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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163105
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】歯科治療支援システム
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/00 20060101AFI20221018BHJP
   G16H 50/20 20180101ALI20221018BHJP
【FI】
A61C19/00 Z
G16H50/20
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121553
(22)【出願日】2022-07-29
(62)【分割の表示】P 2018101481の分割
【原出願日】2018-05-28
(31)【優先権主張番号】P 2017208056
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】507220361
【氏名又は名称】株式会社オプテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大原 茂之
(72)【発明者】
【氏名】岩永 秀一
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】横田 真一
(72)【発明者】
【氏名】山田 智史
(72)【発明者】
【氏名】細川 仁志
(57)【要約】      (修正有)
【課題】歯科医師が遂行する患者の病名の決定、治療方法の策定、治療順序の策定を支援する歯科治療支援システムを提供する。
【解決手段】歯科医師が利用する端末装置104a、104bから、患者の口腔内の疾患が発生している部位と、部位に発生している疾患の病名と、疾患に対応する治療の組が複数レコード入力されると、歯科治療支援サーバ105は、学習アルゴリズムに基づいて複数レコードに対する治療順番を推定して出力する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科医師が利用する端末装置とネットワークで接続された歯科治療支援サーバとにより構成される歯科治療支援システムであって、
前記端末装置から、患者の口腔内の疾患が発生している部位と、前記部位に発生している疾患の病名と、前記疾患に対応する治療の組が複数レコード入力されると、
前記歯科治療支援サーバは、学習アルゴリズムに基づいて前記複数レコードに対する治療順番を推定して出力する
歯科治療支援システム。
【請求項2】
前記歯科治療支援サーバは、治療計画導出推定処理部と病名導出推定処理部と、を備え、
前記治療計画導出推定処理部は、前記治療順番を推定して出力し、
前記病名導出推定処理部は、前記患者の前記口腔内の疾患が発生している部位を診察した所見の文章が入力されると、学習アルゴリズムに基づいて前記所見の文章から疾患の病名を推定して出力する、
請求項1に記載の歯科治療支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に歯科治療において運用される、歯科治療支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科医師は歯番ごとに作成した歯牙歯周の状態の所見に基づいて下記(1)~(4)の準備を経て治療に入る。
(1)問題のある歯牙歯周の歯番ごとの病名を決定する。
(2)病名と所見から歯番ごとの治療方法を決定する。
(3)歯番全体の治療方法から歯番の治療順序を洗い出す。
(4)患者と相談して最適な治療順序を確定する。
なお、歯番とは患者を正面から見た口腔内を正中線の左上、左下、右上、右下ごとに分割し、前から後ろに向けて永久歯は1~8、乳歯はA~Eとした番号のことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-119863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した病名の決定、治療方法の策定、治療順序の策定は単に規則的にできるものではなく、歯科医師が個々に積み上げてきた観察力、経験値あるいは直感力といった暗黙知が必要となる。例えば、患者の食事を妨げないように左右2カ所の同時治療を避けたり、抜歯をしないで済む治療方法や治療順序を決めたりすることなどである。すなわち、現状では、歯科医師の経験等の差に依存して歯科治療の質が左右される状況になっている。
