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特開2022-163086脂質過酸化誘発性疾患の治療薬およびそのスクリーニング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163086
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】脂質過酸化誘発性疾患の治療薬およびそのスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/92 20060101AFI20221018BHJP
   A61K 31/472 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 31/5513 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 31/245 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 31/4045 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221018BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20221018BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
G01N33/92 Z
A61K31/472
A61K31/407
A61K31/47
A61K31/198
A61K31/5513
A61K31/245
A61K31/4045
A61P1/16
A61P9/00
A61P9/12
A61P9/10 101
A61P11/06
A61P13/12
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P27/02
A61P35/00
G01N33/15 Z
G01N33/50 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118026
(22)【出願日】2022-07-25
(62)【分割の表示】P 2021051731の分割
【原出願日】2018-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2017132772
(32)【優先日】2017-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】517154410
【氏名又は名称】山田 健一
(71)【出願人】
【識別番号】000238201
【氏名又は名称】扶桑薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 健一
(72)【発明者】
【氏名】進藤 早紀
(72)【発明者】
【氏名】井手 友美
(72)【発明者】
【氏名】山本 啓一
(57)【要約】      (修正有)
【課題】脂質過酸化抑制効果を示す化合物を検出するためのアッセイ方法、該アッセイ方法を用いるスクリーニング方法、および脂質過酸化反応誘発性の疾患(例えば、加齢黄斑変性症)を治療等するための医薬を提供する。
【解決手段】本発明は、蛍光プローブ分子として式(I)で示される化合物を用いる、被験化合物の脂質過酸化抑制の活性を検出するためのアッセイ方法、該アッセイ方法を利用するアッセイキット、該アッセイ方法を用いるスクリーニング方法、並びに脂質過酸化反応誘発性の疾患(例えば、加齢黄斑変性症)を治療等するための医薬組成物を提供する。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験化合物の脂質過酸化抑制の活性を検出するためのアッセイキットであって、
緩衝液中に、
式(I):
【化1】
で示される化合物、
リポソーム、および
2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩および二価の鉄イオン供給源物質からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物、
を含む、アッセイキット。
【請求項2】
二価の鉄イオン供給源物質が硫酸鉄(II)である、請求項1記載のアッセイキット。
【請求項3】
脂質過酸化抑制の活性を示す化合物の活性値を示す添付文書を含む、請求項1または2記載のアッセイキット。
【請求項4】
被験化合物の脂質過酸化抑制の活性を検出するためのアッセイキットであって、
緩衝液中に、
式(I):
【化2】
で示される化合物、
培養細胞、
アラキドン酸およびtert-ブチルヒドロペルオキシドからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物、
を含む、アッセイキット。
【請求項5】
培養細胞がヒト肝由来HepG2細胞である、請求項4記載のアッセイキット。
【請求項6】
脂質過酸化抑制の活性を示す化合物の活性値を示す添付文書を含む、請求項4または5記載のアッセイキット。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか2つまたはそれ以上のアッセイキットを含む、アッセイキット。
【請求項8】
i)式(I)で示される化合物およびリポソームを含む緩衝液を調製する、
ii)2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩および二価の鉄イオン供給源物質からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を添加する、
iii)被験化合物を添加する、
iv)蛍光を測定する、
v)蛍光測定の結果から、被験化合物の活性値を求める、
を含む、脂質過酸化抑制の活性を測定するためのアッセイ方法。
【請求項9】
i)式(I)で示される化合物および培養細胞を含む緩衝液を調製する、
ii)アラキドン酸およびtert-ブチルヒドロペルオキシドからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を添加する、
iii)被験化合物を添加する、
iv)蛍光を測定する、
v)蛍光測定の結果から、被験化合物の活性値を求める、
を含む、脂質過酸化抑制の活性を測定するためのアッセイ方法。
【請求項10】
vi)脂質過酸化抑制活性の指標となる化合物の活性値と比較することを含む、請求項8または9記載のアッセイ方法。
【請求項11】
マイクロウェルプレートで用いるための、請求項8~10のいずれか1つに記載のアッセイ方法。
【請求項12】
i)化合物ライブラリーから被験化合物を選択する、
ii)被験化合物を用いる、請求項8に記載の2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩を用いるアッセイ方法によるスクリーニングを行い、高い活性値を示す化合物を選択する、
iii)次いで、ii)の高い活性値を示した化合物を用いる、請求項8に記載の二価の鉄イオン供給源物質を用いるアッセイ方法によるスクリーニングを行い、高い活性値を示す化合物を選択する、
ことを含む、脂質過酸化抑制活性の高い候補化合物を選択するためのスクリーニング方法。
【請求項13】
化合物ライブラリーが、食品または医薬品として未承認の化合物を含むライブラリーである場合には、請求項12記載のスクリーニング方法に加えて、更に、
i)請求項9に記載の、アラキドン酸を用いるアッセイ方法によるスクリーニングを行い、高い活性値を示す化合物を選択する、
ii)請求項9に記載の、tert-ブチルヒドロペルオキシドを用いるアッセイ方法によるスクリーニングを行い、高い活性値を示す化合物を選択する、
iii)i)およびii)の両方のスクリーニングにおいて高い活性値を示す化合物を選択する、
請求項12記載のスクリーニング方法。
【請求項14】
化合物ライブラリーが、食品または医薬品として未承認の化合物を含むライブラリーである場合には、請求項12記載のスクリーニング方法に加えて、更に、
i)MTT法に従って、培養細胞を含む培地、被験化合物およびアラキドン酸を用いるアッセイ方法によるスクリーニングを行い、高い細胞生存率を示す化合物を選択する、
ii)MTT法に従って、培養細胞を含む培地、被験化合物およびtert-ブチルヒドロペルオキシドを用いるアッセイ方法によるスクリーニングを行い、高い細胞生存率を示す化合物を選択する、
iii)i)およびii)の両方のスクリーニングにおいて高い細胞生存率を示す候補化合物を選択する、
請求項12または13記載のスクリーニング方法。
【請求項15】
i)請求項13または14記載のスクリーニング方法によって選択される化合物の構造類似体を化合物ライブラリーから選択する、
ii)i)で選択する化合物、および適宜請求項13または14記載のスクリーニング方法によって選択される化合物について、請求項13記載のスクリーニング方法を行い、高い活性値を示す化合物を選択する、
iii)i)で選択する化合物、および適宜請求項13または14記載のスクリーニング方法によって選択される化合物について、請求項14記載のスクリーニング方法を行い、高い細胞生存率を示す化合物を選択する、
iv)ii)およびiii)の両方のスクリーニング方法において、高い活性値および高い細胞生存率を示す候補化合物を選択する、および
v)i)で選択する化合物、および適宜請求項13または14記載のスクリーニング方法によって選択される化合物について、培養細胞を含む培地を用いるアッセイ方法を行い、高い細胞生存率を示す候補化合物を選択する、
vi)iv)で選択する化合物、およびv)で選択する化合物から、候補化合物を選択する、
ことを含む、請求項13または14記載のスクリーニング方法。
【請求項16】
化合物ライブラリーが、東京大学創薬機構 Core libraryまたはPrestwick chemical libraryである、請求項12~15のいずれか1つに記載のスクリーニング方法。
【請求項17】
有効量の下記群からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含む、対象者における脂質過酸化反応誘発性の疾患を予防もしくは治療する、または疾患の進行を抑制するための、医薬組成物。
群:アポモルヒネ ((R)-(-)-アポモルヒネ 塩酸)、エセロリン ((-)-エセロリンフマル酸塩)、エトキシキン (6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)、メチルドパ (メチルドーパ セスキ水和物)、オランザピン(2-メチル-4-(4-メチル-1-ピぺラジニル)-10H-チエノ[2,3-b][1,5]ベンゾジアゼピン、3-アミノ-4-(フェニルアミノ)安息香酸メチル、3-アミノ-4-((4-メトキシフェニル)アミノ)安息香酸メチル、3-アミノ-4-((3-メトキシフェニル)アミノ)安息香酸メチル、3-アミノ-4-(ベンジルアミノ)安息香酸メチル、3-アミノ-4-((1-フェニルエチル)アミノ)安息香酸メチル、1-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)インドリン-5-アミン、1-(3,5-ジメチルフェニル)-1H-インドール-6-アミン、1-(3,5-ジメチルフェニル)インドリン-6-アミン、1-(4-メトキシフェニル)-1H-インドール-5-アミン、1-(4-(メチルチオ)フェニル)-1H-インドール-5-アミン、1-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-1H-インドール-5-アミンからなる群。
【請求項18】
疾患が、アルツハイマ-型認知症、慢性腎疾患、糖尿病性神経障害、肝障害、加齢黄斑変性症、虚血後脳障害、血管性認知症、動脈硬化症、パーキンソン病、多発性硬化症、がん、ぜんそく、高血圧、心血管疾患、および加齢性眼疾患からなる群から選ばれる、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
疾患が、加齢黄斑変性疾患である、請求項17記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質過酸化抑制剤の探索のためのアッセイ方法、アッセイキット、そのスクリーニング方法、並びに脂質過酸化誘発性疾患の治療薬を提供する。
【背景技術】
【0002】
脂質過酸化反応における脂質ラジカルが関与する疾患は、心血管系、中枢系、呼吸器系、および抗菌薬など広い疾患領域に及ぶ(非特許文献1)(図1を参照)。しかしながら、脂質過酸化反応が原因である疾患には、疾患毎に多数の脂質過酸化物およびその代謝産物が関与しているため、疾患毎に有用な治療薬を探索することは容易ではない。これまでに、多数の抗酸化物質が知られているものの、医薬品として承認されているものは少ない。よって、脂質過酸化反応の抑制効果を示す薬物を供することが求められている。
【0003】
活性薬物を探索する方法として、スクリーニング方法が知られる。脂質過酸化反応の抑制を測定する方法としては、いくつかの方法(例えば、TBARs法)が知られている。しかしながら、これらの方法は、測定対象が多岐にわたり、また蛍光または吸光の原理を利用する際に吸収波長の異なるサンプルの測定ができないこと、あるいはpH操作や加熱等の操作が煩雑であることなどの問題があった。そこで、脂質過酸化反応の検出に特化し、また生体に近い温和な条件で、多検体解析が可能な系のアッセイ方法を構築することが求められている。
【0004】
本発明の発明者らは、これまで脂質ラジカルを捕捉することができる優れた蛍光ニトロキシドプローブ化合物を開発している(特許文献1)。
【0005】
加齢黄斑変性症(AMD)は、治療満足度および治療に対する薬剤の貢献度が低い、アンメットメディカルニーズの高い疾患であることが知られる。加齢黄斑変性症には、その発症機序から、萎縮型(ドライ型)と滲出型(ウェット型)の2種類に大別される。米国においては、萎縮型(ドライ型)の患者が約85~約90%と多く、一方で、日本では、滲出型(ウェット型)の患者が約92%と多い。しかしながら、萎縮型(ドライ型)疾患の有効な治療薬は知られていない。また、抗酸化物質から、加齢黄斑変性症の治療および進行抑制に有効な治療薬は未だ開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特願2017-090739
