(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163062
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】CCR2+造血幹細胞は養子細胞療法におけるT細胞活性化を媒介する
(51)【国際特許分類】
A61K 35/28 20150101AFI20221018BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20221018BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20221018BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20221018BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20221018BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20221018BHJP
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A61P 35/04 20060101ALI20221018BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20221018BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221018BHJP
C12N 5/0789 20100101ALI20221018BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221018BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20221018BHJP
【FI】
A61K35/28
A61K35/17 A
A61K35/17 Z
A61P1/16
A61P31/12
A61P31/14
A61P31/18
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A61P31/22
A61P35/00
A61P35/04
A61P37/04
A61P43/00 107
A61P43/00 121
C12N5/0789
C12N5/10
C12N5/0783
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022115818
(22)【出願日】2022-07-20
(62)【分割の表示】P 2019534399の分割
【原出願日】2017-12-21
(31)【優先権主張番号】62/437,582
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501453307
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ フロリダ リサーチ ファンデーション, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル,デュアン
(72)【発明者】
【氏名】フロレス,キャサリン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】がんまたは感染症から選択される疾患を処置する方法を提供する。
【解決手段】疾患を有する対象に養子細胞療法(ACT)を投与すること、および、対象に造血幹細胞を含有する調製物を投与することを含み、ここで、造血幹細胞(HSC)は、CCR2陽性(CCR2+)細胞(またはCCR2+細胞の前駆体)について濃縮され、およびここで、対象は、免疫チェックポイント阻害剤を受けていない、がんまたは感染症から選択される疾患を処置する方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるがんまたは感染症から選択される疾患を処置する方法であって、疾患を処置するのに有効な量で、疾患を有する対象に養子細胞療法(ACT)を投与すること、および、対象に造血幹細胞を含有する調製物を投与することを含み、ここで、造血幹細胞(HSC)は、CCR2陽性(CCR2+)細胞(またはCCR2+細胞の前駆体)について濃縮され、およびここで、対象は、免疫チェックポイント阻害剤を受けていない、前記方法。
【請求項2】
調製物におけるHSCが系統枯渇されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
調製物におけるHSCが、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%またはさらには99%のCCR2+細胞(またはCCR2+細胞の前駆体)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
調製物におけるHSCが、50%、40%、30%、20%、10%、5%、2%未満、またはさらには1%未満のCCR2陰性(CCR2-)細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
調製物における50%と100%との間の細胞が、CCR2+細胞(またはCCR2+細胞の前駆体)である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
対象が、放射線療法または化学療法で処置されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
対象が、放射線療法または化学療法を受ける予定である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
造血幹細胞の供給源が、骨髄、末梢血、臍帯血、または誘導多能性幹細胞である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
造血幹細胞の供給源が造血前駆細胞である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
幹細胞の供給源が自家性である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
幹細胞の供給源が同種異系であり、および、ドナー細胞はレシピエントとHLAが一致している、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
養子細胞療法が、キメラ抗体受容体(CAR)改変T細胞を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
疾患ががんであり、および、がんが、メラノーマ、有棘細胞癌、基底細胞癌、乳がん、頭頸部癌、甲状腺癌、軟部組織肉腫、骨肉腫、精巣がん、前立腺がん、卵巣がん、膀胱がん、皮膚がん、脳がん、神経膠芽腫、髄芽腫、上衣腫、血管肉腫(angiosarcoma)、血管肉腫(hemangiosarcoma)、マスト細胞腫瘍、原発性肝がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、膵臓がん、胃腸がん、腎細胞癌、造血器新生物、リンパ腫、中皮腫、神経膠芽腫、低悪性度の神経膠腫、高悪性度の神経膠腫、小児脳がん、髄芽腫、または、その転移性のがんである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
がんが、脳、肺、乳房、またはメラノーマの転移性または難治性のがんである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
がんが、非小細胞肺がんからの転移性の脳がん、メラノーマからの転移性の脳がん、または乳癌からの転移性の脳がんである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
がんが、神経膠芽腫、低悪性度の神経膠腫、高悪性度の神経膠腫、小児脳がん、または髄芽腫である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
疾患が感染症である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
感染症が慢性の感染症である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
感染症が、任意の肝炎、アデノウイルス、BKなどのポリオーマウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、単純ヘルペスウイルス(HSY)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBY)、インフルエンザA、B、および/またはC型、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)を含むStaphylococcus種、Streptococcus pneumoniaを含むStreptococcus種、または移植後感染である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
感染症が、A型肝炎、B型肝炎、またはC型肝炎である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
養子細胞療法で対象を処置する方法における改善であって、対象に造血幹細胞を含有する調製物を投与することを含み、ここで、造血幹細胞(HSC)は、CCR2陽性(CCR2+)細胞(またはCCR2+細胞の前駆体)について濃縮され、およびここで、対象は、免疫チェックポイント阻害剤を受けていない、前記改善。
【請求項22】
調製物におけるHSCが系統枯渇されている、請求項21に記載の改善。
【請求項23】
調製物におけるHSCが、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%またはさらには99%のCCR2+細胞(またはCCR2+細胞の前駆体)である、請求項21または22に記載の改善。
【請求項24】
調製物におけるHSCが、50%、40%、30%、20%、10%、5%、2%未満、またはさらには1%未満のCCR2陰性(CCR2-)細胞である、請求項21または22に記載の改善。
【請求項25】
調製物における50%と100%との間の細胞が、CCR2+細胞(またはCCR2+細胞の前駆体)である、請求項21~24のいずれか一項に記載の改善。
【請求項26】
養子細胞療法のためのT細胞を含有する第1の容器および造血幹細胞(HSC)を含有する第2の容器を含有するパッケージならびに使用のための説明書を含むキットであって、ここで、HSCは、CCR2陽性(CCR2+)細胞(またはCCR2+細胞の前駆体)について濃縮され、およびここで、説明書は、免疫チェックポイント阻害剤との使用を示さない、前記キット。
【請求項27】
調製物におけるHSCが系統枯渇されている、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
調製物におけるHSCが、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%またはさらには99%のCCR2+細胞(またはCCR2+細胞の前駆体)である、請求項26に記載のキット。
【請求項29】
調製物におけるHSCが、50%、40%、30%、20%、10%、5%、2%未満、またはさらには1%未満のCCR2陰性(CCR2-)細胞である、請求項26に記載のキット。
