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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163116
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】メタ-サリチル酸とのニコチン塩
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/06 20060101AFI20221018BHJP
   A61K 31/465 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 25/34 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
A61M15/06
A61K31/465
A61K31/485
A61P25/34
A61K9/72
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022122868
(22)【出願日】2022-08-01
(62)【分割の表示】P 2020116222の分割
【原出願日】2020-07-06
(31)【優先権主張番号】61/845,333
(32)【優先日】2013-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/020,766
(32)【優先日】2014-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503412296
【氏名又は名称】アレックザ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】メイヤーズ,ダニエル・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】カッセラ,ジェームス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本開示はメタ-サリチル酸ニコチンを教示する。より具体的には、本開示はメタ-サリチル酸ニコチンを気化させた濃縮ニコチンエアゾールを教示する。この開示はエアゾールニコチン送達デバイスに関する。
【解決手段】この送達デバイスは、メタ-サリチル酸ニコチンを含む薄膜を気化させるための起動メカニズムにより作動させることができる。より具体的には、この開示はニコチン渇望の処置および禁煙の実行のためのメタ-サリチル酸とのニコチン塩の薄膜に関する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチンのメタ-サリチル酸塩を含むニコチン塩。
【請求項2】
下記のものを含む薬物供給用品:
不透過性表面を有する熱伝導性基材;
その表面の少なくとも一部に、ある厚さを有する膜の形態でコートされた、メタ-サリチル酸ニコチンを含むニコチン組成物;および
コートされたニコチン組成物の全部または一部を2秒以内に気化させるのに十分な温度に達する速度で基材に熱を供給するように操作できる熱源;
その際、気化したニコチン組成物は有効量のニコチンを含む;
その際、膜は0.05~30ミクロンの厚さを有する。
【請求項3】
ニコチン組成物がメタ-サリチル酸ニコチンから構成される、請求項2に記載の薬物供給用品。
【請求項4】
ニコチン組成物が医薬的に許容できる賦形剤を含む、請求項2に記載の薬物供給用品。
【請求項5】
膜厚が0.1~30ミクロンである、請求項2に記載の薬物供給用品。
【請求項6】
メタ-サリチル酸ニコチンを含む医薬組成物であって、その必要がある対象に吸入により投与される組成物。
【請求項7】
患者が濃縮エアゾールの形成および送達を作動させた際に3μm未満のMMADおよび5%未満の薬物分解生成物を有する有効量のニコチン濃縮エアゾールが患者に吸入により投与されることを含む禁煙方法。
【請求項8】
ニコチン濃縮エアゾールがメタ-サリチル酸ニコチンを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
患者が濃縮エアゾールの形成および送達を作動させた際に0.01~3μmのMMADおよび5%未満の薬物分解生成物を有するニコチン濃縮エアゾールが患者に吸入により投与されることを含む、ニコチン送達方法。
【請求項10】
ニコチン濃縮エアゾールがメタ-サリチル酸ニコチンを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
患者が濃縮エアゾールの形成および送達を作動させた際に0.01~3μmのMMADおよび5%未満の薬物分解生成物を有する有効量のニコチン濃縮エアゾールが患者に吸入により投与されることを含む、ニコチン渇望の処置方法。
【請求項12】
ニコチン濃縮エアゾールがメタ-サリチル酸ニコチンを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
患者が濃縮エアゾールの形成および送達を作動させた際に3μm未満のMMADおよび5%未満の薬物分解生成物を有する有効量のニコチン濃縮エアゾールが患者に吸入により投与されることを含む、禁煙を実施する方法。
【請求項14】
ニコチン濃縮エアゾールがメタ-サリチル酸ニコチンを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
固体支持体上にコートされたメタ-サリチル酸ニコチンを含む組成物を加熱して蒸気を発生させ、その蒸気を冷却して粒子を含む濃縮エアゾールを形成することにより形成され、その際、粒子が少なくとも50重量%のニコチンおよび5重量%未満の薬物分解生成物を含み、濃縮エアゾールが0.2~5ミクロンのMMADを有する、ニコチンを送達するためのニコチン濃縮エアゾール。
【請求項16】
濃縮エアゾールが1~3ミクロンのMMADを有する、請求項15に記載の濃縮エアゾール。
【請求項17】
濃縮エアゾールが1~10%の遊離塩基ニコチンを含む、請求項15に記載の濃縮エアゾール。
【請求項18】
濃縮エアゾールが10~20%の遊離塩基ニコチンを含む、請求項15に記載の濃縮エアゾール。
【請求項19】
濃縮エアゾールが20~30%の遊離塩基ニコチンを含む、請求項15に記載の濃縮エアゾール。
【請求項20】
濃縮エアゾールが30~40%の遊離塩基ニコチンを含む、請求項15に記載の濃縮エアゾール。
【請求項21】
濃縮エアゾールが40~50%の遊離塩基ニコチンを含む、請求項15に記載の濃縮エアゾール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001] 本出願は、U.S. provisional application Ser. No. 61/845,333,タイトル:“Nicotine Salt with Meta-Salicylic Acid”, 2013年7月11日出願, Myers, に基づく優先権を主張する。本出願は、U.S. provisional application Ser. No. 62/020,766,タイトル: “Drug Delivery and Cessation System, Apparatus, and Method”, 1014年7月3日出願, Cassella, に基づく優先権を主張する。それらの開示内容全体を本明細書に援用する。上記援用出願の遂行中に起きる可能性があるいかなる拒絶もこれによって明らかに無効であり、すべての関連技術の再審査を要求する。
【0002】
技術分野
[0002] 本開示は全般的にニコチン送達の分野に関する。本開示はメタ-サリチル酸ニコチンを教示する。より具体的には、本開示はメタ-サリチル酸ニコチンを気化させた濃縮ニコチンエアゾールを教示する。この開示はエアゾールニコチン送達デバイスに関する。この送達デバイスは、メタ-サリチル酸ニコチンを含む薄膜を気化させるための起動メカニズムにより作動させることができる。より具体的には、この開示は、ニコチン渇望(craving)の処置および禁煙実行のためのメタ-サリチル酸ニコチンの薄膜に関する。本開示はまた、薬物用量をユーザーに送達するための、および薬物停止コントロールのための、方法、システム、装置、およびコンピューターソフトウェア、より具体的にはニコチン用量をユーザーに送達するための、およびニコチン停止コントロールのための、方法、システム、装置、およびコンピューターソフトウェアに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 喫煙は、ニコチンが喫煙者の肺を通して吸収されるのに伴なって血中ニコチンレベルの急激な初期上昇をもたらす。一般にタバコによりもたらされる30~40ng/mLの血中レベルピークに10分以内の喫煙で達する(Hukkanen et al., Am Soc. Pharm Exp Therap 2013)。血中ニコチンレベルの急激な上昇は中枢神経系のニコチン様アセチルコリン受容体および自律神経節におけるシナプス後作用に関与すると推定されており、それは喫煙者が経験する症状を誘発し、禁煙に付随する渇望症状にも関与する可能性がある。
【0004】
[0004] 多数のニコチン置換療法が開発されたが、それらの療法はいずれも、タバコによりもたらされる全身血中ニコチン濃度の薬物動態プロファイルを再現しないように思われる。その結果、一般的なニコチン置換療法は人々が喫煙を止められるようにするために特に効果的であるとは立証されていない。たとえば、禁煙療法におけるニコチン置換用の多くの市販品がニコチンの安定な血中ベースライン濃度をもたらすことを意図している。ニコチンチューインガムおよび経皮ニコチンパッチは禁煙製品の2例であり、それらはタバコによりもたらされるものと類似する血中ニコチン濃度を30分間以上もたらすが、喫煙により得られる血中ニコチン濃度の急激な初期上昇を再現しない。ニコチンガムは患者が噛んだ際にニコチンを徐々に放出するイオン交換樹脂であり、口内に存在するニコチンは口腔吸収により全身循環へ送達される。ニコチンパッチは一貫した定常的な放出速度をもたらし、それは低い安定な血中ニコチンレベルを生じる。したがってニコチンガムおよび経皮ニコチンは両方とも喫煙により得られる血中ニコチンレベルの薬物動態プロファイルを再現せず、したがって喫煙を止めようと試みた際に多くの喫煙者が経験する渇望症状を満足させない。
【0005】
[0005] ニコチン蒸気を発生する吸入用製品も、吸入した蒸気が主に舌、口および喉を通って吸入され、肺内に沈着しないので、効果が無い。無煙ニコチン製品、たとえば噛みタバコ、口内嗅ぎタバコ(oral snuff)またはタバコサッシェ(tobacco sachet)はニコチンを口腔粘膜へ送達し、そこで放出されたニコチンはニコチンガムと同様に徐々に非効果的に吸収されるにすぎない。これらの製品からの血中ニコチンレベルが約12ng/mLの最大血中ニコチン濃度に達するために約30分間の使用が必要であり、これは1本のタバコの喫煙から得られるピーク値の半分未満である。口腔吸収経路を用いて得られる血中ニコチンレベルが低いのは、肝初回通過代謝による可能性がある。経口投与配合物およびロゼンジも比較的効果が無い。
【0006】
[0006] 薬物の薄膜を最高600℃の温度で500ミリ秒以内に気流中へ急速に気化させると、最小限の薬物分解で高収率および高純度の薬物エアゾールを発生させることができる。医療用吸入デバイスを用いて凝縮薬物エアゾールを薬物の効果的な肺送達のために使用できる。金属基材上に沈着させた薬物の薄膜を電気抵抗加熱により気化させるデバイスおよび方法が立証された。容器内で金属の酸化-還元発熱反応を行なうことができる燃料を収容できる化学ベースのヒートパッケージも、薄膜を気化させて高純度エアゾールを発生させることができる急速な熱インパルスを発生させるために使用できる;たとえば、U.S. Application No. 10/850,895,タイトル: “Self-Contained heating Unit and Drug-Supply Unit Employing Same”, 2004年5月20日出願、および U.S. Application No. 10/851,883,タイトル: “Percussively Ignited or Electrically Ignited Self-Contained Heating Unit and Drug Supply Unit Employing Same,”, 2004年5月20日出願に開示されており、それら両者の全体を本明細書に援用する。これらのデバイスおよび方法は、物理的および化学的に安定な固体として沈着させることができる化合物について使用するのに適切である。液体は、金属表面に沈着させた直後に気化させない限り、表面から気化または移動する可能性がある。したがって、そのようなデバイスは液体を気化させるために使用することはできるけれども、液体薬物の使用はある種の望ましくない複雑さを負荷する可能性がある。ニコチンは室温で比較的高い蒸気圧をもつ液体である。したがって、既知のデバイスおよび方法は液体薬物を用いてニコチンエアゾールを発生させるのに特に適しているわけではない。
【0007】
[0007] ニコチン渇望の処置および禁煙は、喫煙に際して到達する高い血中ニコチン濃度の急激な発生を再現する治療計画および/または療法により対処できると推論される。喫煙者は一般に約5分間で約10回吸入する。したがって、喫煙の使用プロファイルをシミュレートできるニコチン送達デバイスは、それぞれ最大約200μgのニコチンを5回から20回分収容し、次いでユーザーが要求した際にそれを断続的に放出すればよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】U.S. Application No. 10/850,895
【特許文献2】U.S. Application No. 10/851,883
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Hukkanen et al., Am Soc. Pharm Exp Therap 2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
[0008] したがって、喫煙により得られるものに類似する薬物動態プロファイルを提供し、それにより禁煙に伴なう渇望症状に直接対処するするニコチン置換療法に対するニーズが依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書の開示は以下の発明の開示を包含する:
[1]ニコチンのメタ-サリチル酸塩を含むニコチン塩。
[2]下記のものを含む薬物供給用品:
不透過性表面を有する熱伝導性基材;
その表面の少なくとも一部に、ある厚さを有する膜の形態でコートされた、メタ-サリチル酸ニコチンを含むニコチン組成物;および
コートされたニコチン組成物の全部または一部を2秒以内に気化させるのに十分な温度に達する速度で基材に熱を供給するように操作できる熱源;
その際、気化したニコチン組成物は有効量のニコチンを含む;
その際、膜は0.05~30ミクロンの厚さを有する。
[3]ニコチン組成物がメタ-サリチル酸ニコチンから構成される、[2]に記載の薬物供給用品。
[4]ニコチン組成物が医薬的に許容できる賦形剤を含む、[2]に記載の薬物供給用品。
[5]膜厚が0.1~30ミクロンである、[2]に記載の薬物供給用品。
[6]メタ-サリチル酸ニコチンを含む医薬組成物であって、その必要がある対象に吸入により投与される組成物。
[7]患者が濃縮エアゾールの形成および送達を作動させた際に3μm未満のMMADおよび5%未満の薬物分解生成物を有する有効量のニコチン濃縮エアゾールが患者に吸入により投与されることを含む禁煙方法。
[8]ニコチン濃縮エアゾールがメタ-サリチル酸ニコチンを含む、[7]に記載の方法。
[9]患者が濃縮エアゾールの形成および送達を作動させた際に0.01~3μmのMMADおよび5%未満の薬物分解生成物を有するニコチン濃縮エアゾールが患者に吸入により投与されることを含む、ニコチン送達方法。
[10]ニコチン濃縮エアゾールがメタ-サリチル酸ニコチンを含む、[9]に記載の方法。
[11]患者が濃縮エアゾールの形成および送達を作動させた際に0.1~3μmのMMADおよび5%未満の薬物分解生成物を有する有効量のニコチン濃縮エアゾールが患者に吸入により投与されることを含む、ニコチン渇望の処置方法。
[12]ニコチン濃縮エアゾールがメタ-サリチル酸ニコチンを含む、[11]に記載の方法。
[13]患者が濃縮エアゾールの形成および送達を作動させた際に3μm未満のMMADおよび5%未満の薬物分解生成物を有する有効量のニコチン濃縮エアゾールが患者に吸入により投与されることを含む、禁煙を実施する方法。
[14]ニコチン濃縮エアゾールがメタ-サリチル酸ニコチンを含む、[13]に記載の方法。
[15]固体支持体上にコートされたメタ-サリチル酸ニコチンを含む組成物を加熱して蒸気を発生させ、その蒸気を冷却して粒子を含む濃縮エアゾールを形成することにより形成され、その際、粒子が少なくとも50重量%のニコチンおよび5重量%未満のニコチン分解生成物を含み、濃縮エアゾールが0.2~5ミクロンのMMADを有する、ニコチンを送達するためのニコチン濃縮エアゾール。
[16]濃縮エアゾールが1~3ミクロンのMMADを有する、[15]に記載の濃縮エアゾール。
[17]濃縮エアゾールが1~10%の遊離塩基ニコチンを含む、[15]に記載の濃縮エアゾール。
[18]濃縮エアゾールが10~20%の遊離塩基ニコチンを含む、[15]に記載の濃縮エアゾール。
[19]濃縮エアゾールが20~30%の遊離塩基ニコチンを含む、[15]に記載の濃縮エアゾール。
[20]濃縮エアゾールが30~40%の遊離塩基ニコチンを含む、[15]に記載の濃縮エアゾール。
[21]濃縮エアゾールが40~50%の遊離塩基ニコチンを含む、[15]に記載の濃縮エアゾール。
[0009] したがって、本開示の1観点は、メタ-サリチル酸ニコチンを教示する。本開示の1観点は、揮発性メタ-サリチル酸ニコチン化合物を含む化合物を提供し、その化合物は加熱した際に選択的に気化する。
【0012】
[0010] 本開示の1観点は、図13に示すエレクトリックマルチドーズプラットフォーム(electric multidose platform)(EMD)を提供する。
