流量から算出される。本実施の形態では、触媒30の単位質量(g)当たりのガスの流量(l/min)の下限は、4×10-3l/minであり、好ましくは0.01l/minであり、より好ましくは0.028l/minである。本実施の形態では、触媒30の単位質量(g)当たりのガスの流量(l/min)の上限は、2l/minであり、好ましくは1l/minであり、より好ましくは0.1l/minであり、さらに好ましくは0.085l/minである。
【0039】
本実施の形態では、工程(S20)は、反応器10内における触媒30全体に亘って触媒30を攪拌する工程が実施されない。本実施の形態では、工程(S20)において、廃基板20が触媒30によって覆われた状態を維持しつつ、対象物2を運動させる。より具体的には、容器40に廃基板20が収容された状態で容器40を運動させる。例えば、接続部31を径方向(Y軸方向)に往復させるように移動させ、容器40を触媒30に対して相対的に移動させる。以上のようにして、廃基板20における有機物を分解することができる。
【0040】
ここで、本実施の形態における対象物2の処理方法では、酸素を含むガスが反応器10内に流入されると共に触媒30が加熱されることで、触媒30に接触する有機物の酸化分解が生じる。さらに、有機物の分解反応が生じると共に、廃基板20の表面21,22の少なくとも一部で触媒30が微動するように、ガスを第1部分内に流入させている。このようにすることで、廃基板20における有機物の分解が促進される。上記対象物2の処理方法によれば、廃基板20における有機物を分解する際に廃基板20と触媒30とを攪拌する必要がないため、触媒30の摩耗を低減することができると共に、対象物2における有機物を容易に分解することができる。このように本実施の形態における対象物2の処理方法によれば、長期にわたって廃基板20を処理することができると共に廃基板20を容易に処理することができる。
【0041】
上記実施の形態では、廃基板20における有機物を分解する工程では、反応器10内における触媒30全体に亘って触媒30を攪拌する工程が実施されない。このような触媒30を攪拌する工程を実施しないことで、廃基板20の有機物が表面に露出することが抑制されるため、廃基板20における有機物の未分解のガスの発生を低減することができる。さらに、触媒30同士や廃基板20と触媒30とが擦れることを低減することができる。また、機械的な攪拌を実施しないことで、攪拌羽が触媒30を押し付けるような負荷の発生を抑制することができる。したがって、触媒30の摩耗を低減することができる。また、攪拌することが困難な程度の大きさや形状を有する廃基板20において、廃基板20を細かく破砕することなく、そのままの状態で廃基板20を処理することができる。廃基板20を細かく破砕せずにそのままの状態で処理することができるため、廃基板20を容易に処理することができる。
【0042】
上記実施の形態では、廃基板20は、容器40に収容されている。触媒30を加熱する工程では、容器40に廃基板20が収容された状態で容器40を運動させる。このようにすることで、廃基板20の表面21,22に触媒30が接触し易くすることができる。上記実施の形態では、容器40を側壁部101の径方向(Y軸方向)に往復するように移動させる場合について説明したが、これに限られず、容器40は触媒30に対して矢印Yの向きや反対の向きだけに移動させるようにしてもよい。また、容器40は、触媒30に対して振動させるようにしてもよい。さらに、容器40を軸周りに回転するようにしてもよい。このような場合、反応器10内に収容される触媒30が攪拌されないように、容器40を運動させる。例えば、触媒30が攪拌されないように容器40の移動速度、回転速度や振動の大きさが適宜設定される。上記実施の形態では、廃基板20が収容された容器40を移動させる場合について説明したが、これに限られず、廃基板20を治具(例えばアーム)によって保持し、治具を移動させることで、廃基板20を移動させてもよい。このようにすることで、廃基板20における有機物を効率よく分解することができる。同様に、反応器10内に収容される触媒30が攪拌されないように、治具を移動させる。例えば、触媒30が攪拌されないように治具の移動速度が適宜設定される。なお、廃基板20を移動させる工程は、廃基板20における有機物を分解する工程の全体に亘って同時に実施されてもよいし、廃基板20における有機物を分解する工程の一部で実施されるようにしてもよい。なお、廃基板20における有機物を分解する工程全体に亘って触媒30に対して廃基板20を運動させなくてもよい。
【0043】
上記実施の形態では、廃基板20が容器40に収容されている場合について説明したが、これに限られず、廃基板20を直接触媒30に接触するように配置してもよい。
【0044】
上記実施の形態では、酸素を含むガスを反応器10内に流入する際のガスの流速が、0.5m/min以上200m/min以下である。ガスの流速が0.5m/min未満である場合、廃基板20の表面21,22上において触媒30が十分に流動せず、廃基板20における有機物を十分に分解することができない場合がある。ガスの流速が200m/minより大きくなると、触媒30が流動し易くなり、触媒30の摩耗を低減することが困難となってしまう場合がある。したがって、ガスの流速が、0.5m/min以上200m/min以下であることが好ましい。
【0045】
上記実施の形態では、廃基板20が、厚み方向から平面的に見て、4cm2以上の面積を有する。反応器10内の容積を変更することにより、より大きな面積を有する廃基板20を処理することができる。このような場合、廃基板20の面積は、例えば100cm2以上であり、好ましくは600cm2以上である。廃基板20の面積の上限は、特に限定されるわけではないが、例えば1000cm2である。上記面積を有する廃基板20を用いることで、廃基板20を効率良く分解することができる。上記実施の形態では、廃基板20は、電子回路基板である。上記対象物2の処理方法によって、電子回路基板を処理することでプリント基板における樹脂を分解し、プリント基板に含まれていた金属を有する処理物と電子部品とを回収することが容易となる。また、プリント基板における樹脂をある程度分解することで板状の状態が維持された処理物と、電子部品と、を回収することもできる。上記対象物2の処理方法によって、電子回路基板を破砕することなく、有機物を全て取り除くことで、電子回路基板に含まれていた希少金属の回収が容易となる。さらに、電子回路基板を破砕しないことで、希少金属の回収率を向上させることができる。また、有機物を全て取り除くことで、リサイクル時における金属の製錬工程が簡易となる。
【0046】
上記実施の形態では、廃基板20の表面21,22がガスが流れる方向(X軸方向)に交差するように配置される場合について説明したが、これに限られず、廃基板20の表面21,22がX軸方向に沿って配置するようにしてもよい。上記実施の形態では、電子回路基板のうち、電子部品がより多く搭載されている面22が、下壁部103に対向するように配置される。電子回路基板における面22がX軸方向に交差(直交)するように配置されることで、ガスが電子回路基板における面22に直接接触し、電子回路基板を効率良く処理することができる。また、電子回路基板における電子部品が自重によって下方側に落下し易くなり、プリント基板に含まれていた金属と電子部品とを分離し易くすることができる。
【0047】
上記実施の形態では、対象物2(廃基板20)は、触媒30の表面から例えば50mm以上埋没させる。対象物2(廃基板20)を触媒30の表面から埋没させる深さは、好ましくは100mm以上であり、より好ましくは150mm以上であり、さらに好ましくは200mm以上である。対象物2(廃基板20)を触媒30の表面から50mm以上埋没させることで、対象物2(廃基板20)における有機物を分解する際の有機物の未分解ガスの発生を抑制することができる。対象物2(廃基板20)を埋没させる深さは、反応器10の大きさや反応器10内に収容される触媒30の量に応じて適宜設定される。
【0048】
上記実施の形態では、触媒30は、酸化チタン製の顆粒体からなる場合について説明したが、これに限られず、顆粒体を構成する材料が、酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素から選ばれる少なくとも1種と酸化チタンとの混合物であってもよい。また、顆粒体を構成する材料が、チタン/ニオブ複合酸化物、チタン/ケイ素複合酸化物、ケイ素およびタングステンから選ばれる少なくとも1種とチタンとの複合酸化物、ケイ素およびモリブデンから選ばれる少なくとも1種とチタンとの複合酸化物、チタン/アルミニウム複合酸化物、酸化ジルコニウム、チタン/ジルコニウム複合酸化物及びチタン含有ぺロブスカイト化合物から選ばれる少なくとも1種の無機酸化物であってもよい。チタン含有ぺロブスカイト化合物としては、例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸カルシウムのほか、これらにおけるバリウム、ジルコニウム、ストロンチウム及び/又はカルシウムの一部をランタン、セリウム、イットリウム等で置換したもの等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
