(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163013
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】グリコシル化免疫チェックポイントタンパク質に特異的に結合する抗体を選択する方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20221018BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20221018BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221018BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20221018BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20221018BHJP
A61K 49/16 20060101ALI20221018BHJP
A61K 51/10 20060101ALI20221018BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221018BHJP
A61K 31/537 20060101ALI20221018BHJP
A61K 38/07 20060101ALI20221018BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20221018BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20221018BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20221018BHJP
A01K 67/033 20060101ALN20221018BHJP
C40B 40/10 20060101ALN20221018BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20221018BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
A61P35/00
A61K47/68
A61K49/00
A61K49/16
A61K51/10 200
A61K51/10 100
A61K39/395 L
A61K39/395 C
A61K31/537
A61K38/07
A61K38/08
G01N33/53 D
C12P21/08
A01K67/033 501
C40B40/10
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022110518
(22)【出願日】2022-07-08
(62)【分割の表示】P 2019503385の分割
【原出願日】2017-03-24
(31)【優先権主張番号】62/314,940
(32)【優先日】2016-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/361,298
(32)【優先日】2016-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518345837
【氏名又は名称】エスティーキューブ アンド カンパニー,インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100181168
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智裕
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ステファン エス.
(72)【発明者】
【氏名】フン,ミン-チエ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】非グリコシル化免疫チェックポイントタンパク質(ICP)と比較して、グリコシル化ICPに特異的に結合する抗体を産生およびスクリーニングする方法を提供する。
【解決手段】本抗体は、グリコシル化ICPの特異的エピトープを認識し、グリコシル化ICPとそのリガンド、例えば別のICPとの結合を防止または遮断することができ、ヒトPD-L1/PD-1相互作用によって例証される、免疫抑制を引き起こしうる2つのタンパク質の間の相互作用を阻害することができる。特定の例として、PD-L1またはPD-1にそれぞれ特異的に結合して、PD-L1/PD-1相互作用を阻害する抗グリコシル化PD-L1または抗グリコシル化PD-1抗体を生成するために、その細胞外ドメイン内にグリコシル化アミノ酸残基を含むヒトPD-L1およびPD-1ポリペプチドを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコシル化免疫チェックポイントタンパク質(ICP)抗原に優先的に結合する抗体
を同定および単離する方法であって、
a)グリコシル化ICP抗原への特異的結合について抗体集団をスクリーニングするステ
ップと、
b)前記グリコシル化ICP抗原より前記ICP抗原の非グリコシル化形態への結合が弱
いことについて、前記グリコシル化ICPに特異的に結合する抗体をスクリーニングする
ステップと、
c)前記ICPの非グリコシル化形態より高い親和性で前記グリコシル化ICPに結合す
る抗体を単離するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記抗体集団が、グリカン部分への結合によって改変された少なくとも1つのグリコシ
ル化アスパラギン(N)アミノ酸を含むICPの少なくとも7連続アミノ酸の断片を含む
グリコシル化ICP抗原またはそのペプチドによって免疫した動物から得たモノクローナ
ル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スクリーニングステップの前に、
a)動物において抗グリコシル化ICP特異的抗体の免疫応答を誘発するために有効な量
で、グリカン部分への結合によって改変された少なくとも1つのグリコシル化アスパラギ
ン(N)アミノ酸を含むICPの少なくとも7連続アミノ酸の断片を含むグリコシル化I
CP抗原またはそのペプチドを、レシピエント動物に投与するステップと、
b)抗体集団を分泌するハイブリドーマ集団を前記動物から産生するステップと
をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記動物がマウスまたはラットである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記動物が、ヒト免疫グロブリンを発現する遺伝子についてトランスジェニックである
、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体集団が、ファージディスプレイ抗体ライブラリである、請求項1に記載の方法
。
【請求項7】
前記ファージ抗体ライブラリが、ヒト抗体レパートリーライブラリである、請求項6に
記載の方法。
【請求項8】
前記抗体を、ICP抗原の非グリコシル化形態への抗体の結合によって示されるKdの
半分より小さいKdでのグリコシル化ICP抗原への結合について試験する、請求項1か
ら7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体を、ICP抗原の非グリコシル化形態への抗体の結合によって示されるKdの
少なくとも5倍小さいKdでのグリコシル化ICP抗原への結合について試験する、請求
項8に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体を、ICP抗原の非グリコシル化形態への抗体の結合によって示されるKdの
半分より小さいKdでのグリコシル化ICP抗原への結合について試験する、請求項9に
記載の方法。
【請求項11】
蛍光標識によって直接または間接的に標識された前記抗体を、ICP抗原の非グリコシ
ル化形態を発現する細胞への抗体の結合によって示される平均蛍光強度(MFI)値より
少なくとも2倍から少なくとも20倍大きい、グリコシル化ICP抗原を発現する細胞へ
の結合についてのMFI値で、グリコシル化ICP抗原への結合について試験する、請求
項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体を、ICP抗原の非グリコシル化形態への前記抗体の結合によって示されるM
FI値より少なくとも3倍から少なくとも5倍大きい、グリコシル化ICP抗原への結合
についてのMFI値で、グリコシル化ICP抗原への結合について試験する、請求項11
に記載の方法。
【請求項13】
グリコシル化ICP抗原またはそのペプチドが腫瘍細胞またはがん細胞上に発現し、I
CPリガンドが免疫細胞上に発現する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
グリコシル化ICP抗原またはそのペプチドが免疫細胞上に発現し、ICPリガンドが
腫瘍細胞またはがん細胞上に発現する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記免疫細胞がエフェクターT細胞またはナチュラルキラー細胞(NK細胞)である、
請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記ICPがヒトICPである、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
グリコシル化ICP抗原が、CD47、CD96、TIM-3、LAG-3、CEAC
AM1、BTN1A1、セマフォリン4D、ブチロフィリン様2(BTNL2)、BTL
A、PD-1およびPD-L1からなる群から選択される、請求項1から16のいずれか
一項に記載の方法。
【請求項18】
前記グリコシル化ICPがPD-L1である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記グリコシル化ICPがPD-1である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記グリコシル化ICPがCD47である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記グリコシル化ICPがCD96である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記グリコシル化ICPがTIM-3である、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記グリコシル化ICPがLAG-3である、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記グリコシル化ICPがCEACAM1である、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記グリコシル化ICPがBTN1A1である、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記グリコシル化ICPがセマフォリン4Dである、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記グリコシル化ICPがBTNL2である、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
前記グリコシル化ICPがBTLAである、請求項17に記載の方法。
【請求項29】
ステップ(a)および/またはステップ(b)でのスクリーニングがフローサイトメト
リー分析によって行われる、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記ICPの、その同起源のICP結合パートナーへの結合の阻害について前記抗体を
試験するステップをさらに含む、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記抗体の相補性決定領域(CDR)を含むアミノ酸を同定するステップ、およびヒト
化抗体を産生するためにCDR周囲のアミノ酸配列をヒト化するステップをさらに含む、
請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
ヒト化抗体を組み換え発現するステップをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ヒトグリコシル化ICP抗原が、ヒトPD-L1の少なくとも7連続アミノ酸の断
片を含む単離ポリペプチドであり、前記ポリペプチドが、ヒトPD-L1のN35、N1
92、N200、またはN219位に対応する少なくとも1つのアミノ酸を含み、PD-
L1のN35、N192、N200、またはN219位に対応するアミノ酸の少なくとも
1つがグリコシル化されている、請求項2から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記単離ポリペプチドが、ヒトPD-L1の少なくとも8~20連続アミノ酸を含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項35】
前記単離ポリペプチドが、そのアミノまたはカルボキシ末端で免疫原性ポリペプチドに
融合またはコンジュゲートされる、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記ヒトグリコシル化ICP抗原が、ヒトPD-1の少なくとも7連続アミノ酸の断片
を含む単離ポリペプチドであり、前記ポリペプチドが、ヒトPD-1のN49、N58、
N74、および/またはN116位に対応する少なくとも1つのアミノ酸を含み、PD-
1のN49、N58、N74、および/またはN116位に対応するアミノ酸の少なくと
も1つがグリコシル化されている、請求項2から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記単離ポリペプチドがヒトPD-1の少なくとも8~20連続アミノ酸を含む、請求
項36に記載の方法。
【請求項38】
前記単離ポリペプチドが、そのアミノまたはカルボキシ末端で免疫原性ポリペプチドに
融合またはコンジュゲートされる、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
前記抗体のエピトープと重複しないヒトグリコシル化ICPのエピトープに結合する二
次抗体の抗原結合ドメインを含むscFvを、前記抗体の重鎖および/または軽鎖のN-
末端に連結するステップをさらに含む、請求項1から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
請求項1から39のいずれか一項に記載の方法に従って単離された単離抗体。
【請求項41】
抗グリコシル化PD-L1抗体である、請求項40に記載の単離抗体。
【請求項42】
抗グリコシル化PD-1抗体である、請求項40に記載の単離抗体。
【請求項43】
ヒト化またはヒト抗体である、請求項40から42のいずれか一項に記載の単離抗体。
【請求項44】
組み換え抗体である、請求項40から43のいずれか一項に記載の単離抗体。
【請求項45】
IgM、IgG1、IgG2、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgG4からなる
群から選択されるアイソタイプである、請求項40から44のいずれか一項に記載の単離
抗体。
【請求項46】
Fab’、F(ab’)2、F(ab’)3、一価scFv、二価scFv、二重パラ
トープ性またはシングルドメイン抗体である、請求項39から45のいずれか一項に記載
の単離抗体。
【請求項47】
二重特異性または二重パラトープ性抗体である、請求項40から46のいずれか一項に
記載の単離抗体。
【請求項48】
造影剤、化学療法剤、毒素、抗新生物剤、または放射性核種にコンジュゲートされる、
請求項40から47のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項49】
抗新生物剤とコンジュゲートして抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を産生する、請
求項48に記載の単離抗体。
【請求項50】
前記抗新生物剤が、チューブリン重合化を阻害する薬剤である、請求項49に記載の単
離抗体。
【請求項51】
前記薬剤がメイタンシノイドまたはアウリスタチンである、請求項50に記載の単離抗
体。
【請求項52】
前記メイタンシノイドが、DM1(N2’-デアセチル-N2’-(3-メルカプト-
1-オキソプロピル)-メイタンシン)、またはDM4(N2’-デアセチル-n2’-
(4-メルカプト-4-メチル-1-オキソペンチル)-6-メチルメイタンシンである
、請求項51に記載の単離抗体。
【請求項53】
前記アウリスタチンがモノメチルアウリスタチンE(MMAE)またはモノメチルアウ
リスタチンF(MMAF)である、請求項50に記載の単離抗体。
【請求項54】
前記アウリスタチンがMMAEである、請求項53に記載の単離抗体。
【請求項55】
前記抗体が、マレイミドおよびカプロン酸(MC)結合基に化学的にコンジュゲートさ
れ、これがカテプシン切断可能リンカーに化学的にコンジュゲートされ、これがパラアミ
ノ安息香酸(PAB)スペーサーに化学的にコンジュゲートされ、これがMMAEに化学
的にコンジュゲートされ、それによってADCが形成された、請求項54に記載の単離抗
体。
【請求項56】
前記カテプシン切断可能リンカーがバリン-シトルリン(vc)である、請求項55に
記載の単離抗体。
【請求項57】
細胞に内在化される抗glycICP抗体を含むADCであって、前記抗体は細胞傷害
薬に化学的にカップリングされたものである、ADC。
【請求項58】
前記細胞傷害薬が、チューブリン重合化を阻害する薬剤である、請求項57に記載のA
DC。
【請求項59】
前記薬剤がメイタンシノイドまたはアウリスタチンである、請求項58に記載のADC
。
【請求項60】
前記メイタンシノイドがDM1またはDM4である、請求項59に記載のADC。
【請求項61】
前記アウリスタチンがMMAEまたはMMAFである、請求項59に記載のADC。
【請求項62】
前記アウリスタチンがMMAEである、請求項61に記載のADC。
【請求項63】
前記抗体が、MC結合基に化学的にコンジュゲートされ、これがカテプシン切断可能リ
ンカーに化学的にコンジュゲートされ、これがPABスペーサーに化学的にコンジュゲー
トされ、これがMMAEに化学的にコンジュゲートされ、それによってADCが形成され
た、請求項57に記載のADC。
【請求項64】
前記カテプシン切断可能リンカーがバリン-シトルリン(vc)である、請求項63に
記載のADC。
【請求項65】
切断可能リンカーを介してMMAEに化学的にカップリングされた抗glycICP抗
体を含むADC。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子提出され、参照により全体が本明細書に組み
込まれる配列表を含む。2017年3月23日に作製された前記ASCIIのコピーは、
名称が24258_105006PCT_SL.txtであり、大きさは31,652バ
イトである。
【0002】
本明細書に示す方法は、全般的に分子生物学、医学、および腫瘍学の分野に関する。よ
り詳しくは、グリコシル化免疫チェックポイントタンパク質に特異的かつ優先的に結合す
る抗体を作製、選択、およびスクリーニングする方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
免疫チェックポイント経路は、免疫チェックポイント分子(ポリペプチドおよびペプチ
ド)を有する免疫細胞間の相互作用を伴い、正常な条件下では自己寛容を維持し、抗菌免
疫応答の際の側副組織損傷を制限する。がんおよび腫瘍細胞は、免疫による破壊を逃れる
ためにこれらの経路を利用することができる。腫瘍細胞と免疫T細胞との相互作用を遮断
するため、抗腫瘍免疫を提供するため、および持続的ながん縮小治療を媒介するために、
抗CTLA-4、抗PD-1、抗PD-L1抗体などの免疫チェックポイントを中断する
ための薬物が開発および試験中である。免疫チェックポイント経路の生物学は複雑であり
、単独または併用で使用されるチェックポイント遮断薬の完全な活性スペクトルは、現在
、集中的な研究の対象である(S. Topalian et al., 2015, Cancer Cell, 27(4): 450-46
1)。
【0004】
がん疾患の病因における交絡事象は、腫瘍が、特に腫瘍抗原に対して特異的であるT細
胞に対する免疫耐性の主要なメカニズムとして、ある特定の免疫チェックポイント経路を
組み込むことができるという点である。免疫チェックポイントの多くは、リガンド-受容
体相互作用によって開始されることから、それらは、抗体によって容易に遮断することが
できるか、またはリガンドもしくは受容体の組み換え形態によって調節することができる
。例えば、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)抗体は、米国食品医薬品局(
FDA)によって承認された最初の免疫治療剤であった。プログラム細胞死タンパク質1
(PD-1)などの追加の免疫チェックポイントタンパク質の遮断剤に関する知見から、
永続的な臨床応答を生じる可能性を有する抗腫瘍免疫を増強する広く多様な機会があるこ
とが示される(D. Pardoll, 2012, Nature Reviews Cancer, 12:252-264)。PD-1に
対する治療抗体であるKEYTRUDA(登録商標)ペンブロリズマブおよびOPDIV
O(登録商標)ニボルマブが、米国FDAによって承認されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医学界において、免疫チェックポイント分子、特に腫瘍細胞上で安定に発現して免疫T
細胞上のリガンドに結合する免疫チェックポイント分子を特異的に認識して結合し、この
ようにして腫瘍細胞に対するT細胞活性の免疫抑制を促進する抗体を生成して選択する方
法が必要である。同様に、腫瘍細胞を破壊して、最終的にがんを処置するために必要であ
るT細胞応答の免疫抑制を防止または阻害するために、エフェクターT細胞上の同起源の
リガンドと腫瘍細胞上の免疫チェックポイント分子との相互作用を遮断して阻害するため
に、そのような方法によって産生される新規の特異的抗体も必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、腫瘍細胞上に発現する、例えばPD-L1などの、本明細書において「
ICP」と省略する免疫チェックポイントタンパク質のグリコシル化が、免疫エフェクタ
ー細胞上の同起源のリガンド、例えばPD-1への結合を促進または増強し、それによっ
て腫瘍細胞に対するT細胞活性の抑制を増加させること、およびPD-L1などのICP
のグリコシル化が同様に、細胞表面上のそのような免疫チェックポイントタンパク質の発
現も安定化させることができることを発見した。本発明者らは、非グリコシル化ヒトIC
Pと比較してPD-L1ポリペプチド(CD274、PDCD1L1、またはB7-H1
としても知られる)またはPD-1ポリペプチド(CD279としても知られる)などの
グリコシル化ヒトICPに優先的に結合し(すなわち、非グリコシル化形態よりICPの
グリコシル化形態に高い親和性で結合し)、そのような特異的結合によって、例えば腫瘍
細胞上のICPと、例えばT細胞またはナチュラルキラー細胞(NK細胞)などの免疫エ
フェクター細胞上のその同起源のリガンドとの相互作用、またはその逆を防止または阻害
する抗体を産生および同定する方法を開発した。本明細書における方法は、グリコシル化
ICPに選択的であり、かつ優先的に結合し、ICP相互作用経路を通してのそのような
腫瘍細胞とT細胞の相互作用に起因する免疫抑制作用を防止、低減、遮断、または阻害す
るための有効なICP阻害剤として役立つ抗体を提供する。用語「免疫チェックポイント
タンパク質」および「免疫チェックポイントポリペプチド」(同様に「免疫チェックポイ
ント分子」とも呼ばれる)は、本明細書において「ICP」と省略されると理解される。
用語「グリコシル化ICP」は、本明細書において「glycICP」と省略される。
【0007】
本明細書において、免疫系の細胞および/または腫瘍細胞に存在しうる、ICP標的抗
原(本明細書における抗glycICP抗体)の非グリコシル化形態またはグリコシル化
変種形態と比較して、グリコシル化ICP標的抗原を選択的に認識し、かつ優先的に結合
する単離抗体を産生およびスクリーニング、または選択する方法が提供される。いくつか
の例において、グリコシル化ICPは、ICPの野生型または天然に存在する形態(すな
わち、ICP WT)でありえて、このためICP WTは、抗体産生およびスクリーニ
ングのための標的抗原として役立つ。実施形態において、当技術分野で公知の方法、例え
ばハイブリドーマ技術、抗体レパートリーのファージディスプレイライブラリ、親和性成
熟抗体等によって産生されたクローン化抗体集団を、ICP標的抗原の非グリコシル化形
態と比較してICP標的抗原のグリコシル化形態に結合するそれらの抗体についてスクリ
ーニングおよび選択してもよい。
【0008】
特定の実施形態において、グリコシル化ICP抗原は、ヒトグリコシル化PD-L1ポ
リペプチド(CD274、PDCD1L1、またはB7-H1としても知られる)である
。別の特定の実施形態において、グリコシル化タンパク質抗原は、ヒトグリコシル化PD
-1ポリペプチド(CD279としても知られる)である。別の特定の実施形態において
、グリコシル化ICP抗原は、ヒトグリコシル化PD-L2ポリペプチドである。本明細
書において使用される限り、「PD-L1」は、PD-L1タンパク質、ポリペプチド、
またはペプチド、特にヒトPD-L1(そのアミノ酸配列は配列番号1である)であり、
「PD-1」は、PD-1タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド、特にヒトPD-
1(そのアミノ酸配列は配列番号2である)である。
【0009】
別の特定の実施形態において、グリコシル化ICP抗原は、CD366、FLJ144
28、TIMD3、およびHAVCR2(アミノ酸配列は配列番号4である)としても知
られるヒトグリコシル化「T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン3」(TIM-3
)である。別の特定の実施形態において、グリコシル化ICP抗原は、CD223(アミ
ノ酸配列は配列番号5である)としても知られるヒトグリコシル化「リンパ球活性化遺伝
子3」(LAG-3)である。別の特定の実施形態において、グリコシル化ICP抗原は
、CD272(アミノ酸配列は配列番号3である)としても知られるヒトグリコシル化「
BおよびTリンパ球アテニュエーター」(BTLA)である。別の特定の実施形態におい
て、グリコシル化ICP抗原は、IAP、MEK6、およびOA3としても知られるヒト
グリコシル化CD47である。別の特定の実施形態において、グリコシル化ICP抗原は
、CD96分子またはCD96抗原としても知られるヒトグリコシル化CD96である。
別の特定の実施形態において、グリコシル化ICP抗原は、BGPまたはBGP1(アミ
ノ酸配列は配列番号7である)としても知られるヒトグリコシル化「癌胎児性抗原関連細
胞接着分子1(胆管糖タンパク質)」(CEACAM1)である。別の特定の実施形態に
おいて、グリコシル化ICP抗原は、BTNまたはBTN1(アミノ酸配列は配列番号6
である)としても知られるヒトグリコシル化「ブチロフィリンサブファミリー1メンバー
A1」(BTN1A1)である。別の特定の実施形態において、グリコシル化ICP抗原
は、SEMAJ、CD100、coll-4、およびFLJ39737(アミノ酸配列は
配列番号8である)としても知られるヒトグリコシル化セマフォリン4Dである。別の特
定の実施形態において、グリコシル化ICP抗原は、BTL-II、BTN7、HSBL
MHCIおよびSS2としても知られるヒトグリコシル化「ブチロフィリン様2」(BT
NL2)である。本明細書において使用される限り、実施形態のICP抗原は、タンパク
質、ポリペプチド、またはペプチド、特にヒトICPタンパク質、ポリペプチド、または
ペプチドを指す。一態様において、本明細書において記述される方法の実践によって、以
下の表1に記載のグリコシル化アミノ酸を含む、前述のICPのいずれかへの優先的結合
について、抗体を産生およびスクリーニングする。簡単に説明すると、グリコシル化IC
Pポリペプチドまたはそのグリコシル化部分を、免疫原として使用して、それぞれのグリ
コシル化ICPタンパク質またはその一部に優先的に結合する抗glycICP抗体を生
成してもよい。
【0010】
非グリコシル化ICP抗原と比較してグリコシル化ICPに結合するその特異性につい
て産生および選択された抗体を、グリコシル化ICP抗原に特異的に結合して、ICPと
、通常は別の細胞、例えば免疫細胞または腫瘍細胞上に発現するタンパク質受容体である
その同起源のリガンドとの相互作用を遮断するICP阻害剤として使用してもよい。例え
ば、抗体は、ICP抗原の非グリコシル化形態と比較して2倍、3倍、4倍、5倍、6倍
、8倍、または10倍大きいが、ある特定の実施形態において、ICP抗原の非グリコシ
ル化形態より20倍、50倍、100倍、1000倍、または10000倍以下大きい結
合親和性でICP抗原のグリコシル化形態に結合しうる。
【0011】
あるいは、抗体は、対応する非グリコシル化ICPへの抗体の結合によって示されるK
dの半分より小さいKdでグリコシル化ICPに結合しうる。別の実施形態において、抗
体は、非グリコシル化ICPと比較して示されるKdの85%より小さい、80%より小
さい、75%より小さい、70%より小さい、65%より小さい、60%より小さい、5
5%より小さい、50%より小さい、45%より小さい、30%より小さい、20%より
小さい、または10%より小さいKdでグリコシル化ICPに結合する。さらなる実施形
態において、抗体は、非グリコシル化ICPと比較して示されるKdのわずか10分の1
、100分の1、または1000分の1のKdでグリコシル化ICPに結合する。
【0012】
グリコシル化ICP抗原に特異的かつ優先的に結合する抗体をスクリーニングおよび同
定する方法が提供され、方法は、グリコシル化ICP抗原を特異的に認識して結合する1
つまたは複数の抗体についてクローン化抗体集団(例えばハイブリドーマ集団、抗体のレ
パートリーを発現するファージディスプレイライブラリ等)をスクリーニングするステッ
プ、次に抗体がグリコシル化形態に結合する親和性より低い親和性でのICP抗原の非グ
リコシル化形態への結合について、グリコシル化ICP抗原に特異的に結合する抗体をさ
らにスクリーニングするステップを含む。あるいは、抗体集団を、非グリコシル化ICP
と比較してグリコシル化ICPへの特異的結合およびグリコシル化ICPへの抗体の優先
的に結合について1回のステップでスクリーニングする。
【0013】
スクリーニングは、当技術分野で公知の任意の方法、例えば標識グリコシル化ICP抗
原のパニング、またはグリコシル化ICP抗原もしくは固相支持体上に抗原を有するグリ
コシル化ICPを発現する培養細胞への結合に関するハイブリドーマ培地もしくはライブ
ラリメンバーの試験、ウェスタンブロッティング、もしくはFACS、または抗原に対す
る抗体の特異的結合を検出するために公知の任意の他の方法を使用して実施することがで
きる。ICPの非グリコシル化形態と比較してICPのグリコシル化形態への優先的結合
についてのアッセイは、固相表面にそれぞれコーティングしたグリコシル化ICP抗原お
よび非グリコシル化ICP抗原への抗体の結合を、FACSまたはフローサイトメトリー
を介して比較することによって実施することができる。
【0014】
好ましい実施形態において、優先的結合についてのスクリーニングは、フローサイトメ
トリーを使用してICPのグリコシル化および非グリコシル化形態を発現する細胞におい
て実施する。例えば、WT ICP(グリコシル化されている)を組み換えにより発現す
る細胞を、グリコシル化されていない(グリコシル化部位内のアスパラギンがグルタミン
に置換されている)変異体ICPを組み換えにより発現する同じ宿主細胞と共に、細胞の
1つまたは両方の組を検出可能または選択可能に標識して、培養において混合することが
できる。例えば、細胞の1つの組をビオチンで標識し、これを検出可能なまたは選択可能
なマーカーに連結したストレプトアビジンへの結合を通して検出および/または選別する
ことができる。細胞混合物に、試験される抗体(直接、または検出可能なもしくは選択可
能なマーカーによって標識された、試験される抗体を認識する二次抗体などによって間接
でありうる)を接触させることができ、次に例えばFACSまたは例えば実施例2に記述
される他の抗体結合アッセイを通して、アッセイされる細胞の両方のタイプに結合させる
ことができる。ある特定の実施形態において、本明細書において記述されるフローサイト
メトリーアッセイにおいて、非グリコシル化ICPを発現する細胞より少なくとも1.5
倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍大きい頻度でグリ
コシル化ICPを発現する細胞に優先的に結合する抗体が同定され、結合は、例えば抗体
を蛍光マーカーによって直接または間接的に(例えば、標識二次抗体によって)標識した
場合の、2つの細胞集団で測定された蛍光強度(MFI)によって測定される。
【0015】
グリコシル化形態は、一般的に野生型ICPまたはそのペプチドである。ICPの非グ
リコシル化形態は、例えば、PNGアーゼFによる消化、しかしこれに限定されない、タ
ンパク質からグリコシル化、特にN-連結グリコシル化を除去する酵素によってICPを
処置することによって生成することができる。あるいは、ICPを変異させて、タンパク
質内のグリコシル化部位または複数の部位を除去することができる。N-連結グリコシル
化は一般的に、コンセンサス配列Asn-X-Ser/Thr(式中、Xはプロリン以外
の任意のアミノ酸である)のアスパラギンで起こり、アスパラギンを別のアミノ酸、好ま
しくはグルタミンに置換することによって、その部位でグリコシル化されないタンパク質
が得られる。
【0016】
一実施形態において、方法はさらに、グリコシル化ICP抗原とその同起源のICP結
合パートナー(リガンドまたは受容体、例えばPD-1は、PD-L1の同起源のICP
結合パートナーである等)の間の相互作用または結合を特異的に遮断する抗glycIC
P抗体を同定するために、抗glycICP抗体をスクリーニングすることを伴う。一実
施形態において、グリコシル化ICP抗原またはそのペプチドは、腫瘍細胞またはがん細
胞上に発現し、ICPリガンドは免疫細胞上に発現する。一実施形態において、グリコシ
ル化ICP抗原またはそのペプチドは、免疫細胞上に発現し、ICPリガンドは腫瘍細胞