【0013】
[0011] 本開示の1観点は、下記のものを含むニコチン送達デバイスを提供する:通気路を規定するハウジング、その際、通気路は、少なくとも1つの吸気口、および少なくとも1つの排気口をもつマウスピースを含む;通気路内に配置された少なくとも1つのヒートパッケージ;少なくとも1つのヒートパッケージ上に配置された少なくともメタ-サリチル酸ニコチン;ならびに少なくとも1つのヒートパッケージを起動させるように構成されたメカニズム。
【0014】
[0012] 本開示の1観点は、下記のものを含むニコチン送達デバイスを提供する:通気路を規定するハウジング、その際、通気路は、少なくとも1つの吸気口、および少なくとも1つの排気口をもつマウスピースを含む;通気路内に配置された少なくとも1つの軽打作動式(percussively activated)ヒートパッケージ;少なくとも1つの軽打作動式ヒートパッケージ上に配置された少なくともメタ-サリチル酸ニコチン;ならびに少なくとも1つの軽打作動式ヒートパッケージに衝撃を与えるように構成されたメカニズム。明確にする目的のために、本明細書中で用いる“軽打作動式ヒートパッケージ”は、それが軽打により発熱(fired)または作動できるように構成されたヒートパッケージを意味する。“作動していないヒートパッケージ(unactivated heat package または non-activated heat package)”は、本明細書中で、デバイス中の軽打作動式ヒートパッケージであるけれども、まだデバイス中で直接に衝撃を受けて発熱できる位置に配置されておらず、ただしヒー
トパッケージ自体はそのように配置された際に軽打により作動するように構成されているものを表わす。
【0015】
[0013] 本開示の1観点は、メタ-サリチル酸ニコチンを含む薄膜からその化合物を選択的に気化させることによりニコチンのエアゾールを発生させる方法を提供する。
【0016】
[0014] 本開示の1観点は、ある者にニコチンを送達する方法であって、下記のものを含むニコチン送達デバイスを提供し:通気路を規定するハウジング、その通気路は、少なくとも1つの吸気口、および少なくとも1つの排気口をもつマウスピースを含む;通気路内に配置された少なくとも2つまたはそれ以上のヒートパッケージ;ヒートパッケージ上に配置された少なくともメタ-サリチル酸ニコチン;ならびにヒートパッケージを作動させるように構成されたメカニズムを含む;マウスピースを通して吸入し、ヒートパッケージを作動させ、その際、作動したヒートパッケージは少なくともメタ-サリチル酸ニコチンを気化させてニコチンを含むエアゾールを通気路内に形成し、それをその者が吸入することを含む方法を提供する。
【0017】
[0015] 本開示の1観点は、ニコチンエアゾールを使用したニコチン渇望の処置および禁煙のための方法を提供する。
【0018】
[0016] 本開示の1観点は、使用量低減による電気的な使用量コントロールおよび/またはテーパリングを利用した、行動修正療法(behavior modification therapy)によるニ
コチン量のテーパリングを提供する。
【0019】
[0017] 以上の全般的な記載および以下の詳細な記載は共に例示および説明にすぎず、特許請求の範囲に記載する特定の態様の限定ではないことを理解すべきである。
【0020】
[0018] 本発明は、喫煙代替、禁煙補助として、または後に考察するように疾患の処置に使用するために、患者へのニコチンの吸入送達を容易にする組成物の製造方法および組成物に関する。本開示の1態様は、喫煙により到達する血中ニコチン濃度に類似する血中ニコチン濃度が達成される様式でニコチンを患者の血中へ送達し、それにより、喫煙者が発現する身体的なニコチン渇望に対処することができる。さらに、開示するニコチン含有剤形は、所望によりその剤形を患者の口に反復して出し入れすることを伴なう身体的操作および経口刺激の機会を患者に提供し、それにより、喫煙者が発現する精神的渇望の一部に対処する。
【0021】
[0019] 本開示の目的の1つは、長期禁煙プログラムの一部として使用できるニコチン含有剤形を提供することである。他の目的は、喫煙が許されない時または喫煙が望まれない時にいつでも喫煙代替品として使用するのに適したニコチン含有剤形を提供することである。本開示のさらなる目的は、タバコ中に存在する毒素の含有量が著しく低いニコチンエアゾール剤を提供することである。本開示のさらなる目的は、喫煙離脱症状を軽減する範囲内の血漿ニコチン濃度を維持できるニコチン含有剤形を提供することである。本開示の他の目的は、類似の薬理学的ニコチン送達プロファイルを含めて喫煙により到達するものと類似する血漿ニコチン濃度を付与できるニコチン含有剤形を提供することである。さらに、本開示は喫煙を止めたい個体の精神的要求の一部に対処するニコチン含有剤形を教示する。本開示はまた、患者コンプライアンスを増進するために、使いやすいニコチン含有剤形を教示する。本開示はさらに、患者の個別的渇望を克服するためにニコチン量を患者が自己設定できるようにすることにより、タバコに対する渇望の停止/減退を教示する。
【0022】
[0020] 本開示は、新規なニコチン塩であるm-サリチル酸ニコチン(メタ-サリチル酸ニコチン)を教示する。m-サリチル酸は3-ヒドロキシ安息香酸とも呼ばれることを指摘する。1観点において、本開示は、熱安定性メタ-サリチル酸ニコチン組成物をそのメタ-サリチル酸ニコチン組成物の加熱蒸気を生成させるのに有効な条件下で気化させ、その薬物組成物の加熱蒸気を凝縮させて凝縮エアゾール粒子を形成することにより形成された凝縮エアゾールを含む、ニコチンの送達のための新規組成物を教示し、その際、その凝縮エアゾール粒子はニコチン分解生成物が10%未満であることを特徴とし、その際、エアゾールのMMADは3ミクロン未満であり、その際、その熱安定性メタ-サリチル酸ニコチン組成物はメタ-サリチル酸ニコチンを含む。
【0023】
[0021] あるバリエーションにおいて、エアゾールは少なくとも50重量%のニコチン凝縮粒子を含む。他のバリエーションにおいて、エアゾールは少なくとも90重量%または95重量%のニコチン凝縮粒子を含む。同様に、あるバリエーションにおいてエアゾールは実質的に熱分解生成物を含まず、あるバリエーションにおいて凝縮エアゾールは0.1~3μmの範囲のMMADをもつ。特定の態様において、粒子は5ミクロン未満、好ましくは3ミクロン未満のMMADをもつ。好ましくは、粒子は0.2から5ミクロンまで、または最も好ましくは0.2から3ミクロンまでの空気力学的質量中央径(mass medianaerodynamic diameter)をもつ。一般に、エアゾールは療法有効量のニコチンを含み、あるバリエーションにおいては医薬的に許容できる賦形剤を含むことができる。あるバリエーションにおいて、キャリヤーガスは空気である。あるバリエーションにおいて、他のガスまたは種々のガスの組合わせを用いてもよい。あるバリエーションにおいて、ニコチン遊離塩基のパーセントは少なくとも10%である。あるバリエーションにおいて、エアゾール中のニコチン遊離塩基のパーセントは少なくとも20%である。あるバリエーションにおいて、エアゾール中のニコチン遊離塩基のパーセントは少なくとも30%である。あるバリエーションにおいて、エアゾール中のニコチン遊離塩基のパーセントは少なくとも40%である。あるバリエーションにおいて、エアゾール中のニコチン遊離塩基のパーセントは少なくとも50%である。あるバリエーションにおいて、エアゾール中のニコチン遊離塩基のパーセントは1%~10%である。あるバリエーションにおいて、エアゾール中のニコチン遊離塩基のパーセントは10%~20%である。あるバリエーションにおいて、エアゾール中のニコチン遊離塩基は20%~30%である。あるバリエーションにおいて、エアゾール中のニコチン遊離塩基のパーセントは30%~40%である。あるバリエーションにおいて、エアゾール中の遊離塩基のパーセントは40%~50%である。
【0024】
[0022] 本発明の他の観点において、本発明は、気化したニコチンが凝縮して粒子になったエアゾールを含み、薬物分解生成物が5%未満であることを特徴とする、吸入送達用の組成物を提供し、その際、エアゾールは0.1~3ミクロンの空気力学的質量中央径をもつ。
【0025】
[0023] あるバリエーションのエアゾール組成物において、キャリヤーガスは非噴射剤系、非有機溶媒系のキャリヤーガスである。あるバリエーションのエアゾール組成物において、キャリヤーガスは空気である。あるバリエーションにおいて、エアゾールは実質的に有機溶媒および噴射剤を含まない。
【0026】
[0024] 他の態様において、5%未満のニコチン分解生成物、およびキャリヤーガス中でニコチンの蒸気を凝縮することにより形成されたキャリヤーガスと凝縮粒子の混合物を含有する、ニコチンのエアゾールが提供される;その際、その蒸気がキャリヤーガスとの接触に際して冷却するのに伴なって、エアゾールのMMADは0.1~3ミクロンの範囲内で経時的に増大する。
【0027】
[0025] あるバリエーションにおいて、エアゾールは少なくとも50重量%のニコチン凝縮粒子を含む。他のバリエーションにおいて、エアゾールは少なくとも90重量%また
は95重量%のニコチン凝縮粒子を含む。あるバリエーションにおいて、エアゾールのMMADは2ミクロン未満であり、経時的に増大する。あるバリエーションにおいて、キャリヤーガスは空気である。あるバリエーションにおいて、他のガスまたは種々のガスの組合わせを用いてもよい。
【0028】
[0026] 種々の態様の凝縮エアゾールは、一般に、メタ-サリチル酸ニコチン組成物を含有する目的厚さの膜を熱伝導性かつ不透過性の基材上に作成し、その基材を加熱してその膜を気化させ、その蒸気を冷却し、それによりその組成物を含有するエアゾール粒子を生成させることにより形成される。急速な加熱とガス流の組合わせは、分解量を低減するのに役立つ。したがって、一般に基材を200℃より高い温度、好ましくは少なくとも250℃、より好ましくは少なくとも300℃または350℃に加熱して、2秒以内の期間、好ましくは1秒以内、より好ましくは0.5秒以内でメタ-サリチル酸ニコチン組成物を基材から実質的に完全に気化させる熱源を使用する。
【0029】
[0027] 一般に、気化する化合物上のガス流量は約1~10L/分である。さらに、気化する化合物上のガス流量は約2~8L/分である。
【0030】
[0028] 膜厚は、基材を加熱することによりメタ-サリチル酸ニコチンを気化させ、気化した化合物を凝縮させることにより形成されたエアゾールが10重量%以下のニコチン分解生成物を含有するような厚さである。薄膜の使用はより速やかな気化速度を可能にし、したがって一般にニコチンの熱分解がより少ない。一般に、膜は0.05~30ミクロンの厚さをもつ。あるバリエーションにおいて、膜は0.5~25ミクロンの厚さをもつ。あるバリエーションにおいて、膜は約21ミクロンの厚さをもつ。選択した基材表面範囲の面積は、有効量のニコチンエアゾールが得られるような面積である。
【0031】
[0029] 関連する観点において、本開示は、一般に溶媒および賦形剤を含まない熱安定性メタ-サリチル酸ニコチンを含む組成物を含むニコチン凝縮エアゾールを送達するためのキット、ならびに吸入により凝縮エアゾールを形成するため及び送達するためのデバイスを教示する。薬物エアゾールを形成するためのデバイスは、一般に、組成物を加熱して蒸気を形成するように構成された素子、蒸気を凝縮させて凝縮エアゾールを形成させる素子、およびユーザーが凝縮エアゾールを吸入できるようにする素子を含む。一般に、組成物を加熱するように構成された素子は熱伝導性基材を含み、一般に基材上にはニコチンがエアゾール形態で投与された際に有効な量のニコチンを含有するメタ-サリチル酸ニコチン組成物膜が形成される。デバイス中の熱源は、熱を基材に供給して一般に300℃を超える基材温度を生じさせて、2秒以下の期間、より好ましくは500ミリ秒以下の期間でメタ-サリチル酸ニコチン組成物膜を基材から実質的に気化させるように操作できる。そのデバイスはさらに、呼吸起動式素子、ロックアウト素子、投薬の計数/ロギング(記録)(logging)、またはテーパリング方法などのフィーチャーを含むことができる。
【0032】
[0030] さらに他の観点において、本開示は、メタ-サリチル酸ニコチン組成物の薄膜を含むニコチンエアゾール送達のためのキット、およびその膜を凝縮エアゾールとして投薬するためのデバイスを教示する。一般に、膜厚は0.5~30ミクロンである。膜は医薬的に許容できる賦形剤を含むことができ、一般に膜を500ミリ秒以下で実質的に気化させる速度で加熱される。
【0033】
[0027] 以上の目的を達成するために、本明細書中に具体的に広く記載した本発明に従って、ニコチン含有剤形を提供する。この剤形はニコチン含有組成物を含むように構成され、その際、ニコチン組成物はメタ-サリチル酸ニコチンを含む。
【0034】
[0028] 本発明のこれらおよび他の目的は、以下の本発明の詳細な記載を添付の図面と合わせて読むと、より十分に認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】[0031] 図1は、オルト-サリチル酸、パラ-サリチル酸および3-ヒドロキシ安息香酸(メタ-サリチル酸)である。
図2】[0032] 図2は、m-サリチル酸ニコチン粉末の一般的な熱量測定スキャンを示す。
図3】[0033] 図3は、オルト異性体を示す。
図4】[0034] 図4は、パラ異性体を示す。
図5】[0035] 図5は、メタ異性体を示す。
図6】[0036] 図6は、メタ-サリチル酸ニコチンの等温質量損失がオルト-サリチル酸ニコチンのものより少ないことを示した熱重量分析プロットである。
図7】[0037] 図7は、熱重量分析を示す。室温から500℃までの走査データは、高温に曝露された後の酸の炭化が最小であることを示す。
図8】[0038] 図8は、ニコチン不純物法を実施した代表的な試料のクロマトグラムを示す。
図9】[0039] 図9は、m-サリチル酸塩不純物法を実施した代表的な試料のクロマトグラムを示す。
図10】[0040] 図10は、種々のインパクターステージ間の粒度分布を示す。
図11】[0041] 図11は、粒度分布を示す。
図12】[0042] 図12は、ニコチンの経時的な質量損失を示す。
図13】[0043] 図13は、m-サリチル酸の経時的な質量損失を示す。
図14】[0044] 図14は、パウチから出した状態(unpouched)での安定性のまとめを示す。
図15】[0045] 図15は、パウチから出した状態での安定性のまとめを示す。
図16】[0046] 図16は、ニコチンデバイス1を示す。
図17】[0047] 図17は、ニコチンデバイス2を示す。
図18】[0048] 図18は、ニコチンデバイス3を示す。
図19】[0049] 図19は、ニコチンデバイス4を示す。
【0036】
[0050] 本開示の態様を次に詳細に述べる。本開示の特定の態様を記載するが、それは本開示の態様をそれらの記載した態様に限定することを意図したものでないことは理解されるであろう。そうではなく、本開示の態様についての記載は、特許請求の範囲により規定される本開示の態様の精神および範囲に含まれる別形態、改変形態および均等物を包含するものとする。
【発明を実施するための形態】
【0037】
定義
[0051] 本明細書に定義するように、以下の用語に言及した場合、それらは本明細書全体において以下の意味をもつものとする。
【0038】
[0052] 所要粒子の“空気力学的径(aerodynamic diameter)”は、その所要粒子と同一の沈降速度をもつ、1g/mL(水の密度)の密度の球形液滴の直径を表わす。
【0039】
[0053] “エアゾール”は、気体中に懸濁した固体または液体の粒子の集合体を表わす。
【0040】
[0054] “エアゾール質量濃度”は、エアゾールの単位体積当たりの粒状物の質量を表わす。
【0041】
[0055] “凝縮エアゾール”は、組成物を気化させ、続いて蒸気凝縮物が粒子を形成するように蒸気を冷却させることにより形成されたエアゾールを表わす。
【0042】
[0056] “分解指数”は、あるアッセイにより導かれた数値を表わす。その数値は、分率として表わした生成エアゾールの純度を1から差し引くことにより決定される。
【0043】
[0057] “薬物”は、ある状態の予防、診断、軽減、治療または治癒に際して用いられるいずれかの物質を意味する。薬物は好ましくは熱蒸気送達に適した形態、たとえばエステル、遊離酸または遊離塩基の形態である。用語“薬物”、“化合物”および“医薬”は、本明細書中で互換性をもって用いられる。本明細書全体において記載する薬物という用語はニコチンおよびメタ-サリチル酸ニコチンを含む。
【0044】
[0058] “薬物組成物”は、純粋な薬物のみ、組み合わせた2種類以上の薬物、または追加成分と組み合わせた1種類以上の薬物を含む組成物を表わす。追加成分には、たとえば医薬的に許容できる賦形剤、キャリヤーおよび界面活性剤を含めることができる。
【0045】
[0059] “薬物分解生成物”または“熱分解生成物”は互換性をもって用いられ、薬物(単数または複数)を加熱することにより生成し、療法効果の発生に関与しない、いずれかの副産物を意味する。
【0046】
[0060] “薬物供給用品(drug supply article)”または“薬物供給ユニット(drug supply unit)”は互換性をもって用いられ、それの表面の少なくとも一部が1種類以上の薬物組成物でコートされた基材を表わす。本発明の薬物供給用品は、追加素子、たとえば加熱素子(これに限定されない)をも含むことができる。
【0047】
[0061] “ニコチンの有効量”は、喫煙によるニコチンから達成さる効果を達成するのに必要なニコチンの量を意味する。その効果は、離脱に関する症状の改善から症状治療までの範囲に及ぶいずれかの効果である可能性がある。1態様において、ニコチンの有効量は50~200μg/投与である。
【0048】
[0062] “薬物分解生成物分率”は、エアゾール粒子中に存在する薬物分解生成物の量を、薬物+エアゾール中に存在する薬物分解生成物の量で割ったものを表わす;すなわち(エアゾール中に存在するすべての薬物分解生成物の量の和)/((エアゾール中に存在する薬物(単数または複数)の量)+(エアゾール中に存在するすべての薬物分解生成物の量の和))。本明細書中で用いる用語“薬物分解生成物パーセント”は、薬物分解生成物分率に100%を掛けたものを表わし、これに対しエアゾールの純度は100%から薬物分解生成物パーセントを差し引いたものを表わす。