上記実施の形態における顆粒体は、例えば、以下の方法により製造することができる。チタニアゾル(必要に応じて、シリカゾル、アルミナゾル及びジルコニアゾルから選ばれる少なくとも1種のゾルも含める)を撹拌造粒して球状の顆粒とした後、400℃~850℃の範囲の温度で焼成する。そして、篩分けによって、特定の粒径を持つ焼成した後の顆粒体を得る。
【0050】
上記実施の形態における触媒30として、銅および酸化銅の少なくともいずれか一方が担持されるチタンを含む金属酸化物製の顆粒体を採用してもよい。このような顆粒体を採用することで、長期間に亘って対象物2を高効率で処理することができる。上記方法によって製造されるチタンを含む金属酸化物製の顆粒体に銅および酸化銅の少なくともいずれか一方を担持することで製造される。銅および酸化銅の少なくともいずれか一方を担持させる方法としては、種々の公知の方法を用いることができるが、中でも含侵法を好適に用いることができる。例えば、硝酸塩銅水溶液に上記で得られた顆粒体を浸漬し、さらに乾燥した後、200℃以上500℃以下の温度で焼成することにより、銅および酸化銅の少なくともいずれか一方が担持される顆粒体を得ることができる。銅および酸化銅の少なくともいずれか一方の担持量は、例えば、0.1質量%以上10質量%以下である。
【0051】
上記実施の形態における顆粒体の真円度は、0.5以上5以下である。顆粒体の真円度は、好ましくは1以上2以下であり、より好ましくは1以上1.5以下であり、さらに好ましくは1以上1.4以下であり、特に好ましくは1以上1.3以下であり、最も好ましくは1以上1.2以下である。より詳しくは、使用前の全酸化チタン顆粒体中の70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の顆粒体の真円度が、1以上2以下であり、好ましくは1以上1.5以下であり、より好ましくは1以上1.4以下であり、さらに好ましくは1以上1.3以下であり、最も好ましくは1以上1.2以下である。顆粒体の真円度が上記範囲を有することで、顆粒体の形状の球形度合いを高くすることができる。上記真円度の測定は、例えば以下の条件および装置によって実施される。倒立型顕微鏡にCCDカメラを装着し、画像の処理はImage-Pro Plusにより行う。詳しくは、顆粒体をプラスチックシャーレに重ならないようにいれる。そして、下記倒立型顕微鏡により倍率4倍で画像を取り込み、Image-Pro Plusにより真円度を自動計測する。
(装置)
顕微鏡:商品名「TMD-300」,株式会社ニコン
CCDカメラ:商品名「Retiga 2000R(1600×1200pixels)」,Q-Imaging社
画像処理装置:商品名「Image-Pro Plus」,Media Cybernetics社
【0052】
上記実施の形態における顆粒体の安息角度は、15度以上35度以下であり、好ましくは20度以上35度以下である。安息角度の測定は、例えば以下の方法により実施される。顆粒体20gをロートにより落下させ、山型に層を形成した時の斜面と水平面とのなす角を測定する。なお、安息角度は,流動性の良い粉粒体ほど小さく、逆に流動性の良くない粉粒体の場合には大きくなる。
【0053】
上記実施の形態における顆粒体のタップ密度は、1g/ml以上1.8g/ml以下、好ましくは1.03g/ml以上1.6g/ml以下、より好ましくは1.05g/ml以上1.55g/ml以下である。上記タップ密度の測定は、例えば以下のようにして実施される。顆粒体約180gを200mlガラス製メスシリンダーに投入し、このメスシリンダーを厚み10mmのゴム製シート上に高さ50mmの位置から繰り返し10回自然落下させた後、50mmの距離から木製の板の側面に10回打ち当て、以上の操作を2回繰り返した後、メスシリンダーの目盛を読み取り、顆粒体の容積V(ml)とし、別に、顆粒体を110℃で3時間乾燥した後、その質量N(g)を測定、これらに基づいて、タップ密度を式N/Vから求める。
【0054】
上記実施の形態における顆粒体の摩耗率は、5質量%以下、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。上記摩耗率の測定は、以下のようにして実施される。
図3に示す摩耗率測定装置を用いて測定が実施される。即ち、この摩耗率測定装置は、内径63mm、深さ86mmの試料容器201に撹拌機202を取付けてなり、この撹拌機202は、軸体203の下端部にそれぞれ長さ20mmの楕円形状の撹拌羽204を3枚、60゜間隔で軸体203から直径方向に延びるように取付けたものであって、撹拌羽204はそれぞれ水平に対して45゜の角度を有するように傾斜している。この撹拌羽204は、その最下縁が試料容器201の底から8mmの距離に位置する。なお、酸化チタン顆粒体の摩耗率の測定に際しては、200mlメスシリンダーで顆粒体150mlを計量し、質量を記録した後、試料容器201に全量を投入し、300rpmで30分間上記撹拌機を用いて撹拌した後、試料容器201から試料を取り出し、全量を目開き0.5mmの篩に移し、この篩を通過した試料の質量を測定する。ここに、試料の摩耗率Aは、目開き0.5mmの篩を通過した試料の質量をWとし、測定に供した試料の質量をW
0とするとき、A=(W/W
0)×100(%)である。
【0055】
上記実施の形態における顆粒体の比表面積は、30m2/g以上100m2/g以下であり、より好ましくは30m2/g以上60m2/g以下であり、さらに好ましくは30m2/g以上50m2/g以下であり、特に好ましくは30m2/g以上40m2以下である。顆粒体の比表面積が30m2/g未満であると、顆粒体と対象物2との接触面積が小さくなり、対象物2が十分に処理できない場合がある。顆粒体の比表面積が100m2/gより大きいと、顆粒体の耐熱性が低下すると共に、顆粒体が崩れやすく粉末化しやすくなる場合がある。したがって、顆粒体の比表面積は、30m2/g以上100m2/g以下であることが好ましい。上記比表面積の測定は、例えばBET法によって実施される。BET法は,粉体粒子表面に吸着占有面積の判った分子を液体窒素の温度で吸着させ、その量から試料の比表面積を求める方法である。測定装置は、2300形 自動測定装置(島津製作所(株)製造元)を用いることができる。
【0056】
上記実施の形態における顆粒体の細孔容積は、0.1ml/g以上0.8ml/g以下であり、より好ましくは0.2ml/g以上0.6ml/g以下であり、さらに好ましくは0.3ml/g以上0.55ml/g以下であり、特に好ましくは0.4ml/g以上0.5ml/g以下である。上記細孔容積の測定は、例えば水銀圧入法により実施される。水銀圧入法は、水銀の表面張力が大きいことを利用して粉体の細孔に水銀を浸入させるために圧力を加え、圧力と圧入された水銀量から細孔容積を求める方法である。測定装置は、Thermo Finnigan社製のポロシメーター(水銀圧入式 最高圧力:200MPa)を用いることができる。
【0057】
上記実施の形態における顆粒体の粒子径は、廃基板20を処理する場合、好ましくは0.2mm以上1.2mm未満である。このような場合、全ての顆粒体のうち70質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上の顆粒体の粒子径が、0.35mm以上0.85mm未満であり、より好ましくは0.4mm以上0.85mm未満であり、さらに好ましくは0.5mm以上0.85mm未満である。他の用途では、顆粒体の粒子径がより大きいものを使用してもよい。この際の粒子径は、例えば1mm以上2mm未満である。
【0058】