またはがん細胞上に発現する。一実施形態において、免疫細胞はエフェクターT細胞また
はナチュラルキラー細胞(NK細胞)である。抗体を、ICPへの結合についての、IC
P結合パートナーの細胞外ドメインとのFc融合体などの結合パートナーの改変された可
溶性形態を含む、標識されたICP結合パートナーと抗体との競合をアッセイすることに
よって、そのICP結合パートナーへのICPの結合の阻害または遮断についてスクリー
ニングすることができる。あるいは、抗体を、ICP-ICP結合パートナー結合の生物
学的結末を検出する細胞アッセイ(例えば、免疫抑制、ある特定のサイトカイン産生レベ
ルの変化等)において、ICP-ICP結合パートナー結合を遮断するその能力について
アッセイすることができる。
【0017】
抗体、好ましくはグリコシル化ICPに対する抗体を発現するクローン集団を生成する
方法が提供され、方法は、動物において抗グリコシル化ICP免疫応答を誘発するために
有効な量の、グリカン部分への結合によって改変された少なくとも1つのグリコシル化ア
スパラギン(N)アミノ酸を含むヒトICPの少なくとも7連続アミノ酸の断片を含むヒ
トグリコシル化ICPまたはそのペプチドをレシピエント動物に投与すること、および次
にスクリーニングのために動物からハイブリドーマを調製することを含む。一実施形態に
おいて、動物は、マウス、ラット、またはウサギ、ヤギ、ロバ、または非ヒト霊長類であ
る。あるいは、抗体のライブラリ、例えば抗体のファージライブラリを、免疫した動物か
ら生成することができるか、または抗体のナイーブライブラリを使用してもよい。ある特
定の実施形態において、動物は、ヒト免疫グロブリンについてトランスジェニックである
。他の実施形態において、ライブラリは、ヒト抗体レパートリーを代表する合成ライブラ
リである。抗体ライブラリは、四量体免疫グロブリン、F(ab)断片、scFv、また
はシングルドメイン抗体を含む任意の形態の抗体を発現するクローンでありうる。
【0018】
一実施形態において、抗体を作製および選択する方法において使用するためのグリコシ
ル化ICP抗原は、PD-L1、PD-L2、PD-1、TIM-3、LAG-3、BT
LA、CEACAM1、BTN1A1、BTNL2、SEMA4D、CD47、CD96
、B7-H3、B7-H4、CTLA-4、VISTA、またはKIRから選択される。
好ましくは、ICPはヒトICPである。他の実施形態において、グリコシル化ICP抗
原は、以下の1つである:AGER、ALCAM、AMIGO1、AMIGO2、AMI
GO3、AXL、B2M、BCAM、BCAN、BOC、BSG、BTN2A1、BTN
2A2、BTN3A3、BTNL1、BTNL6、BTNL7、BTNL9、CADM1
、CADM2、CADM3、CADM4、CD101、CD160、CD19、CD1D
2、CD2、CD200、CD22、CD226、CD244、CD274、CD276
、CD28、CD300A、CD300E、CD300LB、CD300LD、CD30
0LF、CD300LG、CD33、CD3E、CD3G、CD4、CD48、CD7、
CD79A、CD79B、CD80、CD83、CD84、CD86、CD8A、CD8
B、CD8B1、CDON、CEACAM3、CEACAM5、CHL1、CILP、C
NTFR、CNTN1、CNTN2、CNTN6、CRL、CRTAM、CSF1R、C
SF3R、CXADR、EMBF、ERMAP、ESAM、F11R、FAIM3、FC
ER1A、FCGR2B、FCGRT、FCRL1、FCRL5、FCRLA、FCRL
B、FGFR1、FGFR2、FGFR4、FLT1、FLT3、GP6、GPA33、
HAPLN1、HAPLN2、HAPLN3、HAVCR1、HEPACAM、HEPA
CAM2、ICAM1、ICAM2、ICAM4、ICAM5、ICOS、IFNGR1
、KIT、L1CAM、LAIR1、LEPR、LILRA5、LILRB4、LING
O1、LINGO2、LINGO4、LRFN1、LRFN2、LRFN3、LRFN4
、LRFN5、LRIG1、LRIG2、LRIG3、LRIT1、LRRC4、LRR
N1、LRRN2、LRRN3、LSAMP、LSR、LY6G6F、LY9、MADC
AM1、MAG、MALT1、MCAM、MERTK、MFAP3、MOG、MPZ、M
PZL1、MPZL2、MPZL3、MR1、MUSK、MXRA8、NCAM1、NC
AM2、NCR1、NEGR1、NEO1、NFAM1、NPTN、NRCAM、NRG
1、NTM、NTRK1、NTRK2、NTRK3、OPCML、OSCAR、PAPL
N、PDCD1、PDCD1LG2、PDGFRA、PDGFRB、PECAM1、PI
GR、PRTG、PTGFRN、PTK7、PTPRD、PTPRK、PTPRS、PT
PRT、PTPRU、PVR、PVRL1、PVRL2、PVRL3、PVRL4、PX
DN、ROBO1、ROBO2、ROBO3、ROBO4、ROR1、ROR2、SCN
1B、SCN2B、SCN3B、SEMA3A、SEMA3B、SEMA3C、SEMA
3F、SEMA4A、SEMA4B、SEMA4C、SEMA4F、SEMA4G、SE
MA7A、SIGGIR、SIGLEC1、SIGLEC5、SIRPA、SIRPB1
、SLAMF1、SLAMF6、SLAMF7、SLAMF8、SLAMF9、TAPB
P、TAPBPL、TEK、THY1、TIE1、TIGIT、TIMD4、TMEM2
5、TMEM81、TMIGD1、TREM1、TREM2、TREML1、TREML
2、TREML4、TYRO3、UNC5A、UNC5B、UNC5C、VCAM1、V
PREB1、VPREB3、VSIG1、VSIG2、VSIG4、VSIG8、VTC
N1、WFIKKN2。
【0019】
一実施形態において、ヒトグリコシル化ICP抗原は、ヒトPD-L1の少なくとも7
連続アミノ酸の断片を含む単離ポリペプチドであり、ポリペプチドは、ヒトPD-L1の
N35、N192、N200、またはN219位(配列番号1における付番)に対応する
少なくとも1つのアミノ酸を含み、PD-L1のN35、N192、N200、またはN
219位に対応するアミノ酸の少なくとも1つがグリコシル化されている。一実施形態に
おいて、単離ポリペプチドは、ヒトPD-L1の少なくとも8~20連続アミノ酸を含む
。一実施形態において、単離ポリペプチドは、ヒトPD-L1のN35、N192、N2
00、および/またはN219位に対応するグリコシル化アミノ酸を含む。別の実施形態
において、ヒトグリコシル化ICP抗原は、ヒトPD-1の少なくとも7連続アミノ酸の
断片を含む単離ポリペプチドであり、前記ポリペプチドは、ヒトPD-1のN49、N5
8、N74、および/またはN116位(配列番号2における付番)に対応する少なくと
も1つのアミノ酸を含み、PD-1のN49、N58、N74、および/またはN116
位に対応するアミノ酸の少なくとも1つがグリコシル化されている。一実施形態において
、単離ポリペプチドは、ヒトPD-1の少なくとも8~20連続アミノ酸を含む。一実施
形態において、単離ポリペプチドは、ヒトPD-1のN49、N58、N74、および/
またはN116位に対応するグリコシル化アミノ酸を含む。一実施形態において、単離ポ
リペプチドは、そのアミノまたはカルボキシ末端でICPポリペプチドではない免疫原性
ポリペプチドに融合またはコンジュゲートされる。
【0020】
単離された抗体がヒト抗体ではない(例えば、マウスモノクローナル抗体である)他の
実施形態では、方法は、抗体の相補性決定領域(CDR)を含むアミノ酸を同定すること
、およびヒト化抗体を産生するためにCDR周囲のアミノ酸配列をヒト化して、これを組
み換えにより発現させることをさらに伴う。一実施形態において、方法は、ヒト化抗体を
組み換えにより発現させることを伴う。あるいは、抗体の非ヒト定常ドメインを、ヒト定
常ドメインと置換して、キメラ抗体を産生してもよい。
【0021】
別の態様において、非グリコシル化ICPと比較してグリコシル化ICP抗原に選択的
かつ優先的に結合する、上記の方法によって産生された単離抗体が提供される。一実施形
態において、単離抗体は、抗グリコシル化PD-L1抗体である。実施形態において、単
離抗体は、抗グリコシル化PD-1抗体である。一実施形態において、抗体は、モノクロ
ーナル、ヒト化、キメラ、またはヒト抗体である。別の実施形態において、抗体は、アイ
ソタイプIgM、IgG1、IgG2、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgG4の
抗体、またはその抗原結合断片である。一実施形態において、抗体は、Fab’、F(a
b’)2、F(ab’)3、一価scFv、二価scFv、またはシングルドメイン抗体
から選択される。別の実施形態において、抗体は、造影剤、化学療法剤、毒素、または放
射性核種にコンジュゲートされる。
【0022】
特定の態様において、本明細書において記述される方法は、非グリコシル化PD-L1
タンパク質と比較してグリコシル化PD-L1タンパク質に特異的かつ優先的に結合する
抗グリコシル化PD-L1抗体(本明細書において抗glycPD-L1抗体と呼ばれる
)をスクリーニングおよび選択するために適している。一実施形態において、抗glyc
PD-L1抗体は、非グリコシル化PD-L1タンパク質と比較して、例えば配列番号1
に記載のPD-L1タンパク質、特にPD-L1タンパク質の細胞外ドメイン(ECD)
におけるアミノ酸N35、N192、N200、および/またはN219位でグリコシル
化されるPD-L1タンパク質に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、抗g
lycPD-L1抗体は、PD-L1グリコポリペプチドまたはそのペプチドにおける1
つまたは複数のグリコシル化モチーフに特異的に結合する。いくつかの実施形態において
、抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化モチーフおよび隣接ペプチドを含むPD-
L1グリコペプチドに結合する。いくつかの実施形態において、抗glycPD-L1抗
体は、三次元で1つまたは複数のグリコシル化モチーフの近傍に位置するペプチド配列に
結合する。したがって、実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化
PD-L1のコンフォメーションエピトープを認識して、これに選択的に結合する。例と
して、ある特定の実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、非グリコシル化PD
-L1への抗体の結合によって示されるKdの半分より小さいKdでグリコシル化PD-
L1に結合する。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、非グリコシル化P
D-L1への抗体の結合によって示されるKdの少なくとも5倍小さいKdでグリコシル
化PD-L1に結合する。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、非グリコ
シル化PD-L1タンパク質と比較して示されるKdの少なくとも10倍小さいKdでグ
リコシル化PD-L1に結合する。一実施形態において、実施例2において記述される細
胞フローサイトメトリー結合アッセイにおいて、抗glycPD-L1抗体は、非グリコ
シル化PD-L1を発現する細胞への結合についてのMFIより1.5倍、2倍、3倍、
4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍大きいMFIとして表される、WT
PD-L1を発現する細胞への結合を示す。一実施形態において、抗glycPD-L
1抗体は、5~20nM、5~10nM、または10~20nMの親和性でグリコシル化
PD-L1タンパク質に選択的に結合する。実施形態において、抗体はヒト、ヒト化、ま
たは組み換え抗体である。
【0023】
別の具体的態様において、非グリコシル化PD-1タンパク質と比較してグリコシル化
PD-1タンパク質に特異的かつ優先的に結合する抗グリコシル化PD-1抗体(本明細
書において抗glycPD-1抗体と呼ばれる)またはその結合断片をスクリーニングお
よび選択する方法が提供される。一実施形態において、抗glycPD-1抗体は、非グ
リコシル化PD-1タンパク質と比較して、例えば配列番号2に記載されるヒトPD-1
タンパク質、特にPD-1タンパク質の細胞外ドメイン(ECD)におけるアミノ酸N4
9、N58、N74、および/またはN116位でグリコシル化されるPD-1タンパク
質に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、抗glycPD-1抗体は、PD
-1グリコポリペプチドまたはそのペプチドにおける1つまたは複数のグリコシル化モチ
ーフに特異的に結合する。いくつかの実施形態において、抗glycPD-1抗体は、グ
リコシル化モチーフおよび隣接するペプチドを含むPD-1グリコペプチドに結合する。
いくつかの実施形態において、抗glycPD-1抗体は、三次元において、グリコシル
化モチーフの1つまたは複数の近位に存在するペプチド配列に結合する、したがって、実
施形態において、抗glycPD-1抗体は、グリコシル化PD-1の非線形のコンフォ
メーションエピトープを認識して選択的に結合する。例として、ある特定の実施形態にお
いて、抗glycPD-1抗体は、非グリコシル化PD-1への抗体の結合によって示さ
れるKdの半分より小さいKdでグリコシル化PD-1に結合する。一実施形態において
、抗glycPD-L1抗体は、非グリコシル化PD-1への抗体の結合によって示され
るKdの少なくとも5倍小さいKdでグリコシル化PD-1に結合する。一実施形態にお
いて、抗glycPD-L1抗体は、非グリコシル化PD-1タンパク質と比較して示さ
れるKdの少なくとも10倍小さいKdでグリコシル化PD-1に結合する。一実施形態
において、実施例2において記述される細胞フローサイトメトリー結合アッセイにおいて
、抗glycPD-L1抗体は、非グリコシル化PD-L1を発現する細胞への結合につ
いてのMFIより1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または
10倍大きいMFIとして表される、WT PD-L1を発現する細胞への結合を示す。
一実施形態において、抗glycPD-1抗体は、5~20nM、5~10nM、または
10~20nMの親和性でグリコシル化PD-1タンパク質に選択的に結合する。一実施
形態において、抗体はモノクローナル抗体である。実施形態において、抗体はヒト、ヒト
化、または組み換え抗体である。
【0024】
なお別の態様において、生物試料中のICPのグリコシル化、N-連結グリコシル化、
またはN-グリコシル化を評価する方法が提供され、方法は、ICP含有試料に、本明細
書において記述される方法によって産生される抗体(例えば、非グリコシル化ICPと比
較してグリコシル化ICPに選択的に結合する抗体)を接触させることを含む。いくつか
の態様において、方法は、in vitroの方法またはアッセイである。ある特定の態
様において、生物試料は、細胞試料、組織試料、体液(例えば、血漿、血清、血液、尿、
喀痰、リンパ、腹水、腹腔内液、脳脊髄液、およびその他)である。特定の実施形態にお
いて、試料は、細胞試料、またはがんもしくは腫瘍を有する対象から得た腫瘍もしくはが
んからの細胞試料である。そのようながんまたは腫瘍細胞試料を、抗グリコシル化タンパ
ク質抗体を使用してがんまたは腫瘍細胞表面上のグリコシル化ICPについてアッセイし
て、特にグリコシル化ICPが対象のがんまたは腫瘍細胞に存在すれば、細胞が1つまた
は複数の抗グリコシル化ICP抗体による処置の適切な標的である可能性があることを決
定してもよい。例として、そのようなグリコシル化タンパク質に特異的に結合してその同
起源の結合パートナーとのその相互作用を防止または遮断する単離抗体によって検出可能
であるグリコシル化ICPには、PD-L1、PD-L2、PD-1、TIM-3、LA
G-3、BTLA、CEACAM1、BTN1A1、BTNL2、SEMA4D、CD4
7、CD96、B7-H3、B7-H4、CTLA-4、VISTA、またはKIR等が
挙げられる。
【0025】
他の実施形態において、抗体は、以下とその同起源の結合パートナーとの相互作用を遮
断する:AGER、ALCAM、AMIGO1、AMIGO2、AMIGO3、AXL、
B2M、BCAM、BCAN、BOC、BSG、BTN2A1、BTN2A2、BTN3
A3、BTNL1、BTNL6、BTNL7、BTNL9、CADM1、CADM2、C
ADM3、CADM4、CD101、CD160、CD19、CD1D2、CD2、CD
200、CD22、CD226、CD244、CD274、CD276、CD28、CD
300A、CD300E、CD300LB、CD300LD、CD300LF、CD30
0LG、CD33、CD3E、CD3G、CD4、CD48、CD7、CD79A、CD
79B、CD80、CD83、CD84、CD86、CD8A、CD8B、CD8B1、
CDON、CEACAM3、CEACAM5、CHL1、CILP、CNTFR、CNT
N1、CNTN2、CNTN6、CRL、CRTAM、CSF1R、CSF3R、CXA
DR、EMBF、ERMAP、ESAM、F11R、FAIM3、FCER1A、FCG
R2B、FCGRT、FCRL1、FCRL5、FCRLA、FCRLB、FGFR1、
FGFR2、FGFR4、FLT1、FLT3、GP6、GPA33、HAPLN1、H
APLN2、HAPLN3、HAVCR1、HEPACAM、HEPACAM2、ICA
M1、ICAM2、ICAM4、ICAM5、ICOS、IFNGR1、KIT、L1C
AM、LAIR1、LEPR、LILRA5、LILRB4、LINGO1、LINGO
2、LINGO4、LRFN1、LRFN2、LRFN3、LRFN4、LRFN5、L
RIG1、LRIG2、LRIG3、LRIT1、LRRC4、LRRN1、LRRN2
、LRRN3、LSAMP、LSR、LY6G6F、LY9、MADCAM1、MAG、
MALT1、MCAM、MERTK、MFAP3、MOG、MPZ、MPZL1、MPZ
L2、MPZL3、MR1、MUSK、MXRA8、NCAM1、NCAM2、NCR1
、NEGR1、NEO1、NFAM1、NPTN、NRCAM、NRG1、NTM、NT
RK1、NTRK2、NTRK3、OPCML、OSCAR、PAPLN、PDCD1、
PDCD1LG2、PDGFRA、PDGFRB、PECAM1、PIGR、PRTG、
PTGFRN、PTK7、PTPRD、PTPRK、PTPRS、PTPRT、PTPR
U、PVR、PVRL1、PVRL2、PVRL3、PVRL4、PXDN、ROBO1
、ROBO2、ROBO3、ROBO4、ROR1、ROR2、SCN1B、SCN2B
、SCN3B、SEMA3A、SEMA3B、SEMA3C、SEMA3F、SEMA4
A、SEMA4B、SEMA4C、SEMA4F、SEMA4G、SEMA7A、SIG
GIR、SIGLEC1、SIGLEC5、SIRPA、SIRPB1、SLAMF1、
SLAMF6、SLAMF7、SLAMF8、SLAMF9、TAPBP、TAPBPL
、TEK、THY1、TIE1、TIGIT、TIMD4、TMEM25、TMEM81
、TMIGD1、TREM1、TREM2、TREML1、TREML2、TREML4
、TYRO3、UNC5A、UNC5B、UNC5C、VCAM1、VPREB1、VP
REB3、VSIG1、VSIG2、VSIG4、VSIG8、VTCN1、またはWF
IKKN2。
【0026】
一態様において、本明細書に開示の方法の実践によって、ポリペプチドの非グリコシル
化形態と比較して少なくとも1つのグリコシル化アミノ酸(例えば、グリカン部分への結
合によって改変されたアミノ酸(Nまたはアスパラギン))を有する少なくとも7連続ア
ミノ酸の断片を含むグリコシル化ICPのコンフォメーションエピトープなどのエピトー
プに選択的に結合する単離抗体が提供される。特定の実施形態において、ヒトPD-L1
のN35、N192、N200、またはN219位に対応する少なくとも1つのアミノ酸
を含むPD-L1のコンフォメーションエピトープなどのエピトープに選択的に結合する
単離抗体が提供され、PD-L1のN35、N192、N200、またはN219位に対
応するアミノ酸の少なくとも1つがグリコシル化されている。特定の実施形態において、
ヒトPD-1のN49、N58、N74、またはN116位に対応する少なくとも1つの
アミノ酸を含むPD-1のコンフォメーションエピトープなどのエピトープに選択的に結
合する単離抗体が提供され、PD-1のN49、N58、N74、またはN116位に対
応するアミノ酸の少なくとも1つがグリコシル化されている。
【0027】
特定の実施形態において、本発明は、それぞれが、グリコシル化ICPの他の抗原結合
ドメインのエピトープと重複しないエピトープに結合する2つの異なる抗原結合ドメイン
を有し、少なくとも1つの結合ドメイン(およびある特定の実施形態において、両方の結
合ドメイン)が、例えば本明細書において記載されるグリコシル化部位の1つまたは複数
を含むエピトープに結合することによって、ICPのグリコシル化形態に優先的に結合す
る、二重パラトープ性抗体を作製する方法を提供する。これらの抗体は、細胞表面タンパ
ク質に架橋して、内在化、リソソーム輸送、および分解を促進することができる。そのよ
うな二重パラトープ性抗体は、本明細書において記載されるスクリーニング方法を使用し
て、ICPの非グリコシル化形態と比較してグリコシル化ICPに優先的に結合する抗体
についてスクリーニングすること、好ましくは1つまたは両方が非グリコシル化形態と比
較してICPのグリコシル化形態に優先的に結合する、グリコシル化ICPの重複しない
エピトープに結合する2つの抗体を同定することによって作製することができる。グリコ
シル化含有エピトープ、または抗体がグリコシル化ICPに優先的に結合する本明細書に
おいて記述されるエピトープのいずれかに対する抗体を使用することができる。2つの抗
原結合ドメインを、抗体分子において、例えばDimasi et al., J. Mol. Biol., 393:672-
692 (2009)に記述されるように整列させることができる。特定の実施形態において、抗原
結合ドメインの1つを、一本鎖Fvのフォーマットとなるように操作し、次にこれを、例
えばペプチドリンカーを介して、他の抗原結合ドメインまたはCH3ドメインのC末端を
有する抗体の重鎖および/または軽鎖のN末端に連結する。
【0028】
特定の態様において、抗glycICP抗体は、細胞表面上の標的抗原に結合後のその
標的glycICP抗原の内在化および分解を促進する。標的glycICP抗原が腫瘍
細胞上で発現するまたは高度に発現する場合、本明細書において提供される抗glycI
CP抗体による結合後に腫瘍細胞上で発現するグリコシル化標的抗原の内在化によって、
例えばT細胞などの免疫細胞上で同起源の結合分子との相互作用にとって腫瘍細胞上で利
用できるグリコシル化ICPが減少し、それによって腫瘍細胞に対するT細胞の細胞傷害
性エフェクター機能が増加し、glycICP/同起源の結合分子相互作用に起因するT
細胞アネルギーを低減させる。特定の実施形態において、抗体は、PD-1とPD-L1
との相互作用を阻害する、特にエフェクターT細胞によって発現するPD-1と腫瘍細胞
によって発現するPD-L1、特にグリコシル化PD-L1との相互作用を阻害し、同様
に特にPD-L1の内在化および細胞内分解を増加させることによって、腫瘍細胞の表面
上のPD-L1、特にグリコシル化PD-L1のレベルを低減する。本明細書において提
供される抗グリコシル化PD-L1抗体による結合後に腫瘍細胞上で発現したPD-L1
の内在化は、T細胞上でのPD-1との相互作用のために腫瘍細胞上で利用可能であり、
それによって腫瘍細胞に対するT細胞の細胞傷害性エフェクター機能を増加させ、PD-
L1/PD-1相互作用に起因するT細胞アネルギーを低減させるため、抗glycPD
-L1抗体の有益な特徴である。
【0029】
別の態様において、本明細書において記述される抗glycICP抗体、特にグリコシ
ル化標的抗原への結合後に有効な内在化活性を示す抗体を、抗新生物薬および薬剤に化学
的に連結し、本明細書において記述および例示される抗glycICP抗体-薬物コンジ
ュゲート(抗glycICP抗体またはMAb ADC)を産生する、抗体-薬物コンジ
ュゲート(ADC)が提供される。ある特定の実施形態において、抗glycICP抗体
-ADCは、腫瘍細胞またはがん細胞の殺滅において、および癌を有する対象を処置する
ための抗新生物治療において非常に有効である。実施形態において、ADCの抗glyc
ICP抗体成分は、二重特異性、多重特異性、二重パラトープ性、もしくは多重パラトー
プ性抗体、またはその抗原結合部分である。他の実施形態において、抗glycICP抗
体は、本明細書においてさらに記述されるように、抗分裂剤、例えばメイタンシン誘導体
、例えばDM1もしくはDM4などのメイタンシノイド、またはチューブリン重合化アウ
リスタチン、例えばモノメチルアウリスタチンE(MMAE)、もしくはモノメチルアウ
リスタチンF(MMAF)に化学的に連結される。一実施形態において、抗glycIC
P抗体に対するリンカーは、細胞外液で安定であるが、ADCが腫瘍細胞またはがん細胞
の中に入るとカテプシンによって切断され、このようにしてMMAEまたは他の毒素薬物
の抗分裂メカニズムを活性化する。特異的な実施形態において、ADCの抗体成分は、本
明細書において記述されるSTM073 MAbまたはSTM108 MAbである。一
実施形態において、抗glycICP抗体含有ADC(抗glycICP抗体-ADC)
、例えばSTM108 Mab含有ADC(STM108-ADC)は、切断可能なリン
カーを介してMMAEに化学的に連結される。特定の実施形態において、抗glycIC
P抗体-ADC(例えば、STM108-ADC)は、抗glycICP抗体(例えば、
STM108 MAb)がそのC領域におけるシステイン残基を介してマレイミドおよび
カプロン酸(MC)結合基に化学的に連結され、これにバリン(Val)およびシトルリ
ン(Cit)からなる「vc」などのカテプシン切断可能なリンカーが化学的に連結され
、これにスペーサー「PAB」、すなわちパラアミノ安息香酸が化学的に結合され、これ
にMMAE細胞毒素が化学的に連結される構造を含み、このようにして、その成分構造抗
glycICP抗体-MC-vc-PAB-MMAE、例えばSTM108-MC-vc
-PAB-MMAEによって示されるADCを産生する。
【0030】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本明細書において記述される方法および抗体
の特定の態様をさらに証明するために含める。それらは、限定的であると意図されない、
本明細書において示される実施形態の詳細な説明と共にこれらの図面の1つまたは複数を
参照することによってよりよく理解することができる。本特許または本出願のファイルは
、カラー表示の少なくとも1つの図面を含む。カラーの図面を含むこの特許または特許出
願公報のコピーは、要請に応じ、必要な料金を支払うことによって、当局によって提供さ
れる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】PNGアーゼF処置の存在下または非存在下でのin vitroのヒトPD-L1と抗ヒトPD-L1抗体の結合。HisタグPD-L1を、本来の条件でPNGアーゼFの存在下または非存在下で処置した後、Ni-NTAコーティングプレートに固定した。蛍光標識抗PD-L1抗体を、固定したリガンドと共にインキュベートし、リガンドについての抗体の結合親和性を定量した。
【
図2】PD-L1とPD-1の結合についての抗ヒトPD-L1抗体の遮断。PD-L1発現BT549細胞を、抗ヒトPD-L1抗体および蛍光標識PD-1-Fc融合タンパク質と共にインキュベートした。リガンドと受容体との結合を、IncuCyte(商標)Zoomによって毎時間定量した。赤色で示したものは、抗体が、PD-L1/PD-1結合の完全な遮断を示したことを示している。
【
図3】抗グリコシル化PD-L1モノクローナル抗体の特徴付け。A.PD-L1 WTと、PD-L1アミノ酸配列内のグリコシル化部位を変異させることによって生成した非グリコシル化PD-L1(PD-L1 4NQは、4箇所のアスパラギン(N)のグルタミン(Q)への置換を表す)の概略図。B.5個の抗glycPD-L11抗体のウェスタンブロット分析。左のパネルは、抗Flag抗体を使用してPD-L1 WTおよび4NQ発現が等量であることを示す。C.5個の抗glycPD-L1抗体のフローサイトメトリー分析。
【
図4】抗グリコシル化PD-L1抗体の特徴付け。A.PD-L1 WTおよび非グリコシル化PD-L1変種の概略図。B.WT、N35/3NQ、N192/3NQ、N200/3NQ、およびN219/3NQ PD-L1を発現するBT549の安定なクローンのウェスタンブロット分析。C.6個の抗glycPD-L1抗体のウェスタンブロット分析。D.肝臓がん細胞株における5個の抗glycPD-L1抗体のウェスタンブロット分析。
【
図5】免疫組織化学(IHC)による抗グリコシル化PD-L1モノクローナル抗体の特徴付け。サイトスピン分析に関して、PD-L1 WTまたはPD-L1 4NQタンパク質のいずれかを発現するBT-549細胞を塗抹し、5個の抗glycPD-L1抗体によって染色した。IHC染色に関して、乳がん患者試料を抗glycPD-L1抗体によって染色した。
【
図6-1】結合アッセイ。
図6A及び6Bは、実施例5に記述した結合アッセイの結果を示す。抗glycPD-L1抗体は、アッセイ対照であるPD-1/Fcなし、Abなし、mIgG Ab(
図6D)と比較して、WT PD-L1を発現するBT549標的細胞へのPD-1の結合を用量依存的に遮断する(
図6Aは、STM004結合を示し、
図6BはSTM073結合を示す)。
【
図6-2】結合アッセイ。
図6Cは、実施例5に記述した結合アッセイの結果を示す。抗glycPD-L1抗体は、アッセイ対照であるPD-1/Fcなし、Abなし、mIgG Ab(
図6D)と比較して、WT PD-L1を発現するBT549標的細胞へのPD-1の結合を用量依存的に遮断する(
図6Cは、STM108結合を示す)。
【
図7】抗glycPD-L1抗体は、T細胞による腫瘍細胞殺滅を増強する。本明細書において記述される方法を使用して生成した2つの異なる抗グリコシル化PD-L1抗体を、実施例6に記述される細胞傷害アッセイにおいて試験し、腫瘍細胞(BT549)に対するPBMC由来T細胞の細胞傷害性を評価した。
図7A(STM004)および7B(STM073)はそれぞれ、2つの異なる抗体によって処置したPD-L1 WT発現BT549細胞の死滅(アポトーシス)をリアルタイムで示す。
図7Aおよび7Bにおいて、下のグラフ(塗りつぶした青色の四角)は、対照(PBMCからのT細胞なし)を表し、塗りつぶした赤色の丸は抗体なし対照を表し、塗りつぶした黒色の四角は、アッセイに使用した抗グリコシル化PD-L1抗体の20μg/mlを表し、および塗りつぶした茶色の丸は、アッセイに使用した抗グリコシル化PD-L1抗体の40μg/mlを表す。
図7Aおよび7Bに示すように、PD-L1を有する腫瘍細胞の経時的な殺滅は用量依存的である。
【
図8】抗glycPD-L1抗体による結合後のPD-L1の内在化および分解。
図8A~8Cは、二重機能抗glycPD-L1抗体と共にインキュベートしたPD-L1発現細胞の生細胞イメージングの結果を示す。
図8A~8Cにおいて、抗PD-L1抗体は、赤色の蛍光色素であるpHrodo(商標)レッド(スクシンイミジルエステル(pHrodo(商標)レッド、SE)(ThermoFisher Scientific,Waltham,MA)にコンジュゲートしたSTM108 MAbである。pHrodo(商標)レッド色素コンジュゲートは、細胞外では非蛍光であるが、ファゴソームにおいて明るい赤色の蛍光を発し、このため生体粒子の食作用から受容体の内在化に及ぶ研究の有用な試薬となっている。緑色の染色は、LysoTracker(登録商標)グリーンDND-26によって染色された細胞を反映し、この色素は生細胞イメージングを介して撮像される生細胞における酸性区画(リソソーム)を染色する細胞透過性の緑色色素である。
図8Aは、第1の時点(時間0)で、矢印によって示される細胞の強い赤色の細胞内染色によって表されるように、STM108が細胞に内在化されることを示している。
図8Bは、
図8Aで表した同じ細胞において、
図8Aの時点の2分後の時点で細胞内赤色染色が弱くなったことを示す。
図8Cは、
図8Aにおける時点の4分後での赤色の細胞内染色がないことを示し、このことは、細胞内部でのSTM108抗体および/または抗体-抗原複合体の分解を反映している。
【
図9-1】総T細胞と比較した腫瘍細胞における抗PD-L1抗体が結合したPD-L1の内在化。
図9A及び9Bは、二重機能抗glycPD-L1抗体がPD-L1陽性腫瘍細胞に内在化することができるが、活性化または非活性化T細胞のいずれにも内在化しないことを示す細胞の画像を表す。
図9A及び9Bは、以下の抗体と共にインキュベーション後の末梢血からの非活性化総T細胞の画像を示す:マウスIgG抗体対照(
図9A);非内在化抗glycPD-L1 MAb STM004(
図9B)。
図9A及び9Bは、試験した抗体のいずれも、非活性化総T細胞に内在化しなかったことを示している。
【
図9-2】総T細胞と比較した腫瘍細胞における抗PD-L1抗体が結合したPD-L1の内在化。
図9Cおよび9Dは、二重機能抗glycPD-L1抗体がPD-L1陽性腫瘍細胞に内在化することができるが、活性化または非活性化T細胞のいずれにも内在化しないことを示す細胞の画像を表す。
図9Cおよび9Dは、以下の抗体と共にインキュベーション後の末梢血からの非活性化総T細胞の画像を示す:二重機能抗glycPD-L1 MAb STM073(
図9C);および二重機能抗glycPD-L1抗体STM108(
図9D)。
図9Cおよび9Dは、試験した抗体のいずれも、非活性化総T細胞に内在化しなかったことを示している。
【
図9-3】総T細胞と比較した腫瘍細胞における抗PD-L1抗体が結合したPD-L1の内在化。
図9Eおよび9Fは、二重機能抗glycPD-L1抗体がPD-L1陽性腫瘍細胞に内在化することができるが、活性化または非活性化T細胞のいずれにも内在化しないことを示す細胞の画像を表す。
図9Eおよび9Fは、以下の抗体と共にインキュベーション後の末梢血由来の活性化総T細胞の画像を示す:マウスIgG抗体対照(
図9E);非内在化STM004(
図9F)。T細胞活性化に関して、総T細胞を抗CD3および抗CD28抗体(例えば、ThermoFisher Scientific,Rochester,NY)と1:1の比率で共有結合によりカップリングさせたビーズ、例えば不活性な超常磁性ビーズと混合した。
図9Eおよび9Fは、試験した抗体のいずれについても、活性化総T細胞への内在化が実質的に観察されなかったことを示している。
【
図9-4】総T細胞と比較した腫瘍細胞における抗PD-L1抗体が結合したPD-L1の内在化。