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Frijhoff J et al., Antioxid. Redox Signal, 2015, 23(14), 1144-70
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、蛍光ニトロキシドプローブ化合物を用いる脂質過酸化抑制を検出するためのアッセイ方法、アッセイキット、およびこれらアッセイ方法を用いるスクリーニング方法を提供する。また、本発明のスクリーニング方法によって見出された活性薬物を用いる、脂質過酸化反応誘発性疾患、例えば、加齢黄斑変性症を治療等するための医薬組成物などを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、脂質過酸化抑制を検出、評価するためのアッセイ方法およびスクリーニング方法を鋭意検討した結果、蛍光ニトロキシドプローブ化合物を用いるアッセイ方法および該アッセイ方法を用いるスクリーニング方法が脂質過酸化抑制の活性を示す候補化合物を容易に探索することができることを見出した。また、本発明者等は、これら候補化合物が、脂質過酸化反応が原因である疾患、特に加齢黄斑変性症の治療または予防に有用であることも見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の態様を提供するが、これに限定されるものではない。
(アッセイキットおよびアッセイ方法)
項[1] 被験化合物の脂質過酸化抑制の活性を検出するためのアッセイキットであって、
緩衝液中に、
式(I):
【化1】
で示される化合物、
リポソーム、および
2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩および二価の鉄イオン供給源物質からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物、
を含む、アッセイキット。
項[1-2] 該式(I)で示される化合物の濃度が、1.0~20.0μMであり、
リポソームが、卵黄由来ホスファチジルコリンおよびリン酸水素ジヘキサデシルから調製されるものであり、該卵黄由来ホスファチジルコリンの濃度が、5.0~10.0mg/mLであり、該リン酸水素ジヘキサデシルの濃度が、0.01~1.0mg/mLであり、
被験化合物の濃度が、5~100μMであり、
2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩の濃度が、5~50mMであり、
二価鉄供給源の濃度が、0.5~5mMである、
項[1]記載のアッセイキット。
項[2] 二価の鉄イオン供給源物質が硫酸鉄(II)である、項[1]記載のアッセイキット。
項[3] 脂質過酸化抑制の活性を示す化合物の活性値を示す添付文書を含む、請求項1または2記載のアッセイキット。
項[4] 被験化合物の脂質過酸化抑制の活性を検出するためのアッセイキットであって、
緩衝液中に、
式(I):
【化2】
で示される化合物、
培養細胞、
アラキドン酸およびtert-ブチルヒドロペルオキシドからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物、
を含む、アッセイキット。
項[4-2] 該式(I)で示される化合物の濃度が、1.0~20.0μMであり、
培養細胞の濃度が、1×10~1×10細胞数であり、
被験化合物の濃度が、5~500μMであり、
アラキドン酸の濃度が、100~400μMであり、
tert-ブチルヒドロペルオキシドの濃度が、100~400μMである、
項[4]記載のアッセイキット。
項[5] 培養細胞がヒト肝由来HepG2細胞である、項[4]記載のアッセイキット。
項[6] 脂質過酸化抑制の活性を示す化合物の活性値を示す添付文書を含む、項[4]または[5]記載のアッセイキット。
項[7] 項[1]~[6]に記載のいずれか2つまたはそれ以上のアッセイキットを含む、アッセイキット。
項[7-2] 反応開始剤が2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩である、アッセイキット、および、
反応開始剤が硫酸鉄(II)である、アッセイキット、
の組み合わせを含む、項[7]記載のアッセイキット。
項[7-3] 反応開始剤がアラキドン酸である、アッセイキット、および、
反応開始剤がtert-ブチルヒドロペルオキシドである、アッセイキット、
の組み合わせを含む、項[7]記載のアッセイキット。
項[8] i)式(I)で示される化合物およびリポソームを含む緩衝液を調製する、
ii)2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩および二価の鉄イオン供給源物質からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を添加する、
iii)被験化合物を添加する、
iv)蛍光を測定する、
v)蛍光測定の結果から、被験化合物の活性値を求める、
を含む、脂質過酸化抑制の活性を測定するためのアッセイ方法。
項[9] i)式(I)で示される化合物および培養細胞を含む緩衝液を調製する、
ii)アラキドン酸およびtert-ブチルヒドロペルオキシドからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を添加する、
iii)被験化合物を添加する、
iv)蛍光を測定する、
v)蛍光測定の結果から、被験化合物の活性値を求める、
を含む、脂質過酸化抑制の活性を測定するためのアッセイ方法。
項[10] vi)脂質過酸化抑制活性の指標となる化合物の活性値と比較することを含む、項[8]または[9]記載のアッセイ方法。
項[11] マイクロウェルプレートで用いるための、項[8]~[10]のいずれか1つに記載のアッセイ方法。
項[11-2] i)被験化合物の溶液をマイクロウェルプレートに分注する、
ii)式(I)で示される化合物、およびリポソームまたは培養細胞を含む溶液を、各ウェルに分注する、
iii)リポソームを用いるとき、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩および二価の鉄イオン供給源物質からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含む溶液を、各ウェルに分注し、
培養細胞を用いるとき、アラキドン酸およびtert-ブチルヒドロペルオキシドからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含む溶液を、各ウェルに分注する、
iv)マイクロプレートリーダーで、蛍光を測定する、
を含む、項[11]記載のアッセイ方法。
【0011】
(スクリーニング方法)
項[12] i)化合物ライブラリーから被験化合物を選択する、
ii)被験化合物を用いる、項[8]に記載の2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩を用いるアッセイ方法によるスクリーニングを行い、高い活性値を示す化合物を選択する、
iii)次いで、ii)の高い活性値を示した化合物を用いる、項[8]に記載の二価の鉄イオン供給源物質を用いるアッセイ方法によるスクリーニングを行い、高い活性値を示す化合物を選択する、
ことを含む、脂質過酸化抑制活性の高い候補化合物を選択するためのスクリーニング方法。
項[13] 化合物ライブラリーが、食品または医薬品として未承認の化合物を含むライブラリーである場合には、項[12]記載のスクリーニング方法に加えて、更に、
i)項[9]に記載の、アラキドン酸を用いるアッセイ方法によるスクリーニングを行い、高い活性値を示す化合物を選択する、
ii)項[9]に記載の、tert-ブチルヒドロペルオキシドを用いるアッセイ方法によるスクリーニングを行い、高い活性値を示す化合物を選択する、
iii)i)およびii)の両方のスクリーニングにおいて高い活性値を示す化合物を選択する、
項[12]記載のスクリーニング方法。
項[14] 化合物ライブラリーが、食品または医薬品として未承認の化合物を含むライブラリーである場合には、項[12]記載のスクリーニング方法に加えて、更に、
i)MTT法に従って、培養細胞を含む培地、被験化合物およびアラキドン酸を用いるアッセイ方法によるスクリーニングを行い、高い細胞生存率を示す化合物を選択する、
ii)MTT法に従って、培養細胞を含む培地、被験化合物およびtert-ブチルヒドロペルオキシドを用いるアッセイ方法によるスクリーニングを行い、高い細胞生存率を示す化合物を選択する、
iii)i)およびii)の両方のスクリーニングにおいて高い細胞生存率を示す候補化合物を選択する、
項[12]または[13]記載のスクリーニング方法。
項[15] i)項[13]または[14]記載のスクリーニング方法によって選択される化合物の構造類似体を化合物ライブラリーから選択する、
ii)i)で選択する化合物、および適宜項[13]または[14]記載のスクリーニング方法によって選択される化合物について、項[13]記載のスクリーニング方法を行い、高い活性値を示す化合物を選択する、
iii)i)で選択する化合物、および適宜項[13]または[14]記載のスクリーニング方法によって選択される化合物について、項[14]記載のスクリーニング方法を行い、高い細胞生存率を示す化合物を選択する、
iv)ii)およびiii)の両方のスクリーニング方法において、高い活性値および高い細胞生存率を示す候補化合物を選択する、および
v)i)で選択する化合物、および適宜項[13]または[14]記載のスクリーニング方法によって選択される化合物について、培養細胞を含む培地を用いるアッセイ方法を行い、高い細胞生存率を示す候補化合物を選択する、
vi)iv)で選択する化合物、およびv)で選択する化合物から、候補化合物を選択する、
ことを含む、項[13]または[14]記載のスクリーニング方法。
項[16] 化合物ライブラリーが、東京大学創薬機構 コア ライブラリー(Core library)またはプレストウィック ケミカル ライブラリー(Prestwick chemical library)である、項[12]~[15]のいずれか1つに記載のスクリーニング方法。
項[16-2] ハイスループットスクリーニング方法である、項[12]~[15]のいずれか1つに記載のスクリーニング方法。
【0012】
(医薬用途)
項[17] 有効量の下記群からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含む、対象者における脂質過酸化反応誘発性疾患を予防もしくは治療する、または疾患の進行を抑制するための、医薬組成物。
群:アポモルヒネ ((R)-(-)-アポモルヒネ 塩酸)、エセロリン ((-)-エセロリンフマル酸塩)、エトキシキン (6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)、メチルドパ (メチルドーパ セスキ水和物)、オランザピン(2-メチル-4-(4-メチル-1-ピぺラジニル)-10H-チエノ[2,3-b][1,5]ベンゾジアゼピン、3-アミノ-4-(フェニルアミノ)安息香酸メチル(化合物52)、3-アミノ-4-((4-メトキシフェニル)アミノ)安息香酸メチル(化合物52-1)、3-アミノ-4-((3-メトキシフェニル)アミノ)安息香酸メチル(化合物52-3)、3-アミノ-4-(ベンジルアミノ)安息香酸メチル(化合物52-4)、3-アミノ-4-((1-フェニルエチル)アミノ)安息香酸メチル(化合物52-5)、1-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)インドリン-5-アミン(化合物78)、1-(3,5-ジメチルフェニル)-1H-インドール-6-アミン(化合物78-3)、1-(3,5-ジメチルフェニル)インドリン-6-アミン(化合物78-4)、1-(4-メトキシフェニル)-1H-インドール-5-アミン(化合物78-5)、1-(4-(メチルチオ)フェニル)-1H-インドール-5-アミン(化合物78-6)、1-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-1H-インドール-5-アミン(化合物78-8)からなる群。
項[18] 疾患が、アルツハイマ-型認知症、慢性腎疾患、糖尿病性神経障害、肝障害、加齢黄斑変性症、虚血後脳障害、血管性認知症、動脈硬化症、パーキンソン病、多発性硬化症、がん、ぜんそく、高血圧、心血管疾患、および加齢性眼疾患からなる群から選ばれる、項[17]記載の医薬組成物。
項[19] 疾患が、加齢黄斑変性疾患である、項[17]記載の医薬組成物。
項[20] 前記項[17]に記載の群からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を用いる、脂質過酸化反応誘発性の疾患を予防もしくは治療する、または疾患の進行を抑制するための方法。
項[21] 脂質過酸化反応誘発性の疾患を予防もしくは治療する、または疾患の進行を抑制するための医薬の製造における、前記項[17]に記載の群からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物の使用。
項[22] 脂質過酸化反応誘発性の疾患を予防もしくは治療する、または疾患の進行を抑制するための、前記項[17]に記載の群からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物の使用。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアッセイキット、該アッセイキットを用いるスクリーニング方法により、脂質過酸化抑制効果を示す化合物を容易に探索することができる。また、本発明のスクリーニング方法により見出された化合物は、脂質過酸化反応誘発性疾患(例えば、加齢黄斑変性症)の治療等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】脂質過酸化反応と疾患の関連を示す図面である。