仮に、病名の決定、治療方法の策定、あるいは治療順序の策定などを、情報技術を用いて補助することができるとすれば、経験の浅い歯科医師であっても良質の歯科治療を実現することが期待できる。
【0005】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、歯科医師が遂行する患者の病名の決定、治療方法の策定、治療順序の策定を支援する歯科治療支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、歯科医師が利用する端末装置とネットワーク接続された歯科治療支援サーバとで構成される歯科治療支援システムであり、歯科医師が利用する端末装置から、患者の口腔内の疾患が発生している部位と、部位に発生している疾患の病名と、疾患に対応する治療の組が複数レコード入力されると、歯科治療支援サーバは、学習アルゴリズムに基づいて複数レコードに対する治療順番を推定して出力する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、歯科医師が遂行する患者の病名の決定、治療方法の策定、治療順序の策定を支援する歯科治療支援システムを提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る歯科治療支援システムの全体構成を示す概略図である。
図2】端末装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】歯科治療支援サーバのハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】歯科治療支援システムのソフトウェア機能の概略を示すブロック図である。
図5】歯科治療支援サーバの病名導出AI学習処理部におけるソフトウェア機能を説明するためのブロック図である。
図6】病名導出AI学習処理部に与える病名導出学習用データの一例を示す図である。
図7】歯科治療支援サーバの病名導出AI推定処理部におけるソフトウェア機能を説明するためのブロック図である。
図8】推定病名リストの一例を示す図である。
図9】歯科治療支援サーバの治療導出AI学習処理部におけるソフトウェア機能を説明するためのブロック図である。
図10】治療導出AI学習処理部に与える治療導出学習用データの一例を示す図である。
図11】歯科治療支援サーバの治療導出AI推定処理部におけるソフトウェア機能を説明するためのブロック図である。
図12】推定治療リストの一例を示す図である。
図13】推定治療群テーブルを示す図である。
図14】歯科治療支援サーバの治療計画導出AI学習処理部におけるソフトウェア機能を説明するためのブロック図である。
図15】治療計画導出AI学習処理部に与える治療計画導出学習用データの一例を示す図である。
図16】歯科治療支援サーバの治療計画導出AI推定処理部におけるソフトウェア機能を説明するためのブロック図である。
図17】推定治療順リストの一例を示す図である。
図18】歯科治療支援システムにおける、処理手順とデータの流れを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は歯科医師の経験等の差に依存して歯科治療の質が左右される状況を鑑みてなされたものである。
これより説明する実施形態は、AI(artificial intelligence:人工知能)を利用した歯科治療支援システムである。まず、定評のある歯科医師の経験を予めAIに学習させる。そして、このAIに経験豊富な歯科医師の所見等を入力することにより、まだ経験値が低い歯科医師であっても、病名、治療方法、治療計画などを確定する時に、AIは、あたかも経験の深い歯科医師がアドバイスするかのように機能して、歯科治療が一定水準以上になるように支援することができる。
【0010】
[歯科治療支援システム101の全体構成]
図1は、本発明の実施形態に係る歯科治療支援システム101の全体構成を示す概略図である。
歯科医師102は、歯科治療に定評のある経験豊富な歯科医師である。この経験豊富な歯科医師102は、インターネット103を通じて、自身が所有する端末装置104aを歯科治療支援サーバ105に接続する。そして、端末装置104aを用いて歯科医師102自身の過去の治療情報(カルテ)を歯科治療支援サーバ105に入力する。
歯科治療支援サーバ105は、端末装置104aから入力された、経験豊富な歯科医師の治療情報を学習する。
【0011】
歯科医師106は、歯科治療の経験の浅い歯科医師である。この経験の浅い歯科医師106は、インターネット103を通じて、自身が所有する端末装置104bを歯科治療支援サーバ105に接続する。そして、端末装置104bを用いてこれから診療を行おうとする患者107の所見等の情報(カルテ)を歯科治療支援サーバ105に入力する。
