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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163030
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】銀被覆エラストマー粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/00 20060101AFI20221018BHJP
   B22F 1/18 20220101ALI20221018BHJP
   H01B 5/00 20060101ALN20221018BHJP
【FI】
H01B13/00 501Z
B22F1/18
H01B5/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113580
(22)【出願日】2022-07-15
(62)【分割の表示】P 2018072897の分割
【原出願日】2018-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085372
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 正義
(72)【発明者】
【氏名】赤池 寛人
(72)【発明者】
【氏名】日向野 怜子
(57)【要約】
【課題】銀被覆エラストマー粒子を用いて電子部品や導電膜を作製したときに、電子部品等の柔軟性を保持したまま電気抵抗を低減する。
【解決手段】本発明の銀被覆エラストマー粒子の製造方法は、シリコーンゴム製のエラストマー粒子を窒素中で150℃~350℃の温度に0.5時間~10時間保持してエラストマー粒子から低分子シロキサンを除去し、エラストマー粒子の表面を活性化し、エラストマー粒子の表面に触媒化処理を行い、触媒化処理されたエラストマー粒子の表面に還元剤を用いて無電解銀めっきを行って銀を主成分とする金属層を形成して、10%圧縮弾性率が50MPa~800MPaの範囲内に制御された銀被覆エラストマー粒子を得る。エラストマー粒子から低分子シロキサンを除去する工程とエラストマー粒子の表面を活性化する工程の間に、ケイ素又はケイ素化合物からなる中間被覆層をエラストマー粒子の表面に形成する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 平均粒径が0.5μm~60μmのシリコーンゴム製のエラストマー粒子を窒素中で150℃~350℃の温度に0.5時間~10時間保持して前記エラストマー粒子から低分子シロキサンを除去する工程と、
(b) 前記低分子シロキサンが除去されたエラストマー粒子の表面を活性化する工程と、
(c) 前記表面が活性化されたエラストマー粒子の表面に触媒化処理を行う工程と、
(d) 前記触媒化処理されたエラストマー粒子の表面に還元剤を用いて無電解銀めっきを行って銀を主成分とする金属層を形成して銀被覆エラストマー粒子を得る工程と
を含む10%圧縮弾性率が50MPa~800MPaの範囲内に制御された銀被覆エラストマー粒子を製造する方法。
【請求項2】
前記触媒化処理工程(c)と前記無電解銀めっき工程(d)の間に、ケイ素又はケイ素化合物からなる中間被覆層を前記触媒化処理されたエラストマー粒子の表面に形成する工程を含む請求項1記載の銀被覆エラストマー粒子の製造方法。
【請求項3】
前記エラストマー粒子の表面を活性化する工程(b)が、酸化剤、酸溶液、アルカリ溶液、又はこれらの混合液に前記エラストマー粒子を入れて撹拌した後に、水洗して、ろ過する湿式法により活性化するか、或いは前記エラストマー粒子を真空プラズマ処理、大気プラズマ処理、又はオゾン処理の乾式法により活性化する請求項1記載の銀被覆エラストマー粒子の製造方法。
【請求項4】
前記エラストマー粒子の表面に触媒化処理を行う工程(c)が、前記エラストマー粒子の表面に錫吸着層を設ける処理を行うか、又は前記エラストマー粒子の表面にパラジウム触媒層を設ける処理を行う請求項1記載の銀被覆エラストマー粒子の製造方法。
【請求項5】
前記中間被覆層を前記触媒化処理されたエラストマー粒子の表面に形成する工程が、前記エラストマー粒子と微細なケイ素粒子やケイ酸ガラス粒子とを混合してエラストマー粒子の表面にケイ素粒子やケイ酸ガラス粒子を付着させるか、或いは前記エラストマー粒子を水に分散させ正ケイ酸エチルやアルコキシシランを添加し加水分解することにより行う請求項2記載の銀被覆エラストマー粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性と高導電性を有する銀被覆エラストマー粒子を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、平均粒径が0.1μm~100μmのシリコーンゴム粒子の表面に、蒸着処理後の貴金属被覆シリコーンゴム粒子全体に対して10質量%~80質量%の貴金属被覆層が物理蒸着法で形成された導電性シリコーンゴム粒子が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この導電性シリコーンゴム粒子では、貴金属被覆層がスパッタリング法で形成される。また、シリコーンゴム粒子の表面を被覆して貴金属被覆層を形成する貴金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル等が挙げられる。
【0003】
このように構成された導電性シリコーンゴム粒子では、スパッタリングを被覆法として採用することにより、プラズマで高エネルギ状態に励起された貴金属原子によって、従来メッキが困難であったシリコーンゴム粒子の表面に、密着した貴金属被覆層を形成することができる。従って、本発明の導電性シリコーンゴム粒子は、シリコーンゴムが本来有する優れた柔軟性や弾力性と優れた導電性を有する。
【0004】
一方、エラストマーバインダと、このエラストマーバインダ中に分散された粒子連結体とを有する柔軟導電材料が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この柔軟導電材料では、粒子連結体が、粒子の表面に金属層が形成されている金属被覆粒子が複数連結されてなる第一連結体と、複数の粒子が連結した連結体の表面に金属層が形成されてなる第二連結体との少なくとも一方を含む。また、エラストマーバインダとしては、アクリルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム等が挙げられ、第一連結体及び第二連結体を構成する粒子としては、例えば、炭素材料、金属酸化物、或いはアクリルやウレタン等の樹脂等を用いることができる。更に、金属層は、例えば銀、ニッケル、銅により形成される。
【0005】
このように構成された柔軟導電材料は、エラストマーバインダを母材とするため、柔軟であり、伸縮可能である。このため、この柔軟導電材料を誘電膜等の弾性基材の表面に形成した場合、この弾性基材の変形に追従して変形することができ、弾性基材の動きを阻害し難い。また、母材に分散される粒子連結体は、第一連結体と第二連結体との少なくとも一方を含む。第一連結体を構成する個々の金属被覆粒子は、表面に金属層が形成されている粒子であるので、第一連結体の表面に金属層が表出している。また、第二連結体は、複数の粒子が連結した連結体の表面に金属層が形成されてなるので、第二連結体の表面に金属層が表出している。この結果、エラストマーバインダ中に、第一連結体及び第二連結体の少なくとも一方を分散させると、表出している金属層により、エラストマーバインダ中に導電パスを形成できるので、柔軟導電材料は高い導電性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-238588号公報(請求項1、請求項2、段落[0032]、[0036])
【特許文献2】国際公開 WO2011/001910号公報(請求項1、段落[0010]~[0012]、[0018]、[0021]、[0025])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の特許文献1に示された導電性シリコーンゴム粒子では、シリコーンゴム粒子をスパッタリング法により銀等の貴金属で被覆しており、シリコーンゴム粒子に均一に貴金属を被覆することが難しいため、貴金属被覆エラストマー粒子の弾性率を制御することが困難であった。このため上記貴金属被覆エラストマー粒子を柔軟導電材料や導電膜の導電フィラーとして用いると、柔軟性導電材等の弾性率が増加してしまうおそれがあった。また、上記従来の特許文献1に示された導電性シリコーンゴム粒子では、未処理のシリコーンゴム、即ち低分子シロキサン除去処理を行っていないシリコーンゴムを用いているため、上記導電性シリコーンゴム粒子を用いた電子部品の周辺温度が上昇すると、シリコーンゴムから低分子シロキサンガスが発生して、例えばリレー接点上に低分子シロキサンが堆積し、このリレー接点の開閉によるアーク火花でリレー接点上の低分子シロキサンが酸化分解して二酸化ケイ素(電気絶縁物)になり接点不良が発生するおそれがあった。
【0008】
一方、上記従来の特許文献2に示された柔軟導電材料では、エラストマーバインダに分散する導電性フィラーとして、表面に金属層が形成された個々の金属被覆粒子が連結してなる第一連結体又は複数の粒子が連結した連結体の表面に金属層が形成されてなる第二連結体のいずれか一方又は双方からなる粒子連結体を使用する際に、導電性フィラーの弾性率が高く、この導電性フィラーの配合量を増加させると弾性率が更に上昇するため、柔軟性を維持したまま抵抗率を低下させることが困難であった。