図2】蛍光ニトロキシドプローブの脂質過酸化反応応答性評価のための試験の結果を示す図面である。リポソーム(2.5 mg/mL EggPC、0.1 mg DCP)、5.0 μM 蛍光ニトロキシド、20 mM AAPHを混和し、40分後の蛍光強度(NBD-TEMPO:λEx/λEm = 470/530 nm、Dansyl-TEMPO:λEx/λEm = 300/500 nm)を測定した。(n = 3、mean + S.D., **p<0.01 v.s. ctrl(-))。
図3】蛍光ニトロキシドプローブと種々の還元物質との反応性評価のための試験の結果を示す図面である。リポソーム(2.5 mg/mL EggPC、0.1 mg DCP)、5.0 μM 蛍光ニトロキシド、50 μM 抗酸化物質を混和し、40分後の蛍光強度(λEx/λEm= 470/530 nm)を測定した。蛍光強度の比は、各種抗酸化物質と反応後のプローブの蛍光強度を ctrl(-)の蛍光強度で除した値である。(a)本検討に用いた抗酸化物質の化学構造、(b)プローブと抗酸化物質との反応による蛍光強度の比(n=3、mean + S.D.、p<0.05、**p<0.01 v.s. ctrl(-))。
図4】蛍光ニトロキシドプローブと種々の酸化物質との反応性評価のための試験の結果を示す図面である。5.0 μM 蛍光ニトロキシドと各種酸化物質を混和し、30分後の蛍光強度(λEx/λEm= 470/530 nm)を測定した。蛍光強度の比は、各種酸化物質と反応後のプローブの蛍光強度をctrl(-)の蛍光強度で除した値である。酸化物質は過酸化水素 0.5 mM、次亜塩素酸 0.5 mM、酸化カリウム 0.5 mM、過酸化水素 0.5 mMとFeSO 5.0 μM、リポソーム(2.5 mg/mL EggPC、0.1 mg DCP)とAAPH 10 mMを用いた。(n=3、mean + S.D.、**p<0.01 v.s. ctrl(-))。
図5】AAPH系での人工脂質膜における反応開始剤濃度依存的な脂質過酸化反応評価のための試験の結果を示す図面である。リポソーム(2.5 mg/mL EggPC、0.1 mg DCP)、5.0 μM NBD-TEEPO、AAPHを混和し、40分後の蛍光強度(λEx/λEm= 470/530 nm)を測定した。NBD-TEEPO蛍光応答能の(a)刺激濃度依存性(AAPH 0-20 mM)、(b)抗酸化物質濃度依存性(AAPH 20 mM、AsA 0-20 μM)。(c)NBD-TEEPOを用いた脂質過酸化反応評価法(AAPH 20 mM、抗酸化物質 10 μM)と(d)TBARSアッセイ(AAPH 20 mM、抗酸化物質 10 μM)の比較。(n=3、mean + S.D.、**p<0.01 v.s. ctrl(-)、p<0.05、**p<0.01 v.s. ctrl(+))。
図6】Fe2+系での人工脂質膜における反応開始剤濃度依存的な脂質過酸化反応評価のための試験の結果を示す図面である。リポソーム(2.5 mg/mL EggPC、0.1 mg DCP)、5.0 μM NBD-TEEPO、FeSOを混和し、60分後の蛍光強度(λEx/λEm= 470/530 nm)を測定した。NBD-TEEPO蛍光応答能の(a)刺激濃度依存性(FeSO 0-2 mM)、(b)抗酸化物質濃度依存性(FeSO 1 mM、Eda 0-20 μM)。(c)NBD-TEEPOを用いた脂質過酸化反応評価法(FeSO 1 mM、抗酸化物質 10 μM)と(d)TBARSアッセイ(FeSO 1 mM、抗酸化物質 10 μM)の比較。(n=3、mean + S.D.、**p<0.01 v.s. ctrl(-)、p<0.05、##p<0.01 v.s. ctrl(+))。
図7】培養細胞系における細胞内脂質過酸化反応評価のための試験の結果を示す図面である。HepG2細胞 1.0×10細胞数に、5.0 μM NBD-TEEPO、種々の酸化物質および抗酸化物質 50 μMを添加し、蛍光強度変化(λEx/λEm= 470/530 nm)を測定した。(a)AA(0-200 μM)を添加し、45分後のNBD-TEEPOの蛍光強度(b)AA 200 μM、抗酸化物質 50 μMを添加し、45分後のNBD-TEEPOの蛍光強度(c)tBHP(0-300 μM)を添加し、45分後のNBD-TEEPOの蛍光強度(d)tBHP 300 μM、抗酸化物質 50 μMを添加し、45分後のNBD-TEEPOの蛍光強度(e)S/B比、CV値、Z’-factor (AA添加系:AA 200 μMを添加し45分後、tBHP添加系:tBHP 300 μMを添加し45分後)。(n=3、mean + S.D.、**p<0.01 v.s. ctrl(-)、p<0.05、##p<0.01 v.s. ctrl(+))。
図8】MTTアッセイを用いた培養細胞系における脂質過酸化誘発性細胞生存率の変化評価のための試験の結果を示す図面である。HepG2細胞 1.0×10細胞数に、種々の酸化物質および抗酸化物質 50 μMを添加し、24時間後の細胞生存率をMTTアッセイ(λmax=570 nm)により測定した。細胞生存率は酸化刺激 0 μM、抗酸化物質 0 μMを100%として算出した。(a)AA(0-100 μM)を添加し、24時間後の細胞生存率(b)AA 100 μM、抗酸化物質 50 μMを添加し、24時間後の細胞生存率(c)tBHP(0-100 μM)を添加し、24時間後の細胞生存率 (d)tBHP 100 μM、抗酸化物質 50 μMを添加し、24時間後の細胞生存率 (e)S/B比、CV値、Z’-factor(AA添加系:AA 100 μMを添加し、24時間後、tBHP添加系:BHP 100 μMを添加し、24時間後)。(n=3、mean + S.D.、**p<0.01 v.s. ctrl(-)、p<0.05、##p<0.01 v.s. ctrl(+))。
図9】スクリーニング方法の模式図を示す図面である。
図10】AAPH系での東京大学創薬機構1次スクリーニングの結果を示す図面である。リポソーム(2.5 mg/mL EggPC、0.1 mg DCP)、5.0 μM NBD-TEEPO、20 mM AAPHを混和し、蛍光強度(λEx/λEm= 470/530 nm)を測定した。反応後40分における各化合物の活性値を示す。
図11】Fe2+系におけるAUC評価の結果を示す図面である。リポソーム(2.5 mg/mL EggPC、0.1 mg DCP)、5.0 μM NBD-TEEPO、1.0 mM FeSOを混和し、蛍光強度(λEx/λEm= 470/530 nm)を180分間経時測定した。得られた曲線より曲線下面積(AUC)を算出した。
図12】Fe2+系での東京大学創薬機構Core libraryを用いる1次スクリーニングの結果を示す図面である。リポソーム(2.5 mg/mL EggPC、0.1 mg DCP)、5.0 μM NBD-TEEPO、1.0 mM FeSOを混和し、蛍光強度(λEx/λEm= 470/530 nm)を測定した。反応後180分後における各化合物の活性値を示す。
図13】東京大学創薬機構Core libraryを用いる2次スクリーニングの結果を示す図面である。HepG2細胞 1.0×10細胞数に、5.0 μM NBD-TEEPO、200 μM AAまたは300 μM tBHPおよび化合物50 μMを添加し、蛍光強度変化(λEx/λEm= 470/530 nm)を測定した。(a)、(b)中の点線はエダラボンの活性値を表す。(a)AA添加45分後の各化合物の活性値(b)tBHP添加60分後の各化合物の活性値(c)AA添加系およびtBHP 添加系における活性値のプロット(d) (c)のAA添加系における活性値30%以上、tBHP 添加系における活性値50%以上の部分の拡大図。
図14】MTTアッセイ方法に従う東京大学創薬機構Core libraryを用いる2次スクリーニングの結果を示す図面である。HepG2細胞 1.0×10細胞数に、100 μM のAAまたはtBHP、および化合物50 μMを添加し、24時間後の細胞生存率をMTTアッセイにより測定した。(a)、(b)中の点線はエダラボンの活性値を表す。(a) AA添加24時間後の各化合物の活性値(b)tBHP添加24時間後の各化合物の活性値(c)AA添加系およびtBHP 添加系における活性値のプロット(d) (c)のAA添加系における活性値50%以上、tBHP 添加系における活性値30%以上の部分の拡大図。
図15】東京大学創薬機構Core libraryを用いる3次スクリーニングの結果を示す図面である。HepG2細胞 1.0×10細胞数に、5.0 μM NBD-TEEPO、200 μM AAまたは300 μM tBHP、および化合物50 μMを添加し、蛍光強度変化(λEx/λEm= 470/530 nm)を測定した(白色のバー:元の構造、黒色のバー:構造類似体、点線:エダラボンの活性値)。(a)AA添加45分後の各化合物の活性値(b)tBHP添加60分後の各化合物の活性値(c)AA添加系およびtBHP 添加系における活性値のプロット(d) (c)のAA添加系における活性値およびtBHP 添加系における活性値50%以上の部分の拡大図。
図16】MTTアッセイ方法に従う東京大学創薬機構Core libraryを用いる3次スクリーニングの結果を示す図面である。HepG2細胞 1.0×10細胞数に、100 μM のAAまたはtBHP、および化合物50 μMを添加し、24時間後の細胞生存率をMTTアッセイにより測定した(白色のバー:元の構造、黒色のバー:構造類似体、点線:エダラボンの活性値)。(a)AA添加24時間後の各化合物の活性値(b)tBHP添加24時間後の各化合物の活性値(c)AA添加系およびtBHP 添加系における活性値のプロット(d) (c)のAA添加系における活性値0%以上およびtBHP 添加系における活性値40%以上の部分の拡大図。
図17】東京大学創薬機構Core libraryを用いる3次スクリーニングの細胞毒性評価のための試験の結果を示す図面である。HepG2細胞 1.0×10細胞数に、化合物50 μMを添加し、72時間後の細胞生存率をMTTアッセイにより測定した。点線はエダラボン72時間インキュベート後の細胞生存率を表す。
図18】Prestwick chemical libraryを用いる1次スクリーニングの結果を示す図面である。リポソーム(2.5 mg/mL EggPC、0.1 mg DCP)、5.0 μM NBD-TEEPO、反応開始剤を混和し、蛍光強度変化(λEx/λEm= 470/530 nm)を測定した。(a)AAPH系測定開始40分後における各化合物の活性値(b)Fe2+系測定開始180分後における各化合物の活性値。
図19】Prestwick chemical libraryを用いる1次スクリーニングの結果、並びに、候補化合物と対象疾患領域との関連を示す図面である。(a)1次スクリーニングにおけるAAPH系およびFe2+添加系の活性値のプロット(b)上位16化合物の対象疾患領域 (c) (a)のAAPH系における活性値0.7以上、およびFe2+添加系における活性値0.8以上の部分の拡大図。
図20】加齢黄斑変性症(AMD)モデルマウスの作製方法を示す図面である。(a)AMDモデルマウス作製スケジュール(b)ONL測定方法 ONLの厚みを180 μmおきに27点(A-center-Z)にわたり測定した(左:観察視野4倍、右:観察視野60倍)。
図21】外顆粒層(Outer nuclear layer: ONL)の厚みを評価した結果を示す図面である。(a)ONL明視野像(観察倍率:60倍)(b)ONLの厚み(モデル化合物:化合物W)。左が眼球の下半球、右が上半球を表す。(c)Q~T点におけるONLの厚みの平均(n=3-5、mean + S.D.、p<0.05、**p<0.01 v.s. ctrl(-)、p<0.05、##p<0.01 v.s. ctrl(+))。
図22】活性指標化合物と候補化合物についての主作用・作用点、半数致死量(LD50)、動物投与例をまとめた表を示す図面である。エダラボンおよび本検討に用いた5つの化合物について、主作用・作用点、LD50、動物投与例を示した。ただし、oralとはoral administration(経口投与)、s.c.とはsubcutaneous injection(皮下投与)、i.v.とはintravenous injection(静脈内投与)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(アッセイ方法およびアッセイキット)
本発明者は、脂質過酸化抑制剤の探索を目的として、多数の化合物を一度に試験および評価することが可能なスクリーニング方法(例えば、ハイスループットスクリーニング方法)を開発するための、アッセイ方法およびアッセイキットを提供する。
【0016】
本発明は、被験化合物の脂質過酸化抑制の活性を検出するためのアッセイキットであって、
緩衝液中に、
式(I):
【化3】
で示される化合物、
リポソーム、および
2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩および二価の鉄イオン供給源物質からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物、
を含む、アッセイキット
を提供する。
【0017】
本発明のアッセイキットで用いる、リポソームは、脂質源として、卵黄由来ホスファチジルコリン(卵黄由来ホスファチジルコリン(Egg PC))およびリン酸水素ジヘキサデシル(DCP)より作製するリポソームを含む。
ラジカル反応開始剤は、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(以下、「APPH」と呼称する)または二価の鉄イオン供給源物質(例えば、FeSO)のいずれかからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含む。
本発明のアッセイキットは、緩衝液(例えば、リン酸緩衝液)の溶液を含む。
【0018】
蛍光ニトロキシド化合物
本発明のアッセイ方法およびアッセイキットにおいて用いるための脂質ラジカル捕捉剤として、式(I)で示される蛍光ニトロキシド化合物を用いる。この蛍光ニトロキシド化合物は、本発明者による文献(例えば、特願2017-090739)において記載されている。
【0019】