図9A~9Lは、二重機能抗glycPD-L1抗体がPD-L1陽性腫瘍細胞に内在化することができるが、活性化または非活性化T細胞のいずれにも内在化しないことを示す細胞の画像を表す。
図9Gおよび9Hは、以下の抗体と共にインキュベーション後の末梢血由来の活性化総T細胞の画像を示す:二重機能STM073(
図9G);および二重機能STM108(
図9H)。T細胞活性化に関して、総T細胞を抗CD3および抗CD28抗体(例えば、ThermoFisher Scientific,Rochester,NY)と1:1の比率で共有結合によりカップリングさせたビーズ、例えば不活性な超常磁性ビーズと混合した。
図9Gおよび9Hは、試験した抗体のいずれについても、活性化総T細胞への内在化が実質的に観察されなかったことを示している。
【
図9-5】総T細胞と比較した腫瘍細胞における抗PD-L1抗体が結合したPD-L1の内在化。
図9A~9Lは、二重機能抗glycPD-L1抗体がPD-L1陽性腫瘍細胞に内在化することができるが、活性化または非活性化T細胞のいずれにも内在化しないことを示す細胞の画像を表す。
図9Iおよび9Jは、以下の抗体と共にインキュベーション後のNCI-H226細胞(ヒト肺がん細胞株、扁平上皮中皮腫)の画像を示す:マウスIgG抗体対照(
図9I);非内在化抗glycPD-L1抗体STM004(
図9J)。
図9Iおよび9Jは、赤色の細胞内染色によって証明されるように、二重機能の内在化STM073およびSTM108 MAbsが、対照抗体であるmIgG(
図9I)および非内在化STM004 MAbと比較して、これらの細胞とのインキュベーション後にNCI-H226細胞に内在化されたことを示している。
【
図9-6】総T細胞と比較した腫瘍細胞における抗PD-L1抗体が結合したPD-L1の内在化。
図9A~9Lは、二重機能抗glycPD-L1抗体がPD-L1陽性腫瘍細胞に内在化することができるが、活性化または非活性化T細胞のいずれにも内在化しないことを示す細胞の画像を表す。
図9Kおよび9Lは、以下の抗体と共にインキュベーション後のNCI-H226細胞(ヒト肺がん細胞株、扁平上皮中皮腫)の画像を示す:二重機能抗glycPD-L1 MAb STM073(
図9K);および二重機能抗glycPD-L1 MAb STM108(
図9L)。
図9Kおよび9Lは、赤色の細胞内染色によって証明されるように、二重機能の内在化STM073およびSTM108 MAbsが、対照抗体であるmIgG(
図9I)および非内在化STM004 MAbと比較して、これらの細胞とのインキュベーション後にNCI-H226細胞に内在化されたことを示している。
【
図10-1】抗glycPD-L1抗体-ADCの抗腫瘍有効性。
図10A~10Dは、本明細書において記述される抗体-薬物コンジュゲート(STM108-ADC)を産生するためにMMAEにカップリングさせた二重機能抗glycPD-L1 MAb STM108を含むADCの有効性を、PD-L1発現および非PD-L1発現腫瘍細胞の殺滅について評価する、ならびに対照(IgGおよびSTM108 MAb単独)を注射した腫瘍を有する動物と比較して、STM108-ADCを、腫瘍を有する動物に注射後の腫瘍移植マウスにおける腫瘍体積の低減について評価する実験の結果を表す。
図10Aは、異なる濃度のSTM108-ADC、すなわち「ADC108」(塗りつぶした黒四角)への曝露後のPD-L1のその発現をノックアウトするように改変されているMB231細胞(「MB231 PDL1 KO」)の%生存率と比較した、異なる濃度(nM)のSTM108-ADC(塗りつぶした黒丸)への曝露後のPD-L1発現MDA-MB231(ヒト乳癌細胞株)腫瘍細胞(「MB231」)の%生存率を示す。
図10Bでは、MDA-MB231マウス乳がんモデルを使用し、MB231細胞に由来する腫瘍を移植した動物を、
図10Bのグラフに示すように、IgG-MMAE対照(100μg);またはSTM108ADC(「ADC」)の50μg、100μg、もしくは150μg;またはSTM108 MAbの100μgのいずれかによって処置した。STM108-ADC100μgを投与したマウス5匹中3匹、およびSTM108-ADCの150μgを投与したマウス5匹中4匹において、完全奏効(「CR」)が観察された。
【
図10-2】抗glycPD-L1抗体-ADCの抗腫瘍有効性。
図10A~10Dは、本明細書において記述される抗体-薬物コンジュゲート(STM108-ADC)を産生するためにMMAEにカップリングさせた二重機能抗glycPD-L1 MAb STM108を含むADCの有効性を、PD-L1発現および非PD-L1発現腫瘍細胞の殺滅について評価する、ならびに対照(IgGおよびSTM108 MAb単独)を注射した腫瘍を有する動物と比較して、STM108-ADCを、腫瘍を有する動物に注射後の腫瘍移植マウスにおける腫瘍体積の低減について評価する実験の結果を表す。
図10Cは、異なる濃度(nM)のSTM108-ADC、すなわち「ADC108」(白抜きの赤い四角)への曝露後の、PD-L1を天然に発現しない4T1細胞(「4T1」)の%生存率と比較して、異なる濃度(nM)のSTM108-ADC(白抜きの赤い丸)への曝露後の細胞表面上にヒトPD-L1を発現するように改変されている4T1乳癌細胞(「4T1 hPDL1」)の%生存率を示す。
図10Dでは、4T1同系マウス乳がんモデルを使用し、動物(Balb/cマウス)に、細胞表面上にPD-L1を発現するように改変されている4T1乳癌細胞(「4T1 hPD-L1」)に由来する腫瘍を移植したか、またはBalb/cマウスに、細胞表面上にPD-L1を天然に発現しない非トランスフェクト4T1乳癌細胞(「4T1」)に由来する腫瘍を移植した。2つのタイプの4T1細胞に由来する腫瘍を有する動物を、
図10Dのグラフに示すように、IgG-MMAE対照(100μg);またはSTM108 MAb(100μg)またはSTM108ADC(100μg)のいずれかによって処置した。実施例8を参照されたい。
【発明を実施するための形態】
【0032】
記載の実施形態の他の態様、特徴、および利点は、以下の詳細な説明および例としての
実施例から明らかになると予想される。
【0033】
本明細書において、非グリコシル化ICPまたはその非グリコシル化ペプチドと比較し
て、グリコシル化免疫チェックポイントタンパク質(ICP)またはそのグリコシル化ペ
プチドを特異的かつ優先的に認識して結合するモノクローナル抗体(MAb)などの抗体
を産生、スクリーニング、および選択するための方法を提供する。ICPの非制限的な例
には、PD-L1、PD-L2、PD-1、TIM-3、LAG-3、BTLA、CEA
CAM1、BTN1A1、BTNL2、SEMA4D、CD47、CD96、B7-H3
、B7-H4、CTLA-4、VISTA、またはKIR等が挙げられ、そのいくつかま
たは全てが1つまたは複数のグリカン構造を含む糖タンパク質である。略語「Mab」は
、本明細書において「モノクローナル抗体」を指すために使用される。
【0034】
当業者に認識されるように、腫瘍細胞上に発現するICP、例えばプログラム細胞死リ
ガンド1タンパク質(PD-L1)と、免疫エフェクター細胞、例えばT細胞上に発現す
るプログラム細胞死1タンパク質(PD-1)との間の細胞外相互作用は、腫瘍関連免疫
逃避に対して顕著な影響を有する(例えば、Pardoll, D. M., 2012, Nature Reviews, 12
:252-264を参照されたい)。抗PD-1または抗PD-L1抗体を使用する免疫チェック
ポイント遮断の臨床での成功にもかかわらず、PD-L1とPD-1との相互作用の基礎
となる調節メカニズムおよび構造特徴は依然として不明のままである。PD-L1のN-
連結グリコシル化は、PD-L1タンパク質リガンドを安定化させ、同様にPD-1への
その結合を容易にして増強し、T細胞媒介免疫応答の抑制を促進することが見出された。
本明細書において記述される方法によって生成された抗glycPD-L1抗体は、PD
-L1/PD-1相互作用を防止、遮断、または阻害するために役立ち、このため、がん
の処置のために有効なICP阻害剤として有用である。
【0035】
特定の実施形態において、グリコシル化ICP抗原は、ヒトグリコシル化PD-L1ポ
リペプチド(CD274、PDCD1L1、またはB7-H1としても知られる)である
。別の特定の実施形態において、グリコシル化ICP抗原は、ヒトグリコシル化PD-1
ポリペプチド(CD279としても知られる)である。別の特定の実施形態において、グ
リコシル化ICP抗原は、ヒトグリコシル化PD-L2ポリペプチドである。本明細書に
おいて使用する限り、「PD-L1」は、PD-L1タンパク質、ポリペプチド、または
ペプチド、特にヒトPD-L1(そのアミノ酸配列は配列番号1である)を指し、「PD
-1」は、PD-1タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド、特にヒトPD-1(そ
のアミノ酸配列は配列番号2である)を指す。
【0036】
特定の実施形態において、本明細書において記述される方法に使用されるグリコシル化
ICP抗原は、例えば配列番号1に記載されるPD-L1タンパク質のN35、N192
、N200、および/またはN219位でグリコシル化部位の1つまたは複数を含む、P
D-L1タンパク質の少なくとも7アミノ酸のポリペプチドである。別の実施形態におい
て、本明細書において記述される方法に使用されるグリコシル化ICP抗原は、例えば配
列番号2に記載されるヒトPD-1タンパク質のアミノ酸N49、N58、N74、およ
び/またはN116位でグリコシル化部位の1つまたは複数を含むPD-1タンパク質の
少なくとも7アミノ酸のポリペプチドである。
【0037】
別の特定の実施形態において、グリコシル化ICP抗原は、CD366、FLJ144
28、TIMD3およびHAVCR2(配列番号4)としても知られるヒトグリコシル化
「T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン3(TIM-3)」である。別の特定の実
施形態において、グリコシル化ICP抗原は、CD223(配列番号5)としても知られ
るヒトグリコシル化「リンパ球活性化遺伝子-3」(LAG-3)である。別の特定の実
施形態において、グリコシル化ICP抗原は、CD272(配列番号3)としても知られ
るヒトグリコシル化「BおよびTリンパ球アテニュエーター」(BTLA)である。別の
特定の実施形態において、グリコシル化ICP抗原は、IAP、MER6、およびOA3
としても知られるヒトグリコシル化CD47である。別の特定の実施形態において、グリ
コシル化ICP抗原は、CD96分子またはCD96抗原としても知られるヒトグリコシ
ル化CD96である。別の特定の実施形態において、グリコシル化ICP抗原は、BGP
またはBGP1(配列番号7)としても知られるヒトグリコシル化「癌胎児性抗原関連細
胞接着分子1(胆管糖タンパク質)」である。別の特定の実施形態において、グリコシル
化ICP抗原は、BTNまたはBTN1(配列番号6)としても知られるヒトグリコシル
化「ブチロフィリンサブファミリー1メンバーA1」(BTN1A1)である。別の特定
の実施形態において、グリコシル化ICP抗原は、SEMAJ、CD100、coll-
4、およびFLJ39737(配列番号8)としても知られるヒトグリコシル化セマフォ
リン4Dである。別の特定の実施形態において、グリコシル化ICP抗原は、BTL-I
I、BTN7、HSBLMHCI、およびSS2としても知られるヒトグリコシル化「ブ
チロフィリン様2」(BTNL2)である。本明細書において使用される限り、本実施形
態のICP抗原は、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド、特にヒトICPタンパ
ク質、ポリペプチド、またはペプチドを指す。
【0038】
【0039】
【0040】
表1において、グリコシル化アミノ酸(N)を太字および下線で示す。具体的には、B
TLAに関して、3つのグリコシル化部位は、配列番号3のBTLA ICPタンパク質
配列のアミノ酸N75、N94、およびN110位に示される。TIM-3に関して、2
つのグリコシル化部位は、配列番号4のTIM-3 ICPタンパク質配列のアミノ酸N
78およびN151位に示される。LAG-3に関して、4つのグリコシル化部位は、配
列番号5のLAG-3 ICPタンパク質配列のアミノ酸N166、N228、N234
、およびN321位に示される。BTN1A1に関して、3つのグリコシル化部位は、配
列番号6のBTN1A1 ICPタンパク質配列のアミノ酸N55、N215、およびN
449位に示される。CEACAM1に関して、3つのグリコシル化部位は、配列番号7
のBTLA ICPタンパク質配列のアミノ酸N104、N111、およびN115位に
示される。セマフォリン4Dに関して、6つのグリコシル化部位は、配列番号8のセマフ
ォリン4Dアミノ酸配列のアミノ酸N139、N191、N204、N254、N613
、およびN632位に示される。
【0041】
ある特定の実施形態において、記述される方法に使用されるグリコシル化ICP抗原は
、配列番号3のBTLA ICPタンパク質配列のアミノ酸N75、N94、およびN1
10位でグリコシル化部位の1つまたは複数を含むヒトBTLAの少なくとも7アミノ酸
のポリペプチドでありうる。ある特定の実施形態において、グリコシル化ICP抗原は、
配列番号4のTIM-3 ICPタンパク質配列のアミノ酸N78およびN151位で1
つまたは両方のグリコシル化部位を含むヒトTIM-3の少なくとも7アミノ酸のポリペ
プチドである。ある特定の実施形態において、グリコシル化ICP抗原は、配列番号5の
LAG-3 ICPタンパク質配列のアミノ酸N166、N228、N234、およびN
321位でグリコシル化部位の1つまたは複数を含むヒトLAG-3の少なくとも7アミ
ノ酸のポリペプチドである。ある特定の実施形態において、グリコシル化ICP抗原は、
配列番号6のBTN1A1 ICPタンパク質配列のアミノ酸N55、N215、および
N449位でグリコシル化部位の1つまたは複数を含むヒトBTN1A1の少なくとも7
アミノ酸のポリペプチドである。ある特定の実施形態において、グリコシル化ICP抗原
は、配列番号7のBTLA ICPタンパク質配列のアミノ酸N104、N111、およ
びN115位でグリコシル化部位の1つまたは複数を含むヒトCEACAM1の少なくと
も7アミノ酸のポリペプチドである。ある特定の実施形態において、グリコシル化ICP
抗原は、配列番号8のセマフォリン4Dアミノ酸配列のアミノ酸N139、N191、N
204、N254、N613、およびN632位で6つのグリコシル化部位の1つまたは
複数を含むヒトセマフォリン4Dの少なくとも7アミノ酸のポリペプチドである。抗gl
ycICP抗体は、これらのグリコシル化部位の1つまたは複数を含むエピトープに結合
しうる。
【0042】
他の実施形態において、抗体を作製および選択する方法において使用するためのグリコ
シル化ヒトICP抗原は、PD-L2、BTNL2、B7-H3、B7-H4、CTLA
-4、VISTA、またはKIRから選択される。好ましくは、ICPはヒトICPであ
る。他の実施形態において、グリコシル化ICP抗原(好ましくはヒト)は、以下の1つ
である:AGER、ALCAM、AMIGO1、AMIGO2、AMIGO3、AXL、
B2M、BCAM、BCAN、BOC、BSG、BTN2A1、BTN2A2、BTN3
A3、BTNL1、BTNL6、BTNL7、BTNL9、CADM1、CADM2、C
ADM3、CADM4、CD101、CD160、CD19、CD1D2、CD2、CD
200、CD22、CD226、CD244、CD274、CD276、CD28、CD
300A、CD300E、CD300LB、CD300LD、CD300LF、CD30
0LG、CD33、CD3E、CD3G、CD4、CD48、CD7、CD79A、CD
79B、CD80、CD83、CD84、CD86、CD8A、CD8B、CD8B1、
CDON、CEACAM3、CEACAM5、CHL1、CILP、CNTFR、CNT
N1、CNTN2、CNTN6、CRL、CRTAM、CSF1R、CSF3R、CXA
DR、EMBF、ERMAP、ESAM、F11R、FAIM3、FCER1A、FCG
R2B、FCGRT、FCRL1、FCRL5、FCRLA、FCRLB、FGFR1、
FGFR2、FGFR4、FLT1、FLT3、GP6、GPA33、HAPLN1、H
APLN2、HAPLN3、HAVCR1、HEPACAM、HEPACAM2、ICA
M1、ICAM2、ICAM4、ICAM5、ICOS、IFNGR1、KIT、L1C
AM、LAIR1、LEPR、LILRA5、LILRB4、LINGO1、LINGO
2、LINGO4、LRFN1、LRFN2、LRFN3、LRFN4、LRFN5、L
RIG1、LRIG2、LRIG3、LRIT1、LRRC4、LRRN1、LRRN2
、LRRN3、LSAMP、LSR、LY6G6F、LY9、MADCAM1、MAG、
MALT1、MCAM、MERTK、MFAP3、MOG、MPZ、MPZL1、MPZ
L2、MPZL3、MR1、MUSK、MXRA8、NCAM1、NCAM2、NCR1
、NEGR1、NEO1、NFAM1、NPTN、NRCAM、NRG1、NTM、NT
RK1、NTRK2、NTRK3、OPCML、OSCAR、PAPLN、PDCD1、
PDCD1LG2、PDGFRA、PDGFRB、PECAM1、PIGR、PRTG、
PTGFRN、PTK7、PTPRD、PTPRK、PTPRS、PTPRT、PTPR
U、PVR、PVRL1、PVRL2、PVRL3、PVRL4、PXDN、ROBO1
、ROBO2、ROBO3、ROBO4、ROR1、ROR2、SCN1B、SCN2B
、SCN3B、SEMA3A、SEMA3B、SEMA3C、SEMA3F、SEMA4
A、SEMA4B、SEMA4C、SEMA4F、SEMA4G、SEMA7A、SIG
GIR、SIGLEC1、SIGLEC5、SIRPA、SIRPB1、SLAMF1、
SLAMF6、SLAMF7、SLAMF8、SLAMF9、TAPBP、TAPBPL
、TEK、THY1、TIE1、TIGIT、TIMD4、TMEM25、TMEM81
、TMIGD1、TREM1、TREM2、TREML1、TREML2、TREML4
、TYRO3、UNC5A、UNC5B、UNC5C、VCAM1、VPREB1、VP
REB3、VSIG1、VSIG2、VSIG4、VSIG8、VTCN1、またはWF
IKKN2。
【0043】
非グリコシル化ICPと比較してグリコシル化ICPへの選択的かつ優先的結合につい
てスクリーニングされる抗glycICP抗体を産生する方法は、限定的であると意図さ
れない。特定の実施形態において、グリコシル化ICP抗原に対するモノクローナル抗体
(MAb)を産生するために、ハイブリドーマ技術を使用し、抗体をグリコシル化ICP
またはそのグリコシル化ペプチドへの特異的結合についてスクリーニングする。本発明の
方法によれば、グリコシル化ICPまたはそのグリコシル化ペプチドは、免疫応答を誘発
するため、およびグリコシル化ICPに対する抗体を産生するB細胞を生成するために、
非ヒト動物を免疫するための抗原または免疫原として使用される。次に、抗体を、ICP
の非グリコシル化形態と比較してグリコシル化ICPへの特異的結合およびグリコシル化
ICPへの優先的結合についてスクリーニングする。抗体はまた、そのICP結合パート
ナーへのグリコシル化ICPの結合の遮断または阻害についてスクリーニングしてもよい
。一例において、抗体は、グリコシル化PD-L1に選択的かつ優先的に結合し、PD-
1へのPD-L1の結合を遮断または阻害する。あるいは、抗体は、グリコシル化PD-
1に選択的かつ優先的に結合し、PD-L1またはPD-L2を含むPD-1の結合パー
トナーへのPD-1の結合を遮断または阻害する。本明細書において提供される方法によ
って選択および同定された抗体は、ICPによって媒介される免疫抑制活性を調節するこ
とができる治療剤として、または生物試料中のグリコシル化ICPを検出および特徴付け
するために有用な試薬としての用途を有する。
【0044】
モノクローナル抗体は、所定の標的抗原に対して単特異的である抗体である。MAbは
、標的抗原を対象とするが様々なB細胞によって産生されるポリクローナル抗体とは対照
的に、独自の親B細胞の全てのクローンである同一の免疫B細胞によって合成および産生
される。モノクローナル抗体は、一価の親和性を有し、同じエピトープに結合する。一般
的に、抗体を生成するための免疫原として使用される標的抗原に特異的に結合するモノク
ローナル抗体を産生することができる。そのようなMAbは、標的抗原を検出もしくは精
製するために、または標的抗原の生物活性を調節するために役立ちうる。加えて、所定の
標的抗原に対して特異性を有するMAb、特に単離および精製されたMAbを、がん、腫
瘍などの疾患および病的状態の処置に使用してもよい。実施形態において、標的抗原はグ
リコシル化ICPまたはそのグリコシル化ペプチド部分である。実施形態において、グリ
コシル化ICPまたはそのグリコシル化ペプチド部分に対して生成されたMAbは、非グ
リコシル化ICPと比較してグリコシル化ICPを特異的かつ選択的に認識して結合する
。
【0045】
定義
本明細書において使用される用語「1つの(a)」または「1つの(an)」は、1つま
たは複数を意味しうる。
【0046】
本明細書において使用される用語「または」は、代替物のみを指すことが明白に示され
ている場合、または代替物が相互に排他的である場合を除き「および/または」を意味す
るが、本開示は、代替物のみと「および/または」を指す定義を支持する。
【0047】
本明細書において使用される用語「別の」は、少なくとも2番目以上を意味する。
【0048】
本明細書において使用される用語「約」は、方法が、値または試験対象間に存在する変
動を決定するために使用される、値が装置の固有の誤差の変動を含むことを示すために使
用される。
【0049】
本明細書において使用される用語「プログラム死リガンド-1」または「PD-L1」
は、特に示していなければ、哺乳動物、例えば霊長類(例えば、ヒト、カニクイザル(c
yno))、イヌ、および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)を含む任意の脊椎動物
源由来のポリペプチド(用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は本明細書において
互換的に使用される)または任意のネイティブPD-L1を指し、ある特定の実施形態に
おいて、様々なPD-L1アイソフォーム、そのSNP変種を含む関連するPD-L1ポ
リペプチドを含む。同様に、用語「プログラム細胞死1」または「PD-1」は、霊長類
(例えば、ヒト、カニクイザル(cyno))、イヌ、および齧歯類(例えば、マウスお
よびラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物起源のPD-1を指す。特に示してい
なければ、PD-1はまた、様々なPD-1アイソフォーム、そのSNP変種を含む関連
するPD-1ポリペプチド、ならびにリン酸化PD-1、グリコシル化PD-1、および
ユビキチン化PD-1を含むが、これらに限定されないPD-1の異なる改変形態も含む
。
【0050】
ヒトPD-L1の例示的なアミノ酸配列(UniProtKB/Swiss-Prot
:Q9NZQ7.1;GI:83287884)を以下に提供する:
MRIFAVFIFM TYWHLLNAFT VTVPKDLYVV EYGSNMT
IEC KFPVEKQLDL AALIVYWEME DKNIIQFVHG EED
LKVQHSS YRQRARLLKD QLSLGNAALQ ITDVKLQDAG
VYRCMISYGG ADYKRITVKV NAPYNKINQR ILVVDP
VTSE HELTCQAEGY PKAEVIWTSS DHQVLSGKTT TT
NSKREEKL FNVTSTLRIN TTTNEIFYCT FRRLDPEEN
H TAELVIPELP LAHPPNERTH LVILGAILLC LGVAL
TFIFR LRKGRMMDVK KCGIQDTNSK KQSDTHLEET(配
列番号1)。配列番号1において、アミノ末端のアミノ酸1~18は、ヒトPD-L1タ
ンパク質のシグナル配列を構成する。したがって、成熟ヒトPD-L1タンパク質は、配
列番号1のアミノ酸19~290からなる。
【0051】
ヒトPD-1の例示的なアミノ酸配列(UniProtKB:Q15116.3 GI
:145559515)を以下に提供する:
MQIPQAPWPV VWAVLQLGWR PGWFLDSPDR PWNPPTF
SPA LLVVTEGDNA TFTCSFSNTS ESFVLNWYRM SPS
NQTDKLA AFPEDRSQPG QDCRFRVTQL PNGRDFHMSV
VRARRNDSGT YLCGAISLAP KAQIKESLRA ELRVTE
RRAE VPTAHPSPSP RPAGQFQTLV VGVVGGLLGS LV
LLVWVLAV ICSRAARGTI GARRTGQPLK EDPSAVPVF
S VDYGELDFQW REKTPEPPVP CVPEQTEYAT IVFPS
GMGTS SPARRGSADG PRSAQPLRPE DGHCSWPL(配列番
号2)。配列番号2において、グリコシル化アミノ酸残基を下線および太字で示す。同様
に配列番号2において、アミノ末端アミノ酸1~20位は、ヒトPD-1タンパク質のシ
グナル配列を構成する。したがって、成熟ヒトPD-1タンパク質は、配列番号2のアミ
ノ酸21~288位からなる。
【0052】
本明細書において記述されるポリペプチドおよびペプチドを構成するアミノ酸残基の略
語、ならびにこれらのアミノ酸残基対する保存的置換を、以下の表2に示す。1つまたは
複数の保存的アミノ酸置換を含むポリペプチド、または本明細書において記述されるポリ
ペプチドの保存的に改変された変種は、当初のまたは天然に存在するアミノ酸が、類似の
特徴、例えば類似の電荷、疎水性/親水性、側鎖の大きさ、骨格のコンフォメーション、
構造、および剛性などを有する他のアミノ酸に置換されているポリペプチドを指す。この
ため、これらのアミノ酸変化は、典型的に、ポリペプチドの生物活性、機能、または他の
所望の特性、例えば抗原に対するその親和性またはその特異性を変更することなく行われ
うる。一般的に、ポリペプチドの非必須領域における1つのアミノ酸置換は、生物活性を
実質的に変更しない。さらに、構造または機能が類似であるアミノ酸の置換は、ポリペプ
チドの生物活性を妨害する可能性がより低い。
【0053】
【0054】
用語「抗体」、「免疫グロブリン」、および「Ig」は、本明細書において広い意味で
互換的に使用され、具体的に、以下に記述されるように、例えば個々の抗グリコシル化I
CP抗体、例えば本明細書において記述されるモノクローナル抗体(アゴニスト、アンタ
ゴニスト、中和抗体、完全長またはインタクトモノクローナル抗体、抗原結合活性を維持
している抗体のペプチド断片を含む)、抗非グリコシル化ICP抗体、および抗グリコシ
ル化ICP抗体、ポリエピトープまたはモノエピトープ特異性を有する抗ICP抗体組成
物、ポリクローナル抗体または一価抗体、多価抗体、少なくとも2つのインタクト抗体ま
たはその抗原結合断片から形成される多重特異性抗体(例えば、それらが所望の生物活性
を示す限り二重特異性抗体または二重パラトープ性抗体)、一本鎖抗ICP抗体、および
抗ICP抗体の断片が範囲に含まれる。抗体は、ヒト、ヒト化、キメラ、および/または
親和性成熟抗体でありうる。抗体は、他の種、例えばマウス、ラット、ウサギなど由来で
あってもよい。用語「抗体」は、特異的分子抗原に結合することができるポリペプチドの
免疫グロブリンクラス内のB細胞のポリペプチド産物を含むと意図される。抗体は典型的
に、ポリペプチド鎖の2つの同一の対で構成され、それぞれの対は、1つの重鎖(約50
~70kDa)と1つの軽鎖(約25kDa)を有し、重鎖および軽鎖のアミノ末端部分
は、約100~約130またはそれ超のアミノ酸の可変領域を含み、それぞれの鎖のカル
ボキシ末端部分は定常領域を含む(Borrebaeck (ed.), 1995, Antibody Engineering, Se
cond Ed., Oxford University Press.; Kuby, 1997, Immunology, Third Ed., W.H. Free
man and Company, New Yorkを参照されたい)。特異的実施形態において、本明細書にお
いて提供される抗体が結合する特異的分子抗原は、ICP抗原ポリペプチド、ICPペプ
チド断片、またはICPエピトープを含む。ICPポリペプチド、ICPペプチド断片、
またはICPエピトープは、非グリコシル化またはグリコシル化されうる。特定の実施形
態において、ICPポリペプチド、ICPペプチド断片、またはICPエピトープはグリ
コシル化される。ICP抗原に結合する抗体またはそのペプチド断片は、例えば、イムノ
アッセイ、BIAcore、または当業者に公知のおよび本明細書における実施例におい
て記述される他の技術によって同定することができる。抗体またはその断片は、ラジオイ
ムノアッセイ(RIA)および酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)などの
実験技術を使用して決定した場合に、いかなる交叉反応抗原よりも高い親和性でICP抗
原に結合するとき、ICP抗原に特異的に結合する。典型的に、特異的または選択的結合
反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍、より典型的に、バッ
クグラウンドシグナルまたはノイズの5~10倍超である。例えば、抗体特異性に関する
考察に関しては、Paul, ed., 1989, Fundamental Immunology Second Edition, Raven Pr
ess, New York at pages 332-336を参照されたい。
【0055】
本明細書において提供される抗体には、合成抗体、モノクローナル抗体、組み換え産生
された抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ
化抗体、キメラ抗体、イントラボディ、抗イディオタイプ抗体(抗Id)、および上記の
いずれか1つの機能的断片(例えば、グリコシル化ICP結合断片などの抗原結合断片)
が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。結合断片は、抗体重鎖または軽鎖ポリ
ペプチドの一部、例えば断片が由来する抗体の結合活性のいくつかまたは全てを保持する
ペプチド部分を指す。機能的断片(例えば、ICP結合断片などの抗原結合断片)の非限
定的な例には、一本鎖Fv(scFv)(例えば、単特異性、二重特異性、二重パラトー
プ性、一価(例えば単一のVHまたはVLドメインを有する)、または二価等)、Fab
断片、F(ab’)断片、F(ab)2断片、F(ab’)2断片、ジスルフィド結合F
v(sdFv)、Fd断片、Fv断片、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、お
よびミニボディが挙げられる。特に、本明細書において提供される抗体は、免疫グロブリ
ン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、例えばICP抗原、特にグリ
コシル化ICP抗原に結合する抗原結合部位(例えば、抗グリコシル化ICP抗体の1つ
または複数の相補性決定領域(CDR))を含む抗原結合ドメインまたは分子を含む。そ
のような抗体断片の説明は、例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manu
al, Cold Spring Harbor Laboratory, New York(1989); Myers (ed.), Molec. Biology a
nd Biotechnology: A Comprehensive Desk Reference, New York: VCH Publisher, Inc.
;Huston et al., Cell Biophysics, 22:189-224(1993);Pluckthun and Skerra, Meth.
Enzymol., 178:497-515(1989) and in Day, E.D., Advanced Immunochemistry, Second E
d., Wiley-Liss, Inc., New York, NY(1990)に見出されうる。本明細書において提供され
る抗体は、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、Ig
D、IgA、およびIgY)、任意のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、
IgG4、IgA1、およびIgA2)、または任意のサブクラス(例えば、IgG2a
およびIgG2b)の抗体でありうる。抗PD-L1抗体は、アゴニスト抗体またはアン
タゴニスト抗体でありうる。ある特定の実施形態において、抗ICP抗体は、完全ヒト、
例えば完全ヒトモノクローナル抗ICP抗体である。ある特定の実施形態において、抗I
CP抗体は、ヒト化されており、例えば、ヒト化モノクローナル抗ICP抗体である。あ
る特定の実施形態において、本明細書において提供される抗体は、IgG抗体、またはそ
のクラス(例えば、ヒトIgG1またはIgG4)もしくはサブクラス、特にIgG1サ
ブクラスの抗体である。
【0056】
4本鎖抗体単位は、2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖で構成されるヘ
テロ4量体糖タンパク質である。IgGの場合、4本鎖(非還元)抗体単位の分子量は、
一般的に約150,000ダルトンである。それぞれのL鎖は、1つの共有ジスルフィド
結合によってH鎖に連結され、H鎖のアイソタイプに応じて、2つのH鎖が1つまたは複
数のジスルフィド結合によって互いに連結される。それぞれのHおよびL鎖はまた、規則
正しい間隔の鎖内ジスルフィド架橋を有する。N末端において、それぞれのH鎖は、可変
ドメイン(VH)の後に、αおよびγ鎖のそれぞれにつき3つの定常ドメイン(CH)を
有し、μおよびεアイソタイプにつき4つのCHドメインを有する。それぞれのL鎖は、
N末端において可変ドメイン(VL)を有し、その後にそのカルボキシ末端において定常
ドメイン(CL)を有する。VLドメインは、VHドメインと整列し、CLドメインは、
重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と整列する。特定のアミノ酸残基が、軽鎖と重鎖可
変ドメインの間の界面を形成すると考えられている。VHおよびVLが共に対形成すると
、単一の抗原結合部位を形成する。免疫グロブリン分子の基本構造は、当業者によって理
解される。例えば、抗体の異なるクラスの構造および特性は、Basic and Clinical Immun
ology, 8th edition, Daniel P. Stites, Abba I. Terr and Tristram G. Parslow (eds.