【0049】
[0063] “熱安定薬物”は、0.05μm~20μmのいずれかの厚さの膜から気化した際にTSR≧9をもつ薬物を表わす。
【0050】
[0064] エアゾールの“空気力学的質量中央径(mass median aerodynamic diameter)”または“MMAD”は、エアゾールの粒子質量の半分にそのMMADより大きい空気力学的直径をもつ粒子が寄与し、半分にそのMMADより小さい空気力学的直径をもつ粒子が寄与している空気力学的直径を表わす。
【0051】
[0065] “個数濃度(number concentration)”は、エアゾールの単位体積当たりの粒子数を表わす。
【0052】
[0066] エアゾールの純度に関して本明細書中で用いる“純度”は、エアゾール中の薬物組成物の分率/エアゾール中の薬物組成物+薬物分解生成物の分率 を意味する。したがって、純度は出発物質の純度に関しては相対的である。たとえば、基材のコーティングに用いる出発時の薬物または薬物組成物が検出可能な不純物を含有する場合、報告するエアゾールの純度は出発物質中に存在しかつエアゾール中にも見出されたそれらの不純物を含まない;たとえば、特定の場合、出発物質が1%の不純物を含有し、エアゾールが同じ1%の不純物を含有することが認められた場合、それにもかかわらずそのエアゾール純度は>99%の純度と報告される可能性があり、これは検出可能なその1%の不純物が気化-凝縮によるエアゾール発生プロセス中に生成したものではないという事実を反映する。
【0053】
[0067] “沈降速度”は、空気中で重力により沈降しつつあるエアゾール粒子の最終速度を表わす。
【0054】
[0068] “支持体”は、その上に組成物が一般にコーティングまたは薄膜として付着する材料を表わす。用語“支持体”と“基材”は本明細書中で互換性をもって用いられる。
【0055】
[0069] “実質的に含まない”は、記載されているその材料、化合物、エアゾールなどが、それを実質的に含まないとする他の成分を少なくとも95%含まないことを意味する。
【0056】
[0070] “一般的な患者一回換気量”は、成人患者については1L、小児患者については15mL/kgを表わす。
【0057】
[0071] “療法有効量”は、療法効果を達成するのに必要な量を意味する。療法効果は、予防、症状改善、症状治療から疾患の終止または治癒までの範囲にわたるいずれかの療法効果である可能性がある。
【0058】
[0072] “熱安定比(thermal stability ratio)”または“TSR”は、純度%が<99.9%であれば純度%/(100%-純度%)、純度%が≧99.9%であれば1000を意味する。たとえば、純度90%で気化する呼吸器薬物は9のTSRをもつであろう。
【0059】
[0073] “4μm熱安定比”または“4TSR”は、厚さ約4ミクロンの薬物含有膜を膜中の薬物の少なくとも50%が気化する条件下で加熱し、生成したエアゾールを採集し、そのエアゾールの純度を決定し、その純度を用いてTSRの純度を計算することにより決定した、薬物のTSRを意味する。そのような気化に際しては、一般に厚さ約4ミクロンの薬物膜を約350℃(ただし、200℃より低くはない)に約1秒間加熱して、膜中の薬物の少なくとも50%を気化させる。
【0060】
[0074] “1.5μm熱安定比”または“1.5TSR”は、厚さ約1.5ミクロンの薬物含有膜を膜中の薬物の少なくとも50%が気化する条件下で加熱し、生成したエアゾールを採集し、そのエアゾールの純度を決定し、その純度を用いてTSRの純度を計算することにより決定した薬物のTSRを意味する。そのような気化に際しては、一般に厚さ約1.5ミクロンの薬物膜を約350℃(ただし、200℃より低くはない)に約1秒間加熱して、膜中の薬物の少なくとも50%を気化させる。
【0061】
[0075] “0.5μm熱安定比”または“0.5TSR”は、厚さ約1.5ミクロンの薬物含有膜を膜中の薬物の少なくとも50%が気化する条件下で加熱し、生成したエアゾールを採集し、そのエアゾールの純度を決定し、その純度を用いてTSRの純度を計算することにより決定した薬物のTSRを意味する。そのような気化に際して、一般に厚さ約0.5ミクロンの薬物膜を約350℃(ただし、200℃より低くはない)に約1秒間加
熱して、膜中の薬物の少なくとも50%を気化させる。
【0062】
[0076] “蒸気”は気体を表わし、“蒸気相”は気相を表わす。用語“熱蒸気”は、好ましくは加熱により形成された、蒸気相、エアゾール、またはエアゾール-蒸気相の混合物を表わす。
【0063】
[0077] ニコチンは、遊離塩基と塩の両形態で存在することができる複素環式化合物である。有利塩基形は下記の構造をもつ。
【0064】
【化1】
【0065】
[0078] 25℃で、ニコチンは無色ないし淡黄色の揮発性液体である。ニコチンは-79℃の融点、247℃の沸点、および25℃で0.0425mmHgの蒸気圧をもつ。この液体性は安定な膜の形成を妨げ、高い蒸気圧は貯蔵期間中に気化する可能性をもつ。貯蔵期間中のニコチンの気化および分解を阻止するための多様な方法、たとえばリザバーからインクジェットデバイスによる送達、シクロデキストリン複合体としてのニコチンの化学的封入、およびブリスターパック内へのニコチンの収容が考慮されてきたが、そのような実施形態は低コスト製造しやすいことが立証されず、実際のデバイスにおいて実行するために削減するのも容易ではなかった。
【0066】
メタ-サリチル酸ニコチン
[0079] メタ-サリチル酸(3-ヒドロキシ安息香酸としても知られる)の構造を図2に示す。この開示はメタ-サリチル酸とのニコチン塩を教示する。メタ-サリチル酸ニコチンの合成を実施例1に記載する。
【0067】
[0080] メタ-サリチル酸ニコチンは、市販のオルト-サリチル酸ニコチンに優る2つの潜在的に重要な利点をもつ。第1に、熱重量分析データはメタ-サリチル酸ニコチンの等温質量損失がオルト-サリチル酸ニコチンのものより少ない可能性があることを示す。たとえば、40~60℃の貯蔵温度でメタ-サリチル酸ニコチンからのニコチンの質量損失はオルト-サリチル酸ニコチンより約2~3倍少なかった。
【0068】
[0081] ニコチンおよび/またはサリチル酸の気化による質量損失は製品の安定性、すなわち貯蔵期間にわたって一貫した投薬を提供する能力からみて不利益である。メタ-サリチル酸塩は、気化に際し、特にフェノールの形成に関して熱分解する傾向がより低い。これは本開示のもうひとつの明らかな利点である。サリチル酸上のヒドロキシル基の位置が、イオンまたはフリーラジカルの共鳴安定化に寄与する(または寄与しない)ことにより、サリチル酸からフェノールへの脱カルボキシルの可能性に影響を及ぼす可能性がある。オルト(およびパラ)異性体は陰電荷が酸素原子上に局在する共鳴構造をもち、これに対しこの構造はメタ異性体については形成される可能性がない。この構造は、イオン/ラジカルの安定性を高め、したがってオルト-またはパラ-サリチル酸からのフェノール形成の可能性または速度を高める。
【0069】
エアゾール組成物
[0082] 本明細書に記載する組成物は、一般にニコチン化合物を含む。この組成物は他の化合物をも含むことができる。たとえば、組成物は薬物化合物の混合物、ニコチン化合物と医薬的に許容できる賦形剤との混合物、またはニコチン化合物と有用もしくは望ましい特性をもつ他の化合物との混合物を含むことができる。組成物は純粋なニコチン化合物をも含むことができる。好ましい態様において、組成物は本質的に純粋なメタ-サリチル酸ニコチンで構成され、噴射剤または溶媒を含有しない。
【0070】
[0083] さらに、医薬的に許容できるキャリヤー、界面活性剤、増強剤、および無機化合物が組成物中に含有されてもよい。そのような物質の例は当技術分野で知られている。
【0071】
[0084] あるバリエーションにおいて、エアゾールは有機溶媒および噴射剤を実質的に含まない。さらに、メタ-サリチル酸ニコチン用の溶媒として一般に水は添加されない;ただし、大気からの水が形成中のエアゾールに、特に空気が膜上を通過する間および冷却プロセス中に取り込まれる可能性はある。他のバリエーションにおいて、エアゾールは有機溶媒および噴射剤を全く含まない。さらに他のバリエーションにおいて、エアゾールは有機溶媒、噴射剤、および何らかの賦形剤を全く含まない。これらのエアゾールは純粋な薬物、10%未満の薬物分解生成物、およびキャリヤーガス(一般に空気)のみを含む。
【0072】
[0085] 一般に、薬物は0.15未満の分解指数をもつ。好ましくは、薬物は0.10未満の分解指数をもつ。より好ましくは、薬物は0.05未満の分解指数をもつ。最も好ましくは、薬物は0.025未満の分解指数をもつ。
【0073】
[0086] あるバリエーションにおいて、凝縮エアゾールは少なくとも5重量%の凝縮薬物エアゾール粒子を含む。他のバリエーションにおいて、エアゾールは少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、または75重量%の凝縮薬物エアゾール粒子を含む。さらに他のバリエーションにおいて、エアゾールは少なくとも95%、99%、または99.5重量%の凝縮エアゾール粒子を含む。
【0074】
[0087] あるバリエーションにおいて、凝縮エアゾール粒子は10重量%未満の熱分解生成物を含む。他のバリエーションにおいて、凝縮薬物エアゾール粒子は5%、1%、0.5%、0.1%、または0.03重量%未満の熱分解生成物を含む。
【0075】
[0088] 本開示の特定の態様において、薬物エアゾールは90%~99.8%、または93%~99.7%、または95%~99.5%、または96.5%~99.2%の純度をもつ。本開示の特定の態様において、薬物エアゾールはエアゾールにおいて90%~99.8%、または93%~99.7%、または95%~99.5%、または96.5%~99.2%の遊離塩基ニコチンパーセントをもつ。
【0076】
[0089] 一般に、エアゾールは106粒子/mLを超える個数濃度をもつ。他のバリエーションにおいて、エアゾールは107粒子/mLを超える個数濃度をもつ。さらに他のバリエーションにおいて、エアゾールは108粒子/mLを超える、109粒子/mLを超える、1010粒子/mLを超える、または1011粒子/mLを超える個数濃度をもつ。
【0077】
[0090] エアゾールのガスは一般に空気である。しかし、他のガス、特に不活性ガス、たとえばアルゴン、窒素、ヘリウムなどを使用できる。ガスには、まだ凝縮して粒子を形成していない組成物の蒸気も含めることができる。一般に、ガスは噴射剤または気化した有機溶媒を含有しない。あるバリエーションにおいて、凝縮エアゾールは少なくとも5重量%の凝縮薬物エアゾール粒子を含む。他のバリエーションにおいて、エアゾールは少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、または75重量%の凝縮薬物エアゾール粒子を含む。さらに他のバリエーションにおいて、エアゾールは少なくとも95%、99%、または99.5重量%の凝縮薬物エアゾール粒子を含む。
【0078】
[0091] あるバリエーションにおいて、凝縮薬物エアゾールは約0.01~3μmのMMADをもつ。あるバリエーションにおいて、凝縮薬物エアゾールは約0.1~3μmのMMADをもつ。あるバリエーションにおいて、凝縮薬物エアゾール粒子のMMAD周辺の幾何標準偏差(geometric standard deviation)は3.0未満である。他のバリエーションにおいて、凝縮薬物エアゾール粒子のMMAD周辺の幾何標準偏差は2.5未満、または2.0未満である。
【0079】
[0092] 本発明の特定の態様において、薬物エアゾールは少なくとも5もしくは10の4TSR、少なくとも7もしくは14の1.5TSR、または少なくとも9もしくは18の0.5TSRをもつ1以上の薬物を含む。本発明の他の態様において、薬物エアゾールは5~100もしくは10~50の4TSR、7~200もしくは14~100の1.5TSR、または9~900もしくは18~300の0.5TSRをもつ1以上の薬物を含む。
【0080】
凝縮エアゾールの形成
[0093] いずれか適切な方法を用いて本明細書に記載する凝縮エアゾールを形成することができる。そのような方法の1つは、組成物を加熱して蒸気を形成し、続いて蒸気が冷却してエアゾール(すなわち、凝縮エアゾール)を形成することを伴なう。方法は先にUS. Patent No. 7,090,830に記載されている。この参考文献の全体を参考として本明細書に援用する。
【0081】
[0094] 一般に、組成物を基材上にコートし、次いで基材を加熱して組成物を気化させる。基材はいかなる幾何学的形状であってもよく、多種多様なサイズであってよい。基材が大きな表面-対-体積比(たとえば、メートル当たり100を超える)および大きな表面-対-質量比(たとえば、グラム当たり1cm2を超える)を備えていることがしばしば望ましい。基材は1より多い表面をもつことができる。
【0082】
[0095] ある形状の基材を、異なる特性を備えた他の形状に変換することもできる。たとえば、厚さ0.25mmの平坦なシートはメートル当たり約8,000の表面-対-体積比をもつ。そのシートを巻いて直径1cmの中空円筒にすると、元のシートの高い表面-対-質量比を保持するけれどもより低い表面-対-体積比(たとえば、メートル当たり約400)をもつ支持体が得られる。
【0083】
[0096] 多種多様な材料を用いて基材を構築することができる。一般に、基材は熱伝導性であり、金属、たとえばアルミニウム、鉄、銅、ステンレススチールなど、合金、セラミックス、および充填ポリマーを含む。1バリエーションにおいて、基材はステンレススチールである。材料とコーテッド形態材料との組合わせも使用できる。
【0084】
[0097] 基材としてアルミニウムを用いることが望ましい場合、アルミニウム箔は適切な材料である。アルミナおよびシリコンをベースとする材料の例 BCR171(2m2/gを超える規定表面積のアルミナ,Aldrichから,ミズーリ州セントルイス)および半導体工業で用いられるシリコンウェハー。
【0085】
[0098] 一般に、基材は表面不規則性が比較的少ないか、または表面不規則性を実質的に含まないことが望ましい。多様な支持体を使用できるが、不透過性の表面または不透過性の表面コーティングをもつ支持体が一般に望ましい。そのような支持体の具体例には、金属箔、平滑な金属表面、非孔質セラミックスなどが含まれる。好ましい基材が不透過性表面をもつ代わりに、またはそれに加えて、基材表面領域は約20mm2の連続表面積をもつことを特徴とする。好ましい基材が不透過性表面をもつ代わりに、またはそれに加えて、基材表面領域は約1mm2を超える、好ましくは10mm2、より好ましくは50mm2、よりさらに好ましくは100mm2の連続表面積、および0.5g/ccを超える材料密度をもつことを特徴とする。対照的に、好ましくない基材は、たとえば糸、フェルトおよび発泡材料のように一般に0.5g/cc未満の基材密度をもち、あるいはたとえば小さなアルミナ粒子および他の無機粒子のように1mm2/粒子未満の表面積をもつ;これらのタイプの表面において気化により10%未満の薬物分解で療法量の薬物エアゾールを発生させるのは難しいからである。
【0086】
[0099] 1バリエーションにおいて、本開示はステンレススチール箔基材を教示する。中空ステンレススチール管を薬物膜の基材として使用できる。他のバリエーションにおいて、アルミニウム箔を被験薬物のための基材として使用する。
【0087】
[00100] 組成物は一般に固体支持体上に膜の形でコートされる。膜は固体支持体上にいずれか適切な方法を用いてコートすることができる。コーティングに適した方法は、しばしば化合物の物理的特性および目的とする膜厚に依存する。組成物を固体支持体上にコートする代表的な方法の1つは、適切な溶媒中の化合物(単独または他の望ましい化合物との組合わせ)の溶液を調製し、その溶液を固体支持体の外面に適用し、次いで溶媒を除去し(たとえば、蒸発などにより)、それにより支持体表面に膜を残すことによる。
【0088】
[00101] 一般的溶媒には、メタノール、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、アセトン、エタノール、イソプロピルアルコール、3:1 クロロホルム:メタノール混合物、1:1 ジクロロメタン:メチルエチルケトン混合物、ジメチルホルムアミド、および脱イオン水が含まれる。ある場合(たとえば、トリアムテレン(triamterene)を用いる場合)、ギ酸などの溶媒を用いることが望ましい。化合物を溶解するために必要に応じて超音波処理も使用できる。
【0089】
[00102] 支持体を組成物溶液に浸漬することにより、またはスプレー、ブラッシングその他の様式で溶液を支持体に適用することにより、組成物を固体支持体上にコートすることもできる。あるいは、薬物の溶融物を調製して支持体に適用することができる。室温で液体である薬物については、固体薬物膜を適用できるように増粘剤を薬物と混合することができる。
【0090】
[00103] 化合物および所望の熱分解の最大量に応じて、膜は多様な厚さであってよい。1方法において、組成物の加熱は約0.1μm~30μmの厚さをもつ組成物薄膜を加熱して蒸気を形成することを伴なう。さらに他のバリエーションにおいて、組成物は約0.5μm~21μmの膜厚をもつ。最も一般的には、気化させる膜厚は0.5μm~25μmである。
【0091】
[00104] その上に組成物の膜がコートされた支持体を多様な手段で加熱して、組成物を気化させることができる。代表的な加熱方法には、電気抵抗素子間の通電、電磁波(たとえば、マイクロ波またはレーザー光線)の吸収および発熱化学反応(たとえば、発熱性溶媒和、自然発火性材料の水和、および可燃性材料の酸化)が含まれる。伝導加熱による基材の加熱も適切である。代表的な加熱源の1つは米国特許出願 SELF-CONTAINED HEATING UNIT AND DRUG-SUPPLY UNIT EMPLOYING SAME, USSN 60/472,697, 2003年5月21日出願に記載されている。そこに開示される代表的な加熱源の記載を本明細書に援用する。