ここで、ニトロキシド(NO.)は、常磁性を有する安定なラジカルであり、電荷分離状態を伴う光誘起電子移動や電子-スピン交換による項間交差によって蛍光を減弱させる性質を有する。ニトロキシドに蛍光発色団が共有結合した蛍光性ニトロキシドは、分子内消光状態にある。ところが、ニトロキシドがフリーラジカルと反応して常磁性を喪失すれば、蛍光発光状態となることが確認された。すなわち、蛍光性ニトロキシドは、蛍光観測により、脂質ラジカルの捕捉を検出するプローブとして有用であり、また蛍光強度を測定することによって評価することができる。
【0020】
検出対象とする脂質分子の大部分は生体膜内に存在し、疎水性環境を形成している。そのため、親水的環境では蛍光が減弱しているが、疎水的な環境において選択的に高い蛍光を発する環境応答性の蛍光発色団が最適である。蛍光発色団としては、生体膜の相転移や膜融合、あるいは細胞内脂質代謝など、脂質分野で広く用いられている蛍光発色団(例えば、ニトロベンゾフラザン(以下、「NBD」と呼称する)および5-(ジメチルアミノ)ナフタレン-1-スルホニルクロリド)(以下、「ダンシル(Dansyl)」と呼称する)が挙げられる。
【0021】
また、蛍光ニトロキシド化合物のα位置換基であるプローブ分子としては、例えば2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(以下、「TEMPO」と呼称する)、2,2,6,6-テトラエチルピペリジン-1-オキシル(以下、「TEEPO」と呼称する)、および2,2,6-トリメチル-6-ペンチル-ピペリジン-1-オキシル(以下「Pen」と呼称する)が挙げられる。
【0022】
本発明のアッセイ方法およびアッセイキットに適した蛍光ニトロキシド化合物の選択のために、前記蛍光団分子およびプローブ分子のそれぞれの最適化を行う。蛍光団分子の最適化は、脂質過酸化反応応答性の試験によって行う。
【0023】
また、蛍光ニトロキシド化合物のα位置換基であるプローブ分子の最適化は、還元物質との反応性評価についての試験、および酸化物質との反応性評価についての試験によって行う。ここで、本発明のアッセイ方法では、還元物質(つまり、抗酸化物質)による脂質過酸化反応の抑制、つまり一旦起こった脂質過酸化反応による蛍光強度の上昇を抗酸化物質(例えば、被験化合物)によって低下し得るか否かを、抑制の評価とする。よって、プローブ分子と抗酸化物質が直接に反応し、蛍光強度が上昇することは、偽陰性の検出へとつながる。そこで、まず、抗酸化物質とプローブ分子との反応性を調べる。
次に、脂質過酸化反応に対するプローブ分子の応答性は、蛍光ニトロキシド化合物上のプローブ分子の、酸化物質との反応性評価についての試験によって行う。ここで、反応性酸素種である・OHは、過酸化水素とFe2+とにより発生させる。また、脂質過酸化反応は、リポソームとAAPHとにより発生させる。
前記試験の結果より、最も高い還元抵抗性を示し、且つ脂質過酸化反応への高い応答性を示すNBD-TEEPO化合物を、蛍光ニトロキシド化合物として選択する。
【0024】
アッセイ方法およびアッセイキットの確立
本発明は、スクリーニング方法に応用することができる、式(I)で示されるNBD-TEEPO化合物を用いるアッセイ方法およびアッセイキットを提供する。
【0025】
無細胞系アッセイ方法
本発明は、式(I)で示されるNBD-TEEPO化合物を用いる、脂質過酸化抑制の活性を検出するための、無細胞系でのアッセイ方法を提供する。
蛍光ニトロキシド化合物の最適化のための前記方法と同様に、脂質としてリポソームを、ラジカル反応開始剤としては、AAPHおよびFeSOを用いる。AAPHおよびFe2+のいずれの系についても、濃度依存的にプローブの蛍光強度が上昇する。また、AAPHを用いる系では、水溶性の抗酸化物質(例えば、アスコルビン酸(AsA))を用いるときに、Fe2+系では、脂質性の抗酸化物質(例えば、エダラボン(eda))を用いるときに、濃度依存的に蛍光の上昇が抑制される。両方のアッセイ方法において、公知の抗酸化物質を複数用いることにより、本発明のアッセイ方法が脂質過酸化反応および抗酸化物質によるその抑制効果を評価できるアッセイ方法であることが分かる。
また、脂質過酸化抑制効果を測定することが知られる2-チオバルビツール酸反応性物質(以下、「TBARS」と呼称する)法について同じ公知の抗酸化物を用いて試験を行い、本発明のアッセイ方法の結果と比較することにより、同様な結果が得られる。本発明のアッセイ方法が、脂質過酸化反応および抗酸化物質によるその抑制効果を評価できるアッセイ方法であることが分かる。また、本発明のアッセイ方法は、TBARS法のような煩雑な操作を要しない。
【0026】
1つの実施態様において、具体的なアッセイ方法は、以下の工程を含む。
i)式(I)で示される化合物およびリポソームを含む緩衝液を調製する、
ii)2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩および二価の鉄イオン供給源物質からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を添加する、
iii)被験化合物を添加する、
iv)蛍光を測定する、
v)蛍光測定の結果から、被験化合物の活性値を求める。
【0027】
1つの実施態様において、本発明の無細胞系アッセイキットは、
反応開始剤が2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩である、アッセイキット、および、
反応開始剤が硫酸鉄(II)である、アッセイキット、
の組み合わせを含む。
【0028】
無細胞系アッセイキットの組成
本発明の無細胞系アッセイキットは、
式(I)で示される化合物の濃度が、1.0~20.0μM(例えば5.0μM~20.0μM、典型的には5.0μM)であり、
リポソームが、卵黄由来ホスファチジルコリンおよびリン酸水素ジヘキサデシルから調製されるものであり、該卵黄由来ホスファチジルコリンの濃度が、5.0~10.0mg/mL(例えば、2.5mg/mL)であり、該リン酸水素ジヘキサデシルの濃度が、0.01~1.0mg/mL例えば、0.1mg/mL)であり、
被験化合物の濃度が、5~100μM(例えば、10μM)であり、
2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩の濃度が、5~50mM(例えば、20mM)であり、
二価鉄供給源(例えば、FeSO)の濃度が、0.5~50mM(例えば、1mM)である。
【0029】
また、本発明の無細胞系アッセイ方法は、スクリーニング系の質を表す指標(例えば、S/B比、CV値、Z'-factor)が十分な値であることから、スクリーニング方法に応用することができる。
【0030】
細胞系アッセイ方法
本発明は、前記の無細胞系のアッセイ方法に加えて、式(I)で示されるNBD-TEEPO化合物を用いる、脂質過酸化抑制の活性を検出するための、細胞系アッセイ方法を提供する。
無細胞系で用いるリポソームに代わって培養細胞(例えば、ヒト肝癌由来HepG2細胞)を用いて、ラジカル反応開始剤としてAAPHおよび二価鉄供給源に代わってアラキドン酸(以下、「AA」と呼称する)およびtert-ブチル ハイドロペルオキシド(以下、「tBHP」と呼称する)のいずれかを用いて、細胞系アッセイ方法を行う。
【0031】
1つの実施態様において、具体的なアッセイ方法は、以下の工程を含む。
i)式(I)で示される化合物および培養細胞を含む緩衝液を調製する、
ii)アラキドン酸およびtert-ブチルヒドロペルオキシドからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を添加する、
iii)被験化合物を添加する、
iv)蛍光を測定する、
v)蛍光測定の結果から、被験化合物の活性値を求める。
【0032】
1つの実施態様において、本発明の細胞系アッセイキットは、
反応開始剤がアラキドン酸である、アッセイキット、および、
反応開始剤がtert-ブチルヒドロペルオキシドである、アッセイキット、
の組み合わせを含む。
【0033】
細胞系アッセイキットの組成
本発明の細胞系アッセイキットは、
式(I)で示される化合物の濃度が1.0~20.0μM(例えば5.0μM)であり、
培養細胞の濃度が1×10~1×10細胞数(例えば、1×10細胞数)であり、
被験化合物の濃度が、5~500μM(例えば、50μM)であり、
アラキドン酸の濃度が、100~400μM(例えば、200μM)であり、
tert-ブチル ハイドロペルオキシドの濃度が、100~400μM(例えば、300μM)である。
【0034】
また、本発明の細胞系アッセイ方法は、スクリーニング系の質を表す指標(例えば、S/B比、CV値、Z'-factor)が十分な値であることから、スクリーニング方法に応用することができる。
【0035】
本発明のアッセイキットは、脂質過酸化抑制の活性を示す化合物の活性値を示す添付文書を含んでもよい。本発明のアッセイキットまたはアッセイ方法を用いて得られた被験化合物の脂質過酸化抑制の活性値を、添付文書に記載された指標化合物の活性値と比較して、被験化合物の脂質過酸化抑制活性の評価をすることができる。
【0036】
1つの実施態様において、本発明のアッセイ方法は、
反応開始剤が2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩である、無細胞系のアッセイ方法、
反応開始剤が硫酸鉄(II)である、無細胞系のアッセイ方法、
反応開始剤がアラキドン酸である、細胞系のアッセイ方法、および、
反応開始剤がtert-ブチルヒドロペルオキシドである、細胞系のアッセイ方法、
からなる群から選ばれる少なくとも2つ以上のアッセイ方法の組み合わせを含む。
【0037】
また、1つの実施態様において、本発明のアッセイキットは、
反応開始剤が2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩である、無細胞系のアッセイキット、
反応開始剤が硫酸鉄(II)である、無細胞系のアッセイキット、
反応開始剤がアラキドン酸である、細胞系のアッセイキット、および、
反応開始剤がtert-ブチルヒドロペルオキシドである、細胞系のアッセイキット、
からなる群から選ばれる少なくとも2つ以上のアッセイキットの組み合わせを含む。
【0038】
脂質過酸化反応が疾患の発症および進展を助長する過程で、脂質過酸化誘発性の細胞死が引き起こされる(文献:Uchida K., Prog. Lipid Res., 2003, 42(4), 318-43.)。3-(4,5-ジメチル-2-チアゾリル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(以下、「MTT」と呼称する)を用いる方法は、細胞生存率の評価に用いられている。MTT法は、プレートアッセイが可能であることも知られる。
【0039】
1つの実施態様において、本発明のアッセイ法は、MTT法に準じて以下の工程を含むアッセイ方法を含む。
i)MTT法に従って、培養細胞を含む培地、被験化合物およびアラキドン酸を用いるアッセイ方法を行い、高い細胞生存率を示す化合物を選択する、および/または、
ii)MTT法に従って、培養細胞を含む培地、被験化合物およびtert-ブチルヒドロペルオキシドを用いるアッセイ方法を行い、高い細胞生存率を示す化合物を選択する。
【0040】
本発明のアッセイ方法及びアッセイキットは、前記の本発明の無細胞系および/または細胞系のアッセイ方法及びアッセイキットと組み合わせて、このMTT法に準じるアッセイ方法及びキットを含んでもよい。
【0041】
このMTT法は、スクリーニング系の質を表す指標(例えば、S/B比、CV値、Z'-factor)が十分な値であることから、スクリーニング方法に応用することができる。
【0042】
本発明のいずれのアッセイ方法も、マイクロウェルプレートを用いて行うこともできる。ここで、マイクロウェルプレートは、多孔プレート(例えば、96ウェルプレート、および384ウェルプレート)を挙げられるが、これらに限定されない。マイクロウェルプレートは、例えば市販のものを用いることができる。
【0043】
1つの実施態様において、マイクロウェルプレートを用いる、本発明のアッセイ方法の測定は以下の工程を含む。
i)被験化合物の溶液をマイクロウェルプレートに分注する、
ii)式(I)で示される化合物、およびリポソームまたは培養細胞を含む溶液を、各ウェルに分注する、
iii)リポソームを使用するとき、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩および二価の鉄イオン供給源物質からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含む溶液を、各ウェルに分注し、
培養細胞を使用するとき、アラキドン酸およびtert-ブチルヒドロペルオキシドからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含む溶液を、各ウェルに分注する、
iv)マイクロプレートリーダーで、蛍光を測定する、
を含む。
【0044】
(スクリーニング方法)
本発明は、脂質過酸化抑制の活性を示す化合物を探索するために、ある化合物ライブラリーについて、本発明のアッセイ方法を用いるスクリーニング工程を含むスクリーニング方法を提供する。
ここで、化合物ライブラリーは、公知のものであってもなくてもいずれでもよい。公知の化合物ライブラリーとしては、既に食品(例えば、米国食品医薬品局(FDA))または医薬品(例えば、欧州医薬品審査庁(EMEA))の承認を得た化合物を集めた化合物ライブラリー(例えば、PRESTWICK CHEMICALライブラリー)(これは、特許期間が満了した化合物を集めたものである)、および未だそれら食品または医薬品の承認を得ていない化合物を集めた化合物ライブラリー(例えば、東京大学創薬機構のジェネラル ライブラリー(General library)のうちのCore library)が挙げられる。本発明のスクリーニング方法の模式図を図9に示す。
【0045】
1次スクリーニング