歯科治療支援サーバ105は、端末装置104bから入力された経験の浅い歯科医師106からの所見等の情報に基づき、患者107の病名の推定、治療方法の推定、治療順序の推定を行い、その結果を端末装置104bへ出力する。
なお、これ以降、端末装置104aと端末装置104bを区別しないときには、端末装置104と呼ぶことにする。
【0012】
[端末装置104のハードウェア構成]
図2は、端末装置104のハードウェア構成を示すブロック図である。
端末装置104は、一般的なパソコンで構成される。端末装置104は、バス201に接続された、CPU(Central Processing Unit)202、ROM(Read Only Memory)203、RAM(Random Access Memory) 204、表示部205、操作部206、不揮発性ストレージ207、NIC(Network Interface Card)208を備える。
【0013】
[歯科治療支援サーバ105のハードウェア構成]
図3は、歯科治療支援サーバ105のハードウェア構成を示すブロック図である。
歯科治療支援サーバ105は、バス301に接続された、CPU302、ROM303、RAM304、不揮発性ストレージ305、NIC306を備える。
なお、歯科治療支援サーバ105は、パソコンを流用して構成することが可能である。
図3に示す歯科治療支援サーバ105は、表示部307と操作部308を有しているが、表示部307と操作部308は、歯科治療支援サーバ105として必ず必要とされるものではないので、図3では点線で示されている。
【0014】
[歯科治療支援システム101のソフトウェア機能]
図4は、本実施形態の歯科治療支援システム101のソフトウェア機能の概略を示すブロック図である。
歯科治療支援サーバ105は、AIの機能を有する。一般に、AIは学習フェーズと推定フェーズを有するため、図4では、学習フェーズと推定フェーズでブロック図を分けている。
図4(a)は、学習フェーズにおける歯科治療支援システム101のソフトウェア機能の概略を示すブロック図である。
端末装置104aは、入出力制御部401に接続された表示部205と操作部206よりなる。経験豊富な歯科医師102は、操作部206を操作して情報を生成し、インターネット103を通して歯科治療支援サーバ105に送信する。なお、歯科治療支援サーバ105に送信される情報は、端末装置104aの表示部205に表示される。
【0015】
歯科治療支援サーバ105は、端末装置104aから受信した情報を、入出力制御部402を通して、病名導出AI学習処理部403、治療導出AI学習処理部404、及び治療計画導出AI学習処理部405に、学習データとして与える。
病名導出AI学習処理部403は、学習結果を病名導出用辞書データ406として蓄積する。治療導出AI学習処理部404は、学習結果を治療導出用辞書データ407として蓄積する。また、治療計画導出AI学習処理部405は、学習結果を治療計画導出用辞書データ408として蓄積する。
【0016】
図4(b)は、推定フェーズにおける歯科治療支援システム101のソフトウェア機能の概略を示すブロック図である。
図4(a)の学習フェーズでは、経験豊富な歯科医師102が利用する端末装置104aが用いられるのに対し、図4(b)に示す推定フェーズでは、経験の浅い歯科医師106が利用する端末装置104bが用いられる。
【0017】
経験の浅い歯科医師106の端末装置104bから送信された情報は、歯科治療支援サーバ105の入出力制御部402を通じて、病名導出AI推定処理部409、治療導出AI推定処理部410、治療計画導出AI推定処理部411に、推定データとして与えられる。
病名導出AI推定処理部409は、病名導出用辞書データ406を読み込み、端末装置104bから入力された情報に対応する病名を推定する。治療導出AI推定処理部410は、治療導出用辞書データ407を読み込み、端末装置104bから入力された情報に対応する治療候補を推定する。また、治療計画導出AI推定処理部411は、治療計画導出用辞書データ408を読み込み、端末装置104bから入力された情報に対応する治療計画を推定する。
【0018】
[病名導出AI学習処理部403の機能]
図5は、歯科治療支援サーバ105の病名導出AI学習処理部403におけるソフトウェア機能をより詳しく説明するためのブロック図である。
歯科治療支援サーバ105の入出力制御部402は、端末装置104aから入力される情報を、入力データと、入力データを特徴付ける教師信号とに分けて、病名導出AI学習処理部403に与える。ここで、入力データは経験豊富な歯科医師102の「所見」であり、教師信号は「病名」である。この教師信号である病名は、病名導出AI学習処理部403に入力されるが、このとき病名マスタ501が参照されて、病名に対応する病名IDも病名導出AI学習処理部403に入力される。