【0092】
[00105] 熱源は一般に、少なくとも200℃、好ましくは少なくとも250℃、またはより好ましくは少なくとも300℃もしくは350℃の基材温度を達成し、2秒以内、好ましくは1秒以内、またはより好ましくは0.5秒以内に基材から実質的に完全な薬物組成物の気化をもたらす速度で、基材に熱を供給する。適切な熱源には抵抗加熱デバイスが含まれ、それに急速加熱を達成するのに十分な速度で電流が供給される;たとえば、少なくとも200℃、250℃、300℃、または350℃の基材温度に、好ましくは50~500ミリ秒以内、より好ましくは50~200ミリ秒の範囲内で。たとえば放電または加熱素子、たとえば幾つかの例に記載されるタイプのフラッシュバルブタイプのヒーター、および前記に引用した米国特許出願 SELF-CONTAINED HEATING UNIT AND DRUG-SUPPLYUNIT EMPLOYING SAMEに記載される加熱源により起動した際に発熱反応を生じる化学反応性材料を収容した熱源またはデバイスも適切である。特に、熱源と基材の良好な熱的接続を想定して、熱源の化学的“装填物”が50~500ミリ秒またはそれ以内の期間で消費される発熱反応により熱を発生する熱源が一般に適切である。
【0093】
[00106] 組成物の薄膜を加熱する際、分解を避けるために、気化した化合物は加熱された表面または周囲の加熱されたガスからより低温の環境へ速やかに移行することが望ましい。これは、基材の急速加熱だけでなく、基材の表面を横切るガス流の使用によっても達成できる。表面から気化した化合物がブラウン運動または拡散により移行する可能性はあるが、この移行の期間は表面の高温領域の範囲によって影響される可能性があり、それは表面上のガスの速度勾配および表面の物理的形状により確立される。そのような分解を最小限に抑え、かつ目的とする粒子サイズを得るために用いられる一般的なガス流量は、1~10L/分の範囲である。
【0094】
[00107] 投与のためのエアゾール粒子を、一般に、記載したいずれかの方法を用いて、吸入可能な粒子108個/秒を超える速度で形成することができる。あるバリエーションにおいて、投与のためのエアゾール粒子は吸入可能な粒子109または1010個/秒を超える速度で形成される。同様に、エアゾール形成(すなわち、送達デバイスにより単位時間当たり生成するエアゾール化した粒状物の質量)に関して、0.25mg/秒を超える、0.5mg/秒を超える、または1もしくは2mg/秒を超える速度でエアゾールを形成することができる。さらに、エアゾール形成に関して、薬物エアゾール形成速度(すなわち、送達デバイスにより単位時間当たりエアゾール形態で放出される薬物化合物の速度)に注目すると、薬物0.05mg/秒を超える、薬物0.1mg/秒を超える、薬物0.5mg/秒を超える、薬物1もしくは2mg/秒を超える速度で薬物をエアゾール化することができる。
【0095】
[00108] あるバリエーションにおいて、薬物凝縮エアゾールは、少なくとも5重量%
の薬物凝縮エアゾール粒子を生成する組成物から形成される。他のバリエーションにおいて、エアゾールは、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、または75重量%の薬物凝縮エアゾール粒子を生成する組成物から形成される。さらに他のバリエーションにおいて、エアゾールは、少なくとも95%、99%、または99.5重量%の薬物凝縮エアゾール粒子を生成する組成物から形成される。
【0096】
[00109] あるバリエーションにおいて、薬物凝縮エアゾール粒子は形成された時点で10重量%未満の熱分解生成物を含む。他のバリエーションにおいて、薬物凝縮エアゾール粒子は形成された時点で5%、1%、0.5%、0.1%、または0.03重量%未満の熱分解生成物を含む。
【0097】
[00110] あるバリエーションにおいて、薬物凝縮エアゾールは、得られるエアゾールが約0.1~3μmの範囲のMMADをもつ速度でガス流中に生成する。あるバリエーションにおいて、薬物凝縮エアゾール粒子のMMAD周辺の幾何標準偏差は3.0未満である。他のバリエーションにおいて、薬物凝縮エアゾール粒子のMMAD周辺の幾何標準偏差は2.5未満または2.0未満である。
【0098】
送達デバイス
[00111] 本明細書に記載する凝縮薬物エアゾールを投与するための送達デバイスは、一般に組成物を加熱して蒸気を生成するための素子、およびその蒸気を冷却させてそれにより凝縮エアゾールを形成するための素子を含む。これらのエアゾールは一般に、局所処置または全身処置のために吸入により患者の肺へ送達される。あるいは、ただし本発明の凝縮エアゾールは標的部位への薬物エアゾール粒子の適用のために空気流中に生成することができる。たとえば、薬物エアゾール粒子を運ぶ空気流を急性または慢性の皮膚状態の処置のために適用でき、外科処置に際して切開部位に適用でき、あるいは開放創に適用できる。この送達デバイスは、キットとして使用するための単位剤形の薬物を含む組成物と組み合わせることができる。
【0099】
[00112] 本明細書に記載するデバイスは、さらに、エアゾール送達を容易にする多様な構成素子を含むことができる。たとえば、デバイスは、吸入に対して薬物エアゾール化のタイミングを制御するための当技術分野で既知であるいずれかの構成素子(たとえば、呼吸起動式のもの)を含むことができる。同様に、デバイスは、吸入の速度および/または体積に関して患者にフィードバックをもたらす構成素子、あるいは過度の使用を防ぐための構成素子(すなわち、“ロックアウト”フィーチャー)を含むことができる。デバイスはさらに、投薬の計数/ロギング、またはテーパリング方法などのフィーチャーを含むことができる。加えて、デバイスはさらに、許可されていない個体による使用を防ぐための構成素子、および投与歴を記録するための構成素子を含むことができる。これらの構成素子は単独で、または他の構成素子と組み合わせて使用できる。さらに、デバイスは、ニコチン量のテーパリングオフを可能にするフィーチャーを含むことができる。
【0100】
[00113] 冷却させる素子はいかなる構造のものであってもよい。たとえば、それは加熱手段を吸入手段へ連結する非活性通路であってもよい。同様に、ユーザーが吸入できるようにする素子もいかなる構造のものであってもよい。たとえば、それは冷却素子とユーザーの呼吸器系の間の接続を形成する出口であってもよい。
【0101】
[00114] 一般に、組成物が蒸気を形成し、それが吸入に際して空気流に乗るように、膜の全部または一部を気化させるのに十分な温度に薬物供給用品を加熱する。前記に述べたように、薬物供給用品の加熱は、たとえば基材に包埋または挿入されて、ハウジング内に配置された電池に接続した電気抵抗ワイヤを用いて達成できる。加熱は、当技術分野で知られているように、たとえばハウジング上のボタンで、または呼吸起動により起動させることができる。
【0102】
[00115] 本明細書に記載するエアゾールを形成および送達するために使用できる他のデバイスは、下記のものである。デバイスは、組成物を加熱して蒸気を形成するための素子、その蒸気を冷却させてそれにより凝縮エアゾールを形成するための素子、およびユーザーがエアゾールを吸入できるようにする素子を含む。このデバイスは、互いにフィットする上外側ハウジングメンバーおよび下外側ハウジングメンバーを含む。
【0103】
[00116] 各ハウジングメンバーの下流末端は、ユーザーの口に挿入するためにゆるやかに細くなっている。上側および下側ハウジングメンバーの上流末端には、ユーザーが吸入した際に空気を取り込むためにスロットがある(一方または両方にスロットがある)。上側および下側ハウジングメンバーは、互いに嵌め込んだ際にチャンバーを規定する。チャンバー内には薬物供給ユニットが配置される。
【0104】
[00117] 固体支持体はいずれか望ましい構造であってよい。基材の表面の少なくとも一部は組成物膜でコートされる。テルミット(thermite)タイプの加熱源の場合について、基材の内部領域は熱を発生するのに適した物質を含む。その物質は固形化学燃料、混合すると発熱する化学薬品類、電気抵抗ワイヤなどであってもよい。加熱のために必要ならば電源、および吸入デバイスに必要ないずれかのバルブを、末端部に収容してもよい。電源は薬物供給ユニットと嵌合する部品であってもよい。
【0105】
[00118] 使用するデバイスの1バリエーションにおいて、デバイスは、基材、基材表面上の選択した薬物組成物の膜、および基材を200℃より高い温度、または他の態様において250℃、300℃もしくは350℃より高い温度に加熱して2秒以内に薬物組成物を実質的に完全に気化させるのに有効な速度で基材に熱を供給するための熱源から構成される、薬物組成物送達用品を含む。
【0106】
[00119] デバイスと組み合わせて使用できる他の薬物供給用品を本明細書に記載する。多様なコーティング方法が当技術分野で知られており、および/または前記に述べられている。
【0107】
[00120] 電流がそれに流れた際に熱を発生する電気抵抗ワイヤとして具体的な加熱素子を示したが、前記のように多種多様な加熱方法および対応するデバイスを使用できる。たとえば、使用できる熱源は、組成物を支持体表面から完全に気化させるのに十分な温度に速やかに達する速度で薬物供給用品に熱を供給できる。たとえば、2秒以内に200℃~500℃またはそれ以上の温度に達する熱源が代表的であり、選択する温度は組成物の気化特性に依存するであろうということを認識すべきではあるが、一般に少なくとも約200C、好ましくは少なくとも約250℃、より好ましくは少なくとも約300℃または350℃の温度に加熱される。基材の加熱により薬物組成物蒸気が発生し、それは流動ガスの存在下で目的サイズ範囲のエアゾール粒子を生成する。ガス流の存在は一般に基材の加熱前、加熱と同時、または加熱後である。1態様において、基材は約1秒未満内、より好ましくは約500ミリ秒未満内、よりさらに好ましくは約200ミリ秒未満内の期間、加熱される。薬物エアゾール粒子は、肺への送達のために対象により吸入される。
【0108】
[00121] デバイスは、凝縮領域を通るガス流量を制限するために固体支持体の上流に配置されたガス流制御バルブをも含むことができる。ガス流バルブは、たとえばチャンバーと連絡する入口、バルブを越えた側での圧力降下の増大に伴なって次第に入口から離れるように空気流を方向転換または制限するように適合させた変形可能なフラップを含むことができる。同様に、ガス流バルブは起動スイッチを含むことができる。このバリエーションにおいて、バルブの動きはバルブ前後の空気圧差に応答し、それはたとえばスイッチを切る機能をすることができる。ガス流バルブは、チャンバー内への空気流量を制限するように設計されたオリフィスをも含むことができる。
【0109】
[00122] デバイスは、ユーザーが空気をチャンバー内へ引き込むのに伴なってガス流制御バルブにより生じる空気流の減少を相殺するために、ユニットのチャンバー下流と連絡するバイパスバルブをも含むことができる。この方法で、バイパスバルブは、ガス制御バルブと協同してチャンバーの凝縮領域を通る流れおよびデバイスに引き込まれる空気の総量を制御することができる。したがって、このバリエーションのデバイスを通る空気流の総体積は、ガス制御バルブを通る体積空気流量とバイパスバルブを通る体積空気流量の和となるであろう。
【0110】
[00123] ガス制御バルブは、たとえばデバイスに引き込まれる空気を前選択したレベル、たとえば15L/分に制限するように機能することができる。この方法で、目的サイズの粒子を生成するための空気流を前選択して生成することができる。たとえば、この選択した空気流レベルに達すると、デバイスに引き込まれた追加の空気はバイパスバルブを越えて圧力降下を生じ、次いでこれによりバイパスバルブを通ってユーザーの口に隣接したデバイス下流末端内への空気流が調節されるであろう。こうして、これら2つのバルブが総空気流を目的空気流量とバイパス空気流量に分配して、ユーザーは全吸息が吸入されたことを感じ取る。
【0111】
[00124] これらのバルブを用いて、チャンバーの凝縮領域を通るガス速度を制御でき、よって生成するエアゾール粒子の粒子サイズを制御できる。一般に、空気流が速いほど粒子はより小さい。したがって、より小さなまたはより大きな粒子を得るために、体積空気流量を増大または低下させるようにガス流制御バルブを改変することにより、チャンバーの凝縮領域を通るガス速度を変更することができる。たとえば、約1~3.5μm MMADのサイズ範囲の凝縮粒子を生成するためには、実質的に平滑な表面の壁をもつチャンバーは1~10L/分の範囲の選択したガス流量をもつであろう。
【0112】
[00125] さらに、当業者に認識されるように、粒子サイズは、一定の体積流量を得るためにチャンバーの凝縮領域の断面を改変してガス線速度を増大もしくは低下させることにより、および/またはチャンバー内に乱流を発生させる構造体の存在もしくは非存在により、変更できる。したがって、たとえばサイズ範囲10~100nm MMADの凝縮粒子を生成させるために、チャンバーは空気乱流を発生させるためのガス流バリヤーを凝縮チャンバー内に備えることができる。これらのバリヤーは、一般に基材表面から数千分の1インチ内に配置される。粒子サイズについては後記にさらに詳細に考察する。
【0113】
薬物組成物膜厚
[00126] 一般に、固体支持体上にコートした薬物組成物膜は約0.05~30μmの厚さ、一般に0.1~30μmの厚さをもつ。より一般的には、厚さは約0.2~30μmである;よりさらに一般的には、厚さは約0.5~30μmであり、最も一般的には、厚さは約0.5~25μmである。いずれか所要の薬物組成物に望ましい膜厚は一般に反復法により決定され、その際、凝縮エアゾール組成物の目的とする収率および純度は選択され、あるいは既知である。
【0114】
[00127] たとえば、粒子の純度が目的とするものより低いか、あるいは収率パーセントが目的とするものより低い場合、薬物膜の厚さを最初の膜厚と異なるものに調整する。次いでその調整した膜厚で純度および収率を決定し、目的とする純度および収率が達成されるまでこのプロセスを反復する。適切な膜厚を選択した後、療法有効量を提供するのに必要な基材面積を決定する。
【0115】
[00128] 一般に、所要の薬物組成物についての膜厚は、基材を加熱することにより薬物組成物を気化させ、その蒸気をガス流に乗せることによって形成される薬物エアゾール粒子が、(i)10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、最も好ましくは2.5重量%以下の薬物分解生成物、および(ii)膜に含有されていた薬物組成物の総量のうち少なくとも50%を含むものである。その上に薬物組成物膜が形成される基材の面積は、以下にさらに記載するように、有効なヒト療法用量の薬物エアゾールが得られるように選択される。
【0116】
[00129] 薬物膜の厚さを決定するために、使用できる1方法は、基材の面積を計算し、そして下記の関係式を用いて薬物膜厚を計算するものである:
膜厚(cm) = 薬物質量(g) / [薬物密度(g/cm3) x 基材面積(cm2)]
[00130] 薬物質量は、薬物膜の形成前と形成後に基材を秤量することによって、あるいは薬物を抽出してその量を分析により測定することによって決定できる。薬物密度は、当業者に既知の多様な手法で実験により決定でき、あるいは文献または参考書、たとえばCRC中に見出すことができる。実際の薬物密度が分からない場合は単位密度の仮定が許容される。
【0117】
[00131] 既知厚さの薬物膜を備えた基材を加熱蒸気(thermal vapor)が発生するのに十分な温度に加熱した。加熱蒸気の全部または一部を回収し、薬物分解生成物の存在について分析して、加熱蒸気中のエアゾール粒子の純度を決定した。膜厚とエアゾール粒子純度の間には明瞭な関係があり、膜厚が低下するのに伴なって純度は増大する。
【0118】
[00132] 10%以下の薬物分解生成物を含有するエアゾール粒子(90%以上のエアゾール粒子純度)を供給する薬物膜厚の選択のほか、膜が気化するのに十分な温度に基材を加熱した際に膜に含有されていた薬物組成物の総量の少なくとも約50%が気化するように膜厚を選択する。
【0119】
[00133] より高い純度のエアゾールを得るためには、より少ない量の薬物をコートして加熱のためのより薄い膜を得るか、あるいは同量の薬物を用いるけれどもより広い面積にする。一般に、前記で考察したように、きわめて薄い厚さの薬物膜を除いて、直線的な膜厚低下は直線的な不純物減少と関連する。
【0120】
[00134] したがって、エアゾールが膜厚の増大に伴なって(特に0.05~30ミクロンを超える厚さで)増加する薬物分解生成物レベルを示す薬物組成物について、基材上の膜厚は一般に0.05~30ミクロン、たとえばこの範囲内で薬物分解が5%未満である粒状エアゾールを形成できる最大またはほぼ最大の厚さであろう。
【0121】
[00135] 他の方法は、不活性ガス、たとえばアルゴン、窒素、ヘリウムなどの制御雰囲気下で加熱蒸気を形成することにより、目的レベルの薬物組成物純度をもつ薬物エアゾール粒子を生成させることを考慮する。
【0122】
[00136] 目的とする純度および収量が達成されるかあるいは膜厚に対するエアゾール純度のグラフから推定でき、そして対応する膜厚が決定されると、療法有効量を得るのに必要な基材面積が決定される。
【0123】
基材面積
[00137] 前記のように、療法有効量を得るのに十分であるように基材表面領域の表面積を選択する。療法用量を得るための薬物量は一般に当技術分野で既知であり、後記においてさらに考察する。必要な投与量および選択した膜厚は、前記で考察したように、下記の関係式に従って必要な最小基材面積を支配する。
【0124】
膜厚(cm) x 薬物密度(g/cm3) x 基材面積(cm2) = 投与量(g)
または
基材面積(cm2) = 投与量 (g)/[膜厚(cm) x 薬物密度(g/cm3)]
[00138] 薬物質量は、薬物膜の形成前と形成後に基材を秤量することによって、あるいは薬物を抽出してその量を分析により測定することによって決定できる。薬物密度は、多様な周知の手法で実験により決定でき、あるいは文献または参考書、たとえばCRC中に見出すことができる。実際の薬物密度が分からない場合は単位密度の仮定が許容される。