リポソーム-AAPH系のアッセイ方法によるスクリーニングにおいては、水溶性のAAPH由来のラジカル種を抑制する水溶性の高い抗酸化物質から、脂質過酸化連鎖反応を抑制する脂溶性の高い抗酸化物質まで、ラジカル捕捉能を有する化合物を検出することができる。また、リポソーム-Fe2+系のアッセイ方法によるスクリーニングでは、ラジカル捕捉能をもつ化合物のうちより脂溶性の高い化合物が検出されやすいが、一方でラジカル捕捉能を有しない鉄キレート剤が検出される可能性がある。よって、この1次スクリーニングでは、はじめに、被験化合物から、AAPH系スクリーニングにおいてラジカル捕捉能をもつ候補化合物を広く選別し、次に、リポソーム-AAPH系スクリーニングで絞り込んだ化合物について、リポソーム-Fe2+系スクリーニングで更なる候補脂溶性化合物の絞り込みを行う。
【0046】
本発明のアッセイ方法を用いるスクリーニング方法は、1次スクリーニングとして、リポソームを用いる無細胞系アッセイ方法によるスクリーニングを含む。
本発明の1次スクリーニング方法は、以下の方法を含む。
i)化合物ライブラリーから被験化合物を選択する、
ii)被験化合物を用いる、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(以下、「AAPH」と呼称する)を用いる無細胞アッセイ方法(以下、「リポソーム-AAPH系」と呼称する)によるスクリーニングを行い、高い活性値を示す化合物を選択する、
iii)次いで、ii)の工程で高い活性値を示した化合物を用いる、二価の鉄イオン供給源物質を用いる無細胞アッセイ方法「リポソーム-Fe2+系」と呼称する)によるスクリーニングを行い、高い活性値を示す化合物を選択する
ことを含む、脂質過酸化抑制活性の高い候補化合物を選択するためのスクリーニング方法。
【0047】
前記ii)のスクリーニングにおいて測定される蛍光強度から、下式に基づいて、各被験化合物の活性値を算出する。
活性値 = 1- (Flu Sample-Flu Background)/(Flu Control-Flu Background)
Flu Sample:AAPHあり、各化合物あり(n=1)の蛍光強度
Flu Background:AAPHなしの蛍光強度
Flu Control:AAPHあり、各化合物なしの蛍光強度
【0048】
前記iii)のスクリーニングにおいて測定される蛍光強度から、下式に基づいて、各被験化合物の活性値を算出する。
活性値 = 1- (AUC Sample/AUC Control)
AUC Sample:Fe2+あり、各化合物あり(n=1)の蛍光強度から算出した曲線下面積
AUC Control:Fe2+あり、各化合物なしの蛍光強度から算出した曲線下面積
【0049】
高い脂質過酸化抑制活性を有することが知られる公知の化合物(以下、「活性指標化合物」と呼称する)の活性値と比較して、候補化合物の絞り込みを行う。当該活性指標化合物の例としては、エダラボン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(Tempol)、および(-)-エピカテキンなどが挙げられる。
【0050】
2次スクリーニング
化合物ライブラリーとして、食品または医薬品として未承認の化合物を集めた化合物ライブライブラリー(例えば、東京大学創薬機構のGeneral libraryのうちのCore library)を用いる場合には、本発明のアッセイ方法を用いるスクリーニングは、細胞系での脂質過酸化抑制活性および細胞死抑制活性を調べる目的で、より高次なスクリーニング(例えば、2次スクリーニング)として、培養細胞(例えば、ヒト肝癌由来HepG2細胞)を用いる本発明の細胞系アッセイ方法によるスクリーニングを行う。一方で、既に食品または医薬品の承認を集めた化合物を集めた化合物ライブラリーを用いる場合には、細胞系での脂質過酸化抑制活性および細胞死抑制活性を調べる必要はなく、従って適宜2次スクリーニングを省略してもよい。
【0051】
細胞系での脂質過酸化抑制活性を調べるためのスクリーニングとしては、本発明の細胞系アッセイ方法によるスクリーニングを行い、蛍光強度の測定結果に基づいて、活性値を求める。そして、活性指標化合物の活性値と比較して、候補化合物の絞り込みを行う。
【0052】
本発明の2次スクリーニング方法は、以下の方法を含む。
i)アラキドン酸を用いる細胞系アッセイ方法によるスクリーニングを行い、高い活性値を示す化合物を選択する、
ii)tert-ブチルヒドロペルオキシドを用いる細胞系アッセイ方法を行い、高い活性値を示す化合物を選択する、
iii)i)およびii)の両方のアッセイ方法において高い活性値を示す化合物を選択する。
【0053】
前記の細胞系アッセイ方法によるスクリーニングにおいて、反応開始剤としてAAまたはtBHPをそれぞれ用いて測定した際に測定される蛍光強度の値から、下記式に基づいて活性値を求めた。
活性値 = 100(AUC Sample-AUC Background)/(AUC Control-AUC Background)
AUC Sample:反応開始剤あり、各化合物あり(n=1)の蛍光強度から算出した曲線下面積
AUC Control:反応開始剤あり、各化合物なしの蛍光強度から算出した曲線下面積
AUC Background:反応開始剤なし、各化合物なしの蛍光強度から算出した曲線下面積
次に、活性指標化合物の値と比較して、候補化合物の絞り込みを行う。得られたAAまたはtBHPを用いる各スクリーニングで得られた上記活性値をプロットする。両方のスクリーニングにおいて、脂質過酸化抑制の高い活性値を示す候補化合物を選別する。
【0054】
また、脂質過酸化が誘発する細胞死抑制の高い活性を示す化合物を探索する。
細胞系での細胞死抑制活性を調べるためのスクリーニングとしては、ヒト肝癌由来のHepG2細胞を用い、およびラジカル開始剤としてAAおよびtBHPを用いるアッセイを行い、細胞生存率を測定する。この細胞生存率の値から下記式に基づいて、活性値を求める。
活性値 = 100(生存率 Sample-生存率 Control(+))/(生存率 Control(-)-生存率 Control(+))
生存率 Sample:反応開始剤あり、各化合物あり(n=1)のときの細胞生存率
生存率 Control(+):反応開始剤あり、各化合物ありのときの細胞生存率
生存率 Control(-):反応開始剤なし、各化合物なしのときの細胞生存率
そして、活性指標化合物の値と比較して、候補化合物の絞り込みを行う。得られたAAまたはtBHPを用いる各アッセイ系で得られた上記活性値をプロットする。両方のアッセイ系で、細胞死抑制(細胞死阻害)の高い活性値を示す候補化合物を選別する。
【0055】
1実施態様において、本発明の2次スクリーニング方法は、更に、以下の方法を含む。
i)MTT法に従って、培養細胞を含む培地、被験化合物およびアラキドン酸を用いるアッセイ方法によるスクリーニングを行い、高い細胞生存率を示す化合物を選択する、
ii)MTT法に従って、培養細胞を含む培地、被験化合物およびtert-ブチルヒドロペルオキシドを用いるアッセイ方法によるスクリーニングを行い、高い細胞生存率を示す化合物を選択する、
iii)i)およびii)の両方のアッセイ方法において高い細胞生存率を示す候補化合物を選択する。
【0056】
3次スクリーニング
用いる化合物ライブラリー(例えば、東京大学創薬機構のCore library)には、例えば前出の低次のスクリーニングアッセイ(例えば、2次スクリーニング)において高い活性値を示す候補化合物に関する構造類似体を含むことがある。よって、かかる構造類似体についても適宜、候補化合物と一緒に、脂質過酸化抑制活性について、より高次なスクリーニング(例えば、3次スクリーニング)を行い、候補化合物を選別する。
また、これら候補化合物について、更に細胞死抑制活性を調べるアッセイ方法によるスクリーニングを行う。
最後に、最終的な高次なスクリーニング(例えば、3次スクリーニング)の結果、および細胞死抑制活性についてのスクリーニングの結果を総合的に考慮して、候補化合物を選定する。
【0057】
1実施態様において、本発明のスクリーニング方法は、
i)本発明の細胞系アッセイによるスクリーニング方法によって選択される化合物の構造類似体を化合物ライブラリーから選択する、
ii)i)で選択する化合物、および適宜元の選択される化合物について、本発明の細胞系アッセイによるスクリーニング方法を行い、高い活性値を示す化合物を選択する、
iii)i)で選択する化合物、および適宜元の選択される化合物について、本発明のMTT法に従う細胞アッセイによるスクリーニング方法を行い、高い細胞生存率を示す化合物を選択する、
iv)ii)およびiii)の両方のスクリーニング方法において、高い活性値および高い細胞生存率を示す候補化合物を選択する、および
v)i)で選択する化合物、および適宜、細胞系アッセイによるスクリーニングまたはMTT法に従う細胞アッセイによるスクリーニングによって選択される化合物について、培養細胞を含む培地を用いるアッセイ方法によるスクリーニングを行い、高い細胞生存率を示す候補化合物を選択する、
vi)iv)で選択する化合物、およびv)で選択する化合物から、候補化合物を選択する、
ことを含む。
【0058】
本発明のスクリーニング方法は、ハイスループットスクリーニング方法として用いることができる。
【0059】
(スクリーニング結果の活用)
脂質過酸化反応における脂質ラジカルが関与する疾患は、広範囲な疾患領域に及ぶ。したがって、標的疾患ごとに、その作用機序の知見を基に別の要素を考慮して、候補化合物を絞ることもできる。例えば、血液脳関門への透過性を要する疾患を標的とする場合には、脂溶性を考慮して候補化合物を更に絞ってもよい。具体的には、脳梗塞および網膜疾患(例えば、加齢黄斑変性症)を標的疾患とする場合には、血液脳関門への透過性がある化合物が有利であり、一方で、肝癌および動脈硬化症を標的疾患とする場合には、血液脳関門への透過性は必要とされない。
【0060】
(医薬用途)
本明細書で使用される、脂質過酸化反応が原因である疾患の「治療(する)」または「予防(する)」とは、(1)該疾患を除去すること;(2)該疾患の重篤度を軽減または最小化すること;(3)該疾患の進行または発症を遅らせること;および(4)該疾患の発生または頻度を低減、最小化、または排除すること;の1つ以上を包含する。
【0061】
本明細書で使用される、「脂質過酸化反応が原因の疾患」または「脂質過酸化反応誘発性疾患」とは、例えば図1に示す通り、脂質過酸化反応と疾患の関連が知られる疾患が含まれる。例えば、アルツハイマ-型認知症、慢性腎疾患、糖尿病性神経障害、肝障害、加齢黄斑変性症、虚血後脳障害、血管性認知症、動脈硬化症、パーキンソン病、多発性硬化症、がん、ぜんそく、高血圧、心血管疾患、および加齢性眼疾患からなる群から選ばれる1つ以上の疾患が含まれる。
【0062】
本明細書で使用される「対象者」は、ヒトまたは非ヒト動物を含む。
【0063】
本発明の活性薬物は、その医薬的に許容し得る塩の形態を含む。また、本発明の活性薬物またはその医薬的に許容し得る塩は、その水和物または溶媒等との溶媒和物を含む。また、本発明は、本発明の活性薬物のあらゆる形態の結晶体を含む。
【0064】
医薬的に許容し得る塩としては、例えば有機塩基(例えば、ジエタノールアミン塩、エチレンジアミン塩)との塩、並びに無機塩基(例えば、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム)との塩、およびアルカリ土類金属(例えば、カルシウム、またはマグネシウム)との塩)を含む。
【0065】
本発明の活性薬物は、治療または予防に用いる場合に、医薬組成物として、経口的または非経口的(例えば、静脈内、皮下、もしくは筋肉内注射、局所的、経直腸的、経皮的、脊髄内的または経鼻的)に投与することができる。経口投与のための組成物としては、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、散剤、液剤、懸濁剤などが挙げられ、非経口投与のための組成物としては、例えば、注射用水性剤、もしくは油性剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、エアロゾル剤、坐剤、貼付剤などが挙げられる。これらの製剤は、従来公知の技術を用いて調製され、医薬分野において通常使用される無毒性かつ不活性な担体もしくは添加剤(以下、「医薬的に許容し得る担体」と呼称する)を含有することができる。
【0066】
本明細書で使用される「医薬的に許容し得る担体」としては、薬理効果等を妨げない限り、有効活性成分に加えて、各種用途に応じて、種々の活性成分または薬効成分(薬理活性成分および生理活性成分を含む)や添加剤(例えば、緩衝化剤、等張化剤、pH調整剤、防腐剤・保存剤、安定化剤、増粘剤、キレート剤、界面活性剤、香料等)を組み合わせて含有してもよい。このような成分は、刺激等の問題がない濃度範囲内で適宜配合することができ、成分の種類は特に制限されないが、例えば緩衝化剤(例えば、リン酸ナトリウム)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム)、pH調整剤(例えば、ホウ酸)、防腐剤・保存剤(例えば、塩化ベンザルコニウム)、安定化剤(例えば、マンニトール)、増粘剤(例えば、アルギン酸ナトリウム)、キレート剤(例えば、エデト酸ナトリウム)、界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、香料(例えば、メントール)等が挙げられる。
【0067】
本明細書で使用される用語「投与(する)」とは、被験者の個体に活性薬物もしくはそれを含有する医薬組成物を提供すること、および/または処方すること、あるいは該個体が本発明の活性薬物もしくは医薬組成物を受けること、等を含む。本発明の活性薬物もしくは医薬組成物の投与経路は、任意の投与経路であり得て、例えば所望する疾患、症状、または被験者の年齢、体重、性別などにより変わり得る。
【0068】
本明細書で使用される「有効量」とは、所望の効果、すなわち、本明細書に記載される脂質過酸化反応誘発性疾患の治療または予防を提供するのに十分な活性薬物の量を意味する。また、本発明の活性薬物または医薬組成物は、所望する疾患について公知の活性薬物または医薬組成物と組み合わせて使用してもよい。
【0069】