【0009】
本発明の目的は、電子部品や導電膜を作製したときに、電子部品等の柔軟性を保持したまま電気抵抗を低減できる、銀被覆エラストマー粒子を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点は、(a) 平均粒径が0.5μm~60μmのシリコーンゴム製のエラストマー粒子を窒素中で150℃~350℃の温度に0.5時間~10時間保持して前記エラストマー粒子から低分子シロキサンを除去する工程と、(b) 前記低分子シロキサンが除去されたエラストマー粒子の表面を活性化する工程と、(c) 前記表面が活性化されたエラストマー粒子の表面に触媒化処理を行う工程と、(d) 前記触媒化処理されたエラストマー粒子の表面に還元剤を用いて無電解銀めっきを行って銀を主成分とする金属層を形成して銀被覆エラストマー粒子を得る工程とを含む10%圧縮弾性率が50MPa~800MPaの範囲内に制御された銀被覆エラストマー粒子を製造する方法である。
【0011】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、前記触媒化処理工程(c)と前記無電解銀めっき工程(d)の間に、ケイ素又はケイ素化合物からなる中間被覆層を前記触媒化処理されたエラストマー粒子の表面に形成する工程を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の第3の観点は、第1の観点に基づく発明であって、前記エラストマー粒子の表面を活性化する工程(b)が、酸化剤、酸溶液、アルカリ溶液、又はこれらの混合液に前記エラストマー粒子を入れて撹拌した後に、水洗して、ろ過する湿式法により活性化するか、或いは前記エラストマー粒子を真空プラズマ処理、大気プラズマ処理、又はオゾン処理の乾式法により活性化することを特徴とする。
【0013】
本発明の第4の観点は、第1の観点に基づく発明であって、前記エラストマー粒子の表面に触媒化処理を行う工程(c)が、前記エラストマー粒子の表面に錫吸着層を設ける処理を行うか、又は前記エラストマー粒子の表面にパラジウム触媒層を設ける処理を行うことである。
【0014】
本発明の第5の観点は、第2の観点に基づく発明であって、前記中間被覆層を前記触媒化処理されたエラストマー粒子の表面に形成する工程が、前記エラストマー粒子と微細なケイ素粒子やケイ酸ガラス粒子とを混合してエラストマー粒子の表面にケイ素粒子やケイ酸ガラス粒子を付着させるか、或いは前記エラストマー粒子を水に分散させ正ケイ酸エチルやアルコキシシランを添加し加水分解することにより行うことである。
【0015】
本発明の第6の観点は、第1ないし第3の観点のいずれかに記載の銀被覆エラストマー粒子と、樹脂バインダと、溶剤とを含む導電ペーストである。
【0016】
本発明の第7の観点は、第6の観点に記載の導電ペーストを用いて作製された導電膜である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の観点の方法で製造された銀被覆エラストマー粒子では、この銀被覆エラストマー粒子の10%圧縮弾性率を50MPa~800MPaの範囲内に制御したので、銀被覆エラストマー粒子自体が柔軟性及び高い導電性を有する。この結果、上記銀被覆エラストマー粒子を用いて柔軟導電材料や導電ペーストを調製し、更に柔軟導電材料や導電ペーストを用いて電子部品や導電膜を作製したときに、電子部品や導電膜の柔軟性を保持したまま電気抵抗を低減できる。
【0018】
本発明の第2の観点の銀被覆エラストマー粒子では、エラストマー粒子と金属層との間に、ケイ素又はケイ素化合物からなる中間被覆層を設けたので、この中間被覆層によりエラストマー粒子の凝集を抑制できる。
【0019】
本発明の第3の観点の銀被覆エラストマー粒子では、エラストマー粒子がシリコーンゴムにより形成され、銀被覆エラストマー粒子を不活性ガス雰囲気中で260℃の温度に保持したときにシリコーンゴムから検出される低分子シロキサンが1000ppm以下であるので、シリコーンゴム製のエラストマー粒子を用いて作製された電子部品の周辺温度が上昇しても、銀被覆エラストマー粒子のシリコーンゴムから低分子シロキサンガスは殆ど発生しない。この結果、例えばリレー接点上への低分子シロキサンの堆積を抑制できるので、このリレー接点の開閉によりアーク火花が発生しても、リレー接点の接点不良が発生することはない。
【0020】
本発明の第4の観点の柔軟導電材料では、上記銀被覆エラストマー粒子をエラストマーバインダ中に分散したので、銀被覆エラストマー粒子がエラストマーバインダ中に均一に分散される。この結果、この柔軟導電材料を用いて作製された電子部品は柔軟性を保持したまま良好な導電性を有する。
【0021】
本発明の第5の観点の電子部品では、柔軟導電材料を用いて電子部品を作製したので、この電子部品中で隣同士の銀被覆エラストマー粒子が接触した状態に保たれる。この結果、この電子部品は柔軟性を保持したまま良好な導電性を有する。
【0022】
本発明の第6の観点の導電ペーストでは、銀被覆エラストマー粒子と、樹脂バインダと、溶剤とを含むので、銀被覆エラストマー粒子が樹脂バインダ及び溶剤の混合液中に均一に分散される。この結果、この導電ペーストを用いて作製された導電膜は柔軟性を保持したまま良好な導電性を有する。
【0023】
本発明の第7の観点の導電膜では、上記導電ペーストを用いて導電膜を作製したので、この導電膜中で隣同士の銀被覆エラストマー粒子が接触した状態に保たれる。この結果、この導電膜は柔軟性を保持したまま良好な導電性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に本発明を実施するための形態を説明する。
【0025】
(A) 銀被覆エラストマー粒子
本実施の形態の銀被覆エラストマー粒子は、エラストマー粒子の表面に銀を主成分とする金属層が設けられることにより構成される。エラストマー粒子としては、シリコーンゴム粒子、ウレタンゴム粒子、アクリルゴム粒子、フッ素ゴム粒子等が挙げられる。また、金属層は、銀のみであってもよいが、銀以外に不可避不純物が含まれている場合もある。不可避不純物は、例えば、エラストマー粒子の加水分解物や、金属層形成時における各種材料に由来する有機物が挙げられる。具体的な元素としては、C(炭素)、H(水素)、N(窒素)、O(酸素)が挙げられる。その他には、金属層形成時に混入する塩類が挙げられ、具体的な成分としては、Li、Na、K、NH4、F、Cl、Br、SO4及びNO3などが挙げられる。銀被覆層の不可避不純物の合計含有量は、銀被覆層全体の質量に対して、0.1質量%以下であることが好ましい。更に、銀被覆エラストマー粒子の10%圧縮弾性率は、50MPa~800MPa、好ましくは100MPa~500MPaの範囲内に制御される。ここで、銀被覆エラストマー粒子の10%圧縮弾性率が50MPa~800MPaの範囲内であるのは、50MPa未満では、銀被覆エラストマー粒子の強度が不十分となり、銀被覆エラストマー粒子の作製時や導電フィラーとしての混練時に圧壊するおそれがあり、800MPaを超えると、導電フィラーとして柔軟導電材料や導電ペーストに用いた際に、導電エラストマーや導電ペースト膜の柔軟性を損なうおそれがあるためである。なお、10%圧縮弾性率の測定方法は、実施例の「比較試験1及び評価」において説明する。
【0026】
一方、エラストマー粒子がシリコーンゴムにより形成され、銀被覆エラストマー粒子を不活性ガス雰囲気中で260℃の温度に保持したときにシリコーンゴムから検出される低分子シロキサンが1000ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることが更に好ましい。ここで、銀被覆エラストマー粒子を不活性ガス雰囲気中で260℃の温度に保持したときにシリコーンゴムから検出される低分子シロキサンが1000ppm以下であるのは、1000ppmを超えると、例えばエレクトロニクス製品の内部に用いられ、はんだリフロー等の強熱(260℃)に晒された場合に低分子シロキサンが発生し、接点部分に導通不良を生じさせるおそれがあるためである。
【0027】
なお、エラストマー粒子と金属層との間に、ケイ素又はケイ素化合物からなる中間被覆層を設ければ、この中間被覆層によりエラストマー粒子の凝集を抑制できる。即ち、エラストマー粒子は、表面状態が不安定であるため、特に、エラストマー粒子としてシリコーンゴムを用いた場合、非常に凝集し易いが、エラストマー粒子の表面をケイ素又はケイ素化合物からなる中間被覆層で被覆すると、エラストマー粒子との親和性が高いことから、中間被覆層とエラストマー粒子表面との密着力を損なうことなく、エラストマー粒子の表面を安定化することで、エラストマー粒子の凝集性を抑制できる。これにより、銀を主成分とする金属層がエラストマー粒子(母粒子)同士を架橋して粒子が肥大化するという事態が生じないので、銀被覆エラストマー粒子を柔軟導電性材料や導電ペースト中の導電フィラーとして使用する場合、混練工程における作業負荷を増大させず、また金属層の剥離が生じないので、導電性の低下を招くこともなく、更に銀被覆エラストマー粒子を高い分散性が要求される導電スペーサに適用することができる。
【0028】
