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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163050
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】院内肺炎を予防または治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20221018BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20221018BHJP
   C07K 16/46 20060101ALN20221018BHJP
   C07K 16/14 20060101ALN20221018BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20221018BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20221018BHJP
【FI】
A61K39/395 R
A61P31/04 ZNA
A61P11/00
A61P7/00
A61P19/08
A61P19/02
A61P17/00 101
A61P17/02
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K47/68
A61K39/395 D
C07K16/46
C07K16/14
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022115219
(22)【出願日】2022-07-20
(62)【分割の表示】P 2018526715の分割
【原出願日】2016-11-28
(31)【優先権主張番号】62/260,935
(32)【優先日】2015-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508098350
【氏名又は名称】メドイミューン・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MedImmune Limited
【住所又は居所原語表記】Milstein Building,Granta Park,Cambridge CB21 6GH,England
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ハサン・ジャフリ
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ・ディジャンドメニコ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・マッカーシー
(72)【発明者】
【氏名】シャン-チン・ユー
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・ケイ・ストーバー
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ビショップ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】集中治療室(ICU)内等において緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の院内感染に伴って引き起こされる疾患を予防又は治療する医薬組成物を提供する。
【解決手段】緑膿菌のPsl及びPcrVに特異的に結合する二重特異的抗体を含む、感受性ヒト対象における緑膿菌感染を予防又は治療するための医薬組成物とする。前記二重特異性抗体は相補性決定領域(CDR)に係る特定の配列を有し、約500~3000mgの前記二重特異的抗体量が前記対象に投与される。前記緑膿菌感染は肺炎、菌血症、骨感染、関節感染、皮膚感染、火傷感染、創傷感染であること、又は院内感染であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感受性ヒト対象における院内感染を予防または治療する方法であって、約500~約3000mgの、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)PslおよびPcrVに特異的に結合する二重特異的抗体を前記対象に投与することと、投与日から21日間にわたり症状について前記対象をモニタリングすることとを含み、投与21日後、前記対象は、無症状のままであるか、またはプラセボを投与された感受性ヒト対象のコホートに対して重症度が低い症状を呈し、
前記二重特異的抗体は、相補性決定領域(CDR):HCDR1-Psl、HCDR2-Psl、HCDR3-Psl、LCDR1-Psl、LCDR2-Psl、およびLCDR3-Pslのセットであって、HCDR1-Pslは、配列番号10のアミノ酸配列を有し、HCDR2-Pslは、配列番号11のアミノ酸配列を有し、HCDR3-Pslは、配列番号12のアミノ酸配列を有し、LCDR1-Pslは、配列番号13のアミノ酸配列を有し、LCDR2-Pslは、配列番号14のアミノ酸配列を有し、およびLCDR3-Pslは、配列番号15のアミノ酸配列を有する、セットを含む緑膿菌(P.aeruginosa)Pslに特異的に結合する結合ドメインと、CDR:HCDR1-PcrV、HCDR2-PcrV、HCDR3-PcrV、LCDR1-PcrV、LCDR2-PcrV、およびLCDR3-PcrVのセットであって、HCDR1-PcrVは、配列番号2のアミノ酸配列を有し、HCDR2-PcrVは、配列番号3のアミノ酸配列を有し、HCDR3-PcrVは、配列番号4のアミノ酸配列を有し、LCDR1-PcrVは、配列番号6のアミノ酸配列を有し、LCDR2-PcrVは、配列番号7のアミノ酸配列を有し、およびLCDR3-PcrVは、配列番号8のアミノ酸配列を有する、セットを含む緑膿菌(P.aeruginosa)PcrVに特異的に結合する結合ドメインとを含む、方法。
【請求項2】
前記院内感染は、肺炎、菌血症、骨感染、関節感染、皮膚感染、火傷感染、創傷感染、またはそれらの任意の組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記院内感染は、肺炎である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記肺炎は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)によって引き起こされる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
約1500mgまたは約3000mgの前記二重特異的抗体が投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
CH1は、配列番号16のアミノ酸配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
L1およびL2は、同一であるかまたは異なっており、独立して、(a)[GGGGS]n(式中、nは、0、1、2、3、4、または5である)(配列番号23)、(b)[GGGG]n(式中、nは、0、1、2、3、4、または5である)(配列番号24)、または(a)および(b)の組合せを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
H1は、アミノ酸配列EPKSC(配列番号17)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
H2は、アミノ酸配列DKTHTCPPCP(配列番号18)を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
CH2-CH3は、配列番号19のアミノ酸配列を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
CH2-CH3は、配列番号20のアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記重鎖は、配列番号21のアミノ酸配列を含み、および前記軽鎖は、配列番号22のアミノ酸配列を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記約500~約3000mgの前記二重特異的抗体は、単回静脈内注入として投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記投与時において、前記対象は、気道中で緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)によってコロニー形成される、請求項1~13[0009]のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記対象は、投与時に肺炎症状を有さない、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記対象は、下気道中で緑膿菌(P.aeruginosa)によってコロニー形成される、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記対象の気道は、前記二重特異的抗体の投与の1、2、3、または4日前に緑膿菌(P.aeruginosa)によってコロニー形成される、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
コロニー形成は、前記二重特異的抗体の投与前の36時間以内における気管吸引液中の緑膿菌(P.aeruginosa)の検出によって計測される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記対象の気道は、前記二重特異的抗体の投与時に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)によってさらにコロニー形成される、請求項14~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象は、入院予定であるか、現在入院中であるか、最近入院していたか、人工呼吸器を装着しているか、またはそれらの組合せである、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象は、集中治療室(ICU)内で入院している、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記対象は、挿管されている、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記対象は、気管内または経鼻気管チューブを介して人工呼吸されている、請求項20または21に記載の方法。
【請求項24】
前記投与は、人工呼吸中の肺炎のリスクを低減させる、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記投与は、人工呼吸がもはや要求されなくなった後の肺炎のリスクを低減させる、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
1500mgの前記二重特異的抗体が投与される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
3000mgの前記二重特異的抗体が投与される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記対象は、前記二重特異的抗体の投与前に前記対象がコロニー形成される緑膿菌(P.aeruginosa)株に対して活性な抗生物質を受けていない、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
抗生物質を前記対象に投与することをさらに含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記対象がコロニー形成される前記緑膿菌(P.aeruginosa)株は、前記抗生物質に感受性である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記対象がコロニー形成される前記緑膿菌(P.aeruginosa)株は、前記抗生物質に耐性であるかまたは部分的に耐性である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記抗生物質は、前記二重特異的抗体の投与前に、前記二重特異的抗体の投与と同時に、前記二重特異的抗体の投与後に、またはそれらの任意の組合せで投与される、請求項29~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記対象は、前記二重特異的抗体の投与の21日後まで少なくとも約1μg/mlの前記二重特異的抗体の血清濃度を維持する、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記対象は、前記二重特異的抗体の投与の21日後まで少なくとも5.3μg/mlの前記二重特異的抗体の血清濃度を維持する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記対象は、前記二重特異的抗体の投与の約7日後、約21日後、または約28日後まで少なくとも1.7μg/mLの前記二重特異的抗体の血清濃度を維持する、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出され、参照により全体として本明細書に組み込まれる配列表を含有する。前記ASCIIコピーは、2016年11月17日に作成され、PSEUD-200-WO-PCT_SL.txtと命名され、サイズが22,415バイトである。
【背景技術】
【0002】
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(P.aeruginosa)は重要な院内病原菌であり、肺炎はその最も懸念される兆候の1つである。人工呼吸は、緑膿菌(P.aeruginosa)によって引き起こされる院内肺炎について最も重要なリスク因子であり、換気の継続時間とともに累積リスクが増加する(非特許文献1)。ある研究において、緑膿菌(P.aeruginosa)は、非人工呼吸患者により集中治療室(ICU)内で感染された微生物学的に確定診断された肺炎の症例の13%を占め、人工呼吸患者の症例の24%を占めた(非特許文献2)。世界的な疫学的データの観点で、緑膿菌(P.aeruginosa)は、人工呼吸器関連肺炎(VAP、非特許文献3)の約27%を引き起こした。緑膿菌(P.aeruginosa)による気道コロニー形成は、別の重要なリスク因子である(非特許文献4)。抗生物質の存在にかかわらず、緑膿菌(P.aeruginosa)に起因する肺炎、特にVAPは、顕著な死亡率および罹患率、ICUおよび入院の期間の増加、ならびに多大な経済的負担を伴うままである。