側壁部101は、中空円筒状の形状を有する場合について説明したが、これに限られず、側壁部101は、中空状であると共に角柱状の外形を有してもよい。例えば、側壁部101が、中空直方体状の形状を有する場合、側壁部101のX軸方向に垂直な断面は、長方形状であることが好ましい。このような形状を有することで、長辺に沿って、容器40を移動させることができる。長辺の長さをより長くすることで、廃基板20における有機物を分解する処理時間をより長くすることができる。また、上記実施の形態における側壁部101の内壁は、下壁部103から離れるにしたがって内径が大きくなるテーパー状(曲面状)の形状を有してもよい。さらに、上記実施の形態における側壁部101の内壁は、上壁部102から離れるにしたがって内径が大きくなるテーパー状(曲面状)の形状を有してもよい。上記実施の形態では、供給口11の外形は、X軸方向から平面的に見て円形状の形状を有する場合について説明したが、これに限られず、供給口11の外形は、X軸方向から平面的に見て長方形状の形状であってもよい。上記実施の形態では、1つの配管51が供給口11に接続される場合について説明したが、これに限られず、複数のノズルが下壁部103に設置され、複数のノズルが空間V内に露出するように下壁部103に取り付けられてもよい。このように複数のノズルを設けることで、特定の領域における触媒30のみを微動させることが容易となる。上記実施の形態における処理装置1は、反応器10、触媒30および容器40の他、酸化触媒処理手段、還元触媒処理手段、石灰中和処理手段、ガス供給手段、アルミナ触媒処理手段、熱交換手段、プレヒーター手段、排気ブロアー手段、冷却手段、熱回収手段、塩化水素連続測定手段、CO連続測定手段および警報手段のいずれか1以上の手段を有してもよい。
【0059】
上記実施の形態において、廃基板20は、電子回路基板である場合について説明したが、これに限られず、例えば化粧鋼板や樹脂積層板などの板状物であってもよい。対象物2は、廃基板20の他、廃プラスチック、樹脂等の有機物を有する一般廃棄物、産業廃棄物、医療廃棄物および感染性医療廃棄物、実験廃棄物(ラット等の実験動物死体)を処理することができる。また、触媒30を用いて分解することができる有機物は、特に限定されるものではなく、ポリエチレン、ポリプロピレン等の汎用の熱可塑性樹脂のほか、熱硬化性樹脂や医療廃棄物に含まれる有機物等である。
【0060】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2における処理方法は、基本的に実施の形態1と同様の工程を有し、同様の効果を奏する。しかしながら、実施の形態2においては、処理装置1の構成が実施の形態1の場合と異なっている。以下、実施の形態1と異なる点について説明する。
【0061】
図4および
図5は、実施の形態2における処理装置1の構造を示す概略断面図である。
図4は、
図5のB-Bで切断した場合の断面図である。
図5は、
図4のA-Aで切断した場合の断面図である。
図6は、レール上を走行する状態の容器40を示す概略斜視図である。
図7は、レール上を走行する状態の容器40を示す概略側面図である。
図4および
図5において、X軸方向とはレールにおける第1レールが延びる方向である。Z軸方向は、鉛直方向である。Y軸方向は、X-Z平面に垂直な方向である。
【0062】
図4および
図5を参照して、本実施の形態における処理装置1は、対象物2を処理するための部分である第1部分としての反応槽10と、触媒30と、供給部50と、ガス処理部53と、加熱部60と、容器40と、容器40を支持する支持部65と、を備える。反応槽10は、内部に対象物2を処理するための空間が形成された形状を有する。
図4および
図5を参照して、反応槽10は、例えば、直方体状の形状を有する。本実施の形態では、反応槽10には、一方の端部から他方の端部に向かって貫通する空間Tが形成されている。より具体的には、空間Tは、X軸方向に沿って延びる。
【0063】
本実施の形態では、反応槽10は、空間Tを取り囲む第1内壁面12、一対の第2内壁面13および第3内壁面14を含む。第1内壁面12は、例えば、平面状の形状を有する。より具体的には、第3内壁面14は、第1内壁面12とZ軸方向に間隔をあけて配置される。第1内壁面12と第3内壁面14とは、平行に配置される。一対の第2内壁面13は、それぞれ第1内壁面12および第3内壁面14に接続する。一対の第2内壁面13は、それぞれY軸方向に間隔をあけて配置される。第2内壁面13は、例えば、平面状の形状を有する。
【0064】
本実施の形態では、第3内壁面14は、第1の面141と、第2の面142と、第3の面143と、第4の面144と、第5の面145と、を含む。第1の面141、第2の面142、第3の面143、第4の面144および第5の面145は、例えばそれぞれ平面状の形状を有する。より具体的には、第1の面141、第3の面143および第5の面145は、それぞれX-Y平面に平行に配置される。第1の面141および第5の面145は、Z軸方向において同じ高さに位置する。Z軸方向において、第3の面143の高さは、第1の面141の高さよりも低い。第2の面142は、第1の面141と第3の面143とに接続する。第4の面144は、第3の面143と第5の面145とに接続する。第2の面142および第4の面144は、それぞれX-Y平面に傾斜する。本実施の形態では、反応槽10には、第1凹部Sに連通する貫通孔15がZ軸方向に沿って形成されている。より具体的には、貫通孔15は、X軸方向に間隔をあけて複数(本実施の形態では8つ)形成されている。貫通孔15の一方の開口部は、第2の面142、第3の面143および第4の面144に形成されている。貫通孔15の他方の開口部は、反応槽10の外壁に形成されている。本実施の形態では、反応槽10の内壁面には、第2の面142、第3の面143、第4の面144および一対の第2内壁面13によって取り囲まれた第1凹部Sが形成されている。
【0065】
図5を参照して、触媒30は、第1凹部S内に収容された状態が維持されている。触媒30は、チタンを含む金属酸化物製の顆粒体からなる。本実施の形態では、触媒30は、酸化チタン(二酸化チタン)製の顆粒体からなる。顆粒体は、例えば、略球状の形状を有する。略球状とは、顆粒体表面の角が取れ、球形の度合いが高いことを意味する。顆粒体の粒子径は、実施の形態1と同様である。本実施の形態において、顆粒体の転がり傾斜角度は、実施の形態1と同様である。処理装置1は、第1凹部S内に収容される触媒30全体に亘って触媒30を攪拌する攪拌部を備えない。
【0066】
供給部50は、酸素を含むガスを供給する。供給部50は、例えばブロワである。酸素を含むガスは、例えば酸素を含む混合ガスである。より具体的には、酸素を含むガスは、空気である。本実施の形態では、供給部50は、第1配管511および第2配管512を介して、反応槽10に接続されている。より具体的には、第1配管511は、X軸方向に沿って延びる。第1配管511の一方の端部に供給部50が配置される。第2配管512は、第1配管511における分岐点513からZ軸方向に沿って延びる。第2配管512は、X軸方向に間隔をあけて複数配置されている。第2配管512を取り囲む空間が貫通孔15に連通するように、第2配管512が配置される。供給部50から供給されるガスが、第1凹部S内に供給される。本実施の形態では、第2配管512の外周に沿って加熱部60が配置される。加熱部60によって、供給部50によって供給されるガスが加熱される。加熱部60は、例えばヒーターである。このようにして、第1凹部S内に酸素を含むガスが供給され、第1凹部S内に収容されている触媒30が加熱される。
【0067】
図5および
図6を参照して、本実施の形態では、支持部65は、第1部品としての駆動部44A,44Bと、接続部42,43と、レール80と、を含む。レール80は、駆動部44A,44Bが走行可能な形状を有する。
図1および
図2を参照して、レール80は、例えば、環状の形状を有する。本実施の形態では、レール80は、第1レール81と、第2レール82と、第3レール83と、第4レール84と、を含む。より具体的には、Z軸方向に平面的に見て、第1レール81および第2レール82は、X軸方向に沿って直線状に延びる。第1レール81と第2レール82とは、平行に配置される。第3レール83は、第1レール81および第2レール82の一方の端部のそれぞれに接続する。第4レール84は、第1レール81および第2レール82の他方の端部のそれぞれに接続される。
図5を参照して、第1レール81は、反応槽10における空間Tを挿通するように配置される。第1レール81は、例えば、触媒30から露出するように配置される。本実施の形態では、第1レール81は、第1直線部811と、第2直線部813と、第3直線部815と、第1傾斜部812と、第2傾斜部814と、を含む。より具体的には、第1直線部811、第2直線部813および第3直線部815は、それぞれX軸方向に沿って延びる。第1直線部811と、第3直線部815とは、Z軸方向において同じ高さを有する。Z軸方向において、第2直線部813の高さは、第1直線部811の高さよりも低い。第1傾斜部812は、第1直線部811および第2直線部813に接続する。第2傾斜部814は、第2直線部813および第3直線部815に接続する。第1傾斜部812および第2傾斜部814は、それぞれZ軸方向に対して傾斜している。
【0068】
図4、
図5および
図6を参照して、駆動部44A,44Bは、例えば内蔵されているモーター(図示せず)によってレール80上を走行可能である。接続部42,43は、容器40の懸架に適した形状を有する。接続部42,43は、例えば、直線状に延びる形状を有する。より具体的には、接続部42の一方の端部には、駆動部44Aが接続されている。接続部43の一方の端部には、駆動部44Bが接続されている。