中間被覆層を構成するケイ素又はケイ素化合物は、シリカ、ケイ酸ガラス、シリコン又はシリコーンレジンのいずれかであることが好ましい。また、中間被覆層の厚さは、5~3050nmであることが好ましい。なお、中間被覆層は完全にエラストマー粒子の表面を被覆している必要はなく、例えば、ケイ素又はケイ素化合物がまばらにエラストマー粒子の表面を被覆している形態でも構わない。ここで、中間被覆層の好ましい厚さが5~3050nmの範囲内であるのは、5nm未満では中間被覆層によるエラストマー粒子の凝集抑制効果が十分に得られず、3050nmを超えると中間被覆層の硬さによってエラストマー粒子の柔軟性が損なわれてしまう傾向があるためである。なお、中間被覆層の厚さは、銀被覆エラストマー粒子の断面のTEM画像(透過電子顕微鏡画像)に基づいて測定することができる。具体的には、1個の銀被覆エラストマー粒子について中間被覆層の厚さをそれぞれ任意の10箇所で2点間距離測定を用いて測定し、その平均値を算出する。このとき、中間被覆層の厚さは、エラストマー粒子の外周部に引いた接線に垂直な線分上の、シリコーンゴム粒子の外周部の接点から中間被覆層の外周部の接点までの距離を指す。また、中間被覆層がケイ素又はケイ素化合物を含有していることは、以下の方法で確認できる。銀被覆エラストマー粒子の金属層を1~20%の希硝酸で溶解し、中間被覆層若しくは中間被覆層及びエラストマー粒子を露出させる。この中間被覆層に対してAES(オージェ電子分光法)又はTOF-SIMS(飛行時間型2次イオン質量分析)を用いて分析することで、ケイ素又はケイ素化合物を含有しているかどうかを評価できる。または、銀被覆エラストマー粒子の断面図において、TEM画像の撮像時に、EDS(エネルギー分散型X線分光法)を用いてケイ素元素の元素マッピングを実施し、中間被覆層からのケイ素元素の検出有無によって、ケイ素又はケイ素化合物を含有しているかどうかを評価してもよい。
【0029】
一方、銀被覆エラストマー粒子の平均粒径は、SEM画像(走査電子顕微鏡画像)に基づいて測定され、0.5μm~60μmであることが好ましく、1μm~30μmであることが更に好ましい。また、銀被覆エラストマー粒子を100質量%としたとき、銀は2質量%~90質量%含まれることが好ましい。ここで、SEM画像に基づいて測定される銀被覆エラストマー粒子の平均粒子径の好ましい範囲が0.5μm~60μmの範囲内であるのは、0.5μm未満では銀被覆エラストマー粒子の再凝集が発生し易く、60μmを超えると、銀被覆エラストマー粒子が一定歪だけ変形した際の変位が大きくなるため、金属層が母粒子(エラストマー粒子)の変形に追従できずに、銀被覆エラストマー粒子が破壊するおそれがあるためと、微細な配線や薄膜材料の導電フィラーとして適用し難くなる傾向があるためである。また、銀被覆エラストマー粒子を100質量%としたとき、銀の好ましい含有割合が2質量%~90質量%の範囲内であるのは、2質量%未満では導電性が損なわれ易くなり、90質量%を超えると母粒子であるエラストマー粒子の粒子径に対する銀被覆層の厚さが相対的に大きくなることで、エラストマー粒子の柔軟性が損なわれてしまう傾向があるためである。
【0030】
なお、上記金属層の厚さは、銀被覆エラストマー粒子の断面のSEM画像(走査電子顕微鏡画像)に基づいて測定する。具体的には、1個の銀被覆エラストマー粒子について金属層の厚さを任意の10箇所で、ソフト「PC-SEM」における2点間距離測定を用いて測定し、その平均値を算出する。このとき、金属層の厚さは、エラストマー粒子の外周部に引いた接線に垂直な線分上の、エラストマー粒子の外周部の接点から金属層の外周部の接点までの距離を指す。この測定及び算出を100個の銀被覆エラストマー粒子について行い、その平均値を算出する。この値を金属層の厚さとする。
【0031】
また、エラストマー粒子表面の金属層による被覆率は90%~100%の範囲内であることが好ましい。ここで、エラストマー粒子表面の金属層による被覆率が90%~100%の範囲内であるのは、90%未満では、金属層によりエラストマー粒子を十分に被覆できず、銀被覆エラストマー粒子を用いて電子部品や導電膜を作製したときに、電子部品等の電気抵抗が増大してしまうおそれがあるためである。なお、上記エラストマー粒子表面の金属層による被覆率は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて目測した値であり、任意の視野から任意に選んだ1000個のサンプルの被覆率を目測し算術平均した値である。
【0032】
このように構成された銀被覆エラストマー粒子の製造方法を説明する。先ず、平均粒径が0.5μm~60μmのエラストマー粒子を用意する。エラストマー粒子がシリコーンゴムにより形成される場合、このシリコーンゴム製のエラストマー粒子を窒素中で150℃~350℃の温度に0.5時間~10時間保持することが好ましい。また、低分子シロキサンを除去する他の方法としては、低極性有機溶剤中で粒子を0.5時間~24時間浸漬又は撹拌した後に、50℃~100℃で乾燥させる方法も挙げられる。低極性有機溶剤としては、トルエン,キシレン,ベンゼン等の芳香族化合物や、ナフサ,ガソリン,ミネラルスピリット等の石油系溶媒や、ヘキサン,ヘキセン,オクタン等のアルカン又はアルケン等の炭化水素系溶媒のいずれかから選ばれる1種又はこれらの混合物が挙げられる。更に、弾性率の調整は、前述したケイ素又はケイ素化合物をエラストマー粒子の表面に中間被覆層として被覆する場合には、中間被覆層の厚みや材質を変更することで調整を実施してもよい。なお、ケイ素又はケイ素化合物からなる中間被覆層を形成する方法としては、例えば、エラストマー粒子と微細なケイ素粒子やケイ酸ガラス粒子とを混合してエラストマー粒子の表面にケイ素粒子やケイ酸ガラス粒子を付着させ中間被覆層とする方法や、エラストマー粒子を水に分散させ正ケイ酸エチルやアルコキシシランを添加し加水分解することでエラストマー粒子の表面に中間被覆層を形成する方法などが挙げられる。
【0033】
次に、エラストマー粒子の表面を活性化させた後、この表面が活性化したエラストマー粒子を水洗し濾過する。ここで、エラストマー粒子の表面を活性化させるのは、有機質材料や無機質材料などの不導体の表面に無電解めっきを実施する際に、予め不導体の表面に対して活性化処理を行うことに倣ったものである。エラストマー粒子の表面を活性化させる方法としては、酸化剤、酸溶液、アルカリ溶液、又はこれらの混合液でエラストマー粒子を撹拌した後に、水洗して、ろ過する湿式法や、真空プラズマ処理、大気プラズマ処理、又はオゾン処理といった乾式法とが挙げられる。湿式法で用いられる酸化剤としては、二クロム酸塩、クロム酸、過マンガン酸塩、過酸化水素、過硫酸塩、過塩素酸塩等が挙げられる。湿式法で用いられる酸溶液としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。湿式法で用いられるアルカリ溶液としては、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水、水酸化カルシウム水溶液等が挙げられる。
【0034】
更に、表面が活性化したエラストマー粒子の表面に、銀を主成分とする金属層を設ける。一般に、有機質材料や無機質材料などの不導体の表面に無電解めっきを実施する際には、予め不導体の表面に対して触媒化処理を行う必要がある。触媒化処理としては、例えば、エラストマー粒子の表面に錫吸着層を設けることや、パラジウム触媒層を設けることが挙げられる。なお、中間被覆層を形成した場合、中間被覆層に触媒化処理を行うこととなる。
【0035】
錫吸着層は、例えば、次のような方法で形成することができる。錫化合物の水溶液に、エラストマー粒子を添加し撹拌した後、エラストマー粒子を濾別して水洗する。撹拌時間は、以下の錫化合物の水溶液の温度及び錫化合物の含有量によって適宜決定されるが、好ましくは、0.5時間~24時間である。錫化合物の水溶液の温度は、好ましくは25℃~45℃である。錫化合物の水溶液の温度が25℃未満であると、温度が低く過ぎて水溶液の活性が低くなり、エラストマー粒子の表面に錫化合物が付着し難くなり、錫吸着層が十分に形成されないおそれがある。一方、錫化合物の水溶液の温度が45℃を超えると、錫化合物が酸化するため、水溶液が不安定となり、エラストマー粒子の表面に錫化合物が付着しにくくなり、錫吸着層が十分に形成されないおそれがある。この処理を25℃~45℃の水溶液で実施すると、錫の2価イオンがエラストマー粒子の表面に付着し錫吸着層が形成される。なお、上記錫化合物としては、塩化第一錫、フッ化第一錫、臭化第一錫、ヨウ化第一錫等が挙げられる。上記錫化合物を用いたときの水溶液中の錫の含有量は、20g/L以上が好ましく、飽和濃度となるまで水溶液に含有させることができる。なお、錫化合物の溶解性を向上するために、塩酸や硫酸などの酸を含有させて水溶液のpHを2.5以下とすることが好ましい。
【0036】
また、パラジウム触媒層を設ける場合には、例えば、パラジウム触媒含有溶液(例えば、メルテックス社製、製品名:エンプレートアクチベータ444)や、パラジウム化合物と塩酸や硫酸等の酸と、塩化第一錫などの還元剤を混合したパラジウム含有溶液に対してエラストマー粒子を分散させ、10℃~50℃の範囲で、5分~120分撹拌することで、パラジウム触媒層を形成することができる。パラジウム化合物としては塩化パラジウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、及びパラジウムアンミン錯塩などの錯塩等を用いることができる。また、パラジウム触媒層を形成する際に、還元剤として錫化合物を使用した場合には、不要な錫化合物を除去するために、硫酸や塩酸等の酸で洗浄する工程を設けてもよい。