【0003】
ICUの患者は重度の肺炎感染を発症するリスクがあり、人工呼吸はICUにおける肺炎についてのリスクを増加させる。緑膿菌(P.aeruginosa)は、入院(55.4日間対7.2日間)、ICU入院(14.8日間対1.1日間)、および人工呼吸のより大きい必要性(62.3%対7.4%)、ならびに患者の死亡率(20.2%対3.1%)の増加に有意に寄与するICU肺炎の主因である。(非特許文献5)。さらに、多剤耐性により、緑膿菌(P.aeruginosa)感染の管理が複雑になっている。制限された抗菌治療選択で、新たなアプローチの考慮、例えば、緑膿菌(P.aeruginosa)の予防のための免疫学的予防は、重要で満たされていない必要性に対処する。
【0004】
MEDI3902は、緑膿菌(P.aeruginosa)の表面上のPcrVタンパク質およびPslエキソポリサッカライドの両方に選択的に結合する二価二重特異的ヒト免疫グロブリンG1(IgG1)カッパモノクローナル抗体(mAb)である。薬理学的研究は、MEDI3902が3つの区別される作用機序:緑膿菌(P.aeruginosa)の抗細胞毒性、オプソニン食作用および傷害作用、ならびに細胞へのその付着阻害を媒介し得ることを実証している。インタクトな緑膿菌(P.aeruginosa)上のPcrVへの結合は、宿主細胞に対する3型分泌(T3S)インジェクチソーム媒介細胞毒性および損傷を妨害する。Pslへの結合は、宿主エフェクター細胞による緑膿菌(P.aeruginosa)のオプソニン食作用傷害作用(opsonophagocytic killing)(OPK)を媒介し、宿主上皮細胞への緑膿菌(P.aeruginosa)の付着を阻害する(非特許文献6)。
【0005】
MEDI3902は、緑膿菌(P.aeruginosa)ネズミ感染モデルにおいて高度に保護性であった。例えば、PCT公開の特許文献1、PCT公開の特許文献2、PCT出願の特許文献3、およびPCT出願の特許文献4を参照されたい。さらに、MEDI3902は、緑膿菌(P.aeruginosa)肺炎に対する抗生物質療法と、抗生物質感受性および抗生物質耐性緑膿菌(P.aeruginosa)の両方に対する区別される抗生物質クラスとの相乗的向上を提供した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2013/070615号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2014/074528号パンフレット
【特許文献3】PCT/米国特許出願公開第2015/029063号明細書
【特許文献4】PCT/米国特許出願公開第2015/036576号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Zahar,JR,et al.Crit Care Med.2009 Sep;37(9):2545-51
【非特許文献2】Esperatti et al,Am J Respir Care Med.2010 Dec 15;182(12):1533-9
【非特許文献3】Jones,Clin Infect Dis.2010 Aug 1;51 Suppl 1:S81-7
【非特許文献4】Rehm and Kollef,Poster #367.43rd Critical Care Congress,Society of Critical Care Medicine(SCCM);9-13 January 2014,San Francisco CA,USA
【非特許文献5】Kyaw MH,et al.J Infect Dis.(2005)192(3):377-386
【非特許文献6】DiGiandomenico et al,J Exp Med.2012 Jul 2:209(7):1273-87
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、感受性ヒト対象における院内感染を予防または治療する方法であって、約500~約3000mg、例えば、約500、600、700、750、1000、1500または約3000mgの、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)PslおよびPcrVに特異的に結合する二重特異的抗体(例えば、MEDI3902)を対象に投与することと、投与日から21日間にわたり症状について対象をモニタリングすることとを含む方法を提供する。本方法によれば、投与21日後、対象は、無症状であり得、またはプラセボを投与された感受性ヒト対象のコホートに対して重症度が低い症状を呈し得る。ある態様において、院内感染は、肺炎、例えば、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)肺炎、菌血症、骨感染、関節感染、皮膚感染、火傷感染、創傷感染、またはそれらの任意の組合せであり得る。
【0009】
本開示は、感受性ヒト対象における肺炎、例えば、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)肺炎を予防または治療する方法であって、約500~約3000mg、例えば、約500、600、700、750、1000、1500または約3000mgの、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)PslおよびPcrVに特異的に結合する二重特異的抗体(例えば、MEDI3902)を対象に投与することと、投与日から21日間にわたり肺炎症状について対象をモニタリングすることとを含む方法をさらに提供する。本方法によれば、少なくとも投与21日後、対象は肺炎について無症状であり得、またはプラセボを投与された感受性ヒト対象のコホートに対して重症度が低い症状を呈し得る。
【0010】
一部の実施形態において、二重特異的抗体(例えば、MEDI3902)の血清標的レベルは、少なくとも約1μg/mL、少なくとも約2μg/mL、少なくとも約3μg/mL、少なくとも約4μg/mL、または少なくとも約5μg/mLである。他の実施形態において、二重特異的抗体(例えば、MEDI3902)の血清標的レベルは、少なくとも約1.7μg/mLである。さらなる実施形態において、二重特異的抗体(例えば、MEDI3902)の血清標的レベルは、少なくとも約5.3μg/mLである。一部の実施形態において、投与は、二重特異的抗体の投与21日後まで少なくとも1μg/mL、少なくとも約2μg/mL、少なくとも約3μg/mL、少なくとも約4μg/mL、または少なくとも約5μg/mLの二重特異的抗体(例えば、MEDI3902)の血清レベルを産生する。他の実施形態において、投与は、二重特異的抗体の投与21日後まで少なくとも1.7μg/mLの二重特異的抗体(例えば、MEDI3902)の血清レベルを産生する。さらなる実施形態において、二重特異的抗体(例えば、MEDI3902)の血清標的レベルは、少なくとも約5.3μg/mLである。
【0011】
一部の実施形態において、感受性ヒト対象における院内感染を予防または治療する方法は、相補性決定領域(CDR):HCDR1-Psl、HCDR2-Psl、HCDR3-Psl、LCDR1-Psl、LCDR2-Psl、およびLCDR3-Pslのセットであって、HCDR1-Pslは、配列番号10のアミノ酸配列を有し、HCDR2-Pslは、配列番号11のアミノ酸配列を有し、HCDR3-Pslは、配列番号12のアミノ酸配列を有し、LCDR1-Pslは、配列番号13のアミノ酸配列を有し、LCDR2-Pslは、配列番号14のアミノ酸配列を有し、およびLCDR3-Pslは、配列番号15のアミノ酸配列を有する、セットを含む緑膿菌(P.aeruginosa)Pslに特異的に結合する結合ドメインと、CDR:HCDR1-PcrV、HCDR2-PcrV、HCDR3-PcrV、LCDR1-PcrV、LCDR2-PcrV、およびLCDR3-PcrVのセットであって、HCDR1-PcrVは、配列番号2のアミノ酸配列を有し、HCDR2-PcrVは、配列番号3のアミノ酸配列を有し、HCDR3-PcrVは、配列番号4のアミノ酸配列を有し、LCDR1-PcrVは、配列番号6のアミノ酸配列を有し、LCDR2-PcrVは、配列番号7のアミノ酸配列を有し、およびLCDR3-PcrVは、配列番号8のアミノ酸配列を有する、セットを含む緑膿菌(P.aeruginosa)PcrVに特異的に結合する結合ドメインとを含む二重特異的抗体を投与することを含む。ある態様において、二重特異的抗体は、重鎖および軽鎖を有する。重鎖は、式VH-CH1-H1-L1-S-L2-H2-CH2-CH3(式中、VHは、配列番号1のアミノ酸配列を含む抗緑膿菌(P.aeruginosa)PcrV重鎖可変ドメインであり、CH1は、重鎖定常領域ドメイン-1であり、H1は、第1の重鎖ヒンジ領域断片であり、L1は、第1のリンカーであり、Sは、配列番号9のアミノ酸配列を含む抗緑膿菌(P.aeruginosa)Psl ScFv分子であり、L2は、第2のリンカーであり、H2は、第2の重鎖ヒンジ領域断片であり、CH2は、重鎖定常領域ドメイン-2であり、CH3は、重鎖定常領域ドメイン-3である)を含む。軽鎖は、式VL-CL(式中、VLは、配列番号5のアミノ酸配列を含む抗緑膿菌(P.aeruginosa)PcrV軽鎖可変ドメインであり、CLは、抗体軽鎖カッパ定常領域または抗体軽鎖ラムダ領域である)を含む。ある態様において、CH1は、配列番号16のアミノ酸配列を含み得る。ある態様において、L1およびL2は、同一でも異なっていてもよく、独立して、(a)[GGGGS]n(式中、nは、0、1、2、3、4、または5である)(配列番号23)、(b)[GGGG]n(式中、nは、0、1、2、3、4、または5である)(配列番号24)、または(a)および(b)の組合せを含み得る。ある態様において、H1は、アミノ酸配列EPKSC(配列番号17)を含み得る。ある態様において、H2は、アミノ酸配列DKTHTCPPCP(配列番号18)を含み得る。ある態様において、CH2-CH3は、配列番号19のアミノ酸配列を含み得る。ある態様において、CH2-CH3は、配列番号20のアミノ酸配列を含み得る。ある態様において、二重特異的抗体の重鎖は、配列番号21のアミノ酸配列を含み得、および軽鎖は、配列番号22のアミノ酸配列を含む。
【0012】
本明細書において提供される方法によれば、二重特異的抗体(例えば、MEDI3902)は、単回静脈(IV)注入として投与することができる。
【0013】
本明細書において提供される方法によれば、二重特異的抗体の投与時において、対象は、気道、例えば、下気道中で緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)によってコロニー形成されてよい。ある態様において、対象は、投与時に肺炎症状を有さない。ある態様において、対象の気道は、二重特異的抗体の投与の1、2、3、または4日前に緑膿菌(P.aeruginosa)によってコロニー形成される。コロニー形成は、例えば、二重特異的抗体の投与前の36時間以内における気管吸引液中の緑膿菌(P.aeruginosa)の検出によって計測することができる。ある態様において、対象の気道は、二重特異的抗体の投与時に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)によってさらにコロニー形成されてよい。
【0014】
ある態様において、対象は、入院予定であるか、例えば、集中治療室(ICU)内で現在入院しているか、最近入院していたか、人工呼吸器を装着しており、例えば、気管内チューブもしくは経鼻気管チューブが挿管されているかもしくはそれらを介して換気しているか、またはそれらの任意の組合せである。本明細書において提供される方法によれば、二重特異的抗体の投与は、肺炎のリスクを低減させ得る一方、人工呼吸中または人工呼吸後にもはや要求されない。
【0015】
ある態様において、肺炎の微生物学的確定診断としては、培養による緑膿菌(P.aeruginosa)について陽性の呼吸器検体、緑膿菌(P.aeruginosa)について陽性の血液培養物、緑膿菌(P.aeruginosa)について陽性の胸膜液吸引物もしくは肺組織培養物、またはそれらの任意の組合せを挙げることができる。
【0016】
ある態様において、対象は、二重特異的抗体(例えば、MEDI3902)の投与前に対象がコロニー形成される緑膿菌(P.aeruginosa)株に対して活性とみなされる抗生物質を受けていない。別の態様において、本方法は、抗生物質を対象に投与することをさらに含み得る。ある態様において、対象がコロニー形成される緑膿菌(P.aeruginosa)株は、抗生物質に感受性であり得、または抗生物質に耐性であるかもしくは部分的に耐性であり得る。抗生物質を投与する場合、それは、二重特異的抗体の投与前に、二重特異的抗体の投与と同時に、二重特異的抗体の投与後に、またはそれらの任意の組合せで投与することができる。
【0017】
ある態様において、本方法は、抗ヒスタミン剤を対象に投与することをさらに含み得る。抗ヒスタミン剤を投与する場合、それは、二重特異的抗体の投与前に、二重特異的抗体の投与と同時に、二重特異的抗体の投与後に、またはそれらの任意の組合せで投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第IIb相治験プロトコルのフロー図を提供する。ADA=抗薬物抗体、IV=静脈内、N=対象数、PK=薬物動態。有効性は、投与21日後まで評価し(22日目)、安全性、PKおよびADAは、投与49日後まで評価する(50日目)。試料サイズは、対象の約50%を登録し、全集団における事象率および/または損耗率の盲検評価に基づき投与21日後まで追跡した後に変更することができる。
図2】細菌病原体に指向されるモノクローナル抗体(例えば、MEDI4893)についてICU患者におけるクリアランス増加の観察に基づき、MEDI3902の単回投与後に人工呼吸されているICU患者について薬物動態をモデリングした。(A)1500mgのMEDI3902の単回投与は、約1μg/mLにおける血清曝露を>90%の対象において≧21日間維持すると予測される。(B)3000mgのMEDI3902の単回投与は、約1.7μg/mLにおける血清曝露を>90%の対象において≧21日間維持すると予測される。