), Appleton & Lange, Norwalk, CT, 1994, page 71 and Chapter 6において見出されう
る。
【0057】
本明細書において使用される用語「抗原」または「標的抗原」は、抗体が選択的に結合
することができる既定の分子である。標的抗原は、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、
核酸、脂質、ハプテン、または他の天然に存在するもしくは合成の化合物でありうる。実
施形態において、標的抗原は低分子である。ある特定の実施形態において、標的抗原は、
ポリペプチドまたはペプチドであり、好ましくはグリコシル化ICPである。
【0058】
本明細書において使用される用語「抗原結合断片」、「抗原結合ドメイン」、「抗原結
合領域」、および類似の用語は、抗原と相互作用して、結合剤としての抗体に、抗原に対
するその特異性および親和性を付与するアミノ酸残基を含む抗体の部分を指す(例えば、
抗体のCDRは、抗原結合領域である)。抗原結合領域は、任意の動物種、例えば齧歯類
(例えば、ウサギ、ラット、またはハムスター)およびヒトに由来しうる。特異的実施形
態において、抗原結合領域は、ヒト起源の領域でありうる。
【0059】
「単離」抗体は、細胞材料または細胞もしくは組織起源の他の混入タンパク質、および
/または抗体が由来する他の混入成分を実質的に含まず、または化学合成されるときの化
学前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない。語句「細胞材料を実質的に含まない
」には、単離されたまたは組み換え産生された細胞の細胞成分から分離されている抗体の
調製物を含む。このため、細胞材料を実質的に含まない抗体は、異種タンパク質(本明細
書において「混入タンパク質」とも呼ばれる)の約30%、25%、20%、15%、1
0%、5%、または1%未満(乾燥重量で)を有する抗体の調製物を含む。ある特定の実
施形態において、抗体が組み換え産生されるとき、抗体は培養培地を実質的に含まず、例
えば、培養培地はタンパク質調製物の体積の約20%、15%、10%、5%、または1
%未満を表す。ある特定の実施形態において、抗体が化学合成によって産生されるとき、
抗体は、化学前駆体または他の化学物質を実質的に含まず、例えば抗体は、タンパク質の
合成に関係する化学前駆体または他の化学物質から分離されている。したがって、抗体の
そのような調製物は、目的の抗体以外の化学前駆体または化合物の約30%、25%、2
0%、15%、10%、5%、または1%未満(乾燥重量で)を有する。混入成分はまた
、抗体に対する治療的使用を妨げる材料を含みうるがこれらに限定されるわけではなく、
酵素、ホルモン、および他のタンパク質様または非タンパク質様溶質を含みうる。ある特
定の実施形態において、抗体は、(1)ローリー法(Lowry et al., J. Bio. Chem., 193
: 265-275, 1951)によって決定した場合に、抗体の95重量%より大きいもしくはそれ
に等しい、例えば95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、もしくは99重量
%まで、(2)スピニングカップシーケネーターを使用することによって、N-末端もし
くは内部のアミノ酸配列の少なくとも15残基を得るために十分な程度まで、または(3
)クーマシーブルーもしくは銀染色を使用して還元もしくは非還元条件下でSDS-PA
GEによって均一となるまで、精製される。単離抗体はまた、抗体の天然の環境の少なく
とも1つの成分が存在しないことから、組み換え細胞内のその場の抗体を含む。単離抗体
は、典型的に少なくとも1つの精製ステップによって調製される。いくつかの実施形態に
おいて、本明細書において提供される抗体は単離されている。
【0060】
本明細書において使用される用語「結合する」または「結合している」は、例えば複合
体の形成を含む分子間の相互作用を指す。実例として、そのような相互作用は、水素結合
、イオン結合、疎水性相互作用、およびファンデルワールス相互作用を含む非共有結合的
相互作用を包含する。複合体はまた、共有もしくは非共有結合、相互作用、または力によ
って共に保持される2つまたはそれ超の分子の結合を含みうる。抗体の1つの抗原結合部
位と、PD-L1またはPD-1などの標的(抗原)分子上のそのエピトープの間の全体
的な非共有結合的相互作用の強度は、そのエピトープについての抗体または機能的断片の
親和性である。一価の抗原への抗体の結合(kon)と解離(koff)との比率(ko
n/koff)は、結合定数Kであり、これは親和性の測定値である。Kの値は、抗体お
よび抗原の異なる複合体ごとに異なり、konおよびkoffの両方に依存する。本明細
書において提供される抗体に対する結合定数Kは、本明細書において提供される任意の方
法、または当業者に公知の他の任意の方法を使用して決定されうる。1つの結合部位での
親和性は、抗体と抗原の間の相互作用の真の強度を必ずしも反映しない。多数の反復抗原
性決定基を含む複合抗原が、多数の結合部位を含む抗体と接触するとき、1つの部位で抗
体と抗原とが相互作用すると、第2の結合部位での相互作用の確率が増加する。多価抗体
と抗原の間のそのような多数の相互作用の強度は、アビディティと呼ばれる。抗体のアビ
ディティは、その個々の結合部位の親和性よりもその結合能のよりよい尺度でありうる。
例えば、高いアビディティは、時に、IgGより低い親和性を有しうる5量体のIgM抗
体において見出されるように低い親和性を補うことができるが、IgMのアビディティが
その多価性に起因して高い場合、IgMは抗原に有効に結合することができる。
【0061】
「結合親和性」は、一般的に、ある分子(例えば、抗体などの結合タンパク質)の1つ
の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)の間の非共有結合的相互作用の合計の
強度を指す。特に示していなければ、本明細書において使用される「結合親和性」は、結
合対のメンバー(例えば、抗体と抗原)間の1:1相互作用を反映する内因性の結合親和
性を指す。結合分子Xのその結合パートナーYに対する親和性は、一般的に解離定数(K
d)によって表されうる。親和性は、本明細書において記述される方法を含む、当技術分
野で公知の一般的な方法によって測定することができる。低親和性抗体は一般的に、抗原
への結合が遅く、容易に解離する傾向があるが、高親和性抗体は一般的に、抗原への結合
が速く、抗原により長い時間結合したままである傾向がある。結合親和性を測定する多様
な方法が当技術分野で公知であり、そのいずれも、本開示の目的のために使用されうる。
特異的な例示的実施形態は、以下を含む:一実施形態において、「Kd」または「Kd値
」は、当技術分野で公知のアッセイ、例えば結合アッセイによって測定される。Kdは、
例えば目的の抗体のFab部分とその抗原について実施される放射標識抗原結合アッセイ
(RIA)において測定することができる(Chen, et al., (1999) J. Mol. Biol 293:86
5-881)。KdまたはKd値はまた、例えばBIAcore(商標)-2000またはB
IAcore(商標)-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,
NJ)を使用する表面プラズモン共鳴アッセイ(BIAcoreによる)を使用すること
によって、または例えばOctetQK384システム(ForteBio,Menlo
Park,CA)を使用するバイオレイヤー干渉法によっても測定することができる。
「オンレート」または「結合の速度」または「結合速度」または「kon」はまた、例え
ばBIAcore(商標)-2000もしくはBIAcore(商標)-3000(BI
Acore,Inc.,Piscataway,NJ)、またはOctetQK384シ
ステム(ForteBio,Menlo Park,CA)を使用する、上記の同じ表面
プラズモン共鳴またはバイオレイヤー干渉法によって決定することもできる。
【0062】
用語「抗glyICP抗体」、「グリコシル化ICPに特異的に結合する抗体」、また
は「グリコシル化ICPに対して特異的である抗体」、「グリコシル化ICPエピトープ
に特異的に結合する抗体」、「グリコシル化ICPに選択的に結合する抗体」、「グリコ
シル化ICPエピトープに選択的に結合する抗体」、「グリコシル化ICPエピトープに
優先的に結合する抗体」および類似の用語は、本明細書において互換的に使用され、十分
な親和性および特異性で、ICP、すなわちグリコシル化またはWT ICPに結合する
ことができる抗体を指す。抗グリコシル化ICP抗体は、グリコシル化ICP抗原、ペプ
チド断片、またはエピトープ(例えば、ヒトPD-L1ポリペプチド、抗原、またはエピ
トープなどのヒトPD-L1)などのグリコシル化ICPポリペプチドに特異的に結合す
る。本明細書において提供される抗glycICP抗体の「優先的結合」は、例えばグリ
コシル化PD-L1に優先的に結合する抗体について本明細書の実施例2において記述し
たように、ICPの非グリコシル化形態を発現する細胞への結合などの適切な対照と比較
した、細胞上に発現するグリコシル化ICPへの抗体の結合の蛍光強度の定量に基づいて
決定されうる。記述の抗ICP抗体のグリコシル化ICPポリペプチドまたはグリコシル
化ICP発現細胞への優先的結合は、実施例2に記述されるアッセイを使用して、非グリ
コシル化ICPポリペプチドまたは非グリコシル化ICP発現細胞への抗体の結合と比較
して、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なく
とも5倍、少なくとも6倍、少なくとも67倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍、少
なくとも14倍、少なくとも20倍またはそれ超高い、測定される蛍光結合強度(MFI
)値によって示される。実施形態において、グリコシル化ICPに優先的または選択的に
結合する抗glycICP抗体は、例えば実施例2におけるフローサイトメトリーアッセ
イに従って決定した場合に、ICPの非グリコシル化形態または完全にはグリコシル化さ
れていないICPグリコシル化変種を発現する細胞の結合についての同じ抗体のMFI値
より、ICPのグリコシル化形態を発現する細胞の結合について、1.5倍から25倍、
または2倍から20倍、または3倍から15倍、または4倍から8倍、または2倍から1
0倍、または2倍から5倍大きいMFIを示す。前述の全ての間のおよび全てに等しい蛍
光強度の倍率値が含まれると意図される。
【0063】
実施形態において、ヒトグリコシル化ICP(例えば、ヒトPD-L1)に特異的に結
合する抗体は、少なくとも1つのN連結グリコシル化アミノ酸を含む細胞外ドメイン(E
CD)またはグリコシル化ICPのECDに由来するペプチドに結合することができる。
ヒトグリコシル化ICP抗原(例えば、ヒトPD-L1)に特異的に結合する抗体は、近
縁の抗原(例えば、カニクイザル(cyno)ICP抗原)と交差反応することができる
。好ましい実施形態において、ヒトグリコシル化ICP抗原に特異的に結合する抗体は、
他のICP抗原と交差反応しない。ヒトグリコシル化ICP抗原に特異的に結合する抗体
は、例えばイムノアッセイ法、Biacore、または当業者に公知の他の技術によって
同定することができる。ある特定の実施形態において、本明細書において記述されるヒト
グリコシル化ICPに結合する抗体は、20nM、19nM、18nM、17nM、16
nM、15nM、14nM、13nM、12nM、11nM、10nM、9nM、8nM
、7nM、6nM、5nM、4nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM
、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、または0.1nM未満であるかま
たはそれに等しい、および/または0.1nM超であるかまたはそれに等しい解離定数(
Kd)を有する。ある特定の実施形態において、グリコシル化ICPに結合する抗体は、
異なる種(例えば、ヒトとcyno PD-L1の間)のICPにおいて保存されている
そのタンパク質のエピトープに結合する。抗体は、ラジオイムノアッセイ(RIA)、お
よび酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などの実験技術を使用して決定した場合に
、任意の交差反応抗原より高い親和性でグリコシル化ICPに結合する場合、グリコシル
化ICP抗原に特異的に結合する。典型的に、特異的または選択的反応は、バックグラウ
ンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍であり、バックグラウンドの10倍超であり
うる。例えば、抗体の特異性に関する考察に関しては、Paul, ed., 1989, Fundamental I
mmunology Second Edition, Raven Press, New York at pages 332 336を参照されたい。
そのような実施形態において、「非標的」タンパク質への抗体の結合の程度は、例えば蛍
光活性化細胞ソーティング(FACS)分析または放射免疫沈殿(RIA)によって決定
した場合に、その特定の標的タンパク質への抗体の結合の約10%未満と予想される。
【0064】
実施形態において、抗グリコシル化ICP抗体は、グリコシル化ICPに対して特異的
である抗体、例えば抗グリコシル化ICP抗体または抗野生型ICP(ICP WT)抗
体を含み、野生型ICPタンパク質はグリコシル化されており、グリコシル化ICPに対
して特異的である抗体を含む。好ましい実施形態において、抗グリコシル化ICP抗体は
、非グリコシル化ICPと比較してグリコシル化ICPに特異的かつ優先的に結合する。
いくつかの実施形態において、抗グリコシル化ICP抗体は、ICPの線形のグリコシル
化モチーフに結合する。いくつかの実施形態において、抗グリコシル化ICP抗体は、三
次元においてグリコシル化モチーフの1つまたは複数の近位に位置するペプチド配列に結
合する。いくつかの実施形態において、抗グリコシル化ICP抗体は、非グリコシル化I
CPと比較してグリコシル化モチーフを有するICPまたはそのペプチドの1つまたは複
数のグリコシル化モチーフに選択的に結合する。他の実施形態において、抗グリコシル化
ICP抗体は、ICPアミノ酸配列の連続アミノ酸を含む線形のエピトープに結合する。
なお他の実施形態において、抗グリコシル化ICP抗体は、グリコシル化ICPの不連続
アミノ酸を含むコンフォメーション(非線形)エピトープに結合する。いくつかの実施形
態において、抗グリコシル化ICP抗体またはその結合部分は、非グリコシル化ICPと
比較して示されるKdの少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、
または90%より小さいKdでグリコシル化ICPに結合する。ある特定の実施形態にお
いて、抗glycICP抗体またはその結合部分は、非グリコシル化ICPと比較して示
されるKdより50%より小さいKdでグリコシル化ICPに結合する。いくつかの実施
形態において、抗glycICP抗体またはその結合部分は、非グリコシル化ICPと比
較して示されるKdの1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%
、15%、20%、30%、40%、50%より小さいKdでグリコシル化ICPに結合
する。さらなる態様において、抗glycICP抗体またはその結合部分は、非グリコシ
ル化ICPと比較して示されるKdより少なくとも5~10倍小さいKdでグリコシル化
ICPに結合する。一実施形態において、抗glycICP抗体またはその結合部分は、
非グリコシル化ICPと比較して示されるKdより少なくとも10倍小さいKdでグリコ
シル化ICPに結合する。ある特定の実施形態において、抗体は、ICPの非グリコシル
化形態への結合によって示されるKdの1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8
%、9%、10%、15%、または20%以下であるKdでグリコシル化ICPに結合す
る。一実施形態において、抗ICP抗体またはその結合部分は、ナノモル濃度の親和性で
、例えば下限および上限の値を含む5~20nMまたは10~20nMの親和性で、グリ
コシル化ICPに結合する。
【0065】
本明細書において抗体を参照して使用される用語「重(H)鎖」は、アミノ末端部分が
約115~130またはそれ超のアミノ酸の可変(V)領域(Vドメインとも呼ばれる)
を含み、カルボキシ末端部分が定常(C)領域を含む、約50~70kDaのポリペプチ
ド鎖を指す。定常領域(または定常ドメイン)は、重鎖定常領域のアミノ酸配列に基づき
、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)、およびミュー(μ
)と呼ばれる異なる5つのタイプ(例えば、アイソタイプ)の1つでありうる。異なる重
鎖は、大きさが異なる:α、δ、およびγは、およそ450アミノ酸を含むが、μおよび
εは、およそ550アミノ酸を含む。軽鎖と併せると、これらの異なるタイプの重鎖はそ
れぞれ、5つの周知のクラス(例えば、アイソタイプ)の抗体、すなわち、IgA、Ig
D、IgE、IgG、およびIgMを生じ、IgGの4つのサブクラス、すなわちIgG
1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む。抗体重鎖は、ヒト抗体重鎖でありうる
。
【0066】
本明細書において抗体を参照して使用される用語「軽(L)鎖」は、約25kDaのポ
リペプチド鎖を指し、アミノ末端部分は、約100~約110またはそれ超のアミノ酸の
可変ドメインを含み、カルボキシ末端部分は、定常領域を含む。軽鎖(VおよびCドメイ
ンの両方)のおおよその長さは、211~217アミノ酸である。軽鎖には2つの異なる
タイプが存在し、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(κ)およびラムダ(λ
)と呼ばれる。軽鎖アミノ酸配列は、当技術分野で周知である。抗体軽鎖は、ヒト抗体軽
鎖でありうる。
【0067】
本明細書において使用される用語「可変(V)領域」または「可変(V)ドメイン」は
、軽(L)または重(H)鎖のアミノ末端に一般的に位置する抗体ポリペプチドのL鎖ま
たはH鎖の部分を指す。H鎖Vドメインは、約115~130アミノ酸長を有するが、L
鎖Vドメインは、約100~110アミノ酸長である。HおよびL鎖Vドメインは、その
特定の抗原に対するそれぞれの特定の抗体の結合および特異性において使用される。H鎖
のVドメインは、「VH」と呼ばれうる。L鎖のV領域は、「VL」と呼ばれうる。用語
「可変」は、Vドメインのある特定の区分が、異なる抗体の間で配列が大きく異なるとい
う事実を指す。Vドメインは、抗原の結合を媒介して、その特定の抗原に対する特定の抗
体の特異性を定義するが、可変性は抗体Vドメインの110アミノ酸の全長にわたって均
一に分布しているわけではない。その代わりに、Vドメインは、それぞれが約9~12ア
ミノ酸長である「超可変領域」または「相補性決定領域」(CDR)と呼ばれるより大き
い可変性(例えば、極度の可変性)のより短い領域によって隔てられた約15~30アミ
ノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれるより可変性の低い(例えば、比較的不変で
ある)鎖からなる。抗体HおよびL鎖のVドメインはそれぞれ、4つのFRを含み、これ
らは大部分がβシート立体配座を採用し、3つの超可変領域で接続され、βシート構造を
接続するループを形成し、いくつかの例ではβシート構造の一部を形成する。それぞれの
鎖における超可変領域は、FRによって共に近位に保持され、他の鎖からの超可変領域と
共に、抗体の抗原結合部位の形成に関与する(例えば、Kabat et al., Sequences of Pro
teins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institu
tes of Health, Bethesda, MD, 1991を参照されたい))。Cドメインは、抗原への抗体
の結合に直接関与しないが、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)および補体依存性細胞傷
害性(CDC)などの様々なエフェクター機能を示す。Vドメインは、異なる抗体クラス
またはタイプでは配列が大きく異なる。配列の多様性は、CDRに集中し、これは主に抗
体と抗原との相互作用の原因である。特異的実施形態において、抗体の可変ドメインはヒ
トまたはヒト化可変ドメインである。
【0068】
本明細書において使用される用語「相補性決定領域」、「CDR」、「超可変領域」、
「HVR」、および「HV」は、互換的に使用される。「CDR」は、抗体VHβシート
フレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(H1、H2、もしくはH
3)の1つ、または抗体VLβシートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの
超可変領域(L1、L2、もしくはL3)の1つを指す。この用語は、本明細書において
使用されるとき、配列が高度に可変でありおよび/または構造的に定義されたループを形
成する抗体Vドメインの領域を指す。一般的に、抗体は、6つの超可変領域:VHドメイ
ンにおける3つ(H1、H2、H3)およびVLドメインにおける3つ(L1、L2、L
3)を含む。したがって、CDRは、典型的に、Vドメインのフレームワーク領域配列内
に介在する高度に可変の配列である。「フレームワーク」または「FR」残基は、CDR
に隣接するそれらの可変領域残基である。FR残基は、例えばキメラ、ヒト化、ヒト、ド
メイン抗体、ダイアボディ、線形抗体、二重特異性抗体または二重パラトープ性抗体に存
在する。
【0069】
多数の高度可変領域の描写が使用されており、本明細書において包含される。CDR領
域は当業者に周知であり、例えば、抗体Vドメイン内の最も超可変性の領域としてKab
atによって定義されている(Kabat et al., J. Biol. Chem. 252:6609-6616(1977); Ka
bat, Adv. Prot. Chem. 32:1-75(1978))。Kabat CDRは、配列多様性に基づい
ており、最も一般的に使用される(例えば、Kabat et al., Sequences of Proteins of I
mmunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Hea
lth, Bethesda, MD. (1991)を参照されたい)。CDR領域配列はまた、保存されたβシ
ートフレームワークの一部ではなく、このため異なる立体構造を採用することができる残
基としてChothiaによって構造的に定義されている(Chothia and Lesk, J. Mol.
Biol. 196:901-917(1987))。Chothiaは、その代わりに構造ループの位置を指す
。Kabat付番の慣例を使用して付番したときのChothiaのCDR-H1ループ
の末端は、ループの長さに応じてH32からH34の間で変化する(これは、Kabat
の付番スキームがH35AおよびH35Bで挿入を配置するために起こり;35Aも35
Bのいずれも存在しなければ、ループは32で終了し、35Aのみが存在する場合ループ
は33で終了し、35Aと35Bの両方が存在する場合、ループは34で終了する)。い
ずれの付番システムおよび専門用語も当技術分野で十分に認識されている。
【0070】
最近、普遍的な付番システム、ImMunoGeneTics(IMGT)情報システ
ム(登録商標)(Lafranc et al., Dev. Comp. Immunol. 27(1):55-77(2003))が開発さ
れて、広く使用されている。IMGTは、免疫グロブリン(Ig)、T細胞受容体(TR
)、ならびにヒトおよび他の脊椎動物の主要組織適合複合体(MHC)を専門とする総合
情報システムである。本明細書において、CDRは、アミノ酸配列と、軽鎖または重鎖内
の位置の両方に関して参照される。免疫グロブリンVドメインの構造内のCDRの「位置
」は、構造特徴に従って可変ドメイン配列を整列させる付番システムを使用することによ
って、種の間で保存されており、ループと呼ばれる構造で存在することから、CDRおよ
びフレームワーク残基は容易に同定される。この情報は、1つの種の免疫グロブリンから
のCDR残基を典型的にヒト抗体からのアクセプターフレームワークに移植および置換す
るために使用することができる。追加の付番システム(AHon)が、Honegger and Plu
ckthun, J. Mol. Biol. 309: 657-670 (2001)によって開発されている。例えば、Kab
atの付番とIMGTの独自の付番システムを含む付番システム間の対応は、当業者に周
知である(例えば、Kabat、上記;Chothia and Lesk、上記;Martin、上記;およびLefra
nc et al., 1999, Nuc. Acids Res., 27:209-212を参照されたい)。
【0071】
CDR領域配列はまた、AbM、Contact、およびIMGTによっても定義され
ている。AbM超可変領域は、Kabat CDRとChothia構造ループの間の妥
協点を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェア(
例えば、Martin, in Antibody Engineering, Vol. 2, Chapter 3, Springer Verlagを参
照されたい)によって使用される。「contact」超可変領域は、利用可能な複合体
の結晶構造の解析に基づく。これらの超可変領域またはCDRのそれぞれからの残基を以
下に記す。
【0072】
CDR領域配列の例示的な描写を、以下の表3に例示する。標準的な抗体可変領域内の
CDRの位置は、多数の構造との比較によって決定されている(Al-Lazikani et al., J.
Mol. Biol. 273:927-948 (1997); Morea et al., Methods 20:267-279 (2000))。超可
変領域内の残基数は、異なる抗体において変化することから、標準的な可変領域付番スキ
ーム(Al-Lazikani et al.,上記(1997))では、標準的な位置と比較した追加の残基を、
慣例によって残基番号の次にa、b、cなどと付番する。そのような命名法は同様に当業
者に周知である。
【0073】
【0074】
「親和性成熟」抗体は、それらの変更を有しない親抗体と比較して、抗原に対する抗体
の親和性の改善が起こる、1つまたは複数のそのHVRにおける1つまたは複数の変更(
例えば、変化、付加、および/または欠失を含むアミノ酸配列の変動)を有する抗体であ
る。ある特定の実施形態において、親和性成熟抗体は、標的抗原、例えばグリコシル化P
D-L1に対してナノモル濃度またはピコモル濃度の親和性さえ有すると予想される。親
和性成熟抗体は、当技術分野で公知の技法によって産生される。総説に関しては、Hudson
and Souriau, Nature Medicine 9:129-134(2003);Hoogenboom, Nature Bioethanol. 23
:1105-1116(2005);Quiroz and Sinclair, Revitas Ingeneria Biomedia 4 : 39-51(2010
)を参照されたい。
【0075】
「キメラ」抗体は、所望の生物活性を示す限り、Hおよび/またはL鎖の一部、例えば
Vドメインが、特定の種に由来するまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する
抗体における対応するアミノ酸配列と同一または相同であるが、鎖の残り、例えばCドメ
インは、別の種に由来するまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体におけ
る対応する配列と同一または相同である抗体、ならびにそのような抗体の断片である(例
えば、米国特許第4,816,567号明細書;およびMorrison et al., Proc. Natl. A
cad. Sci. USA, 81:6851-6855(1984)を参照されたい)。
【0076】
「ヒト化」された非ヒト(例えば、マウス)抗体は、本来のCDR残基が、所望の特異
性、親和性、ならびに抗原結合および相互作用能を有する非ヒト種(例えば、ドナー抗体
)、例えばマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類の対応するCDRの残基で置き
換えられているヒト免疫グロブリン配列を指す抗体(例えば、レシピエント抗体)のキメ
ラ形態である。いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンの1つまたは複数のFR領域
残基を同様に、対応する非ヒト残基で置き換えてもよい。加えて、ヒト化抗体は、レシピ
エント抗体またはドナー抗体において見出されない残基を含みうる。これらの改変は、ヒ
ト化抗体の性能をさらに精密化するために行われる。ヒト化抗体のHまたはL鎖は、CD
Rの全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのCDRに対応し、FRの全てま
たは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである、少なくとも1つまたは複数の
可変領域の実質的に全てを含みうる。ある特定の実施形態において、ヒト化抗体は、典型
的に、ヒト免疫グロブリンの、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部(Fc)を含む
。当業者に公知であるが、さらなる詳細は、望ましければ、例えばJones et al., Nature
, 321:522-525(1986);Riechmann et al., Nature, 332:323-329(1988);およびPresta,
Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596(1992);Carter et al., Proc. Natl. Acd. Sci. U
SA, 89:4285-4289(1992);ならびに米国特許第6,800,738号明細書(2004年
10月5日発行)、同第6,719,971号明細書(2005年9月27日発行)、同
第6,639,055号明細書(2003年10月28日発行)、同第6,407,21
3号明細書(2002年6月18日発行)、および同第6,054,297号明細書(2
000年4月25日発行)において見出されうる。
【0077】
用語「ヒト抗体」および「完全ヒト抗体」は、本明細書において互換的に使用され、ヒ
トによって産生された、および/または当業者によって実践されるようにヒト抗体を作製
する技術のいずれかを使用して作製されている抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配
列を有する抗体を指す。ヒト抗体のこの定義は、具体的には、非ヒト抗原結合残基を含む
ヒト化抗体を除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリ(Hoogenboom and
Winter, J. Mol. Biol., 227:381(1991);Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581(1991
))、および酵母ディスプレイライブラリ(Chao et al., Nature Protocols 1:755-768(2
006))を含む、当技術分野で公知の様々な技術を使用して産生することができる。Cole e
t al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77(1985);Boer
ner et al., J. Immunol., 147(1):86-95(1991)に記述される方法も同様に、ヒトモノク
ローナル抗体の調製に利用可能である。同様にvan Dijk and van de Winkel, Curr. Opin
. Pharmacol., 5: 368-74(2001)も参照されたい。ヒト抗体は、その内因性のIg座が無
能力化されていて、抗原チャレンジに応答してヒト抗体が生成されるように、ヒト抗体を
コードするヒト免疫グロブリン遺伝子を有するように遺伝子改変されているトランスジェ
ニック動物、例えばマウスに抗原を投与することによって調製することができる(例えば
、Jakobovits, A., Curr. Opin. Biotechnol. 1995, 6(5):561-6;Bruggemann and Tauss
ing, Curr. Opin. Biotechnol. 1997, 8(4):455-8;ならびにXENOMOUSE(商標
)技術に関して米国特許第6,075,181号明細書および同第6,150,584号
明細書を参照されたい)。同様に、例えばヒトB細胞ハイブリドーマ技術によって生成さ
れるヒト抗体に関して、Li et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562(2006)
も参照されたい。特異的実施形態において、ヒト抗体は、ヒト起源の可変領域と定常領域
とを含む。「完全なヒト」抗グリコシル化ICP抗体はまた、ある特定の実施形態におい
て、免疫チェックポイントポリペプチドに結合し、ヒト生殖系列免疫グロブリン核酸配列
の天然に存在する体細胞変種である核酸配列によってコードされる抗体も包含することが
できる。特異的実施形態において、本明細書において提供される抗グリコシル化ICP抗
体は、完全なヒト抗体である。用語「完全ヒト抗体」は、Kabatら(Kabat, et al.,
1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Depa
rtment of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照されたい)
によって記述されるヒト生殖系列免疫グロブリン配列に対応する可変および定常領域を有
する抗体を含む。語句「組み換えヒト抗体」は、組み換え手段によって調製、発現、作製
、または単離されたヒト抗体、例えば宿主細胞にトランスフェクトされた組み換え発現ベ
クターを使用して発現された抗体;組み換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単
離された抗体;ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックおよび/またはト
ランスクロモゾームである動物(例えば、マウスまたはウシ)から単離された抗体(例え
ば、Taylor, L. D., et al. (1992) Nucl. Acids Res. 20:6287-6295を参照されたい);
またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを伴う他の任
意の手段によって調製、発現、作製、もしくは単離された抗体を含む。そのような組み換
えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有しう
る(Kabat, E. A., et al., 1991、同上を参照されたい)。しかし、ある特定の実施形態
において、そのような組み換えヒト抗体は、in vitro変異誘発(またはヒトIg
配列についてトランスジェニックである動物を使用するときは、in vivo体細胞変
異誘発)を受け、このため、組み換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト
生殖系列VHおよびVL配列に由来して関連するが、in vivoでヒト抗体生殖系列
レパートリー内に天然には存在しない配列である。
【0078】
本明細書において使用される用語「エピトープ」は、1つの抗体分子が結合する抗原分
子の表面上の部位または領域、例えば抗原、例えば抗ICPまたは抗glycICP抗体
の1つまたは複数の抗原結合領域が結合することができるICPポリペプチドまたはグリ
コシル化ICPポリペプチドの表面上の局所領域である。エピトープは、免疫原性であり
えて、動物において免疫応答を誘発することができる。エピトープは、必ずしも免疫原性
である必要はない。エピトープはしばしば、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学活性
表面基からなり、特異的三次元構造特徴および特異的電荷特徴を有する。エピトープは、
線形エピトープおよびコンフォメーションエピトープでありうる。エピトープに関与する
ポリペプチドの領域は、線形エピトープを形成するポリペプチドの連続するアミノ酸であ
りうるか、またはエピトープは、典型的にコンフォメーションエピトープと呼ばれるポリ
ペプチドの2つもしくはそれ超の不連続なアミノ酸もしくは領域から形成されうる。エピ
トープは、抗原の三次元表面特徴であってもなくてもよい。ある特定の実施形態において
、グリコシル化免疫チェックポイントポリペプチドエピトープは、グリコシル化免疫チェ
ックポイントポリペプチドの三次元表面特徴である。他の実施形態において、グリコシル
化免疫チェックポイントポリペプチドエピトープは、グリコシル化免疫チェックポイント
ポリペプチドの線形の表面特徴である。いくつかの実施形態において、免疫チェックポイ
ントポリペプチドエピトープは、非グリコシル化免疫チェックポイントポリペプチドであ
る。いくつかの実施形態において、グリコシル化免疫チェックポイントポリペプチドエピ
トープは、1つまたは複数の部位でグリコシル化されている。一般的に、抗原はいくつか
のまたは多くの異なるエピトープを有し、多くの異なる抗体と反応することができる。特
定の実施形態において、抗グリコシル化免疫チェックポイントポリペプチド抗体は、コン
フォメーションエピトープであるグリコシル化免疫チェックポイントポリペプチド、例え
ばグリコシル化PD-L1のエピトープに結合する。
【0079】
抗体は、2つの抗体が、三次元空間において、同一の、重なり合う、または隣接するエ
ピトープを認識するとき、「1つのエピトープ」、または参照抗体と「本質的に同じエピ
トープ」もしくは「同じエピトープ」に結合する。2つの抗体が、三次元空間において、
同一、重なり合う、または隣接するエピトープに結合するか否かを決定するために最も広
く使用される迅速な方法は、競合アッセイであり、これは例えば標識抗原または標識抗体
のいずれかを使用する多数の異なるフォーマットで構成することができる。いくつかのア
ッセイにおいて、抗原を96ウェルプレートに固定するか、または細胞表面上で発現させ
て、非標識抗体が、標識抗体の抗原への結合を遮断する能力を、検出可能なシグナル、例
えば放射活性、蛍光、または酵素標識を使用して測定する。
【0080】
グリコシル化免疫チェックポイントポリペプチド標的タンパク質またはそのペプチド上
の同じエピトープまたは結合部位について競合する抗グリコシル化免疫チェックポイント
ポリペプチド抗体の文脈において使用するときの用語「競合する」は、試験中の抗体また
はその結合断片が、共通の抗原(例えば、ICPまたはその断片)への参照分子(例えば
、参照リガンド、または参照抗原結合タンパク質、例えば参照抗体)の特異的結合を防止
、遮断、または阻害するアッセイにおいて決定した場合の競合を意味する。多数のタイプ
の競合結合アッセイを使用して、試験抗体が、グリコシル化免疫チェックポイントポリペ
プチドまたはそのエピトープ(例えば、ヒトPD-L1またはヒトグリコシル化PD-L
1)への結合について参照抗体と競合するか否かを決定することができる。使用すること
ができるアッセイの例には、固相の直接または間接的ラジオイムノアッセイ(RIA);
固相の直接または間接的酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(例
えば、Stahli et al., (1983) Methods in Enzymology 9:242-253を参照されたい);固
相の直接のビオチン-アビジンEIA(例えば、Kirkland et al., (1986) J. Immunol.