【0037】
更に、表面に触媒化処理を施したエラストマー粒子に、銀を主成分とする金属層を設ける。具体的には、触媒化処理が施されたエラストマー粒子の表面に、還元剤を用いて無電解銀めっきを行って、銀を主成分とする金属層を形成することにより、銀被覆エラストマー粒子を得る。なお、中間被覆層を形成した場合、触媒化処理が施された中間被覆層に銀を主成分とする金属層を設けることとなる。無電解銀めっき法としては、(1)錯化剤、還元剤等を含む水溶液中に、表面に錫吸着層を形成したエラストマー粒子を浸漬し、銀塩水溶液を滴下する方法、(2)銀塩、錯化剤を含む水溶液中に、表面に錫吸着層を形成したエラストマー粒子を浸漬し、還元剤水溶液を滴下する方法、(3)表面に錫吸着層を形成したエラストマー粒子を浸漬したスラリーに、銀塩と錯化剤を含む水溶液と、還元剤等を含む水溶液とを同時に滴下する方法が挙げられる。
【0038】
銀塩としては、硝酸銀或いは銀を硝酸に溶解したもの等を用いることができる。錯化剤としては、アンモニア、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、ニトロ三酢酸、トリエチレンテトラアンミン六酢酸、チオ硫酸ナトリウム、コハク酸塩、コハク酸イミド、クエン酸塩又はヨウ化物塩等の塩類を用いることができる。還元剤としては、ホルマリン、ブドウ糖、イミダゾール、ロッシェル塩(酒石酸ナトリウムカリウム)、ヒドラジン及びその誘導体、ヒドロキノン、L-アスコルビン酸又はギ酸等を用いることができる。還元剤としては、還元力の強さから、ホルムアルデヒドが好ましく、少なくともホルムアルデヒドを含む2種以上の還元剤の混合物がより好ましく、ホルムアルデヒドとブドウ糖を含む還元剤の混合物が最も好ましい。
【0039】
無電解銀めっき処理工程において、最初に錫吸着層の錫と銀イオンとの置換反応が開始し、エラストマー粒子の表面に核となる金属銀が析出する。上記の置換反応と自己触媒的還元反応によって、エラストマー粒子の表面に所定の結晶子径を有する銀を主成分とする金属層が形成され、銀被覆エラストマー粒子が得られる。
【0040】
必要に応じて、得られた銀被覆エラストマー粒子に対して、表面処理を実施してもよい。表面処理剤としては、ステアリン酸,イソステアリン酸,パルミチン酸,オレイン酸などの脂肪酸、マレイン酸,コハク酸などのジカルボン酸、ポリアクリル酸などのカルボン酸系高分子、ドデシルアミン,オクタデシルアミンなどのアミン化合物、ポリエーテルアミン等のアミン系高分子、オクタデシルジスルフィドなどのスルフィド化合物、ドデカンチオールなどのチオール化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。銀被覆エラストマー粒子に対して表面処理を実施することで、銀被覆エラストマー粒子が柔軟導電材料や導電ペースト中の導電性フィラーとして用いられる際に、エラストマーバインダや樹脂バインダとの親和性を向上させ、柔軟導電材料や導電膜を割れ難くすることができる。表面処理の方法としては、例えば、上記表面処理剤とエタノールなどの溶媒に溶解させた溶液を用意し、この溶液に銀被覆エラストマー粒子を浸漬し撹拌することで表面処理を行うことができる。また、上記表面処理剤を加熱溶融させ、銀被覆エラストマー粒子と接触させることで表面処理を行うこともできる。
【0041】
このように製造された銀被覆エラストマー粒子では、この銀被覆エラストマー粒子の10%圧縮弾性率を50MPa~800MPaの範囲内に制御したので、銀被覆エラストマー粒子自体が柔軟性及び高い導電性を有する。この結果、上記銀被覆エラストマー粒子を用いて柔軟導電材料や導電ペーストを調製し、更に柔軟導電材料や導電ペーストを用いて電子部品や導電膜を作製したときに、電子部品や導電膜の柔軟性を保持したまま電気抵抗を低減できる。また、エラストマー粒子がシリコーンゴムにより形成され、銀被覆エラストマー粒子を不活性ガス雰囲気中で260℃の温度に保持したときにシリコーンゴムから検出される低分子シロキサンが1000ppm以下であるので、上記シリコーンゴム製のエラストマー粒子を用いて作製された電子部品の周辺温度が上昇しても、銀被覆エラストマー粒子のシリコーンゴムから低分子シロキサンガスは殆ど発生しない。この結果、例えばリレー接点上への低分子シロキサンの堆積を抑制できるので、このリレー接点の開閉によりアーク火花が発生しても、リレー接点の接点不良が発生することはない。
【0042】
(B) 柔軟導電材料
柔軟導電材料は、上記銀被覆エラストマー粒子をエラストマーバインダ中に分散させることにより構成される。この柔軟導電材料は、例えば、厚さ0.2mm~50mmのシート状、ブロック状、又はこれらの積層体状等に形成されており、この柔軟導電材料を加熱成型することにより所望の形状に成形できるようになっている。また、エラストマーバインダとしては、ウレタンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、イソプレンゴム等が挙げられる。更に、柔軟導電材料は、ゴム弾性や耐熱性を付与するために加硫剤、加硫促進剤等を含むことができる。そして、このような柔軟導電材料は、柔軟性及び導電性を必要とするトランスデューサ、コネクタ、スイッチ接点等の電子部品として、利用される。なお、柔軟導電材料の体積抵抗率は1×10-2Ω・cm以下であることが好ましく、1×10-3Ω・cm以下であることが更に好ましい。また、柔軟導電材料の貯蔵弾性率は500MPa以下であることが好ましく、200MPa以下であることが更に好ましい。柔軟導電材料の体積抵抗率が1×10-2Ω・cm以下であるのは、1×10-2Ω・cmを超えると、良好な導電性を有する電子部品を成形できないためである。また、柔軟導電材料の貯蔵弾性率が500MPa以下であるのは、500MPaを超えると、良好な弾性を有する電子部品を成形できないためである。
【0043】
〔柔軟導電材料中の銀被覆エラストマー粒子の割合〕
柔軟導電材料に含ませる銀被覆エラストマー粒子の割合は、柔軟導電材料100体積%としたとき、20体積%~75体積%の範囲内とするのが好ましく、30体積%~60体積%の範囲内にするのが更に好ましい。ここで、銀被覆エラストマー粒子が20体積%~75体積%の範囲内であるのは、20体積%未満では、柔軟導電材料を成形して形成されるコネクタ又は接点等の電気部品の抵抗値が上がり、導電性に優れた電気部品を形成することが困難になり、75体積%を超えると、電気部品の成形性が低下し、所望の形状の電気部品を成形できなくなるためである。
【0044】
〔柔軟導電材料中のエラストマーバインダの割合〕
柔軟導電材料中のエラストマーバインダの割合は、硬化物中の体積比率に換算して25体積%~80体積%の範囲にあることが望ましい。ここで、柔軟導電材料中のエラストマーバインダの割合が、硬化物中の体積比率に換算して25体積%~80体積%の範囲内であるのは、25体積%未満では、バインダ成分が少なくなることによる柔軟導電材料の脆化のような不具合が生じ、80体積%を超えると、柔軟導電材料の導電性が低下する等の不具合が生じるためである。
【0045】
〔柔軟導電材料中のエラストマーバインダ〕
柔軟導電材料に含ませるエラストマーバインダとしてのウレタンゴムは、一般に接着用又はシート用として用いられているものが使用できる。具体的には、ポリオール系ウレタンゴム、ポリエステル系ウレタンゴム、ポリカプロラクタム系ウレタンゴム、ポリエーテル系ウレタンゴム、ポリカーボネート系ウレタンゴム等を挙げることができ、これらを単独又は組合せて使用することができる。また、必要に応じてイソシアネート、ブロックイソシアネート等の硬化剤を添加することができる。
【0046】
柔軟導電材料に含ませるエラストマーバインダとしてのアクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分としたものを用いることができ、具体的にはアクリル酸アルキルエステルと2-クロロエチルビニルエーテルの共重合体(ACM)や、アクリル酸アルキエステノルとアクリロニトリルの共重合体(ANM)等を主成分としたものが挙げられる。
【0047】
柔軟導電材料に含ませるエラストマーバインダとしてのシリコーンゴムは特に限定されず、一般に接着用又はシート成型用として用いられているものならば、付加型又は縮合型、或いは1液硬化型又は2液硬化型のいずれの構造のものも使用可能である。具体的なシリコーンゴムとしては、各種オルガノポリシロキサン、変性ポリシロキサン、エラストマー変性ポリシロキサン、ミラブル型シリコーンゴム、室温硬化型シリコーンゴム等を挙げることができ、これらを単独又は組合せて使用することができる。
【0048】
柔軟導電材料に含ませるエラストマーバインダとしてのフッ素ゴムは、汎用的なフッ素ゴムであれば特に限定されず使用可能であり、具体的にはビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体等の2元系フッ素ゴムや、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体,ビニリデンフルオライド-テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル等の3元系フッ素ゴムなどに代表されるフッ化ビニリデン系ゴム(FKM)や、四フッ化エチレン-プロピレンゴム(FEPM)や、四フッ化エチレン-パーフルオロメチルビニルエーテルゴム(FFKM)などが挙げられる。