図6および
図7を参照して、接続部42,43の他方の端部には、容器40が接続されている。駆動部44A,44Bと容器40とに接続部42,43が接続し、駆動部44A,44Bは、容器40に取り付けられている。
【0069】
図5、
図6および
図7を参照して、容器40は、処理する対象物2を内部に保持することに適した形状を有する。容器40は、例えば、直方体状の形状を有する。より具体的には、容器40は、約550℃の温度で形態を維持可能な金属製(鉄製)である。本実施の形態では、容器40は、第1外壁411と、第2外壁412と、第3外壁413と、第4外壁414と、第5外壁415と、を含む。第1外壁411、第2外壁412、第3外壁413、第4外壁414および第5外壁415は、例えば、触媒30を通すことが可能な網目状の形状を有する。より具体的には、第1外壁411、第2外壁412、第3外壁413、第4外壁414および第5外壁415の目開きは、例えば1mm以上である。第1外壁411、第2外壁412、第3外壁413、第4外壁414および第5外壁415の目開きは、好ましくは2mm以上100mm以下であり、より好ましくは2mm以上50mm以下であり、さらに好ましくは2mm以上30mm以下であり、特に好ましくは2mm以上6mm以下である。上記目開きは、対象物2や触媒30の大きさによって適宜決定される。
【0070】
各外壁は、処理する対象物2を保持することに適した形状を有する。第1外壁411、第2外壁412、第3外壁413、第4外壁414および第5外壁415は、例えば、平板状の形状を有する。より具体的には、第1外壁411と第2外壁412とは、Z軸方向に間隔をあけて平行に配置される。第3外壁413と第4外壁414とは、Y軸方向に間隔をあけて平行に配置される。Y軸方向から平面的に見て、第3外壁413の一方の長辺には、第1外壁411が接続され、第3外壁413の他方の長辺には、第2外壁412が接続されている。Y軸方向から平面的に見て、第4外壁414の一方の長辺には、第1外壁411が接続され、第4外壁414の他方の長辺には、第2外壁412が接続されている。X軸方向から平面的に見て、第5外壁415の一方の長辺には、第1外壁411が接続され、第5外壁415の他方の長辺には、第2外壁412が接続される。さらに、第5外壁415の一方の短辺には、第3外壁413が接続され、第5外壁415の他方の短辺には、第4外壁414が接続される。
【0071】
本実施の形態では、容器40には、第1外壁411、第2外壁412、第3外壁413および第4外壁414によって取り囲まれた開口部Pが形成されている。開口部Pから容器40の内部に対象物2を配置することができる。対象物2は、第1外壁411、第2外壁412、第3外壁413、第4外壁414および第5外壁415によって取り囲まれた空間内に保持される。本実施の形態では、接続部42,43の他方の端部に、第1外壁411が接続されている。より具体的には、Z軸方向に平面的に見て、接続部42および接続部43は、容器40の重心は挟むように配置される。このようにして、容器40は、レール80の進行方向Hに沿って移動可能である。
【0072】
処理装置1は、容器40が触媒30内に潜り込ませることを可能にする手段を有してもよい。本実施の形態では、処理装置1は、つば部416をさらに備える。より具体的には、つば部416は、第2外壁412の外縁から突出するように配置される。Z軸方向から平面的に見て、つば部416は、第2外壁412の第5外壁415が接続される側とは反対側の辺に接続される。つば部416は、レール80の進行方向Hにおける矢印の向きに突出する。つば部416は、例えば、平板状の形状を有する。つば部416は、第2外壁412に対して傾斜する。本実施の形態では、つば部416と第2外壁412とのなす角は、例えば10度以上45度以下である。本実施の形態では、つば部416は、本体部417から突出すると共に、Y軸方向に間隔をあけて配置される複数の突起418を含む。
【0073】
例えば、反応槽10において対象物2における有機物が分解されることによって発生するガスを処理した後に、外部に排出してもよい。
図5を参照して、本実施の形態では、処理装置1は、対象物2における有機物が分解されることによって発生するガスを処理する部分であるガス処理部53を備える。より具体的には、配管521の一方の端部に反応槽10が接続される。配管521によって取り囲まれる空間が空間Tに連通するように配管521は接続される。配管521の他方の端部にはガス処理部53が接続される。ガス処理部53によって処理されたガスは、配管522を通じて外部に放出される。上記ガス処理部53としては、例えば、酸化触媒処理手段、還元触媒処理手段、石灰中和処理手段などである。
【0074】
次に、本実施の形態における処理装置1を用いて、対象物2を処理する方法について説明する。
図2を参照して、まず、工程(S10)として、対象物2を容器40の内部に配置する工程が実施される。
図6を参照して、対象物2としての廃基板20が準備される。本実施の形態では、廃基板20は、プリント基板と、プリント基板上に搭載される電子部品と、を含む電子回路基板である。廃基板20の大きさ(平面的に見た時の面積)は、実施の形態1と同様である。容器40の開口部Pから内部に廃基板20が配置される。廃基板20は、Z軸方向に交差(直交)するように配置される。本実施の形態では、電子回路基板のうち、電子部品がより多く搭載されている面が、第3内壁面14に対向するように配置される。
【0075】
そして、
図4および
図5を参照して、容器40に廃基板20が収容された状態で、駆動部44A,44Bがレール80上を走行することで、容器40はレール80に沿って移動する。駆動部44A,44Bが第1レール81上を走行することで、容器40は反応槽10内を移動する。例えば、駆動部44A,44Bが進行方向Hにおける矢印の向きに走行する場合について説明する。駆動部44A,44Bが第1レール81の第1直線部811上を走行することで、容器40は水平方向(X軸方向)に沿って移動し、容器40は反応槽10内に入る。容器40内に収容される廃基板20は、反応槽10内に配置されることとなる。この状態では、容器40は、触媒30に接触していない。第1レール81の第1傾斜部812上を駆動部44A,44Bが走行することで、容器40は鉛直方向(Z軸方向)および水平方向(X軸方向)に沿って移動する。駆動部44A,44Bが第1直線部811上を走行する際のZ軸方向における容器40の高さよりも容器40の高さが低くなるように、容器40は移動する。その結果、容器40は第1凹部S内に収容される触媒30内に埋没し、廃基板20は触媒30によって覆われる。廃基板20を触媒30内に埋没させる深さは、実施の形態1と同様である。この際に、容器40は、触媒30に接触している状態となる。
【0076】
次に、工程(S20)として、有機物を分解する工程が実施される。より具体的には、第1レール81の第2直線部813上において駆動部44A,44Bを走行させ、容器40をX軸方向に沿って移動させる。この時に、容器40によって、触媒30が攪拌されないように移動速度が適宜設定される。この際に、廃基板20は、触媒30によって覆われ、廃基板20における有機物は触媒30に接触している状態が維持される。そして、酸素を含むガスを第1凹部S内に流入させ、触媒30を480℃以上550℃以下の温度に維持する。本実施の形態では、触媒30が上記温度範囲となるように、第1凹部S内に供給されるガスの温度が適切に設定される。廃基板20が反応槽10内に配置される前に、触媒30が所定の温度(例えば480℃以上550℃以下)となるように加熱される。第1凹部内Sに流入されるガスの流速(m/min)や、触媒30の単位質量(g)当たりのガスの流量(l/min)は、実施の形態1と同様である。触媒30の温度は、実施の形態1と同様である。
【0077】
工程(S20)では、廃基板20における有機物の分解反応が生じるようにガスが第1凹部S内に流入される。この際に、第1凹部S内全体に行き渡るようにガスが流入される。さらに、廃基板20における有機物の分解反応が生じると共に廃基板20の表面の少なくとも一部で触媒30が微動するようにガスが第1凹部S内に流入されている。廃基板20の有機物が分解されると、廃基板20の体積が減少する。第1凹部S内に流入されるガスによって、触媒30は廃基板20の表面上を僅かに移動し、廃基板20の異なる領域に接触する。このような触媒30の動きが連続的に起こり、廃基板20の表面の少なくとも一部で触媒30が微動する。このように、廃基板20の表面上において触媒30を僅かに流動させている。ガスは、触媒30が流動層を形成しない程度に第1凹部S内に流入される。
【0078】