【請求項30】
調製物における50%と100%との間の細胞が、CCR2+細胞(またはCCR2+細胞の前駆体)である、請求項26に記載のキット。
【請求項31】
T細胞およびHSCが同系である、請求項26~30のいずれか一項に記載のキット。
【請求項32】
T細胞がCarT細胞である、請求項26~31のいずれか一項に記載のキット。
【請求項33】
T細胞およびHSCは、HLAが一致している、請求項26~31のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2016年12月21日に出願された米国仮特許出願番号62/437582の35 U.S.C.§119(e)下の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
政府の支援
この発明は、国立衛生研究所によって授与されたR01 CA194239下の政府の支援によりなされた。政府は発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
開示の背景
がん細胞を含む様々な細胞に対するCD4およびCD8T細胞活性の増強は、がんおよび感染症を処置するために研究されているアプローチである。1つの戦略では、Tリンパ球を抗原で刺激し、ex vivoで増殖させ、次いで対象に輸血する。これは養子細胞療法(ACT)の一形態である。一定のACT戦略が早期臨床試験でがんの退行を誘導することが示されている。ACTは、免疫除去および造血幹細胞移植(HSCT)の後に生じるがんおよび/または感染症を処置するのに特に有用であり得る。
【0003】
がんを処置するために研究されている別のアプローチは、骨髄から収集されるかまたは骨髄から動員され、末梢血中で収集される造血幹細胞(HSC)を用いる造血幹細胞移植(HSCT)に続く高用量の化学療法である。HSCTおよび/またはHSC動員は、リンパ球減少症を誘発するための処置と組み合わされると、一定の細胞ベースの免疫療法の効果を増強し得る。HSCまたはHSC動員剤単独の投与は、異なるがんを有する多くの対象において臨床効果を示さない。
発明者は以前に、CCR2+細胞を含む骨髄由来造血幹細胞(HSC)が、一定の場合には免疫チェックポイント阻害剤療法を増強することができるという独自の観察を行った(PCT/US16/44718、その全体を参照により本明細書に組み入れる)。
【発明の概要】
【0004】
開示の概要
本開示によれば、ACTと共にCCR2陽性(CCR2+)HSCを投与すると、ACT単独と比較して、腫瘍微小環境内および腫瘍流入領域リンパ節内で養子移送T細胞の活性化およびIFNγ分泌が有意に増加することが発見された。発明者は、養子細胞療法(ACT)を受けているが免疫チェックポイント阻害剤による免疫チェックポイント遮断を受けていない対象へのCCR2+HSCの投与がACTの生存の増加をもたらすことを驚くべきことに見出した。開示のいかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、CCR2+HSC移送とACTとの組み合わせが腫瘍微小環境内でのIFNγ陽性T細胞の増加をもたらすという実証を通して、メカニズムへの洞察が提供される。
【0005】
一側面において、ACTプラットフォームは、腫瘍由来の全RNAでパルスした骨髄由来樹状細胞を用いて、ex vivoで腫瘍特異的T細胞(TTRNA-T細胞)を増殖させる(Flores et al., 2015)。これらの研究は、ACTとのHSC投与が、ACT単独と比較して、腫瘍微小環境内および腫瘍流入領域リンパ節内のTTRNA-T細胞活性化およびIFNγ分泌を有意に増加させることを実証している。本発明によれば、対象におけるがんまたは感染症から選択される疾患を処置する方法が提供される。方法は、疾患を有する対象に養子細胞療法(ACT)を投与すること、および、疾患を処置するのに有効な量の造血幹細胞を含有する調製物を対象に投与することを含み、ここで、造血幹細胞(HSC)はCCR2陽性(CCR2+)細胞(またはCCR2+細胞の前駆体)について濃縮され、対象は免疫チェックポイント阻害剤を受けていない。
【0006】
態様において、調製物におけるHSCは系統枯渇している。態様において、調製物におけるHSCは、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%またはさらには99%のCCR2+細胞(またはCCR2+細胞の前駆体)である。態様において、調製物におけるHSCは、50%、40%、30%、20%、10%、5%、2%未満、またはさらには1%未満のCCR2陰性(CCR2-)細胞である。態様において、調製物における50%と100%との間の細胞は、CCR2+細胞(またはCCR2+細胞の前駆体)である。
態様において、調製物における細胞は、CCR2+系統陰性HSCを生じ得る、CD34+HSC、CD34+CD38+HSC、またはアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)ブライトHSCとして定義されるようなCCR2+細胞の前駆体である。
前述の態様のいずれかにおいて、任意に、対象は放射線療法または化学療法で処置されている。前述の態様のいずれかにおいて、任意に、対象は放射線療法または化学療法を受ける予定である。
【0007】
前述の態様のいずれかにおいて、造血幹細胞の供給源は、骨髄、末梢血、臍帯血、または誘導多能性幹細胞であり得る。前述の態様のいずれかにおいて、造血幹細胞の供給源は造血前駆細胞であり得る。前述の態様のいずれかにおいて、幹細胞の供給源は自家性であり得る。前述の態様のいずれかにおいて、幹細胞の供給源は同種異系であり得、ドナー細胞はレシピエントに対してHLAが一致している。
前述の態様のいずれかにおいて、養子細胞療法は、キメラ抗体受容体(CAR)改変T細胞であり得る。いくつかの態様において、療法は、本明細書に記載の疾患または感染のいずれかを処置するために使用され得る。
前述の態様のいずれかにおいて、疾患はがんであり得、がんは、メラノーマ、有棘細胞癌、基底細胞癌、乳がん、頭頸部癌、甲状腺癌、軟部組織肉腫、骨肉腫、精巣がん、前立腺がん、卵巣がん、膀胱がん、皮膚がん、脳がん、神経膠芽腫、髄芽腫、上衣腫、血管肉腫(angiosarcoma)、血管肉腫(hemangiosarcoma)、マスト細胞腫瘍、原発性肝がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、膵臓がん、胃腸がん、腎細胞癌、造血器新生物、リンパ腫、中皮腫、神経膠芽腫、低悪性度の神経膠腫、高悪性度の神経膠腫、小児脳がん、髄芽腫、またはその転移性のがんであり得る。
【0008】
態様において、がんは、脳、肺、乳房、またはメラノーマの転移性または難治性のがんである。態様において、がんは、非小細胞肺がんからの転移性の脳がん、メラノーマからの転移性の脳がん、または乳癌からの転移性の脳がんである。態様において、がんは、神経膠芽腫、低悪性度の神経膠腫、高悪性度の神経膠腫、小児脳がん、または髄芽腫である。
前述の態様のいずれかにおいて、疾患は感染症であり得る。態様において、感染症は慢性の感染症である。態様において、感染症は、任意の肝炎、アデノウイルス、BKなどのポリオーマウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、単純ヘルペスウイルス(HSY)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBY)、インフルエンザA、B、および/またはC型、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)を含むStaphylococcus種、Streptococcus pneumoniaを含むStreptococcus種、または移植後感染である。態様において、感染症は、A型肝炎、B型肝炎、またはC型肝炎である。
【0009】
発明の別の側面によれば、対象を処置するためのACTに対する改善が提供される。改善は、造血幹細胞を含有する調製物を対象に投与すること(すなわち、HSTを投与すること)を含み、ここで、造血幹細胞(HSC)は、CCR2陽性(CCR2+)細胞(またはCCR2+細胞の前駆体)について濃縮され、対象は、免疫チェックポイント阻害剤を受けていない。態様において、調製物におけるHSCは系統枯渇している。態様において、調製物におけるHSCは、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%またはさらには99%のCCR2+細胞(またはCCR2+細胞の前駆体)である。態様において、調製物におけるHSCは、50%、40%、30%、20%、10%、5%、2%未満、またはさらには1%未満のCCR2陰性(CCR2-)細胞である。態様において、調製物における50%と100%との間の細胞は、CCR2+細胞(またはCCR2+細胞の前駆体)である。前述の態様のいずれかにおいて、ACTは、がんを有する対象または感染症を有する対象を処置することであり得る。がんおよび感染症は上記の通りであり得る。
【0010】
発明の別の側面によれば、キットが提供される。キットは、ACTのためのT細胞を含有する第1の容器およびHSCを含有する第2の容器を含有するパッケージならびに使用のための説明書であり、ここで、造血幹細胞(HSC)はCCR2陽性(CCR2+)細胞(またはCCR2+細胞の前駆体)について濃縮され、およびここで、説明書は免疫チェックポイント阻害剤なしの使用を示す。態様において、調製物におけるHSCは系統枯渇している。態様において、調製物におけるHSCは、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%またはさらには99%のCCR2+細胞(またはCCR2+細胞の前駆体)である。態様において、調製物におけるHSCは、50%、40%、30%、20%、10%、5%、2%未満、またはさらには1%未満のCCR2陰性(CCR2-)細胞である。態様において、調製物における50%と100%との間の細胞は、CCR2+細胞(またはCCR2+細胞の前駆体)である。前述の態様のいずれかにおいて、T細胞およびHSCは同系であってもなくてもよい。前述の態様のいずれかにおいて、T細胞はCarT細胞であり得る。前述の態様のいずれかにおいて、T細胞およびHSCは、HLAが一致し得る。
発明のこれらおよび他の側面は、以下にさらに詳細に記載される。
図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】
図1Aは、CCR2+HSCが、悪性神経膠芽腫モデルにおいて抗PD-1と組み合わされると、流入領域リンパ節において宿主T細胞を交差抗原刺激(cross prime)することができることを示す。
【
図1B】
図1Bは、CCR2+HSCが、髄芽腫モデルにおいて抗PD-1と組み合わされると、流入領域リンパ節において宿主T細胞を交差抗原刺激することができることを示す。
【
図2】
図2は、ACTとのHSC投与が、ACT単独と比較して、腫瘍微小環境内および腫瘍流入領域リンパ節内のTTRNA-T細胞活性化およびIFNγ分泌を有意に増加させることを示す。ACT単独と対比して、ACT+HSCを受けたマウスからのRNAが、T細胞活性化およびB細胞活性化についてRT2 PCRアレイを用いて分析された。
【0012】
【
図3】
図3A~3Cは、CCR2
+HSC移送が腫瘍微小環境内での増加したTTRNA-T細胞活性化と関連していることを示す。