【0049】
柔軟導電材料に含ませるエラストマーバインダとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)は、特に限定されず、乳化重合型及び溶液重合型のいずれも用いることができる。また、柔軟導電材料に含ませるエラストマーバインダとしてのクロロプレンゴムは、特に限定されず、クロロプレンの重合体及びその変性体を用いることができる。また、柔軟導電材料に含ませるエラストマーバインダとしてのニトリルゴムは、特に限定されず、アクリロニトリル-1,3-ブタジエン共重合体及びその変性体を用いることができる。更に、柔軟導電材料に含ませるエラストマーバインダとしてのイソプレンゴムは、特に限定されず、イソプレンの重合体及びその変性体を用いることができる。
【0050】
エラストマーバインダは、所望の弾性率や耐熱性といった物性を得るために、熱加硫(架橋)させることが好ましい。なお、本発明では、エラストマーの架橋と加硫は同一の意味として扱う。エラストマーバインダの加硫の方式は特に限定されず、硫黄等と用いた硫黄加硫、アルキル系パーオキサイドやアシル系パーオキサイドを用いた過酸化物加硫(パーオキサイド加硫)、ビスフェノールAやビスフェノールF等を用いたポリオール加硫、アミン化合物やジアミン化合物等を用いたポリアミン加硫、白金触媒等を用いた付加加硫ウレタン加硫、エポキシ加硫等の方式が挙げられる。それぞれの方式において、必要に応じて加硫剤及び加硫促進剤を添加してもよい。なお、柔軟導電材料の配合時には、加工助剤、老化防止剤、軟化剤、着色剤、可塑剤等を、必要な物性を低下させない範囲で添加してもよい。
【0051】
上述したエラストマーバインダを含む柔軟導電材料を用いて製造されたコネクタやトランスデューサ等の電子部品は、経時変化による品質劣化が抑制される。また、上記柔軟導電材料は、例えば、以下のような方法で得られる。上述した銀被覆エラストマー粒子、エラストマーバインダ及び加硫剤と、添加剤とを、上述した割合の範囲内で、二軸ロール等を用いて混合・混練した後、プレス加硫を行い、その後、二次加硫を行うことで得ることができる。ここで、プレス加硫は、好ましくは10kg/cm2~100kg/cm2の圧力を100℃~200℃の温度で5分間~60分間印加することにより行う。また、二次加硫は、好ましくは100℃~200℃の温度に0.5時間~10時間保持することにより行う。
【0052】
(C) 導電ペースト
導電ペーストは、上記銀被覆エラストマー粒子と、樹脂バインダと、溶剤とを含む。樹脂バインダとしては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタンゴム、ポリイミド樹脂、シリコーンゴム等が挙げられ、必要に応じて硬化剤を含有する。
【0053】
〔導電ペーストに含ませる樹脂バインダ〕
導電ペーストに含ませる樹脂バインダとしてのエポキシ樹脂は、例えばビスフェノール型、ビフェニル型、ビフェニル混合型、ナフタレン型、クレゾールノボラック型、ジシクロペンタジエン型、トリスフェノールエタン型、テトラフェノールエタン型のエポキシ樹脂が挙げられる。
【0054】
上記エポキシ樹脂の硬化剤としては、一般的に用いられるイミダゾール類、第3級アミン類又はフッ化ホウ素を含むルイス酸、或いはその化合物、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ジシアンジアミド等の潜在硬化剤が好適である。イミダゾール類には、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物等が挙げられ、第3級アミン類には、ピペリジン、ベンジルジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、イソフォロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。また、フッ化ホウ素を含むルイス酸には、フッ化ホウ素モノエチルアミン等のフッ化ホウ素のアミン錯体が挙げられ、フェノール系硬化剤には、フェノールノボラック樹脂、パラキシリレンフェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂等が挙げられる。更に、酸無水物系硬化剤には、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0055】
また、エポキシ樹脂には、必要に応じて硬化促進剤を添加してもよい。硬化促進剤としては、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール等のイミダゾール類及びその塩類、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン等の3級アミン及びその塩類、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物及びその塩類、オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズ、アルコキシチタン等の有機金属塩、白金、パラジウム等の貴金属類等が挙げられる。
【0056】
導電ペーストに含ませる樹脂バインダとしてのフェノール樹脂は、熱硬化型であればいかなる構造のものでも差し支えないが、ホルムアルデヒド/フェノールのモル比が1~2の範囲であることが好ましい。この熱硬化型フェノール樹脂の重量平均分子量は、300~5000であることが好ましく、1000~4000であることがより好ましい。
【0057】
導電ペーストに含ませる樹脂バインダとしてのウレタンゴムは、一般に接着用として用いられているものが使用できる。具体的には、ポリオール系ウレタンゴム、ポリエステル系ウレタンゴム、ポリカプロラクタム系ウレタンゴム、ポリエーテル系ウレタンゴム、ポリカーボネート系ウレタンゴム、ウレタンアクリレート樹脂等が挙げることができ、これらを単独又は組合せて使用することができる。また、必要に応じてイソシアネート、ブロックイソシアネート等の硬化剤を添加することができる。
【0058】
導電ペーストに含ませる樹脂バインダとしてのシリコーンゴムは、一般に接着用として用いられているものならば、付加型及び縮合型のいずれの構造のものも使用可能である。具体的なシリコーンゴムとしては、各種オルガノポリシロキサン、変性ポリシロキサン、エラストマー変性ポリシロキサン、室温硬化型シリコーンゴム等を挙げることができ、これらを単独又は組合せて使用することができる。
【0059】
〔導電ペースト中の銀被覆樹脂粒子の割合〕
導電ペーストに含ませる銀被覆エラストマー粒子の割合は、導電ペーストの硬化物中、20質量%~75質量%の割合とするのが好ましく、30質量%~60質量%の割合にするのが更に好ましい。ここで、銀被覆エラストマー粒子が導電ペーストの硬化物中に20質量%~75質量%の範囲内であるのは、20質量%未満では、導電ペーストを塗布硬化させて形成される導電膜の抵抗値が上がり、導電性に優れた導電膜を形成することが困難になり、75質量%を超えると、良好な流動性を持つペーストが得られない傾向がみられることや、バインダ成分の不足により接着力が低下することから、印刷性等の面で、良好な導電膜を形成し難くなるためである。
【0060】
上述したエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタンゴム、アクリル樹脂、シリコーンゴム、ポリイミド樹脂は、導電ペーストの経時変化による品質劣化を抑制できると同時に、主鎖に剛直な骨格を持ち、硬化物が耐熱性や耐湿性に優れていることから、形成する電極等の耐久性を向上させることができる。導電ペースト中の樹脂バインダの割合は、硬化物中の体積比率に換算して25体積%~75体積%の範囲にあることが望ましい。ここで、導電ペースト中の樹脂バインダの割合が、硬化物中の体積比率に換算して25体積%~75体積%の範囲内であるのは、25体積%未満では、密着性不良のような不具合が生じ、75体積%を超えると、導電性が低下する等の不具合が生じるためである。
【0061】
〔導電ペースト中の溶剤〕
溶剤としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコ-ルモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール系溶剤又はそれらの酢酸エステル系溶剤、エチレングリコール、プロピレングリコール、テルピネオール、ミネラルスピリット、トルエン等の芳香族炭化水素系溶剤、ドデカン等の脂肪族炭化水素系溶剤、ジメチルホルムアミド、N-メチル―2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジアセトンアルコール、ジメチルアセトアミド、γ-ブチロラクトン、水、反応性希釈剤等が挙げられる。これらは樹脂バインダとの相溶性によって選択され、シリコーンゴムにおいてはミネラルスピリットやトルエン、ポリイミド樹脂においてはN-メチル-2-ピロリドン、フェノール樹脂、ウレタンゴム、エポキシ樹脂ではエチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、α―テルピネオールが特に好ましい。これらの溶媒は単独でも或いは複数種の組合せでも用いることができる。
【0062】