本実施の形態では、工程(S20)において、第1凹部S内に収容される触媒30全体に亘って触媒30を攪拌する工程が実施されない。そして、駆動部44A,44Bが第1レール81の第2傾斜部814上を走行することで、容器40は水平方向(X軸方向)および鉛直方向(Z軸方向)に沿って移動する。駆動部44A,44Bが第2直線部813上を走行する際のZ軸方向における容器40の高さよりも容器40の高さが高くなるように、容器40は移動する。このようにして、容器40は触媒30から取り出される。そして、駆動部44A,44Bが第1レール81の第3直線部815上を走行し、容器40は反応槽10外に移動する。工程(S20)の後に、分解物を回収する工程を実施してもよい。例えば、駆動部44A,44Bが第2レール82上を走行する際に、容器40内から分解物が取り出されてもよい。また、工程(S20)の後に、再び工程(S10)および工程(S20)を繰り返し実施してもよい。例えば、駆動部44A,44Bが第2レール82上を走行する際に、容器40内に再び廃基板20を配置し、廃基板20の処理を繰り返し実施してもよい。この場合、第1凹部S内に収容される触媒30は、480℃以上550℃以下の温度に維持され、廃基板20が触媒30によって覆われることで、廃基板20の有機物を分解することができる。
【0079】
本実施の形態では、容器40内に保持された廃基板20が触媒30によって覆われるように、容器40を移動させる。そして、酸素を含むガスが第1凹部S内に供給されると共に触媒30が加熱されることで、廃基板20における有機物を分解することができる。廃基板20を処理した後に、容器40を鉛直方向(Z軸方向)に沿って移動させ、容器40が触媒30から取り出される。この際に、容器40が触媒30に接触していない状態となる。容器40を鉛直方向(Z軸方向)に移動させると、触媒30は第1凹部S内に落下するため、触媒30が第1凹部内から漏れ出てしまうことを低減することができる。触媒30は第1凹部S内に収容された状態が維持されるため、反応槽10において繰り返し廃基板20を処理することが容易である。本実施の形態における処理装置1は、第1凹部S内に収容される触媒30全体に亘って触媒30を攪拌する攪拌部を備えない。処理装置1が上記攪拌部を備えないことで、触媒30同士や廃基板20と触媒30とが擦れることを低減することができる。このため、触媒30が摩耗してしまうことが低減されている。このように、本実施の形態における処理装置1によれば、繰り返し対象物2(廃基板20)を処理することが容易となり、長期に亘って対象物2(廃基板20)を処理することが可能となっている。
【0080】
本実施の形態における処理装置1は、容器40の少なくとも一部が触媒30に接触している際に、容器40は運動可能である。より具体的には、容器40は水平方向(X軸方向)に沿って移動可能である。このような構成を採用することで、廃基板20の表面に触媒30が接触し易くなり、廃基板20における有機物をより効率良く分解することができる。上記実施の形態では、容器40をX軸方向に沿って移動させる場合について説明したが、これに限られず、容器40をX軸方向に沿って移動させると共に容器40を軸周りに回転するようにしてもよい。また、容器40を触媒30に対して振動させるようにしてもよい。容器40は、触媒30が攪拌されないように運動させる。例えば、触媒30が攪拌されないように容器40の移動速度、回転速度や振動の大きさが適宜設定される。
【0081】
本実施の形態における処理装置1において、支持部65は、第1傾斜部812と、第2傾斜部814と、を含むレール80と、レール80上を走行可能な駆動部44A,44Bと、を備える。このような構成を採用することで、レール80に沿って容器40を移動させることができる。したがって、廃基板20を連続的に処理することが容易となる。また、第1傾斜部812および第2傾斜部814によって、容器40を鉛直方向(Z軸方向)に沿って移動させることが容易となる。
【0082】
本実施の形態における処理装置1は、レール80の進行方向Hにおけるいずれか一方に突出するように容器40に取り付けられているつば部416を備える。このような構成を採用することで、レール80に沿って容器40を移動させつつ、つば部416を触媒30内に潜り込ませることが容易となる。したがって、容器40の少なくとも一部の領域を触媒30によって覆われるように潜らせることが容易となる。
【0083】
本実施の形態における処理装置1は、第1凹部S内に収容される触媒30全体に亘って触媒30を攪拌する攪拌部を備えない。このような攪拌部を用いて対象物2と触媒30との攪拌を実施すると、対象物2と触媒30とがかき混ぜられ、対象物2における有機物が表面に露出してしまう場合がある。このような場合、有機物が完全に分解されずに形成される未分解のガス(例えばメタンガスや一酸化炭素ガス等)が発生する場合がある。このような攪拌部を用いた対象物2と触媒30との攪拌を実施しないことで、対象物2の有機物が表面に露出することが抑制されるため、上記有機物の未分解のガスの発生を低減することができる。また、攪拌することが困難な程度の大きさや形状を有する廃基板20において、廃基板20を細かく破砕することなく、そのままの状態で廃基板20を処理することができる。廃基板20を細かく破砕せずにそのままの状態で処理することができるため、廃基板20を容易に処理することができる。
【0084】
上記実施の形態では、電子回路基板のうち、電子部品がより多く搭載されている面が、第3内壁面14に対向するように配置される。このようにすることで、ガスが電子回路基板における面に直接接触し、電子回路基板を効率良く処理することができる。また、電子回路基板における電子部品が自重によって下方側に落下し易くなり、プリント基板に含まれていた金属と電子部品とを分離し易くすることができる。
【0085】
触媒30の顆粒体を構成する材料は、実施の形態1と同様である。実施の形態1と同様に、触媒30として、銅および酸化銅の少なくともいずれか一方が担持されるチタンを含む金属酸化物製の顆粒体を採用してもよい。顆粒体の真円度、安息角度、タップ密度、摩耗率、比表面積および細孔容積は、実施の形態1と同様である。廃基板20は、実施の形態1と同様に、電子回路基板の他、例えば化粧鋼板や樹脂積層板などの板状物であってもよい。さらに、対象物2は、実施の形態1と同様に、廃基板20の他、廃プラスチック、樹脂等の有機物を有する一般廃棄物、産業廃棄物、医療廃棄物および感染性医療廃棄物、実験廃棄物(ラット等の実験動物死体)を処理することができる。
【0086】
(変形例)
反応槽10の第3内壁面14における第3の面143は、X-Y平面に対して傾斜してもよい。
図8は、実施の形態1の処理装置1の変形例を示す概略断面図である。
図8を参照して、第2の面142と第3の面143とが接続する領域のZ軸方向における高さが最も低くなり、第2の面142から離れるにしたがって第3の面143のZ軸方向における高さは高くなる。レール80における第1レール81は、第1直線部811と、第3直線部815と、第1傾斜部812と、第2傾斜部814とによって構成されている。第1傾斜部812および第2傾斜部814の一部の領域は、触媒30によって覆われている。第1傾斜部812と第2傾斜部814とを接続する領域上を駆動部44A,44Bが走行する際に、容器40は触媒30の表面から最も深く埋没することとなる。廃基板20の処理において、当初、有機物が完全に分解されずに形成される未分解のガス(例えばメタンガスや一酸化炭素ガス等)が発生する場合がある。上記変形例における構成を採用することで、上記未分解ガスが触媒30によって分解され、未分解のガスの発生を低減させることができる。
【0087】
(実施の形態3)
次に、本発明の処理装置1の他の実施の形態である実施の形態3について説明する。実施の形態3における処理装置1は、基本的に実施の形態1と同様の構成を有し、同様の効果を奏する。しかしながら、実施の形態3においては、反応槽10およびレール80の構成が実施の形態2の場合と異なっている。以下、実施の形態2と異なる点について説明する。
【0088】
図9および
図10は、実施の形態2における処理装置1の構造を示す概略断面図である。
図9は、
図10のD-Dで切断した場合の断面図である。
図10は、
図9のC-Cで切断した場合の断面図である。
図9および
図10を参照して、反応槽10は、例えば、環状の形状を有する。より具体的には、反応槽10には、環状の空間Uが形成されている。本実施の形態では、反応槽10は、空間Uを取り囲む第1内壁面12、一対の第2内壁面13および第3内壁面14を含む。第1内壁面12および第3内壁面14は、例えばそれぞれ平面環状の形状を有する。一対の第2内壁面13は、例えば、環状の形状を有する。本実施の形態では、反応槽10には、一対の第2内壁面13および第3内壁面14によって囲まれた環状の第1凹部Sが形成されている。第1凹部Sには、触媒30は収容されている。