図3】6206急性肺炎モデル系におけるMEDI3902処理マウスのインビボ生存試験である。マウス(n=6)をアイソタイプ対照IgG(陰性対照、0.75mg/kg)またはMEDI3902により3つの用量:1mg/kg、0.5mg/kg、または0.2mg/kgにおいて処理した。処理24時間後、全てのマウスに約2×10CFU/動物の緑膿菌(P.aeruginosa)株6206を感染させた。全てのマウスを168時間モニタリングした。対照マウスの全ては、感染後約120時間までに感染により死亡した。MEDI3902処理動物の全ては生存した。結果をカプランマイヤー生存曲線として表す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
略語
本開示において使用される略語を表1に列記する。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
定義
用語「1つの(a)」または「1つの(an)」実体は、その実体の1つ以上を指すことに留意すべきであり、例えば、「結合分子」は、1つ以上の結合分子を表すと理解される。したがって、用語「1つの(a)」(または「1つの(an)」)、「1つ以上」および「少なくとも1つ」は、本明細書において互換的に使用することができる。
【0023】
さらに、本明細書において使用される「および/または」は、2つの具体的な特徴部または構成要素の、その他方を伴うまたは伴わないそれぞれの具体的な開示として解釈すべきである。したがって、本明細書における「Aおよび/またはB」のような語句において使用される用語および/または」は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)、および「B」(単独)を含むものとする。同様に、「A、B、および/またはC」のような語句において使用される用語「および/または」は、以下の態様:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);およびC(単独)のそれぞれを包含するものとする。
【0024】
特に定義のない限り、本明細書において使用される技術および科学用語は、本開示が関連する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同一の意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press;およびOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressは、本開示において使用される用語の多くの一般的辞書を当業者に提供する。
【0025】
単位、接頭辞、および記号は、それらの国際単位(SI)により承認された形式で示される。数値範囲は、その範囲を定義する数字を示す。特に示されない限り、アミノ酸配列は、左から右へアミノからカルボキシ方向で記述される。本明細書において提供される見出しは、本明細書を参照することにより全体として把握され得る種々の態様も本開示の態様も限定するものではない。したがって、直後に定義される用語は、本明細書を参照することにより全体としてより完全に定義される。
【0026】
ある結合分子、またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体が本明細書に開示される。特に全長サイズ抗体、例えば天然に生じる抗体を指さない場合、用語「結合分子」は、全長サイズ抗体およびそのような抗体の抗原結合断片、バリアント、アナログ、または誘導体、例えば、天然に生じる抗体または免疫グロブリン分子またはエンジニアリングされた抗体分子または抗体分子と同様の様式で抗原に結合する断片を包含する。
【0027】
本明細書において使用される用語「結合分子」は、最も広い意味で、抗原決定基に特異的に結合する分子を指す。本明細書においてさらに記載される結合分子は、1つ以上の「結合ドメイン」を含み得る。本明細書において使用される「結合ドメイン」は、所与の抗原決定基、またはエピトープに特異的に結合し得る二次元もしくは三次元ポリペプチド構造である。結合分子の非限定的な例は、異なる抗原決定基またはエピトープに特異的に結合する少なくとも2つの区別される結合ドメインを含む二重特異的抗体またはその断片である。ある態様において、本明細書において提供される二重特異的抗体は、第1のエピトープに結合する第1の結合ドメイン、および第2のエピトープに結合する第2の結合ドメインを含むと記述することができる。
【0028】
用語「抗体」および「免疫グロブリン」は、本明細書において互換的に使用することができる。抗体(または本明細書に開示のその断片、バリアント、もしくは誘導体は、少なくとも重鎖の可変ドメインならびに少なくとも重鎖および軽鎖の可変ドメインを含む。脊椎動物系における基本的な免疫グロブリン構造は、比較的十分に理解されている。例えば、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988)を参照されたい。
【0029】
以下により詳細に考察されるとおり、用語「免疫グロブリン」は、生化学的に区別することができる種々の広いクラスのポリペプチドを含む。当業者は、重鎖がガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として分類され、それらは一部のサブクラス(例えば、γ1~γ4)を有することを認識する。抗体の「クラス」をIgG、IgM、IgA、IgG、またはIgEとしてそれぞれ決定するのはこの鎖の性質である。免疫グロブリンサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgAなどは、十分に特性決定されており、機能的特殊化を付与することが公知である。これらのクラスおよびアイソタイプのそれぞれの改変バージョンは、本開示に照らして当業者に容易に認識可能であり、したがって本開示の範囲内である。
【0030】
軽鎖は、カッパまたはラムダ(κ、λ)のいずれかに分類される。それぞれの重鎖クラスは、カッパまたはラムダ軽鎖と結合していてよい。一般に、軽鎖および重鎖は、互いに共有結合しており、免疫グロブリンがハイブリドーマ、B細胞または遺伝子エンジニアリングされた宿主細胞のいずれかにより生成された場合、2つの重鎖の「テール」部分が共有ジスルフィド結合または非共有結合により互いに結合している。重鎖において、アミノ酸配列は、Y形状のフォーク型末端におけるN末端からそれぞれの鎖の下方部におけるC末端に及ぶ。
【0031】
軽鎖および重鎖の両方は、構造および機能ホモロジーの領域に分割される。用語「定常」および「可変」は、機能的に使用される。これに関して、軽(VL)鎖および重(VH)鎖部分の両方の可変ドメインが抗原認識および特異性を決定することが認識される。逆に、軽鎖(CL)および重鎖(CH1、CH2またはCH3)の定常ドメインは、重要な生物学的特性、例えば、分泌、経胎盤移動、Fc受容体結合、補体結合などを付与する。慣習により、定常領域ドメインの番号付与は、それらが抗体の抗原結合部位またはアミノ末端からより遠くなるにつれて増加する。N末端部分は可変領域であり、C末端部分は定常領域であり、CH3およびCLドメインは、実際には、重鎖および軽鎖のカルボキシ末端をそれぞれ含む。
【0032】
上記のとおり、可変領域は、結合分子が抗原上のエピトープを選択的に認識し、それに特異的に結合することを可能とする。すなわち、結合分子、例えば、抗体のVLドメインおよびVHドメイン、または相補性決定領域(CDR)のサブセットは、組み合わさって3次元抗原結合部位を定義する可変領域を形成する。この4元結合分子構造は、Yのそれぞれのアームの末端に存在する抗原結合部位を形成する。より具体的には、抗原結合部位は、VHおよびVL鎖のそれぞれの3つのCDRにより定義される。
【0033】
天然に生じる抗体において、それぞれの抗原結合ドメイン中に存在する6つの「相補性決定領域」または「CDR」は、抗体が水性環境中でその3次元形状を取るため、抗原結合ドメインを形成するように特異的に位置しているアミノ酸の短い不連続配列である。抗原結合ドメイン中のアミノ酸の残部は、「フレームワーク」領域と称され、より小さい分子内変動性を示す。フレームワーク領域は、概して、β-シート立体構造を採用し、CDRは、このβ-シート構造を接続し、一部の場合、その一部を形成するループを形成する。したがって、フレームワーク領域は、鎖内非共有相互作用による正確な配向におけるCDRの位置決めを提供する足場を形成するように作用する。位置決めされたCDRにより形成された抗原結合ドメインは、免疫反応抗原上のエピトープに対する表面相補性を定義する。この相補性表面は、抗体のそのコグネートエピトープへの非共有結合を促進する。CDRおよびフレームワーク領域をそれぞれ含むアミノ酸は、任意の所与の重鎖または軽鎖可変領域について当業者により容易に同定することができる。それというのも、それらは既に定義されているためである(参照により全体として本明細書に組み込まれる“Sequences of Proteins of Immunological Interest,”Kabat,E.,et al.,U.S.Department of Health and Human Services,(1983);およびChothia and Lesk,J.Mol.Biol.,196:901-917(1987)を参照されたい)。
【0034】
抗体もしくは抗原結合断片、それらのバリアント、または誘導体としては、限定されるものではないが、モノクローナル、ヒト、ヒト化、またはキメラ抗体、単鎖Fv(scFv)、および多重特異的抗体、例えば、二重特異的抗体が挙げられる。scFv分子は、当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第5,892,019号明細書に記載されている。本開示により包含される免疫グロブリンまたは抗体分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスの免疫グロブリン分子のものであり得る。
【0035】
「特異的に結合する」は、一般に、結合分子、例えば、二重特異的抗体またはその断片、バリアント、もしくは誘導体が、抗原結合ドメインを介してエピトープに結合すること、および結合が抗原結合ドメインとエピトープとの間の一部の相補性を必要とすることを意味する。本明細書において提供される結合分子は、同一でも異なっていてもよく、同一のエピトープまたは2つ以上の異なるエピトープに結合し得る1、2、3、4つ以上の結合ドメインを含有し得る。この定義によれば、結合分子は、それがその抗原結合ドメインを介してランダムの無関連なエピトープに結合するよりも容易にそのエピトープに結合する場合、エピトープに「特異的に結合する」と言われる。用語「特異性」は、本明細書において、ある結合分子があるエピトープに結合する相対親和性を特定するために使用される。例えば、結合分子「A」は、所与のエピトープについて結合分子「B」よりも高い特異性を有するとみなすことができ、または結合分子「A」は、それが関連エピトープ「D」について有するよりも高い特異性でエピトープ「C」に結合すると言うことができる。
【0036】
単鎖抗体を含む抗体断片は、可変領域を単独でまたは以下のものの全部もしくは一部との組合せで含み得る:ヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメイン。可変領域とヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメインとの任意の組合せも含む抗原結合断片も含まれる。本明細書に開示の抗体またはその抗原結合断片は、任意の動物起源、例として鳥類および哺乳動物からのものであり得る。抗体は、ヒト、ネズミ、ロバ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ラマ、ウマ、またはニワトリ抗体であり得る。本明細書において使用される「ヒト」抗体には、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体が含まれ、下記のおよび例えばKucherlapati et al.による米国特許第5,939,598号明細書に記載のヒト免疫グロブリンライブラリーから、または1つもしくは複数のヒト免疫グロブリンについてトランスジェニックであり、内因性免疫グロブリンを発現しない動物から単離された抗体が含まれる。
【0037】
本明細書において使用される用語「軽鎖部分」には、免疫グロブリン軽鎖に由来するアミノ酸配列が含まれる。軽鎖部分は、VLまたはCLドメインの少なくとも1つを含む。
【0038】
本明細書において使用される用語「多重特異的抗体」または「二重特異的抗体」は、単一抗体分子内の2つ以上の異なる抗原またはエピトープに特異的な結合ドメインを有する抗体を指す。カノニカル抗体構造に加え、2つの結合特異的を有する他の分子を構築し得ることが認識される。二重特異的抗体による抗原結合は同時または連続的であり得ることがさらに認識される。トリオーマおよびハイブリッドハイブリドーマは、二重特異的抗体を分泌し得る細胞系の2つの例である。二重特異的抗体は、組換え手段により構築することもできる。(Stroehlein and Heiss,Future Oncol.6:1387-94(2010);Mabry and Snavely,IDrugs.13:543-9(2010))。
【0039】
本明細書において使用される用語「エンジニアリングされた抗体」は、重鎖および軽鎖のいずれかまたは両方の可変ドメインが、既知の特異性の抗体からの1つまたは複数のCDRの少なくとも部分的な置換により、ならびに必要により、部分的なフレームワーク領域置換および配列変化により変化した抗体を指す。CDRはフレームワーク領域が由来する抗体と同一のクラスまたはさらにはサブクラスの抗体に由来し得るが、CDRは異なるクラスの抗体、好ましくは、異なる種からの抗体に由来することが想定される。既知の特異性の非ヒト抗体からの1つまたは複数の「ドナー」CDRがヒト重鎖または軽鎖フレームワーク領域中にグラフトされたエンジニアリングされた抗体は、本明細書において「ヒト化抗体」と称される。CDRの全てをドナー可変領域からの完全なCDRにより置き換えてある可変ドメインの抗原結合能を別のものに移すことは必要でないことがある。むしろ、標的結合部位の活性を維持するために必要な残基を移すことのみが必要であることがある。例えば、米国特許第5,585,089号明細書、米国特許第5,693,761号明細書、米国特許第5,693,762号明細書、および米国特許第6,180,370号明細書に記載の説明を考慮すると、それは定型実験の実施により、または機能的エンジニアリングもしくはヒト化抗体を得るための試行錯誤試験により、当業者の能力の十分範囲内である。
【0040】