図3Aは、HSCがさらにCCR2+HSCまたはCCR2-HSCに単離され、ACTを受けた担腫瘍マウスに移送されたことを示す。ACT用の腫瘍特異的T細胞は、GREATマウスを用いて作製された。ACTの1週間後、腫瘍を採取し、YFP(IFNγ)の相対的発現を群間で定量した。
図3Bは、移送の24時間後に、CCR2-HSCと比較して、より多くのCCR2+HSCが頭蓋内腫瘍において見出されることを示す。
図3Cは、CCR2-HSC由来細胞およびCCR2+HSC由来細胞が、CCR2-HSCまたはCCR2+HSCのいずれかと共にACTを受けたマウスの頭蓋内腫瘍から単離されたことを示す。HSC由来細胞は、フローサイトメトリーを用いて表現型を決定された。
【0013】
【
図4】
図4は、CCR2
+HSCがin vitroでAPCに分化することを示す。CCR2-HSCおよびCCR2+HSCは、マウス骨髄から新たに単離され、以前に確立された樹状細胞生成プロトコルでin vitroで培養した。得られた細胞は、抗原提示細胞のマーカー、CD11c、CD80、CD86、Gr1-1、MHCIIについて表現型を決定した。次いで、CCR2-HSCおよびCCR2+HSCのいずれかに由来する得られた細胞は、腫瘍抗原を提示する能力について試験された。腫瘍特異的エフェクターT細胞を用いて、腫瘍RNAでパルスしたCCR2-HSC由来細胞、または腫瘍RNAでパルスしたCCR2+HSC由来細胞のいずれかを標的とした。同種抗原のT細胞認識の指標としてIFNγは測定された。
【0014】
【
図5】
図5A~5Cは、CCR2
+HSC由来細胞が頭蓋内腫瘍内のT細胞に腫瘍抗原を提示することを示す。
図5Aは、HSC由来細胞がACTを受けた担腫瘍マウスから単離されたことを示す。エフェクター腫瘍特異的T細胞(TTRNA T細胞)を、単離されたHSC由来細胞を標的とするためのin vitro機能アッセイにおいて使用した。同種の腫瘍抗原が腫瘍特異的T細胞(TTRNA T細胞)に提示されていることの指標としてIFNγ分泌は測定された。
図5Bは、MHC I
-/-またはMHC II
-/-マウスのいずれかから単離されたHSCが、GREATマウスから生成された腫瘍特異的T細胞と共にACTを受けた後期担腫瘍マウスに移送されたことを示す。ACTの1週間後、腫瘍は切除され、CD3
+YFP
+細胞の相対的発現について分析された。
図5Cは、照射の有無に関わらず頭蓋内腫瘍から単離されたHSC由来細胞がTTRNA-T細胞を活性化する能力を有することを示す。
【0015】
【
図6】
図6A~6Bは、腫瘍内CCR2
+HSC由来細胞が末梢において腫瘍特異的T細胞を交差抗原刺激することを示す。
図6Aは、確立されたKR158B頭蓋内神経膠腫を有するマウスが養子細胞療法に加えてGFP
+HSC、GFP
+CCR2
-HSC、またはGFP
+CCR2
+HSCのいずれかを受けたことを示す。ACTの1週間後、GFP+細胞は滅菌FACSを用いて腫瘍から単離された。次いで、これらはDsRed
+腫瘍特異的T細胞を用いてACTを受けた第2セットの担腫瘍マウスの「ワクチン」として使用された。
図6Bは、ワクチン流入領域リンパ節が「ワクチン」の1週間後に収集され、群間のDsRed
+腫瘍特異的T細胞の相対的増殖がフローサイトメトリーを用いて評価されたことを示す。
【
図7】
図7Aは、CCR2
+HPC細胞が骨髄破壊した宿主を骨髄不全から救済するのに失敗したことを示す。C57BL/6マウスは、骨髄破壊的な9Gy TBIおよび新たに単離した骨髄由来HSC、CCR2-HSC、またはCCR2+HSCのいずれかを受けた(全群がマウス1匹当たり10
5個の細胞を受けた)。
図7Bは、養子細胞療法を用いたCCR2
+HSCが、バルクHSC単独の使用よりも有意な生存利益をもたらしたことを示す。
【0016】
【
図8】
図8は、担腫瘍マウスがCCR2+HSCまたはCCR2-HSCのいずれかによる養子細胞療法を受けたことを示す。ACTの1週間後、HSC由来細胞は腫瘍から単離され、フローサイトメトリーを用いて表現型を決定した。
【
図9】
図9は、担腫瘍マウスが腫瘍に直接DsRed+HSC、CCR2-HSC、またはCCR2+HSCの注射を受けたことを示す。1週間後、腫瘍流入領域頸部リンパ節は切除され、フローサイトメトリーによってDsRed+細胞の相対量が定量され、HSC由来細胞が腫瘍から二次リンパ器官に血管外遊出したかどうかを決定した。CCR2-HSCと対比して、CCR2+HSCを受けた群は、流入領域リンパ節において有意に高い量のDsRed+細胞を有した(p=0.0480;独立t検定)。
【0017】
【
図10】
図10Aは、C57BL/6マウスが、IFNγプロモーター上にYFPを発現するGREATマウスから生成された腫瘍特異的T細胞を用いてACTを受けたことを示す。ACTとHSCの同時移送を受けた群では、腫瘍内でより高いYFP発現が検出された。腫瘍を含有する全脳切片にわたって平均蛍光強度を測定した。
図10Bは、フローサイトメトリーを用いて、腫瘍流入領域リンパ節もまた単離され、CD8+T細胞のYFP発現について分析されたことを示す。
【
図11】
図11は、担腫瘍マウスが、T細胞活性化を縦方向に追跡するためにGREATマウスから生成されたTTRNA T細胞を使用して、ACTを受けたことを示す。これに続いて、Sca1、cKit、CD133、CD38、BMPR2、またはCCR2によって定義される骨髄由来の系統陰性HSCの同時移送がなされた。細胞移送の1週間後、腫瘍は切除され、YFPのレベルを測定して、どの亜集団が増加したT細胞活性化をもたらすかを決定した。
【0018】
【
図12】
図12は、in vitro共培養機能性アッセイにおいて遮断抗体の添加によりMHC IまたはMHC IIのいずれかが遮断されたことを示す。HSC由来群の平均IFNγは、HSC由来+抗MHC I群の161.6と対比して、802.4pg/mLであり、p=0.0390の独立t検定であった。MHC IIを遮断する群では、IFNγの有意な減少は検出されなかった。
【
図13】
図13Aは、C57BL/6マウスが小脳Ptc髄芽腫の腫瘍を受けた後、リンパ枯渇性宿主馴化およびバルクHSCまたはCCR2+HSCのいずれかによる養子細胞療法がなされたことを示す。
図13Bは、C57BL/6マウスが、それらの脳幹へのK2脳幹神経膠腫の移植に続いて、リンパ枯渇性宿主馴化およびバルクHSCまたはCCR2+HSCのいずれかによる養子細胞療法を受けたことを示す。
【
図14】
図14は、KR158B頭蓋内担腫瘍マウスが、養子細胞療法の前に、5Gy TBIを用いたリンパ枯渇性宿主馴化を受けたことを示す。コホートはバルクHSC、CCR2-HSC、またはCCR2+HSCのいずれかを受けた。CCR2+HSCを受けたマウスは、バルクHSCを受けたマウス(51日)よりも生存の中央値(未定義)が増加した(p=0.0005)。
【0019】
詳細な説明
以下の詳細な説明は、開示の一定の側面の例示としてなされる。本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく他の側面が企図され、なされ得ることを理解されたい。したがって、例を含む以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではない。本明細書で使用される科学的および技術的用語は、他に特定されない限り、当該分野で一般的に使用される意味を有する。本明細書で提供される定義は、本明細書で頻繁に使用される一定の用語の理解を容易にするためのものであり、本開示の範囲を限定することを意味するものではない。単数形の「a」、「an」、および「the」は、内容が明確に指示していない限り、複数形を包含する。「または」という用語は、内容が明らかにそうではないことを示さない限り、一般に「および/または」を含む意味で用いられる。
【0020】
養子細胞療法(ACTまたは養子細胞移送)。養子細胞療法は、免疫機能および他の特徴を細胞と共に移送する目的のための、細胞の患者への移送である。細胞は最も一般的には免疫由来、例えばT細胞であり、自家性または同種異系であり得る。同種異系の場合、それらは典型的にはHLAが一致している。一般に、がん免疫療法では、T細胞は患者から抽出され、任意に遺伝的に改変され、in vitroで培養され、同じ患者に戻される。同種異系細胞ではなく自家性細胞の移送は移植片対宿主疾患の問題を最小にする。自家性細胞ではなく同種異系細胞の移送は、例えば、T細胞の調製および保存における柔軟性を最大にする。理想的には、いわゆるユニバーサルドナー細胞を使用することができる。ACTはウイルス感染および/またはがんの処置に使用され得る。
免疫抑制後の期間における対象における同種異系ACTの使用は、抗腫瘍免疫を含む免疫を増強し、免疫抑制の後の期間においてワクチン効力を増加させる可能性があるので、対象にとって有利であると考えられる。腫瘍特異的T細胞のACTは、マウスおよびヒトの系における固形腫瘍の処置に有効であることが示されている。開示の態様において、ACTはCCR2+HSC注入と共に使用され、ここで、CCR2+HSCの添加はACT単独と比較して対象の免疫能力を増加させる。
【0021】
キメラ抗原受容体(CAR)改変T細胞(CART)
いくつかの態様において、ACTと共に移送されたT細胞はCARTである。キメラ抗原受容体(CAR)改変T細胞(CART)は、特定の細胞型を選択的に標的化し、免疫系監視能力および腫瘍細胞に対する強力な自己増殖性細胞傷害性メカニズムを絶妙な特異性で利用することにおいて大きな可能性を有する。この技術は、モノクローナル抗体可変領域フラグメントの特異性を有する新生物細胞を標的とし、エフェクターT細胞機能の細胞傷害性を有する細胞死に影響を及ぼすための方法を提供する。例えば、抗原受容体はscFvまたは任意の他のモノクローナル抗体ドメインであり得る。いくつかの態様において、抗原受容体はまた、標的細胞に結合する任意のリガンド、例えば、細胞膜タンパク質と天然に会合するタンパク質の結合ドメインであり得る。
CART療法は、他の形態の処置に難治性であったいくつかの異なる腫瘍型の処置に首尾よく適用されてきた。CART療法の鍵は、細胞特異的に標的とされ得る細胞表面抗原の利用可能性である。選択的に発現されるいくつかの細胞表面抗原がある。
【0022】
いくつかの態様において、本発明は、部分的には、所望のCARを発現するように遺伝子改変されたT細胞(例えば、IL-15Rα細胞質ドメインを含有する)の使用に関する。CARを発現するT細胞は、本明細書ではCAR T細胞、CART、またはCAR改変T細胞と呼ばれる。好ましくは、細胞は、その表面上に抗体結合ドメインを発現するように遺伝子改変され得、MHC非依存性である新規な抗原特異性を付与する。いくつかの例において、T細胞は、特異的抗体の抗原認識ドメインを膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインと組み合わせて単一のキメラタンパク質にするCARを発現するように遺伝子改変されている。いくつかの態様において、2つのCARタンパク質はin vivoで二量体化する(例えば、ホモ二量体またはヘテロ二量体を形成する)。
【0023】
造血幹細胞。造血幹細胞(HSC)は、血液幹細胞とも呼ばれ、自己再生することができ、白血球、赤血球、および血小板を含む血球および免疫細胞などの様々な特殊な細胞に分化することができる、血液および骨髄に見られる未成熟細胞である。HSCは骨髄から循環血に動員することができる。HSCは、血球の一定の再生を促進し、毎日何十億という新しい血球を産生する。
【0024】