なお、病名マスタ501の情報は、インターネット103経由で、端末装置104aの表示部205に表示される。表示部205に表示される病名の一覧から、経験豊富な歯科医師102が所望の病名を選択することにより、病名に関する入力ミスを防ぐことができる。
【0019】
病名マスタ501は、病名IDフィールドと病名テキストフィールドを有するマスタテーブルである。
病名IDフィールドには、病名を一意に識別するID情報が格納される。ID情報は数値や、数値とアルファベットの組み合わせ等である。
病名テキストフィールドには、病名テキスト、すなわち病名の名称が格納される。
病名導出AI学習処理部403に、病名の名称を直接学習させてもよいが、病名は可変長のテキストデータなので、固定長のID情報に変換する方が、情報処理技術の観点から好ましい。このため、病名マスタ501には、可変長の病名テキストフィールドの欄の他に固定長の病名IDフィールドの欄が設けられている。
【0020】
図6は、病名導出AI学習処理部403に与えられる病名導出学習用データの一例を示す図である。
図6に示す病名導出学習用データテーブル601は、病名フィールドと所見フィールドを有する。病名フィールドには、歯科疾患の略称としての病名IDが格納される。
所見フィールドには、経験豊富な歯科医師102が書いた所見、すなわち自然言語の文章が格納される。すなわち、所見フィールドに格納される所見は、可変長のテキストデータになる。
病名導出AI学習処理部403は、所見フィールドに格納された可変長テキストデータを読み込んで学習を行う学習アルゴリズムである。一般的に、この学習アルゴリズムは、自然言語処理機能と推論結果を評価する機能を有するAIによって実現される。一例として、米マイクロソフト社のクラウドサービス「AZURE」に形成されているLUIS(Language Understanding Intelligent Service)、あるいは米IBM社のNLC(Natural Language Classifier)などが挙げられる。
【0021】
[病名導出AI推定処理部409の機能]
図7は、歯科治療支援サーバ105の病名導出AI推定処理部409におけるソフトウェア機能をより詳しく説明するためのブロック図である。
歯科治療支援サーバ105の入出力制御部402は、端末装置104aから入力される情報である「所見」を、病名導出AI推定処理部409に与える。すると、病名導出AI推定処理部409は、入力された所見から推定される病名と、当該病名の確信度を、推定病名リスト701に出力する。なお、推定病名リスト701は、入出力制御部401及びインターネット103を通して、端末装置104aの表示部205に表示される。その際、入出力制御部401は、病名マスタ501を参照して、推定病名リスト701に記載されている病名IDが病名の名称に変換されて端末装置104aの表示部205に表示される。
【0022】
図8は、推定病名リスト701の一例を示した図である。病名導出AI推定処理部409は、入力された所見の文章を処理する自然言語処理機能を有すると共に、推論結果を評価する機能を有する。そして、病名導出AI推定処理部409は、所見の文章に対応する病名と、その病名の確からしさを示す確信度を出力する。
図8Aでは、入力された所見の文章から推定された結果としての推定第一候補と推定第二候補が示されている。推定第一候補は、病名が「C3急化Pul」、すなわち「う蝕症第3度の急性化膿性歯髄炎」の確信度が85%である。また、推定第二候補は、病名が「C3急化Per」、すなわち「う蝕症第3度の急性化膿性根尖性歯周炎」の確信度が15%である。この場合、推定第一候補と推定第二候補の確信度の差が70%であることから、病名導出AI推定処理部409は、患者107の所見に対応する病名を推定第一候補に確定してもほぼ問題ないと結論付けることができる。
【0023】
図8Bは、入力された所見の文章から推定された結果としての推定第一候補と推定第二候補の他の例を示している。図8Bでは、推定第一候補は、病名が「C2」、すなわち「う蝕症第2度」の確信度が60%であることを示し、推定第二候補は、病名が「P1」、すなわち「慢性歯周炎(軽度)」の確信度が40%であることを示している。
この場合、推定第一候補と推定第二候補の確信度の差が20%であることから、病名導出AI推定処理部409は、患者107の所見に対応する病名を推定第一候補に確定するには問題があると判断する。