【0089】
本実施の形態では、レール80における第1レール81は、第4直線部816と、第5直線部818と、第6直線部820と、第3傾斜部817と、第4傾斜部819と、を含む。より具体的には、第4直線部816、第5直線部818および第6直線部820は、それぞれX軸方向に沿って延びる。第4直線部816と、第6直線部820とは、Z軸方向において同じ高さを有する。Z軸方向において、第5直線部818の高さは、第4直線部816の高さよりも高い。第3傾斜部817は、第4直線部816および第5直線部818に接続する。第4傾斜部819は、第5直線部818および第6直線部820に接続する。第3傾斜部817および第4傾斜部819は、それぞれZ軸方向に対して傾斜している。
【0090】
本実施の形態では、第4直線部816、第6直線部820、第2レール82、第3レール83および第4レール84の上を駆動部44A,44Bが走行する際に、容器40は水平方向(X軸方向)に沿って移動する。この際に、容器40は触媒30内に埋没し、対象物2は触媒30によって覆われる。本実施の形態では、第3傾斜部817および第4傾斜部819の上を駆動部44A,44Bが走行する際に、容器40は水平方向(X軸方向)および鉛直方向(Z軸方向)に沿って移動する。本実施の形態では、第5直線部818上を駆動部44A,44Bが走行する際に、容器40は水平方向(X軸方向)に沿って移動する。より具体的には、Z軸方向における容器40の高さは、第4直線部816、第6直線部820、第2レール82、第3レール83および第4レール84の上を駆動部44A,44Bが走行する際の容器40の高さよりも高くなる。この際に、容器40は触媒30から露出することとなる。第5直線部818上を駆動部44A,44Bが走行する際に、容器40内に対象物2(
図3参照)を配置したり、分解物を取り出したりする。この場合、反応槽10における第1内壁面12の第5直線部818に対応する領域において、例えば、容器40内に対象物2を配置したり、分解物を取り出したりできるように開口部(図示せず)が形成されていてもよい。さらに、開閉式の蓋(図示せず)が開口部を閉塞するように取り付けられていてもよい。また、反応槽10における第2内壁面13の第5直線部818に対応する領域において、触媒30からの熱を断熱するために断熱板(図示せず)が取り付けられていてもよい。このようにして、対象物2の処理を繰り返し実施する。
【0091】
上記実施の形態3における処理装置1によっても、実施の形態2と同様に繰り返し対象物2を処理することが容易となり、長期に亘って対象物2を処理することが可能となっている。本実施の形態における処理装置1によれば、実施の形態2における処理装置1よりもコンパクトにすることができる。
【0092】
(実施の形態4)
次に、本発明の処理装置1の他の実施の形態である実施の形態4について説明する。
図11は、実施の形態4における処理装置1の構造を示す概略断面図である。
図11において、α軸方向は鉛直方向であり、β-γ平面はα軸方向に垂直な面である。
図11を参照して、本実施の形態において、処理装置1は、第1部品としての反応器10と、触媒30と、容器40と、羽根部41と、ガス処理部53と、加熱部60と、支持部65と、を備える。
【0093】
本実施の形態において、反応器10は、側壁部101と、下壁部103と、を含む。側壁部101は、例えば、中空円筒状の形状を有する。より具体的には、側壁部101の一方の開口を閉塞するように平板状の下壁部103が配置される。反応器10には、側壁部101および下壁部103によって取り囲まれた第1凹部Sが形成されている。第1凹部S内に触媒30が収容された状態が維持されている。下壁部103の中央には、供給口11が形成されている。本実施の形態において、供給口11は、複数の貫通孔によって構成されている。X軸方向から平面的に見て、供給口11の外形は、円形状の形状を有する。下壁部103には、配管51が設置されている。配管51によって取り囲まれた空間と供給口11とが連通するように、配管51が配置されている。配管51は、ガスの流入路である。したがって、配管51から反応器10の第1凹部S内にガスが矢印L1の向きに流入する。側壁部101の他方の開口には、配管521が設置されている。配管521の反応器10とは反対側の端部には、ガス処理部53が接続されている。側壁部101の外周に沿って、加熱部60が配置されている。本実施の形態では、加熱部60によって、第1凹部S内に収容されている触媒30が加熱される。処理装置1は、第1凹部S内に収容される触媒30全体に亘って触媒30を攪拌する攪拌部を備えない。
【0094】
容器40は、内部に触媒30を収容可能な形状を有する。容器40は、例えば、内部空間Qを有する直方体状の形状を有する。本実施の形態では、容器40は、触媒30を通すことが可能な網目状の形状を有する。より具体的には、容器40は、約550℃の温度で形態を維持可能な金属製(鉄製)である。本実施の形態では、容器40は、周壁部としての第1壁部401と、第2壁部402と、底壁部としての第3壁部403と、段404,405と、を含む。第2壁部402および段落404,405は、第1壁部401から取り外し可能なように取り付けられている。第1壁部401、第2壁部402、第3壁部403および段404,405は、例えば、網目状の形状を有する。より具体的には、第1壁部401、第2壁部402、第3壁部403および段404,405の目開きは、実施の形態1における容器40と同様である。第1壁部401は、例えば、中空直方体状の形状を有する。第2壁部402および第3壁部403は、例えば、平板状の形状を有する。より具体的には、第1壁部401の一方の開口を閉塞するように第2壁部402が配置される。第1壁部401の他方の開口を閉塞するように第3壁部403が配置される。第3壁部403の外縁からZ軸方向に沿って延びるように第1壁部401は配置される。第3壁部403の第1壁部401とは反対側には、羽根部41が配置されている。羽根部41は、第3壁部403から突出するように配置される。羽根部41は、例えば、平板状の形状を有する。羽根部41の大きさは、反応器10の容積や径等に合わせて適宜設定される。本実施の形態では、容器40には、容器40内の内部空間Qを分離する網目状の段404,405がX軸方向に間隔をあけて複数(本実施の形態では2つ)配置される。本実施の形態における容器40には、3つの廃基板20を配置することができる。
【0095】
本実施の形態では、支持部65は、第1モーター47と、プレート48と、コンベア90と、を含む。より具体的には、コンベア90は、第2モーター91と、第2部品としてのベルト93と、を含む。第2モーター91における軸部92の端部には、ベルト93が設置されている。ベルト93は、長手方向の両端が互いに接続される帯状の形状を有する。ベルト93は、α軸方向に沿って延びるように配置される。平板状のプレート48は、α軸方向に交差(直交)するようにベルト93に固定されている。第2モーター91が駆動することで、ベルト93はα軸方向に沿って移動すると共に、プレート48もα軸方向に沿って移動する。第1モーター47は、プレート48上に設置されている。本実施の形態では、第1モーター47における軸部46の先端には、容器40の第2壁部402が接続されている。より具体的には、第2壁部402のほぼ中央の領域に軸部46が接続されている。第1モーター47を駆動させると、容器40がα軸方向に垂直なβ-γ平面に沿って回動するように、第1モーター47が配置される。第1モーター47を駆動させることで、容器40は回動し、羽根部41もβ-γ平面に沿って回動する。したがって、容器40に取り付けられている羽根部41は回動可能である。
【0096】
次に、本実施の形態における処理装置1を用いて、対象物2を処理する方法について説明する。
図2を参照して、まず、工程(S10)として、対象物2を配置する工程が実施される。
図11を参照して、対象物2としての廃基板20が準備される。廃基板20は、実施の形態1と同様の面積を有する電子回路基板である。廃基板20は、実施の形態1と同様にして、容器40内に配置されている。より具体的には、第2壁部402および段落404,405が、1壁部401から取り外された状態で、廃基板20が配置される。そして、段404を第1壁部401に取り付けられた後に、廃基板20が配置される。さらに、段405が第1壁部104に取り付けられた後に、廃基板20が配置される。このようにして、3つの廃基板20が容器40内に配置される。
【0097】
容器40に廃基板20が収容された状態で、第2モーター91を駆動させ、ベルト93をα軸方向に沿って移動させる。ベルト93がα軸方向に沿って移動することで、容器40がα軸方向に沿って移動する。例えば、ベルト93の進行方向Jにおける矢印の向きに容器40を移動させる場合について説明する。第1モーター47を駆動させ、容器40を回動し、羽根部41をβ-γ平面に沿って回動させる。このようにすることで、容器40を触媒30内に埋没させることが容易となる。この状態では、容器40は、触媒30に接触していない。そして、容器40が触媒30によって覆われるように、容器40を進行方向Jにおける矢印の向きに移動させる。