本発明の活性薬物の用量は、個々の活性薬物もしくは医薬組成物により、また被験者の疾患、年齢、体重、性別、症状、投与経路等により変化するが、非経口投与の場合、通常、1日当たり0.001~100mg/kg、好ましくは0.01~100mg/kgである。経口投与の場合、通常、1日当たり0.01~1000mg/kg、好ましくは0.1~100mg/kgである。本発明の活性薬物を、1日1回または複数回(または、2ないし3回)に分けて投与する。また、数日~数週に1回投与することもできる。
【実施例0070】
本発明の実施例を、下記に実施例として記載するが、これらに限定されるものではない。
試薬、細胞培養関連試薬、蛍光ニトロキシド化合物は、市販のものを入手するか、あるいは公知の方法に従って製造した。Core library化合物、Prestwick chemical library化合物はそれぞれ東京大学創薬機構、九州大学化合物ライブラリー創薬先端研究・教育基盤センターより供給されたものを使用した。また、各種測定機器は、通常使用される機器を用いて使用した。
【0071】
(参考例1)
NBD-TEMPO化合物の製造
2,2,6,6-テトラメチル-4-(4-ニトロベンゾ[1,2,5]オキサジアゾール-7-イルアミノ)ピペリジン-1-オキシル(NBD-TEMPO)は、下記の手順に従って製造した。具体的には、4-フルオロ-7-ニトロ-2,1,3-ベンゾオキサジアゾール366 mg(2.0 mmol)をAcOEt 10 mLに溶解し、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル342 mg (2.0 mmol)を加えた。室温で3時間攪拌後、飽和食塩水を加え、AcOEtで抽出し、有機層をNa2SO4で乾燥し、溶媒を完全に留去した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (CHCl3)で分離精製し、橙黄色結晶 574 mg (収率: 86%)を得た。HRMS (ESI+) cald for C15H20N5NaO4 [M + Na]+: 357.1413, found: 357.1415。
【0072】
(参考例2)
Dansyl-TEMPO化合物の製造
2,2,6,6-テトラメチル-4-(5-(ジメチルアミノ)ナフタレン-1-スルホニルアミノ)ピペリジン-1-オキシル(Dansyl-TEMPO)は、文献(例えば、LozinskyらによるLozinsky, E., et. al., J. Biolchem. Biophys., Methods, 1999, 38, 29-42)に記載の方法に従って製造した。具体的には、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル1.03 g (6.0 mmol)をacetone 5 mlに溶解し、氷浴中にて5-(ジメチルアミノ)ナフタレン-1-スルホニルクロリドクロリド1.35g (5.0 mmol)とピリジン0.483 mlを加えた。室温で一晩攪拌後、飽和食塩水を加え、ジエチルエーテルで抽出し、有機層をNa2SO4で乾燥し、溶媒を完全に留去した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3: MeOH = 99:1)で分離精製し、396 mg (収率: 20%)を得た。HRMS (ESI+) cald for C21H30N3NaO3S [M + Na]+: 427.1906, found: 427.1900。
【0073】
(参考例3)
NBD-TEEPO化合物の製造
2,2,6,6-テトラエチル-4-(4-ニトロベンゾ[1,2,5]オキサジアゾール-7-イルアミノ)ピペリジン-1-オキシル(NBD-TEEPO)は、文献(例えば、BognarらによるBognar, B., et al., J. Heterocycl. Chem., 2006, 43, 81-86)に記載の方法に従って製造した。具体的には、4-クロロ-7-ニトロ-2,1,3-ベンゾオキサジアゾール87.6 mg (0.44 mmol)とEt3N 61 μLをAcOEt 10 mLに溶解し、4-アミノ-2,2,6,6-テトラエチルピペリジン-1-オキシル100 mg (0.44 mmol)を加えた。室温で6時間攪拌後、飽和食塩水を加え、AcOEtで抽出し、有機層をNa2SO4で乾燥し、溶媒を完全に留去した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (Hexane:AcOEt = 100:0~70:30)で分離精製し、橙黄色結晶 83 mg (収率: 6%)を得た。HRMS (ESI+) cald for C19H28N5NaO4 [M + Na]+: 413.2034, found: 413.2024
【0074】
(参考例4)
NBD-Pen化合物の製造
2,2,6,6-テトラエチル-4-(4-ニトロベンゾ[1,2,5]オキサジアゾール-7-イルアミノ)ピペリジン-1-オキシル(NBD-TEEPO)の合成法と同様に、4-アミノ-2,2,6,6-テトラエチル ピペリジン-1-オキシル(4) 100 mg (0.44 mmol)を、4-アミノ-2,2,6-トリメチル-6-ペンチルピペリジン-1-オキシル(8) 100 mg (0.44 mmol)に代え、反応を行った。生成物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (Hexane:AcOEt = 100:0~70:30)で分離精製し、橙黄色結晶 83 mg (収率: 48%)を得た。HRMS (ESI+) cald for C19H28N5NaO4 [M + Na]+: 413.2034, found: 413.2056
【0075】
(実施例1)
蛍光ニトロキシドプローブの脂質過酸化反応応答性評価
リン酸緩衝液中 (10 mM、pH 7.4、0.5% DMSO、0.5%アセトニトリル)、蛍光ニトロキシド(NBD-TEMPO化合物、またはDansyl-TEMPO化合物)(5.0 μM)とリポソーム (2.5 mg/mL Egg PC、0.1 mg/mL DCP)を37℃において混和させた。脂質過酸化反応はAAPH (20 mM)を混和させ開始させた。40分後、NBD-TEMPOでは励起波長: 470 nm蛍光波長: 530 nm、Dansyl-TEMPOでは励起波長: 300 nm、蛍光波長: 500 nmにおいて蛍光強度を測定した。
結果を図2に示す。
調整したリポソームをAAPHで刺激すると、NBD-TEMPOでは蛍光強度がAAPH未添加時に比べ8.2倍上昇した。一方、Dansyl-TEMPOでは蛍光強度の上昇は1.4倍に留まった。そこで、蛍光団としてNBD基を用いることとした。
【0076】
(実施例2)
蛍光ニトロキシドプローブと種々の還元物質との反応性評価
蛍光ニトロキシド (5.0 μM)(NBD-TEMPO化合物、NBD-Pen化合物、またはNBD-TEEPO化合物)と種々の還元物質 (AsA、UA、TPL、Eda、Catechin、Trolox) 50 μMを、リポソーム (2.5 mg/mL Egg PC、0.1 mg/mL DCP)を含むリン酸緩衝液中 (10 mM、pH 7.4、0.5% DMSO、 0.5%アセトニトリル)、37℃において混和させた。40分後、励起波長: 470 nm蛍光波長: 530 nmにおいて蛍光強度を測定した。ここで、AsAはアスコルビン酸を、UAは尿酸を、TPLは2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルを、Edaはエダラボンを、Catechinは (-)-エピカテキンを、Troloxは6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸を意味する。
【0077】
結果を図3に示す。
モデル抗酸化物質として以下6種類を選択した(図(3a))。ヒト体内で水溶性抗酸化物質として働き、多くの食品等にも含まれるAsA、ヒト血中に最も多く含まれる抗酸化物質である尿酸、ニトロキシド化合物のうち、その毒性の低さから実験動物モデルを用いた研究にも汎用されている 4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピぺリジル-1-オキシル(Tempol)、フリーラジカル消去剤として承認されているエダラボン (Edaravone: Eda)、茶・ワインなどに含まれ一般的に摂取されているカテキン((-)-エピカテキン: Catechin)、VitEの類似化合物Troloxの6種類である。これら6種類の水-オクタノール分配係数 (LogPo/w)はAsA < UA < TPL < Eda < Catechin < Troloxの順で高くなることが知られる。
NBD-TEMPO化合物ではAsAとの反応により蛍光強度が約7.7倍に、NBD-Pen化合物ではEdaとの反応により蛍光強度が約2.9倍に上昇した。しかし、NBD-TEEPO化合物では蛍光強度はほとんど上昇しなかった(図(3b))。
【0078】
(実施例3)
蛍光ニトロキシドプローブと種々の酸化物質との反応性評価
蛍光ニトロキシド(NBD-TEMPO化合物、NBD-Pen化合物、またはNBD-TEEPO化合物) (5.0 μM)と種々の酸化物質を、リン酸緩衝液中 (10 mM、pH 7.4、0.5% DMSO、0.5%アセトニトリル)、37℃において混和させた。酸化物質として、過酸化水素、次亜塩素酸、酸化カリウム (各0.5 mM)を用いた。・OHは過酸化水素 (0.5 mM)とFeSO4 (5.0 μM)により発生させた。脂質ラジカルは、リポソーム (2.5 mg/mL Egg PC、0.1 mg/mL DCP)とAAPH (10 mM)により発生させた。30分後、励起波長: 470 nm蛍光波長: 530 nmにおいて蛍光強度を測定した。
【0079】
結果を図4に示す。
いずれのプローブ分子においても、ROSとの反応ではほとんど蛍光強度は上昇しなかった。脂質過酸化反応に対しての応答性は、NBD-TEMPO化合物が最も低く、NBD-TEEPO化合物と NBD-Pen化合物が優れた脂質過酸化反応応答性を有することがわかった。
以上の結果より、最も高い還元抵抗性を示し、脂質過酸化反応への高い応答性を示したNBD-TEEPO化合物を用いることとした。
【0080】
(実施例4)
人工脂質膜における反応開始剤濃度依存的な脂質過酸化反応評価 (NBD-TEEPOアッセイ)
プローブ(NBD-TEEPO化合物)(5.0 μM)とリポソーム (2.5 mg/mL Egg PC、0.1 mg/mL DCP)を、リン酸緩衝液中 (10 mM、pH 7.4、0.5% DMSO、0.5%アセトニトリル)、37℃において混和させた。脂質過酸化反応はAAPH (0-20 mM)あるいはFeSO4 (0-2.0 mM)を混和させて開始させた。AAPH系では40分後、Fe2+系では60分後、励起波長: 470 nm蛍光波長: 530 nmにおいて蛍光強度を測定した。
【0081】
結果を図5(AAPH)および図6(FeSO4)に示す。
AAPH、Fe2+いずれの系においても濃度依存的にプローブの蛍光強度が上昇した(図(5a)および(6a))。また、AAPH系では水溶性のAsA、Fe2+系では脂溶性抗酸化物質Edaを添加すると、濃度依存的に蛍光上昇が抑制された(図(5b)および(6b))。そこで、代表的な抗酸化物質6種類の脂質過酸化抑制効果を測定した。実施例5に示す既存手法であるTBARS法の結果(図(5d)および(6d))と比較したところ、いずれも同様の傾向を示した(図(5c)および(6c))。
NBD-TEEPO化合物を用いるAAPHまたはFe2+を用いる無細胞系のアッセイ系について、アッセイ系の質を表すS/B比、CV値、Z’-factorは調べた。結果を下記の表に示す。いずれの指標についても目標値を上回った(表1)。
【表1】
【0082】
(実施例5)
人工脂質膜における抗酸化物質による脂質過酸化抑制評価 (TBARSアッセイ)
種々の還元物質 (10 μM)、リポソーム (2.5 mg/mL Egg PC、0.1 mg/mL DCP)を、リン酸緩衝液中 (10 mM、pH 7.4、0.5% DMSO、0.5%アセトニトリル)、37℃において混和させた。脂質過酸化反応はAAPH (20 mM)あるいはFeSO4 (1.0 mM)を混和させ開始させた。60分後、BHT (10 mM)により脂質過酸化反応を停止させた。酢酸 (5.7%)、TBA (0.56%)、SDS (1.07%)を加え、攪拌後60℃にて60分間反応させた。遠心分離(2000 rpm、4℃、15分間)を行い、励起波長: 512 nm、蛍光波長: 553 nmにおいて蛍光強度を測定した。
実施例4と同様に、代表的な抗酸化物質6種類の脂質過酸化抑制効果を測定した。
【0083】
結果を図5(AAPH)および図6(FeSO4)に示す。実施例4の結果と同様な傾向の脂質過酸化抑制効果を示した。
【0084】
(実施例6)
細胞培養
ヒト肝癌細胞 (HepG2細胞)は、DMEM培地 (10% FBS、1% Penicillin-Streptomycinおよび1×MEM非必須アミノ酸を含む)を用いてCO2インキュベータ内 (37℃、5%CO2)で培養した。継代は60-70%サブコンフルエント状態になった際に行った。また、各種測定時にはDMEM培地 (フェノールレッド不含、1% Penicillin-Streptomycinを含む)を用いた。
【0085】
(実施例7)
反応開始剤濃度依存的な細胞内脂質過酸化反応評価 (NBD-TEEPOアッセイ)
HepG2細胞は96穴プレートに10000 cells/wellで播種した。24時間インキュベートし接着させた。DMEM培地中 (DMSO 0.5%、アセトニトリル 0.5%)、AA (0-200 μM)あるいはtBHP (0-300 μM)、およびプローブ (5.0 μM)を添加し、45分後、励起波長: 470 nm蛍光波長: 530 nmにおいて蛍光強度を測定した。
【0086】
(実施例8)
抗酸化物質による細胞内脂質過酸化抑制評価 (NBD-TEEPOアッセイ)
HepG2細胞は96穴プレートに10000 cells/wellで播種した。24時間インキュベートし接着させた。DMEM培地中 (DMSO 0.5%、アセトニトリル 0.5%)、AA (200 μM)あるいはtBHP (0-300 μM)、抗酸化物質 (50 μM)およびプローブ (5.0 μM)を添加し、45分後、励起波長: 470 nm蛍光波長: 530 nmにおいて蛍光強度を測定した。