つまり、経験の浅い歯科医師106が端末装置104bを通じて歯科治療支援サーバ105に入力した所見の文章に不備があった場合などには、図8Bに示すように推定第一候補と推定第二候補のどちらかの判断ができず、病名導出AI推定処理部409は、正常に推定処理ができなかったと考えられる。
【0024】
ここで、所見の文章の不備とは、言い換えれば「言葉足らず」の文章である場合が多い。具体的には、患者107の症状を特徴付けるキーワードが不足している文章などが考えられる。このように、推定第一候補と推定第二候補との確信度の差が小さい場合には、患者107の症状を特徴付ける適切なキーワードを追加するなどの、所見の見直しを行い、病名導出AI推定処理部409を再度稼働させる。そして、図8Aの様に、推定第一候補と推定第二候補の確信度の差が十分大きくなるまで作業を繰り返す。
【0025】
[治療導出AI学習処理部404の機能]
図9は、歯科治療支援サーバ105の治療導出AI学習処理部404におけるソフトウェア機能をより詳しく説明するためのブロック図である。
歯科治療支援サーバ105の入出力制御部402は、端末装置104aから入力される情報を、入力データと、入力データを特徴付ける教師信号に分けて、治療導出AI学習処理部404に与える。
ここで、入力データは「病名」と「部位」であり、教師信号は「治療」である。この教師信号である「治療」が治療導出AI学習処理部404に入力される際には、治療マスタ901が参照され、治療マスタ901に格納されている治療に対応する治療IDが入力される。また、入力データの「病名」の入力に際しては、図5にて説明した病名導出AI学習処理部403と同様に、病名マスタ501が参照されて、病名に対応する病名IDが治療導出AI学習処理部404に入力される。
【0026】
なお、この治療マスタ901及び病名マスタ501の情報は、経験豊富な歯科医師102の端末装置104aの表示部205に表示される。経験豊富な歯科医師102は、表示部205に表示される治療及び病名の一覧から、所望の治療及び病名を選択することで、治療及び病名の入力ミスを防ぐことができる。
また、治療内容の推定精度を高めるために、入力データに患者107の年齢や所見の文章を追加するようにしてもよい。
【0027】
治療マスタ901は、治療IDフィールドと治療テキストフィールドを有するマスタテーブルである。治療IDフィールドには、治療内容を一意に識別するID情報が格納される。ID情報としては、数値または数値とアルファベットの組み合わせ等が用いられる。
治療テキストフィールドには、治療内容テキスト、すなわち治療内容の名称がテキストとして格納される。なお、治療内容の名称を直接、治療導出AI学習処理部404に学習させてもよいが、治療内容は可変長のテキストデータなので、治療マスタ901を参照して可変長のテキストデータを固定長のID情報に変換する方が、情報処理技術の観点から好ましい。
【0028】
図10は、治療導出AI学習処理部404に与える治療導出学習用データの一例を示す図である。
図10に示す治療導出学習用データテーブル1001は、部位フィールドと病名フィールドと治療候補フィールドを有する。部位フィールドには、基本的に歯番が格納される。しかし、フォーマットの異なるデータをコンバートする場合など、特別な場合には歯番に相当する情報として可変長テキストデータが入力されることもある。
病名フィールドには、図6で説明したものと同じ、歯科疾患の略称が格納される。例えば、実際の病名フィールドには、病名IDが格納される。治療候補フィールドは、治療内容を示すテキストデータが格納されるフィールであり、実際の治療候補フィールドには、治療IDが複数個格納される。
【0029】
ある部位における病名に対する治療内容は、必ずしも一つであるとは限らない。例えば、保険適用の治療がある一方、保険適用外の治療もある。このため、例えば、図10に示すように、1個の病名に対し、複数の治療候補が対応することも多い。すなわち、部位及び病名の組と治療内容は1対多の関係になっている。
【0030】
部位フィールドに可変長テキストデータを受け入れたり、また入力データに所見を追加したりする場合には、治療導出AI学習処理部404を構成するAIは、可変長テキストデータを読み込んで学習する。このため、治療導出AI学習処理部404も、病名導出AI学習処理部403と同様に、自然言語処理機能と推論結果を評価する機能を有するAIであることが望ましい。なお、仮に、部位フィールドに完全に歯番のみ入力され、入力データに所見が入らない場合には、治療導出AI学習処理部404を、AIを用いずにシンプルな関係のデータベースとして構築することもできる。
【0031】
[治療導出AI推定処理部410の機能]