本明細書において使用される用語「治療する」または「治療」は、治療的治療を指し、目的は、感染、例えば、肺炎、菌血症、腹膜炎、敗血症、および/または膿瘍と臨床診断された対象における感染原因物質の細菌負荷を消散または低減させることである。「治療」は、治療を受けていない場合に予測される生存と比較して生存を延長させることも意味し得る。治療が必要とされる者としては、既に感染、病態、もしくは障害を有する者、および病態もしくは障害を有する傾向がある者、または例えば、細菌感染、例えば、緑膿菌(P.aeruginosa)感染に感受性の火傷患者もしくは免疫抑制患者において病態もしくは障害を予防すべき者が挙げられる。
【0041】
本明細書において使用される場合、用語「予防する」または「軽減する」は、目的が含む所望な生理学的変化、感染、または障害を予防または遅滞(縮減)させることである療法的治療および防止的または予防的措置の両方を指す。利益または所望の臨床結果には、限定されるものではないが、検出可能か検出不能かにかかわらず、症状の軽減、疾患の程度の縮小、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しない)、対象における感染原因物質、例えば緑膿菌(P.aeruginosa)のクリアランスまたは低減、疾患進行の遅延または遅滞、疾患状態の改善または緩和、および寛解(一部または完全を問わない)が含まれる。
【0042】
本明細書において使用される用語「院内疾患」および「院内感染」は、病院もしくは他のヘルスケア施設内で生じ、またはそれに起因する疾患もしくは感染を指す。院内感染は、典型的には、病院または他のヘルスケア施設内で罹患される感染であり、感染原因物質、例えば、抗生物質に耐性の細菌によって引き起こされ得る。ある態様において、院内感染は、対象が病院またはヘルスケア施設に入所する前に存在も潜伏もせず、病院またはヘルスケア施設への対象の入所後に感染または罹患される。
【0043】
同様に、「医原病」または「医原性感染」は、医療的ケアによって引き起こされ、またはその結果として生じるものである。
【0044】
「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」は、診断、予後診断、または治療が望まれる任意の対象、例えば哺乳動物対象を意味する。哺乳動物対象には、ヒト、家畜動物、農場動物、および動物園、競技、または愛玩動物、例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、畜牛、ウシ、クマなどが含まれる。
【0045】
本明細書において使用される、「抗緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)PslおよびPcrV二重特異的結合分子の投与から利益を受ける対象」および「治療が必要とされる動物」のような語句は、抗シュードモナス属(Pseudomonas)PslおよびPcrV二重特異的結合分子、例えば、二重特異的抗体の投与から利益を受ける対象、例えば、哺乳動物対象を含む。このような結合分子は、例えば、抗緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)PslおよびPcrV二重特異的結合分子によるシュードモナス属(Pseudomonas)PslもしくはPcrVの検出(例えば、診断手順のため)に、および/または疾患の治療、すなわち、緩和もしくは予防に使用することができる。本明細書においてより詳細に記載されるとおり、抗緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)PslおよびPcrV二重特異的結合分子は、非コンジュゲート形態で使用することができ、または例えば、薬物、プロドラッグ、もしくはアイソトープにコンジュゲートさせることができる。
【0046】
本明細書において使用される用語「感受性対象」または「感受性ヒト対象」は、過去もしくは現在の損傷もしくは疾患、例えば集中治療室内の計画済の、現在の、もしくは過去の入院、例えば、挿管もしくは気管切開術を介する人工呼吸を介する補助呼吸、および/または例えば気道中の緑膿菌(P.aeruginosa)による既知のコロニー形成(緑膿菌(P.aeruginosa)は、一部の例において抗生物質耐性であり得る)のため、疾患、例えば緑膿菌(P.aeruginosa)に関連する疾患に罹患するリスク、例えば低リスク、中程度のリスク、または高リスクがある対象、例えばヒト患者を指す。ある態様において、緑膿菌(P.aeruginosa)によってコロニー形成される対象は、無症状であり得、または軽度、中程度、もしくは重度の病状、例えば本明細書の他の箇所に記載の肺炎症状を示し得る。過去または現在の感染は、例えば、火傷感染、関節感染、創傷感染、皮膚感染、腹腔内感染、菌血症、腹膜炎、敗血症、膿瘍、骨感染、または2つ以上のそのような感染の組合せであり得る。ある態様において、対象は、急性肺炎、火傷損傷、角膜感染、嚢胞性線維症、もしくはそれらの組合せを有し得、またはそれらに罹患するリスクがあり得る。ある態様において、感受性ヒト対象は、本明細書において提供される二重特異的抗体により治療して、疾患、例えば、院内疾患、医原病、もしくは緑膿菌(P.aeruginosa)によって引き起こされる疾患が生じるのを予防し、または緑膿菌(P.aeruginosa)感染から生じる疾患もしくは感染症状を緩和軽減、例えば、軽減、低減、縮小、縮減、減弱、軽度化、減衰、緩和、もしくは除去し、または緑膿菌(P.aeruginosa)から生じる感染を治療し、例えば、緑膿菌(P.aeruginosa)感染の細菌負荷を排除もしくは低下させることができる。ある態様において、感受性ヒト対象は、例えば、本明細書において提供される方法により治療可能な疾患に罹患するリスク因子(上記)に基づき、または治療を要求する既存の症状のため、治療が必要とされる対象である。
【0047】
二重特異的抗体
本開示により提供される方法は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)PslおよびPcrVに特異的に結合する二重特異的抗体またはその抗原結合断片を利用する。本明細書に開示の二重特異的抗体またはその断片は、例えば、免疫グロブリン分子に由来するPsl特異的およびPcrV特異的抗原結合領域をコードするポリペプチド、例えば、アミノ酸配列を含む。指定のタンパク質「に由来する」ポリペプチドまたはアミノ酸配列は、ポリペプチドの起源を指す。ある場合、特定の出発ポリペプチドまたはアミノ酸配列に由来するポリペプチドまたはアミノ酸配列は、出発配列、または少なくとも10~20アミノ酸、少なくとも20~30アミノ酸、少なくとも30~50アミノ酸からなりもしくは他では起源を出発配列中に有すると当業者に同定可能であるその一部分と本質的に同一のアミノ酸配列を有する。
【0048】
本明細書において提供される方法で使用される例示的な二重特異的抗体は、例えば、PCT公開の国際公開第2013/070615号パンフレット、PCT公開の国際公開第2014/074528号パンフレット、PCT出願のPCT/米国特許出願公開第2015/029063号明細書、およびPCT出願のPCT/米国特許出願公開第2015/036576号明細書に開示されており、それらの開示は参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0049】
本明細書において提供される方法で使用される例示的な二重特異的抗体の一部を表2に提示する。VH、VL、およびscFv配列中のCDRに下線を付す。リンカー配列に二重下線を付す。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
本明細書の方法に従って投与すべき二重特異的抗体は、相補性決定領域(CDR):HCDR1-Psl、HCDR2-Psl、HCDR3-Psl、LCDR1-Psl、LCDR2-Psl、およびLCDR3-Pslのセットであって、HCDR1-Pslは、配列番号10のアミノ酸配列を有し、HCDR2-Pslは、配列番号11のアミノ酸配列を有し、HCDR3-Pslは、配列番号12のアミノ酸配列を有し、LCDR1-Pslは、配列番号13のアミノ酸配列を有し、LCDR2-Pslは、配列番号14のアミノ酸配列を有し、およびLCDR3-Pslは、配列番号15のアミノ酸配列を有する、セットを含む緑膿菌(P.aeruginosa)Pslに特異的に結合する結合ドメインと、CDR:HCDR1-PcrV、HCDR2-PcrV、HCDR3-PcrV、LCDR1-PcrV、LCDR2-PcrV、およびLCDR3-PcrVのセットであって、HCDR1-PcrVは、配列番号2のアミノ酸配列を有し、HCDR2-PcrVは、配列番号3のアミノ酸配列を有し、HCDR3-PcrVは、配列番号4のアミノ酸配列を有し、LCDR1-PcrVは、配列番号6のアミノ酸配列を有し、LCDR2-PcrVは、配列番号7のアミノ酸配列を有し、およびLCDR3-PcrVは、配列番号8のアミノ酸配列を有する、セットを含む緑膿菌(P.aeruginosa)PcrVに特異的に結合する結合ドメインとを含む。実施形態において、二重特異的抗体は、重鎖および軽鎖を有する。重鎖は、式VH-CH1-H1-L1-S-L2-H2-CH2-CH3(式中、VHは、配列番号1のアミノ酸配列を含む抗緑膿菌(P.aeruginosa)PcrV重鎖可変ドメインであり、CH1は、重鎖定常領域ドメイン-1であり、H1は、第1の重鎖ヒンジ領域断片であり、L1は、第1のリンカーであり、Sは、配列番号9のアミノ酸配列を含む抗緑膿菌(P.aeruginosa)Psl ScFv分子であり、L2は、第2のリンカーであり、H2は、第2の重鎖ヒンジ領域断片であり、CH2は、重鎖定常領域ドメイン-2であり、CH3は、重鎖定常領域ドメイン-3である)を含む。軽鎖は、式VL-CL(式中、VLは、配列番号5のアミノ酸配列を含む抗緑膿菌(P.aeruginosa)PcrV軽鎖可変ドメインであり、CLは、抗体軽鎖カッパ定常領域または抗体軽鎖ラムダ領域を含む)を含む。ある態様において、CH1は、配列番号16のアミノ酸配列を含み得る。ある態様において、L1およびL2は、同一でも異なっていてもよく、独立して、(a)[GGGGS]n(式中、nは、0、1、2、3、4、または5である)(配列番号23)、(b)[GGGG]n(式中、nは、0、1、2、3、4、または5である)(配列番号24)、または(a)および(b)の組合せを含み得る。ある態様において、H1は、アミノ酸配列EPKSC(配列番号17)を含み得る。ある態様において、H2は、アミノ酸配列DKTHTCPPCP(配列番号18)を含み得る。ある態様において、CH2-CH3は、配列番号19のアミノ酸配列を含み得る。ある態様において、CH2-CH3は、配列番号20のアミノ酸配列を含み得る。ある態様において、二重特異的抗体の重鎖は、配列番号21のアミノ酸配列を含み得、軽鎖は、配列番号22のアミノ酸配列を含む。
【0054】
抗緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)PslおよびPcrV二重特異的結合分子を含む医薬組成物
本開示において使用される医薬組成物は、当業者に周知の薬学的に許容可能な担体を含む。非経口投与のための製剤としては、無菌水性または非水性液剤、懸濁液、またはエマルションが挙げられる。
【0055】
単一剤形を生成するための担体材料と組み合わせることができる抗緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)PslおよびPcrV二重特異的抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体の量は、治療対象および特定の投与方式に応じて変動する。例示的な投薬レジメンとしては、約500~約3000mg、例えば、約500mg、600、700、750、1000、1500または約3000mgの抗緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)PslおよびPcrV二重特異的抗体の単回静脈内注入が挙げられる。投薬レジメンは、最適な所望応答(例えば、予防的応答または治療的治療応答)を提供するように調整することもできる。
【0056】
抗緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)PslおよびPcrV二重特異的抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体の投与経路は、例えば、非経口であり得る。本明細書において使用される非経口という用語には、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、または皮下投与が含まれる。投与に好適な形態は、注射、特に静脈内もしくは動脈内注射または点滴用液剤である。
【0057】
抗緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)PslおよびPcrV二重特異的抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染のインビボ治療または予防について薬学的有効量で投与することができる。これに関して、開示結合分子は、活性剤の投与を易化し、安定性を促進するように配合され得ることが認識される。
【0058】
本開示の範囲に従うと、抗緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)およびPcrV二重特異的抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体もしくは誘導体は、上記の治療方法に従って治療効果を産生するために十分な量でヒトまたは他の哺乳動物に投与することができる。本明細書に開示の抗緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)およびPcrV二重特異的抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体は、そのようなヒトまたは他の動物に、本開示の抗体を公知の技術に従って慣用の薬学的に許容可能な担体または希釈剤と組み合わせることにより調製された慣用の剤形で投与することができる。
【0059】
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染の治療のための本開示の組成物の有効用量は、多くの異なる要因、例として、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトか動物か、投与される他の医薬品、および治療が防止的か療法的かに応じて変動する。通常、患者はヒトであるが、非ヒト哺乳動物、例として、トランスジェニック哺乳動物を治療することもできる。治療投与量を当業者に公知の定型方法を使用して力価測定して安全性および効力を最適化することができる。
【0060】