【0087】
結果を図7に示す。
AAおよびtBHP濃度依存的な蛍光上昇が観測された(図(7a)および(7c))。また抗酸化物質添加により、抑制された(図(7b)および(7d))。最も強い抑制効果を示したのはCatechinで、反応開始剤によらず同様の傾向が見られた。
【0088】
(実施例9)
反応開始剤濃度依存的な細胞生存率変化評価 (MTTアッセイ)
HepG2細胞は96穴プレートに10000 cells/wellで播種した。24時間インキュベートし接着させた。DMEM培地中 (DMSO 0.5%、アセトニトリル 0.5%)、AA (0-100 μM)あるいはtBHP (0-100 μM)を添加し、24時間後培地交換を行った。MTT溶液 (0.5 mg/mL、0.5% DMSO)を添加後4時間インキュベートし、溶液を除去した。DMSOを100 μL加え、630 nmの吸光度を測定した。細胞生存率はAAあるいはtBHP未添加を100%とし、算出した。
【0089】
(実施例10)
抗酸化物質による細胞生存率変化評価 (MTTアッセイ)
HepG2細胞は96穴プレートに10000 cells/wellで播種した。24時間インキュベートし接着させた。DMEM培地中 (DMSO 0.5%、アセトニトリル 0.5%)、AA (200 μM)あるいはtBHP (0-300 μM)、抗酸化物質 (50 μM)を添加し、24時間後培地交換を行った。MTT溶液 (0.5 mg/mL、0.5% DMSO)を添加後4時間インキュベートし、溶液を除去した。DMSOを100 μL加え、630 nmの吸光度を測定した。細胞生存率はAAあるいはtBHP未添加を100%とし算出した。
【0090】
結果を図8に示す。
AAおよびtBHP添加により、濃度依存的に細胞生存率が低下した(図(8a)および(8c))。また抗酸化物質によりその効果は抑制された(図(8b)および(8d))。また、用いる反応開始剤によって、高い抑制効果を示す抗酸化物質が異なる傾向を示した。
NBD-TEEPO化合物またはMTTを用いる、AAまたはtBHPを用いる細胞系のアッセイ系について、アッセイ系の質を表すS/B比、CV値、Z’-factorは調べた。結果を下記の表2および表3に示す。いずれの指標についても目標値を上回った。
【表2】
【表3】
【0091】
(実施例11)
東京大学創薬機構1次スクリーニング (AAPH系)
化合物は2 mM 100%DMSO溶液 (0.125 μL/well分注)を東京大学創薬機構より頂戴した。リン酸緩衝液中 (10 mM、pH 7.4、1.0%アセトニトリル)中にリポソーム (5.0 mg/mL Egg PC、0.2 mg/mL DCP)およびプローブ (10 μM)を含む溶液A、リン酸緩衝液中 (10 mM、 pH 7.4) にAAPH (40 mM)を含む溶液Bを作製した。溶液A、Bをそれぞれ12.5 μLずつ Multidrop Combiにより分注した。終濃度は、リン酸緩衝液中 (10 mM、pH 7.4、0.5%アセトニトリル、0.5%DMSO)中にリポソーム (2.5 mg/mL Egg PC、0.1 mg/mL DCP)およびNBD-TEEPO化合物5.0 μM、被験化合物50 μM、AAPH20 mMとなった。反応混合物を、37℃において混和させ、40分後に励起波長: 470 nm蛍光波長: 530 nmにおける蛍光強度を測定した。また、明細書中に記載する式に従って、各被験化合物の活性値を求めた。
【0092】
結果を図10に示す。
9600化合物のうち、1858個が活性値0を下回った、すなわち脂質過酸化反応を抑制しなかった。一方、7711個が脂質過酸化反応を抑制し、うち836個が既知化合物エダラボンよりも高い活性値を示した。この836個の化合物を一次スクリーニングにおけるヒット化合物(候補化合物)とし、Fe2+系での評価へ進めることとした。
【0093】
(実施例12)
東京大学創薬機構1次スクリーニング (FeSO4系)
続いて、AAPH系でエダラボンよりも高い脂質過酸化抑制効果を示した836化合物に対してFe2+系で評価した。化合物は2 mM 100%DMSO溶液 (0.2 μL/well分注)を東京大学創薬機構より頂戴した。リン酸緩衝液中 (10 mM、pH 7.4、0.56%アセトニトリル)中にリポソーム (2.78 mg/mL Egg PC、0.11 mg/mL DCP)およびプローブ5.6 μMを含む溶液A、 蒸留水中にFeSO4 10 mMを含む溶液Bを作製した。溶液Aを36 μL Multidrop Combiにより分注した。溶液Bを4 μL Biomek NXP により分注した。終濃度は、リン酸緩衝液中 (10 mM、pH 7.4、0.5%アセトニトリル、0.5%DMSO)中にリポソーム (2.5 mg/mL Egg PC、0.1 mg/mL DCP)およびプローブ5.0 μM、被験化合物50 μM、FeSO4 1.0 mMとなった。反応混合物を、37℃において混和させ、励起波長: 470 nm蛍光波長: 530 nmにおける蛍光強度を3分おきに経時測定した。180分間の蛍光強度よりAUCを算出し、明細書中に記載する式に従って、各被験化合物の活性値を算出した(図11)。
【0094】
結果を図12に示す。
836化合物のうち、268個が活性値0を下回った、すなわち脂質過酸化反応を抑制しなかった。一方、568個が脂質過酸化反応を抑制した。このうち197個がエダラボンを上回る活性を示した。抑制効果の高かった上位80個をヒット化合物(候補化合物)とし、2次スクリーニングへと進めることとした。
【0095】
(実施例13)
東京大学創薬機構2次スクリーニング (NBD-TEEPOアッセイ)
1次スクリーニングで選別した80個の化合物について、2次スクリーニングを行った。
化合物は10 mM 100%DMSO溶液 (5.0 μL/well分注)を東京大学創薬機構より頂戴した。ここに測定用DMEM培地495 μLを添加し、化合物100 μM 1.0%DMSO溶液を調整した。これをあらかじめ細胞を播種した測定用プレートに80 μLずつBiomek NXPにより分注した。被験化合物 (100 μM 1.0%DMSO)に、12.5 μM NBD-TEEPO化合物を含むDMEM培地 (1.25%アセトニトリル) 64 μL、PBS中に溶解したAA (2000 μM、5.0%エタノール)あるいはtBHP (3000 μM)を16 μL手動分注した。終濃度は、DMEM培地中 (0.5% DMSO、0.5%アセトニトリル)、被験化合物50 μM、AA 200 μMあるいはtBHP 300 μMとなった。
反応混合物を、37℃において混和させ、励起波長: 470 nm蛍光波長: 530 nmにおける蛍光強度を3分おきに経時測定した。AA添加系では45分間、tBHP添加系では60分間の蛍光強度よりAUCを算出し、明細書中に記載する式に従って、各被験化合物の活性値を算出した。
【0096】
結果を図13に示す。
AA添加系では、80化合物のうち40個が活性値0%を下回った、すなわち培養細胞系では脂質過酸化反応を抑制しなかった。一方、40個が脂質過酸化反応を抑制した。このうち32個がエダラボンを上回る活性を示した(図(13a))。またtBHP添加系では、80化合物のうち17個が活性値0%を下回り、一方、63個が脂質過酸化反応を抑制した。このうち31個がエダラボンを上回る活性を示した(図(13b))。2つの系における活性値をプロットし(図(13c))、どちらの系においても高い活性値を示した4つの化合物:化合物No. 7、48、64、80をヒット化合物とし(図(13d))、3次スクリーニングへ進めることとした。
化合物7:
2-((4-(フェニルアミノ)フェニル)アミノ)-N-(4-スルファモイルフェニル)プロパンアミド
化合物48:
2,6-ジメトキシ-4-(2-(8-ニトロキノリン-2-イル)ビニル)フェノール
化合物64:
N2,N2-ジメチル-9H-フルオレン-2,3-ジアミン
化合物80:
N-(3-メトキシ-4-((3-メチル-1-10H-インドロ[3,2-b]キノリン-11-イル)アミノ)フェニル)メタンスルホンアミド
【化4】
【0097】
(実施例14)
東京大学創薬機構2次スクリーニング (MTTアッセイ)
1次スクリーニングで選別した80個の化合物について、2次スクリーニングを行った。
化合物は10 mM 100%DMSO溶液 (5.0 μL/well分注)を東京大学創薬機構より頂戴した。ここに測定用DMEM培地495 μLを添加し、化合物100 μM 1.0%DMSO溶液を調整した。これをあらかじめ細胞を播種した測定用プレートに80 μLずつBiomek NXPにより分注した。被験化合物 (100 μM 1.0%DMSO)に、DMEM培地64μL、PBS中に溶解したAA (1000 μM、5.0%エタノール)あるいはtBHP (1000 μM)を16 μL手動分注した。終濃度は、DMEM培地中 (0.5% DMSO、0.5%アセトニトリル)、NBD-TEEPO化合物5.0 μM、被験化合物50 μM、AAあるいはtBHP 100 μMとなった。24時間後培地交換を行い、MTT溶液 (0.5 mg/mL、0.5% DMSO)を添加後24時間インキュベートし、溶液を除去した。DMSOを100 μL加え、630 nmの吸光度を測定した。細胞生存率はAAあるいはtBHP未添加を100%とし、明細書中に記載する式に従って算出した。
【0098】
結果を図14に示す。
AA添加系では、80化合物のうち6個が活性値0%を下回った、すなわちAA刺激による細胞死を抑制しなかった。一方、74個がAA刺激時による細胞死を抑制した。このうち64個がエダラボンを上回る活性を示した(図(14a))。また、tBHP添加系では、80化合物のうち8個が活性値0%を下回り、一方、73個がtBHP刺激による細胞死を抑制した。このうち14個がエダラボンを上回る活性を示した(図(14b))。2つの系における阻害率をプロットし(図(14c))、どちらの系においても高い阻害率を示した5つの化合物:化合物No. 19、39、52、73、78をヒット化合物とし(図(14d))、3次スクリーニングへ進めることとした。
化合物19:
N-(2-クロロフェニル)-5-(2-(1-ピリジン-2-イル)エチリデン)ヒドラジンイル)-1,3,4-チアジアゾール-2-アミン
化合物39:
1-(7,7-ジメチル-2-オキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-イル)-N-(1-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)-N-メチルメタンスルホンアミド
化合物52:
3-アミノ-4-(フェニルアミノ)安息香酸メチル
化合物73:
3-(2-(3-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-3-((2-モルホリノエチル)アミノ)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-6-イル)ベンズアミド
化合物78:
1-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)インドリン-5-アミン
【化5】
【0099】
(実施例15)
東京大学創薬機構3次スクリーニング (NBD-TEEPOアッセイ)
東京大学創薬機構Core Libraryには、各化合物に対して構造類似体を含む。したがって、前記候補化合物のそれぞれの構造類似化合物についても、実施例13と同様に2次スクリーニングを行い、活性値を評価した。
具体的には、前記2次スクリーニングにおける9つのヒット化合物No. 7、19、39、48、52、64、73、78、80のそれぞれについて、5、2、4、6、6、5、5、10、2個の計45個の構造類似体を入手した。そして、元の9個の化合物を合わせた計54個の化合物について、3次スクリーニングを行い、同様に活性値を算出した。
【0100】
結果を図15図16および図17に示す。
1)まず、NBD-TEEPOを用いたアッセイにおいて、AA添加系では、54化合物のうち15個が活性値0%を下回った、すなわち脂質過酸化反応を抑制しなかった。一方、39個が脂質過酸化反応を抑制した。このうち33個がエダラボンを上回る活性を示した(図(15a))。tBHP添加系では、54化合物のうち9個が活性値0%を下回り、一方、45個が脂質過酸化反応を抑制した。このうち41個がエダラボンを上回る活性を示した(図(15b))。
2)次に、MTTアッセイにおいて、AA添加系では、54化合物のうち7個が活性値0%を下回った、すなわちAA刺激による細胞死を抑制しなかった。一方、47個がAA刺激時による細胞死を抑制した。このうち31個がエダラボンを上回る活性を示した(図(16a))。tBHP添加系では、54化合物のうち17個が活性値0%を下回り、一方、37個がtBHP刺激による細胞死を抑制した。このうち37個がエダラボンを上回る活性を示した(図(16b))。
3)更に、被験化合物のみを72時間インキュベートし、細胞毒性評価を行った。細胞毒性は、DMEM培地中 (DMSO 0.5%)、HepG2細胞に抗酸化物質 50 μMを添加し、37℃、72時間インキュベート後の細胞生存率を測定した。
4)前記NBD-TEEPOを用いたアッセイ、およびMTTアッセイ、それぞれにおいて2つの添加系における活性値をプロットすると(図(15c)および(16c))、化合物No. 52の類縁体(化合物No. 52、52-1、52-3、52-4、52-5)、および化合物No. 78の類縁体(化合物No. 78、78-3、78-4、78-5、78-6、78-8)が高い脂質過酸化抑制効果ならびに細胞死抑制効果を示した(図(15d)および(16d))。
また、化合物No. 80類縁体(化合物No. 80、80-2)は最も高い脂質過酸化抑制効果を示したが、細胞毒性が極めて高かった(図(17))。
ここで、これら化合物No. 52とその類縁体(化合物No. 52-1~52-6)のうち、脂質過酸化抑制効果を発揮したものは、共通構造として下記構造で示される骨格Aを持つ。骨格Aは抗酸化力を有することが報告されている(Hu ML., et al., Nutr. Biochem., 1995, 6, 504-508)。