137:3614-3619を参照されたい);固相の直接標識アッセイ;固相の直接標識サンドイッ
チアッセイ(例えば、Harlow and Lane, (1988) Antibodies, A Laboratory Manual, Col
d Spring Harbor Pressを参照されたい);標識ヨウ素(I125標識)を使用する固相
の直接標識RIA(例えば、Morel et al., (1988) Molec. Immunol. 25:7-15を参照され
たい);固相の直接ビオチン-アビジンEIA(例えば、Cheung, et al., (1990) Virol
ogy 176:546-552を参照されたい);および直接標識RIA(Moldenhauer et al., (1990
) Scand. J. Immunol. 32:77-82)が挙げられる。典型的に、そのようなアッセイは、固
体表面に結合した精製グリコシル化ICP抗原(例えば、ヒトPD-L1またはグリコシ
ル化PD-L1)、または非標識試験抗原結合タンパク質(例えば、試験抗PD-L1抗
体)もしくは標識参照抗原結合タンパク質(例えば、参照抗PD-L1抗体)のいずれか
を有する細胞の使用を伴う。競合的阻害は、試験抗原結合タンパク質の公知の量の存在下
で固体表面または細胞に結合した標識の量を決定することによって測定することができる
。通常、試験抗原結合タンパク質は過剰に存在する。競合アッセイによって同定される抗
体(競合抗体)は、立体妨害を引き起こすために、参照抗体と同じエピトープに結合する
抗体、および/または参照抗体が結合するエピトープに十分に近位の隣接するエピトープ
に結合してする抗体を含む。競合的結合を決定する方法に関するさらなる詳細を本明細書
に記述する。通常、競合抗体タンパク質が過剰に存在するとき、競合抗体は、共通の抗原
への参照抗体の特異的結合を少なくとも15%、または少なくとも23%、例えば40%
、45%、50%、55%、60%、65%、70%、または75%またはそれ超、およ
び記載の量の間のパーセント量で阻害するが、これらに限定されない。いくつかの例にお
いて、結合は、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、または97%、9
8%、99%、またはそれ超阻害される。
【0081】
本明細書において使用される用語「遮断」抗体または「アンタゴニスト」抗体は、それ
が結合する抗原の生物活性または機能的活性を防止、阻害、遮断、または低減させる抗体
を指す。遮断抗体またはアンタゴニスト抗体は、抗原の生物活性または機能を、実質的ま
たは完全に防止、阻害、遮断、または低減させることができる。例えば、ブロッキング抗
グリコシル化免疫チェックポイントポリペプチド抗体は、相互作用する2つのICP、例
えばPD-L1とPD-1との間の結合相互作用を防止、阻害、遮断、または低減するこ
とができ、このように相互作用に関連する免疫抑制機能を防止、遮断、阻害、または低減
する。用語遮断、阻害、および中和は、本明細書において互換的に使用され、抗グリコシ
ル化免疫チェックポイントポリペプチド抗体が、ICP-ICP相互作用を防止するかま
たはそうでなければ妨害する能力を指す。
【0082】
本明細書において使用される用語「ポリペプチド」または「ペプチド」は、ペプチド結
合によって連結された一続きの3またはそれ超のアミノ酸のアミノ酸のポリマーを指す。
「ポリペプチド」は、タンパク質、タンパク質断片、タンパク質アナログ、オリゴペプチ
ドなどでありうる。ポリペプチドを構成するアミノ酸は、天然由来または合成でありうる
。ポリペプチドは、生物試料から精製してもよい。例えば、ICPポリペプチドまたはペ
プチドは、ICPのアミノ酸配列の少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11
、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、
または25連続アミノ酸で構成されうる。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは
、ヒト免疫チェックポイントポリペプチドまたはグリコシル化免疫チェックポイントポリ
ペプチドの少なくとも25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、
75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、1
30、135、140、145、150、160、170、180、190、200、2
10、220、230、240、250、260、270、280、または285連続ア
ミノ酸を有する。ある特定の実施形態において、グリコシル化または非グリコシル化免疫
チェックポイントポリペプチドは、免疫チェックポイントポリペプチドまたはグリコシル
化免疫チェックポイントのアミノ酸配列の少なくとも5連続アミノ酸残基、少なくとも1
0連続アミノ酸残基、少なくとも15連続アミノ酸残基、少なくとも20連続アミノ酸残
基、少なくとも25連続アミノ酸残基、少なくとも40連続アミノ酸残基、少なくとも5
0連続アミノ酸残基、少なくとも60連続アミノ酸残基、少なくとも70連続アミノ酸残
基、少なくとも80連続アミノ酸残基、少なくとも90連続アミノ酸残基、少なくとも1
00連続アミノ酸残基、少なくとも125連続アミノ酸残基、少なくとも150連続アミ
ノ酸残基、少なくとも175連続アミノ酸残基、少なくとも200連続アミノ酸残基、少
なくとも250連続アミノ酸残基を含む。
【0083】
本明細書において使用される用語「アナログ」は、参照ポリペプチドと類似もしくは同
一の機能を保有するが、必ずしも参照ポリペプチドと類似もしくは同一のアミノ酸配列を
含まないか、または参照ポリペプチドと類似もしくは同一の構造を保有しないポリペプチ
ドを指す。参照ポリペプチドは、ICP、例えばPD-L1ポリペプチド、ICPの断片
、抗ICP抗体、または抗グリコシル化ICP抗体でありうる。参照ポリペプチドと類似
のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、本明細書において記述されるICPまたは抗グ
リコシル化ICP抗体でありうる参照ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも30%、
少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくと
も55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%
、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または
少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。参照ポリペプチ
ドと類似の構造を有するポリペプチドは、ICPまたは抗グリコシル化ICP抗体であり
うる参照ポリペプチドの構造と類似の二次、三次、または四次構造を有するポリペプチド
を指す。ポリペプチドの構造は、X線結晶学、核磁気共鳴法(NMR)、および結晶電子
顕微鏡を含むがこれらに限定されるわけではない、当業者に公知の方法によって決定する
ことができる。
【0084】
本明細書において使用される用語「変種」は、ICPまたは抗グリコシル化ICP抗体
に関連して使用するとき、ネイティブまたは非改変のICP配列または抗ICP抗体配列
と比較して1つまたは複数(例えば、約1~約25、約1~約20、約1~約15、約1
~約10、または約1~約5個など)のアミノ酸配列の置換、欠失、および/または付加
を有するポリペプチドまたは抗グリコシル化ICP抗体を指す。例えば、ICP変種は、
ネイティブICPのアミノ酸配列に対する1つまたは複数(例えば、約1~約25、約1
~約20、約1~約15、約1~約10、または約1~約5個など)の変化に起因しうる
。同様に、例として、抗ICP抗体の変種は、ネイティブまたはこれまで未改変の抗IC
P抗体のアミノ酸配列に対する1つまたは複数(例えば、約1~約25、約1~約20、
約1~約15、約1~約10、または約1~約5個など)の変化に起因しうる。変種は、
対立遺伝子変種もしくはスプライス変種などの天然に存在しうるか、または人為的に構築
することができる。ポリペプチド変種は、変種をコードする対応する核酸分子から調製す
ることができる。
【0085】
本明細書において使用される用語「誘導体」は、アミノ酸残基の置換、欠失、または付
加の導入によって変更されている参照ポリペプチドのアミノ酸配列を含むポリペプチドを
指す。参照ポリペプチドは、ICPまたは抗グリコシル化ICP抗体でありうる。本明細
書において使用される用語「誘導体」はまた、例えば任意のタイプの分子をポリペプチド
に共有結合により付着させることによって化学的に改変されているICPまたは抗グリコ
シル化ICP抗体を指す。例えば、ICPまたは抗グリコシル化ICP抗体は、例えばグ
リコシル化、アセチル化、peg化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロック基に
よる誘導体化、タンパク質分解、細胞リガンドへの連結、ペプチドもしくはタンパク質タ
グ分子への連結、または他のタンパク質などによって化学改変することができる。誘導体
は、付着した分子のタイプまたは位置のいずれかで、天然に存在するまたは開始ペプチド
もしくはポリペプチドとは異なるように改変される。誘導体はさらに、ペプチドまたはポ
リペプチド上に本来存在する1つまたは複数の化学基の欠失を含みうる。ICPまたは抗
グリコシル化ICP抗体の誘導体は、特異的化学的切断、アセチル化、製剤化、ツニカマ
イシンによる代謝合成などを含むがこれらに限定されるわけではない当業者に公知の技術
を使用する化学的改変によって化学的に改変されうる。さらに、ICPまたは抗グリコシ
ル化ICP抗体の誘導体は、1つまたは複数の非古典的アミノ酸を含みうる。ポリペプチ
ド誘導体は、本明細書において記述されるICPまたは抗グリコシル化ICP抗体であり
うる、参照ポリペプチドと類似または同一の機能を保有する。
【0086】
本明細書において使用される用語「組成物」は、明記された構成成分(例えば、本明細
書において提供されるポリペプチドまたは抗体)を、任意選択で明記された量または有効
量で含む産物、および任意選択で明記された量または有効量の、特異的構成成分の併用ま
たは相互作用に直接または間接的に起因する任意の所望の産物を指す。
【0087】
本明細書において使用される用語「処置する」、「処置」、または「処置している」は
、少なくとも1つの陽性の治療効果または利益を得る目的、例えば疾患または健康関連状
態を処置する目的で、それを必要とする対象に治療剤を投与もしくは適用すること、また
は対象に技法もしくはモダリティを行うことを指す。例えば、処置は、様々なタイプのが
んを処置する目的での、グリコシル化ICPに特異的に結合する抗体またはその組成物も
しくは製剤の薬学的有効量の投与を含みうる。用語「処置レジメン」、「投与レジメン」
、または「投与プロトコール」は、互換的に使用され、治療剤、例えば本明細書において
記述される方法によって産生された抗グリコシル化ICP抗体の投与時期および用量を指
す。本明細書において使用される用語「対象」は、がんを有するまたはがんを有すると診
断されたヒトまたは非ヒト動物、例えば霊長類、哺乳動物および脊椎動物のいずれかを指
す。好ましい実施形態において、対象はヒトである。いくつかの実施形態において、対象
はがん患者である。一実施形態において、必要とする対象は、抗グリコシル化ICP抗体
、例えば抗glycPD-L1抗体処置から利益を得るまたは得ると予測される。
【0088】
本明細書において使用される用語「治療上有益な」または「治療上有効な」は、必要と
する対象(例えば、がんを有する、またはがんを有すると診断された対象)の、特に抗グ
リコシル化ICP抗体の使用およびこれらの抗体を使用する方法の実施の結果としての、
状態の医学的処置、治療、用量の投与に関する幸福度の促進または増強を指す。これには
、疾患の兆候または症状の頻度または重症度の低減が挙げられるがこれらに限定されるわ
けではない。例えば、がんの処置は、例えば腫瘍の大きさの低減、腫瘍の浸潤性もしくは
重症度の低減、末梢組織もしくは臓器へのがん細胞の浸潤の低減、腫瘍もしくはがんの増
殖速度の低減、または転移の予防もしくは低減を伴いうる。がんの処置はまた、対象にお
いて持続的な応答を達成すること、またはがんを有する対象の生存を延長させることも指
しうる。
【0089】
グリコシル化免疫チェックポイントタンパク質に優先的に結合する抗体を産生する方法
抗体産生に関して、レシピエント動物に、グリコシル化ICPまたはペプチドなどの抗
原を接種して、免疫応答を生成し、グリコシル化ICPまたはペプチド、例えばPD-L
1に対して特異的な抗体を産生する。免疫応答を増強するために、しばしば、抗原を別の
分子に結合またはコンジュゲートさせる。本明細書において使用されるように、コンジュ
ゲートは、動物において免疫応答を誘発するために使用される、抗原に結合する任意のペ
プチド、ポリペプチド、タンパク質、または非タンパク質様物質である。抗原の接種に応
答して動物において産生される抗体は、多様な個々の抗体産生Bリンパ球によって作製さ
れる多様な非同一の分子(ポリクローナル抗体)を含む。ポリクローナル抗体は、そのそ
れぞれが、同じ抗原上の異なるエピトープを認識しうる抗体種の混合集団である。動物に
おけるポリクローナル抗体産生に対する正確な条件を考慮すると、動物の血清中の抗体の
ほとんどは、動物が免疫されている抗原性化合物上の集合的エピトープを認識する。この
特異性を親和性精製によってさらに増強して、目的の抗原またはエピトープを認識するそ
れらの抗体のみを選択する。
【0090】
モノクローナル抗体(MAb)を作製する方法は、ポリクローナル抗体を調製する方法
と同じ方向に沿って始まる。いくつかの実施形態において、マウスおよびラットなどの齧
歯類を、モノクローナル抗体の生成に使用する。いくつかの実施形態において、ウサギ、
ヒツジ、またはカエル細胞がモノクローナル抗体の生成に使用される。ラットの使用は周
知であり、特定の利点を提供しうる。マウス(例えば、BALB/cマウス)は日常的に
使用され、一般的に、安定な融合体を高い割合で生じる。モノクローナル抗体産生に使用
されるハイブリドーマ技術は、グリコシル化ICP抗原によって予め免疫したマウスから
単離した1つの抗体産生Bリンパ球と、不死化骨髄腫細胞、例えばマウス骨髄腫細胞株と
の融合を伴う。この技術は、1つの抗体産生細胞を、無限の世代にわたって繁殖させる方
法を提供し、それによって同じ抗原またはエピトープ特異性を有する構造的に同一の抗体
、すなわちモノクローナル抗体の無限の量が産生されうる。免疫した動物に由来するモノ
クローナル抗体の集団を発現するハイブリドーマまたは他の細胞の集団を、本明細書にお
いて記述される抗グリコシル化ICP抗体についてスクリーニングしてもよい。
【0091】
特定の実施形態において、グリコシル化ICP、または本明細書において記述されるそ
のグリコシル化ペプチド部分、例えばグリコシル化PD-L1またはそのペプチドは、投
与スキームに従う注射経路によって、レシピエント動物、例えばマウスまたはラットに投
与される。典型的に、初回免疫を与え、動物を一定期間、例えば限定されないが7~15
日間休息させ、追加免疫を既定の期間、例えば2~3週間または1ヶ月間与える。追加免
疫期間の間に、動物を、当技術分野で通常使用される方法によって血漿または血清中の抗
体力価について試験してもよい。この目的に関して、数週間の免疫後に血清中抗体を測定
するために、動物から血液試料を得る。マウスから少量の血液を採取するために、Clinic
al Chemistry of Laboratory Animals, Eds. W.F. Loeb and F.W. Quimby, Taylor & Fra
ncis, 1999に記載されるような、いくつかの人道的技術が開発されている。血清中抗体力
価を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)およびフローサイトメトリーなどの様々
な技術によって決定する。抗体力価が高い場合、細胞融合を行うことができる。力価が低
すぎる場合には、繰り返し採血によって決定して適切な応答が達成されるまでマウスに追
加免疫を行うことができる。抗体力価が十分に高い場合、マウスにアジュバントなしで抗
原を、例えば融合の3日前であるが、前回の免疫の2週間後に、腹腔内または静脈内(尾
静脈を介して)に注射することによって一般的に追加免疫する。
【0092】
抗体力価が当技術分野の医師によって決定した場合に十分である場合、マウスを安楽死
させてその脾臓を摘出する。脾細胞を単細胞浮遊液に分散させて、細胞融合およびin
vitroでのハイブリドーマの産生にとって適切な条件下で、不死化骨髄腫細胞株(例
えば、限定されないが、Sp/02)と混合する。有限の寿命を有する抗体産生脾細胞を
、不死化骨髄腫細胞に由来する細胞と融合することによって、無限に成長することができ
るハイブリドーマが得られる。骨髄腫細胞は、細胞融合後に使用するヒポキサンチン-ア
ミノプテリン-チミジン(HAT)選択培地に対するその感受性を確保するために、8-
アザグアニンと共に培養した不死化細胞である。細胞融合の約1週間前に、骨髄腫細胞を
8-アザグアニン中で成長させ、細胞は高い生存率および急速な成長を有しなければなら
ない。HAT選択培地は、融合した細胞のみを培養中で生存させる。HAT選択技術にお
いて、選択増殖培地は、ヌクレオチドを作製する合成経路を遮断する阻害剤であるアミノ
プテリンを含む。したがって、細胞は、核酸を合成するために迂回経路を使用しなければ
ならない。この経路は、通常の抗体産生細胞を融合する骨髄腫細胞株において欠損してい
る。骨髄腫も抗体産生細胞もいずれも単独で成長することができないことから、ハイブリ
ッド細胞である「ハイブリドーマ」のみが、細胞分裂を経て、培養中で持続して増殖する
。(Monoclonal Antibody Production, 1999, Inst. For Laboratory Animal Research a
nd National Research Council, National Academy Press)。
【0093】
細胞融合は、新しく採取した脾細胞と骨髄腫細胞とを、細胞膜融合増強剤であるポリエ
チレングリコール中で同時に遠心沈降させることによって実施する。次に、細胞を、マウ
ス腹腔の食塩水洗浄液に由来しうるフィーダー細胞の存在下または非存在下でマルチウェ
ルプレートに分配する。フィーダー細胞は、ハイブリドーマ細胞の成長を促進する増殖因
子を供給すると考えられているが、培養細胞の成長を支持し、増殖因子を含む培地のコレ
クションに起因する市販の調製物を、マウス由来フィーダー細胞の代わりに使用すること
ができる。マウスの骨髄由来マクロファージもフィーダー細胞として使用することができ
る。マルチウェルプレートからのハイブリドーマ細胞の小さいクラスターを組織培養にお
いて成長させた後、本明細書において記述される方法によって抗原結合について選択する
ことができる。ハイブリドーマはまた、マウス腹水中で成長することができ、これを後に
クローニングすることができる。ハイブリドーマ細胞の限界希釈「クローニング」により
、多数のウェルがそれぞれ多くて単一のクローンを確実に含む。当業者は、増大およびさ
らに成長することができるハイブリドーマを選択することができる。ハイブリドーマを、
適した結合特異性を有するモノクローナル抗体の産生についてスクリーニングする。
【0094】
モノクローナル抗体のスクリーニングは、当技術分野で公知の様々な技法を通して、例
えば抗体がバクテリオファージの表面上に提示される細菌系(「ファージディスプレイ」
技法)において達成してもよいが、他のスクリーニング技術も同様に想定される。ヒトコ
ンビナトリアル抗体ライブラリから、ヒト抗体を同定および単離してもよい。例えば、参
照により全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,946,546号明細書に記述
されるように、動物の免疫を行うことなく、バクテリオファージ抗体発現技術によって、
特異的抗体を産生することができる。これらの技術は、Marks et al., 1992, Bio/Techno
l., 10:779-783;Stemmer, 1994, Nature, 370:389-391;Gram et al., 1992, Proc. Nat
l. Acad. Sci. USA, 89:3576-3580;Barbas et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA
, 91:3809-3813;およびSchier et al., 1996, Gene, 169(2):147-155に詳しく記述され
ている。
【0095】
例えば、グリコシル化ICPまたはそのペプチドに特異的かつ優先的に結合するモノク
ローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を選択および同定する、ハイブリドーマラ
イブラリ技術を使用してもよい。ハイブリドーマライブラリを、クローニングの前に抗体
結合活性について試験することができる。そのようなプロセスは、真のクローンの分析を
可能にし、複数ラウンドのサブクローニングを必要としない、フローサイトメトリーによ
る単細胞のクローニングを含む(例えば、Antibody Solutions,Su
nnyvale,CAを参照されたい)。FACSソーティングを繰り返し使用して、特
に多数の抗グリコシル化ICP抗体をその表面上に表示するそれらのハイブリドーマ細胞
変種を選択することができる。ハイブリドーマライブラリは、多数の種におけるin v
ivo親和性成熟;自己抗原結合に関する負の選択;重鎖および軽鎖の天然の対形成;ハ
イブリドーマによる直接抗体分泌;発現に関するクローニングなし;および抗体の哺乳動
物翻訳後修飾と共に利用することができる非常に感度が高くかつ特異的である誘導系を有
しうる。(Antibody Solutions,Sunnyvale,CA)。所望
の抗グリコシル化ICP抗体を産生するハイブリドーマを、本明細書において記述される
方法を使用してスクリーニングおよび同定した後、クローンを増大させて、さらに使用す
るために抗体を単離することができる。
【0096】
ハイブリドーマ技術によって産生されたモノクローナル抗体、またはファージディスプ
レイライブラリなどの抗体発現細胞の他の集団を、特定の抗原に特異的に結合する抗体の
選択および同定に関して公知のプロトコールおよび技術を使用して結合特異性について選
択してもよい。当業者に公知であるように、多様な直接、間接、および競合結合アッセイ
を使用して、標的抗原に特異的に結合する抗体についてアッセイしてもよい。実例として
、限定ではないが、グリコシル化ICP抗原を、固相基質に結合させて、適切な検出可能
に標識されたレポーター分子、例えば標識二次抗体を使用して、固相基質上のグリコシル
化ICP抗原に結合している抗glycICP抗体の特異的結合を決定してもよい。加え
て、抗体が細胞表面上に表示される抗体のライブラリ、例えばファージディスプレイライ
ブラリをスクリーニングする場合、ライブラリを、グリコシル化ICP抗原に結合する抗
体について「パニング」してもよい。抗体が選択される抗原またはリガンドを、検出可能
または選択可能標識によって標識してもよく、抗体発現細胞集団を、検出可能または選択
可能な標識に接触させた後、標識した抗原に結合する抗体を発現する細胞を選択する。例
えば、標識がビオチンである場合、ビオチン標識抗原に結合する抗体を発現する細胞を、
固相支持体、ビーズ等に存在しうるストレプトアビジンへのビオチンの結合を使用して単
離することができる。
【0097】
特定の実施形態において、スクリーニングされる抗体集団は、ICPの非グリコシル化
形態と比較してICPのグリコシル化形態に優先的に結合する抗体についてアッセイする
ことができる。例えば、グリコシル化ICPを発現する、優先的に組み換えにより発現す
る細胞を、例えばビオチンによって標識し、ICPの非グリコシル化形態を発現するが、
標識されていないか、または異なる標識を有する細胞と混合する。例えば、ICP上のグ
リコシル化部位または複数の部位を、ICPがグリコシル化されないように変異(例えば
、グリコシル化コンセンサス部位におけるアスパラギンのグルタミンへの置換)させても
よい。細胞混合物を、試験される抗体、ならびに標識細胞(グリコシル化形態を発現する
細胞)に結合するが非標識細胞には結合しない分子と共にインキュベートする。例えば、
標識がビオチンである場合、細胞混合物を、試験される抗体および標識されたストレプト
アビジンと共にインキュベートする。次に細胞を、細胞に結合したいかなる抗体も検出す
るために、標識された二次抗体と共にインキュベートする。当技術分野で公知の任意の方
法を使用して、グリコシル化ICPを発現する細胞および非グリコシル化ICPを発現す
る細胞への抗体の結合を比較することができる。例えば、グリコシル化ICPを発現する
細胞と非グリコシル化ICPを発現する細胞とを分離して、二次抗体結合レベルを、FA
CS/フローサイトメトリー分析によって測定し、グリコシル化ICPおよび非グリコシ
ル化ICPへの抗体の相対的結合を評価することができる。例示的な方法を、実施例2に
記述し、非グリコシル化ICPと比較してグリコシル化ICPへの2倍、3倍、4倍、5
倍、6倍、7倍、8倍、9倍または10倍大きい結合を有する抗体を、優先的に結合する
グリコシル化ICPとして選択してもよい。
【0098】
グリコシル化ICPに特異的に結合する抗体を最初に同定した後、それらの抗体を、非
グリコシル化形態への結合を比較するために、当技術分野で公知の他の任意の方法によっ
てさらにスクリーニングおよび分析することができる。例えば、抗体は、抗原結合に関す
る、任意の結合アッセイ、例えばELISA、ラジオイムノアッセイ、BIACORE等
に存在しうる。特定の実施形態において、グリコシル化ICPおよび非グリコシル化IC
Pは、固相表面(例えば、アッセイプレートのウェル)上にコーティングされる。非グリ
コシル化ICPは、グリコシル化を除去する酵素、例えばN-連結グリコシル化を除去す
るPNGアーゼによってグリコシル化ICPを処置することによって、または発現細胞に
よってグリコシル化されないように変異体グリコシル化部位を有するICPを組み換えに
より発現させることによって生成してもよい。次に、抗体を、抗体の多様な濃度でグリコ
シル化および非グリコシル化形態の結合についてアッセイし、非グリコシル化ICPと比
較してグリコシル化ICPについての結合親和性の差を検出する。
【0099】
加えて、優先的結合も同様に、ウェスタンブロットまたはFACSフローサイトメトリ
ー分析によって試験することができる。当業者に周知であるように、ウェスタンブロット
は、抗体が特異的に結合するエピトープを含むタンパク質を分離および同定するために使
用される実験研究技術である、一般的に、技術は、ゲル電気泳動を介してサイズ/分子量
によってタンパク質抗原(しばしば細胞溶解物中)を分離することを伴う。ゲル上で分離
されたタンパク質を、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、またはニトロセル
ロースなどの固相のメンブレン支持体に転写し、検出可能に標識された抗体を、抗体が、
抗体によって特異的に認識されるエピトープを含む固相支持体上のタンパク質に結合する
ことができる条件でインキュベートする。結合したタンパク質を可視化して、定量するこ
とができる。同様に、結合を検出するために、第一の抗原特異的抗体に結合する標識され
た二次抗体を使用することも可能である。非制限的な例として、Mahmood and Yang, 2012
, NAM J Med Sci, 4(9):429-434を参照されたい。同様に、当業者に公知であるように、
フローサイトメトリーは、単細胞の多数の特徴および特性を迅速に定量するために、一度
に1つの細胞がレーザービームを通り過ぎて流れる自動フローサイトメーター機器(FC
またはFCM)を使用して行われる。FCは、細胞のサイズ、細胞の充実度、特異的表面
受容体タンパク質の量、細胞内タンパク質の量、総DNAなどの細胞成分の量、新たに合
成されたDNA、特定の遺伝子のメッセンジャーRNAの量としての遺伝子発現、または
生きている細胞における一過性のシグナリング事象を測定することができる。量は通常、
相対的であるが、絶対値が必要である場合には、細胞あたりの分子数でありうる。典型的
に、3~6個の特性または成分が、単一の試料において細胞毎に約1×104~1×10
5個の細胞について1分未満で定量されうる。(Brown, M. and Wittwer, C., 2000, Cli
n. Chem., 46(8):1221-1229; and Martz, E., 2003, Microbiology 542, U. Massachuset
ts, Amherst, MA)。
【0100】
加えて、抗体が対象とするグリコシル化標的リガンド、例えばグリコシル化PD-L1
とその同起源の(ICP)結合分子、例えばPD-1との間の相互作用を特異的に遮断す
る能力について、抗体をアッセイしてもよい。例えば、グリコシル化ICPを細胞表面上
に発現させるか、または固相支持体に接着させ、試験される抗体および検出可能な標識を
有する同起源のICP結合パートナーと共にインキュベートする。標識されたICP結合
パートナーのICPへの結合レベルを、試験される抗体の非存在下の対照と比較して定量
する。ICP結合パートナーの結合が低減すれば、抗体が、ICPおよびICP結合パー
トナーの相互作用を阻害または遮断することができることを示している。ICP結合分子
の結合が存在しなければ、抗体が、ICP結合パートナーへのICPの結合を遮断したこ
とを示している。例示的な方法を実施例2および5に記述する。
【0101】
ICP阻害剤として使用するために適した抗体の形態
グリコシル化ICPに優先的かつ特異的に結合する抗体を同定および単離した後、それ
らを、例えば治療としてより適切にするためにさらに操作してもよい。非ヒトモノクロー
ナル抗体の場合、抗体を「キメラ」または「ヒト化」にすべきである。モノクローナル抗
体の軽鎖および重鎖定常ドメインを、外来抗体の可変領域をインタクトにしたままで、ヒ
ト起源の類似のドメインで置き換える方法が開発されている。齧歯類とヒトアミノ酸配列
の両方を有する抗体可変ドメインを組み換えにより構築することによって、モノクローナ
ル抗体の可変ドメインをよりヒト形態に変換する方法も同様に開発されている。「ヒト化
」モノクローナル抗体では、超可変CDRのみが非ヒト(例えば、マウス、ラット、ニワ
トリ、ラマ等)モノクローナル抗体に由来して、フレームワーク領域は、ヒト抗体アミノ
酸配列に由来する。齧歯類の特徴である抗体中のアミノ酸配列を、ヒト抗体の対応する位
置に見出されるアミノ酸配列に置き換えると、ヒトにおいて治療的に使用する際の外来タ
ンパク質に対する有害な免疫反応の可能性を低減させる。ハイブリドーマまたは他の抗体
産生細胞を同様に、ハイブリドーマによって産生される抗体の結合特異性を変更しうるま
たは変更しない遺伝子変異または他の変化に供してもよい。
【0102】
モノクローナル抗体および他の抗体および組み換えDNA技術を使用して改変抗体を作
製して、当初の抗体の抗原またはエピトープ結合特異性を保持する他の抗体またはキメラ
抗体を産生してもよく、すなわち分子は、特異的結合ドメインを有する。そのような技術
は、抗体の免疫グロブリン可変領域またはCDRをコードするDNAを、異なる抗体のフ
レームワーク領域、定常領域、または定常領域プラスフレームワーク領域に対する遺伝子
材料に導入することを伴いうる。例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれる、米
国特許第5,091,513号明細書および同第6,881,557号明細書を参照され
たい。
【0103】
本明細書において記述される公知の手段によって、そのような抗原またはエピトープが
天然起源から単離されたか、または天然化合物の合成誘導体もしくは変種であるか否かに
よらず、グリコシル化ICP、1つもしくは複数のそのそれぞれのエピトープに特異的に
結合し、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体、結合活性、結合ドメイン、およ
びCDRを有する抗体断片(前述の任意の1つの改変形態を含む)を作製してもよく、ま
たは前述の任意の1つをコンジュゲートしてよい。
【0104】
ある特定の動物種は、それらが、抗体の「Fc」部分を通して補体系の活性化により免
疫応答またはアレルギー応答を引き起こす可能性がありうることから、治療抗体を作製す
るためにはあまり好ましくない。しかし、抗体全体を、「Fc」(補体結合)断片および
結合ドメインまたはCDRを有するペプチド断片へと酵素的に消化してもよい。Fc部分
の除去は、この抗体断片が望ましくない免疫応答を誘発する可能性を低減させ、このよう
に、Fc部分を有しない抗体は、予防的または治療的処置にとって好ましくなりうる。上
記のように、抗体はまた、キメラ、ヒト化、または部分的もしくは完全なヒトとなるよう
に、別の種において産生されているまたは別の種からのアミノ酸配列を有する抗体を動物
に投与することに起因する、潜在的に有害な免疫学的効果を低減または消失させるように
構築されうる。
【0105】
置換変種は典型的に、タンパク質内の1つまたは複数の部位で1つのアミノ酸の別のア
ミノ酸への交換を含み、他の機能または特性の喪失を伴うまたは伴うことなく、ポリペプ
チドの1つまたは複数の特性を調節するように設計されうる。置換は保存的、すなわち1
つのアミノ酸が類似の形状および電荷のアミノ酸に置き換えられる置換でありうる。保存
的置換は、上記の表1に記述する通りである。あるいは、置換は、ポリペプチドの機能ま
たは活性が影響を受ける非保存的であってもよい。非保存的変化は典型的に、ある残基を
化学的に異なる残基に置換すること、極性または荷電アミノ酸を非極性または非荷電アミ
ノ酸に置換することおよびその逆を伴う。
【0106】
抗体タンパク質は、組み換えであってもよく、またはin vitroで合成されても
よい。あるいは、非組み換えまたは組み換え抗体タンパク質を細菌から単離してもよい。
同様に、改善された結合または他のパラメータを有する抗体を単離するために、抗体タン
パク質変種を含む細菌を、本明細書における組成物および方法において利用してもよいと
企図される。本明細書において記述される組成物において、全抗体ポリペプチドが1ml
あたり約0.001mgから10mgの間で存在すると企図される。このため、組成物中
の抗体タンパク質の濃度は、約、少なくとも約、または多くて約0.001、0.010
、0.050、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0
.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5
.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0m
g/mlまたはそれ超(またはそれらから誘導可能な任意の範囲)でありうるかまたはそ
れらに等しい。この中で、グリコシル化ICPに結合する抗体は、約、少なくとも約、多
くて約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、1
6、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29
、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、
43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、5
6、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69
、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、
83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、9
6、97、98、99、または100%でありうるか、またはそれらに等しい。
【0107】
抗体またはICPに対する結合活性を保持する抗体の免疫学的部分を、他のタンパク質
に化学的にコンジュゲートさせることができ、または他のタンパク質との融合タンパク質
として組み換え発現させることができる。そのような全ての融合タンパク質が、抗体また
は抗体の免疫学的部分の定義に含まれる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つ
の薬剤に連結されて、抗体コンジュゲートまたはペイロードを形成する、グリコシル化免
疫チェックポイントポリペプチドまたはそのペプチドに対して生成された抗体および抗体
様分子が包含される。診断または治療剤としての抗体分子の有効性を増加させるために、
通常、少なくとも1つの所望の分子または部分を抗体に連結させる、または共有結合させ
る、または複合体形成させる。そのような連結された分子または部分は、少なくとも1つ
のエフェクターまたはレポーター分子でありうるがこれらに限定されるわけではない。エ
フェクター分子は、所望の活性、例えば細胞傷害活性を有する分子を含む。抗体に付着さ
れうるエフェクター分子の非限定的な例には、毒素、治療的酵素、抗体、放射標識ヌクレ
オチドなどが挙げられる。これに対し、レポーター分子は、アッセイを使用して検出され
うる任意の部分として定義される。抗体にコンジュゲートされうるレポーター分子の非限
定的な例には、酵素、放射標識、ハプテン、蛍光標識、リン光分子、化学発光分子、発色
団、発光分子、光親和性分子、着色粒子またはリガンド、例えばビオチンなどが挙げられ
る。抗体をコンジュゲート分子または部分に付着またはコンジュゲートさせるいくつかの
方法が当技術分野で公知である。いくつかの付着方法は、非限定的な例として有機キレー
ト剤、例えばジエチレントリアミン五酢酸無水物(DTPA);エチレントリアミン四酢
酸;N-クロロ-p-トルエンスルホンアミド;および/または抗体に付着させたテトラ
クロロ-3-6α-ジフェニルグリクリル-3を使用する、金属キレート錯体を使用する
ことを伴う。抗体はまた、グルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩などのカップリング剤
の存在下で酵素と反応しうる。フルオレセインマーカーとのコンジュゲートは、慣例的に
、これらのカップリング剤の存在下で、またはイソチオシアネートとの反応によって調製
される。別の実施形態において、抗グリコシル化ICP抗体を、投与後の血漿、血清、ま
たは血液中のそのin vivo半減期を増加させるために、化合物または物質、例えば
ポリエチレングリコール(PEG)にカップリングまたは連結させてもよい。
【0108】
一実施形態において、抗体はキメラ抗体、例えば異種の非ヒト、ヒト、またはヒト化配
列(例えば、フレームワークおよび/または定常ドメイン配列)に移植された非ヒトドナ
ー由来の抗原結合配列(例えば、Vドメインおよび/またはCDR)を含む抗体である。
一実施形態において、非ヒトドナー配列は、マウスまたはラットに由来する。一実施形態
において、抗原結合配列は、合成、例えば変異誘発(例えば、ヒトファージライブラリの
ファージディスプレイスクリーニングなど)によって得られる。一実施形態において、キ
メラ抗体はマウスV領域とヒトV領域とを有する。一実施形態において、マウス軽鎖V領
域はヒトκ軽鎖C領域に融合される。一実施形態において、マウス重鎖V領域は、ヒトI
gG1 C領域に融合される。
【0109】
一実施形態において、抗体は、ラクダ抗体に由来し、好ましくはVHHドメイン配列ま
たはNanobodies(商標)として知られる、軽鎖を欠如する重鎖ラクダ抗体に由
来する免疫グロブリン単一可変ドメインである。Nanobody(商標)(Nb)は、
天然に存在する一本鎖抗体の最小の機能的断片または単一可変ドメイン(VHH)であり
、当業者に公知である。それらは、ラクダに見られる重鎖のみの抗体に由来する(Hamers
-Casterman et al., 1993, Nature, 363, p. 446-448;およびDesmyter et al., 1996, N
at. Struct. Biol., pp. 803-811)。「ラクダ」科では、軽鎖ポリペプチドを欠如する免
疫グロブリンが見出される。「ラクダ」は、旧大陸ラクダ(フタコブラクダ(Camelus ba
ctrianus)およびヒトコブラクダ(Camelus dromedarius))、ならびに新大陸ラクダ(
例えば、アルパカ(Lama paccos)、リャマ(Lama glama)、グアナコ(Lama guanicoe)
、およびビクーニャ(Lama vicugna))を含む。単一可変ドメイン重鎖抗体は、本明細書
において、Nanobody(商標)またはVHH抗体として示される。Nbの大きさが
小さいことおよび独自の生物物理学的特性は、一般的でないまたは隠れたエピトープの認
識について、およびタンパク質標的の腔または活性部位への結合について通常の抗体断片
より優れている。さらに、Nbは、レポーター分子に付着したまたはヒト化された、多重
特異性および多価抗体として設計することができる。Nbは、安定で、消化管系で分解さ
れることなく、容易に製造することができる。
【0110】
別の実施形態において、抗体は二重特異性抗体である。異なる特異性の2つの抗原結合
部位を1つの構築物に統合すると、二重特異性抗体は、優れた特異性を有する2つの異な
る抗原を一つにする能力を有し、したがって、治療剤として非常に有望である。二重特異
性抗体は、それぞれが異なる免疫グロブリンを産生することができる、2つのハイブリド
ーマを融合することによって当初作製された。二重特異性抗体はまた、完全な免疫グロブ
リンに存在するFc部分を除外しながら2つのscFv抗体断片を接続させることによっ
ても産生される。そのような構築物におけるそれぞれのscFv単位は、合成ペプチドリ
ンカーによって互いに接続した、重鎖(VH)および軽鎖(VL)抗体鎖のそれぞれから
の1つの可変ドメインを含み、後者はしばしば、タンパク質分解に対して最大限の抵抗性
を残しながら最小の免疫原性となるように遺伝子改変されている。それぞれのscFv単
位を、2つのscFv単位を架橋する短い(通常、10アミノ酸未満)ポリペプチドスペ
ーサーを組み込むことを含む、多数の公知の技術によって接続して、それによって二重特
異性一本鎖抗体を作製してもよい。したがって、得られた二重特異性一本鎖抗体は、それ
ぞれのscFv単位におけるVHおよびVLドメインが、これらの2つのドメイン間の分
子内会合を可能にするために十分に長いポリペプチドリンカーによって隔てられており、
そのように形成されたscFv単位が、例えば1つのscFv単位のVHドメインと他の
scFv単位のVLドメインとの間での望ましくない会合を防止するために十分に短く維
持されるポリペプチドスペーサーを通して互いに連続してつながれている、1つのポリペ
プチド鎖上で異なる特異性の2つのVH/VL対を含む種である。
【0111】
別の実施形態において、抗体は二重パラトープ性抗体である。本明細書において使用さ
れる用語「二重パラトープ性抗体」は、同じタンパク質標的、例えば腫瘍関連ICP標的
抗原または本明細書において記述されるグリコシル化ICP標的抗原上の2つの異なる重
複しないエピトープ、抗原性決定基、またはドメインを認識して結合する2つの抗原結合
ドメインを含む二重特異性結合分子を指す。一実施形態において、本明細書において記述
されるglycICPまたはその1つもしくは複数のペプチド部分に対する二重パラトー
プ性抗体は、第1の免疫グロブリン可変ドメインと第2の免疫グロブリン可変ドメインと
を含み、2つの結合ドメインは、同じ標的glycICPタンパク質の2つの異なる重複
しないエピトープに結合する。第1および第2の免疫グロブリン結合ドメインによって認
識されるエピトープの1つまたは両方はグリコシル化されていてもよく、またはグリコシ
ル化残基を含んでもよい。好ましくは、免疫グロブリンの少なくとも1つは、非グリコシ
ル化形態と比較してglycICPタンパク質のグリコシル化形態に優先的に結合する。
【0112】
別の実施形態において、二重パラトープ性抗体は、glycICP標的分子上のエピト
ープに結合する免疫グロブリン(好ましくは四価IgG)と、同じglycICP標的分
子上の異なる重複しないエピトープに結合するscFvとを含み、免疫グロブリンとsc
Fvは、免疫グロブリンおよびscFvが、glycICP標的分子上の異なる重複しな
いエピトープに結合することができるようにリンカーによって連結される。したがって、
バイパラトピック抗体は、結合親和性/アビディティを増強するために、抗体依存性細胞
傷害性(ADCC)および/もしくは補体依存性細胞傷害性(CDC)などの増強された
エフェクター機能のために腫瘍細胞上の抗体量を増加させるために、ならびに/または腫
瘍の保持時間を改善または増加させるために、同じglycICP標的上の異なるエピト
ープ(またはドメイン)に結合する(すなわち、バイパラトピック結合)、本明細書にお
いて記述される方法によって同定された2つの抗glycICP抗体から作製される。加
えて、腫瘍関連glycICP抗原上の2つの重複しないエピトープを標的とする二価の
二重パラトープ性抗体は、細胞膜においてglycICP標的分子のクラスターを誘導す
る可能性を有し、次に、内在化、リソソーム輸送、および分解の増加を促進しうる。標的
タンパク質/抗原上の2つの異なる重複しないエピトープに対する二重パラトープ性抗体
は、当技術分野で公知の技術を使用して作製されうる。例えば、B. Roberts et al., 199
9, Int. J. Cancer, Vol. 81:285-291 (carcinoembryonic antigen, CEA);D. Lu et al.