抗緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)PslおよびPcrV二重特異的抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体は、当業者に公知の種々の因子に応じて種々の頻度において複数回にわたり、例えば単回投与として投与することができる。
【0061】
院内疾患を予防または治療する方法
本開示は、感受性ヒト対象における院内疾患を予防する方法であって、約500mg~約3000mg、例えば、500mg、600mg、700mg、750mg、1000mg、1500mgまたは3000mgの用量の、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)PslおよびPcrVに特異的に結合する二重特異的抗体を対象に投与することを含む方法を提供する。二重特異的抗体は、例えば、約500mg~約3000mg、例えば、500mg、600mg、700mg、750mg、1000mg、1500mg、または3000mgの単回投与として投与することができる。ある態様において、二重特異的抗体は、IV注入として投与することができる。本明細書の他の箇所により詳細に記載される感受性ヒト対象は、院内感染に罹患するリスクがあるが、投与時に感染も有さず、感染の症状も示さない者、または介入もしくは緩和軽減を要求する院内感染に罹患した者である。本方法は、二重特異的抗体の投与後、例えば、1日間、3日間、5日間、7日間、10日間、15日間、21日間、28日間、または30日間まで症状について対象をモニタリングすることをさらに含む。一実施形態において、本方法は、投与日から少なくとも約21日間以上まで症状について対象をモニタリングすることを含む。「院内感染」は、本明細書の他の箇所で定義され、それとしては、例えば、肺炎、菌血症、骨感染、関節感染、皮膚感染、火傷感染、創傷感染、腹膜炎、敗血症、および/または膿瘍が挙げられる。院内感染、例えば、肺炎に関連する症状は当技術分野において公知であり、例示的な症状を以下の実施例に記載する。ある態様において、院内感染は、緑膿菌(P.aeruginosa)によって引き起こされるかまたは悪化する。本方法によれば、ヒト対象は、例えば、投与1日後、3日後、5日後、8日後、10日後、15日後、21日後、28日後、または30日後に対象が無症状のまま(対象が投与時に無症状であった場合)であり、またはMEDI3902により治療されない場合に予測されるものよりも重症度が低い症状を呈する場合、良好に治療される。一実施形態において、ヒト対象は、投与21日後に対象が無症状のまま(対象が投与時に無症状であった場合)であり、またはMEDI3902により治療されない場合に予測されるものよりも重症度が低い症状を呈する場合、良好に治療される。別の実施形態において、ヒト対象は、投与28または30日後に対象が無症状のまま(対象が投与時に無症状であった場合)であり、またはMEDI3902により治療されない場合に予測されるものよりも重症度が低い症状を呈する場合、良好に治療される。
【0062】
別の態様において、本開示は、感受性ヒト対象における肺炎、例えば、院内感染または非院内感染肺炎を予防または治療する方法であって、約500mg~約3000mg、例えば、500mg、600mg、700mg、750mg、1000mg、1500mgまたは3000mgの用量の、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)PslおよびPcrVに特異的に結合する二重特異的抗体を対象に投与することを含む方法を提供する。二重特異的抗体は、例えば、約500mg~約3000mg、例えば、500mg、600mg、700mg、750mg、1000mg、1500mgまたは3000mgの単回投与として投与することができる。ある態様において、二重特異的抗体は、IV注入として投与することができる。ある態様において、肺炎は、院内または医原性である。本明細書の他の箇所により詳細に記載される感受性ヒト対象は、肺炎に罹患するリスクがあるが、投与時に肺炎症状を有さない者、または介入もしくは緩和軽減を要求する肺炎に罹患した者である。本方法は、二重特異的抗体の投与後、例えば、1日間、3日間、5日間、7日間、10日間、15日間、21日間、28日間、または30日間まで肺炎症状について対象をモニタリングすることをさらに含む。一実施形態において、本方法は、投与日から少なくとも約21日間まで症状について対象をモニタリングすることを含む。肺炎に関連する症状は当技術分野において公知であり、例示的な症状を以下の実施例に記載する。ある態様において、肺炎は、緑膿菌(P.aeruginosa)によって引き起こされるかまたは悪化する。本方法によれば、ヒト対象は、例えば、投与1日後、3日後、5日後、8日後、10日後、15日後、21日後、28日後、または30日後に対象が無症状のまま(対象が投与時に無症状であった場合)であり、またはMEDI3902により治療されない場合に予測されるものよりも重症度が低い症状を呈する場合、良好に治療される。一実施形態において、ヒト対象は、投与7日後に対象が無症状のまま(対象が投与点において無症状であった場合)であり、またはMEDI3902により治療されない場合に予測されるものよりも重症度が低い症状を呈する場合、良好に治療される。一実施形態において、ヒト対象は、投与21日後に対象が無症状のまま(対象が投与時に無症状であった場合)であり、またはMEDI3902により治療されない場合に予測されるものよりも重症度が低い症状を呈する場合、良好に治療される。別の実施形態において、ヒト対象は、投与28または30日後に対象が無症状のまま(対象が投与時に無症状であった場合)であり、またはMEDI3902により治療されない場合に予測されるものよりも重症度が低い症状を呈する場合、良好に治療される。
【0063】
別の態様において、本開示は、感受性ヒト対象における緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)によって引き起こされる疾患、例えば、肺炎、気管気管支炎、菌血症、心内膜炎、髄膜炎、中耳炎、細菌性角膜炎、眼内炎、骨髄炎、胃腸病、皮膚感染、敗血症、またはそれらの任意の組合せを予防または治療する方法であって、約500mg~約3000mg、例えば、500mg、600mg、700mg、750mg、1000mg、1500mg、または3000mgの用量の、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)PslおよびPcrVに特異的に結合する二重特異的抗体を対象に投与することを含む方法を提供する。二重特異的抗体は、約500mg~約3000mg、例えば、500mg、600mg、700mg、750mg、1000mg、1500mg、または3000mgの単回投与で投与することができる。ある態様において、二重特異的抗体は、IV注入として投与することができる。ある態様において、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)によって引き起こされる疾患は、院内または医原性である。本明細書の他の箇所により詳細に記載される感受性ヒト対象は、本明細書において提供される方法により治療可能または予防可能な疾患に罹患するリスクがあるが、投与時に病状を有さない者、または治療、介入もしくは緩和軽減を要求する緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)によって引き起こされる疾患に罹患した者である。本方法は、二重特異的抗体の投与後、例えば、1日間、3日間、5日間、8日間、10日間、15日間、21日間、28日間または30日間まで症状について対象をモニタリングすることをさらに含む。一実施形態において、本方法は、投与日から少なくとも約21日間まで症状について対象をモニタリングすることを含む。肺炎に関連する症状は当技術分野において公知であり、例示的な症状を以下の実施例に記載する。本方法によれば、ヒト対象は、例えば、投与1日後、3日後、5日後、8日後、10日後、15日後、21日後、28日後、または30日後に対象が無症状のまま(対象が投与時に無症状であった場合)であり、またはMEDI3902により治療されない場合に予測されるものよりも重症度が低い症状を呈する場合、良好に治療される。一実施形態において、ヒト対象は、投与7日後に対象が無症状のまま(対象が投与時に無症状であった場合)であり、またはMEDI3902により治療されない場合に予測されるものよりも重症度が低い症状を呈する場合、良好に治療される。一実施形態において、ヒト対象は、投与21日後に対象が無症状のまま(対象が投与時に無症状であった場合)であり、またはMEDI3902により治療されない場合に予測されるものよりも重症度が低い症状を呈する場合、良好に治療される。別の実施形態において、ヒト対象は、投与28または30日後に対象が無症状のまま(対象が投与時に無症状であった場合)であり、またはMEDI3902により治療されない場合に予測されるものよりも重症度が低い症状を呈する場合、良好に治療される。
【0064】
ある態様において、本明細書の方法に従って投与すべき二重特異的抗体は、相補性決定領域(CDR):HCDR1-Psl、HCDR2-Psl、HCDR3-Psl、LCDR1-Psl、LCDR2-Psl、およびLCDR3-Pslのセットであって、HCDR1-Pslは、配列番号10のアミノ酸配列を有し、HCDR2-Pslは、配列番号11のアミノ酸配列を有し、HCDR3-Pslは、配列番号12のアミノ酸配列を有し、LCDR1-Pslは、配列番号13のアミノ酸配列を有し、LCDR2-Pslは、配列番号14のアミノ酸配列を有し、およびLCDR3-Pslは、配列番号15のアミノ酸配列を有する、セットを含むPslに特異的に結合する結合ドメインと、HCDR1-PcrV、HCDR2-PcrV、HCDR3-PcrV、LCDR1-PcrV、LCDR2-PcrV、およびLCDR3-PcrVであって、HCDR1-PcrVは、配列番号2のアミノ酸配列を有し、HCDR2-PcrVは、配列番号3のアミノ酸配列を有し、HCDR3-PcrVは、配列番号4のアミノ酸配列を有し、LCDR1-PcrVは、配列番号6のアミノ酸配列を有し、LCDR2-PcrVは、配列番号7のアミノ酸配列を有し、およびLCDR3-PcrVは、配列番号8のアミノ酸配列を有する、HCDR1-PcrV、HCDR2-PcrV、HCDR3-PcrV、LCDR1-PcrV、LCDR2-PcrV、およびLCDR3-PcrVを含むPcrVに特異的に結合する結合ドメインとを含む。実施形態において、二重特異的抗体は、重鎖および軽鎖を有する。重鎖は、式VH-CH1-H1-L1-S-L2-H2-CH2-CH3(式中、VHは、配列番号1のアミノ酸配列を含む抗PcrV重鎖可変ドメインであり、CH1は、重鎖定常領域ドメイン-1であり、H1は、第1の重鎖ヒンジ領域断片であり、L1は、第1のリンカーであり、Sは、配列番号9のアミノ酸配列を含む抗Psl ScFv分子であり、L2は、第2のリンカーであり、H2は、第2の重鎖ヒンジ領域断片であり、CH2は、重鎖定常領域ドメイン-2であり、CH3は、重鎖定常領域ドメイン-3である)を含む。軽鎖は、式VL-CL(式中、VLは、配列番号5のアミノ酸配列を含む抗PcrV軽鎖可変ドメインであり、CLは、抗体軽鎖カッパ定常領域または抗体軽鎖ラムダ領域を含む)を含む。ある態様において、CH1は、配列番号16のアミノ酸配列を含み得る。ある態様において、L1およびL2は、同一でも異なっていてもよく、独立して、(a)[GGGGS]n(式中、nは、0、1、2、3、4、または5である)(配列番号23)、(b)[GGGG]n(式中、nは、0、1、2、3、4、または5である)(配列番号24)、または(a)および(b)の組合せを含み得る。ある態様において、H1は、アミノ酸配列EPKSC(配列番号17)を含み得る。ある態様において、H2は、アミノ酸配列DKTHTCPPCP(配列番号18)を含み得る。ある態様において、CH2-CH3は、配列番号19のアミノ酸配列を含み得る。ある態様において、CH2-CH3は、配列番号20のアミノ酸配列を含み得る。ある態様において、二重特異的抗体の重鎖は、配列番号21のアミノ酸配列を含み得、軽鎖は、配列番号22のアミノ酸配列を含む。
【0065】
本明細書において提供される方法で使用される二重特異的抗体は、例えば、約500mg~約3000mg、例えば、500mg、600mg、700mg、750mg、1000mg、1500mg、または3000mgの単回投与で投与することができる。
【0066】
一部の実施形態において、二重特異的抗体またはその抗原結合断片の血清標的レベルは、約1μg/mL~約10μg/mL、約2μg/mL~約9μg/mL、約3μg/mL~約8μg/mL、約4μg/mL~約7μg/mL、約5μg/mL~約6μg/mL、約5μg/mL~約7μg/mL、5μg/mL~約8μg/mL、5μg/mL~約9μg/mL、または約5μg/mL~約10μg/mLの範囲内である。他の実施形態において、二重特異的抗体またはその抗原結合断片の血清標的レベルは、約1μg/mL~約6μg/mL、約1μg/mL~約5μg/mL、約1μg/mL~約4μg/mL、約1μg/mL~約3μg/mL、または約1μg/mL~約2μg/mLの範囲内である。一実施形態において、二重特異的抗体またはその抗原結合断片の血清標的レベルは、少なくとも1.7μg/mLである。別の実施形態において、二重特異的抗体またはその抗原結合断片の血清標的レベルは、少なくとも5.3μg/mLである。約1.7μg/mLの血清標的レベルは、緑膿菌(P.aeruginosa)株の>80~90%によって引き起こされる感染を予防または治療することが予測される。約5.3μg/mLの血清標的レベルは、最も頑強な緑膿菌(P.aeruginosa)株(例えば、強毒性であり、抗生物質に耐性の株、例えば、ARC3928およびARC3502)によって引き起こされる感染を予防または治療することが予測される。
【0067】
ある態様において、本明細書において提供される方法で使用される二重特異的抗体は、IV注入として投与することができる。
【0068】
本明細書において提供される方法は、本明細書の他の箇所に記載の感受性ヒト対象についての使用に好適である。例としては、入院予定の対象、現在入院中の対象、最近入院した対象、人工呼吸器装着予定、現在装着している、もしくは最近装着した対象、またはそれらの組合せが挙げられる。入院は、一部の例において、集中治療室(ICU)内での入院であり得る。人工呼吸は、必要に応じて、挿管を介するもの、例えば、気管内もしくは経鼻気管チューブを介するもの、または気管切開術を介するものであり得る。人工呼吸器使用予定、現在使用している、または最近使用した患者は、呼吸器感染、例えば、肺炎、例えば、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)肺炎に罹患する増大したリスクを有し得る。人工呼吸が示される状況において、本開示の方法により提供される二重特異的抗体の投与は、例えば、現在の人工呼吸中、人工呼吸がもはや要求されなくなった後、またはそれらの組合せで肺炎に罹患するリスクを低減させ得る。