造血幹細胞移植(HSCT)。造血幹細胞(HSC)移植(HSCTまたはHSC移送)は、通常、末梢血、骨髄、または臍帯血に由来するHSCの移植である。2種類のHSCT、すなわち、対象自身の幹細胞が使用される自家性幹細胞移植、またはレシピエントと遺伝的に同様であり、HLAが一致するドナーの幹細胞が対象に移植される同種異系幹細胞移植が対象に使用され得る。開示のいくつかの態様において、自家性幹細胞がHSCTに使用される。開示のいくつかの態様において、対象とHLAが一致している同種異系幹細胞がHSCTに使用される。いくつかの態様において、自家性HSCTにおいて、幹細胞を含有する試料は、対象から除かれ、保存され、後で対象に移植して戻される。いくつかの態様において、同種異系または自家性HSCTにおいて、CCR2+幹細胞を含有する試料は、対象から除かれ、保存され、その後対象に移植される。いくつかの態様において、同種異系または自家性HSCTにおいて、CCR2+幹細胞を含有する試料は、対象から除かれ、培養物中でex vivo増殖させ、後で対象に移植される。いくつかの態様において、同種異系または自家性HSCTにおいて、CCR2+幹細胞を含有する試料は、対象から除かれ、試料はCCR2+細胞について選択され、次いで選択された細胞は培養物中でex vivo増殖させる。いくつかの態様において、増殖/培養細胞は再度CCR2+細胞について選択される。いくつかの態様において、CCR2+選択細胞は保存される。いくつかの態様において、CCR2+選択細胞は対象に移植される。CCR2+選択細胞はACTを受けている対象に移植される。いくつかの態様において、対象はまた、放射線療法または化学療法を受ける。
【0025】
造血幹細胞(HSC)およびそのサブセット。HSCは、試料中の血球のすべての集団のごく一部を示すため、がんまたは感染症などの対象における疾患の処置のために対象にCCR2+幹細胞を投与する前に、自家性または同種異系HSCの数を増加させることが有利であり得る。開示のいくつかの態様において、造血幹細胞は、処置のためにそれらを対象に移植する前に、収集され増殖させる。開示のいくつかの態様において、造血幹細胞は、処置のためにそれらを対象に移植する前に、試料から収集され、増殖させ、選択される。いくつかの態様において、造血幹細胞を含有する試料は、対象に造血幹細胞を投与する前に、in vitroで、試料内の幹細胞の数を増やすために得られ、処理される。いくつかの態様において、造血幹細胞を含有する試料は、対象に造血幹細胞を投与する前に、in vitroで、試料内の幹細胞の割合を増加させるために得られ、処理される。
【0026】
発明によれば、造血幹細胞またはその前駆細胞は、CCR2+細胞が濃縮されている。態様において、濃縮は、対象から収集された他の細胞と対比して、幹細胞の成長/増殖を選択的に刺激することによって起こり得る。別の態様において、幹細胞は、対象から収集された他の細胞から幹細胞を単離することによって濃縮され得る。かかる選択は、いわゆる陽性選択または陰性選択であり得る。いくつかの態様において、造血幹細胞を含有する試料は、対象に造血幹細胞を投与する前に、in vitroで、試料内の幹細胞の数を増やすために得られ、処理される。いくつかの態様において、造血幹細胞を含有する試料は、対象に造血幹細胞を投与する前に、in vitroで、試料内のCCR2+幹細胞またはその前駆体の数を増やすために得られ、処理される。いくつかの態様において、造血幹細胞を対象に投与する前に、CCR2+幹細胞またはその前駆細胞の数を増やすために処理された試料は、CCR2-細胞が枯渇している。
【0027】
CCR2+マーカーまたはその前駆細胞について単離または選択されたHSCは、追加的または代替的に、CD34+またはlin-細胞の陽性選択によって単離され得ることを理解されたい。CCR2+マーカーまたはその前駆細胞について単離または選択されたHSCは、追加的または代替的に、陰性選択およびCCR2-細胞の除去によって単離され得ることもまた理解されるべきである。いくつかの態様において、CCR2+HSCまたはその前駆体は、CCR2+HSCを対象に投与する前に単離され増殖させる。いくつかの態様において、HSCは単離され、CCR2+細胞またはその前駆体についてex vivoで選択され、CCR2+HSCを対象に投与する前にex vivoで増殖させる。
陽性選択において、幹細胞は幹細胞上にあるが他の細胞上にはないことが知られているマーカーに基づいて単離される。いくつかの態様において、陽性選択において、幹細胞は、マーカーCCR2+、CD34+、および/またはlin-に基づいて単離され、それによって陽性マーカー(単数または複数)についてHSCを濃縮する。態様において、幹細胞はマーカーCCR2+に基づいて単離される。
陰性選択において、幹細胞ではない細胞は、かかる他の細胞上のマーカーに基づいて同定および除去され、幹細胞を後に残す。陰性選択において、HSCは、ex vivoで処理され、CCR2+、CD34+、および/またはlin-細胞以外を枯渇させ得る。
【0028】
かかる選択手順は当業者に周知であり、フローサイトメトリー分析、マイクロビーズベース単離、磁気ビーズ分離、接着アッセイ、および/またはリガンドベースの選択を含むがこれらに限定されない。いくつかの態様において、リガンドベースの選択は、CCR2リガンド、例えばCCL2、CCL7、またはCCL13の存在に基づく。
いくつかの態様において、CCR2-HSCの出発集団の50%未満が残存する。いくつかの態様において、CCR2-HSCの出発集団の40%、30%、20%、15%、10%、5%、2%未満、さらには1%未満が残存する。いくつかの態様において、投与のためのHSCの調製物は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%以下のCCR2-HSCを含有する。
いくつかの態様において、増殖の介在するステップを伴う陽性選択の複数ステップが使用され得る。態様において、投与のための調製物は、少なくとも約10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のCCR2+細胞(これはCD34+でもあり得る)、および/またはlin-HSCを含有する。
【0029】
本明細書における造血幹細胞の供給源は、以下を含む:G-CSFを用いて宿主骨髄から動員され、AMD3100、プレリキサホル、または分子1,1’-[1,4-フェニレンビス(メチレン)]ビス[1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン]を用いて宿主骨髄から動員された、骨髄系統枯渇細胞(lin-)、cKit+精製系統陰性骨髄由来細胞、Sca+精製系統陰性骨髄由来細胞、cKit+Sca+精製骨髄由来細胞、臍帯血または臍帯血由来幹細胞、ヒト白血球抗原(HLA)一致血液、血液または骨髄由来の間葉系幹細胞、誘導多能性幹細胞から分化した造血幹細胞、動員末梢血、末梢血、CCR2+マーカーで精製されたLin-細胞を含む造血幹細胞サブセット、系統陰性精製末梢血、またはCD34+濃縮末梢血。開示のいくつかの態様において、HSCの供給源は骨髄である。開示のいくつかの態様において、HSCの供給源は自家性または同種異系であり、任意にここで、供給源は骨髄、末梢血、臍帯血、または誘導多能性幹細胞である。
【0030】
造血幹細胞動員剤。開示のいくつかの態様において、造血幹細胞動員剤は、対象に投与され、対象からのHSCの単離を補助し得る。HSC動員は、対象の骨髄から対象の末梢血へのHSCの補充を指す。本出願において、HSC動員剤は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、PEG化G-CSF(ペグフィルグラスチム)、レノグラスチム、グリコシル化形態のG-CSF、C-X-Cモチーフケモカイン2(CXCL2)、C-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR-4)、およびプレリキサホルを含む。
放射線療法または化学療法。HSCTはしばしば化学療法と共に投与される。発明者は、ACTおよびCCR2
+HSCの投与の併用処置の効果が放射線療法によって増強されることを本明細書に示す(例えば、
図7B)。いくつかの態様において、ACTおよびCCR2
+HSCを受ける対象はまた、放射線療法または化学療法を受ける。
【0031】
がん。本明細書に記載の治療法は、既存のがんまたは確立されたがん、すなわち対象に存在し検出可能であるものの処置を含む。さらに、がんの発症の予防のための前がん病変(例えば、腺腫性ポリープ、または細胞異形成)の処置が想定される。本開示に従って処置可能ながんは、以下のがんを含む:メラノーマ、有棘細胞癌、基底細胞癌、乳がん、頭頸部癌、甲状腺癌、軟部組織肉腫、骨肉腫、精巣がん、前立腺がん、卵巣がん、膀胱がん、皮膚がん、脳がん、神経膠芽腫、髄芽腫、上衣腫、血管肉腫(angiosarcoma)、血管肉腫(hemangiosarcoma)、マスト細胞腫瘍、原発性肝がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、膵臓がん、胃腸がん、腎細胞癌、造血器新生物、リンパ腫、中皮腫、またはその転移性のがん。開示の態様において、開示において処置されるがんは、神経膠芽腫、低悪性度の神経膠腫、高悪性度の神経膠腫、脳幹神経膠腫、皮質神経膠芽腫、小児脳がん、および髄芽腫を含む。開示の態様において、がんは、侵襲性頭蓋内神経膠腫である。開示の態様において、がんは、脳、肺、乳房、またはメラノーマの転移性または難治性のがんである。
【0032】
感染症。開示はまた、感染症の処置に関連して有用である。一般に、日和見病原性微生物は、ウイルス、真菌、寄生虫、および細菌として分類され得る。ヒト疾患を引き起こす例示的な病原性ウイルス生物は、フィロウイルス、ヘルペスウイルス、肝炎ウイルス、レトロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、トガウイルス、ピコルナウイルス、パポバウイルスおよび胃腸炎ウイルスを含む(が、これらに限定されない)。重篤なヒト疾患を引き起こす例示的な病原性細菌は、グラム陽性生物:Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Enterococcus faecalisおよびE. faecium、Streptococcus pneumoniaeおよびグラム陰性生物:Pseudomonas aeruginosa、Burkholdia cepacia、Xanthomonas maltophila、Escherichia coli、Enterobacter属菌、Klebsiella pneumoniaeおよびSalmonella属菌である。ヒト疾患を引き起こす例示的な病原性原生生物は、マラリア、例えばPlasmodium falciparumおよびM. ovale、トリパノソーマ症(寝眠病)、例えばTrypanosoma cruzei、ライシュマニア症、例えばLeischmania donovani、アメーバ症、例えばEntamoeba histolyticaを含む(が、これらに限定されない)。ヒト疾患を引き起こすかまたはそれと関連する例示的な病原性真菌は、Candida albicans、Histoplasma neoformans、Coccidioides immitisおよびPenicillium marneffeiを含む(が、これらに限定されない)。態様において、感染症生物は慢性感染症に関与するものである。特に重要な疾患は、肝炎、アデノウイルス、BKなどのポリオーマウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、インフルエンザA、B、およびC型、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)を含むStaphylococcus種、Streptococcus pneumoniaを含むStreptococcus種および移植後感染である。