樹脂バインダ及びその混合物に対しては、導電性、熱伝導性、密着性、形状保持性を阻害しない範囲で添加物を混合することができる。添加物としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、銀ナノ粒子、増粘剤、分散剤、難燃剤、消泡剤又は酸化防止剤等が挙げられる。
【0063】
なお、導電ペーストは、銀被覆エラストマー粒子と、樹脂バインダと、溶剤とを、公知の方法で混合することで、得られる。
【0064】
上記導電ペーストは、銀被覆エラストマー粒子と、樹脂バインダと、溶剤とを含むので、柔軟性及び導電性を必要とする導電フィルムや導電スペーサ等の導電膜の作製に好適である。このような導電膜を製造するには、先ず、導電ペーストを好ましくはスクリーン印刷等の塗布法により塗布して、所望の印刷パターンを形成する。そして、印刷パターンの形成後、所望の温度で乾燥、焼成等を行う。ここで、焼成は、例えば、熱風循環炉等の装置を用いて、好ましくは150℃~250℃の温度で0.5時間~1時間保持することにより行う。このようにして得られた導電膜は、例えば、10μm~200μmの厚さを有する。
【実施例0065】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0066】
<実施例1>
(1) 銀被覆エラストマー粒子の作製
先ず、シリコーンゴムにより形成された平均粒径13μmのエラストマー粒子を用意した。この粒子を窒素中で280℃の温度に1時間保持して、エラストマー粒子を構成するシリコーンゴムから低分子シロキサンの大部分を除去するとともに、エラストマー粒子の弾性率を調整した。次いで、20質量部の二クロム酸カリウムと、10質量部の濃硫酸と、100質量部の水とを混合した混合液に、上記エラストマー粒子を10質量部入れて、2時間撹拌することにより、エラストマー粒子の表面を活性化させた。そして、この活性化したエラストマー粒子を水洗し濾過した。次に、上記のエラストマー粒子10質量部をイオン交換水300質量部に分散させ、エラストマー粒子スラリーを調製した。このエラストマー粒子スラリー310質量部に対して、35質量%塩酸水溶液5質量部と、塩化第一錫5質量部とを加えて、30℃に設定した水浴中で15分撹拌して、エラストマー粒子の表面に錫を吸着させ、錫吸着層を形成した。そして、エラストマー粒子スラリーを水洗した後、ろ過し乾燥して、錫吸着層が形成されたエラストマー粒子を得た。更に、この錫吸着層が形成されたエラストマー粒子の表面に、還元剤を用いて無電解銀めっきを行って、銀を主成分とする金属層を形成した。
【0067】
上記無電解銀めっきは、次のようにして行った。先ず、水100質量部に、錯化剤としてエチレンジアミン四酢酸ナトリウム20質量部、pH調整剤として水酸化ナトリウム10質量部、還元剤としてホルマリン(ホルムアルデヒド濃度37質量%)7.5質量部を添加し、これらを溶解させることにより、錯化剤及び還元剤を含む水溶液を調製した。次いで、この水溶液に、上記錫吸着層が形成されたエラストマー粒子10質量部を浸漬させることによりスラリーを調製した。次に、硝酸銀16質量部、25%アンモニア水16質量部、水30質量部を混合して硝酸銀含有水溶液を調製し、上記スラリーを攪拌しながら、この硝酸銀含有水溶液を滴下し、硝酸銀含有水溶液を滴下した後のスラリーを25℃の温度に保持しながら撹拌することにより、銀をエラストマー粒子表面上に析出させた。そして、洗浄、濾過を行い、真空乾燥機を用いて60℃の温度で乾燥させた後、325メッシュのステンレス平織り金網と振動篩を用いて塊状となった粒子をほぐして、銀被覆エラストマー粒子を得た。なお、この銀被覆エラストマー粒子100質量部に対する銀の含有割合は50質量部であった。
【0068】
更に、上記得られた銀被覆エラストマー粒子に対して以下のように表面処理を実施した。ステアリン酸0.1質量部をエタノール100質量部に溶解させた溶液に対して、銀被覆エラストマー粒子を浸漬し、15分間撹拌を行うことで、ステアリン酸を銀被覆エラストマー粒子表面に吸着させた。この溶液をろ過し、エタノールで洗浄した後、60℃の温度で乾燥させることで、ステアリン酸が表面に吸着された銀被覆エラストマー粒子を得た。これを実施例1の銀被覆エラストマー粒子とした。
【0069】
(2) 柔軟導電材料の作製
先ず、実施例1の銀被覆エラストマー粒子70質量部と、フッ素ゴム(DIEL G-801、 ダイキン社製)100質量部と、加硫剤及び加硫促進剤としてトリアリルイソシアヌレート(TAIC、日本化成社製)4質量部及び2,5-ジメチル―2,5ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン(パーヘキサ25B、日油社製)1.5質量部とを、二軸ロール中で混合・混練して柔軟導電材料の前駆体を作製した。次に、この前駆体を、100mm×100mmの矩形金型に配置し、30kg/cm2の圧力で、180℃、15分間プレス加硫を行った。更に、プレス加硫後の柔軟導電材料を乾燥機内にて180℃の温度に4時間保持する二次加硫を行って、縦、横及び厚さが100mm、100mm及び1mmであるシート状の柔軟導電材料を得た。この柔軟導電材料中の銀被覆エラストマー粒子の含有率の計算値は40体積%である。これを実施例1の柔軟導電材料とした。
【0070】
<実施例2>
(1) 銀被覆エラストマー粒子の作製
先ず、シリコーンレジンで被覆されたシリコーンゴム粒子を次のようにして作製した。平均粒径5μmのシリコーンゴム粒子100質量部に対して粉体用大気プラズマ装置を用いてプラズマを照射し、粒子表面を活性化した。次いで、このシリコーンゴム粒子を、ノニオン系界面活性剤(ポリオキシアルキレン系化合物)を添加したイオン交換水500質量部に分散させ、液温を15℃に調整した。次に、この分散液に対して、メチルトリメトキシシラン11質量部と、10質量%塩酸1質量部とを添加し、2時間撹拌することで加水分解・縮合を進行させた。更に、得られた懸濁液を洗浄、濾過及び乾燥することで、シリコーンレジンで被覆されたシリコーンゴム粒子を得た。
【0071】
上記シリコーンレジン被覆シリコーンゴム粒子を窒素中で300℃の温度に2時間保持して、シリコーンゴムから低分子シロキサンの大部分を除去するとともに、シリコーンレジン被覆シリコーンゴム粒子の弾性率を調整した。これ以降は、このシリコーンレジン被覆シリコーンゴム粒子を用いたことと、無電解銀めっき時における原料の割合、即ち銀被覆エラストマー粒子100質量部に対する銀の含有割合が62質量部となるように変更したこと以外は、実施例1と同様にして銀被覆エラストマー粒子を得た。また、表面処理についても、実施例1と同様にして実施し、ステアリン酸を銀被覆エラストマー粒子表面に吸着させた。これを実施例2の銀被覆エラストマー粒子とした。
【0072】
(2) 柔軟導電材料の作製
実施例2の銀被覆エラストマー粒子を用い、この銀被覆エラストマー粒子の配合量を87.5質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして柔軟導電材料を作製した。この柔軟導電材料中の銀被覆エラストマー粒子の含有率の計算値は40体積%である。
【0073】
<実施例3>
(1) 銀被覆エラストマー粒子の作製
先ず、平均粒径30μmのシリコーンゴム粒子を用いたこと以外は、実施例2と同様の方法でシリコーンレジン被覆シリコーンゴム粒子を作製した。そして、この粒子10質量部を、トルエン300質量部中に浸漬し、室温で2時間撹拌した。これをろ過し、窒素中180℃で乾燥させることで低分子シロキサンを除去しつつ、弾性率を調整した。更に、この粒子に対して、オゾン発生器(ED-OG-R4、エコデザイン社製)を用いて、オゾン濃度50g/m3にて1時間のオゾン暴露を行い、上記粒子の表面を活性化した。
【0074】
この表面が活性化された粒子10質量部をイオン交換水200質量部に分散させ、シリコーンレジン被覆シリコーンゴム粒子スラリーを調製した。このスラリー210質量部に対して、35質量%塩酸水溶液3質量部と、塩化ナトリウム15質量部と、パラジウム触媒含有溶液(メルテックス社製、製品名:エンプレートアクチベータ444)5質量部とを加えて、30℃に設定した水浴中で15分撹拌して、この粒子の表面にパラジウム触媒を吸着させた。次いで、このスラリーをろ過して、粒子を回収し、8質量%硫酸水溶液で洗浄し、その後水洗した。
【0075】
上記処理で得られた粒子10質量部を、イオン交換水200質量部に分散させて、スラリーを調製し、このスラリー210質量部に対して、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(錯化剤)10質量部と、37質量%ホルムアルデヒド水溶液(還元剤)35質量部とを加えて、撹拌して、錯化剤及び還元剤を含むスラリーを調製した。また、別に、硝酸銀16質量部と、クエン酸アンモニウム8質量部と、25質量%アンモニア水14質量部と、イオン交換水30質量部とを加えて、硝酸銀水溶液を調製した。
【0076】
上記のスラリーを撹拌しながら、このスラリーに、上記の硝酸銀水溶液を滴下して、シリコーンゴム粒子の表面(シリコーンレジン被覆上)に金属層を形成して、銀被覆エラストマー粒子スラリーを得た。得られたスラリーを水洗した後、ろ過し乾燥して銀被覆エラストマー粒子を得た。これを実施例3の銀被覆エラストマー粒子とした。なお、この銀被覆エラストマー粒子100質量部に対する銀の含有割合は55質量部であった。
【0077】
(2) 柔軟導電材料の作製