図11は、歯科治療支援サーバ105の治療導出AI推定処理部410におけるソフトウェア機能をより詳しく説明するためのブロック図である。
歯科治療支援サーバ105の入出力制御部402は、経験の浅い歯科医師106の端末装置104bから入力される「病名」及び「部位」の情報を、治療導出AI推定処理部410に与える。すると、治療導出AI推定処理部410は、入力された病名及び部位から推定される治療候補と、当該治療候補群の確信度を、推定治療リスト1101に出力する。推定治療リスト1101は、入出力制御部401とインターネット103を通して、端末装置104bの表示部205に表示される。その際、入出力制御部401は、病名マスタ501と治療マスタ901を参照して、推定治療リスト1101に記載されている病名IDを病名の名称に変換し、治療IDを治療内容の名称に変換する。
【0032】
図12A及び図12Bは、推定治療リスト1101の一例を示す図である。
治療導出AI推定処理部410は、入力された部位及び病名に対応する治療候補の確からしさを示す確信度を出力する。図12Aは、入力された部位及び病名から推定された結果として、推定第一候補は、部位が歯番の「右上4」、病名が「C2」で、確信度全てを足すと100%になる。
【0033】
図12Bでも、入力された部位及び病名から推定された結果として、推定第一候補は、部位が「右上小臼歯」、病名が「C2」の治療候補全て確信度を足すと確信度100%になる。また、推定第二候補も、部位が「右上小臼歯」、病名が「C2」の治療候補全てを足すと確信度が100%になる。
しかし、図12Bの部位「右上小臼歯」、病名「C2」のように部位が歯番でない場合には、図12Aの部位「右上4」、病名「C2」と比べて、推定処理の精度が低下することが起こり得る。このような場合には、部位を明確にすることで、図12Aに示されるような結果を得ることが期待できる。
【0034】
図13は、推定治療リスト1101のテーブルである推定治療群テーブル1301を示す図である。
歯科医院に来院する患者107は、口腔内の一箇所だけに疾患があるとは限らない。多くの患者107は、口腔内の複数の歯に疾患を生じている。そこで、経験の浅い歯科医師106は、それら複数の歯に生じているそれぞれの疾患に対し、図7で説明した病名導出AI推定処理部409で病名を推定し、図10で説明した治療導出AI推定処理部410で治療候補を推定する。すると、図13に示すように、部位毎に病名と治療候補、及び確信度が得られる。
この推定治療群テーブル1301は、確信度を除いて、後述する治療計画導出AI推定処理部411において入力データとして利用される。
【0035】
[治療計画導出AI学習処理部405の機能]
図14は、歯科治療支援サーバ105の治療計画導出AI学習処理部405におけるソフトウェア機能をより詳しく説明するためのブロック図である。
歯科治療支援サーバ105の入出力制御部402は、経験豊富な歯科医師102の端末装置104aから入力される情報を、入力データと、入力データを特徴付ける教師信号に分けて、治療計画導出AI学習処理部405に与える。ここで、入力データは「部位」と「病名」と「治療」であり、教師信号は「治療順」である。
【0036】
治療計画導出AI学習処理部405に入力される「病名」は、図5にて説明した病名導出AI学習処理部403と同様に、病名マスタ501が参照されて、病名に対応する病名IDとして入力される。同様に治療計画導出AI学習処理部405に入力される「治療」は、図9で説明した治療導出AI学習処理部404と同様に、治療マスタ901が参照されて、治療に対応する治療IDが入力される。
【0037】
図15Aは、治療計画導出AI学習処理部405に与える治療計画導出学習用データの一例を示す図である。
図15Aに示す治療計画導出学習用データテーブル1501は、部位フィールド、病名フィールド、治療フィールド、及び治療順番フィールドを有する。
部位フィールドには、歯番のみが格納される。治療計画導出学習用データテーブル1501は、図10に示した治療導出学習用データテーブル1001と基本的には同じであるが、治療導出学習用データテーブル1001とは異なり、推定精度を上げるため、治療計画導出学習用データテーブル1501には、可変長テキストデータは入力されない。
病名フィールドは、図6に示す病名導出学習用データテーブル601の同名フィールドと同じである。
【0038】
治療フィールドには、単一の治療IDが格納される。治療フィールドは図10に示した治療導出学習用データテーブル1001の治療候補フィールドと類似するが、治療導出学習用データテーブル1001の治療候補フィールドが治療IDを複数個格納するのとは異なる。すなわち、治療計画導出学習用データテーブル1501の治療フィールドは、単一の治療IDが格納の対象となる。また、治療順番フィールドには、治療順番を示す番号である自然数が格納される。