図12は容器40および廃基板20が触媒30によって覆われている状態を示す概略図である。
図12を参照して、容器40は第1凹部S内に収容される触媒30内に埋没し、廃基板20は触媒30によって覆われる。廃基板20は、触媒30の表面から例えば50mm以上埋没させる。この際に、容器40は、触媒30に接触している状態ととなり、廃基板20は反応槽10内に配置されることとなる。
【0098】
次に、工程(S20)として、有機物を分解する工程が実施される。より具体的には、廃基板20は、触媒30によって覆われ、廃基板20における有機物は触媒30に接触している状態が維持される。そして、酸素を含むガスを第1凹部S内に流入させ、触媒30を480℃以上550℃以下の温度に維持する。第1凹部S内に流入されるガスは、実施の形態1と同様にして第1凹部内に流入される。第1凹部内Sに流入されるガスの流速(m/min)や、触媒30の単位質量(g)当たりのガスの流量(l/min)は、実施の形態1と同様である。触媒30の温度は、実施の形態1と同様である。反応器10における外壁側から加熱部60によって加熱されることで、反応器10内における触媒30は所定の温度に維持される。本実施の形態では、工程(S20)において、第1凹部S内に収容される触媒30全体に亘って触媒30を攪拌する工程が実施されない。
【0099】
ベルト93の進行方向Jにおける矢印の向きとは反対の向きに容器40を移動させ、容器40が触媒30から取り出される。そして、容器40から分解物を取り出したり、容器40内に再び廃基板20を配置したりする。以上のようにして、廃基板20の処理を繰り返し実施する。
【0100】
上記実施の形態では、容器40を回動させることで羽根部41が回動する場合について説明したが、これに限られず、容器40は回動せずに、羽根部41自身が回動するようにしてもよい。上記実施の形態における工程(S20)において、容器40は回動可能であってもよい。より具体的には、容器40をβ-γ平面に沿って回動させてもよい。この場合、容器40に取り付けられている羽根部41や、容器40自身によって触媒30が攪拌されないように、容器40を回動させる。例えば、触媒30が攪拌されないように、適切な大きさや突出長さを有する羽根部41が用いられると共に、回転速度が適宜設定される。また、容器40は、β軸方向に沿って往復するように移動させてもよいし、矢印βの向きや反対の向きにだけに移動させてもよい。さらに、容器40は、触媒30に対して振動させてもよい。このような場合、触媒30が攪拌されないように、容器40を移動もしくは振動させる。例えば、触媒30が攪拌されないように容器40の移動速度や振動の大きさが適宜設定される。容器40が触媒30によって覆われた状態で、容器40を運動させる工程は、廃基板20における有機物を分解する工程の全体に亘って同時に実施されてもよいし、廃基板20における有機物を分解する工程の一部で実施されるようにしてもよい。なお、廃基板20における有機物を分解する工程全体に亘って触媒30に対して廃基板20を運動させなくてもよい。
【0101】
上記実施の形態では、側壁部101は、中空円筒状の形状を有する場合について説明したが、これに限られず、側壁部101は、中空状であると共に角柱状の外形を有してもよい。例えば、側壁部101が、中空直方体状の形状を有する場合、側壁部101のα軸方向に垂直な断面は、長方形状であることが好ましい。このような形状を有することで、長辺に沿って、容器40を移動させることができる。長辺の長さをより長くすることで、廃基板20における有機物を分解する処理時間をより長くすることができる。また、上記実施の形態における側壁部101の内壁は、下壁部103から離れるにしたがって内径が大きくなるテーパー状(曲面状)の形状を有してもよい。さらに、上記実施の形態における側壁部101の内壁は、上壁部102から離れるにしたがって内径が大きくなるテーパー状(曲面状)の形状を有してもよい。上記実施の形態では、供給口11の外形は、X軸方向から平面的に見て円形状の形状を有する場合について説明したが、これに限られず、供給口11の外形は、X軸方向から平面的に見て長方形状の形状であってもよい。上記実施の形態では、1つの配管51が供給口11に接続される場合について説明したが、これに限られず、複数のノズルが下壁部103に設置され、複数のノズルが第1凹部S内に露出するように下壁部103に取り付けられてもよい。このように複数のノズルを設けることで、特定の領域における触媒30のみを微動させることが容易となる。上記実施の形態では、第1モーター47における軸部46が、容器40の第2壁部402のほぼ中央に取り付けられる場合について説明したが、これに限られず、軸部46の先端が第2壁部402の外縁の一部に取り付けられてもよい。さらに、軸部46の中心軸周りに容器40が回動するように、軸部46の外周面が容器40の第1壁部401に取り付けられてもよい。
【0102】
上記実施の形態4における処理装置1によっても、実施の形態2と同様に繰り返し対象物2を処理することが容易となり、長期に亘って対象物2を処理することが可能となっている。
【実施例0103】
[実験1]
本実施の形態における処理方法により、対象物2における有機物を分解する実験を行った。実験の手順は、以下の通りである。まず、本実験において用いた触媒30としての顆粒体を下記の方法により製造した。硫酸法による酸化チタン製造工程のうち、加水分解工程から得られたチタン水酸化物のスラリーを濾過、水洗し、これをリパルプして、スラリーAを得た。このスラリーAにゾル化剤として硝酸を加え、チタン酸化物のゾルBを得た。更に、このゾルBの一部を100℃に加熱、乾燥し、乾燥ゲルとし、これを電気炉中、500℃で3時間焼成して、酸化チタン焼成物Cを得た。この酸化チタン焼成物Cを粉砕し、得られた粉砕物を(株)ダルトン製高速撹拌造粒機SPG-25型を用いて、撹拌羽250rpm、高速チョッパ3000rpmの条件下、水で5倍希釈した前記ゾルBを噴霧しながら造粒して、酸化チタン粒子を得た。この酸化チタン粒子を100℃で3時間乾燥し、次いで、600℃で焼成し、その後ステンレス製金網からなる標準篩15メッシュ(線径0.5mm、目開き1.19mm)と150メッシュ(線径0.065mm、目開き0.104mm)を用いて篩分けした。15メッシュ下(通過分)および150メッシュ上(残留分)を本実験で用いる顆粒体とした。このようにして酸化チタン製の顆粒体(第1顆粒体)を得た。
【0104】
得られた第1顆粒体の粒度分布は、以下の通りであった。0.2mm以上0.35mm未満が、0質量%であり、0.35mm以上0.5mm未満が、1質量%であり、0.5mm以上0.85mm未満が、97質量%であり、0.85mm以上1.2mm未満が、2質量%であった。第1顆粒体のBET法による比表面積は、35m2/gであった。第1顆粒体の滑り始める角度が、0.5度以上15度以下であり、全ての第1顆粒体が滑り終わる角度が2度以上30度以下であった。第1顆粒体の水銀圧入法による細孔容積は、0.1ml/g以上0.8ml/g以下であった。第1顆粒体のタップ密度は、1g/ml以上1.8g/ml以下であった。第1顆粒体の摩耗率は、2質量%以下であった。
【0105】
次に、得られた第1顆粒体2100gを
図1に示す反応器10内に配置した。触媒30は、X軸方向における高さが約100mmとなるように反応器10内に配置された。プリント基板の厚み1.4mmであり、縦約3cm×横約3cmの面積を有する電子回路基板を廃基板20として準備した。電子回路基板を容器40に収容し、容器40を触媒30の表面から約30mm程度(電子回路基板は約5cm程度)埋没させ、電子回路基板の表面を触媒30が覆うように電子回路基板を配置した。容器40をY軸方向に沿って往復させるように繰り返し容器40を約15分間移動させた。空気の流速が3.4m/min、加熱装置の設定温度が500℃(反応器10内における触媒30の温度は480℃~540℃の範囲となった)の条件で、反応器10内における第1顆粒体全体に亘って第1顆粒体を攪拌する工程を実施することなく、電子回路基板の処理を実施し、分解物を得た。処理前の電子回路基板と分解物とにおける質量の減量率(質量%)を測定した。ここで、減量率(質量%)とは、処理前の電子回路基板の質量に対する処理前の電子回路基板の質量から分解物の質量を減じた値の割合(質量%)をいう。さらに、分解物の状態を目視にて観察した。比較のために設定温度を400℃(反応器10内における触媒30の温度は400℃~440℃の範囲となった)とした以外は、上記と同様にして電子回路基板の処理を実施した。処理前の電子回路基板と分解物とにおける質量の減量率(質量%)を同様に測定した。上記の減量率の測定結果を表1に示す。