実施例3の銀被覆エラストマー粒子148質量部と、アクリルゴム(Nipol AR31、 日本ゼオン社製)100質量部と、加硫剤として安息香酸アンモニウム2質量部とを、二軸ロール中で混合・混練して柔軟導電材料の前駆体を作製した。次に、この前駆体を実施例1と同様の条件で加硫を実施し、縦、横及び厚さが100mm、100mm及び1mmであるシート状の柔軟導電材料を得た。この柔軟導電材料中の銀被覆エラストマー粒子の含有率の計算値は45体積%である。これを実施例3の柔軟導電材料とした。
【0078】
<実施例4>
(1) 銀被覆エラストマー粒子の作製
先ず、シリコーンゴムにより形成された平均粒径5μmのエラストマー粒子を用意した。この粒子を窒素中で260℃の温度に1時間保持して、エラストマー粒子を構成するシリコーンゴムから低分子シロキサンの大部分を除去するとともに、エラストマー粒子の弾性率を調整した。次いで、この粒子10質量部と、ヒュームドシリカ粒子(平均一次粒子径:50nm、日本アエロジル株式会社製、AEROSIL 50)3質量部とを、ハイブリダイゼーション装置(株式会社奈良機械製作所製、NHS-0型)を用いて機械混練して、シリコーンゴム粒子の表面にシリカ粒子を緻密に埋め込むことにより、表面がシリカ粒子の凝集体からなる中間被覆層で被覆されたシリカ被覆シリコーンゴム粒子を得た。次に、このシリカ被覆シリコーンゴム粒子を、電鋳篩を用いて分級して、シリコーンゴム粒子の被覆に使われなかったヒュームドシリカ粒子を取り除いた。このシリカ被覆シリコーンゴム粒子を用いたことと、無電解銀めっき時における原料の割合、即ち銀被覆エラストマー粒子100質量部に対する銀の含有割合が78質量部となるように変更したこと以外は、実施例1と同様にして銀被覆エラストマー粒子を得た。また、表面処理についても、実施例1と同様にして実施し、ステアリン酸を銀被覆エラストマー粒子表面に吸着させた。これを実施例4の銀被覆エラストマー粒子とした。
【0079】
(2) 柔軟導電材料の作製
実施例4の銀被覆エラストマー粒子35質量部と、1液硬化型液状シリコーンゴム(TSE3250、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社)100質量部を、遊星撹拌機を用いて混合した。得られた混合物を、100mm×100mmの矩形金型に配置し、30kg/cm2の圧力で、180℃、30分間プレス加硫を行うことで、縦、横及び厚さが100mm、100mm及び1mmであるシート状の柔軟導電材料を得た。この柔軟導電材料中の銀被覆エラストマー粒子の含有率の計算値は35体積%である。これを実施例4の柔軟導電材料とした。
【0080】
<実施例5>
(1) 銀被覆エラストマー粒子の作製
先ず、実施例2と同様の方法で、シリコーンレジン被覆シリコーンゴム粒子を作製した。この粒子を窒素中で260℃の温度に1時間保持して、シリコーンゴムから低分子シロキサンの大部分を除去するとともに、シリコーンレジン被覆シリコーンゴム粒子の弾性率を調整した。これ以降は、このシリコーンレジン被覆シリコーンゴム粒子を用いたことと、無電解銀めっき時における原料の割合、即ち銀被覆エラストマー粒子100質量部に対する銀の含有割合が50質量部となるように変更したこと以外は、実施例2と同様にして銀被覆エラストマー粒子を得た。また、表面処理については、実施例1と同様にして実施し、ステアリン酸を銀被覆エラストマー粒子表面に吸着させた。これを実施例5の銀被覆エラストマー粒子とした。
【0081】
(2) 柔軟導電材料の作製
実施例5の銀被覆エラストマー粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして柔軟導電材料を作製した。この柔軟導電材料中の銀被覆エラストマー粒子の含有率の計算値は40体積%である。
【0082】
<実施例6>
(1) 銀被覆エラストマー粒子の作製
平均粒径2μmのシリコーンゴム粒子を用いたこと以外は、実施例2と同様の方法で、シリコーンレジン被覆シリコーンゴム粒子を得た。この粒子を用いたことと、無電解銀めっき時における原料の割合、即ち銀被覆エラストマー粒子100質量部に対する銀の含有割合が77質量部となるように変更したこと以外は、実施例1と同様にして銀被覆エラストマー粒子を得た。また、表面処理については、実施例1と同様にして実施し、ステアリン酸を銀被覆エラストマー粒子表面に吸着させた。これを実施例6の銀被覆エラストマー粒子とした。
【0083】
(2) 柔軟導電材料の作製
実施例6の銀被覆エラストマー粒子を用い、この粒子の配合量を127質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして柔軟導電材料を作製した。この柔軟導電材料中の銀被覆エラストマー粒子の含有率の計算値は30体積%である。
【0084】
<実施例7>
(1) 銀被覆エラストマー粒子の作製
先ず、ウレタンゴムにより形成された平均粒径5μmのエラストマー粒子を用意した。この粒子を窒素中で200℃の温度に1時間保持して、エラストマー粒子の弾性率を調整した。この粒子を用いたことと、無電解銀めっき時における原料の割合、即ち銀被覆エラストマー粒子100質量部に対する銀の含有割合が70質量部となるように変更したこと以外は、実施例1と同様にして銀被覆エラストマー粒子を得た。また、表面処理については、実施例1と同様にして実施し、ステアリン酸を銀被覆エラストマー粒子表面に吸着させた。これを実施例7の銀被覆エラストマー粒子とした。
【0085】
(2) 柔軟導電材料の作製
実施例7の銀被覆エラストマー粒子を用い、この粒子の配合量を115質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして柔軟導電材料を作製した。この柔軟導電材料中の銀被覆エラストマー粒子の含有率の計算値は40体積%である。
【0086】
<比較例1>
(1) 銀被覆エラストマー粒子の作製
先ず、シリコーンゴムにより形成された平均粒径5μmのエラストマー粒子を用意した。このエラストマー粒子に対して、低分子シロキサン除去と弾性率調整のための窒素中の焼成を実施しなかったこと以外は、実施例5と同様にして銀被覆エラストマー粒子を得た。これを比較例1の銀被覆エラストマー粒子とした。
【0087】
(2) 柔軟導電材料の作製
比較例1の銀被覆エラストマー粒子を用いたこと以外は、実施例5と同様にして柔軟導電材料を作製した。この柔軟導電材料中の銀被覆エラストマー粒子の含有率の計算値は40体積%である。
【0088】
<比較例2>
(1) 銀被覆エラストマー粒子の作製
先ず、シリコーンゴムにより形成された平均粒径5μmのエラストマー粒子を用意した。この粒子10質量部と、ヒュームドシリカ粒子(平均一次粒子径:50nm、日本アエロジル株式会社製、AEROSIL 50)3質量部とを、ハイブリダイゼーション装置(株式会社奈良機械製作所製、NHS-0型)を用いて機械混練して、シリコーンゴム粒子の表面にシリカ粒子を緻密に埋め込むことにより、表面がシリカ粒子の凝集体からなる中間被覆層で被覆されたシリカ被覆シリコーンゴム粒子を得た。次いで、シリカ被覆シリコーンゴム粒子を、電鋳篩を用いて分級して、シリコーンゴム粒子の被覆に使われなかったヒュームドシリカ粒子を取り除いた。これ以降は、このシリカ被覆シリコーンゴム粒子を用いたことと、無電解銀めっき時における原料の割合、即ち銀被覆エラストマー粒子100質量部に対する銀の含有割合が82質量部となるように変更したこと以外は、実施例1と同様にして銀被覆エラストマー粒子を得た。また、表面処理についても、実施例1と同様にして実施し、ステアリン酸を銀被覆エラストマー粒子表面に吸着させた。これを比較例2の銀被覆エラストマー粒子とした。
【0089】
(2) 柔軟導電材料の作製
比較例2の銀被覆エラストマー粒子を用い、配合量を150質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして柔軟導電材料を作製した。この柔軟導電材料中の銀被覆エラストマー粒子の含有率の計算値は40体積%である。
【0090】
<比較試験1及び評価>
実施例1~7及び比較例1~2の銀被覆エラストマー粒子を50個ずつ用意し、これらの10%圧縮弾性率をそれぞれ求めた。10%圧縮弾性率は次の方法で求めた。先ず、微小圧縮試験機(ピコデンターHM500:フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて、円柱(直径50μm、ダイヤモンド製)の平面圧子により、荷重変位速度を0.05mN/sとし、室温(25℃)で銀被覆エラストマー粒子を10%圧縮した。次に、50%圧縮弾性率を次の式(1)から算出した。
10%圧縮弾性率[MPa]=3F/(2S3R)1/2 …………式(1)
ここで、式(1)において、Fは銀被覆エラストマー粒子が10%圧縮されたときの荷重(N)であり、Sは銀被覆エラストマー粒子が10%圧縮されたときの変位(mm)であり、Rは圧縮前の銀被覆エラストマー粒子の半径(mm)である。更に、100個の銀被覆エラストマー粒子の10%圧縮弾性率の測定し算出して、これらの算術平均値を銀被覆エラストマー粒子の10%圧縮弾性率とした。その結果を表1に示す。
【0091】