【0125】
[00139] 熱伝導性基材上の薬物膜から構成される、有効なヒト療法用量を投与できる薬物供給用品を調製するために、選択した膜厚に対する基材面積を決定するための前記の関係式を用いて、療法用量の薬物エアゾールを与える最小の基材表面積を決定する。
【0126】
[00140] あるバリエーションにおいて、選択した基材表面積は約0.05~500cm2である。他において、表面積は約0.05~300cm2である。1態様において、基材表面積は0.05~0.5cm2である。1態様において、基材表面積は0.1~0.2cm2である。送達される実際の薬物量、すなわち薬物供給用品からの収率パーセントまたは放出率パーセントは、他の要因と共に、表面を加熱した際に気化する薬物膜のパーセントに依存するであろう。したがって、加熱した際に100%の薬物純度をもつ100%の薬物膜およびエアゾール粒子を与える薬物膜について、前記に示した投与量、厚さおよび面積の間の関係は、ユーザーに付与される投与量に直接相関する。収率および/または粒子純度のパーセントが低下するのに伴なって、目的投与量を得るために必要に応じて基材面積の調節を行なうことができる。当業者に認識されるように、療法有効量の薬物を送達するために、特定の膜厚について計算した最小以外のより大きな基材面積も使用できる。さらに、当業者が認識できるように、選択した表面積が選択した膜厚から療法用量を送達するのに必要な最小値を超える場合、膜は表面領域全体をコートする必要はない。
【0127】
薬物含有エアゾールの投与量
[00141] エアゾールで送達される薬物の量は、薬物を規定条件下で加熱し、その結果生じる蒸気を冷却し、得られたエアゾールを送達することにより得られる、単位投与量を表わす。“単位投与量”は、一定体積の吸入されたエアゾール中の薬物の総量である。単位投与量は、エアゾールを回収し、本明細書の記載に従ってそれの組成を分析し、エアゾールの分析結果を既知量の薬物を含有する一連の参考標準品のものと比較することにより決定できる。出発組成物中の、エアゾールとして送達するために必要な薬物(単数または複数種類)の量は、加熱した際に加熱蒸気相に入る薬物(単数または複数種類)の量(すなわち、出発薬物(単数または複数種類)により得られる投与量)、エアゾール薬物(単数または複数種類)の生物学的利用能、患者が吸入する体積、および血漿薬物濃度の関数としてのエアゾール薬物(単数または複数種類)の効力に依存する。
【0128】
[00142] 特定の状態を処置するための薬物含有エアゾールの適切な用量は、動物実験および用量設定(第I/II相)臨床試験などの方法を用いて決定できる。これらの実験を用いてエアゾールの肺毒性の可能性を評価することもできる。1動物実験は、動物をエアゾールに曝露した後の血漿薬物濃度を測定することを伴なう。哺乳動物、たとえばイヌまたは霊長類が一般にそのような試験に用いられる;それらの呼吸器系はヒトのものに類似し、それらによって一般に試験結果を厳密にヒトに外挿できるからである。ヒトにおいて試験するための初期投与レベルは、一般に、哺乳動物モデルにおいてヒトにおける療法効果と関連する血漿薬物レベルを生じた用量より低いかまたはそれと等しい。次いでヒトにおいて、最適療法応答が得られるかあるいは用量制限毒性が現れるまで用量漸増を行なう。特定の患者に対する実際の薬物有効量は、使用する具体的な薬物またはその組合わせ、配合した特定の組成物、投与様式、ならびに患者の年齢、体重および状態、ならびに処置される発現症状の重症度に従って異なる可能性がある。
【0129】
粒子サイズ
[00143] 肺へ効果的にエアゾールを送達するためには、粒子が一定の透過性および沈降性または拡散性をもつことが必要である。深部肺における沈着は重力沈降により起き、空気力学的質量中央径(MMAD)として定義される有効沈降サイズ、一般に1~3.5μmを粒子がもつことが必要である。より小さな粒子については、深部肺への沈着は拡散プロセスにより起き、それには10~100nm、一般的に20~100nmの範囲の粒子サイズをもつことが必要である。深部肺送達のための吸入薬物送達デバイスは、これら2サイズ範囲のいずれか、好ましくは約0.1~3μm MMADの粒子を生成すべきである。一般に、目的MMADをもつ粒子を生成するために、ガスまたは空気を一定の流量で固体支持体上を通過させる。
【0130】
[00144] 凝縮段階で、エアゾールのMMADは経時的に増大している。一般に、本発明のバリエーションにおいて、蒸気がキャリヤーガスとの接触により冷却するに従って凝縮するのに伴なって、MMADは0.01~3ミクロンの範囲のサイズに増大し、次いでエアゾール粒子が互いに衝突するのに伴なってさらに増大し、凝集してより大きな粒子になる。最も一般的には、MMADは<0.5ミクロンから>1ミクロンにまで1秒未満内で成長する。こうして、一般に凝縮して粒子になった直後、凝縮エアゾールMMADは毎秒少なくとも1回、しばしば毎秒少なくとも2、4、8または20回、倍増する。他のバリエーションにおいて、MMADは0.1~3ミクロンのサイズ範囲内で増大する。
【0131】
[00145] 一般に、流量が多いほど、形成される粒子はより小さい。したがって、より小さい粒子またはより大きい粒子を得るために、送達デバイスの凝縮領域を通る流量を変化させることができる。混合物の個数濃度は約109粒子/mLに達した際に目的とする粒子サイズが達成される比率で、蒸気状態の化合物をある体積のキャリヤーガスに混入することにより、目的とする粒子サイズが達成される。この個数濃度における粒子の成長は、次いで1回の深い吸入状況で粒子サイズが“安定”であるとみなすのに十分なほど遅くなる。これは、たとえばガス流制御バルブを改変して体積空気流量を増加または減少させることにより行なうことができる。具体的には、サイズ範囲0.1~3μm MMADの凝縮粒子は、気化している薬物上のガス流量を1~10L/分の範囲、好ましくは2~8L/分の範囲になるように選択することにより生成できる。
【0132】
[00146] さらに、当業者に認識されるように、粒子サイズは、所要の体積流量を得るためにチャンバーの凝縮領域の断面を改変してガス速度を増大または低下させることによっても変更できる。さらに、粒子サイズは、チャンバー内に乱流を発生させる構造物の存在または非存在によっても変更できる。したがって、たとえば10~100nm MMADのサイズ範囲の凝縮粒子を生成させるために、チャンバーは凝縮チャンバー内に空気乱流を作り出すためのガス流バリヤーを備えることができる。これらのバリヤーは、一般に基材表面から数千分の一インチ以内に配置される。
【0133】
薬物含有エアゾールの分析
[00147] 薬物含有エアゾールの純度は、多種多様な方法を用いて決定できる。用語“純度”を用いる場合、それはエアゾールのパーセントからそれの形成に際して生成した副産物のパーセントを差し引いたものを表わすことを留意すべきである。副産物は、たとえば気化に際して生成した目的外生成物である。たとえば、副産物には有効な化合物または化合物類の熱分解生成物およびいずれかの目的外代謝産物が含まれる。エアゾールの純度を決定するのに適した方法の例は、Sekine et al., Journal of Forensic Science 32:1271-1280 (1987)およびMartin et al., Journal of Analytic Toxicology 13:158-162 (1989)に記載されている。
【0134】
[00148] 適切な1方法は、トラップの使用を伴なう。この方法では、副産物のパーセントまたは分率を決定するためにエアゾールをトラップに採集する。いずれか適切なトラップを使用できる。適切なトラップには、フィルター、ガラスウール、インピンジャー(impinger)、溶媒トラップ、コールドトラップなどが含まれる。フィルターがしばしば最も望ましい。トラップを次いで一般に溶媒、たとえばアセトニトリルで抽出し、抽出物を当技術分野で既知の多様な分析法のいずれか、たとえば特に有用なガス、液体および高速液体クロマトグラフィーにより分析する。
【0135】
[00149] ガスまたは液体クロマトグラフィー法は、一般に検出器システム、たとえば質量分析検出器または紫外線吸収検出器を含む。理想的には、検出器システムは薬物組成物および副産物の成分の量(重量)を決定できる。これは実際に、既知質量(単数または複数)の薬物組成物または副産物の1種類以上の成分(標準品)を分析した際に得られた信号を測定し、次いでエアゾールの分析に際して得られた信号を標準品(単数または複数)の分析に際して得られた信号と比較することにより達成でき、これは当技術分野で周知の方法である。
【0136】
[00150] 多くの場合、副産物の構造は分からないか、あるいはそれに対する標準品を入手できない可能性がある。そのような場合、副産物の重量分率は、それが薬物組成物中の薬物成分(単数または複数)と同一の応答係数(たとえば、紫外線吸収検出については、同一の吸光係数)をもつと仮定することにより計算してもよい。そのような分析を実施する際、薬物化合物のきわめて小さな分率より少量、たとえば薬物化合物の0.1%未満または0.03%未満で存在する副産物を一般に除外する。副産物の重量パーセントを計算する際に薬物と副産物の間に同一の応答係数を仮定する必要性が頻繁にあるので、そのような仮定が高確率の妥当性をもつ分析法の使用がより望ましいことがしばしばある。これに関して、225nmの紫外線の吸収による検出を備えた高速液体クロマトグラフィーが一般に望ましい。250nmにおける紫外線吸収は、化合物が225nmでより強く吸収する場合に、または他の理由で225nmにおける検出がHPLC分析を用いて純度(重量)を推定する最適手段であると当業者が考える場合に、化合物の検出に使用できる。紫外線による薬物の分析が有効でない特定の場合、他の分析ツール、たとえばGC/MSまたはLC/MSを用いて純度を決定してもよい。
【0137】
[00151] その存在下で組成物の気化が起きるガスの変更も純度に影響を及ぼす可能性がある。
【0138】
他の分析法
[00152] 薬物含有エアゾールの粒度分布は、当技術分野におけるいずれか適切な方法を用いて決定できる(たとえば、カスケードインパクション(cascade impaction))。インダクションポート(induction port)(USPインダクションポート,MSP Corporation,ミネソタ州ショアビュー)により気化デバイスに接続した次世代カスケードインパクター(MSP Corporation,ミネソタ州ショアビュー)は、カスケードインパクション試験に用いられる1システムである。
【0139】
[00153] 吸入可能エアゾール質量密度は、たとえば吸入デバイスを介して薬物含有エアゾールを拘束チャンバー(confined chamber)内へ送達し、チャンバーに採集された質量を測定することにより決定できる。一般に、デバイスとチャンバーの間に圧力勾配があり、チャンバーがデバイスより低い圧力であることにより、エアゾールはチャンバーに引き込まれる。チャンバーの容積は吸入する患者の吸入体積とほぼ等しくすべきであり、一般に約2~4リットルである。
【0140】
[00154] 吸入可能エアゾール薬物質量密度は、たとえば吸入デバイスを介して薬物含有エアゾールを拘束チャンバー内へ送達し、チャンバーに採集された有効薬物化合物の量を測定することにより決定できる。一般に、デバイスとチャンバーの間に圧力勾配があり、チャンバーがデバイスより低い圧力であることにより、エアゾールはチャンバーに引き込まれる。チャンバーの容積は吸入する患者の吸入体積とほぼ等しくすべきであり、一般に約2~4リットルである。チャンバーに採集された有効薬物化合物の量は、チャンバーを抽出し、抽出物についてクロマトグラフィー分析を実施し、クロマトグラフィー分析の結果を既知量の薬物を含有する標準品のものと比較することにより決定される。
【0141】
[00155] 吸入可能エアゾール粒子濃度は、たとえば吸入デバイスを介してエアゾール相の薬物を拘束チャンバー内へ送達し、チャンバーに採集された特定サイズの粒子の数を測定することにより決定できる。特定サイズの粒子の数は、粒子の光散乱特性に基づいて直接測定できる。あるいは、特定サイズの粒子の数は、その特定サイズ範囲内の粒子の質量を測定し、その質量に基づいて下記に従って粒子の数を計算することにより決定できる:粒子の総数=各サイズ範囲の粒子の数の和(サイズ範囲1からサイズ範囲Nまで)。特定サイズ範囲の粒子の数=そのサイズ範囲の質量/そのサイズ範囲の一般的粒子の質量。そのサイズ範囲の一般的粒子の質量=π*D3*φ/6,ここで、Dはそのサイズ範囲の一般的粒子の直径(一般に、サイズ範囲を規定する平均境界MMAD(mean boundary MMAD))(ミクロン)であり、φは粒子密度(g/mL)であり、質量はピコグラム(g-1
2)の単位で得られる。
【0142】
[00156] 吸入可能エアゾール粒子形成速度は、たとえば吸入デバイスを介してエアゾール相の薬物を拘束チャンバー内へ送達することにより決定できる。この送達は設定した期間(たとえば、3秒間)であり、チャンバーに採集された特定サイズの粒子の数を前記に概説したように決定する。粒子形成速度は、採集された10nm~5ミクロンの粒子の数を採集期間で割ったものに等しい。
【0143】
[00157] エアゾール形成速度は、たとえば吸入デバイスを介してエアゾール相の薬物を拘束チャンバー内へ送達することにより決定できる。この送達は設定した期間(たとえば、3秒間)であり、粒状物の送達前と送達後に拘束チャンバーを秤量することにより、採集された粒状物の質量を決定する。エアゾール形成速度は、チャンバーの質量の増分を採集期間で割ったものに等しい。あるいは、送達デバイスまたはその構成素子の質量の変化がエアゾール相の粒状物の放出のみによって起きる場合、粒状物の質量はエアゾールの送達中にデバイスまたは構成素子から失われた質量と同等とみなすことができる。この場合、エアゾール形成速度は、送達事象中のデバイスまたは構成素子の質量の減少を送達事象の期間で割ったものに等しい。
【0144】
[00158] 薬物エアゾール形成速度は、たとえば吸入デバイスを介して薬物含有エアゾールを拘束チャンバー内へ設定した期間(たとえば、3秒間)にわたって送達することにより決定できる。エアゾールが純粋な薬物である場合、チャンバーに採集された薬物の量を前記に従って測定する。薬物エアゾール形成速度は、チャンバーに採集された薬物の量を採集期間で割ったものに等しい。薬物含有エアゾールが医薬的に許容できる賦形剤を含む場合、エアゾール形成速度にエアゾール中の薬物のパーセントを掛けると薬物エアゾール形成速度が得られる。
【0145】
キット
[00159] 本発明のある態様において、医療提供者、またはより好ましくは患者が使用するためのキットが提供される。凝縮エアゾールを送達するためのキットは、一般に薬物を含む組成物、および凝縮エアゾールを形成するためのデバイスを含む。組成物は一般に溶媒および賦形剤を含まず、一般に熱安定薬物を含む。凝縮エアゾールを形成するためのデバイスは、一般に組成物を加熱して蒸気を形成するように構成された素子、蒸気を凝縮して凝縮エアゾールを形成させる素子、およびユーザーが凝縮エアゾールを吸入できるようにする素子を含む。キット内のデバイスはさらに、呼吸起動式素子もしくはロックアウト素子、または投薬の計数/ロギング、もしくはテーパリングデバイスなどのフィーチャーを含むことができる。代表的キットは携帯型エアゾール送達デバイスおよび少なくとも1回の投与量を提供するであろう。
【0146】
[00160] 他の態様において、メタ-サリチル酸ニコチン組成物の薄膜およびその膜を凝縮エアゾールとして投薬するためのデバイスを含む、ニコチンエアゾールを送達するためのキットが提供される。組成物は医薬賦形剤を含んでもよい。薬物組成物の膜をエアゾールとして投薬するためのデバイスは、膜を加熱して蒸気を形成するように構成された素子、およびその蒸気を凝縮させて凝縮エアゾールを形成させる素子を含む。
【0147】
[00161] 本発明のキットにおいて、組成物は一般に薄膜として一般に約0.5~30ミクロンの厚さで、熱源により加熱される基材上にコートされている。熱源は一般に、少なくとも200℃、好ましくは少なくとも250℃、またはより好ましくは少なくとも300℃もしくは350℃の基材温度を達成する速度で基材に熱を供給し、2秒以内、好ましくは1秒以内、またはより好ましくは0.5秒以内に薬物組成物を基材から実質的に完全に気化させる。薬物分解を阻止するために、熱源は薬物膜が基材上にある間に基材を600℃より高い温度には加熱しないように阻止することが好ましい。より好ましくは、熱源は基材を500℃より高い温度には加熱しない。
【0148】
[00162] 本発明のキットは、ニコチンと薬物送達デバイスの多様な組合わせから構成できる。ある態様において、デバイスは他の薬物と共に存在することもできる。他の薬物は経口または局所投与できる。一般に、使用のための指示がキットに含まれる。
【0149】