【0106】
【0107】
表1を参照して、設定温度を400℃とした場合(触媒30の温度範囲が400℃~440℃)に比べて、設定温度を500℃とした場合(触媒30の温度範囲が480℃~540℃)には、減量率が約3倍上昇した。したがって、反応器10内における触媒30の温度を480℃以上550℃以下とすることで、電子回路基板における有機物の分解を向上させることができる。
図13は、電子回路基板の処理前の状態を示す写真である。
図14は、加熱装置の設定温度を500℃とした場合の分解物の状態を示す写真である。
図13および
図14を参照して、電子回路基板におけるプリント基板の樹脂が分解されていた。さらに、プリント基板に含まれていた金属(例えば銅箔)を有する処理物と、電子部品とを分けて回収することができた。
【0108】
[実験2]
次に、廃基板20として実装部品を有さないガラスエポキシ基板を用い、空気の流速を0.5m/min、3.4m/min、5m/min、10m/minと変化させ、それ以外は実験1と同様にして実験を行った。厚みが1.5mmであり、縦約6cm×横約4cmの面積を有するガラスエポキシ基板を用いた。各流速に対する減量率の測定結果を表2に示す。
【0109】
【0110】
表2を参照して、空気の流速が、0.5m/min以上200m/min以下の範囲内では、減量率が20%以上となった。空気の流速が3m/min以上の場合、減量率が35%以上となった。したがって、空気の流速の下限は、3m/minであることが好ましい。空気の流速が5m/minの場合と比較して、空気の流速が10m/minの場合は、同程度の減量率となった。したがって、空気の流速の上限は、10m/minであることが好ましい。
【0111】
[実験3]
次に、得られた第1顆粒体1600gを
図1に示す反応器10内に配置した。鋼板と、ポリエチレンテレフタレートフィルムと、アルミニウム箔とが積層された樹脂化粧鋼板(縦約5cm×横約5cm)を廃基板20として準備した。樹脂化粧鋼板を触媒30の表面から約50mm埋没させ、樹脂化粧鋼板の表面を触媒30が覆うように樹脂化粧鋼板を配置した。樹脂化粧鋼板をY軸方向に沿って往復させるように約60秒移動させた。空気の流速が2.3m/min、設定温度が500℃の条件で、反応器10内における第1顆粒体全体に亘って第1顆粒体を攪拌する工程を実施することなく、樹脂化粧鋼板の処理を実施した。処理後の樹脂化粧鋼板の状態を目視にて観察した。その結果、樹脂化粧鋼板におけるポリエチレンテレフタレートフィルムは分解され、鋼板とアルミニウム箔とが残存した。
【0112】
[実験4]
次に、樹脂化粧鋼板の処理条件と同様にして、樹脂が付着する金属製の成型機押出スクリュー部品(縦約4cm×横約4cm×高さ約5cm)を対象物2として処理を実施した。その結果、成型機押出スクリュー部品に付着する樹脂は分解され、成型機押出スクリュー部品のみが残存した。
【0113】
[実験5]
次に、反応器10内における触媒30全体に亘って触媒30を攪拌することによる触媒30の摩耗の度合いを確認する実験を行った。実験の手順は以下のとおりである。
【0114】
まず、第1顆粒体800gを
図1に示す反応器10内に配置した。反応器10における第1顆粒体全体に亘って第1顆粒体を攪拌する工程を実施せずに、加熱装置による加熱も行わず、流速3.4m/minの条件で空気を反応器10内に10時間流入した。処理を実施したことによる第1顆粒体の摩耗度を測定した。第1顆粒体の摩耗度の測定手順は、以下の通りである。まず、処理後の第1顆粒体について、目開き250μmの篩によって篩分けを行った。そして、篩上に残存した第1顆粒体の質量(V)を測定した。処理前の第1顆粒体の質量(V
0)から篩上に残存した第1顆粒体の質量(V)を減じた値(V
0-V)の処理前の第1顆粒体の質量(V
0)に対する割合(質量%)を算出した。比較のために、攪拌羽を用いて反応器10における第1顆粒体全体に亘って第1顆粒体を攪拌し、反応器10内に流入される空気の流速を2m/minとした以外は、上記と同様にして処理を実施した。攪拌羽の回転速度は、60rpmに設定された。同様に、第1顆粒体の摩耗度を測定した。測定結果を表3に示す。
【0115】
【0116】
表3を参照して、第1顆粒体の攪拌を行った場合と比較して、第1顆粒体の攪拌を行わなかった場合には、第1顆粒体の摩耗度が大きく低下した。したがって、触媒30の攪拌を行わないことで、触媒30の摩耗を低減することができる。
【0117】
[実験6]
次に、反応器10内における触媒30全体に亘って触媒30を攪拌する場合と、上記攪拌を実施しない場合とで、未分解のガスが発生する度合いを比較する実験を行った。実験の手順は、以下の通りである。
【0118】
まず、第1顆粒体2500gを
図1に示す反応器10内に配置した。ペットボトルに取り付けられていたポリプロピレン製のキャップを準備し、触媒30の表面から約80mm埋没させた。この状態が維持され、空気の流速が1.7m/min、設定温度が500℃および処理時間が5分の条件で、キャップの処理を実施した。キャップの処理は、反応器10内における第1顆粒体全体に亘って第1顆粒体を攪拌する工程を行わずに実施された。キャップの処理を実施する際に排出されるガス(5リットル)において、未分解のガスの発生割合を測定した。測定には、検知管式気体測定器を用いた。測定器は、株式会社ガステック製、商品名「GV-100S」を用いた。検知管は、株式会社ガステック製、商品名「1L」、「103」、「105」、「2HH」を用いた。比較のために、反応器10内にキャップを入れ、攪拌羽を用いて反応器10内の第1顆粒体全体に亘って第1顆粒体を攪拌することで、キャップと第1顆粒体との攪拌を行った。空気の流速が3.4m/min、設定温度が500℃および処理時間が2分の条件で、キャップの処理を実施した。キャップの処理を実施する際に排出されるガス(2リットル)において、未分解のガスの発生割合を測定した。測定結果を表4に示す。表中において、未分解のガスのそれぞれの割合と共に排出されるガスの体積から換算した未分解のガスの体積も併せて記載している。表4において、低級炭化水素として、例えば、アセチレン、イソブタン、イソペンタン、エチレン、ブタン、n-ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、プロパン等があげられる。高級炭化水素として、例えば、オクタン、デカン、ノナン、ヘキサン、ヘプタン等があげられる。
【0119】
【0120】
表4を参照して、反応器10内における触媒30全体に亘って触媒30を攪拌する工程を実施した場合と比較して、上記攪拌を実施しない場合にはキャップが完全に分解されずに形成される未分解のガス(一酸化炭素、低級炭化水素や高級炭化水素)の割合や体積が低減されている。
【0121】
以上の結果から、本発明に係る対象物2の処理方法によれば、反応器10内における触媒30全体に亘って触媒30を攪拌する工程を実施しなくても、対象物2における有機物を分解することができる。このため、触媒30の摩耗を低減しつつ、対象物2における有機物を容易に分解することができる。したがって、長期にわたって対象物2を処理することができると共に対象物2を容易に処理することができる。
【0122】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 処理装置、2 対象物、10 反応器,反応槽、11 供給口、12 第1内壁面、13 第2内壁面、14 第3内壁面、15 貫通孔、20 廃基板、21 面、22 面、30 触媒、31 接続部、40 容器、41 羽根部、42 接続部、43 接続部、44A 駆動部、44B 駆動部、46 軸部、47 第1モーター、48 プレート、50 供給部、51 配管、52 配管、53 ガス処理部、60 加熱部、65 支持部、80 レール、81 第1レール、82 第2レール、83 第3レール、84 第4レール、90 コンベア、91 第2モーター、92 軸部、93 ベルト、101 側壁部、102 上壁部、103 下壁部、141 第1の面、142 第2の面、143 第3の面、144 第4の面、145 第5の面、201 試料容器、202 撹拌機、203 軸体、204 撹拌羽、401 第1壁部、402 第2壁部、403 第3壁部、404 段、405 段、411 第1外壁、412 第2外壁、413 第3外壁、414 第4外壁、415 第5外壁、416 つば部、417 本体部、418 突起、511 第1配管、512 第2配管、513 分岐点、521 配管、522 配管、811 第1直線部、812 第1傾斜部、813 第2直線部、814 第2傾斜部、815 第3直線部、816 第4直線部、817 第3傾斜部、818 第5直線部、819 第4傾斜部、820 第6直線部。