また、低分子シロキサンの定量は、以下のように実施した。実施例1~7及び比較例1~2の各銀被覆エラストマー粒子10mgをマイクロ天秤で計量し、容器内に充填した。この容器内をHeガスで満たし、260℃、10分間の条件で加熱し、低分子シロキサンをガス成分として発生させた。このガス成分をクライオトラップを用いて冷却濃縮した後に、熱分解ガスクロマトグラフィー(PY-2010 iD、フロンティア・ラボ社製)及びガスクロマトグラフィー(GC/MS-QP2010 plus、島津製作所製)を用いてクロマトグラフ分析を行った。クロマトグラフ分析では、低分子シロキサンの一つである、D5(デカメチルシクロペンタシロキサン)を基準物質として検量線を作製し、三量体(D3:ヘキサメチルシクトトリシロキサン)から十量体(D10:エイコサメチルシクロデカシロキサン)までの化合物をそれぞれ定量し、それらの合計量を低分子シロキサンの検出量とした。この検出量から銀被覆エラストマー粒子に含まれる低分子シロキサンの含有率を算出した。なお、本発明では低分子シロキサンとは環状シロキサンのうち、三量体(D3:ヘキサメチルシクトトリシロキサン)から十量体(D10:エイコサメチルシクロデカシロキサン)までの化合物のことを指す。
【0092】
実施例1~7及び比較例1~2の柔軟導電材料を5個ずつ用意し、これらの体積抵抗率及び貯蔵弾性率をそれぞれ測定した。柔軟導電材料の体積抵抗率は、Loresta-GP MCP-T610(三菱化学アナリテック社製)により測定した。そして、5個の柔軟導電材料の体積抵抗率の算術平均値を柔軟導電材料の体積抵抗率とした。また、柔軟導電材料の貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置(RSA-1、TAインストルメンツ社製)により周波数1Hz、20℃~200℃の範囲で測定を実施し、25℃での値をその柔軟導電材料の貯蔵弾性率とした。その結果を表2に示す。なお、表1のエラストマー粒子の種類の欄において、SRはシリコーンゴムを示し、SR-SRはシリコーンレジン被覆シリコーンゴムを示し、Si-SRはシリカ被覆シリコーンゴムを示し、URはウレタンゴムを示す。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
表1及び表2から明らかなように、10%圧縮弾性率が40MPaと最適な範囲の50MPa~800MPaを下回った比較例1の銀被覆エラストマー粒子を用いた柔軟導電材料では、この柔軟導電材料の貯蔵弾性率が40MPaと小さくなり、十分な柔軟性が得られたけれども、柔軟導電材料の体積抵抗率が2×10-2Ω・cmと大きくなり、十分な導電性能を得ることができなかった。これは、銀被覆エラストマー粒子とエラストマーバインダの混練時に、銀被覆エラストマー粒子の銀被膜が圧壊したことで、柔軟導電材料中の導電パスが好適に形成されなかったことによるものと考えられる。
【0096】
また、10%圧縮弾性率が820MPaと最適な範囲の50MPa~800MPaを上回った比較例2の銀被覆エラストマー粒子を用いた柔軟導電材料では、この柔軟導電材料の体積抵抗率が5×10-4Ω・cmと小さくなり、十分な導電性能が得られたけれども、柔軟導電材料の貯蔵弾性率が120MPaと大きくなり、十分な柔軟性を得ることができなかった。
【0097】
これらに対し、銀被覆エラストマー粒子の10%圧縮弾性率が50~800MPaと適切な範囲内に制御された実施例1~7の銀被覆エラストマー粒子を用いた柔軟導電材料では、この柔軟導電材料の体積抵抗率が4×10-4Ω・cm~9×10-4Ω・cmと小さくなり、十分な導電性能を得ることができ、また柔軟導電材料の貯蔵弾性率が30MPa~95MPaと小さくなり、十分な柔軟性を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の銀被覆エラストマー粒子は、トランスデューサ、コネクタ、スイッチ接点等の電子部品への利用を目的とした柔軟導電材料や、配線、ダイボンディング、電極形成等の導電膜への利用を目的とした導電ペーストに利用できる。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 平均粒径が0.5μm~60μmのシリコーンゴム製のエラストマー粒子を窒素中で150℃~350℃の温度に0.5時間~10時間保持して前記エラストマー粒子から低分子シロキサンを除去する工程と、
(b) 前記低分子シロキサンが除去されたエラストマー粒子の表面を活性化する工程と、
(c) 前記表面が活性化されたエラストマー粒子の表面に触媒化処理を行う工程と、
(d) 前記触媒化処理されたエラストマー粒子の表面に還元剤を用いて無電解銀めっきを行って銀を主成分とする金属層を形成して銀被覆エラストマー粒子を得る工程と
を含む10%圧縮弾性率が50MPa~800MPaの範囲内に制御された銀被覆エラストマー粒子を製造する方法であって、
前記エラストマー粒子から低分子シロキサンを除去する工程(a)と前記エラストマー粒子の表面を活性化する工程(b)の間に、ケイ素又はケイ素化合物からなる中間被覆層を前記エラストマー粒子の表面に形成する工程を含むことを特徴とする銀被覆エラストマー粒子の製造方法。
【請求項2】
前記エラストマー粒子の表面を活性化する工程(b)が、酸化剤、酸溶液、アルカリ溶液、又はこれらの混合液に前記エラストマー粒子を入れて撹拌した後に、水洗して、ろ過する湿式法により活性化するか、或いは前記エラストマー粒子を真空プラズマ処理、大気プラズマ処理、又はオゾン処理の乾式法により活性化する請求項1記載の銀被覆エラストマー粒子の製造方法。
【請求項3】
前記エラストマー粒子の表面に触媒化処理を行う工程(c)が、前記エラストマー粒子の表面に錫吸着層を設ける処理を行うか、又は前記エラストマー粒子の表面にパラジウム触媒層を設ける処理を行う請求項1記載の銀被覆エラストマー粒子の製造方法。
【請求項4】
前記中間被覆層を前記触媒化処理されたエラストマー粒子の表面に形成する工程が、前記エラストマー粒子と微細なケイ素粒子やケイ酸ガラス粒子とを混合してエラストマー粒子の表面にケイ素粒子やケイ酸ガラス粒子を付着させるか、或いは前記エラストマー粒子を水に分散させ正ケイ酸エチルやアルコキシシランを添加し加水分解することにより行う請求項記載の銀被覆エラストマー粒子の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明の第1の観点は、(a) 平均粒径が0.5μm~60μmのシリコーンゴム製のエラストマー粒子を窒素中で150℃~350℃の温度に0.5時間~10時間保持して前記エラストマー粒子から低分子シロキサンを除去する工程と、(b) 前記低分子シロキサンが除去されたエラストマー粒子の表面を活性化する工程と、(c) 前記表面が活性化されたエラストマー粒子の表面に触媒化処理を行う工程と、(d) 前記触媒化処理されたエラストマー粒子の表面に還元剤を用いて無電解銀めっきを行って銀を主成分とする金属層を形成して銀被覆エラストマー粒子を得る工程とを含む10%圧縮弾性率が50MPa~800MPaの範囲内に制御された銀被覆エラストマー粒子を製造する方法であって、前記エラストマー粒子から低分子シロキサンを除去する工程(a)と前記エラストマー粒子の表面を活性化する工程(b)の間に、ケイ素又はケイ素化合物からなる中間被覆層を前記エラストマー粒子の表面に形成する工程を含むことを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明の第の観点は、第1の観点に基づく発明であって、前記エラストマー粒子の表面を活性化する工程(b)が、酸化剤、酸溶液、アルカリ溶液、又はこれらの混合液に前記エラストマー粒子を入れて撹拌した後に、水洗して、ろ過する湿式法により活性化するか、或いは前記エラストマー粒子を真空プラズマ処理、大気プラズマ処理、又はオゾン処理の乾式法により活性化することを特徴とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
本発明の第の観点は、第1の観点に基づく発明であって、前記エラストマー粒子の表面に触媒化処理を行う工程(c)が、前記エラストマー粒子の表面に錫吸着層を設ける処理を行うか、又は前記エラストマー粒子の表面にパラジウム触媒層を設ける処理を行うことである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
本発明の第の観点は、第の観点に基づく発明であって、前記中間被覆層を前記触媒化処理されたエラストマー粒子の表面に形成する工程が、前記エラストマー粒子と微細なケイ素粒子やケイ酸ガラス粒子とを混合してエラストマー粒子の表面にケイ素粒子やケイ酸ガラス粒子を付着させるか、或いは前記エラストマー粒子を水に分散させ正ケイ酸エチルやアルコキシシランを添加し加水分解することにより行うことである。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
また、本発明の第の観点の銀被覆エラストマー粒子では、エラストマー粒子と金属層との間に、ケイ素又はケイ素化合物からなる中間被覆層を設けたので、この中間被覆層によりエラストマー粒子の凝集を抑制できる。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0065】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。以下に示す実施例1~3及び実施例5~7は実施例ではなく、参考例である。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】手続補正書
【補正対象項目名】手続補正16
【補正方法】削除
【補正の内容】