【0033】
抗体。抗体という用語は最も広い意味で使用され、具体的には、例えば、単一のモノクローナル抗体、ポリエピトープ特異性を有する抗体組成物、一本鎖抗体、および抗体の抗原結合断片を含む。抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4サブタイプ、IgA(IgA1およびIgA2を含む)、IgE、IgDまたはIgMなどの任意の免疫グロブリン由来の免疫グロブリン定常ドメインを含み得る。
いくつかの態様において、本明細書で使用される治療様式は単離され得る。生物製剤の文脈において、単離された手段は、生物製剤がその天然の環境から除去されたか、またはその天然の状態から改変されたことを意味する。そのように、単離されたとは、その分子がその天然の環境から除去されたか、またはその天然の状態から改変された程度を必ずしも反映していない。しかしながら、ある程度まで精製され、その意図された治療目的のために使用され得る程度まで精製された生物製剤は「単離され」ていることが理解されるであろう。
本明細書中で使用される抗体は、それらの標的、例えばCCR2、CD34、または系統枯渇についてキット中で使用される任意の標的などに選択的に結合させるために使用され得る。
【0034】
対象。「対象」は、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、マウス、ラット、げっ歯類、またはヤギなどの哺乳動物を意味する。重要な態様において、対象および/または哺乳動物はヒトである。いくつかの態様において、対象は免疫チェックポイント阻害剤を受けていない。
処置。「処置する」、「処置すること」、「処置」、および「療法」は、対象がある状態を患っている間に起こる行動を包含し、これは、その状態(またはその状態に関連する症状)の重症度を低減するか、またはその状態(またはその状態に関連する症状)の進行を阻止するか、または遅らせる。これは治療的処置である。
有効量。対象は、開示の解決策の有効量で処置される。薬剤の「有効量」は、一般に、所望の生物学的応答を引き出す、すなわち状態を処置するのに十分な量を指す。当業者には理解されるように、本明細書に記載の薬剤の有効量は、処置される状態、投与の様式、および対象の年齢、体組成、および健康状態などの因子に依存して変わり得る。
【0035】
治療的処置のために、有効量は、状態の処置において治療上の利益を提供するため、またはその状態に関連する1つ以上の症状を低減または排除するために十分な量である。これは、全体的な療法を改善する、状態の症状または原因を低減または回避する、または別の治療薬の治療効果を高める量を包含し得る。
一般に、有効量は、対象における免疫応答を増強するために投与される。特定の疾患または状態に関連して、「免疫応答を増強する」は、疾患または状態の1つ以上の症状、例えば、がんの1つ以上の症状、または感染症の1つ以上の症状の発症を停止させること、進行を阻害すること、発症を逆行させること、またはそうでなければ低減または改善することを意味する。さらに、有効量は、対象におけるがん細胞または感染性病原体の増殖を遅らせる、停止させる、または逆転させるような量であり得る。
【0036】
いくつかの態様において、CCR2+HSCの有効量は、ACT単独、ACTおよび化学療法、またはACTおよび放射線療法の組み合わせと比較して、ACTによる治療の利益を増加させるか、またはACTによって処置される対象の状態を改善する任意の量である。
動員剤の例示的な有効量:かかる剤は、幹細胞を骨髄から末梢血に動員するのに十分な量で与えられる。特定の動員剤のかかる量は、例えば、1日当たり1μg/kg~20μg/kgのG-CSF、好ましくは1日当たり5μg/kgまたは10μg/kgのG-CSF;1~20mgのPEG化G-CSF、好ましくは6mgまたは12mgのPEG化G-CSF;1日当たり1~20μg/kgのPEG化G-CSF;1日当たり1~20μg/kgのレノグラスチム;1日当たり1~40μg/m2のC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR-4);1日当たり1~40μg/m2のプレリキサホルである。
【0037】
細胞の投与は、当業者に周知の任意の利用可能な手段によるものである。態様において、細胞の投与は、典型的には注入(例えば、静脈内)または注射(例えば、皮下または腫瘍内)または移植によるものである
タイミング。CCR2+HSCは、処置に有益な影響を及ぼすように十分に近くにACTに投与される。態様において、実際には、CCR2+HSCは、放射線療法の完了から1~28日後、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、または28日後、養子細胞療法の1~14日前、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日前に投与される。CCR2+HSCの反復注入は、その後のACTの周期で、または腫瘍特異的ワクチン接種と共に、典型的には1~6ヶ月、例えば1、2、3、4、5、または6ヶ月の間隔で投与され得る。
【0038】
例
例1.骨髄由来単球集団は高度に不均一であり、別個のサブセットは様々な骨髄性マーカーの差次的発現変動に基づいて定義される。
ケモカイン受容体CCR2は、単球前駆細胞上に発現され、典型的にはKR158B神経膠腫によって発現されるCCL2に対する走化性応答としてCNSへのそれらの侵入に必要とされる(Clarkson et al., 2015;Sagar et al., 2012;Flores et al., 2015)。この研究において、CCR2を発現するHSCのサブセット(CCR2+HSC)が3時間以内に頭蓋内腫瘍に移動することを観察した(データは示さず)。CCR2+HSCを単離するために、骨髄を非担腫瘍マウスから収集し、磁気ビーズ分離キット(Miltenyi Biotec, CA)を用いて系統枯渇させた。次いで、得られた系統陰性HSCを、ビオチン化抗CCR2抗体、続いて抗ビオチンビーズコンジュゲート抗体を用いて二次磁気ビーズ枯渇によりさらに濃縮した。
【0039】
例2.腫瘍中に見出されたHSC由来細胞が頭蓋内腫瘍から腫瘍流入領域リンパ節に血管外遊出し、その後末梢T細胞に腫瘍抗原を提示するかどうかの決定。
HSCを、βアクチンプロモーター上にDsRedレポーターを発現する非担腫瘍マウスの骨髄から単離した。DsRed
+HSCをさらにCCR2
+HSCまたはCCR2
-HSCに単離した。DsRed
+HSC、DsRed
+CCR2-HSC、またはDsRed
+CCR2
+HSCのいずれかを、確立された頭蓋内KR158B腫瘍にin vivoで直接注射した。1週間後、腫瘍流入領域頸部リンパ節を採取し、DsRed
+HSC由来細胞の存在について分析した。CCR2
+HSCを受けた群はリンパ節において有意により多くのCCR2
+HSC由来細胞を有し(未ソートのHSC群に対してp=0.021)、CCR2+HSCがリンパ節に優先的に移動する細胞を生じることを実証した。腫瘍からリンパ節へ血管外遊出したCCR2
+HSC由来細胞が宿主末梢T細胞を交差抗原刺激する能力を有するかどうかを決定するために、同じリンパ節を磁気ビーズベースのPan T cell Depletion Kit(Miltenyi Biotec, CA)を用いた全身性T細胞の単離のためにも処理した。次いで、これらのT細胞を、in vitroで腫瘍細胞標的に対してそれらを共培養することによって抗腫瘍機能について試験した(
図1A~1B)。驚くべきことに、我々は、CCR2
+HSCを受けたマウスの腫瘍流入領域リンパ節から単離されたT細胞は腫瘍標的に応答してIFNγを分泌するが、CCR2
-HSCまたは未ソートのHSCを受けたマウスはIFNγ分泌に基づく劣ったT細胞活性化を示すことを見出した。
【0040】
例3.ACTとのHSC投与の効果。
発明者は、HSCの養子細胞療法との同時移送が、腫瘍内移動および腫瘍特異的T細胞の生着ならびにKR158B神経膠腫における早期腫瘍増殖の抑制を媒介することを以前に実証した(Flores et al., 2015)。そのため彼らは、CCR2
+HSCの使用が養子細胞療法(ACT)の有効性も高めるかどうかを評価した。このACTプラットフォームは、腫瘍由来の全RNAでパルスされた骨髄由来樹状細胞を用いてex vivoで腫瘍特異的T細胞(TTRNA-T細胞)を増殖させる
13。この研究は、ACTと共にHSC投与することによって、ACT単独と比較して、腫瘍微小環境内および腫瘍流入領域リンパ節中のTTRNA-T細胞活性化およびIFNγ分泌を優位に増加させることを実証する(
図2)。
【0041】
例4.腫瘍微小環境内でのTTRNA-T細胞活性化に対するCCR2
+HSCの効果。
腫瘍微小環境内でのTTRNA-T細胞活性化に対するCCR2
+HSCの影響を決定するために、確立された頭蓋内腫瘍を有するマウスは、GREATマウスから生成されたTTRNA-T細胞の養子移送を受け、これらのTTRNA-T細胞のIFNγ分泌のin situ検出を可能にした。次いで、マウスは、CCR2
+HSCまたはCCR2
-HSCのいずれかの静脈内投与を受けた。1週間後、腫瘍を切除し、群間の腫瘍内のYFP
+CD3
+細胞の相対量を決定した。CCR2
+HSCを受けたものは、CCR2
-HSCを受けたマウスよりも有意により多くのYFP
+CD3
+細胞を発現した(
図3A)。
【0042】
例5.CCR2
+HSCの移動および分化。
CCR2
+HSCが頭蓋内腫瘍に移動したかどうかを決定するために、CCR2
+HSCをDsRed発現マウスから単離する一方、CCR2
-HSCをユビキチンプロモーターにGFPレポーターを有するマウスから単離した。両方のHSC集団を、5グレイの全身照射(5Gy TBI)による宿主条件付けを受けた担腫瘍マウスに、等量(5×10
5細胞)を一緒に静脈内注射した。24時間後、腫瘍を切除し、GFP
+CCR2
-HSCと対比して、DsRed
+CCR2
+HSCの相対量を決定した(
図3B)。有意により多くのDsRed
+CCR2
+HSCが24時間以内に頭蓋内腫瘍内に蓄積した。興味深いことに、1週間後に腫瘍内のDsRed
+CCR2
+HSC由来細胞はCCR2発現を失ったが、抗原提示細胞、CD11c、CD80、CD86、およびMHCIIに関連するマーカーを上方制御した(
図3C)。CCR2
+HSCが抗原提示細胞に分化する可能性があるかどうかを決定するために、CCR2
+HSCおよびCCR2
-HSCをマウス骨髄から単離し、両方の集団を樹状細胞生成のために以前に確立されたプロトコルを用いてin vitroで培養した(Flores et al., 2015)。次いで、細胞を表現型決定し、抗原提示能について試験した。CCR2
+HSCから生成された細胞はCD11c、CD80、CD86、およびMHC-IIを上方制御し、その間、抗原特異的T細胞を活性化する能力を高め、同種抗原を提示するそれらの能力を示した(
図4)。
【0043】
例6.HSC由来細胞による腫瘍抗原の提示。
HSC由来細胞がin vivoの腫瘍微小環境内でTTRNA-T細胞に腫瘍抗原を提示できるかどうかを決定するために、担腫瘍マウスはACTを受けた後、GFP
+HSCの静脈内投与を受けた。ACTの3週間後、腫瘍を摘出し、GFP
+HSC由来細胞を、FACSを用いて単離した。次いで、これらを機能性アッセイでTTRNA-T細胞と共培養した。ELISAによって検出されたIFNγ分泌は、同種抗原のTTRNA-T細胞認識を示した(