【0069】
ある態様において、対象は、二重特異的抗体の投与時において、気道、例えば、下気道中で緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)によってコロニー形成される。ある態様において、対象の気道は、二重特異的抗体の投与の1、2、3、または4日前に緑膿菌(P.aeruginosa)によってコロニー形成される。コロニー形成は、例えば、二重特異的抗体の投与前の6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、または96時間以内における気管吸引液中の緑膿菌(P.aeruginosa)の検出によって計測することができる。本明細書において提供される方法のある態様において、対象は、二重特異的抗体の投与前に対象がコロニー形成される緑膿菌(P.aeruginosa)株に対して活性であるとみなされる抗生物質を受けていない。ある態様において、対象の気道は、二重特異的抗体の投与時に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)によってさらにコロニー形成されてよい。
【0070】
ある態様において、対象は、二重特異的抗体の投与時に肺炎症状を有さない。症状は、臨床肺感染スコア(CPIS)に従って計測することができる。症状の欠如は、例えば、二重特異的抗体の投与の24時間前に対象が6未満のCPISを有する場合に推定することができる。
【0071】
本明細書において提供される方法は、二重特異的抗体の投与後に病状、例えば、肺炎症状について対象をモニタリングすることを含む。ある態様において、対象は、胸部X線、呼吸徴候もしくは肺炎の症状の観察、肺炎の微生物学的確定診断、またはそれらの任意の組合せにより肺炎についてモニタリングすることができる。対象は、例えば、肺炎に一致する新たなまたは悪化した浸潤影が胸部X線で観察された場合、対象が少なくとも2つの小基準または少なくとも1つの大基準の肺炎の呼吸徴候または症状を呈する場合、対象から得られた検体が培養による緑膿菌(P.aeruginosa)について陽性の場合、またはそれらの任意の組合せの場合、肺炎を有すると判定することができる。ある態様において、検体は、対象の呼吸分泌物である。呼吸分泌物は、喀痰から、気管内吸引により、気管支肺胞肺洗浄を伴う気管支鏡検査により、挿管対象における検体保護ブラシサンプリングの使用により、またはそれらの任意の組合せで得ることができる。
【0072】
小基準の肺炎の呼吸徴候または症状としては、限定されるものではないが、約38℃超の体温、約35℃未満の中核体温、1立方ミリメートル(mm)当たり10,000個超の細胞の白血球数、1mm当たり約4,500個未満の細胞の白血球数、約15%超のバンド好中球数、新たな化膿性気管内分泌物または痰の産生、新たな聴診所見、打診による濁音、咳嗽、呼吸困難、頻呼吸、低酸素血症の初発、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。大基準の肺炎の呼吸徴候または症状としては、限定されるものではないが、少なくとも4時間維持される、約240mmHg未満のPaO/FiO比を含む酸素供給を向上させるための換気サポート系において生じる急激な変化、少なくとも4時間維持される、PaO/FiO比の約50mmHg超の減少、非人工呼吸対象における人工呼吸を開始または再開させる必要性、またはそれらの任意の組合せを挙げることができる。肺炎の微生物学的確定診断としては、限定されるものではないが、培養による緑膿菌(P.aeruginosa)について陽性の呼吸器検体、緑膿菌(P.aeruginosa)について陽性の血液培養物、緑膿菌(P.aeruginosa)について陽性の胸膜液吸引物または肺組織培養物、またはそれらの任意の組合せを挙げることができる。
【0073】
ある態様において、本開示により提供される方法は、二重特異的抗体の投与前に、投与と同時に、および/または投与後に対象に抗生物質を投与することをさらに含み得る。好適な抗生物質としては、限定されるものではないが、アミノグリコシド、チカルシリン、ウレイドペニシリン、シプロフロキサシン、セフェピム、ゲンタマイシン、アミカシン、トブラマイシン、セフタジジム、アズトレオナム、セフォタキシム、またはそれらの任意の組合せを挙げることができる。好適な投与量および治療期間は、ヘルスケア提供者により容易に決定することができる。ある態様において、対象がコロニー形成される緑膿菌(P.aeruginosa)株は、投与のために選択される抗生物質に感受性である。しかしながら、別の態様において、対象がコロニー形成される緑膿菌(P.aeruginosa)株は、投与のために選択される利用可能な抗生物質の1つ以上に耐性であるかまたは部分的に耐性である。前臨床試験において、例えば、MEDI3902は、緑膿菌(P.aeruginosa)肺炎に対する抗生物質療法と、抗生物質感受性および抗生物質耐性緑膿菌(P.aeruginosa)の両方に対する区別される抗生物質クラスとの相乗的向上を示している。
【0074】
ある態様において、本開示により提供される方法は、抗ヒスタミン剤を二重特異的抗体の投与前に、投与と同時に、および/または投与後に対象に投与することをさらに含み得る。好適な抗ヒスタミン剤としては、限定されるものではないが、ジフェンヒドラミン、クレマスチン、デクスクロルフェニラミン、アゼラスチン、セチリジン、デスロラタジン、フェキソフェナジン、レボセチリジン、ロラタジン、オロパタジン、またはそれらの任意の組合せを挙げることができる。好適な投与量または治療期間は、ヘルスケア提供者により容易に決定することができる。
【0075】
ある態様において、本開示により提供される方法は、二重特異的抗体の血清薬物動態、二重特異的抗体の気管分泌物の薬物動態、またはそれらの組合せについて対象をモニタリングすることを含む。対象は、例えば、少なくとも約1μg/mL、少なくとも約2μg/mL、少なくとも約3μg/mL、少なくとも約4μg/mL、少なくとも約5μg/mL、または少なくとも約5.3μg/mL以上の二重特異的抗体の血清レベルを二重特異的抗体の投与後の7日目、14日目、21日目、28日目、30日目、35日目、42日目、または49日目まで維持し得る。例えば、対象は、少なくとも約1.7μg/mL、または少なくとも約5.3μg/mL以上の二重特異的抗体の血清レベルを二重特異的抗体の投与後の7日目、14日目、21日目、28日目、30日目、35日目、42日目、または49日目まで維持し得る。細菌病原体に指向されるモノクローナル抗体(例えば、MEDI4893)についてICU患者におけるクリアランス増加の観察に基づき、MEDI3902の単回投与後に人工呼吸されているICU患者について薬物動態をモデリングした。1500mgのMEDI3902の単回投与は、約1μg/mLにおける血清曝露を>90%の対象において≧21日間維持すると予測される。3000mgのMEDI3902の単回投与は、約1.7μg/mLにおける血清曝露を>90%対象において≧21日間維持すると予測される。健康被験者における薬物動態に基づき(例えば、ICU患者において観察されるようなクリアランス増加を有さない)、500mg、1500mgまたは3000mgの単回投与は、約1μg/mLにおける血清曝露を>90%の対象において≧21日間、例えば、1.7μg/mLを>90%の対象において≧21日間、例えば、約5.3μg/mLを>90%の対象において≧21日間維持すると予測される。当然のことながら、二重特異的抗体の血清レベルはモニタリング期間全体にわたり変動し、投与される二重特異的抗体の用量に応じて約100μg/mL、約200μg/mL、約300μg/mL、約400μg/mL、約500μg/mL、または約600μg/mL超の二重特異的抗体の最大濃度またはCmaxに達し得る。ある態様において、ゼロ時間から無限大時間への濃度時間曲線下面積(AUC)を計測することができる。例えば、AUCは、1500mg用量の二重特異的抗体について、例えば、約2000μg・日/mL~約6000μg・日/mL、例えば、約4000μg・日/mLであり得る。ある態様において、血清終末半減期を計測することができる。ある態様において、定常状態における分布容積(Vdss)を計測することができる。対象は、二重特異的抗体の投与後の7日目、14日目、21日目、28日目、30日目、35日目、42日目、49日目以上まで薬物動態パラメータについてモニタリングすることができる。ある態様において、対象は、21日目までモニタリングすることができる。ある態様において、対象は、49日目までモニタリングすることができる。
【0076】
以下に開示される実施形態は、代表例にすぎない。したがって、以下の実施例において開示される具体的な構造的、機能的、および手順的詳細は限定的なものと解釈すべきでない。
【実施例0077】
実施例1:臨床試験第1相試験
健康成人対象における単回増量IV投与のMEDI3902の安全性および忍容性を評価する、ヒトランダム化、二重盲検、プラセボ対照、用量漸増の初回第1相試験を実施した。有害事象(AE)、PK、およびADAデータを、250mg(n=3)、750mg(n=15)、1500mg(n=15)、または3000mg(n=9)の用量のMEDI3902を受けた42人の対象およびプラセボを受けた14人の対象において、最終来院日(投与60日後/61日目)まで収集した。MEDI3902およびプラセボ群の両方におけるAEの全ては、重症度グレード1またはグレード2のいずれかであった。最も高頻度に報告されたAEは、グレード1またはグレード2注入関連反応(総MEDI3902群において15/42人の対象[35.7%]、プラセボ群において0人)およびグレード1またはグレード2頭痛(総MEDI3902群において6/42人の対象[14.3%]、プラセボ群において2/14人の対象[14.3%])であった。特に注目すべき有害事象(AESI)は、注入関連反応(総MEDI3902群において15/42人の対象[35.7%]、プラセボ群において0人)の事象を含み、それはジフェンヒドラミンによる処理および注入速度の減速により緩和軽減された。ほとんどの注入関連反応の事象は、注入中もしくはその直後のいずれかまたは翌日までに消散した。2人の対象(750mgのMEDI3902投与群における1人の対象および3000mg投与群における1人の対象)は、注入関連反応に起因して投薬を完了しなかった。重篤な有害事象(SAE)は報告されなかった。
【0078】
MEDI3902のPKおよび免疫原性を第1相試験で健康成人被験者において試験した。血液試料を、血清中のMEDI3902濃度の定量のため、およびMEDI3902に対するADAの検出のために投与前および投与60日後までの種々の時点において回収した。IV注入後、MEDI3902は、健康成人対象において線形PKを示した。血清ピーク濃度は注入直後に観察され、双指数関数的に経時的に低下した。250mg投与コホートのMEDI3902濃度を投与42日後まで計測可能であった一方、他の高用量コホートは、投与60日後まで計測可能な血清濃度を有した。750mgIVの単回投与は、5.3μg/mLの標的レベルを超える血清曝露をこのコホートにおけるほとんどの対象について28日間維持した。血清中のMEDI3902曝露は250mgから1500mgまでほぼ用量比例的に増加し、1500mgから3000mgまででわずかに用量比例未満であった。Cmaxは、250mgにおける100μg/mLから1500mgにおける468μg/mLまで、および3000mgにおける838μg/mLまで増加した。ゼロ時間から無限大時間までの濃度時間曲線下面積(AUC)は、250mgにおける694μg・日/mLから1500mgにおける4246μg・日/mLまで用量比例的に増加した。3000mgにおけるAUCは、6540μg・日/mLであった。血清終末半減期は7~9日間であると推定された。定常状態における分布容積(Vdss)は3.4~4.9Lであり、血管外スペース中への制限された分布を示した。42人の対象のうち、コホート4(3000mg)の1人の対象は61日目に投与後ADA陽性を試験した。この対象におけるMEDI3902の血清濃度は、投与45日後に急速に減少し、投与60日後に定量下限(LLOQ)未満のレベルに降下し、MEDI3902のPKに対するADAの影響を示唆した。
【0079】
MEDI3902は、初回第1相試験において一般に、安全であることが見出された。
【0080】
実施例2:臨床試験第2b相試験
ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、単回投与、用量範囲、概念実証の第2相において、約429人の対象が登録され、主に欧州の約120の場所において投与される。対象を、1500mgまたは3000mgのMEDI3902、またはプラセボの単回IV投与を受けるように1:1:1の比にランダムに割り付ける。投薬スキームは、1500mg(または3000mg)のMEDI3902またはプラセボの単回IV投与間の1:1のランダム化に変更することもできる。ランダム化は、地理的領域により、および対象がランダム化前96時間以内に抗緑膿菌(P.aeruginosa)抗生物質治療(≦72時間の持続期間)を受けたか否かにより層別化する。対象は、50日目(治験薬投与49日後)まで追跡する(図1)。
【0081】
登録のため、対象は年齢18歳以上であり、集中治療室に滞在し、現在挿管および人工呼吸されており、試験参加時に少なくとも3日間にわたり挿管および人工呼吸されたままであると予測されることが要求される。対象は、ランダム化前36時間以内に緑膿菌(P.aeruginosa)について陽性の気管試料を有することにより実証されるとおり下気道中で緑膿菌(P.aeruginosa)によってコロニー形成もされていなければならないが、緑膿菌(P.aeruginosa)関連疾患を現在有さない。消散した肺炎の証拠を有する対象を登録することができる。
【0082】
対象は、それらが登録時またはMEDI3902を受ける前に確定急性シュードモナス属(Pseudomonas)疾患またはその疑いを有する場合、参加資格を有さない。対象は、それらがモノクローナル抗体を既に受けている場合、それらがMEDI3902投与前の直近の24時間以内に6以上の臨床肺感染スコア(CPIS)を有する場合、またはそれらが25以上の急性生理学的および慢性健康評価II(APACHE-II)スコアもしくはランダム化時における12以上のSOFAスコアを有する場合にも参加資格を有さない。肺炎を診断する能力を妨害する活動性肺疾患(例えば、活動性結核もしくは真菌疾患、閉塞肺癌、多量の胸水もしくは蓄膿症、嚢胞性線維症、または肺「ホワイトアウト」を伴う急性呼吸促拍症候群)を有する対象は資格を有さない。入院前に気管切開依存性の対象および体表面の40%超に火傷を有する対象は資格を有さない。さらに、対象は、それらがランダム化前の96時間以内に72時間超にわたり抗緑膿菌(P.aeruginosa)抗生物質を受け、その抗生物質が、対象がコロニー形成される緑膿菌(P.aeruginosa)株に対して活性とみなされ、または抗緑膿菌(P.aeruginosa)抗生物質の受容継続が見込まれる場合に資格を有さない。