, 1999, J. Immunol. Methods, Vol. 230:159-71 (vascular endothelial growth factor
receptor 2, VEGF2);2009年6月4日に公開された国際公開第2009/0686
27号パンフレット、Ablynx NV;2010年12月16日に公開された国際公
開第2010/142534号パンフレット、およびAblynx NVを参照されたい
。
【0113】
一実施形態において、二価の二重パラトープ性抗体は、所定のglycICP標的タン
パク質上の異なる重複しないエピトープを認識して結合する、本明細書において記述され
るように同定された2つの異なる抗glycICP抗体からの可変ドメイン配列を使用す
ることによって産生してもよく、抗体は、glycICP上の異なる重複しないエピトー
プを認識する第2の抗ICP抗体のH鎖および/もしくはL鎖のN末端、またはあるいは
CH3ドメインのC末端に結合した抗glycICP抗体の1つの一本鎖可変断片(sc
Fv)を含む。scFvを、ペプチドリンカー、例えばscFvにおける結合ドメインを
連結するために使用されるリンカーなどを介して、第2の抗ICP抗体に連結してもよい
。例えば、Dimasi et al., J. Mol. Biol., 393:672-692 (2009)を参照されたい。得られ
た結合分子産物または二重パラトープ性抗体は、glycICP上の2つの異なるエピト
ープと相互作用して結合することができる4つの抗glycICP結合単位または2つの
結合単位を、分子のそれぞれのアームに含む。本実施形態によれば、腫瘍細胞の表面上に
発現したglycICP上の2つの重複しないエピトープを標的とする二価の二重パラト
ープ性抗体は、エピトープ結合を通してglycICPと有効に架橋して、細胞表面上の
glycICPのクラスター形成を誘導し、増強された内在化およびリソソーム分解を誘
発および促進する大きい複合体を形成することができる。一実施形態において、二重パラ
トープ性抗体を、本明細書においてさらに記述されるように、毒素または抗がん剤に連結
して抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を産生する。そのような抗ICP二重パラトー
プ性抗体の増強された内在化およびエンドサイトーシスならびにリソソーム輸送によって
、最終的に標的細胞への毒素の大量の送達およびより大きい腫瘍細胞の殺滅または縮小が
起こる。そのような効果は、二重パラトープ性抗HER2 ADCに関して記述されてい
るように(J.Y. Li et al., 2016, Cancer Cell, Vol. 29:117-129)in vitroお
よびin vivoの両方で観察された。実例として、その同起源の結合パートナーとの
その相互作用を防止または遮断するため、その内在化および分解を促進するため、ならび
に抗glycICP ADCを使用する場合には腫瘍細胞の殺滅を促進するために、以下
のグリコシル化ICP:PD-L1、PD-L2、PD-1、TIM-3、LAG-3、
BTLA、CEACAM1、BTN1A1、BTNL2、SEMA4D、CD47、CD
96、B7-H3、B7-H4、CTLA-4、VISTA、またはKIRの1つの、2
つの重複しないエピトープに特異的に結合するバイパラトピック抗glyICP抗体また
は抗glycICP ADCを産生してもよい。
【0114】
他の実施形態において、本発明によって包含される抗glycICP結合分子または抗
体は、多重パラトープ性であってもよく、すなわち同じglycICP標的分子上に3つ
、4つ、またはそれ超の異なる、好ましくは重複しないエピトープまたは抗原性決定基を
認識して結合する抗原結合ドメインを含んでもよい。なお他の実施形態において、抗gl
ycICP抗体は、二重パラトープ性または多重パラトープ性で多価の両方であり、すな
わち異なる標的glycICP分子上の1つまたは複数の異なるエピトープまたは抗原性
決定基を認識して結合する抗原結合部位または「パラトープ」を同様に含む。
【0115】
抗体断片の例には、(i)VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなるFab断
片;(ii)VHおよびCH1ドメインからなる「Fd」断片;(iii)1つの抗体の
VLおよびVHドメインからなる「Fv断片」;(iv)VHドメインからなる「dAb
」断片;(v)単離CDR領域;(vi)F(ab’)2断片、2つの連結したFab断
片を含む二価の断片;(vii)VHドメインとVLドメインが、2つのドメインを会合
させて結合ドメインを形成するペプチドリンカーによって連結されている一本鎖Fv分子
(「scFv」);(viii)二重特異性一本鎖Fv二量体(米国特許第5,091,
513号明細書を参照されたい);および(ix)ダイアボディ、遺伝子融合によって構
築された多価または多重特異性断片(米国特許出願公開第20050214860号明細
書)が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。Fv、scFv、またはダイアボ
ディ分子は、VHおよびVLドメインを連結するジスルフィド架橋を取り込むことによっ
て安定化されうる。CH3ドメインに接続したscFvを含むミニボディ(Hu et al., 1
996, Cancer Res., 56:3055-3061)も同様に、有用でありうる。加えて、抗体様結合ペプ
チド模倣体も同様に、実施形態において企図される。「抗体様結合ペプチド模倣体」(A
BiP)は、小さい抗体として作用し、より長い血清中半減期およびより面倒でない合成
方法という特定の利点を有するペプチドであり、Liu et al., 2003, Cell Mol. Biol., 4
9:209-216によって報告されている。
【0116】
抗グリコシル化PD-L1抗体(抗glycPD-L1抗体)
特定の実施形態において、非グリコシル化PD-L1と比較してグリコシル化ICPタ
ンパク質、PD-L1(例えば、特異的N-グリカン構造を有するPD-L1タンパク質
;PD-L1の特異的グリコペプチド)またはグリコシル化PD-L1ペプチドに特異的
に結合し、グリコシル化PD-L1/PD-1相互作用(抗glyPD-L1抗体)の免
疫抑制機能を阻害する抗体を単離および同定する方法が提供される。そのような抗gly
cPD-L1抗体は、疾患、特にがんの処置において有用である。抗glycPD-L1
抗体は、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgE Igクラスの抗体、ならびに
抗原結合活性を保持する抗体CDRドメインを含むポリペプチドでありうる。実例として
、抗glycPD-L1抗体は、キメラ、親和性成熟、ヒト化、またはヒト抗体でありう
る。好ましい実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、モノクローナル抗体であ
る。別の好ましい実施形態において、モノクローナル抗glycPD-L1抗体は、ヒト
化またはヒト抗体である。公知の手段によって、および本明細書において記述されるよう
に、そのような抗原またはエピトープが、天然起源から単離されるか、または天然の化合
物の合成誘導体もしくは変種であるかによらず、グリコシル化PD-L1抗原、そのそれ
ぞれのエピトープの1つもしくは複数、または前述のいずれか1つのコンジュゲートに対
して特異的な、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体、抗体断片、結合ドメイン
、およびCDR(前述のいずれかの改変形態を含む)を作製してもよい。抗体は二重特異
性またはバイパラトピックでありうる。
【0117】
方法によって得た抗glycICP特異的抗体による疾患の処置
ある特定の態様において、記述される方法によって得た抗体またはその抗原結合断片(
例えば、PD-L1などのグリコシル化ICPに特異的に結合する抗体)を、がんを処置
するために処置方法に使用して投与してもよい。したがって、本明細書において、がんを
処置するために、少なくとも1つの抗グリコシル化ICP抗体またはその結合断片、例え
ば抗glycPD-L1抗体の治療有効量を、必要とする対象に投与することによって、
がんを処置する方法が提供される。本明細書において記載されるように、処置または治療
的処置は、がん細胞の成長、増殖、遊走等を低減、防止、阻害、または遮断することを伴
う。方法は、T細胞、特にキラーまたは細胞傷害性T細胞などの免疫エフェクター細胞の
細胞表面上に発現する同起源のICリガンドと結合/相互作用することができるICP細
胞表面タンパク質を発現する対象の腫瘍細胞について、処置を受けている対象、例えばヒ
ト患者に利益をもたらす。これらの対象を、抗グリコシル化ICP抗体の少なくとも1つ
の有効量で処置することによって、腫瘍細胞上のグリコシル化ICPへの抗体の結合、な
らびにICP発現腫瘍細胞と、同起源のIDPリガンドを発現するT細胞との相互作用の
防止、遮断、または阻害が起こり、それによってT細胞活性の免疫抑制を防止または回避
して、PD-L1などのICPを発現する腫瘍細胞を殺滅するようにT細胞を活性化する
ことができる。したがって、記述の方法によって産生されて得られた抗グリコシル化IC
P抗体を使用する方法は、本発明の方法の実践によって達成される抗がん結果の利益を必
要とする、利益を受けることができる、または利益を受けることが望ましい対象にとって
有利である。対象が、少なくとも1つの抗グリコシル化ICP抗体またはその結合断片、
例えば抗glycPD-L1抗体またはその結合断片の治療有効量の投与を伴う方法の治
療上の利益を求めることは、当技術分野に対して利点を提供する。加えて、本発明の方法
は、他の処置および処置モダリティと比較して、副作用、有害な転帰、禁忌等をなくすも
しくは回避する、またはそのような問題が起こるリスクまたは可能性を低減させるさらな
る利点を提供する。
【0118】
本発明の処置方法が有用であるがんは、任意の悪性細胞タイプ、例えば固形腫瘍または
血液腫瘍、特にその表面にグリコシル化PD-L1などのグリコシル化ICPを発現する
細胞を有する腫瘍において見出されるがんを含む。一般的に、腫瘍は、任意の大きさの悪
性または潜在的に悪性の新生物または組織塊を指し、原発腫瘍および二次腫瘍を含む。固
形腫瘍は、通常、嚢胞または液体を含まない異常な組織塊または成長である。例示的な固
形腫瘍には、膵臓、胆嚢、結腸、盲腸、胃、脳、頭部、頸部、卵巣、精巣、腎臓、咽頭、
肉腫、肺、膀胱、黒色腫、前立腺、および乳房からなる群より選択される臓器の腫瘍が挙
げられるがこれらに限定されるわけではない。例示的な血液腫瘍には、骨髄の腫瘍、Tま
たはB細胞悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、芽腫、骨髄腫などが挙げられる。本明細書にお
いて提供される方法を使用して処置されうるがんのさらなる例には、癌腫、リンパ腫、芽
腫、肉腫、白血病、扁平上皮がん、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺癌、お
よび肺扁平上皮癌を含む)、腹膜のがん、肝細胞がん、胃がん(gastric cancer)または
胃がん(stomach cancer)(消化管がん、および消化管間質がんを含む)、膵臓がん、神
経膠芽腫、子宮頚がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸が
ん、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓がん(kidney cancer)または腎臓がん(r
enal cancer)、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、様々なタイプの頭頚部がん、黒色
腫、表在拡大型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、肢端黒子型黒色腫、結節性黒色腫、ならびに
B細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL
)NHL、中間悪性度/濾胞性NHL、中間悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性
NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非切れ込み型細胞NHL、巨大病変
NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、およびワルデンストレームマク
ログロブリン血症)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(AL
L)、ヘアリーセル白血病、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、および慢性骨
髄芽球性白血病が挙げられるがこれらに限定されるわけではない
【0119】
がんは、具体的に以下の組織学タイプのがんでありうるが、これらに限定される必要は
ない:悪性新生物;癌腫;未分化癌;巨細胞および紡錘細胞癌;小細胞癌;乳頭癌;扁平
上皮癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;毛母癌;移行上皮癌;乳頭状移行上皮癌;腺癌;悪
性ガストリノーマ;胆管癌;肝細胞癌;混合型肝細胞癌および胆管癌;索状腺癌;腺様嚢
胞癌;腺癌、腺腫様ポリープ;腺癌、家族性大腸ポリポーシス;固形癌;悪性カルチノイ
ド腫瘍;気管支肺胞腺癌;乳頭状腺癌;色素嫌性癌;好酸性癌;好酸性腺癌;好塩基性癌
;明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞腺癌;乳頭状濾胞腺癌;非被包性硬化性癌;副腎皮質癌
;子宮内膜癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳道腺癌;粘表皮癌;嚢胞腺
癌;乳頭状嚢胞腺癌;乳頭状漿液性嚢胞腺癌;粘液性嚢胞腺癌;膠様腺癌;印環細胞癌;
浸潤性乳管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性癌;乳房パジェット病;腺房細胞癌;腺扁平上皮
癌;扁平上皮化生を有する腺癌;悪性胸腺腫;悪性卵巣間質腫瘍;悪性莢膜細胞腫;悪性
顆粒膜細胞腫瘍;悪性男性胚細胞腫;セルトリ細胞癌;悪性ライディッヒ細胞腫瘍;悪性
脂質細胞腫瘍;悪性傍神経節腫;悪性乳房外傍神経節腫;褐色細胞腫;血管球血管肉腫;
悪性黒色腫;メラニン欠乏性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素性母斑の悪性黒色腫;
類上皮細胞黒色腫;悪性青色母斑;肉腫;線維肉腫;悪性線維性組織球腫;粘液肉腫;脂
肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児型横紋筋肉腫;胞巣型横紋筋肉腫;間質性肉腫;
悪性混合腫瘍;ミュラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;癌肉腫;悪性間葉腫;ブレンナー
腫瘍;悪性葉状腫瘍;滑膜肉腫;悪性中皮腫;未分化胚細胞腫;胎生期癌;悪性奇形腫;
悪性卵巣甲状腺腫;絨毛癌;悪性中腎腫;血管肉腫;悪性血管内皮腫;カポジ肉腫;悪性
血管外皮腫;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;悪性軟骨芽細胞腫;間葉
性軟骨肉腫;骨の巨細胞腫瘍;ユーイング肉腫;悪性歯原性腫瘍;エナメル上皮歯牙腫;
悪性エナメル上皮腫;エナメル上皮線維肉腫;悪性松果体腫;脊索腫;悪性神経膠腫;上
衣腫;星細胞腫;原形質性星細胞腫;原線維性星細胞腫;星芽細胞腫;神経膠芽腫;乏突
起神経膠腫;乏突起神経芽細胞腫;原始神経外胚葉腫瘍;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神
経芽腫;網膜芽腫;嗅神経腫瘍;悪性髄膜腫;神経線維肉腫;悪性神経鞘腫;悪性顆粒細
胞腫瘍;悪性リンパ腫;ホジキン病;側肉芽腫;小リンパ球性悪性リンパ腫;びまん性大
細胞型悪性リンパ腫;濾胞性悪性リンパ腫;菌状息肉腫;他の明記された非ホジキンリン
パ腫;悪性組織球腫;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リン
パ球性白血病;形質細胞白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病;好
塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞性白血病;巨核球性白血病;
骨髄肉腫;およびヘアリーセル白血病。
【0120】
記述の方法によって得た抗glycICP抗体によって処置されるがんは、好ましくは
腫瘍細胞またはがん細胞上に発現するICP、例えばPD-L1、特にグリコシル化PD
-L1について陽性である。具体的には、処置されるがんは、抗glycICP抗体が結
合するICPについて陽性である。ある特定の実施形態において、腫瘍細胞はまた、例え
ば乳がん細胞において発現するEGFRまたはHER2/neu発現などの腫瘍細胞マー
カーについて陽性である。これらのマーカーの存在または非存在は、EGFR陽性がんに
対する標的化治療薬、例えばゲフィチニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤、またはHER
2/neu陽性がんに対するハーセプチンと、抗glycICP抗体との併用治療が、そ
れを必要とする対象に治療上の恩典を提供するか否かを示しうる。ある特定の実施形態に
おいて、がんはBLBCである。
【0121】
治療の選択を誘導するためにがんを特徴付けするためまたは抗glycICP抗体を用
いる治療をモニターするために使用されうる他のマーカーには、非小細胞肺がんおよび異
型性大細胞リンパ腫におけるALK遺伝子の再配列および過剰発現;肝臓がんおよび胚細
胞腫瘍に関するα-フェトプロテイン(AFP);多発性骨髄腫、慢性リンパ球性白血病
、およびいくつかのリンパ腫に関するβ-2ミクログロブリン(B2M);絨毛がんおよ
び胚細胞腫瘍に関するβ-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG);卵巣がんおよび乳
がんに関するBRCA1およびBRCA2遺伝子変異;慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽
球性白血病および急性骨髄性白血病に関するBCR-ABL融合遺伝子(フィラデルフィ
ア染色体);皮膚黒色腫および結腸直腸がんに関するBRAF V600変異;消化管間
質腫瘍および粘膜黒色腫に関するC-kit/CD117;乳がんに関するCA15-3
/CA27.29;膵臓がん、胆嚢がん、胆管がん、および胃がんに関するCA19-9
;卵巣がんに関するCA-125;甲状腺髄様がんに関するカルシトニン;結腸直腸がん
およびいくつかの他のがんに関する癌胎児性抗原(CEA);非ホジキンリンパ腫に関す
るCD20;神経内分泌腫瘍に関するクロモグラニンA(CgA);膀胱がんに関する第
3、7、17および9p21染色体;肺がんに関するサイトケラチン断片21-1;非小
細胞肺がんに関するEGFR遺伝子変異分析;乳がんに関するエストロゲン受容体(ER
)/プロゲステロン受容体(PR);膀胱がんに関するフィブリン/フィブリノーゲン;
卵巣がんに関するHE4;乳がん、胃がん、および胃食道接合部腺癌に関するHER2/
neu遺伝子増幅またはタンパク質過剰発現;多発性骨髄腫およびワルデンストレームマ
クログロブリン血症に関する免疫グロブリン;結腸直腸癌および非小細胞肺がんに関する
KRAS遺伝子変異分析;胚細胞腫瘍、リンパ腫、白血病、黒色腫、および神経芽細胞腫
に関する乳酸デヒドロゲナーゼ;小細胞肺がんおよび神経芽腫に関するニューロン特異的
エノラーゼ(NSE);膀胱がんに関する核マトリクスタンパク質22;前立腺がんに関
する前立腺特異的抗原(PSA);甲状腺がんに関するサイログロブリン;ならびに乳が
んに関するウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子(uPA)およびプラスミノーゲン
活性化因子阻害剤(PAI-1)が挙げられる。
【0122】
抗グリコシル化ICP抗体、例えば抗glycPD-L1抗体は、多様なモダリティに
おいて抗腫瘍剤として使用されうる。特定の実施形態において、抗腫瘍剤として抗体を使
用する方法が企図され、したがって方法は、腫瘍細胞集団に、抗体、または抗体を含む組
成物の治療有効量を、腫瘍細胞の成長を遮断または阻害するために十分な期間、接触させ
ることを含む。一実施形態において、腫瘍細胞にin vivoで接触させることは、抗
グリコシル化ICP抗体またはその結合断片、例えば記述の抗glycPD-L1抗体ま
たはその結合断片を含む生理的に忍容される組成物の治療有効量を、必要とする患者に、
例えば静脈内、皮下、腹腔内、または腫瘍内注射によって投与することによって達成され
る。抗体は、注射または経時的な徐々の注入によって非経口投与されてもよい。有用な投
与および送達レジメンには、静脈内、腹腔内、経口、筋肉内、皮下、腔内、経皮、皮内、
蠕動ポンプ手段、または腫瘍細胞を含む組織への直接注射が挙げられる。
【0123】
抗体を含む治療組成物は、慣例的に静脈内に、例えば単位用量の注射によって投与され
る。治療組成物を参照して使用される用語「単位用量」は、それぞれの単位が、必要な希
釈剤、すなわち担体またはビヒクルに関連して所望の治療効果を生じるように計算された
活性材料の既定量を含む、対象の単位投与量として適した物理的に個別の単位を指す。例
えば抗glycPD-L1抗体などの抗グリコシル化ICP抗体を含む組成物は、投与製
剤と適合性である方法で、治療有効量で投与される。投与される量は、処置される対象、
対象の系が活性成分を利用する能力、所望の治療効果の程度に依存する。投与するために
必要な活性成分の正確な量は、医師の判断に依存して、個々の個体に特異的である。しか
し、全身適用について適した投与量範囲が本明細書において開示され、投与経路に依存す
る。初回および追加投与にとって適したレジメンも同様に企図され、典型的に初回投与後
に1つまたは複数の間隔(時間)で皮下注射または他の投与による繰り返し投与を伴いう
る。例示的な複数回投与は、抗体の高い血清中および組織レベルを持続的に維持するため
に適している。あるいは、in vivo治療について明記された範囲で血液中の濃度を
維持するために十分な持続的な静脈内注入が企図される。
【0124】
記述の方法によって産生された抗glycICP抗体は、疾患を処置するために、例え
ば局所進行または転移がんを有するがん患者における腫瘍細胞成長を阻害するためまたは
がん細胞を殺滅するために全身または局所投与されてもよいと企図される。抗体は、単独
で、または抗増殖薬もしくは抗がん薬と併用して投与されうる。一実施形態において、抗
グリコシル化ICP抗体は、手術または他の技法前に患者におけるがんの負荷を低減させ
るために投与される。あるいは、残っているいかなるがん(例えば、手術によって除去で
きなかったがん)も大きさまたは成長能が確実に低減されるように、および/または確実
に生存しないように、抗glycPD-L1抗体を、術後、定期的な間隔で投与すること
ができる。上記で注目したように、抗体の治療有効量は、所望の効果を達成するように計
算された既定量である。このため、抗glycICP抗体の投与のための投与量範囲は、
腫瘍細胞分裂および細胞周期進行の兆候が低減される所望の効果を生じるために十分に大
きい範囲である。最適には、投与量は、有害な副作用、例えば過粘稠度症候群、肺浮腫、
うっ血性心不全、神経学的効果などを引き起こすほど多量であってはならない。一般的に
、投与量は、患者の年齢、状態、体格、および性別、ならびに疾患の程度によって変化し
、内科医または臨床医などの当業者が決定することができる。当然、いずれかの合併症が
起こった場合には、個々の医師が投与量を調節することができる。
【0125】
処置方法
ある特定の実施形態において、組成物および方法は、グリコシル化ICPタンパク質、
例えばPD-L1に特異的かつ優先的に結合する抗グリコシル化ICP抗体またはその結
合部分、例えば抗glycPD-L1抗体の単独投与、または第2のもしくは追加の薬物
もしくは治療との併用投与を伴う。そのような薬物または治療は、そのリガンドと相互作
用するヒトグリコシル化ICPに関連する、例えばヒトPD-L1もしくはグリコシル化
ヒトPD-L1とヒトPD-1との相互作用に関連する任意の疾患の処置に適用されうる
。例えば、疾患はがんでありうる。特定のおよび例示的な実施形態において、グリコシル
化PD-L1タンパク質またはその結合部分に結合する少なくとも1つの抗PD-L1抗
体を含む組成物および方法は、がんまたは他の疾患の処置において、特にPD-1/PD
-L1相互作用を防止、低減、遮断、または阻害して、それによって治療効果および処置
を提供することによって、治療効果または保護効果を有する。
【0126】
併用治療を含む組成物および方法は、治療効果もしくは保護効果を有し、治療効果もし
くは保護効果を増強し、および/または別の抗がん治療もしくは抗増殖剤治療の治療効果
を増加させうる。治療および予防の方法ならびに組成物は、所望の効果、例えばがん細胞
の殺滅および/または細胞の過増殖の阻害を達成するために有効な併用量で提供されうる
。このプロセスは、抗グリコシル化ICP抗体またはその結合断片と、第2の治療とを投
与することを伴いうる。第2の治療は、直接の細胞傷害効果を有しても有しなくてもよい
。例えば、第2の治療は、直接の細胞傷害作用を有することなく免疫系をアップレギュレ
ートする薬剤でありうる。組織、腫瘍および/または細胞に、1つもしくは複数の薬剤(
例えば、抗体もしくは抗がん剤)を含む1つもしくは複数の組成物もしくは薬理学的製剤
を曝露するか、または組織、腫瘍、および/もしくは細胞に、2つもしくはそれ超の異な
る組成物もしくは製剤を曝露することができ、1つの組成物は、例えば、1)抗体、2)
抗がん剤、3)抗体と抗がん剤の両方、または4)2つもしくはそれ超の抗体を提供する
。同様に、そのような併用治療は、化学療法、放射線療法、外科療法、または免疫療法と
共に使用されうると企図される。
【0127】
例として、用語「接触した」および「曝露した」は、細胞に適用されるとき、特に腫瘍
細胞またはがん細胞の表面で標的抗原、例えばPD-L1、特にグリコシル化PD-L1
に特異的に結合するように、治療ポリペプチド、好ましくは本明細書において記述される
抗glycPD-L1抗体を標的細胞に送達するかまたは標的細胞の直接近位に配置する
プロセスを記述するために使用される。治療的抗glycPD-L1抗体によるそのよう
な結合は、腫瘍細胞またはがん細胞が発現するPD-L1とエフェクターT細胞上のPD
-1との相互作用を防止、遮断、阻害、または低減させて、それによって、PD-L1/
PD-1相互作用に関連する免疫抑制を防止する。実施形態において、化学療法剤または
放射線療法剤はまた、抗glycPD-L1抗体またはその結合断片と共に対象に投与ま
たは送達される。細胞の殺滅を達成するために、例えば1つまたは複数の薬剤は、細胞を
殺滅させるためにまたは細胞が分裂するのを防止するために有効な併用量で細胞に送達さ
れる。
【0128】
本明細書において記述される抗グリコシル化ICP抗体、例えば抗glycPD-L1
抗体は、別の抗がん処置に対してその前に、間に、後に、または様々な組み合わせで投与
されうる。投与は、互いを前後として、同時から数分まで、数日まで、数週間までの範囲
の間隔でありうる。抗体が抗がん剤とは別に患者に提供される実施形態において、投与さ
れた化合物が患者に対して有利な併用効果をなおも発揮することができるように、一般的
に、それぞれの送達時間の間に有意な時間が経過しないように確保される。実例として、
そのような例において、患者に抗体と抗がん治療とを互いに約12~24時間または72
時間以内に、より詳しくは互いに約6~12時間以内に提供してもよいと企図される。い
くつかの状況では、それぞれの投与の間に数日(2、3、4、5、6、または7日)から
数週間(1、2、3、4、5、6、7、または8週間)が経過する、処置期間の有意な延
長が望ましいと予想される。
【0129】
ある特定の実施形態において、一連の処置または処置サイクルは、1~90日またはそ
れ超持続すると予想される(この範囲はその間の日および最後の日を含む)。1つの薬剤
を、1日~90日のいずれかの日(このような範囲はその間の日および最後の日を含む)
にまたはその任意の組み合わせで投与してもよく、別の薬剤が1日~90日(このそのよ
うな範囲は、その間の日および最後の日を含む)またはその任意の組み合わせのいずれか
の日に投与されると企図される。1日の間(24時間の期間)に、患者に、薬剤を1回ま
たは複数回投与してもよい。その上、一連の処置の後、抗がん処置が投与されない期間が
存在してもよいと企図される。この期間は、患者の状態、例えば予後、体力、健康などに
応じて、例えば1~7日間、および/または1~5週間、および/または1~12ヶ月ま
たはそれ以上持続してもよい(このそのような範囲は、その間の日および上限の時点を含
む)。処置のサイクルは必要に応じて繰り返される。様々な処置の組み合わせを使用して
もよい。以下に示す併用処置レジメンの代表的な例において、抗体、例えば抗グリコシル
化ICP抗体、例えば抗glycPD-L1抗体またはその結合断片を「A」で表し、抗
がん治療を「B」で表す。
A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B A/B/B B/A/A A/B/
B/B B/A/B/B
B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A
B/B/A/A
B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A
A/A/B/A
【0130】
本実施形態の任意の抗体または治療の患者への投与は、もしあるとすれば、薬剤の毒性
を考慮に入れて、そのような化合物を投与するための一般的プロトコールに従う。したが
って、いくつかの実施形態において、有害事象および毒性、特に併用治療に帰することが
できる有害事象および毒性をモニターするステップが存在する。
【0131】
一実施形態において、治療または処置方法は、抗グリコシル化ICP抗体を単独または
別の抗がん剤と併用して、それを必要とする患者、すなわちがんまたは腫瘍を有する患者
に投与することを伴う。抗グリコシル化ICP抗体の投与前に、患者の腫瘍またはがんの
試料をICPの存在について評価してもよい。そのような評価の結果によって、患者の腫
瘍またはがんがグリコシル化ICPについて陽性であることが判明すれば、患者のグリコ
シル化ICP+腫瘍またはがんが抗グリコシル化ICP抗体による処置により感受性があ
る可能性、および処置を進めて有益な転帰が得られる可能性がより高いことに基づいて、
患者を処置について選択する。医療の専門家または医師は、抗グリコシル化ICP抗体処
置方法を進めるように患者に助言を与えてもよく、患者は医療の専門家または医師の助言
に基づいて処置を進めることを決定してもよい。加えて、一連の処置において、患者の腫
瘍細胞またはがん細胞を、処置の進行または有効性をモニターする方法として、グリコシ
ル化ICPの存在についてアッセイしてもよい。アッセイによって、例えば、患者の腫瘍
細胞またはがん細胞上のグリコシル化ICPの変化、喪失、または減少が示される場合、
医療の専門家は患者と共に、処置を継続すべきか否か、または何らかの方法で変更すべき
か、例えばより高い投薬量に、別の抗がん剤もしくは治療を追加するか否かなどを決定し
てもよい。
【0132】
免疫療法
方法のいくつかの実施形態において、抗glycICP抗体の投与と併用して、または
投与と共に、免疫療法を使用してもよい。がんの処置の文脈において、免疫療法は一般的
に、がん細胞を標的として破壊するために、免疫エフェクター細胞および分子の使用に依
存する。リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))は、そのような一例である。チェ
ックポイント阻害剤、例えばイピリムマブは、別のそのような例である。免疫エフェクタ
ーは、例えば、腫瘍細胞の表面上のマーカー(細胞表面タンパク質または受容体)に対し
て特異的な抗体でありうる。抗体単独は、治療のエフェクターとしての役割を果たしても
よく、または細胞殺滅を実際に行うために他の細胞を動員してもよい。抗体はまた、薬物
または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)にコ
ンジュゲートしてもよく、単に標的化剤としての役割を果たしてもよい。あるいは、エフ
ェクターは、腫瘍細胞標的と直接または間接的に相互作用する表面分子、例えばT細胞上
のPD-1/腫瘍細胞上のPD-L1相互作用を有するリンパ球でありうる。様々なエフ
ェクター細胞には、細胞傷害性T細胞およびNK細胞が挙げられる。
【0133】
免疫療法の一態様において、腫瘍細胞は、標的化に感受性があるいくつかのマーカー(
タンパク質/受容体)を有しなければならない。最適には、腫瘍マーカータンパク質/受
容体は、大部分の他の細胞、例えば非がん細胞または正常細胞には存在しない。多くの腫
瘍マーカーが存在し、これらのいずれも本実施形態の文脈において、抗glycICP抗
体と共に投与される別の薬物または治療による標的化にとって適しうる。一般的な腫瘍マ
ーカーには、例えばCD20、がん胎児性抗原(CEA)、チロシナーゼ(p97)、g
p68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP
、ラミニン受容体、erbB、およびp155が挙げられる。免疫療法の代替の態様は、
抗がん作用と免疫刺激作用とを組み合わせることである。免疫刺激分子も同様に存在し、
これにはサイトカイン、例えばIL-2、IL-4、IL-12、GM-CSF、γ-I
FN;ケモカイン、例えばMIP-1、MCP-1、IL-8;および増殖因子、例えば
FLT3リガンドが挙げられる。
【0134】
現在治験中または使用されている免疫療法の例は、免疫アジュバント、例えば、ウシ型
結核菌(Mycobacterium bovis)、マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、ジニトロク
ロロベンゼン、および芳香族化合物(米国特許第5,801,005号明細書および同第
5,739,169号明細書;Hui and Hashimoto, 1998, Infection Immun., 66(11):53
29-5336;Christodoulides et al., 1998, Microbiology, 144(Pt 11):3027-3037);サ
イトカイン療法、例えばα、β、およびγインターフェロン;IL-1、GM-CSF、
およびTNF(Bukowski et al., 1998, Clinical Cancer Res., 4(10):2337-2347;Davi
dson et al., 1998, J. Immunother., 21(5):389-398;Hellstrand et al., 1998, Acta
Oncologica, 37(4):347-353);遺伝子治療、例えばTNF、IL-1、IL-2、およ
びp53(Qin et al., 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95(24):14411-14416;Aust
in-Ward et al., 1998, Revista Medica de Chile, 126(7):838-845;米国特許第5,8
30,880号明細書および同第5,846,945号明細書);ならびにモノクローナ
ル抗体、例えば抗CD20、抗ガングリオシドGM2、および抗p185(Hollander, 2
012, Front. Immun., 3:3;Hanibuchi et al., 1998, Int. J. Cancer, 78(4):480-485;
米国特許第5,824,311号明細書)である。1つまたは複数の抗がん治療を、本明
細書において記述される抗体治療と共に使用してもよいと企図される。
【0135】
タンパク質の精製
抗グリコシル化ICP抗体を含むタンパク質の精製技術は、当業者に周知である。これ
らの技術は、1つのレベルで細胞、組織、または臓器のホモジナイゼーション、ならびに
ポリペプチドおよび非ポリペプチド分画への簡易分画を伴う。目的のタンパク質またはポ
リペプチドを、特に示していなければ部分精製または十分な精製(または均一になるまで
精製)を達成するためにクロマトグラフィーおよび電気泳動技術を使用してさらに精製し
てもよい。純粋なタンパク質またはペプチドの調製に特に適した分析方法は、イオン交換
クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ヒドロ
キシアパタイトクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、アフィニティー
クロマトグラフィー、イムノアフィニティークロマトグラフィー、および等電点電気泳動
である。ペプチドの特に効率的な精製方法は、中圧液体クロマトグラフィー(FPLC)
または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)である。一般的に当技術分野で公知であ
るように、様々な精製ステップを実施する順序を変化させてもよく、および/またはある
特定のステップを省略してもよく、それでもなお実質的に精製されたポリペプチドの適し
た調製方法が得られうる。
【0136】
精製ポリペプチド、例えば抗glycPD-L1抗体などの抗グリコシル化ICPは、
他の成分から単離可能なまたは単離されて、その天然に得ることができる状態と比較して
任意の程度に精製されるポリペプチドを指す。したがって、単離または精製ポリペプチド