図5A)。次いで、我々は、HSC由来細胞がCD8またはCD4T細胞を活性化するかどうかを決定することを目指した。担腫瘍マウスは、GREATマウスから生成したTTRNA-T細胞を用いてACTを受けた。次いで、HSCをMHC-IまたはMHC-IIノックアウトマウスから単離し、ACTと同時投与した。3週間後、頭蓋内腫瘍を採取し、YFP
+CD3
+細胞の相対的発現について分析した(
図5B)。T細胞活性化の有意な減少をMHC-1
-/
-HSCを受けたマウスに検出し、これはHSC由来細胞が腫瘍微小環境内でCD8+TTRNA-T細胞に対して腫瘍抗原を提示することを意味する。
【0044】
HSCがこれらの免疫療法実験において投与されるとき、HSCは、非担腫瘍マウスから新たに単離される。そこで我々は、腫瘍のHSC由来細胞がどのようにして腫瘍抗原を獲得するのかを疑問とした。照射が腫瘍内のHSC由来細胞による腫瘍抗原の取り込みに役割を果たすかどうかを決定するために、ACTおよびGFP
+HSCを、5Gy TBIまたは照射なしのいずれかを受けた後期担腫瘍マウスに投与した。移送の3週間後、腫瘍を切除し、GFP
+HSC由来細胞をFACSで単離した。次いで、単離したGFP
+HSC由来細胞をin vitroでTTRNA-T細胞と共培養して、交差抗原刺激するそれらの能力の検出可能な差を試験した(
図5C)。非照射腫瘍と対比して、照射腫瘍から単離されたHSC由来細胞に対してTTRNA-T細胞を共培養したとき、有意により多くのIFNγを検出した。
【0045】
例7.CCR2
+HSC由来細胞を受けた対象におけるTTRNA-T細胞の生着。
我々のグループは、腫瘍RNAパルス樹状細胞ワクチンが、末梢における養子移送されたTTRNA-T細胞の生着および増殖に関与していることを以前に発表した(Flores et al., 2015)。これと上記のデータを考慮して、樹状細胞などの専門的な抗原提示細胞として、CCR2
+HPC由来細胞がワクチン流入領域リンパ節におけるTTRNA-T細胞の生着および活性化を増強することができるかどうかを決定する実験を行った。確立された腫瘍を有するマウスの群は、ACTおよびGFP
+HSC、GFP
+CCR2
+HSC、またはGFP
+CCR2
-HSCのいずれかを受けた(
図6A)。養子移送の3週間後、すべての腫瘍からのGFP
+細胞を採取し、FACSを用いて単離した。次いでこれらを、ACTを受けた担腫瘍マウスの別のセットにおける「ワクチン」として使用した。マウスのこれらの群において、DsRed
+TTRNA-T細胞を用いてACTを行い、次いでワクチンなし、樹状細胞ワクチン、腫瘍由来のGFP
+HSC、GFP
+CCR2
+HSC由来細胞、またはGFP
+CCR2
-HSC由来細胞のいずれかでワクチン接種した。1週間後、ワクチン流入領域リンパ節を採取し、DsRed
+CD3
+細胞について分析して、TTRNA-T細胞の生着を決定した(
図6B)。腫瘍から単離したCCR2
+HSC由来細胞を受けたマウスは、ワクチンリンパ節にDsRed
+CD3
+TTRNA
-T細胞の生着を示した。
【0046】
例8.ACTの有効性に対するCCR2
+HSCの免疫増強効果。
ACTの有効性は骨髄破壊的宿主条件付けに依存することが以前に見出された(Flores et al., 2015)。我々は、CCR2
+HSCが末梢および頭蓋内腫瘍の両方において抗腫瘍免疫を増強することができることを実証したので、以前に使用したHSCの代わりにCCR2
+HPC細胞を使用することが、我々が以前観察した有効性を提供するかどうかを調べた。ACTでCCR2
+HSC細胞を使用する前に、CCR2
+HSC細胞が骨髄破壊的宿主条件付けから骨髄を救済する能力を有する真の造血幹細胞であるかどうかを最初に決定した。ナイーブマウスは9Gy TBIを用いて骨髄破壊(MA)を受けた。群は、MAのみ、MA
+HSC細胞、MA
+CCR2
+HSC細胞、またはMA
+CCR2
-HSC細胞のいずれかを受けた。CCR2
+HPC細胞は骨髄破壊した宿主を骨髄不全から救済することができなかった(
図7A)。したがって、CCR2
+HSCの免疫増強効果がACTの有効性に影響を与えるかどうかを決定するために、非骨髄破壊的(NMA)5Gy TBI宿主条件付けを使用した。頭蓋内KR158B担腫瘍マウスの群は、非骨髄破壊的5Gy TBIを受け、続いてACTおよびHSC、CCR2
+HSC、またはCCR2
-HSCの同時移送を受けた(
図7B)。養子細胞療法と共にCCR2
+HSCを使用すると、バルクHSC単独の使用よりも有意な生存上の利益が提供された(p=0.0005)。我々は、このCCR2
+lin-骨髄由来細胞の集団が、養子T細胞戦略との組み合わせにおいて、増加したT細胞活性化を媒介することを実証する。
【0047】
例9.CCR+造血幹細胞は養子細胞療法においてT細胞活性化を媒介する
CCR2+HSCの養子細胞療法との同時移送は、複数の脳腫瘍モデルにおいて生存利益を著しく増加させた。我々は、静脈内投与されたCCR2+HSCがCNS腫瘍微小環境に優先的に移動し、腫瘍部位でCD11c+抗原提示細胞(APC)に分化し、免疫抑制腫瘍微小環境内で遺伝子発現を再プログラムすることを見出した。さらに、CCR2+HSCに由来するAPCは、腫瘍由来抗原をCD8+およびCD4+腫瘍反応性リンパ球に独自に交差提示し、長期の腫瘍内T細胞活性化および増強された腫瘍拒絶をもたらす。
【0048】
我々は、CCR2
+HSC由来の細胞が腫瘍内の抗原提示細胞に分化し得ることを実証した。頭蓋内腫瘍に存在するこれらの抗原提示細胞が、流入領域リンパ節においてT細胞に腫瘍抗原を提示する能力を有するかどうかを我々は仮定した。第一に、腫瘍中に見出されたHSC由来細胞が頭蓋内腫瘍から流入領域リンパ節に血管外遊出しているかどうかを決定するために、DsRed
+HSC、DsRed
+CCR2
-HSC、またはDsRed
+CCR2
+HSCをin vivoで確立された頭蓋内KR158B腫瘍に直接注入した。1週間後、流入領域頸部リンパ節を採取し、DsRed
+細胞の存在について分析した。CCR2
+HSCを受けた群は、リンパ節において有意により多くのDsRed
+細胞を有した(未ソートのHSC群に対してp=0.021、CCR2
-HSCに対してp=0.0480)(
図8)。これらの流入領域リンパ節由来のT細胞を、in vitroで標的腫瘍細胞に対してそれらを共培養することによって、抗腫瘍機能について試験した(
図1A/1B)。CCR2
+HSCの頭蓋内注射を受けたマウスは、腫瘍抗原に応答して末梢T細胞による増加したIFN-γ分泌を示し、これは、これらのT細胞が、おそらく、腫瘍において抗原提示細胞に分化し、流入領域リンパ節に血管外遊出したCCR2
+HSC由来の細胞によって、腫瘍抗原に対して抗原刺激されたことを示唆する。
【0049】
チェックポイント遮断に加えて、養子細胞療法は固形腫瘍に対して明らかに影響力がある(Rosenberg SA. Raising the bar: the curative potential of human cancer immunotherapy. Science translational medicine. 2012;4(127):127ps8; Rosenberg SA. Cell transfer immunotherapy for metastatic solid cancer--what clinicians need to know. Nat Rev Clin Oncol. 2011;8(10):577-85.)。マウスおよびヒトの系での研究は、養子細胞療法の有効性が、リンパ枯渇性宿主条件付けとそれに続くHSC移送の後に増強されることを実証した(Wrzesinski C, Paulos CM, Gattinoni L, Palmer DC, Kaiser A, Yu Z, Rosenberg SA, and Restifo NP. Hematopoietic stem cells promote the expansion and function of adoptively transferred antitumor CD8 T cells. J Clin Invest. 2007;117(2):492-501)。我々は以前に、養子細胞療法とのlin-HSCの同時移送が、腫瘍特異的T細胞の移動および生着ならびにKR158B神経膠腫における腫瘍増殖の抑制を媒介することを実証した(Flores C, Pham C, Snyder D, Yang S, Sanchez-Perez L, Sayour E, Cui X, Kemeny H, Friedman H, Bigner DD, et al. Novel role of hematopoietic stem cells in immunologic rejection of malignant gliomas. Oncoimmunology. 2015;4(3):e994374)。我々は、CCR2
+HSCが養子細胞療法(ACT)の増強に関与するバルクHSC集団の活性成分であるかどうかを評価した。ACTは、全腫瘍RNAでパルスされた骨髄由来樹状細胞(DC)を使用して、ex vivoで腫瘍特異的T細胞を増殖させる(Flores, C. et al. Novel role of hematopoietic stem cells in immunologic rejection of malignant gliomas. Oncoimmunology 4, e994374, doi:10.4161/2162402X.2014.994374 (2015))。我々は、ACTとのHSC投与が、ACT単独と比較して、腫瘍微小環境内および流入領域リンパ節中の腫瘍特異的T細胞活性化およびIFN-γ分泌を有意に増加させることを見出した(p=0.011)(
図10A、10B、および
図2)。
【0050】
腫瘍微小環境内でのT細胞活性化に対するCCR2+HSCの影響を決定するために、確立された腫瘍を有するマウスは、GREATマウスから生成された腫瘍特異的T細胞の養子移送を受け、これらのT細胞のIFN-γ分泌のin situ検出を可能にした。マウスは、静脈内CCR2+HSCまたはCCR2-HSCを受けた。腫瘍を切除し、腫瘍内のYFP+CD3+細胞の相対的発現を決定した。CCR2-HSCと対比して、CCR2+HSCを受けたものは、有意により多くのYFP+CD3+細胞を発現した(19.2%対6.3%、p=0.0002)(
図3a)。lin-HSC由来の他の前駆体サブセット(Sca-1+、c-Kit+、CD133+、CD38+、BMPR2+)を、腫瘍反応性リンパ球を活性化するそれらの能力について評価し、CCR2+HSCは抗腫瘍免疫の増強において著しく優れていた(
図11)。
【0051】
これらのHSCサブセットが頭蓋内腫瘍に移動するかどうかを決定するために、DsRed+CCR2+HSCおよびGFP+CCR2-HSCを、リンパ枯渇担腫瘍マウスに等量(5×105個の細胞)で静脈内注射した。24時間後、GFP+CCR2-HSCと対比して、DsRed+CCR2+HSCの相対量を腫瘍において測定した。有意により多くのDsRed+CCR2+HSCが24時間で頭蓋内腫瘍内に蓄積した(p=0.0010)。以前に実証されたように、1週間後、DsRed+CCR2+HSC由来細胞はCCR2発現を喪失したが、APC、CD11c、CD80、CD86、およびMHC-IIに関連するマーカーを上方制御した(
図3Cおよび
図8)。CCR2+HSCおよびCCR2-HSCを単離し、樹状細胞生成条件下(12)でin vitroで培養し、抗原提示細胞への分化を調べた。CCR2+HSC由来の抗原提示細胞は、明確な樹状細胞表現型を有していたが、CCR2-HSCから生じた細胞は単球抑制細胞マーカーLy6G(Gr1-1)の発現を上方制御した(