【0039】
図15Bは、治療計画導出AI学習処理部405に与える治療計画導出学習用データの一例を示す図である。図15Aの治療計画導出学習用データテーブル1501を、治療順番フィールドの値でソートしたものである。図15Aの形式、あるいは図15Bの形式の何れのテーブルを用いても、治療計画導出AI学習処理部405は学習処理が可能である。
【0040】
[治療計画導出AI推定処理部411の機能]
図16は、歯科治療支援サーバ105の治療計画導出AI推定処理部411におけるソフトウェア機能をより詳しく説明するためのブロック図である。
歯科治療支援サーバ105の入出力制御部402は、端末装置104bから入力される「部位」、「病名」及び「治療」の情報を、治療計画導出AI推定処理部411に与える。すると、治療計画導出AI推定処理部411は、入力された部位、病名及び治療から推定される治療順候補と、当該治療順候補の確信度を、推定治療順リスト1601に出力する。
【0041】
推定治療順リスト1601は、入出力制御部401及びインターネット103を通して、端末装置104bの表示部205に表示される。その際、入出力制御部401は、病名マスタ501と治療マスタ901を参照して、推定治療順リスト1601に記載されている病名IDを病名の名称に変換し、治療IDを治療内容の名称に変換する。
なお、病名導出AI推定処理部409及び治療導出AI推定処理部410は、入力されるデータの形式を1レコードのテーブルとして表すようにしたが、治療計画導出AI推定処理部411は、入力されるデータを複数レコードのテーブルとして表すことになる。
【0042】
図17は、推定治療順リスト1601の一例を示す図である。
治療導出AI推定処理部410は、入力された部位、病名及び治療に対応する治療順候補と、その治療順の確からしさを示す確信度を出力する。
図17では、入力された部位及び病名から推定された結果として、推定第一候補は、確信度が90%であることが示されている。なお、図17でも部位フィールド、病名フィールド、治療フィールド、治療順番フィールドの値の形態は、図15Aまたは図15Bの治療計画導出学習用データテーブル1501と変わらない。
すなわち、治療計画導出AI推定処理部411は、図15Aまたは図15Bの治療計画導出学習用データテーブル1501に等しい形式のテーブルに、確信度を付加して、推定治療順リスト1601として出力する。
【0043】
[歯科治療支援サーバ105における処理手順とデータの流れ]
以上の説明を踏まえ、全体の処理手順とデータの流れを説明する。
図18は、歯科治療支援システムにおける、処理手順とデータの流れを示す概略図である。
先ず、経験の浅い歯科医師106は、端末装置104bから所見D1821を歯科治療支援サーバ105に入力する(S1801)。歯科治療支援サーバ105の病名導出AI推定処理部409は、入力された所見D1821から病名候補D1822を推定し、端末装置104bへ出力する(S1802)。経験の浅い歯科医師106は、端末装置104bに出力された病名候補D1822を見て、病名を確定する作業を行い(S1803)、病名D1823を確定する(S1804)。
【0044】
経験の浅い歯科医師106は、ステップS1804で確定された病名D1823と、所見D1821から抽出された部位を、端末装置104bから歯科治療支援サーバ105に入力する(S1805)。
歯科治療支援サーバ105の治療導出AI推定処理部410は、入力された病名D1823と、所見D1821に記載されている部位から治療候補D1824を推定し、端末装置104bへ出力する(S1806)。
歯科医師106は、端末装置104bに出力された治療候補D1824を見て、治療を確定する作業を行い(S1807)、当該部位に対する治療D1825を決定する(S1808)。
【0045】
経験の浅い歯科医師106は、ステップS1801からS1808までの処理を、患者107の口腔内の疾患が発生している部位全てに対し、繰り返し実行する(S1809)。すると、歯科医師106が繰り返し行った処理によって得られた治療D1825を集めることで、図13に示した推定治療群テーブル1301が完成する。
次に、経験の浅い歯科医師106は、ステップS1809で作成した推定治療群テーブル1301を、端末装置104bから歯科治療支援サーバ105に入力する(S1810)。歯科治療支援サーバ105の治療計画導出AI推定処理部411は、入力された推定治療群テーブル1301から治療計画を推定し、端末装置104bへ出力する(S1811)。また、歯科医師106は、端末装置104bに出力された治療計画候補D1826を見て、治療計画を確定する作業を行い(S1812)、患者107に適用する治療計画D1827を決定する(S1813)。