はまた、それが天然に存在しうる環境、例えば、細胞、組織、臓器、生物試料などを含ま
ないポリペプチドを指す。一般的に、「精製」は、様々な他の成分を除去するために分画
に供されているが、組成物がその発現された生物活性を実質的に保持しているポリペプチ
ド組成物を指す。「実質的に精製された」組成物は、ポリペプチドが組成物の主成分を形
成し、そのため、ポリペプチドが、組成物のタンパク質成分の約50%、約60%、約7
0%、約80%、約90%、約95%、またはそれ超を構成する組成物を指す。
【0137】
ポリペプチド、例えば抗体タンパク質の精製の程度を定量する様々な方法が、本開示に
照らして当業者に公知である。これらは、例えば、活性分画の特異的活性を決定すること
、またはSDS/PAGE分析によって分画内のポリペプチドの量を評価することを含む
。分画の純度を評価する好ましい方法は、分画の特異的活性を計算すること、それを最初
の抽出物の特異的活性と比較すること、およびこのようにして「精製倍率」によって評価
したその純度の程度を計算することである。活性の量を表すために使用される実際の単位
は、精製後に行うように選択される特定のアッセイ技術、および発現されたポリペプチド
が検出可能な活性を示すか否かに依存する。
【0138】
一般的に、ポリペプチドが常にその最も精製された状態で提供される必要はない。実際
に、実質的にあまり精製されていない産物は、ある特定の実施形態において有用性を有し
うると企図される。部分精製は、より少ない精製ステップを組み合わせて使用することに
よって、または同じ一般的精製スキームの異なる形態を利用することによって達成されう
る。例えば、HPLC装置を利用して実施する陽イオン交換カラムクロマトグラフィーで
は、一般的に、低圧のクロマトグラフィーシステムを利用する同じ技術より大きい精製「
倍率」が得られると認識される。低い程度の相対的精製を示す方法は、タンパク質産物の
全体的な回収において、または発現されたタンパク質の活性の維持において利点を有しう
る。
【0139】
アフィニティークロマトグラフィーは、単離される物質(タンパク質)とそれが特異的
に結合することができる分子との間の特異的親和性、すなわち、受容体-リガンド型相互
作用に依存するクロマトグラフィー技法である。結合パートナーの1つを不溶性マトリク
スに共有結合的にカップリングさせることによって、カラム材料(樹脂)を合成する。次
いで、カラム材料は、カラム樹脂の上を通過する溶液から物質を特異的に吸着することが
できる。条件を、結合が妨害される/起こらない条件(例えば、pH、イオン強度、温度
の変更など)に変化させることによって、溶出が起こる。マトリクスは、いかなる有意な
程度にも分子を吸着せず、広範囲の化学的、物理的、および温度安定性を有する物質であ
るべきである。リガンドは、その結合特性に影響を及ぼさないようにカップリングすべき
である。リガンドはまた、比較的堅固な結合を提供すべきであるが、結合した物質の溶出
は、望ましい試料タンパク質またはリガンドを破壊することなく起こるべきである。
【0140】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、溶液中の分子がその大きさに基づいて、
またはより技術的な用語ではその流体力学的体積に基づいて分離されるクロマトグラフィ
ー方法である。これは通常、大きい分子または高分子複合体、例えばタンパク質および工
業用ポリマーに適用される。典型的に、水溶液を使用して試料をカラムの中に通過させる
とき、この技術は、ゲル濾過クロマトグラフィーとして知られるが、これに対し、ゲル透
過性クロマトグラフィーという名称は、移動相として有機溶媒を使用するときに使用され
る。SECの基礎となる原理は、異なる大きさの粒子が、異なる速度で静止相の中を溶出
(濾過)して、それによって、大きさに基づいて粒子の溶液が分離されることである。粒
子の全てが同時またはほぼ同時にロードされると仮定すれば、同じ大きさの粒子は共に溶
出するはずである。
【0141】
高速(すなわち、高圧)液体クロマトグラフィー(HPLC)は、化合物を分離、同定
、および定量するために生化学および分析化学において頻繁に使用されるカラムクロマト
グラフィーの1つの形態である。HPLCは、クロマトグラフィー充填材料(静止相)、
移動相をカラムの中に移動させるポンプ、および分子の保持時間を示す検出器を利用する
。保持時間は、静止相、分析される分子、および使用する溶媒の間の相互作用に応じて変
化する。
【0142】
患者のバイオマーカーとしてのグリコシル化ICPは、抗グリコシル化ICP抗体処置に
よって利益を得る
一実施形態において、記述の少なくとも1つの抗グリコシル化ICP抗体の使用を伴う
方法が提供される。そのような方法は、がんまたは腫瘍を有する対象から得た腫瘍細胞ま
たはがん細胞のバイオマーカー評価において有用でありうる。がんを有する対象が、IC
Pを有する腫瘍細胞またはがん細胞のバイオマーカーとしてグリコシル化ICP、特にそ
のような細胞の細胞表面上にグリコシル化PD-L1の検出可能なレベルを発現するがん
または腫瘍を有するか否かを決定する方法が提供される。例えば、対象のがんまたは腫瘍
細胞を試験して、細胞表面上にグリコシル化ICP、例えばPD-L1を発現すると決定
されれば、対象を、記述の抗グリコシル化ICP抗体、例えば抗glycPD-L1抗体
の単独、または例えば別の抗がん剤との併用によって処置すると、処置によって利益が得
られる可能性が高くなる。そのような方法は、がんまたは腫瘍を有する対象から試料を得
ること、当技術分野において公知で使用される、または上記の結合方法を使用して、対象
のがんまたは腫瘍に由来する細胞上のグリコシル化ICP、例えばPD-L1の存在につ
いて試料を試験すること、ならびに対象のがんまたは腫瘍がグリコシル化ICP、例えば
PD-L1タンパク質の細胞表面発現について陽性であることが見出されれば、対象に、
抗グリコシル化ICP抗体、例えば抗glycPD-L1抗体の有効量を単独でまたは別
の抗がん剤と併用して投与することを含む。処置前に対象が、グリコシル化ICP、例え
ばPD-L1を発現するがんまたは腫瘍を有すると診断されれば、投与された抗グリコシ
ル化ICP抗体、例えば抗glycPD-L1抗体が、対象のグリコシル化ICP、例え
ばglycPD-L1発現がんまたは腫瘍細胞と、対象のICP発現T細胞、例えばPD
-1発現T細胞との相互作用を遮断または阻害する可能性がより高く、それによってT細
胞活性の免疫抑制を防止して、活性化T細胞殺滅により腫瘍細胞またはがん細胞の殺滅を
促進することから、より有効な処置が得られ、対象にとって利益が得られる。一実施形態
において、方法は、そのがんまたは腫瘍が、発現されたグリコシル化ICP、例えばPD
-L1タンパク質の存在に対する試験に感受性がありうる対象を最初に選択することを伴
いうる。
【0143】
類似の方法を使用して、抗グリコシル化ICP抗体、例えば抗glycPD-L1抗体
と別の抗がん薬または処置との併用処置を含む、一連のがんの処置または治療の間に、な
らびに処置の終了後に、患者の腫瘍細胞上のグリコシル化ICP、例えばPD-L1の存
在を経時的にモニターしてもよい。そのような方法はまた、処置前に、および一連の処置
の間に、抗がん処置レジメンまたは併用処置が、グリコシル化ICP発現腫瘍細胞または
がん細胞、例えばグリコシル化PD-L1発現腫瘍細胞またはがん細胞について患者の腫
瘍またはがん試料を試験またはアッセイすること、例えば成功の転帰またはその可能性を
決定するためにモニターすることを伴うコンパニオン診断法において使用されうる。
【0144】
他の薬剤
他の薬剤を、処置の治療有効性を改善するために、本実施形態のある特定の態様と共に
使用してもよいと企図される。これらの追加の薬剤は、細胞表面受容体およびGAP接合
部のアップレギュレーションに影響を及ぼす薬剤、細胞抑制および分化剤、細胞接着阻害
剤、アポトーシス誘発剤に対する過増殖細胞の感受性を増加させる薬剤、または他の生物
薬剤を含む。GAP接合部の数を増加させることによる細胞内シグナル伝達の増加は、隣
接する過増殖細胞集団に対して抗過増殖作用を増加させうる。他の実施形態において、細
胞抑制または分化剤は、処置の抗過増殖有効性を改善するために、本実施形態のある特定
の態様と併用して使用されうる。細胞接着阻害剤は、本実施形態の有効性を改善すると企
図される。細胞接着阻害剤の例は、接着斑キナーゼ(FAK)阻害剤およびロバスタチン
である。さらに、処置の有効性を改善するために、アポトーシスに対する過増殖細胞の感
受性を増加させる他の薬剤、例えば抗体c225を、本実施形態のある特定の態様におい
て併用して使用することができると企図される。
【0145】
融合体およびコンジュゲート
本明細書において提供される抗グリコシル化ICP抗体はまた、他のタンパク質との融
合タンパク質として発現させるか、または別の部分と化学的にコンジュゲートさせること
ができる。いくつかの実施形態において、抗体またはポリペプチドは、アイソタイプまた
はサブクラスによって変化しうるFc部分を有し、キメラもしくはハイブリッドであって
よく、および/または例えばエフェクター機能を改善するために、半減期もしくは組織ア
クセシビリティを制御するために、生物物理学的特徴、例えば安定性を強化するために、
および産物の有効性を改善するために、改変することができ、これらはコスト低減に関連
しうる。融合タンパク質の構築において有用な多くの改変、およびそれらを作製するため
の方法は、当技術分野で公知であり、例えば、Mueller, J.P. et al., 1997, Mol. Immun
. 34(6):441-452;Swann, P.G., 2008, Curr. Opin. Immunol., 20:493-499;およびPres
ta, L.G., 2008, Curr. Opin. Immunol., 20:460-470に記述されている。いくつかの実施
形態において、Fc領域は、抗体のネイティブIgG1、IgG2、またはIgG4 F
c領域である。いくつかの実施形態において、Fc領域はハイブリッド、例えばIgG2
/IgG4 Fc定常領域を含むキメラである。Fc領域の改変には、Fcγ受容体およ
び補体への結合を防止するために改変されるIgG4;1つまたは複数のFcγ受容体へ
の結合を改善するために改変されるIgG1;エフェクター機能を最小限にするように改
変されるIgG1(アミノ酸の変化);変更されたグリカンを有する/グリカンを有しな
い(典型的に、発現宿主を変化させることによって)IgG1;ならびにFcRnへのp
H依存的結合が変更されたIgG1が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。F
c領域は、全ヒンジ領域、または抗体の全ヒンジ領域より少ない部分を含みうる。
【0146】
別の実施形態は、その半減期を増加させるFcRへの結合が低減したIG2-4ハイブ
リッドおよびIgG4変異体を含む。代表的なIgG2-4ハイブリッドおよびIgG4
変異体は、例えば、Angal et al., 1993, Molec. Immunol., 30(1):105-108;Mueller et
al., 1997, Mol. Immun., 34(6):441-452;および米国特許第6,982,323号明細
書に記載され、その参照により全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態にお
いて、IgG1および/またはIgG2ドメインは欠失している。例えば、Angalら
、同上は、IgG1およびIgG2ドメインのセリン241位がプロリンで置換されてい
るタンパク質を記述している。いくつかの実施形態において、少なくとも10、少なくと
も20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくと
も70、少なくとも80、少なくとも90、または少なくとも100個のアミノ酸を有す
る融合タンパク質またはポリペプチドが企図される。
【0147】
いくつかの実施形態において、抗グリコシル化ICP抗体を、連結または共有結合させ
る、または少なくとも1つの部分と複合体を形成させる。そのような部分は、診断剤また
は治療剤として抗体の有効性を増加させる部分でありうるが、これらに限定されるわけで
はない。いくつかの実施形態において、部分は、造影剤、毒素、治療酵素、抗生物質、放
射標識ヌクレオチド、化学療法剤などでありうる。
【0148】
いくつかの実施形態において、抗glycICP抗体にコンジュゲートまたは融合され
る部分は、酵素、ホルモン、細胞表面受容体、毒素、例えば、限定されないが、アブリン
、リシンA、シュードモナスエンテロトキシン(すなわちPE-40)、ジフテリア毒素
、リシン、ゲロニン、またはヨウシュヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、タンパク質(腫
瘍壊死因子、インターフェロン(例えば、α-インターフェロン、β-インターフェロン
)、神経生長因子(NGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、組織プラスミノーゲン
活性化因子(TPA)、またはアポトーシス剤(例えば、腫瘍壊死因子-α、腫瘍壊死因
子-β)、生物応答修飾剤(例えば、リンフォカイン(例えば、インターロイキン-1(
「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-6(「I
L-6」))、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、顆粒球コ
ロニー刺激因子(「G-CSF」)、またはマクロファージコロニー刺激因子(「M-C
SF」))、または増殖因子(例えば、成長ホルモン(「GH」))、細胞毒素(例えば
、細胞抑制または細胞障害剤、例えばパクリタキセル、サイトカラシンB、グラミシジン
D、エチジウムブロミド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンク
リスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキ
シアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-
デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン
、プロプラノロール、ツブリシンベースの微小管阻害剤、例えばメイタンシノイド、例え
ばメイタンシノイドDM1(N2’-デアセチル-N2’-(3-メルカプト-1-オキ
ソプロピル)-メイタンシン、使用するリンカーに応じてメルタンシンまたはエムタンシ
ン、ならびにメイタンシノイドDM4(N2’-デアセチル-n2’-(4-メルカプト
-4-メチル-1-オキソペンチル)-6-メチルメイタンシン;ラブタンシン、Imm
unoGen,Inc、Waltham,MA)、ならびにピューロマイシンおよびその
アナログまたはホモログ)、抗代謝薬(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリ
ン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシル、ダカルバジン)、アルキル
化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、BiCNU
(登録商標)(カルムスチン、BSNU)およびロムスチン(CCNU))、シクロホス
ファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾシン、マイトマイシンC
、およびシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)、シスプラチン)、アントラサイ
クリン(例えば、ダウノルビシン(これまでのダウノマイシン)、およびドキソルビシン
)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(これまでのアクチノマイシン)、ブレオマイ
シン、ミトラマイシン、アントラマイシン(AMC))、抗分裂剤ならびに/またはチュ
ーブリン阻害剤、例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン、モノメチルアウリスタ
チンF(MMAF)、モノメチルアウリスタチンE(またはデスメチルアウリスタチンE
)(MMAE)、例えばベドチン、またはその組み合わせであってもよい。
【0149】
抗体-薬物コンジュゲート(ADC)
抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、強力な細胞傷害薬が、化学リンカー、または
カップリング剤を介して特異的標的抗原、特に腫瘍細胞またはがん細胞の表面上に発現す
るまたは過剰発現する標的抗原に対する抗体、典型的にモノクローナル抗体に共有結合に
より連結されている生物学的治療剤である。そのような「ロード」された抗体は、腫瘍細
胞またはがん細胞に対して致死性の細胞傷害性の積み荷を送達するように設計される。A
DCは、副作用を低減させ、全身毒性を最小限にしながら、新生物細胞にペイロード薬物
を標的化する手段を提供する。ADCは、ADCの抗体成分とその標的抗原との特異的相
互作用により、細胞表面発現標的抗原に結合する。標的抗原に結合後、ADCは、特に抗
体が高い内在化活性を有する場合には細胞に内在化されうる。内在化機能を有する抗gl
ycICP抗体の例は、本明細書において記述される実施形態の抗glycPD-L1抗
体、例えばSTM108およびSTM073である。したがって、そのようなADCが細
胞に内在化される場合、それらは細胞を殺滅するかまたは細胞内の分子を標的とするよう
に直接作用し、それによってアポトーシスまたは細胞死が起こる。本明細書において記述
される抗glycICP抗体、例えば抗glycPD-L1抗体(例えば、STM108
およびSTM073)、特にモノクローナル、ヒト化、キメラ、またはヒト抗体を含むそ
のようなADCは、腫瘍およびがん細胞上のグリコシル化ICPへの抗体の特異的標的化
を、細胞傷害薬または化合物のがん殺滅能と組み合わせ、それによって抗glycICP
抗体による処置および治療のさらなる利点を提供する。ADCを調製および使用する技術
は当技術分野で公知であり、本明細書において記述される抗glycPD-L1抗体に限
定されないと意図される。(例えば、Valliere Douglass, J.F., et al., 2015, Mol. Ph
arm., 12(6):1774-1783;Leal, M. et al., 2014, Ann. N.Y. Acad. Sci., 1321:41-54;
Panowski, S. et al., 2014, mAbs, 6(1):34-45;Beck, A. 2014, mAbs, 6(1):30-33;Be
hrens, C.R. et al., 2014, mAbs, 6(1):46-53;およびFlygare, J.A. et al., 2013, Ch
em. Biol. Drug Des., 81(1):113-121を参照されたい)。実施形態において、上記の部分
のいくつかまたは全て、特に毒素および細胞毒素を、抗glycPD-L1抗体にコンジ
ュゲートさせて、がんを処置するために有効なADCを産生してもよい。実施形態におい
て、ACDの抗glycICP抗体成分は、二重特異性、多重特異性、二重パラトープ性
または多重パラトープ性抗体でありうる。
【0150】
治療的または細胞傷害性部分を抗体にコンジュゲートさせる方法は周知である。例えば
、Amon et al., "Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer The
rapy", in MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, Reisfeld et al. (eds.), 1985
, pp. 243-56, Alan R. Liss, Inc.);Hellstrom et al., "Antibodies For Drug Delive
ry", in CONTROLLED DRUG DELIVERY (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), 1987, pp. 62
3-53, Marcel Dekker, Inc.);Thorpe, "Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Ca
ncer Therapy: A Review", in MONOCLONAL ANTIBODIES '84: BIOLOGICAL AND CLINICAL A
PPLICATIONS, Pinchera et al. (eds.), 1985, pp. 475-506);"Analysis, Results, And
Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Th
erapy", in MONOCLONAL ANTIBODIES FOR CANCER DETECTION AND THERAPY, Baldwin et al
. (eds.), 1985, pp. 303-16, Academic Press;Thorpe et al., Immunol. Rev. 62:119-
158 (1982);Carter et al., Cancer J. 14(3):154-169 (2008);Alley et al., Curr. O
pin. Chem. Biol. 14(4):529-537 (2010);Carter et al., Amer. Assoc. Cancer Res. E
duc. Book. 2005(1):147-154 (2005);Carter et al., Cancer J. 14(3):154-169(2008)
;Chari, Acc. Chem Res. 41(1):98-107 (2008);Doronina et al., Nat. Biotechnol. 2
1(7):778-784(2003);Ducry et al., Bioconjug Chem. 21(1):5-13(2010);Senter, Curr
. Opin. Chem. Biol. 13(3):235-244 (2009);およびTeicher, Curr Cancer Drug Target
s. 9(8):982-1004 (2009)を参照されたい。ADCおよびADC腫瘍学産物の総説は、Lam
bert, British J. Clin. Pharmacol., 76(2):248-262 (2013) and in Bouchard et al.,
Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 24:5357-5363 (2014)において見出される
。
【0151】
特異的実施形態において、glycICP、例えばPD-L1の腫瘍細胞への内在化を
容易にする抗glycICP抗体、例えば抗glycPD-L1抗体を、典型的に本明細
書において抗glycICP抗体-ADCと呼ばれる抗glycICP抗体-薬物コンジ
ュゲート(ADC)を産生するために、不安定な結合を有する化学リンカーによって、上
記のように細胞傷害剤および/または化学療法剤、毒素、または細胞毒素、または放射性
核種などの非常に強力な生物活性薬または薬剤にコンジュゲートする。生物活性薬または
細胞傷害剤は、例えば細胞、特に抗glycICP抗体-ADCが結合する細胞表面標的
受容体または分子を発現する腫瘍細胞またはがん細胞に送達される「細胞障害性ペイロー
ド」として役立つ。その標的分子に結合したそのような抗glycICP抗体-ADCは
、細胞に内在化され、そこで細胞傷害薬ペイロードが放出される。非常に強力な細胞傷害
性ペイロードとのコンジュゲーションを通しての本明細書において記述される抗glyc
PD-L1抗体などの内在化抗glycICP抗体のがん細胞殺滅活性の増強により、高
い抗腫瘍活性を有する抗がんADC生物学が得られ、副作用は一般的に軽度で良好に忍容
される。
【0152】
本実施形態において記述される抗glycICP抗体は、当技術分野において公知で使
用される、またはまだ商品化されていない様々なタイプの細胞傷害性またはDNA作用ペ
イロードに連結してもよい。例えば、メイタンシンは、エチオピアの低木であるメイテヌ
ス・オバツス(Maytenus ovatus)の樹皮から最初に単離されたベンゾア
ンサマクロライド(benzoansamacrolide)である。この細胞傷害剤およびその誘導体(例
えば、メイタンシノイド)は、ビンカアルカロイド結合部位の近くでチューブリンに結合
する。それらは、微小管の末端に位置するチューブリンに対して高い親和性および微小管
全体に分布する部位に対してより低い親和性を有すると考えられる。微小管動態の抑制に
より、細胞は細胞周期のG2/M期で停止し、最終的にアポトーシスによる細胞死が起こ
る(Oroudjev et al., Mol. Cancer Ther., 10L2700-2713 (2010))。2つのメイタンシ
ン誘導体(チオール含有メイタンシノイド)は、DM1およびDM4(ImmunoGe
n,Inc,Waltham,MA)を含み、これらは非可逆的および可逆的リンカーと
組み合わせて広く使用されている。特に、チオエーテルリンカーによって抗体に結合した
DM1は、「エムタンシン」と呼ばれる。SPPリンカーによって抗体に結合したDM1
は、「メルタンシン」と呼ばれる。SPDBリンカーによって結合したDM4は、「ラブ
タンシン」と呼ばれ、sSPDBリンカーによって結合したDN4は、「ソラブタンシン
」(ImmunoGen,Inc,Waltham,MA)と呼ばれる。一実施形態にお
いて、抗glycICP抗体-ADCは、チューブリン作用メイタンシノイドペイロード
DM1を含む。特定の実施形態において、抗glycICP抗体-ADCは、抗glyc
PD-L1抗体-DM1である。一実施形態において、抗glycICP抗体-ADCは
、チューブリン作用メイタンシノイドペイロードDM4を含む。特定の実施形態において
、抗glycICP抗体-ADCは、抗glycPD-L1抗体DM4である。一実施形
態において、抗glycICP抗体-ADCは、DNA作用ペイロード、例えばDGN4
62(ImmunoGen,Inc.,Waltham,MA)を含む。特定の実施形態
において、抗glycICP抗体-ADCは、抗glycPD-L1抗体-DGN462
である。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体-ADCの抗glycPD-L
1抗体成分は、STM073またはその結合部分である。一実施形態において、抗gly
cPD-L1抗体-ADCの抗glycPD-L1抗体成分は、STM108またはその
結合部分である。
【0153】
特定の実施形態において、抗glycICP抗体にコンジュゲートされる細胞傷害剤は
、その抗分裂活性がチューブリンの重合化を遮断することによって細胞分裂を阻害するこ
とを伴う毒性の高い抗新生物剤である、MMAE(モノメチルアウリスタチンE(または
デスメチル-アウリスタチンE))である。国際一般的名称であるベドチンは、MMAE
プラスMMAE-抗体コンジュゲートにおける抗体とのその連結構造を指す。より特定の
実施形態において、ADCは、抗glycPD-L1抗体-MMAE、例えばSTM07
3-MMAEまたはSTM108-MMAEである。
【0154】
多数の化学リンカーが公知であり、細胞傷害剤またはDNA作用薬ペイロードをコンジ
ュゲートするために使用される。抗glycICP抗体を含むADC、特に本明細書にお
いて記述されるその標的の結合後に内在化されるADCを産生するために単独でまたは併
用して使用することが想像されるある特定のリンカーには、SMCC(4-(N-マレイ
ミドメチル)シクロヘキサンカルボン酸 N-ヒドロキシスクシンイミドエステル);S
PDB(N-スクシンイミジル 3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート);SPP(N
-スクシンイミジル 4-(2-ピリジルジチオ)ペンタノエート);スルホ-SPDB
またはsSPDB(N-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルジチオ)-2-スルホブ
タノエート);チオエーテルリンカー スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル
)シクロヘキサン-1-カルボン酸(MCC);およびvc(バリン-シトルリンジペプ
チドリンカー)が挙げられる。例として、操作されたリンカー(例えば、SMCC、SP
DB、S-SPDB)(Immunogen,Inc.)は、ADCの腫瘍への結合の前
に安定であるように設計されており、次に、ADCががん細胞内に内在化されるとペイロ
ードの有効性を最適化するように設計されている。カテプシン切断可能リンカーであるジ
ペプチドvcリンカーなどの他のリンカーを使用して、抗体を、ドラスタチン10に由来
する分裂阻害剤であるアウリスタチン、例えばモノメチルアウリスタチンE(MMAE)
、例えばベドチンなどの細胞傷害剤にコンジュゲートしてもよい。細胞毒素を、1つ超の
毒素分子がそれぞれの抗体分子に結合するように抗体にコンジュゲートさせてもよく、例
えば抗体あたり平均で2、3、4、5、6、7、または8個の毒素分子が存在してもよい
。
【0155】
特定の実施形態において、MMAEを、マレイミドカプロイル(MC)結合基によって
抗体システインに間接的に連結させ、これを、バリン-シトルリン-p-アミノベンジル
オキシカルボニル-MMAE(MC-vc-PAB-MMAE)にカップリングさせる。
「MC-vc-PAB-MMAE」の線形構造において、「MC」は、マレイミドおよび
カプロン酸からなり、典型的にH鎖上のシステイン基を介して抗体に結合する部分である
。次に「MC」を、腫瘍細胞またはがん細胞内部のカテプシンによって切断されるカテプ
シン切断可能リンカーである、バリン(Val)およびシトルリン(Cit)からなる「
vc」リンカーに結合させる。「vc」を、スペーサー「PAB」、すなわちパラアミノ
安息香酸に結合し、これにMMAE細胞毒素を連結する。MC-vc-PAB-MMAE
ADCは、カテプシンBなどのプロテアーゼによって切断されると遊離の膜透過性のM
MAEを放出する。一実施形態において、抗体に対するリンカーは、細胞外液において安
定であるが、ADCが腫瘍細胞またはがん細胞に入るとカテプシンによって切断され、こ
のように、MMAEまたは他の毒素薬物の抗分裂メカニズムを活性化する。別の実施形態
において、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)を、マレイミドカプロイル(MC-
MMAF)によって抗体システインに連結する。MC-vc-PAB-MMAE ADC
とは対照的に、MC-MMAF ADCは、MMC-DMI ADCと同様に切断不能で
あり、細胞内で内在化して分解されなければならず、細胞内の活性薬としてシステイン-
MC-MMAFを放出する。
【0156】
一実施形態において、細胞傷害性ペイロードは、ADCの細胞内への内在化後にリソソ
ームにおいて放出される。リソソームにおいて、リソソーム酵素は、ADCの抗体成分を
消化する。リソソーム分解後、薬物(および薬物-リンカー)ペイロードが細胞質に放出
され、ここで薬物が細胞内標的と結合し、最終的に細胞死を引き起こす。任意選択で、放
出されたペイロードは、リンカーがなおも結合しているが完全に活性である。ADCに標
的が結合することによってリソソームへの輸送の不良が起こる他の実施形態において、標
的細胞の外部で安定であるが、細胞内に入ると抗体成分からペイロードを切断するリンカ
ーは、細胞内であるがリソソームの外部でペイロードを放出する代替の様式を提供する。
他の実施形態において、リンカーは、細胞外液で安定であるが、ADCが腫瘍細胞または
がん細胞に入るとカテプシンによって切断され、このように毒素薬物の抗分裂または他の
細胞傷害メカニズムを活性化する。他の実施形態において、切断可能リンカーの作用によ
って放出されるペイロードは、隣接するがん細胞に入り、バイスタンダー作用を介してそ
れらを殺滅することができ、このようにしてADCの標的化および腫瘍殺滅活性を増強す
る。
【0157】
特定の例として、細胞表面PD-L1の内在化を促進する抗PD-L1 MAbs S
TM073またはSTM108によって表される抗glycICP抗体は、リンカーSM
CC(スクシンイミジル 4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキ
シレート)を介してDM1にカップリングされる。別の特定の実施例において、STM0
73またはSTM108によって表される抗glycICP抗体は、リンカーSPDB(
N-スクシンイミジル 3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート)またはsSPDB(N
-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルジチオ)-2-スルホブタノエート)を介して
DM4にカップリングされる。別の特定の実施例において、アウリスタチンモノメチルア
ウリスタチンEは、マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオ
キシカルボニル(MC-vc-PAB-MMAE)によって、抗glycICP抗体、例
えばSTM073またはSTM108のシステイン残基に連結される。特定の実施形態に
おいて、ADCは、STM108-MC-vc-PAB-MMAEまたはSTM073-
MC-vc-PAB-MMAEである。
【0158】
一実施形態において、抗glycICP抗体-ADCは、1分子あたり、MMAEなど
の薬物の多数の単位、例えば分子あたり1~10、1~5、2~5、3-5、または2、
3、4、5、6、7、8、9、10単位のMMAEなどの薬物、ならびにその間の値を含
む。他の実施形態において、抗体-薬物比は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、
またはそれ超、ならびに2~10の間の範囲およびその間の値でありうる。実施形態にお
いて、抗glycICP抗体、例えばSTM108またはSTM073は、二重特異性、
多重特異性、二重パラトープ性もしくは多重パラトープ性抗体であるか、またはその抗原
結合部分である。本明細書において記述される内在化機能を有する抗glycICP抗体
を含むそのようなADC、例えば上記のSTM108-MC-vc-PAB-MMAEは
、がんの処置のために腫瘍およびがん細胞の殺滅において強化された多面的な抗新生物効
果を提供する。ほんの数例の実例の利点として、抗ヒトglycICPMAb-ADC、
例えばSTM108-ADCは、PD-1/PD-L1相互作用を遮断して、それによっ
て腫瘍細胞に対するT細胞免疫およびエフェクター機能を増強することができ、腫瘍およ
びがん細胞上で発現したグリコシル化PD-L1を選択的に標的とすることができ、結合
後に腫瘍細胞またはがん細胞上のPD-L1を内在化して、それによって腫瘍細胞または
がん細胞上の表面発現PD-L1を低減させ、PD-L1の腫瘍形成能をさらに低減させ
ることができ、抗体が内在化されて毒性薬物が放出される腫瘍細胞またはがん細胞のアポ
トーシスを引き起こし、細胞に損傷を与え、最終的に殺滅することができ、ならびにアポ
トーシスを受けた腫瘍または細胞からの毒性薬物の放出を通して、付近または近隣の腫瘍
細胞またはがん細胞を殺滅することによって、バイスタンダー作用を容易にすることがで
きる。
【0159】
いくつかの実施形態において、本明細書において記述される抗体は、精製を容易にする
ために、マーカー、例えばペプチドにコンジュゲートさせてもよい。いくつかの実施形態
において、マーカーは、ヘキサヒスチジンペプチド、すなわちインフルエンザ血液凝集素
タンパク質に由来するエピトープに対応する血液凝集素「HA」タグ(Wilson, I. A. et
al., Cell, 37:767-778 (1984))、または「flag」タグ(Knappik, A. et al., Bio
techniques 17(4):754-761 (1994))である。
【0160】
他の実施形態において、本明細書において記述される抗glycICP抗体にコンジュ
ゲートされる部分は、アッセイにおいて検出することができる造影剤でありうる。そのよ
うな造影剤は、酵素、補欠分子団、放射標識、非放射活性常磁性金属イオン、ハプテン、
蛍光標識、リン光分子、化学発光分子、発色団、発光分子、生物発光分子、光親和性分子
、または色素粒子もしくはリガンド、例えばビオチンでありうる。実施形態において、適
した酵素には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシ
ダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられるがこれらに限定されるわけでは
ない;補欠分子団には、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げ
られるがこれらに限定されるわけではない;蛍光材料には、ウンベリフェロン、フルオレ
セイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミン
フルオレセイン、塩化ダンシル、またはフィコエリスリンが挙げられるがこれらに限定さ
れるわけではない;発光材料には、ルミノールが挙げられるがこれらに限定されるわけで
はない;生物発光材料には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げら
れるがこれらに限定されるわけではない;放射活性材料には、ビスマス(213Bi)、