【0083】
対象を、1日目にIV注入を介して投与される1500mgのMEDI3902、3000mgのMEDI3902、またはプラセボの単回投与を受けるようにランダムに割り付ける。全ての対象に対し、抗ヒスタミン剤、例えば、50mgのジフェンヒドラミンIV、クレマスチン2mgIV、またはデクスクロルフェニラミン5mgIV(または急性アレルギー反応の管理のために日常的臨床診療において利用される別の抗ヒスタミン製剤)を治験薬注入開始前の15~30分以内に前投与する。治験薬注入の開始前のアセトアミノフェン650mg経口および/もしくはメチルプレドニゾロン20mgIVと抗ヒスタミン剤との組合せ、またはアセトアミノフェンおよび/もしくはメチルプレドニゾロンを用いるもしくは用いないファモチジン20mg経口と一緒の抗ヒスタミン剤による対象の追加の前投与を承認することができる。
【0084】
この試験の主要有効性評価項目は、緑膿菌(P.aeruginosa)院内肺炎についてのリスクがある人工呼吸対象におけるMEDI3902の単回投与後の投与21日後(22日目)までに緑膿菌(P.aeruginosa)によって引き起こされる院内肺炎の発生率である。投与量レベルは、第1相試験(実施例1を参照されたい)からのデータ、前臨床薬理学的試験からのPK/PDデータ(例えば、ネズミ緑膿菌(P.aeruginosa)誘導致死肺炎モデルにおけるEC90)、細菌病原体に指向される他のモノクローナル抗体のICU患者におけるクリアランス増加の観察に基づくPKモデリング(図2)、および10日間のVAP発症までの時間中央値(範囲)の臨床報告に基づき選択した。一部の人工呼吸対象は投与21日後の期間にわたり人工呼吸を要求し続けるが、一部の対象はこの期間中に人工呼吸器を外すことができる。これらの後者の対象は、それらが人工呼吸をもはや要求しなくなった後に緑膿菌(P.aeruginosa)によって引き起こされる院内肺炎を発症し得るため、それらが投与21日後の期間中に人工呼吸器を使用し続しているか外したかにかかわらず、登録時に人工呼吸されていた対象において主要有効性を評価する。副次的有効性評価項目は、人工呼吸中に緑膿菌(P.aeruginosa)によって引き起こされる院内肺炎の発生率、および人工呼吸が投与21日後までもはや要求されなくなった後に緑膿菌(P.aeruginosa)によって引き起こされる院内肺炎の発生率を別個に評価する。
【0085】
主要安全性評価項目は、投与49日後までTEAE、TESAE、およびAESIを評価する。
【0086】
副次的評価項目(投与49日後までのMEDI3902血清濃度、PKパラメータ、およびMEDI3902に対するADA応答)は、インビボMEDI3902の存在を評価するように設計する。
【0087】
データ分析は、全ての対象が試験を完了した後に実施する。有効性、薬物動態(PK)、抗薬物抗体(ADA)、および安全性の分析は、最後の対象が投与49日後までフォローアップを完了した後に回収される全てのデータに対して実施して1500mg(および3000mgの場合もある)のMEDI3902の単回IV投与が許容可能な安全性プロファイルを有し、投与21日後まで下気道中で緑膿菌(P.aeruginosa)がコロニー形成される集中治療室(ICU)内の人工呼吸対象における緑膿菌(P.aeruginosa)肺炎の発生率を低減させ得ることを実証する(診断時における人工呼吸に関わらない)。
【0088】
対象が挿管されたままである場合、気管吸引液試料を2日目、4日目(±1日)、8日目(±1日)、15日目(±1日)、29日目(±1日)、および50日目(±1日)に緑膿菌(P.aeruginosa)コロニー形成の微生物学的評価のために回収する。
【0089】
対象は、入院中および退院後の症状に従って肺炎および他の重篤な緑膿菌(P.aeruginosa)感染の臨床症状について毎日モニタリングする。これらの時間において、モニタリングは、健康診断およびバイタルサインの評価を含む。入院中、対象が人工呼吸されたままである間、CPISを毎日評価する。
【0090】
重篤な緑膿菌(P.aeruginosa)感染の疑いを有する対象について、臨床症状(CPIS、SOFA、健康診断、およびバイタルサイン)を発症日に、次いで消散まで毎日評価する。血液試料を、重篤な緑膿菌(P.aeruginosa)感染の疑いを有する全ての対象において発症日および翌2日間分析する。採血分析を、緑膿菌(P.aeruginosa)肺炎について陽性の者において、それらの者が緑膿菌(P.aeruginosa)について陰性になるまで1日おきに繰り返す。気管または気管支吸引液を、挿管されている重篤な緑膿菌(P.aeruginosa)感染の疑いを有する対象において発症日および翌2日間分析する。気管または気管支吸引液分析は、緑膿菌(P.aeruginosa)肺炎について陽性の者において消散まで毎日繰り返す。喀痰は、挿管されていない重篤な緑膿菌(P.aeruginosa)感染の疑いを有する対象において発症日および翌2日間分析する(臨床管理および利用可能なBALまたはPSB試料のために気管支鏡検査を実施しない限り)。喀痰分析は、緑膿菌(P.aeruginosa)肺炎について陽性の者において消散まで1日おきに繰り返す。胸部X線は、重篤な緑膿菌(P.aeruginosa)感染の疑いを有する対象に対して発症日に実施する。胸部X線は、臨床的に示された確定肺炎を有する者において消散まで繰り返す。
【0091】
緑膿菌(P.aeruginosa)肺炎の診断時点において人工呼吸されている対象において、診断についての基準は、対象が、いかなる他の非感染症例にも起因しない以下のX線写真、臨床および微生物学的な初発の症状/徴候を実証することを要求する。
1.X線写真基準:
a.事象の24時間以内に得られた胸部X線上の肺炎と一致する新たなまたは悪化した浸潤影(有資格放射線科医により診断)、および
2.臨床基準:以下の小基準の少なくとも2つまたは1つの大基準の初発の呼吸徴候または症状:
小基準:
b.感染の全身徴候(以下の1つ以上):異常温度(>38℃の口腔体温、または鼓膜温度、または≧38.3℃の中核温、または<35℃の中核体温により定義される低体温症)、および/または異常なWBC数(>10,000個の細胞/mmのWBC数、<4,500個の細胞/mmのWBC数、または>15%のバンド好中球)
c.新たな化膿性気管内分泌物の産生
d.肺炎/肺硬変と一致する新たな健康診断所見、例えば、聴診所見(例えば、水泡音、ロンカイ、気管支呼吸音)または打診による濁音
大基準:
e.i.少なくとも4時間維持される、<240mmHgのPaO/FiO比、または
ii.少なくとも4時間維持されるPaO/FiOの≧50mmHgだけの減少
により決定される酸素供給を向上させるための換気サポート系において生じる急激な変化、および
3.微生物学的確定診断(事象の発症の24時間以内に得られる):以下の少なくとも1つ:
f.培養による緑膿菌(P.aeruginosa)について陽性の呼吸器検体としては、気管内吸引により、またはBALを伴う気管支鏡検査もしくは挿管対象におけるPSBサンプリングにより得られる呼吸分泌物の検体が挙げられる。挿管されていないが人工呼吸のプロトコル定義に一致する対象において、喀痰の標本は許容可能である。
g.緑膿菌(P.aeruginosa)について陽性の血液培養物(肺外側の明らかな一次感染源はない)
h.肺炎のエピソード中の緑膿菌(P.aeruginosa)について陽性の胸膜液吸引物または肺組織培養物(対象の必須臨床管理の一部として得られる場合のみ)。
【0092】
対象は、それらに気管内もしくは経鼻気管チューブが挿管されており、陽圧換気サポートを受けている場合、またはそれらに気管内チューブも経鼻気管チューブも挿管されていないが、直近24時間以内に8時間以上の陽圧換気を要求する場合、人工呼吸されているとみなす。
【0093】
緑膿菌(P.aeruginosa)肺炎の診断時に人工呼吸されていない対象において、診断基準は、対象がいかなる他の非感染症例にも起因しない以下のX線写真、臨床および微生物学的な初発の症状/徴候を実証することを要求する。
4.X線写真基準:
i.事象の24時間以内に得られた胸部X線上の肺炎と一致する新たなまたは悪化した浸潤影(有資格放射線科医により診断)、および
5.臨床基準:以下の小基準の少なくとも2つまたは1つの大基準の初発の呼吸徴候または症状:
小基準:
j.感染の全身徴候(以下の1つ以上):異常温度(>38℃の口腔体温、または鼓膜温度、または≧38.3℃の中核温、または<35℃の中核体温により定義される低体温症)、および/または異常なWBC数(>10,000個の細胞/mmのWBC数、<4,500個の細胞/mmのWBC数、または>15%のバンド好中球)
k.咳嗽の初発(または咳嗽の悪化)
l.膿性痰の産生
m.肺炎/肺硬変と一致する新たな健康診断の所見、例えば、聴診所見(例えば、水泡音、ロンカイ、気管支呼吸音)、打診による濁音、または胸膜炎性胸痛
n.呼吸困難、頻呼吸(>30回の呼吸数/分の呼吸速度)、または
iii.ベースライン未満である場合、室温での<90%の酸素(O)飽和度もしくは<60mmHgのPaO、もしくは
iv.事象前ベースラインO飽和度を維持するためのOの持続(≧3時間)補給を開始または増加させる必要性
により定義される低酸素血症
大基準:
o.呼吸不全または呼吸状態の悪化のため、非侵襲的人工呼吸を開始し、または侵襲的人工呼吸を再開させる必要性、および
6.微生物学的確定診断(事象の発症の72時間以内に得られる):以下の少なくとも1つ:
p.培養による緑膿菌(P.aeruginosa)について陽性の呼吸器検体。喀痰または(対象の必須臨床管理の一部として得られる場合のみ)BALを伴う気管支鏡検査もしくはPSBサンプリングにより得られる呼吸器分泌物の検体のいずれかが挙げられる
q.緑膿菌(P.aeruginosa)について陽性の血液培養物(肺外側の明らかな他の一次感染源はない)
r.肺炎のエピソード中の緑膿菌(P.aeruginosa)について陽性の胸膜液吸引物または肺組織培養物(対象の必須臨床管理の一部として得られる場合のみ)。
【0094】
対象は、気管内または経鼻気管チューブが配置されておらず、対象が陽圧換気サポートを少なくとも8時間要求しない場合、人工呼吸されているとみなされない。
【0095】
投与21日後までの緑膿菌(P.aeruginosa)肺炎の発生率を計算して、1500mgまたは3000mgのMEDI3902の投与が緑膿菌(P.aeruginosa)肺炎の発生率を低減させることを実証する。投与21日後までの緑膿菌(P.aeruginosa)肺炎の発生率を、人工呼吸されている対象および人工呼吸がもはや要求されない対象において比較する。
【0096】
有害事象および初発の慢性疾患をレビューして1500または3000mgのMEDI3902の投与が安全であることを実証する。
【0097】
実施例3:MEDI3902は、より低い細菌負荷において急性肺炎モデルの致死率を低減させる
MEDI3902投与のインビボ効果は、急性肺炎モデルを使用するマウスにおいて試験した。マウスの群(n=6)に、漸減濃度のMEDI3902(1.0mg/kg、0.5mg/kg、または0.2mg/kg)、またはアイソタイプ対照IgG抗体(陰性対照、0.75mg/kg)のいずれかを腹腔内(IP)注射した。処理24時間後、全てのマウスに2×10CFUの緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)株6206(1×LD100)を経鼻感染させた。図3に示されるとおり、全ての対照処理動物は、感染120時間後までに感染により死亡した。しかしながら、MEDI3902は、全ての用量にわたり1×LD100でも完全な保護を示し、ヒトにおける1.7μg/mLのより低い標的血清レベルが緑膿菌(P.aeruginosa)のほとんどの株にわたり保護を提供することを示唆した。
【0098】
本開示の幅および範囲は、上記の例示的実施形態のいかなるものによっても限定されるべきではないが、以下の特許請求の範囲およびその均等物に従ってのみ定義されるべきである。
図1
図2
図3
【配列表】
2022163050000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-08-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感受性ヒト対象における緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染を予防または治療するための医薬組成物であって、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)PslおよびPcrVに特異的に結合する二重特異的抗体を含み、約500mg~約3000mgの前記二重特異的抗体量で前記対象に投与され、
前記二重特異的抗体は、相補性決定領域(CDR):HCDR1-Psl、HCDR2-Psl、HCDR3-Psl、LCDR1-Psl、LCDR2-Psl、およびLCDR3-Pslのセットであって、HCDR1-Pslは、配列番号10のアミノ酸配列を有し、HCDR2-Pslは、配列番号11のアミノ酸配列を有し、HCDR3-Pslは、配列番号12のアミノ酸配列を有し、LCDR1-Pslは、配列番号13のアミノ酸配列を有し、LCDR2-Pslは、配列番号14のアミノ酸配列を有し、およびLCDR3-Pslは、配列番号15のアミノ酸配列を有する、セットを含む緑膿菌(P.aeruginosa)Pslに特異的に結合する結合ドメインと、CDR:HCDR1-PcrV、HCDR2-PcrV、HCDR3-PcrV、LCDR1-PcrV、LCDR2-PcrV、およびLCDR3-PcrVのセットであって、HCDR1-PcrVは、配列番号2のアミノ酸配列を有し、HCDR2-PcrVは、配列番号3のアミノ酸配列を有し、HCDR3-PcrVは、配列番号4のアミノ酸配列を有し、LCDR1-PcrVは、配列番号6のアミノ酸配列を有し、LCDR2-PcrVは、配列番号7のアミノ酸配列を有し、およびLCDR3-PcrVは、配列番号8のアミノ酸配列を有する、セットを含む緑膿菌(P.aeruginosa)PcrVに特異的に結合する結合ドメインとを含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染は、肺炎、菌血症、骨感染、関節感染、皮膚感染、火傷感染、創傷感染、またはそれらの任意の組合せである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染は呼吸器感染である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染は院内感染である、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