【0046】
以上に説明した本発明の実施形態は、以下の様な変形例が可能である。
(1)第一の実施形態において、病名導出AI学習処理部403及び病名導出AI推定処理部409は、入力データに部位を追加することが可能である。部位を追加することで、口腔内の部位毎に発生する疾患の傾向に合った学習が行われ、推定精度が向上することが期待できる。
(2)歯科治療支援サーバ105は、単一のサーバで運用する他、クラウドサービスで運用することも可能である。
(3)所見の入力は、インターネットアンケート等で周知の、webブラウザ上で複数の定型文を選択する形式のフォームを形成すると、所見の文章のパターンが固定化され、推定の精度が向上することが期待できる。
【0047】
(4)第一の実施形態において、病名導出AI学習処理部403、治療導出AI学習処理部404及び治療計画導出AI学習処理部405、そして病名導出AI推定処理部409、治療導出AI推定処理部410及び治療計画導出AI推定処理部411は、全てAIを使用することを前提に説明したが、学習アルゴリズムに基づく情報処理機能であれば、必ずしもAIでなくてもよい。
この場合、「AI」という用語を削除して、病名導出AI学習処理部403は病名導出学習処理部に、治療導出AI学習処理部404は治療導出学習処理部に、治療計画導出AI学習処理部405は治療計画導出学習処理部に、病名導出AI推定処理部409は病名導出推定処理部に、治療導出AI推定処理部410は治療導出推定処理部に、治療計画導出AI推定処理部411は治療計画導出推定処理部に、それぞれ読み替えることができる。
【0048】
本発明の実施形態においては、歯科治療支援システムを開示した。
本発明の実施形態に係る歯科治療支援システム101は、先ず、所見を病名導出AI推定処理部409に読み込ませることで、患者107の疾患を推定する。次に、病名と部位を治療導出AI推定処理部410に読み込ませることで、患者107の部位毎の治療候補を推定する。
病名導出AI推定処理部409と治療導出AI推定処理部410の処理を、患者107の口腔内の疾患を有する全ての部位に対して繰り返し実行することで、推定治療群テーブル1301を形成する。
【0049】
そして最後に、推定治療群テーブル1301を治療計画導出AI推定処理部411に読み込ませることで、患者107の治療計画を推定する。
すなわち、AIが経験豊富な歯科医師102に代わり、経験の浅い歯科医師106に病名、治療方法、治療計画の策定のアドバイスを行うことができる。
更に、複数の経験豊富な歯科医師102から得られる膨大なカルテデータを学習することで、歯科治療支援サーバ105が出力する推定結果の精度を大幅に向上させることも期待できる。この歯科治療支援サーバ105は、機械化かつ最適化された歯科治療の集合知とも言える。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
【符号の説明】
【0051】
101…歯科治療支援システム、102…経験豊富な歯科医師、103…インターネット、104a、104b…端末装置、105…歯科治療支援サーバ、106…経験の浅い歯科医師、107…患者、201…バス、202…CPU、203…ROM、204…RAM、205…表示部、206…操作部、207…不揮発性ストレージ、208…NIC、301…バス、302…CPU、303…ROM、304…RAM、305…不揮発性ストレージ、306…NIC、307…表示部、308…操作部、401…入出力制御部、402…入出力制御部、403…病名導出AI学習処理部、404…治療導出AI学習処理部、405…治療計画導出AI学習処理部、406…病名導出用辞書データ、407…治療導出用辞書データ、408…治療計画導出用辞書データ、409…病名導出AI推定処理部、410…治療導出AI推定処理部、411…治療計画導出AI推定処理部、501…病名マスタ、601…病名導出学習用データテーブル、701…推定病名リスト、901…治療マスタ、1001…治療導出学習用データテーブル、1101…推定治療リスト、1301…推定治療群テーブル、1501…治療計画導出学習用データテーブル、1601…推定治療順リスト、2001…部位マスタテーブル、2002…病名マスタテーブル、2003…部位病名マスタテーブル、2004…病名治療順序マスタテーブル、2005…治療順序項目マスタテーブル、2201…治療順序テーブル、2301…治療計画テーブル
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