[00163] 特定の態様において、テープのスプールまたはリール上に付与されたメタ-サリチル酸ニコチンの薄膜を用いて多数回分のニコチンを提供できる。たとえば、テープは複数の薬物供給ユニットを含むことができ、それぞれの薬物供給ユニットはメタ-サリチル酸ニコチンの薄膜がその上に配置されたヒートパッケージを含む。各ヒートパッケージは、たとえば抵抗加熱または衝撃により点火される開始剤組成物、およびメタ-サリチル酸ニコチンを選択的に気化させるのに十分な急速な高熱インパルスを付与できる燃料を含むことができる。各ヒートパッケージは、テープの長さに沿って間隔をおいて配置することができる。使用に際して、1以上のヒートパッケージを通気路内に配置し、空気が通気路を通って流れる間にヒートパッケージを作動させてメタ-サリチル酸ニコチンを選択的に気化させることができる。気化したニコチンは空気流中で凝縮してニコチンを含むエアゾールを形成し、次いでそれをユーザーが吸入することができる。テープは、開始剤組成物、燃料、およびメタ-サリチル酸ニコチンを含む薄膜が配置された領域を規定する複数の薄膜を含むことができる。複数の層のうちあるものは、放出されたガスが累積するための装填されていない容積をさらに備えて、圧力蓄積を最小限に抑えることができる。複数の層は、機械的支持を付与することができかつヒートパッケージにより達する温度で認識できるほどには化学分解しない、いずれかの材料から形成することができる。特定の態様において、層は金属、またはポリマー、たとえばポリイミド、フルオロポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、もしくは他の耐高熱性ポリマーを含むことができる。特定の態様において、テープはさらに、物理的および/または環境的に薬物を保護するように構成された上層および下層を含むことができる。上および/または下の保護層は、たとえば金属箔、ポリマーを含むことができ、あるいは、金属箔およびポリマーを含む多層を含むことができる。特定の態様において、保護層は、酸素、水分、および/または腐食性のガスに対して低い透過性を示すことができる。使用前に保護層の全体または一部を取り除いて薬物および燃料を露出させることができる。開始剤組成物および燃料組成物は、たとえば本明細書に開示するいずれかを含むことができる。テープ、ディスク、または他の実質的に平坦な構造物の形の薄膜ヒートパッケージおよび薬物供給ユニットは、多数回投与量の物質を提供するためのコンパクトで加工適性のある方法を提供できる。多数回の投与量を低価格で提供することは、特定の療法において、たとえばニコチン渇望の処置のためにニコチンを投与する際に、および/または喫煙の停止を行なう際に、特に有用である可能性がある。
【0150】
[00164] 本開示は、薬物送達および薬物停止コントロールを実施するための方法を提供する。薬物がニコチン、メタ-サリチル酸ニコチン、または他のニコチン関連薬物である場合、紙巻タバコまたは葉巻に類似する形態要因をもつ薬物送達システムを提供することができる。紙巻タバコまたは葉巻の形状の薬物送達デバイス内で、コイルアレンジメント、箔アレンジメント、または抵抗接点アレンジメントが電源への回線経路を形成することができる。コイル、箔、または抵抗接点をそれぞれ、ニコチンベースの薬物でコートし、またはニコチンベースの薬物でコートされた基材と熱接触状態にすることができる。コントロールデバイスが紙巻タバコまたは葉巻の形状の薬物送達デバイスと無線でインターフェース接続して、ニコチンベースの薬物の送達を無線でコントロールまたは管理し、薬物使用の停止をコントロールすることができる。
【0151】
[00165] 特定の態様において、本開示は下記を含む薬物送達および薬物停止システムを教示する:ユーザー入力デバイス、第1ワイヤレストランシーバー、第2ワイヤレストランシーバー、プロセッサー、メモリーデバイス、およびネットワークインターフェースデバイスを含む、携帯型コントロールデバイス;第3ワイヤレストランシーバー、投与量コントロールデバイス、薬物ペイロード(payload)、および投与量送達デバイスを含む、薬物送達デバイス;ならびにそれぞれユーザーの身体の一部と接触した1以上のユーザーセンサー、この1以上のユーザーセンサーはそれぞれ第4ワイヤレストランシーバーおよび1以上の測定センサーを含み、この1以上の測定センサーは酸素濃度計、脈拍測定センサー、呼吸数センサー、または血圧センサーのうち1以上を含む。ユーザー入力デバイスはユーザーからのユーザー入力を受信して、ユーザーの身体への薬物送達をコントロールし、薬物停止をコントロールする;薬物ペイロードは1回以上の投与に十分な量の薬物を収容するように構成されたレザバーを含む;プロセッサーは第1および第3ワイヤレストランシーバーを介して薬物送達デバイスと通信して、1以上のユーザー入力、薬物送達および薬物停止に関連する1以上の事前設定指示、または1以上の測定センサーからの1以上の測定結果に基づく第1指示を投与量コントロールデバイスへ送り、それが第2および第4ワイヤレストランシーバーを介して携帯型コントロールデバイスへ伝達される;投与量コントロールデバイスは、プロセッサーからの第1指示に基づいて各投与について調合すべき薬物の量を決定し、各投与について送達するために決定された量の薬物を調合して送達するという第2指示を投与量送達デバイスへ送る;投与量送達デバイスは、投与量コントロールデバイスからの第2指示に基づいて薬物ペイロードからユーザーへ薬物を送達する;メモリーデバイスはそのシステムを用いた薬物送達歴、すなわち下記のうち1以上を含む薬物送達歴を記憶する:各投薬前の1以上の測定結果、それぞれの前決定期間についての薬物投与量、薬物投与量の増加、薬物投与量の減少、それぞれの前決定期間についての投与回数、それぞれの前決定期間についての投与回数の増加、それぞれの前決定期間についての投与回数の減少、ユーザー起動による薬物送達オーバーライドの回数、ユーザー起動による薬物送達オーバーライドのタイプ、またはユーザー担当医の連絡先情報;ネットワークインターフェースは、ネットワークを経由して医師のコンピューティングデバイスと通信可能な状態で接続して、薬物送達歴を医師へ送信し、投薬処方を医師から受信する。
【0152】
[00166] 本開示はさらに、下記のものを含む薬物送達および薬物停止システムを教示する:薬物ペイロード、投与量送達デバイス、および第1ワイヤレストランシーバーを含む携帯型薬物送達デバイス;第2ワイヤレストランシーバーを含む携帯型コントロールデバイス、この携帯型コントロールデバイスは第1ワイヤレストランシーバーおよび第2ワイヤレストランシーバーを介して携帯型薬物送達デバイスと無線通信状態にある;携帯型薬物送達デバイスは、携帯型コントロールデバイスから受信した指示に基づいて薬物をユーザーの身体へ送達するように構成されている。薬物送達デバイスはさらに、携帯型薬物送達デバイスが蒸気ベースの薬物送達デバイスであるという特徴をもつことができる。
【0153】
[00167] 本開示はさらに、薬物送達および薬物停止システムを教示し、その際、携帯型薬物送達デバイスはさらに、ブレスアクチュエーター(breath actuator)およびロックアウトユニットを含み、その際、ブレスアクチュエーターはユーザーが携帯型薬物送達デバイスから吸入したという判定に基づいて投与量送達デバイスに補充量の薬物を薬物ペイロードから送達させるように構成され、その際、ロックアウトユニットは補充量の薬物が前決定期間についての薬物の前決定最大量を超えるという判定に基づいて前決定期間中に補充量の薬物をブレスアクチュエーターが投与量送達デバイスに送達させるのを阻止する
ように構成されている。
【0154】
[00168] 薬物送達および薬物停止システムはさらに、携帯型コントロールデバイスからの指示を受信することなくかついずれかの事前設定された投与計画に反して、ユーザーが携帯型薬物送達デバイスから吸入したという判定に基づいて、ブレスアクチュエーターが投与量送達デバイスに補充量の薬物を薬物ペイロードから送達させるように構成されているという特徴をもつことができる。
【0155】
[00169] 薬物送達および薬物停止システムはさらに、薬物ペイロードが薬物でコートされた1以上の箔を含み、その際、投与量送達デバイスは各箔の一部分または各箔の全表面を少なくとも200℃に2秒未満内で加熱するように構成されたヒーターを含むという特徴をもつことができる。
【0156】
[00170] 薬物送達および薬物停止システムはさらに、ヒーターが各箔の一部分または各箔の全表面を少なくとも300℃に0.5秒未満内で加熱するように構成されているという特徴をもつことができる。
【0157】
[00171] 薬物送達および薬物停止システムはさらに下記の特徴をもつことができる:薬物ペイロードは直列に接続した複数の抵抗コイル(resistive coil)およびアース線に接続した複数のヒューズを含み、各ヒューズは直列の各コイルを次の隣接コイルから分離し、その際、複数のコイルはそれぞれ薬物でコートされ、その際、投与量送達デバイスは各コイルを少なくとも200℃に2秒未満内で加熱するように構成された電源を含み、その際、直列の複数のコイルへの電源からアース線まで回線経路が成立し、各ヒューズは直列の各コイルと次の隣接コイルの間の短絡経路を規定し、その際、電源はさらに短絡電流バースト(short current burst)を送って電源に最も近い非溶断ヒューズ(unfailed fuse)を溶断するように構成され、それにより直列の次の隣接コイルが電源により電圧をかけられる状態にする。
【0158】
[00172] 薬物送達および薬物停止システムはさらに下記の特徴をもつことができる:薬物ペイロードは直列に連結した複数の箔を含む薄膜構造体および薄膜構造体の接地部分に接続した複数のヒューズを含み、各ヒューズは直列の各箔を次の隣接箔から分離し、その際、複数の箔は薬物でコートされ、その際、投与量送達デバイスは各箔を少なくとも200℃に2秒未満内で加熱するように構成された電源を含み、その際、直列の複数の箔への電源からアース線まで回線経路が成立し、各ヒューズは直列の各箔と次の隣接箔の間に短絡経路を規定し、その際、電源はさらに短絡電流バーストを送って電源に最も近い非溶断ヒューズを溶断するように構成され、それにより直列の次の隣接箔が電源により電圧をかけられる状態にする。
【0159】
[00173] 薬物送達および薬物停止システムはさらに、薄膜構造体が、くさび形に巻かれた平坦な箔、チューブ形に巻かれた平坦な箔、または平面構造のうち1つの全体的形状をもつという特徴をもつことができる。
【0160】
[00174] 薬物送達および薬物停止システムはさらに、携帯型薬物送達デバイスが経皮ベースの薬物送達デバイスであるという特徴をもつことができる。
【0161】
[00175] 薬物送達および薬物停止システムはさらに、薬物ペイロードが液状の薬物を収容した液体リザバーを含み、その際、投与量送達デバイスは可変透過性の膜および膜アクチュエーターを含み、その可変透過性の膜は膜アクチュエーターからのコントロール信号に基づき液体透過性を変化させて変動量の薬物を液体リザバーから送達するように構成されているという特徴をもつことができる。
【0162】
[00176] 薬物送達および薬物停止システムはさらに下記の特徴をもつことができる:薬物ペイロードは、複数の第1横列および複数の第1縦列を含む第1グリッド状にアレンジされた複数の箔を含み、各箔は薬物でコートされ、各箔は互いに電気的および熱的に非伝導性の材料により隔離され、その際、投与量送達デバイスは第1グループのスイッチ、第2グループのスイッチ、第1グループのスイッチそれぞれに電気接続した電源、第2グループのスイッチそれぞれに電気接続した接地経路、複数の第2横列および複数の第2縦列を含む第2グリッド状にアレンジされた複数のアクチュエーター、複数の第1直線電気経路、複数の第2直線電気経路を含み、その際、複数の第2縦列のそれぞれの縦列について、第1グループのスイッチの1つから複数の第2縦列中の対象となる縦列中にアレンジされた複数のアクチュエーターそれぞれまで第1電気経路が樹立し、その際、複数の第2横列中のそれぞれの横列について第2グループのスイッチの1つから複数の第2縦列中の対象となる縦列中にアレンジされた複数のアクチュエーターそれぞれまで第2電気経路が樹立し、その際、第1グリッド状にアレンジされた複数の箔は第2グリッド状にアレンジされた複数のアクチュエーターとアラインしてそれらと直接的な接点を形成している。
【0163】
[00177] 薬物送達および薬物停止システムはさらに、下記の特徴をもつことができる:複数のアクチュエーターそれぞれが、前決定量の電流の印加により少なくとも200℃の温度に2秒未満内で達するように構成された抵抗素子を含み、その際、第1グループのスイッチのうちの1つを閉じかつ第2グループのスイッチのうちの1つを閉じ、それにより第1グループのスイッチのうちのその1つと第2グループのスイッチのうちのその1つの両方に電気接続した対象となる抵抗素子に電圧を印加し、これにより複数の箔のうち対象となる抵抗素子と直接接触している対象となる箔を加熱することによって、第1グリッド状にアレンジされた複数の箔が個別に加熱される。
【0164】
[00178] 薬物送達および薬物停止システムはさらに、薬物送達デバイスがさらに、ユーザーの身体と物理的に接触した膜を含み、その際、箔により加熱された薬物は気体またき液体のいずれかとして膜を通ってユーザーの身体の皮膚部分により吸収されるという特徴をもつことができる。
【0165】
[00179] 薬物送達および薬物停止システムはさらに、第1および第2グループのスイッチのそれぞれがトランジスターであるという特徴をもつことができる。
【0166】
[00180] 本開示は、さらに下記のものを含む薬物送達および薬物停止システムを教示する:それぞれユーザーの身体の一部と接触した1以上のユーザーセンサー、この1以上のユーザーセンサーの各々は第3ワイヤレストランシーバーおよび1以上の測定センサーを含み、この1以上の測定センサーは酸素濃度計、脈拍測定センサー、呼吸数センサー、または血圧センサーのうち1以上を含み、その際、携帯型薬物送達デバイスは、携帯型コントロールデバイスから受信した指示に基づいて、また1以上の測定センサーから第3ワイヤレストランシーバーを介して受信した測定結果に基づいて、薬物をユーザーの身体へ送達するように構成されている。
【0167】
[00181] 本開示は、さらに下記の薬物送達および薬物停止システムを教示する:携帯型コントロールデバイスがさらにメモリーデバイスおよびネットワークインターフェースを含み、その際、メモリーデバイスはそのシステムを用いた薬物送達歴、すなわちそれぞれの前決定期間についての薬物投与量、薬物投与量の増加、薬物投与量の減少、それぞれの前決定期間についての投与回数、それぞれの前決定期間についての投与回数の増加、それぞれの前決定期間についての投与回数の減少、ユーザー起動による薬物送達オーバーライドの回数、ユーザー起動による薬物送達オーバーライドのタイプ、またはユーザーを担当するヘルスケア専門家の連絡先情報のうち1以上を含む薬物送達歴を記憶するように構成され、その際、ネットワークインターフェースは、ネットワークを経由してヘルスケア専門家のコンピューティングデバイスと通信可能な状態で接続して、薬物送達歴をヘルスケア専門家へ送信し、投薬処方をヘルスケア専門家から受信する。
【0168】
[00182] 本開示は、下記を含む薬物送達および薬物停止方法を教示する:下記のものを含む薬物送達および薬物停止システムを用意する:薬物ペイロード、投与量送達デバイス、および第1ワイヤレストランシーバーを含む、携帯型薬物送達デバイス;ならびに第2ワイヤレストランシーバーを含む携帯型コントロールデバイス、この携帯型コントロールデバイスは第1ワイヤレストランシーバーおよび第2ワイヤレストランシーバーを介して携帯型薬物送達デバイスと無線通信状態にある;携帯型薬物送達デバイスにより、薬物ペイロードに貯蔵された薬物のうちある用量を携帯型コントロールデバイスから受信した第1指示に基づいてユーザーの身体へ送達する。
【0169】
[00183] この薬物送達および薬物停止方法はさらに下記の特徴をもつことができる:携帯型コントロールデバイスで、ユーザー入力に基づく指示、事前設定用量に基づく指示、またはヘルスケア専門家のコンピューティングデバイスを介したネットワークを経由するヘルスケア専門家からの指示のうち少なくとも1つを含む第2指示を受信し、その際、第1指示は第2指示に基づく;そして携帯型薬物送達デバイスで携帯型コントロールデバイスからの第1指示を受信する。
【0170】
[00184] 本開示は、下記を含む薬物送達および薬物停止装置を教示する:プロセッサー;プロセッサーにより実行した際にその装置に1以上の機能を実施させる指示のセットを含むコンピューターソフトウェアを記憶した非一過性コンピーター可読媒体、この指示のセットは下記のものを含む:薬物ペイロード、投与量送達デバイス、および第1ワイヤレストランシーバーを含む携帯型薬物送達デバイスにより、第2ワイヤレストランシーバーを含む携帯型コントロールデバイスから受信した第1指示に基づいて、薬物ペイロード内に貯蔵されたある用量の薬物をユーザーの身体へ送達するための指示;携帯型コントロールデバイスは第1ワイヤレストランシーバーおよび第2ワイヤレストランシーバーを介して携帯型薬物送達デバイスと無線通信状態にある。
【0171】
[00185] 薬物送達および薬物停止装置はさらに下記の特徴をもつことができる:指示のセットがさらに下記のものを含む:ユーザー入力に基づく投薬量指示、事前設定用量に基づく投薬量指示、またはヘルスケア専門家のコンピューティングデバイスを介したネットワークを経由するヘルスケア専門家からの投薬量指示のうち少なくとも1つを含む第1セットの投薬量指示を受信するようにという指示;および携帯型コントロールデバイスからの第1指示を携帯型薬物送達デバイスで受信するようにという指示。
【0172】
[00186] 本開示の多様な態様は、従属請求項それぞれが、先立つ従属請求項および独立請求項の限定事項を含む多重の従属請求項であるかのように、特許請求の範囲に示した多様な要素の並べ替えをも含む。そのような並べ替えは明らかに本開示に含まれる。
【0173】
[00187] 本発明を特に多数の態様に関して提示および記載したが、本明細書に開示する多様な態様に対して本発明の精神および範囲から逸脱することなく形態および詳細の変更をなしうること、ならびに本明細書に開示する多様な態様は特許請求の範囲に対する限定として用いるためのものではないことは当業者に理解されるであろう。本明細書に引用するすべての参考文献の全体を援用する。
【実施例0174】
[00188] 以下の実施例は説明の目的で提示されるにすぎず、本発明の範囲を限定するためのものではない。
【0175】
実施例1
[00189] メタ-サリチル酸ニコチンの合成:1.385gのm-サリチル酸(Sigma Aldrich)を25mlのエタノールに溶解した。1.62gのニコチンを室温で滴加し、約30分間、十分に撹拌した。溶液を徐々に回転蒸発させて、体積を約10mlに減少させた。次いで5mlの酢酸エチルを添加し、3~5分間撹拌した。溶液をドライアイス上に約1.5時間置くと、粘稠な固体材料が生成した。溶媒を蒸発させた後、20mLのエタノールを添加して粘稠な固体を溶解し、次いで蒸発させた。この再結晶は結晶を精製するために当技術分野で既知である。結晶質固体がフラスコ内に残った。この粉末をフラスコから取り出し、40℃の真空オーブンで乾燥させた。2.6グラムが回収された(約87%の収率)。この固体の融点は125℃であった。
【0176】
実施例2