炭素(14C)、クロム(51Cr)、コバルト(57Co)、フッ素(18F)、ガド
リニウム(153Gd、159Gd)、ガリウム(68Ga、67Ga)、ゲルマニウム
(68Ge)、ホルミウム(166Ho)、インジウム(115In、113In、11
2In、111In)、ヨウ素(131I、125I、123I、121I)、ランタン
(140La)、ルテチウム(177Lu)、マンガン(54Mn)、モリブデン(99
Mo)、パラジウム(103Pd)、リン(32P)、プラセオジム(142Pr)、プ
ロメチウム(149Pm)、レニウム(186Re、188Re)、ロジウム(105R
h)、ルテニウム(97Ru)、サマリウム(153Sm)、スカンジウム(47Sc)
、セレン(75Se)、ストロンチウム(85Sr)、イオウ(35S)、テクネチウム
(99Tc)、タリウム(201Ti)、スズ(113Sn、117Sn)、トリチウム
(3H)、キセノン(133Xe)、イッテルビウム(169Yb、175Yb)、イッ
トリウム(90Y)、亜鉛(65Zn);様々な陽電子射出トモグラフィーを使用して陽
子を放出する金属;および非放射活性常磁性金属イオンが挙げられるがこれらに限定され
るわけではない。
【0161】
造影剤は、当技術分野で公知の技術を使用して、本明細書において記述される抗体また
はポリペプチドに、直接、または中間体(例えば、当技術分野で公知のリンカー)を通し
て間接的にコンジュゲートさせてもよい。例えば、診断薬として使用するために、本明細
書において記述される抗体および他の分子にコンジュゲートすることができる金属イオン
に関して報告する米国特許第4,741,900号明細書を参照されたい。いくつかのコ
ンジュゲーション方法は、例えば抗体に付着した有機キレート剤、例えばジエチレントリ
アミン五酢酸無水物(DTPA)、エチレンジアミン四酢酸、N-クロロ-p-トルエン
スルホンアミド、および/またはテトラクロロ-3-6α-ジフェニルグリクリル-3を
使用する金属キレート錯体の使用を伴う。モノクローナル抗体はまた、グルタルアルデヒ
ドまたは過ヨウ素酸塩などのカップリング剤の存在下で酵素と反応することができる。フ
ルオレセインマーカーとのコンジュゲートは、これらのカップリング剤の存在下で、また
はイソチオシアネートとの反応によって調製することができる。
【0162】
いくつかの実施形態において、本明細書において記述される抗glycICP抗体を、
例えば米国特許第4,676,980号明細書に記述されるように、二次抗体にコンジュ
ゲートして、抗体ヘテロコンジュゲートを形成してもよい。そのようなヘテロコンジュゲ
ート抗体は、ハプテン(例えば、フルオレセイン)、または細胞マーカー、サイトカイン
、またはケモカインにさらに結合することができる。
【0163】
いくつかの実施形態において、本明細書において記述される抗グリコシル化ICP抗体
は、固相支持体に付着させることができ、これは、本明細書において記述される抗体もし
くは抗原結合断片との結合を通して支持体に固定されている標的抗原もしくは標的抗原に
結合することができる他の分子のイムノアッセイまたは精製を行うために有用でありうる
。そのような固相支持体には、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポ
リスチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリプロピレンが挙げられるがこれらに限定される
わけではない。
【実施例0164】
本明細書における実施例は、腫瘍およびがん細胞においてグリコシル化形態で本発明者
らによって安定に発現することが見出された具体的かつ代表的なICP、すなわちPD-
L1、ならびにPD-L1およびそのペプチドのグリコシル化形態に対して生成された抗
体に関する。記述の方法によって単離され、本明細書において例証される代表的な抗gl
ycPD-L1抗体には、STM004、STM115、STM073、およびSTM1
08が挙げられる。抗体STM004およびSTM115は、2016年10月6日に公
開されたPCT出願国際公開第2016/160792号パンフレットに開示され、抗体
STM073およびSTM108は、2016年7月12日に提出された米国仮特許出願
第62/361,312号明細書に開示されている。当業者は、実施例が、エフェクター
T細胞などの免疫細胞上で発現するPD-L1およびそのリガンドICPに加えて、腫瘍
細胞上で発現する他のグリコシル化ICPを包含しうることを認識するであろう。
【0165】
[実施例1]
材料および方法
細胞培養、安定なトランスフェクタント、およびトランスフェクション。細胞は全て、
American Type Culture Collection(ATCC)から
得た。これらの細胞は、10%ウシ胎仔血清(FBS)を補充したDMEM/F12また
はRPMI 1640培地で成長させた。MDA-MB-468、BT549、および2
93T細胞におけるPD-L1安定トランスフェクタントを、ピューロマイシン(Inv
ivoGen,San Diego,CA,USA)を使用して選択した。一過性のトラ
ンスフェクションに関して、細胞に、SNリポソーム(Hu, M. C. et al., 2004, Cell,
117:225-237)およびlipofectamine(商標)2000(Life Tec
hnologies,Carlsbad,CA,USA)を使用して、DNA、例えばP
D-L1をコードするDNAを一過性にトランスフェクトした。
【0166】
レンチウイルス感染を使用する安定な細胞の生成。細胞におけるPD-L1の発現をノ
ックダウンするために使用されるレンチウイルスに基づくshRNA(pGIPZプラス
ミド)(Shen, J. et al., 2013, Nature, 497:383-387)を、shRNA/ORFコア施
設(UT MD Anderson Cancer Center)から購入した。MD
A-MB-231またはA431細胞におけるPD-L1タンパク質発現のノックダウン
効率に基づいて、本発明者らは、この試験について2つのPD-L1クローンを選択した
。成熟アンチセンス配列は以下の通りである:TCAATTGTCATATTGCTAC
(shPD-L1 #1、配列番号9)、TTGACTCCATCTTTCTTCA(s
hPD-L1 #5、配列番号10)。内因性のPD-L1をノックダウンして同時にF
lag-PD-L1を再構成するために、pGIPZ-shPD-L1/Flag-PD
-L1二重発現構築物を使用して、本発明者らは、内因性のPD-L1ノックダウンおよ
びFlag-PD-L1 WTまたは4NQ変異体発現細胞株を確立した。PD-L1お
よびFlag-PD-L1に関するレンチウイルス発現shRNAを生成するために、本
発明者らは、FuGENE6トランスフェクション試薬によって、293T細胞にpGI
PZ非サイレンス(ベクター対照ウイルスについて)、pGIPZ-shPD-L1、ま
たはpGIPZ-shPD-L1/PD-L1 WT、またはpGIPZ-shPD-L
1/PD-L1 4NQ変異体をトランスフェクトした。トランスフェクションの24時
間後、培地を交換した後、培地を24時間間隔で収集した。収集したレンチウイルスを含
む培地を遠心分離して、細胞破片を除去し、0.45μmフィルターを通して濾過した。
細胞を、注射の12時間前に50%コンフルエンスで播種して、培地を、レンチウイルス
を含む培地に交換した。24時間感染後、培地を新しい培地に交換して、感染した細胞を
1μg/mlピューロマイシン(InvivoGen)によって選択した。
【0167】
プラスミド。ヒトPD-L1クローンをshRNA/ORFコア施設(UT MD A
nderson Cancer Center,Houston,TX,USA)から得
て、pCDHレンチウイルス発現ベクターにクローニングして、公知の分子生物学技術を
使用してPD-L1-FlagまたはPD-L1-Myc発現細胞株を確立した。加えて
ヒトPD-L1核酸を、一過性のトランスフェクションのためにpEGFP-N1および
pCMV-HA哺乳動物細胞発現ベクターにクローニングした。pCDH/PD-L1-
Flag発現ベクターを鋳型として使用して、以下の表4に示されるプライマーを使用し
て部位特異的変異誘発を実施することによって、PD-L1-Flag NQ変異体N3
5Q、N192Q、N200Q、N219Q、および4NQ(N35Q/N192Q/N
200Q/N219Q)を生成した。内因性のPD-L1をノックダウンして同時にFl
ag-PD-L1を再構成するために、pGIPZ-shPD-L1/Flag-PD-
L1二重発現構築物を作製するために、PD-L1 mRNAの3-UTR領域を標的と
するshPD-L1構築物(shPD-L1 #5)を選択した。Flag-PD-L1
野生型(WT)または4NQ変異体DNAを、内因性のPD-L1に対して特異的なsh
RNAを発現するpGIPZ-shPD-L1(Thermo Scientific,
Pittsburgh,PA,USA)にクローニングした。全ての構築物を酵素消化お
よびDNAシークエンシングを使用して確認した。
【0168】
【0169】
抗体および化学物質。以下の抗体を、実施例において記述される実験に使用した:Fl
ag(F3165;Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USA);
PD-L1(13684;Cell Signaling Technology,Da
nvers,MA,USA);PD-L1(329702;BioLegend,San
Diego,CA,USA,);PD-L1(GTX117446;GeneTex,I
rvine,CA,USA);PD-L1(AF156;R&D Systems,Mi
nneapolis,MN,USA);PD-1(ab52587;Abcam,Cam
bridge,MA,USA)。
【0170】
イムノブロット分析および免疫組織化学。イムノブロット分析は既に記述されるように
実施した(Lim et al., 2008, Gastroenterology, 135:2128-2140;およびLee et al., 2
007, Cell, 130:440-455)。画像獲得およびバンド強度の定量を、Odyssey(登録
商標)赤外線イメージングシステム(LI-COR Biosciences,Linc
oln,NE,USA)を使用して実施した。免疫細胞化学について、細胞を4%パラホ
ルムアルデヒド中、室温で15分間固定して5%TritonX-100中で5分間透過
性にした後、一次抗体を使用して染色した。使用した二次抗体は、抗マウスAlexa
Fluor488または594色素コンジュゲートおよび/または抗ウサギAlexaF
luor488または594色素コンジュゲート(Life Technologies
)であった。核を4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPIblue)
(Life Technologies)によって染色した。封入後、多光子共焦点レー
ザー走査型顕微鏡(Carl Zeiss,Thornwood,NY,USA)を使用
して、細胞を可視化した。
【0171】
PD-L1およびPD-1相互作用アッセイ。PD-1タンパク質とPD-L1タンパ
ク質の相互作用を測定するために、細胞を4%パラホルムアルデヒド中、室温で15分間
固定した後、組み換えヒトPD-L1 Fcキメラタンパク質(R&DSystems)
と共に1時間インキュベートした。使用した二次抗体は抗ヒトAlexa Fluor4
88色素コンジュゲート(Life Technologies)であった。核を4’,
6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPIblue)(Life Techn
ologies)によって染色した。Alexa Fluor488色素の蛍光強度を、
マイクロプレートリーダーSynergy Neo(BioTeK,Winooski,
VT,USA)を使用して測定して、総タンパク質の量によって強度に対して標準化した
。封入後、画像を得るために、共焦点レーザー走査型顕微鏡(Carl Zeiss)を
使用して、細胞を可視化した。
【0172】
統計分析。棒グラフのデータは、3回の独立した実験の標準偏差と共に無処置または対
照群と比較した倍率変化を意味する。統計分析は、SPSS(バージョン、20 SPS
S、Chicago,IL)を使用して実施した。タンパク質発現と、BLBCサブセッ
トの間の相関を、Spearman相関およびMan Whitney検定を使用して分
析した。実験データに関してスチューデントのt検定を実施した。P値<0.05は統計
学的に有意であると考えられた。
【0173】
[実施例2]
グリコシル化PD-L1結合抗体の産生およびスクリーニング
この代表的な実施例は、グリコシル化ICP、すなわちグリコシル化PD-L1に特異
的に結合するモノクローナル抗体を得る説明を提供する。しかし、本明細書において記述
される方法は、グリコシル化ICPとその相互作用リガンドとの会合を防止することによ
って、免疫抑制を阻害するために、他のグリコシル化免疫チェックポイント分子に特異的
に結合する抗体を生成することに応用可能である。
【0174】
グリコシル化ヒトPD-L1に対して作製されたモノクローナル抗体を産生するハイブ
リドーマを、標準化プロトコールに従って、SP2/0マウス黒色腫細胞と、ヒトPD-
L1免疫BALB/cマウス(n=6)から単離した脾細胞との融合によって得た(An
tibody Solution,Inc)。融合前に、免疫したマウスの血清を、FA
CS分析を使用してPD-L1免疫原への結合について確認した。モノクローナル抗体(
MAb)産生ハイブリドーマを作製した。全てのMAbのアイソタイプがIgG1であっ
た。抗体を産生するハイブリドーマを、グリコシル化PD-L1に対する特異性について
再度試験した。この目的のため、42個の候補MAb産生ハイブリドーマを選択し、AD
CF培地において成長させ、そのモノクローナル抗体含有上清を濃縮して精製した。
【0175】
非グリコシル化PD-L1と比較してグリコシル化PD-L1抗原に対して特異的であ
り、優先的に結合する抗glycPD-L1 MAbを同定するために、異なるタイプの
アッセイを実施した。MAbのグリコシル化PD-L1への優先的結合を検出するスクリ
ーニングアッセイにおいて、抗体結合は、FACS分析を通して試験される抗体を認識す
る二次抗体の蛍光強度の測定に基づいて決定した(膜結合タンパク質を使用して)。例と
して、BT549ヒト乳がん細胞株を使用して、アッセイを実施した。実例として、PD
-L1 WT(完全にグリコシル化された)を過剰発現するBT549細胞を、従来の技
法に従ってビオチンによって標識した後、ビオチンによって標識していないPD-L1
4NQ(完全な非グリコシル化PD-L1変種)を過剰発現するBT549細胞と混合し
た。混合した細胞を、試験される抗体およびPEにコンジュゲートした組み換えストレプ
トアビジン(rSA-PE)と共にインキュベートした。細胞を、FITCにコンジュゲ
ートした二次抗体(SA-FITC)と共にさらにインキュベートした。洗浄後、ビオチ
ン-rSA-PE標識細胞(グリコシル化PD-L1)とビオチン-rSA-PEで標識
されなかった細胞(非グリコシル化PD-L1 4NQ細胞)とを分離するように、細胞
のゲートを設定した。FITCにコンジュゲートした二次抗体(SA-FITC)を介し
て、膜結合WTまたは4NQ PD-L1への抗PD-L1抗体の相対的結合を評価する
ために、平均蛍光強度(MFI)を測定した。4NQ PD-L1と比較してWT PD
-L1において有意により高いMFIを示した抗体を、さらなる評価のために選択した。
STM004、STM073、STM108およびSTM115抗glycPD-L1M
Abの蛍光結合分析の結果を、以下の表5に示し、これは、野生型(グリコシル化)PD
-L1を発現するBT549細胞(BT549PD-L1WT細胞)への抗体結合に対す
るMFI値を、変種(非グリコシル化4NQ)PD-L1を発現するBT549細胞(B
T549PD-L1 4NQ細胞)への抗体結合に対するMFI値と比較して示す。
【0176】
【0177】
別のアッセイにおいて、グリコシル化ヒトPD-L1タンパク質および非グリコシル化
PD-L1、すなわちPNGアーゼFによって処置したPD-L1タンパク質の両方を、
固相表面にコーティングして、PD-L1抗原に対するMAbの結合親和性について試験
した。「PD-L1抗原」は、「PD-L1タンパク質」と同義であると理解される。1
2個のMAbが、非グリコシル化PD-L1タンパク質(PNGアーゼF処置タンパク質
)と比較してグリコシル化PD-L1タンパク質と高親和性の相互作用を示した。さらな
る特異性分析について、選択されたMAbをウェスタンブロットおよびFACSフローサ
イトメトリー分析によって分析した。様々な分析から、STM004、STM073、S
TM108およびSTM115などのMAbが、PD-L1の非グリコシル化形態と比較
してPD-L1のグリコシル化形態に特異的に結合することが見出され、このことは、グ
リコシル化PD-L1抗原に対するこれらのMAbの特異性をさらに確認した。
図1を参
照されたい。
【0178】
いくつかの例において、精製MAbをさらに、生細胞イメージングアッセイIncuC
yte(商標)(Essen Bioscience)を使用して、そのPD-L1とP
D-1との間の相互作用(PD-L1/PD-1相互作用)の中和または阻害能について
試験した。このアッセイについて、PD-L1を発現するBT-549細胞を、抗ヒトP
D-L1抗体および蛍光標識PD-1-Fc融合タンパク質と共にインキュベートした。
リガンドおよび受容体結合を、製造元の説明書に従ってIncuCyte(商標)Zoo
mによって毎時間定量した。試験した42個のMAbについてこのアッセイに基づき、お
よび
図2に示すように、15個のMAbがPD-1へのPD-L1の結合を完全に遮断し
た。
【0179】
グリコシル化PD-L1への優先的結合をウェスタンブロットおよびフローサイトメト
リー分析によって確認した。
図3Bは、本明細書において記述されるスクリーニング方法
によって同定された抗glycPD-L1抗体の5個がグリコシル化PD-L1(「WT
」)に結合するが、非グリコシル化PD-L1 4NQには結合しないことを証明する。
図3Cは、フローサイトメトリーによって、非グリコシル化PD-L1 4NQ変異体と
比較して、グリコシル化またはWT PD-L1に対するこれらの5つの抗体の優先的結
合を確認する。
【0180】
[実施例3]
特異的グリコシル化PD-L1結合抗体の結合領域の同定
グリコシル化PD-L1に結合するモノクローナル抗glycPD-L1抗体の領域を
同定するために、野生型(グリコシル化)PD-L1(PD-L1 WT)およびグリコ
シル化変種タンパク質N35/3NQ、N192/3NQ、N200/3NQ、およびN
219/3NQ(
図4A~4C)を、PD-L1ノックダウンBT549細胞において過
剰発現させた。
図4Cにおけるウェスタンブロットによって決定した場合に、いくつかの
MAbは、他のPD-L1変異体と比較して高い結合レベルで特定のPD-L1変異体を
認識し、そのようなMAbが認識されるグリコシル化に対して部位特異的であることを証
明した。さらに、肝臓がん細胞溶解物を使用するウェスタンブロット分析はまた、異なる
抗glycPD-L1抗体が、異なるパターンのPD-L1グリコシル化を認識すること
も明らかにした(
図4D)。
【0181】
[実施例4]
抗glycPD-L1抗体を使用する免疫組織化学染色
これらのMAbの組織病理学的重要性を、
図5に示すように免疫組織化学(IHC)染
色によってさらに証明した。サイトスピン染色分析において、抗glycPD-L1モノ
クローナル抗体は、一貫してPD-L1タンパク質のグリコシル化タンパク質を認識して
結合したが、非グリコシル化PD-L1タンパク質には結合しなかった。ヒトトリプルネ
ガティブ乳がん患者の試料において、抗glycPD-L1モノクローナル抗体はまた、
膜および細胞質染色を1:30の比率で示した。これらのデータは、抗glycPD-L
1モノクローナル抗体が、バイオマーカー分析において、バイオマーカーとしてグリコシ
ル化PD-L1の検出のために使用することができることを証明した。
【0182】
[実施例5]
結合アッセイ
本明細書において記述される抗glycPD-L1モノクローナル抗体がPD-1とP
D-L1との相互作用を特異的に阻害するか否かを決定するために、以下の結合アッセイ
を実施した。アッセイの0日目に、血清含有培地をPD-L1発現BT549標的細胞培
養物から採取して、D-PBSによって丁寧に2回すすいだ。細胞を採取して計数した。
細胞浮遊液を遠心分離(1000RPM、5分間)して、細胞沈降物を細胞50,000
個/mlで培養培地に浮遊させた。手動でのマルチチャンネルピペットを使用して、細胞
(100μL/ウェル、すなわち、細胞5000個/ウェル)を平底マイクロプレートの
あらゆるウェルに播種した。プレートを室温で30分間放置した。その後、細胞を含むプ
レートを、5%CO2インキュベータにおいて終夜インキュベートした。
【0183】
アッセイの1日目に(すなわち翌朝)、1μg/mL PD-1/Fcおよび1:40
0倍希釈のAlexa Fluor488ヤギ抗ヒトIgGを含む培養培地を調製して、
インキュベータ内で37℃に加温した。細胞プレートをインキュベータから取り出して、
細胞層を傷つけないように注意して培地を吸引した。試験抗体50μLを、用量依存的に
各ウェルに添加した。PD-1/FcおよびAlex Fluor488ヤギ抗ヒトIg
Gを含む培養培地50μLをあらゆるウェルに添加した。細胞プレートをIncuCyt
eZOOM(登録商標)機器の中に入れて、20分間平衡にして、初回スキャンを行った
。24時間の自動繰り返しスキャンを1~2時間毎に24時間まで計画した。対物レンズ
10倍;容器のタイプ:Corning3596;スキャンモード:標準;スキャンパタ
ーン:ウェルあたり画像4個;チャンネル:フェーズ+「緑色」。異なる濃度の代表的な
モノクローナル抗glycPD-L1抗体の結合を、対照(
図6D)と比較して
図6A~
6Cに示す。
図6Aは、STM004の結果を示し、
図6Bは、STM073の結果を示
し、
図6Cは、STM108の結果を示す。PD-1への結合は、抗glycPD-L1
抗体の濃度が増加すると減少し、抗glycPD-L1抗体が、PD-1へのPD-L1
の結合を阻害することを証明した。
【0184】
[実施例6]
T細胞殺滅アッセイ
T細胞殺滅活性を利用して、抗glycPD-L1モノクローナル抗体が腫瘍細胞に及
ぼす細胞傷害活性を決定した。従ったプロトコールは以下のとおりである;0日目、グリ
コシル化野生型PD-L1(PD-L1 WT)発現BT549 RFP標的細胞培養物
から血清含有培地を除去して、PBSで丁寧に2回すすいだ。細胞を回収して計数した。
細胞浮遊液を遠心分離(1000RPM、4分間)して、細胞沈降物を培養培地に細胞5
0,000個/mlで浮遊させた。手動のマルチチャンネルピペットを使用して、細胞を
平底マイクロプレートのあらゆるウェルに播種した(100μL/ウェル、すなわち、細
胞5000個/ウェル)。プレートを室温で30分間放置した後、IncuCyteZO
OM(登録商標)生細胞イメージング装置の中に入れて、20分間平衡にした後、初回ス
キャンを計画した。初回スキャンの開始直後から3時間ごとに、24時間の繰り返しスキ
ャン(10倍対物レンズ)を計画した。細胞のコンフルエンスを、所望のコンフルエンス
(例えば20%)が達成されるまで、続く18時間で(終夜)モニターした。
【0185】
翌朝、アッセイの日(すなわち、1日目)、IncuCyte(商標)Caspase
3/7アポトーシス緑色蛍光検出試薬(Essen Bioscience 4440)
の10μM溶液を、アッセイ培地(4×最終アッセイ濃度2.5μM)中で調製して、イ
ンキュベータにおいて37℃に加温した。抗CD3抗体(100ng/mL)+IL-2
(10ng/mL)T細胞活性化剤処置を、アッセイ培地中で4×最終アッセイ濃度で調
製して、37℃に加温した。試験MAbも同様に調製した。標的細胞プレートをインキュ
ベータから取り出して、細胞層を傷つけないように注意して培地を吸引した。マルチチャ
ンネルピペットを使用して、加温したカスパーゼ3/7溶液25μLを各ウェルに移した
。その後、加温した抗CD3抗体+IL-2 25μLおよび抗体を、細胞プレートの適
切なウェルの中に入れた。エフェクター細胞(PBMCまたは総T細胞)を含む追加の培
地50μLを添加して、総アッセイ容積を100μLにした。脱気した細胞プレートをI
ncuCyteZOOM(登録商標)機器の中に入れて、20分間平衡にして、初回スキ
ャンを行った。24時間の繰り返しスキャンを2~3時間毎に5日まで計画した。(対物
レンズ10倍;容器のタイプ:Corning3596;スキャンモード:標準;スキャ
ンパターン:ウェルあたり画像2個;チャンネル:フェーズ+「緑色」(+NucLig
ht(商標)赤色標的細胞を使用する場合は+「赤色」)。
【0186】
分析に関して、標的細胞アポトーシスを、視野における「大きい」緑色蛍光オブジェク
ト(核)の総数を経時的に計数することによってIncuCyte(商標)ソフトウェア
において定量した。標的細胞の増殖は、赤色細胞核の数に対応する、赤色オブジェクトの
数から測定した。データは1mm
2あたりの蛍光オブジェクト数として表記した。データ
は、試験した抗体の添加を通して腫瘍細胞殺滅が増強されたことを示した。
図7Aは、S
TM004の結果を示し、
図7BはSTM073の結果を示す。
【0187】
[実施例7]
抗glycPD-L1抗体によるPD-L1の結合は、PD-L1内在化および分解を促
進する
抗glyICP抗体が、その同起源のICP結合分子への結合後に内在化および分解を
促進するか否かを決定するために、細胞染色アッセイを実施した。本実施例において、使
用した抗glycICP抗体は、抗PD-L1 MAb STM108であった。アッセ
イに関して、A431細胞を、無血清培地中で一晩インキュベートした後、抗glycP
D-L1抗体10μgと共に2日間インキュベートした。次に、細胞を回収し、細胞中の
PD-L1をウェスタンブロットによって評価した。細胞を抗glycPD-L1 MA
bと共にインキュベートすると、対照(IgG)と比較して細胞におけるPD-L1レベ
ルの低減を示した。
【0188】
STM108 MAbの細胞内在化を、pHrodo(商標)レッドMicrosca
le Labelingキット(ThermoFischer Scientific,
Rochester,NY)を使用して、製造元の説明書に従って、pHrodo(商標
)レッド色素による抗体の標識によって可視化した。簡単に説明すると、細胞を0時間で
播種し、播種後24時間で、細胞を標識STM108 MAbs(5μg/mL)と共に
インキュベートした。1時間後、細胞のイメージスキャンを、IncuCyte ZOO
M(登録商標)機器を使用して、予定される24時間で1時間ごとにスキャンを繰り返し
た(10×)。対物レンズ:10倍;容器タイプ:Corning 356407;スキ
ャンモード:標準;スキャンパターン;ウェルあたり3画像;チャンネル:フェーズ+「
レッド」。
【0189】
図8A~8Cは、BT549-PD-L1細胞上で発現するPD-L1への抗glyc
PD-L1 MAb STM108の結合後の生細胞イメージング分析を介したPD-L
1内在化および分解の例を提供する。
図8A~8Cにおいて、STM108は、上述のと
おり、pHrodo(商標)レッド Microscale Labelingキット(
ThermoFischer Scientific,Rochester,NY)を使
用して、赤色蛍光色素pHrodo(商標)レッド(スクシンイミジルエステル(pHr
odo(商標)レッド、SE)にコンジュゲートされる。緑色染色は、生細胞イメージン
グを介して撮像した生細胞において酸性区画(リソソーム)を染色する細胞透過性緑色色
素であるLysoTracker(登録商標)グリーンDND-26によって染色された
細胞を反映する。
図8Aは、最初の時点(時間0)で、矢印で示される細胞の強い赤色の
細胞内染色によって観察されるように、STM108抗体が細胞に内在化されることを示
している。
図8Bは、
図8Aにおける時間0の2分後の時点での、
図8Aに示した同じ細
胞における弱められた細胞内赤色染色を示す。
図8Cは、
図8Aにおける時間0の4分後
の赤色細胞内染色の欠如を示し、細胞内のSTM108抗体および/または抗体-抗原複
合体が分解したことを反映する。これらの画像は、抗glycICP抗体、すなわちST
M108 MAbなどの抗glycPD-L1抗体が細胞表面上に発現するPD-L1へ
の結合後にPD-L1の内在化および分解を行うことを反映している。
【0190】
[実施例8]
総T細胞と比較した腫瘍細胞における抗glycPD-L1抗体が結合したPD-L1の
内在化
抗glycPD-L1抗体を、活性化または非活性化T細胞と比較して細胞表面発現P
D-L1の結合後にPD-L1陽性腫瘍細胞に内在化する能力について試験した。抗gl
ycPD-L1抗体STM004、STM073、およびSTM108および対照として
のマウスIgGを、末梢血からの非活性化総T細胞、末梢血からの活性化総T細胞、およ
びPD-L1を発現するNCI-H226細胞と共にインキュベートした。T細胞の活性
化に関して、総T細胞をビーズ、例えば抗CD3および抗CD28抗体(例えば、The
rmoFisher Scientific,Rochester,NY)に1:1で共
有結合によりカップリングさせた不活性な超常磁性ビーズと混合して、抗原提示細胞によ
る刺激を模倣するようにT細胞を刺激した(例えば、A. Trickett et al., 2003, J. Imm
unol. Methods, 275, Issues 1-2:251-255を参照されたい)。全ての抗体を、pHrod
o(商標)レッドによって標識し、内在化を上記のように可視化した。
図9A~9Dおよ
び
図9E~9Hは、試験したいずれの抗体も非活性化総T細胞または活性化総T細胞に内
在化されなかったことを示す。
図9I~9Lは、STM073およびSTM108 MA
bが、赤色の細胞内染色を示さなかった標識対照抗体mIgG(
図9I)および標識非内
在化STM004 MAb(
図9J)と比較して、赤色の細胞内染色によって証明される
ように、これらの細胞とのインキュベーション後にNCI-H226細胞に内在化された
ことを示している。本実施例は、抗glycPD-L1抗体STM073およびSTM1
08が、PD-L1発現腫瘍細胞に選択的に内在化されるが、活性化または非活性化T細
胞のいずれにも内在化されない抗glycICP抗体の例であることを証明している。
【0191】
[実施例9]
腫瘍細胞殺滅および腫瘍体積の低減におけるPD-L1 ADCの有効性
腫瘍の殺滅および腫瘍体積の低減における細胞毒素MMAEにカップリングさせた抗ヒ
トICP抗体、特に抗ヒトglycPD-L1 MAb、すなわちSTM108 MAb
を含むADCの有効性を評価するために、in vitroおよびin vivo実験の
両方を実施した。STM108-ADCは、MMAE細胞毒素ペイロードをPD-L1発
現腫瘍細胞またはがん細胞に特異的に送達するために、本明細書において上記のようにシ
ステインを介してMC-vc-PAB-MMAEに化学的に連結したSTM108 MA
bを含む。STM108-ADC(STM108-MC-vc-PAB-MMAE)の測
定された物理特性は、以下の通りである。
【0192】
【0193】
本実施例に関連して、
図10A~10Dは、対照(IgGおよびSTM108 MAb
単独)と比較して、腫瘍移植マウスにおけるPD-L1発現および非PD-L1発現腫瘍
細胞の殺滅ならびに腫瘍体積の低減における、STM108-ADCの有効性を評価する
ために実施した実験の結果を表す。
図10Aは、異なる濃度のSTM108-ADC、す
なわち「ADC108」(塗りつぶした黒四角)に曝露後のPD-L1のその発現をノッ
クアウトするように改変されたMB231細胞(「MB231 PDL1 KO」)の%
生存率と比較した、異なる濃度(nM)のSTM108-ADC(塗りつぶした黒丸)に
曝露後のPD-L1発現MDA-MB231(ヒト乳癌細胞株)腫瘍細胞(「MB231
」)の%生存率を示す。観察されるように、その表面にPD-L1を発現しないMB23
1細胞の生存率は、最高濃度においてもSTM108-ADCによって有意に影響を受け
なかったが、PD-L1発現MB231細胞の生存率は、特に1nM~100nMまでの
STM108-ADC濃度で有意に低減された。
図10Bでは、MDA-MB231マウ
ス乳がんモデルを使用し、このモデルでは、MB231細胞に由来する腫瘍を移植した動
物を、IgG-MMAE対照(100μg)、STM108-ADCの50μg、100
μg、もしくは150μg、またはSTM108 MAb単独(100μg)のいずれか
によって処置した。結果は、IgG-MMAE対照によって処置した動物と比較して、腫
瘍体積が、全ての用量レベルのSTM108-ADC、ならびにある程度、STM108
MAb(100μg)によって処置した腫瘍を有する動物において有効に減少されるこ
とを証明した。加えて、約18日までに、STM108-ADC(100μg)によって
処置した動物5匹中3匹(3/5)およびSTM108-ADC(150μg)によって
処置した動物5匹中4匹(4/5)において、完全寛解(「CR」)が意外にも見出され
た。
【0194】
図10Cは、異なる濃度のSTM108-ADC、すなわち「ADC108」(白抜き
の赤い四角)に曝露後のPD-L1を本来発現しない4T1細胞(「4T1」)の%生存
率と比較して、異なる濃度(nM)のSTM108-ADC(白抜きの赤い丸)に曝露後
の細胞表面上にPD-L1を発現するように改変された4T1乳癌細胞(「4T1 hP
DL1」)の%生存率を示す。観察されるように、その表面上にPD-L1を発現しない
4T1細胞の生存率は、最高濃度であってもSTM108-ADCによって有意に影響を
受けなかったが、PD-L1発現4T1細胞の生存率は、10nM超~100nMのST
M108-ADC濃度で低減された。
【0195】
4T1同系マウス乳がんモデルを使用し、このモデルにおいて、動物(Balb/cマ
ウス)に、細胞表面上にPD-L1を発現するように改変されている4T1乳癌細胞に由
来する腫瘍を移植したか、または細胞表面上にPD-L1を本来発現しない非トランスフ
ェクト4T1乳癌細胞(「4T1」)に由来する腫瘍を移植した。BALB/cマウス(
6~8週齢、雌性;Jackson Laboratories,Bar Harbor
,Maine,USA)を使用する手順は全て、MD Andersonの施設内動物飼
育および使用に関する委員会(Institutional Animal Care
and Use Committee)によって承認された指針に従って実施した。マウ
スを各群における平均腫瘍体積に従って群分けした。4T1細胞(Matrixgel基
底膜基質[BD Biosciences,San Jose,CA,USA]25μL
と混合した培地25μL中に細胞1×105個)を乳房脂肪体に注射した。IgG-MM
AE対照(100μg)、STM108 MAb(100μg)、またはSTM108-
ADC(150μg)を、マウスの腫瘍細胞接種後3、5、7、9、11、および13日
目に腹腔内注射した。腫瘍をキャリパーによって3日毎に測定し、腫瘍体積を以下の式:
π/6×長さ×幅2を使用して計算した。
【0196】
図10Dに観察されるように、細胞表面PD-L1発現をほとんどまたは全く有しない
4T1由来腫瘍を有する動物(白抜きの丸/破線)において、結果は、腫瘍体積が全ての
処置タイプ、すなわちIgG-MMAE対照、STM108 MAb、またはSTM10
8-ADCについて時間と共に増加することを示した。PD-L1発現4T1細胞に由来
する腫瘍を有し、IgG-MMAE対照によって処置した動物では、処置動物における腫
瘍体積も同様に時間と共に増加した(塗りつぶした黒丸)。これに対し、PD-L1発現
4T1細胞に由来する腫瘍を有し、STM108 MAb(塗りつぶした青色の丸)また
はSTM108-ADC(塗りつぶした赤色の丸)のいずれかによって処置した動物では
、腫瘍体積は有効に減少した。加えて、約21日までに、STM108-ADCによって
処置した動物7匹中5匹(5/7)では完全寛解(「CR」)が起こることが意外にも見
出された。
【0197】
がん、例えば2つのタイプの乳房腫瘍を処置するための、抗glycICP抗体、例え
ばSTM108などの、本明細書において上記の抗glycPD-L1 Mabを含むA
DCの使用に関連する有益で有効な抗新生物および治療態様は、抗glycPD-L1
MAb ADCによって処置されている動物における処置後25日以内、例えば約15~
23日での腫瘍体積の有意な低減および腫瘍の完全寛解を示すin vivo結果によっ
て強調されている。
【0198】
本明細書において開示され特許請求される方法の全ては、本開示に照らして不当な実験
を行うことなく、作製および実行することができる。組成物および方法は、好ましい実施
形態に関して記述してきたが、その概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細
書において記述される方法およびステップに、または方法のステップの順序に変更を適用
してもよいことは、当業者に明白である。より具体的に、化学的および物理的に関連する
特定の薬剤を、本明細書において記述される薬剤の代わりに置換してもよく、それでも同
じまたは類似の結果が得られることは明白である。当業者に明白であるそのような全ての
類似の置換および改変は、添付の特許請求の範囲によって定義される記述の実施形態の精
神、範囲、および概念に含まれると考えられる。
【0199】
本明細書において引用した全ての特許、刊行された特許出願、およびその他の刊行物は
、参照により全体が本出願に組み込まれる。