また、化合物No. 78とその類縁体(化合物No. 78-1~78-10)のうち、脂質過酸化抑制効果を発揮したものは、共通構造として下記構造で示される骨格Bを持つ。
【化6】
【0101】
以上の結果より、本発明のスクリーニングにより候補化合物として見出された化合物が共通構造として有する骨格A、Bをもつ化合物は、脂質過酸化抑制剤として極めて有用である可能性が高いことが示唆される。
化合物52-1:
3-アミノ-4-((4-メトキシフェニル)アミノ)安息香酸メチル
化合物52-2:
3-アミノ-4-((2-メトキシフェニル)アミノ)安息香酸メチル
化合物52-3:
3-アミノ-4-((3-メトキシフェニル)アミノ)安息香酸メチル
化合物52-4:
3-アミノ-4-(ベンジルアミノ)安息香酸メチル
化合物52-5:
3-アミノ-4-((1-フェニルエチル)アミノ)安息香酸メチル
化合物52-6:
N-(2-(フェニルアミノ)フェニル)アセトアミド
【化7】
化合物78-1:
1-(3,5-ジメチルフェニル)インドリン-2,3-ジオン
化合物78-2:
1-(3,5-ジメチルフェニル)-3,3-ジフルオロインドリン-2-オン
化合物78-3:
1-(3,5-ジメチルフェニル)-1H-インドール-6-アミン
化合物78-4:
1-(3,5-ジメチルフェニル)インドリン-6-アミン
化合物78-5:
1-(4-メトキシフェニル)-1H-インドール-5-アミン
化合物78-6:
1-(4-(メチルチオ)フェニル)-1H-インドール-5-アミン
化合物78-7:
1-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-インドール-5-アミン
化合物78-8:
1-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-1H-インドール-5-アミン
化合物78-9:
1-(4-(メチルチオ)フェニル)インドリン-5-アミン
化合物78-10:
1-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)インドリン-5-アミン
【化8】
【0102】
(実施例16)
Prestwick chemical library 1次スクリーニング (AAPH系)
本1次スクリーニングでは、AAPH系およびFe2+系において、被験化合物としてそれぞれ1280個の化合物を測定した。実験方法、および活性値の計算方法は、前記と同様に、化合物ライブラリとして東大創薬機構Core libraryの場合と同様にして行った。被験化合物は、リン酸緩衝液中 (10 mM、pH 7.4、2%DMSO)、20 μM希釈液 (20 μL/well分注)を九州大学化合物ライブラリー創薬先端研究・教育基盤センターより供給された。
まず、AAPH系アッセイを用いる場合は、リン酸緩衝液中 (10 mM、pH 7.4、2.0%アセトニトリル)中にリポソーム (10 mg/mL Egg PC、0.4 mg/mL DCP)およびNBD-TEEPO化合物を(20 μM)を含む溶液A、リン酸緩衝液中 (10 mM、pH 7.4) にAAPH 80 mMを含む溶液Bを作製した。溶液A、Bをそれぞれ10 μLずつ Multidrop Combiにより分注した。終濃度は、リン酸緩衝液中 (10 mM、pH 7.4、0.5%アセトニトリル、1%DMSO)中にリポソーム (2.5 mg/mL Egg PC、0.1 mg/mL DCP)およびNBD-TEEPO化合物5.0 μM、被験化合物10 μM、AAPH 20 mMとなった。37℃において、40分後の励起波長: 470 nm蛍光波長: 530 nmにおける蛍光強度を測定した。
【0103】
(実施例17)
Prestwick chemical library 1次スクリーニング (FeSO4系)
次に、Fe2+系アッセイを用いる場合には、リン酸緩衝液中 (10 mM、pH 7.4、2.0%アセトニトリル)中にリポソーム (10 mg/mL Egg PC、0.4 mg/mL DCP)およびNBD-TEEPO化合物20 μMを含む溶液A、 蒸留水中にFeSO4 4.0 mMを含む溶液Bを作製した。溶液A、Bをそれぞれ10 μLずつ Multidrop Combiにより分注した。終濃度は、リン酸緩衝液中 (10 mM、pH 7.4、0.5%アセトニトリル、1%DMSO)中にリポソーム (2.5 mg/mL Egg PC、0.1 mg/mL DCP)およびNBD-TEEPO化合物5.0 μM、被験化合物10 μM、FeSO4 1.0 mMとなった。37℃において、180分後の励起波長: 470 nm蛍光波長: 530 nmにおける蛍光強度を測定した。
【0104】
結果を図18および図19に示す。
1)その結果、AAPH系では1280個の化合物のうち、330個が活性値0を下回った、すなわち脂質過酸化反応を抑制しなかった。一方、950個が脂質過酸化反応を抑制し、うち190個が既知化合物エダラボンよりも高い活性値を示した(図(18a))。Fe2+系では1280個の化合物のうち、434個が活性値0を下回り、一方、846個が脂質過酸化反応を抑制した。うち19個が既知化合物エダラボンよりも高い活性値を示した(図(18b))。
AAPH系とFe2+系との結果を合わせて、16個のヒット化合物を得た(図(19a)および(図(19c)))。
2)Prestwick chemical libraryは、薬理活性が既知である化合物を集めた化合物ライブラリーであることから、本ライブラリーが提供しているデータベースや文献情報により、作用点、体内動態、安全性などに関する情報を入手することができる。したがって、当該16個のヒット化合物について、これらの情報をベースとして絞り込みを行った。これらヒット化合物には、心血管系、中枢系、呼吸器系、抗菌薬など幅広い疾患領域の治療薬が含まれていた(図(19b))。
【0105】
(薬理試験)
加齢黄斑変性症(AMD)に対する薬理活性を調べた。
試験モデルとしては、萎縮型AMDモデルマウスとして広く汎用される光照射モデルを用いて、試験を行った。被験化合物は、前記のPrestwick chemical libraryに関するスクリーニングによって選別した16個の候補化合物について、更に血液網膜関門(BRB)の透過性が高いことが報告されている下記5つの化合物(化合物V、化合物W、化合物X、化合物Y、化合物Z)に絞り込んで、薬理活性を調べた。
化合物V:
アポモルヒネ ((R)-(-)-アポモルヒネ 塩酸)
ドパミンD1D2受容体に作用する抗パーキンソン病薬として知られる。
化合物W:
エセロリン ((-)-エセロリンフマル酸塩)
オピオイド受容体に作用する鎮痛作用を有することが知られる。
化合物X:
エトキシキン (6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)
抗酸化作用を有することが知られる。
化合物Y:
メチルドパ (メチルドーパ セスキ水和物)
アドレナリンα2受容体に作用する血圧降下薬として知られる。
化合物Z:
オランザピン
(2-メチル-4-(4-メチル-1-ピぺラジニル)-10H-チエノ[2,3-b][1,5]ベンゾジアゼピン
【0106】
多数の受容体に作用する抗精神病薬として知られる。
【化9】
【0107】
(操作)
まず、AMDモデルマウスを下記のスケジュールに従って作製した。
実験動物
雄性BALB/cマウス (4週齢)は日本エスエルシー(株)より購入し、一週間馴化させた後、実験に用いた。餌として実験動物固形飼料 (CLEA Rodent Diet CE-2、CREA JAPAN, INC.)を、飲料水として水道水を自由摂取させ、12時間ごとの明暗サイクルの下で飼育した。また、全ての動物実験は、九州大学動物実験委員会の承認のもとで遂行した。
【0108】
光誘発性AMDモデルマウス作製
BALB/cマウスに、ポリエチレングリコール (polyethylene glycol: PEG) 300 10%を含むPBSに溶解させた10 mMの化合物を5 mL/kg腹腔投与した。30分後、散瞳剤としてミドリンP (トロピカミド 5 mg/mL、フェニレフリン塩酸塩 5 mg/mL、参天製薬(株))を両眼に一滴ずつ点眼した。8000luxの白色光を10時間照射し、通常の明暗サイクルに戻して6日間飼育した。7日目に頚椎脱臼により安楽死させ、眼球を摘出した(図(20a))。
【0109】
眼球凍結切片の作製
被験化合物10 mMを、PEG 300 10%を含有するPBSに溶解させ、 雄性BALB/cマウスに5 mL/kg 腹腔内投与を1回行った。投与30分後から、8000 luxの白色光を10時間照射した。その後6日間通常の明暗サイクル下で飼育し、7日目に安楽死後、眼球を摘出した。厚さ8 μmの凍結切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジン (hematoxylin eosin: HE)染色を行い、外顆粒層(Outer nuclear layerONL)の厚みを180 μmおきに27点にわたり測定した(図(20b))。
【0110】
HE染色
プレパラートを1時間風乾し、室温中アセトンで15分間固定した後、99.5% EtOH、 80% EtOH、70% EtOH、精製水の順で3分間ずつ浸漬し、ヘマトキシリンで10分間染色した。その後、10分間流水洗浄を行い、1分間ぬるま湯に漬け、エオジンで1.5分間染色した。精製水で洗い、70% EtOH、80% EtOH、99.5% EtOHの順で3分間ずつ浸漬した後、キシレンで3回洗浄し、乾かした後、VectaMount(商標)Mounting Mediumにて封入した。キーエンス蛍光顕微鏡 (BZ-9000)にて観察・撮像を行った。
【0111】
統計解析
結果は平均+標準偏差で表した。多群間検定法としてDunnett’s Testを用いた。
【0112】
(結果)
撮像の結果を図21に示す。図中、上方から内顆粒層(INL)、中間に外顆粒層(ONL)、下方に網膜色素上皮(RPE)が存在する。脂質過酸化により細胞死が起こると、中間の外顆粒層の厚さがうすくなる。
まず、光照射により、ONLの厚みは有意に減少した(図21(a) 負コントロール)を参照。ONLの障害の程度は眼球の上半分(superior)側で特に重度であり(図21(b))、これらの結果は文献(例えば、Tanito M., et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 2007, 48(4), 1900-5.)にて知られる結果と一致した。
一方で、本試験に用いた5つの被験化合物の場合には、いずれの場合もONLの厚さは、正コントロールの場合と比較してほとんど差異はなく、50 μmol/kgの同じ用量の場合でも、対照化合物としてのエダラボンやOT-551の場合と比較して、有意な厚さが観察された(図21(c))。
【0113】
ここで、高い網膜保護効果を有することが知られるOT-551は、光照射モデルマウスにおいて、およそ100mg / kg (360 μmol / kg)程度必要であることが報告されている。よって、本試験における50 μmol/kgは約7分の1の量であり、かなり低用量である。
また、50 μmol/kgは、それぞれ5個の被験化合物の半数致死量(median lethal dose: LD50)の10分の1以下であり、安全であることが確認されている(図22を参照)。
以上の結果より、本発明のスクリーニングによって選別した化合物が、加齢黄斑変性症に対して有用な化合物であることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の蛍光性化合物を用いるアッセイ方法、アッセイキット、およびスクリーニング反応によれば、脂質過酸化抑制の活性を示す化合物を探索することが容易である。また、本発明のスクリーニング方法による候補化合物は、脂質過酸化反応誘発性疾患、例えば加齢性眼疾患を治療等するのに有用である。
図1
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【手続補正書】
【提出日】2022-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の下記群からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物、および医薬的に許容し得る担体を含む、対象者における脂質過酸化反応誘発性の疾患を予防もしくは治療する、または疾患の進行を抑制するための、医薬組成物。
群:オランザピン(2-メチル-4-(4-メチル-1-ピぺラジニル)-10H-チエノ[2,3-b][1,5]ベンゾジアゼピン、アポモルヒネ ((R)-(-)-アポモルヒネ 塩酸)、エセロリン ((-)-エセロリンフマル酸塩)、エトキシキン (6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)、3-アミノ-4-(フェニルアミノ)安息香酸メチル、3-アミノ-4-((4-メトキシフェニル)アミノ)安息香酸メチル、3-アミノ-4-((3-メトキシフェニル)アミノ)安息香酸メチル、3-アミノ-4-(ベンジルアミノ)安息香酸メチル、3-アミノ-4-((1-フェニルエチル)アミノ)安息香酸メチル、1-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)インドリン-5-アミン、1-(3,5-ジメチルフェニル)-1H-インドール-6-アミン、1-(3,5-ジメチルフェニル)インドリン-6-アミン、1-(4-メトキシフェニル)-1H-インドール-6-アミン、1-(4-(メチルチオ)フェニル)-1H-インドール-6-アミン、および1-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-1H-インドール-5-アミンからなる群。
【請求項2】
疾患が、アルツハイマ-型認知症、慢性腎疾患、糖尿病性神経障害、肝障害、加齢黄斑変性症、虚血後脳障害、血管性認知症、動脈硬化症、パーキンソン病、多発性硬化症、がん、ぜんそく、高血圧、心血管疾患、および加齢性眼疾患からなる群から選ばれる、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
疾患が、加齢黄斑変性疾患である、請求項1記載の医薬組成物。