約500mg、600mg、700mg、750mg、1000mg、1500mgまたは3000mgの前記二重特異的抗体量で投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記二重特異的抗体が、
(i)式VH-CH1-H1-L1-S-L2-H2-CH2-CH3(式中、VHは、配列番号1のアミノ酸配列を含む抗緑膿菌(P.aeruginosa)PcrV重鎖可変ドメインであり、CH1は、重鎖定常領域ドメイン-1であり、H1は、第1の重鎖ヒンジ領域断片であり、L1は、第1のリンカーであり、Sは、配列番号9のアミノ酸配列を含む抗緑膿菌(P.aeruginosa)Psl ScFv分子であり、L2は、第2のリンカーであり、H2は、第2の重鎖ヒンジ領域断片であり、CH2は、重鎖定常領域ドメイン-2であり、CH3は、重鎖定常領域ドメイン-3である)の重鎖;および
(ii)式VL-CL(式中、VLは、配列番号5のアミノ酸配列を含む抗緑膿菌(P.aeruginosa)PcrV軽鎖可変ドメインであり、CLは、抗体軽鎖カッパ定常領域または抗体軽鎖ラムダ領域である)の軽鎖
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記の緑膿菌(P.aeruginosa)Pslに特異的に結合する結合ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列を含むScFvを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記の緑膿菌(P.aeruginosa)PcrVに特異的に結合する結合ドメインが、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む、請求項1~5および7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物が、約500mg、600mg、700mg、750mg、1000mg、1500mgまたは3000mgの量での前記二重特異的抗体の投与用に調製される、請求項6~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記対象が投与日から21日間にわたり症状についてモニタリングされ、投与21日後、前記対象が、無症状のままであるか、またはプラセボを投与された感受性ヒト対象のコホートに対して少ない症状を呈する、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記二重特異的抗体は、単回静脈内注入として投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記投与時において、前記対象は、気道中で緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)によってコロニー形成され、前記対象は、投与時に肺炎症状を有さなくてもよく、前記対象は、下気道中で緑膿菌(P.aeruginosa)によってコロニー形成されてもよい、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記対象の気道は、前記二重特異的抗体の投与の1、2、3、または4日前に緑膿菌(P.aeruginosa)によってコロニー形成され、コロニー形成は、前記二重特異的抗体の投与前の36時間以内における気管吸引液中の緑膿菌(P.aeruginosa)の検出によって計測されてもよい、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記対象の気道は、前記二重特異的抗体の投与時に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)によってさらにコロニー形成される、請求項12または13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記対象は、入院予定であるか、現在入院中であるか、最近入院していたか、人工呼吸器を装着しているか、またはそれらの組合せであり、前記対象は、集中治療室(ICU)内で入院していてもよく、前記対象は、挿管されていてもよく、前記対象は、気管内または経鼻気管チューブを介して人工呼吸されていてもよい、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記投与は、人工呼吸中の肺炎のリスクを低減させる、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記投与は、人工呼吸がもはや要求されなくなった後の肺炎のリスクを低減させる、請求項15または16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記対象は、前記二重特異的抗体の投与前に前記対象がコロニー形成される緑膿菌(P.aeruginosa)株に対して活性な抗生物質を受けていない、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
抗生物質が前記対象にさらに投与され、前記対象がコロニー形成される前記緑膿菌(P.aeruginosa)株は、前記抗生物質に感受性であってもよく、または、前記対象がコロニー形成される前記緑膿菌(P.aeruginosa)株は、前記抗生物質に耐性であるかまたは部分的に耐性であってもよい、請求項1~18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記抗生物質は、前記二重特異的抗体の投与前に、前記二重特異的抗体の投与と同時に、前記二重特異的抗体の投与後に、またはそれらの任意の組合せで投与される、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記対象は、前記二重特異的抗体の投与の21日後まで少なくとも5.3μg/mlの前記二重特異的抗体の血清濃度を維持し、または
前記対象は、前記二重特異的抗体の投与の約7日後、約21日後、または約28日後まで少なくとも1.7μg/mLの前記二重特異的抗体の血清濃度を維持する、
請求項1~20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0076
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0076】
本発明の態様を以下、さらに記載する:
[項1]
感受性ヒト対象における院内感染を予防または治療する方法であって、約500~約3000mgの、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)PslおよびPcrVに特異的に結合する二重特異的抗体を前記対象に投与することと、投与日から21日間にわたり症状について前記対象をモニタリングすることとを含み、投与21日後、前記対象は、無症状のままであるか、またはプラセボを投与された感受性ヒト対象のコホートに対して重症度が低い症状を呈し、
前記二重特異的抗体は、相補性決定領域(CDR):HCDR1-Psl、HCDR2-Psl、HCDR3-Psl、LCDR1-Psl、LCDR2-Psl、およびLCDR3-Pslのセットであって、HCDR1-Pslは、配列番号10のアミノ酸配列を有し、HCDR2-Pslは、配列番号11のアミノ酸配列を有し、HCDR3-Pslは、配列番号12のアミノ酸配列を有し、LCDR1-Pslは、配列番号13のアミノ酸配列を有し、LCDR2-Pslは、配列番号14のアミノ酸配列を有し、およびLCDR3-Pslは、配列番号15のアミノ酸配列を有する、セットを含む緑膿菌(P.aeruginosa)Pslに特異的に結合する結合ドメインと、CDR:HCDR1-PcrV、HCDR2-PcrV、HCDR3-PcrV、LCDR1-PcrV、LCDR2-PcrV、およびLCDR3-PcrVのセットであって、HCDR1-PcrVは、配列番号2のアミノ酸配列を有し、HCDR2-PcrVは、配列番号3のアミノ酸配列を有し、HCDR3-PcrVは、配列番号4のアミノ酸配列を有し、LCDR1-PcrVは、配列番号6のアミノ酸配列を有し、LCDR2-PcrVは、配列番号7のアミノ酸配列を有し、およびLCDR3-PcrVは、配列番号8のアミノ酸配列を有する、セットを含む緑膿菌(P.aeruginosa)PcrVに特異的に結合する結合ドメインとを含む、方法。
[項2]
前記院内感染は、肺炎、菌血症、骨感染、関節感染、皮膚感染、火傷感染、創傷感染、またはそれらの任意の組合せである、上記項1に記載の方法。
[項3]
前記院内感染は、肺炎である、上記項2に記載の方法。
[項4]
前記肺炎は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)によって引き起こされる、上記項1~3のいずれか一項に記載の方法。
[項5]
約1500mgまたは約3000mgの前記二重特異的抗体が投与される、上記項1~4のいずれか一項に記載の方法。
[項6]
CH1は、配列番号16のアミノ酸配列を含む、上記項1~5のいずれか一項に記載の方法。
[項7]
L1およびL2は、同一であるかまたは異なっており、独立して、(a)[GGGGS]n(式中、nは、0、1、2、3、4、または5である)(配列番号23)、(b)[GGGG]n(式中、nは、0、1、2、3、4、または5である)(配列番号24)、または(a)および(b)の組合せを含む、上記項1~6のいずれか一項に記載の方法。
[項8]
H1は、アミノ酸配列EPKSC(配列番号17)を含む、上記項1~7のいずれか一項に記載の方法。
[項9]
H2は、アミノ酸配列DKTHTCPPCP(配列番号18)を含む、上記項1~8のいずれか一項に記載の方法。
[項10]
CH2-CH3は、配列番号19のアミノ酸配列を含む、上記項1~9のいずれか一項に記載の方法。
[項11]
CH2-CH3は、配列番号20のアミノ酸配列を含む、上記項10に記載の方法。
[項12]
前記重鎖は、配列番号21のアミノ酸配列を含み、および前記軽鎖は、配列番号22のアミノ酸配列を含む、上記項1~11のいずれか一項に記載の方法。
[項13]
前記約500~約3000mgの前記二重特異的抗体は、単回静脈内注入として投与される、上記項1~12のいずれか一項に記載の方法。
[項14]
前記投与時において、前記対象は、気道中で緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)によってコロニー形成される、上記項1~13[0009]のいずれか一項に記載の方法。
[項15]
前記対象は、投与時に肺炎症状を有さない、上記項14に記載の方法。
[項16]
前記対象は、下気道中で緑膿菌(P.aeruginosa)によってコロニー形成される、上記項14または15に記載の方法。
[項17]
前記対象の気道は、前記二重特異的抗体の投与の1、2、3、または4日前に緑膿菌(P.aeruginosa)によってコロニー形成される、上記項14~16のいずれか一項に記載の方法。
[項18]
コロニー形成は、前記二重特異的抗体の投与前の36時間以内における気管吸引液中の緑膿菌(P.aeruginosa)の検出によって計測される、上記項17に記載の方法。
[項19]
前記対象の気道は、前記二重特異的抗体の投与時に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)によってさらにコロニー形成される、上記項14~18のいずれか一項に記載の方法。
[項20]
前記対象は、入院予定であるか、現在入院中であるか、最近入院していたか、人工呼吸器を装着しているか、またはそれらの組合せである、上記項1~19のいずれか一項に記載の方法。
[項21]
前記対象は、集中治療室(ICU)内で入院している、上記項20に記載の方法。
[項22]
前記対象は、挿管されている、上記項20または21に記載の方法。
[項23]
前記対象は、気管内または経鼻気管チューブを介して人工呼吸されている、上記項20または21に記載の方法。
[項24]
前記投与は、人工呼吸中の肺炎のリスクを低減させる、上記項20~23のいずれか一項に記載の方法。
[項25]
前記投与は、人工呼吸がもはや要求されなくなった後の肺炎のリスクを低減させる、上記項20~24のいずれか一項に記載の方法。
[項26]
1500mgの前記二重特異的抗体が投与される、上記項1~23のいずれか一項に記載の方法。
[項27]
3000mgの前記二重特異的抗体が投与される、上記項1~23のいずれか一項に記載の方法。
[項28]
前記対象は、前記二重特異的抗体の投与前に前記対象がコロニー形成される緑膿菌(P.aeruginosa)株に対して活性な抗生物質を受けていない、上記項1~27のいずれか一項に記載の方法。
[項29]
抗生物質を前記対象に投与することをさらに含む、上記項1~28のいずれか一項に記載の方法。
[項30]
前記対象がコロニー形成される前記緑膿菌(P.aeruginosa)株は、前記抗生物質に感受性である、上記項29に記載の方法。
[項31]
前記対象がコロニー形成される前記緑膿菌(P.aeruginosa)株は、前記抗生物質に耐性であるかまたは部分的に耐性である、上記項29に記載の方法。
[項32]
前記抗生物質は、前記二重特異的抗体の投与前に、前記二重特異的抗体の投与と同時に、前記二重特異的抗体の投与後に、またはそれらの任意の組合せで投与される、上記項29~1のいずれか一項に記載の方法。
[項33]
前記対象は、前記二重特異的抗体の投与の21日後まで少なくとも約1μg/mlの前記二重特異的抗体の血清濃度を維持する、上記項1~32のいずれか一項に記載の方法。
[項34]
前記対象は、前記二重特異的抗体の投与の21日後まで少なくとも5.3μg/mlの前記二重特異的抗体の血清濃度を維持する、上記項33に記載の方法。
[項35]
前記対象は、前記二重特異的抗体の投与の約7日後、約21日後、または約28日後まで少なくとも1.7μg/mLの前記二重特異的抗体の血清濃度を維持する、上記項33に記載の方法。
以下に開示される実施形態は、代表例にすぎない。したがって、以下の実施例において開示される具体的な構造的、機能的、および手順的詳細は限定的なものと解釈すべきでない。

【外国語明細書】