[00190] メタ-サリチル酸ニコチンの合成:液体ニコチン(Alfa Aesar,ロット#10150504,純度99%)およびm-サリチル酸(3-ヒドロ安息香酸,Sigma Aldrich,ロット#STBB7747,純度99%)を1:1のニコチン:酸の比率で用いてm-サリチル酸ニコチンを合成した。下記の合成経路で一般的収率60~70%および純度99.7%が得られる:
試料合成:
1. 0.03moleのm-サリチル酸(約4.16g)を65mlのエタノール200プルーフ(proof)に溶解し、約20分間、十分に混合した;
2. 0.03moleの液体ニコチン(約4.86g)を上記溶液に滴加し、撹拌プレート上で周期的に振とうしながら30~40分間混合した。m-サリチル酸ニコチンの種晶を次いで添加し、溶液をさらに40分間撹拌し、次いでドライアイス上に約40分間置いた;
3. m-サリチル酸ニコチンを濾過し、100%アセトンで洗浄し、約20分間、風乾した;この塩をホモジナイズするために、乳鉢と乳棒を用い、次いで塩を40℃の真空オーブンで1時間乾燥させた;
4. 塩をシンチレーションバイアルへ移し、秤量した。6.0gが回収された(約67%の収率)。この塩は融点125℃の白色粉末である。下記の点に注目する:この材料の合成のごく初期(種晶を用いる前)に、工程2(ニコチンの滴加)の後、溶液を徐々に回転蒸発させて約10mlの体積に減少させた。次いで50mlの酢酸エチルを添加し、十分に混合し、溶液をドライアイス上に置いた。粘稠な材料が得られ、それをさらに蒸発させた。20mlのエタノールを添加し、溶液を再びドライアイス上に置くと、この時点で結晶化が起きた。結晶を濾過し、洗浄し、真空下に40℃で乾燥させた。
【0177】
実施例3
API査定:
[00191] m-サリチル酸ニコチン原料(API)を多数の分析法で解析した。結果は、合成したままのm-サリチル酸ニコチンが高純度であることを証明している。
【0178】
[00192] m-サリチル酸ニコチン粉末の一般的な熱量測定スキャンを図2に示す。融点は125℃である。この粉末についての熱重量分析をスキャニングと等温の両方のモードで行なった。図7は室温から500℃までのスキャニングデータを示す。ほぼ0%(実際にはそれよりわずかに低い)の平坦なベースラインに注目されたい;これは、残留物がほとんどまたは全く残らないことを示す。前と後に外部バランス(external balance)でパンを秤量し、残留物はわずか約0.2%であった。この結果は、高温に曝露した後の酸の炭化が最小であることを示唆する。API粉末(試験当たり約10mg)について40℃、50℃および60℃で少なくとも3日間の等温データも得た。すべての場合、質量変化は本質的に直線的に経時低下した。データのまとめを、他の各種ニコチン塩について得た類似のデータと共に表1に詳細に示す。メタ-サリチル酸ニコチン(最上列)の損失はオルト-サリチル酸ニコチン(第2列)より約2~3倍少なかった。試験した大部分のニコチン塩はm-サリチル酸塩より安定性が低かった(より多量のニコチンが失われた)。
【0179】
【表1】
【0180】
実施例4:
溶解度
[00193] m-サリチル酸ニコチンについて多数の関連溶媒中で溶解限度試験を行なった。結果を表2にまとめる。おおよその飽和限界はニコチン当量mg/mL(溶媒)の単位である。m-サリチル酸ニコチンの溶解度は純粋なアセトニトリル(約10mg/mL)およびアセトン(<10mg/mL)では低いことに注目されたい。m-サリチル酸ニコチンはメタノールを含有する溶媒系に最も可溶性である。ただし、m-サリチル酸塩に関連する不純物を検出するために開発した分析法は236nmを検出波長として用いる。メタノールはこの範囲で高い吸光度をもち、したがって目的とする被検体を妨害する可能性がある。これに対し、アセトニトリルはこの波長範囲で低いバックグラウンド吸光度をもち、したがって使用するのに理想的である。溶解度の乏しさに対処するために、抽出に水とアセトニトリルの混合物を用いる。
【0181】
【表2】
【0182】
実施例5
ニコチンコーティングの開発
[00194] スプレーコーティングは凝縮エアゾールを生成する薬物膜を調製するための鍵となる製造工程の1つである。m-サリチル酸ニコチンのスプレーコーティングをメタノール中の約75mg/mLの溶液を用いて行なった。アセトンも試みたが、溶解度が限られていた。一般的なスプレーコーティングパラメーターは、1.3W(広帯域超音波発生装置電源)、溶液流量10~12mL/時、コーティングテーブル速度25mm/秒、および空気圧1~1.5psiであった。より高い流量は、目視できるほどより不均一なコーティングになる傾向がある。アレイ内相対標準偏差はしばしば2~3%の範囲であったが、アレイ間変動性はより高かった(隣接アレイ上への過剰スプレーによる可能性がある)。コートした膜の結晶化は好ましく、通常はスプレーノズルの手動播種後にかなり速やかに起きる。
【0183】
[00195] 200μgニコチン当量が箔の1面を9×2mmの面積で覆うようにコーティングを行なった。これは約20μmの膜厚に等しい。後記の特性解析試験のために、より低い量を同じ表面積にコートした。しかし、この最大量の機械的安定性は許容できるものであり、気化損失はより厚い膜ほどより少ないことが分かったので、本開示は20μmの厚さのコーティングを教示する。そのような膜を調製するために、25、50、および100μgニコチン当量で新たなスプレーコーティングマスクを作成した。
【0184】
実施例6
分析法の開発
[00196] m-サリチル酸ニコチンの医薬品開発と合わせて、APIおよびエアゾールの定量および定性(純度)査定を支援するために多数の分析法を得た。
【0185】
[00197] ニコチン定量:このアイソクラティック(isocratic)アッセイは、Gemini C18,50×3.0mm,3μmカラム、0.1%水酸化アンモニウム(水中)/アセトニトリル移動相,流量0.6mL/分、および245nmにおける検出を用いる。この方法のための総試験時間は3分である。この方法は、ニコチン塩において低い量については8~200μg/mL、高い量については100~600μg/mLの範囲のニコチン濃度を決定するために適用できる。ニコチンの不純物または分解生成物の測定を意図してはいない。
【0186】
[00198] m-サリチル酸の定量法:このアイソクラティックアッセイは、Luna,C18,3μm,75×4.6mmのカラム、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)(水中)/アセトニトリル移動相,流量1.0mL/分、および248nmにおける検出を用いる。この方法のための総試験時間は3.5分である。この方法は、20~600μg/mLの範囲のm-サリチル酸濃度を決定するために適用できる。m-サリチル酸の不純物または分解生成物の測定を意図してはいない。
【0187】
[00199] ニコチン純度法:この逆相HPLC法は、0.1%(v/v)水酸化アンモニウム(水中)/アセトニトリルからなる移動相,流量0.8mL/分を用いる勾配流を適用し、Gemini RP18,150×4.6mm,3μmのカラム、および260nmにおけるUV検出を使用する。この方法のための総試験時間は20分である。この方法は、ニコチン濃度範囲300~500μg/mLのニコチン濃度およびニコチン関連不純物濃度を決定するために適用できる。これはm-サリチル酸ニコチン中の総ニコチン関連不純物を決定するためのものである。
【0188】
[00200] m-サリチル酸純度法(AARD-020-049):この逆相HPLC法は、0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸(TFA)(水中)/アセトニトリルからなる移動相,流量0.8mL/分を用いる勾配流を適用し、Gemini C18,150×3.0mm,5μmのカラム、および236nmにおけるUV検出を使用する。この方法のための総試験時間は20分である。この方法は、m-サリチル酸塩濃度範囲300~500μg/mLのm-サリチル酸塩濃度およびm-サリチル酸塩関連不純物濃度を決定するために適用できる。これはm-サリチル酸ニコチン中の総m-サリチル酸関連不純物を決定するためのものである。
【0189】
実施例7
EMD解析
エミッティッドドーズ・アンド・マスバランス(Emitted Dose and Mass Balance)
[00201] エミッティッドドーズ・アンド・マスバランス:ニコチンの揮発性のため、
ニコチンの粒子および蒸気を完全に採集するのはきわめて難しいことが分かった。100%のマスバランスを可能にする最適採集方法を見出すために、多数回の反復放出量試験を実施した。
【0190】
[00202] 最終的に、NGIフィルターホルダーに収容した76mm直径のガラス繊維フィルター(1.0umのポアサイズ,タイプA/E)がニコチンとm-サリチル酸塩の両方の最適回収をもたらすことが見出された。おそらく、サリチル酸ニコチンは適切な採集のために比較的遅いフィルター表面速度を必要とするであろう。箔を加熱して薬物を気化させるエネルギーを供給するための外部電源を備えたスイッチボックスを用いて放出量実験を実施した。回収に負の影響を及ぼすことなく最大3つの箔を1フィルター内で発火させることができる(より多数の箔を1フィルター内で起動させるとエアゾール回収率が低下する:これはおそらく採集フィルターを通る余分な空気流からの遊離塩基ニコチンの揮発性によるものであろう)。スイッチボックスは3.7ボルト/4.0アンペアを0.5秒間供給するように設定された。空気流は28.3LPMに設定された。捕獲された薬物蒸気を次いで最大10mLの水中50%(v/v)アセトニトリルを用いてフィルターから抽出し、10分間、超音波処理した。フィルター繊維を遠心分離によりペレット化した後、被検体をHPLC分析用に調製する。
【0191】
[00203] 200μgのニコチンでコートされた箔からの平均ニコチン放出量は、コートした量の99.5%(6.8% SD)であり、一方、平均m-サリチル酸塩回収率はコートした量と比較して101.8%(6.3% SD)であった。両方とも箔および通気路ハウジング上の沈着/残留は最小であった。さらに、コートした量および放出量の両方についてニコチン:対イオンモル比の分析の結果は、気化および捕獲のプロセス中に1:1の関係が保存されていることを示す。
【0192】
エアゾール純度
[00204] エアゾールを放出量法で捕獲し、50/50 アセトニトリル/水中で抽出を実施した。エアゾールの純度はニコチンとサリチル酸塩の両物質により支配される。ニコチン部分はほぼ完全に無傷で気化し、分解は最小(≦0.5%)であると思われる。少量のミオスミン(myosmine)が検出された。図8は、ニコチン不純物法を実施した代表的な試料のクロマトグラムを示す。
【0193】
[00205] 多数のニコチン塩、たとえば酒石酸塩の問題点は、酸の分解であった。これらのカルボン酸は最小のUV吸収をもつ小分子であるので、状況をさらに複雑にするのはそれらの分解副産物を観察する際の分析問題である。m-サリチル酸塩は幸いにこれに関して幾つかの利点をもつ。本発明者らはm-サリチル酸塩の分解をスクリーニングするためのHPLC法を開発することができた。m-サリチル酸から最小の分解生成物が検出された(≦0.5%)。図9は、m-サリチル酸塩不純物法を実施した代表的な試料のクロマトグラムを示す。
【0194】
[00206] m-サリチル酸のさらに他の関心事は、フェノールの形成の可能性であった。フェノールはo-サリチル酸ニコチンの分解生成物として約0.1~0.5%のレベルで検出されている。フェノールは比較的遍在性の分子であるが、遺伝毒性および刺激のレポートが幾つかある。
【0195】
[00207] フェノール検出のための高感度LC法を用いると、この方法ではm-サリチル酸ニコチンエアゾール中にフェノールは観察されなかった。この方法の感度からみて、m-サリチル酸ニコチンエアゾール中のフェノールの最大含量は約0.013%と推定できる。エアゾール純度を評価するための補足的な方法は、マスバランスを計算すること、すなわちコートした量をニコチンおよび対イオンの放出量プラス残留量と比較することである。ニコチンおよびm-サリチル酸の量ならびに比率を、コートした薬物:放出薬物+残留薬物で比較すると、酒石酸水素ニコチンなどの塩類にみられる著しい不均衡と異なり、両物質のマスバランスが約100%であり、かつエアゾールにおける比率がコートした量のものと一致することを示す。
【0196】
エアゾール粒子サイズ結果
[00208] 次世代インパクター(Next Generation Impactor)(NGI)で粒子サイズ実験を実施した。空気流量を30LPMに設定した。200μgニコチン当量(総量約370gのm-サリチル酸ニコチン)でコートした箔アレイを、放出量実験と同様な設定でEMD投与カートリッジスイッチボックスを用いて気化させた。4~11の箔を各NGIセット内へ気化させ、カップを4mLの水中50%(v/v)アセトニトリルでアッセイした。最初は、裸のNGIカップは低いMMAD値を生じ、平均0.7μmであった。粒子サイズ実験についてしばしばみられる跳ね返り作用を減らすために、次いでシリコーンをカップにスプレーした。シリコーンをスプレーしたカップはMMADに影響を及ぼさなかったが、マスバランスがわずかに改善されて、ニコチン回収率が裸カップについてのコートした量の76%からシリコーンカップにおける89%に増大した。跳ね返りおよびニコチン揮発性を減らすために、NGIカップを次いで1%(w/v)安息香酸の薄層でコートした。アリコートの溶液を各カップにピペット注入し、カップを旋回させて表面被覆を促進した。安息香酸の存在はMMADを0.9umに増大させ、一方、ニコチン回収率はコートした量の93%に改善された。図10は、これらのセットアップについて種々のインパクターステージ間の粒度分布を示す。
【0197】
[00209] 安息香酸コーティングの均一性および厚さ(スプレーボトルからのスプレー回数の変更による)の影響を判定するさらなる実験は、MMADに対する差が最小であり、0.8から1.0μmまでの範囲の結果が得られたことを示した。図11を参照。粒子サイズは約1μm、またはそれよりごくわずかに小さく、それは肺沈着に適切なはずである。m-サリチル酸ニコチンエアゾールは気道の内側の湿潤(ほぼ100%のRH)雰囲気ではある程度成長する可能性がある。
【0198】
実施例8
安定性
[00210] 遊離塩基ニコチン固有の揮発性は、対イオン酸に結合すると著しく変化する可能性がある。得られる塩形態のニコチンの安定性が大幅に変化し、最終的に商業的考慮に対するそれの望ましさに影響を及ぼす可能性がある。ある種のパッケージング構造はニコチン損失を軽減できる。これまでの実験結果は、ニコチンの平衡蒸気圧に達するとニコチン損失が停止することを示唆した。平衡蒸気圧点を降下させると総ニコチン損失が最小限になると考えられる。この試験について、下記の変数を調べるために異なるパッケージング構造を試験した:容器材料、付属物の存在、および空間の総容積。容器材料はガラスまたは多層箔パウチからなっていた。ガラスは蒸気に対して不透過性である。ガラス容器の総体積がニコチン蒸気で満たされ、何らかの表面吸着が起きた時点で、平衡に達し、それ以上のニコチン損失はみられないはずである。箔も不透過性であるが、パウチの内面は蒸気吸収度を増進するエチレン-酸-コポリマーで内張りされている。このコポリマーは、パウチ内で同一の総容積のガラスバイアルより大きなニコチン損失をもたらすはずである。
【0199】
[00211] 付属物、たとえば薬物カートリッジハウジングの存在は、最終市販品について可能性のあるシナリオである。それが優先的に蒸気を吸収するならば、付属物の組成は平衡蒸気圧点に影響を及ぼすであろう。この試験のために、約150cm2の表面積をもつポリカーボネート付属物をガラスバイアルおよびパウチのシナリオに導入した。最終的に総パッケージング容積を調べた。有効空間が小さくなるほど、より速やかに平衡圧に達する可能性がある。開放容器が最悪例のシナリオである;無限空間は決して平衡圧に達し得ないことを意味するからである。実験をセットアップするために、スクリーニング箔を占有面積(footprint)1×2cmのm-サリチル酸ニコチンでニコチン約11ug/mm2の厚さまでスプレーコーティングした(EMD箔上、200ugニコチン当量のコーティング量に等しい)。ランダムスクリーニングした数個の箔を初期時点コーティング量についてアッセイした後、残りの箔を下記の容器のうちの1つに入れた:
・キャップ付きガラスバイアル(約40mLの容積)
・ヒートシールした標準的パウチ(約133mm×87mm)
・ヒートシールした標準的パウチ,ポリカーボネート材料(約150cm2の表面積)と共に貯蔵
・キャップを外したガラスバイアル(第1弾と同じバイアル)
・バインダークリップした(準シールした)標準的パウチ(約133mm×87mm)
・キャップ付きガラスバイアル,ポリカーボネートと共に貯蔵
・ヒートシールしたハーフパウチ(約69mm×87mm)
・カバーを外したペトリ皿。
【0200】
[00212] パッケージしたスクリーニング箔を40℃(オーブン)または25℃(実験室キャビネット)のいずれかに、湿度管理せずに貯蔵した。前決定した時点で各条件から3つの箔を5mLの水中50% v/vのアセトニトリルで洗浄し、HPLCでニコチン
およびm-サリチル酸塩の含量について分析した。
【0201】
[00213] 40℃の試料についての結果を図14および図15に示す。2つの条件のみが貯蔵期間全体を通して継続的なニコチン損失を示す:開放ガラスバイアルおよびカバーを外したペトリ皿。パッケージングをシールした他のすべての条件が初期損失後にニコチン揮発性の安定化を示した。
【0202】
[00214] ポリカーボネート材料を収容しているシールした標準サイズのパウチは最悪のニコチン安定化条件であると思われる(約20%のニコチン含量損失)。スプレーコートしたニコチン塩をコポリマー層およびポリカーボネート付属物に曝露し、総容積はハーフサイズパウチのものの2倍であった。他の安定化ニコチン条件はすべて、それのニコチン含量の≦10%の損失であった。
【0203】
[00215] ペトリ皿条件は、それの保存構造のためニコチン損失が最も速やかであった。スプレーコートした箔の表面全体が連続的に外部環境に曝露された。一方、開放ガラスバイアル内の箔は、細いバイアル内に直立して、小さな直径の空間のみが外部に曝露された状態で貯蔵され、それによって損失速度が低下した。