図4)。さらに、CCR2+HSC由来の細胞は、CCR2-HSCから生じた細胞よりも、in vitroで腫瘍抗原を提示することにおいて著しく優れていた(
図4)。
【0052】
HSC由来細胞が腫瘍微小環境内で腫瘍抗原を捕捉し提示するかどうかを決定するために、マウスは、同系GFPトランスジェニックマウスからHSCを受けた。養子細胞療法の3週間後、GFP+HSC由来細胞を、FACSを用いて腫瘍から単離した。次いで、これらを抗腫瘍TTRNA-T細胞と共培養し、腫瘍由来抗原の特異的提示を実証した(
図5A)。HSC由来細胞がCD4またはCD8腫瘍特異的T細胞に抗原を提示する能力を有するかどうかを決定するために、HSC由来細胞を再度FACSで単離し、MHC-IまたはMHC-IIをエフェクター腫瘍特異的T細胞に対して培養する前に遮断抗体を用いて遮断した(
図12)。MHC-1を遮断した後、IFNγ分泌の有意な減少を観察した。HSC由来細胞がT細胞に抗原を提示する能力を高めることを確認するために、次いで、HSCをMHC-IまたはMHC-IIノックアウトマウスから単離し、ACTと同時投与した。3週間後、腫瘍を採取し、YFP+CD3+細胞の発現について分析した(
図5B)。T細胞活性化の有意な減少を、野生型HSCと対比して、MHC-1-/-HSCを受けたマウスにおいて検出し(p=0.0002)、HSC由来細胞によるクラスI経路における腫瘍抗原の交差提示が、CNS腫瘍微小環境内でのin vivoのT細胞活性化に重要であることを実証した。
【0053】
CCR2+HSCに由来する抗原提示細胞の独自の交差抗原刺激能力をさらに実証するために、我々は、養子細胞療法を受けているマウスの腫瘍から直接抗原提示細胞を単離し、DsRed+腫瘍特異的T細胞を受けているレシピエントマウスにおける細胞ワクチンとしてそれらを用いた。担腫瘍マウスは、養子細胞療法およびGFP+HSC、GFP+CCR2+HSC、またはGFP+CCR2-HSCのいずれかを受けた(
図6A)。養子細胞療法の3週間後、すべての腫瘍からGFP+細胞を採取し、FACSを用いて単離した。次いで、これらを、養子細胞療法を受けた担腫瘍マウスの別のセットにおける「ワクチン」として使用した。このコホートは、ワクチンなし、DCワクチン(TTRNA DC)、またはGFP+HSC、GFP+CCR2+HSC由来細胞、またはGFP+CCR2-HSC由来細胞に由来する腫瘍微小環境から単離された抗原提示細胞のいずれかを受けた。ワクチン部位流入領域リンパ節を採取し、DsRed+CD3+T細胞の増殖について分析し、CCR2+HSCがin vivoで腫瘍反応性T細胞の増殖をもたらすことを実証した(
図6B)。まとめると、これらの実験は、CCR2+HSCが、in vivoで腫瘍抗原を捕捉し、in vitroおよびin vivoで腫瘍抗原をCD8+T細胞に交差提示するAPCを独自に生じさせることを実証する。
【0054】
lin-CCR2+HSCが骨髄不全からの救済を提供する真の造血幹細胞であるかどうかを決定するために、CCR2+HSCまたはCCR2-HSCを骨髄破壊した宿主(9Gy TBI)に静脈内投与した。Lin-CCR2+HSCは、致死的な照射から宿主を救済するのに効率的ではなく、前駆体集団を示唆した(
図7A)。CCR2+HSCが、脳腫瘍を標的とする養子細胞療法における幹細胞移送の向上した有効性の原因であるかどうかを決定するために、CCR2-HSCと対比して、非骨髄破壊的条件付け(5Gy TBI)を受けたマウスにおいて養子細胞療法と共に精製CCR2+HSCを移送した。CCR2+HSCは、神経膠腫(p=0.0005)(
図14)および髄芽腫に対する養子細胞療法の有効性の増強において著しく優れており、脳幹神経膠腫に対する同等な生存利益を提供した(
図13)。これらの知見は、腫瘍の微小環境を変化させ、免疫チェックポイント遮断および養子細胞療法に対する応答を増強する能力を有する骨髄由来前駆細胞集団を同定する最初のものである。これらの知見は、固形悪性腫瘍の処置における幹細胞移植の役割の我々の理解を変え、がん免疫療法に対する耐性に対処するための関連性を保持する。
【0055】
材料および方法:
マウス。6~8週齢の雌C57BL/6マウス(Jackson Laboratories、ストック番号000664)、トランスジェニックDsRedマウス(Jackson Laboratories、ストック番号006051)、およびトランスジェニックGREATマウス(Jackson Laboratories、ストック番号017580)を実験に使用した。研究者らは、国立研究評議会の生命科学に関する実験動物資源管理委員会の委員によって提案された「Guide for the Care and Use of Laboratory Animals」を遵守した。フロリダ大学動物管理サービスの施設は、米国実験動物管理認定協会によって完全に認定されており、すべての研究はフロリダ大学の施設内動物管理および使用委員会によって承認された。
RNAの単離。腫瘍細胞株からの全腫瘍RNAの単離は、製造者のプロトコルに従ってRNeasyミニキット(Qiagen、カタログ番号74104)を用いて行った。
【0056】
腫瘍特異的T細胞。腫瘍反応性TTRNA-T細胞を、以前に記載されたようにして生成した(Flores et al., 2015)。簡潔に言えば、骨髄由来樹状細胞をC57BL/6マウスから採取し、GM-CSF(18ng/mL、R&D、カタログ番号415-ML/CF)およびIL-4(18ng/mL、R&D、カタログ番号404-ML/CF)中で9日間培養した。次いで樹状細胞を、腫瘍組織から単離した25μgの全RNAでエレクトロポレーションした。ナイーブマウスを2.5×105個の全腫瘍RNAパルス樹状細胞で抗原刺激した。1週間後、次いで脾細胞を採取し、全腫瘍RNAパルス樹状細胞およびIL-2(50U/mL、R&D、カタログ番号402-ML/CF)を用いてex vivoで5日間共培養した。養子細胞療法のために107個のT細胞を静脈内投与した。
【0057】
腫瘍モデル。担腫瘍実験を同系の性別一致C57BL/6マウスで行った。KR158B(9)神経膠腫系(国立がん研究所、Karlyne M. Reilly博士により提供)を、高悪性度の神経膠腫として、適切なハプロタイプ背景および星状細胞腫関連遺伝子の発現を実証するRNASeqによる遺伝子発現分析により、組織学的に検証した。正中線に対して横2mm、深さ3mmに注射することによって、104個のKR158B細胞を尾状核に移植した(Reilly KM, Loisel DA, Bronson RT, McLaughlin ME, and Jacks T. Nf1; Trp53 mutant mice develop glioblastoma with evidence of strain-specific effects. Nat Genet. 2000;26(1):109-13.; Flores et al., 2015)。Ptc腫瘍細胞は、自発性腫瘍を発症しているPtc+/-トランスジェニックマウスに直接由来した。腫瘍を野生型C57BL/6マウスにおいてin vivoで連続的に継代し、Ptc+/-マウス髄芽腫との一貫性について遺伝子発現分析によって検証した(Pham CD, Flores C, Yang C, Pinheiro EM, Yearley JH, Sayour EJ, Pei Y, Moore C, McLendon RE, Huang J, et al. Differential Immune Microenvironments and Response to Immune Checkpoint Blockade among Molecular Subtypes of Murine Medulloblastoma. Clin Cancer Res. 2016;22(3):582-95)。Ptc髄芽腫を用いた実験のために、1.25×105個のPtc細胞を小脳の正中線に対して横1mm、深さ3mmに移植した(Pham et al., 2016; Goodrich LV, Milenkovic L, Higgins KM, and Scott MP. Altered neural cell fates and medulloblastoma in mouse patched mutants. Science. 1997;277(5329):1109-13)。脳幹神経膠腫細胞(Oren Becher博士により提供)を用いた実験のために、105個の細胞をマウスの脳幹の正中線上のテント下1mm、深さ3.5mmに定位的に移植した。
【0058】
養子細胞療法。担腫瘍マウスの処置は、腫瘍注射後5日目にX線照射(X-RAD 320, Precision X-ray)を用いて5Gyリンパ枯渇または9Gy骨髄破壊で開始した。頭蓋内腫瘍注射後6日目に、マウスは、5×104個の系列枯渇(lin-)造血幹細胞および前駆細胞(HSC)(MiltenyiBiotec、カタログ番号130-090-858)、CCR2+lin-HSC、またはCCR2-lin-HSCのいずれかを有する107個の自家性ex vivo増殖TTRNA T細胞で単回静脈内注射を受けた。CCR2陽性選択を、ビオチン化抗マウスCCR2抗体、続いて抗ビオチンマイクロビーズ分離を用いて行った。腫瘍注射後7日目から始めて、2.5×105個の腫瘍RNAパルス樹状細胞ワクチンを、3回の全ワクチン投与のために毎週耳介の後方に皮内注射した。
マウスリンパ節。リンパ節を処置マウスの頸部領域から両側で解剖した。リンパ節を機械的に解離し、2%コラゲナーゼ(Fisher Scientific、カタログ番号10103578001)で30分間化学的に消化した。
【0059】
脳腫瘍の消化。腫瘍切除は、注射部位の近くの腫瘍塊のすべての境界まで拡張した。腫瘍を滅菌かみそりの刃で機械的に解離し、パパイン(Worthington、カタログ番号NC9809987)で化学的に30分間解離し、次いで抗体インキュベーションの前に70μm細胞ストレーナーで濾過した。
フローサイトメトリーおよび抗体。フローサイトメトリーをFACS Canto-IIで行い、FACSソーティングをFACSAria IIで行った。細胞を上記のようにex vivoで調製し、PBS(Gibco、カタログ番号10010-049)中の2%FBS(Seradigm、カタログ番号97068-091)に懸濁した。以下の抗体を、アイソタイプコントロールを用いた製造者の推奨に従って適用した。抗CD3(BD、カタログ番号553066)、抗CD11c(Affymetrix、カタログ番号17-0114-82)、抗CD80(Affymetrix、カタログ番号17-0801-82)、抗CD86(Affymetrix、カタログ番号17-0862-82)、抗Ly-6G/6C(BD Biosciences、カタログ番号553129)、および抗MHC II IA-E(Affymetrix、カタログ番号17-5321-82)。抗マウスMHCクラスII(I-A/I-E)遮断抗体(Affymetrix、カタログ番号16-5321-85)および抗マウスMHCクラスI(H-2K)遮断抗体(Affymetrix、カタログ番号16-5957-85)。
【0060】
T細胞機能アッセイ。in vitro実験では、T細胞活性の尺度としてIFN-γ放出を利用し、エフェクター細胞および標的を96ウェルU底プレート中で10:1の比率で3回共培養した。1日の共培養の後、IFN-γ Platinum ELISA(Affymetrix、カタログ番号BMS606)を、96ウェル共培養プレートの上清由来の採取され凍結された細胞培地上で行った。