【0204】
[00216] m-サリチル酸はパッケージング構造に関係なくきわめて安定であると思われる。ペトリ皿条件は、外部環境へのそれの曝露が最大であるため最悪例のシナリオである。しかし、40℃において最小湿度で4週間の貯蔵後、m-サリチル酸塩含量は初期の約80%に留まった。それ以外は、他のすべての構造について16週間の貯蔵後に安定性結果は初期の約100~110%の範囲である。
【0205】
[00217] 25℃で貯蔵した試料の結果は特に有望である。ペトリ皿条件(18週目で13%のニコチン含量損失)を除いて、すべての条件について18週までの貯蔵のニコチン損失は初期の7%以内であった。m-サリチル酸含量は8つの条件すべてについて安定であった。
【0206】
[00218] 揮発性および吸湿作用によるニコチンおよびm-サリチル酸の損失:ニコチン塩類は揮発性の問題がある可能性があり、かなり吸湿性である可能性もある。たとえば、硫酸ニコチンはきわめて容易に水を吸収するので、水溶液で輸送される。吸湿作用がm-サリチル酸ニコチンに及ぼす影響を2種類の用量について2つの条件で評価した:22℃/44% RH(周囲条件)および40℃/75% RH。水についてのアントワン(Antoine)式によれば、40℃/75% RHは22℃における過飽和湿度に換算される。コートしたEMDアレイのそれぞれをペトリ皿(カバー無し)に平らに置き、次いでそれを22℃/44% RHまたは40℃/75% RHのいずれかで貯蔵した。各時点で少なくとも4つのランダムな個々の箔をアレイから取り出し、コーティング量決定のために各箔を1.5mlの50/50 ACN/水で抽出した。
【0207】
[00219] 40-μg/箔および170-μg/箔の条件についてのニコチンの結果全体は下記のようにまとめられる。図14を参照。40μg/箔の用量については、コートした膜は最大で60℃/35% RHで4時間、35℃/80% RHで5日間、22℃/60% RHで4週間は、比較的安定であった(20%を超えない損失として定義)。170μg/箔の用量については、コートした膜は少なくとも60℃/35% RHで8時間、35℃/80% RHで7日間、25℃/90% RHで13日間、および22℃/60% RHで4週間は安定である。安定性結果は、すべての安定性条件にわたって、コートした膜が厚いほど(170μg/箔)、より薄いコートした膜(40μg/箔)より有意に安定であることを立証する。40μg/箔および170μg/箔についてのm-サリチル酸の結果は下記のようにまとめられる。図15を参照。m-サリチル酸は、25℃/90% RHで40μg/箔の用量を除くすべての条件について比較的安定であると思われる。幸い、この問題はコートした膜厚の増大によって軽減できる。
【0208】
機械的安定性
[00220] ニコチン約200μg/箔(ニコチン約11μg/mm2,これは約21μm厚さのm-サリチル酸ニコチン膜である)でコートした2つの箔アレイを用いてスプレーコーティングの脆弱性を試験した。各アレイから5つの箔を落下前コーティング量についてアッセイした。各箔アレイを次いで投与カートリッジに入れ、プラスチックチューブ内へシールし、約1メートルの高さから床に3回落下させた。各アレイからさらに5つの箔を落下後コーティング量についてアッセイした。箔アレイ内コーティング量は落下前と比較して落下後について0.1および1.4%高く、約0.8%の平均であることが認められた。これらの状況でこれらの差は有意ではなく、EMD箔上200μgニコチン当量のm-サリチル酸ニコチンのコーティングですら機械的に安定であることを示す。
【0209】
【表3】
【0210】
[00221] 追跡試験で、膜の厚さが機械的統合性に及ぼす影響を調べた。この実験では、アレイから3つの箔を落下前コーティング量についてアッセイした。各箔アレイを次いで投与カートリッジに入れ、プラスチックチューブ内へシールし、約1メートルの高さから床に5回落下させた。各アレイからさらに3つの箔を落下後コーティング量についてアッセイした。データは、350μgニコチンに相当する膜厚さ(約37μmの厚さ)が脆弱性の徴候-薬物の剥離-を示し始めることを示す。約29μm厚さの膜の落下後まで薬物は失われなかった。したがって、機械的目的のためにはm-サリチル酸ニコチン膜の厚さは約30ミクロンを超えるべきではない。
【0211】
実施例9
デバイス
[00222] デバイス1:図16に示す基本デザインをElectric Multi Dose(EMD)プラットフォームで試験した。効率的な箔パッケージングを多数回投与と解釈する。箔はスプレー法で容易にコートできる。
【0212】
[00223] デバイス2:図17を参照。投与量は、Ni-クロムなどのソリッド抵抗ワイヤから巻かれた小さなコイルの形態である。それらのコイルは、マウスピースから最も遠いコイルが最小抵抗の経路になるような様式で接続している。ワイヤ直径は短絡電流バーストがそのコイルを最初に加熱し、続いてヒューズ接点(赤い点)をブローするように選択される。その時点で、コイルは消費され、もはや回路に接続していない。次の加熱サイクルで、次のコイルが最小抵抗の経路となり、したがってそれが次の投与量になる。このサイクルはすべての投与量が消費されるまで継続する。安全設計(fail-safe design)の1回投与をソフトウェア無しで実行できる。使い捨てユニットであってもよい。形態ファクターはタバコに類似するものであってもよい。コイル取付けについてはワイヤ接着技術から活用できる。ソフトウェアコントロール式の加熱素子に変換できる。
【0213】
[00224] デバイス3:図18を参照。このデバイスはデバイス2と同じヒューズ溶断法によるが、それはワイヤから巻かれたコイルではなく箔を使用する。安全設計の1回投与をソフトウェア無しで実行できる。このデバイスは使い捨てユニットであってもよい。形態ファクターはタバコに近似する。デバイス当たり、より多数回の投与量となる効率的なエリアレイアウトである。2つの接点があるにすぎない。箔を用いるとヒューズ溶断のための領域の縮小の遂行が容易に達成される。このデバイスは容易にソフトウェアコントロール式の加熱素子に変換できる。平坦な箔はスプレー法で容易にコートすることができるであろう。
【0214】
[00225] デバイス4:図19を参照。このデバイスはデバイス2および3と同じヒューズ溶断法による。それはチューブ状に巻かれた箔を用いてタバコのような形態ファクターを可能にする。
【0215】
[00226] 本発明の記載を説明および記述の目的で提示したが、開示した形態に本発明を限定することを意図してはいない。本発明の範囲は以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。多数の改変および変更が当業者に明らかであろう。記載および図面に提示した態様は、本発明の原理、実際の適用を最も良く説明するために、かつ意図する特定の用途に適した種々の改変を含む種々の態様について他の当業者が本発明を理解するために選択および記載された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【手続補正書】
【提出日】2022-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザー入力デバイスと、第1ワイヤレストランシーバーと、第2ワイヤレストランシーバーと、プロセッサーと、メモリーデバイスと、ネットワークインターフェースデバイスとを含む、携帯型コントロールデバイスと、
第3ワイヤレストランシーバーと、投与量コントロールデバイスと、薬物ペイロードと、投与量送達デバイスとを含む、薬物送達デバイスと、
ユーザーの身体の一部とそれぞれ接触した1以上のユーザーセンサーであって、前記1以上のユーザーセンサーはそれぞれ第4ワイヤレストランシーバーと1以上の測定センサーとを含み、前記1以上の測定センサーは酸素濃度計、脈拍測定センサー、呼吸数センサー、または血圧センサーのうち1以上を含むユーザーセンサーと、を備える薬物送達および薬物停止システムであって、
前記ユーザー入力デバイスは、前記薬物送達デバイスによって前記ユーザーの身体への薬物送達が制御され、また薬物停止が制御されるように、前記ユーザーからのユーザー入力を受信し、
前記薬物ペイロードは、1回以上の投与に十分な量の薬物を収容するように構成された貯蔵容器を含み、
前記プロセッサーは前記第1および第3ワイヤレストランシーバーを介して前記薬物送達デバイスと通信し、1以上の前記ユーザー入力、薬物送達および薬物停止に関連する1以上の事前に設定した指示、または前記第2および第4ワイヤレストランシーバーを介して前記携帯型コントロールデバイスへ伝達される前記1以上の測定センサーからの1以上の測定結果に基づいて第1指示を前記投与量コントロールデバイスへ送り、
前記投与量コントロールデバイスは、前記プロセッサーからの前記第1指示に基づいて各投与についての前記薬物の量を決定し、各投与での送達のために、前記決定された量の薬物を送達する第2指示を前記投与量送達デバイスへ送り、
前記投与量送達デバイスは、前記投与量コントロールデバイスからの前記第2指示に基づいて前記薬物ペイロードから前記薬物を前記ユーザーへ送達し、
前記メモリーデバイスは前記システムを用いた薬物送達の履歴を含む情報を記憶し、前記情報は、各投薬前の前記1以上の測定結果、各所定期間での薬物投与量、各所定期間での投与回数、ユーザーによる薬物送達オーバーライドの回数、のうちの1つ以上を含み、
前記ネットワークインターフェースは、ネットワークを経由して前記ユーザーを担当する医師のコンピューティングデバイスと通信可能に接続して、前記薬物送達の履歴を含む情報を前記医師へ送信し投薬処方を前記医師から受信し、
前記薬物送達デバイスは、ブレスアクチュエーターとロックアウトユニットとを含む携帯型薬物送達デバイスを含み、
前記ブレスアクチュエーターは、前記ユーザーが前記携帯型薬物送達デバイスから吸入したという判定に基づいて前記投与量送達デバイスに補充量の前記薬物を前記薬物ペイロードから送達させるように構成され、
前記ロックアウトユニットは、前記補充量が所定期間における前記薬物の所定最大量を超える可能性があるという判定に基づいて、前記所定期間中に前記ブレスアクチュエーターが前記投与量送達デバイスに前記補充量の薬物を送達させるのを阻止するように構成されている、薬物送達および薬物停止システム。
【請求項2】
前記携帯型薬物送達デバイスは蒸気による薬物送達デバイスである、請求項1に記載の薬物送達および薬物停止システム。
【請求項3】
前記ブレスアクチュエーターが、前記携帯型コントロールデバイスからの前記指示を受信することなく、また事前に設定されたいずれの投与計画にも反して、前記ユーザーが前記携帯型薬物送達デバイスから吸入したという判定に基づいて前記投与量送達デバイスに前記補充量の薬物を前記薬物ペイロードから送達させるように構成されている、請求項1または2に記載の薬物送達および薬物停止システム。
【請求項4】
前記薬物ペイロードが前記薬物でコーティングされた1以上の箔を含み、
前記投与量送達デバイスが、各箔の一部分または各箔の全表面を少なくとも200℃に2秒未満で加熱するように構成されたヒーターを含む、請求項2に記載の薬物送達および薬物停止システム。
【請求項5】
前記ヒーターが、各箔の一部分または各箔の全表面を少なくとも300℃に0.5秒未満で加熱するように構成されている、請求項4に記載の薬物送達および薬物停止システム。
【請求項6】
前記薬物ペイロードが直列に接続した複数の抵抗コイルとアース線に接続した複数のヒューズとを含み、各ヒューズが前記直列の各コイルを次の隣接コイルから分離し、
前記複数のコイルはそれぞれ前記薬物でコーティングされ、
前記投与量送達デバイスは各コイルを少なくとも200℃に2秒未満で加熱するように構成された電源を含み、
前記電源から前記直列の複数のコイル、そして前記アース線へと回路が形成され、各ヒューズが前記直列の各コイルと次の隣接コイルとの間に短絡経路を構成し、
前記電源はさらにバースト電流を短時間送って前記電源に最も近い未溶断ヒューズを溶断するように構成され、それにより前記直列の次の隣接コイルに前記電源によってエネルギーが供給される、請求項2に記載の薬物送達および薬物停止システム。
【請求項7】
前記薬物ペイロードが、直列に接続した複数の箔を含む薄膜構造体と、前記薄膜構造体の接地部分に接続した複数のヒューズとを含み、各ヒューズが前記直列の各箔を次の隣接箔から分離し、
前記複数の箔はそれぞれ前記薬物でコーティングされ、
前記投与量送達デバイスは各箔を少なくとも200℃に2秒未満で加熱するように構成された電源を含み、
前記電源から前記直列の複数の箔、そしてアース線へと回路が形成され、各ヒューズが前記直列の各箔と次の隣接箔との間に短絡経路を構成し、
前記電源はさらにバースト電流を短時間送って前記電源に最も近い未溶断ヒューズを溶断するように構成され、それにより前記直列の次の隣接箔に前記電源によってエネルギーが供給される、請求項2に記載の薬物送達および薬物停止システム。
【請求項8】
前記薄膜構造体が、平坦な箔を巻いたくさび形、平坦な箔を巻いたチューブ形、または平面構造のうちの1つの全体的形状を有する、請求項7に記載の薬物送達および薬物停止システム。
【請求項9】
前記携帯型薬物送達デバイスは経皮型薬物送達デバイスである、請求項1に記載の薬物送達および薬物停止システム。
【請求項10】
前記薬物ペイロードが液状の前記薬物を収容した液体貯蔵容器を含み、
前記投与量送達デバイスは可変透過性の膜および膜アクチュエーターを含み、前記可変透過性の膜が前記膜アクチュエーターからの制御信号に基づいて液体透過性を変化させ、異なる量の前記薬物を前記液体貯蔵容器から送達するように構成されている、請求項9に記載の薬物送達および薬物停止システム。
【請求項11】
前記薬物がニコチン、メタ-サリチル酸ニコチン、またはモルヒネのうちの1つを含む、請求項1に記載の薬物送達および薬物停止システム。
【請求項12】
薬物ペイロードと、投与量送達デバイスと、第1ワイヤレストランシーバーとを含む、携帯型薬物送達デバイスと、第2ワイヤレストランシーバーを含む携帯型コントロールデバイスであって、前記携帯型コントロールデバイスは前記第1ワイヤレストランシーバーおよび第2ワイヤレストランシーバーを介して前記携帯型薬物送達デバイスと無線通信状態にある携帯型コントロールデバイスと、を含む薬物送達および薬物停止システムを用意する工程と、
前記携帯型コントロールデバイスが第1指示に基づいて各投与すべき前記薬物の量を決定し、各投与での送達のために、前記決定された量の薬物を送達する第2指示を前記携帯型薬物送達デバイスへ送る工程と、
前記携帯型薬物送達デバイスによって、前記薬物ペイロードに貯蔵された薬物のある用量を前記携帯型コントロールデバイスから受信した前記第2指示に基づいてユーザーの身体へ送達する工程と、を備え、
前記携帯型薬物送達デバイスは、さらにブレスアクチュエーターとロックアウトユニットとを含み、
前記送達する工程は、
前記ブレスアクチュエーターが、前記ユーザーが前記携帯型薬物送達デバイスから吸入したという判定に基づいて前記投与量送達デバイスに補充量の前記薬物を前記薬物ペイロードから送達させる工程と、
前記ロックアウトユニットが、前記補充量が所定期間における前記薬物の所定最大量を超える可能性があるという判定に基づいて、前記所定期間中に前記ブレスアクチュエーターが前記投与量送達デバイスに前記補充量の薬物を送達させるのを阻止する工程と、を備える、薬物送達および薬物停止方法。
【請求項13】
ユーザー入力に基づく指示、事前に設定した投与量に基づく指示、またはネットワークを経由しヘルスケア専門家のコンピューティングデバイスを介した前記ヘルスケア専門家からの指示のうちの少なくとも1つを含む第3指示を前記携帯型コントロールデバイスで受信する工程であって、前記第1指示および前記第2指示は前記第3指示に基づく工程と、
前記携帯型コントロールデバイスからの前記第2指示を前記携帯型薬物送達デバイスで受信する工程とをさらに備える、請求項12に記載の薬物送達および薬物停止方法。
【請求項14】
薬物送達および薬物停止装置であって、
プロセッサーと、
前記プロセッサーにより実行する際に前記装置に1以上の機能を実施させる一連の指示を含むコンピューターソフトウェアを記憶した非一過性コンピューター可読媒体とを備え、
前記一連の指示は、薬物ペイロードと、投与量送達デバイスと、第1ワイヤレストランシーバーとを含む携帯型薬物送達デバイスによって、第2ワイヤレストランシーバーを含む携帯型コントロールデバイスから受信した第2指示に基づいて、前記薬物ペイロードに貯蔵された薬物のある用量をユーザーの身体へ送達させる指示と、前記携帯型コントロールデバイスが、第1指示に基づいて各投与すべき前記薬物の量を決定し、各投与での送達のために、前記決定された量の薬物を送達する前記第2指示を前記携帯型薬物送達デバイスへ送る指示とを含み、
前記携帯型コントロールデバイスは前記第1ワイヤレストランシーバーおよび第2ワイヤレストランシーバーを介して前記携帯型薬物送達デバイスと無線通信状態にあり、
前記携帯型薬物送達デバイスは、さらにブレスアクチュエーターとロックアウトユニットとを含み、
前記送達させる指示は、
前記ブレスアクチュエーターが、前記ユーザーが前記携帯型薬物送達デバイスから吸入したという判定に基づいて前記投与量送達デバイスに補充量の前記薬物を前記薬物ペイロードから送達させる指示と、
前記ロックアウトユニットが、前記補充量が所定期間における前記薬物の所定最大量を超える可能性があるという判定に基づいて、前記所定期間中に前記ブレスアクチュエーターが前記投与量送達デバイスに前記補充量の薬物を送達させるのを阻止する指示と、を含む、薬物送達および薬物停止装置。
【請求項15】
前記一連の指示がさらに、
ユーザー入力に基づく投与量指示、事前に設定した投与量に基づく投与量指示、またはネットワークを経由しヘルスケア専門家のコンピューティングデバイスを介した前記ヘルスケア専門家からの投与量指示のうちの少なくとも1つを含む一連の第1投与量指示を受信させる指示と、
前記携帯型コントロールデバイスからの前記第2指示を前記携帯型薬物送達デバイスで受信させる指示とを含む、請求項14に記載の薬物送達および薬物停止装置。
【外国語明細書】