抗PD-1遮断抗体。抗PD-1遮断抗体(Merck、mDX-400)の投与を、T細胞投与の日に始め、5日毎に合計4回の10mg/kgの投与を続けた(8)。
PCRアレイ。処置マウスから切除した腫瘍についてPCR分析を行った。腫瘍を解離し、上記のようにRNAを単離し、RT2 Profiler Array Cancer Inflammation and Immunity Crosstalk(Qiagen、カタログ番号PAMM-181ZD-12)またはT cell and B cell Activation(Qiagen、カタログ番号PAMM-053ZD-2)を用いて、製造者のプロトコルに従って分析した。
【0061】
統計分析。統計は、UF脳神経外科の生物統計学者Paul Kubilis、MSによってレビューされた。すべての実験をPrism 7で分析し、図の説明文に記載されているように試験を適用した。担腫瘍動物の生存の中央値は、このプロトコルに記載されている実験におけるマウスについて25~42日である。我々は我々の実験群間の生存および/または腫瘍の大きさの有意差(4.5倍以上)に関心があるため、1群当たりわずか7匹の動物が、所与の治療法による統計的に有意な結果を検出するのに十分である。最も興味深いのは、生存のコントロールアームとのペアワイズ比較である。多数の試験または比較を説明するために、0.0125の有意レベルが使用されるであろう(すなわち、0.05/4のボンフェローニ補正)。各アームに10匹の動物を用いると、各ペアワイズ比較は、コントロールアームにおいて予想される25日の中央値と比較して、実験アームにおける生存の中央値の4.5倍の増加を検出する80%のパワーを有するであろう。我々の実験マウスで実証された治療効果の分散のために、一定の実験において(7匹と対比して)10匹の動物を使用することは十分な統計分析を行うために必要とされる。この提案で概説されたすべての生存結果の実験は、この統計的検証のために7~10匹の動物群を使用する。対数順位検定を用いて、カプラン・マイヤー生存曲線を比較した。独立マン・ホイットニー順位和検定をin vivo実験のための2群比較に適用した。独立スチューデントt検定をin vitro実験のための2群比較に適用した。データは正規分布を有し、分散は統計的に比較した群間で類似していた。有意性はp<0.05として決定される。生物学的な評価項目(endpoint)について組織を分析した動物研究では、試料の大きさを決定するために1群当たりn=5のマウスを使用し、統計学的方法は使用しなかった。著者は、動物または試料を分析から除外するべきではないことを事前に確立した。動物実験の無作為化のために、1ケージ当たり5匹のマウスでマウスを飼育した。腫瘍移植後、マウスを直ちにケージに無作為化した。
【0062】
【0063】
他の態様
本明細書に開示されているすべての特徴は、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書に開示されている各特徴は、同じ、同等、または類似の目的を果たす代替の特徴によって置き換えられてもよい。したがって、他に明示的に述べられていない限り、開示された各特徴は、包括的な一連の同等または類似の特徴の一例にすぎない。
上記の説明から、当業者は本開示の本質的な特徴を容易に確認することができ、その趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な使用および条件に適合させるために開示の様々な変更および修正をすることができる。したがって、他の態様も特許請求の範囲内にある。
【0064】
均等物
本明細書ではいくつかの発明の態様が説明され、例示されたが、当業者は、機能を実行し、および/または結果を得るための様々な他の手段および/または構造および/または本明細書に説明した利点のうちの1つ以上を容易に想到するであろう。かかる変形および/または修正の各々は、本明細書に記載の発明の態様の範囲内にあるとみなされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載のすべてのパラメータ、寸法、材料、および構成が例示的であることを意味し、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は発明の教示が使用されている特定の用途(単数または複数)に依存することを容易に理解するであろう。当業者であれば、本明細書に記載の特定の発明の態様に対する多くの均等物を認識し、または日常的な実験のみを用いて確かめることができるであろう。したがって、前述の態様は例としてのみ提示され、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、発明の態様は具体的に説明および特許請求の範囲に記載されるもの以外の方法で実施され得ることを理解されたい。本開示の発明の態様は、本明細書に記載されている個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法のそれぞれに関する。さらに、かかる特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が互いに矛盾していない場合、かかる特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の2つ以上の任意の組み合わせも本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0065】
本明細書で定義および使用されるすべての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文書中の定義、および/または定義された用語の通常の意味を支配すると理解されるべきである。
本明細書に開示されているすべての参考文献、特許および特許出願は、それぞれが引用されている主題に関して参照により組み込まれており、場合によっては文書の全体を包含し得る。
本明細書および特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」および「an」は、そうでないことが明確に示されていない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0066】
本明細書および特許請求の範囲で使用される「および/または」なる句は、そのように結合された要素、すなわち場合によっては結合的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解されるべきである。「および/または」で列挙された複数の要素は、同じように、すなわち、そのように結合された要素の「1つ以上」であるものと解釈されるべきである。具体的に識別された要素に関連しているかどうかにかかわらず、「および/または」なる節によって具体的に識別された要素以外の他の要素が任意に存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「含む」などのオープンエンド言語と共に使用されるときの「Aおよび/またはB」への言及は、一態様において、Aのみ(任意にB以外の要素を含む)を、別の態様では、Bのみ(任意にA以外の要素を含む)を、さらに別の態様では、AとBの両方(任意に他の要素を含む)等を指し得る。
【0067】
本明細書および特許請求の範囲で使用されるように、「または」は、上記で定義されたような「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を分離するとき、「または」または「および/または」は包括的、すなわち、少なくとも1つを含むが、複数の数またはリストの要素も含み、任意にリストに含まれていない追加の項目も含むものとして解釈されるものとする。「のうちの1つのみ」または「のうちの正確に1つ」、または、特許請求の範囲で使用される場合「からなる」などの反対に明確に示された用語のみが、正確に1つの数の要素または要素のリストの包含を指すであろう。一般に、本明細書で使用される「または」という用語は、「どちらか」、「の1つ(one of)」、「の1つのみ(only one of)」、または「の正確に1つ(exactly one of)」などの排他性の用語が先行するときに排他的な選択肢(すなわち「一方または他方、両方ではない」)を示すと解釈されるに過ぎない。「から本質的になる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲において使用されるとき、特許法の分野において使用されるその通常の意味を有するものとする。
【0068】
明細書および特許請求の範囲で使用されるように、1つ以上の要素のリストに関する句「少なくとも1つ」は、要素のリストにおける任意の1つ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであるが、必ずしも要素のリスト内に具体的に列挙された各要素の少なくとも1つおよびすべての要素を含まず、要素のリストにおける要素の任意の組み合わせを除外しない。この定義はまた、「少なくとも1つ」という句が指す要素のリスト内で具体的に識別された要素以外の要素が、具体的に識別されたそれらの要素に関係するか関係しないかに関わらず、任意に存在し得ることを可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または同等に「AまたはBの少なくとも1つ」、または同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一態様において、少なくとも1つ(任意に1つより多いものを含む)のA(Bは存在しない(そして、任意にB以外の要素を含む))を、別の態様において、少なくとも1つ(任意に1つより多いものを含む)のB(Aは存在しない(そして、任意にA以外の要素を含む))を、さらに別の態様において、少なくとも1つ(任意に1つより多いものを含む)のA、および、少なくとも1つ(任意に1つより多いものを含む)のB(そして、任意に他の要素を含む)等を指し得る。
【0069】
反対に明確に示されていない限り、1つより多いステップまたは行為を含む特許請求の範囲の任意の方法において、方法のステップまたは行為の順序は、必ずしも方法のステップまたは行為が列挙されている順序に限定されないことも理解されるべきである。
特許請求の範囲ならびに上記の明細書において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「もつ(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「伴う(involving)」、「保持する(holding)」、「から構成される(composed of)などのすべての移行句は、オープンエンドである、すなわち、限定するものではないが含むことを意味すると理解されるべきである。「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」という移行句のみが、それぞれ、米国特許庁の特許審査手続、第2111.03節に記載されているように、クローズまたはセミクローズの移行句であるものとする。オープンエンドの移行句(例えば、「含む」)を使用してこの文書に記載されている態様もまた、代替的な態様において、オープンエンドの移行句によって記載された特徴「からなる」および「から本質的になる」ものとして企図される。例えば、開示が「AおよびBを含む組成物」を記載する場合、開示はまた、代替的な態様「AおよびBからなる組成物」および「AおよびBから本質的になる組成物」も企図する。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【外国語明細書】